説明

界面活性剤を含まない衣料洗濯用の洗浄剤組成物

【課題】主成分として炭酸水素ナトリウム(重曹)を前提とし、併用する成分を食品系素材、数種のアルカリ塩とし、界面活性剤を含まず、既成製品と同等以上に安全安心な、洗濯性の向上を図る。
【解決手段】重曹を30w%以上含み(少なくとも40〜50w%)、2種の有機酸塩(クエン酸とグルコン酸)を第2成分として重曹の1/2〜1/3含ませ、その他成分として本組成物を完成させるための条件として、食品系成分が80w%以上であって、5000ppmの水溶液においてpHが8.5〜11になるように、アルカリビルダー系分散剤(炭酸塩や珪酸塩など)を5〜60w%の範囲内で、適宜組成した事を特徴とし、安全安心な使いやすい粉状体に仕上げたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗剤製品(特に洗濯用)として当然の主成分である界面活性剤を含まないで、当該品質と同等以上の洗浄力を有し、且つ安定安全に供すことができると共に、人や洗濯物にできるだけ負担をかけず、しかも水質汚染の少ない洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明はその為に、食品原料として注目されている重炭酸ソーダ(別称:炭酸水素ナトリウム,重曹、NaHCO、以下は重曹と記す)を中心成分となし(少なくとも30〜70w%)、これに水溶性の有機酸塩を組み合わせる。
【0003】
分子量が100以上の分散安定剤を0.5〜10w%含み、当洗浄剤組成の80w%以上が食品用成分で構成された、界面活性剤を含まない、重曹ベースとした洗浄剤に関するものである。
【従来技術】
【0004】
従来から重曹が一定の洗浄剤として相応しいことは、これ自体を主成分とした洗浄剤が知られており、日常茶飯事の中にある。また重曹にある種の反応物(酢酸,酸化剤,CMCなどのカルボキシポリマー)を併用することも、またアルカリ剤(ソーダ灰,カリ灰など)やリン酸塩,珪酸塩などを併用することも知られており、利用されているのが現状である。
【0005】
即ち、重曹を主成分として、アルカリバッファ作用や、コロイド状水溶液にするための、特殊な混合装置やスターラー、及び乳化分散剤(ハイドロトロープ)の配合などで代用するか、また重曹+ソーダ灰+珪酸塩の組み合わせがアルカリビルダーの羅列として採用されているものはあるが、重曹と、具体的にどの成分(ラジカル)が働きあって、安定な組成体を形成するに至っていない。
【本発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、重曹を主成分として、しかも界面活性剤を含まないという大前提の中で、従来から不評点であった水溶性の改良、濃度を濃くした時の錆対策、水質悪化の解消、全ての成分の80%以上を食品系成分として、且つコスト的にも有利であり、仕上がりの風合いも優れ、細菌の残留が少ないために洗いカスや残菌による臭気の発生などが改良された、洗浄剤にとって誠に的を得た成分組成、製品コンセプトを有するものである。
【0007】
本発明は、本来保有する重曹の洗浄力をよりパワフルに向上させ、断片的に併用されていた重曹の利用を収束させ、しかも乱立する、重曹に組成する第2成分以降の正体をより明確化し、使用する者にとって安全安心であり、洗浄剤としての期待を裏切らない事を生命とするものである。
【0008】
それには重曹の正確を熟知し、それぞれの使用時に無駄にならず、十二分にその効果を発揮することに注目し、しかも商品としてのライフケア(保存性)をキープする、出来る限り総合的にエコノミーである生活日常品としての責任を全うすべきであると考え、消費者に一層の安心感があり、重曹の効果を数倍にも発揮させ、本発明を実証させたものである。
【0009】
そこでまず、重曹が水中で炭酸水素イオン(HCO)に注目し、優れたバランスの取れた使用で炭酸ガスの水和反応の作用を促進し、分散浸透(拡散)と緩衝などの界面活性作用を生かす新たなる方法として、重曹の分子量(=84)の1.5〜3倍の溶解度、水に30w%以上で中性〜アルカリ性(pH6〜10)の有機塩基酸のNa塩が保存中の安定性が良いことから、最終的に下記の塩類の併用がベストであることを見出したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、クエン酸(三塩基カルボン酸の3Naまたは2Na)、及びグルコン酸塩が、重曹との見かけ比重,pH,外観共、共通に存在することをプレテストで確かめ、本発明の組成の礎とした。特にクエン酸塩とグルコン酸塩の量は、重曹100w%に対して、クエン酸塩は10〜50w%、グルコン酸塩は10〜60w%、即ち重曹100に対しては両者で30〜60w%(重曹の1/2〜1/3)を含ませることで、次に第3以下の成分を含ませることとなる。
【0011】
