説明

画素形成用着色組成物、カラーフィルターの製造方法およびカラーフィルター

【課題】カラーフィルターとして要求される画素の色の高濃度化、高精細性、高コントラスト性などの光学的特性の要求に対応させつつ、画素形成インキの塗布特性、保存性安定性などの特性を向上させる画素形成用着色組成物、カラーフィルターの製造方法、およびカラーフィルターを提供すること。
【解決手段】顔料と分散剤とを含有し、前記顔料が平均粒子径が10〜150nmの顔料であり、前記分散剤が、多環状基を側鎖に有し、顔料の分散媒体に可溶な共重合体であることを特徴とする画素形成用着色組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画素形成用着色組成物(ベースカラー、画素形成用のインキ、塗料、塗布液、それらの着色剤を含む)、カラーフィルターおよびその製造方法に関し、さらに詳しくは顔料に対し親和性を有する多環状基を側鎖に有する親媒性共重合体を分散剤として用い、低粘度で長期保存安定性に優れたカラーフィルター画素形成用の着色組成物、色彩特性、光学特性に優れた画素性能を有するカラーフィルターおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の情報機器の非常な発展に伴い、液晶カラーディスプレーが情報表示部材としてテレビジョン、プロジェクター、パーソナル・コンピューター、モバイル情報機器、モニター、カーナビゲーション、携帯電話、電子計算機や電子辞書の表示画面、情報掲示板、案内掲示板、機能表示板、標識板などのディスプレー、デジタルカメラやビデオカメラの撮影画面など、あらゆる情報表示関連機器に多岐にわたって使用されている。それに伴い液晶カラーディスプレーに搭載されるカラーフィルターも、精細性、色濃度、光透過性、コントラスト性などの画像性能としての色彩特性、光学特性の面でより優れた品質が要求されてきている。
【0003】
従来のカラーフィルターの3原色画素の形成に使用される顔料インキ(塗布液など)には、顔料の分散安定剤として、通常「シナジスト」と称される顔料の分子構造にスルホン基などのアニオン性基を導入した顔料誘導体(アニオン性顔料誘導体)とその対イオンであるカチオン性のアミノ基を有する有機溶剤可溶性分散助剤(カチオン性顔料分散助剤)の組み合わせ、あるいは逆に第3級アミノ基などのカチオン性基を導入したカチオン性顔料誘導体とアニオン性重合体顔料分散助剤を組み合わせて添加され、顔料の有機溶媒中の分散安定性を向上させ、顔料インキの粘度を下げ、長期保存安定性を維持させてきた。
【0004】
しかしながら、液晶カラーテレビジョン用などに使用されるカラーフィルターは、従来以上のカラー表示性能、例えば、色濃度、光透過性やコントラスト比などを向上させることが要求されている。画素の性能を改良するために顔料の粒子径をさらに小さくする超微粒子化の傾向にある。その結果、同じ質量の顔料は微粒子化された結果、粒子個数が増加し、顔料全体の比表面積も非常に大きくなる。従って、超微粒子化した顔料を安定に分散するために顔料誘導体および顔料分散助剤の使用量をそれに合わせて増加せざるを得なくなる。しかし、画素の高色濃度化の要求から、顔料高含有率化などの画素塗膜組成への要求も厳しくなり、前記顔料インキの性状を維持することが非常に困難になってきている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、液晶カラーテレビジョンなどに装備されるカラーフィルターとして要求される画素の色の高濃度化、高精細性、高コントラスト性などの光学的特性の要求に対応させつつ、画素形成インキ(以下単に「インキ」という場合がある)の塗布特性、保存性安定性などの特性を向上させる画素形成用着色組成物、カラーフィルターの製造方法、およびカラーフィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らはかかる問題点を解決すべく鋭意研究した結果、カラーフィルターの画素形成用の着色組成物として、上記で述べたイオン性顔料誘導体と対イオン性を有する分散助剤の組み合わせを使用せず、顔料に親和性を有する基を側鎖に有する親媒性共重合体を分散剤として用いることで、顔料の高含有率を保ち、また、上記分散剤は皮膜形成成分としても機能させることができることから、顔料と皮膜形成成分との対比を維持し、低粘度で長期保存安定性に優れたカラーフィルターの画素形成用の着色組成物を調製することができ、画素の色濃度を向上させつつ、透過率やコントラスト比などの光学的特性の優れたカラーフィルターの画素が形成されることを見出した。
【0007】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、顔料と分散剤とを含有し、前記顔料が平均粒子径が10〜150nmの顔料であり、前記分散剤が、多環状基を側鎖に有し、顔料の分散媒体に可溶な共重合体であることを特徴とする画素形成用着色組成物(「画素形成用着色組成物」とは、画素形成用のベースカラー、インキ、塗料、塗布液、それらの着色剤を含む)を提供する。
【0008】
前記多環状基は、2個以上連結されたベンゼン基、環を構成する炭素原子の数が8以上である芳香族基および環を構成する炭素原子の数が8以上である複素環基の少なくとも1種であること、例えば、ジフェニルメタン、ジフェニルエタン、ジフェニルプロパン、ジフェニルエーテル、ジフェニルメチルエーテル、ジフェニルスルフォン、スチリルベンゼン、ビフェニール、スチリルビフェニール、ナフタレン、フルオレン、アントラセン、アントラキノン、アセナフテン、クマリン、キノリンおよびカルバゾールの残基群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0009】
