説明

画像読取装置およびその制御方法

【課題】地紋認識ユニットが装着されている場合には、常に地紋パターンを検出することができる画像読取装置およびその制御方法を提供すること目的とする。
【解決手段】原稿画像を読み取って得た画像データから所定の地紋パターンを認識する地紋認識ユニットを着脱可能な画像読取装置において、システム起動時、前記地紋認識ユニットが装着されていることを検出すると、原稿読取下限変倍率を、前記地紋認識ユニットが地紋パターンを認識可能な変倍率の値以上に設定するようにした。地紋認識ユニットが装着されている時、地紋パターンが認識できない変倍率での原稿読取動作を無効にし、ユーザーの操作に関係なく、自動で、地紋が印刷された用紙がスキャナで読み取れないという事態を回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿画像を読み取って得た画像データから所定の地紋パターンを認識する地紋認識ユニットを着脱可能な画像読取装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報漏洩やセキュリティが企業の問題となっている。その対策として、機器自体に操作制限をかけたり、原稿自体に地紋などを入れ、複製データを作らせないようなもの、すなわち、不正コピー抑制機能を備えた機器などが考えられている。
【0003】
例えば、画像読取り手段により読み取った原稿画像に、記録紙への印刷または当該画像にかかる画像データの他の装置への転送を禁じるためのパターンが形成されている場合に、当該印刷または転送を禁じるか否かを検出するに際して、検出動作を管理者が望む形で行わせることができる画像処理装置が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−200897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、所定の地紋パターンが印刷された用紙はスキャナで読み取れないようにするため、特定の画素当たりで地紋パターンを認識するようにしており、地紋パターン認識には認識可能な変倍率があり、この変倍率未満では地紋パターンの認識ができない。
【0005】
このため、変倍率が任意の小さい値に設定されると、地紋認識ユニットを装着していても、地紋パターンを適切に検出することができず、装置の機能を十分に発揮できないという問題を生じるおそれがあった。
【0006】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、地紋認識ユニットが装着されている場合には、常に地紋パターンを検出することができる画像読取装置およびその制御方法を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、原稿画像を読み取って得た画像データから所定の地紋パターンを認識する地紋認識ユニットを着脱可能な画像読取装置において、システム起動時、前記地紋認識ユニットが装着されていることを検出すると、原稿読取下限変倍率を、前記地紋認識ユニットが地紋パターンを認識可能な変倍率の値以上に設定するようにしたものである。また、システム起動時、前記地紋認識ユニットが装着されていることを検出しなかった場合には、前記原稿読取下限変倍率を、画像読取手段に設定可能な下限変倍率に設定するようにしたものである。また、さらに、変倍モードが選択操作されたときに、最初に選択状態に設定する優先変倍率を設定する優先変倍率設定手段を備え、前記優先変倍率設定手段に設定されている優先変倍率が、前記原稿読取下限変倍率よりも小さい場合、前記優先変倍率を、前記原稿読取下限変倍率に再設定するようにしたものである。また、さらに、変倍モードが選択操作されたときに、最初に選択状態に設定する優先変倍率を設定する優先変倍率設定手段を備え、前記優先変倍率設定手段に設定されている優先変倍率が、前記原稿読取下限変倍率よりも小さい場合、前記優先変倍率を、前記原稿読取下限変倍率に再設定するとともに、変倍モードで設定可能な変倍率を、前記原稿読取下限変倍率以上に制限するようにしたものである。また、さらに、任意のモードを登録可能なプログラム登録手段を備え、前記プログラム登録手段に登録されている変倍率が、前記原稿読取下限変倍率よりも小さい場合、当該登録変倍率を、前記原稿読取下限変倍率に再設定するようにしたものである。
【0008】
