説明

画像読取装置、画像形成装置、画像処理方法

【課題】原稿から読み取った画像データにおける低周波画像領域のS/Nを向上させると共に、高周波画像領域の画質の劣化を防止することのできる画像読取装置、画像形成装置、及び画像処理方法を提供すること。
【解決手段】副走査方向のライン数が出力解像度に対応する副走査方向のライン数の2倍である画像データを読み取り、奇数ラインの画像データで構成される第1画像データと偶数ラインの画像データで構成される第2画像データとを生成し(S2、S3)、その第1画像データ及び第2画像データにおける同一位置の画像データを予め設定された領域ごとに比較する(S4〜S5)。そして、画像データの差異が予め設定された閾値未満の領域には第1画像データ及び第2画像データを平均化した画像データを用い(S7)、画像データの差異が前記閾値以上の領域には第1画像データ又は第2画像データを用いて(S6)、第3画像データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿から画像データを読み取る画像読取装置に関し、特に、読み取られた画像データを2ラインごとに平均化してS/N(信号雑音比)の改善を図る技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、原稿に光を照射したときの反射光をCCD等の光電変換素子で受光して電気信号に変換することにより原稿から画像データを読み取る画像読取装置が知られている。この種の画像読取装置では、原稿及び光源が副走査方向に相対的に移動している間に1ラインずつ画像データが読み取られる。また、例えば特許文献1には、読み取られた画像データを副走査方向の2ラインごとに平均化してS/Nを高めることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−358139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、画像読取装置で原稿から画像データが読み取られるとき、原稿及び光源は相対的に移動している。そのため、ラインごとの画像データには副走査方向に若干の位置ずれが生じる。従って、読み取られた画像データを2ラインごとに平均化するとS/Nは改善されるが、画質が劣化するという問題が生じる。特に、原稿の画像データに画素間の画像変化が大きい高周波画像領域が存在する場合に、その高周波画像領域について2ラインの画像データを平均化すると画質の劣化が顕著に現れる。
従って、本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、原稿から読み取った画像データにおける低周波画像領域のS/Nを向上させると共に、高周波画像領域の画質の劣化を防止することのできる画像読取装置、画像形成装置、及び画像処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために本発明は、以下の(1)〜(4)の構成要素を備える画像読取装置として構成される。
(1)副走査方向のライン数が出力解像度に対応する副走査方向のライン数の2倍である画像データを原稿から読み取る画像読取手段。
(2)前記画像読取手段で読み取られた前記画像データの奇数ラインの画像データで構成される第1画像データを生成する第1画像データ生成手段。
(3)前記画像読取手段で読み取られた前記画像データの偶数ラインの画像データで構成される第2画像データを生成する第2画像データ生成手段。
(4)前記第1画像データ及び前記第2画像データにおける同一位置の画像データを予め設定された領域ごとに比較し、前記画像データの差異が予め設定された閾値未満の領域には前記第1画像データ及び前記第2画像データを平均化した画像データを用い、前記画像データの差異が前記閾値以上の領域には前記第1画像データ又は前記第2画像データを用いた第3画像データを生成する第3画像データ生成手段。
本発明によれば、前記第1画像データ及び前記第2画像データの差異が前記閾値未満であり低周波画像領域のように画像変化の小さい領域については前記第1画像データ及び前記第2画像データを平均化することによりS/Nが向上する。また、前記第1画像データ及び前記第2画像データの差異が前記閾値以上であり高周波画像領域のように画像変化の大きい領域については、前記第1画像データ及び前記第2画像データを平均化することなく前記第1画像データ又は前記第2画像データをそのまま用いることで画質の劣化が防止される。