また、前記分散剤は、脂肪族、脂環式あるいは芳香族炭化水素基を有する親油性単量体単位を含む共重合体、あるいはアニオン性、カチオン性および/またはノニオン性水溶性基を有する親水性単量体単位を含む共重合体であり、例えば、(A)分子中に多環状基を有する反応性化合物と、分散媒体に可溶な反応性共重合体との反応生成物、あるいは(B)多環状基を有するα,β−エチレン系付加重合性単量体と、分散媒体に親和性を有する重合体鎖を形成するα,β−エチレン系付加重合性単量体および/またはマクロモノマーとの共重合体であり得る。
【0010】
前記顔料としては、キナクリドン系顔料、アンスラキノン系顔料、ジケトピロロピロール顔料、ペリレン系顔料、フタロシアニンブルー系顔料、フタロシアニングリーン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、キノフタロン顔料、ニッケルアゾ顔料、不溶性アゾ系顔料、溶性アゾ系顔料、高分子量アゾ系顔料、カーボンブラック顔料、複合酸化物系黒色顔料、酸化鉄ブラック顔料、酸化チタン系黒色顔料、アゾメチンアゾ系黒色顔料からなる群から選ばれた赤色、緑色、青色、黄色、橙色、紫色、紅色、藍色または黒色顔料が挙げられる。また、前記分散媒体としては、有機溶剤、水または水−親水性有機溶剤混合溶剤が挙げられる。
【0011】
前記組成物は、さらに皮膜形成材料として重合体、オリゴマーおよび/またはモノマーを含むベースカラー、インキ、塗料、塗布液、レジストなどとする(以下これらを「インキ」という場合がある)ことにより、画素の形成に使用される。また、本発明は、さらに上記インキを用いることを特徴とするカラーフィルターの製造方法、および該方法によって得られるカラーフィルターを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カラーフィルターの画素形成用のインキの分散剤として、前記分散剤を用いることで、高顔料分、高皮膜形成成分で、低粘度で長期保存安定性に優れ、塗布特性を低下させないインキが提供され、該インキを用いることで、画素の高色濃度化、高精細性、高コントラスト性などの光学的特性を改良されたカラーフィルターが得られ、該カラーフィルターを装備した画素表示装置は、高色濃度化、高精細性、高コントラスト性などの画素特性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。まず、本発明で使用し、主として本発明を特徴づける分散剤を詳細に説明する。本発明を主として特徴づける分散剤は、分子中に多環状基を側鎖として有し、かつ顔料の分散媒体に可溶な共重合体である。
【0014】
媒体に不溶な有色物質である顔料を分散媒体中に、超微粒子状に安定に分散させるためには、優れた分散剤が必要である。分散剤として必要とされる性質は、分散質である顔料に対して親和性を有して、分散媒体中においても顔料表面に密着し、離脱しない性質と、分散媒体に溶解して液中に安定に存在する性質の背反する性質が求められる。本発明においては、この両方の機能を、それぞれの性質を有する単量体単位、あるいはポリマーセグメントを分散剤中に組み込むことで解決した。
【0015】
有機顔料は、一般に芳香族基または複素環基の連結した、発色団を有する化学構造をとっているので、分散剤の芳香族基または複素環基が化学構造的に顔料に対して親和性を有し、分散剤が顔料表面に密着、沈着ないし重積し易いものと考える。しかし、環を構成する炭素数が少ないフェニル基やトリル基、キシリル基、ヘキシルフェニル基、ドデシルフェニル基などのアルキルフェニル基などは、インキに使用されている有機溶剤に多くは親和性を有し、顔料表面に付着しても、溶剤溶媒に再溶解して顔料からの脱着が起こり易い。
【0016】
本発明の分散剤は、分子中に2個以上連結されたベンゼン環基、および環を構成する炭素原子の数が8以上である芳香族基および複素環基、およびそれらの基を有する無色あるいは有色の基からなる群から選ばれた多環状基を側鎖に有し、かつ分散媒体に可溶な共重合体である。
【0017】
上記の多環状基は、2個以上連結されたベンゼン環、環を構成する炭素原子の数が8以上である芳香族基、または環を構成する炭素原子の数が8以上である複素環の基を含有する化合物の残基である。例えば、ジフェニルメタン、ジフェニルエタン、ジフェニルプロパン、ジフェニルエーテル、ジフェニルメチルエーテル、ジフェニルスルフォン、スチリルベンゼン、ビフェニール、スチリルビフェニール、ナフタレン、フルオレン、アントラセン、アントラキノン、アセナフテン、クマリン、キノリン、カルバゾールなどから誘導される従来公知の基である。それらの多環状基を含む無色の基、あるいは発色団を含む有色の基が挙げられる。有色の基としては従来の公知の染料、顔料、それらの類似構造の基およびそれらの中間体の基、先駆体の基などである。
【0018】
上記分散剤中の多環状基は、エチレニル基やプロピレニル基などの付加重合性単量体単位に、上記多環状基を直接に結合させるか、あるいはエステル基、アミド基、ウレタン基、尿素基、エーテル基、スルホアミド基、メチレン基、アミノ基、第4級アンモニウム基、アミノトリアジン基、オキシトリアジン基などの連結基を介して結合している。
【0019】
また、本発明で用いる分散剤は、分散媒体に対して親和性を有する基(親媒性基)を有する、親媒性基とは、顔料分散液中において、分散媒体に対して親和性を有し、安定な顔料分散効果をもたらす基である。分散媒体が疎水性である場合の親媒性基は、脂肪族、脂環式あるいは芳香族炭化水素基を有する親油性単量体単位からなり、分散媒体が水性である場合の親媒性基は、アニオン性、カチオン性および/またはノニオン性の親水性単量体単位からなる。
