説明

画像読取装置

【課題】 フレア成分の発生を低減させるとともに読取光の照射光量の減少を防止する。
【解決手段】 画像情報が記録された画像記録媒体10と、画像記録媒体10から画像情報を読み取るときに、画像記録媒体10に対しライン光からなる読取光を射出する、エレクトロルミネセンス素子からなる読取光源と、画像記録媒体に記録された画像情報を消去するために画像記録媒体10に対し読取光とは異なる波長からなる消去光を射出する、エレクトロルミネセンス素子からなる消去光源とを有し、読取光源と消去光源とが、基板21上に一体的に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネセンス素子を用いてライン光を画像記録媒体に照射することにより、画像記録媒体に記録された画像情報を読取る画像読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、医療用X線撮影において、被験者が受ける被爆線量の減少、診断性能の向上等のために、X線に感応する例えばa−Seから成るセレン板等の光導電体を静電記録体として用い、静電記録体に放射線画像情報を担持するX線等の放射線を照射して、放射線画像情報を静電潜像として記録する画像記録媒体が提案されている。この画像記録媒体として、画像情報を蓄積記録し読取光が走査露光されることにより画像情報に応じた輝尽発光光を発生する蓄積性蛍光体シートや、画像情報を静電潜像として記録し、読取光が走査露光されることにより静電潜像に応じた電流を発生する固体検出器が提案されている。
【0003】
この画像記録媒体から記録された画像情報を読取る方法として、画像記録媒体に対して読取光を走査露光して画像情報を読取る方法がある(たとえば特許文献1参照。)。特許文献1においては、画像記録媒体と読取光を画像記録媒体に照射する読取光源とを有している。さらに、特許文献1においては、画像記録媒体と読取光源との間に画像記録媒体に残存する画像情報を消去するための消去光を射出する消去光源が設けられている。この消去光光源は、ガラス基板上に形成されたエレクトロルミネセンスパネル(以下、「ELパネル」という)からなっており、画像記録媒体に対し積層されている。
【特許文献1】特開2004−156908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような構成においては、読取光は消去光照射部を透過した後に画像記録媒体に照射されることになる。しかし、読取光が消去光照射部のガラス基板に入射する際、読取光の一部がガラス基板と空気との界面(入射面)において反射してしまい、画像記録媒体に照射される読取光の光量が少なくなってしまうという問題がある。
【0005】
また、読取光が消去光照射部であるELパネルを透過する際、ELパネル内で読取光が散乱してしまい、画像記録媒体における読取光を照射したい部位以外に読取光が照射されてしまう。その結果、画像情報を取得する部位以外の領域の画像情報を取得することになり、フレア成分の発生の原因になってしまうという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、読取光の照射光量の減少するとともにフレア成分の発生を低減することができる画像読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像読取装置は、画像情報が記録された画像記録媒体に読取光を照射することにより、画像記録媒体から画像情報を読取る画像読取装置において、画像記録媒体に対しライン光からなる読取光を射出する、エレクトロルミネセンス素子からなる読取光源と、画像記録媒体に記録された画像情報を消去するために画像記録媒体に対し読取光とは異なる波長からなる消去光を射出する、エレクトロルミネセンス素子からなる消去光源とを有し、読取光源と消去光源とが、基板上に一体的に形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
ここで、「基板上に一体的に形成されている」とは、読取光源と消去光源とが、同一の基板の厚み方向に積層されて形成されていること、あるいは同一の基板の同一平面上に並んで配列されていることを意味する。
【0009】
また、読取光源および消去光源のエレクトロルミネセンス素子は、無機エレクトロルミネセンス素子であってもよいし有機エレクトロルミネセンス素子であってもよい。すなわち、読取光源と消去光源とが基板の厚み方向に積層されているとき、読取光源および消去光源は、有機エレクトロルミネセンス素子同士を積層した構造もしくは有機エレクトロルミネセンス素子上に無機エレクトロルミネセンス素子が積層された構造になる。
【0010】
特に、読取光源と消去光源とが、基板上に読取光を射出する読取光発光ユニットと、消去光を射出する消去光発光ユニットとを積層することにより一体的に形成されたマルチフォトンエミッション素子からなるものであってもよい。このとき、読取光発光ユニットおよび消去光発光ユニットの数は、それぞれ単数であってもよいし複数であってもよい。
