説明

画像読取装置

【課題】原稿の排出口に設けられたカバー部材を開閉動作させることができ、しかも、カバー部材を作動させるために専用の動力源を設けなくても済む画像読取装置の提供。
【解決手段】原稿のサイズが比較的大きい場合、カバー部材5、経路切替部材45、及びリンク部材46などは、初期位置のままとされ、原稿搬送ユニット4内には、第一搬送経路(選択図(a)中に示す二点鎖線参照。)が構成される。原稿のサイズが比較的小さい場合、カバー部材5が開位置へと変位する。また、このカバー部材5の変位に追従して経路切替部材45及びリンク部材46も作動し、これにより、原稿搬送ユニット4内には、第二搬送経路(選択図(b)中に示す二点鎖線参照。)が構成される。カバー部材5を作動させる動力源は、原稿搬送用の可動機構(例えば、供給ローラ41、分離ローラ42、レジストローラ43、Uターン搬送ローラ44など。)の動力源と兼用されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動原稿送り装置(Automatic Document Feeder;以下、ADFと略称する。)を備える画像読取装置において、第一の搬送経路及び第二の搬送経路をいずれかに切り替えて原稿を搬送する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の技術の場合、センサで原稿の厚さを検出し、所定厚さ以下の原稿であれば、搬送路切替部を第一位置(特許文献1でいう位置L。)に設定し、読み取り後の原稿をUターン経路に沿って搬送して装置前面側へと排出する。また、所定厚さを超える原稿であれば、搬送路切替部を第二位置(特許文献1でいう位置H。)に設定し、読み取り後の原稿を装置背面側へと排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−127301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の画像読取装置において、読み取り後の原稿を装置背面側へと排出する場合、原稿は装置背面側にある排出口から排出される(特許文献1:段落[0012]〜[0013]及び[図2]の「排出口(7)」参照。)。
【0006】
しかし、このような排出口が設けられていると、排出口を介してほこりの類が装置内に入り込みやすいため、装置内が汚れる原因となり、あるいは、装置内を搬送される原稿が汚れる原因にもなる、という問題がある。
【0007】
こうした問題に対し、例えば、排出口の部分に開閉式のカバー部材を設けて、排出口を使用しないときには、カバー部材を閉じることにより、排出口へのほこりの侵入を遮断する、といった対策をとるのも一案である。
【0008】
しかし、このようなカバー部材を設けた場合、うっかりカバー部材を閉じたまま原稿を搬送するようなことがあると、原稿を排出口内で詰まらせてしまう、といったトラブルが発生する。
【0009】
また、原稿を搬送する際にカバー部材が自動的に開けば、上記のようなトラブルが発生するのを防ぐことも可能であるが、カバー部材を開閉動作させるために専用の動力源を設けると、動力源や動力源の制御に必要なハーネス類などが増えることになる。したがって、部品点数が増大するとともに、それら動力源やハーネス類を組み付けるために組み立て工数も増大し、相応に製造コストがかかることになる。さらに、それら動力源やハーネス類を配設するためのスペースを確保すると装置の小型化を妨げる要因になる。さらに、動力源やハーネス類が増えるほど電気的なノイズ源が増えるおそれがあるので、その対策をとるとコストがかかることになる。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、原稿の排出口となる部分に開閉式のカバー部材が設けられるとともに、原稿を搬送する際にはカバー部材を開位置へと変位させる仕組みを備えており、しかも、カバー部材を作動させるために専用の動力源を設けなくても済む画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、本発明において採用した構成について説明する。
本発明の画像読取装置は、搬送方向上流側から案内されてくる原稿をUターンさせて搬送方向下流側へと案内する経路とされた第一搬送経路、及び搬送方向上流側から案内されてくる原稿を前記第一搬送経路よりも湾曲させずに搬送方向下流側へと案内する経路とされた第二搬送経路、それぞれに沿って原稿を搬送可能で、原稿を搬送する際には、前記第一搬送経路又は前記第二搬送経路のいずれかが択一的に選択されて、当該選択された搬送経路に沿って原稿を搬送する搬送手段と、前記搬送手段を駆動するための動力を発生させる駆動手段と、前記搬送手段によって搬送される原稿の画像を読み取る読取手段と、前記第二搬送経路に沿って搬送された原稿を排出する排出口に取り付けられ、前記搬送手段が前記第一搬送経路に沿って原稿を搬送する場合には、前記排出口を閉じる閉位置へ変位し、前記搬送手段が前記第二搬送経路に沿って原稿を搬送する場合には、前記排出口を開く開位置へ変位するカバー部材とを備え、前記駆動手段が、前記カバー部材を駆動するための動力を発生させる手段として兼用されていることを特徴とする。
【0012】
このように構成された画像読取装置によれば、搬送手段が第一搬送経路に沿って原稿を搬送する場合には、排出口を閉じる閉位置へカバー部材が変位し、搬送手段が第二搬送経路に沿って原稿を搬送する場合には、排出口を開く開位置へカバー部材が変位する。
【0013】
したがって、第二搬送経路を利用する際、手動でカバー部材を開位置へ変位させるような面倒な操作が不要となり、カバー部材を閉じたまま搬送手段をさせてしまうこともない。また、第一搬送経路を利用する際には、無駄にカバー部材を開位置へ変位させてしまうこともない。
【0014】
しかも、このようなカバー部材を作動させるに当たって、カバー部材を駆動するための動力を発生させる手段は、搬送手段を駆動するための動力を発生させる駆動手段と兼用されている。そのため、カバー部材と搬送手段でそれぞれ専用の駆動手段を設けなくても済み、そのような専用の駆動手段を設けた場合に比べ、駆動手段の数を削減することができ、駆動手段の配置に必要なスペースを削減して機器の小型化を図ることができる。また、削減した駆動手段相当の部品代や組み立て工数が削減されるので、その分だけ製造コストの低減を図ることができる。