例えば、前記第3画像データ生成手段は、前記画像データの差異が予め設定された第1閾値未満の領域及び前記画像データの差異が前記第1閾値より高い予め定められた第2閾値以上の領域には前記第1画像データ及び前記第2画像データを平均化した画像データを用い、前記画像データの差異が前記第1閾値以上前記第2閾値未満の領域には前記第1画像データ又は前記第2画像データを用いて前記第3画像データを生成するものである。
これにより、前記第1画像データ及び前記第2画像データの差異が前記第1閾値以上前記第2閾値未満の画像領域では画質の劣化を防止することができる。一方、前記第1画像データ及び前記第2画像データの差異が前記第1閾値未満の画像領域及び前記第2閾値以上の画像領域ではS/Nを向上させることができる。従って、前記第1閾値及び前記第2閾値を予め任意に設定することにより、所望の周波数帯域の画像領域について画質の劣化防止及びS/Nの向上のいずれかを優先して実現させることが可能となる。
【0006】
ところで、本発明は、画像形成装置の発明として捉えてもよい。即ち、本発明は、以下の(11)〜(15)の構成要素を備える画像形成装置として捉えることができる。
(11)副走査方向のライン数が出力解像度に対応する副走査方向のライン数の2倍である画像データを原稿から読み取る画像読取手段。
(12)前記画像読取手段で読み取られた前記画像データの奇数ラインの画像データで構成される第1画像データを生成する第1画像データ生成手段。
(13)前記画像読取手段で読み取られた前記画像データの偶数ラインの画像データで構成される第2画像データを生成する第2画像データ生成手段。
(14)前記第1画像データ及び前記第2画像データにおける同一位置の画像データを予め設定された領域ごとに比較し、前記画像データの差異が予め設定された閾値未満の領域には前記第1画像データ及び前記第2画像データを平均化した画像データを用い、前記画像データの差異が前記閾値以上の領域には前記第1画像データ又は前記第2画像データを用いた第3画像データを生成する第3画像データ生成手段。
(15)第3画像データ生成手段で生成された前記第3画像データに基づいて画像を形成する画像形成手段。
このように構成された前記画像形成装置によれば、原稿から読み取った画像データにおける低周波画像領域のS/Nを向上させると共に、高周波画像領域の画質の劣化を防止した前記第3画像データに基づく画像形成が実現される。
【0007】
さらに、本発明は、画像処理方法の発明として捉えてもよい。即ち、本発明は、以下の(21)〜(23)の処理工程を実行する画像処理方法として捉えることができる。
(21)副走査方向のライン数が出力解像度に対応する副走査方向のライン数の2倍である画像データを原稿から読み取る画像読取手段で読み取られた前記画像データの奇数ラインの画像データで構成される第1画像データを生成する第1画像データ生成工程。
(22)前記画像読取手段で読み取られた前記画像データの偶数ラインの画像データで構成される第2画像データを生成する第2画像データ生成工程。
(23)前記第1画像データ及び前記第2画像データにおける同一位置の画像データを予め設定された領域ごとに比較し、前記画像データの差異が予め設定された閾値未満の領域には前記第1画像データ及び前記第2画像データを平均化した画像データを用い、前記画像データの差異が前記閾値以上の領域には前記第1画像データ又は前記第2画像データを用いた第3画像データを生成する第3画像データ生成工程。
このように構成された前記画像処理方法によれば、原稿から読み取った画像データにおける低周波画像領域のS/Nを向上させると共に、高周波画像領域の画質の劣化を防止した前記第3画像データを生成することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、原稿から読み取った画像データにおける低周波画像領域のS/Nを向上させると共に、高周波画像領域の画質の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係るスキャナーXの概略構成を示す模式図。
【図2】本発明の実施例に係るスキャナーXの制御部50の概略構成を示すブロック図。
【図3】本発明の実施の形態に係るスキャナーXで実行される画像データ生成処理の手順の一例を説明するためのフローチャート。
