説明

画像読取装置及びその画像読取方法

【課題】消費電力を削減しつつ、照明により白飛現象が発生しにくい画像読取装置及び画像読取装置の画像読取方法を提供する。
【解決手段】画像読取装置100は、撮影部101と原稿載置面(撮影面)との距離を変化させる方向に伸縮可能なアーム102と、アーム102に設けられて、撮影面を斜め方向から照らす光源部105と、を備える。MPUは、アーム102の長手方向に並んで設けられたLED105a〜105dのうち、[消灯範囲2]として照明範囲外を照らすLED105aを消灯する。また、MPUは、照明範囲の照度が所定以上の場合、[消灯範囲1]として照明範囲に近いLED105c,LED105dを消灯する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を取り込む画像読取装置及びその画像読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CCDやCMOS等で構成されたエリアセンサを備える撮影部を原稿の上方に配置して原稿の画像を取り込む画像読取装置が開発されている(例えば特許文献1)。特に、最近は私的利用のために書籍をスキャン(走査)してタブレットPC等に読み込む、いわゆる「自炊」が注目されており、従来の書画カメラに代表される教育用途等とは異なる市場、用途が拡大しつつある。特許文献1の画像読取装置は、装置を支える脚部に原稿の2辺を突き当てて原稿の位置決めを行い、アーム部によって撮影部が原稿の上方位置に固定され、書籍等をスキャンするのを意図した構造を備える。
【0003】
書籍の紙面等の静止画を取り込む場合、紙面の全体を適宜な照明により照らした状態で撮影が行われると好ましい。
【0004】
一方、紙面に対して撮影部と同一の方向から照明を当てて撮影を行った場合、紙面で直接的に反射された光が撮影部に入射して白飛現象が発生しやすくなることが一般に知られている。白飛現象とは、強い入射光によって撮影部の撮像素子の出力が飽和し、その部分の画像が白く不鮮明になってしまう現象である。
【0005】
また、撮影対象のサイズが大小変化する場合、撮影部と撮影対象との距離を変化させて、撮影画像中に写る撮影対象の大きさを調整することが一般に行われる。
【0006】
また、上述した「自炊」は手軽に行えることが重要であり、例えば画像読取装置をわざわざ商用電源に接続することを煩わしく感じるユーザも多い。このため画像読取装置を接続したノートPCやタブレットPCのUSB端子から電力を得る(いわゆるUSBバスパワー)構成を採用するのが望ましい。しかし、USBバスパワーは電圧5V±5%、消費電流500mA、消費電力2.5Wという制限があるため、画像読取装置の消費電力の削減は非常に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−200291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
撮影対象のサイズの変更に伴って撮影対象と撮影部との距離を調整する際、照明が撮影対象の全体にいきわたるように、撮影対象と光源部との距離も同時に調整できると便利である。しかし、従来、消費電力を削減しつつ、このように両者を同時に調整することのできる画像読取装置は無かった。
【0009】
また、撮影部に光源部を設けることで、上記両者を同時に調整することができると考えられる。しかしながら、この構成では上述のように白飛現象が発生しやすくなるという課題が生じる。
【0010】
本発明の目的は、消費電力を削減しつつ、照明により白飛現象が発生しにくい画像読取装置及び画像読取装置の画像読取方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の画像読取装置は、撮影を行う撮影部と、前記撮影部を撮影面に対向させた向きで支持するとともに、前記撮影部と前記撮影面との距離を変化させる方向に伸縮可能なアームと、前記アームに設けられて、前記撮影面を斜め方向から照らすとともに、前記アームの伸縮に伴って移動する光源部と、前記光源部が、前記撮影面を斜め方向から照らす照明範囲に基づいて、前記光源部の発光状態を変える制御部と、を備える構成を採る。
【0012】
本発明の画像読取方法は、撮影部を撮影面に対向させた向きで支持するとともに、前記撮影部と前記撮影面との距離を変化させる方向に伸縮可能なアームと、前記アームに設けられて、前記撮影面を斜め方向から照らすとともに、前記アームの伸縮に伴って移動する光源部と、を備える画像読取装置の画像読取方法であって、前記撮影面を斜め方向から照らす照明範囲に基づいて、前記光源部の発光状態を変える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光源部が撮影面を斜め方向から照らす照明範囲に基づいて光源部の発光状態を変えることにより、消費電力を削減しつつ、白飛現象も発生しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態の画像読取装置を示す斜視図
【図2】本実施の形態の画像読取装置の構成を示すブロック図
【図3】本実施の形態の画像読取装置の高さ検出部の構成の一例を示す図
【図4】本実施の形態の画像読取装置の上アームの伸縮状況における検出片とフォトセンサの関係を示す図
【図5】図4のアームの伸縮状態とフォトセンサの出力を表にしてまとめた図
【図6】本実施の形態に係る画像読取装置の状態遷移が起こる場合に一方のセンサのステートのみが変化するような形状の検出片の構成を示す図
【図7】本実施の形態に係る画像読取装置の撮影時の状態の一例を示す平面図
【図8】本実施の形態に係る画像読取装置の動作を説明する図
【図9】本実施の形態に係る画像読取装置のアームの伸縮に伴って光源部を移動させた場合の光の照射範囲の概略を示す説明図
【図10】本実施の形態に係る画像読取装置の画像読取り処理を示すフロー図
【図11】本実施の形態に係る画像読取装置の特徴点検出処理及び変換パラメータ生成処理を説明する図
【図12】本実施の形態に係る画像読取装置において照明によって発生する影の状態を説明する図
【図13】本実施の形態に係る画像読取装置のエッジ検出処理を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態の画像読取装置を示す斜視図である。本発明に係る画像読取装置を、書籍等を読み取るブックスキャナで具現化した例で説明する。
【0017】
図1に示すように、画像読取装置100は、映像を取り込む撮影部101と、撮影部101を支えるアーム102と、アーム102を支持する土台部104と、土台部104から二方向にそれぞれ伸びて装置を支える2つの脚部103,103と、撮影範囲を照らす光源部105と、から主に構成される。
【0018】
