説明

界面検出装置、体積計測装置及び界面検出方法

【課題】 容器に収容されている複数種類の液体における特定の液体の界面を正確に測定することができるようにする。
【解決手段】 血清30aに特有の光吸収波長帯域に属する第1の波長λaの第1の光と、血清30aに特有の光吸収波長帯域に属さない第2及び第3の波長λb、λcの第2及び第3の光とを採血管20aを介して受光部11bに投光する。受光部11bで受光した第1〜第3の光の吸光度Aabs、Babs、Cabsを用いて、第1及び第2の光の吸光度差ΔABabsと、第2及び第3の光の吸光度差ΔBCabsとを求め、第1及び第2の光の吸光度差から、バーコードラベル40及び分離剤30bでの散乱による影響が除去されるように、第2及び第3の光の吸光度差と、第1〜第3の波長とを用いて、第1及び第2の光の吸光度差を補正し、血清30aでの吸収に基づく吸光度ΔSabsを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面検出装置、体積計測装置及び界面検出方法に関し、特に、容器内にある特定の液体の界面を検出するために用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、被検者の血液を検査する場合には、以下のような手法が採られている。
まず、被検者から採取した血液と、分離剤とからなる検体液が入っている採血管を遠心分離機にかけて遠心分離を行う。そうすると、検体液は、血清、分離剤、及び血餅の3種類の液体に分離され、採血管の底部から血餅、分離剤、及び血清の順で検体液が堆積される。その後、検査項目毎に必要な量の血清を取り分け、取り分けた血清を検査する。このようにして血清を検査する場合、検査項目毎に適正な量の血清を取り分けることができるようにするために、採血管に入っている血清の量を、血清を取り分ける前に正確に測定しておくことは極めて重要である。
【0003】
このため、従来から、血清の量を測定するための様々な技術が提案されている。
まず、血清、分離剤、及び血餅の3種類の液体に分離された検体液が入っている採血管の側面を、CCDカメラなどを用いて撮像し、撮像した画像を処理することで、血清の界面の位置を検出し、検出した血清の界面の位置から血清の量を測定する技術が提案されている(特許文献1を参照)。
【0004】
また、血清、分離剤、及び血餅の3種類の液体に分離された検体液の静電容量を、静電容量センサを用いて測定し、測定した静電容量に基づいて血清の界面の位置を検出し、検出した血清の界面の位置から血清の量を測定する技術が提案されている(特許文献2を参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−37845号公報
【特許文献2】特開2001−108506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、血液検査用の採血管の外壁面には、一般に、被検者を特定するための情報などが表示されているバーコードラベルが貼付されている。
しかしながら、前述した特許文献1に記載されている技術では、このようにして採血管の外壁面にバーコードラベルが貼付されていると、このバーコードラベルによって、採血管の内部にある検体液の画像を得ることができない場合がある。このため、血清の界面の位置を正確に検出することができなくなる場合があるという問題点があった。
【0007】
一方、前述した特許文献2に記載されている技術では、検体液の静電容量を測定しているので、採血管の外壁面にバーコードラベルが貼付されている場合であっても、血清の界面の位置を検出することができる。
しかしながら、検体液の静電容量を測定するための静電容量センサと、採血管との間の距離によって、静電容量センサの出力信号が大きく変化してしまう。このため、静電容量センサと容器との間の距離を高精度に制御する必要があり、装置の構造が複雑になってしまうという問題点があった。
【0008】
さらに、実際の界面の位置よりも上方において、採血管の内壁面に血清が付着しているような場合、静電容量センサは、この採血管の内壁面に付着している血清の静電容量も、その他の位置にある血清の静電容量と同様に測定してしまう。このため、血清の界面の位置を正確に検出することが困難になるという問題点があった。
【0009】
以上のように、従来の技術では、容器に収容されている複数種類の液体における特定の液体の界面を正確に測定することが極めて困難であるという問題点があった。
本発明は、前述の問題点に鑑みてなされたものであり、容器に収容されている複数種類の液体における特定の液体の界面を正確に測定することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の界面検出装置は、上下に分離した状態で複数種類の液体が収容されている容器の側方から前記容器に対して光を投光する投光手段と、前記容器を介して前記投光手段と対向する位置に配設され、前記投光手段により投光された光を受光する受光手段と、前記受光手段により受光された光の強度を表す情報を用いて、前記複数種類の液体における特定の液体の界面を検出する界面検出手段とを有し、前記投光手段は、前記特定の液体に特有の光吸収波長帯域に属する第1の波長を有する第1の光と、前記特定の液体に特有の光吸収波長帯域に属さない第2及び第3の波長を有する第2及び第3の光とを投光し、前記界面検出手段は、前記受光手段により受光された前記第1〜第3の光の吸光度を求める吸光度演算手段と、前記吸光度演算手段により求められた前記第1及び第2の光の吸光度の差と、前記第2及び第3の光の吸光度の差とを求める吸光度差演算手段と、前記吸光度差演算手段により求められた前記第1及び第2の光の吸光度の差と、前記第2及び第3の光の吸光度の差とを用いて、前記特定の液体における前記第1の光の吸収に基づく吸光度を求める散乱寄与度演算手段とを有し、前記散乱寄与度演算手段により求められた前記特定の液体における前記第1の光の吸収に基づく吸光度を用いて、前記特定の液体の界面を検出することを特徴とする。
