説明

界面活性および反応性末端基によるポリマーの表面改質

まず、物品の製造中にポリマー鎖末端に結合した第1の反応性末端基からなる表面を形成する工程、および、その後、反応性表面を生理活性分子、親水性および疎水性モノマー、オリゴマー、またはポリマーで改質して特定の表面特性を達成する工程を含むポリマー表面改質方法。あるいは、多官能性カップリング剤を使用して、第1の反応基を、生理活性分子、親水性および疎水性モノマー、オリゴマー、およびポリマーと結合した官能基と反応することができる第2の反応性基に結合させ、特定の表面特性を達成することができる。本発明は、ポリマー鎖末端に結合した界面活性スペーサーによって反応性末端基が表面に来るようにすることを含む。界面活性スペーサーによって、製造中に、反応性末端基が表面に移動し、濃縮することが可能となる。本発明は、生体界面を有する医療器具に抗血栓性、潤滑性、選択的吸着性、および抗微生物性を付与する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、まず、物品の製造中にポリマー鎖末端に結合した反応性末端基からなる表面を形成した後、反応性末端基表面を生理活性分子、親水性および疎水性モノマー、オリゴマー、またはポリマーと反応させて特定の表面特性を達成することによって、ポリマー物品の表面特性を改質する方法を提供する。本発明の一実施形態では、多官能性カップリング剤を使用して、第1の反応基を、生理活性分子、親水性および疎水性モノマー、オリゴマー、およびポリマーと結合した官能基と反応することができる第2の反応性基に結合させ、特定の表面特性を達成することができる。本発明のこの方法は、界面活性スペーサーを反応性末端基に結合させて、反応性末端基がポリマー物品の表面に来るようにすることを含む。界面活性スペーサーは、物品の製造中、反応性末端基が表面に移動し濃縮することを促進する。アニーリングおよび溶融加工を含む外部手段を使用して、反応性末端基が表面に移動し濃縮することをさらに促進してもよい。
【0002】
[発明の背景]
基材を生理活性分子および合成ポリマーで表面改質することによって、医療品の有効性および安全性に重要な組織および血液適合性、潤滑性、濡れ性、透過性、抗微生物性などの基材の表面特性を変化させることができる。これらの表面改質方法のうち、特定の性質を有する分子を共有結合させることには、次の利点があることが分かっている。i)この表面改質方法は、表面と改質剤との間に安定な結合が形成されるという点で有利であり、ii)共有結合と局所コーティングでは材料に対する親和性の差が大きく、それによる特性を示すことができる。この方法は、「グラフト」と称されることが多く、通常の展着および固化による表面変化と区別される。
【0003】
その特性を使用することにより前述の利点を有する表面グラフトポリマーを適用するために、様々なグラフト法が提案されてきた。選択すべき2つの方法、即ち、「表面へのグラフト(grafting−to)」(ポリマーを固体表面に結合させること)と「表面開始グラフト重合(grafting−from)」(表面で開始して固体表面からモノマーを重合させること)は区別されることが多い。Prucker et al.,J.Am.Chem.Soc.,1999:121:8766−70を参照されたい。どの方法を使用するかにかかわらず、固体表面は、グラフトモノマーおよびポリマーがアクセスできる領域に反応性部位を有していなければならない。これは、「表面開始グラフト重合」反応の開始部位を提供するために、または官能基を「表面へのグラフト」結合に使用可能な状態にしておくために、グラフトの前に表面を前処理する追加の工程を必要とすることが多い。
【0004】
化学反応の物理的活性化、とりわけ基材表面のポリマーの制御分解による化学反応の物理的活性化が、高エネルギー放射線、例えば、γ線または電子線照射、プラズマ照射、UV照射などを使用することによる多くの異なる方法で試みられてきた。例えば、米国特許第5,094,876号明細書は、ガンマ線または電子線照射誘導化学グラフトを使用してプラスチック表面を改質する方法を記載している。この方法は、基材をモノマーまたはモノマー溶液中に予め浸漬して、前記1種類または複数種類のモノマーが前記プラスチック表面の中に拡散することを容易にする工程を含む。この方法には、予め形成された基材と生成したポリマーとの化学的相互作用がなく、基材へのモノマーの拡散を容易にするために有機溶媒の使用を必要とし、従って、後で有機溶媒を除去するという難点がある。
【0005】
国際公開第01/17575A1号パンフレットは、有機基材上にハイドロゲルをグラフトする放射線法を記載している。これは、基材を開始剤に暴露させて、浸漬されたモノマーをグラフト重合させるための反応性ラジカル部位を表面に生成させ、それによって、基材表面の反応性ラジカル部位でモノマー分子と基材との間に共有結合が形成される工程を含む。この「表面開始グラフト重合」法は、別の表面前処理工程を必要とし、多くのラジカル不活性ポリマー基材に適用できない場合がある。
【0006】
米国特許第7,217,769B2号明細書にプラズマ開始親水性コーティングが開示されたが、ここでは、まずプラズマグラフトにより、基材にN−トリメチルシリル−アリルアミン(TMSAA)、エチレン、プロピレンおよびアリルアルコールなどの二重結合(アルケン)モノマーを堆積させ、それによって、後でα−ヒドロ−ω−ヒドロキシポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)−ビス−(1−ヒドロキシベンゾトリアゾールイルカーボネート)(HPEOC)などの「二官能性スペーサー」を有する親水性分子をプラズマ架橋するための反応性部位を結合させた。この方法は、後で「二官能性」スペーサーとカップリング反応するために、および後で親水性分子とバイオコンジュゲート化するために、第1級または第2級アミンのプラズマ堆積を必要とする。基材への第1級または第2級アミンの「下」塗りの共有結合は確実ではない。
【0007】
高エネルギー照射による励起は選択性が低く、基材表面と表面下の体積中における結合の切断は避けられない。プラズマによる励起は非常に表面に限定されているが、減圧を必要とすることの他に、ベースポリマーのアブレーションが起こる傾向が顕著な場合がある。Ulbricht et al.,J.Appl.Polym.Sci.,1995,56:325。また、直接プラズマ暴露時の高エネルギー遠UV線の寄与により、制御不能な分解が起こる場合がある。Ulbricht,Polymer,2006,47:2217−2262。さらに、放射線への暴露のため、表面の繊細な位相的特徴が損傷を受ける場合がある。
【0008】
後で表面改質するためのアミノ基、アルデヒド基、エポキシド基、カルボキシル基、または他の反応性基などの官能基を有する反応性表面を形成するために、酸化的加水分解および化学酸化エッチングなどの他の表面官能化法も使用されてきた。これらの「表面へのグラフト」の表面処理は、内部特性および表面形態に悪影響を及ぼすおそれがある過酷な条件を必要とする。
【0009】
上記の従来技術は、使用する方法にかかわらず、表面にラジカルを生成するための化学処理または物理的照射活性化のいずれかによる、結合部位を形成するための表面の前処理工程を必要とする。基材材料(例えば、セルロース誘導体、ポリアミドまたはポリスルホンの場合)の反応性側鎖基または末端基への直接結合が報告された。Klein,J.Membr.Sci.,2000,179:1、および、Castilho et al.,J.Membr Sci.,2000,172:269。しかし、表面改質剤が直接アクセスできる表面で使用できる反応性官能基が限られているため、十分な成果がなかった。
【0010】
[発明の概要]
本発明は、反応性結合部位を設けるための前述の表面の湿潤化学的前処理または物理的照射による前処理の欠点のない、ポリマー表面の改質に適用できる方法を提供することによって前述の欠点を克服する。
【0011】
本発明の第1の態様は、まず、物品または基材の製造中に、ポリマー鎖末端または側鎖末端に結合した第1の反応性末端基からなる表面を形成した後、分子、部分、有機金属化合物、金属化合物、生理活性分子、親水性および疎水性モノマー、オリゴマーおよびポリマーで直接改質して特定の表面特性を達成することによる表面改質方法を提供することである。
【0012】
本発明の第2の態様は、任意選択的な多官能性カップリング剤を使用して、第1の反応基を、生理活性分子、親水性および疎水性モノマー、オリゴマー、およびポリマーと結合した官能基と反応することができる第2の反応基に結合させる表面改質方法を提供することである。多官能性カップリング剤は、基材上の官能基と、生理活性分子、モノマー、オリゴマー、およびポリマーの官能基などの2つの異なる分子に任意の手段で結合することができる分子である。多官能性カップリング剤は、好ましくは、結合される基材および改質剤と共有結合、配位結合、またはイオン結合を形成する。
【0013】
本発明の第3の態様は、器具の製造中、反応性末端基に結合した界面活性スペーサーによって反応性末端基が表面に存在する表面を形成する方法を提供することである。
【0014】
本発明の別の態様は、一時的保護基を有する反応性末端基からなる表面を形成する方法を提供することである。好ましい保護基は、保護基が表面の形成時に表面に存在し、選択的に除去することができ、その後、表面に反応性末端基が残り、後で表面改質されるような界面活性を有するものである。
【0015】
本発明のさらに別の態様は、押出、成形、およびアニーリングなどの従来の熱加工を施すことによって反応性末端基の表面濃縮を促進する方法を提供することである。
【0016】
本発明の他の態様は、少なくとも1つの界面活性および反応性末端基を含有するコーティング組成物を使用し、それによって、後で分子、部分、有機金属化合物、金属化合物、生理活性分子、親水性および疎水性モノマー、オリゴマー、およびポリマーを結合させるための反応性末端基を表面に付与する表面改質方法を提供することである。
【0017】
本発明の方法は、ポリマー鎖末端に界面活性スペーサーを結合させて反応性末端基が表面に来るようにすることを含み、界面活性スペーサーは、製造中に、反応性末端基が表面に移動し濃縮することを促進する。製造に熱加工を使用して、反応性末端基の表面濃縮をさらに促進してもよい。熱加工は、押出、成形、およびアニーリングであってもよい。本方法は、医療器具に、抗血栓性、潤滑性、選択的吸着性および抗微生物性などの所望の特性を有する表面を形成するのに有用な可能性がある。
【0018】
