説明

画像認識システムを用いてサンプルの薄切片を作製する方法及び装置

【課題】作製された薄切片の高品質を保障しつつ、ミクロトームを用いてサンプルの薄切片を作製する方法を提供する。
【解決手段】カメラ24が、サンプル16の切片化によって作製された表面の少なくとも1の画像を獲得する。評価装置の助けにより、表面の画像を前定義された切片品質の特徴値に基づいて評価する。その際に、同定された特徴値の関数として、サンプル16の切片が許容されるか否かの決定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミクロトーム(microtome)を用いてサンプルの薄切片を作製する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミクロトームによって作製された薄切片は、通常、ユーザによって注意深く検査され、そして後の顕微鏡観察の際に、個々の薄切片における情報内容が評価できるように、それらがある品質基準を満足しているかどうかがチェックされる。そのような手順とともに、サンプル、例えば、生体組織サンプルから最大の情報回収率を取得するために、薄切片の作製の分野及び顕微鏡観察の分野における特別な知識及び経験を持つことがユーザにとって必要である。例えば、サンプルが十分深くプレカット(precut)されており、そしてそれの比較的に大きな断面の表面が調査できる点でのみ、パラフィンに包埋したサンプルの薄切片が作製されるべきである。薄切片は、顕微鏡観察下の誤解釈になり得る縦方向の溝(grooves)及び/または横方向の溝を、含有するべきでないか、ないしは少しのみ含有するべきである。加えて、薄切片の厚さの変動は、容認可能な許容限度内でなければならない。多数のサンプルを調査しなければならない場合、薄切片の品質基準の評価のために必要な仕事は、ユーザにとって疲れることであり、そして誤った評価が起こり得る。
【0003】
PCT公開公報WO00/62035A1は、組織サンプルの自動作製のシステム及び方法を開示する。光学的な画像作製システムの助けにより、パラフィン内の組織サンプルの位置が決定できるし、そして切片化される組織サンプルを整列できる。加えて、光学的な画像作製方法は、標本スライド上への薄切片の設置を補助することに使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO00/62035A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作製された薄切片の高品質を保障しつつ、ミクロトームを用いてサンプルの薄切片を作製する方法及びその方法を実行する装置を提示することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
方法のための、この目的は、請求項1の特徴によって達成される。即ち、本発明の一視点において、ミクロトームを用いてサンプルの薄切片を作製する方法が提供される。該方法は、カメラが、サンプルの切片化によって生成した表面の少なくとも1の画像を獲得し、評価装置が画像処理プログラムを有し、該画像処理プログラムは、前記表面の画像を前定義された切片品質の特徴値に基づいて評価し、前記評価装置のティーチインフェーズにおいて、作業者が、どのサンプルの切片が承認可能であるか否かの通知を行い、切片が予め作業者によって主観的に「良」若しくは「悪」の分類に区分され、前記評価装置が切片に関連する画像を評価して、関連する特徴値を同定し、各薄切片の切断方向に沿った縦方向の細溝の数が、薄切片品質の特徴値として使用され、前記ティーチインフェーズにおいて同定された値未満の数のときに当該薄切片が承認され、及び/又は、各薄切片の切断方向に対する横方向の溝の数が、薄切片品質の特徴値として使用され、前記ティーチインフェーズにおいて同定された値未満の数のときに当該薄切片が承認され、そして前記評価装置による後続の自動作動において、同定された特徴値を関数として、サンプルの切片が承認されるか否かを決定する。
なお、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は、専ら理解を助けるためのものであり、図示の態様に限定することを意図するものではない。
本発明において以下の形態が可能である。