【0020】
本発明で用いる分散剤の代表的な合成方法としては、下記の方法が挙げられる。
(A)分子中に多環状基を有する反応性化合物(以下、「反応性多環状化合物」と称する。)と分散媒体に可溶な反応性共重合体(以下、「反応性親媒性共重合体」と称する。)とを反応させる方法、および
(B)分子中に多環状基を直接あるいは連結基を介して結合しているα,β−エチレン系付加重合性単量体(以下、「多環状基結合単量体」と称する。)と、これと共重合可能な親媒性重合体鎖を形成するα,β−エチレン系付加重合性単量体(以下、「親媒性単量体」と称する。)とを共重合させる方法。
【0021】
多環状基結合単量体あるいはその共重合体の多環状基結合単量体単位(以下、両者を単量体で示す。)の例としては、直接結合している4−ビニルビフェニール、ビニルナフタレン、N−ビニルカルバゾールなどが挙げられる。また、連結基を介して多環状基を有する単量体は、反応性多環状化合物と反応性単量体とを常法に従って反応させて得られる。反応性多環状化合物および反応性単量体の反応性基としては、アルコール性水酸基、1級、2級、3級アミノ基など;カルボン酸基、酸無水物基、酸ハロゲニド基、アルキルエステル基などのカルボン酸誘導体基、イソシアネート基、エポキシ基、メチロール基、メトキシメチル基、ハロゲン化メチル基、スルホクロライド基、クロルアミノトリアジン基、クロルオキシトリアジンなどの基が挙げられ、反応性多環状化合物と反応性単量体との反応時に、互いに反応する基を選択する。
【0022】
反応性多環状化合物としては、例えば、カルボキシル基を有する多環状化合物として、ジフェニルメタンカルボン酸、ビフェニールカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、ナフタレン酢酸、アンスラセンカルボン酸、アンスラキノンカルボン酸、フルオレンカルボン酸、フェナントレンカルボン酸、アセナフテンカルボン酸、クマロンカルボン酸、キノリンカルボン酸およびそれらの酸クロライド、アルキルエステルなど反応性誘導体;アルコール性水酸基を有する多環状化合物として、フェノール性水酸基を有する化合物、例えば、クミルフェノール、ナフトール、2−ヒドロキシナフトエ酸メチル、3−ヒドロキシアンスラセン−2−カルボン酸メチル、2−ヒドロキシジベンゾフラン−3−カルボン酸メチル、2−ヒドロキシカルバゾール−3−カルボン酸メチルなどや上記のカルボキシル基を有する多環状化合物に1モル当量以上のエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのエポキシ化合物の反応生成物;アミノ基を有する多環状化合物としては多環状化合物に直接アミノ基を導入したり、ニトロ化して、還元して得られたアミノ化合物などが挙げられる。
【0023】
また、上記反応性多環状化合物と反応させる単量体あるいは共重合体の単量体単位の反応基は、多環状化合物の反応基と反応するものが選択され、連結基が形成される。それらの例について前記と同様に単量体で説明する、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸およびその酸クロライド、アルキルエステル、酸無水物;水酸基を有するビニルアルコール(先駆体として酢酸ビニル)やヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;エポキシ基を有するグリシジル(メタ)アクリレートなど;イソシナネート基を有するイソシアネートエチル(メタ)アクリレート、イソシアネート−α−メチルスチレンなど;塩化スルホニル基を有するスチレンスルホニルクロライドなど;ハロゲン化メチル基、メチロール基、アルコキシメチル基を有するクロルメチルスチレン、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシ(メタ)アクリルアミドなどが挙げられ、連結反応は、それぞれの反応基の組み合わせにより公知の方法によってなされる。
【0024】
疎水性の分散媒体に親和性を有する親油性単量体としては、従来公知の疎水性重合体をもたらす単量体が挙げられる。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族(C1〜C30)アルコールエステル、脂環式(C4〜C30)アルコールエステル、芳香族(C6〜C30)アルコールエステル、アルコキシ(C1〜C4)アルキル(C2〜C4)エステルなど;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和2塩基酸の脂肪族(C1〜C30)アルコール、脂環式(C4〜C30)アルコール、芳香族(C6〜C30)アルコールなどとのモノエステルおよびジエステルなど;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体;酢酸ビニル;ブタジエン、イソプレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのオレフィン類などが挙げられる。
【0025】
