説明

画質異常予測システム及びプログラム

【課題】画像形成装置に画質異常が発生することの予測を新たな観点から行う技術を提案する。
【解決手段】トラブル予兆判定データ群生成部34が、保守情報蓄積部32の保守情報及びマシン情報蓄積部33のマシン情報及び画質調整実行ログに基づいて、キャリブレーションの実行後に画質異常が発生した複数の事例について、事例毎に、キャリブレーションの実行に要した時間と、キャリブレーションによる調整パラメータの変化量を測定し、これら事例毎の測定データを集めた測定データ群を、トラブル予兆判定データ群としてトラブル予兆判定データ群蓄積部35に記憶させ、トラブル予兆判定部36が、画質異常を予測する対象の画像形成装置10で実行された直近のキャリブレーションについて得られた測定データを、トラブル予兆判定データ群と比較して、当該画像形成装置10に画質異常が発生するか判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画質異常予測システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ(文書印刷装置)、コピー機(文書複写装置)、ファクシミリ装置(文書転送装置)などのように、用紙等の記録材に文書の画像を形成して出力する画像形成機能を備えた画像形成装置がある。
【0003】
画像形成装置では、記録材に形成する画像の画質を正常状態に維持するために、画質を調整するパラメータ値をフィードバック制御などにより校正する校正処理(キャリブレーションなどと称呼される画質調整処理)が実行される。キャリブレーションは、操作者の指示により、或いは予め定められたタイミングの到来を契機にして、間欠的に(例えば、1日1回)実行される。一般的には、画像形成装置の使用に影響が少ない時間帯(例えば、深夜等の非稼動時)にキャリブレーションを行うように運用される。
【0004】
このような画像形成装置について画質異常等の不具合の予測を行う方法としては、例えば、画像形成処理を制御する各種のパラメータの変化傾向を監視して閾値と比較したり、変化点を抽出して正常状態から乖離する傾向にあるかどうかを予測する方法などが挙げられる。
【0005】
また、装置の状態を監視して故障の予測等を行う技術に関し、以下のような発明がこれまでに提案されている。
例えば、出力画像が正常と判断された時の各種パラメータ情報を正常データとして蓄積して基準となる算出パラメータを求める発明が提案されている(特許文献1参照)。
例えば、データの種類の組み合わせが異なる複数種類の正常データ群を持ち、それぞれのデータ群に対応する異常の有無を判定する発明が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−266380号公報
【特許文献2】特開2006−349809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、画像形成装置に画質異常が発生することの予測を新たな観点から行う技術を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る本発明は、画像形成装置が記録材に形成する画像の画質を調整するパラメータ値を校正する校正処理を実行した後に当該画像形成装置に画質異常が発生した複数の事例について、校正処理の実行に要した時間と校正処理によるパラメータ値の変化量の一方又は両方の測定データを集めた測定データ群を記憶する記憶手段と、画質異常を予測する対象の画像形成装置で実行された直近の校正処理の測定データが、前記記憶手段に記憶された測定データ群を特徴付ける範囲に含まれる場合に、前記対象の画像形成装置において画質異常が発生する旨の通知を出力する出力手段と、を備えたことを特徴とする画質異常予測システムである。
【0009】
請求項2に係る本発明は、請求項1に係る本発明において、前記記憶手段は、校正処理の後に画質異常が発生した場合の測定データ群と画質異常が発生しなかった場合の測定データ群との乖離度が閾値以上となる場合に、校正処理の後に画質異常が発生した場合の測定データ群を記憶する、ことを特徴とする画質異常予測システムである。
【0010】
請求項3に係る本発明は、請求項1又は請求項2に係る本発明において、前記記憶手段は、校正処理の後に画質異常が発生した場合の測定データ群のうち、各測定データを値の大小で分類する場合において大側に分類される測定データを抽出した測定データ群を記憶する、ことを特徴とする画質異常予測システムである。
【0011】
請求項4に係る本発明は、請求項1又は請求項2に係る本発明において、前記記憶手段は、校正処理の後に画質異常が発生した場合の測定データ群から、校正処理の後に発生しなかった場合の測定データ群と重複する測定データを除外した測定データ群を記憶する、ことを特徴とする画質異常予測システムである。
【0012】
請求項5に係る本発明は、コンピュータに、画像形成装置が記録材に形成する画像の画質を調整するパラメータ値を校正する校正処理を実行した後に当該画像形成装置に画質異常が発生した複数の事例について、校正処理の実行に要した時間と校正処理によるパラメータ値の変化量の一方又は両方の測定データを集めた測定データ群を記憶する記憶機能と、画質異常を予測する対象の画像形成装置で実行された直近の校正処理の測定データが、前記記憶機能により記憶された測定データ群を特徴付ける範囲に含まれる場合に、前記対象の画像形成装置において画質異常が発生する旨の通知を出力する出力機能と、を実現するためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1、5に係る本発明によれば、校正処理の実行に要した時間と校正処理によるパラメータ値の変化量の一方又は両方の観点から、対象の画像形成装置で実行された直近の校正処理の後に画質異常が発生するかを予測することができる。
【0014】
請求項2に係る本発明によれば、校正処理の後に画質異常が発生しなかった場合とは傾向が異なる測定データ群を用いて、画質異常の発生予測を効果的に行うことができる。
【0015】