(形態1)カメラが、サンプルの切片化によって生成した表面の少なくとも1の画像を獲得し、評価装置が、該表面の画像を前定義された切片品質の特徴値に基づいて評価し、そして同定された特徴値を関数として、サンプルの切片が承認されるか否かを決定する、ミクロトームを用いてサンプルの薄切片を作製する方法。
(形態2)上記の方法において、トリミングモードにおいて、トリミング平面を探すための切片化処理が行われ、トリミングモードにおける切片の切片厚が、10から50μm(好ましくは20から30μm)の範囲内であることが好ましい。
(形態3)上記の方法において、トリミング平面の決定のために、サンプルが包埋されたパラフィンブロックの明るい表面と、サンプル物質を表すプレカットされたサンプルの暗い切片化領域との間のコントラストの違いが、評価装置の助けにより特徴値として評価されることが好ましい。
(形態4)上記の方法において、プレカットされたサンプルの切片化領域が、サンプルの切片方向における前決定された最大の断面領域の一部に等しい(好ましくは、少なくとも80%に等しい)場合に、トリミング平面が同定されることが好ましい。
(形態5)上記の方法において、薄切片を作製するための薄切片モードにおいて、切片厚が1から10μm(好ましくは、2から5μm)までの範囲内であり、切片化過程がトリミングモードと比べて減速した切片化速度で行われることが好ましい。
(形態6)上記の方法において、薄切片の作製のための薄切片モードにおける切片化過程がトリミング平面の同定の後でのみ行われることが好ましい。
(形態7)上記の方法において、評価装置が特徴値を同定する画像処理プログラムを有することが好ましい。
(形態8)上記の方法において、切片厚が薄切片品質の特徴値として使用され、薄切片内において、切片厚内のゆらぎの構成が前定義された値未満である(好ましくは、前定義された切片厚の5%未満である)薄切片が承認されることが好ましい。
(形態9)上記の方法において、切片のしわが薄切片品質の特徴値として使用されることが好ましい。
(形態10)上記の方法において、各薄切片の切断方向に沿った縦方向の細溝の数が、薄切片品質の特徴値として使用され、前定義された数(好ましくは5未満)に基づいて当該薄切片が承認されることが好ましい。
(形態11)上記の方法において、各薄切片の切断方向に対する横方向の溝の数が、薄切片品質の特徴値として使用され、前定義された数(好ましくは5未満)に基づいて当該薄切片が承認されることが好ましい。
(形態12)上記の方法において、表示装置がユーザに現在の薄切片が承認される否かを示すことが好ましい。
(形態13)上記の方法において、前決定された承認されなかった連続する薄切片の数が超過した場合に、切片化ナイフが置き換えられることが好ましい。
(形態14)上記の方法において、前決定された承認されなかった連続する薄切片の数が超過した場合に切片化パラメータが訂正されることが好ましい。
(形態15)上記の方法において、切片化パラメータを訂正するために切片化速度、逃げ角及び切片厚の1以上が変更されることが好ましい。
(形態16)上記の方法において、薄切片の特定の数に到達するまで切片化過程が薄切片モードにおいて行われることが好ましい。
(形態17)上記の方法において、一度前定義された数の承認可能な薄切片が取得された場合、若しくは承認不可能な薄切片の前定義された数を関数として、若しくは作業者指示を関数として、切片化過程がトリミングモードにおいて続行され、新たなトリミング平面が探されて、薄切片モードへの移行が行われることが好ましい。
(形態18)上記の方法において、評価装置のティーチインフェーズ(teach-in phase)において、作業者が、どのサンプルの切片が承認可能であるか否かの通知を行い、評価装置が切片に関連する画像を評価して、特徴値を同定することが好ましい。
(形態19)上記の方法において、透過光モードにおいて、カメラを用いて若しくは超音波測定方法の助けにより、未カットのサンプル上で、サンプルの最大の断面領域が同定されることが好ましい。
(形態20)サンプルが包埋されたパラフィンブロックを切片化するためのミクロトーム、カメラ及び評価装置を有し、カメラが、サンプルの切片化によって生成した表面の少なくとも1の画像を獲得し、評価装置が、該表面の画像を前定義された切片品質の特徴値に基づいて評価し、そして同定された特徴値を関数として、サンプルの切片が承認されるか否かを決定する、サンプルの薄切片作製装置。
