説明

画像読取システム、原稿サイズ検出装置、及び原稿サイズ検出方法、並びに画像読取方法

【課題】原稿の厚みに影響されず安定して原稿の画像を読み取ることができる画像読取システム、原稿サイズ検出装置、及び原稿サイズ検出方法、並びに画像読取方法を提供する。
【解決手段】原稿の画像を読み取る画像読取装置と、画像読取装置を制御する制御装置とを備えた画像読取システムであって、原稿を搬送路に沿って搬送する搬送手段と、搬送路の途中に設けられ且つ原稿の厚みに応じて搬送路から離れる方向に移動可能に設けられ、搬送路に沿って搬送される原稿の画像を読み取る画像読取手段と、画像読取手段で読み取った原稿の画像データに所定の処理を施す画像処理手段と、原稿の厚みを判別する原稿の厚さ判別手段と、原稿の厚さ判別手段による判別結果に基づいて、画像読取手段による原稿の読取条件、又は画像処理手段による原稿の画像処理条件を変更する変更手段とを備え、原稿の厚みに影響されず安定して原稿の画像を読み取るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚さの異なる原稿の画像を読み取る画像読取システム、原稿サイズ検出装置、及び原稿サイズ検出方法、並びに画像読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、搬送される原稿の画像を読み取るための画像読取部を備えた画像読取装置が知られている(特許文献1参照)。このような画像読取装置の画像読取部としては、例えば、搬送される原稿に接触した状態で原稿の画像を読み取ることが可能なコンタクトイメージセンサが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−193429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、画像読取装置に対しては、利用者から一つの装置で様々な原稿の画像を読み取りたいという要請がある。しかしながら、読取対象となる原稿の厚さが異なる場合があり、コンタクトイメージセンサを用いて原稿の画像を読み取ると、原稿の厚さの違いによって安定した画像の読み取りや画像処理等を行うことができない場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑み、原稿の厚みに影響されず安定して原稿の画像を読み取ることができる画像読取システム、原稿サイズ検出装置、及び原稿サイズ検出方法、並びに画像読取方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像読取システムは、原稿の画像を読み取る画像読取装置と、前記画像読取装置を制御する制御装置とを備えた画像読取システムであって、原稿を搬送路に沿って搬送する搬送手段と、前記搬送路の途中に設けられ且つ原稿の厚みに応じて前記搬送路から離れる方向に移動可能に設けられ、前記搬送路に沿って搬送される原稿の画像を読み取る画像読取手段と、前記画像読取手段で読み取った原稿の画像データに所定の処理を施す画像処理手段と、原稿の厚みを判別する原稿の厚さ判別手段と、前記原稿の厚さ判別手段による判別結果に基づいて、前記画像読取手段による原稿の読取条件、又は前記画像処理手段による原稿の画像処理条件を変更する変更手段とを備えたことを特徴とする。これにより、原稿の厚みに影響されず安定して原稿の画像を読み取ることができる。
【0007】
また、本発明において、前記画像処理手段は、原稿の画像データに含まれる原稿領域とそれ以外の背景領域との濃度変化に基づいて原稿の影を検知することが好ましい。これにより、原稿の影を高精度に検知することができる。
【0008】
さらに、本発明において、前記画像処理手段は、原稿の画像データの各画素を微分して得た微分情報に基づいて前記原稿の影を検知することが好ましい。これにより、微分処理によって原稿の影を高精度に検知することができる。
【0009】
また、本発明において、前記画像処理手段は、原稿の画像データに含まれる原稿領域に連続して原稿の背景領域に移る濃度変化部分を原稿の影として検知することが好ましい。これにより、原稿の影を高精度に特定することができる。
【0010】
さらに、上記本発明において、前記画像読取手段は、原稿の画像を読み取る画像読取センサを有する画像読取ユニットからなり、前記画像処理手段は、原稿の先端が前記画像読取ユニットの手前に位置するタイミングで読み取った第1領域と、前記画像読取ユニットの端部に原稿が接触して前記画像読取ユニットが前記搬送路から離れる方向に移動しながら前記画像読取センサの読取位置に原稿が到達するまでの間に読み取った第2領域と、前記画像読取センサの読取位置に原稿が対向する間に読み取った第3領域とを有する画像データから、前記第2領域と第3領域との境界を原稿領域とそれ以外の背景領域との境界部分として検出することが好ましい。これにより、原稿の厚みが異なっても、原稿の影を正確に検出することができる。
【0011】
また、本発明において、前記画像処理手段は、原稿の画像データに含まれる原稿領域とそれ以外の背景領域との境界に基づいて原稿サイズ検出を行うことが好ましい。これにより、原稿の影に基づいて原稿のサイズ検出を良好に行うことができる。
【0012】
さらに、本発明において、前記画像処理手段は、原稿の画像データに含まれる原稿領域とそれ以外の背景領域との濃度変化の微分情報に基づいて前記原稿領域と前記背景領域との境界座標を取得して原稿サイズ検知を行うことが好ましい。これにより、原稿の影に基づく原稿の境界座標によって原稿のサイズ検知を良好に行うことができる。
【0013】
また、本発明において、前記画像処理手段が前記原稿領域と前記背景領域との境界座標を取得して原稿サイズ検知を行うに際し、前記変更手段が原稿の厚みに応じて濃度変化の微分閾値を変更することが好ましい。これにより、原稿の厚みが異なっても、高精度に原稿の境界座標を検出して原稿のサイズ検知を正確に行うことができる。
【0014】
さらに、本発明において、前記画像処理手段が原稿の画像データに含まれる原稿領域とそれ以外の背景領域との境界座標を取得して原稿サイズ検知を行うに際し、前記変更手段が原稿の厚みに応じて原稿領域の外側に付与するマージン量を変更することが好ましい。これにより、原稿の厚みが異なっても、原稿サイズ検知を良好に行うことができる。
【0015】
また、本発明において、前記変更手段は、原稿の厚さに応じて前記画像読取手段による原稿の画像読み取り開始のタイミングを変更することが好ましい。これにより、原稿の厚みが異なっても、原稿サイズ検知を良好に行うことができる。
【0016】
さらに、本発明において、前記画像読取装置は、前記搬送手段と、前記画像読取手段と、第1原稿が導入される導入口と、前記第1原稿が排出される排出口とを備え、前記搬送手段は、前記第1原稿を前記導入口から前記排出口へ搬送する一方、前記第1原稿よりも厚手の第2原稿の画像を前記画像読取手段によって読み取るために、前記排出口から導入される前記第2原稿を前記画像読取手段に向けて搬送することが好ましい。これにより、1つの装置で種類の異なる原稿を読み取ることができる。
【0017】
また、本発明において、前記第1原稿の画像を読み取った後に前記第2原稿の画像を読み取るに際し、前記変更手段は、前記第1原稿を読み取った第1原稿画像に対応する所定の第1画像処理条件を、前記第2原稿を読み取った第2原稿画像に対応する所定の第2画像処理条件とすることが好ましい。これにより、原稿の厚みが異なっても、原稿の厚みに影響されず、適切な画像処理を行うことができる。
【0018】
さらに、本発明において、前記原稿の厚さ判別手段は、前記排出口に設けられて当該排出口に前記第2原稿が導入されたことを検出する第2原稿挿入検知手段を有することが好ましい。これにより、第2原稿が排出口に導入されたことで、第2原稿をカード等の厚手原稿とみなして画像を読み取ることができる。
【0019】
また、本発明において、前記原稿の厚さ判別手段は、前記搬送手段によって搬送される原稿毎の厚さを測定する原稿の厚さ測定手段を有することが好ましい。これにより、原稿の厚さを判定して、その後に行う画像読取、画像処理を適切に制御することができる。
【0020】
さらに、本発明において、前記画像読取手段は、前記搬送路に対して斜め方向から光照射する光源と、原稿からの反射光を受光する受光部とを有することが好ましい。これにより、原稿とその背景との間に原稿の影を生じやすくさせることができる。
【0021】