【0011】
このとき、読取光発光ユニットと消去光発光ユニットとの動作をそれぞれ個別に制御する発光制御手段をさらに有し、読取光発光ユニットの発光タイミングと消去光発光ユニットの発光タイミングとをそれぞれ独立して制御するようにしてもよい。
【0012】
同様に、読取光源と消去光源とが基板の同一平面上に並んで配列されているときであっても、読取光源と消去光源とが有機エレクトロルミネセンス素子からなっていてもよいし、無機エレクトロルミネセンス素子からなっていてもよい。このとき、読取光源として少なくとも読取波長の光を射出する無機エレクトロルミネセンス素子が適宜選択され、消去光源として少なくとも消去波長の光を射出する無機エレクトロルミネセンス素子が適宜選択されることになる。
【0013】
また、本発明の画像読取装置は、画像情報が記録された画像記録媒体に読取光を照射することにより、画像記録媒体から前記画像情報を読取る画像読取装置において、画像記録媒体に対しライン光からなる読取光を射出する読取光源と、画像記録媒体に記録された画像情報を消去するために画像記録媒体に対し前記読取光とは異なる波長からなる消去光を射出する消去光源とを有し、読取光源と消去光源とが、基板上に一体的に形成された無機エレクトロルミネセンス素子を用いたものであり、読取光源が、無機エレクトロルミネセンス素子における線状の複数の読取波長を射出する領域からなり、消去光源が、無機エレクトロルミネセンス素子におけるストライプ状の読取光源の隙間に形成された線状の複数の消去波長を射出する領域からなるものであることを特徴とするものである。
【0014】
なお、無機エレクトロルミネセンス素子は、読取光を射出するものであってもよいし、消去光を射出するものであってもよい。この無機エレクトロルミネセンス素子が読取光を射出するときには、消去光源は消去光を射出する領域に設けられた、読取光を消去光に波長変換する波長変換層を有する構造にしてもよいし、無機エレクトロルミネセンス素子が消去光を射出するときには、読取光源は読取光を射出する領域に設けられた、消去光を読取光に波長変換する波長変換層を有する構造にしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の画像読取装置によれば、読取光源と消去光源とが基板上に一体的に形成されていることにより、従来のように、読取光が消去光源を透過した後に画像記録媒体に照射されることによる読取光の散乱および反射ロスの発生を防止することができるため、画像読取装置の読取光のフレア成分の発生を低減するとともに光強度の低下を防止することができる。
【0016】
なお、読取光源と消去光源とが、読取光を射出する読取光発光ユニットと、消去光を射出する消去光発光ユニットとを備えたマルチフォトンエミッション素子からなるものであれば、高い電流効率により読取光と消去光を射出することができる。
【0017】
読取光発光ユニットと消去光発光ユニットとの動作をそれぞれ制御する発光制御手段をさらに有するものであれば、読取光源と消去光源とがマルチフォトンエミッション素子からなるものであっても、読取光と消去光とをそれぞれ独立して発光タイミングの制御を行うことができる。
【0018】
また、本発明の画像読取装置によれば、読取光源が、読取光を射出する線状の複数の無機エレクトロルミネセンス素子をストライプ状に並べた構造を有し、消去光源が、読取光源のストライプの間に配置された無機エレクトロルミネセンス素子に、無機エレクトロルミネセンス素子から射出される読取光を消去光に変換する波長変換層を積層した構造を有し、読取光源と消去光源とが、基板上に一体的に形成されていることにより、従来のように、読取光がガラス基板を透過した後に画像記録媒体に照射されることによる読取光の散乱および反射ロスの発生を防止することができるため、画像読取装置の読取光のフレア成分の発生を低減するとともに光強度の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の画像読取装置の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の画像読取装置の好ましい実施の形態を示す概略構成図である。この画像読取装置1は、画像情報が記録された画像記録媒体に読取光を照射することにより、画像記録媒体にから画像情報を読取るものである。
【0020】
まず、図1を参照して画像記録媒体10について説明する。画像記録媒体10は、たとえば特開2000−284056号公報に開示されているような、いわゆる光読み出し方式の画像記録媒体であって、読取用電極11、読取用光導電層12、電荷輸送層13、記録用光導電層14、第2電極15を積層した構造を有している。
【0021】
