説明

画像読取装置

【課題】原稿を一方向に搬送しつつ2つの画像読取手段によって原稿の両面の画像を読み取る画像読取装置で、原稿の表面と裏面の読取倍率の不一致を解消する。
【解決手段】原稿を搬送しつつ原稿の一方の面の画像を読み取る第一読取手段111と、前記第一読取手段と並行して原稿の他方の面の画像を読み取る第二読取手段112と、前記第一読取手段で読み取られた原稿サイズと、前記第二読取手段で読み取られた原稿サイズとから読み取り倍率の違いを求め、この読み取り倍率の違いを解消する変倍係数を求める算出手段101と、前記第一読取手段で読得られた画像データと前記第二読取手段で得られた画像データとのいずれか一方に前記変倍係数による変倍処理を施す変倍処理手段161,162と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿の表裏を同時あるいは並行して別の読み取り手段によって読み取る画像読取装置における表裏の画像サイズの差に基づく読み取り倍率の違いを解消する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
原稿の読み取りを行う画像形成装置としては、1つの読取手段を備えていて原稿の片面の読み取りを行うもの、1つの読取手段を備えていて原稿を往復(スイッチバック)させて原稿の両面の読み取りを行うもの、2つの読取手段を備えていて原稿を搬送させつつ両面の読み取り(両面同時読み取り)を行うもの、などが存在している。
【0003】
特に、原稿を一方向に搬送(1パス)させつつ2つの読取手段で並行して両面の読み取りを行う画像読取装置が、短時間で原稿両面の読み取りを行うことができ生産性の点で優れており、さらに原稿へのダメージも小さく、複雑な反転機構が不要になるなど、利点が存在している。
【0004】
なお、このような両面同時読み取りに関しては、以下の特許文献1に関連した技術や提案が記載されている。
【特許文献1】特開平8−265576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したスイッチバック方式の両面読み取りでは、1つの読取手段によって原稿の両面を読み取るために、読み取りの倍率は等しくなる。
一方、上述した1パス両面読み取りの装置では、原稿の両面をそれぞれ異なる読取手段によって読み取るため、読み取りの倍率が微妙に異なる状態になることがある。
【0006】
また、一般的には、第一の読取手段として縮小光学系を備えたCCDセンサを用いるとともに、第二の読取手段として原稿自動搬送装置内部に密着型のセンサを用いる場合がある。このような画像読取装置では、第一の読取手段と第二の読取手段とで構造が異なるため、両面の読み取り倍率に違いが生じやすくなる。
【0007】
なお、この読取倍率は出荷前にそれぞれ調整されている。ここで、たとえば、±0.01%以内の基準で調整されている場合、一方が+0.01%、他方が−0.01%で調整されることもあり得る。この場合、表裏の読み取り倍率の相対的な違いは0.02%となり、表裏の同じ位置に罫線などが存在していると、差が目立ちやすい状態になる。
【0008】
なお、上述した特許文献1記載の画像読取装置は、原稿の両面について、表面と裏面とで異なる任意の読み取り倍率(100%と60%など)を設定するものであり、両面の微妙な倍率のずれ(不一致)を解消することについては何ら配慮されていなかった。
【0009】
また、2つの読取手段で並行して両面読み取りを実行する画像読取装置についても、両面の微妙な倍率のずれ(不一致)を解消することについては適切な配慮がなされていなかった。
【0010】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであって、原稿を一方向に搬送しつつ2つの画像読取手段によって原稿の両面の画像を読み取る画像読取装置で、原稿の表面と裏面の読取倍率の不一致を解消することができる画像読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決する本発明は、以下に記載するようなものである。
(1)請求項1記載の発明は、原稿を搬送しつつ原稿の一方の面の画像を読み取る第一読取手段と、前記第一読取手段と並行して原稿の他方の面の画像を読み取る第二読取手段と、前記第一読取手段で読み取られた原稿サイズと、前記第二読取手段で読み取られた原稿サイズとから読み取り倍率の違いを求め、この読み取り倍率の違いを解消する変倍係数を求める算出手段と、前記第一読取手段で読得られた画像データと前記第二読取手段で得られた画像データとのいずれか一方に前記変倍係数による変倍処理を施す変倍処理手段と、を備えたことを特徴とする画像読取装置である。
【0012】