本発明による2つの概略的方法は、図1および図2に図示するように示すことができる。図1に図示する方法は、界面活性および反応性末端基による直接的表面改質を含む。図2に図示する方法は、多官能性カプリング剤を使用する表面改質を示す。図1および図2に示す式中、Xは反応性末端基を表し、Qは表面改質分子を表し、Kは分子Qと結合した官能基を表し、YはXと反応する官能基を表し、ZはKと反応する官能基を表す。
【0019】
図1に示す直接的表面改質の実施形態では、本発明の方法は、ポリマー分子の末端基を構成する界面活性スペーサーに結合した第1の反応性末端基を有するポリマー分子から構成されるポリマー体を提供する工程;前記ポリマー体から物品を製造し、前記ポリマー体上の界面活性スペーサーに結合した前記第1の反応性末端基からなる表面を形成する工程;および、前記ポリマー体の表面に、第2の反応性末端基と表面改質部分とを含有する化合物を接触させて、前記第2の反応性末端基を前記第1の反応性末端基と反応させ、それによって表面改質部分をポリマー分子に結合させる共有結合、配位結合、またはイオン結合を形成する工程;を含む。
【0020】
図2に図示する本発明の多官能性カップリング剤の実施形態では、本方法は、ポリマー分子の末端基を構成する界面活性スペーサーに結合した第1の反応性末端基を有するポリマー分子から構成されるポリマー体を提供する工程;前記ポリマー体から物品を製造し、前記ポリマー体の界面活性スペーサーに結合した前記第1の反応性末端基からなる表面を形成する工程;前記ポリマー体の表面に、第3および第4の反応性末端基を含有する化合物を接触させて、前記第3の反応性末端基を前記第1の反応性末端基と反応させ、それによって第4の反応性末端基をポリマー分子に結合させる共有結合またはイオン結合を形成する工程;および前記ポリマー体の表面に、第2の反応性末端基と表面改質部分とを含有する化合物を接触させて、前記第2の反応性末端基を前記第4の反応性末端基と反応させ、それによって表面改質部分をポリマー分子に結合させる共有結合、配位結合、またはイオン結合を形成する工程を含む。
【0021】
本願における「第1の反応性末端基」、「第2の反応性末端基」、「第3の反応性末端基」、および「第4の反応性末端基」の名称は、本願で請求される方法の説明のためだけに使用され、図1および図2に明確に示すように、反応性末端基は互いに異なる役割を果たす。通常の名称は、本願で開示され請求される方法における様々な種類の反応性末端基の機能を区別するために使用していることを除いて重要ではない。
【0022】
前述の「第1の反応性末端基」は、通常、ポリマー鎖末端の一部として界面活性スペーサーに結合しており、物品の製造中に、反応性末端基が自然に物品の表面に来るようになっている。鎖末端は、線状ポリマー鎖末端、側鎖末端、多分岐(hyperbranched)鎖末端、デンドリマー鎖末端、および網状ポリマー鎖末端からなる群から選択されてもよい。
【0023】
本発明に使用可能な製造方法としては、熱成形および溶媒を使用する加工が挙げられるが、これらに限定されるものではない。熱加工は、界面活性または反応性末端基を含有するポリマーの表面特性が二次加工品に付与されるような、押出、成形、注型、または、共押出およびベースポリマー上へのオーバーモールディングを含む多層加工であってもよい。
【0024】
物品の製造中、反応性末端基の官能性および反応性が維持されるように、本発明による加工中、反応性末端基を保護基で保護してもよい。表面の形成後、脱保護反応により反応性末端基を元に戻してもよい。
【0025】
本発明の方法によれば、反応性末端基は、ビニル基、アルコキシシラン、シラン、エポキシ基、酸無水物、第1級アミノ基、第2級アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、ケトン基、アジド基、ジエン、アミド基、イソチオシアネート基、イソシアネート基、ハロゲン基、マレイミド、ヒドロキシスクシンイミドエステル、ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、イミドエステル、ヒドラジン、アジリジン、シアノ基、およびアルキンからなる群から選択されてもよい。反応性末端基は、通常、押出、射出成形、またはアニーリングによって器具または基材を製造するのに使用される加工条件に対して安定であるように選択される。
【0026】
本発明の文脈における界面活性および反応性末端基は、ポリマー体とその環境との界面で、表面と直接接触している環境に応じて選択的分配を示す界面活性種を含む。界面活性基は、シリコーン、置換または非置換アルキル鎖、飽和または不飽和アルキル鎖、ポリエーテル、フッ素化アルキル鎖、およびフッ素化ポリエーテルからなる群から選択されてもよい。表面改質部分は、モノマー、オリゴマー、ポリマー、有機金属分子、金属化合物、および生理活性分子、例えば、キトサン、ヘパリン、ヒアルロン酸およびその誘導体、抗微生物剤、抗生剤、抗血栓剤、ペプチド、タンパク質、ポリペプチド、ポリ(アミノ酸)、炭水化物、造影剤、薬物、グリコサミノグリカン、および潤滑性物質からなる群から選択されてもよい。
【0027】
本方法のポリマー基材は、固体合成ポリマー、固体天然ポリマーおよびハイドロゲルからなる群から選択されてもよい。本明細書に開示される新規な方法により表面改質され得るポリマーの種類としては、ポリオレフィン、シリコーン、アクリルポリマーおよびコポリマー、メタクリルポリマーおよびコポリマー、フルオロポリマー、ビニルポリマーおよびコポリマー、ポリウレタン、ポリウレタン尿素、ポリエステルウレタン、シリコーンポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリエステル、エポキシポリマー、ポリイミド、ポリエステルアミド、ポリエーテルアミド、およびシリコーンハイドロゲルが挙げられる。
【0028】
事実上、どのような種類のポリマー物品も本発明の方法により表面改質することができる。好ましい実施形態では、物品は、医療用チューブ、輸液バッグおよび静脈内カテーテル、眼科用器具、血液ろ過器具、心血管用器具、バイオセンサー、整形外科用インプラント、および補綴物からなる群から選択される医療器具である。
【0029】
最後に、本発明は、2種類の新規なポリマー分子も提供する。一方は、図1に示すように、第2の反応性末端基と表面改質部分とを含有する化合物の「第2の」反応性末端基と、ポリマー分子の末端基を構成する界面活性スペーサーに結合している「第1の」反応性末端基との反応生成物を含む分子結合によって表面改質部分が結合しているポリマー分子である。他方の新規なポリマー分子には、図2に示すように、第2の反応性末端基と表面改質部分とを含有する化合物の第2の反応性末端基と第3および第4の反応性末端基を含有する化合物の第4の反応性末端基との反応生成物と、第3および第4の反応性末端基を含有する化合物の第3の反応性化合物と前記ポリマー分子の末端基を構成する界面活性スペーサーに結合している「第1の」反応性末端基との反応生成物の両方を含む分子結合によって表面改質部分が結合している。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による、界面活性および反応性末端基によるポリマーの直接的表面改質を示す図である。
【図2】本発明による、多官能性カップリング剤を使用するポリマーの表面改質を示す図である。
【図3】本発明による、物品の製造後の官能基からの保護基の切断を示す図である。
【図4】本発明に従って、エポキシ基をポリアミンと反応させ、アルデヒド官能性ヘパリンを固定化するためのプラットフォームの役割をするアミンリッチな表面を形成することを示す図である。
【図5】11−(9−デセニルジメチルシリル)ウンデカン−1−オールの合成を示す図である。
【図6】11−(トリアリルシリル)ウンデカン−1−オールの合成を示す図である。
【図7】反応性メタクリレート末端基からなる表面を有する本発明のポリマーを示す図である。
【図8】本発明の重合後表面改質ポリマーを示す図である。
【0031】
[発明の詳細な説明]
本発明は、以下に限定されるものではないが、シリコーン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリエーテルエステル、ポリエステル、ポリイミド、ポリイソブチレン、およびこれらのコポリマーを含む様々なポリマー基材に適用可能であり、それらを使用して医療器具および関連する生物作用(bio−affecting)材料を製造することができる。本発明により、カップリング剤を使用してまたは使用することなく、このような器具を表面の反応性末端基により表面改質し、それによって、改善された潤滑性、改善された生体適合性、および特定の表面機能性、例えば、親和療法(affinity therapy)では生体分子の選択的吸着、コンタクトレンズでは涙液の保持およびタンパク質吸着の防止、バイオセンサーおよび血液ろ過用途では改善された選択透過性、および抗微生物表面などの変更された表面特性を器具に付与することができる。
【0032】
このようにして、本発明により、生体分子、モノマー、オリゴマー、ポリマーおよびコポリマーをポリマー基材に結合させて、親水性、潤滑性、生体適合性、および後で表面改質をするための下塗剤の役割をする能力を含む様々な機能を表面に付与することができるが、これらに限定されるものではない。本発明は、さらに、不活性なまたは接着し難い表面の表面改質方法を提供し、器具の内面と外面の両方に適用することができ、比較的簡便で安価である。
【0033】
本発明に従って、まず、界面活性および反応性末端基を有するポリマーを合成する。反応性末端基をポリマー鎖末端または側鎖末端の一部として界面活性スペーサーに結合させ、医療器具の製造中に、反応性末端基が界面活性スペーサーと共に表面に自然に移動し、その後の改質に使用可能な反応性末端基からなる表面を形成するようにする。反応性官能基は、界面活性スペーサーの一部であってもよく、または界面活性スペーサーの末端もしくは側部に複数もしくは1つ結合してもよい。反応性末端基は、好ましくは界面活性スペーサーの末端に結合する。
【0034】
自己集合表面を構成するのに、様々な界面活性スペーサーが使用されてきた。このような用途に用いられる化学物質の例は、Asemblon(商標)から入手可能である。当業者には、これらの自己集合分子をさらに修飾して、後で表面改質するのに適した反応性官能基を結合できることが分かる。
【0035】
他の界面活性基としては、シリコーン、置換または非置換アルキル鎖、飽和または不飽和アルキル鎖、ポリオキシアルキレン−ポリシロキサン、ポリエーテル、フッ素化アルキル、フッ素化ポリエーテル、および、国際公開第2007/142683A2号パンフレットに記載されている他の界面活性種を挙げることができる。このような界面活性基の具体例としては、米国特許第6,492,445B2号明細書に開示されているような四級アンモニウム分子が挙げられる。四級アンモニウム部分は次式:
【化1】