【図4】画像データ生成処理における画像生成過程の一例を説明するための概念図。
【図5】画像データ生成処理の手順の他の例を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
まず、図1を参照しつつ、本発明の実施の形態に係るスキャナーX(画像読取装置の一例)の概略構成について説明する。
図1に示すように、前記スキャナーXは、大別すると装置本体1及び前記装置本体1の上方に配置されたADF(自動原稿送り装置)2を備えている。なお、前記ADF2を有さない所謂フラットベッドスキャナーと称される画像読取装置も本発明に係る画像読取装置の一例である。
ところで、本発明は、前記スキャナーXを備えた、或いは前記スキャナーXと同様の画像読取機能を有する複写機、ファクシミリ装置、プリンター、及び複合機などの画像形成装置にも適用することができる。この場合、前記画像形成装置では、前記スキャナーX又は前記画像読取機能によって読み取られた画像データに基づいて画像を形成(印刷)する画像形成処理が実行される。
【0011】
前記装置本体1は、コンタクトガラス21、読取ユニット23、ミラー43、44、光学レンズ45、CCD(Charge Coupled Device)46、及び制御部50などを備えている。
前記コンタクトガラス21は、前記装置本体1の上面に設けられており、前記スキャナーXの画像読取対象となる原稿Pが載置される透明な原稿台である。
前記読取ユニット23は、LED光源41及びミラー42を備えており、ステッピングモーター等の駆動モーター25(図2参照)によって図1における左右方向(以下「副走査方向」という)へ移動可能に構成されている。なお、前記読取ユニット23の移動機構は従来周知の構造を採用すればよいためここでは説明を省略する。
【0012】
前記LED光源41は、図1において奥行き方向(以下「主走査方向」という)に沿って配列された多数の白色LEDを備えており、前記コンタクトガラス21上の読取位置22にある原稿P又は後述の原稿押さえ15に1ライン分の白色光を照射する。前記読取位置22は、前記読取ユニット23が副走査方向に移動することにより副走査方向に移動することになる。
前記ミラー42は、前記LED光源41から前記読取位置22にある原稿P又は後述の原稿押さえ15に光を照射したときの反射光を前記ミラー43に向けて反射させる。そして、前記ミラー42で反射した光は、前記ミラー43、44によって前記光学レンズ45に導かれる。前記光学レンズ45は、入射した光を集光して前記CCD46に入射させる。
前記CCD46は、受光した光をその光量に応じた電気信号(電圧)に変換する光電変換素子(撮像素子)であり、前記原稿Pなどから反射した光を受光して1ラインごとに画像データを読み取る。前記CCD46で読み取られた画像データは前記制御部50に入力される。なお、本実施の形態では、光電変換素子として前記CCD46を用いた例について説明するが、前記CCD46よりも焦点距離の短い密着型のイメージセンサー(CIS:Contact Image Sensor)を用いてもよい。
【0013】
一方、前記ADF2は、原稿セット部13、複数の搬送ローラー14、原稿押さえ15、及び排紙部16などを備えている。前記ADF2は、前記搬送ローラー14各々を不図示のモーターで駆動させることにより、前記原稿セット部13にセットされた原稿Pを前記コンタクトガラス21上の読取位置22を通過させて前記排紙部16まで搬送させる。
前記原稿押さえ15は、前記コンタクトガラス21上の読取位置22の上方に原稿Pが通過できる間隔を隔てた位置に設けられている。前記原稿押さえ15は、主走査方向に長尺状を成しており、その下面(コンタクトガラス21側の面)には白色のシートが貼り付けられている。前記スキャナーXでは、前記白色のシートの画像データが白色基準データとして読み取られる。そして、前記白色基準データは、周知のシェーディング補正などで用いられる。
【0014】
続いて、図2のブロック図を参照しつつ、前記制御部50について説明する。
図2に示すように、前記制御部50は、CPU51、ROM52、RAM53、クロックジェネレーター54、CDS55、AGC56、ADC57、ASIC58、DSP59、及び画像メモリー60などを備えている。なお、前記制御部50全体が集積回路(ASIC)などの電子回路で構成されたものであってもよい。