また、原稿画像を読み取って得た画像データから所定の地紋パターンを認識する地紋認識ユニットを着脱可能な画像読取装置の制御方法において、システム起動時、前記地紋認識ユニットが装着されていることを検出すると、原稿読取下限変倍率を、前記地紋認識ユニットが地紋パターンを認識可能な変倍率の値以上に設定するようにしたものである。また、システム起動時、前記地紋認識ユニットが装着されていることを検出しなかった場合には、前記原稿読取下限変倍率を、画像読取手段に設定可能な下限変倍率に設定するようにしたものである。また、さらに、変倍モードが選択操作されたときに、最初に選択状態に設定する優先変倍率を設定する優先変倍率設定手段を備え、前記優先変倍率設定手段に設定されている優先変倍率が、前記原稿読取下限変倍率よりも小さい場合、前記優先変倍率を、前記原稿読取下限変倍率に再設定するようにしたものである。また、さらに、変倍モードが選択操作されたときに、最初に選択状態に設定する優先変倍率を設定する優先変倍率設定手段を備え、前記優先変倍率設定手段に設定されている優先変倍率が、前記原稿読取下限変倍率よりも小さい場合、前記優先変倍率を、前記原稿読取下限変倍率に再設定するとともに、変倍モードで設定可能な変倍率を、前記原稿読取下限変倍率以上に制限するようにしたものである。また、さらに、任意のモードを登録可能なプログラム登録手段を備え、前記プログラム登録手段に登録されている変倍率が、前記原稿読取下限変倍率よりも小さい場合、当該登録変倍率を、前記原稿読取下限変倍率に再設定するようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
したがって、本発明によれば、地紋認識ユニットが装着されている時、地紋パターンが認識できない変倍率での原稿読取動作を無効にし、ユーザーの操作に関係なく、自動で、地紋が印刷された用紙がスキャナで読み取れないという事態を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施例にかかるネットワークシステムを示している。
【0012】
同図において、ローカルエリアネットワークLANには、複数のワークステーション装置WS1〜WSn、メールサーバ装置SM、および、ネットワーク対応複合機MFPが接続されているとともに、ルータ装置RTを介してインターネットへ接続されている。したがって、ワークステーション装置WS1〜WSn、メールサーバ装置SM、および、ネットワーク対応複合機MFPは、インターネットを介し、他の適宜な端末装置との間でデータをやりとりすることができる。
【0013】
ここで、メールサーバ装置SMは、ローカルエリアネットワークLANに接続されているワークステーション装置WS1〜WSnを利用するユーザ、および、ネットワークネットワーク対応複合機MFPに対して、周知の電子メールの収集および配布のサービスを提供するものである。
【0014】
また、ワークステーション装置WS1〜WSnには、ファクシミリ画情報を作成および表示出力するファクシミリアプリケーションソフトウェア、および、ローカルエリアネットワークLANを介して種々のデータのやりとりを行うための種々のソフトウェアなどの種々のプログラムが導入されており、特定のユーザにより使用されるものである。ここで、特定のユーザは、一人または複数人のユーザであってよい。
【0015】
また、ネットワーク対応複合機MFPは、読み取り原稿の複写物を記録出力する複写機能、ローカルエリアネットワークLANを介してワークステーション装置WS1〜WSnからの印刷要求を受け付けて印刷動作を行うネットワーク対応プリント機能(いわゆる、ネットワークプリント機能)、読み取り原稿の画像データを指定されたメールアドレスへ電子メールを用いて送信するスキャン・ツー・イーメール機能、画情報や各種レポートなどを電子メールとしてやりとりするための電子メール処理機能、および、アナログ公衆回線網PSTNに接続し、この公衆網を伝送路として用いてグループ3ファクシミリ伝送手順による画情報伝送を行うファクシミリ通信機能などを備えている。また、読み取り原稿を読み取って得た画像データに所定の地紋パターンを検出すると、その画像データに所定の無効化処理を適用する不正コピー抑制機能も備えている。
【0016】
図2は、ネットワーク対応複合機MFPの構成例を示している。
【0017】
同図において、システム制御部1は、このネットワーク対応複合機MFPの各部の制御処理、複写機能、ネットワーク対応プリント機能、スキャン・ツー・イーメール機能、電子メール処理機能、および、ファクシミリ通信機能などの各種制御処理を行うものであり、システムメモリ2は、システム制御部1が実行する制御処理プログラム、および、処理プログラムを実行するときに必要な各種データなどを記憶するとともに、システム制御部1のワークエリアを構成するものであり、パラメータメモリ3は、このネットワーク対応複合機MFPに固有な各種の情報を記憶するためのものであり、時計回路4は、現在時刻情報を出力するものである。
【0018】