[式中、R、RおよびRは、炭素数1〜18の直鎖または分岐鎖または環状アルキル基またはアリール基のラジカルであり、Rは、ベースポリマーに共有結合できるアミノ基、ヒドロキシル基、イソシアナト基、ビニル基、カルボキシル基、または他の反応性基を末端に有するアルキル鎖である]を有してもよい。固定化された有機殺生物剤の永続的性質のため、このようにして調製されたポリマーは、低分子量殺生物剤を環境に放出せず、持続性の抗微生物活性を有する。あるいは、界面活性末端基は、場合によっては、鎖長の異なる、典型的には8〜24単位の自己集合ポリアルキレンスペーサーを介してポリマー主鎖に結合したアミノ基、イソシアナト基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボキシアルデヒド基、またはアルコキシカルボニル基であってもよい。幾つかの特定の実施形態では、界面活性末端基は、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、メルカプト、アジド、ビニル、ブロモ、(メタ)アクリレート、−O(CHCHO)H、−(CHCHO)H、−O(CHCHO)H、−O(CHCHO)CHCOOH、−O(CHCHO)CH、−(CHCHO)CH、−O(CHCHO)CH、トリフルオロアセトアミド、トリフルオロアセトキシ、および2’,2’,2’−トリフルオロエトキシからなる群から選択される部分を含有してもよい。
【0036】
二官能性フッ素化ポリエーテルの例は、ソルベイソレクシス(Solvay Solexis)から入手可能であり、一般構造:X−CF2−O−(CF2−CF2−O)p−(CF2O)q−CF2−Xを有する。具体例としては次のものがある。
フォンブリン(FOMBLIN)Z DOL 2000、2500、4000、X=−CHOH
フォンブリンZ DOL TX、X=−CH(O−CH−CHOH
フォンブリンZ TETRAOL、X=−CHOCHCH(OH)CHOH
フォンブリンAM 2001、AM 3001、X=−CHO−CH−ピペロニル
【0037】
二官能性シリコーン(HOCHCHCHOCHCHCH−[Si(OCHの例は、ゲレスト(Gelest)、信越(Shin−Etsu)から入手可能である。(HNCHCHCHOCHCHCH−[Si(OCH、(HNCHCHCH−[Si(OCHなどの他のアミン官能性シリコーン液もワッカー(Wacker)およびゲレストから入手可能である。
【0038】
二官能性アルキルの例としては、1,12−ドデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,18−オクタデカンジオールを挙げることができる。
【0039】
ジカルボン酸官能性アルキルの例としては、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸を挙げることができる。
【0040】
ジアミン官能性アルキルの例としては、1,12−ドデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミンを挙げることができる。
【0041】
表面に結合する表面改質剤と結合した官能基に応じて、表面改質剤と結合した官能基と反応できる対応する反応性末端基を用いて、様々な界面活性および反応性末端基を有するポリマーを調製することができる。表面改質剤は、目的の用途に望ましい特定の性質を有する化学成分である。反応性基は、表面改質剤と結合して、化学結合部位を形成することが多い。
【0042】
反応性末端基の反応.1対の対応する反応性基は、酸化還元、縮合反応、付加反応、置換反応、カチオンもしくはアニオン開環反応、ディールスアルダー反応、またはヘテロ−ディールスアルダー反応などの既知のカップリング反応条件下で共有結合を形成できることが当該技術分野で周知である。例えば、ビニル基はシラン基とカルステッド(Karstedt)触媒、ウィルキンソン(Wilkinson’s)触媒などの触媒の存在下で反応して安定なSi−C結合を形成する;アミノ基はアルデヒド基と反応してシッフ塩基を形成し、これをさらに還元して安定なN−C結合を形成することができる;アミノ基は酸塩化物または酸無水物と反応してアミド結合を形成する;アミノ基はイソシアネート基と反応して尿素結合を形成する;アミノ基はエポキシドと反応してN−C結合を形成する;ヒドロキシルはイソシアネートと反応してウレタン結合を形成する。
【0043】
反応性基の例としては、ビニル基、シラン、アルコキシシラン、エポキシ基、酸無水物基、アミン基、アミド基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、イソチオシアネート、ハロゲン基、塩化アクリル、アクリレート、メタクリレート、アルデヒド、カルボン酸、マレイミド、ヒドロキシスクシンイミドエステル、ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、イミドエステル、ヒドラジン、アジド、アルキン、ジエン、シアノ、ケトン、チオール、またはアジリジンを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
好ましくは、反応性基は、ビニル基、アルコキシシラン、エポキシ基、酸無水物、第1級アミノ基、第2級アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、アミド基、イソチオシアネート基、イソシアネート基、ハロゲン基、アルキン基、ジエン、ケトン、またはアジリジンからなる群から選択される。より好ましくは、選択される反応性基は、器具の製造に使用される加工条件に対して安定であり、さらにより好ましくは、反応性基は、押出、射出成形などの熱加工条件下で安定である。
【0045】
結合.反応性末端基と、表面改質剤と結合した官能基との対の間で形成される例示的な共有結合としては、Si−C結合、Si−O−Si結合、ウレタン、尿素、カルバメート、アミン、アミド、イミン、エナミン、オキシム、アミジン、イミノエステル、カーボネート、C−C結合、エーテル、エステル、アセタール、スルホネート、スルフィド、スルフィネート、スルフィド、ジスルフィド、スルフィンアミド、スルホンアミド、チオエステル、チオカーボネート、チオカルバメート、ホスホンアミド、および複素環を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
当業者には、器具の製造中または表面の形成中、熱や溶媒に曝される時、または他の成分と接触する時、反応性末端基が保護されるように、保護基を使用して反応性末端基を一時的にマスクすることが分かるであろう。形成された表面の物理的および形態学的特性を付与することなく、後で既知の化学により穏やかな条件下で保護基を除去することができる。より好ましくは、保護基は高い界面活性を有するものであり、さらにより好ましくは、表面における反応性末端基の濃度が最大になるように自己集合能力を有するものである。アミノ基、ヒドロキシル基、カルボニル基、チオール基、カルボキシル基、アルキン基などの多くの反応性官能基に関するこのような保護および脱保護化学は、当業者に既知である。例えば、ヒドロキシル基は、メチルエーテル、アリルおよびベンジルエーテル、トリフェニルメチルエーテル、酸素置換エーテル、およびシリルエーテルなどのエーテル結合を形成することによって保護することができる。それは、酢酸エステルなどのエステル結合を形成することによって保護することもできる。アルデヒドおよびケトンは、アセタール、チオアセタール、エノールエーテル、エナミンを生成することによって保護することができる。フェノールは、メチルトルエン−p−スルホネートを使用してメチルエーテルを生成することによって保護することができる。ヒドロキシル基は、加水分解などの既知の化学により保護することができる。カルボン酸基は、オルトエステルなどのエステルを生成することによって保護することができる。カルボン酸は、加水分解反応で元に戻すことができる。アミン基は、イミン、エナミン、アミド、カルバメートを生成することによって保護することができる。チオールは、チオエーテル、アセタール誘導体、およびチオエステルを生成することによって保護することができる。アルケン、ジエン、およびアルキンなどの他の反応性基も、確立された条件下で選択的に切断できる化学結合を形成することによって保護することができる。
【0047】
このようにして、このような一時的結合を形成するのに、反応性末端基に応じて様々な保護試薬を使用することができる。テキスト「ACTIVATING AGENTS AND PROTECTING GROUPS,HANDBOOK OF REAGENTS FOR ORGANIC SYNTHESIS」(Pearsonら編、Wiley出版、1999年6月、ISBN−10:0471979279、ISBN−13:978−0471979272に記載されているものなどの十分に確立された参考資料から有効な保護基および脱保護法を選択することができる。末端基が表面に移動することをさらに容易にするために、保護基は好ましくは界面活性である。これは、界面活性部分を有する保護試薬を選択すること、または界面活性基で保護剤を修飾することによって達成することができる。
【0048】
例えば、トリフルオロアセトアミド(TFA)は、一般に、有機合成において第1級アミンを保護するのに使用され、メチルエステルの存在下で穏やかに加水分解することによって切断することができる。
【化2】



