説明

画像転送装置

【課題】アプリケーション層において把握困難な各種パラメータを用いることなく、伝送遅延の大きいネットワーク環境においても画像伝送のスループット低下を抑止して、高品質な映像表示を実現する画像転送装置を提供する。
【解決手段】TCP/IPを使用して画像送信をおこなうアプリケーション層の処理は、画像1フレームまたは複数フレーム毎に画像送信に使用する送信ポートを選択して送信する手段を有し、画像送信時、既に画像送信に使用したポートが送信処理を完了して空いているかを判定し、ポートが空いていない場合は新規にポートを生成して画像送信し、ポートが空いている場合はそれまでに生成したポート数で画像送信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視カメラ等のカメラで撮影した画像をネットワーク経由で伝送し、表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
IP映像監視システムは、監視カメラ等のカメラの映像をIP(Internet Protocol)ネットワークで伝送し、ネットワークに接続された表示装置に映像を表示して映像監視を行うシステムである。近年、IP映像監視システムの普及にともない、映像監視システムは大規模化、広域化する傾向にある。
通常、構内LAN(Local Area Network)における伝送遅延時間は、通常1[ms]以下である。これに対して、広域IP網での往復遅延時間は、国内では25[ms]であり、海外では100〜300[ms]程度である。TCP/IP(Transmission Control protocol / Internet Protocol)を使用したデータ伝送では、遅延時間が増大するに従ってスループットが低下する。この理由は、ウィンドウサイズ分のデータを送信後は、相手先から応答を受信するまで、次データを送信できないためである。往復遅延時間RTT(Round Trip Time:ラウンドトリップタイム)とスループットの関係は次の式(1)で表わされる。
スループット=ウィンドウサイズ÷RTT・・・式(1)
このように、広域IP網では、スループットが構内LANの数十分の一になってしまうことがある。
このような問題の解決方法として特許文献1(ファイル転送方式)や特許文献2(動画伝送システム、動画像送信装置、動画像中継装置、動画像受信装置、プログラム、および記録媒体)のようにデータを分割し、分割データを複数のTCPコネクションにより送信する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−305643号公報
【特許文献2】特開2004−260668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1や特許文献2で開示されている複数のTCPコネクション数の決定方法は、TCPウィンドウサイズ、伝送路の往復遅延時間RTT、回線速度、スループットなどの各種パラメータをもとにして決定している。しかしながら、TCPウィンドウサイズはネットワークの回線の輻輳状況により変化し、伝送路の往復遅延時間RTTは選択されるネットワークの経路により変化する。また、1アプリケーションが使用できる回線速度やスループットは、他のトラフィックの影響を受けるため、従来の方法ではアプリケーション層において適切なTCPコネクション数を把握することは困難であった。
本発明は、このような課題を解決するために、アプリケーション層において把握困難な各種パラメータを用いることなく、伝送遅延の大きいネットワーク環境においても画像伝送のスループット低下を抑止して、高品質な映像表示を実現する画像転送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明の画像転送装置は、カメラが撮影した画像をネットワークへ送信する画像転送装置であって、画像要求を受信した場合に転送処理タスクをおこなう手段を備え、該転送処理タスクをおこなう手段は、前記受信した画像要求のメッセージに含まれる画像ID、その他の情報を使用して同一拠点内のカメラまたは画像記録装置に接続して要求された画像を読出す手段と、TCP/IPを使用して画像送信をおこなうアプリケーション層の処理として、画像1フレームまたは複数フレーム毎に画像送信に使用する送信ポートを選択して送信する手段とを有し、画像送信時、既に画像送信に使用したポートが送信処理を完了して空いているかを判定し、ポートが空いていない場合には新規にポートを生成して画像送信し、ポートが空いている場合はそれまでに生成したポート数で前記画像要求を送信した要求元に画像送信を行うことを第1の特徴とする。