撮影部101は、電気的に映像を取り込むカメラ101a(図2、図8及び図9参照)を備えている。カメラ101aは、カメラレンズ111(図2参照)と、カメラレンズ111により結像された映像を電気信号に変換して取り込む撮像素子112(図2参照)とを備えている。撮像素子112は、例えばCCD(charge-coupled device)、又はCMOSイメージセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor Image Sensor)などの二次元(エリア)センサである。撮影部101は、カメラ101aが下方(脚部103,103に沿った面(原稿載置面20。図8等を参照)に対向する方向)を向いた角度で固定的に支持される。
【0019】
なお、撮影部101は、不使用時において、上アーム102aに設けられたヒンジ部を中心に回動して上アーム102aに収納可能にされるが、使用時には、図1、図8、図9に示すように、上アーム102a(図8、図9においてはアーム102)に対して所定の角度で固定される。
【0020】
アーム102は、土台部104に支持される下アーム102bと、撮影部101を支持する上アーム102aとから構成される。下アーム102bは、土台部104により所定の角度で固定的に支持される。アーム102には、アーム102の長さを伸縮可能とする伸縮機構が設けられている。伸縮機構は、具体的にはスライド機構であり、例えば上アーム102aの長手方向(伸縮方向)に設けられた凸部が下アーム102bの長手方向(伸縮方向)に設けられた凹状のガイド溝(いずれも図示せず)に支持されてアーム102の長手方向にスライド可能にされている。上アーム102aは、一定以上の力を加えることで下アーム102bに対してスライド移動するが、力が加えられなければそのスライド位置が維持される。
【0021】
アーム102のスライド機構には、所定のスライド位置で上アーム102aと下アーム102bとが係止されるストッパーが設けられている。両者が係止されるスライド位置には、複数の位置が設定されている。この構成により、ユーザは、アーム102を規定の複数の長さに段階的に容易に合わせることができる。これらの複数の長さは、撮影対象の書籍が、例えばA4サイズ(例えば、ビジネス文書)、A5サイズ(例えば、教科書)、A6サイズ(例えば、文庫)、B5サイズ(例えば、週刊誌)など、規定のサイズである場合に対応して、撮影部101の読取範囲(画角)がこれら規定の書籍サイズと略同一になる高さへ移動できるように設定されている。
【0022】
なお、アーム102は、不使用時において、土台部104に設けられたヒンジ部を中心に回動して、脚部103,103と平行になる位置まで折り畳み可能にされるが、使用時には、所定の角度で土台部104に固定的に支持される。アーム102が支持される角度は、例えば、画像読込装置100を水平面に置いたときに、アーム102の長手方向が鉛直線に対して斜めになる角度(例えば鉛直線を基準に30°〜60°、好ましくは40°〜50°など)に設定されている。
【0023】
脚部103,103は、各々が一方向に長い形状であり、各々の一端が土台部104に接続されている。脚部103,103は、画像読込装置100が水平面に置かれた場合に、この水平面上で二方向へ伸びて画像読込装置100を支える。脚部103,103の上面は平面状にされて実質的な原稿載置面20(図8等及び図9参照)を構成し、その土台部104に近い箇所には、撮影対象の書籍の一端が合わせられる位置決めマーク107,107が設けられている。
【0024】
なお、脚部103,103は、不使用時において、土台部104に設けられた支軸を中心に回動して互いに閉じた状態(脚部103,103が互いに平行になるように)に畳むことができる。使用時には、所定の角度(例えば60°〜120°、好ましくは80°〜100°など)に開かれる。
【0025】
土台部104は、画像読込装置100の土台となる。土台部104は、アーム102を支持するとともに、上述のように2つの脚部103,103が接続される。また、土台部104の内側中央の端部(脚部103,103に挟まれた真ん中の部分)は、撮影対象の書籍の一端が当接されて位置決めされるストッパー108として機能する。
【0026】
光源部105は、上アーム102aの一方の面(原稿載置面20へ向いた面)に設けられている。光源部105は、複数の発光素子(例えば白色LED:発光ダイオード)105a〜105dを有し、これら複数のLED105a〜105dがアーム102の長手方向に沿って並んで設けられている。光源部105は、アーム102の伸縮時に上アーム102aに伴って位置を上下に変化させる。もちろん、発光素子の個数は図示する4個に限らず増減してもよい。
【0027】
このように、本実施の形態の画像読取装置100は、撮影を行う撮影部101と、撮影部101(原稿載置面)を撮影面に対向させた向きで支持するとともに、撮影部101と撮影面との距離を変化させる方向に伸縮可能なアーム102と、アーム102に設けられて撮影面を斜め方向から照らすとともに、アーム102の伸縮に伴って移動する光源部105と、を備える。アーム102は、撮影面に対して斜めの向きに支持され、光源部105は、アーム102の側面部に設けられている。また、アーム102は、固定アームである下アーム102bと、下アーム102bに沿ってスライド可能な可動アームである上アーム102aとを備え、光源部105は、上アーム102aの側面部に設けられている。光源部105が、アーム102の側面部に設けられていることで、光源部105の照明は、書籍の紙面に対して斜め方向から照射される。
【0028】
なお、光源部105に用いた発光素子105a〜105dは、所定の光量分布を持っており、この分布に由来して一部の光線(光束)は撮影面と直交する方向に照射され得る。また、書籍の紙面は一般に曲面を構成する。従ってこれらを考慮すると、本発明における光源部105は、「光源部105を構成する各発光素子105a〜105dの光軸を撮影面に対して傾斜させた」構成だといえる。また、光源部105に用いられる光源はLEDのような点光源に限らず、有機EL素子のような面光源であってもよく、このような場合は「光源を備える光源部105の主面(発光面)の法線を撮影面に対して傾斜させた」構成だといえる。
【0029】
ここで、光源部105が原稿載置面20(図8(b)参照)を照射する照射角度は、以下のように定義することができる。本実施の形態では、照射角度は、光源部105から出射される光(上述のように発光素子の光軸、または光源部の主面の法線を指す)と原稿載置面20との間で形成される角度θ1が、カメラ101aの画角の1/2(=θ1)と等しい関係にある。
【0030】
画像読取装置100は、光源部105が、原稿載置面20を照らす場合、最適な光量の照明となるように調整することは勿論のこと、所定斜め方向から照射されるように調整する。換言すれば、画像読取装置100は、光源部105から照射される光量が最適となり、かつ、所定斜め方向から照射されるように調整する。本構成を採る場合、所定斜め方向は、書籍30の紙面(原稿載置面20)に対して、例えば45°程度である。本発明者らによれば、光源部105が、原稿載置面に対して照射する角度を45°とすると、様々な外光があった場合にも、上記エッジを非常に精度良く検出できることが確認できた。
【0031】
なお、上記照射角度45°は、一例であり、斜め方向から照射するものであれば、照射角度はどのようなものでもよい。
【0032】
図2は、画像読取装置の構成を示すブロック図である。