また、本発明に係る原稿サイズ検出装置は、搬送路に沿って搬送される原稿の厚さに応じて前記搬送路から離れる方向に移動可能となる画像読取手段によって読み取った原稿の画像データから原稿サイズを検出する原稿サイズ検出手段を備え、前記原稿サイズ検出手段は、原稿の画像領域に対応する原稿領域と、前記原稿領域に続く第1濃度の第1背景領域と、前記第1背景領域に続く領域であって前記第1濃度と異なる第2濃度の第2背景領域とを含む画像データにおいて、前記原稿領域とこれに続く前記第1背景領域との境界部分を特定して原稿サイズを検出することを特徴とする。これにより、原稿の厚みが異なっても、原稿のサイズ検出を良好に行うことができる。
【0022】
さらに、本発明に係る画像読取方法は、搬送路に沿って原稿を搬送しながら画像読取手段によって原稿の画像を読み取る前に原稿の厚みを判別する原稿の厚さ判別ステップと、原稿の厚さに応じて前記画像読取手段を前記搬送路から離れる方向に移動させて原稿の画像を読み取る画像読取ステップと、前記原稿の厚さ判別ステップでの判別結果に基づいて、前記画像読取手段による原稿の画像の読取条件、又は前記画像読取手段によって読み取られた原稿の画像に施す原稿の画像処理条件を変更する条件変更ステップとを有することを特徴とする。これにより、原稿の厚みに影響されず安定して原稿の画像を読み取ることができる。
【0023】
また、本発明に係る原稿サイズ検出方法は、搬送路に沿って搬送される原稿の厚さに応じて前記搬送路から離れる方向に移動可能となる画像読取手段によって読み取った原稿の画像データを取得するデータ取得ステップと、前記データ取得ステップにおいて取得した画像データが、原稿の画像領域に対応する原稿領域と、前記原稿領域に続く第1濃度の第1背景領域と、前記第1背景領域に続く領域であって前記第1濃度と異なる第2濃度の第2背景領域とを含む場合に、前記原稿領域とこれに続く前記第1背景領域との境界部分に基づいて原稿サイズを検出する原稿サイズ検出ステップとを有することを特徴とする。これにより、これにより、原稿の厚みに影響されず安定して原稿の画像を読み取って原稿のサイズ検知を良好に行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、原稿の厚みに影響されず安定して原稿の画像を読み取ることができる。また、読み取った画像データに対する画像処理を原稿の厚さに応じて適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態1に係る画像読取装置の構成図。
【図2】本発明の実施形態1に係るセンサユニットの構成図。
【図3】本発明の実施形態1に係るセンサユニットの構成図。
【図4】本発明の実施形態1に係る読取り画像領域を示す図。
【図5】本発明の実施形態1に係るマージンの濃度変化を示す図。
【図6】本発明の実施形態1に係る電気部品構成図。
【図7】本発明の実施形態1に係る画像読取設定画面。
【図8】本発明の実施形態1に係るセンサユニットと原稿後端の影の説明図。
【図9】本発明の実施形態1に係るセンサユニットの位置とスキャンスキャン画像の関連図。
【図10】本発明の実施形態1に係る濃度変化のグラフ。
【図11】本発明の実施形態1に係る境界情報検出処理の説明図。
【図12】本発明の実施形態1に係るサイズ検知処理の説明図。
【図13】本発明の実施形態1に係る傾き検知処理の説明図。
【図14】本発明の実施形態1に係る原稿に外接する四角形を求める処理の説明図。
【図15】本発明の実施形態1に係る斜行補正処理の説明図。
【図16】本発明の実施形態1に係る斜行補正処理の説明図。
【図17】本発明の実施形態1に係るフローチャート図。
【図18】本発明の実施形態1に係る境界情報検出処理の説明図。
【図19】本発明の実施形態1に係るフローチャート。
【図20】本発明の実施形態1に係る給紙手段の説明図。
【図21】本発明の実施形態1に係る原稿の影と原稿厚さの関係図。
【図22】本発明の実施形態1に係る微分情報値と位置の関係グラフ。
【図23】(A)は本発明の一実施形態に係る画像読取装置の外観図、(B)は図1(A)の線I−Iに沿う画像読取装置の概略断面図。
【図24】画像読取装置の平面図。
【図25】(A)は図1(A)の線II−IIに沿う画像読取装置の概略断面図、(B)は媒体と排出口の寸法関係の説明図、(C)は図3(A)の線III−IIIに沿う上下の壁部の概略断面図。
【図26】画像読取装置の動作説明図。
【図27】画像読取ユニットの可動機構の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態の一例を図面を参照して説明する。なお、以下に本発明の形態を説明するが、説明内の装置の構成は概略的であり、本発明を限定するものではない。
【0027】
<実施形態1>
図1は、本発明に係る画像読取装置1の構成を示す図である。画像読取装置1は、コンピュータ等の外部装置に接続されて、その外部装置からの操作によってスキャン動作を行う装置である。具体的には、図1に示すように、原稿Dをピックアップするピックアップローラ2と、ピックアップローラ2によりピックアップされた原稿Dを装置内に給送する給送ローラ3と、ピックアップされた原稿Dを1枚ずつ分離する分離ローラ4と、給紙した原稿を排紙口まで搬送するためのローラ対8と、原稿の上面の画像情報を読取る画像読取手段となるラインイメージセンサ(コンタクトイメージセンサ)5と、このラインイメージセンサ5の上流側に配置されて原稿を検知するレジストセンサ6とを備える。また、画像読取装置2のピックアップローラ2側の給送部には、原稿Dが載置されたことを検出する原稿検知センサ9を備えている。
【0028】
このような画像読取装置1によってスキャンが開始されると、ラインイメージセンサ5で色基準部材7を読み取り、シェーディング補正用の補正データを生成する。生成された補正データは画素毎に記憶される。その後、原稿Dをピックアップローラ2と給送ローラー3によって画像読取装置1内に取り込み、分離ローラー4によって1枚ずつに分離する。分離された原稿Dは、副走査方向に搬送されつつ、その上面がラインイメージセンサ5によって主走査方向に沿って読み取られる。また、読み取られた画像は、前述した補正用のデータからシェーディング補正される。画像が読み取られた後、原稿Dは装置外部へ排出される。
【0029】
なお、原稿には、A4、B5などといった種々の原稿サイズがあり、ユーザは画像読取装置1に対して、PC等を介して原稿サイズを指定する。ユーザが画像処理装置1に対してスキャン開始命令を行うと、画像読取装置1は、シェーディング補正を行い、次に原稿Dを搬送しながらラインイメージセンサ5によってユーザ指定のサイズで原稿画像を取得する。原稿を読み取るタイミング制御はレジストセンサ6によって行われる。またq、画像読取装置1においては、原稿先端がレジストセンサ6を通過してから一定時間経過後に原稿の読取りを開始し、原稿後端がレジストセンサ6を通過してから一定時間経過後に原稿の読取りを終了する。
【0030】
ここで、図2を用いて、画像読取手段の構成について説明する。なお、図2は、センサユニット10の副走査方向における断面図である。図2に示すように、センサユニット10は、図示しない移動手段によって上下にスライド可能であり、原稿がセンサユニット10を通過していないときは、センサユニット10は自重で下がっている。薄い原稿D1の場合センサユニット10は下がったままになる(図3(a))。一方、厚い原稿の場合D2、厚い原稿D2がセンサユニット10を押し上げ(図3(b))、この構成によりラインイメージセンサ5は、常に原稿D2に密着した状態を保つことができる。これにより、ラインイメージセンサ5と原稿との距離を一定に保つことができる。図3の矢印は原稿の移動方向を示している。
【0031】
ところで、画像読取装置1は、詳細は後述するが、様々な画像処理の一つとして、原稿のサイズを検知する処理(以下サイズ検知)を行う。画像読取装置1は、読取り可能最大サイズで原稿を読み込み、サイズ検知処理はその読取画像に対して副走査方向に走査し、例えば、所定以上の濃度差がある画素位置を原稿と背景の境界とし、サイズ検知を行っている。例えば、図4(a)のように原稿が斜めに搬送された場合に、三角領域30と31が画像読取り範囲32からはみ出てしまうため、読取り可能最大サイズを、(読取り可能最大幅)×(原稿長さにマージンを付加した長さ)とすることで、読取った画像範囲内に原稿を収めることができる(図4(b)参照)。
【0032】
ここで、上述した画像読取装置1では、様々な原稿、特に原稿の厚さに応じて最適な画像処理、画像読取を実現することができる。以下、この点を具体的に説明する。
【0033】
図1に示す構成の画像読取装置1においては、背景である色基準部材7を読み取る際、原稿の厚みによってラインイメージセンサ5の焦点位置が変わることになる。具体的には、図5(a)は原稿がセンサユニット10に到達する前、図5(b)は、原稿がセンサユニット10を押し上げたとき、図5(c)はラインイメージセンサ5が原稿を読み取っているときを示している。
