説明

界面活性剤と組み合わせたポリエーテルに基づく両親媒性コポリマーを含む固体医薬製剤

本発明は、ポリエーテルコポリマー及び少なくとも一つの界面活性剤のポリマーマトリックス中に水に低溶解性の活性物質の調製物を含む製剤に関し、このポリエーテルコポリマーは、30〜80重量%のN-ビニルラクタム、10〜50重量%の酢酸ビニル及び10〜50重量%のポリエーテルの混合物のラジカル開始重合によって得られ、この水に低溶解性の活性物質はポリマーマトリックス中に非晶質として存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製剤の安定性及び/又は有効成分の放出に影響を及ぼすことができる、界面活性剤と組み合わせた両親媒性コポリマー及び水難溶性の有効成分の固体医薬製剤に関する。
【0002】
使用される両親媒性コポリマーは、特に、ポリエーテルの存在下でN-ビニルラクタムと酢酸ビニルとを重合することによって得ることができるコポリマーである。
【0003】
このポリエーテルに基づく対応するコポリマーは、水難溶性の生物活性物質のための可溶化剤として機能する。
【背景技術】
【0004】
特に生物活性物質の、均一な製剤の製造において、疎水性、即ち、水難溶性の物質の可溶化は、非常に大いに実際的重要性を増している。
【0005】
可溶化とは、界面活性化合物、つまり可溶化剤による、特定の溶媒、特に水に難溶性か不溶性の物質の可溶化を意味するものと理解される。このような可溶化剤は、水難溶性または水不溶性の物質を、これらの物質の化学構造がプロセス中に何らの変化も受けることなく、よくても乳白色であるが透明な水溶液に変化させることができる。
【0006】
生成した可溶化物中で、水難溶性の又は水不溶性の物質は、例えば疎水性ドメイン又はミセルを水溶液において形成する界面活性剤の分子会合物中にコロイド状に溶解した形態で存在する。得られた溶液は、安定又は準安定な視覚的に透明から乳白色の外観を有する単相系である。
【0007】
医薬製剤の場合、バイオアベイラビリティー、及びそれによる薬剤の作用は、可溶化剤の使用により高めることができる。
【0008】
可溶化剤に関するさらなる望ましい要件は、難溶性物質と、いわゆる「固溶体」を形成する能力である。用語の「固溶体」は、物質が固体のマトリックス、例えばポリマーマトリックス中に分配されてコロイド分散又は理想的には分子分散している状態を表現している。そのような固溶体は、例えば難溶性有効成分の固体薬剤投与形態で使用される場合に有効成分の改善された放出をもたらす。そのような固溶体に関する重要な要件は、それらが保存の過程においても長期間にわたって安定であることであり、これはこの有効成分が晶出しないことを意味する。さらに、固溶体の能力又は言い換えれば最大の有効成分含量を有する安定な固溶体を形成する能力もまた重要である。
【0009】
WO2007/051743は、医薬、化粧品、食品技術、農薬又はその他の産業上の用途のための可溶化剤としてのN-ビニルラクタム、酢酸ビニル及びポリエーテルの水溶性又は水分散性コポリマーの使用を開示している。対応するグラフトポリマーも溶融体中で有効成分と共に処理され得ることが、全くの一般論としてそこに記載されている。
【0010】
WO2009/013202は、N-ビニルラクタム、酢酸ビニル及びポリエーテルのグラフトポリマーが、このグラフトポリマーを押出し機中で溶融し、それを粉末状又は液体の有効成分と混合する(この押出しは、有効成分の融点より著しく低い温度であると記載されている)ことによって難溶性有効成分を可溶化するために使用することができることを同じく開示している。
【0011】
しかしながら、有効成分に対する熱ストレスの問題は、押出しプロセスにおいて常に考慮されなければならない。この点において手順に改善の余地が依然として存在していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2007/051743
【0013】
【特許文献2】WO2009/013202
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、改良された方法、及びそれにより良好なバイオアベイラビリティーと共に安定な放出を可能とした水難溶性の有効成分の改良された製剤を見出すことであった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、