【0006】
上記第1の特徴の画像転送装置において、本発明の画像転送装置は、さらに、送信画像の通信品質クラスに応じて、画像送信処理に割当てる送信ポート数を決定する手段を有することを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、画像フレーム単位で使用する送信ポートを選択して伝送するので、ある送信ポートが使用中であっても、空いている送信ポートを使用して伝送できるため、伝送遅延のある環境において回線容量を有効利用した効率的な画像伝送を実現することができる。
また、送信ポートの切替は画像フレーム単位でおこなうため、ポート数を増減させても、画像がフレーム途中で途切れることがなく、ポート数調整制御を容易に実行できる効果がある。
また、一般的な画像の符号/復号処理単位である1フレームまたは複数フレーム単位で、転送処理をおこなうことで、受信側にて未受信データの待ち時間が生じることなく復号、表示処理を開始でき、効率的な処理を実現できる。
また、アプリケーション層において把握困難な各種パラメータを用いることなく、アプリケーションの動作に適したポート数を動的に決定することで、伝送遅延の大きいネットワーク環境においても画像伝送のスループット低下を抑止して、高品質な映像表示を実現する映像監視システムを提供することができる。
また、送信画像を通信品質クラスで分けて伝送することにより、多様な画像を混在して伝送する場合であっても、リアルタイム性が重要な画像はより高速で伝送できるなど、多様なユーザニーズを満たす映像監視システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例に係る映像監視システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の画像転送装置の一実施例を説明するための図である。
【図3】本発明の画像転送装置の転送処理タスクにおいて、基本ポート数を決定する処理手順の一実施例を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の画像転送装置の転送処理タスクにおいて、ポートを削除する場合の処理手順の一実施例を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の画像転送装置の転送処理タスクにおいて、各転送処理タスクのポート数を調整する共通データテーブルの一実施例を示す図である。
【図6】本発明の画像転送装置の転送処理タスクにおいて、通信品質クラス別に保証するポート数を設定したテーブルの一実施例である。
【図7】本発明の画像転送装置の一実施例において、各転送処理タスクのポート数を調整する全体制御タスクの処理手順を説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明の画像転送装置の一実施例において、割当てポート数の再調整を行う全体制御タスクの一実施例の処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の画像転送装置の一実施例において、ポート数の再調整をおこなう転送処理タスクの処理動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の画像転送装置は、監視カメラ等のカメラで撮影した画像をネットワークへ送信する画像転送装置であって、TCP/IPを使用して画像送信をおこなうアプリケーション層の処理は、画像1フレームまたは複数フレーム毎に画像送信に使用する送信ポートを選択して送信する手段を有し、画像送信時、既に画像送信に使用したポートが送信処理を完了して空いているかを判定し、ポートが空いていない場合は新規にポートを生成して画像送信し、ポートが空いている場合はそれまでに生成したポート数で画像送信を行うものである。