【0033】
図2に示すように、画像読取装置100は、MPU(Micro-Processing Unit)120、ROM(Read Only Memory)121、RAM(Random Access Memory)122、キーボタン等からなる操作部123、ビデオ入力I/F124、及びビデオ出力I/F125を備える。MPU120は、I/O−I/F120aを有し、I/O−I/F120aには、USB(Universal Serial Bus)126、LAN127、及び無線LAN128が接続される。また、画像読取装置100は、高さ検出部131、光源制御部132、及び光源部105を備える。また、画像読取装置100は、外部電源から所定DC電源を生成するDCパワー部141と、DCパワー部141により充電され、外部電源非接続時、各部にDC電圧を供給するバッテリ142と、を備える。上記外部電源は、USBケーブル通じて給電されるUSBバスパワー(USB bus power)を使用可能である。
【0034】
ビデオ出力I/F125は、例えばHDMI(High-Definition Multimedia Interface)である。ビデオ出力I/F125には、デジタルTVなどの表示デバイス150が接続される。あるいは、表示デバイス150は、画像読取装置100本体に搭載されるLCD(Liquid Crystal Display)ディスプレイ又は有機EL(Organic Electro-Luminescence)ディスプレイである。
【0035】
USB126、LAN127、及び無線LAN128は、各ケーブル、又は無線通信を介してパーソナルコンピュータ(PC)160に接続される。
【0036】
MPU120は、画像読取装置100全体を制御するとともに、エッジ検出を含む画像読取処理を実行する。MPU120は、光源部105が、撮像対象物を斜め方向から照らして撮像対象物の端部に影部分を発生させ、発生した影部分を含む撮影データをビデオ入力I/F124を介して取り込むデータ取得部201と、取り込んだ撮影データに基づいて、撮像対象物のエッジ特徴を検出するエッジ検出部202と、を備える。エッジ検出部202は、影部分を2値化処理してエッジ特徴を検出する。エッジ検出部202は、2値化データが、撮像対象物の端面のラインに、所定数以上、連続して発生した場合、エッジ特徴を検出する。画像読取処理の詳細については、図10及び図13のフローにより後述する。
【0037】
さらに、MPU120は、光源部105が撮影面20を斜め方向から照らす照明範囲に基づいて、光源部105の発光状態を変える制御を実行する。MPU120は、光源部105の一部又は全部を消灯して発光領域を変える、また、光源部105の一部又は全部の光量を変えることで、光源部105の発光状態を変更する。具体的には、MPU120は、アーム102の長手方向に並んで設けられたLED105a〜105dのうち、[消灯範囲2]として照明範囲外を照らすLED(例えばLED105a)を消灯する。あるいは、LED105aの光量を低下させる。また、MPU120は、照明範囲の照度が所定以上の場合、[消灯範囲1]として照明範囲に近いLED(例えばLED105c,LED105d)を消灯する。あるいは、LED105c,LED105dの光量を低下させる。
【0038】
ROM121は、画像読取装置100の種々の機能と画像読取制御を実現するためのプログラムやパラメータ等の固定データを記憶する読出し専用の半導体メモリである。
【0039】
RAM122は、撮像データ及び演算結果等を一時的に記憶するいわゆるワーキングメモリである。RAMの一部の記憶領域は、電源バックアップするか、あるいはEEPROM(electrically erasable programmable ROM)やフラッシュメモリ等の不揮発性メモリにより構成され、電源OFF後も設定条件を保持する。
【0040】
高さ検出部131は、上アーム102aの側面部に設けられている光源部105の高さを検出する。本実施の形態では、光源部105は、上アーム102aの伸縮に伴って移動する。上アーム102aの伸縮に伴って移動する光源部105の移動位置を、光源部105の高さと、便宜上呼称している。高さ検出部131の構成の一例については、図3により後述する。
【0041】
光源制御部132は、複数の発光素子(ここでは、LED105a〜105d)を選択的にオン/オフする。更に光源制御部132は、LED105a〜105dに供給する電流を制御して、点灯する際の各LEDの発光強度を変化させる。
【0042】
図3は、高さ検出部131の構成の一例を示す図である。図3は、アーム102の伸縮状況を検出する検出片とフォトセンサの関係を示す図である。
【0043】
図3に示すように、高さ検出部131は、上アーム102aに取付けられ、上アーム102aの伸縮と共に移動する検出片135と、アーム102のガイドに取付けられ、上アーム102aを伸縮させても変位しない透過型のフォトセンサ(インタラプタ)136,137とから構成される。なお、インタラプタは発光素子と受光素子を対向させた構成を有し、発光素子と受光素子の間の光路において遮蔽物の有無を検出するものである。
【0044】
検出片135は、フォトセンサ136(以下、フォトセンサAという)の光透過状態を検出する突起135aと、フォトセンサ137(以下、フォトセンサBという)の光透過状態を検出する突起135bと、を有する。検出片135は、上アーム102aの伸縮と共に方向D1に往復移動する。フォトセンサAとフォトセンサBとは、検出片135の往復移動方向に対して直交する位置に対向配置されている。
【0045】
図4は、上アーム102aの伸縮状況における検出片135とフォトセンサA,Bの関係を示す図である。なお、以降の説明において、フォトセンサA又はBの光路が検出片135に遮断されたときフォトセンサの出力は“1”になり、光路が解放(透過状態)されたときの出力は“0”になるものとする。
【0046】
図4(a)は、アーム102が最も伸びた状態における検出片135とフォトセンサA,Bの関係を示している。フォトセンサA,Bは、共に検出片135で遮断され、フォトセンサA,Bは、(1,1)を光源制御部132に出力する。
【0047】
図4(b)は、アーム102が一段階縮んだ状態における検出片135とフォトセンサA,Bの関係を示している。フォトセンサAは、検出片135で遮断される。フォトセンサBは、透過状態となり、フォトセンサA,Bは、(1,0)を光源制御部132に出力する。
【0048】
図4(c)は、アーム102が更に一段階縮んだ状態における検出片135とフォトセンサA,Bの関係を示している。フォトセンサAは、透過状態となり、フォトセンサBは、検出片135で遮断される。フォトセンサA,Bは、(0,1)を光源制御部132に出力する。
【0049】
図4(d)は、アーム102が最も縮んだ状態における検出片135とフォトセンサA,Bの関係を示している。フォトセンサA,Bは、共に透過状態となり、フォトセンサA,Bは、(0,0)を光源制御部132に出力する。
【0050】
図5は、図4のアーム102の伸縮状態とフォトセンサA,Bの出力を表にしてまとめた図である。