(2)請求項2記載の発明は、前記原稿サイズの差は主走査方向の差であり、前記変倍処理手段は、主走査方向の原稿サイズの差に基づく読み取り倍率の違いを解消するように前記変倍係数による変倍処理を施す、ことを特徴とする請求項1記載の画像読取装置である。
【0013】
(3)請求項3記載の発明は、原稿を搬送しつつ原稿の一方の面の画像を読み取る第一読取手段と、前記第一読取手段と並行して原稿の他方の面の画像を読み取る第二読取手段と、前記第一読取手段で読み取られた原稿サイズと、前記第二読取手段で読み取られた原稿サイズとから読み取り倍率の違いを求め、この読み取り倍率の違いを解消する変倍係数を求める算出手段と、前記第一読取手段で得られた画像データと前記第二読取手段で得られた画像データと前記算出手段で求められた前記変倍係数とを出力する、ことを特徴とする画像読取装置である。
【0014】
(4)請求項4記載の発明は、前記算出手段は、前記第一読取手段で読み取られた原稿の主走査方向サイズと、前記第二読取手段で読み取られた原稿の主走査方向サイズとを、同じタイミングで得て、前記変倍係数を求める、ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の画像読取装置である。
【0015】
(5)請求項5記載の発明は、前記第一読取手段と前記第二読取手段の一方は、縮小光学系を用いた読取手段であり、他方は、原稿に密着して読み取る密着型の読取手段である、ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の画像読取装置である。
【0016】
(6)請求項6記載の発明は、前記算出手段は、前記密着型の読取手段を基準にして、前記縮小光学系を用いた読取手段で得られた画像データに対して変倍処理を施すための変倍係数を算出する、ことを特徴とする請求項5記載の画像読取装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると以下のような効果が得られる。
(1)請求項1記載の発明では、第一読取手段が原稿を搬送しつつ原稿の一方の面の画像を読み取るとともに、第二読取手段が第一読取手段と並行して原稿の他方の面の画像を読み取る。この読み取りの際に、算出手段が、第一読取手段で読み取られた原稿サイズと、第二読取手段で読み取られた原稿サイズとから読み取り倍率の違いを求め、この読み取り倍率の違いを解消する変倍係数を求める。変倍処理手段は、第一読取手段で読得られた画像データと第二読取手段で得られた画像データとのいずれか一方に変倍係数による変倍処理を施す。これにより、原稿を一方向に搬送しつつ2つの画像読取手段によって原稿の両面の画像を読み取る画像読取装置で、原稿の表面と裏面の読取倍率の不一致を解消することが可能になる。
【0018】
(2)請求項2記載の発明では、上記(1)における原稿サイズの差は主走査方向の差であり、変倍処理手段は、主走査方向の原稿サイズの差に基づく読み取り倍率の違いを解消するように変倍係数による変倍処理を施す。これにより、原稿を一方向に搬送しつつ2つの異なる画像読取手段によって原稿の両面の画像を読み取る画像読取装置で、原稿の表面と裏面とで発生する読取倍率の不一致を解消することが可能になる。
【0019】
(3)請求項3記載の発明では、第一読取手段が原稿を搬送しつつ原稿の一方の面の画像を読み取るとともに、第二読取手段が第一読取手段と並行して原稿の他方の面の画像を読み取る。この読み取りの際に、算出手段が、第一読取手段で読み取られた原稿サイズと、第二読取手段で読み取られた原稿サイズとから読み取り倍率の違いを求め、この読み取り倍率の違いを解消する変倍係数を求める。そして、第一読取手段で得られた画像データと、第二読取手段で得られた画像データと、算出手段で求められた変倍係数とを外部に出力する。そして、画像データと変倍係数とを受けた外部の機器が必要に応じて変倍処理を実行する。これにより、原稿を一方向に搬送しつつ2つの画像読取手段によって原稿の両面の画像を読み取る画像読取装置で、原稿の表面と裏面の読取倍率の不一致を解消可能な画像データを出力することが可能になる。
【0020】
(4)請求項4記載の発明では、算出手段は、同じタイミングで得た、第一読取手段で読み取られた原稿の主走査方向サイズと、第二読取手段で読み取られた原稿の主走査方向サイズとから、変倍係数を求める。したがって、原稿が斜行していたり、また、斜行の状態が変化する状況であっても、同じタイミングで得た原稿の主走査方向サイズを基準にして変倍係数を求めるため、原稿の表面と裏面の読取倍率の不一致の状態を正確に検出することができるようになり、この結果、原稿を一方向に搬送しつつ2つの画像読取手段によって原稿の両面の画像を読み取る画像読取装置で、原稿の表面と裏面の読取倍率の不一致を解消することが可能になる。
【0021】
(5)請求項5記載の発明では、原稿を一方向に搬送しつつ2つの異なる画像読取手段によって原稿の両面の画像を読み取る画像読取装置で、縮小光学系を用いた読取手段と密着型の読取手段とで発生する読取倍率の不一致を解消することが可能になる。