【0015】
ところで、本発明の画像読取装置は、前記搬送手段によって搬送される原稿の種別を取得する原稿種別取得手段と、前記原稿種別取得手段によって取得された原稿の種別に応じて、前記搬送手段が原稿を搬送する際に利用する搬送経路を、前記第一搬送経路又は前記第二搬送経路に切り替える経路切替手段とを備え、前記経路切替手段によって原稿の搬送経路が前記第一搬送経路に切り替えられた場合に、前記カバー部材は前記閉位置へ変位し、前記経路切替手段によって原稿の搬送経路が前記第二搬送経路に切り替えられた場合に、前記カバー部材は前記開位置へ変位すると好ましい。
【0016】
このように構成された画像読取装置によれば、原稿種別取得手段によって取得された原稿の種別に応じて経路切替手段を作動させることにより、搬送手段が原稿を搬送する際に利用する搬送経路を、第一搬送経路又は第二搬送経路に切り替えることができる。
【0017】
したがって、第一搬送経路に沿って湾曲させても問題がないと推定される種別の原稿であれば第一搬送経路を利用し、第一搬送経路に沿って湾曲させるのは好ましくないと推定される種別の原稿であれば第二搬送経路を利用するなど、原稿の種別に合わせて好適な搬送経路を利用することができる。
【0018】
また、本発明の画像読取装置は、前記駆動手段が、前記経路切替手段を駆動するための動力を発生させる手段として兼用されていると好ましい。
このように構成された画像読取装置によれば、経路切替手段を駆動するための動力を発生させる手段は、搬送手段を駆動するための動力を発生させる駆動手段と兼用されている。そのため、経路切替手段と搬送手段でそれぞれ専用の駆動手段を設けなくても済み、そのような専用の駆動手段を設けた場合に比べ、駆動手段の数を削減することができ、駆動手段の配置に必要なスペースを削減して機器の小型化を図ることができる。また、削減した駆動手段相当の部品代や組み立て工数が削減されるので、その分だけ製造コストの低減を図ることができる。
【0019】
また、本発明の画像読取装置において、前記原稿種別取得手段は、原稿のサイズを検出することにより、当該検出したサイズから推定される原稿の種別を取得すると好ましい。
このように構成された画像読取装置によれば、原稿のサイズを検出し、そのサイズから推定される原稿の種別に応じて経路切替手段を作動させ、搬送手段が原稿搬送に利用する搬送経路を、第一搬送経路又は第二搬送経路に切り替えることができる。
【0020】
また、本発明の画像読取装置において、前記原稿種別取得手段は、前記搬送手段によって原稿を搬送する際に、当該原稿の搬送方向及び厚さ方向に垂直な幅方向の寸法を検出することにより、当該検出した幅方向の寸法が所定のしきい値以上のときは、原稿の種別を前記第一搬送経路を利用するのに好適な原稿と推定し、検出した幅方向の寸法が所定のしきい値未満のときは、原稿の種別を前記第二搬送経路を利用するのに好適な原稿と推定すると好ましい。
【0021】
このように構成された画像読取装置によれば、原稿の幅方向の寸法を検出し、その幅方向の寸法から推定される原稿の種別に応じて経路切替手段を作動させ、搬送手段が原稿搬送に利用する搬送経路を、第一搬送経路又は第二搬送経路に切り替えることができる。
【0022】
また、本発明の画像読取装置において、前記搬送手段は、搬送対象となる原稿が載置される原稿トレイを備えており、前記原稿種別取得手段は、前記搬送手段によって原稿を搬送する際に、当該原稿が前記原稿トレイに載置されたら、当該載置された原稿の前記幅方向の寸法を検出すると好ましい。
【0023】
また、本発明の画像読取装置は、前記搬送手段及び前記カバー部材のうち、いずれか一方の手段に対して選択的に接続されて、前記駆動手段側から伝達される動力を、前記接続された一方の手段に対して伝達する動力伝達先切替手段を備えると好ましい。
【0024】
このように構成された画像読取装置によれば、動力伝達先切替手段により、搬送手段及びカバー部材への動力伝達経路を切り替えることができるので、簡単な構成で駆動手段の兼用を実現できる。
【0025】
また、本発明の画像読取装置は、前記搬送手段による搬送対象となる原稿の有無を検出する第一原稿検出手段と、前記搬送手段による搬送を終えて原稿排出部に排出された状態にある原稿の有無を検出する第二原稿検出手段とを備え、前記搬送手段が前記第二搬送経路に沿って原稿を搬送した後、前記第一原稿検出手段によって前記搬送手段による搬送対象となる原稿がないことを検出し、かつ前記第二原稿検出手段によって前記搬送手段による搬送を終えて原稿排出部に排出された状態にある原稿がないことを検出した場合に、前記カバー部材は前記閉位置へ変位すると好ましい。
【0026】
このように構成された画像読取装置によれば、第二搬送経路が利用された後、搬送対象となる原稿がなくなり、搬送済みの原稿が回収されれば、カバー部材が閉位置へ変位するので、手動でカバー部材を閉じなくても済む。
【0027】
また、本発明の画像読取装置において、前記カバー部材は、開位置へ変位した状態において、前記第二搬送経路から排出される原稿を受けるトレイとして機能すると好ましい。
このように構成された画像読取装置によれば、カバー部材がトレイとして機能するので、カバー部材とは別にトレイを設けなくても済み、その分だけ部品点数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)は第一の開閉状態とされた複合機を示す斜視図、(b)は第二の開閉状態とされた複合機を示す斜視図。
【図2】(a)は第三の開閉状態とされた複合機を示す斜視図、(b)は第四の開閉状態とされた複合機を示す斜視図。
【図3】(a)は原稿搬送ユニットが備える上部カバーを開位置に変位させた状態を示す斜視図、(b)は原稿搬送ユニットが備える原稿センサの位置を示す斜視図。
【図4】複合機が備える読取ユニット及び原稿搬送ユニットを正面側から見た縦断面図であり、(a)はカバー部材が閉じられた状態を示す縦断面図、(b)はカバー部材が開かれた状態を示す縦断面図。
【図5】経路切替部材及びリンク部材付近の構造を示す斜視図であり、(a)はカバー部材が閉じられた状態を示す斜視図、(b)はカバー部材が開かれた状態を示す斜視図。