スキャナ5は、所定の解像度で原稿画像を読み取るためのものであり、プロッタ6は、所定の解像度で画像を記録出力するためのものであり、操作表示部7は、このネットワーク対応複合機MFPを操作するためのもので、各種の操作キー、および、各種の表示器からなる。また、ブザー8は、操作音や各種警告音(強注意音を含む)を鳴動動作するためのものである。
【0019】
符号化復号化部9は、画信号を符号化圧縮するとともに、符号化圧縮されている画情報を元の画信号に復号化するためのものであり、画像蓄積装置10は、符号化圧縮された状態の画情報を多数記憶するためのものである。
【0020】
グループ3ファクシミリモデム11は、グループ3ファクシミリのモデム機能を実現するためのものであり、伝送手順信号をやりとりするための低速モデム機能(V.21モデム)、および、おもに画情報をやりとりするための高速モデム機能(V.17モデム、V.34モデム、V.29モデム、V.27terモデムなど)を備えている。
【0021】
網制御装置12は、このネットワーク対応複合機MFPをアナログ公衆回線網PSTNに接続するためのものであり、自動発着信機能を備えている。
【0022】
ローカルエリアネットワークインターフェース回路13は、このネットワーク対応複合機MFPをローカルエリアネットワークLANに接続するためのものであり、ローカルエリアネットワーク伝送制御部14は、ローカルエリアネットワークLANを介して、他のデータ端末装置との間で種々のデータをやりとりするための各種所定のプロトコルスイートの通信制御処理を実行するためのものである。
【0023】
地紋認識ユニット15は、読み取り画像データ中に含まれている所定の地紋パターンを認識するためのものであり、装置本体に着脱可能に設けられている。すなわち、この地紋認識ユニット15は、ネットワーク対応複合機MFPに「不正コピー防止機能」というオプション機能を追加するためのオプションユニットである。
【0024】
これらの、システム制御部1、システムメモリ2、パラメータメモリ3、時計回路4、スキャナ5、プロッタ6、操作表示部7、符号化復号化部9、画像蓄積装置10、グループ3ファクシミリモデム11、網制御装置12、ローカルエリアネットワーク伝送制御部14、および、地紋認識ユニット15は、内部バス16に接続されており、これらの各要素間でのデータのやりとりは、主としてこの内部バス16を介して行われている。
【0025】
また、網制御装置11とグループ3ファクシミリモデム10との間のデータのやりとりは、直接行なわれている。
【0026】
ここで、本実施例において、基本的には、ローカルエリアネットワークLANに接続されている端末相互間でのデータのやりとりは、いわゆるTCP/IPと呼ばれるトランスポートレイヤまでの伝送プロトコルと、それ以上の上位レイヤの通信プロトコルとの組み合わせ(いわゆるプロトコルスイート)が適用して行われる。例えば、電子メールのデータのやりとりでは上位レイヤの通信プロトコルとしてSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)という通信プロトコルが適用される。
【0027】
図3は、操作表示部7の構成の一例を示している。
【0028】
同図において、スタートキー7aは、このネットワーク対応複合機MFPの送受信動作等の開始を指令入力するためのものであり、ストップキー7bは、このネットワーク対応複合機MFPaの動作の停止を指令入力するためのものであり、テンキー7cは、電話番号などの数字(数値)情報を入力するためのものであり、クリアキー7dは、入力情報を1桁消去するためのものである。
【0029】
モードクリアキー7eは、設定中の内容を初期値に戻す場合に用いられるものであり、初期設定キー7fは、ネットワーク対応複合機MFPの初期設定や管理者用設定の登録を指令するためのものであり、コピーキー7gは、このネットワーク対応複合機MFPを複写機として動作させるための設定キーであり、スキャナキー7hは、このネットワーク対応複合機MFPをスキャナとして動作させるための設定キーであり、プリンターキー7iは、このネットワーク対応複合機MFPをプリンターとして動作させるための設定キーであり、FAXキー7jは、このネットワーク対応複合機MFPをファクシミリ装置として動作させるための設定キーである。
【0030】
また、液晶表示器7kは、このネットワーク対応複合機MFPの操作ガイダンスの表示や、入力情報のフィードバック表示などの種々のメッセージを表示するためのものであり、その画面には、タッチ入力のためのタッチパネルが付設されている(図示略)。
【0031】