i)30〜80重量%のN-ビニルラクタム、
ii)10〜50重量%の酢酸ビニル、及び
iii)10〜50重量%のポリエーテル
(ただし、i)、ii)及びiii)の合計が100重量%に等しいことを条件とする)
の混合物のフリーラジカル開始重合によって得られる両親媒性コポリマーに基づくポリマーマトリックス中の水難溶性の生物活性物質の製剤を製造するための方法が見出されており、ここで界面活性剤は処理中に添加される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一つの実施形態においては、
i)30〜70重量%のN-ビニルラクタム、
ii)15〜35重量%の酢酸ビニル、及び
iii)10〜35重量%のポリエーテル
から得られる好ましいポリマーが使用される。
【0017】
特に好ましく使用されるポリマーは、
i)40〜60重量%のN-ビニルラクタム、
ii)15〜35重量%の酢酸ビニル、及び
iii)10〜30重量%のポリエーテル
から得られる。
【0018】
とりわけ特に好ましく使用されるポリマーは、
i)50〜60重量%のN-ビニルラクタム、
ii)25〜35重量%の酢酸ビニル、及び
iii)10〜20重量%のポリエーテル
から得られる。
【0019】
好ましい及び特に好ましい組成物に対してもまた、成分i)、ii)及びiii)の合計が100重量%に等しいという条件は適用される。
【0020】
有用なN-ビニルラクタムとしては、N−ビニルカプロラクタム若しくはN−ビニルピロリドン又はそれらの混合物が挙げられる。N-ビニルカプロラクタムを使用することが好ましい。
【0021】
使用されるグラフトベースは、ポリエーテルである。有用なポリエーテルは、好ましくはポリアルキレングリコールである。このポリアルキレングリコールは、1000〜100,000D(ダルトン)、好ましくは1500〜35,000D、より好ましくは1500〜10,000Dの分子量を有することができる。分子量は、DIN53240により測定したOH価から始めて決定される。
【0022】
特に好ましいポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコールが挙げられる。またさらに適切なのは、2-エチルオキシラン又は2,3-ジメチルオキシランから得られるポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン又はポリブチレングリコールである。
【0023】
適切なポリエーテルは、また、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドから得られるポリアルキレングリコールのランダム又はブロックコポリマー、例えば、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールブロックコポリマーである。このブロックコポリマーは、ABタイプのもの又はABAタイプのものであってもよい。
【0024】
好ましいポリアルキレングリコールとしては、一つ又は両方のOH末端基がアルキル化されているものも挙げられる。有用なアルキル基としては、分枝又は非分枝C1-〜C22-アルキル基、好ましくはC1-〜C18-アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、トリデシル又はオクタデシル基が挙げられる。
【0025】
本発明のグラフトコポリマーを調製するための一般的なプロセスは、それ自体既知である。それらはフリーラジカル開始重合により、好ましくは溶液中で、非水性有機溶媒中又は非水性/水性混合溶媒において調製される。適切な調製プロセスは、例えば、WO2007/051743及びWO2009/013202に記載されており、それらの開示は、調製プロセスに関して明確に引用される。
【0026】
原則として、適切な界面活性剤は、全て、3より大きく、好ましくは6より大きく、より好ましくは10より大きいHLB値を有するものである(Fiedler、Lexikon der Hilfsstoffe [賦形剤の用語集]を参照されたい)。原則として適切なのは、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性イオン性又は両親媒性界面活性剤である。