【図6】原稿搬送ユニットの後側左端付近にある動力伝達機構を示す斜視図。
【図7】カバー開閉用ギヤ機構及びカバー開閉用四節リンクが設けられた位置を示す平面図。
【図8】カバー開閉用四節リンクの概略構造を示す説明図。
【図9】カバー開閉用四節リンクの挙動を段階的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の実施形態について一例を挙げて説明する。本実施形態において例示する画像読取装置は、画像読取装置としての機能(スキャン機能)に加え、その他の機能(例えば、プリント機能、コピー機能、ファクシミリ送受信機能など)を兼ね備えた複合機として構成されたものである。なお、以下の説明においては、複合機の各部について、それらの相対的な位置関係をわかりやすくするため、図中に併記した上下左右前後の各方向を利用して説明をする。
【0030】
[複合機の構造]
図1(a),同図(b),図2(a)及び同図(b)に示すように、複合機1は、本体ユニット2と、本体ユニット2の上側に搭載された読取ユニット3と、読取ユニット3の上側に搭載された原稿搬送ユニット4を備えている。
【0031】
本体ユニット2は、画像形成部、制御部、及び電源部等を内蔵しており、本体ユニット2、読取ユニット3、及び原稿搬送ユニット4に配設された各種機構は、本体ユニット2が備える制御部によって制御される。
【0032】
読取ユニット3は、本体ユニット2及び読取ユニット3の後端付近において左右方向へと延びる軸線を回動中心として、本体ユニット2に対し回動可能な構造とされている。この回動に伴って、読取ユニット3は、閉位置(図1(a)参照。)及び開位置(図2(b)参照。)へ変位する。
【0033】
読取ユニット3を開位置へ変位させると、本体ユニット2の上面側に設けられた第一開口部2Aが開放され、本体ユニット2に内蔵された各部(画像形成部、制御部、及び電源部等)のメンテナンス作業等を実施することができる。また、読取ユニット3を閉位置へ変位させると、第一開口部2Aが閉鎖される。
【0034】
原稿搬送ユニット4は、読取ユニット3及び原稿搬送ユニット4の後端付近において左右方向へと延びる軸線を回動中心として、読取ユニット3に対し回動可能な構造とされている。この回動に伴って、原稿搬送ユニット4は、閉位置(図1(a)参照。)及び開位置(図2(a)参照。)へ変位する。
【0035】
原稿搬送ユニット4を開位置へ変位させると、読取ユニット3の上面にある原稿載置面(後述する静止原稿用透明部25)が露出する。また、原稿搬送ユニット4を閉位置へ変位させると、原稿搬送ユニット4は、原稿載置面を覆うカバーとして機能する。
【0036】
原稿搬送ユニット4の左側面には、カバー部材5が取り付けられている。カバー部材5は、原稿搬送ユニット4の左端の下端側付近かつカバー部材5の下端付近において前後方向へと延びる軸線を回動中心として、原稿搬送ユニット4に対し回動可能な構造とされている。この回動に伴って、カバー部材5は、閉位置(図1(a)参照。)及び開位置(図1(b)参照。)へ変位する。
【0037】
カバー部材5を開位置へ変位させると、第二開口部4Aが開放される。また、カバー部材5を閉位置へ変位させると、第二開口部4Aが閉鎖される。なお、詳しくは後述するが、第二開口部4Aは、第二搬送経路に沿って原稿が搬送された際に、その原稿が排出される排出口として利用される。
【0038】
本体ユニット2の前部上側には、利用者によって操作される操作パネル7が設けられている。また、本体ユニット2において、操作パネル7の下方には、本体ユニット2内の画像形成部による印刷後の被記録媒体を排出する排出口8が形成され、更にその下方には、印刷前の被記録媒体が収納される給紙カセット9などが装着されている。
【0039】
原稿搬送ユニット4の上面には、図1(a)及び同図(b)に示すように、開閉式の上面カバー11が設けられている。この上面カバー11は、上面カバー11の右端付近において前後方向へと延びる軸線を回動中心として、図3(a)に示すように、原稿搬送ユニット4に対し回動可能な構造とされている。この回動に伴って、上面カバー11は、閉位置(図1(a)参照。)及び開位置(図3(a)参照。)へ変位する。
【0040】
この上面カバー11は、閉位置にあるときには略水平な状態になっており、一方、開位置へ変位させた際には、回転中心から右斜め上方へ延びる状態になる。上面カバー11が開位置へ変位すると、原稿搬送ユニット4の上面には原稿トレイ12が露出する。
【0041】
原稿トレイ12上には、一対の原稿ガイド13が設けられている。この原稿ガイド13は、双方とも前後方向へスライド可能で、しかも、一方に連動して他方が一方とは逆方向へスライドする仕組みになっている。そのため、一対の原稿ガイド13の間隔を変更する際には、一方を操作するだけで、双方を互いに接近又は離間する方向へスライドさせることができる。
【0042】
また、原稿ガイド13の上端には、仕切り板15が設けられている。搬送対象となる原稿は、原稿トレイ12上であって、この仕切り板15の下方にセットされる。また、後述する第一搬送経路に沿って原稿が搬送された場合、搬送済みの原稿は、仕切り板15の上方に排出される。
【0043】
さらに、原稿トレイ12上には、図3(b)に示すように、原稿センサ17が設けられている。この原稿センサ17は、搬送対象となる原稿がセットされた際に、原稿に押圧されると下方へ変位することにより、オン・オフが切り替わる接触式センサである。ただし、この原稿センサ17は、一対の原稿ガイド13の前後方向の間隔がハガキサイズよりも大きいサイズに設定されて、ハガキサイズよりもサイズが大きい原稿がセットされた場合に、原稿によって押圧される位置に配設されている。そのため、ハガキサイズ以下の原稿(例えば、ハガキ、名刺等)がセットされた場合には、原稿センサ17が押圧されず、これにより、セットされた原稿がハガキサイズ以下か否かを検出可能とされている。
【0044】
[読取ユニット及び原稿搬送ユニットの詳細]
図4(a)及び同図(b)に示すように、読取ユニット3には、第一イメージセンサ21が設けられ、原稿搬送ユニット4には、第二イメージセンサ22が設けられている。本実施形態において、第一イメージセンサ21及び第二イメージセンサ22としては、双方とも密着イメージセンサ(Contact Image Sensor)が採用されている。