(形態21)上記の装置において、トリミング平面の決定のために、評価装置が、パラフィンブロックの明るい表面と、プレカットされたサンプルの暗い切片化領域との間のコントラストの違いを特徴値として評価することが好ましい。
(形態22)上記の装置において、評価装置が、特徴値を同定する画像処理プログラムを有することが好ましい。
(形態23)上記の装置において、評価装置が、作製された薄切片の薄切片品質の特徴値を同定し、前記特徴値の機能としてミクロトームの切片化パラメータを調節することが好ましい。
(形態24)切片化パラメータを訂正するために切片化速度、逃げ角及び切片厚の1以上が変更されることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、薄切片の、その高品質を保障しつつミクロトームを用いてサンプルの薄切片を作製する方法及びその方法を実行する装置を提供することができる。即ち、高い評価品質とともに、その優れた再現性が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の具体例の例示は、以下に図面を参照して開示される。
【図1】図1は、分割するサンプルを伴うミクロトームの側面図である。
【図2】図2は、自動的に薄切片を製造する装置のハードウェア配置を模式的に表わす。
【図3A】図3Aは、薄切片を自動的に製造する方法の実行のフローチャートである。
【図3B】図3Bは、薄切片を自動的に製造する方法の実行のフローチャートである。
【図4】図4は、パラフィンブロック及びそこに配置されたサンプルを有するカセットの側面図である。
【図5】図5は、図4による配置(ないしアレンジメント)の斜視図である。
【図6】図6は、図4による配置の平面図である。
【図7】図7は、プレカットサンプルを伴う図4による配置を示す。
【図8】図8は、その斜視図である。
【図9】図9は、その平面図である。
【図10】図10は、最大の領域領域(ないし断面積)を有するプレカットサンプルを示す。
【図11】図11は、その斜視図である。
【図12】図12は、その平面図である。
【図13】図13は、カセット、光源及びカメラを有する配置を示す。
【図14】図14は、横方向及び縦方向の溝を含有する切片を有するカセットの斜視図である。
【図15】図15は、図14による配置の平面図である。
【図16】図16は、サンプルの最大の断面積を同定するための配置を示す。
【図17】図17は、図16による配置の平面図である。
【図18】図18は、超音波センサを有する配置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明によれば、カメラは、サンプルの切片化によって生成した表面の少なくとも1の画像を獲得する。評価装置は、前定義された切片品質の特徴値に基づいて、該表面の画像を評価する。同定された特徴値を関数として、その時に、サンプルの切片が承認されたか否かの決定が行われる。
【0010】
カメラ及びカメラによって獲得された画像を評価する評価装置の使用は、サンプルの切片の評価作業を客観的にする。サンプルのこの切片は、顕微鏡観察によって後に調査される薄切片であり得る、又は、そこから始まって薄切片が作製される(さらに詳細に後に開示されるように)トリミング平面(trimming plane)を位置づけるためのサンプルへの初期のカットであり得る。評価装置及び前決定された切片品質の特徴値の助けにより、サンプルの切片が承認されたか否かの決定が行われる。客観化されうる特徴値に基づいてこの決定が行われるので、薄切片の、その高品質を保障しつつミクロトームを用いてサンプルの薄切片を作製する方法及びその方法を実行する装置を提示することができる。即ち、高評価品質とともに、その優れた再現性が達成される。
【0011】
評価装置は、好ましくは、種々の特徴値を同定する画像処理プログラムを包含する。この種の画像処理プログラムは、明/暗コントラストを評価することによってサンプル物質の輪郭を同定でき、そしてそこから切片化サンプルの断面領域を算出できる。この種の画像処理プログラム及びコントラスト評価システムの助けにより、縦方向の筋(細溝ないし線:striations)及び/または横方向の筋(溝ないし線)を検出すること、切片化サンプルの画像におけるそれらの寸法の伸び(dimensional extensions)若しくは他の不規則性を検出すること及び関連する特徴量を算出することは、同様に可能である。