【0034】
このように、図5(a)と図5(b)では、ラインイメージセンサ5が色基準部材7を読み取っているところは基本的に同じであるが、ラインイメージセンサ5の焦点位置に違いが生じる。光学系において、被写体が焦点位置にいる際、被写体からの集光量が最大となり、焦点位置から遠ざかると集光量は減少する。つまり、ラインイメージセンサ5が図5(b)の位置で読取った読取画像の明度は、ラインイメージセンサ5が図5(a)の位置で読取った読取画像の明度よりも低くなる。その結果、センサユニット10が原稿に押し上げられたときに、読取画像の明度が低くなるので背景画像に明度の差(領域15と領域16の境目)が含まれてしまい、サイズ検知処理がこの明度差がある画素位置を原稿と背景の境界と判断してしまう。
【0035】
なお、光源により原稿を照射して原稿画像をラインイメージセンサ5により読取るにあたり、光源の光量むらやラインイメージセンサ5の感度むらを考慮し、白色の色基準部材7を読取って補正する必要がある。この際、原稿を照射する光源の発光量を適正化する光量調整と、ラインイメージセンサ5の画像信号出力に対する増幅率を最適化するゲイン調整と、光源の光量むらとラインイメージセンサ5の感度むらをラインイメージセンサ5の画素単位で補正するビット補正を行う。ここでは、上述の「光量調整」「ゲイン調整」「ビット補正」を含んで、ラインイメージセンサ5が原稿の画像情報を一様に読み取るための補正をシェーディング補正と称することとする。
【0036】
ここで、図6を参照して、画像読取装置1の電気回路構成を説明する。なお、図6は、画像読取装置1の電気回路の概略構成を示すブロック図である。21は、A/D変換部である。ラインイメージセンサ5の出力信号を、増幅や黒レベルクランプなどのアナログ処理を施した後、デジタルデータに変換する。22は、画像処理部である。ラインイメージセンサ5、A/D変換部21などの制御と、ラインイメージセンサ5の出力信号をデジタル化して生成した画像データに各種の画像処理(シェーディング補正等)を行う。23は、画像データを記憶する画像メモリである。24は、外部ホスト装置とのインターフェース部であり、信号ケーブル25によりパソコン等の外部ホスト装置と接続されている。26は、画像読取装置1の制御を司る制御部となるCPUである。画像処理部22、CPU26は、バス27を介して接続されている。CPU26は画像処理部22を介して画像メモリ23にアクセスすることができるように構成されている。29は原稿の搬送手段(モータ)であり、CPU26からの指示を受けたモータードライバ28により動作する。
【0037】
図7は、画像読取設定画面を示す。画像読取装置1と接続されている外部ホスト装置がこの画面を表示し、ユーザはこの画面を介して画像読取設定を設定する。画像読取装置1に表示部を設け画像読取装置1が画像読取設定画面を表示するようにしてもよい。画像読取設定画面では、モード、サイズ、解像度が選択できる。それぞれ選択肢は、モードがカラーと白黒、サイズが「A4」と「B5」と「サイズを検知する」、解像度が300dpiと100dpiとなる。「サイズを検知する」が選ばれると後述するサイズ検知処理が動作し、「傾きを補正する」チェックボックスがONになると、後述する原稿の傾きをまっすぐに補正する処理(以下斜行補正処理)が動作する。
【0038】
ここで、本実施形態の画像読取装置1における原稿のサイズ検知手法について説明する。まず、原稿の先端と後端にできる影について説明する。図8は、センサユニット10及びその近傍を示す図であり、図8(a)は、センサユニット10を示し、図8(b)と(c)は、センサユニット10により原稿Dの端が読み取られている状態を示す。図8(b)は原稿がセンサユニット10に突入するとき、図8(c)は原稿がセンサユニット10を通り過ぎるときを示している。センサユニット10と色基準部材7の間には、ガラス12が配置されている。このガラス12は、色基準部材7に傷や汚れが付かないようにする役割を果たす。また、原稿Dと色基準部材7の間にガラス12の厚みと同等若しくはそれ以上の隙間を持たせる役割がある。光源11は、ラインイメージセンサ5の両側に設けられており、上方から光を原稿Dに対して照射することにより、原稿の影13ができる。
【0039】
図9は、ラインイメージセンサ5と、画像読取装置1内に搬送される原稿1102と、該原稿の読取画像1104との対応関係を示す図である。図9において、矢印1107は原稿の搬送方向を示しており、図内1102は画像読取装置1内に搬送される原稿であり、図内1104は副走査方向に搬送される原稿1102をラインイメージセンサ5で繰り返し読取ることにより得られる読取画像であり、図内1103は読取画像1104において原稿1102に対応する原稿画像であり、図内1106は原稿画像と背景画像との境界に形成される影部である。
【0040】
図10は、ラインイメージセンサ5で原稿1102を読取ったときの副走査方向の濃度変化を示すグラフであり、図10(a)は、ラインイメージセンサ5の読取位置1107で読取った縦ラインの濃度変化を示し、図10(b)は、ラインイメージセンサ5の読取位置1108で読取った縦ラインの濃度変化を示し、図10(c)は、読取位置1107における濃度変化の微分値を示し、図10(d)は、読取位置1108における濃度変化の微分値を示す。図10(a)に示すように、読取位置1107は原稿1102を通過しないため、読取画像の濃度はほぼ一定(=200)となる。一方、図10(b)に示すように、読取位置1108は原稿1102を通過する。このとき、読取画像の濃度は影部1106の位置で変化する。濃度が変化する位置では、副走査方向に微分した値の絶対値が大きくなる(図10(d))。本実施の形態では副走査方向の微分を求めることにより、原稿画像と背景画像の境界を求めている。
【0041】
次に、センサユニット10で読取った読取画像中の原稿画像に基づいて原稿画像のサ
イズ検知、並びに斜行補正について説明する。これらの処理は、画像処理部22で行われる。画像読取装置1は、図4(b)のように、(読取り可能最大幅)×(原稿長さにマージンを付加した長さ)のサイズの画像を読み取る。そして、原稿と背景の境界を検知する処理を行う。図11は、読取画像を示す。座標系は、読取画像の左上端を原点としたxy座標系である。本実施の形態では、xy座標系における各画素の濃度値をf(x、y)とし、濃度値f(x、y)は、明るい程大きい値とする。なお、本実施形態では、x軸方向が主走査方向であり、y軸方向が副走査方向である。図内ライン1、ライン2・・・・ライン40・・・・は、副走査方向の走査を示している。
【0042】
まず、画像処理部22は、画像を副走査方向に走査し、下記(1)式を用い、各画素の位置における読取画像の微分情報値Δ(x,y)を算出する。
【0043】
Δ(x,y)=abs(f(x,y+d)−f(x,y)) ・・・(1)
f(x,y) :注目画素
f(x,y+m):注目画素からdライン先の画素の濃度値(d=1)
【0044】
次に、微分情報値Δ(x,y)と閾値sを比較し、微分情報値が閾値sを超えるかどうかを判定する(なお、閾値sは実験データから求められた固定値である)。そして、各ラインにおいて、微分情報値が、最初に閾値sを越えた位置と最後に越えた位置を記録する。この記録された位置情報が原稿と背景の境界情報になる。例えば、ライン40は原稿の先端部分35と後端部分36が記録される。またライン1は、常に背景部分なので、濃度変化がなく原稿と背景の境界はない。つまり境界情報はない。
【0045】
図12は、サイズ検知処理の結果を示している。1301は読取画像1303内の原稿画像であり、1304〜1307は、原稿と背景の境界線である。サイズ検知処理は、原稿を囲み搬送方向に平行な四角形1032を求める処理である。
【0046】
図13は、図12の線分P1―P2及び線分P2―P3の傾きを検出する処理を説明する図である。図13(a)は、線分P1―P2を示し、図13(b)は、線分P2―P3を示す。図13(a)に示すように、線分P1―P2に関して、P1からP2に向かって一定間隔aで配列を進めていき(p1n;nは自然数)、P2を超えるまで差分値b1〜bnを求め、差分値b1〜bnの合計値sum1(sum1は正の値)を算出する。同様に、線分P2―P3に関して、P2からP3に向かって一定間隔aで配列を進めていき(p2m;mは自然数)、P3を超えるまで差分値c1〜cmを求め、差分値c1〜cmの合計値sum2(sum2は負の値)を算出する(図13(b))。次に、上記自然数nと自然数mのうち大きい方を採用し(区間C及び区間Dうち長い方の区間を採用)、以下の(3)式を用いて傾きベクトルを求め、この傾きベクトルにより原稿画像の傾き角度を検出する。
【0047】
n≧mのとき