【0049】
TFAは、また、空気に曝されたとき、高い界面活性を有し、さらに、表面の形成中に、表面にアミン末端基を濃縮することを助けることもできる。
シリルエーテルは、ヒドロキシル基に最もよく使用される保護基の1つであり、その反応性および安定性は、ケイ素に結合する置換基の性質を変えることによって調整することができる。アルコールを保護するのに使用される周知のシリルエーテル保護基の1つは、トリメチルシリルエーテルである。例えば、脂肪族ジオールのヒドロキシル基の1つを選択的に保護することができ、精製された生成物を一官能性末端基としてポリウレタン合成に使用することができる。
【化3】



【0050】
界面自由エネルギーを最小限にする際の移動性および界面活性が特に大きいため、末端基は、表面に移動し、表面に濃縮することが動力学的におよび熱力学的に有利であり、さらには、TMS基が最外層を形成する集合パターンを形成する。脱保護剤で処理する時、ヒドロキシル基を、後で行う官能性および生理活性分子を用いた表面改質に使用できるようにすることができる。t−ブチルジメチルシリルエーテル(TBDMSエーテル)は、化学合成によく使用されるシリル保護基の別の例であり、様々な条件下で導入し、他の官能基または化学結合を攻撃しない条件下で容易に除去することができる。
【化4】