本発明の体積計測装置は、前記記載の界面検出装置と、前記界面検出装置により検出された前記特定の液体の上下の界面間の間隔と、予め求められた前記容器の寸法とに基づいて、前記特定の液体の体積を求める体積演算手段とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の界面検出方法は、上下に分離した状態で複数種類の液体が収容されている容器の側方から前記容器に対して光を投光する投光ステップと、前記投光ステップにより投光された光を、前記容器を介して受光する受光ステップと、前記受光ステップにより受光された光の強度を表す情報を用いて、前記複数種類の液体における特定の液体の界面を検出する界面検出ステップとを有し、前記投光ステップは、前記特定の液体に特有の光吸収波長帯域に属する第1の波長を有する第1の光と、前記特定の液体に特有の光吸収波長帯域に属さない第2及び第3の波長を有する第2及び第3の光とを投光し、前記界面検出ステップは、前記受光ステップにより受光された前記第1〜第3の光の吸光度を求める吸光度演算ステップと、前記吸光度演算ステップにより求められた前記第1及び第2の光の吸光度の差と、前記第2及び第3の光の吸光度の差とを求める吸光度差演算ステップと、前記吸光度差演算ステップにより求められた前記第1及び第2の光の吸光度の差と、前記第2及び第3の光の吸光度の差とを用いて、前記特定の液体における前記第1の光の吸収に基づく吸光度を求める散乱寄与度演算ステップとを有し、前記散乱寄与度演算ステップにより求められた前記特定の液体における前記第1の光の吸収に基づく吸光度を用いて、前記特定の液体の界面を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数種類の液体が収容されている容器に対して、前記複数種類の液体における特定の液体に特有の光吸収波長帯域に属する第1の波長を有する第1の光と、前記特定の液体に特有の光吸収波長帯域に属さない第2及び第3の波長を有する第2及び第3の光とを投光し、投光した第1〜第3の光を、前記容器を介して受光し、受光した前記第1〜第3の光の吸光度を用いて、前記特定の液体における前記第1の光の吸収に基づく吸光度を求め、その特定の液体における前記第1の光の吸収に基づく吸光度を用いて、前記特定の液体の界面を検出するようにしたので、前記容器に向けて投光した光の散乱が大きい場合であっても、前記特定の液体における前記第1の光の吸収に基づく吸光度に基づいて、前記第1の光の吸収が起こっている領域と、そうでない領域とを可及的に明確に区別することができるようになる。これにより、前記特定の液体の界面を従来よりも容易に且つ正確に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
図1は、本実施形態の体積計測装置の構成の一例を示した図である。
図1において、体積計測装置は、界面検出センサ11と、駆動装置12と、増幅器13と、A/D変換器14と、演算装置15と、操作装置16と、表示装置17とを有している。
【0014】
また、図1に示すように、遠心分離機により遠心分離されることによって、相互に分離された血清30a、分離剤30b、及び血餅30cを含む検体液30が容器20に収容されている。また、検体液30の上方は、空気で満たされている。
このようにして検体液30が収容されている容器20は、検体液30を収容する採血管20aと、採血管20aの開口部を塞ぐキャップ20bとを有している。採血管20aは、試験管などのように底部が閉塞された円筒状をなすもので、例えば、無色透明のガラスや樹脂などにより形成される。
【0015】
また、採血管20aの外壁面には、紙や樹脂などにより形成されたバーコードラベル40が貼付されている。このバーコードラベル40には、被検者に関する情報等が、文字及び記号などを用いて表示されている。本実施形態の体積計測装置は、このようにして容器20(採血管20a)に収容されている血清30aの界面の位置を求め、求めた界面の位置に基づいて、血清30aの体積を求めるための装置である。
なお、血清30aには、主として、ビリルビン、溶血、及び乳びが含まれている。
【0016】
界面検出センサ11は、投光部11aと受光部11bとを有している。これら投光部11a及び受光部11bは、採血管20aの内径方向において、採血管20aを介して互いに対向する位置に配設される。このように、投光部11a及び受光部11bを、採血管20aを介して互いに対向する位置に配設することにより、採血管20aは、投光部11aから投光された光の光路上に位置することになる。
【0017】
投光部11aは、検体液30のうち、血清30aに特有の光吸収波長帯域に属する第1の波長λaを有する第1の光と、前記血清30aに特有の光吸収波長帯域に属さない第2及び第3の波長λb、λcを有する第2及び第3の光とを受光部11bに向けて投光する。
【0018】
受光部11bは、投光部11aから投光された第1〜第3の光のうち、採血管20aを透過した光を受光し、受光した光の信号を電気信号に変換する。
【0019】
ここで、図2を参照しながら、前記第1〜第3の波長λa、λb、λcを決定する方法の一例を説明する。
図2は、検体液30(血清30a)に含まれる主要な物質における吸光度と波長との関係の一例を示した図である。具体的に図2では、ビリルビン、乳び、及び溶血における吸光度と波長との関係の一例を示している。
吸光度は、ある物質に光を投光した場合に、その光がどれだけ前記物質で吸収されたのかを表す量であり、具体的には以下の(1式)を用いて求められるものである。
吸光度=log(I0/IT) ・・・(1式)
【0020】