親水性分散媒体に親和性を有する親水性単量体としては、従来公知の親水性重合体をもたらす単量体が挙げられる。例えば、アニオン性基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和2塩基酸およびそれらのハーフアルキル(C1〜C18)エステルなど、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ヒドロキシアルキル(C2〜C4)(メタ)アクリレートの硫酸エステルなど;ノニオン性基を有する単量体としては、上記したα,β−エチレン性不飽和カルボン酸類のエチレングリコールエステル、ポリエチレングリコールエステル、アルコキシポリエチレングリコールエステル、グリセリル(メタ)アクリレートなど;カチオン性基を有する単量体としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−(トリメチルアンモニウム)−2−ヒドロキシープロピルメタクリレート塩酸塩、ビニルピリジンなどの親水性単量体が挙げられる。また、上記の低分子単量体のほか、付加重合性基を有する付加重合体あるいは縮合重合体からなるマクロモノマーも使用される。
【0026】
疎水性分散媒体に使用する分散剤の合成に際しては、上記の疎水性単量体にイオン性単量体、ノニオン性単量体、あるいは反応性単量体を共重合することが好ましい。疎水性顔料分散液の系で皮膜形成材料の重合体などがアニオン性基またはカチオン性基を有している場合には、その対イオンのカチオン性基またはアニオン性基を有する単量体を共重合して対イオン性の分散剤とし、皮膜形成性重合体と分散剤とをイオン結合させることにより媒体親和性をもたらし、安定性を向上させることが可能で、好ましい。反応性単量体を共重合することは、皮膜形成材料として架橋結合をもたらし、強固にすることができるので好ましい。また、親水性分散剤の合成に際しては、上記の親水性単量体に疎水性単量体あるいは反応性単量体を共重合することは、顔料の分散剤であるとともに、皮膜形成材料にもなることからも好ましい。
【0027】
上記疎水性分散剤を用いる際の分散媒体としては、公知の(C1〜C6)アルコール類、アルキレン(C2〜C6)グリコール類、ポリ(C2〜C6)アルキレングリコール類、多価アルコール類、それらのアルキル(C1〜C4)モノエーテル、−ジエーテル、−モノエーテル・モノアセテート、エステル類、ケトン類、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素などの有機溶剤が挙げられる。親水性分散剤を用いる際の分散媒体としては、公知の水性媒体である水あるいは水と(C1〜C3)アルコール類、アルキレン(C2〜C3)グリコール類、ポリアルキレン(C2〜C3)グリコール類、多価アルコール類、それらのアルキル(C1〜C3)モノエーテル、−ジエーテル、−モノエーテル・モノアセテート類などの水溶性溶剤との混合媒体が挙げられる。
【0028】
イオン性の親水性分散剤を、水性媒体に可溶化するためにアルカリを使用することができる。使用するアルカリとしては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化アルカリ金属、アンモニア、第一級、第二級もしくは第三級の有機アミンなどであり、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、(モノ−、ジ−、トリ−)エタノールアミンなどが好ましい。
【0029】
本発明の組成物は、顔料および前記分散剤に加えて、分散媒体として有機溶剤、水または水−親水性有機溶剤混合溶剤が使用される。また、上記本発明の組成物をインキとして使用する場合は、さらに皮膜形成材料を含有する。上記インキは直接に調製されるほか、本発明の組成物を使用してインキとして調製される。インキ中に含有される顔料の平均粒子径が10〜150nmであり、分散剤が多環状基結合単量体と親媒性単量体との共重合体であり、また皮膜形成材料としては公知の重合体、オリゴマーおよび/またはモノマーが使用される。
【0030】
本発明で使用する顔料としては、公知の有機顔料全てが対象となり、具体的には、キナクリドン系顔料、アンスラキノン系顔料、ジケトピロロピロール顔料、ペリレン系顔料、フタロシアニン系顔料、ハロゲン化フタロシアニン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、インジゴ・チオインジゴ顔料、ジオキサジン系顔料、キノフタロン顔料、ニッケルアゾ顔料、不溶性アゾ系顔料、溶性アゾ系顔料、高分子量アゾ系顔料、カーボンブラック顔料、複合酸化物系黒色顔料、酸化鉄ブラック顔料、酸化チタン系黒色顔料、アゾメチンアゾ系黒色顔料などの有機顔料および無機顔料からなる群から選ばれた赤色、緑色、青色顔料および黄色、橙色、紫色顔料あるいは黒色顔料が挙げられる。
【0031】
特に好ましい顔料としては、赤色画素パターンを形成する場合には、赤色顔料としては、例えば、カラーインデックス(C.I.)ピグメントレッド(PR)56、58、122、166、168、176、177、178、224、242、254などが挙げられ、緑色顔料としては、ピグメントグリーン(PG)7、36、ポリ(14〜16)ブロム銅フタロシアニン、ポリ(12〜15)ブロム−ポリ(4〜1)クロル銅フタロシアニンなどが挙げられ、青色顔料としては、ピグメントブルー(PB)15:1、15:3、15:6、60、80などが挙げられる。
【0032】
上記の顔料に対して補色顔料あるいは多色型の画素用顔料として、黄色顔料として、例えば、ピグメントイエロー(PY)12、13、14、17、24、55、60、74、83、90、93、126、128、138、139、150、154、155、180、185、216、219など、ピグメントバイオレット(PV)19、23などを使用することができる。また、ブラックマトリックス用の黒色顔料としてピグメントブラック(PBK)6、7、11、26、銅・マンガン・鉄系複合酸化物などが挙げられる。
【0033】