【0022】
(6)請求項6記載の発明では、密着型の読取手段を基準にして、縮小光学系を用いた読取手段で得られた画像データに対して変倍処理を施すようにしており、誤差の生じにくい密着型の読取手段を基準にした状態で読取倍率不一致を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態)を詳細に説明する。
なお、原稿の内容を画像情報として読み取って画像データを生成して出力する画像読取装置(スキャナ)であっても、また、原稿読み取り手段(スキャナ)により複写対象物(原稿)の内容を画像情報として読み取って複写する機能を備えた画像形成装置(複写装置)であっても、さらに、原稿読み取り手段(スキャナ)により送信対象物(原稿)の内容を画像情報として読み取って通信回線を介して送信する機能を備えた画像送信装置(ファクシミリ装置)であっても、本発明の実施形態を適用することが可能である。
【0024】
〈画像読取装置の機械的構成〉
まず、図2を参照して本実施形態の画像読取装置の機械的構成を説明する。なお、ここでは、原稿を自動的に搬送しつつ、反転機構を用いることなく、1パスと呼ばれる1回の搬送で原稿の両面を同時あるいは並行して読み取る機能を有する画像読取装置を、本実施形態の具体例として用いる。
【0025】
なお、ここでは、原稿の搬送や駆動に用いられるローラ、このローラを駆動するモータやモータ駆動回路やギヤなどについては詳細を省略し、原稿の搬送と読み取りとを原理的に模式図として示している。
【0026】
ここで、ADF200は原稿トレイ210に載置された原稿を図中の矢印方向に搬送しつつ、(1)位置でスキャナ本体部300の縮小光学系305を介して第一読取手段としてのCCD310により原稿表面の画像を読み取り、その後、(2)位置で密着型の第二読取手段であるCIS(Contact Image Sensor)モジュール400にて原稿裏面の画像を読み取り、原稿排紙トレイ220に排紙を行う。
【0027】
ここで、第一読取手段の読み取り位置直前には原稿先端検知センサ201が配置され、第二読取手段の読み取り位置直前には原稿先端検知センサ202が配置されている。
また、ADF200を用いずに、プラテンガラス320上に載置した原稿を、スキャナ本体部300により読み取ることも可能である。
【0028】
すなわち、原稿を一度通過させる1パスにより、原稿の表面と裏面とをそれぞれ別の読取手段によって並行して読み取ることで、複雑な反転機構を用いることなく、原稿へのダメージを減らし、生産性を向上させるようにしている。
【0029】
なお、この図2に示した本実施形態では、第一読取手段としてのCCD310はミラーやレンズなどの縮小光学系を介して原稿の縮小像を読み取り、一方、第二読取手段としてのCISモジュール400は原稿の等倍像を読み取るものである。ただし、第一読取手段と第二読取手段とは、ともに縮小光学系を介して読み取るCCDであっても良いし、ともに密着型のCISモジュールであっても良い。
【0030】
〈画像読取装置の電気的構成〉
図1は本発明の第1の実施形態の画像読取装置100内の詳細構成を示すブロック図である。なお、この図1では、本実施形態の特徴部分の動作説明に必要な部分の周囲を中心に記載してあり、その他の画像読取装置として既知の部分については省略してある。
【0031】
101は画像読取装置100各部を制御する制御部である。なお、この制御部101は、原稿の読み取りや変倍処理に関する各種制御を実行する。なお、この制御部101が変倍係数を求める算出手段をも構成している。102は各種データや各種パラメータを記憶する記憶部であり、必要に応じて後述する変倍係数を記憶する。
【0032】
103は原稿サイズの指定や読み取りスタートなどの利用者からの各種指示が入力される操作部である。105は画像読取装置100の表示部であり、制御部101の制御に基づいて、各種状態あるいは各種メッセージを文字や数値コードや絵文字などによって表示する。あるいは、この表示部105は、必要に応じて、音声や光の点滅によって表示や報知する。なお、操作部103と表示部105とはタッチパネル形式で一体に構成されていてもよい。
【0033】
107は制御部101の指示に基づいて原稿の搬送駆動を行う原稿搬送駆動部である。なお、この原稿搬送駆動部107の一部として、原稿先端検知センサ201と原稿先端検知センサ202とが備えられており、検知結果は制御部101に通知される。
【0034】
111は構成する第一読取部であり、図2に示した具体例では、縮小光学系を介してCCDにより原稿の第一面(表面)の画像の読み取りを行う第一読取手段である。
121は第一読取部111に必要な各種の駆動信号を与えると共に、第一読取部111から得られた読取信号に所定の信号処理を施してデジタル化された画像データに変換する信号処理部である。