前記(1式)において、I0は、投光した光の強度であり、ITは、前記物質を透過した光の強度である。後述するように、投光部11aから投光された光の少なくとも一部は、バーコードラベル40(バーコードラベル40を構成する紙や印字部分)、血清30aに含まれている乳び、分離剤30b、及び血餅30cで散乱される。このようにして散乱された光は、前記物質を透過しない。したがって、前記吸光度は、前記物質に光が吸収された場合だけでなく、前記物質で光が散乱された場合にも大きくなる。
【0021】
まず、第1の波長λaを決定する方法を説明する。
前述したように、本実施形態では、第1の波長λaが、血清30aに特有の光吸収波長帯域に属するようにする。本実施形態において、血清30aに特有の光吸収波長帯域とは、血清30aに含まれているビリルビン及び溶血での光の吸収量の変化が、波長の変化に対して大きい波長帯域をいう。
【0022】
具体的に、本実施形態では、ビリルビン及び溶血での光の吸収量の変化が、波長の変化に対して小さいときの吸光度レベルTbを設定する。そして、ビリルビン及び溶血の吸光度が、この設定した吸光度レベルTbよりも大きい波長帯域を、血清30aに特有の光吸収波長帯域とする。
【0023】
図2に示す例では、ビリルビンの特性線201及び溶血の特性線203における吸光度の値が、概ね吸光度レベルTbよりも大きい領域、すなわち波長がWaよりも短い領域と、波長がWbからWcまでの間にある領域とが、血清30aに特有の光吸収波長帯域となる(図2の白抜き矢印を参照)。
【0024】
後述するように、本実施形態の体積計測装置では、血清30aにおける第1の光の吸収を求めるようにする。したがって、第1の光の波長は、血清30aにおける吸収が可及的に大きくなる波長であるのが好ましい。そこで、本実施形態では、図2に示すように、ビリルビンの特性線201においてピークを有する付近の波長を第1の波長λaとして選択する。
【0025】
次に、第2〜第3の波長λb、λcを決定する方法を説明する。
前述したように、本実施形態では、第2〜第3の波長λb、λcが、血清30aに特有の光吸収波長帯域に属さないようにしている。
【0026】
図2に示す例では、ビリルビンの特性線201及び溶血の特性線203における吸光度の値が、概ね吸光度レベルTbと一致する領域、すなわち波長がWaからWbまでの領域と、波長がWcよりも長い領域とが、血清30aに特有の光吸収波長帯域に属さない波長帯域となる(図2の黒抜き矢印を参照)。
【0027】
後述するように、本実施形態の体積計測装置では、バーコードラベル40及び分離剤30bでの散乱が、波長の変化に対して線形に変化するという前提の下で、第2及び第3の波長λb、λcを用いて、バーコードラベル40及び分離剤30bでの散乱に基づく吸光度の変化率Rを求める((3式)を参照)。そこで、本実施形態では、図2に示すように、第2の波長λbと第3の波長λcとが、可及的に接近しないようにした。
なお、前記において、第1〜第3の波長λa〜λcは、図2に示したものに限定されるものではないということは言うまでもない。
【0028】
図1に説明を戻し、駆動装置12は、界面検出センサ11を、採血管20aの管軸方向に駆動させるためのものである。図3は、界面検出センサ11を採血管20aの管軸方向に駆動させるための体積計測装置の構成の一例を示した図である。なお、図3では、体積計測装置の構成のうち、界面検出センサ11を採血管20aの管軸方向に駆動させるための主要な構成についてのみ示している。
【0029】
図3に示すように、界面検出センサ11は、載置板12aに対して鉛直方向に配設された2本の円柱形状のガイド12bに取り付けられる。このようにしてガイド12bに界面検出センサ11が取り付けられると、投光部11aと受光部11bとが一定の間隔を有して互いに対向する位置に配設される。
【0030】
また、載置板12aの上面には、採血管20aを保持する保持部12cが設けられている。この保持部12cに採血管20aが保持されると、採血管20aが載置板12aに対して鉛直方向に配設される。
【0031】
駆動部12dは、パルスモータを有し、このパルスモータが駆動されると、界面検出センサ11がガイド12bに沿って移動する。このようにして界面検出センサ11が移動すると、投光部11a及び受光部11bは、採血管20aの管軸方向に沿って、一定の間隔を有したまま移動する。
【0032】
また、前記パルスモータは、測定開始位置(例えば、ガイド12bの上端)から、測定終了位置(例えば、ガイド12bの下端)まで界面検出センサ11を移動させる。そして、前記測定終了位置まで界面検出センサ11を移動させる。すると、演算装置15は、前記測定開始位置を基準にして、パルスモータから発生するパルスの数を計数し、その計数したパルスの数に基づいて、採血管20aの管軸方向の位置を求めることができる。なお、パルスモータの代わりに、サーボモータを用いて駆動部12bを構成するようにしてもよい。
【0033】
図1に説明を戻し、増幅器13は、受光部11bで受光された前記第1〜第3の光の信号に基づく電気信号を増幅するためのものである。
A/D変換器14は、増幅器13で増幅された前記第1〜第3の光の信号に基づく電気信号をデジタル信号に変換するためのものである。
【0034】
演算装置15は、体積計測装置における各種の演算を行うためのものである。この演算装置15は、CPUと、体積計測装置を制御するための制御プログラムが記録されているROMとを少なくとも有しているマイクロコンピュータを用いて構成される。
図4は、演算装置15の機能的な構成の一例を示したブロック図である。なお、図4に示した機能以外の機能を演算装置15が有することは言うまでもない。
図4において、演算装置15は、採血管位置演算部15aと、吸光度演算部15bと、吸光度差演算部15cと、散乱寄与度演算部15dと、血清界面位置演算部15eと、体積演算部15fと、血清量表示部15gとを有している。
【0035】
採血管位置演算部15aは、駆動装置12に設けられているパルスモータから発生するパルスの数を計数する。そして、計数したパルスの数に基づいて、採血管20aの管軸方向(図3の白抜き矢印の方向)の位置を求める。なお、以下の説明において、この採血管20aの管軸方向の位置を、採血管20aの位置と略称する。