本発明の組成物の顔料の使用量は特に限定されないが、通常、着色皮膜を形成する樹脂成分100質量部当たり5〜500質量部の割合で使用される。また、本発明の組成物は、画素形成用インキを調製するために使用される、予め顔料を高濃度に安定に微分散させた組成物は、顔料を5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%含有するのが好ましく、前記分散剤は顔料100質量部当たり5〜300質量部の割合で使用されるのが好ましく、さらに好ましくは10〜100質量部の割合である。
【0034】
また、この際に顔料にイオン性を付与して顔料の分散安定性の向上を図るために、顔料にアニオン性あるいはカチオン性の顔料誘導体およびそれぞれの対イオンになるカチオンあるいはアニオン性の重合体安定剤を添加してもよい。
【0035】
本発明において顔料を固定させる皮膜形成材料としては、従来からカラーフィルター用インキに使用されている公知の皮膜形成材料である重合体、オリゴマーおよびモノマーが何れも任意の組み合わせで使用でき、特に限定されない。また、皮膜形成材料に適切な分散媒体としての溶剤または水系媒体が使用される。また、必要に応じて従来公知の添加剤、例えば、分散助剤、平滑化剤、密着化剤などが適宜添加使用される。
【0036】
皮膜形成材料としては、感光性の樹脂ワニスと非感光性の樹脂ワニスが使用される。感光性樹脂ワニスとしては、例えば、紫外線硬化性インキや電子線硬化インキなどに用いられる感光性ワニスが挙げられ、非感光性樹脂ワニスとしては、例えば、凸版インキ、平版インキ、凹版グラビアインキ、孔版スクリーンインキなどの印刷インキに使用する樹脂ワニス、インクジェットプリンティングに使用するバインダー、電着塗装に使用する樹脂ベヒクル、電子印刷や静電印刷の現像剤に使用するバインダー、熱転写フィルムまたはリボンに使用するバインダーなどが挙げられる。
【0037】
感光性樹脂ワニスの具体例としては、例えば、感光性環化ゴム系樹脂、感光性フェノール系樹脂、感光性ポリアクリレート系樹脂、感光性ポリアミド系樹脂、感光性ポリイミド系樹脂など、および不飽和ポリエステル系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリエポキシアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、ポリエーテルアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂などのワニス、或いはこれらにさらに反応性希釈剤として低分子量モノマーが加えられたワニスが挙げられる。上記感光性樹脂ワニスの中で好適な樹脂としては、分子中にフリーのカルボン酸基を有するアルカリ現像可能なポリアクリル酸エステル系の共重合体が望ましい。
【0038】
非感光性の樹脂ワニスの具体例としては、例えば、セルロースアセテート系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、スチレン系(共)重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ樹脂変性ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリルポリオールウレタン系樹脂、可溶性ポリアミド系樹脂、可溶性ポリイミド系樹脂、可溶性ポリアミドイミド系樹脂、可溶性ポリエステルイミド系樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、スチレン−マレイン酸エステル系共重合体の水溶性塩、(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体の水溶性塩、水溶性アミノアルキッド系樹脂、水溶性アミノポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド系樹脂などが挙げられ、これらは単独或いは2種以上を組み合わせて使用される。
【0039】
本発明のインキを用いてカラーフィルターを製造するに際しては、皮膜形成材料として感光性の樹脂ワニスを使用する場合には、インキにベンゾインエーテル、ベンゾフェノンなどの従来公知の光重合開始剤を加え、従来公知の方法で練肉することにより調製された感光性インキとして使用される。また、上記の光重合開始剤に代えて熱重合開始剤を使用して熱重合性インキとして使用することもできる。
【0040】
上記インキを用いて基板上にカラーフィルターのパターンを形成する場合には、透明基板上に上記インキを、例えば、スピンコーター、低速回転コーター、スリットコーター、ロールコーター、ナイフコーターなどを用いて全面コーティングを行うか、或いは各種の印刷方法による全面印刷またはパターンよりやや大きな部分印刷を行い、予備乾燥後フォトマスクを密着させ、超高圧水銀灯を使用して露光を行ってパターンを焼き付けする。次いで現像および洗浄を行い、必要に応じポストベークを行うことによりカラーフィルターのパターンを形成することができる。これらのカラーフィルターのパターン形成方法自体は公知であり、本発明においてはカラーフィルターのパターン形成方法は特に限定されない。
【0041】
非感光性の樹脂ワニスを使用した非感光性インキを用いてカラーフィルターのパターンを形成する場合には、ガラス基板やプラスチック基板などの透明基板上に上記インキを、上記した各種の印刷方法にて直接基板に画素パターンを印刷する方法、本発明の組成物を、カラーフィルター用水性電着塗装組成物として電着塗装により基板に画素パターンを形成させる方法、インクジェット用インキとしてインクジェットプリンティングにより基板に着色パターンを形成させる方法、電子印刷方法や静電印刷方法を用いたり、或いは貼付用の透明フィルム基材や転写性フィルム基材に上記の方式などで一旦着色パターンを形成させてからカラーフィルター用基板に貼付け、あるいは転写する方法などが挙げられる。
