説明

画像配信方法、画像配信システム

【課題】画像データを使用する受信ノードを有するネットワークにおいて、受信ノードごとに必要とする解像度が異なるときに、ネットワーク帯域の使用量の抑制と、受信ノードのデータ処理負荷の軽減とを両立させた画像配信方法を提供する。
【解決手段】原画像を分割した画像領域に含まれる画素の画素データに基づく演算によって符号化データを導出し、当該符号化データの集合からなる複数の画像を作成し、当該複数の画像を配信する。配信を受けた受信ノードは、必要とする画像の解像度に応じて符号化データを組み合わせ、使用する画像を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク上の受信ノードに画像を配信する方法、および、ネットワーク上の画像配信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車載ネットワーク内の機器が画像を利用する場合に、何らかの仕組みで画像データの配信を受けることがある。このような仕組みの例として、車両に搭載したカメラで動画像や静止画像等の画像を撮影し、カメラに接続された受信ノードに配信した後で、その画像を利用して運転手等にサービスを提供する場合がある。画像の利用方法としては、映像を直接的または加工して表示することや、記録装置に記録すること、他の機器で使用するために加工等することが考えられる。このような受信ノードとしては例えば、運転手から死角となる部分の画像を提供する表示装置、映像を記録する装置、あるいは画像認識装置などがある。画像認識装置では、配信された画像を処理して路面状況や周囲の交通を認識し、ドライビングコントロール装置等に情報を提供して適切に運転を制御させることができる。
【0003】
上記のように画像を配信する場合、カメラと受信ノードとの間で画像データを送受信するために、車載ネットワークを利用する場合がある。ここで代表的な車載ネットワーク技術としては、CAN,LIN,FlexRay等が存在する。例えばCANでは、通信専用線を用いてバス型のネットワークを実現している。
【0004】
しかし、このような車載ネットワークに複数の機器を接続して使用する場合、ネットワークの帯域には上限があるため、データ衝突が起こる可能性がある。もしもデータ衝突が発生すると、配信の遅延や失敗、ひいては利用者へのサービス低下につながりかねない。一般的に、画像データ、特に動画像はデータ量が多いため、上記のような現象を可及的に防止する必要がある。
【0005】
データ伝送量を抑える一つの方法として、画像データを圧縮して配信することができる。例えば、特許文献1には、車載ネットワークの空き帯域幅を検知し、空きに応じて適切な圧縮方法を選択してデータを伝送する方法が記載されている。また、特許文献2では、車載ネットワーク構築のコストを下げるための技術が記載されている。
【0006】
ところで、各々の受信ノードで必要とする画像の縦および横の画素数(以下では解像度と呼び、横方向画素数×縦方向画素数で表す)は、同一とは限らない。また、カメラで撮影した画像(以下、原画像)の解像度と一致しない場合もある。したがって、撮影した画像を各々の受信ノードに相応しい解像度に変換する必要がある。この変換作業を行うタイミングとして、次の二つのパターンが存在する。
【0007】
(1)カメラ側は、原画像を元の解像度のままネットワークに配信する。受信ノード側で受け取った画像に変換作業を施して、必要な解像度の画像を得る。
【0008】
(2)カメラ側は、原画像を受信ノードそれぞれが必要とする解像度に変換する。その後、解像度の異なる複数の画像を全てネットワークに配信する。
【特許文献1】特開2004−104529号公報
【特許文献2】特開2006−128766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、前述したいずれのタイミングで解像度の変換を行っても、問題が起こる可能性がある。まず(1)の方法を用いた場合、受信ノード側にデータ処理能力が要求され、処理の負荷も増大する。一方(2)の方法を用いた場合、同一の被写体を異なる解像度で配信するため、ネットワーク帯域の使用量が増大してしまう。