請求項3、4に係る本発明によれば、校正処理の後に画質異常が発生しなかった場合の傾向をより特徴的に表した測定データ群を用いて、画質異常の発生予測を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る画質異常予測システムの構成例を示す図である。
【図2】保守情報蓄積部に蓄積される保守情報を例示する図である。
【図3】マシン情報蓄積部に蓄積されるマシン情報を例示する図である。
【図4】第1構成例のトラブル予兆判定データ群生成部及びトラブル予兆判定部の機能ブロックを示す図である。
【図5】トラブル発生時データ群と正常時データ群との関係を例示する図である。
【図6】第1構成例のクラスタリング処理部によるクラスタリングの例を示す図である。
【図7】第1構成例のトラブル予兆判定データ群蓄積部の保持データを例示する図である。
【図8】第1構成例のトラブル予兆判定データ群生成部による処理フローを例示する図である。
【図9】トラブル発生時データ群の分布範囲と正常時データ群の分布範囲との関係を例示する図である。
【図10】第1構成例のトラブル予兆判定部による処理フローを例示する図である。
【図11】第2構成例のトラブル予兆判定データ群生成部及びトラブル予兆判定部の機能ブロックを示す図である。
【図12】第2構成例のデータ群抽出部による正常時データ群除去の例を示す図である。
【図13】第2構成例のトラブル予兆判定データ群蓄積部の保持データを例示する図である。
【図14】第2構成例のトラブル予兆判定データ群生成部による処理フローを例示する図である。
【図15】第2構成例のトラブル予兆判定部による処理フローを例示する図である。
【図16】管理装置のハードウェア構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る画質異常予測システムについて、図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る画質異常予測システムの構成を例示してある。
本例の画質異常予測システムは、用紙等の記録材に画像を形成して出力する画像形成装置10と、画像形成装置10の管理者や保守担当者などに利用される保守情報入力端末20と、を有している。図1の例では、2台の画像形成装置10と2台の保守情報入力端末20とを示してあるが、これらの台数は任意である。
【0018】
また、本例の画質異常予測システムは、画像形成装置10及び保守情報入力端末20のそれぞれと通信網を介して有線又は無線により通信可能に接続され、これらから収集した情報を用いて、画像形成装置10における画質異常の発生を予測する管理装置30を有している。図1の例では、管理装置30を1台の装置により構成してあるが、後述する各機能部31〜36を複数台の装置に分散した構成としてもよい。
【0019】
画像形成装置10は、用紙等の記録材に画像を形成して出力する画像形成機能を備えた装置である。画像形成装置10としては、プリンタ(文書印刷装置)、コピー機(文書複写装置)、ファクシミリ装置(文書転送装置)などの装置が挙げられるほか、これらの装置の機能を複合的に備えた複合機も含まれる。
【0020】
本例の画像形成装置10は、プリント、コピー等の画像形成を伴う各種ジョブ(或る処理作業の単位)を実行する機能のほかに、記録材に形成する画像の画質を調整するパラメータ値をフィードバック制御などにより校正するキャリブレーション(画質調整)を実行する機能を有しており、操作者の指示により、或いは予め定められたタイミングの到来を契機にして、キャリブレーションの実行を行う。
また、キャリブレーションの実行に応じて、その実行結果を記録した画質調整実行ログを生成する。画質調整実行ログには、キャリブレーションの実行結果に加え、自己(画像形成装置10)の装置識別情報や、キャリブレーションの開始日時や終了日時なども記録される。
画像形成装置10にて生成された画質調整実行ログは、生成に伴って自動的に、或いは管理装置30からの要求に応答して、管理装置30へ送信される。
【0021】
また、本例の画像形成装置10は、画像形成処理に関わる各種の監視パラメータ(キャリブレーションによる調整パラメータを含む)を有しており、画像形成に関わる各部に設けられたセンサにより、各監視パラメータの値を随時検出することができる。
本例では、各種ジョブの実行を契機にして監視パラメータの値を検出するほかに、キャリブレーションの開始及び終了のそれぞれの時点で監視パラメータの値(特に、キャリブレーションによる調整パラメータの値)を検出し、その検出値を記録したマシン情報を生成する。マシン情報には、各監視パラメータの検出値に加え、自己(画像形成装置10)の装置識別情報や、値検出を行った日時を示す検出日時なども記録される。
画像形成装置10にて生成されたマシン情報は、生成に伴って自動的に、或いは管理装置30からの要求に応答して、管理装置30へ送信される。
【0022】
次に、保守情報入力端末20について説明する。
本例の保守情報入力端末20は、画像形成装置10の設置場所に訪問して保守作業を実際に行った保守担当者やその報告を受けた者などから、その保守作業に関する保守情報の入力を受け付けて、管理装置30へ送信する。また、本例の保守情報入力端末20は、画像形成装置10におけるトラブル(不具合)の予兆情報を管理装置30から受信して、保守情報入力端末20に設けられた表示装置により表示出力する。
なお、本例において管理装置30へ送信する保守情報には、保守作業の対象となった画像形成装置10を識別する装置識別情報、保守作業が実施された日時を示す保守日時、保守作業により除去されたトラブルの分類を示すカテゴリー、トラブルの具体的な種別を示す不具合種類、対象の画像形成装置10に施した処置などが記録される。
【0023】
次に、管理装置30について説明する。
本例の管理装置30は、画像形成装置10におけるトラブルの発生について予測する装置であり、保守・マシン情報収集部31、保守情報蓄積部32、マシン情報蓄積部33、トラブル予兆判定データ群生成部34、トラブル予兆判定データ群蓄積部35、トラブル予兆判定部36を有している。