【0036】
吸光度演算部15bは、採血管位置演算部15aで求められた採血管20aの位置を表す情報と、A/D変換器14でデジタル信号に変換された電気信号から得られる前記第1〜第3の光の強度を表す情報と、投光部11aから投光された前記第1〜第3の光の強度を表す情報とに基づいて、採血管20aの各位置における第1〜第3の光の吸光度Aabs、Babs、Cabsを求める。
【0037】
ここで、投光部11aから前記第1〜第3の光を採血管20aに投光した際に、その投光した前記第1〜第3の光が、採血管20aで受ける影響について、図5及び図6を参照しながら説明する。図5は、採血管20aの各位置を示した図である。
【0038】
図6は、採血管20aの位置と、前記第1〜第3の光の吸光度Aabs、Babs、Cabsとの関係の一例を示した図である。具体的に、図6(a)は、前記第1の光の吸光度Aabsについて示し、図6(b)は、前記第2の光の吸光度Babsについて示し、図6(c)は、前記第3の光の吸光度Cabsについて示している。
【0039】
図5に示す位置401において、採血管20aの中は、比誘電率が1程度の空気で満たされている。したがって、位置401に向けて第1〜第3の光を投光した場合、第1〜第3の光の吸光度Aabs、Babs、Cabsは、図6(a)〜図6(c)に示すように、空気で生じる第1〜第3の光の散乱の影響に基づいた値になる。なお、空気での散乱に基づく吸光度は波長にあまり依存しないので、位置401での第1〜第3の光の吸光度Aabs、Babs、Cabsは、略同じ値になる。
【0040】
図5に示す位置402において、採血管20aの外壁面には、バーコードラベル40が貼付されており、採血管20aの中は、空気で満たされている。したがって、位置402に向けて第1〜第3の光を投光した場合、第1〜第3の光の吸光度Aabs、Babs、Cabsは、図6(a)〜図6(c)に示すように、空気やバーコードラベル40で生じる第1〜第3の光の散乱の影響に基づいた値になる。
【0041】
なお、バーコードラベル40での散乱に基づく吸光度は、少なくとも可視光の領域においては、波長が長くなるにつれて緩やかに減少し、ビリルビンや溶血のように(図2に示した特性線201、203のように)、ピークが生じない。したがって、位置402での第1〜第3の光の吸光度Aabs、Babs、Cabsは、波長が長いほど値が小さくなる。
【0042】
図5に示す位置403において、採血管20aの外壁面には、バーコードラベル40が貼付されており、採血管20aの中は、血清30aで満たされている。そして、前述したように、第1の光は、血清30aに特有の光吸収波長帯域に属する第1の波長λaを有し、血清30aに含まれるビリルビンや溶血に吸収される。
【0043】
したがって、位置403に向けて第1の光を投光した場合、第1の光の吸光度Aabsは、図6(a)に示すように、血清30aに含まれている乳びやバーコードラベル40で生じる第1の光の散乱の影響、及び血清30aに含まれているビリルビンや溶血における第1の光の吸収の影響に基づいた値になる。
【0044】
また、前述したように、第2及び第3の光は、それぞれ血清30aに特有の光吸収波長帯域に属さない第2及び第3の波長λb、λcを有し、血清30aに含まれるビリルビン及び溶血に殆ど吸収されない。よって、位置403に向けて第2及び第3の光を投光した場合、第2及び第3の光の吸光度Babs、Cabsは、血清30aに含まれる乳びやバーコードラベル40で生じる第2及び第3の光の散乱の影響に基づいた値になり、血清30aに含まれるビリルビンや溶血における光の吸収の影響は、無視できるほど小さくなる。
【0045】
ここで、分離剤30bでの散乱に基づく吸光度、及び血清30aに含まれる乳びでの散乱に基づく吸光度(例えば図2に示した特性線202)も、バーコードラベル40での散乱に基づく吸光度と同様に、波長が長くなるにつれて緩やかに減少する。
【0046】
また、前述したように、第1の光を位置403に向けて投光した場合、第1の光は、血清30aに含まれているビリルビンや溶血により吸収される。これに対し、第2及び第3の光を位置403に向けて投光した場合、第2及び第3の光は、血清30aに含まれるビリルビンや溶血による吸収が少ない。
【0047】
以上のことから、位置403での第1〜第3の光の吸光度Aabs、Babs、Cabsは、波長が長いほど値が小さくなる。また、位置403での第1の光の吸光度Aabsは、第2及び第3の光の吸光度Babs、Cabsよりも大きくなる。
【0048】
なお、図6において、図5に示す位置402での吸光度Aabs、Babs、Cabsが、位置403での吸光度Aabs、Babs、Cabsよりも大きくなっているのは、採血管20aの屈折率と空気の屈折率との差が、採血管20aの屈折率と検体液30(血清30a)の屈折率との差よりも大きいためである。
【0049】
図5に示す位置404において、採血管20aの外壁面には、バーコードラベル40が貼付されており、採血管20aの中は、分離剤30bで満たされている。したがって、位置404に向けて第1〜第3の光を投光した場合、第1〜第3の光の吸光度Aabs、Babs、Cabsは、図6(a)〜図6(c)に示すように、バーコードラベル40や分離剤30bで生じる第1〜第3の光の散乱の影響に基づいた値になる。
【0050】
前述したように、分離剤30bでの散乱に基づく吸光度、及びバーコードラベル40での散乱に基づく吸光度は、波長が長くなるにつれて緩やかに減少する。したがって、位置404での第1〜第3の光の吸光度Aabs、Babs、Cabsは、波長が長いほど値が小さくなる。
【0051】
図5に示す位置405において、採血管20aの中は、分離剤30bで満たされている。したがって、位置405に向けて第1〜第3の光を投光した場合、第1〜第3の光の吸光度Aabs、Babs、Cabsは、図6(a)〜図6(c)に示すように、分離剤30bで生じる第1〜第3の光の散乱の影響に基づいた値になり、また波長が長いほど値が小さくなる。