また、図4(a)に示すように、システム初期設定情報として、ネットワーク対応複合機MFPの基本的な設定情報を登録するための基本設定、利用可能な用紙等を登録するための用紙設定、ファイルの転送先を登録するためのファイル転送先設定、および、管理者用の設定情報を登録するための管理者用設定情報が設けられており、例えば、パラメータメモリ3に保存される。これらの各設定情報は、ユーザにより、操作表示部7を適宜に操作することで登録される。
【0032】
管理者用設定情報は、例えば、同図(b)に示すように、ログ転送を行うか否かを設定するためのログ転送設定、および、不正コピー抑止を行うか否かを設定するための不正コピー抑止情報が含まれる。
【0033】
この不正コピー抑止情報に、「(不正コピーを抑止)する」旨が登録されている場合で、かつ、地紋認識ユニット15が装着されている場合には、スキャナ5で読み取って得た画像データについて、地紋認識ユニット15の地紋認識処理を適用し、所定の地紋パターンが含まれているか否かの検査を行い、含まれていると判断された場合には、所定の無効化処理を行って、無効化画像データ(後述)を出力する。例えば、複写動作の際には、無効化画像を複写物として記録出力し、スキャン・ツー・イーメール機能が指定されている場合には、指定されたメールアドレスに対して、無効化画像データを添付した電子メールを送信する。なお、スキャン・ツー・イーメール機能の場合には、不正コピー抑止に設定されている原稿を読み取った旨を通知する警告メッセージを本文情報に含めることができる。
【0034】
例えば、図5(a)に示すように、地紋パターンは、用紙の地にランダムドット状の所定態様の孤立点パターンとして記録される。本実施例では、不正コピーを抑制する旨が設定登録されている場合、このような地紋パターンが印刷された原稿用紙の画像を読み取ると、同図(b)に示すように、1ページ分の読み取り画像を無効化画像データに変換して出力する。例えば、複写動作の際には、同図(b)に示したような複写画像を用紙上に記録出力する。また、スキャン・ツー・イーメール動作の場合には、同図(b)に示したような画像データを読み取りデータとして送信する。
【0035】
図6は、地紋認識ユニット15の一例を示している。
【0036】
まず、地紋認識ユニット15は、スキャナ5によって読み取って得られた画像データを二値化した二値化画像データRDを処理する。孤立ドット検出部15aは、主走査方向がdドットで、副走査方向がlドットの矩形のブロック単位(図7(a)参照)に、入力された二値化画像データRDを区切り、それぞれのブロックについて、孤立点が含まれているかどうかを検出するものであり、その出力信号は、位相情報記憶部15bに出力される。
【0037】
位相情報記憶部15bは、図7(b)に示すように、主走査方向がBブロックで副走査方向がLブロックの領域(次のパターンマッチング部15cの処理単位(パターンマッチングブロック))を区切り、それぞれの領域に含まれるブロックについて、孤立ドット検出部15aが孤立点を検出しているかどうかを調べ、その処理結果を、パターンマッチング部15cへ出力する。
【0038】
パターンマッチング部15cは、位相情報記憶部15bの出力結果に基づいて、処理単位となる領域に含まれるブロックのうち、孤立点が検出されているブロックの配置態様を調べ、あらかじめ登録されている地紋パターンに一致するかどうかを検出するものであり、その検出結果を地紋検出部15dへ出力する。
【0039】
地紋検出部15dは、例えば、パターンマッチングブロックの1ライン単位に、パターンマッチング部15cの出力を監視しており、地紋パターンが所定数以上検出された場合に、地紋パターンが記録されていると判断し、その判断結果を信号SSとして出力する。
【0040】
ここで、地紋パターンは、非常に微細な画像であり、したがって、地紋認識ユニット15が地紋パターンを認識するためには、ある一定値以上の原稿読取解像度(以下、「下限読取解像度という」)が必要となる。
【0041】
通常、スキャナ5に固有な読取解像度に変倍率を掛け合わせた値が、ほぼ、原稿読取解像度と等しい値となる。したがって、読取時に指定される変倍率が極端に小さい場合には、原稿読取解像度が、地紋認識ユニット15の下限読取解像度よりも小さくなるという事態を生じ、かかる場合、地紋認識ユニット15は、適切に地紋パターンを認識することができなくなる。
【0042】
そこで、本実施例では、地紋認識ユニット15の下限読取解像度に対応した変倍率を、原稿読取下限変倍率として定め、地紋認識ユニット15が装着されている場合には、読取時の変倍率が、この原稿読取下限変倍率よりも小さくなることを抑制し、それによって、地紋認識ユニット15が常に地紋パターンを認識できるようにしている。
【0043】
ここで、上述したように、スキャナ5の読取解像度は固定値であり、地紋認識ユニット15の下限読取解像度も、それぞれの地紋認識ユニット15に対応して決定されるので、原稿読取下限変倍率の値は、スキャナ5の読取解像度を下限読取解像度で割った値の逆数にほぼ等しい値となる。