前記ROM52には、所定の制御プログラム及び各種パラメーターが記憶されている。前記CPU51は、前記ROM52に格納された所定の制御プログラムに従った処理を実行することにより前記スキャナーXを統括的に制御する。具体的に、前記CPU51は、前記スキャナーXの各構成要素を制御することにより原稿Pからカラー又はモノクロの画像データを読み取る画像読取処理を前記スキャナーXに実行させる。前記RAM53は、前記CPU51で実行される各種の処理の一次記憶領域(作業領域)として利用される。
【0015】
前記クロックジェネレーター54は、前記CPU51からの制御指令により予め個別に定められる周期のクロック信号を複数生成して出力する。具体的に、前記クロックジェネレーター54は、モーター駆動信号C1及び水平同期信号C2を生成する。前記モーター駆動信号C1は前記モータードライバー24に入力され、前記水平同期信号C2は前記CCD46に入力される。
前記モータードライバー24は、前記クロックジェネレーター54から入力される前記モーター駆動信号C1に従って前記駆動モーター25の駆動を制御することにより、前記読取ユニット23を副走査方向に移動させる。これにより、前記読取ユニット23のLED光源41が原稿Pに対して副走査方向に相対的に移動することになる。このとき、前記駆動モーター25の回転速度、即ち前記読取ユニット23の副走査方向の移動速度は、前記クロックジェネレーター54から入力される前記モーター駆動信号C1の周期によって変化する。
前記CCD46は、前記クロックジェネレーター54から入力される前記水平同期信号C2に従って1ライン分の画像データの読み取りを実行する。具体的に、前記CCD46は、前記水平同期信号C2の1周期ごとに蓄積された光量に応じて1ライン分の画像データを出力する。
【0016】
前記CDS55は、前記CCD46から入力される画像データについて、相関二重サンプリング法などに基づくノイズ除去処理を実行する電気回路である。前記CDS55でノイズが除去された画像データは、前記AGC56に入力される。
前記AGC56は、前記CDS55から入力された画像データを予め設定された増幅率(ゲイン)に従って増幅させるゲインコントロールアンプである。前記AGC56による増幅後の画像データは前記ADC57に入力される。
前記ADC57は、前記AGC56から入力されたアナログ信号の画像データをデジタル信号に変換するADコンバーターである。前記ADC57でデジタル化された画像データは前記ASIC58に入力される。
前記ASIC58は、後述の画像データ生成処理(図3参照)を実行することにより画像データを生成する集積回路であって、その生成した画像データを前記DSP59に入力する。
前記DSP59は、前記ASIC58から入力された画像データに対して各種の画像処理を施す信号処理プロセッサーである。例えば、前記DSP59は、前記ASIC58から入力されたRGBデータをYUVデータに変換する信号変換処理を実行する。前記DSP59で信号処理が施された後の画像データは、前記画像メモリー60に記憶される。
前記画像メモリー60は、前記スキャナーXで読み取られる画像データを蓄積記憶するハードディスクや半導体メモリーなどの記憶手段である。前記画像メモリー60に記憶された画像データは、例えばネットワーク接続された不図示のパーソナルコンピューター等の外部装置に転送され、或いは電話回線を通じてファクシミリ送信される。また、前記スキャナーXが複写機又は複合機などの画像形成装置に搭載される場合、その画像形成装置では、前記画像メモリー60に記憶された画像データに基づく画像形成処理が実行される。
【0017】
<動作モード>
このように構成された前記スキャナーXは、原稿Pから画像データを読み取る画像読取処理の動作モードとして通常モード及び高画質モードを有している。そして、前記CPU51は、予め選択された前記通常モード又は前記高画質モードのいずれの動作モードで画像読取処理を実行する。前記通常モード及び前記高画質モードの選択は、初期設定又は画像読取処理の要求時などにおける不図示の操作表示部へのユーザーの操作入力に応じて前記CPU51によって行われる。なお、前記CPU51は、前記通常モード又は前記高画質モードのいずれが選択されているかを前記ASIC58に通知する。