(g,h)=(a, sum1/n) ・・・(3)
n<mのとき
(g,h)=(a,sum2/m)
【0048】
次に、傾き角度(g,h)と境界情報から原稿画像に外接する長方形(以下外接長方形)を求める処理について説明する。図14は、読取画像1601内の斜行した原稿画像1602を示す図である。1612a,1614aは、n≧mの場合、傾きh/gを有する直線を示し、1613a,1615aは、傾き−g/hを有する直線を示す。1612〜1615は、夫々、1612a〜1615aのうち上記境界線1604〜1607に接する直線である。点1608〜1611は、夫々、直線1612〜1615のうち互いに垂直に交わる2直線の交点を示す。まず、境界線1605に接する傾きh/gの直線1612の方程式を求める方法を説明する。ここではn≧mであって(g,h)=(a,sum1/n)とした場合を例にとって説明する。
【0049】
まず、y=(h/g)x+bを変形して、b=−(h/g)x+y ((4)式)とする。そして、境界座標値を上記式(4)のx、yに代入し、bを求める。上記(4)式に全ての境界座標値を代入することにより求められるy切片bの中で最も大きい値を選択し、この最大値により境界線1605に接する直線を求める。同様に、境界線1607に接する直線1614の方程式を求める場合は、c=−(h/g)x+y ((5)式)に全ての境界座標値を代入することにより求められるy切片cの中で最も小さい値を選択する。境界線1604に接する直線1615の方程式を求める場合は、e=(g/h)x+yの式に境界座標値を代入し、y切片eの中で最も小さい値を選択する。同様に、境界線1606に接する直線1613の方程式を求める場合は、d=(g/h)x+yの式に全ての境界座標値を代入し、y切片dの中で最も大きい値を選択する。次に、前記手順で求めた4直線1612〜1615の交点1608〜1611の座標を求める。交点1608〜1611の各座標は、互いに垂直に交わる2直線の連立方程式を解くことによって求められる。なお、n<mの場合の算出法は省略する。
【0050】
次に、斜行補正処理について説明する。この斜行補正処理では、傾きベクトル(g,h)と外接長方形の4頂点1608〜1611の座標が用いられる。図15は、傾きベクトル(g,h)の値と原稿の傾き方向の関係を示す図であり、(a)は、hが正の値であり且つg<hの場合を示し、(b)は、hが正の値であり且つg>hの場合を示し、(c)は、hが負の値であり且つg<|h|の場合を示し、(d)は、hが負の値であり且つg>|h|の場合を示す。
【0051】
図15(a)〜(d)において、hが正の値であり且つg<hの場合は、回転軸を原稿画像の左上の頂点として、原稿画像を時計回りに角度θだけ回転させ(図15(a))、hが正の値であり且つg>hの場合は、原稿画像を反時計回りに角度θだけ回転させる(図15(b))。なお、本実施形態では、g=hの場合は、原稿画像を時計周りに回転させることとする。また、hが負の値であり且つg<|h|の場合は、原稿画像を反時計回りに角度θだけ回転させ(図15(c))、hが負の値であり且つg>|h|の場合は、時計回りに角度θだけ回転させる(図15(d))。読取られる原稿が大きく傾く頻度は少ないため、図15(b)及び図15(d)のいずれかの回転を行うことが多い。さらに、回転後の原稿画像の左上頂点をxy座標系の原点に合わせるように補正する。
【0052】
図16は、原稿画像の回転方法を説明する図であり、(a)は、回転前の画像Aを示し、(b)は、回転後の画像Bを示す。図16において、画像Bの幅wと高さhは、以下の(6)式を用いて、4頂点のうちの3点(x1,y1)、(x2,y2)、(x4,y4)から求められる。
【0053】
w=√((x1−x4)+(y1−y4)) (6)
h=√((x1−x2)+(y1−y2)
【0054】
次に、画像Bの各画素の濃度値を決定する方法を説明する。画像Bの各画素の濃度値は、以下の(7)式を用いて、画像Aの各画素の濃度値を参照することで決定される。
x=Xcosθ−Ysinθ+x1 (7)
y=Xsinθ−Ycosθ+y1
(x,y):回転前の画素位置
(X,Y):回転後の画素位置
但し、ここでは、角度θは時計回りに測定される角度としている。また、本実施例では斜線領域B´の濃度値は255とする。
【0055】
図17は、斜行補正処理を示すフローチャートである。まず、画像の左上端から右下端へ向かって各画素毎に順に走査を行い(ステップS181)、上記(7)式を用いて注目画素(X,Y)の回転前の座標(x,y)を算出する(ステップS182)。次に、回転前の座標(x,y)が画像Aからはみ出ているか否かを判別する(ステップS183)。回転前の座標(x,y)が画像Aからはみ出ていた場合、注目画素(X,Y)の濃度値を白に相当する値とし(ステップS184)、回転前の座標(x,y)が画像Aからはみ出ていない場合は、座標(x,y)の画素濃度値を、注目画素(X,Y)の濃度値にする(ステップS185)。次に、注目画素(X,Y)が画像Bの右下端に位置しているか否かを調べる(ステップS186)。注目画素(X,Y)が画像Bの右下端に位置していない場合はステップS181に戻り、注目画素(X,Y)が画像Bの右下端に位置している場合は、本処理を終了する。
【0056】
ここで、次に、原稿の厚みを判定する処理について説明する。図20は、画像読取装置1であって、図1の矢印42の方向から見た画像読取装置の概略図である。画像読取装置1には、厚い原稿用の給紙手段40が設けられている。ユーザはカードのような厚い原稿を給紙手段40に挿入しスキャンを開始する。また、画像読取装置1は原稿検知センサ41を備えている。原稿検知センサ41は発光部と受光部を備えており、発光部からの光は反射板43で反射し、受光部に到達する。受光部が光を検知したときは、原稿検知センサ41は「原稿がない」と判断し、受光部が光を検知しないときは、原稿検知センサ41は「原稿がある」と判断する。ユーザがカードのような厚い原稿を給紙手段40に挿入すると、原稿検知センサ41だけが原稿を検知する。このとき、画像読取装置1は「原稿は厚い」と判断する。また、原稿検知センサ41と原稿検知センサ9が原稿を検知したときは、画像読取装置1は「原稿は薄い」と判断する。なお、図1及び図20では、カード等の厚い原稿専用の給送口を設けた例を説明しているが、このような挿入口はなくてもよい。すなわち、原稿の給送口及び排出口はそれぞれ1つであっても、本発明を適用できる。
【0057】
次に原稿の厚みによって閾値sを変更する処理について説明する。図21は原稿端にできる影の図である。原稿の影の長さと明度は原稿の厚さによって変わり、厚い原稿の影44は薄い原稿の影45よりも長くなる。原稿の影の明度において、厚い原稿の影は、薄い原稿の影と比べると低くなる。つまり厚い原稿の影の微分情報値は、薄い原稿の微分情報値より大きくなる。図22は原稿の先端部分における濃度変化の微分情報値をグラフにしたものである。縦軸は微分情報値、横軸は位置を示す。グラフ46(点線)は、薄い原稿の微分情報値のグラフを示し、グラフ47(実線)は厚い原稿の微分情報値のグラフを示している。本実施例は、閾値sを2つ設けており、画像読取装置1が薄い原稿を読み込むときは閾値s1が使用され、画像読取装置1が厚い原稿を読み込むときは閾値s2が使用される。グラフ46において、最初の変化は、前述した背景画像の明度の差(図5領域15と図5領域16の境目)を示している。厚い原稿のときは閾値sを大きく設定(s=s2(s2>s1))すると、画像処理部22は、この明度の差を検知しなくなる。このように、本実施形態によれば、厚さの異なる原稿をそれぞれ読み取ったとき、厚い原稿の画像において、異なる濃度を持つ複数の画像領域が原稿の搬送方向に段階的に形成されることになるが、上述した原稿の厚みによって閾値sを変更する処理によって、原稿の周囲に形成された影の部分を正確に検出することができる。これにより、原稿のサイズ検知を適切に行うことができる。
【0058】
本実施形態の例では、原稿の厚さに応じて閾値sの値を変更したが、画像読取装置1が読み込むマージン量を厚さに応じて変更してもよい。つまり、図5の領域15の副走査方向の長さをLとすると、図18(b)のように、読取画像のマージン領域から、副走査方向に長さL(もしくはLより長く)切り取ると濃度変化位置17がなくなる。マージンを調節する処理を図19のフローチャートを用いて説明すると、まず、画像処理部22が読取画像を受け取る(ステップS190)と、原稿が厚いか薄いかの情報を厚み判定部より受け取り、原稿が厚いか薄いかを判断する(ステップS191)。原稿が厚い場合、前述したように読取画像から長さLの領域を削る(ステップS192)。その後、境界位置を検出する処理を行う(ステップS193)。また、原稿が薄い場合、ステップS192の削る処理は行わずに境界位置を検出する処理を行う(ステップS193)。