【0051】
図5に示すように、光源制御部132は、フォトセンサA,Bの出力から、アーム102がどのような長さであっても、アーム102の伸縮状態を検知することができる。例えば、光源制御部132は、画像読込装置100の電源投入時にフォトセンサA,Bの出力を参照すれば、アームの伸縮状態について正確に認識することが可能となる。
【0052】
ここで、検出片135の形成精度によっては、フォトセンサA,Bの出力を誤検出するおそれがある。一例を挙げると、フォトセンサ出力がA,B=1,0⇒A,B=0,1に変化する場合、A,Bの両出力が切り替わる点で誤検出することが考えられる。この場合、検出片135を、状態遷移が起こる場合に必ず一方のセンサのステートのみが変化するような形状とすればよい。
【0053】
図6は、状態遷移が起こる場合に一方のセンサのステートのみが変化するような形状の検出片138の構成を示す図である。
【0054】
図6に示すように、高さ検出部131Aは、上アーム102aに取付けられ、上アーム102aの伸縮と共に移動する検出片138と、アーム102のガイドに取付けられた透過型のフォトセンサ136,137とから構成される。
【0055】
検出片138は、フォトセンサAの光透過状態を検出する突起138aと、フォトセンサBの光透過状態を検出する突起138bと、を有する。検出片138は、上アーム102aの伸縮と共に方向D1に往復移動する。フォトセンサAとフォトセンサBとは、検出片138の往復移動方向に対して直交する位置に対向配置されている。
【0056】
検出片138は、フォトセンサ出力A,B=1,1⇒A,B=1,0⇒A,B=0,0⇒A,B=0,1のように変化する形状となっている。光源制御部132は、検出片138に設けられたパターンを検出することで、アーム102の伸縮状態を認識する。
【0057】
なお、本実施の形態では、アーム102の長短4状態を検出するようにしたが、2つの状態を検出するように構成することもできる。この場合、フォトセンサは1つでよい。また、アーム102の伸縮状態をより多くの分解能で検出することもできる。但し、検出片135の両端部に対応してフォトセンサA,B(インタラプタ)を配置した場合、情報量は2ビットしかないため検出できる状態の数は4以下となる。そこで、4つを超える状態を検出するには、フォトセンサとしていわゆるリフレクタ(反射型センサ)を採用するのが望ましい。リフレクタを検出片135の移動方向と直交する方向に複数個配置し、これに対向する面を、例えば黒/白に塗り分けることで、容易に分解能を増加することができる。
【0058】
以下、上述のように構成された画像読取装置の動作を説明する。
【0059】
まず、画像読取装置の基本動作について説明する。
【0060】
図7は、画像読取装置の撮影時の状態の一例を示す平面図である。
【0061】
図7に示すように、画像読取装置100は、撮影対象の書籍30が脚部103,103に一部をかぶせた状態で載置される。書籍30は、ストッパー108の円弧部分に突き当てられて位置決めされる。位置決めマーク107,107は、その延長線がストッパー108の円弧部分と接するような位置関係となっていることが望ましい。なお、位置決めマーク107,107は単なるマークであってもよいが、土台部104の側を高くした段差構造としてもよい。書籍30と撮影部101との位置合わせについては後述する。
【0062】
このとき、光源部105の照明が書籍30の紙面に斜め方向から照射される。そして、この状態で、撮影部101が動作することで、書籍の紙面の静止画が取り込まれる。ユーザが書籍30のページをめくりながら、この静止画の取り込みを繰り返すことで、書籍30の複数ページの紙面の静止画が順次取り込まれていく。これらの静止画は、MPU120に送られて画像処理により書籍30の縁部が直線状に補正された平面状かつ矩形の画像に変換される。
【0063】
図8は、画像読取装置の動作を説明する図である。
【0064】
図8(a)は、アーム102を縮めた状態、図8(b)は、アーム102を伸ばした状態である。図8では、画像読取装置100の載置面をX−Y平面(水平面)とし、画像読取装置100の正面に伸びる方向(アーム102の長手方向の水平方向成分)をX方向とし、画像読取装置100の高さ方向をZ方向とする。なお、図8は、説明を簡単にするため、脚部103,103等のZ方向の厚み等を省略して描かれている。
【0065】
画像読取装置100を使用する際、アーム102は、支持部104aに所定角度(カメラ101aの画角と同一の角度)に支持される。支持部104aは、アーム102を伸縮方向に移動可能に支持するガイド(図示せず)を備え、アーム102は、このガイドに沿って移動する。
【0066】
原稿載置面20における実効的な読取範囲は、X方向についてはP0〜PE1(PE2)とされ、この読取範囲は、カメラ101aの画角(2×θ1)によって実質的に規定されている。
【0067】
図8(b)では同(a)と比べてアームを伸ばしていることから、同一画角のもとで読取範囲が広くなっている。
【0068】
以降、図8に図1及び図2を併用して説明を続ける。光源部105は、アーム102の延伸方向における中間位置に設けられている。光源部105は、アーム102(上アーム102a)を伸縮すると、上アーム102aに連動して上下に移動する。光源部105の移動範囲は、Z方向にDzである。また、光源部105は、アーム102の延伸方向に沿って配列された複数のLED105a〜105dを有する。LED105a〜105dは、個別にON/OFF可能である。LED105a〜105dは、その駆動電流を可変、あるいは撮像周期よりも十分短く設定された所定時間内のONデューティ比を可変(すなわちPMW制御可能)に構成されていてもよい。これによって、例えば、図2の光源制御部132は、LED105a〜105dの駆動電流やONデューティ比を個別に制御することで、LED105a〜105dの光量を変えることができる。また、同様に、LED105a〜105dを個別に消灯することで、消灯範囲を変えることができる。
【0069】
また、光源として例えばEL素子を採用する場合、EL素子を構成する個別電極(制御電極)をアームの伸縮方向に複数並べて配置する構成とする。EL素子の発光領域は個別電極と共通電極の重畳範囲として画定されるから、個別電極の配置に応じて各個別電極を独立して駆動するドライバを設けることで、発光素子がLEDの場合と同等の効果を得ることができる。
【0070】
光源部105は、X方向においては主にP0〜PE1(PE2)の範囲を照射する。本実施の形態では、光源部105をアーム102の途中に設けた構成を採るので、アーム102(上アーム102a)を縮めたときと伸ばしたときでは、光源部105の高さが異なる。結果的には、光の照射範囲が異なることになる。
【0071】
光源部105は、主に白飛防止の観点から消灯範囲1と、消費電力低減の観点から消灯範囲2と、を有する。画像読取装置100の光源制御部132(図2参照)は、高さ検出部131により検出された光源部105の高さ情報に基づいて、消灯範囲1/消灯範囲2においてLED105a〜105dを個別に消灯する光源制御を実施する。この光源制御には、各LED105a〜105dのON/OFF制御と、駆動電流制御による光量調整とを含む。また、光源制御部132は、MPU120の指示を受けて光源制御実行の適否を決定する。