【0052】
図5に示す位置406において、採血管20aの中は、血餅30cで満たされている。したがって、位置406に向けて第1〜第3の光を投光した場合、第1〜第3の光は血餅30cを殆ど透過せず、第1〜第3の光の吸光度Aabs、Babs、Cabsは、図6(a)〜図6(c)に示すように、測定し得る最大値になる。
【0053】
図4に説明を戻し、吸光度差演算部15cは、以上のようにして吸光度演算部15bで求められた、採血管20aの各位置における第1〜第3の吸光度Aabs、Babs、Cabsに基づいて、第1及び第2の光の吸光度差ΔABabsと、第2及び第3の光の吸光度差ΔBCabsとを、採血管20aの各位置において求める。
【0054】
ここで、第1及び第2の光の吸光度差ΔABabsは、第1の光の吸光度Aabs(図6(a)を参照)から第2の光の吸光度Babs(図6(b)を参照)を減算することにより得られる。また、第2及び第3の光の吸光度差ΔBCabsは、第2の光の吸光度Babsから第3の光の吸光度Cabs(図6(c)を参照)を減算することにより得られる。
【0055】
図7は、採血管20aの位置と、第1及び第2の光の吸光度差ΔABabsとの関係、並びに採血管20aの位置と、第2及び第3の光の吸光度差ΔBCabsとの関係の一例を示した図である。
【0056】
まず、第1及び第2の光の吸光度差ΔABabsについて説明する(図7(a))。
前述したように、第1の光の吸光度Aabsは、バーコードラベル40での散乱、空気での散乱、血清30aに含まれている乳びでの散乱、分離剤30bでの散乱、血餅30cでの散乱、及び血清30aに含まれているビリルビンや溶血での吸収の6つの影響を含んだ値となっている。一方、第2の光の吸光度Babsは、バーコードラベル40での散乱、空気での散乱、血清30aに含まれている乳びでの散乱、分離剤30bでの散乱、及び血餅30cでの散乱の5つの影響を含んだ値となっている。
【0057】
これらの影響のうち、バーコードラベル40での散乱、血清30aに含まれている乳びでの散乱、及び分離剤30bでの散乱の3つの影響は、光の波長が長いほど小さくなる。一方、空気での散乱、及び血餅30cでの散乱の2つの影響は、波長によらず一定である。
【0058】
以上のことから、採血管20aの中が空気で満たされている位置401、及び採血管20aの中が血餅30cで満たされている位置406での吸光度差ΔABabsは、第1及び第2の光の吸光度Aabs、Babsがキャンセルされて、略ゼロ(0)になる。
【0059】
一方、その他の位置402〜405では、バーコードラベル40での散乱、血清30aに含まれている乳びでの散乱、及び分離剤30bでの散乱の少なくとも1つの影響を受ける。さらに、位置403では、第1の光は血清30aに含まれているビリルビンや溶血での吸収の影響を受けるが、第2の光はこの影響を殆ど受けない。
【0060】
以上のことから、位置402〜405においては、第1の波長λaを有する第1の光の吸光度Aabsと、第2の波長λbを有する第2の光の吸光度Babsは、波長の違いにより異なる値になる。よって、位置402〜405での吸光度差ΔABabsは、第1及び第2の光の吸光度Aabs、Babsが完全にキャンセルされず、散乱や吸収の程度に応じた値を有する。
【0061】
すなわち、図7(a)に示すように、第1及び第2の光の吸光度差ΔABabsは、位置401、406では略ゼロ(0)となり、位置402では、バーコードラベル40の散乱の影響が残る。また、位置403では、バーコードラベル40での散乱、血清30aに含まれている乳びでの散乱、及び血清30aに含まれているビリルビン及び溶血による吸収の影響が残る。さらに、位置404では、バーコードラベル40での散乱、及び分離剤30bでの散乱の影響が残り、位置405では、分離剤30bでの散乱の影響が残る。
【0062】
このように、第1及び第2の光の吸光度差ΔABabsには、バーコードラベル40での散乱、及び分離剤30bでの散乱の影響が存在する。したがって、第1及び第2の光の吸光度差ΔABabsだけでは、血清30aが存在する位置(血清30aの界面の位置)を特定することは困難である。言い換えると、第1及び第2の光の吸光度差ΔABabsから、バーコードラベル40での散乱の影響と、分離剤30bでの散乱の影響とを取り除くことができれば、血清30aに含まれているビリルビンや溶血での吸収の影響を明確に抽出することができる。
【0063】
そこで、本実施形態では、後述する散乱寄与度演算部15dが、第2及び第3の光の吸光度差ΔBCabsを用いて、第1及び第2の光の吸光度差ΔABabsから、バーコードラベル40での散乱の影響と、分離剤30bでの散乱の影響とを取り除くようにしている。
【0064】
ここで、第2及び第3の光の吸光度差ΔBCabsについて説明する(図7(b))。
前述したように、第2及び第3の光の吸光度Babs、Cabsは、バーコードラベル40での散乱、空気での散乱、血清30aに含まれている乳びでの散乱、分離剤30bでの散乱、及び血餅30cでの散乱の5つの影響を含んだ値となっている。
【0065】
また、これらの影響のうち、空気での散乱、及び血餅30cでの散乱の影響は、波長にあまり依存しない。一方、バーコードラベル40での散乱、血清30aに含まれている乳びでの散乱、及び分離剤30bでの散乱は、波長に依存する。したがって、第2及び第3の光の吸光度差ΔBCabsを求めると、これらの影響のうち、バーコードラベル40での散乱、血清30aに含まれている乳びでの散乱、及び分離剤30bでの散乱の3つの影響が残る。
【0066】