【0024】
保守・監視情報収集部31は、保守情報入力端末20から送信される保守情報を収集(受信)して保守情報蓄積部32に蓄積(記憶)させ、また、画像形成装置10から送信されるマシン情報及び画質調整実行ログを収集(受信)してマシン情報蓄積部33に蓄積(記憶)させる。
【0025】
図2には、保守情報蓄積部32に蓄積される保守情報を例示してある。
図2によれば、例えば、「#1001」で識別される画像形成装置10に対して「2010/1/10 13:00」に施した保守作業により「画質(濃度変動)」のカテゴリーに属する「濃度ムラ」のトラブルが除去されており、例えば、「#1002」で識別される画像形成装置10に対して「2010/1/12 15:00」に施した保守作業により「エレキ系」のカテゴリーに属する「電源入らず」のトラブルが除去されていることが分かる。
【0026】
図3には、マシン情報蓄積部33に蓄積されるマシン情報を例示してある。
図3によれば、例えば、「#1001」で識別される画像形成装置10に対して「2010/1/1 10:00」に実行されたプリントのジョブにおける監視パラメータは、用紙通過時間が「a秒」、帯電電圧が「AV」、・・・であり、例えば、「#1002」で識別される画像形成装置10に対して「2010/1/3 15:00」に実行されたプリントのジョブにおける監視パラメータは、用紙通過時間が「b秒」、帯電電圧が「BV」、・・・であることが分かる。
【0027】
トラブル予兆判定データ群生成部34は、保守情報蓄積部32に蓄積されている保守情報及びマシン情報蓄積部33に蓄積されているマシン情報及び画質調整実行ログに基づいて、トラブルの発生を予測する基準となるトラブル予兆判定データ群を生成し、トラブル予兆判定データ群蓄積部35に蓄積(記憶)させる。
本例のトラブル予兆判定データ群生成部34では、特に、画質異常のカテゴリー(例えば、図2における「画質(濃度変動)」や「画質(汚れ)」のカテゴリー)に属するトラブル(以下、単に画質異常と記す)に対する保守情報と、キャリブレーションの開始及び終了のそれぞれの時点のマシン情報を用いて、キャリブレーションを実行した後の予め定められた長さの期間内に画質異常が発生した複数の事例について、事例毎に、キャリブレーションの実行に要した時間(実行時間)と、キャリブレーションによる調整パラメータ(例えば、帯電電圧、現像バイアス、レーザ光量等)の変化量を測定し、これら事例毎の測定データ(実行時間及び変化量の組)を集めた測定データ群を、画質異常の発生を予測する基準となるトラブル予兆判定データ群としてトラブル予兆判定データ群蓄積部35に記憶させる。
【0028】
トラブル予兆判定部36は、画質異常を予測する対象の画像形成装置10で実行された直近のキャリブレーションについて得られた測定データが、トラブル予兆判定データ群蓄積部35に蓄積されているトラブル予兆判定データ群を特徴付ける範囲に含まれるか否かを判定し、当該範囲に含まれる場合に、画質異常が発生する旨を通知する予兆情報を保守情報入力端末20に送信して、保守情報入力端末20に設けられた表示装置により表示出力させる。
【0029】
以下、トラブル予兆判定データ群生成部34及びトラブル予兆判定部36の動作について、より具体的に説明する。
(第1構成例)
図4には、第1構成例におけるトラブル予兆判定データ群生成部34及びトラブル予兆判定部36の機能ブロックを示してある。
まず、第1構成例のトラブル予兆判定データ群生成部34について説明する。
第1構成例のトラブル予兆判定データ群生成部34は、図4(a)に示すように、トラブル発生時データ取得部41、トラブル発生時データ群生成部42、正常時データ取得部43、正常時データ群生成部44、データ群選択部45、クラスタリング処理部46を有する。
【0030】
トラブル発生時データ取得部41は、保守情報蓄積部32に蓄積されている保守情報における保守日時、カテゴリー、不具合種類等の情報に基づいて、画質異常の事例毎に、その発生日時を起点に遡った予め定められた長さの期間内に実行されたキャリブレーションに関するマシン情報及び画質調整実行ログをマシン情報蓄積部33から取得する。すなわち、キャリブレーションの実行後の注目期間内に画質異常が発生した事例について、キャリブレーションの画質調整実行ログと、キャリブレーションの開始及び終了のそれぞれの時点のマシン情報を取得する。
なお、本例では、画質異常に対する保守作業の日時(保守日時)を画質異常の発生日時と見做して処理しているが、画質異常の発生日時を特定する他の仕組みを有している場合には、その仕組みにより特定される画質異常の発生日時を用いて処理すればよい。
【0031】
トラブル発生時データ群生成部42は、トラブル発生時データ取得部41により取得された、キャリブレーションの実行後の注目期間内に画質異常が発生した事例毎のマシン情報及び画質調整実行ログに基づいて、キャリブレーションの実行時間と、キャリブレーションによる各調整パラメータの変化量とをそれぞれ測定し、これら事例毎の測定データ(実行時間及び変化量の組)を集めたトラブル発生時データ群を調整パラメータ毎に生成する。
【0032】
本例では、画質調整実行ログにおけるキャリブレーションの開始日時と終了日時との関係から、キャリブレーションの実行時間を算出(測定)する。また、キャリブレーションの開始時点における各調整パラメータの検出値とキャリブレーションの終了時点における各調整パラメータの検出値との関係から、キャリブレーションによる調整パラメータの変化量を調整パラメータ毎に算出(測定)する。
ここで、本例の画像形成装置10は、複数の種別のキャリブレーションを有しており、各キャリブレーションでは、その種別に対応する複数の調整パラメータを校正するようにしている。このため、本例では、キャリブレーションの種別単位で、各測定データにおけるキャリブレーションの実行時間が共通することになる。
【0033】