【0072】
[消灯範囲1]
図8(a)に示すように、アーム102を縮めると、光源部105は、土台部104に近い位置まで降りてくる。原稿載置面20において、位置P0には原稿位置規制部であるストッパー108があり、通常はこのストッパー108部分に原稿端部を突き当てて原稿を読み取る。ストッパー108部分は、光源部105(下部)と近接しており、光源部105のうちP0近傍のLED光源を発光させると、P0周辺の原稿面照度は極めて高くなり、カメラ102の撮像素子の出力が飽和する白飛現象が発生する。なお、白飛現象は、言い換えれば、白側(高輝度側)のコントラストが強くなりすぎてダイナミックレンジが低下する現象である。これを防止するため、消灯範囲1のLED光源(例えば、LEDd又はLEDc,LEDd(図1参照))を、消灯させる。これにより、白飛現象を防止し、ダイナミックレンジを確保することができる。
【0073】
[消灯範囲2]
一方、図8(b)に示すように、アーム102を伸ばすと、光源部105は、アーム102の変位に従って上方に移動する。このとき、光源部105は、最下端のLEDdまで点灯するように制御される。
【0074】
図8(a)に示す△A1B1C1と、図8(b)に示す△A2B2C2とは、相似形である。このことから、図8(a)の最大読取範囲に対応するPE1から光源部105の最上端を結ぶ線分とX軸が交差する角度θを、アーム102を伸ばした状態である図8(b)の位置PE2に適用した場合、光源部102の上端部に発光が不要な領域(消灯範囲2)が発生する。そこで、光源部105のうち上端側に位置するLEDa(消灯範囲2に含まれるLED)は、消灯する。
【0075】
ここで、アーム102を伸ばすと光源部105からPE2までの距離は大きくなり、光量は距離の2乗に反比例して減衰するから、消灯範囲2については点灯を維持してもよい。但し、そうすると、X方向にPE2を超えて光を照射する範囲が拡大することになる。よって、効率を重視するのであれば、消灯範囲2のLEDを消灯したうえ、光源部105のうち消灯範囲2以外の部分で、かつ消灯範囲2に近いLED(すなわち、なるべく上部のLEDa)の駆動電流を選択的に増加させるとよい。
【0076】
なお、前述のようにアーム102は、支持部104aに支持されたガイドに沿って伸縮する。ガイドには透過型のフォトセンサA,Bが設けられている。一方、アーム102には、アーム102の伸縮と共に移動する検出片135(図3参照)が設けられている。光源制御部132(図2参照)は、検出片135に設けられたパターンを高さ検出部131(図2,図3参照)が検出した結果に基づき、アーム102の伸縮状態を認識して、LEDの点灯/消灯位置を制御する。
【0077】
特に、画像読取装置100が、USBバスパワーなどを採用するもので、余裕のある電源を持たない場合、消費電力の削減は、非常に重要である。消費電力は、主として光源部105が消費する。このため、光源部105の消費電力削減が求められている。本実施の形態は、消灯範囲2及び消灯範囲1のLEDを消灯することで、消費電力の低減を図っている。
【0078】
以上、消灯範囲1/消灯範囲2について説明した。次に、オフセット及び光源部105の照射角度について説明する。
【0079】
図8に示すように、画像読取装置100は、脚部103,103が載置される面が撮影対象の書籍30が置かれる原稿載置面20となり、カメラ101aの撮影方向(カメラレンズの光軸方向)が略鉛直下方に設定される。
【0080】
また、カメラ101aの画角(図8中に一点鎖線で示す)のうち、アーム102側の境界線fは、アーム102の伸縮方向(本実施の形態では、アーム102の長手方向と同一)とほぼ平行に設定される。境界線fは、カメラ101aの画角内と画角外との境界を表わしている。
【0081】
さらに、アーム102の先端からカメラ101aまでのオフセットL(図8(a)の線分PC1−B1と図8(b)の線分PC2−B2)は、アーム102の支持部104aから原稿載置面20の一端の位置P0までのオフセット(図8(a),Bの線分P0−C1)とほぼ同一に設定される。言い換えれば、アーム102の伸縮経路に沿った直線からカメラ101aのカメラレンズの中心までのオフセットLと、上記直線から原稿載置面20の一端の位置P0までのオフセットとがほぼ同一にされる。ここで、オフセットとは、変位量及び変位方向を表わしている。また、位置P0は、書籍の端部がストッパー108(図7参照)に当接する位置、あるいは、目印(マーク)107(図7参照)により位置合わせされる書籍の一辺と支持部104aからX方向に伸びる直線との交点の位置である。
【0082】
図8(a)に示すように、アーム102を縮めると、カメラ101aから原稿載置面20までの距離は短くなり、それゆえ、カメラ101aの読取範囲W1が小さくなる。一方、図8(b)に示すように、アーム102を伸ばすと、カメラ101aから原稿載置面20までの距離は長くなり、それゆえ、カメラ101aの読取範囲W2が大きくなる。
【0083】
図8(a)と図8(b)とでは、カメラ101aのZ方向の高さは、距離Dzだけ異なっている。さらに、これら両方の場合において、カメラ101aの読取範囲W1,W2の一端は、位置P0に固定され、他端の位置PE1,PE2が変化している。すなわち、アーム102の伸縮量を変化させても、カメラ101aの画角の一端と原稿載置面20との交点は位置P0に固定される。
【0084】
したがって、書籍30と撮影部101との位置を調整する場合には、ユーザは、先ず、書籍の一端を位置P0に合わせて書籍30を原稿載置面20に置く。続いて、ユーザは、書籍30の紙面がカメラ101aの読取範囲に適宜な大きさで収まるように、アーム102の伸縮量を調整する。これらの調整だけで、ユーザは、撮影部101と書籍30とを適切な距離及び配置に調整することができる。書籍30のサイズが異なっても、同様の方法で、ユーザは撮影部101と書籍30とを適切な距離及び配置に容易に調整することができる。
【0085】
また、図8(a)に示すように、アーム102が縮んでいるときには、光源部105は低い位置から原稿載置面20を照らす。一方、図8(b)に示すように、アーム102が伸びたときには、光源部105は高い位置から原稿載置面20を照らす。
【0086】
図8(a)と図8(b)とでは、光源部105の高さは、距離Dzだけ異なっている。したがって、光源部105は、アーム102を縮めれば、カメラ101aの小さな読取範囲W1を効率的に照らすことができ、アーム102を伸ばせば、照明範囲を広げて大きな読取範囲W2の全体を照らすことができる。
【0087】
さらに、光源部105は、傾斜したアーム102に沿って設けられている。そして、光源部105の照明は、アーム102の伸縮量に関わらずに原稿載置面20に対して斜めに照射される。なお、ここでいう「斜めに照射」とは、例えば光源部105を構成する各発光素子105a〜105d(図1参照)の光出射軸を撮影面に対してθ1傾斜させることを意味し、また、光源部105が有機EL素子のような面光源である場合は、その発光面の法線を撮影面に対してθ1傾斜させることを意味する。この構成によって以下の作用がある。