嵩高いTBDMS基は、また、空気に曝されたとき、界面活性であってもよく、従って、切断後、表面にヒドロキシル基が自己濃縮することを容易にすることができる。
【0051】
当業者には、多官能性カップリング剤を使用して、表面改質剤が表面の反応性末端基に結合することを容易にすることができることが分かる。多官能性カップリング剤は、3つ以上の官能基を有する分子として記載され、そのそれぞれが表面の反応性末端基および表面改質剤と結合した官能基と反応する。カップリング剤の官能基は、同じであってもまたは異なってもよい。多官能性カップリング剤は、基材表面の反応性基、および、生理活性分子、モノマー、オリゴマー、およびポリマーを含む表面改質剤の官能基などの2つの異なる分子に任意の手段で結合することができる。多官能性カップリング剤は、結合される基材および分子と、好ましくは、共有結合、配位結合、またはイオン結合を形成する。
【0052】
様々な多官能性カップリング剤は市販されている、または合成することができる。例えば、分岐鎖ポリエチレンアミンはシグマアルドリッチ(Sigma Aldrich)から市販されており、それを使用して表面のアルデヒド基と、ヘパリンと結合したアルデヒド基とを結合することができる。ゲレストから入手可能なエポキシシランを使用して、表面のビニル基と、アミノ酸および他の生体分子と結合したアミン基とを結合することができる。カルボジイミドを使用してカルボキシルとアミンを結合し、結合される分子間にアミド結合を形成することができる。カルボジイミドの例としては、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、またはこれらの混合物が挙げられる。グルタルアルデヒドなどの二官能性アルデヒドを使用して、ペプチドやタンパク質をアミン表面に固定化することができる。
【0053】
当業者には、様々な医療器具に本方法を適用して特定の表面特性を達成できることが分かる。医療用途に重要な特性としては、潤滑性、濡れ性、抗微生物性、抗血栓性、タンパク質接着における抵抗性を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。例えば、ヘパリン結合表面は、改善された抗血栓性を有することが分かっており、尿道フォーリー(Foley)カテーテルの表面が潤滑性を有すると、患者の不快感を低減するのに有利であり、また、整形外科用インプラントの表面が潤滑性を有すると、磨耗が低減し、器具の寿命が長くなる可能性がある。濡れ性の改善されたコンタクトレンズは、視力の維持ならびに角膜の健康に不可欠である。また、診断器具およびセンサを表面改質し、分離効率を改善するのに有用な可能性がある。
【0054】
本発明は、このようにして、ポリマー体から構成される医療器具または補綴物を提供し、ここで、ポリマー体は、前記ポリマー体の内部にある複数のポリマー分子を含み、その内部ポリマー分子の少なくとも幾つかは、末端基がポリマー体の表面を構成する表面改質剤と共有結合している。ポリマー体としては、埋込型の医療器具もしくは補綴物に、または非埋込型の使い捨てもしくは体外用医療器具もしくは診断製品の、高密度の、微孔質の、またはマクロ孔質の部材を挙げることができる。例えば、一実施形態では、ポリマー体は、診断器具の免疫反応物質を含有する膜部材またはコーティングを含んでもよい。本発明は、特に、埋込型の医療器具もしくは補綴物として、または非埋込型の使い捨てもしくは体外用医療器具もしくは補綴物として、または、生体外もしくは生体内診断器具として構成されるこのような物品を提供するように適応され、ここで、器具または補綴物は、組織、流体、および/または血液に接触する表面を有する。本発明の物品が送達器具、即ち、薬物、成長因子、細胞、微生物、島(islets)、骨形成材料、新生血管誘導部分を送達する器具である場合、活性剤を界面活性および反応性末端基に錯化させ、拡散により放出してもよく、または、活性剤を、ゆっくりと分解し経時的に薬物を放出するように選択される界面活性および反応性末端基に錯化または結合させてもよい。
【0055】
このようにして、当業者には、本発明により、改善された血液ガスセンサー、組成センサー、コンビナトリアルケミストリー用の基材、カスタマイズ可能な活性バイオチップ、即ち、遺伝子、遺伝子組み換えおよびタンパク質の識別およびその機能の決定、DNA合成/診断、薬物発見および免疫化学的検出を含む用途に使用される半導体をベースにする装置、グルコースセンサー、pHセンサー、血圧センサー、血管カテーテル、補助人工心臓、人工心臓弁、人工心臓、血管用ステントおよびステントコーティング(例えば、冠動脈、大動脈、大静脈、および末梢血管循環に使用されるもの)、人工椎間板、人工脊髄核、脊椎固定器具、人工関節、軟骨修復材、人工腱、人工靭帯、送達器具(分子、薬物、細胞、または組織を経時的に放出するもの)、送達器具(分子、薬物、細胞、または組織がポリマー末端基に永久的に固定されるもの)、カテーテルバルーン、手袋、創傷ドレッシング、採血器具、血液処理器具、血漿ろ過器、血漿ろ過カテーテルおよび膜、骨または組織の固定または再生用器具、尿管ステント、尿道カテーテル、コンタクトレンズ、眼内レンズ、目薬送達器具、男性用および女性用コンドーム、ヒトの不妊症を治療するための器具および採取装置、ペースメーカーリードの絶縁チューブおよび他の部材ならびに他の電気刺激リードおよび部材(埋込型除細動器リード、神経刺激リードなど)、細胞、組織または器官の成長/再生または組織工学用の足場、漏洩検出能を有するもしくは有していない補綴用もしくは美容整形用の乳房または胸部もしくは臀部もしくは陰茎インプラント、失禁用具、酸逆流疾患を治療するための器具、肥満を治療するための器具、腹腔鏡、血管または器官閉塞器具、神経血管ステントおよび閉塞器具および関連する留置部材、骨プラグ(bone plugs)、移植組織を含有するハイブリッド人工器官、生体外または生体内細胞培養器具、血液ろ過器、血液回路、ローラーポンプ用チューブ、心臓計測用リザーバ、酸素供給器用膜、透析膜、人工肺、人工肝臓、または、血液、血球、血漿、もしくは他の流体を精製もしくは分離するためのカラム充填吸着剤もしくはキレート剤が提供されることが分かるであろう。このような物品は全て、従来の手段で製造することができ、それらの表面は、本明細書に記載のポリマーを特徴付ける界面活性および反応性末端基により改質される。
【0056】
[実施例]
以下の非限定的実施例により本発明をさらに説明する。
【0057】
実施例1.エンドキャップ剤として界面活性および反応性ジアミンを使用し、二段法で末端にアミンを有する末端基を有するポリウレタンを調製することができる:I)まず、DMA溶液中でMDIなどのジイソシアネート、PTMO、PEOなどのポリオールおよびポリカーボネートジオール、シリコーンジオールなどのポリオール、および、ブタンジオール、エチレンジアミン、エタノールアミンおよび他の短鎖ジアミン、ジオールおよびアミノアルコールなどの連鎖延長剤から、末端にイソシアネートを有するポリウレタンを調製した。ポリウレタン鎖末端がイソシアネート基で停止されるように、NCO/Hの化学量論比を1より大きく保った、II)次いで、過剰量の界面活性および反応性ジアミンを反応混合物に添加して、一方の部位のこれらの末端基が共有結合できるようにし、他方のアミン基は後で表面改質をするために残しておいた。このようにして調製されたポリマーをコーティングとして使用してもよく、または、沈殿および乾燥させて、押出や成形などの熱加工に供してもよい。次式に示すように、界面活性アルキル鎖のため、結合したアミン基は、加工中に、コーティング、押出チューブまたは射出成形部品の表面に移動し、表面に濃縮または更には自己集合し、それらを後でヘパリンを結合または固定化するのに使用することができる。
【化5】



【0058】
あるいは、一端がN−t−ブトキシカルボニルで保護されたジアミンを調製し、ポリウレタンの合成に使用することができる。物品の製造後に、表面に濃縮したこれらの保護基を、選択された脱保護剤で好適な条件下で切断することができる。図3参照。
【0059】
このようにして調製されたポリマーは、保護されたアミン末端基が表面に濃縮した器具を製造するのに使用することができる。図3に示すように、環境に優しい条件下でリン酸水溶液などの穏やかな試薬を使用して、tert−ブチルカルバメートを有効に且つ選択的に脱保護し、アミン基は後でヘパリンを結合または固定化するために残しておくことができる。
【0060】
実施例2.まず、10−ウンデセン−1−オール末端基を有するポリウレタンを調製した。樹脂から、表面にビニル末端基が濃縮したチューブを押し出した後、それをエポキシシランカップリング剤と反応させ、エポキシドが多量に存在する表面を形成したが、エポキシド官能性表面は、PVP、PEO、PVA、PMA、高分子電解質、および、エポキシドと反応して湿潤潤滑性を付与する官能基を有する他の生体分子などの親水性分子を固定化するためのプラットフォームの役割をすることができる。また、多官能性親水性分子を使用して表面に所望の特性を固定化することもできる。表面改質剤の浸透/拡散のため、下にある反応性末端基との反応が起こる場合もあり、下にあるこれらの末端基は、必要とする表面に補給するためのリザーバの役割をすることになる。あるいは、図4に示すように、エポキシ基はポリアミンと反応してアミンリッチな表面を形成することができ、それは、市販のアルデヒド官能性ヘパリンなどの生体分子を固定化するためのプラットフォームの役割をすることができる。
【0061】
他の界面活性不飽和アルキルアミンおよびアルコールとしては、オレイルアミンCH(CHCH=CH(CHNH、オレイルアルコールCH(CHCH=CH(CHCHOH(CAS#143−28−2)、パルミトレイルアルコールCH(CHCH=CH(CHOH、エライジルアルコールCH(CHCH=CH(CHOH、エルシルアルコールCH(CHCH=CH(CH12OH、リノレイルアルコール、および、次のような、末端にヒドロキシルを有する不飽和ポリブタジエン樹脂、
【化6】



例えば、サートマー・カンパニー・インコーポレイテッド(米国、ペンシルバニア州エクストン)(Sartomer Company,Inc.(Exton,Pennsylvania,USA))から(例えば、KRASOL樹脂として)入手可能なものが挙げられる。
【0062】
これらの反応性末端基は、特定の分子をバイオコンジュゲート化または固定化するためのC=C結合部位を有する界面活性末端基としてポリウレタンに組み込むことができる。これらのヒドロキシル官能性界面活性および反応性末端基を使用して、MDIなどのジイソシアネート、PTMO、PEO、およびポリカーボネートジオール、シリコーンジオールなどのポリオール、および、ブタンジオール、エチレンジアミン、エタノールアミンおよび他の短鎖ジアミン、ジオールおよびアミノアルコールを含む連鎖延長剤から熱可塑性ポリウレタンを調製することができる。下記に示すように、このようにして押出チューブまたは射出成形部品の表面に界面活性不飽和アルキル末端基が濃縮または更には自己集合することになり、C=Cは後で結合または固定化するのに使用することができる。
【化7】