以上のように、第2及び第3の光の吸光度差ΔBCabsは、バーコードラベル40での散乱、血清30aに含まれている乳びでの散乱、及び分離剤30bでの散乱の3つの影響に基づいて定まる。したがって、第1及び第2の光の吸光度差ΔABabsから第2及び第3の光の吸光度差ΔBCabsとの差をとることで、第1及び第2の光の吸光度差ΔABabsから、バーコードラベル40での散乱、血清30aに含まれている乳びでの散乱、及び分離剤30bでの散乱の3つの影響の少なくとも一部を取り除くことができ、血清30aに含まれるビリルビンや溶血での吸収の影響を抽出することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、第1及び第2の光の吸光度差ΔABabsと第2及び第3の光の吸光度差ΔBCabsとの差をとるので、血清30aに含まれている乳びでの散乱による影響も、第1及び第2の光の吸光度差ΔABabsから取り除かれることになるが、本実施形態では、血清30aの界面の位置を求めるようにするので、必ずしも血清30aに含まれている乳びでの散乱による影響を取り除く必要はない。
【0068】
ところで、前述したように、バーコードラベル40での散乱、及び分離剤30bでの散乱の影響は、波長に依存する。したがって、第1及び第2の光の吸光度差ΔABabsと、第2及び第3の光の吸光度差ΔBCabsとの差を単純にとるだけでは、第1及び第2の光の吸光度差ΔABabsから、バーコードラベル40及び分離剤30bでの散乱の影響を完全に取り除くことが困難であり、血清30aに含まれるビリルビンや溶血での吸収の影響を明確に抽出することが困難である。
【0069】
そこで、散乱寄与度演算部15dは、血清30aに含まれるビリルビンや溶血での吸収に基づく吸光度ΔSabsを以下の(2式)を用いて求めるようにする。
ΔSabs=ΔABabs−K×ΔBCabs ・・・(2式)
前記(2式)において、Kは、第1〜第3の波長λa〜λcに基づいて決まる係数である。本実施形態では、散乱寄与度演算部15dは、以下のようにしてこの係数Kを求めるようにしている。
【0070】
まず、バーコードラベル40及び分離剤30bでの散乱の影響が、波長の変化に対して線形に変化すると仮定する。そうすると、第2及び第3の光の吸光度差ΔBCabsは、以下の(3式)のように表すことができる。
ΔBCabs=R×(λb−λc) ・・・(3式)
前記(3式)において、Rは、バーコードラベル40及び分離剤30bでの散乱に基づく吸光度の変化率(上昇率)である。前述したように、本実施形態では、バーコードラベル40での散乱、及び分離剤30bでの散乱の影響が、波長の変化に対して線形に変化すると仮定しているので、この変化率Rは定数となる。
【0071】
そうすると、バーコードラベル40及び分離剤30bでの散乱に基づく、第1及び第2の光の吸光度差ΔABabsの上昇分UPΔABabs(以下、ΔUabsとする)は、変化率Rを用いると、以下の(4式)のように表すことができる。
ΔUabs=R×(λa−λb) ・・・(4式)
そして、前記(3式)と前記(4式)とから、吸光度差の上昇分ΔUabsは、以下の(5式)のように表すことができる。
ΔUabs={(λa−λb)/(λb−λc)}×ΔBCabs ・・・(5式)
【0072】
よって、係数Kは、以下の(6式)のように表すことができる。
K=(λa−λb)/(λb−λc) ・・・(6式)
散乱寄与度演算部15dは、以上のようにして求めた係数Kと、吸光度差演算部15cで求められた、第1及び第2の光の吸光度差ΔABabsと、第2及び第3の光の吸光度差ΔBCabsとを、前記(2式)に代入して、血清30aに含まれるビリルビンや溶血での吸収に基づく吸光度ΔSabsを求める。そして、この吸光度ΔSabsと、採血管20aの位置との関係を表すグラフを作成する(図8を参照)。
【0073】
血清界面位置演算部15eは、散乱寄与度演算部15dで求められた吸光度ΔSabsに基づいて、血清30aの界面の位置H1、H2を求める。この場合、血清界面位置演算部15eは、吸光度ΔSabsに対してしきい値を設け、このしきい値における採血管20aの位置を血清30aの界面の位置としてもよいし、吸光度ΔSabsが立ち上がっている位置を血清30aの界面の位置としてもよい。
【0074】
体積演算部15fは、血清界面位置演算部15eで求められた血清30aの界面の位置H1、H2と、操作装置(ユーザインターフェース)16を用いてオペレータにより入力された採血管20aの内径などを表す情報(いわゆる採血管情報)とに基づいて、血清30aの体積を求める。
【0075】
血清量表示部15gは、体積演算部15fにより求められた血清30aの体積や重さを、モニタである表示装置17に表示する。これにより、オペレータは、血清30aの量を知ることができる。
【0076】
次に、図9のフローチャートを参照しながら、本実施形態の体積計測装置における演算装置15の処理動作の一例について説明する。
まず、ステップS1において、演算装置15は、変数nを1にセットする。
次に、ステップS2において、演算装置15は、投光部11aに対して、第nの光の投光を指示する。そうすると、投光部11aから、第nの光が投光されるとともに、その投光された第nの光が受光部11bで受光される。
【0077】
次に、ステップS3において、採血管位置演算部15aは、駆動装置12に対して、界面検出センサ11の駆動を指示する。
【0078】
次に、ステップS4において、採血管位置演算部15aは、駆動装置12に設けられているパルスモータから発生したパルスの数に基づいて、採血管20aの位置を求める。また、吸光度演算部15bは、受光部11bで受光された第nの光に基づくデジタル信号をA/D変換器14から取得し、取得したデジタル信号と、採血管位置演算部15aで求められた採血管20aの位置とに基づいて、採血管20aの各位置における吸光度Aabs、Babs、Cabsを求める。
【0079】
次に、ステップS5において、採血管位置演算部15aは、駆動装置12に設けられているパルスモータから発生したパルスの数に基づいて、界面検出センサ11が採血管20aの底部に位置しているか否かを判定する。この判定の結果、界面検出センサ11が採血管20aの底部に位置していない場合には、前記第nの光についての投光処理が終了していないので、界面検出センサ11が採血管20aの底部に位置するまでステップS4、S5の処理を繰り返す。