ここに、前記通常モードは、前記スキャナーXから出力する前記原稿Pの画像データの解像度として予め設定された出力解像度(例えば600dpi、1200dpiなど)で画像データを原稿から読み取る動作モードである。一方、前記高画質モードは、副走査方向のライン数が前記出力解像度に対応する副走査方向のライン数の2倍である画像データを原稿から読み取る動作モードである。なお、前記高画質モードの画像読取処理により原稿から読み取られる画像データの主走査方向の画素数は前記出力解像度に対応する画素数である。
具体的に、前記スキャナーXでは、前記通常モードに対応する通常周期T1及び前記高画質モードに対応する低速周期T2が前記ROM52に記憶されている。ここに、前記低速周期T2は前記通常周期T1の2倍の長さである。
そして、前記CPU51は、前記通常モードで画像読取処理を実行する場合、前記クロックジェネレーター54に対して前記通常周期T1で前記モーター駆動信号C1を生成させる。
一方、前記CPU51は、前記高画質モードで画像読取処理を実行する場合、前記クロックジェネレーター54に対して前記低速周期T2で前記モーター駆動信号C1を生成させる。なお、前記水平同期信号C2の周期は前記通常モード及び前記高画質モードで共通である。これにより、前記読取ユニット23の副走査方向への移動速度だけが前記通常モードの1/2に変更されるため、前記CCD46では副走査方向のライン数が前記出力解像度の2倍である画像データが読み取られる。ここに、前記高画質モードの画像読取処理を実行するときの前記CPU51が画像読取手段に相当する。
なお、前記読取ユニット23の移動速度の調整は、前記モーター駆動信号C1の周期の変更に限らない。例えば、前記駆動モーター25が供給電力により速度が変化するものである場合には、前記CPU51が前記駆動モーター25への供給電力を変化させることにより前記読取ユニット23の移動速度を調整する構成が考えられる。
【0018】
<画像データ生成処理>
そして、前記スキャナーXでは、前記ASIC58により後述の画像データ生成処理(図3参照)が実行される。
以下、図3のフローチャートに従って前記ASIC58で実行される画像データ生成処理について説明する。ここに、S1、S2、・・・は処理手順(ステップ)番号を表している。また、前記画像データ生成処理は、前記CPU51によって実行されてもよい。なお、前記スキャナーXにおいて、前記高画質モードの画像読取処理及び前記画像データ生成処理における各工程を実行する方法が本発明の画像処理方法に相当する。
【0019】
(ステップS1)
まず、ステップS1において、前記ASIC58は、前記スキャナーXにおける画像読取処理の動作モードとして前記高画質モードが選択されているか否かを判断し、処理を分岐する。具体的には、前記CPU51から前記ASIC58に前記通常モード又は前記高画質モードのいずれが選択されているかが通知されており、前記ASIC58はその通知に応じて前記高画質モードの選択であるか否かを判断する。
ここで、前記高画質モードが選択されていないと判断されると(S1のNo側)、処理はステップS11に移行する。ステップS11において、前記ASIC58は、前記CCD46で読み取られた前記出力解像度に対応するライン数の画像データをそのまま前記DSP59に出力する。
一方、前記高画質モードが選択されていると判断されると(S1のYes側)、処理はステップS2に移行する。そして、ステップS2〜S8では、前記高画質モードの画像読取処理で読み取られ、副走査方向のライン数が前記出力解像度の2倍である画像データに基づいて後述の第3画像データが生成される。ここに、係る処理を実行するときの前記ASIC58が第3画像データ生成手段に相当する。
【0020】
(ステップS2〜S3)
ステップS2において、前記ASIC58は、前記高画質モードの画像読取処理で読み取られ、副走査方向のライン数が前記出力解像度の2倍である画像データ(図4(A)参照)の奇数ラインの画像データで構成される第1画像データを生成する(図4(B)参照)。ここに、係る処理を実行するときの前記ASIC58が第1画像データ生成手段に相当する。
また、ステップS3において、前記ASIC58は、前記高画質モードの画像読取処理で読み取られ、副走査方向のライン数が前記出力解像度の2倍である画像データ(図4(A)参照)の偶数ラインの画像データで構成される第2画像データを生成する(図4(C)参照)。ここに、係る処理を実行するときの前記ASIC58が第2画像データ生成手段に相当する。