また、画像転送装置は、送信画像の通信品質クラスに応じて、画像送信処理に割当てる送信ポート数を決定する手段を有することを特徴とする。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、各図の説明において、同一の機能を有する構成要素には同一の参照番号を付し、重複を避けるため、できるだけ説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明の一実施例に係る映像監視システムの構成を示すブロック図である。10Aと10Bは監視の拠点、15はネットワークである。拠点10Aにおいて、1A1と1A2は監視用のカメラ、1A3は画像転送装置、1A4は画像記録装置、1A5は表示装置、1A6はカメラ1A1および1A2、画像転送装置1A3、画像記録装置1A4、並びに表示装置1A5を接続するデータバス、1A7は画像転送装置1A3や拠点10A内の機器とネットワーク15を接続するデータバスである。また、拠点10Bにおいて、1B1と1B2はカメラ、1B3は画像転送装置、1B4は画像記録装置、1B5は表示装置、1B6はカメラ1B1および1B2、画像転送装置1B3、画像記録装置1B4、並びに表示装置1B5を接続するデータバス、1B7は画像転送装置1B3や拠点10B内の機器とネットワーク15を接続するデータバスである。
図1に示すように、この画像監視システムは、複数の拠点10Aと10B、および複数の拠点10Aと10Bを接続するネットワーク15から構成される。各拠点10A(または、10B)は、それぞれ、カメラ1A1および1A2(または、1B1および1B2)、カメラ1A1および1A2(または、1B1および1B2)で撮影した画像を記録する画像記録装置1A4(または、1B4)、カメラ1A1および1A2(または、1B1および1B2)または画像記録装置1A4(または、1B4)の映像を表示する表示装置A5(または、1B5)、カメラ1A1および1A2(または、1B1および1B2)または画像記録装置1A4(または、1B4)の画像をネットワーク15へデータバス1A7(または、1B7)を介して送信または受信する画像転送装置1A3(または、1B3)から構成される。また、データバス1A6(または、1B6)は、カメラ1A1および1A2(または、1B1および1B2)、画像転送装置1A3(または、1B3)、画像記録装置1A4(または、1B4)、および表示装置1A5を接続する。
【0011】
拠点10Aのカメラ1A1および1A2で撮影した画像は、拠点10Aの画像記録装置1A4に記録される。拠点10Aの表示装置1A5は、拠点10A内のカメラ1A1若しくは1A2、または画像記録装置1A4に画像要求を行い、取得した画像を表示する。拠点10Bにおいても同様の動作を行う。
拠点10Aのカメラ1A1若しくは1A2で撮影した画像を拠点10Bの表示装置1B5に表示する場合には、拠点10Bの表示装置1B5は、拠点10Bの画像転送装置1B3に、拠点10Aのカメラ1A1若しくは1A2、または画像記録装置1A4に画像要求を行う。
拠点10Bの画像転送装置1B3は、画像表示装置1B5からの画像要求メッセージに含まれる画像IDおよびその他の情報を参照して、拠点10Aの画像転送装置1A3に画像要求を行う。
拠点10Aの画像転送装置1A3は、画像要求メッセージに含まれる画像IDおよびその他の情報を参照して、拠点10A内のカメラ1A1若しくは1A2、または画像記録装置1A4に画像要求を行い、取得した画像を拠点10Bの画像転送装置1B3に転送する。
拠点10Bの画像転送装置1B3は、受信した画像を要求元の画像表示装置1B5に送り、画像表示装置1B5は、送られた画像を表示する。
【0012】
図1を参照しながら、図2によって本発明の画像転送装置の動作の一実施例を説明する。
図2は、本発明の画像転送装置の一実施例を説明するための図である。20は画像転送装置、27はポートである。画像転送装置29において、21〜23は転送処理タスク、24は共通データテーブル、25は全体制御タスク、26はOS(Operation System)である。
【0013】
図2の実施例では、本発明の画像転送装置を、PC(Personal Computer)等のハードウェアのOS上で動作するソフトウェアとして、その特徴を説明する。ソフトウェア構成としては、転送処理を実行する転送処理タスク21〜23、転送処理その他の制御をおこなう全体制御タスク25、タスク間のデータ共有用の共通データテーブル24等から構成され、各タスク21〜23および25は、OS26のスケジューラにより、順番に実行される。
【0014】
図2の画像転送装置20の構成を有する拠点10Bの画像転送装置1B3は、表示装置1B5から画像要求を受付ける(受信する)と転送処理タスク(001)21を生成する。複数の表示装置から画像要求を受信した場合には、転送処理タスクは複数生成される。例えば、図2に示すように、3つの表示装置からの画像要求があった場合には、転送処理タスク(001)21、転送処理タスク(002)22、および転送処理タスク(003)23が生成される。