【0088】
(1)書籍30(図7参照)等の原稿を照射した光の照明の直接的な反射光がカメラ101aに入射することが回避され、書籍30の紙面における散乱光のみがカメラ101aに入射される。これら(1)及び後述する(3)の構成によって、主にイメージセンサの出力が飽和することで発生する画像の白飛やスミアが生じることが回避され、カメラ101aは、綺麗で正確な画像を取り込むことができる。
【0089】
(2)光源部105は、アーム102の側面部に設けられていることで、原稿載置面20を斜め方向(すなわちθ1の方向(例えば45°))から照らす構成となっている。一方、原稿載置面20に載置された書籍30(図7参照)は、厚みを有している。このため、光源部105から原稿載置面20に、照射光が斜め方向で入射することによって、書籍30の紙面の端部(書籍の外形部分)から下方(すなわち原稿載置面20側)に向かって影が発生する。一方、カメラ101aは原稿載置面20の法線方向にあるから、斜め照射によって生じる影を確実に撮像することができる。この影部分を含む画像データは、MPU120によって取り込まれ、MPU120は、2値化処理を行ってエッジを検出する。
【0090】
上述したように、取り込んだ画像データには、書籍30の紙面の端部を境界とした影部分が存在する。影部分は、2値化処理の結果、黒データとなり、かつ書籍30の紙面の端部のラインに連続して発生する。影部分が、2値化処理されることにより、エッジの特徴検出の精度を格段に向上させることができる。書籍30の紙面の端部を確実に検出することができるので、その後の特徴点検出処理(角交点検出処理、輪郭取得処理、その他の特徴点検出処理など)において検出精度が向上し、延いては画像読取の精度を向上させることができる。
【0091】
(3)また、光源部105が、傾斜したアーム102に設けられ、かつX方向においてアーム102側の境界線fからオフセットLだけ離れていることで、光源部105は必ずカメラ101aの画角の外に配置されることになるため、光源部105の照射光が直接的にカメラ101aのカメラレンズに入射することが回避される。それゆえ、カメラ101aは、綺麗で正確な画像を取り込むことができる。
【0092】
(4)また、消灯範囲2のLED消灯は、基本的には消費電力低減の観点から実施されるが、以下のような効果もある。すなわち、消灯範囲2のLEDを点灯していると、光源部105の発光領域が大きいので、原稿載置面20に対して斜めに照射した場合に、上記影部分が発生しにくくなる。消灯範囲2のLED消灯することで、照射角度を付与することができる。
【0093】
次に、アーム102の伸縮に伴って光源部105を移動させた場合の光の照射範囲について説明する。
【0094】
図9は、画像読取装置においてアーム102の伸縮に伴って光源部105を移動させた場合の光の照射範囲の概略を示す説明図である。図9(a)はアーム102を伸ばした状態、図9(b)はアーム102を縮めた状態を表している。
【0095】
図9(b)に示すアーム102を縮めた状態において、X方向の読取範囲W1は画角との関係で位置P0から位置PE1の間となる。このとき位置PE1における原稿面照度は、カメラ101aの撮影に必要な所望の値を満たすものとなるように、発光素子前面のレンズ形状やLEDの駆動電流等が定められる。このとき光源部105の最上部から位置PE1までを結ぶ線分と、水平面とが成す角度をθとする。
【0096】
この状態からアーム102を伸ばすことで読取範囲は拡大し、図9(a)ではX方向の読取範囲W2は位置P0から位置PE2の間となる。このとき、読取範囲W2の最外縁である位置PE2から角度θの線分を付加すると、この線分は光源部105の最上部ではなく光源部105の中間位置(Pz)と交わる。つまり、アーム102を伸ばすのに伴って光源部105も上方に移動するが、光を照射する範囲の観点では、光源部105が必要以上に上方に移動してしまう。このとき、光源部105の最上部から位置Pzの間の部分から照射される光は、水平面における位置PE2から外側に外れた位置PLにも主たる照度分布を持つことになる。すなわち、この部分は、無駄な光を出射する領域(「ロス領域」と称する)だということができる。勿論、アーム102を伸ばすことで読取範囲の最外縁である位置PE2はより遠方になるため、ロス領域から出射される光も位置PE2の照度増加に寄与することは間違いないが、効率の上では問題がある。
【0097】
本実施の形態では、上記ロス領域を消灯範囲2とし、消灯範囲2のLEDを消灯するようにしている。
【0098】
次に、画像読取装置の画像読取処理について説明する。
【0099】
図10は、画像読取装置の画像読取り処理を示すフローチャートである。MPU120により実行される。図中、Sはフローの各ステップを示す。
【0100】
ステップS1では、MPU120は、撮影部101により撮像された撮像データを入力する。
【0101】
ステップS2では、MPU120は、撮像データからエッジを検出する。本実施の形態では、光源部105の照明は、アーム102の伸縮量に関わらずに原稿載置面20に対して斜めに照射される。撮像データには、書籍30の紙面の端部から下方に向かって発生した影部分が含まれる。この影部分が、2値化処理されることにより、エッジの特徴検出の精度を格段に向上させることができる。ステップS2の詳細フローについては、図13により後述する。
【0102】
ステップS3では、MPU120は、エッジ検出に基づいて原稿輪郭を検出する。原稿輪郭検出は、具体的には、角交点検出処理、輪郭取得処理、その他の特徴点検出処理などの特徴点検出処理である。なお、上記ステップS2のエッジ検出を、特徴点検出処理の一つに含めてもよい。
【0103】
図11は、特徴点検出処理及び変換パラメータ生成処理を説明する図である。
【0104】
図11(a)に示すように、特徴点検出処理では、撮像領域300の撮像画像に対してエッジ検出を行って撮像対象物である書籍30の輪郭(以降、原稿輪郭と呼称する)を抽出し、更に輪郭線の形状に基づき主要6ポイント(●印参照)の角交点を検出し、そのX,Y座標を特定する。また図11(a)破線に示すように、角交点検出の直線成分分析により、原稿綴じ部分を抽出し、原稿載置面のX軸に対する原稿の傾きを求める。また、同様にして、上下ラインを検出する。
【0105】
ステップS4では、MPU120は、歪補正パラメータを生成する。歪補正パラメータは、例えばメッシュ構造生成により求める。図11(b)に示すように、メッシュ構造を生成し、射影変換の座標データを抽出する。
【0106】
ステップS5では、MPU120は、射影変換の座標データを、平面展開処理する画像補正を行う。
【0107】
ステップS6では、MPU120は、画像補正された表示データを生成する。
【0108】
ステップS7では、MPU120は、生成された表示データを、ビデオ出力I/F125を介して表示デバイス150に出力して本フローを終了する。
【0109】