【0063】
実施例3.ヒドロキシル官能性界面活性および反応性末端基キャップ剤を最適化し、界面活性および反応性末端基としてポリウレタンに組み込むことができる。このような化合物の例は、11−(9−デセニルジメチルシリル)ウンデカン−1−オールおよび11−(トリアリルシリル)ウンデカン−1−オールおよび11−(トリアリルシリル)ウンデカン−1−オールである。分子の合成を下記に記載する:
【0064】
11−(9−デセニルジメチルシリル)ウンデカン−1−オールの合成
図5に示すように、標記化合物を合成した。10−ウンデカン−1−オール(85g、0.5mol)およびp−トルエンスルホン酸一水和物(0.38g、2mmol)をジクロロメタン(150mL)に溶解し、窒素下にて氷/水浴中で冷却した。次いで、この溶液に、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(50.4g、0.6mol)を1時間にわたって滴下した。添加後、溶液を氷/水浴中でさらに2時間撹拌すると、紫色に変化した。次いで、溶液をヘキサン(300mL)で希釈し、炭酸水素ナトリウム水溶液(150mL×2)で洗浄し、MgSO4で乾燥した。ロータリーエバポレータで溶媒を留去した後、残留する薄茶色の油状物質を減圧下で蒸留し、75〜79℃(300mTorr)での留出物を捕集し、THPで保護された10−ウンデカン−1−オール(1)を無色の油状物質(113g、89%)として得た。化合物1(6.35g、25mmol)にカルステッド触媒(キシレン中2.1%のPt、22mg)を添加した後、この混合物を、氷/水浴で冷却した1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(6.7g、50mmol)のヘキサン溶液に30分にわたって滴下した。添加後、混合物を氷/水浴中でさらに3時間撹拌した。次いで、溶媒と過剰の1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを減圧下で除去して、粗中間化合物2を薄茶色の油状物質として得、次いで、1,9−デカジエン(5.2g、37.6mmol)をヘキサン(5mL)に溶解した溶液に粗中間化合物2を室温で30分にわたって滴下した。添加後、混合物を室温でさらに2時間撹拌した後、揮発性物質を減圧下で除去し、残留する粗中間化合物3を薄茶色の油状物質として得た。次いで、この茶色の油状物質にメタノール(50mL)およびp−トルエンスルホン酸一水和物(0.2g)を添加し、この混合物を室温で終夜撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去した後、残留する茶色の油状物質をシリカゲルで溶離液としてヘキサン/酢酸エチル(85/15、v/v)を使用して精製し、11−(9−デセニルジメチルシリル)ウンデカン−1−オール2.8gを無色の油状物質として得た(26.3%、3以上の段階)。1H NMRδ5.75−5.90(m,1H),4.90−5.05(m,2H),3.60−3.68(t,2H),2.00−2.10(m,2H),1.50−1.62(m,2H),1.20−1.45(br,28H),0.45−0.55(m,4H),0.02(s,12H).
【0065】
11−(トリアリルシリル)ウンデカン−1−オールの合成
図6に示すように、標記化合物を合成した。化合物1(7.62g、30mmol)、トリクロロシラン(32.4g、0.24mol)、およびカルステッド触媒(キシレン中2.1%のPt、54mg)を窒素下で500mLのシュレンクに仕込んだ後、この混合物を室温で60時間撹拌した。次いで、過剰のトリクロロシランを減圧下で除去し、フラスコに窒素を再充填した。窒素パージ下で、フラスコに無水THF(200mL)および顆粒マグネシウム(15g、0.625mol)を添加した後、フラスコを氷/水浴中で冷却した。次いで、臭化アリル(66g、0.54mol)を5時間にわたってゆっくりと添加した。添加後、混合物を室温で終夜撹拌した。次いで、蒸留水(250mL)を添加して反応を急冷した。水層をヘキサン(100mL×3)で抽出し、油層を合わせてMgSOで乾燥させ、濃縮して薄茶色の油状物質を得、これをシリカゲルでヘキサン/酢酸エチル(85/15、v/v)を使用して精製し、11−(トリアリルシリル)ウンデカン−1−オールを無色の油状物質として得た(2.2g、22.8%、3以上の段階)。1H NMRδ5.7−5.9(m,3H),4.80−4.95(m,6H),3.60−3.68(t,2H),1.50−1.65(m,8H),1.20−1.40(br,16H),0.50−0.65(t,2H).
【0066】
ビニル置換官能性シリコーンの別の例は、
【化8】



である。
【0067】
前述の界面活性および反応性ビニル末端基を有するポリウレタンは、次のように合成することができ、1番目の式は一官能性反応性末端基を示し、2番目の式は多官能性反応性末端基を示す。
【化9】



上記に示す多官能性反応性末端基を有するポリウレタンは、次のように合成した:溶融したMDIに、ポリカーボネートジオールおよび11−(トリアリルシリル)ウンデカン−1−オールを添加し、反応を70℃で2時間撹拌した。次いで、プレポリマーをブタンジオールで鎖延長した。ポリマーの5重量%THF溶液をスライドガラスに滴下した後、THFをゆっくりと蒸発させることによってポリマーフィルムを調製した。比較として、表面改質末端基を有していないポリウレタンのポリマーフィルムを同じ条件下で調製した。表面改質末端基(11−(トリアリルシリル)ウンデカン−1−オール)を有するまたは有していないPUのフィルムを1組、2−アミノチオエタノール0.6gおよびAIBN0.2gを25mLの丸底フラスコ内のエタノール10mLに溶解した溶液に浸漬した。次いで、30分間窒素通気することによって、系を脱酸素化した。次いで、フラスコを一晩50℃の油浴中に保持した。フィルムをフラスコから取り出した後、エタノール、希HCl、およびエタノールで順次洗浄し、窒素流下で乾燥させた。表面改質末端基を有するPUのフィルムの静的水接触角は、表面改質の結果として、非処理サンプルの88度から処理サンプルの64度まで低下したが、SMEを有していないPUのフィルムの接触角は82度で変化しないままであった。
【0068】
界面活性および反応性ビニル末端基を有するポリウレタンから製造される医療器具の表面を、次式:
【化10】



のものなどのエポキシシランを使用して改質し、ポリマー鎖末端に結合したビニル基とカップリング剤のシラン基をヒドロシリル化反応させてC−Si結合を形成し、それによって、後でポリアミンと反応するように表面にエポキシド基を結合させることができる。その後、過剰のアミン基をヘパリン中のアルデヒド基と反応させ、表面にヘパリンを共有結合で固定化することができる。
【0069】
実施例4.コーティングおよび表面グラフト用途の界面活性および反応性末端基.次式、
【化11】



を有するヒドロキシル官能性界面活性および反応性メタクリレート末端基を使用して、MDIなどのジイソシアネート、PTMO、PEOおよびポリカーボネートジオール、シリコーンジオールなどのポリオール、および、ブタンジオール、エチレンジアミン、エタノールアミンおよび他の短鎖ジアミン、ジオールおよびアミノアルコールを含む連鎖延長剤からポリウレタンコーティングのDMS溶液を調製することができる。このようにして調製されたコーティング溶液は、親水性モノマー、マクロマーおよびポリマーとの共重合によりさらにグラフトして潤滑性表面が得られるように、反応性メタクリレート末端基からなる表面を提供することができる。この表面改質ポリマーを図7に示す。親水性モノマーの例としては、ビニルピロリドン、(メタ)アクリルアミド、PEG(メタ)アクリレート、PVP(メタ)アクリレート、電荷中心を有する(メタ)アクリレート、ならびに、他の(メタ)アクリル官能性親水性オリゴマーおよびポリマーが挙げられる。本方法は、整形外科用器具、CVCカテーテル、および尿道カテーテル等の潤滑性表面を必要とする医療用途にとりわけ有用であることが分かる。
【0070】
実施例5.界面活性および反応性アルキン末端基または側鎖を有するポリマーを次のように合成することができる:エンドキャップ剤として界面活性および反応性15−ヘキサデシン−1−オールを使用し、二段法で末端にアルキンを有する末端基を有するポリウレタンを調製することができる:I)まず、DMA溶液中でMDIなどのジイソシアネート、PTMO、PEOなどのポリオール、およびポリカーボネートジオール、シリコーンジオールなどのポリオール、および、ブタンジオール、エチレンジアミン、エタノールアミンおよび他の短鎖ジアミン、ジオールおよびアミノアルコールなどの連鎖延長剤から、末端にイソシアネートを有するポリウレタンを調製する。II)0.1〜5%の界面活性および反応性15−ヘキサデシン−1−オールを反応混合物に添加して、一方の部位のヒドロキシ末端基が共有結合できるようにし、アルキン基は後で表面改質するために残しておく。
【化12】



