説明

画情報の予測符号化装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、画情報を予測符号化方式により符号化する画情報の予測符号化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】画像の各画素をテンプレートで示される周辺画素の状態により予測し、その予測結果に基づいて画情報を符号化する予測符号化方式が知られている。この場合のテンプレートは、符号化する注目画素に対する周辺画素の位置を示すものである。
【0003】予測符号化方式で画情報を符号化する場合、画像の性質に応じてテンプレートを設定すると、高いデータ圧縮率が得られる。例えば、ファクシミリ装置で伝送する黒白画像の場合、文字や図形のような単純な2値画像と、絵や写真を読み取りディザ処理などを行なった中間調画像とがある。これらの画像は、それぞれの画像に応じてテンプレートを変える方が、高いデータ圧縮率が得られる。
【0004】しかしながら、ファクシミリ装置のように画情報を伝送する場合には、送信側で符号化するときと、受信側で復号化するときとで、同一のテンプレートを使用する必要がある。
【0005】このため、例えば2値画像を伝送する場合でも中間調画像を伝送する場合でも、ある程度高いデータ圧縮率が得られる1つのテンプレートを固定的に使用していた。図6は、この種の既知テンプレートの一例であり、斜線部が注目画素、空白部が抽出する周辺画素の位置を示している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来は、様々な種類の画像を扱う装置の場合でも、テンプレートは、予め固定的に1種類しか備えていなかった。このため、各種画像を常に効率よく符号化することができないという問題があった。
【0007】本発明は、上記の問題を解決し、各種画像を常に効率よく符号化することができる画情報の予測符号化装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】このために、本発明は、注目画素に対する画素位置がそれぞれ異なる複数のテンプレートを備え、符号化の際には、画像の種類に応じて1つのテンプレートを選択し、そのテンプレートを使用して所定の符号を生成し、使用したテンプレートを示す情報と、生成した符号とを共に出力するようにしたとを特徴とするものである。
【0009】
【作用】画像の種類に応じて最もデータ圧縮率の高いテンプレートを使用することができるので、各種画像を常に効率よく符号化することができる。また、出力情報で、使用されたテンプレートが指示されているので、復号化の際には、指示されたテンプレートを使用することにより、元の画情報を容易に復元することができる。
【0010】
【実施例】以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0011】図1は、本発明の一実施例に係るファクシミリ装置のブロック構成図を示したものである。図において、スキャナ1は原稿画像を読み取るもので、プロッタ2は受信画像を記録出力するものである。符号化復号化部3は、送信する画情報をデータ圧縮する一方、受信した画情報を復号化して元の画情報に復元するものである。
【0012】この符号化復号化部3内には、テンプレートテーブル3a,テンプレート選択手段3b,画素抽出手段3c,予測手段3d,符号化手段3eおよび復号化手段3fを備えている。テンプレートテーブル3aは、2値画像と中間調画像とに、それぞれ適した2種類のテンプレート情報を記憶するものである。テンプレート選択手段3bは、その2種類の内からオペレータの選択操作に従って一方のテンプレート情報を取り出すものである。
【0013】画素抽出手段3cは、1画素ずつ入力される画情報から、テンプレートにより示される一定位置の周囲画素を抽出するものである。予測手段3dは、抽出される周囲画素に基ずいて各画素のシンボル情報を予測するものである。符号化手段3eは、その予測結果であるシンボル情報に基づいて符号を生成するものである。復号化手段3fは、受信した符号からシンボル情報を復元するものである。
【0014】モデム4は、画情報である上記生成された符号や伝送制御のための各種手順信号を送受信するものである。網制御装置5は、電話回線が接続され、発着信の際に所定の回線制御を行なうものである。操作表示部6は、装置が動作状態を表示する一方、オペレータが各種操作を行なうものである。この操作表示部6には、送信画像が2値画像であるか中間調画像であるかを、オペレータが指定する画像種別指定手段6aを備えている。
【0015】システム制御部7は、上記各部を制御するマイクコンピュータであり、システムバス8は、上記各部が相互間で各種制御信号やデータをやりとりする信号ラインである。
【0016】以上の構成で、次に、本実施例のファクシミリ装置の画像送信手順を説明する。
【0017】オペレータは、原稿送信する場合、その原稿画像が2値画像であるか中間調画像であるかという画像種別をチェックする。そして、図2に示すように、送信原稿をスキャナ1にセットし(処理101)、操作表示部6の所定の操作で、その画像種別を指定する(処理102)。そして、宛先の設定など所定の発信操作を行なう(処理103)。
【0018】ファクシミリ装置は、これにより発呼する(処理104)。相手先が応答すると、既知の伝送制御手順で伝送モードのネゴシエーションを行なう。このとき、受信側は、符号化復号化部3のテンプレートテーブル3aに備えているテンプレートの種類を送信側に通知する。また、送信側であるこのファクシミリ装置は、オペレータにより指定された上記画像種別に適応するテンプレートを判別する。そして、受信側がそのテンプレートを備えていることを確認して、受信側にそのテンプレートを通知する。なお、送信側と受信側間のテンプレート情報の交信は、例えば、予め各種テンプレートに識別コードを付与しておき、その識別コードにより交信する(処理105)。
【0019】次いで、スキャナ1で原稿画像を読み取り、得られた画素データを符号化復号化部3に転送する。符号化復号化部3では、図3に示すように、テンプレート選択手段3bが、テンプレート選択手段3b内の2種類のテンプレートの内、オペレータにより指定された画像種別に適応する一方を選択する。画素抽出手段3cは、転送された上記画素データを順次入力して、その画素データを注目画素として出力すると共に、上記選択されたテンプレートに従って周囲画素を抽出する。
【0020】いま、2値画像が指定されているとすると、例えば、図4(a)に示すようなテンプレートを使用する。同図破線部は注目画素、空白部は抽出する周囲画素をそれぞれ示している。このテンプレートは、比較的注目画素に近い位置の周辺画素を取り出すもので、2値画像に適応した既知のものである。