正常時データ取得部43は、トラブル発生時データ取得部41で用いた期間と同じ長さの期間であって画質異常が発生しなかった期間を選択し、その期間内に実行されたキャリブレーションに関するマシン情報及び画質調整実行ログをマシン情報蓄積部33から取得する。すなわち、トラブル発生時データ取得部41とは逆に、キャリブレーションの実行後の注目期間内に画質異常が発生しなかった事例について、キャリブレーションの画質調整実行ログと、キャリブレーションの開始及び終了のそれぞれの時点のマシン情報を取得する。
【0034】
正常時データ群生成部44は、正常時データ取得部43により取得された、キャリブレーションの実行後の注目期間内に画質異常が発生しなかった事例毎のマシン情報及び画質調整実行ログに基づいて、キャリブレーションの実行時間と、キャリブレーションによる各調整パラメータの変化量とをそれぞれ測定し、これら事例毎の測定データ(実行時間及び変化量の組)を集めた正常時データ群を調整パラメータ毎に生成する。
本例では、トラブル発生時データ群生成部42と同様の手法により、キャリブレーションの実行時間の算出(測定)、及び、調整パラメータの変化量の算出(測定)を行う。
【0035】
データ群選択部45は、トラブル発生時データ群生成部42により生成された調整パラメータ毎のトラブル発生時データ群と正常時データ取得部43により生成された調整パラメータ毎の正常時データ群との乖離度を表す距離を調整パラメータ毎に算出し、当該距離が予め定められた閾値以上となる調整パラメータのトラブル発生時データ群を選択してクラスタリング処理部46に与える。
本例では、トラブル発生時データ群と正常時データ群との乖離度を表す距離として、これらの重心間の距離を用いるが、例えば、マハラノビス距離など、他の手法により得られる値をトラブル発生時データ群と正常時データ群との乖離度として用いるようにしてもよい。
【0036】
データ群選択部45の動作を概念的に説明する。
図5には、トラブル発生時データ群と正常時データ群との関係を、横軸をキャリブレーションの実行時間(ΔT)、縦軸を調整パラメータの変化量(Δx)、としたグラフ上に例示してある。また、トラブル発生時データ群に属する測定データの分布を×印で示しつつ、その分布範囲(トラブル発生時データ群を特徴付ける範囲)を実線で囲って示すと共に、正常時データ群に属する測定データの分布を△印で示しつつ、その分布範囲(正常時データ群を特徴付ける範囲)を点線で囲って示してある。
図5(a)は、トラブル発生時データ群を抽出しない場合(距離が閾値未満の場合)の例であり、図5(b)は、トラブル発生時データ群を抽出する場合(距離が閾値以上の場合)の例である。
このように、本例のデータ群選択部45では、画質異常時の測定データの傾向が正常時(画質異常及びその予兆が発生していない状態)とは顕著に異なる調整パラメータについて、そのトラブル発生時データ群を抽出する。
【0037】
クラスタリング処理部46は、データ群選択部45から与えられた調整パラメータのトラブル発生時データ群を、k−means等のクラスタリングにより4象限((キャリブレーションの実行時間,調整パラメータの変化量)=(小,小),(小,大),(大,小),(大,大))に分類し、トラブル予兆判定用データ群として調整パラメータ毎にトラブル予兆判定データ群蓄積部35に記憶させる。
【0038】
クラスタリング処理部46の動作を概念的に説明する。
図6には、クラスタリング処理部46によるクラスタリングの例を示してある。
図6の例では、トラブル発生時データ群に属する測定データの分布範囲を、キャリブレーションの実行時間の大小と調整パラメータの変化量の大小で4象限に分類し、特に、実行時間及び変化量が共に大の象限(図中右上の象限)に属する測定データの分布範囲を実線で囲って示してある。
このように、本例のデータ群選択部45では、トラブル発生時データ群をキャリブレーションの実行時間及び調整パラメータの変化量の大小の観点から4象限に分類してトラブル予兆判定データ群蓄積部35に記憶させる。
【0039】
図7には、第1構成例のトラブル予兆判定データ群蓄積部35の保持データを例示してある。
このように、第1構成例のトラブル予兆判定データ群蓄積部35では、調整パラメータ毎に、その調整パラメータに対応するトラブル予兆判定用データ群に属する測定データ(実行時間及び変化量の組)を、キャリブレーションの実行時間及び調整パラメータの変化量の大小の観点から分類した各象限に分けて保持している。
【0040】
次に、第1構成例のトラブル予兆判定部36について説明する。
第1構成例のトラブル予兆判定部36は、図4(b)に示すように、ログ・パラメータデータ取得部51、判定用データ算出部52、トラブル予兆判定用データ取得部53、クラスタリング判定部54を有する。
【0041】
ログ・パラメータデータ取得部51は、画質異常を予測する対象の画像形成装置10から取得してマシン情報蓄積部33に蓄積されている、現時点を起点に遡った予め定められた長さの期間内に実行されたキャリブレーションに関するマシン情報及び画質調整実行ログを取得する。すなわち、対象の画像形成装置10において直近の注目期間内に実行されたキャリブレーションについて、キャリブレーションの画質調整実行ログと、キャリブレーションの開始及び終了のそれぞれの時点のマシン情報を取得する。
【0042】
判定用データ算出部52は、ログ・パラメータデータ取得部51により取得された、対象の画像形成装置10において直近の注目期間内に実行されたキャリブレーションに関するマシン情報及び画質調整実行ログに基づいて、キャリブレーションの実行時間と、キャリブレーションによる各調整パラメータの検出値の変化量とをそれぞれ測定して、判定用データ(実行時間及び変化量の組)を調整パラメータ毎に生成する。
本例では、トラブル発生時データ群生成部42と同様の手法により、キャリブレーションの実行時間の算出(測定)、及び、キャリブレーションによる調整パラメータの検出値の変化量の算出(測定)を行う。
【0043】
トラブル予兆判定用データ取得部53は、画質異常の予兆判定に用いる調整パラメータ(トラブル予兆判定用データ群が生成された調整パラメータ)について、そのトラブル予兆判定用データ群(4象限に分類されたトラブル発生時データ群)をトラブル予兆判定データ群蓄積部35から取得する。