【0059】
また、前述のマージンの調節処理は、読取画像から長さLの領域を削ったが、厚さ判定部をレジストセンサ6よりも手前に配置し、レジストセンサ6が原稿を検知する前に原稿の厚みを検知し、原稿が厚い場合、画像読取装置1が読取画像に付加するマージンの長さをL短くして読み込むようにしてもよい。
【0060】
また、本実施例では、ユーザが給紙手段40を使用するときと使用しないときで、原稿の厚みを判定していたが、図3の18のように厚み判定部を設け、この厚み判定部に、センサユニット10が接触すると、厚み判定部は、「原稿が厚い」と判定し(図3(b))、センサユニット10が接触していない場合、厚み判定部は、「原稿が薄い」と判定(図3(a))してもよい。この方法によって原稿の厚みを原稿毎に把握できるため、その後の画像読取制御や、読み取った画像データへの適切な画像処理を行うことができる。
【0061】
また、画像読取装置1が裏写りした原稿を読取ると読取画像に裏写りした画像が含まれてしまう。画像読取装置1に裏写り除去処理を設け、厚い原稿と薄い原稿に応じて裏写り除去処理の強さを変えてもよい。具体的には、裏写り除去処理は、読取画像の各画素の赤成分(R)、緑成分(G)、青成分(B)を以下の(8)式に代入することで、読取画像から裏写り部分を除去することができる。
【0062】
R´=R+k×(R×G×B)
G´=G+k×(R×G×B) (8)
B´=B+k×(R×G×B)
なお、上記R、G、Bはそれぞれ入力値であり、上記R´、G´、B´はそれぞれ出力地であり、上記kは係数である。
【0063】
また、上記kは裏写りを除去する強度を決定するための係数であり実験データから求められる。kが0のときは入力値と出力値が同じになるので裏写り除去処理は動作しない。原稿は薄いと裏写りしやすく厚くなると裏写りはしないため、裏写り除去処理は薄い原稿のときは係数をk、厚い原稿のときは係数を0に変更して動作する。
【0064】
以上説明したように、本実施形態によれば、原稿がセンサユニット10を押し上げる構成の画像読取装置において、厚みのある原稿でも原稿の画像読取を安定して行うことができ、また、画像処理として原稿のサイズ検知を正しく行うことができる。
【0065】
<実施形態2>
以下、上述した実施形態1では、普通の紙媒体と、紙媒体よりも相対的に厚手であり高剛性のプラスチックカード等のカード媒体との両方を1つの装置で読取可能な構成例について詳細に説明する。以下に説明する画像読取装置は、上述した実施形態1と同様に、厚みのある原稿を搬送して画像を読み取る際には、原稿が画像読取手段を押し上げる構成を採用し、それ以外の画像読取や画像処理の処理は上述した実施形態1で説明した手法を適用することができる。図23(A)は本発明の一実施形態に係る画像読取装置Aの外観図、図23(B)は図23(A)の線I−Iに沿う画像読取装置Aの概略断面図、図24は画像読取装置Aの平面図、図25(A)は図23(A)の線II−IIに沿う画像読取装置Aの概略断面図である。
【0066】
画像読取装置Aは、第1媒体M1及び第2媒体M2を搬送しながらその画像を読み取る機構を備えた搬送・読取部10と、その両側に配置された収容部20、21と、を備える。収容部20には媒体M1及び媒体M2を搬送する搬送機構15の駆動源155が配置される。駆動部155は例えばモータと、モータの出力を後述するローラの駆動軸等に伝達する伝達機構と、を備える。収容部21には例えば制御回路等が収容される。
【0067】
媒体M1は本実施形態の場合、シート状の媒体であり、例えば紙類である。媒体M2は本実施形態の場合、媒体M1よりも幅狭で厚さが厚い媒体であり、例えばプラスチック製のカード類である。
【0068】
搬送・読取部10の一方端部には、給紙トレイ111が開閉可能に設けられている。この給紙トレイ111を開状態とした状態においては、画像読取装置Aの上部端側に媒体M1を導入するための導入部11が開放される。一方、搬送・読取部10の他方端部には媒体M1が排出される排出口12が形成されている。この排出口12の一部は、例えば、本実施形態では、媒体M2が手差し等で導入される導入口(挿入口)と、読取部によって画像を読み取った後の媒体M2の排出口とを兼ねている。また、この排出口12は、媒体M1を排出するための排出口12aと、排出口12aよりも上下の高さが拡大され、媒体M2を導入、排出するための排出口12bと、を備える。
【0069】
排出口12bが排出口12aよりも上下の高さが拡大されていることで、ユーザが視覚的に媒体M2の導入位置が分かり易いという利点がある。また、排出口12bには、その上下、左右の縁部に開口面積が徐々に縮小するテーパ12b'を形成しており、媒体M2を排出口12bから挿入し易くしている。
【0070】
導入部11には、媒体M1を搬送・読取部10内に導入するための給紙口(導入口)110が設けられていると共に、本実施形態の場合、自動給紙装置(ADF)が配設されている。ADFは、複数枚の媒体M1が積載される給紙トレイ111と、フィードローラ122と、分離パッド113と、を備える。
【0071】
給紙トレイ111は、回転ヒンジ部111aを有し、搬送・読取部10の上面に折り畳み可能に構成されており、使用時は各図に示す開状態で使用される。フィードローラ112は駆動部155により回転駆動され、給紙トレイ111に積載された媒体M1のうち最下層に位置する媒体M1を給送するものである。
【0072】
分離パッド113は、フィードローラ112の外周面と接するように設けられており、フィードローラ112の回転に伴って給送される媒体M1を、この分離パッド113とフィードローラ112の外周面との間に取り込むことで、1枚ずつ自動で分離して給送することができる。
【0073】
フィードローラ112と分離パッド113とは、搬送・読取部10の左右の幅方向の中央部にのみ設けられており、図25(A)に示すように排出口12bの背後の領域においては設けられていない。これは媒体M2の読取時に媒体M2と、フィードローラ112及び分離パッド113とが干渉することを回避するためである。
【0074】
媒体M1、M2が搬送される搬送路(搬送空間)RTは、その天壁を形成する壁部156と、その底壁を形成する157と、から形成される。壁部156、157は搬送・読取部10の略全域に渡って配設されている。
【0075】
主に図23(B)を参照して、搬送部15は、媒体M1の搬送機構として、搬送・読取部10の左右の幅方向に延在する駆動軸(回転軸)152a、154a、従動軸(回転軸)151a、153aを備える。媒体M1の搬送機構は、駆動軸152aに設けられた駆動ローラ152及び従動軸151aに設けられた従動ローラ151を備える搬送ローラ対と、駆動軸154aに設けられた駆動ローラ154及び従動軸153aに設けられた従動ローラ153を備える搬送ローラ対と、を備える。これら従動ローラ151、153は、媒体の搬送を補助する部材として機能する。
【0076】
これら各ローラは、搬送・読取部10の左右の幅方向に1又は複数設けられ、壁部156又は157に形成された開口部を通って搬送路RT内に進入している。ADFにより導入部11から導入された媒体M1は、これらの搬送ローラ対によって、図23(B)において矢印で示す方向に搬送されて搬送路RT内を排出口12(12a)へ搬送されて排出される。
【0077】
導入部11から排出口12に至る搬送路RTの途中には画像読取ユニット13、14が配設されている。画像読取ユニット13、14は、搬送路RT内を搬送される媒体M1、M2からその画像を読み取るユニットであり、搬送・読取部10の左右の幅方向略全域に渡って延在している。画像読取ユニット13、14は、例えば、光学的に走査し、電気信号に変換して画像データとして読取るものであり、内部にLED等の光源、イメージセンサ、レンズアレー等を備えている。
【0078】
画像読取ユニット13は搬送される媒体M1、M2の上面を、画像読取ユニット14は搬送される媒体M1、M2の下面を、それぞれ読み取るように画像読取ユニット13は搬送路RTの天部側に、画像読取ユニット14は搬送路RTの底部側にそれぞれ配置されている。本実施形態では、このように媒体M1、M2の両面を読み取る構成としているが、画像読取ユニット13、14のいずれか一方を配して片面を読み取る構成としてもよい。なお、画像読取ユニット13、14での媒体M1の画像読取のタイミングは、画像読取ユニット13、14の上流側に配置されたセンサ30aで検出される。センサ30aは例えば光センサである。
【0079】