【0021】また、中間調画像が指定されているとすると、例えば、図4(b)に示すようなテンプレートを使用する。このテンプレートは、注目画素からやや離れた位置の周辺画素を取り出すもので、中間調画像に適応する既知のものである。
【0022】予測手段3dは、周辺画素の状態により注目画素におけるシンボルを予測する。そして、注目画素が優勢シンボルであるか劣勢シンボルであるかという情報およびそれらの出現確率を示すシンボル情報を出力する。
【0023】符号化手段3eは、そのシンボル情報に基づいて所定の符号を生成する。モデム4は、生成されたその符号を受信側に順次送信する(以上、処理106)。この画情報の送信が完了すると、既知の伝送制御手順で、受信側の応答をチェックして(処理107)、送信処理を終了する。
【0024】一方、受信側では、モデム4が上記符号を受信して、符号化復号化部3に転送する。符号化復号化部3では、図5に示すように、テンプレート選択手段3bが、送信側からの通知情報により、テンプレート選択手段3b内のテンプレートを選択する。復号化手段3fは、転送される符号から前記シンボル情報を順次復元する。
【0025】予測手段3dは、画素抽出手段3cから出力される注目画素の周囲画素の状態により注目画素を予測する。そして、その予測結果と上記のシンボル情報とにより画素データを順次復元する。画素抽出手段3cは、復元された画素データを注目画素として、上記選択されたテンプレートに従って周囲画素を抽出して、予測手段3d側に出力する。このように復元された画素データは、プロッタ2に転送され、画像記録される。
【0026】以上のように、本実施例では、2値画像と中間調画像とにそれぞれ適した2種類のテンプレートを備え、オペレータが画像種別を指定することにより、テンプレートを選択して予測符号化を行ない、受信側には、使用したテンプレート情報と符号化した画情報をとを共に送信するようにしている。
【0027】これにより、2値画像でも中間調画像でも、常に効率よく符号化することができるようになる。また、受信側では、通知されたテンプレートを使用することにより、元の画情報を容易に復元することができる。
【0028】なお、上記実施例では、送信側と受信側間でテンプレート情報を通知する場合、予め設定した識別コードを通知するようにしたが、注目画像と抽出画像との位置関係を示すパターン情報を通知するようにしてもよい。
【0029】また、オペレータが選択した画像種別に応じて1つのテンプレートを選択するようにしたが、スキャナ1で画像を読み取って画素変化のパターンから、画像種別を判定して、これにより1つのテンプレートを自動選択することも考えられる。
【0030】さらに、テンプレートは、2値画像用と中間調画像用との2種類を備えるようにしたが、例えば、ディザ処理を行なった中間調画像の場合には、ディザマトリクスサイズごとにテンプレートを備えるというように、様々な画像に応じた多種類のテンプレートを備えれば、さらにデータ圧縮効果が高いことは当然である。
【0031】さらには、ファクシミリ装置で予測符号化した画情報を伝送する場合を例にとって説明したが、例えば、画像ファイリング装置で画情報を記憶装置に記憶する場合など、予測符号化方式により画情報をデータ圧縮する各種装置において、本発明は同様に適用することができる。
【0032】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、各種テンプレートを備えて、画像の種類に応じた1つのテンプレートを使用して画情報を予測符号化し、使用したテンプレートを示す情報と、生成した符号とを共に出力するようにしたので、各種画像を常に効率よく符号化することができるようになると共に、復号化の際には、出力情報により指示されたテンプレートを使用することにより、元の画情報を容易に復元することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るファクシミリ装置のブロック構成図。
【図2】画像の送信手順を示す動作フローチャート。
【図3】符号化復号化部における符号化処理の動作説明図。
【図4】各種テンプレートの説明図。
【図5】符号化復号化部における復号化処理の動作説明図。
【図6】従来使用されていたテンプレートの説明図。
【符号の説明】
1 スキャナ
2 プロッタ
3 符号化復号化部
3a テンプレートテーブル
3b テンプレート選択手段
3c 画素抽出手段
3d 予測手段
3e 符号化手段
3f 復号化手段
4 モデム
5 網制御装置
6 操作表示部
7 システム制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 画像の各画素を注目画素としてテンプレートで示される周辺の状態により画素値を予測し、その結果に基づいて符号を生成する画情報の予測符号化装置において、注目画素に対する画素位置がそれぞれ異なる複数のテンプレートと、その複数の内から画素の種類に応じた1つのテンプレートを選択するテンプレート選択手段と、選択された前記テンプレートが受信側に準備されているか否かを確認して、当該選択されたテンプレートを使用して画素値を予測することにより符号を生成する符号化手段と、該符号化手段により生成した符号を出力する出力手段とを備えていることを特徴とする画情報の予測符号化装置。
【請求項2】 上記テンプレート選択手段は、手動操作により1つのテンプレートを任意に選択する手段により構成することを特徴とする請求項1記載の画情報の予測符号化装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図3】
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【図5】
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【特許番号】特許第3059769号(P3059769)
【登録日】平成12年4月21日(2000.4.21)
【発行日】平成12年7月4日(2000.7.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−23891
【出願日】平成3年1月25日(1991.1.25)
【公開番号】特開平4−250772
【公開日】平成4年9月7日(1992.9.7)
【審査請求日】平成10年1月23日(1998.1.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【参考文献】
【文献】特開 昭63−197172(JP,A)
【文献】特開 昭55−95478(JP,A)