【0044】
図8は、ネットワーク対応複合機MFPがシステム起動時に行う処理の一部の一例を示している。
【0045】
まず、システムが起動すると、地紋認識ユニット15が装着されているかどうかを調べ(判断101)、判断101の結果がYESになるときには、システムに登録する原稿読取下限変倍率の値を、地紋認識ユニット15が地紋パターンを認識可能な下限の変倍率(所定値)に設定する(処理102)。ここで、原稿読取下限変倍率の値は、例えば、システム初期設定情報の基本設定の1要素である。
【0046】
また、判断101の結果がNOになるときには、原稿読取下限変倍率の値を、スキャナ5の下限変倍率の値に設定する(処理103)。
【0047】
このようにして、本実施例では、地紋認識ユニット15が装着されている場合には、システムに登録される原稿読取下限変倍率の値を、地紋認識ユニット15が地紋パターンを認識可能な下限の変倍率に設定するので、地紋認識ユニット15は、常に地紋パターン認識動作を行うことができることとなり、セキュリティ上の要請を達成することができる。
【0048】
また、地紋認識ユニット15が装着されていない場合には、システムに登録される原稿読取下限変倍率の値を、スキャナ5が適用可能な下限の変倍率に設定するので、この場合には、スキャナ5の機能を有効に活用することができることとなる。
【0049】
ところで、コピー動作等で縮小モードを選択した場合、いずれかの変倍率を優先縮小率として設定し、例えば、縮小率の値を選択する最初の画面では、設定された優先縮小率の値が選択された状態から開始するようにしている。このような優先縮小率を設定することにより、使用頻度の高い縮小率に設定する際のユーザの操作の手間を軽減することができることとなる。また、この優先縮小率は、例えば、システム初期設定情報の基本設定の1要素として登録されるものである。
【0050】
このような優先縮小率を設定する際には、例えば、図9に示したような画面を液晶表示器7kに表示し、キー群BSaに表示されたいずれかの選択キー(この場合、「25%」、「50%」、「61%」、「71%」、「82%」、「87%」の6種類)をタッチ操作すると、当該タッチ項目が強調表示され、選択された旨が表示される。例えば、この場合には、「25%」が優先縮小率として設定されたものとする。
【0051】
その状態で、「設定」キーをタッチ操作すると、そのときに選択された項目の縮小率の値が、優先縮小率の値として登録される。
【0052】
したがって、例えば、図10に示したコピー動作モードでの待機画面から、変倍キーBSbをタッチ操作すると、図11に示すような縮小モードの画面に切り替わり、優先縮小率の25%が選択された状態で初期表示される。
【0053】
さて、優先縮小率の設定作業は、地紋認識ユニット15の装着の有無にかかわらず行うことができる。このため、ユーザによっては、地紋認識ユニット15が装着されているにもかかわらず、地紋認識ユニット15が地紋を認識可能な下限変倍率よりも小さい値に、優先縮小率を設定する場合がある。あるいは、ユーザが優先縮小率の値を設定した後に地紋認識ユニット15が装着される場合では、地紋認識ユニット15が地紋を認識可能な下限変倍率よりも小さい値に、優先縮小率が設定されている可能性は、大いにある。
【0054】
かかる場合、地紋認識ユニット15が装着されている場合、地紋認識ユニット15が地紋パターンを認識できないという事態を生じる。
【0055】
そこで、本実施例では、縮小モードの変倍率を設定する際、図12に示すような処理を行うことで、かかる不具合を回避できるようにしている。
【0056】
まず、設定変倍率の値が「100%」以外であるかどうかを調べる(判断201)。判断201の結果がYESになるときには、変倍率に既設定値をセットして(処理202)、変倍率設定画面を表示する(処理203)。
【0057】
また、判断201の結果がYESになるときには、変倍値の設定が行われていない場合なので、優先変倍率の値がシステムに登録されている原稿読取下限変倍率の値よりも小さいかどうかを調べる(判断204)。
【0058】
判断204の結果がYESになるときには、変倍率として、登録されている原稿読取下限変倍率の値をセットし(処理205)、処理203へ移行し、それ以降の処理を行う。
【0059】
また、判断204の結果がNOになるときには、変倍率として、優先縮小率の値をセットし(処理206)、処理203へ移行し、それ以降の処理を行う。
【0060】