ここで、上述した媒体M1の導入部11から排出口12への搬送にあっては、フィードローラ112と搬送ローラ対(駆動ローラ152及び従動ローラ151)の間の屈曲部RTwで媒体M1を湾曲させて搬送させていることから、カード状の媒体(特に厚手の媒体、高剛性の媒体等)は搬送が困難となる。そこで、媒体M2については排出口12bから導入して画像読取ユニット13、14へ搬送して画像を読み取りび排出口12bから排出するようにしている。このように媒体M1の搬送路RTを屈曲させることにより、画像読取装置Aにおける装置の高さ寸法、奥行き寸法等を小さくでき、装置全体の小型化を図ることができる。主に図25(A)を参照して、搬送部15の媒体M2の搬送機構について説明する。
【0080】
搬送部15は、媒体M2の搬送機構として、駆動軸152aに設けられた駆動ローラ152'及び従動軸151aに設けられた従動ローラ151'を備える搬送ローラ対と、駆動軸154aに設けられた駆動ローラ154'及び従動軸153aに設けられた従動ローラ153'を備える搬送ローラ対と、を備える。
【0081】
詳細には、搬送手段である駆動部155は、導入部11から排出口12に向けて媒体搬送を行う第1搬送モード(通常搬送モード)と、排出口12bから画像読取ユニット13、14に向けて媒体搬送を行う第2搬送モード(逆搬送モード)とを有し、両モードを切り替え制御可能となっている。
【0082】
例えば、本実施形態では、排出口12bへの媒体M2の導入に伴って逆搬送モードで媒体M2を搬送し、画像読取ユニット13、14に対向する領域を媒体M2が通過した後に通常搬送モードに切り替え可能となっている(以下、媒体M2の「スイッチバック搬送」ともいう)。なお、媒体M2のスイッチバック搬送においては、搬送方向を転換する際に連続的に搬送してもよいし、媒体M2を一時的に停止するようにしてもよい。
【0083】
ところで、本実施形態では、画像読取ユニット13、14よりも導入部11側、具体的には、画像読取ユニット13、14と搬送ローラ対(駆動ローラ152及び従動ローラ151)との間には、媒体M2の到達及び通過を検知するためのセンサ31が設けられている。
【0084】
センサ31は、媒体M2の搬送時において、画像読取ユニット13又は14で読み取った媒体M2を排出口12bから排出するために逆搬送するタイミング(スイッチバック搬送のタイミング)を取るために用いる。なお、媒体M2の画像読取においては、往路又は復路の何れかで両面を読み取ってもよいし、往路と復路とで片面ずつ分けて読み取ってもよい。
【0085】
また、本実施形態の場合、各ローラ151'乃至154'は、各ローラ151乃至154よりも小径のものを使用している。これは、媒体M1よりも媒体M2の方が厚さが厚いことを考慮したものである。もっとも、いずれのローラについて同径のものを使用することも可能である。
【0086】
なお、各ローラ151'乃至154'の少なくとも表面層が、各ローラ151乃至154よりも柔らかい素材(低硬度のゴム、エラストマーやスポンジ等のクッション性素材)によって形成されていることが好ましい。これは、媒体M2の種類等に起因した厚み変動を適度に吸収しながら、適切な搬送力を確保するためである。
【0087】
また、媒体M2としてクレジットカードを例に挙げると、文字領域におけるエンボス部分がある場合、そのエンボス部分を各ローラ151'乃至154'の弾性変形によって吸収し、搬送時にエンボス部分が局所的に抵抗領域となって媒体M2が斜行することを有効に防ぐことができる。このような場合、各ローラ151'乃至154'は、各ローラ151乃至154と同径のものを使用してもよい。
【0088】
本実施形態では、媒体M1の搬送機構(第1搬送手段)と、媒体M2の搬送機構(第2搬送手段)とで駆動軸152a、154a、従動軸151a、153aを共用し、これにより駆動部155も共用している。しかし、媒体M1の搬送部と媒体M2の搬送部とをそれぞれ独立して構成してもよい。
【0089】
上述した本実施形態で示す構成は一例であり、この限りではない。例えば、本実施形態の画像読取装置10は、DCモータ(駆動モータ)等からなる駆動部201が1個設けられている。そして、この駆動部201の駆動力は、各ギアを介して、駆動系の一例である各ローラに回転駆動として伝達される。すなわち、画像読取装置10の駆動部201は、各ローラそれぞれを同一駆動条件で駆動(同一駆動)させるようになっている。なお、本実施形態では、駆動部を1つのモータで構成した例を説明したが、複数のモータで各ローラを別駆動できるようにしてもよいが、給紙手段と搬送手段と排紙手段とをそれぞれ同時駆動条件で制御することも可能である。
【0090】
ここで、ユーザが手差しで媒体M2を導入する際、その向きが適切でないと媒体M2の搬送に際して斜行を生じるおそれがある。斜行を防止するために以下の構成を備える。
【0091】
本実施形態では、排出口12bの背後の領域において、図25(A)に示すように壁部156、157がそれぞれ凹部156a、157aを備える。凹部156a、157aは、媒体M2の左右幅に対応した左右幅(例えば媒体M2の左右幅よりも僅かに幅広)を有して、奥行き方向(媒体M2の搬送方向)に延設されている。
【0092】
凹部156aは上方にへこみ、凹部157aは下方にへこんでいる。へこみの深さは媒体M2の厚さにしたがって設定される。図25(B)は媒体M2の厚さtと、搬送路RTのうち、凹部156a、157aが形成された部分の上下方向の高さK1と、搬送路RTのうち、凹部156a、157aを除く部分の上下方向の高さK2との関係を示す。なお、排出口12aの高さもK2である。
【0093】
そして、これらの関係は、K2<t<K1という関係を有している。このような関係を有していることで、媒体M2をユーザが排出口12に差し込む際、排出口12b以外の部分に差し込むことが困難となり、適切な位置に差し込むことを促すことができる。
【0094】
そして、凹部156a、157aの内側側面は、図25(C)に示すように媒体M2の幅方向の側面部に対向するように媒体M2の搬送方向に沿って配置され、排出口12bから搬送路RTへ導入される媒体M2を案内する規制壁部SWを形成することになる。この規制壁部SWの存在により媒体M2の斜行を防止することができる。この規制壁部SWは、媒体M1との関係においては、媒体M1が通過する位置よりも上又は下に存するので、媒体M1の搬送時にその支障になることもない。本実施形態の場合、凹部156a、157aの端部は排出口12まで延設されており、排出口12bを構成している。
【0095】
なお、本実施形態では、壁部156、157のそれぞれに凹部156a、157aを形成したが、いずれか一方に凹部を形成し、規制壁部SWも上側又は下側の一方のみとしてもよい。
【0096】
次に、図26を参照して媒体M2の画像読取時の画像読取装置Aの動作について説明する。本実施形態では搬送・読取部10の背部に、開口部16が形成されており、媒体M2の画像読取時に媒体M2を直線的に搬送し、開口部16から媒体M2を一時的に突出させる。これは画像読取装置Aのコンパクト化に寄与する。
【0097】
具体的には、図24に示すように、例えば、本実施形態では、画像読取装置Aの奥行き方向の長さ寸法Dは、媒体M2の長手方向の長さ寸法D´と略同等としている。また、媒体M2の搬送路RTは、排出口12bから媒体M2の搬送路の一部を通って屈曲部RTwに開口するスリット(媒体M2専用の搬送路であって、本実施形態ではスイッチバックのための退避エリア)に連通して形成された直進経路からなる。このスリットは、例えば、本実施形態では、画像読取装置Aの背部(背面)に開口部16として開放されている。
【0098】
このため、排出口12bから媒体M2を導入後に、媒体M2の先端が画像読取装置Aの後端部に到達する状態では、画像読取装置A内部に媒体M2の全体が一時的に収容される。その後、媒体M2の後端部がセンサ31を通過した時点で、媒体M2がスリット内に突入すると共に駆動部155がスイッチバック搬送に切り替えられる。
【0099】
このとき、媒体M2の先端部側は、一時的に開口部16から突出することになる。このときも、媒体M2は、その後部側が規制壁部SWに案内されるので、幅方向の移動が実質的に規制される。これにより、媒体M2のスイッチバック搬送時においても媒体M2の斜行を有効に防止することができる。
【0100】
このように、本実施形態においては、媒体M2の斜行防止のための規制壁部として、媒体M2の搬送路RTにおける少なくとも画像読取ユニット13、14の排出口12b側及びその反対側(開口部16側)に対応する部分にそれぞれ各壁部(媒体M2の搬送ガイド)が設けられている。これにより、本実施形態の画像読取装置Aは、媒体M1の搬送を可能としながらも一部の搬送路を兼用して媒体M2のスイッチバック搬送を実現しつつ、媒体M2の斜行を有効に防止することができて、画像読取の品質を向上することができる。