【0012】
ティーチインフェーズ(学習段階:teach-in phase)において、手動検査の後に、どのサンプルの画像若しくはどの薄切片が承認可能か及びどれが承認不可能かを、評価装置との連絡において(例えば、キーを押すことによって)、ユーザが評価装置に通知すれば、有利である。画像処理プログラムは、その時、関連する画像に基づいて、承認可能な切片、若しくは承認不可能な切片に割り当てることができる特徴値を同定する。例えば、画像処理プログラムは、「良」と判断される切片の全ての画像を、共通する特徴及びパターンについて検査し、そして種々の評価基準に従って特徴値の範囲(値)を同定する。それによって、ティーチインフェーズにおいて、どの獲得された切片が承認可能かを評価装置に客観的に通知することが可能である。手順は、承認不可能な切片についても同様であり、ティーチインフェーズが終わった後に、評価装置が、現在の切片に基づいて、「良」と判断される切片であるか若しくは「悪」と判断される切片であるかを決定できる。画像処理プログラムによって同定された種々の特徴値は、データベースに蓄積される。十分大きなデータ目録が存在する場合、ユーザは、新たな切片のさらなる評価を評価装置に全て任せることができる。しかしながら、ユーザは、切片品質を手動で評価することを継続することもでき、また評価装置による評価の結果の指示の助けによって、承認可能な切片若しくは承認不可能な切片に関する操作者の決定について補助されることもできる。拡張したテストフェーズの後、切片品質の評価において、評価装置が良好な様式で作動するとユーザが決定すれば、ユーザは、ユーザによる介入無しに、切片作製(さらに除去)及び切片品質の評価が自動的に実行される自動作動モードに移すことができる。
【0013】
薄切片品質若しくは切片画像に基づく品質要求は、種々の利用領域(分野)において、大きくお互いに異なることがありうる。上記ティーチインフェーズの助けにより、別の用途のために、半自動の作業若しくは実際に完全な自動作業を可能にする客観的な評価基準が同定できる。
【0014】
本発明の更なる側面によれば、開示された方法を実行するための装置が提示される。
【実施例】
【0015】
図1は、ベースベッド(基台)12、切片化ナイフ14を保持する切片化ナイフホルダー13、及びパラフィンブロック18に包埋されたサンプル16を有し、顕微鏡観察に十分な高切片品質の薄切片が大部分は自動的に作製されるミクロトーム10の側面図の単純化した描写である。ミクロトーム10の作業の間に、第一に、粗い運転設定において、切片化ナイフ14はすぐにサンプル16が包埋されたパラフィンブロック18の近くに運ばれ、パラフィンブロック18に隣接し、長さL1を有する近領域22(この位置で近領域22が定義される)の位置に移動する。この粗い運転モードにおいて、切片化ナイフ14は、近領域22の長さL1よりもより大きい長さL2を有する移動経路20上を移動する。切片化ナイフ14がセンサ(図1に表さない)によってモニタされた近領域22を超えて行くとき、最初はトリミング平面(trimming plane)を探すためにトリミングモードで、トリミングモードにおける切片化の切片厚は10から50μmまでの範囲内で、好ましくは20から30μmまでの範囲内で、自動切片化処理が開始する。一度トリミング平面が同定されると、次に、切片化処理は、薄切片を作製するために薄切片モードにて続行され、薄切片モードにおける切片化の切片厚は、1から10μmまでの範囲内、好ましくは、2から5μmまでの範囲内であり、そして、切片化処理は、トリミングモードと比べて減速した切片化速度で行われる。自動切片化処理を、さらに詳細に図2、図3A及び3Bを参照して説明する。
【0016】
図2は、自動的に薄切片を製造する装置のハードウェア配置を模式的に表す。完全に自動化されたミクロトーム10は、作業コンソール28、そして評価装置26に連結(機能的に連携)したカメラ24、さらに中央制御ユニット30及び表示装置31に接続される。評価装置26及び作業コンソール28は、次々に中央制御ユニット30に接続され、評価装置26は、データ獲得システム32及び画像処理プログラム34を包含する。作業コンソール28上のスタート/ストップボタンの手動の作動の際に、作業者は、中央制御ユニット30におけるスタート信号をトリガーすることができるので、ミクロトーム10がスイッチオンになり、そして自動切片化処理を開始できる。切片化処理は、もう一度、作業コンソール28上のスタート/ストップボタンを作動することによって、途中で終了させることもできる。