【0010】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、受信ノードごとに異なる解像度の画像データを配信する際に、ネットワーク帯域の使用量の抑制と、受信ノードのデータ処理負荷の軽減とを両立させた画像配信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明では、以下の方法によって画像配信を行う。すなわち本発明は、ネットワーク内での画像配信方法であって、画像取得工程と、分割工程と、符号化工程と、配信画像作成工程と、伝送工程と、使用画像作成工程とを有するものである。
【0012】
画像取得工程では、原画像を取得する。本発明では、画像は、複数の画素からなる画像データとして表される。画素の色彩や明度の特性は、画素データによって表すことができる。例えば、色のRGB成分それぞれの階調のひとまとまりとしたものである。また、グレースケール画像の場合は白色および黒色を両端とする階調として表すことができる。分割工程では、原画像に含まれる画素を所定数の画素からなる画像領域に分割する。
【0013】
符号化工程では、各画像領域において、画像領域を構成する所定数の画素の画素データから、所定数の画素と同数の符号化データを算出する。ここで符号化データとは、画素データと同様に取り扱うことができる値をいう。また、符号化データを作成する際には、符号化データを所定の方法で組み合わせることによって、元の画像領域を再現できるか、元の画像領域を縦または横方向に圧縮した画像を作成できるものとする。
【0014】
配信画像作成工程では、符号化データごとに配信画像を作成する。伝送工程では、作成した配信画像を受信ノードに配信する。
【0015】
使用画像作成工程では、受信ノードにおいて、配信画像に基づいて受信ノードで使用する使用画像を作成する。ここで使用画像とは、当該受信ノードで使用する解像度の画像をいう。また、配信画像が必要を満たしていればそのまま利用できる。なお、使用画像のサイズは受信ノードの解像度と完全に一致する必要はない。例えば、受信ノードが表示装置であり、取得した画像のサイズが当該表示装置の解像度よりわずかに小さい場合、表示装置の中央に画像を配置しても良い。
【0016】
このように構成された本発明によれば、取得した画像を受信ノードに配信する際に、複数の配信画像に分解して受信ノードに伝送することになる。このとき受信ノードごとに異なる配信画像を作成することはないため、配信するデータは冗長にはならず、ネットワークの帯域を浪費しないで済む。
【0017】
また、受信ノードでは、単純な計算によって使用画像を作成できるため、データ処理の負荷増大は抑制される。また、使用画像のサイズによっては配信された画像をそのまま使用できるため、受信ノード側のデータ処理負荷が小さくて済む。
【0018】
本発明における画像取得工程では、原画像を取得する方法として、例えば、ネットワークの外部から画像データを受信しても良く、ネットワーク内に蓄積された画像を取り出し
ても良い。また、ネットワークに接続されたカメラでの撮影によることも可能である。
【0019】
本発明においては、配信画像作成工程で得られた配信画像のいずれか1つを原画像として、さらに分割工程、符号化工程、および配信画像作成工程を施すことができる。このように構成された本発明によれば、分解の第一段階で得られた画像よりも小さいサイズの画像を必要とする受信ノードに対して、最適な解像度の画像を配信することができる。またこのとき、ネットワークの帯域使用量増加を抑え、かつ、受信ノードに過大な処理負荷をかけないというメリットはそのまま享受できる。
【0020】
本発明における分割工程、符号化工程、配信画像作成工程は、例えば次のようにすることができる。すなわち、まず分割工程では、原画像を縦横それぞれ2画素からなる画像領域に分割し、各画像領域の画素データをa、b、c、dとおく。次に符号化工程では、画像領域ごとに第1符号化データA、第2符号化データB、第3符号化データC、および第4符号化データDを算出する。次に配信画像作成工程では、配信画像として、各画像領域の前記第1符号化データAの集合(以下、第1画像と呼ぶ)、前記第2符号化データBの集合(以下、第2画像と呼ぶ)、前記第3符号化データCの集合(以下、第3画像と呼ぶ)、および前記第4符号化データDの集合(以下、第4画像と呼ぶ)を作成する。
【0021】
符号化工程で符号化データを算出する方法として、例えば、第1符号化データAを式(1)により、第2符号化データBを式(2)により、第3符号化データCを式(3)により、第4符号化データDを式(4)により、それぞれ求めることができる。
A=(a+b+c+d)/4 … 式(1)
B=((a+b)−(c+d))/4 … 式(2)
C=((a−b)+(c−d))/4 … 式(3)