【0044】
クラスタリング判定部54は、判定用データ算出部52により生成された調整パラメータ毎の判定用データ(実行時間及び変化量の組)が、当該調整パラメータについてトラブル予兆判定用データ取得部53により取得されたトラブル予兆判定用データ群の4象限のいずれに含まれるか(或いは最も近いか)を判定する。
本例では、各象限の重心と判定用データとの距離を算出し、最も距離が短い象限に判定用データが含まれると判定する。なお、算出した距離が、予め定められた閾値以上の場合には、いずれの象限にも含まれない(トラブル予兆判定用データ群を特徴付ける範囲に含まれない)と判定する。
そして、上記判定の結果、(実行時間,変化分)=(大,大)の象限(図6における右上の象限)に判定用データが含まれると判定された場合、すなわちデータ異常が生じたと判断される場合に、対象の画像形成装置10に画質異常が発生する予兆があるとして、画質異常が発生する旨を通知する予兆情報を保守情報入力端末20に送信する。
【0045】
第1構成例におけるトラブル予兆判定データ群生成部34及びトラブル予兆判定部36による処理の流れを説明する。
図8には、第1構成例のトラブル予兆判定データ群生成部34による処理フローを例示してある。
まず、トラブル発生時データ取得部41が、保守情報蓄積部32に蓄積されている保守情報における保守日時、カテゴリー、不具合種類等の情報に基づいて、画質異常の事例を抽出し(ステップS11)、その発生日時を起点に遡った予め定められた長さの期間内に実行されたキャリブレーションに関するマシン情報及び画質調整実行ログをマシン情報蓄積部33から取得する(ステップS12)。
また、正常時データ取得部43が、トラブル発生時データ取得部41で用いた期間と同じ長さの期間であって画質異常が発生しなかった期間を選択し、その期間内に実行されたキャリブレーションに関するマシン情報及び画質調整実行ログをマシン情報蓄積部33から取得する(ステップS13)。
【0046】
次に、トラブル発生時データ群生成部42が、トラブル発生時データ取得部41により取得されたマシン情報及び画質調整実行ログに基づいて、キャリブレーションの実行時間と、キャリブレーションによる各調整パラメータの変化量とをそれぞれ算出し(ステップS14)、事例毎の測定データ(実行時間及び変化量の組)を集めたトラブル発生時データ群を調整パラメータ毎に生成する(ステップS15)。
同様に、正常時データ群生成部44が、正常時データ取得部43により取得されたマシン情報及び画質調整実行ログに基づいて、キャリブレーションの実行時間と、キャリブレーションによる各調整パラメータの変化量とをそれぞれ算出し(ステップS14)、事例毎の測定データ(実行時間及び変化量の組)を集めた正常時データ群を調整パラメータ毎に生成する(ステップS15)。
【0047】
次に、各調整パラメータを識別する変数iに初期値1を設定し(ステップS16)、変数iで識別される調整パラメータxを対象にして以下の処理を行う。
データ群選択部45が、トラブル発生時データ群生成部42により生成された調整パラメータ毎のトラブル発生時データ群と正常時データ取得部43により生成された調整パラメータ毎の正常時データ群との乖離度を表す距離を算出し(ステップS17)、当該距離が予め定められた閾値以上となるか否かを判定する(ステップS18)。
そして、算出した距離が閾値以上の場合に、クラスタリング処理部46が、トラブル発生時データ群をキャリブレーションの実行時間の大小と調整パラメータの変化量の大小で4象限に分類して、トラブル予兆判定用データ群としてトラブル予兆判定データ群蓄積部35に記憶させる(ステップS19)。なお、算出した距離が閾値未満の場合には、ステップS19は行わない。
その後、変数iの値と調整パラメータの種別数nとを比較し(ステップS20)、i≦nであれば、変数iに1を加算し(ステップS21)、次の調整パラメータxを対象にして上記ステップS17〜S19を繰り返す。一方、i>nであれば、処理を終了する。すなわち、全ての調整パラメータx(1≦i≦n)について、上記ステップS17〜S19を繰り返す。
【0048】
この結果、トラブル発生時データ群と正常時データ群とが或る程度離れている調整パラメータが特定され、当該調整パラメータのトラブル発生時データ群がキャリブレーションの実行時間の大小と調整パラメータの変化量の大小で分類されて、トラブル予兆判定用データ群としてトラブル予兆判定データ群蓄積部35に保持されることになる。
例えば、調整パラメータx〜xのそれぞれのトラブル発生時データ群及び正常時データ群の分布範囲が、図9(a)に例示するよう態様の場合には、図9(b)に例示するように、トラブル発生時データ群と正常時データ群との距離が離れている調整パラメータx,xについてトラブル予兆判定用データ群が設定される。なお、図9では、トラブル発生時データ群の分布範囲を実線で示してあり、正常時データ群の分布範囲を点線で示してある。
【0049】
図10には、第1構成例のトラブル予兆判定部36による処理フローを例示してある。
まず、トラブル予兆判定用データ取得部53が、画質異常の予兆判定に用いる調整パラメータについて、そのトラブル予兆判定用データ群をトラブル予兆判定データ群蓄積部35から取得する(ステップS31)。
また、ログ・パラメータデータ取得部51が、画質異常を予測する対象の画像形成装置10から取得してマシン情報蓄積部33に蓄積されている、現時点を起点に遡った予め定められた長さの期間内に実行されたキャリブレーションに関するマシン情報及び画質調整実行ログを取得し(ステップS32)、判定用データ算出部52が、ログ・パラメータデータ取得部51により取得されたマシン情報及び画質調整実行ログに基づいて、キャリブレーションの実行時間と、キャリブレーションによる各調整パラメータの検出値の変化量とをそれぞれ測定して、判定用データ(実行時間及び変化量の組)を調整パラメータ毎に生成する(ステップS33)。
【0050】
次に、各調整パラメータを識別する変数iに初期値1を設定し(ステップS34)、変数iで識別される調整パラメータxを対象にして以下の処理を行う。