【0017】
図3A及び3Bは、ミクロトーム10を使用してサンプル16の薄切片を自動的に製造する方法の実行に関するフローチャートである。ティーチイン(学習)フェーズにおいて、最初のステップS8において、薄切片の品質の特徴値を有するデータ獲得システム32に設定されるデータが、ユーザによって最初に前定義される。このティーチインフェーズにおいて、サンプル16の切片化によって生成した表面の画像は、カメラ24のカメラの助けにより、定義された薄切片の数だけ、獲得され、薄切片の切片品質が、ユーザによって主観的に「良」若しくは「悪」の分類に区分される。次に、画像処理プログラム34の助けにより、ユーザによって承認された及び承認されなかった薄切片の獲得画像は、十分に良い切片品質のそれらの特徴値の関連制限値を同定するために、薄切片品質の特徴値に基づいて検査される。
【0018】
例えば、厚薄効果(Thick-thin effects)は、薄切片品質の1の特徴値である。その厚薄効果で、厚い及び薄い切片は、切片化処理の間に交互に発生する、すなわち、薄切片モードにおける承認可能な薄切片の切片厚の変化は、±0.2μmを超えるべきでない。薄切片品質の別の特徴値は、サンプル16の切片化領域上の縦方向の筋(細溝)及び/または横方向の筋(溝)の数そして幅である、すなわち、縦方向の筋(細溝)若しくは横方向の筋(溝)のそれぞれの最大の容認可能な数は、5であるべきで、そして承認可能な薄切片の縦方向の筋(細溝)若しくは横方向の筋(溝)の幅は、0.5μmを超えるべきでない。ミクロトーム10のユーザは、必要であれば、前定義された薄切片品質の特徴値を変更することができる。種々の切片化品質の特徴値は、以下で更に詳細に図13から図15を参照して説明する。
【0019】
従って、データ獲得システム32は、切片化されるサンプル16の薄切片がそのまま承認されるように、ティーチインフェーズにおいて、薄切片品質の特徴値によって超過されてはならない制限値としてのデータを含有する。個々の組織タイプのさらに良い同定のために、調査される全てのサンプル16は、連続番号でコード化される。加えて、コードは、サンプル16の使用される手順としての、そして切片方向における個々のサンプル16の最大の断面領域の大きさとしての情報を含有する。
【0020】
方法の2番目のステップS10では、保存された薄切片品質の特徴値を変更するかどうかの質問がユーザによってなされる。いくつかの変更の後若しくは特徴値の確認の後、ステップ12において、粗い運転設定において、すぐに、サンプル16の近くに切片化ナイフ14を移動する準備がなされる。それから、次のステップS14において、最初は、トリミングモードで、トリミングカットごとにおよそ20から30μmの前進で、トリミング平面を同定するために、切片化処置が開始する。
【0021】
適正なトリミング平面は、薄切片モードにおいて、薄切片を作製するために、およそ2から5μmで前進して切片化処理を続行することに適する切片化サンプル16の切片化平面として理解される。サンプル16が包埋されたパラフィンブロック18上の切片化処理の結果として、初期のカットサンプル16の切片化領域が、切片方向におけるサンプル16の最大の断面領域とおよそ同じ大きさである場合に、適正なトリミング平面が同定される。トリミングモードにおけるトリミング平面の同定を、更に詳細に図4から図12を参照して説明する。
【0022】
トリミング深度が、サンプル16の切片化領域がその最大の断面領域の少なくとも80%に等しいトリミング深度(サンプル16が十分にプレカットされたと考えられるのは、このトリミング深度のみである)に到達した場合にのみ、トリミングモードと薄切片モード間の切り替えが起こる。その時、薄切片モードにおいて、切片化処理は、トリミングモードと比べて減速した切片化速度を使用して、そして減少した前進[幅]で、薄切片を作製する次のステップS18に継続される。
【0023】
切片品質を評価するために、薄切片を作製する各切片化作業において、サンプル16の切片化によって生成した表面の画像は、自動的にカメラ24の助けにより獲得される。カメラ24に接続する評価装置26は、トリミング平面の決定のみではなく、画像における特異的なパターンの検出及び評価、特に、定義された薄切片品質の特徴値に基づく画像の評価も果たす。