【0101】
図26において、ST1はユーザにより媒体M2が排出口12bに導入された状態を示す。規制壁部SWの案内を利用してユーザは媒体M2を簡易に正しい姿勢で排出口12bに導入することができる。媒体M2の導入は、センサ30で検出される。センサ30は例えば反射型の光センサである。このセンサ30は、媒体の種類を判別するセンサとしての役割がある。具体的には、センサ30が媒体を検出すると、その媒体を厚手のカード媒体とみなし、画像の読取制御または読み取った画像データの画像処理の条件を、カード媒体用に変更する。例えば、媒体M1の画像を読み取った後に媒体M2の画像を読み取るに際しては、図示しないが、画像読取装置の制御部が、媒体M1を読み取った第1原稿画像に対応する所定の第1画像処理条件を、媒体M2を読み取った第2原稿画像に対応する所定の第2画像処理条件とする。あるいは、画像処理条件の代わりに、画像読取条件を媒体M1の所定条件から媒体M2の所定条件に変更してもよい。ここでの制御部は、画像処理条件または画像読取条件の変更手段として機能する。なお、センサ30で媒体M2の導入(実際には媒体M2の先端部側の到達)が検出されると、駆動ローラ154'、152'を回転駆動して媒体M2が矢印方向に搬送され、排出口12bに導入された媒体M2が画像読取ユニット13、14へ搬送される。搬送の際、規制壁部SWの存在により媒体M2の面方向の移動が規制されて媒体M2の斜行が有効に防止される。
【0102】
媒体M2が画像読取ユニット13、14を通過する際、画像読取ユニット13、14によりその表裏面の画像が読み取られる。ST2は読み取りが完了した状態を示す。媒体M2はその一部が開口部16から突出している。
【0103】
読み取りが完了すると、駆動ローラ154'、152'を逆方向に回転駆動して媒体M2が逆方向に搬送される。読み取りの完了の判断には例えば画像読取ユニット13、14の読み取り結果を利用することができる。ST3は媒体M2を逆方向に搬送している状態を示す。なお、画像の読み取りはこの逆方向の搬送途中で行ってもよい。
【0104】
ST4は媒体M2を排出口12bから排出途中の状態を示す。媒体M2が排出口12bから排出されると一単位の処理が終了する。
【0105】
こうして本実施形態では、規制壁部SWにより媒体M2の斜行を防止することができ、しかも、規制壁部SWが媒体M1の搬送時において媒体M1と干渉しないようにすることができる。
【0106】
画像読取ユニット13、14を固定して配設した場合、両者の読み取り面の間隔は、媒体M1よりも厚さが厚い媒体M2が通過可能な間隔となる。このため、媒体M1の表裏面から画像読取ユニット13、14の読み取り面が離れてしまう場合があり、より鮮明な画像を得られにくい場合がある。そこで、画像読取ユニット13、14の各読み取り面の間隔が近接、離間するように画像読取ユニット13、14を可動させる可動機構を設けてもよい。図27はその一例を示す。
【0107】
同図において画像読取ユニット13は、ガイド板131、131により上下に変位可能に設けられていると共にコイルバネ等の弾性部材132により吊り下げ状態で支持されている。画像読取ユニット14は、ガイド板141、141により上下に変位可能に設けられていると共にコイルバネ等の弾性部材142により上方に付勢されている。これにより、媒体M2の厚みに応じて画像読取ユニット13が搬送路から離れる方向に移動自在となる。
【0108】
なお、弾性部材132による画像読取ユニット13の吊り下げ位置、弾性部材142による画像読取ユニット14の付勢位地は、各画像読取ユニットの長手方向両端部側にそれぞれ配置することが望ましい。画像読取ユニットの一端部側での媒体M2の搬送時において媒体M2に対して効率よくユニット読取面を密着させることができるからである。また、画像読取ユニット13、14の、媒体M1、M2の搬送方向の両端部には傾斜面13a、14aが形成されている。
【0109】
通常時にはST11の状態にある。この状態では画像読取ユニット13はその最下位置、画像読取位置14はその最上位置に位置しており、画像読取ユニット13、14の各読み取り面の間隔は媒体M1が通過可能な範囲で狭い間隔である。なお、画像読取ユニット13の最下位置、画像読取位置14の最上位置を規定するストッパをそれぞれ設けてもよい。
【0110】
媒体M2の通過時には、傾斜面13a、14aが媒体M2と当接することで画像読取ユニット13は上に、画像読取ユニット14は下に、それぞれ移動し、各読み取り面の間隔は媒体M2の厚み分に広がる。媒体M2の通過が完了すると、弾性部材132、142により、再びST11の状態に戻る。
【0111】
こうして本実施形態では媒体M1、M2に応じて画像読取ユニット13、14の各読み取り面の間隔が変化するので、より好適な画像読取が実現できる。なお、本実施形態では、画像読取ユニット13、14のそれぞれを上下動するように構成したが、何れか一方の画像読取ユニットだけ上下動するようにしてもよい。
【0112】
なお、上述した第2実施形態では、媒体M2をスイッチバック搬送する場合について説明したが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、媒体M2を媒体M1の排出口から導入して装置背面側(開口部16)に排出するようにしてもよい。
【0113】
また、上述した第2実施形態では、媒体M2をスイッチバック搬送する際に装置背面側に一時的に突出させるようにしたが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、画像読取ユニットの端部と装置背面との間の領域を十分に確保することにより、装置背面から媒体M2を突出させないようにしてもよい。
【0114】
さらに、媒体M2が長方形状のもの(クレジットカード等)の場合において、第1実施形態等のように媒体M2をその長手方向一端部から装置に挿入するのではなく、例えば、媒体M2の幅方向一端部からの挿入、即ち、媒体M2の長辺側の端部からの挿入によって媒体M2を搬送して画像読取を実行するようにしてもよい。
【0115】
この場合には、媒体M2を装置背面から突出させないようにすることが可能となり、装置を大型化させることなくスイッチバック搬送を実現できる。また、装置背面側の障害物に媒体M2が衝突してスイッチバック搬送に支障がでてしまうことを防ぐこともできる。さらに、装置背面に媒体M2の突出用開口を設けなくてもよくなるため、例えば、装置内部への埃等の混入を防止できる他、装置の剛性及び耐久性等も向上することができる。
【0116】
上述した各実施形態では、画像読取装置を例示して説明したが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、原稿の画像を読み取る画像読取装置と、この画像読取装置に接続されて画像読取装置を制御する制御装置(外部のコンピュータを含む)とを備えた画像読取システムに適用することができる。この場合、制御装置は、ネットワークを介したホストコンピュータでもよい。
【0117】
また、本発明は、搬送路に沿って搬送される原稿の厚さに応じて搬送路から離れる方向に移動可能となる画像読取手段によって読み取った原稿の画像データから原稿サイズを検出する原稿サイズ検出装置や原稿サイズ検知方法にも適用することができる。具体的には、原稿サイズ検知装置は、原稿の画像領域に対応する原稿領域と、原稿領域に続く第1濃度の第1背景領域と、第1背景領域に続く領域であって第1濃度と異なる第2濃度の第2背景領域とを含む画像データにおいて、原稿領域とこれに続く前記第1背景領域との境界部分を特定して原稿サイズを検出する手段を備えることで実現できる。
【0118】
なお、本発明は、搬送路に沿って原稿を搬送しながら画像読取手段によって原稿の画像を読み取る前に原稿の厚みを判別する原稿の厚さ判別ステップと、原稿の厚さに応じて前記画像読取手段を前記搬送路から離れる方向に移動させて原稿の画像を読み取る画像読取ステップと、前記原稿の厚さ判別ステップでの判別結果に基づいて、画像読取手段による原稿の画像の読取条件、又は前記画像読取手段によって読み取られた原稿の画像に施す原稿の画像処理条件を変更する条件変更ステップとを有することを特徴とする画像読取方法や、この画像読取方法をコンピュータ及び画像読取装置の制御部の少なくともいずれか一方を機能させるプログラムにも適用できる。以下の処理を実行することによっても実現される。
【0119】
即ち、本発明は、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理にも適用できる。
【符号の説明】
【0120】
D 原稿
1 画像読取装置
2 ピックアップローラ
3 搬送ローラ
4 分離ローラ
5 ラインイメージセンサ
6 レジストセンサ