とりわけ有機酸(クエン酸とグルコン酸)との併用は、クエン酸塩単独より1.5倍以上もの洗浄力をキープする事が判明した。洗浄力の比較は簡便法(EMPA汚染布)を用いて、それぞれの1%水溶液を200mlトールジャーに100ml入れ、5分振り洗い、1分すすぎ、その後に脱水とアイロンプレスを施し、反射率で対比する。これによると、重曹100gにクエン酸Naを25g(a)、重曹100gにクエン酸Naを15gとグルコン酸Naを12g(b)の2通りの反射率をみると、(a)は74%、(b)は91%と2種併用した法が15%以上勝っている。
【0012】
本発明の組成物を大概百分率で下に示す(100w%の比率)。
重曹:30〜65w%,有機酸塩(クエン酸塩+グルコン酸塩):15〜25w%,炭酸塩:10〜60w%,過炭酸塩(PC):5〜20w%,珪酸塩:5〜15w%,洗浄補助剤:0.5〜3w%(炭酸塩以下4種のアルカリ分散系ビルダーは10〜60w%)。条件として、この場合は5000ppm(0.5%)水溶液でpH11.5を超えず、1%水溶液で少なくともpH8.5、好ましくはpH8.5〜11.0をキープするように、アルカリ剤と珪酸塩の量をコントロールする。このpHのバランスを支配するのが第3成分のアルカリ分散系ビルダーの存在である。この成分が主成分となる2者と相まって、本発明の効果を発揮する。
【0013】
これら重曹、及びクエン酸塩とグルコン酸塩の有機酸塩と、これら以外の第3成分の存在が重要であり、本発明の中で最終的に5〜60w%が与えられる。これは洗浄剤のコストバランスと安定性をキープする上で、ソーダ灰,有機酸塩,ゼオライト,過酸化物(PC,PS)分散剤などで占有されるが、当該成分の存在が、本発明の2大成分(重曹+有機酸塩)の効果を大幅に向上させる。とりわけ、ソーダ灰,カリ灰,メタ珪曹,過炭酸ソーダ,ゼオライトが中心となる。この第3物質を便宜上「アルカリ分散系ビルダー」とする(組成物のpHが、5000ppm水溶液で8.5〜11以内であること)。
【0014】
本発明で[0012]の各成分のシェアを担保する場合、この範囲と同一効果の有効成分を含むことも構わない。例えば酒石酸塩,ロッシェル塩,酢酸塩,安息香酸塩,グリコール酸塩,リン酸塩,サリチル酸塩など、食品系物質であれば良い。
【0015】
必要により、本発明では高分子ポリマー(水溶性)で、再汚染防止ビルダー(PVA,PVP,CMC,ヒドロキシプロピルセルロース,ポリビニルブチルエーテル/無水マレイン酸,シクロデキストリン,可溶化澱粉,PEG−4000〜6000,アクリル酸アミノポリマー(分子量10万以上))、あるいは微少の中鎖脂肪酸(カプリル酸,カプリン酸,イソ吉草酸,C5〜16−COOH)を分散化剤として配合しても良い。また酸化チタン,タルク,シリカ,ベントナイトなどを分散剤としたり、着色剤,香料,可溶化剤(トルエンスルホン酸ソーダ,ベンゼンスルホン酸ソーダ,尿素など)、酵素剤(プロテアーゼ,リパーゼ,アミラーゼ,セルラーゼなど)を、適宜本発明のコンセプトを崩さない程度に加入することを妨げない。
【0016】
本発明の評価方法は色々あるが、一般的には古くから使用している人工汚染布テスト法で、ターゴトメーターを使用し、洗浄布(Rw),汚染布(Rs)、及び元の白地布(R0)とし、反射率(D)を求める。D[%]=((Rw−Rs)/(R0−Rs))×100で求める。Dが大きいほど洗浄力が良い事を示す。ターゴトメーターが無い時は撹拌機(100〜300rpm)を使い、500mlの攪拌槽に200mlの洗剤液を入れ、洗浄布を浸漬させて、液温20±2℃,洗浄時間10分,すすぎ2分,脱水,アイロンプレスドライでも可能である。
【0017】
しかも本発明の組成物は、全体の配合組成の80%以上が食品系成分を選定しており、PRTRに該当しない化合物であることが必要である。これは本発明品が、使用される者にとっていかに安全性に配慮しているかを証すものである。
【本発明の効果】
【0018】
本発明のもたらす、洗濯洗浄用として、正に理想の成果を上げることが出来る。
1,界面活性剤や蛍光剤,着色料,フレグランスなどの化学物質を基本的に含まないので、水質汚染も少なく、人や洗濯物にも相性が良く、安心して誰でも使用できる。
2,抜群のすすぎ性であるため(市販品の1/2〜1/3)、その分、水量,電気代,洗浄コストを軽減できる。
3,重曹という食品系の原料を中心に、80%以上をこれらで占めたものとして、安心安全という2大コンセプトを達成し、洗浄力は市販のものと遜色ないというメリットがある。勿論、用途も衣料品から手洗い用はもとより、従来のものと同様の範囲に及ぶ。
4,全てが有効成分で、石けんカス,洗剤カス,水垢などの発生が少ない。
5,有機微生物発生源の少なく、カルボン酸塩と重曹の組み合わせで化学的に消臭や防菌と、風合いの改良も達成する(余計なものが入っていると腐りやすい)。
6,重曹自体が水質汚染を低減する効果があり、エコロジーファーストの商品である。
7,特に化学過敏症,アレルギー症の方、高齢者や乳幼児などの肌をケアすることが出来る、着るスキンケア品である。
【0019】
以下、本発明の実施例として、具体的にその効果を証明する。
【表1】