【0027】
特に適切な界面活性剤は:
α-トコフェロールポリエチレングリコールスクシネート、ステアリン酸及びその塩類、グリセリルモノステアレート、エトキシル化グリセリルモノステアレート、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノオレエート、セテアレス-20(セチルステアリルアルコール×20モルのエチレンオキシド単位)、ラウリル硫酸ナトリウム、ドキュセートナトリウム、ポロキサマー、エトキシル化ヒマシ油、水素化エトキシル化ヒマシ油、マクロゴール脂肪アルコールエーテル、マクロゴール脂肪酸エステル、マクロゴールソルビタン脂肪アルコールエーテル及びマクロゴールソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート20、40、60、80、Span(登録商標)及びTween(登録商標)の製品である。
【0028】
適切な物質は、イオン性及び非イオン性界面活性剤、例えば、Solutol(登録商標)HS15(マクロゴール-15ヒドロキシステアレート)、Tween(登録商標)80、Cremophor(登録商標)RH40(ポリオキシ40水素化ヒマシ油、USP)、及びCremophor EL(ポリオキシル35ヒマシ油、USP)等のポリオキシエチル化脂肪酸誘導体、ポロキサマー、ドキュセートナトリウム、又はラウリル硫酸ナトリウムである。
【0029】
この界面活性剤は、押出し物中に0.1〜80重量%、好ましくは0.2〜50重量%、より好ましくは0.5〜30重量%の間の濃度で使用される。
【0030】
固体の製剤は、それ自体既知の方法によって製造することができる。好ましい手順において、この固体製剤は、押出しによって製造される。
【0031】
ポリマーは、粉末形態又は溶液若しくは分散液の形態のいずれかで押出し機に供給することができる。
【0032】
該ポリマーの分散液又は溶液は、押出し機中、溶融状態で分散剤又は溶媒を除去し、その溶融物を冷却することによって固形に変換することができる。
【0033】
かくして得られたこの溶融物は、次に冷却して粒状にすることができる。これは、いわゆる熱間切断か、或いは例えばテフロン(登録商標)又はチェーンベルト上で空気又は保護ガスのもとで冷却し、その冷却された溶融押出し物を、次いで粒状化することによって行なわれる。また一方で、冷却はポリマーが顕著な溶解性を有さない溶媒中においても可能である。
【0034】
以下の方法A〜Eを原則として使用することができる:
ポリマー及び有効成分の物理的粉末混合、及び押出し機への該粉末混合物の供給;融解されていないポリマー混合物中への別のバイパスによる有効成分の供給;側方供給による溶融ポリマー中への有効成分の供給;部分的に脱気したポリマー溶融物又は融解されていないポリマー混合物における、その中に有効成分が分散若しくは溶解したポリマーの溶解;溶媒を追加的に押出し機に導入し、それを再び蒸発させる。
【0035】
本発明による方法について、適切な押出し機のタイプは原則として、当業者に公知の通常の押出し機のタイプである。一般的にこれらは、ハウジングと、変速機を有する駆動装置と、スクリューエレメント(モジュール構造がこの場合に想定される)を備えた一つ又は複数の押出し機シャフトからなるプロセスユニットとを含む。
【0036】
この押出し機は、それぞれ特定のプロセスユニットに割り当てられる複数の部分からなる。これら部分のそれぞれは、最小の独立したユニットとしての一つ又は複数のバレル(バレルブロック)及びプロセス作業に対応するスクリューエレメントを有する対応するスクリュー部分からなる。
【0037】
個々のバレルは加熱可能でなくてはならない。加えて、このバレルは冷却のため例えば水による冷却のために設計されていてもよい。個々のバレルブロックは、さまざまな温度ゾーンを押出し方向に沿って設置することもできるように、好ましくは独立して加熱可能及び冷却可能である。
【0038】
この押出し機は、同時回転二軸押出し機として有利に構成される。そのスクリューの形態は、製品によって異なる剪断レベルを有することができる。そのスクリューの形状は、運搬要素、混練要素、バックアップ要素などの通常の可変の構造要素により製剤の組成に応じて特定の要件に適合させることができる。