このように、前記ASIC58では、前記高画質モードの画像読取処理で読み取られた原稿Pの画像データから、副走査方向のライン数が前記出力解像度に対応するライン数と同じである2枚の画像が作成される。但し、ここで作成される2枚の画像は、前記読取ユニット23の副走査方向の移動中に読み取られたものであるため、相互間には副走査方向に若干の位置ずれが生じている。
【0021】
(ステップS4)
続いて、ステップS4において、前記ASIC58は、前記第1画像データ及び前記第2画像データにおける同一位置の画像データを予め設定された領域ごとに比較し、その領域ごとにおける前記第1画像データ及び前記第2画像データの差分値を算出する。このとき、前記ASIC58は、前記第1画像データ及び前記第2画像データを、例えば画素ごと、ラインごと、又は予め設定された所定範囲ごとなどの領域単位で比較する。なお、前記比較をラインごとや所定範囲ごとに行う場合には、例えばそこに含まれる画素各々の画像データの合計値や平均値を比較すればよい。
【0022】
(ステップS5)
そして、ステップS5において、前記ASIC58は、前記ステップS4における比較結果として得られた前記第1画像データ及び前記第2画像データの差異(差分値)が予め設定された閾値以上であるか否かを判断し、処理を分岐する。
前記閾値は、前記第1画像データ及び前記第2画像データの比較箇所について平均化を行った場合に画質の低下が大きいか否かを判断するために予め定められた値である。具体的に、ベタ画像のように画素間の画像変化が緩やかな低周波画像領域よりも、画素間の画像変化が急な高周波画像領域の方が平均化による画質の劣化が目立つ。そのため、前記閾値は、前記低周波画像領域又は前記高周波画像領域のいずれであるかを判定するために予め定められた値である。
ここで、前記差異が前記閾値以上であると判断された場合(S5のYes側)、処理はステップS6に移行し、前記差異が前記閾値以上ではないと判断された場合(S5のNo側)、処理はステップS7に移行する。
【0023】
(ステップS6)
前記差異が前記閾値以上であると判断された場合(S5のYes側)、ステップS6において、前記ASIC58は、出力する第3画像データのうち前記ステップS4で比較の対象となった領域の画像データとして前記第1画像データをそのまま採用する。例えば、前記第1画像データ及び前記第2画像データを画素単位で比較した場合には、その画素について前記第1画像データを採用する。一方、前記第1画像データ及び前記画像データをラインごと又は所定範囲ごとに比較した場合には、そのライン又は所定範囲の単位で前記第1画像データを前記第3画像データとして採用すればよい。なお、前記ステップS6で採用する画像データは前記第1画像データ又は前記第2画像データのいずれかであってもよい。また、前記ASIC58が、原則として前記第1画像データを採用しつつ、前記第1画像データに静電気等の外乱の影響でデータの欠落が生じている場合にその欠落箇所を前記第2画像データで補完する構成も他の実施例として考えられる。
このように、前記ステップS6では前記第1画像データ又は前記第2画像データのいずれか一方が前記第3画像データとして採用されるため、高周波画像領域における画質の低下が防止される。
【0024】
(ステップS7)
一方、前記差異が前記閾値以上ではないと判断された場合(S5のNo側)、ステップS7において、前記ASIC58は、前記第1画像データ及び前記第2画像データを平均化した画像データを生成し、その画像データを前記第3画像データのうち前記ステップS4で比較の対象となった領域の画像データとして採用する。具体的に、前記第1画像データ及び前記第2画像データの平均化は画素単位で行われる。
このように、前記ステップS7では前記第1画像データ及び前記第2画像データが平均化されるため、低周波画像領域についてS/Nを高めることができる。
【0025】
(ステップS8〜S9)
その後、前記ステップS4〜S7の処理は、前記第1画像データ及び前記第2画像データの全ての領域についての比較が終了するまで繰り返される(S8のNo側)。一方、全ての領域についての比較が終了して原稿1枚分の前記第3画像データが生成されると、処理はステップS9に移行する。ステップS9において、前記ASIC58は、前記ステップS4〜S7で生成された前記第3画像データを前記DSP59に出力する。
【0026】