読取用電極11はたとえばネサ被膜等からなり、矢印Y方向に向かって延びた副数本の第2電極が略平行に形成された構造を有している。この読取用電極11は、各第2電極は電気的に絶縁した状態になっている。読取用光導電層12はたとえばアモルファスセレンからなっており、読取光の照射により導電性を呈し電荷対を発生するものである。電荷輸送層13は読取用光導電層12に積層されており、負電荷に対しては略絶縁体として作用し、正電荷に対しては略導電体として作用するようになっている。記録用光導電層14は、たとえばアモルファスセレンからなっており、記録用の電磁波(光または放射線)の照射によって導電性を呈し電荷対を発生するようになっている。さらに、記録用光導電層14の上には、照射される記録用の電磁波を透過するたとえばITO膜(Indium Tin Oxide)等の材料からなる、矢印Y方向に向かって延びた副数本の第2電極により構成された第2電極15が積層されている。
【0022】
ここで、電荷輸送層13と記録用光導電層14との界面には蓄電部19が形成されている。つまり、記録用光導電層14内で発生した電子が、読取用電極11と第2電極15の間で形成される電界により、読取用電極11側へ移動しようとしたときに、電荷輸送層13によってその移動が制限されるようになっている。よって蓄電部19には、記録用の電磁波の照射量に応じた電荷が静電潜像として蓄積され、画像情報が記録されることになる。
【0023】
ここで、画像記録媒体10に画像情報を記録するとき、信号取得部50から読取用電極11と第2電極15との間に高電圧が印加される。すると、読取用電極11には負電荷が帯電し、第2電極15には正電荷が帯電する。次に、第2電極15側から記録用の電磁波が照射されたとき、記録用の電磁波の照射量に応じて、記録用光導電層14において正負の電荷対が発生する。そのうち、電荷対の正孔は第2電極15側に移動し、第2電極15の負電荷と結合し消滅する。一方、電荷対の電子は、読取用電極11側に移動するが、電荷輸送層13によってその移動が制限される。これにより、蓄電部19に静電潜像として画像情報が記録される。
【0024】
蓄電部19に記録された画像情報を読取る場合、パネル状光源20から矢印Y方向に延びているライン状の読取光が、読取用電極11側から矢印X方向に走査しながら照射される。すると、読取光の照射量に応じた電荷対が読取用光導電層12において発生する。発生した電荷対の正孔は、電荷輸送層13を透過して蓄電部19に蓄積された負電荷と結合し消滅する。一方、電荷対の電子は読取用電極11側へ移動し正電荷と結合する。そして、読取用電極11において正孔と負電荷が結合したときに電流が流れる。この電流の変化を信号取得部50が検出することにより画像情報が読み取られる。
【0025】
図2は図1の画像読取装置1におけるパネル状光源20の好ましい実施の形態を示す断面図であり、図1と図2を参照してパネル状光源20について説明する。パネル状光源20は、陽極22と陰極23との間に複数の発光ユニット24を厚み方向に積層したマルチフォトンエミッション素子(特開2003−45676号公報参照)からなっており、たとえばガラス基板等の光透過性の基板21に積層されている。画像記録媒体10とパネル状光源20との間には、たとえば焦点深度の大きいSLP(セルフォックレンズプレート)等からなる結像光学系27が配置されており、パネル状光源20から射出された読取光および消去光が結像光学系27により画像記録媒体10上に結像されるようになっている。
【0026】
陽極22はたとえばITO膜等の光透過性の導電層であって基板21に板状に成膜されている。一方、陰極23はたとえばアルミニウム等からなる導電層であって、ストライプ状に配列された複数の線状電極からなっている。このパネル状光源20は、基板21側において画像記録媒体10に積層されており、基板21を透過した読取光および消去光が画像記録媒体10に照射されるようになっている。
【0027】
マルチフォトンエミッション素子の各発光ユニット24は、従来の有機EL素子の構成である、陽極と発光層と陰極との積層構造、陽極とホール輸送層と発光層と陰極との積層構造、陽極とホール輸送層と発光層と電子輸送層と陰極との積層構造、陽極とホール輸送層と発光層と電子輸送層と電子注入層と陰極との積層構造等から陰極と陽極とを除いた構成要素からなっている。また、各発光ユニット24は、等電位面を形成する層(以下、「CGL」(Charge generation layer)という)22aにより仕切られている。
【0028】
ここで、図2のマルチフォトンエミッション素子は、読取光を射出する読取光発光ユニット25と、消去光を射出する消去光発光ユニット26とを有し、読取光発光ユニット25が読取光源を構成し消去光発光ユニット26が消去光源を構成している。具体的には、図2においては、基板21に陽極22が積層されており、この陽極22にたとえば赤色光からなる消去光を射出する消去光発光ユニット26が積層されている。そして、消去光発光ユニット26にたとえば青色光からなる読取光を射出する複数の読取光発光ユニット25が積層されており、読取光発光ユニット25上に陰極23が積層された構造を有している。
【0029】