D=((a−b)−(c−d))/4 … 式(4)
【0022】
こうすれば、使用画像作成工程において、符号化データを以下の様に組み合わせることにより、必要に応じた画像を作成できる。まず、第1符号化データA〜第4符号化データDの4つを組み合わせることで、元の画像領域の画素データa〜dを求められ、原画像を再現できる。次に、第1符号化データAと第2符号化データBを組み合わせることで、元の画像領域の上半分および下半分の画素データの値の平均が求められ、横方向を1/2に圧縮した画像(以下、横圧縮画像と呼ぶ)を作成できる。次に、第1符号化データAと第3符号化データCを組み合わせることで、元の画像領域の左半分および右半分の画素データの値の平均が求められ、縦方向を1/2に圧縮した画像(以下、縦圧縮画像と呼ぶ)を作成できる。さらに、第1符号化データAから、元の画像領域の画素データの値の平均が求められ、縦および横方向をそれぞれ1/2に圧縮した画像(以下、縦横圧縮画像と呼ぶ)を作成することができる。
【0023】
また、別の符号化データ算出方法として、以下の式(5)〜式(8)によって求めることができる。
A=a… 式(5)
B=a−b … 式(6)
C=a−c … 式(7)
D=a−d … 式(8)
【0024】
本発明における複数の受信ノードは、車両に搭載するものとして実現されても良い。また、本発明におけるネットワークは、車載ネットワークとして実現されても良い。その場合、ネットワーク上にカメラを配置し、カメラで撮影することによって原画像を取得することが可能である。
【0025】
なお、本発明は、上記工程の少なくとも一部を含むネットワーク上のデータ伝送方法として捉えることができる。また、上記工程および処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【0026】
また、本発明は、上記の方法によって画像配信を行う画像配信装置として捉えることができる。さらに、上記の処理を実行する画像配信システムとしても捉えることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、受信ノードごとに異なる解像度の画像データを配信する際に、ネットワーク帯域の使用量の抑制と、受信ノードのデータ処理負荷の軽減とを両立させた画像配信方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0029】
(実施形態1)
まず、図1〜図7を参照して実施形態1に係る画像配信方法について説明する。ここでは、車体に搭載されたカメラにより画像を撮影し、取得した画像データを液晶表示装置および画像認識装置に配信するシステムを想定している。
【0030】
<車載ネットワークの構成>
図1は本実施形態における車載ネットワークの構成を表すブロック図である。構成要素はカメラ101、データ処理部102、データ伝送部103、液晶表示装置104、画像認識装置105、ドライビングコントロール装置106である。
【0031】
カメラ101は車体に搭載され、解像度がSXGAサイズ(1280×1024画素)の原画像を撮影することができる。データ処理部102は、原画像の画素データに基づいて、後述する配信画像を作成する。カメラ101とデータ処理部102は一体の装置であっても良く、別々に構成され原画像を送受信するものとしても良い。データ伝送部103は車載ネットワークであり、データ処理部102と受信ノードの間でデータを伝送する。
【0032】
液晶表示装置104は車両に乗っている者に対して画像を提供するための受信ノードであり、VGAサイズ(640×480画素)の画像を表示できる。画像認識装置105は、画像を元に車両の周囲の状況を判断し、ドライビングコントロール装置106に伝えるための受信ノードである。画像認識装置105が処理できるのはSXGAサイズの画像である。ドライビングコントロール装置106は、画像認識装置105の状況判断に基づいて運転を制御する。
【0033】
<配信画像作成までの流れ>
以降、必要に応じて図6のフローチャートのステップ番号(S6xx)を示しつつ、配信画像を作成するまでの処理について説明する。
【0034】
(画像取得工程)
本工程は原画像を取得するための工程である。カメラ101は車両外部の映像を撮影し、A/D変換を施すことによって1280×1024画素の画像を取得する(S601)。ここで撮影した画像の例を図2に示す。本実施形態においてはm=1280,n=1024である。また、各画素の明度および色度を表現するために、画素のRGB各成分を0〜255までの階調で表したものを画素データと呼ぶ事とする。