拠点10Bの画像転送装置1B3は、図2の画像転送装置20の構成を有する拠点10Aの画像転送装置1A3に画像要求を行う。拠点10Aの画像転送装置1A3は、拠点10Bの画像転送装置1B3から画像要求を受付けると転送処理タスク(001)21を生成する。複数の要求元から画像要求がある場合、転送処理タスクは複数生成される。例えば、図2に示すように、3つの表示装置からの画像要求があった場合には、転送処理タスク(001)21、転送処理タスク(002)22、および転送処理タスク(003)23が生成される。
拠点10Aの画像転送装置1A3で生成された転送処理タスク(001)21は、画像要求のメッセージに含まれる画像ID、その他の情報を使用してカメラ1A1若しくは1A2、または画像記録装置1A4に接続し、要求された画像を読出す。
転送処理タスク21は、読出した画像のメタデータ等に含まれる情報や画像要求メッセージに含まれる情報から、転送する画像の伝送速度やフレームレートを把握する。
【0015】
図3は、本発明の画像転送装置の転送処理タスクにおいて、基本ポート数を決定する処理手順の一実施例を説明するためのフローチャートである。
ステップ31では、転送処理タスク(例えば、図2の転送処理タスク21参照)は、カメラ1A1、1A2や画像記録装置1A4から要求された画像を読出す。
一般的に、ネットワーク15に接続されたカメラ1A1、1A2若しくは画像記録装置1A4では、画像符号化単位である1フレームまたは複数フレームで画像の読出しができるものが多い。また、JPEG(Joint Photographic Expert Group)等の静止画では、1フレーム単位で読出しても良く、またさらに、H.264等の動画では、複数フレームが含まれた単位で読出しても良い。また、2フレームを連続して読出し、各画像フレームのメタデータに含まれるタイムスタンプ情報から以降のデータ読出しタイミングを決定しても良い。またさらに、画像転送装置1A3(1B3)にバッファがある場合には、バッファサイズの範囲内で複数フレームを連続して読出しても良い。なお、画像転送装置1A3(1B3)での画像の送信タイミングは、伝送速度やフレームレートから算出されるタイミングで送信をおこなっても良いし、受信側から要求されるタイミングで送信をおこなっても良い。
【0016】
次に、ステップ32〜36では、転送処理タスクは、読出した画像を送信するポート(例えば、図2のポート27)を選択する。空きポートが無い場合で使用ポート数がポート数上限値より小さい場合には、新規ポートを生成し、生成した新規ポートを使用して読出した1フレームまたは複数フレームの画像データを送信する。
即ち、ステップ32では、転送処理タスクは、空きポートの有無を判定する。空きポートが無い場合にはステップ33に進み、空きポートがある場合にはステップ38に進む。
ステップ33では、転送処理タスクは、使用ポート数がポート数上限値より小さいか否かを判定する。使用ポート数がポート数上限値より小さい場合にはステップ34に進み、使用ポート数がポート数上限値と等しいかまたは大きい場合にはステップ38に進む。
【0017】
ステップ34では、転送処理タスクは、新規ポートを生成する。
次にステップ35では、転送処理タスクは、生成した新規ポートを使用して読出した1フレームまたは複数フレームの画像データを送信する。
そして、ステップ36では、転送処理タスクは、カメラ1A1、1A2若しくは画像記録装置1A4から読出し済みの未送信画像フレームがある場合には、ステップ32の送信ポートの選択処理に戻り、ない場合にはステップ37に進む。
ステップ37では、転送処理タスクは、要求画像の転送が終了したか否かを判定し、要求画像の転送が終了していない場合にはステップ31に戻り、要求画像の転送が終了した場合には処理を終了する。
ステップ38では、転送処理タスクは、送信ポートの選択処理を行う。例えば、既に画像送信に使用したポートが送信処理を完了して空いている場合には、それまで生成したポート数を基本ポート数とし、以降基本ポート数の範囲内で画像送信をおこなう。以上の動作を要求画像の転送が終了するまで繰り返す。
このように、異なるポートで送信された画像フレームは、受信側の画像転送装置の転送処理タスクでフレーム順に並べられ、画像表示装置に送られる。
【0018】
上述のように新規ポートを生成しながら、画像データを送信し、送信に使用したポートに空きを検出した時点で、1ポート分の画像データ転送が完了したとみなし、それまでに生成したポート数をその時点での適切なポート数と考える。輻輳が発生すると、TCPウィンドウサイズが縮小するため、このポート数で送信してもスループットは低下する。しかし、これは、輻輳が原因であるため、ポート数を増やしても回避は困難である。なお、輻輳時において求められた基本ポート数は、輻輳解消時にはそれよりも小さい数で所定の伝送速度を達成できると考えられる。このため、余分なポートは削除しても良い。