次いで、Huisgen 1,3−双極環化付加により界面活性アルキンを反応させ、
【化13】



図8に示す重合後表面改質ポリマーを得ることができる。
【0071】
最終用途
押出、射出成形、圧縮成形、カレンダー加工、および加圧下または減圧下での熱成形、および光リソグラフィーなどの方法を含むポリマーの加工に使用される従来の熱可塑法で、本発明の未成形の特殊な末端基含有ポリマーを成形品に転換することができる。ベースポリマー上に共押出またはオーバーモールディングなどの多層加工を使用して、経済的に成り立つようにし、ポリマーから表面特性が得られるようにすることができる。ポリマーは、エアブラシまたはエアレススプレー、インクジェット印刷、光リソグラフィー、静電塗装、刷毛塗り、浸漬、注型およびコーティングなどの溶液を使用する方法で加工することができる。溶媒を使用する方法に使用されるものと類似の方法で水性ポリマーエマルションを製造することができる。どちらの場合も、揮発性液体(例えば、有機溶媒または水)を蒸発させると、後にポリマーのフィルムが残る。本発明では、3D印刷としても知られる、コンピュータ制御された光リソグラフィーに特殊な末端基を有する液体または固体のポリマーを使用することも考えられる。この方法は、組織工学の足場、補綴物、医療器具、人工器官、および他の医療用、消費者用、および工業用の最終用途のための用途に、またはそのプロトタイプとして使用される、高密度または多孔質の構造の製造に特に有用である。本発明に適用可能な製造の考慮事項は米国特許第5,589,563号明細書に記載されており、その内容は参照により本明細書に明示的に援用される。
【0072】
本発明の有用な物品を製造するのに使用されるポリマーは、一般に、約100〜約10,000psiの引張強度、および約50〜約1500%の破断点伸びを有するであろう。幾つかの特に好ましい実施形態では、本発明の多孔質または非多孔質フィルムは、軟質シートの形態で、または、例えば、メルトブロー、紡糸、静電塗装、または浸漬によって製造される中空膜もしくは繊維の形態で提供される。典型的には、このような軟質シートは、幅約10〜15インチ、長さ数百フィート以下の長尺の巻取り可能なシートとして調製される。これらのシートの厚さは、約5〜約100ミクロンの範囲であってもよい。製造される物品を支持体または補強なしで使用する場合、約19〜25ミクロンの厚さが特に有用である。
【0073】
本発明のポリマー膜は、後で製造中または製造後に固体に転換される液体、例えば、溶液、分散体、固形分100%のプレポリマー液、ポリマー溶融物などを使用する方法で得られる任意の形状を有してもよい。また、ダイカット、ヒートシール、溶剤結合もしくは接着、または他の様々な従来の製造方法のいずれかなどの方法を使用して、転換された形状をさらに変化させてもよい。
【0074】
また熱可塑製造方法を使用してもよい。塊状重合法または溶媒を用いない重合法によって製造される膜ポリマーを、重合反応中に、金型に注型してもよい。押出、射出成形、カレンダー加工、および、当該技術分野で周知の他の転換法を使用して、固体繊維、チューブ、医療器具、および補綴物に成形される本発明のポリマーの膜、フィルム、およびコーティングを形成してもよい。当業者には、非医療品用途の部材の製造にもこれらの転換法を使用し得ることが分かるであろう。
【0075】
本発明は、このようにして、ポリマー体で構成される医療器具または補綴物を提供し、ポリマー体は、前記ポリマー体の内部にある複数のポリマー分子を含み、内部ポリマー分子の少なくとも幾つかは、ポリマー体の表面を構成する末端基を有する。ポリマー体としては、埋込型の医療器具もしくは補綴物の、または非埋込型の使い捨てもしくは体外用の医療器具もしくは診断製品の、非高密度、多孔質、またはマクロ孔質の膜部材を挙げることができる。例えば、一実施形態では、ポリマー体は、診断器具の免疫反応物質を含有する膜部材またはコーティングを含んでもよい。本発明は、特に、埋込型の医療器具もしくは補綴物として、または非埋込型の使い捨てもしくは体外用の医療器具もしくは補綴物として、または、生体外もしくは生体内診断器具として構成されるこのような物品を提供するように適応され、ここで、器具または補綴物は、組織、流体、および/または血液に接触する表面を有する。
【0076】
当業者には、本発明のこのような実施形態の使用法も周知である。例えば、Ebert,Stokes,McVenes,Ward,and Anderson,Biostable Polyurethane Silicone Copolymers for Pacemaker Lead Insulation,The 28th Annual Meeting of the Society for Biomaterials,April 24−27,2002,Tampa,Florida;Ebert,Stokes,McVenes,Ward,and Anderson,Polyurethane Lead Insulation Improvements using Surface Modifying Endgroups,The 28th Annual Meeting of the Society for Biomaterials,April 24−27,2002,Tampa,Florida;Litwak,Ward,Robinson,Yilgor,and Spatz,Development of a Small Diameter,Compliant,Vascular Prosthesis,Proceedings of the UCLA Symposium on Molecular and Cell Biology,Workshop on Tissue Engineering,February,1988,Lake Tahoe,California;Ward,White,Wolcott,Wang,Kuhn,Taylor,and John,“Development of a Hybrid Artificial Pancreas with Dense Polyurethane Membrane”,ASAIO Journal,J.B.Lippincott,Vol.39,No.3,July−September 1993;Ward,White,Wang,and Wolcott,A Hybrid Artificial Pancreas with a Dense Polyurethane Membrane:Materials&Design,Proceedings of the 40th Anniversary Meeting of the American Society for Artificial Internal Organs,April 14−16,1994,San Francisco,California;Farrar,Litwak,Lawson,Ward,White,Robinson,Rodvien,and Hill,“In−Vivo Evaluation of a New Thromboresistant Polyurethane for Artificial Heart Blood Pumps”,J.of Thoracic Surgery,95:191−200,1987;Jones,Soranno,Collier,Anderson,Ebert,Stokes,and Ward,Effects of Polyurethanes with SMEs on Fibroblast Adhesion and Proliferation and Monocyte and Macrophage Adhesion,The 28th Annual Meeting of the Society for Biomaterials,April 24−27,2002,Tampa,Florida;and Ward,R.S.and White,K.A.,Barrier Films that Breathe,CHEMTECH,November,1991,21(11),670(これらの参考文献は全て参照により本明細書に明示的に援用される)を参照されたい。
【0077】
工業用途
本発明は、以下に限定されるものではないが、シリコーン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリエーテルエステル、ポリエステル、ポリイミド、ポリイソブチレン、およびこれらのコポリマーを含む様々なポリマー基材に適用可能であり、これらを使用して医療器具および関連する生物作用材料を製造してもよい。本発明により、カップリング剤を使用してまたは使用することなく、このような器具を表面の反応性末端基により表面改質し、それによって、改善された潤滑性、改善された生体適合性、および特定の表面機能性、例えば、親和療法では生体分子の選択的吸着、コンタクトレンズでは涙液の保持およびタンパク質吸着の防止、バイオセンサーおよび血液ろ過用途では改善された選択透過性、および抗微生物表面などの変更された表面特性を器具に付与することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー基材の表面を改質する方法であって、
ポリマー分子の末端基を構成する界面活性スペーサーに結合した第1の反応性末端基を有するポリマー分子から構成されるポリマー体から物品を製造し、前記ポリマー体の界面活性スペーサーに結合した前記第1の反応性末端基からなる表面を形成する工程;および、
前記ポリマー体の前記表面に、少なくとも1つの第2の反応性末端基と少なくとも1つの表面改質部分とを含有する化合物を接触させて、前記少なくとも1つの第2の反応性末端基を第1の反応性末端基と反応させ、前記少なくとも1つの表面改質部分を前記ポリマー分子の1つに結合させる工程;
を含む方法。
【請求項2】
ポリマー基材の表面を改質する方法であって、
ポリマー分子の末端基を構成する界面活性スペーサーに結合した第1の反応性末端基を有するポリマー分子から構成されるポリマー体から物品を製造し、前記ポリマー体の界面活性スペーサーに結合した前記第1の反応性末端基からなる表面を形成する工程;
前記ポリマー体の表面に、少なくとも1つの第3の反応性末端基と少なくとも1つの第4の反応性末端基とを含有する化合物を接触させ、前記少なくとも1つの第3の反応性末端基を第1の反応性末端基と反応させ、それによって、前記少なくとも1つの第4の反応性末端基を前記ポリマー分子に結合させる工程;および
前記得られたポリマー体の表面に、少なくとも1つの第2の反応性末端基と少なくとも1つの表面改質部分を含有する化合物を接触させて、前記少なくとも1つの第2の反応性末端基を前記少なくとも1つの第4の反応性末端基と反応させ、それによって、前記少なくとも1つの表面改質部分を前記ポリマー分子の1つに結合させる工程、
を含む、方法。
【請求項3】