【0035】
(分割工程)
本工程は、データ処理の便宜のために原画像を分割する工程である。データ処理部102は、原画像を複数の画像領域に分割する(S602)。本実施形態では、1つの画像領域を縦2×横2画素の合計4画素からなるものとする。ここで、p=m/2,q=n/2とおくと、前述の図2に示したように、原画像をR11〜Rpqまでの640×512個の画像領域に分割することができる。
【0036】
分割した一つの画像領域の例を図3に示す。以降、左上の画素データ=a、右上の画素データ=b、左下の画素データ=c、右下の画素データ=dとする。
【0037】
(符号化工程)
データ処理部102は、画素データa〜dの値から、第1符号化データA〜第4符号化データDを算出する(S603)。本実施形態においては以下の式(1)〜式(4)を使用する。
A=(a+b+c+d)/4 … 式(1)
B=((a+b)−(c+d))/4 … 式(2)
C=((a−b)+(c−d))/4 … 式(3)
D=((a−b)−(c−d))/4 … 式(4)
【0038】
本工程の概念図を図4に示す。かかる演算を全ての画像領域で実行することによって、640×512個の各符号化データが得られる。
【0039】
ここで、本実施形態での画素データはRGB成分の集合をいうため、各成分について演算を行う必要がある。例えば画素データaのRGB値が(ar,ag,ab)、画素データbが(br,bg,bb)の場合、式(a+b)とは、RGB値(ar+br,ag+bg,ab+bb)を求める演算を意味する。
【0040】
このように求めた符号化データを組み合わせることにより、画像を得る方法を以下に示す。まず、原画像を得るためには、画像領域における画素データa〜dが分かればよい。具体的には式(5)〜式(8)を用いた演算を行う。
a=(A+B+C+D) … 式(5)
b=(A+B−C−D) … 式(6)
c=(A−B+C−D) … 式(7)
d=(A−B−C+D) … 式(8)
【0041】
次に、横圧縮画像を得るためには、画像領域の上半分の画素データの平均値と、下半分の平均値が分かればよい。具体的には式(9)、式(10)を用いた演算を行う。
(a+b)/2=A+B … 式(9)
(c+d)/2=A−B … 式(10)
【0042】
次に、縦圧縮画像を得るためには、画像領域の左半分の画素データの平均値と、右半分の平均値が分かればよい。具体的には式(11)、式(12)を用いた演算を行う。
(a+c)/2=A+C … 式(11)
(b+d)/2=A−C … 式(12)
【0043】
また、縦横圧縮画像を得るためには、4つの画素データの平均値が分かればよい。この平均値は、式(1)により求めた第1符号化データAとして既に得られている。
【0044】
(配信画像作成工程)
データ処理部102は、車載ネットワークに送出するための配信画像として第1画像〜第4画像を作成する(S604)。
【0045】
配信画像の例として、第1符号化データAから作成した第1画像を図5に示す。ここでは各画像領域の第1符号化データAを元の画像領域の並び順と同様に配置することにより、640×512画素サイズの第1画像が得られる。同様に、第2符号化データBから第2画像を、第3符号化データCから第3画像を、第4符号化データDから第4画像を作成できる。
【0046】
<画像を使用するまでの流れ>
以降、必要に応じて図7のフローチャートのステップ番号(S7xx)を示しつつ、受信ノードが画像を使用するまでの処理について説明する。
【0047】
(伝送工程)
データ処理部102は、配信画像作成工程で作成した第1画像〜第4画像を、データ伝送部103を経由して受信ノードである液晶表示装置104および画像認識装置105に送出(ブロードキャスト送信)する。なお、送出に際しては第1画像、第2画像、第3画像、第4画像の順序となるようにする(S701)。
【0048】
ここでデータ伝送部103に送出されるデータ量について検討すると、各画像はそれぞれ640×512画素からなるため、4×(640×512)=1310720画素となる。一方、原画像を送出した場合は1280×1024=1310720画素である。すなわち、本実施形態の送出方法によってデータ転送量が増加することはないと言ってよい。
【0049】