【0019】
図4は、本発明の画像転送装置の転送処理タスクにおいて、ポートを削除する場合の処理手順の一実施例を説明するためのフローチャートである。
図4の実施例では、画像データ送信時において、転送処理タスクは、空きポートが2つ以上あれば、空きポートが1になるまで、空きポートを削除し、削除後の残ポート数を基本ポート数とするものである。
ステップ41では、転送処理タスクは、送信残の画像フレームがあるか否かを判定する。例えば、転送処理タスクは、カメラ1A1、1A2若しくは画像記録装置1A4から読出し済みの未送信画像フレームがある場合には、ステップ44に進み、ない場合にはステップ42に進む。
ステップ42では、転送処理タスクは、要求画像の転送が終了したか否かを判定し、要求画像の転送が終了していない場合にはステップ43に進み、要求画像の転送が終了した場合には処理を終了する。
【0020】
ステップ43では、転送処理タスクは、カメラ1A1、1A2や画像記録装置1A4から要求された画像を読出す。
ステップ44では、転送処理タスクは、空きポートの有無を判定する。空きポートが無い場合には再びステップ44の実行を繰り返し、空きポートがある場合にはステップ45に進む。
ステップ45では、転送処理タスクは、空きポート数が1超か否かを判定する。空きポート数が1以下の場合にはステップ48に進み、空きポート数が1超の場合にはステップ46に進む。
ステップ46では、転送処理タスクは、空きポート数が1になるまで、空きポートを削除する。
次に、ステップ47では、転送処理タスクは、削除後のポート数を基本ポート数とする(基本ポート数設定)。
そして、ステップ48では、転送処理タスクは、残ったポートを使用して読出した1フレームまたは複数フレームの画像データを送信し、ステップ41に戻る。
【0021】
以上のように、転送処理タスクは、アプリケーション層において把握困難な各種パラメータを用いることなく、適切なポート数を決定することができる。
転送処理タスクは、複数の通信ポートを同時使用して通信することで、伝送遅延のある環境においてTCP/IPの応答待ちにより、あるポートで次フレームを送信できない場合であっても、別のポートを使用して送信できるため、スループットの低下を抑止することができる。
【0022】
ところで一方、使用ポート数が画像転送装置の処理能力を上回る場合には、リソース不足やオーバヘッドが増加してしまう。また、リアルタイム性が重要な画像もそうでない画像と同様に伝送が遅れてしまうという課題がある。従って、割当てポート数の制限や通信品質クラスを考慮したポートの割当てが必要になる。
【0023】
図5は、本発明の画像転送装置の転送処理タスクにおいて、各転送処理タスクのポート数を調整する共通データテーブルの一実施例を示す図である。図5の実施例の共通データテーブは、タスクID毎に登録する使用ポート数、割当てポート数、基本ポート数、および通信品質クラスから構成される。基本ポート数は、これまで説明したように転送処理タスクが決定する。
使用ポート数は使用しているポート数で、たとえば基本ポート数が決定した時点では基本ポート数と同一の値となる。割当てポート数は全体制御タスクがポート数調整時に設定するもので、割当てポート数≦基本ポート数の関係となる。
転送処置タスクは読出した画像のメタデータ等に含まれる情報や画像要求メッセージに含まれる情報から、転送する画像の通信品質クラスを決定する。
【0024】
図6は、本発明の画像転送装置の転送処理タスクにおいて、通信品質クラス別に保証するポート数を設定したテーブルの一実施例である。ベストエフォートクラスは1ポート、優先クラスは基本ポート数の使用が保証されることを示している。
【0025】
図7は、本発明の画像転送装置の一実施例において、各転送処理タスクのポート数を調整する全体制御タスクの処理手順を説明するためのフローチャートである。
図7における全体制御タスクは、各タスクの使用ポート数の和が閾値を超えた場合ポート数の調整を行う。
図7の実施例では、削減できるのはベストエフォートクラスだけのため、ベストエフォートクラスが使用しているポートを削減できるか否かを判定する。削減できる場合には、各タスクの使用ポートの和が閾値以下となるまで、ベストエフォートクラスのポートを削減する。また、ポートを削減したベストエフォートクラス内の各タスク間でポート数を案分するよう再割り当てを行い、共通データテーブルを更新する。ポート数が削減できない場合、以降の新規転送処理タスクはポートを使用できない。