【0045】
第一イメージセンサ21は、図示しないモータによって駆動されて、読取ユニット3の内部を左右方向へ往復移動する構造とされている。また、第二イメージセンサ22は、原稿搬送ユニット4内のフレームに固定されている。
【0046】
また、読取ユニット3側には、第一イメージセンサ21の往復移動経路の上方となる位置に、静止原稿用透明部25及び搬送原稿用第一透明部27が設けられている。また、原稿搬送ユニット4側には、第二イメージセンサ22の下方となる位置に、搬送原稿用第二透明部28が設けられている。
【0047】
静止原稿用透明部25及び搬送原稿用第一透明部27は、双方とも読取ユニット3の上面をなす位置にあり、本実施形態においては、これら静止原稿用透明部25及び搬送原稿用第一透明部27が、単一のガラス板を利用して構成されている。また、搬送原稿用第二透明部28は、本実施形態においては、静止原稿用透明部25及び搬送原稿用第一透明部27とは別のガラス板を利用して構成されている。
【0048】
なお、静止原稿用透明部25及び搬送原稿用第一透明部27は、それぞれが別のガラス板を利用して構成されていてもよい。また、静止原稿用透明部25、搬送原稿用第一透明部27、及び搬送原稿用第二透明部28の材質は、第一イメージセンサ21及び第二イメージセンサ22による原稿の読み取りが可能な透明な材質であれば、ガラス以外の材質であってもよい。
【0049】
また、原稿搬送ユニット4側には、搬送原稿用第一透明部27の上方となる位置に、第一原稿押さえ部31が配設され、読取ユニット3側には、搬送原稿用第二透明部28の下方となる位置に、第二原稿押さえ部32が配設されている。
【0050】
第一原稿押さえ部31は、圧縮ばね(図示せず)によって下方へと付勢されており、これにより、第一原稿押さえ部31は搬送原稿用第一透明部27の上面側を軽く押圧する状態になっている。また、第二原稿押さえ部32は、圧縮ばね(図示せず)によって上方へと付勢されており、これにより、第二原稿押さえ部32は搬送原稿用第二透明部28の下面側を軽く押圧する状態になっている。
【0051】
また、原稿搬送ユニット4には、供給ローラ41、分離ローラ42、レジストローラ43、Uターン搬送ローラ44などのローラ群が設けられ、これらのローラ間には原稿を適正な搬送方向へ案内するためのガイド面を提供する部材も配置されている。そのようなガイド面を提供する部材の一つとして、Uターン搬送ローラ44の左方には、可動式の経路切替部材45が設けられている。
【0052】
経路切替部材45は、経路切替部材45の下端側において前後方向へと延びる軸線を回動中心として、原稿搬送ユニット4に対し回動可能な構造とされている。この回動に伴って、経路切替部材45は、図4(a)に示す第一位置、及び図4(b)に示す第二位置へ変位可能となっている。
【0053】
また、経路切替部材45とカバー部材5の間にはリンク部材46が介装されている。リンク部材46は、右端側が経路切替部材45に対して回動可能に連結される一方、左端側がカバー部材5に対して回動可能に連結されている。カバー部材5の下端及び経路切替部材45の下端は、それぞれ原稿搬送ユニット4に対し回動可能とされており、これにより、原稿搬送ユニット4上では、カバー部材5、経路切替部材45、及びリンク部材46からなる四節リンクが構成されている。
【0054】
このような四節リンクを構成してあるので、カバー部材5を開けば、それに連動させて経路切替部材45を第二位置へ変位させることができ、カバー部材5を閉じれば、それに連動させて経路切替部材45を第一位置へ変位させることができる。なお、詳しくは後述するが、本実施形態において、カバー部材5は電動式の開閉機構を備えており、この電動式開閉機構によってカバー部材5が開閉される際に、それに連動して経路切替部材45が変位することになる。
【0055】
経路切替部材45及びリンク部材46は、図5(a)及び同図(b)に示すように、双方とも上面側が原稿を案内するガイド面になっており、このガイド面には、搬送される原稿との間に作用する摩擦抵抗を軽減するためのリブなどが形成されている。また、経路切替部材45及びリンク部材46の前後方向幅は、カバー部材5の前後方向幅よりも僅かに狭い程度の寸法とされており、ハガキサイズ以下の原稿を搬送するのに好適な幅とされている。
【0056】
さらに、リンク部材46の後方には、図4(a)及び同図(b)に示すように、モータ48が配設され、そのモータ48よりも更に後方で、原稿搬送ユニット4の後側左端付近には、図6に示すような動力伝達機構50が配設されている。この動力伝達機構50は、モータ48によって回転駆動されるモータギヤ51と、モータギヤ51から伝達される動力で駆動される遊星ギヤ53とを備えている。遊星ギヤ53は、後述する二位置間を揺動する支持体55に取り付けられている。なお、図6では、遊星ギヤ53及び支持体55が二位置それぞれに移動した状態を併記してある。
【0057】
モータギヤ51が正方向に回転駆動された場合、遊星ギヤ53及び支持体55は下方の位置へと移動し、遊星ギヤ53とADF駆動ギヤ57が噛み合う状態になる。この状態において、正方向に回転駆動されるモータギヤ51は、原稿搬送用の可動機構(例えば、供給ローラ41、分離ローラ42、レジストローラ43、Uターン搬送ローラ44など。)を駆動することになる。
【0058】
一方、モータギヤ51が逆方向に回転駆動された場合、遊星ギヤ53及び支持体55は上方の位置へ移動し、遊星ギヤ53とカバー開閉駆動伝達ギヤ59が噛み合う状態になる。この状態において、逆方向に回転駆動されるモータギヤ51は、カバー開閉駆動伝達ギヤ59を駆動することになる。
【0059】
カバー開閉駆動伝達ギヤ59は、図7に示すように、カバー開閉用四節リンク63に隣接する位置にあるカバー開閉用ギヤ機構61の一部を構成しており、カバー開閉駆動伝達ギヤ59の動きは、カバー開閉用ギヤ機構61を介して、更にカバー開閉用四節リンク63へと伝達される。
【0060】