なお、画像を送出する際には上述の方法に限られることなく、車載ネットワークのトポロジーに応じて適切な方法を選択できる。例えば車載ネットワークとしてCANを使用していれば、マルチキャスト方式により受信ノードに画像を取得させても良い。また、画像を送出する際に、動画像であればMPEG2、MPEG4等、静止画像であればJPEG、JPEG2000等のデータ圧縮技術を利用して、帯域の使用率を抑える事もできる。
【0050】
(使用画像作成工程)
本工程では、各受信ノードが、配信画像に基づいて使用画像を作成する。各受信ノードの使用画像の解像度は異なるため、この処理は受信ノードごとに行われる。
【0051】
まず、液晶表示装置104について説明する。伝送工程で最初に受信した第1画像から、実際に使用する画像を作成できるかどうかを判断する(S702)。この場合、第1画像のサイズ(640×512画素)が使用画像のサイズ(640×480画素)よりも大きいので、条件は満たされている(結果:Y)。そのため、第2画像以降の配信画像は受信しない。
【0052】
受信ノードで横圧縮画像、縦圧縮画像、または縦横圧縮画像を使用する場合は、引き続いて符号化データA〜Dに基づく演算を実行するが(S703)、ここでは第1画像がそのまま使用できるため、このステップは実行しない。
【0053】
続いて画像のサイズ調整が必要かどうかを判断する(S704)。ここでは縦方向の画素数を減らす必要がある(結果:N)。そこで、第1画像の上下それぞれ16画素分の列を切り取ることにより、必要なサイズの画像を取得する(S705)。その後、液晶表示装置は加工済みの画像を使用する(S706)。
【0054】
このように、本実施形態において液晶表示装置104は第1画像のみを使用して処理を行う。従って液晶表示装置104は第2画像〜第4画像の受信を待つ必要は無く、第1画
像を受信した段階で本工程を実施できる。なお、受信に際してはヘッダ情報等を参照して第1画像のみを受信するようにしても良い。
【0055】
ところで、画像サイズを縮小する方法として、原画像から単純に画素を抜き出す方法が知られている。例えば前述の図3で言うと、各画像領域から画素データaだけをサンプリングしたのち配列し、640×512画素サイズの画像を得る方法である。しかし、この方法ではエイリアシングの問題が起きる場合がある。すなわち、原画像とサンプリング間隔の関係よっては画像に歪みが生じることがある。一方、本実施形態の第1画像は4つの画素データの平均値を取っているので、このようなエイリアシングの問題は起きない。
【0056】
次に、1280×1024画素サイズの画像を使用する画像認識装置105について検討する。この場合は原画像を復元して使用するため、第1画像〜第4画像までの全てを受信する必要がある。従って、受信ノードは第4画像まで受信した時点で(S701)、はじめて使用画像を作成できるようになる(S702の結果:Y)。画像認識装置105は、第4画像まで受信した後に、前述した式(5)〜式(8)を用いて画素データa〜dを算出し、元の画像領域を復元し、各画像領域を合わせて原画像を復元する(S703)。
【0057】
画像認識装置105の場合は原画像のサイズと使用画像のサイズが一致しているため(S704の結果:Y)、復元した原画像のサイズを調整することなく、そのまま使用できる(S706)。
【0058】
本実施形態においては、受信ノードの画素サイズが640×480の場合(画像表示装置104)、および1280×1024の場合(画像認識装置105)について説明したが、仮に画素サイズが異なっていても、同様の処理フローで対処できる。例えば、横圧縮画像(640×1024画素サイズ)が必要であれば、前述した式(9)、式(10)を用いて画像を作成できる。また、縦圧縮画像(1280×512画素サイズ)が必要であれば、前述した式(11)、式(12)を用いて画像を作成できる。
【0059】
なお、横圧縮画像を使用する受信ノードにおいては、配信画像のうち第1画像と第2画像を受信した段階で使用画像作成工程に移行することができる。そのため、処理時間を短縮することが可能となる。また、ヘッダ等の情報を参照して使用する画像だけを選択的に受信しても良い。
【0060】
また、縦圧縮画像を使用する受信ノードにおいては、第1画像〜第3画像までを受信した段階で、使用画像作成工程に移行することができる。
【0061】
本実施形態によれば、このように単純な四則演算により使用画像を作成することができるため、受信ノード側でのデータ処理の負荷を抑制することができる。
【0062】