クラスタリング判定部54が、トラブル予兆判定用データ取得部53により取得されたトラブル予兆判定用データ群の各象限の重心と、判定用データ算出部52により生成された調整パラメータ毎の判定用データ(実行時間及び変化量の組)との距離を算出し(ステップS35)、(実行時間,変化分)=(大,大)の象限との距離が最小か否かを判定する(ステップS36)。
そして、(実行時間,変化分)=(大,大)の象限との距離が最小でない場合に、変数iの値と画質異常の予兆判定に用いる調整パラメータの種別数mとを比較し(ステップS37)、i≦mであれば、変数iに1を加算し(ステップS38)、次の調整パラメータxを対象にして上記ステップS35、S36を繰り返す。一方、i>mであれば、処理を終了する。すなわち、全ての調整パラメータx(1≦i≦m)について、上記ステップS35、S36を繰り返す。
一方、(実行時間,変化分)=(大,大)の象限との距離が最小の場合には、対象の画像形成装置10に画質異常が発生する予兆があるとして、画質異常が発生する旨を通知する予兆情報を保守情報入力端末20に送信する(ステップS39)。
【0051】
このように、本例では、対象の画像形成装置10において直近の注目期間内に実行されたキャリブレーションについて得られた判定用データ(実行時間及び変化量の組)が、トラブル予兆判定用データ群をキャリブレーションの実行時間の大小と調整パラメータの変化量の大小で分類した場合における、実行時間及び変化量が共に大側の象限に含まれる場合に、画質異常が発生する予兆があると判断し、その旨を通知する予兆情報を保守情報入力端末20に送信するようにしている。
なお、実行時間又は変化量の一方が大側の象限に含まれる場合に、画質異常が発生する予兆があると判断するようにしてもよく、画質異常予測システムの運用形態などに応じて任意に設定すればよい。
【0052】
また、本例では、調整パラメータの種別毎に、その調整パラメータにデータ異常が生じた場合に発生すると想定される画質異常の種別(過去の事例において発生頻度が高かった画質異常の種別)を予め対応付けた対応表を有しており、当該対応表に照らして、発生の予兆がある画質異常の種別も判断できるようにしてある。なお、画質異常を解消するための処置などの情報を更に対応付けた対応表を用意することで、保守作業の効率性を高めるようにしてもよい。
【0053】
(第2構成例)
図11には、第2構成例におけるトラブル予兆判定データ群生成部34及びトラブル予兆判定部36の機能ブロックを示してある。
まず、第2構成例のトラブル予兆判定データ群生成部34について説明する。
第2構成例のトラブル予兆判定データ群生成部34は、図11(a)に示すように、トラブル発生時データ取得部61、トラブル発生時データ群生成部62、正常時データ取得部63、正常時データ群生成部64、データ群選択部65、データ群抽出部66を有する。なお、機能部61〜65については、第1構成例の対応する機能部41〜45と同様な構成及び動作であるため、その説明を省略する。
【0054】
データ群抽出部66は、データ群選択部45から与えられた調整パラメータのトラブル発生時データ群から、正常時データ取得部43により生成された調整パラメータ毎の正常時データ群と重複する測定データを除外し、当該除外後のトラブル発生時データ群をトラブル予兆判定用データ群として調整パラメータ毎にトラブル予兆判定データ群蓄積部35に記憶させる。
なお、本例のデータ群抽出部66では、正常時データ群の重心から予め定められた距離の範囲内に属する測定データを除外するようにしている。
【0055】
図12には、データ群抽出部66による正常時データ群除去の例を示してある。
このように、本例のデータ群抽出部66では、トラブル発生時データ群の分布範囲から、正常時データ群の分布範囲と重なる範囲を除外した範囲を特定し、その範囲に属する測定データを集めたデータ群をトラブル予兆判定用データ群としてトラブル予兆判定データ群蓄積部35に記憶させる。
【0056】
図13には、第2構成例のトラブル予兆判定データ群蓄積部35の保持データを例示してある。
このように、第2構成例のトラブル予兆判定データ群蓄積部35では、調整パラメータ毎に、その調整パラメータに対応するトラブル予兆判定用データ群に属する測定データ(実行時間及び変化量の組)を保持している。
【0057】
次に、第2構成例のトラブル予兆判定部36について説明する。
第2構成例のトラブル予兆判定部36は、図11(b)に示すように、ログ・パラメータデータ取得部71、判定用データ算出部72、トラブル予兆判定用データ取得部73、距離判定部74を有する。なお、機能部71〜73については、第1構成例の対応する機能部51〜53と同様な構成及び動作であるため、その説明を省略する。
【0058】
距離判定部74は、判定用データ算出部72により生成された調整パラメータ毎の判定用データ(実行時間及び変化量の組)と、当該調整パラメータについてトラブル予兆判定用データ取得部73により取得されたトラブル予兆判定用データ群との距離を算出し、算出した距離が予め定められた閾値未満の場合に、判定用データがトラブル予兆判定用データ群を特徴付ける範囲に含まれると判断し、対象の画像形成装置10に画質異常が発生する予兆があるとして、画質異常が発生する旨を通知する予兆情報を保守情報入力端末20に送信する。
【0059】
第2構成例におけるトラブル予兆判定データ群生成部34及びトラブル予兆判定部36による処理の流れを説明する。
図14には、第2構成例のトラブル予兆判定データ群生成部34による処理フローを例示してある。
まず、トラブル発生時データ取得部61が、保守情報蓄積部32に蓄積されている保守情報における保守日時、カテゴリー、不具合種類等の情報に基づいて、画質異常の事例を抽出し(ステップS11)、その発生日時を起点に遡った予め定められた長さの期間内に実行されたキャリブレーションに関するマシン情報及び画質調整実行ログをマシン情報蓄積部33から取得する(ステップS12)。