カバー開閉用四節リンク63は、図8に示すように、第一リンク要素63A及び第二リンク要素63Bを備える動力伝達機構であり、一方向に回転運動する第一リンク要素63Aの動きを、カバー部材5の往復運動に変換する機構である。すなわち、このカバー開閉用四節リンク63において、第一リンク要素63Aは、原稿搬送ユニット4のフレームに対して回転可能に連結されており、カバー開閉用ギヤ機構61を介して伝達される動力により、図8中に矢印で示した方向へ回転駆動される。また、第二リンク要素63Bは、一端が第一リンク要素63Aに回動可能に連結されるとともに、他端がカバー部材5に対して回動可能に連結され、回転駆動される第一リンク要素63Aに従動して、初期位置(図8中に実線で示した位置)又は作動位置(図8中に二点鎖線で示した位置)へ移動する。カバー部材5は、第二リンク要素63Bに連動して回動し、閉位置(図8中に実線で示した位置)と開位置(図8中に二点鎖線で示した位置)との間を往復移動(開閉動作)する。
【0061】
上記のようなカバー開閉用四節リンク63の挙動を、図9(a)〜同図(e)に基づいて更に詳細に説明する。第一リンク要素63Aは、図9(a)〜同図(e)に示すように、連結点P1において原稿搬送ユニット4のフレーム(図示略)に対して回転可能に連結され、連結点P2において第二リンク要素63Bに対して回動可能に連結されている。
【0062】
連結点P1は、第一リンク要素63Aの回転中心であり、第一リンク要素63Aが回転駆動された際、連結点P1から所定距離だけ離間した位置にある連結点P2は、連結点P1の周囲で円形の軌跡を描く位置を移動する。
【0063】
一方、第二リンク要素63Bは、連結点P2において第一リンク要素63Aに対して回動可能に連結され、連結点P3においてカバー部材5に対して回動可能に連結されている。この第二リンク要素63Bは、第一リンク要素63Aの回転に伴って連結点P1が変位した際に、その動きをカバー部材5へ伝達し、連結点P2,P3間が所定距離に維持される位置へカバー部材5を変位させる。
【0064】
さらに、カバー部材5は、連結点P3において第二リンク要素63Bに対して回動可能に連結され、連結点P4において原稿搬送ユニット4のフレーム(図示略)に対して回動可能に連結されている。連結点P4は、カバー部材5の回動中心であり、連結点P4から所定距離だけ離間した位置にある連結点P3は、連結点P4の周囲で円弧の軌跡を描く位置を移動する。
【0065】
なお、図9(a)において、第一リンク要素63A及び第二リンク要素63Bは重なる位置にあり、図9(c)においては、第一リンク要素63A及び第二リンク要素63Bが一直線に並ぶ位置にある。ちなみに、図8及び図9(a)〜同図(d)では、第一リンク要素63A及び第二リンク要素63Bをそれぞれ直線状に図示してあるが、実際の部品が直線状に形成されていなくてもよいことはもちろんである。
【0066】
これら第一リンク要素63A及び第二リンク要素63Bは、初期状態では図9(a)に示した初期位置(図8中では実線で示した位置)にあり、このとき、カバー部材5は、図9(a)に示した閉位置(図8中では実線で示した位置)にある。この状態で、カバー開閉用ギヤ機構61から動力が伝達されると、第一リンク要素63Aは、図9(b)中に矢印A1で示した方向へ回転駆動される。
【0067】
第一リンク要素63Aが、矢印A1で示した方向へ回転駆動されると、連結点P2は連結点P3へ接近しようとする方向へ移動する。ただし、連結点P2と連結点P3は、第二リンク要素63Bによって一定距離が保たれる位置関係にあるため、連結点P2が移動すれば連結点P3も移動する。連結点P3は、連結点P4を回動中心として変位するので、このとき、カバー部材5は、連結点P4を中心に回動して図9(b)中に矢印B1で示した方向へ移動することになる。
【0068】
そして、第一リンク要素63Aが、更に図9(c)中に矢印A2で示した方向へ回転駆動されると、連結点P2は引き続き連結点P3へ接近しようとする方向へ移動する。ただし、既に説明したとおり、連結点P2が移動すれば連結点P3も移動し、連結点P3は連結点P4を回動中心として変位するので、カバー部材5は、更に連結点P4を中心に回動して図9(c)中に矢印B2で示した方向へ移動する。その結果、カバー部材5は、図9(c)に示した開位置(図8中では二点鎖線で示した位置)へと移動することになる。
【0069】
さて、以上のようにしてカバー部材5を開位置へ移動させた後、第一リンク要素63Aが、図9(d)中に矢印A3で示した方向へ回転駆動されると、今度は連結点P2が連結点P3から離間しようとする方向へ移動する。ただし、既に説明したとおり、連結点P2と連結点P3は、第二リンク要素63Bによって一定距離が保たれる位置関係にあるため、連結点P2が移動すれば連結点P3も移動する。また、連結点P3は、連結点P4を回動中心として変位するので、カバー部材5は、連結点P4を中心に回動して図9(d)中に矢印B3で示した方向へ移動することになる。
【0070】
そして、第一リンク要素63Aが、更に図9(e)中に矢印A4で示した方向へ回転駆動されると、連結点P2は引き続き連結点P3から離間しようとする方向へ移動する。ただし、既に説明したとおり、連結点P2が移動すれば連結点P3も移動し、連結点P3は連結点P4を回動中心として変位するので、カバー部材5は、更に連結点P4を中心に回動して図9(e)中に矢印B4で示した方向へ移動する。その結果、カバー部材5は、図9(e)に示した閉位置(図8中では実線で示した位置)へ復帰することになる。
【0071】
つまり、第一リンク要素63Aが図9(a)〜同図(e)中に矢印A1〜A4で示した方向へ一回転すると、第一リンク要素63A及び第二リンク要素63Bは、図9(a)〜同図(e)に段階的に示したように変位して、初期位置から作動位置を経て初期位置へと復帰し、その際、カバー部材5は、第一リンク要素63A及び第二リンク要素63Bの動きに追従して開閉動作することになる。
【0072】
カバー開閉用ギヤ機構61は、モータギヤ51を逆方向に回転させた際に、所定の減速比で回転数を低下させて、その回転を第一リンク要素63Aに伝達するので、モータギヤ51を所定量だけ回転させる制御を行えば、カバー開閉用四節リンク63を任意に初期位置及び作動位置へ変位させることができ、これにより、カバー部材5を開閉させることができる。
【0073】
なお、既に説明したとおり、カバー部材5は、経路切替部材45及びリンク部材46とともに、もう一つの四節リンクを構成しているので、上述のカバー開閉用四節リンク63がカバー部材5を開閉動作させた際には、その開閉動作に連動して経路切替部材45及びリンク部材46も作動することになる。