【0026】
図7において、ステップ71では、全体制御タスクは、使用ポート数の総和が所定の閾値を超えているか否かを判定する。使用ポート数の総和が所定の閾値以下の場合には処理を終了し、使用ポート数の総和が所定の閾値を超えている場合にはステップ72に進む。
ステップ72では、全体制御タスクは、ベストエフォートクラスが使用しているポートを削減できるか否かを判定する。削減可能の場合にはステップ73に進み、削減不可の場合にはステップ77に進む。
ステップ73では、全体制御タスクは、ポートを削減する。
次に、ステップ74では、全体制御タスクは、削減後のポート数の総和が所定の閾値を超えているか否かを判定する。使用ポート数の総和が所定の閾値以下の場合にはステップ75に進み、使用ポート数の総和が所定の閾値を超えている場合にはステップ77に進む。
ステップ75では、全体制御タスクは、削減クラス内の各タスクの割当てポート数/基本ポート数が平等になるようにポート割当てを再調整する。
そして、ステップ76では、全体制御タスクは、共通データテーブルを更新し、処理を終了する。
また、ステップ77では、転送処理タスクは、新規タスクへのポート割当てが不可として、処理を終了する。
【0027】
また、要求された画像転送処理が終了し、全体制御タスクが終了した場合、解放されたポートはポートが削減された他のタスクに割当てられることが望ましい。
図8は、本発明の画像転送装置の一実施例において、割当てポート数の再調整を行う全体制御タスクの一実施例の処理動作を説明するためのフローチャートである。
ステップ81では、全体制御タスクは、割当てポート数の総和が所定の閾値未満の場合には、再割り当て処理を行うためにステップ82に進む。また、全体制御タスクは、割当てポート数の総和が所定の閾値以上の場合には、割当てポート数の再調整を行なわずに処理を終了する。
ステップ82では、全体制御タスクは、ベストエフォートクラスの割当てポート数の総和が、基本ポート数の総和未満の場合にはステップ83に進み、基本ポート数の総和以上の場合には割当てポート数の再調整を行なわずに処理を終了する。
【0028】
ステップ83では、全体制御タスクは、基本ポート数の総和が閾値{閾値=(割当てポート数の総和+余裕ポート数)}を超えるか否かを判定する。基本ポート数が閾値を超える場合にはステップ84に進み、基本ポート数が閾値以下の場合にはステップ87に進む。
ステップ84では、全体制御タスクは、余裕ポート数をベストエフォートクラスに割当て、ステップ85に進む。
ステップ87では、全体制御タスクは、各タスクに基本ポート数を割り当て、ステップ86に進む。
ステップ85では、全体制御タスクは、ベストエフォートクラス内の各タスク間で割当てポート数を按分するよう再割り当てを行い、ステップ86に進む。
ステップ86では、全体制御タスクは、共通データテーブルを更新し、割当てポート数の再調整の処理を終了する。
【0029】
図9は、本発明の画像転送装置の一実施例において、ポート数の再調整をおこなう転送処理タスクの処理動作を説明するためのフローチャートである。図9は、図4において、使用ポート数が割当てポート数を超える場合に、ポート数を削除し、使用ポート数を割当てポート数以下にする処理と使用ポート数が割当てポート数より小さい場合に、ポートを生成し、使用ポート数を割当てポート数にまで増やす処理を追加したものである。
図9において、ステップ41〜ステップ44の処理は、図4の同一番号のステップの処理と同様である。ただし、ステップ44において、転送処理タスクは、空きポートの有無を判定し、空きポートが無い場合にはステップ901に進み、空きポートがある場合にはステップ902に進む。
また、ステップ45〜ステップ48の処理は、図4の同一番号のステップの処理と同様である。
【0030】
ステップ901において、まずステップ91では、転送処理タスクは、使用ポート数が割当てポート数未満であるか否かを判定する。使用ポート数が割当てポート数未満の場合にはステップ92に進み、使用ポート数が割当てポート数以上の場合にはステップ44に戻る。
ステップ92では、転送処理タスクは、ポートを生成しステップ93に進む。
ステップ93では、転送処理タスクは、ポート生成後のポート数を使用ポート数として設定し、ステップ94に進む。
ステップ94では、転送処理タスクは、ポートを使用して読出した1フレームまたは複数フレームの画像データを送信し、ステップ41に戻る。
【0031】