物品の製造中に前記反応性末端基が自然に物品の表面に来るように、前記第1の反応性末端基がポリマー鎖末端の一部として界面活性スペーサーに結合している、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記製造方法が、熱成形および溶媒を使用する加工を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記製造方法は、界面活性または反応性末端基を含有する前記ポリマーの表面特性が二次加工品に付与されるような、押出、成形、注型、ならびに、共押出およびベースポリマー上へのオーバーモールディングを含む多層加工から選択される熱加工を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記鎖末端が、線状ポリマー鎖末端、側鎖末端、多分岐鎖末端、デンドリマー鎖末端、および網状ポリマー鎖末端からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記物品の製造中に、前記反応性末端基の官能性および反応性が維持されるように、前記反応性末端基が保護基によって保護される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
表面形成後、前記反応性末端基が脱保護反応によって元に戻される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記反応性末端基が、ビニル基、アルコキシシラン、シラン、エポキシ基、酸無水物、第1級アミノ基、第2級アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、ケトン基、アジド基、ジエン、アミド基、イソチオシアネート基、イソシアネート基、ハロゲン基、マレイミド、ヒドロキシスクシンイミドエステル、ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、イミドエステル、ヒドラジン、アジリジン、シアノ基、およびアルキンからなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記反応性末端基が、押出、射出成形、またはアニーリングにより前記器具または基材を製造するのに使用される加工条件に対して安定であるように選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
前記表面改質部分が、共有結合、配位結合、またはイオン結合で前記ポリマー分子に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第4の反応性末端基が前記ポリマー分子に共有結合またはイオン結合により結合し、前記表面改質部分が前記ポリマー分子に共有結合、配位結合、またはイオン結合により結合する、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
表面改質部分が、生理活性分子、モノマー、オリゴマー、ポリマー、有機金属分子、および金属化合物からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
前記生理活性分子が、キトサン、ヘパリン、ヒアルロン酸およびその誘導体、抗微生物剤、抗生剤、抗血栓剤、ペプチド、タンパク質、ポリペプチド、ポリ(アミノ酸)、炭水化物、造影剤、薬物、グリコサミノグリカン、および潤滑物質からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマー基材が、固体合成ポリマー、固体天然ポリマーおよびハイドロゲルからなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
前記基材が、ポリオレフィン、シリコーン、アクリルポリマーおよびコポリマー、メタクリルポリマーおよびコポリマー、フルオロポリマー、ビニルポリマーおよびコポリマー、ポリウレタン、ポリウレタン尿素、ポリエステルウレタン、シリコーンポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリエステル、エポキシポリマー、ポリイミド、ポリエステルアミド、ポリエーテルアミド、およびシリコーンハイドロゲルからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記物品が、医療用チューブ、輸液バッグおよび静脈内カテーテル、眼科用器具、血液ろ過器具、心血管用器具、バイオセンサー、整形外科用インプラント、および補綴物からなる群から選択される医療器具である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項18】
第2の反応性末端基と表面改質部分とを含有する化合物の第2の反応性末端基と、ポリマー分子の末端基を構成する界面活性スペーサーに結合している第1の反応性末端基との反応生成物を含む分子結合によって表面改質部分がポリマー分子に結合している、ポリマー分子。
【請求項19】
式、POLYMER−SPACER−XK−LINK1−Qを有する、請求項18に記載のポリマー分子であって、
POLYMERがポリマーであり、
SPACERが界面活性スペーサー結合であり、
XKが第1の反応性末端基Xを第2の反応性末端基Kと反応させることによって形成され、
LINK1が、第2の反応性末端基Kと表面改質部分とを含有する化合物であり、
Qが表面改質部分である、
請求項18に記載のポリマー分子。
【請求項20】
POLYMERが、ポリオレフィン、シリコーン、アクリルポリマーもしくはコポリマー、メタクリルポリマーもしくはコポリマー、フルオロポリマー、ビニルポリマーもしくはコポリマー、ポリウレタン、ポリウレタン尿素、ポリエステルウレタン、シリコーンポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリエステル、エポキシポリマー、ポリイミド、ポリエステルアミド、ポリエーテルアミド、またはシリコーンハイドロゲルであり、
SPACERは、長さが8〜24単位の2価のアルカン、ポリオール、ポリアミン、ポリシロキサン、またはフルオロカーボン鎖であり、
XKが、Si−C結合、Si−O−Si結合、ウレタン結合、尿素結合、カルバメート結合、アミン、アミド結合、イミン、エナミン、オキシム、アミジン結合、イミノエステル結合、カーボネート結合、C−C結合、エーテル、エステル結合、アセタール、スルホネート、スルフィド、スルフィネート、ジスルフィド、スルホンアミド結合、チオエステル結合、チオカーボネート結合、ホスホンアミド結合、または複素環を含み、
LINK1は、炭素数12以下の脂肪族部分または芳香族部分であり、
Qは、置換または非置換、飽和または不飽和アルキル鎖、ポリエーテル、フッ素化ポリエーテル、シリコーン鎖、有機金属部分、キトサン、ヘパリン、ヒアルロン酸、抗微生物剤、抗血栓剤、ペプチド、タンパク質、ポリ(アミノ酸)、炭水化物、または放射線画像造影剤である、
請求項19に記載のポリマー分子。
【請求項21】
第2の反応性末端基と表面改質部分とを含有する化合物の第2の反応性末端基と第3および第4の反応性末端基を含有する化合物の第4の反応性末端基との反応生成物と、前記第3および第4の反応性末端基を含有する化合物の第3の反応性末端基と前記ポリマー分子の末端基を構成する界面活性スペーサーに結合している第1の反応性末端基との反応生成物の両方を含む分子結合によって表面改質部分がポリマー分子に結合している、ポリマー分子。
【請求項22】
式、POLYMER−SPACER−XY−LINK1−ZK−LINK2−Qを有する、請求項21に記載のポリマー分子であって、
POLYMERがポリマーであり、
SPACERが界面活性スペーサー結合であり、
XYが第1の反応性末端基Xを第3の反応性末端基Yと反応させることによって形成され、
LINK1が、第3の反応性末端基Yと第4の反応性末端基Zとを含有する化合物であり、
ZKが、第4の反応性末端基Zを第3の反応性末端基Kと反応させることによって形成され、
LINK2が、第2の反応性末端基Kと表面改質部分とを含有する化合物であり、
Qが表面改質部分である、
請求項21に記載のポリマー分子。
【請求項23】
POLYMERが、ポリオレフィン、シリコーン、アクリルポリマーもしくはコポリマー、メタクリルポリマーもしくはコポリマー、フルオロポリマー、ビニルポリマーもしくはコポリマー、ポリウレタン、ポリウレタン尿素、ポリエステルウレタン、シリコーンポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリエステル、エポキシポリマー、ポリイミド、ポリエステルアミド、ポリエーテルアミド、またはシリコーンハイドロゲルであり、
SPACERは、長さが8〜24単位の2価のアルカン、ポリオール、ポリアミン、ポリシロキサン、またはフルオロカーボン鎖であり、
XYが、Si−C結合、Si−O−Si結合、ウレタン結合、尿素結合、カルバメート結合、アミン、アミド結合、イミン、エナミン、オキシム、アミジン結合、イミノエステル結合、カーボネート結合、C−C結合、エーテル、エステル結合、アセタール、スルホネート、スルフィド、スルフィネート、ジスルフィド、スルホンアミド結合、チオエステル結合、チオカーボネート結合、ホスホンアミド結合、または複素環を含み、
LINK1が、炭素数12以下の脂肪族部分または芳香族部分であり、
ZKが、Si−C結合、Si−O−Si結合、ウレタン結合、尿素結合、カルバメート結合、アミン、アミド結合、イミン、エナミン、オキシム、アミジン結合、イミノエステル結合、カーボネート結合、C−C結合、エーテル、エステル結合、アセタール、スルホネート、スルフィド、スルフィネート、ジスルフィド、スルホンアミド結合、チオエステル結合、チオカーボネート結合、ホスホンアミド結合、または複素環を含み、
LINK2が、炭素数12以下の脂肪族部分または芳香族部分であり、
Qが、置換または非置換、飽和または不飽和アルキル鎖、ポリエーテル、フッ素化ポリエーテル、シリコーン鎖、有機金属部分、キトサン、ヘパリン、ヒアルロン酸、抗微生物剤、抗血栓剤、ペプチド、タンパク質、ポリ(アミノ酸)、炭水化物、または放射線画像造影剤である、
請求項22に記載のポリマー分子。
【請求項24】
医療用チューブ、輸液バッグおよび静脈内カテーテル、眼科用器具、血液ろ過器具、心血管用器具、バイオセンサー、整形外科用インプラント、および補綴物からなる群から選択される医療器具であって、前記医療器具の全体または一部が請求項18〜21に記載のポリマー分子から製造されている、医療器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−509365(P2012−509365A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536554(P2011−536554)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/064560
【国際公開番号】WO2010/057080
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】