また、正常時データ取得部63が、トラブル発生時データ取得部61で用いた期間と同じ長さの期間であって画質異常が発生しなかった期間を選択し、その期間内に実行されたキャリブレーションに関するマシン情報及び画質調整実行ログをマシン情報蓄積部33から取得する(ステップS13)。
【0060】
次に、トラブル発生時データ群生成部62が、トラブル発生時データ取得部61により取得されたマシン情報及び画質調整実行ログに基づいて、キャリブレーションの実行時間と、キャリブレーションによる各調整パラメータの変化量とをそれぞれ算出し(ステップS14)、事例毎の測定データ(実行時間及び変化量の組)を集めたトラブル発生時データ群を調整パラメータ毎に生成する(ステップS15)。
同様に、正常時データ群生成部64が、正常時データ取得部63により取得されたマシン情報及び画質調整実行ログに基づいて、キャリブレーションの実行時間と、キャリブレーションによる各調整パラメータの変化量とをそれぞれ算出し(ステップS14)、事例毎の測定データ(実行時間及び変化量の組)を集めた正常時データ群を調整パラメータ毎に生成する(ステップS15)。
【0061】
次に、各調整パラメータを識別する変数iに初期値1を設定し(ステップS16)、変数iで識別される調整パラメータxを対象にして以下の処理を行う。
データ群選択部65が、トラブル発生時データ群生成部62により生成された調整パラメータ毎のトラブル発生時データ群と正常時データ取得部63により生成された調整パラメータ毎の正常時データ群との乖離度を表す距離を算出し(ステップS17)、当該距離が予め定められた閾値以上となるか否かを判定する(ステップS18)。
そして、算出した距離が閾値以上の場合に、データ群抽出部66が、データ群選択部45から与えられた調整パラメータのトラブル発生時データ群から、正常時データ取得部43により生成された調整パラメータ毎の正常時データ群と重複する測定データを除外し、当該除外後のトラブル発生時データ群をトラブル予兆判定用データ群としてトラブル予兆判定データ群蓄積部35に記憶させる(ステップS19’)。なお、算出した距離が閾値未満の場合には、ステップS19’は行わない。
その後、変数iの値と調整パラメータの種別数nとを比較し(ステップS20)、i≦nであれば、変数iに1を加算し(ステップS21)、次の調整パラメータxを対象にして上記ステップS17〜S19’を繰り返す。一方、i>nであれば、処理を終了する。すなわち、全ての調整パラメータx(1≦i≦n)について、上記ステップS17〜S19’を繰り返す。
【0062】
この結果、トラブル発生時データ群と正常時データ群とが或る程度離れている調整パラメータが特定され、当該調整パラメータのトラブル発生時データ群から正常時データ群と重複する測定データを除外したデータ群が、トラブル予兆判定用データ群としてトラブル予兆判定データ群蓄積部35に保持されることになる。
【0063】
図15には、第2構成例のトラブル予兆判定部36による処理フローを例示してある。
まず、トラブル予兆判定用データ取得部73が、画質異常の予兆判定に用いる調整パラメータについて、そのトラブル予兆判定用データ群をトラブル予兆判定データ群蓄積部35から取得する(ステップS31)。
また、ログ・パラメータデータ取得部71が、画質異常を予測する対象の画像形成装置10から取得してマシン情報蓄積部33に蓄積されている、現時点を起点に遡った予め定められた長さの期間内に実行されたキャリブレーションに関するマシン情報及び画質調整実行ログを取得し(ステップS32)、判定用データ算出部72が、ログ・パラメータデータ取得部71により取得されたマシン情報及び画質調整実行ログに基づいて、キャリブレーションの実行時間と、キャリブレーションによる各調整パラメータの検出値の変化量とをそれぞれ測定して、判定用データ(実行時間及び変化量の組)を調整パラメータ毎に生成する(ステップS33)。
【0064】
次に、各調整パラメータを識別する変数iに初期値1を設定し(ステップS34)、変数iで識別される調整パラメータxを対象にして以下の処理を行う。
距離判定部74が、トラブル予兆判定用データ取得部73により取得されたトラブル予兆判定用データ群と、判定用データ算出部72により生成された調整パラメータ毎の判定用データ(実行時間及び変化量の組)との距離を算出し(ステップS35’)、算出した距離が予め定められた閾値未満か否かを判定する(ステップS36’)、
そして、算出した距離が閾値未満でない場合に、変数iの値と画質異常の予兆判定に用いる調整パラメータの種別数mとを比較し(ステップS37)、i≦mであれば、変数iに1を加算し(ステップS38)、次の調整パラメータxを対象にして上記ステップS35’、S36’を繰り返す。一方、i>mであれば、処理を終了する。すなわち、全ての調整パラメータx(1≦i≦m)について、上記ステップS35’、S36’を繰り返す。
一方、算出した距離が閾値未満の場合には、対象の画像形成装置10に画質異常が発生する予兆があるとして、画質異常が発生する旨を通知する予兆情報を保守情報入力端末20に送信する(ステップS39)。
【0065】
このように、本例では、対象の画像形成装置10において直近の注目期間内に実行されたキャリブレーションについて得られた判定用データ(実行時間及び変化量の組)が、トラブル予兆判定用データ群を特徴付ける範囲に属する場合(これらの距離が閾値未満の場合)に、画質異常が発生する予兆があると判断し、その旨を通知する予兆情報を保守情報入力端末20に送信するようにしている。
【0066】
また、本例では、調整パラメータの種別毎に、その調整パラメータにデータ異常が生じた場合に発生すると想定される画質異常の種別(過去の事例において発生頻度が高かった画質異常の種別)を予め対応付けた対応表を有しており、当該対応表に照らして、発生の予兆がある画質異常の種別も判断できるようにしてある。なお、画質異常を解消するための処置などの情報を更に対応付けた対応表を用意することで、保守作業の効率性を高めるようにしてもよい。
【0067】