【0074】
すなわち、モータギヤ51を所定量だけ回転させる制御を行うだけで、カバー部材5、経路切替部材45、及びリンク部材46のすべてを連動させ、搬送経路を第一搬送経路(図4(a)参照。)に切り替えた際にはカバー部材5を閉位置に移動させる一方、搬送経路を第二搬送経路(図4(b)参照。)に切り替えた際にはカバー部材5を開位置に移動させることができる。
【0075】
以上のように構成された複合機1では、原稿搬送ユニット4を利用して原稿を搬送しながら、その原稿の画像を読み取ることができる。このような方法で画像を読み取る場合には、まず、搬送対象となる原稿を原稿トレイ12にセットする。より詳しくは、原稿のサイズに応じて一対の原稿ガイド13を前後方向にスライドさせ、原稿ガイド13の間隔を適切に調節してから、一対の原稿ガイド13間に原稿をセットする。
【0076】
このとき、本実施形態の場合、比較的大きい原稿(ハガキサイズよりも大きい原稿。)であれば、原稿センサ17が押圧され、比較的小さい原稿(ハガキサイズ以下の原稿(例えば、ハガキ、名刺等))であれば、原稿センサ17が押圧されないので、これにより、原稿のサイズを検出することができる。
【0077】
原稿センサ17で検出した原稿のサイズが比較的大きい場合、カバー部材5、経路切替部材45、及びリンク部材46などは、初期位置のままとされ、原稿搬送ユニット4内には、第一搬送経路(図4(a)中に示す二点鎖線参照。)が構成される。
【0078】
一方、原稿センサ17で検出した原稿のサイズが比較的小さい場合、モータギヤ51が逆方向に回転駆動され、これにより、カバー部材5が開位置へと変位する。また、このカバー部材5の変位に追従して経路切替部材45及びリンク部材46も作動し、これにより、原稿搬送ユニット4内には、第二搬送経路(図4(b)中に示す二点鎖線参照。)が構成される。
【0079】
その後、操作パネル7上での操作や図示しないPC(Personal Computer)からの遠隔操作により、複合機1に対してスキャン指令が与えられる。なお、このスキャン指令の際、利用者は片面読み取りか両面読み取りかを任意に指定できる。複合機1にスキャン指令が与えられた場合、複合機1は、まず、装置各部を初期化する処理を実行し、続いて、モータギヤ51を正方向に回転駆動して、原稿搬送ユニット4が備えるローラ群を作動させる。このとき、供給ローラ41によって搬送方向上流側から供給される原稿は、分離ローラ42によって1枚ずつに分離されつつ、更に搬送方向下流側へと搬送される。
【0080】
そして、その原稿の先端をレジストローラ43に当接させることにより、原稿先端の位置決め及び斜行の補正を行い、その原稿が搬送方向下流側へと搬送されて、搬送原稿用第一透明部27と第一原稿押さえ部31との間を通過する。スキャン指令の際に、両面読み取り又は第一イメージセンサ21による片面読み取りが指定されている場合、原稿が第一イメージセンサ21と対向する位置に到来したら、第一イメージセンサ21による画像の読み取りを行う。
【0081】
具体的には、第一イメージセンサ21は、複合機1の前後方向を主走査方向、搬送方向を副走査方向として、各センサに対向する位置を副走査方向へと移動する原稿から、主走査方向に並ぶ複数の画素を繰り返し読み取ることで、原稿の表面側の画像を読み取る。
【0082】
また、搬送原稿用第一透明部27と第一原稿押さえ部31との間を通過した原稿は、引き続いて、搬送原稿用第二透明部28と第二原稿押さえ部32との間を通過する。スキャン指令の際に、両面読み取り又は第二イメージセンサ22による片面読み取りが指定されている場合、原稿が第二イメージセンサ22と対向する位置に到来したら、第二イメージセンサ22による画像の読み取りを行う。
【0083】
具体的には、第二イメージセンサ22は、複合機1の前後方向を主走査方向、搬送方向を副走査方向として、各センサに対向する位置を副走査方向へと移動する原稿から、主走査方向に並ぶ複数の画素を繰り返し読み取ることで、原稿の裏面側の画像を読み取る。
【0084】
搬送原稿用第二透明部28と第二原稿押さえ部32との間を通過した原稿は、Uターン搬送ローラ44に到達し、Uターン搬送ローラ44の下端側からUターン搬送ローラ44の左方へと送り出される。
【0085】
ここで、搬送経路として第一搬送経路が選択されている場合(図4(a)参照。)、経路切替部材45は、経路切替部材45の左右両側にある空間を区画する隔壁となっている。この状態において、経路切替部材45の右側にある凹面は、Uターン搬送ローラ44の外周面に沿った位置に配置され、Uターン搬送ローラ44の下端側から左方へ原稿が送り出された際に、その原稿の先端を上方へと案内するガイド面として機能する。
【0086】
このようなガイド面に沿って上方へと案内された原稿は、Uターン搬送ローラ44に沿ってUターンするので、第一搬送経路に沿って搬送されることになる。なお、こうして第一搬送経路に沿って搬送された原稿は、原稿搬送ユニット4の上面側へ排出される。
【0087】
一方、搬送経路として第二搬送経路が選択されている場合(図4(b)参照。)、経路切替部材45は、下端側を中心に上端側が左方へと倒れ、これにより、経路切替部材45の左右両側にある空間は連通した状態となっている。この状態において、Uターン搬送ローラ44の下端側から左方へ原稿が送り出された際には、その原稿の先端は経路切替部材45の上端を乗り越える。
【0088】
その結果、原稿はリンク部材46側へと送り出され、第二搬送経路に沿って搬送されることになる。なお、こうして第二搬送経路に沿って搬送された原稿は、原稿搬送ユニット4の左端にある第二開口部4Aから排出され、その際、排出された原稿は、排出トレイとして機能するカバー部材5によって左側下方から支持される状態になる。
【0089】
ちなみに、原稿トレイ12には、原稿サイズを検出するための原稿センサ17の他、原稿の有無を検出するセンサ(図示略)も配設されている。第二搬送経路に沿って原稿を搬送した後、センサで搬送対象となる原稿がないことを検出した場合、モータギヤ51が逆方向に回転駆動され、これにより、カバー部材5が閉位置へと復帰する。また、このカバー部材5の変位に追従して経路切替部材45及びリンク部材46も作動し、これにより、原稿搬送ユニット4内の搬送経路は、第一搬送経路(図4(a)中に示す二点鎖線参照。)に戻される。