以上説明したように、前記スキャナーXでは、読み取った原稿の画像データとして出力する前記第3画像データのうち低周波画像領域については前記第1画像データ及び前記第2画像データの平均化によりS/Nを向上させることができ、高周波画像領域については前記平均化を行わずに前記第1画像データ又は前記第2画像データをそのまま採用することにより画質の劣化を防止することができる。
なお、本実施の形態では、前記CPU51が前記通常モード及び前記高画質モードのいずれかを選択的に実行する場合を例に挙げて説明したが、前記CPU51が常に前記高画質モードで画像読取処理を実行する構成も他の実施例として考えられる。
また、本実施の形態では、前記読取ユニット23を前記駆動モーター25で移動させる構成について説明した。一方、例えば前記ADF2により前記原稿Pを搬送することにより、前記原稿Pと前記LED光源41とを相対的に移動させる場合にも同様に適用可能である。この場合、前記高画質モードの画像読取処理では、前記ADF2による前記原稿Pの搬送速度が前記通常モードの1/2に変更される。
【0027】
<画像データ生成処理の他の例>
ところで、前記画像データ生成処理(図3参照)では、前記ステップS5において一つの閾値により前記第1画像データ及び前記第2画像データの平均化の有無を判断する場合について説明した。
一方、前記第1画像データ及び前記第2画像データの差異が極端に大きい場合には、いずれか一方の画像に大きなノイズが生じていると考えられる。この場合、そのノイズが発生しているおそれのある前記第1画像データ又は前記第2画像データのいずれか一方を採用すると却って画質が劣化するおそれがある。
そこで、図5を参照しつつ前記画像データ生成処理の他の例について説明する。ここに、図5は前記画像データ生成処理の手順の他の例を示すフローチャートである。なお、図3に示した前記画像データ生成処理と同様の処理手順には同じ符号を付してその説明を省略する。
具体的に図5に示す画像データ生成処理では、図3に示す画像データ生成処理における前記ステップS5の処理に代えて、下記のステップS51及びステップS52の処理が前記ASIC58によって実行される。
【0028】
(ステップS51)
まず、ステップS51において、前記ASIC58は、前記ステップS4の比較の結果、前記第1画像データ及び前記第2画像データの差異が予め設定された第1閾値以上であるか否かを判断して処理を分岐する。なお、前記第1閾値は、例えば前記ステップS5(図3参照)の閾値と同じ値である。
ここで、前記差異が前記第1閾値以上でないと判断された場合には(S51のNo側)、処理は前記ステップS7に移行するが、前記差異が前記第1閾値以上であると判断された場合には(S51のYes側)、処理はステップS52に移行する。
【0029】
(ステップS52)
そして、ステップS52において、前記ASIC58は、前記ステップS4の比較の結果、前記第1画像データ及び前記第2画像データの差異が予め設定された第2閾値以上であるか否かを判断して処理を分岐する。なお、前記第2閾値は、少なくとも前記第1閾値より大きい値であって、前記第1画像データ又は前記第2画像データのいずれかに大きなノイズが発生している可能性が高いと推測できる値として予め設定された値である。
ここで、前記差異が前記第2閾値以上でないと判断された場合には(S52のNo側)、処理は前記ステップS6に移行し、前記差異が前記第2閾値以上であると判断された場合には(S52のYes側)、処理は前記ステップS7に移行する。
即ち、前記差異が前記第1閾値未満である場合のみならず、前記差異が前記第2閾値以上である場合(S52のYes側)にも、前記ステップS7において前記第1画像データ及び前記第2画像データを平均化した画像データが前記第3画像データとして採用されることになる。これにより、前記第1画像データ又は前記第2画像データのいずれかで大きなノイズが発生している場合でも、前記第3画像データではノイズの影響を軽減して画質を向上させることができる。
なお、前記差異が前記第1閾値以上であり前記第2閾値未満である場合には、前記ステップS6において前記第1画像データ又は前記第2画像データが前記第3画像データとして採用されることになる。そのため、前記第3画像データでは、前記第1画像データ及び前記第2画像データを平均化した画像データを採用する場合に生じる画質の劣化は防止される。
【符号の説明】
【0030】
1 :装置本体
13:原稿セット部
14:搬送ローラー