【0080】
このようにして、前記第nの光についての投光処理が終了すると、ステップS6に進み、演算装置15は、駆動装置12に対して界面検出センサ11の駆動停止を指示する。
【0081】
次に、ステップS7において、演算装置15は、変数nが3であるか否かを判定する。この判定の結果、前記変数nが3でない場合には、第1〜第3の光の全てについての投光処理が終了していないので、ステップS8に進み、演算装置15は、変数nに1を加算する。そして、前記第1〜第3の光の全てについての投光処理が終了するまで、ステップS2〜S8の処理を繰り返す。
【0082】
このようにして、前記第1〜第3の光の全てについての投光処理が終了すると、ステップS9に進み、吸光度差演算部15cは、ステップS4で求められた第1〜第3の光の吸光度Aabs、Babs、Cabsを用いて、第1及び第2の光の吸光度差ΔABabsと、第2及び第3の光の吸光度差ΔBCabsとを、採血管20aの各位置において求める。
【0083】
次に、ステップS10において、散乱寄与度演算部15dは、血清30aに含まれるビリルビンや溶血での吸収に基づく吸光度ΔSabsを、前記(2式)〜前記(6式)を用いて求める。
次に、ステップS11において、血清界面位置演算部15eは、血清30aの界面の位置H1、H2を、ステップS10で求められた吸光度ΔSabsを用いて求める。
【0084】
次に、ステップS12において、体積演算部15fは、ステップS11で求められた血清30aの界面の位置H1、H2と、予め求められている採血管20aの内径などの採血管情報とを用いて、血清30aの体積を求める。
最後に、ステップS15において、血清量表示部15gは、ステップS14で求められた血清30aの体積を、モニタである表示装置17に表示する。
【0085】
以上のように、本実施形態では、血清30aに特有の光吸収波長帯域に属する第1の波長λaを有する第1の光と、前記血清30aに特有の光吸収波長帯域に属さない第2及び第3の波長λb、λcを有する第2及び第3の光とを、採血管20aを介して受光部11bに向けて投光する。そして、受光部11bで受光された第1〜第3の光の吸光度Aabs、Babs、Cabsを用いて、第1及び第2の光の吸光度差ΔABabsと、第2及び第3の光の吸光度差ΔBCabsとを求め、求めた第1及び第2の光の吸光度差ΔABabsと、第2及び第3の光の吸光度差ΔBCabsと、第1〜第3の波長λa、λb、λcとから、血清30aに含まれるビリルビンや溶血での吸収に基づく吸光度ΔSabsを求めるようにした。
【0086】
以上のようにすれば、第1及び第2の光の吸光度差ΔABabsから、バーコードラベル40及び分離剤30bでの散乱による影響が除去されるように、第1及び第2の光の吸光度差ΔABabsを補正することができ、血清30aで生じた第1の光の吸収に基づく吸光度(すなわち、吸光度ΔSabs)を明確に求めることができる。したがって、バーコードラベル40が採血管20aの外壁面に貼付されていても、バーコードラベル40の貼付枚数や貼付位置などを意識することなく、血清30aの界面の位置を可及的に正確に求めることができるようになる。
【0087】
また、以上のようにすれば、実際の界面と異なるところに血清が付着している場合であっても、その箇所における吸光度は、血清30aが満たされている箇所における吸光度と顕著に異なることになるので、このような血清に影響を受けることなく、血清30aの界面の位置を求めることができるようになる。
【0088】
なお、本実施形態では、バーコードラベル40での散乱、及び分離剤30bでの散乱の影響が、波長の変化に対して線形に変化すると仮定して、上昇率Rが定数であるとし、血清30aの界面の位置を測定しながら、係数Kを求めるようにしたが、係数Kを予め求めるようにしてもよい。この場合、例えば、検体液30が収容されていない状態で、バーコードラベル40が外壁面に貼付された採血管20aに向けて、第1〜第3の波長λa〜λcを有する第1〜第3の光を投光し、投光した第1〜第3の光を受光した結果に基づいて、分離剤30b及びバーコードラベル40の散乱による影響が除去されるような係数Kを求め、記憶媒体に記憶しておけばよい。
【0089】
また、本実施形態では、採血管20aを固定しておき、界面検出センサ11を採血管20aの管軸方向に駆動させるようにしたが、界面検出センサ11及び採血管20aの少なくとも何れか一方を、採血管20aの管軸方向に駆動させるようにすれば、必ずしも本実施形態のようにしなくてもよい。
【0090】
前述した本実施形態では、採血管20aの上方(ガイド12bの上端)を測定開始位置、採血管20aの下方(ガイド12bの下端)を測定終了位置とし、例えば第1の光についての投光処理終了後に第2の光についての投光処理を行う場合には、界面検出センサ11を採血管20a上方の測定開始位置に一旦戻し、その後採血管20a下方の測定終了位置に向けて界面検出センサ11を移動させるようにしている。また同様に、第2の光についての投光処理終了後に第3の光についての投光処理を行う場合にも界面検出センサ11を採血管20a上方の測定開始位置に一旦戻してから測定を行うようにしている。
【0091】
ここで、第1の光についての投光処理終了後に、界面検出センサ11を採血管20a上方に一旦戻さずに、採血管20a下方から上方に向けて移動させることにより第2の光についての投光処理を行うようにしてもよい。この場合、第3の光についての投光処理時には、界面検出センサ11を採血管20a上方から下方に向けて移動させることにより測定を行うことになる。このようにすれば、界面検出センサ11を採血管20a上方の測定開始位置に一旦戻すという採血管20aの無駄な移動時間を省略することができ、第1〜第3の光についての投光処理を効率よく行うことができる。なお、第1〜第3の光についての各投光処理間においては、界面検出センサ11の駆動を一時停止させるようにするのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施形態を示し、体積計測装置の構成の一例を示した図である。