陽極22および陰極23は駆動電源部30に電気的に接続されており、この駆動電源部30は陽極22および陰極23に読取光または消去光を発光させるための駆動電圧を出力するものである。具体的には、陽極22にスイッチング素子41を介して駆動電源部30が接続されており、陰極23にスイッチング素子31を介して駆動電源部30が接続されている。さらに、消去光発光ユニット26上に積層されたCGL22aにもスイッチング素子42を介して駆動電源部30が接続されている。このスイッチング素子31、41、42の動作は、発光制御手段40により制御されている。
【0030】
そして、マルチフォトンエミッション素子から読取光を射出させるとき、スイッチング素子41をON状態、スイッチング素子42をOFF状態にするとともに、スイッチング素子31を走査方向(矢印Z方向)に向かって順次ONにしていく。すると、CGL22aと線状の陰極23との間に駆動電圧が印加され、CGL22aと陰極23とに挟まれた読取光発光ユニット25からライン光からなる読取光が走査しながら射出するようになっている。
【0031】
一方、マルチフォトンエミッション素子から消去光を射出させるとき、スイッチング素子42をOFF状態、スイッチング素子42をON状態にするとともに、スイッチング素子31のすべてをON状態にする。すると、陽極22と陰極23との間に駆動電圧が印加され、陽極22と陰極23とに挟まれた読取光発光ユニット25および消去光発光ユニット26から読取光および消去光が射出するようになっている。
【0032】
次に、図1と図2を参照して画像読取装置の動作例について説明する。まず、画像記録媒体10から画像情報を読み取るとき、発光制御手段40の制御により駆動電源部30から駆動電圧が読取光発光ユニット25に印加され、ライン光からなる読取光が画像記録媒体10に走査しながら照射されていく。すると、信号取得部50により画像記録媒体10における読取光が照射された部位から画像情報が順次取得されていく。
【0033】
そして、読取光の照射後、画像記録媒体10に残存した画像情報を除去するために消去光の照射が行われる。具体的には、発光制御手段40の制御により駆動電源部30から駆動電圧が読取光発光ユニット25および消去光発光ユニット26に印加され、読取光および消去光が画像記録媒体10に照射される。すると、残存している画像情報が画像記録媒体10から除去される。
【0034】
上記実施の形態によれば、読取光源と消去光源とが基板上に一体的に形成されていることにより、従来のように、読取光が消去光源を透過した後に画像記録媒体10に照射されることによる読取光の散乱および反射ロスの発生を防止することができるため、画像読取装置1の読取光のフレア成分の発生を低減するとともに光強度の低下を防止することができる。
【0035】
なお、読取光源と消去光源とが、読取光を射出する読取光発光ユニット25と、消去光を射出する消去光発光ユニット26とを備えたマルチフォトンエミッション素子からなるものであれば、高い電流効率により読取光と消去光を射出することができる。
【0036】
読取光発光ユニット25と消去光発光ユニット26との動作をそれぞれ制御する発光制御手段40をさらに有するものであれば、読取光源と消去光源とがマルチフォトンエミッション素子を用いて一体的に形成されていたときであっても、読取光と消去光とをそれぞれ独立して発光タイミングの制御を行うことができる。
【0037】
図3は本発明の画像読取装置におけるパネル状光源の第2の実施の形態を示す断面図であり、図3を参照してパネル状光源120について説明する。なお図3のパネル状光源120において図2のパネル状光源20と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。また、図3においては、結像光学系27を含まない形態を用いて説明しているが、画像記録媒体10とパネル状光源120との間に結合光学系27を挟むようにしてもよい。
【0038】
図3のパネル状光源120が図2のパネル状光源20と異なる点は、発光ユニット24の積層構造である。具体的には、パネル状光源120は、基板21上にアルミニウム等からなる陰極23が積層されており、陰極23上に複数の読取光発光ユニット25がCGLを介して積層されている。また読取光発光ユニット25上にはCGLを介して消去光発光ユニット26が積層されており、この消去光発光ユニット26にITO膜等の透明電極からなる陽極22が積層されている。つまりパネル状光源120は、陽極22側において画像記録媒体10に積層されており、陽極22を透過した読取光および消去光が画像記録媒体10に照射されるようになっている。
【0039】
図3のようなパネル状光源120であっても、読取光源と消去光源とが基板21上に一体的に形成されていることにより、従来のように、読取光が消去光源を透過した後に画像記録媒体10に照射されることによる読取光の散乱および反射ロスの発生を防止することができるため、画像読取装置1の読取光のフレア成分の発生を低減するとともに光強度の低下を防止することができる。