15:原稿押さえ
16:排紙部
2 :ADF
21:コンタクトガラス
22:読取位置
23:読取ユニット
24:モータードライバー
25:駆動モーター
41:LED光源
42〜44:ミラー
45:光学レンズ
46:CCD
50:制御部
51:CPU
52:ROM
53:RAM
54:クロックジェネレーター
55:CDS
56:AGC
57:ADC
58:ASIC
59:DSP
60:画像メモリー
X :スキャナー(画像読取装置の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
副走査方向のライン数が出力解像度に対応する副走査方向のライン数の2倍である画像データを原稿から読み取る画像読取手段と、
前記画像読取手段で読み取られた前記画像データの奇数ラインの画像データで構成される第1画像データを生成する第1画像データ生成手段と、
前記画像読取手段で読み取られた前記画像データの偶数ラインの画像データで構成される第2画像データを生成する第2画像データ生成手段と、
前記第1画像データ及び前記第2画像データにおける同一位置の画像データを予め設定された領域ごとに比較し、前記画像データの差異が予め設定された閾値未満の領域には前記第1画像データ及び前記第2画像データを平均化した画像データを用い、前記画像データの差異が前記閾値以上の領域には前記第1画像データ又は前記第2画像データを用いた第3画像データを生成する第3画像データ生成手段と、
を備えてなる画像読取装置。
【請求項2】
前記第3画像データ生成手段は、前記画像データの差異が予め設定された第1閾値未満の領域及び前記画像データの差異が前記第1閾値より高い予め定められた第2閾値以上の領域には前記第1画像データ及び前記第2画像データを平均化した画像データを用い、前記画像データの差異が前記第1閾値以上前記第2閾値未満の領域には前記第1画像データ又は前記第2画像データを用いて前記第3画像データを生成するものである請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
副走査方向のライン数が出力解像度に対応する副走査方向のライン数の2倍である画像データを原稿から読み取る画像読取手段と、
前記画像読取手段で読み取られた前記画像データの奇数ラインの画像データで構成される第1画像データを生成する第1画像データ生成手段と、
前記画像読取手段で読み取られた前記画像データの偶数ラインの画像データで構成される第2画像データを生成する第2画像データ生成手段と、
前記第1画像データ及び前記第2画像データにおける同一位置の画像データを予め設定された領域ごとに比較し、前記画像データの差異が予め設定された閾値未満の領域には前記第1画像データ及び前記第2画像データを平均化した画像データを用い、前記画像データの差異が前記閾値以上の領域には前記第1画像データ又は前記第2画像データを用いた第3画像データを生成する第3画像データ生成手段と、
前記第3画像データ生成手段で生成された前記第3画像データに基づいて画像を形成する画像形成手段と、
を備えてなる画像形成装置。
【請求項4】
副走査方向のライン数が出力解像度に対応する副走査方向のライン数の2倍である画像データを原稿から読み取る画像読取手段で読み取られた前記画像データの奇数ラインの画像データで構成される第1画像データを生成する第1画像データ生成工程と、
前記画像読取手段で読み取られた前記画像データの偶数ラインの画像データで構成される第2画像データを生成する第2画像データ生成工程と、
前記第1画像データ及び前記第2画像データにおける同一位置の画像データを予め設定された領域ごとに比較し、前記画像データの差異が予め設定された閾値未満の領域には前記第1画像データ及び前記第2画像データを平均化した画像データを用い、前記画像データの差異が前記閾値以上の領域には前記第1画像データ又は前記第2画像データを用いた第3画像データを生成する第3画像データ生成工程と、
を実行する画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−98674(P2013−98674A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238254(P2011−238254)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】