なお、本実施形態においてカメラ101が撮影する原画像は、カメラ及び受信ノードの機能に応じて静止画像または動画像を選択することができる。動画像とした場合のフレームレートは、カメラや受信ノードの性能に応じて設定することができる。
【0063】
また、本実施形態においては画素データをRGB値で表現したが、他の表色系を使用したり、グレースケール画像を利用しても良い。グレースケール画像を使用する場合は、例えば、画素が白色の時に255、黒色の時に0というように画素データを規定することができる。
【0064】
(実施形態2)
以下に実施形態2について説明する。本実施形態は、実施形態1で作成した第1画像(
原画像の画素データから式(1)によって算出した符号化データAの集合)を、さらに複数の画像に分解し伝送する方法である。
【0065】
本実施形態に係る車載ネットワークの構成を図8に示す。実施形態1と比較すると、新たに画像記録装置807が加わっている。画像記録装置807は、QVGAサイズ(320×240画素)の画像を記録できる記録装置である。
【0066】
<画像処理の流れ>
カメラ101によって画像を取得する方法、および、データ処理部102において第1画像〜第4画像を作成する手順は実施形態1と同一であるため、説明を省略する。
【0067】
続いてデータ処理部102は、第1画像(サイズは640×512画素)を原画像として、再度分割工程、符号化工程、配信画像作成工程を実行する。すなわち、まず第1画像を縦2×横2画素ごとに分割し、320×256個の画像領域を作成する。次に、各画像領域ごとに、前述した式(1)〜式(4)に画素データa〜dの値を代入し、符号化データA〜Dを算出する。次に、各符号化データを、元の画像領域と同様の並び順に配置する。
【0068】
このような処理により、320×256画素サイズの画像を4枚得ることができる。すなわち、符号化データAに対応する第1−1画像、符号化データBに対応する第1−2画像、符号化データCに対応する第1−3画像、および符号化データDに対応する第1−4画像である。
【0069】
続いてデータ処理部102は、車載ネットワークを構成するデータ伝送部103を経由して、第1−1画像〜第1−4画像、および第2画像〜第4画像を配信する。このときのデータ伝送量は、4×(320×256)+3×(640×512)=1310720画素分である。これは実施形態1と同じ数値であり、データ伝送量の増加を抑制していると言える。
【0070】
続いて、QVGAサイズ(320×240画素)の画像を使用する画像記録装置807での処理について説明する。画像記録装置807が受信した第1−1画像のサイズでは大きいので、例えば上下8列ずつを切り取る等の加工をして使用する。
【0071】
また、VGAサイズ(640×480画素)の画像を使用する液晶表示装置104においては、第1−1画像〜第1−4画像から、式(5)〜式(8)を用いて640×512画素サイズの第1画像を復元し、上下を切り取って使用する。
【0072】
さらに、1280×1024画素サイズの画像を使用する画像認識装置105においても同様に第1画像を復元し、第2画像〜第4画像とあわせて原画像を復元する。
【0073】
(実施形態3)
以下に実施形態3について説明する。本実施形態は、実施形態1とは異なる方法で符号化データを作成する場合である。
【0074】
本実施形態において、車載ネットワークの構成や、原画像を画像領域に分割する方法は実施形態1と同一であり、説明は省略する。
【0075】
本実施形態における符号化工程では、符号化データを作成する際の変換式が、実施形態1と異なっている。すなわち、画素データa〜dを以下の式(9)〜式(12)にあてはめ、第1符号化データA〜第4符号化データDを算出する。
A=a… 式(9)
B=a−b … 式(10)
C=a−c … 式(11)
D=a−d … 式(12)
【0076】
続いて、各画像領域の第1符号化データAを元の画像領域と同様に配列して、第1画像を作成する。同様に、第2符号化データBから第2画像を、第3符号化データCから第3画像を、第4符号化データDから第4画像を作成する。
【0077】
続いて、作成した第1画像〜第4画像を各受信ノードに伝送する。このときのデータ伝送量は、4×(640×512)=1310720画素分であり、原画像のデータ伝送量や実施形態1でのデータ伝送量と同じである。
【0078】
配信画像を取得した受信ノードは、原画像サイズの画像を使用する場合は、以下の式を用いて画素データを復元する。このように単純な計算によって原画像が復元できるため、受信ノードがデータ処理に要する負荷は軽い。