【0035】
131は第一読取部111で読み取って得られた画像データに対して、ラインメモリ141を用いてシェーディング補正や原稿幅(主走査方向サイズ)検知などを行う画像処理部である。
【0036】
151はページ単位で画像データを格納するページメモリである。変倍処理部161は制御部101から与えられる変倍係数に従ってページメモリ151に格納されている画像データに対して変倍処理を実行する変倍処理手段である。
【0037】
112は構成する第二読取部であり、図2に示した具体例では、密着型のCISモジュールにより原稿の第二面(裏面)の画像の読み取りを行う第二読取手段である。
122は第二読取部112に必要な各種の駆動信号を与えると共に、第二読取部112から得られた読取信号に所定の信号処理を施してデジタル化された画像データに変換する信号処理部である。
【0038】
132は第二読取部112で読み取って得られた画像データに対して、ラインメモリ142を用いてシェーディング補正や原稿幅(主走査方向サイズ)検知などを行う画像処理部である。
【0039】
152はページ単位で画像データを格納するページメモリである。変倍処理部162は制御部101から与えられる変倍係数に従ってページメモリ152に格納されている画像データに対して変倍処理を実行する変倍処理手段である。
【0040】
なお、後述するように、変倍処理部161と変倍処理部162とは、いずれか一方のみが変倍処理を行うのであれば、いずれか一方のみ備えていればよい。
〈第一の実施形態の動作状態〉
以下、第一の実施形態の画像読取装置の動作について、図3のフローチャートを参照して、詳細な動作説明を行う。
【0041】
まず、図3により本実施形態の全体処理を説明する。制御部101は、画像読取装置100の操作部103から両面読取開始の指示があった場合、あるいは、図示されない外部のコンピュータなどから両面読取開始の指示があった場合に、この図3のフローチャートに示された処理を実行する。
【0042】
まず、制御部101は、原稿搬送駆動部107に原稿搬送の指示を与える。この指示を受けた原稿搬送駆動部107は、図2の一点鎖線に示された経路を通るように、原稿トレイ210上に載置されている原稿を1枚ずつ搬送する(図3中のステップS301)。
【0043】
搬送された原稿の先端が原稿先端検知センサ201を通過したことが検知されると(図3中のステップS302でYES)、制御部101から指示を受けた信号処理部121から読取領域有効信号(V−VALID,H−VALID)が第一読取部111に供給されて、原稿第一面の読み取りが開始される(図3中のステップS303)。なお、原稿の後端が原稿先端検知センサ201を通過したことが検知されるまで、制御部101から指示を受けた信号処理部121から読取領域有効信号(V−VALID,H−VALID)の供給が続行され、原稿第一面の読み取りが続けられる。
【0044】
そして、搬送された原稿の先端が原稿先端検知センサ202を通過したことが検知されると(図3中のステップS304でYES)、制御部101から指示を受けた信号処理部122から読取領域有効信号(V−VALID,H−VALID)が第二読取部112に供給されて、原稿第二面の読み取りが開始される(図3中のステップS305)。なお、原稿の後端が原稿先端検知センサ202を通過したことが検知されるまで、制御部101から指示を受けた信号処理部122から読取領域有効信号(V−VALID,H−VALID)の供給が続行され、原稿第二面の読み取りが続けられる。
【0045】
そして、第一読取部111と第二読取部112との両方で読み取りを開始して所定のタイミングになった時点で(図3中のステップS306)、制御部101から指示により、画像処理部131と画像処理部132とでそれぞれの画像データの原稿幅(主走査方向サイズ)の検知を行う(図3中のステップS307)。この場合、原稿の主走査方向のエッジ検出を行い、右端と左端との間隔を原稿の主走査方向サイズとする。なお、画像処理部131,画像処理部132の代わりに、ページメモリ151,ページメモリ152で原稿の主走査方向サイズの検出を行ってもよい。
【0046】
ここで、原稿は複数の搬送ローラにより駆動されており、また、場合によっては、複数の搬送ローラのそれぞれは異なるモータにより駆動されている場合もある。このため、複数の搬送ローラの滑り具合の違い、複数のモータの駆動トルクの違いなどにより、原稿が搬送中に姿勢変化を起こして斜行する可能性もある。このような場合、第一読取部111と第二読取部112とは、読み取りに位相差(時間差)を有しているため、原稿の同一位置で原稿サイズ検知を行うと、姿勢変化の状態が変化して、検出されるサイズが狂う可能性がある。このため、第一読取部111と第二読取部112とで読み取りを行っている際の、同じタイミング(同時刻)で主走査方向サイズを検出する。
【0047】