このようにして、本実施例では、優先縮小率の値が原稿読取下限変倍率の値よりも小さい場合には、優先縮小率の値を原稿読取下限変倍率の値に再設定した態様で、変倍率設定画面を表示開始するようにしているので、ユーザは、適切な縮小率(変倍率)を選択できることとなる。また、この場合、原稿読取下限変倍率よりも小さい変倍率の値を設定できないように、変倍率設定画面では、該当する変倍項目の選択要素をグレイアウト表示させ、当該変倍項目は選択できないように制限するとよい。
【0061】
また、このネットワーク対応複合機MFPでは、プログラム登録機能を利用すると、ユーザは、ある動作モードにおいて、原稿画像の読取変倍率、読取モード、用紙サイズ、(通信機能の場合には)宛先等を適宜に組み合わせた1つの作業単位(以下、「ジョブ」という)を設定登録することができる。
【0062】
例えば、図13に示すようなプログラム画面から「登録」を選択すると、この場合には、コピー動作モードにおける種々の条件等を登録することができ、その登録内容を1つのキー操作で選択できるようにすることができる(選択状態は、図14を参照)。
【0063】
さて、このプログラム登録機能におけるプログラム要素の1つとして変倍率があり、この変倍率の値の設定は、地紋認識ユニット15の装着の有無にかかわらず行うことができる。このため、ユーザによっては、地紋認識ユニット15が装着されているにもかかわらず、地紋認識ユニット15が地紋を認識可能な下限変倍率よりも小さい値に、変倍率を設定する場合がある。あるいは、ユーザがプログラムを登録した後に地紋認識ユニット15が装着される場合、地紋認識ユニット15が地紋を認識可能な下限変倍率よりも小さい値に、変倍率が設定される可能性は、大いにある。
【0064】
かかる場合、地紋認識ユニット15が装着されている場合、地紋認識ユニット15が地紋パターンを認識できないという事態を生じる。
【0065】
そこで、本実施例では、登録されているプログラムを実行する際、図15に示すような処理を行うことで、かかる不具合を回避できるようにしている。
【0066】
まず、登録されている変倍率が原稿読取下限変倍率の値よりも小さいかどうかを調べる(判断301)。判断301の結果がYESになるときには、そのときのプログラムに適用する変倍率の値として、原稿読取下限変倍率の値をセットし(処理302)、それ以外のモード設定を行い(処理303)、それ以降の動作を実行する。
【0067】
また、判断301の結果がNOになるときには、そのときのプログラムに適用する変倍率の値として、当該プログラムに登録されている変倍率の値をセットし(処理304)、処理303へ移行し、それ以外のモード設定を行い、それ以降の動作を実行する。
【0068】
このようにして、本実施例では、登録されたプログラムに設定されている変倍率の値が原稿読取下限変倍率の値よりも小さい場合には、当該プログラムに適用する変倍率の値を原稿読取下限変倍率の値に再設定しているので、当該プログラム実行時に、地紋認識ユニット15が地紋パターンを認識できないような事態を回避することができる。
【0069】
なお、上述した説明では、ネットワーク対応複合機MFPについて本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、原稿読取機能を備えた他の装置、例えば、スキャナ装置、ネットワーク対応スキャナ装置(特に、スキャン・ツー・イーメール機能を備えたもの)、複写機、ファクシミリ装置、および、ネットワークファクシミリ装置についても、同様にして適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施例にかかるネットワークシステムを示したブロック図。
【図2】ネットワーク対応複合機MFPの構成例を示したブロック図。
【図3】操作表示部7の構成の一例を示した概略図。
【図4】システム初期設定情報、および、管理者用設定情報の一例を示した概略図。
【図5】不正コピー抑止原稿と無効化画像データの一例を示した概略図。
【図6】地紋認識処理部15の一例を示したブロック図。
【図7】孤立ドット検出部15aの処理単位であるブロックと、パターンマッチング部15cの処理単位であるパターンマッチングブロックの一例を示した概略図。
【図8】、ネットワーク対応複合機MFPがシステム起動時に行う処理の一部の一例を示したフローチャート。
【図9】優先縮小率の設定画面の一例を示した概略図。
【図10】コピー動作モードでの待機画面の一例を示した概略図。
【図11】縮小モードの画面の一例を示した概略図。
【図12】縮小モードの変倍率を設定する際の処理の一例を示したフローチャート。
【図13】プログラム画面の一例を示した概略図。
【図14】プログラム選択画面の一例を示した概略図。
【図15】登録されているプログラムを実行する際の処理の一例を示したフローチャート。
【符号の説明】
【0071】
MFP ネットワーク対応複合機