【0039】
適切な二軸押出し機は、16〜70mmのスクリューの直径及び25〜40Dの長さを有することができる。
【0040】
全体の押出し機は、温度を個別に制御することができるバレルブロックから形成される。最初の二つのバレルは、より良好な材料の取り入れのために温度制御されるものにすることができる。三番目のバレルからは一定温度が好ましくは設定され、それは特に材料に対して選択されるべきであり、とりわけ使用される有効成分の融点及びポリマーのガラス転移点に依存する。得られる製品の温度は、しかしながら一般的には使用されるスクリューエレメントの剪断レベルに依存し、場合によっては設定されたバレルの温度より20〜30℃高いことがある。
【0041】
溶融ゾーンは、有利には周囲圧力で運転される排出ゾーンを下流に続かせることができる。
【0042】
使用される丸ダイスは、0.5〜5mmの直径を有し得る。スロットダイ等のその他の金型の形状が、特により大きな材料の処理量が望まれるときは同様に使用され得る。
【0043】
得られた押出し物は、造粒機で処理してペレットにすることができ、それは順次さらに細かく砕いて(粉砕して)粉末にすることができる。このペレット又は粉末は、カプセル中に充填するか通常の錠剤化助剤を用いてプレスして錠剤にすることができる。これに関連して、さらなる放出調節助剤を使用することも可能である。
【0044】
加えて、押出し中に、水、有機溶媒、緩衝物質又は可塑剤を使用することが可能である。特に水又は揮発性アルコールはこの目的に対する選択肢である。この処理は比較的低い温度における反応を可能にする。溶媒又は可塑剤の量は、一般的には押出し可能な材料の0%から30%の間である。水又は溶媒は、押出し機中の排出口により標準圧力によって又は減圧を適用して予め除去することができる。別法では、これらの成分は、押出し物が押出し機から離れ、圧力が標準圧力に下げられたときに蒸発する。揮発性成分が少ない場合、その押出し物は、それに応じて後に乾燥させることができる。
【0045】
製造プロセスの特定の変形においては、押出しの直後に、熱可塑性材料が最終的な投与形態を構成する錠剤様の成型体にカレンダー仕上げされる。この変形においては、さらなる成分、例えば、ガラス転移点及び溶融粘度を調節するためのポリマー、崩壊剤、さらなる可溶化剤、可塑剤、色素、香味料、甘味料などを実際に押出しの前又は途中に添加することが望ましいであろう。原則として、これらの物質は、押出し物が最初に粉末状にされ、次にプレスされて錠剤になるときにも使用され得る。
【0046】
製剤のガラス転移点を調節するために、高いガラス転移点を有するさらなる水溶性のポリマー、例えば、17〜120のK値を有するポリビニルピロリドン、ヒドロキシアルキルセルロース、又はヒドロキシアルキルデンプンを使用することができる。製剤の高過ぎるガラス転移点は、可塑剤を添加することによって低下させることができる。この目的のための適切な可塑剤は、原則として、医薬品コーティングのためにも使用される全ての可塑剤、例えば、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル、トリアセチン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール400、セバシン酸ジブチル、モノステアリン酸グリセリル、ラウリン酸、セチルステアリルアルコールである。
【0047】
依然として可塑性の混合物は、好ましくは金型を通して押出し、冷却して粉末状にする。適切な粉砕方法は、原則として全て既知の通例の技法であり、それ故例えば熱間又は冷間切断などである。
【0048】
押出し物は、例えば、回転羽根によるか空気ジェットにより切断し、次いで空気を用いて、或いは保護ガスのもとで冷却する。
【0049】
押出し物を冷却ベルト(ステンレススチール、テフロン(登録商標)、チェーンベルト)上に溶融ストランドとして置き、凝固した後にそれを粒状にすることも可能である。
【0050】
その後、この押出し物は、場合によって粉砕することができる。製剤は自由流動性の水溶性の粉末として得られる。20〜250μmの粒径を達成することが好ましい。
【0051】
さらに、ポリマーと活性物質との可塑性の混合物を射出成型によって加工することも可能である。