図12は、本実施の形態に係る画像読取装置において照明によって発生する影の状態を説明する図である。図12は、既に説明した原稿位置規制部であるストッパー108の位置P0に書籍30を突き当てて、原稿載置面20に載置した状態を示している。また、アーム102を縮めた状態を例示したものである。
【0110】
既に説明したように、光源部105は書籍30を斜め方向から照明しており、支持部104aからX方向に遠い方の最大読取範囲であるPE1には影S1が生じる。一方、支持部104aからX方向に近い方の最大読取範囲であるP0には影S0が生じる。
【0111】
通常は撮像した画像が欠けることを防止するため、カメラ101aの撮像範囲(画角)を若干大きめにすることを考慮すると、X座標値が大きいPE1に生じる影S1の方が、X座標値が小さいP0に生じる影よりも大きくなり、影部分を安定して検出することができる。そして書籍30の原稿輪郭は影S1,S0に隣接するから、輪郭線を構成するエッジも影S0よりも影S1に基づくものの方が容易に検出でき、検出精度も向上する。後述するように、本実施の形態では、まず影S1に基づいてエッジを検出し、更に影S0についてのエッジを検出するにあたって影S1のエッジ検出結果を参照して原稿輪郭の抽出精度を向上している。
【0112】
さて、既に述べたように、本実施形態ではアーム102の高さに応じて光源部105の点灯範囲を変化させているが、図12において消灯範囲1に含まれるLEDを点灯させると、影S0が全く生じない事態が生じうる。逆に言えば、上述したエッジ検出過程を有する前提においては、影S0が生じるように点灯範囲を決定することが重要である。即ち本発明は、原稿載置面20に載置された高さがある被写体(書籍30)の輪郭に基づく影が生じるように、光源部105の点灯範囲(あるいは消灯範囲)を制御するものを含む。そして、点灯すべき光源の範囲はアーム102の高さに応じて決定してもよいし、カメラ101aで撮像した画像に基づく影S0の検出状況に応じて決定してもよい。
【0113】
図13は、エッジ検出処理を示すフローチャートである。図13は、図10のステップS2のサブルーチンである。
【0114】
ステップS11では、データ取得部201は、撮像データを取得する。
【0115】
ステップS12では、エッジ検出部202は、全ての撮像データについて2値化処理を行う。
【0116】
ステップS13では、エッジ検出部202は、2値化処理後のデータに基づいてエッジを検出し、ステップS14でエッジ検出部202は、エッジの特徴検出によりエッジを判断する。影の部分は、2値化処理の結果、黒データとなる。この黒データが書籍の端部のライン上に発生し、かつ所定数以上、連続で発生したときにエッジが検出されたとみなす。本実施の形態では、光源部105の照明は、原稿載置面20に対して斜め(例えば45°)に照射される。上述したように、影部分が、2値化処理されることにより、エッジ検出の精度を格段に向上させることができる。
【0117】
以降、図11と図12を併用して、影を用いたエッジ検出について詳細に説明する。
【0118】
さて、図11(a)等に示すように、書籍30には厚みがあるため、撮像された画像上でPE1側の上ライン31aは一直線にならないことが多いが、図12を用いて説明したように特に原稿位置規制部から遠い側においてエッジ検出精度が向上し、不定形上である書籍30の上ライン31aを正確に検出することが可能となる。
【0119】
一方、P0側においても、書籍30の下ライン31bは一直線にはならないことが多い(図7では下ラインは略直線として描かれているが、これは図7の視点を目印107やストッパー108上としたことによる)。影S0は光照射角度の関係で安定した形状を保ちにくく、影S0のみを信頼すると下ライン全体のエッジ検出精度は低下する可能性がある。しかしながら、影S0が生じるP0部分にはストッパー108が配置され、また、目印107を物理的な段差とすること等により、書籍30の位置自体を特定しやすい。更に、書籍では綴じ部分の背面である“背”の強度が特に高い等の構造上の特性から、P1における上ラインの形状とP0における下ラインの形状は線対称となっていることが多く、これらを考慮することで、上ラインの形状が特定できれば、これに基づいて下ラインの情報源の不完全性を補って正確なエッジ位置を検出することが可能となる。本実施形態では、このようにして原稿輪郭を抽出している。
【0120】
なお、書籍30を開いたときの右(左)ライン31cは、通常は直線状になるから、辺の全ての位置で高精度にエッジ検出を行う必要がない。
【0121】
以上詳細に説明したように、本実施の形態の画像読取装置100は、撮影部101と原稿載置面20(撮影面)との距離を変化させる方向に伸縮可能なアーム102と、アーム102に設けられて、撮影面を斜め方向から照らす光源部105と、を備える。MPU120は、光源部105が、撮影面20を斜め方向から照らす照明範囲に基づいて、光源部の発光状態を変える。例えば、MPU120は、アーム102の長手方向に並んで設けられたLED105a〜105dのうち、[消灯範囲2]として照明範囲外を照らすLED(例えば、LED105a)を消灯する。また、MPU120は、照明範囲の照度が所定以上の場合、[消灯範囲1]として照明範囲に近いLED(例えば、LED105c,LED105d)を消灯する。
【0122】
本実施の形態によれば、消灯範囲2及び消灯範囲1のLEDを消灯することで、消費電力の低減を図ることができる。特に、画像読取装置100が、USBバスパワーなど独立電源を持たない場合、消費電力の削減は、非常に重要である。
【0123】
また、消灯範囲1のLEDを消灯することで、白飛現象を防止し、ダイナミックレンジを確保することができる。その結果、その後の特徴点検出処理において検出精度が向上し、画像読取の精度を向上させることができる。
【0124】
以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されることはない。
【0125】
例えば、上記実施の形態は、アーム102に取り付けた光源部105が、原稿載置面20に対して、光を斜めから照射する構成を採っている。光源部105が、原稿載置面20に対して、光を斜めから照射する画像読取装置であれば、どのようなアーム構成であってもよい。
【0126】
上記実施の形態では、光源部105は複数の発光素子105aが並んで構成されると説明したが、光源部105は、例えば、1つの発光素子から構成されてもよい。また、この発光素子は、点状又は球状の素子であってもよいし、棒状の素子であってもよい。また、光源部105を複数の発光素子から構成する場合には、複数の発光素子のうちアームの伸縮に伴って不要な部分を消灯して必要な部分のみを点灯させる制御が行われてもよい。また、アームの伸縮に伴って発光素子の発光強度を変化させる制御が行われてもよい。
【0127】
また、上記実施の形態では、アームがスライド機構により伸縮する構成としたが、アームは様々な伸縮機構によって伸縮する構成としてもよい。また、アームに二段階のスライド機構を設けて、アームが、固定的に支持される下アームと、下アームに沿ってスライド移動する中アームと、中アームに沿ってスライド移動する上アームとを有する構成としてもよい。この場合、光源部は、中アームに設けて、アームの伸縮に伴う撮影部の移動量よりも光源部の移動量が所定の割合で少なくなる構成としてもよい。