1 システム制御部
2 システムメモリ
3 パラメータメモリ
15 地紋認識ユニット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿画像を読み取って得た画像データから所定の地紋パターンを認識する地紋認識ユニットを着脱可能な画像読取装置において、
システム起動時、前記地紋認識ユニットが装着されていることを検出すると、システムに登録される原稿読取下限変倍率を、前記地紋認識ユニットが地紋パターンを認識可能な変倍率の値以上に設定することを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
システム起動時、前記地紋認識ユニットが装着されていることを検出しなかった場合には、前記原稿読取下限変倍率を、画像読取手段に設定可能な下限変倍率に設定することを特徴とする請求項1記載の画像読取装置。
【請求項3】
さらに、変倍モードが選択操作されたときに、最初に選択状態に設定する優先変倍率を設定する優先変倍率設定手段を備え、
前記優先変倍率設定手段に設定されている優先変倍率が、前記原稿読取下限変倍率よりも小さい場合、前記優先変倍率を、前記原稿読取下限変倍率に再設定することを特徴とする請求項1または請求項2記載の画像読取装置。
【請求項4】
さらに、変倍モードが選択操作されたときに、最初に選択状態に設定する優先変倍率を設定する優先変倍率設定手段を備え、
前記優先変倍率設定手段に設定されている優先変倍率が、前記原稿読取下限変倍率よりも小さい場合、前記優先変倍率を、前記原稿読取下限変倍率に再設定するとともに、変倍モードで設定可能な変倍率を、前記原稿読取下限変倍率以上に制限することを特徴とする請求項1または請求項2記載の画像読取装置。
【請求項5】
さらに、任意のモードを登録可能なプログラム登録手段を備え、
前記プログラム登録手段に登録されている変倍率が、前記原稿読取下限変倍率よりも小さい場合、当該登録変倍率を、前記原稿読取下限変倍率に再設定することを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3または請求項4記載の原稿読取装置。
【請求項6】
原稿画像を読み取って得た画像データから所定の地紋パターンを認識する地紋認識ユニットを着脱可能な画像読取装置の制御方法において、
システム起動時、前記地紋認識ユニットが装着されていることを検出すると、原稿読取下限変倍率を、前記地紋認識ユニットが地紋パターンを認識可能な変倍率の値以上に設定することを特徴とする画像読取装置の制御方法。
【請求項7】
システム起動時、前記地紋認識ユニットが装着されていることを検出しなかった場合には、前記原稿読取下限変倍率を、画像読取手段に設定可能な下限変倍率に設定することを特徴とする請求項6記載の画像読取装置の制御方法。
【請求項8】
さらに、変倍モードが選択操作されたときに、最初に選択状態に設定する優先変倍率を設定する優先変倍率設定手段を備え、
前記優先変倍率設定手段に設定されている優先変倍率が、前記原稿読取下限変倍率よりも小さい場合、前記優先変倍率を、前記原稿読取下限変倍率に再設定することを特徴とする請求項6または請求項7記載の画像読取装置の制御方法。
【請求項9】
さらに、変倍モードが選択操作されたときに、最初に選択状態に設定する優先変倍率を設定する優先変倍率設定手段を備え、
前記優先変倍率設定手段に設定されている優先変倍率が、前記原稿読取下限変倍率よりも小さい場合、前記優先変倍率を、前記原稿読取下限変倍率に再設定するとともに、変倍モードで設定可能な変倍率を、前記原稿読取下限変倍率以上に制限することを特徴とする請求項6または請求項7記載の画像読取装置の制御方法。
【請求項10】
さらに、任意のモードを登録可能なプログラム登録手段を備え、
前記プログラム登録手段に登録されている変倍率が、前記原稿読取下限変倍率よりも小さい場合、当該登録変倍率を、前記原稿読取下限変倍率に再設定することを特徴とする請求項6または請求項7または請求項8または請求項9記載の原稿読取装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図12】
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【図15】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−173909(P2006−173909A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−361773(P2004−361773)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】