【0024】
それから、次のステップS20において、画像の特異的なパターンと、データ獲得システム32に蓄積された薄切片品質の特徴値との間で比較がなされ、評価装置26は、サンプルの切片化領域の切片品質を、「良」若しくは「悪」のいずれかとして評価することができる。評価装置26は、例えば、縦方向の筋(細溝)の数が5を超えていれば、切片品質を「悪」として分類する。切片品質が「良」として分類されれば、次の切片化作業は、薄切片モードで遂行するように続行する。例えば、サンプルの切片化領域上の縦方向の筋(細溝)の数が高い[ないし多]すぎるため、数回の切片化作業の後、切片品質が「悪」として分類されれば、その時、次の切片化作業は、薄切片モードではなく、新たなトリミング平面を決定するために、むしろトリミングモードで遂行される。
【0025】
切片化作業の後に切片品質が「良」として分類されれば、その時、ステップS22において、薄切片を作製するために切片化処理が薄切片モードで起きるように、中央制御ユニット30において信号がトリガーされる。
【0026】
数回の切片化作業の後、切片品質が「良」として分類されなければ、その時、最終ステップS24において、例えば、切片化速度、切片厚及び逃げ角などの切片化パラメータによって、自動訂正がなされ、自動訂正は、薄切片品質として同定された特徴値に依存する。切片のしわが過剰であれば、例えば、切片化速度の減速若しくは逃げ角の再調節が必要である。厚薄効果には、切片厚の設定における訂正が要求される。
【0027】
薄切片の切片品質を改善するためにさらに重要な行為は、切片化ナイフ14の置き換えであり得る。例えば、サンプル16の切片化領域上の縦方向の筋(細溝)若しくは横方向の筋(溝)の前決定された最大の容認可能な数が超過になれば、切片化ナイフ14の置き換えが遂行される。
【0028】
切片化パラメータの訂正の後になっても切片品質が改善されなければ、その時、ユーザは、薄切片が、切片化するサンプル16から作製できないこと、そして、例えば、更なる脱ミネラル化の形におけるサンプル16の再処理が必要であることの通知を受け取る。この目的は、ユーザに現在の薄切片が承認されたか否かを示す表示装置31によって果たされる。
【0029】
適正なトリミング平面の自動同定の方法は、図4から図12を参照してさらに詳細に説明する。このトリミング平面は、サンプル16の切片化領域がその最大の断面領域の少なくとも80%に等しい場合に同定され、その同定は、後述する。関連する深度は、関連するトリミング深度を意味する。従って、関連するトリミング深度とは、サンプル16がプレカットされた範囲を表す。例えば、プレカットサンプル16の領域が、切片方向におけるサンプル16の最大の断面領域に等しい場合、関連するトリミング深度は、100%に等しい。パラフィンブロック18に包埋されたサンプル16がカットされていなければ、トリミング深度は、0%である。トリミングモードにおける各切片化作業の後に、カメラ24が、サンプル16が包埋したパラフィンブロック18の表面の少なくとも1の画像を獲得するという事象によって、関連するトリミング深度は、同定できる。評価装置26の助けにより、この画像は、明るいパラフィンブロック18の表面と、プレカットサンプル16の暗い若しくは光沢がない切片化領域との間のコントラストの違いに基づいて調査される。このコントラストの違いによって、プレカットサンプル16の切片化領域の大きさを決定することができ、切片方向におけるプレカットサンプル16の切片化領域と、サンプル16の最大の断面領域との間の割合を算出することによって関連するトリミング深度を次々に同定できる。
【0030】
図4から図6は、種々の角度からの、切片化されるサンプル16が包埋したパラフィンブロック18を表し、パラフィンブロック18は、カセット35上に配置される。このケースでは、サンプル16がプレカットされていないので、以前に定義した関連するトリミング深度は0%である。
【0031】
図7から図9は、もう一度種々の角度からの、プレカットサンプル16が包埋したパラフィンブロック18を表し、プレカットサンプル16の切片化領域17は、切片方向におけるサンプル16の最大の断面領域44のおよそ25%に等しい。このケースでは、関連するトリミング深度は25%である。
【0032】