【0040】
図4は本発明の画像読取装置におけるパネル状光源の第3の実施の形態を示す模式図であり、図4を参照してパネル状光源220について説明する。なお図4のパネル状光源220において図2のパネル状光源20と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。また、図3においては、結像光学系27を含まない形態を用いて説明しているが、画像記録媒体10とパネル状光源220との間に結合光学系27を挟むようにしてもよい。
【0041】
図4のパネル状光源220が図2のパネル状光源20と異なる点は読取光源および消去光源の構造である。つまり、パネル状光源220は、読取光源と消去光源とが、基板21上に一体的に形成されたエレクトロルミネセンス素子を用いたものであり、読取光源が、無機エレクトロルミネセンス素子における線状の複数の読取波長を射出する領域からなり、消去光源が、無機エレクトロルミネセンス素子におけるストライプ状の読取光源の隙間に形成された線状の複数の消去波長を射出する領域からなっている。
【0042】
具体的には、パネル状光源220は、板状に形成された陽極222と、ストライプ状に配列された複数の線状電極からなる陰極223と、陽極222と陰極223とに挟まれた無機EL層224とからなる無機ELパネルからなっている。この無機ELパネルは、駆動電源部30から陽極222と陰極223とに駆動電圧が印加されたとき、読取光を射出するようになっている。よって、画像記録媒体10にライン光からなる読取光を照射するとき、スイッチング素子31において読取光を射出すべき領域にある陰極223に駆動電圧を印加することによって、読取光が走査しながら射出される。
【0043】
一方、上述の読取光源のストライプの隙間には、無機エレクトロルミネセンス素子から射出される読取光を消去光に変換する波長変換層225が積層されている。このパネル状光源220が画像記録媒体10に消去光を照射するとき、スイッチング素子230において消去光を射出すべき領域にある陰極223に駆動電圧を印加することによって消去光が射出されるようになっている。
【0044】
図4のようなパネル状光源220であっても、読取光源と消去光源とが基板21上に一体的に形成されていることにより、従来のように、読取光が消去光源を透過した後に画像記録媒体10に照射されることによる読取光の散乱および反射ロスの発生を防止することができるため、画像読取装置1の読取光のフレア成分の発生を低減するとともに光強度の低下を防止することができる。
【0045】
なお、図4においては、無機EL素子が読取光を射出するものであって、消去光源側に波長変換層225を設ける場合について例示しているが、無機EL素子が消去光を射出するものであって、読取光原側に波長変換層を設けるようにしてもよい。
【0046】
また、図4において、読取光源と前記消去光源とが、基板21上の同一平面に並んで配置されることにより一体的に形成される形態として、消去光源が読取光を射出する無機EL素子の上に波長変換層225を設けた構造を有している場合について言及しているが、図5に示すパネル状光源320のように、読取光源が、読取光を射出する線状の複数のEL素子224がストライプ状に配列された構造を有し、消去光源が、ストライプ状のEL素子224の隙間に配列された、消去光を射出する線状の複数のEL素子324からなるようにしてもよい。この場合、EL素子224、324は、有機EL素子であっても無機EL素子であってもよく、読取光源のEL素子224として、少なくとも読取波長の光を射出するEL素子が適宜選択され、消去光源のEL素子324として、少なくとも消去は腸の光を射出するEL素子が適宜選択されることになる。
【0047】
上記各実施の形態によれば、読取光源と消去光源とが、基板21上に一体的に形成されていることにより、従来のように、読取光が基板を透過した後に画像記録媒体に照射されることによる読取光の散乱および反射ロスの発生を防止することができるため、画像読取装置におけるフレア成分の発生を低減させるとともに光強度の低下を防止することができる。
【0048】
また、図2と図3に示すように、読取光源と消去光源とが、読取光を射出する読取光発光ユニットと、消去光を射出する消去光発光ユニットとを備えたマルチフォトンエミッション素子からなるものであれば、高い電流効率により読取光と消去光を射出することができる。
【0049】
さらに、読取光発光ユニット25と消去光発光ユニット26との動作をそれぞれ制御する発光制御手段をさらに有するものであれば、読取光源と消去光源とがマルチフォトンエミッション素子において一体的に形成されていたときであっても、読取光と消去光とをそれぞれ独立して発光タイミングの制御を行うことができる。
【0050】