7 色基準部材
8 ローラ
9 原稿検知センサ
10 センサユニット
11 光源
12 ガラス
13 影
14 センサユニットの端からラインイメージセンサまでの長さ
15 原稿がセンサユニットを押し上げる前のマージン画像
16 原稿がセンサユニットを押し上げたときのマージン画像
17 原稿画像
18 厚み判定部
20 電気部品全体構成
21 A/D変換部
22 画像処理部
23 画像メモリ
24 インターフェース部
25 信号ケーブル
26 CPU
27 バス
28 モータードライバ
29 モータ
30、31 はみ出し領域
32 読取り領域
33 読取り領域
40 厚紙用給紙手段
41 原稿検知センサ
42 方向
43 反射板
44、45 影の長さ
46、47 グラフ
48〜50 交点
1102 原稿
1103 原稿画像
1104 読取画像
1105 影
1301、1302 サイズ検知結果
1303 読取画像
1304〜1307 原稿と背景の境界線
1601、1603 読取画像
1602 原稿画像
1604〜1607 原稿と背景の境界線
1608〜1611 交点
1612〜1615 外接四角形の一辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の画像を読み取る画像読取装置と、前記画像読取装置を制御する制御装置とを備えた画像読取システムであって、
原稿を搬送路に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送路の途中に設けられ且つ原稿の厚みに応じて前記搬送路から離れる方向に移動可能に設けられ、前記搬送路に沿って搬送される原稿の画像を読み取る画像読取手段と、
前記画像読取手段で読み取った原稿の画像データに所定の処理を施す画像処理手段と、
原稿の厚みを判別する原稿の厚さ判別手段と、
前記原稿の厚さ判別手段による判別結果に基づいて、前記画像読取手段による原稿の読取条件、又は前記画像処理手段による原稿の画像処理条件を変更する変更手段とを備えたことを特徴とする画像読取システム。
【請求項2】
前記画像処理手段は、原稿の画像データに含まれる原稿領域とそれ以外の背景領域との濃度変化に基づいて原稿の影を検知することを特徴とする請求項1記載の画像読取システム。
【請求項3】
前記画像処理手段は、原稿の画像データの各画素を微分して得た微分情報に基づいて前記原稿の影を検知することを特徴とする請求項2記載の画像読取システム。
【請求項4】
前記画像処理手段は、原稿の画像データに含まれる原稿領域に連続して原稿の背景領域に移る濃度変化部分を原稿の影として検知することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像読取システム。
【請求項5】
前記画像読取手段は、原稿の画像を読み取る画像読取センサを有する画像読取ユニットからなり、
前記画像処理手段は、原稿の先端が前記画像読取ユニットの手前に位置するタイミングで読み取った第1領域と、前記画像読取ユニットの端部に原稿が接触して前記画像読取ユニットが前記搬送路から離れる方向に移動しながら前記画像読取センサの読取位置に原稿が到達するまでの間に読み取った第2領域と、前記画像読取センサの読取位置に原稿が対向する間に読み取った第3領域とを有する画像データから、前記第2領域と第3領域との境界を原稿領域とそれ以外の背景領域との境界部分として検出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像読取システム。
【請求項6】
前記画像処理手段は、原稿の画像データに含まれる原稿領域とそれ以外の背景領域との境界に基づいて原稿サイズ検出を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像読取システム。
【請求項7】
前記画像処理手段は、原稿の画像データに含まれる原稿領域とそれ以外の背景領域との濃度変化の微分情報に基づいて前記原稿領域と前記背景領域との境界座標を取得して原稿サイズ検知を行うことを特徴とする請求項1記載の画像読取システム。
【請求項8】
前記画像処理手段が前記原稿領域と前記背景領域との境界座標を取得して原稿サイズ検知を行うに際し、前記変更手段が原稿の厚みに応じて濃度変化の微分閾値を変更することを特徴とする請求項7記載の画像読取システム。
【請求項9】
前記画像処理手段が原稿の画像データに含まれる原稿領域とそれ以外の背景領域との境界座標を取得して原稿サイズ検知を行うに際し、前記変更手段が原稿の厚みに応じて原稿領域の外側に付与するマージン量を変更することを特徴とする請求項1記載の画像読取システム。
【請求項10】
前記変更手段は、原稿の厚さに応じて前記画像読取手段による原稿の画像読み取り開始のタイミングを変更することを特徴とする請求項1記載の画像読取システム。
【請求項11】
前記画像読取装置は、前記搬送手段と、前記画像読取手段と、第1原稿が導入される導入口と、前記第1原稿が排出される排出口とを備え、
前記搬送手段は、前記第1原稿を前記導入口から前記排出口へ搬送する一方、前記第1原稿よりも厚手の第2原稿の画像を前記画像読取手段によって読み取るために、前記排出口から導入される前記第2原稿を前記画像読取手段に向けて搬送することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像読取システム。
【請求項12】
前記第1原稿の画像を読み取った後に前記第2原稿の画像を読み取るに際し、
前記変更手段は、前記第1原稿を読み取った第1原稿画像に対応する所定の第1画像処理条件を、前記第2原稿を読み取った第2原稿画像に対応する所定の第2画像処理条件とすることを特徴とする請求項11記載の画像読取装置。
【請求項13】
前記原稿の厚さ判別手段は、前記排出口に設けられて当該排出口に前記第2原稿が導入されたことを検出する第2原稿挿入検知手段を有することを特徴とする請求項11又は12記載の画像読取システム。
【請求項14】
前記原稿の厚さ判別手段は、前記搬送手段によって搬送される原稿毎の厚さを測定する原稿の厚さ測定手段を有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の画像読取システム。
【請求項15】
前記画像読取手段は、前記搬送路に対して斜め方向から光照射する光源と、原稿からの反射光を受光する受光部とを有することを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の画像読取システム。
【請求項16】
搬送路に沿って搬送される原稿の厚さに応じて前記搬送路から離れる方向に移動可能となる画像読取手段によって読み取った原稿の画像データから原稿サイズを検出する原稿サイズ検出手段を備え、前記原稿サイズ検出手段は、原稿の画像領域に対応する原稿領域と、前記原稿領域に続く第1濃度の第1背景領域と、前記第1背景領域に続く領域であって前記第1濃度と異なる第2濃度の第2背景領域とを含む画像データにおいて、前記原稿領域とこれに続く前記第1背景領域との境界部分を特定して原稿サイズを検出することを特徴とする原稿サイズ検出装置。
【請求項17】
搬送路に沿って原稿を搬送しながら画像読取手段によって原稿の画像を読み取る前に原稿の厚みを判別する原稿の厚さ判別ステップと、原稿の厚さに応じて前記画像読取手段を前記搬送路から離れる方向に移動させて原稿の画像を読み取る画像読取ステップと、前記原稿の厚さ判別ステップでの判別結果に基づいて、前記画像読取手段による原稿の画像の読取条件、又は前記画像読取手段によって読み取られた原稿の画像に施す原稿の画像処理条件を変更する条件変更ステップとを有することを特徴とする画像読取方法。
【請求項18】
搬送路に沿って搬送される原稿の厚さに応じて前記搬送路から離れる方向に移動可能となる画像読取手段によって読み取った原稿の画像データを取得するデータ取得ステップと、
前記データ取得ステップにおいて取得した画像データが、原稿の画像領域に対応する原稿領域と、前記原稿領域に続く第1濃度の第1背景領域と、前記第1背景領域に続く領域であって前記第1濃度と異なる第2濃度の第2背景領域とを含む場合に、前記原稿領域とこれに続く前記第1背景領域との境界部分に基づいて原稿サイズを検出する原稿サイズ検出ステップとを有することを特徴とする原稿サイズ検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2013−78059(P2013−78059A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217919(P2011−217919)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】