図10から図12は、種々の角度からの、プレカットサンプル16が包埋したパラフィンブロック18を表し、図7から図9とは対象的に、プレカットサンプル16の切片化領域17は、切片方向におけるサンプル16の最大の断面領域44のほぼ100%に等しい。このケースでは、関連するトリミング深度が80%よりも大きいので、適正なトリミング平面が同定される。
【0033】
図13から図15は、薄切片品質の特徴値としての縦方向の筋(細溝)の数及び幅、薄切片品質の特徴値としての横方向の筋(溝)の数及び幅を決定するための、さらに詳細な画像に基づく検出の手順を開示する。
【0034】
図13は、カセット35上に配置されたパラフィンブロック18の側面図の単純化した切片描写を示す。切片化されるサンプル16、例えば、生物の組織物質の試料は、このパラフィンブロック18に包埋される。カメラ24及びサンプル16の切片化領域17上に向く光源36の光は、パラフィンブロック18の表面19及びサンプルの切片化領域17の画像に基づく検出を果たし、光源は、カラーフィルター装置若しくは偏光フィルター装置38を有する。光源36の光によって対応する励起が行われた後に、サンプルから放射された蛍光照射を評価する蛍光装置も含むことができる。従って、特異的な波長若しくは偏光を有する光は、カラーフィルター装置、蛍光フィルター若しくは偏光装置38の使用によって作製できる。適切なフィルター装置38の選定は、サンプル16の組織タイプに依存する。光源36を用いた照明及び/またはサンプル16の画像の検出は、0℃(垂直)からほぼ90℃(かなり水平)の範囲内の種々の角度で各々達成できる。
【0035】
図14は、3次元の(立体)描写における、包埋されたプレカットサンプル16を有するパラフィンブロック18、パラフィンブロック18の表面19及びX矢印方向41の切断方向に沿った縦方向の筋(細溝)40を有し、そして同時に切断方向に対して横方向に横方向の筋(溝)42があるサンプル16の切片化領域17を示す。縦方向の筋(細溝)40は、おそらく損傷した若しくは鈍った切片化ナイフ14によって起こり、これに対して横方向の筋(溝)42は、切断方向に対して横方向の切片化ナイフの振動運動から発生する。
【0036】
図15は、切片方向における、包埋されたサンプル16の切片化領域17を伴うパラフィンブロック18の平面図を示す。カメラ24及びそれに連結した評価装置26(ここに表さない)の助けにより、薄切片の品質は、前定義された薄切片品質の特徴値に基づいて、サンプル16の切片化領域17の画像を評価することによって同定できる。評価装置26の助けにより、例えば、サンプル16の切片化領域17上の縦方向の筋(細溝)40の数及び/または横方向の筋(溝)42の数が、同定できる。
【0037】
図16から図18は、初期に考察した、サンプル16の最大の断面領域44の検出の方法ステップの例を示す。図16による例では、カセット35は、裏面からの光で、例えば、LED46から照射される。この種の光源は、例えば、ミクロトーム10におけるカセット35を受け取る受取装置に配置できる。パラフィンブロック18に包埋され、まだプレカットされていないサンプル16は、透過光モードにおいて、背後から照射される。サンプル16がパラフィンとは異なる透過特徴を有するので、サンプルの影画像が、カメラ24の認識領域48の中に呈する。平面図としての図17に表すように、この影画像の領域は、サンプルの最大の断面領域に一致する。カメラ24から、入射光モードで、上からパラフィンに包埋されたサンプル16を照射することもできる。サンプル16及びパラフィンの異なる反射特徴の結果として、輪郭によって取り囲まれたサンプル16の領域は、もう一度、検出可能であり、最大の断面領域44が同定できる。図18による更なる変形では、超音波センサ50からの超音波が、包埋されたサンプル16の前面上に(若しくは後面も)衝突する、そのため、サンプルの最大の大きさ及び最大の断面領域44が、サンプルから反射した超音波に基づいて同定できる。
【0038】
ユーザへの手動の評価の助けとして、評価装置によって発行された作製された切片の評価を評価装置によってユーザに示す方法のように、提示した方法は部分的な自動様式で作動できる。この様式では、多数のサンプルの切片の評価において、ユーザは、上記方法によって補助及び支援される、従って、ミクロトームによるサンプルの薄切片の作製において、全体的に品質を改良することができる。方法が確かに作動する場合、切片品質の評価がもっぱら評価装置によって遂行される完全な自動作業に移すこともできる。その時、ユーザは、切片化処理を自動的に進める複数の装置を入荷、運転することのみに責任があり、切片化作業は、自動的に遂行する。