【0042】
次いで常法に従い、必要に応じてベーキングを行ったり、表面平滑化のための研磨を行ったり、表面保護のためのトップコーティングを行う。また、常法に従いブラックマトリックスを形成させて、RGBのカラーフィルターを得ることができる。これらのカラーフィルターの製造方法自体は公知であり、本発明においてはカラーフィルターの製造方法は特に限定されない。
【実施例】
【0043】
次に具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、文中の部および%は特に断りのない限り質量基準である。また、分子量は特に断らない限り重量平均分子量である。
【0044】
<合成例1>
加熱装置としてウオーターバス、攪拌機、モノマー滴下装置、試薬投入口、逆流冷却器および窒素ガス吹込み口を備えた重合反応装置を準備した。重合容器に重合溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMA)150部を仕込んだ。別にモノマーとして、ナフチル(−β−)オキシ−ポリエチレングリコールのメタクリル酸エステル(多環状基結合単量体−1、NPEGMA)16.1部、ベンジルメタクリレート(BzMA)23.9部、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)20.0部、ジエチルアミノエチルメタクリレート(DEAEMA)10部、メタクリル酸(MAc)30.0部および重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)5部を混合し、重合開始剤を含むモノマー溶液を準備した。その3分の1をPGMAの入った重合容器に加え、更に残りの3分の2を滴下しながら、窒素ガス気流下、70〜80℃で8時間重合反応を行なった。PEG鎖をスペーサーにしてナフチル基を側鎖に有するNPEGMA−BzMA−CHMA−DEAEMA−MAc共重合体のPGMA溶液を得た(固形分40%)。以下上記共重合体を「分散剤−1」と称する。
【0045】
上記で使用したナフチルオキシ−ポリエチレングリコールのメタクリル酸エステルは、β−ナフトールにエチレンオキシドを付加させて得られたナフチル(−β−)オキシ−ポリエチレングリコール(エチレンオキシドの平均重合度:4.5)にメタクリル酸クロライドを常法に従いエステル化反応させ、合成した。凡その分子量は410である。
【0046】
<合成例2>
合成例1の重合反応と同様にして、重合溶媒としてPGMA150部、モノマーとして、ナフチル(−β−)オキシ−ポリプロピレングリコールのメタクリル酸エステル(多環状基結合単量体−2、NPPGMA)19.3部、BzMA20.7部、ブチルメタクリレート(BMA)20.0部、DEAEMA10部およびMAc30.0部を重合し、PPG鎖をスペーサーにしてナフチル基を側鎖に有するNPPGMA−BzMA−BMA−DEAEMA−MAc共重合体のPGMA溶液を得た(固形分40%)。以下上記共重合体を「分散剤−2」と称する。
【0047】
上記で使用したナフチルオキシ−ポリプロピレングリコールのメタクリル酸エステルは、β−ナフトールにプロピレンオキシドを付加させて得られたナフチル(−β−)オキシ−ポリプロピレングリコール(プロピレンオキシドの平均重合度:6)にメタクリル酸クロライドをエステル化反応させ、合成した。凡その分子量は491である。
【0048】
<合成例3>
合成例1の重合反応と同様にして、重合溶媒としてPGMA150部、モノマーとしてβ−ヒドロキシナフトエ酸(m−メタクリロイルアミノ)アニライド(多環状基結合単量体−3、NASMA)6.6部、BzMA33.4部、CHMA20.0部、DEAEMA10部およびMAc30.0部を重合し、β−ヒドロキシナフトエ酸アニライド(ナフトールAS)残基を側鎖に有するNASMA−BzMA−CHMA−DEAEMA−MAc共重合体のPGMA溶液を得た(固形分40%)。以下上記共重合体を「分散剤−3」と称する。
【0049】
上記のβ−ヒドロキシナフトエ酸(m−メタクリロイルアミノ)アニライドは、β−ヒドロキシナフトエ酸(m−アミノ)アニライドにメタクリル酸クロライドをエステル化反応させて合成した。分子量は346である。
【0050】
<合成例4>
2−クロロ−5−トリフルオロメチルアニリン4.1部をジアゾ化して、合成例3で得られたβ−ヒドロキシナフトエ酸アニライド(ナフトールAS)残基を側鎖に有するNASMA−BzMA−CHMA−DEAEMA−MAc共重合体の100部を含む溶液とカップリング反応させ、2’−クロロ−5’−トリフルオロメチルフェニル−アゾ−β−ヒドロキシナフトエ酸アニライドを側鎖に有する赤色共重合体を得た。以下、得られた赤色共重合体を「分散剤−4」と称する。この分散剤−4は赤色顔料PR242の分散剤として好適である。
【0051】
合成例3で使用したNASMAおよび得られた共重合体であるNASMA−BzMA−CHMA−DEAEMA−MAc共重合体はβ−ヒドロキシナフトエ酸アニライド残基を有するので、上記の如く公知の各種のジアゾ成分とカップリング反応でアゾ色素の残基にすることができる。赤色および橙色の共重合体(分散剤)はPR177、242、254などの赤色顔料の分散剤として使用される。青色の共重合体はPB15:6などの青色顔料に、紫色の共重合体はPV23などの紫色顔料の分散剤として使用される。
【0052】
<合成例5>