【0052】
本発明による方法によって得られる製剤は、水難溶性又は水不溶性の物質が水性製剤で使用されるか、又は水性媒体中でそれらの作用を示す、すべての分野で原則として使用することができる。
【0053】
本発明によれば、用語の「水難溶性の」は、実質的に不溶性の物質も含み、20℃における水中のその物質の溶液に対して物質1g当り少なくとも30〜100gの水が必要であることを意味する。実質的に不溶性の物質の場合は、物質1g当り少なくとも10,000gの水を必要とする。
【0054】
本発明との関連で、水難溶性の物質は、ヒト又は動物のための医薬品有効成分、化粧品若しくは農薬有効成分、又は栄養補助食品若しくは栄養有効成分等の生物活性物質を意味するものと好ましくは理解される。
【0055】
加えて、可溶化される有用な難溶性物質としては、無機又は有機顔料等の色素が挙げられる。
【0056】
本発明によれば、有用な生物活性物質としては、原則として、コポリマーの押出し条件下で分解点より低い融点を有する全ての固体の有効成分が挙げられる。このコポリマーは、一般に、最高で260℃までの温度で押出すことができる。低い方の温度限界は、それぞれの場合における押出される混合物の組成及び処理される難溶性物質によって左右される。
【0057】
使用される医薬品有効成分は、水不溶性物質又は既に述べたDAB9の定義による低い水溶性を有する物質である。
【0058】
有効成分は、任意の効能部門のものであってよい。ここでの例として、ベンゾジアゼピン、降圧剤、ビタミン、細胞増殖抑制剤-特にタキソール、麻酔薬、神経弛緩剤、抗うつ剤、抗ウイルス薬、例えば、抗HIV薬、抗生物質、抗真菌薬、抗認知症薬、殺菌剤、化学療法薬、泌尿器科薬、血小板凝集抑制剤、スルホンアミド類、鎮痙薬、ホルモン、免疫グロブリン、血清、甲状腺治療薬、向精神薬、パーキンソン病薬及びその他の抗運動亢進症薬、眼科用薬、神経障害製剤、カルシウム代謝調節薬、筋弛緩剤、麻酔剤、脂質降下剤、肝治療薬、冠動脈剤、強心剤、免疫治療剤、調節ペプチド及びそれらの抑制剤、催眠剤、鎮静剤、婦人病薬、痛風治療薬、線維素溶解剤、酵素製剤及び輸送タンパク質、酵素抑制剤、催吐剤、血流促進薬、利尿剤、診断薬、コルチコイド、コリン作動薬、胆管治療薬、抗喘息薬、気管支拡張剤、ベータ受容体阻害剤、カルシウムアンタゴニスト、ACE抑制剤、動脈硬化症薬、消炎剤、抗凝固薬、抗低血圧薬、抗低血糖薬、抗高血圧薬、抗線維素溶解薬、抗てんかん薬、制吐剤、解毒剤、抗糖尿病薬、抗不整脈剤、抗貧血薬、抗アレルギー薬、駆虫剤、鎮痛剤、中枢神経興奮剤、アルドステロンアンタゴニスト、やせ薬が挙げられる。
【0059】
上記の医薬製剤の中で特に好ましいのは、経口投与が可能な製剤である。
【0060】
該医薬製剤中の本発明の可溶化剤の含量は、活性成分に応じて、1〜75重量%、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは5〜50重量%の範囲である。
【0061】
薬剤投与形態、例えば錠剤を製造するために、押出し物は通常の医薬賦形剤と混ぜることができる。
【0062】
これらは充填剤、可塑剤、可溶化剤、結合剤、ケイ酸塩及び崩壊剤並びに吸着剤、滑剤、流動化剤、色素、抗酸化物質等の安定剤、湿潤剤、防腐剤、離型剤、芳香剤又は甘味料、好ましくは充填剤、可塑剤及び可溶化剤のクラスの物質である。
【0063】
添加される充填剤は、例えば、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素の酸化物、炭酸チタン又は炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はリン酸マグネシウム等の無機充填剤或いはラクトース、スクロース、ソルビトール、マンニトール等の有機充填剤であり得る。
【0064】
適切な可塑剤は、例えば、トリアセチン、クエン酸トリエチル、モノステアリン酸グリセリン、低分子量ポリエチレングリコール又はポロキサマーである。
【0065】
適切なさらなる可溶化剤は、11を超えるHLB(親水性親油性バランス)を有する界面活性物質、例えば、40のエチレンオキシド単位によりエトキシル化されている水素化ヒマシ油(Cremophor(登録商標)RH40)、35のエチレンオキシド単位によりエトキシル化されているヒマシ油(Cremophor EL)、ポリソルベート80、ポロキサマー又はラウリル硫酸ナトリウムである。