【産業上の利用可能性】
【0039】
開示した方法は、切片品質の評価の一定の品質基準を作製する。これらの品質基準は、作業者の精神状況及び環境状況、そして他の妨害影響から独立する。この方法は、個々の研究室の基準への理想的な適応を可能にする。高資格が与えられていない作業者でさえ、すぐに訓練でき、ティーチインフェーズの助けにより切片品質の評価における十分な経験を獲得できる。使用したデータでデータベースがすでに満たされていれば、開示した方法を使用して、長期間の訓練期間無しに、ほとんど経験がない作業者がミクロトームを作動できる。
【0040】
なお、実施例において、上述したが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、開示した種々の形態及び特許請求の範囲の各請求項の範囲内において、種々の修正ないし変形、要素の選択、組合せの変更等が可能である。
【符号の説明】
【0041】
10 ミクロトーム
12 ベースベッド
13 切片化ナイフホルダー
14 切片化ナイフ
16 サンプル
17 サンプルの切片化領域
18 パラフィンブロック
19 パラフィンの表面
20 移動経路
22 近領域
24 カメラ
26 評価装置
28 作業コンソール
30 中央制御ユニット
31 表示装置
32 データ獲得システム
34 画像処理プログラム
35 カセット
36 光源
38 フィルター装置
40 縦方向の筋(細溝)
41 X矢印方向
42 横方向の筋(溝)
44 サンプルの最大の断面領域
46 LED
48 認識領域
50 超音波センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ(24)が、サンプル(16)の切片化によって生成した表面(17)の少なくとも1の画像を獲得し、
評価装置(26)が画像処理プログラム(34)を有し、該画像処理プログラム(34)は、前記表面(17)の画像を前定義された切片品質の特徴値に基づいて評価し、
前記評価装置(26)のティーチインフェーズにおいて、作業者が、どのサンプル(16)の切片が承認可能であるか否かの通知を行い、切片が予め作業者によって主観的に「良」若しくは「悪」の分類に区分され、前記評価装置(26)が切片に関連する画像を評価して、関連する特徴値を同定し、
各薄切片の切断方向に沿った縦方向の細溝の数が、薄切片品質の特徴値として使用され、前記ティーチインフェーズにおいて同定された値未満の数のときに当該薄切片が承認され、及び/又は、各薄切片の切断方向に対する横方向の溝の数が、薄切片品質の特徴値として使用され、前記ティーチインフェーズにおいて同定された値未満の数のときに当該薄切片が承認され、
そして前記評価装置(26)による後続の自動作動において、同定された特徴値を関数として、サンプル(16)の切片が承認されるか否かを決定する、
ミクロトームを用いてサンプルの薄切片を作製する方法。
【請求項2】
前決定された承認されなかった連続する薄切片の数が超過した場合に、切片化ナイフ(14)が置き換えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前決定された承認されなかった連続する薄切片の数が超過した場合に切片化パラメータが訂正される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
切片化パラメータを訂正するために切片化速度、逃げ角及び切片厚の1以上が変更される、請求項3に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2012−233918(P2012−233918A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−172734(P2012−172734)
【出願日】平成24年8月3日(2012.8.3)
【分割の表示】特願2009−182491(P2009−182491)の分割
【原出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(500113648)ライカ ビオズュステムス ヌスロッホ ゲーエムベーハー (45)
【Fターム(参考)】