合成例1の重合反応と同様にして、重合溶媒としてPGMA150部、モノマーとしてBzMA35.0部、スチレン(St)10部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)10.0部、DEAEMA10.0部およびMAc30.0部を使用し、重合反応を行った。次いで1,3−ビス(アンスラキノニール−1−アミノ)5−クロル−s−トリアジン5.58部を含むPGMA溶液を滴下し、125℃にて7時間縮合反応させ、黄色の共重合体溶液を得た。ビス(アンスラキノニール−1−アミノ)−s−トリアジン(BAT)基を側鎖に有するBzMA−St−HEMA−DEAEMA−MAc共重合体のPGMA溶液を得た(固形分20%)。以下上記黄色共重合体を「分散剤−5」と称する。
【0053】
上記で使用した1,3−ビス(アンスラキノニール−1−アミノ)5−クロル−s−トリアジンは、シアヌルクロライド(1,3,5−トリクロル−s−トリアジン)に2倍モルの1−アミノ−アンスラキノンを反応させて合成した。
【0054】
上記のBAT基は黄色色素の残基であることから、分散剤−5は黄色顔料のPY138、139、150などの分散剤として好適である。さらに黄色顔料が補色のために使用される赤色顔料のPR177、242、254などおよび緑色顔料のPG7、36などの分散剤として使用できる。
【0055】
<重合体分散助剤の合成例>
別に、顔料分散の助剤として、合成例1の重合反応と同様にして、重合溶媒としてPGMA150部、モノマーとしてメチルメタクリレート(MMA)15部、エチルメタクリレート(EMA)15部、CHMA20部、ブチルアクリレート(BA)20部、HEMA15部およびMAc15部を使用し、重合反応を行った。重合体型分散助剤として、MMA−EMA−CHMA−BA−HEMA−MAc共重合体の40%PGMA溶液を準備した。以下上記共重合体を「重合体分散助剤」と称する。
【0056】
[実施例1]
(a)使用顔料の微細化処理
カラーフィルター用顔料として使用される顔料として、PR254、PG36、PY139、PY150、PB15:6およびPV23を準備し、順次以下の方法で微細化処理を行なった。夫々の顔料100部を塩化ナトリウム400部およびジエチレングリコール130部とともに加圧蓋を装着したニーダーに仕込んだ。ニーダー内に均一に湿潤された塊ができるまで予備混合をし、次いで加圧蓋を閉じて圧力6kg/cm2で内容物を押さえ込みながら7時間混練・摩砕処理を行った。得られた摩砕物3,000部を2%硫酸中に投入して1時間の攪拌処理を行った後、ろ過して塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除去し、十分水洗し、乾燥、粉砕して夫々の粉末顔料を得た。夫々の磨砕顔料の平均粒子径は凡そ30〜50nmであった。
【0057】
(b)画素形成用高濃度顔料分散液(ベースカラー)の調製
下記の表1の第1欄に記載の材料を使用し、それぞれ記載の部数を配合し、ディゾルバーで2時間攪拌して、顔料の塊がなくなったことを確認後、横型媒体分散機を使用し、顔料の分散処理を行った。顔料は上記(a)で得られた夫々の微細化顔料を使用した。
【0058】

【0059】
得られた各色の顔料分散液の顔料の平均粒子径を測定したところ、平均粒子径は凡そ30〜50nmであり、微細化された顔料は充分に微分散された。また、顔料分散液の粘度も初期粘度が10〜20mPa・sであり、保存安定性試験として40℃で5日間保ち、粘度を測定した。粘度変化は少なく、10〜20mPa・sの値を示し、十分な安定性を示した。
【0060】
(c)インキの調製
下記の表2の第1欄に記載の材料を使用し、それぞれ記載の部数を配合し、混合機で十分混合して、各色のインキ(カラーレジスト)を得た。
【0061】

【0062】
上記において、感光性アクリル樹脂ワニスはエポキシアクリレート樹脂であり、TMPTAはトリメチロールプロパントリアクリレートを、HEMPAは2−ヒドロキシエチルー2−メチルプロピオン酸を、また、DEAPは2,2−ジエトキシアセトフェノンを示す。
【0063】
(d)赤色、緑色および青色ガラス基板の調製
シランカップリング剤処理をしたガラス基板をスピンコーターにセットし、上記(c)で調製した赤色インキ−1を最初300rpmで5秒間の条件でスピンコートした。ついで80℃で10分間プリベークを行い、超高圧水銀灯を用い100mJ/cm2の光量で露光を行い、赤色ガラス基板を得た。上記のスピンコーティング操作と同様にして、シランカップリング剤処理をしたガラス基板をスピンコーターにセットし、上記の緑色、青色のインキを塗布し、露光、硬化を行い、緑色および青色ガラス基板を得た。得られたカラーガラス基板は夫々優れた分光カーブ特性を有し、耐光性や耐熱性などの堅牢性に優れ、また、光の透過性、コントラスト比などの光学特性にも優れた性質を有し、カラーフィルター用のインキとして優れていることを示した。
【0064】
[実施例2]
シランカップリング剤処理を行ったガラス基板をスピンコーターにセットし、実施例1(c)で調製した赤色インキ−1を最初300rpmで5秒間、次いで1,200rpmで5秒間の条件でスピンコートした。次いで80℃で10分間プリベークを行い、モザイク状の画素を有するフォトマスクを密着させ、超高圧水銀灯を用い100mJ/cm2の光量で露光を行った。次いで専用現像液および専用リンスで現像および洗浄を行い、ガラス基板上に赤色のモザイク状画素を形成させた。
【0065】
引き続いて同(c)で調製した緑色インキ−1および青色のインキ−1を用いて上記と同様にして塗布および焼き付けを行って緑色画素および青色画素を形成し、RGBの各画素を有するカラーフィルターを得た。得られたカラーフィルターは優れた分光カーブ特性を有し、耐光性や耐熱性などの堅牢性に優れ、また、光の透過性にも優れた性質を有し、液晶カラーディスプレー用カラーフィルターとして優れた性質を示した。