【0066】
使用される滑剤は、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム及びスズのステアリン酸塩、また並びに、ケイ酸マグネシウム、シリコーン類などであってもよい。
【0067】
使用される流動化剤は、例えば、タルク又はコロイド状二酸化ケイ素であってもよい。
【0068】
適切な結合剤は、例えば、微結晶性セルロースである。
【0069】
崩壊剤は、架橋したポリビニルピロリドン又は架橋したデンプングリコール酸ナトリウムであってもよい。安定剤は、アスコルビン酸又はトコフェロールであってもよい。
【0070】
色素は、投与形態を着色するための、例えば、酸化鉄、二酸化チタン、トリフェニルメタン色素、アゾ染料、キノリン染料、インジゴチン色素、カロテノイド、透明度を増すため及び色素を削減するための二酸化チタン又はタルク等の乳白剤である。
【0071】
化粧品及び製薬における使用に加えて、本発明によって製造される製剤は、食糧部門における使用のために、例えば、水難溶性又は水不溶性の栄養素、助剤又は添加剤、例えば脂溶性ビタミン又はカロテノイドの組み込みのためにも適する。例としては、カロテノイドにより着色された飲料が挙げられる。
【0072】
本発明により得られる製剤の農芸化学における用途としては、農薬、除草剤、殺菌剤又は殺虫剤、及びとりわけ噴霧又は散水用の製剤として使用される作物保護組成物の製剤も挙げられる。
【0073】
本発明による方法を用いて、難溶性物質を含むいわゆる固溶体を得ることが可能である。固溶体とは、本発明によれば、難溶性物質の結晶成分が観察されない系を指す。
【0074】
幅広い種類の異なるHLB値を有する界面活性剤の添加は、押出し溶融物の粘度を低下することを可能にする。これにより、押出し温度を低下すること及び得られた押出し物をプロセス中に全体的に見てより低い熱ストレスにさらされるようにすることが可能となる。押出し温度の低下のおかげで、完全に無色の押出し物を得ることもでき、非常に熱に敏感な有効成分を処理することが可能である。その押出しは、有効成分の融点下で好ましくは実施される。
【0075】
加えて、界面活性剤の使用により湿潤性を改善することができ、その結果有効成分はより速やかに放出される。これは、全体のマトリックスを親油性化し、それ故製剤をより水和し難くする疎水性有効成分が高い割合で組み込まれる場合には特に重要である。
【0076】
安定な固溶体の視覚的評価において、非晶質の構成要素が存在しないことは明らかである。この視覚的評価は、40倍の倍率の偏向フィルター有り又は無しの光学顕微鏡により実施することができる。
【0077】
加えて、この製剤は、XRD(X線回折)及びDSC(示差走査熱量測定)を用いて結晶化度又は非晶質性について試験することもできる。
【0078】
本発明による方法によって得られる製剤は、既に述べたように、非晶質として存在し、それは、生物活性物質の結晶成分が、5重量%未満であることを意味する。この非晶質状態は、DSC又はXRDによって好ましくは確認される。そのような非晶質状態は、X線非晶質状態と言うこともできる。
【0079】
本発明による方法は、難溶性物質の高い有効成分配合量及び非晶質状態に関する良好な安定性を有する安定な製剤の製造を可能にする。
【0080】
本発明による方法は、高い有効成分量が配合されている安定な製剤の製造を可能にする。
【実施例】
【0081】
コポリマーの調製
撹拌されている装置の中に、フィード2の部分を含まない最初の投入量をN2雰囲気下で77℃に加熱した。77℃の内部温度が得られた時点でフィード2の一部を加え、15分間部分的に重合した。その後フィード1を5時間かけて、フィード2を2時間かけて測り入れた。全てのフィードが測り入れられた時点で、その反応混合物をさらに3時間重合させた。そのさらなる重合の後、その溶液を50重量%の固形分含量に調整した。
【0082】
初期投入量:25gの酢酸エチル
104.0gのPEG6000
1.0gのフィード2
フィード1:240gの酢酸ビニル
456gのビニルカプロラクタム
240gの酢酸エチル
フィード2:10.44gのt-ブチルペルピバレート(脂肪族化合物混合物中75重量%)
67.90gの酢酸エチル