そして、第一読取部111で得られた原稿の主走査方向サイズと、第二読取部112で得られた原稿の主走査方向サイズとの差に基づく読み取り倍率の違いから、制御部101が変倍係数を算出する(図3中のステップS308)。なお、原稿が同じ速度で搬送されている状態で、並行して第一読取部111と第二読取部112とで読み取りが実行されているため、原稿の副走査方向のサイズは同一となるため、副走査方向の変倍処理は不要である。
【0048】
そして、算出された変倍係数に基づいて、変倍処理部161と変倍処理部162の一方あるいは両方で、ページメモリに格納されている画像データに対して変倍処理を実行する(図3中のステップS309)。
【0049】
ここで、縮小光学系を用いた第一読取部111と密着型の第二読取部112とを用いた以上の具体例の場合、第二読取部112では原稿と密着した状態で等倍で読み取りを行うため原稿サイズに関する誤差(読み取り倍率の違い)が生じにくい。これに対し、第一読取部111では縮小光学系によって光学像を縮小してから読み取りを行うため、原稿からセンサまでの光路長が長いため、原稿サイズに関する誤差(読み取り倍率の違い)が生じやすい。
【0050】
このため、この第二読取部112側を基準にして、縮小光学系を用いた第一読取部111で得られた画像データに対して変倍処理を施すことが望ましい。従って、制御部101は、第二読取部112側を基準にして、縮小光学系を用いた第一読取部111で得られた画像データに対して変倍処理を施すための変倍係数を算出し、変倍処理部161が変倍係数に応じた変倍処理を実行する。
【0051】
これにより、読み取り倍率の誤差の生じにくい密着型の第二読取部112を基準にした状態で、比較的誤差が発生しやすい縮小光学系を用いた第一読取部111側の読取倍率不一致を、容易に解消することができる。
【0052】
なお、第一読取部111と第二読取部112とが共に同じ密着型のコンタクトイメージセンサである場合、あるいは、共に同じ縮小光学系を備えた場合などでは、一方では拡大、他方では縮小といったように変倍処理を実行し、中間のサイズになるように変倍処理を実行することも可能である。
【0053】
また、いずれか一方の原稿サイズを基準にしたり、中間の原稿サイズを基準にしたりといった相対的な変倍処理ではなく、検出された原稿サイズの絶対値を基準にして、両方の画像データに対して変倍処理を実行するようにしてもよい。
【0054】
そして、以上の変倍処理が完了したページメモリ151に格納された画像データ、および、変倍処理が不用であったページメモリ152に格納された画像データを外部に出力し(図3中のステップS310)、処理を終了する。また、読み取りが終わった原稿は、原稿搬送駆動部107によって原稿排紙トレイ220に排紙される。なお、原稿トレイ210上に原稿が存在していれば、以上の処理を繰り返し実行する。
【0055】
なお、原稿幅サイズ検出(図3中のステップS307)、変倍係数算出(図3中のステップS307)は、原稿1枚毎に行ってもよいが、一度の複数の原稿の読み取りの最初の1枚、所定枚数の読み取り毎に1回、毎朝1回、毎週初めの日の朝に1回、のいずれかの所定のタイミングに行うようにして、制御部101の制御により変倍係数を記憶部102に記憶しておく。そして、記憶部102に格納されている変倍係数を用いて、各原稿毎に変倍処理(図3中のステップS309)を実行すればよい。
【0056】
また、一方の読取部のみを用いる片面原稿読み取りの場合にも、両方の読取手段で読み取りを実行し、原稿サイズの検出と変倍係数の算出とを行い、必要に応じて変倍処理を実行すればよい。
【0057】
また、記憶部102に既に変倍係数が記憶してあれば、その変倍係数を用いることで片面読み取りの画像データに変倍処理を実行することが可能になる。
また、以上の実施形態の場合では、第一読取部111のプラテンガラス320上に原稿を載置した状態での読み取りの場合には、ADF200を使用しないため変倍係数の算出が行えないが、同様にして、記憶部102に記憶させておいた以前の変倍係数を用いることで変倍処理を実行することが可能になる。
【0058】
なお、ADF200を使用しないでプラテンガラス320上の原稿の読み取りが連続して実行される場合、制御部101は、上述した所定タイミング、たとえば、所定枚数の読み取り毎に1回、毎朝1回、毎週初めの日の朝に1回、のいずれかで、ADF200を使用して原稿幅サイズ検出(図3中のステップS307)と変倍係数算出(図3中のステップS307)とを行うように、表示部105にメッセージを表示して、利用者に促してもよい。
【0059】
また、以上の実施形態では、変倍処理済みの画像データを出力していたが、変倍処理前の画像データと変倍係数とをあわせて出力する形式であっても良い。この場合、画像読み取り装置100から画像データを受けたコンピュータなどが、他の画像処理とあわせて変倍処理を実行することになる。このようにすることで、画像処理の回数が減り、画像の劣化が少なくなるという利点がある。