【0066】
また、実施例1で使用した分散剤−1に代えて合成例2で得られた分散剤−2を使用して実施例1と同様にして各色の顔料分散液、インキを調製し、各色のガラス基板を得て、物性および光学特性を評価した。実施例1と同様にしてRGBの各画素を有するカラーフィルターを得た。これも液晶カラーディスプレー用カラーフィルターとして優れた性質を示した。
【0067】
[実施例3〜5]
実施例1で使用した分散剤−1に代えて合成例3〜5で得られた分散剤−3〜5を使用して実施例1と同様にして各色の顔料分散液、インキを調製し、各色のガラス基板を得て、物性および光学特性を評価した。実施例1と同様にしてRGBの各画素を有するカラーフィルターを得た。これらも液晶カラーディスプレー用カラーフィルターとして優れた性質を示した。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、顔料に対し親和性を有する多環状基を側鎖に有する親媒性共重合体を分散剤として用いることで、従来必要とし、顔料の微細化に従って添加量が増加せざるを得なかった顔料のイオン性誘導体およびその対イオン性の重合体分散助剤使用せずに、あるいは添加量を減少させて、顔料を分散することができる。従って、その分、高顔料分にすることができ、また、使用した分散剤は皮膜形成成分としても機能する。画素形成用ベースカラーまたはインキは、低粘度で長期保存安定性に優れ、インキは塗布特性に優れており、画素形成に使用することで、画素の高色濃度化、高精細性、高コントラスト性などの光学的特性を改良されたカラーフィルターが得られる。上記の如く製造されたカラーフィルターを装備した画素表示装置においても、高色濃度化、高精細性、高コントラスト性などの画素特性に優れた性能を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と分散剤とを含有し、前記顔料が平均粒子径が10〜150nmの顔料であり、前記分散剤が、多環状基を側鎖に有し、顔料の分散媒体に可溶な共重合体であることを特徴とする画素形成用着色組成物。
【請求項2】
前記多環状基が、2個以上連結されたベンゼン基、環を構成する炭素原子の数が8以上である芳香族基および環を構成する炭素原子の数が8以上である複素環基の少なくとも1種である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記多環状基が、ジフェニルメタン、ジフェニルエタン、ジフェニルプロパン、ジフェニルエーテル、ジフェニルメチルエーテル、ジフェニルスルフォン、スチリルベンゼン、ビフェニール、スチリルビフェニール、ナフタレン、フルオレン、アントラセン、アントラキノン、アセナフテン、クマリン、キノリンおよびカルバゾールの残基群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記分散剤が、脂肪族、脂環式あるいは芳香族炭化水素基を有する親油性単量体単位を含む共重合体、あるいはアニオン性、カチオン性および/またはノニオン性水溶性基を有する親水性単量体単位を含む共重合体である請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記分散剤が、(A)分子中に多環状基を有する反応性化合物と、分散媒体に可溶な反応性共重合体との反応生成物、あるいは(B)多環状基を有するα,β−エチレン系付加重合性単量体と、分散媒体に親和性を有する重合体鎖を形成するα,β−エチレン系付加重合性単量体および/またはマクロモノマーとの共重合体である請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
顔料が、キナクリドン系顔料、アンスラキノン系顔料、ジケトピロロピロール顔料、ペリレン系顔料、フタロシアニンブルー系顔料、フタロシアニングリーン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、キノフタロン顔料、ニッケルアゾ顔料、不溶性アゾ系顔料、溶性アゾ系顔料、高分子量アゾ系顔料、カーボンブラック顔料、複合酸化物系黒色顔料、酸化鉄ブラック顔料、酸化チタン系黒色顔料、アゾメチンアゾ系黒色顔料からなる群から選ばれた赤色、緑色、青色、黄色、橙色、紫色、紅色、藍色または黒色顔料である請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記分散媒体が、有機溶剤、水または水−親水性有機溶剤混合溶剤である請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
さらに皮膜形成材料として重合体、オリゴマーおよび/またはモノマーを含む請求項1に記載の、ベースカラー、インキ、塗料、塗布液、レジストなどとしての組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の組成物を用いることを特徴とするカラーフィルターの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法によって形成されたことを特徴とするカラーフィルター。

【公開番号】特開2008−50589(P2008−50589A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192508(P2007−192508)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】