その後、溶媒を噴霧プロセスによって除去し、粉末状の生成物を得た。K値は、エタノール中1重量%の溶液で測定して16であった。
【0083】
後に続く実施例に記載されている製剤の製造のために使用した二軸押出し機は、16mmのスクリュー直径及び40Dの長さを有した。押出し機全体は、8個のそれぞれに温度制御可能なバレルブロックから形成されていた。
【0084】
生成した固溶体は、結晶化度及び非晶質性についてXRD(X線回折)及びDSC(示差走査熱量測定)により以下の装置及び条件を用いて試験した:
【0085】
XRD
装置:9チューブの試料交換器を有するD8 Advance回折計(Bruker/AXS製)
測定方法:θ-θ配置の反射
2θ角範囲:2〜80°
ステップ幅:0.02°
角度ステップ当りの測定時間:4.8秒
発散スリット:0.4mmの挿入口径を有するゲーベルミラー
飛散防止スリット:ソーラースリット
検出器:Sol-X検出器
温度:室温
発電設定:40kV/50mA
【0086】
DSC
TA Instruments製DSC Q 2000
パラメーター:
開始重量約8.5mg
加熱速度:20K/分
【0087】
有効成分放出は、USP装置(パドル法)2を用いて実施した、37℃、50 rpm(BTWS 600、Pharmatest社)。押出し物ストランドは、ペレタイザーにより3mmの長さに分割し、硬いゼラチンカプセルに入れた。放出された有効成分は、紫外分光法(Lambda-2、Perkin Elmer社)により検出した。
【0088】
実施例1
1600gのコポリマー、50gのSDS及び400gのイトラコナゾール(融点166℃)を、Turbula混合容器中に秤り取り、T10B Turbulaミキサー中で10分間混合した。
【0089】
その混合物を以下の条件のもとで押出した:
・第1のバレルのゾーン温度:20℃、第2のバレル:40℃
・第3のバレル以降のゾーン温度:140℃
・スクリュー速度200rpm
・処理能力:600g/時間
・金型直径:3mm
【0090】
SDSの添加は、押出し物の粘度を低下させ、その結果、押出し温度は20℃〜130℃まで低下させることができた。0.1規定のHCl中で45分後、100%の有効成分が放出された。
【0091】
実施例2
1600gのコポリマー、400gのフェロジピン(融点145℃)を、Turbula混合容器中に秤り取り、T10B Turbulaミキサー中で10分間混合した。往復ピストンポンプを使用してドキュセートナトリウム(10%溶液)を押出し機中に供給した。
【0092】
その混合物を以下の条件のもとで押出した:
・第1のバレルのゾーン温度:20℃、第2のバレル:40℃
・第3のバレル以降のゾーン温度:120℃
・スクリュー速度100rpm
・処理能力:800g/時間
・液体供給量:100g/時間
・金型直径:3mm
【0093】
固溶体は、XRD及びDSCによって試験し、非晶質であることを見出した。pH6.8のリン酸緩衝液中の有効成分の放出は、2時間後に31%であり、10時間後には元来使用されていた有効成分の79%が放出された。
【0094】
実施例3
1600gのコポリマー、400gのダナゾール(融点225℃)を、Turbula混合容器中に秤り取り、T10B Turbulaミキサー中で10分間混合した。往復ピストンポンプを使用してSolutol HS 15を押出し機中に供給した。
【0095】
その混合物を以下の条件のもとで押出した:
・ 第1のバレルのゾーン温度:20℃、第2のバレル:40℃
・ 第3のバレル以降のゾーン温度:400℃
・ スクリュー速度100rpm
・ 処理能力:800g/時間
・ 液体供給量:50g/時間
・ 金型直径:3mm
【0096】
固溶体は、XRD及びDSCによって試験し、非晶質であることを見出した。pH 6.8のリン酸緩衝液中の有効成分の放出は、2時間後に31%であり、10時間後には元来使用されていた有効成分の79%が放出された。
【0097】
実施例4
1600gのコポリマー、400gのピロキシカム(融点199℃)を、Turbula混合容器中に秤り取り、T10B Turbulaミキサー中で10分間混合した。往復ピストンポンプを使用してCremophor ELを押出し機中に供給した。
【0098】
その混合物を以下の条件のもとで押出した:
・第1のバレルのゾーン温度:20℃、第2のバレル:40℃
・第3のバレル以降のゾーン温度:140℃
・スクリュー速度100rpm
・処理能力:800g/時間
・液体供給量:50g/時間
・金型直径:3mm
【0099】
固溶体は、XRD及びDSCによって試験し、非晶質であることを見出した。0.1規定のHCl中で1時間後、100%の有効成分が放出された。
【0100】
実施例5
1500gのコポリマー、100gのLutrol F68及び400gのイトラコナゾール(融点166℃)を、Turbula混合容器中に秤り取り、T10B Turbulaミキサー中で10分間混合した。
【0101】
その混合物を以下の条件のもとで押出した:
・第1のバレルのゾーン温度:20℃、第2のバレル:40℃
・第3のバレル以降のゾーン温度:145℃
・スクリュー速度100rpm
・処理能力:800g/時間
・金型直径:3mm
【0102】
固溶体は、XRD及びDSCによって試験し、非晶質であることを見出した。0.1規定のHCl中で1時間後、100%の有効成分が放出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
30〜80重量%のN-ビニルラクタム、10〜50重量%の酢酸ビニル及び10〜50重量%のポリエーテルの混合物のフリーラジカル開始重合によって得られるポリエーテルコポリマー、及び少なくとも一つの界面活性剤から構成されるポリマーマトリックス中に水難溶性の有効成分の製剤を含む剤形であって、前記水難溶性の有効成分が前記ポリマーマトリックス中に非晶質として存在する前記剤形。
【請求項2】
界面活性剤として、3より大きい親水性-疎水性バランス値を有する化合物を含む、請求項1に記載の剤形。
【請求項3】
界面活性剤として、アニオン性、カチオン性、両親媒性、両性イオン性又は非イオン性界面活性剤を含む、請求項1又は2に記載の剤形。
【請求項4】
α-トコフェロールポリエチレングリコールスクシネート、ステアリン酸、ステアリン酸塩、グリセリルモノステアレート、エトキシル化グリセリルモノステアレート、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノオレエート、セテアレス-20、ラウリル硫酸ナトリウム、ドキュセートナトリウム、ポロキサマー、エトキシル化ヒマシ油、水素化エトキシル化ヒマシ油、マクロゴール脂肪アルコールエーテル、マクロゴール脂肪酸エステル、マクロゴールソルビタン脂肪アルコールエーテル及びマクロゴールソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも一つの界面活性剤を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項5】
ポリエーテルコポリマー対界面活性剤の比率が60:40〜99:1の間である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項6】
ポリエーテルコポリマー対界面活性剤の比率が90:10〜99.9:0.1の間である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項7】
溶融押出しによって請求項1〜6のいずれか1項に記載の水難溶性の有効成分の剤形のための製剤を製造するための方法であって、ポリエーテルコポリマーに加えて少なくとも一つの界面活性剤をポリマーマトリックス中に組み込むことを含む方法。
【請求項8】
溶融押出しが有効成分の融点より低い温度で実施される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ポリマー及び有効成分が二軸押出し機中で混合される請求項7又は8に記載の方法。

【公表番号】特表2013−505211(P2013−505211A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529225(P2012−529225)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063369
【国際公開番号】WO2011/032907
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】