次にステップ902において、まずステップ95では、転送処理タスクは、使用ポート数が割当てポート数を超えているか否かを判定する。使用ポート数が割当てポート数を超えている場合にはステップ96に進み、使用ポート数が割当てポート数以下の場合にはステップ45に進む。
ステップ96では、転送処理タスクは、空きポートを削除してステップ97に進む。
ステップ97では、転送処理タスクは、削除後のポート数を使用するポート数として設定し、ステップ44に戻る。
【0032】
なお、本実施例では、通信品質クラスを指定の伝送速度を確保する優先クラスとベストエフォートクラスの2つとしたが、クラス種類を増やして上記で述べた処理と類似処理をおこなってポート数を割当てても差し支えない。
また、図1の構成では、各拠点のカメラは2台であった。しかし、何台であっても良いことは勿論である。さらに、各拠点のカメラの台数は同一台数である必要もない。同様に拠点の数も2である必要はなく、いくつでも良い。
【0033】
上記実施例によれば、画像フレーム単位で使用する送信ポートを選択して伝送するので、ある送信ポートが使用中であっても、空いている送信ポートを使用して伝送できるため、伝送遅延のある環境において回線容量を有効利用した効率的な画像伝送を実現することができる。
また、送信ポートの切替は画像フレーム単位でおこなうため、ポート数を増減させても、画像がフレーム途中で途切れることがなく、ポート数調整制御を容易に実行できる効果がある。
また、一般的な画像の符号/復号処理単位である1フレームまたは複数フレーム単位で、転送処理をおこなうことで、受信側にて未受信データの待ち時間が生じることなく復号、表示処理を開始でき、効率的な処理を実現できる。
また、アプリケーション層において把握困難な各種パラメータを用いることなく、アプリケーションの動作に適したポート数を動的に決定することで、伝送遅延の大きいネットワーク環境においても画像伝送のスループット低下を抑止して、高品質な映像表示を実現する映像監視システムを提供する。
また、送信画像を通信品質クラスで分けて伝送することにより、多様な画像を混在して伝送する場合であっても、リアルタイム性が重要な画像はより高速で伝送できるなど、多様なユーザニーズを満たす映像監視システムを実現することができる。
【0034】
以上、本発明を実施例によって詳細に説明した。しかし、本発明は、上述の実施例に限定されるわけではなく、本発明が属する技術分野において、通常の知識を有する者であれば、本発明の思想と精神に基づいて、本発明を修正若しくは変更できる発明が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
10A、10B:拠点、 15:ネットワーク、 1A1、1A2:カメラ、 1A3:画像転送装置、 1A4:画像記録装置、 1A5:表示装置、 1A6、1A7:データバス、 1B1、1B2:カメラ、 1B3:画像転送装置、 1B4:画像記録装置、 1B5:表示装置、 1B6、1B7:データバス、 20:画像転送装置、 21〜23:転送処理タスク、 24:共通データテーブル、 25:全体制御タスク、 26:OS、 27:ポート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラが撮影した画像をネットワークへ送信する画像転送装置であって、画像要求を受信した場合に転送処理をおこなう手段を備え、
該転送処理タスクをおこなう手段は、前記受信した画像要求のメッセージに含まれる画像ID、その他の情報を使用して同一拠点内のカメラまたは画像記録装置に接続して要求された画像を読出す手段と、TCP/IPを使用して画像送信をおこなうアプリケーション層の処理として、画像1フレームまたは複数フレーム毎に画像送信に使用する送信ポートを選択して送信する手段とを有し、
画像送信時、既に画像送信に使用したポートが送信処理を完了して空いているかを判定し、ポートが空いていない場合には新規にポートを生成して画像送信し、ポートが空いている場合はそれまでに生成したポート数で前記画像要求を送信した要求元に画像送信を行うことを特徴とする画像転送装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像転送装置において、さらに、送信画像の通信品質クラスに応じて、画像送信処理に割当てる送信ポート数を決定する手段を有することを特徴とする画像転送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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