【0090】
さらに、この複合機1では、静止原稿用透明部25上に原稿を載置して、その原稿の画像を読み取ることもできる。このような方法で画像を読み取る場合には、まず、原稿搬送ユニット4が開かれて、原稿載置面である静止原稿用透明部25上に原稿が載置される。この状態で、操作パネル7上での操作や図示しないPCからの遠隔操作により、複合機1に対してスキャン指令が与えられる。
【0091】
複合機1にスキャン指令が与えられた場合、複合機1は、まず、装置各部を初期化する処理を実行し、続いて、第一イメージセンサ21による画像の読み取りを行う。具体的には、第一イメージセンサ21は、複合機1の前後方向を主走査方向、左右方向を副走査方向として、副走査方向へ移動しながら、主走査方向に並ぶ複数の画素を繰り返し読み取ることで、静止原稿用透明部25上に載置されている原稿の画像を読み取る。
【0092】
[効果]
以上説明したとおり、上記複合機1によれば、原稿搬送ユニット4(本発明でいう搬送手段の一例に相当。)が第一搬送経路に沿って原稿を搬送する場合には、第二開口部4A(本発明でいう排出口の一例に相当。)を閉じる閉位置へカバー部材5が変位し、原稿搬送ユニット4が第二搬送経路に沿って原稿を搬送する場合には、第二開口部4Aを開く開位置へカバー部材5が変位する。
【0093】
したがって、第二搬送経路を利用する際、手動でカバー部材5相当物を開位置へ変位させるような面倒な操作が不要となり、カバー部材5を閉じたまま原稿搬送ユニット4による原稿搬送を行ってしまうこともない。また、第一搬送経路を利用する際には、無駄にカバー部材5を開位置へ変位させてしまうこともない。
【0094】
しかも、このようなカバー部材5を作動させるに当たって、カバー部材5を駆動するための動力はモータギヤ51から伝達される構造になっており、このモータギヤ51は、原稿搬送用の可動機構(例えば、供給ローラ41、分離ローラ42、レジストローラ43、Uターン搬送ローラ44など。)を駆動するための動力を発生させる駆動手段としても兼用されている。
【0095】
そのため、カバー部材5と原稿搬送用の可動機構でそれぞれ専用の駆動手段を設けなくても済み、そのような専用の駆動手段を設けた場合に比べ、駆動手段の数を削減することができ、駆動手段の配置に必要なスペースを削減して機器の小型化を図ることができる。また、削減した駆動手段相当の部品代や組み立て工数が削減されるので、その分だけ製造コストの低減を図ることができる。
【0096】
また、上記複合機1によれば、原稿センサ17(本発明でいう原稿種別取得手段の一例に相当。)によって取得された原稿の種別(ハガキサイズ以下の原稿かハガキサイズよりも大きい原稿か)に応じて経路切替部材45を作動させることにより、原稿搬送ユニット4が原稿を搬送する際に利用する搬送経路を、第一搬送経路又は第二搬送経路に切り替えることができる。
【0097】
したがって、第一搬送経路に沿って湾曲させても問題がないと推定される種別の原稿であれば第一搬送経路を利用し、第一搬送経路に沿って湾曲させるのは好ましくないと推定される種別の原稿であれば第二搬送経路を利用することで、原稿の種別に合わせて好適な搬送経路を利用することができる。
【0098】
しかも、このような経路切替部材45を作動させるに当たって、経路切替部材45を駆動するための動力はモータギヤ51から伝達される構造になっており、このモータギヤ51は、原稿搬送用の可動機構(例えば、供給ローラ41、分離ローラ42、レジストローラ43、Uターン搬送ローラ44など。)を駆動するための動力を発生させる駆動手段としても兼用されている。
【0099】
そのため、経路切替部材45と原稿搬送用の可動機構でそれぞれ専用の駆動手段を設けなくても済み、そのような専用の駆動手段を設けた場合に比べ、駆動手段の数を削減することができ、駆動手段の配置に必要なスペースを削減して機器の小型化を図ることができる。また、削減した駆動手段相当の部品代や組み立て工数が削減されるので、その分だけ製造コストの低減を図ることができる。
【0100】
さらに、上記複合機1では、原稿を原稿トレイ12に載置すれば、原稿センサ17が原稿の幅方向の寸法を検出し、その幅方向の寸法から推定される原稿の種別に応じて経路切替部材45を作動させるので、他の複雑な操作をしなくても、簡単に経路切替部材45を作動させることができる。
【0101】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
【0102】
例えば、上記実施形態では、カバー部材5、経路切替部材45、及びリンク部材46のすべてを連動させて動作させていたが、経路切替部材45を作動させるか否かは任意である。すなわち、経路切替部材45は、別途手動で変位させられるものであってもよいし、電動式であってもカバー部材5とは連動せず、別途の操作で作動する構造になっていてもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、原稿センサ17で検出した原稿のサイズに基づき、カバー部材5を開位置へ変位させるか閉位置へ変位させるかを判断していたが、原稿サイズとは無関係に開閉動作が行われてもよく、例えば、操作パネル7での操作に応じてカバー部材5が開閉動作する仕組みになっていてもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、第二搬送経路に沿って原稿を搬送した後、図示されていないセンサで搬送対象となる原稿がないことを検出した場合、モータギヤ51が逆方向に回転駆動され、これにより、カバー部材5が閉位置へと復帰する。そして、このカバー部材5の変位に追従して経路切替部材45及びリンク部材46も作動し、これにより、原稿搬送ユニット4内の搬送経路は、第一搬送経路に戻される構成となっていたが、逆であってもよい。即ち、カバー部材5が開位置にある場合を復帰位置とし、第一搬送経路に沿って原稿を搬送した後、カバー部材5を開位置に変位させるとともに、原稿搬送ユニット4内の搬送経路が第二搬送経路に戻される構成であってもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、本発明の画像読取装置の一例として、複合機として構成された画像読取装置を例示したが、複合機として構成されているか否かは任意である。