【0128】
また、上記実施の形態では、アームの伸縮方向がカメラ101aの画角の境界線fに沿った方向である構成を例にとって説明したが、カメラ101aと原稿載置面20との距離、並びに、光源部105と原稿載置面20との距離を変化できれば、アームの伸縮方向はどの方向であってもよい。
【0129】
また、上記実施の形態では、アームの長手方向及び/又はアームの伸縮方向を原稿載置面に対して斜め方向とした構成を例にとって説明したが、例えば、アームの長手方向及び/又はアームの伸縮方向を鉛直方向としてもよい。この場合、光源部は、アームの側面に光の照射方向を斜め下方に向けて設けられるとよい。このような構成でも、光源部は原稿載置面を斜めに照射するとともに、アームの伸縮に伴って光源部の照明範囲を大小に変化させることができる。
【0130】
また、上記実施の形態では、書籍の紙面を撮影対象とする例をとって説明したが、本発明の画像読取装置は書籍以外の撮影対象にも適用可能である。
【0131】
上記実施の形態では、画像読取装置及びその画像読取方法という名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、装置はブックスキャナ装置、撮像装置等であってもよく、方法は、画像処理方法等であってもよい。
【0132】
さらに、上記画像読取装置を構成する各構成部、例えばMPUの種類、その機能ブロックなどは前述した実施の形態に限られない。
【0133】
また、本発明の画像読取装置の特徴構成であるデータ取得部、及びエッジ検出部の各機能は、どこに設置されていてもよい。例えば、図2のPC160側に持たせてもよい。
【0134】
また、以上説明した画像読取装置及びその画像読取方法は、これら画像読取装置及びその画像読取方法を機能させるためのプログラムでも実現される。このプログラムはコンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納されている。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、書籍の紙面を撮影する画像読取装置及びその画像読取方法に適用できる。
【符号の説明】
【0136】
20 原稿載置面
30 書籍
31a 上ライン
31b 下ライン
100 画像読取装置
101 撮影部
101a カメラ
102 アーム
102a 上アーム
102b 下アーム
103 脚部
104 土台部
104a 支持部
105 光源部
105a〜105d LED(発光素子)
107 目印(マーク)
108 ストッパー
120 MPU
120a I/O−I/F
121 ROM
122 RAM
123 操作部
124 ビデオ入力I/F
125 ビデオ出力I/F
131,131A 高さ検出部
132 光源制御部
135,138 検出片
136,137 フォトセンサ
141 DCパワー部
142 バッテリ
150 表示デバイス
160 パーソナルコンピュータ(PC)
201 データ取得部
202 エッジ検出部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影を行う撮影部と、
前記撮影部を撮影面に対向させた向きで支持するとともに、前記撮影部と前記撮影面との距離を変化させる方向に伸縮可能なアームと、
前記アームに設けられて、前記撮影面を斜め方向から照らすとともに、前記アームの伸縮に伴って移動する光源部と、
前記光源部が、前記撮影面を斜め方向から照らす照明範囲に基づいて、前記光源部の発光状態を変える制御部と、
を備える画像読取装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記光源部の一部又は全部を消灯して発光領域を変える、請求項1記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記光源部の一部又は全部の光量を変える、請求項1記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記光源部は、前記アームの長手方向に並んで設けられた複数の発光素子を有し、
前記制御部は、前記照明範囲外を照らす前記発光素子を消灯する、請求項1記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記光源部は、前記アームの長手方向に並んで設けられた複数の発光素子を有し、
前記制御部は、前記照明範囲の照度が所定以上の場合、前記照明範囲に近い前記発光素子を消灯する、請求項1記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記光源部は、出射する光の法線と前記撮影面との間で形成される角度が、前記撮影部の画角と等しい照射角度で照射する、請求項1記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記照射角度は、45°を含む角度である、請求項6記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記アームは、前記撮影面に対して斜めの向きに支持され、
前記光源部は、前記アームの側面部に設けられている、請求項1記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記アームは、固定アームと前記固定アームに沿ってスライド可能な可動アームとを備え、
前記光源部は、前記可動アームの側面部に設けられている、請求項1記載の画像読取装置。
【請求項10】
撮影部を撮影面に対向させた向きで支持するとともに、前記撮影部と前記撮影面との距離を変化させる方向に伸縮可能なアームと、
前記アームに設けられて、前記撮影面を斜め方向から照らすとともに、前記アームの伸縮に伴って移動する光源部と、を備える画像読取装置の画像読取方法であって、
前記撮影面を斜め方向から照らす照明範囲に基づいて、前記光源部の発光状態を変える、画像読取装置の画像読取方法。
【請求項11】
前記発光状態の変更は、前記照明範囲外を照らす前記光源部の発光素子を消灯する、請求項10記載の画像読取装置の画像読取方法。
【請求項12】
前記発光状態の変更は、前記照明範囲の照度が所定以上の場合、前記照明範囲に近い前記光源部の発光素子を消灯する、請求項10記載の画像読取装置の画像読取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−97732(P2013−97732A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242695(P2011−242695)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【特許番号】特許第4977266号(P4977266)
【特許公報発行日】平成24年7月18日(2012.7.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】