【0060】
なお、以上の実施形態の具体例において、第一読取部111と第二読取部112とで、縮小光学系を用いるか密着型センサを用いるかは、図2に限られず、適宜変更することが可能であり、両方を同じ形式のものにしてもよい。
【0061】
また、第一読取部111と第二読取部112とは、ADF200内でどちらの読取手段が先に原稿を読み取るかといった配置は、図2に限られず、適宜変更することが可能である。
【0062】
また、本実施形態の画像読み取り装置100は、カラー画像を読み取るものであっても、モノクロ画像を読み取るものであっても、いずれでもよい。カラー画像を扱う画像読み取り装置100であれば、各色に対して変倍処理を実行すればよい。
【0063】
なお、複数色で読み取りを行うカラーの画像読み取り装置において、読み取り倍率の違いの算出と変倍処理とを各色独立して実行することで、光学系の色収差などによる色ずれを解消することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態の画像読取装置の電気的な構成を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施形態の画像読取装置の機械的な構成を示す構成図である。
【図3】本発明の実施形態の処理動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
100 画像読取装置
101 制御部
102 記憶部
103 操作部
105 表示部
107 原稿搬送駆動部
111 第一読取部
112 第二読取部
121 信号処理部
122 信号処理部
131 画像処理部
132 画像処理部
141 ラインメモリ
142 ラインメモリ
151 ページメモリ
152 ページメモリ
161 変倍処理部
162 変倍処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を搬送しつつ原稿の一方の面の画像を読み取る第一読取手段と、
前記第一読取手段と並行して原稿の他方の面の画像を読み取る第二読取手段と、
前記第一読取手段で読み取られた原稿サイズと、前記第二読取手段で読み取られた原稿サイズとから読み取り倍率の違いを求め、この読み取り倍率の違いを解消する変倍係数を求める算出手段と、
前記第一読取手段で読得られた画像データと前記第二読取手段で得られた画像データとのいずれか一方に前記変倍係数による変倍処理を施す変倍処理手段と、
を備えたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記原稿サイズの差は主走査方向の差であり、
前記変倍処理手段は、主走査方向の原稿サイズの差に基づく読み取り倍率の違いを解消するように前記変倍係数による変倍処理を施す、
ことを特徴とする請求項1記載の画像読取装置。
【請求項3】
原稿を搬送しつつ原稿の一方の面の画像を読み取る第一読取手段と、
前記第一読取手段と並行して原稿の他方の面の画像を読み取る第二読取手段と、
前記第一読取手段で読み取られた原稿サイズと、前記第二読取手段で読み取られた原稿サイズとから読み取り倍率の違いを求め、この読み取り倍率の違いを解消する変倍係数を求める算出手段と、
前記第一読取手段で得られた画像データと前記第二読取手段で得られた画像データと前記算出手段で求められた前記変倍係数とを出力する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項4】
前記算出手段は、前記第一読取手段で読み取られた原稿の主走査方向サイズと、前記第二読取手段で読み取られた原稿の主走査方向サイズとを、同じタイミングで得て、前記変倍係数を求める、
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記第一読取手段と前記第二読取手段の一方は、縮小光学系を用いた読取手段であり、
他方は、原稿に密着して読み取る密着型の読取手段である、
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記算出手段は、前記密着型の読取手段を基準にして、前記縮小光学系を用いた読取手段で得られた画像データに対して変倍処理を施すための変倍係数を算出する、
ことを特徴とする請求項5記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−182520(P2008−182520A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14740(P2007−14740)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】