a=A
b=A−B
c=A−C
d=A−D
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施形態1に係る車載ネットワークの構成を示すブロック図。
【図2】原画像を画像領域に分割する方法を表す図。
【図3】画像領域内での画素の配置を表す図。
【図4】画像領域内における符号化データ作成の概念図
【図5】符号化データから配信画像を作成する方法を表す図。
【図6】実施形態1に係る配信画像作成までの処理を示すフローチャート。
【図7】実施形態1に係る受信ノードでの処理を示すフローチャート。
【図8】実施形態2に係る車載ネットワークの構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0080】
101 カメラ
102 データ処理部
103 データ伝送部
104 液晶表示装置
105 画像認識装置
807 画像記録装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原画像を取得する画像取得工程と、
前記原画像を所定数の画素からなる画像領域に分割する分割工程と、
各々の画像領域について、前記所定数の画素と同数の符号化データを算出する符号化工程と、
前記符号化データごとに配信画像を作成する配信画像作成工程と、
前記配信画像を受信ノードに配信する伝送工程と、
前記受信ノードにおける使用画像を作成する使用画像作成工程と
を有する、ネットワーク内での画像配信方法であって、
任意の画像領域について、その画像領域から算出した符号化データを組み合わせることにより、この画像領域、または、この画像領域を縦もしくは横方向に圧縮した画像を作成可能であり、
前記使用画像作成工程は、前記使用画像に応じた組み合せによって前記符号化データから使用画像を作成する
ことを特徴とする画像配信方法。
【請求項2】
前記分割工程は、原画像を縦横それぞれ2画素からなる画像領域に分割するものであり、
前記符号化工程は、前記画像領域ごとに4種類の符号化データを算出するものであり、
前記配信画像作成工程で作成する配信画像は、各画像領域から同じ種類の符号化データを集合させたものである
ことを特徴とする請求項1に記載の画像配信方法。
【請求項3】
前記符号化工程は、前記画像領域の画素データa〜dと式(1)〜式(4)から符号化データA〜Dを算出するものである
ことを特徴とする請求項2に記載の画像配信方法。
A=(a+b+c+d)/4 … 式(1)
B=((a+b)−(c+d))/4 … 式(2)
C=((a−b)+(c−d))/4 … 式(3)
D=((a−b)−(c−d))/4 … 式(4)
【請求項4】
前記符号化工程は、前記符号化データAを集合させた配信画像を原画像として、更に前記分割工程、前記符号化工程、および前記配信画像作成工程を行うものである
ことを特徴とする請求項3に記載の画像配信方法
【請求項5】
前記画像取得工程は、ネットワークに接続された撮影機器を用いて前記原画像を取得するものである
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像配信方法。
【請求項6】
前記撮影機器および前記複数の受信ノードは車両に搭載するものであり、前記ネットワークは車載ネットワークである
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像配信方法。
【請求項7】
ネットワークで接続された画像配信部と複数の受信ノードで構成される画像配信システムであって、
前記画像配信部は、
原画像を取得する画像取得手段と、原画像を所定数の画素からなる画像領域に分割する分割手段と、各々の画像領域について前記所定数と同数の符号化データを算出する符号化手段と、前記符号化データごとに配信画像を作成する配信画像作成手段とを有し、
前記受信ノードは、使用画像の画素数に応じて符号化データを組み合わせて、前記画像領域および、前記画像領域を縦または横方向に圧縮した画像を作成する
ことを特徴とする画像配信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−21797(P2010−21797A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180506(P2008−180506)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】