また、図4に示すように、読取光源と消去光源とが、ストライプ状に形成された複数の線状の読取光発光領域と、各読取光発光領域の間に形成された、消去光を射出する消去光発光領域とを有する無機EL素子からなるものであっても、従来のように、読取光がガラス基板を透過した後に画像記録媒体に照射されることによる読取光の散乱および反射ロスの発生を防止することができるため、画像読取装置の読取光のフレア成分の発生を低減させるともに光強度の低下を防止することができる。
【0051】
本発明の実施の形態は、上記実施の形態に限定されない。たとえば、図1の画像読取装置1において、画像記録媒体10の一例として固体検出器の場合について例示しているが、蓄積性蛍光体シートの場合にも上述したパネル状光源20を適用することができる。
【0052】
また、図2において、画像記録媒体10に残存する画像情報を消去する際、消去光ととともに読取光を照射するようにしているが、消去光のみを照射するようにしてもよい。この場合、陽極22とCGL22aとの間のみに駆動電圧を印加することができるように、CGL22aを導電体を有するITO膜とし、スイッチング素子および駆動電源部30を接続する構成にすればよい。
【0053】
また、図2と図3において、マルチフォトンエミッション素子を用いた場合について例示しているが、基板21の上に読取光(消去光)を射出する有機EL素子を積層し、その有機EL素子に消去光(読取光)を射出する有機EL素子もしくは無機EL素子を積層するようにしてもよい。
【0054】
さらに、図1と図2において、画像記録媒体10とパネル状光源20との間に結像光学系27が配置されている場合について例示しているが、図3や図4に示すように結像光学系27を介さずに画像記録媒体10とパネル状光源20とが対向する構造を有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の画像読取装置の好ましい実施の形態を示す構成図
【図2】本発明の画像読取装置におけるパネル状光源の好ましい実施の形態を示す模式図
【図3】本発明の画像読取装置におけるパネル状光源の第2の実施の形態を示す模式図
【図4】本発明の画像読取装置におけるパネル状光源の第3の実施の形態を示す模式図
【図5】本発明の画像読取装置におけるパネル状光源の第4の実施の形態を示す模式図
【符号の説明】
【0056】
1 画像読取装置
10 画像記録媒体
20、120、220、320 パネル状光源
21 基板
22、222 陽極
23、223 陰極
24 発光ユニット
25 読取光発光ユニット
26 消去光発光ユニット
30 駆動電源部
40 発光制御手段
50 信号取得部
225 波長変換層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像情報が記録された画像記録媒体に読取光を照射することにより、該画像記録媒体から前記画像情報を読取る画像読取装置において、
前記画像記録媒体に対しライン光からなる読取光を射出する、エレクトロルミネセンス素子からなる読取光源と、
前記画像記録媒体に記録された前記画像情報を消去するために前記画像記録媒体に対し前記読取光とは異なる波長からなる消去光を射出する、エレクトロルミネセンス素子からなる消去光源と
を有し、
前記読取光源と前記消去光源とが、基板上に一体的に形成されていることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記読取光源と前記消去光源とが、前記基板上に積層されることにより一体的に形成されたマルチフォトンエミッション素子からなるものであることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記読取光源と前記消去光源との動作をそれぞれ個別に制御する発光制御手段をさらに有することを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
画像情報が記録された画像記録媒体に読取光を照射することにより、該画像記録媒体から前記画像情報を読取る画像読取装置において、
前記画像記録媒体に対しライン光からなる読取光を射出する読取光源と、
前記画像記録媒体に記録された前記画像情報を消去するために前記画像記録媒体に対し前記読取光とは異なる波長からなる消去光を射出する消去光源と
を有し、
前記読取光源と前記消去光源とが、前記基板上に一体的に形成された無機エレクトロルミネセンス素子を用いたものであり、
前記読取光源が、前記無機エレクトロルミネセンス素子における線状の複数の読取波長を射出する領域からなり、
前記消去光源が、前記無機エレクトロルミネセンス素子における前記ストライプ状の読取光源の隙間に形成された線状の複数の消去波長を射出する領域からなるものであることを特徴とする画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−98334(P2006−98334A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−287316(P2004−287316)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】