なお、これまでに説明した例では、管理装置30が複数の画像形成装置10について画質異常の発生を予測しているが、例えば、管理装置30が、作成したトラブル予兆判定データ群を各々の画像形成装置10に送信し、各画像形成装置10が、管理装置30受信したトラブル予兆判定データ群に基づいて自己に対する画質異常の発生を予測するように構成してもよい。
また、トラブル予兆判定データ群の作成に係る画像形成装置10と画質異常の予測対象の画像形成装置10は、同じ装置であっても良く、異なる装置であってもよい。すなわち、1以上の画像形成装置10(画質異常の予測対象の画像形成装置10が含まれてもよい)における過去の保守情報及びマシン情報などに基づいてトラブル予兆判定データ群を作成することで、その後、当該トラブル予兆判定データ群を用いて、画質異常の予測対象の画像形成装置10について画質異常の発生を予測することができる。
【0068】
図16には、管理装置30のハードウェア構成を例示してある。
本例では、各種演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)81、CPU81の作業領域となるRAM(Random Access Memory)82や基本的な制御プログラムを記録したROM(Read Only Memory)83等の主記憶装置、本発明の一実施形態に係るプログラムや各種データを記憶するHDD(Hard Disk Drive)84等の補助記憶装置、各種情報を表示出力するための表示装置及び操作者により入力操作に用いられる操作ボタンやタッチパネル等の入力機器とのインタフェースである入出力I/F85、他の装置との間で有線又は無線により通信を行うインタフェースである通信I/F86、等のハードウェア資源を管理装置30のコンピュータが有している。
そして、本発明の一実施形態に係るプログラムを補助記憶装置84等から読み出してRAM82に展開し、これをCPU81により実行させることで、上述した各機能部を管理装置30のコンピュータ上に実現している。
【0069】
なお、本発明の一実施形態に係るプログラムは、例えば、当該プログラムを記憶したCD−ROM等の外部記憶媒体から読み込む形式や、通信網等を介して受信する形式などにより、本例に係る管理装置30のコンピュータに設定される。
また、本例のようなソフトウェア構成により各機能部を実現する態様に限られず、それぞれの機能部を専用のハードウェアモジュールで実現するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10:画像形成装置、 20:保守情報入力端末、 30:管理装置、
31:保守・マシン情報収集部、 32:保守情報蓄積部、 33:マシン情報蓄積部、 34:トラブル予兆判定データ群生成部、 35:トラブル予兆判定データ群蓄積部、 36:トラブル予兆判定部
41:トラブル発生時データ取得部、 42:トラブル発生時データ群生成部、 43:正常時データ取得部、 44:正常時データ群生成部、 45:データ群選択部、 46クラスタリング処理部、
51:ログ・パラメータデータ取得部、 52:判定用データ算出部、 53:トラブル予兆判定用データ取得部、 54:クラスタリング判定部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置が記録材に形成する画像の画質を調整するパラメータ値を校正する校正処理を実行した後に当該画像形成装置に画質異常が発生した複数の事例について、校正処理の実行に要した時間と校正処理によるパラメータ値の変化量の一方又は両方の測定データを集めた測定データ群を記憶する記憶手段と、
画質異常を予測する対象の画像形成装置で実行された直近の校正処理の測定データが、前記記憶手段に記憶された測定データ群を特徴付ける範囲に含まれる場合に、前記対象の画像形成装置において画質異常が発生する旨の通知を出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする画質異常予測システム。
【請求項2】
前記記憶手段は、校正処理の後に画質異常が発生した場合の測定データ群と画質異常が発生しなかった場合の測定データ群との乖離度が閾値以上となる場合に、校正処理の後に画質異常が発生した場合の測定データ群を記憶する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画質異常予測システム。
【請求項3】
前記記憶手段は、校正処理の後に画質異常が発生した場合の測定データ群のうち、各測定データを値の大小で分類する場合において大側に分類される測定データを抽出した測定データ群を記憶する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画質異常予測システム。
【請求項4】
前記記憶手段は、校正処理の後に画質異常が発生した場合の測定データ群から、校正処理の後に発生しなかった場合の測定データ群と重複する測定データを除外した測定データ群を記憶する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画質異常予測システム。
【請求項5】
コンピュータに、
画像形成装置が記録材に形成する画像の画質を調整するパラメータ値を校正する校正処理を実行した後に当該画像形成装置に画質異常が発生した複数の事例について、校正処理の実行に要した時間と校正処理によるパラメータ値の変化量の一方又は両方の測定データを集めた測定データ群を記憶する記憶機能と、
画質異常を予測する対象の画像形成装置で実行された直近の校正処理の測定データが、前記記憶機能により記憶された測定データ群を特徴付ける範囲に含まれる場合に、前記対象の画像形成装置において画質異常が発生する旨の通知を出力する出力機能と、
を実現するためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−33149(P2013−33149A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169390(P2011−169390)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】