【符号の説明】
【0106】
1・・・複合機、2・・・本体ユニット、2A・・・第一開口部、3・・・読取ユニット、4・・・原稿搬送ユニット、4A・・・第二開口部、5・・・カバー部材、7・・・操作パネル、8・・・排出口、9・・・給紙カセット、11・・・上面カバー、12・・・原稿トレイ、13・・・原稿ガイド、15・・・仕切り板、17・・・原稿センサ、21・・・第一イメージセンサ、22・・・第二イメージセンサ、25・・・静止原稿用透明部、27・・・搬送原稿用第一透明部、28・・・搬送原稿用第二透明部、31・・・第一原稿押さえ部、32・・・第二原稿押さえ部、41・・・供給ローラ、42・・・分離ローラ、43・・・レジストローラ、44・・・Uターン搬送ローラ、45・・・経路切替部材、46・・・リンク部材、50・・・動力伝達機構、51・・・モータギヤ、53・・・遊星ギヤ、55・・・支持体、57・・・ADF駆動ギヤ、59・・・カバー開閉駆動伝達ギヤ、61・・・カバー開閉用ギヤ機構、63・・・カバー開閉用四節リンク、63A・・・第一リンク要素、63B・・・第二リンク要素。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向上流側から案内されてくる原稿をUターンさせて搬送方向下流側へと案内する経路とされた第一搬送経路、及び搬送方向上流側から案内されてくる原稿を前記第一搬送経路よりも湾曲させずに搬送方向下流側へと案内する経路とされた第二搬送経路、それぞれに沿って原稿を搬送可能で、原稿を搬送する際には、前記第一搬送経路又は前記第二搬送経路のいずれかが択一的に選択されて、当該選択された搬送経路に沿って原稿を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段を駆動するための動力を発生させる駆動手段と、
前記搬送手段によって搬送される原稿の画像を読み取る読取手段と、
前記第二搬送経路に沿って搬送された原稿を排出する排出口に取り付けられ、前記搬送手段が前記第一搬送経路に沿って原稿を搬送する場合には、前記排出口を閉じる閉位置へ変位し、前記搬送手段が前記第二搬送経路に沿って原稿を搬送する場合には、前記排出口を開く開位置へ変位するカバー部材と
を備え、
前記駆動手段が、前記カバー部材を駆動するための動力を発生させる手段として兼用されている
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記搬送手段によって搬送される原稿の種別を取得する原稿種別取得手段と、
前記原稿種別取得手段によって取得された原稿の種別に応じて、前記搬送手段が原稿を搬送する際に利用する搬送経路を、前記第一搬送経路又は前記第二搬送経路に切り替える経路切替手段と
を備え、
前記経路切替手段によって原稿の搬送経路が前記第一搬送経路に切り替えられた場合に、前記カバー部材は前記閉位置へ変位し、前記経路切替手段によって原稿の搬送経路が前記第二搬送経路に切り替えられた場合に、前記カバー部材は前記開位置へ変位する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記駆動手段が、前記経路切替手段を駆動するための動力を発生させる手段として兼用されている
ことを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記原稿種別取得手段は、原稿のサイズを検出することにより、当該検出したサイズから推定される原稿の種別を取得する
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記原稿種別取得手段は、前記搬送手段によって原稿を搬送する際に、当該原稿の搬送方向及び厚さ方向に垂直な幅方向の寸法を検出することにより、当該検出した幅方向の寸法が所定のしきい値以上のときは、原稿の種別を前記第一搬送経路を利用するのに好適な原稿と推定し、検出した幅方向の寸法が所定のしきい値未満のときは、原稿の種別を前記第二搬送経路を利用するのに好適な原稿と推定する
ことを特徴とする請求項4に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記搬送手段は、搬送対象となる原稿が載置される原稿トレイを備えており、
前記原稿種別取得手段は、前記搬送手段によって原稿を搬送する際に、当該原稿が前記原稿トレイに載置されたら、当該載置された原稿の前記幅方向の寸法を検出する
ことを特徴とする請求項5に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記搬送手段及び前記カバー部材のうち、いずれか一方の手段に対して選択的に接続されて、前記駆動手段側から伝達される動力を、前記接続された一方の手段に対して伝達する動力伝達先切替手段
を備えることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記搬送手段による搬送対象となる原稿の有無を検出する第一原稿検出手段と、
前記搬送手段による搬送を終えて原稿排出部に排出された状態にある原稿の有無を検出する第二原稿検出手段と
を備え、
前記搬送手段が前記第二搬送経路に沿って原稿を搬送した後、前記第一原稿検出手段によって前記搬送手段による搬送対象となる原稿がないことを検出し、かつ前記第二原稿検出手段によって前記搬送手段による搬送を終えて原稿排出部に排出された状態にある原稿がないことを検出した場合に、前記カバー部材は前記閉位置へ変位する
ことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記カバー部材は、開位置へ変位した状態において、前記第二搬送経路から排出される原稿を受けるトレイとして機能する
ことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−76940(P2013−76940A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218079(P2011−218079)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】