【図2】本発明の実施形態を示し、検体液に含まれる主要な物質における吸光度と波長との関係の一例を示した図である。
【図3】本発明の実施形態を示し、界面検出センサを採血管の管軸方向に駆動させるための体積計測装置の構成の一例を示した図である。
【図4】本発明の実施形態を示し、演算装置の機能的な構成の一例を示したブロック図である。
【図5】本発明の実施形態を示し、採血管の各位置を示した図である。
【図6】本発明の実施形態を示し、採血管の位置と、第1〜第3の光の吸光度との関係の一例を示した図である。
【図7】本発明の実施形態を示し、採血管の位置と、第1及び第2の光の吸光度差との関係、並びに採血管の位置と、第2及び第3の光の吸光度差との関係の一例を示した図である。
【図8】本発明の実施形態を示し、バーコードラベルでの散乱の影響が除去された第1及び第2の光の吸光度差と、採血管の位置との関係の一例を示した図である。
【図9】本発明の実施形態を示し、体積計測装置における演算装置の処理動作の一例について説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0093】
11 界面検出センサ
11a 投光部
11b 受光部
12 駆動装置
15 演算装置
15a 採血管位置演算部
15b 吸光度演算部
15c 吸光度差演算部
15d 散乱寄与度演算部
15e 血清界面位置演算部
15f 体積演算部
20 容器
30 検体液
30a 血清
30b 分離剤
30c 血餅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に分離した状態で複数種類の液体が収容されている容器の側方から前記容器に対して光を投光する投光手段と、
前記容器を介して前記投光手段と対向する位置に配設され、前記投光手段により投光された光を受光する受光手段と、
前記受光手段により受光された光の強度を表す情報を用いて、前記複数種類の液体における特定の液体の界面を検出する界面検出手段とを有し、
前記投光手段は、前記特定の液体に特有の光吸収波長帯域に属する第1の波長を有する第1の光と、前記特定の液体に特有の光吸収波長帯域に属さない第2及び第3の波長を有する第2及び第3の光とを投光し、
前記界面検出手段は、前記受光手段により受光された前記第1〜第3の光の吸光度を求める吸光度演算手段と、
前記吸光度演算手段により求められた前記第1及び第2の光の吸光度の差と、前記第2及び第3の光の吸光度の差とを求める吸光度差演算手段と、
前記吸光度差演算手段により求められた前記第1及び第2の光の吸光度の差と、前記第2及び第3の光の吸光度の差とを用いて、前記特定の液体における前記第1の光の吸収に基づく吸光度を求める散乱寄与度演算手段とを有し、
前記散乱寄与度演算手段により求められた前記特定の液体における前記第1の光の吸収に基づく吸光度を用いて、前記特定の液体の界面を検出することを特徴とする界面検出装置。
【請求項2】
前記散乱寄与度演算手段は、前記特定の液体における前記第1の光の吸収に基づく吸光度ΔSabsを、以下の式により求めることを特徴とする請求項1に記載の界面検出装置。
ΔSabs=ΔABabs−[(λa−λb)/(λb−λc)]×ΔBCabs
ただし、ΔABabsは前記第1及び第2の光の吸光度の差、ΔBCabsは前記第2及び第3の光の吸光度の差、λaは前記第1の波長、λbは前記第2の波長、λcは前記第3の波長である。
【請求項3】
前記投光手段及び前記受光手段と、前記容器との少なくとも何れか一方を、上下方向に駆動する駆動手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の界面検出装置。
【請求項4】
前記請求項1〜3の何れか1項に記載の界面検出装置と、
前記界面検出装置により検出された前記特定の液体の上下の界面間の間隔と、予め求められた前記容器の寸法とに基づいて、前記特定の液体の体積を求める体積演算手段とを有することを特徴とする体積計測装置。
【請求項5】
上下に分離した状態で複数種類の液体が収容されている容器の側方から前記容器に対して光を投光する投光ステップと、
前記投光ステップにより投光された光を、前記容器を介して受光する受光ステップと、
前記受光ステップにより受光された光の強度を表す情報を用いて、前記複数種類の液体における特定の液体の界面を検出する界面検出ステップとを有し、
前記投光ステップは、前記特定の液体に特有の光吸収波長帯域に属する第1の波長を有する第1の光と、前記特定の液体に特有の光吸収波長帯域に属さない第2及び第3の波長を有する第2及び第3の光とを投光し、
前記界面検出ステップは、前記受光ステップにより受光された前記第1〜第3の光の吸光度を求める吸光度演算ステップと、
前記吸光度演算ステップにより求められた前記第1及び第2の光の吸光度の差と、前記第2及び第3の光の吸光度の差とを求める吸光度差演算ステップと、
前記吸光度差演算ステップにより求められた前記第1及び第2の光の吸光度の差と、前記第2及び第3の光の吸光度の差とを用いて、前記特定の液体における前記第1の光の吸収に基づく吸光度を求める散乱寄与度演算ステップとを有し、
前記散乱寄与度演算ステップにより求められた前記特定の液体における前記第1の光の吸収に基づく吸光度を用いて、前記特定の液体の界面を検出することを特徴とする界面検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−10453(P2006−10453A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186703(P2004−186703)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】