【0020】
1,洗浄率と水の汚れ具合
水30Lに各サンプルを20g入れる、使用する汚染布はEMPA116を用いる。
比較対象品として(A)大手品の界面活性剤(LAS)20%,酵素,漂白剤,蛍光剤配合、及び(B)中小OEM品の界面活性剤15%,酵素,漂白剤,ドロマイト配合の、2種を併せて比較する(使用濃度は共に水30Lに20g)。
これらを用いて、水温20℃で、洗浄10分(120rpm),すすぎ120秒,脱水,乾燥を施して比較する。
ターゴトメーターで洗浄布(Rw),汚染布(Rs),白布(R0)の反射率(D)を洗浄率[%]とした。
D[%]=((Rw−Rs)/(R0−Rs))×100とし、Dはn=3の平均とする。Dが大きい程、洗浄力が大きいことを示す。
また、水の汚れ具合は下記にて判定する。
殆ど汚れ無し〜少し灰色系の透明:○
少し濁る:△
濁る、または水不溶分沈降:×
【表2】

【0021】
2,泡立ちテスト
JIS K−3362のロスマイルス法に準じる(0.1%水溶液,20℃,n=3の平均)。
【表3】

本発明品の組成物の方が、明らかに制泡効果があり、大幅に洗浄時間を節約できる。
【0022】
3,重曹の必要性
本発明品の重曹を主成分とした必要性を立証した。
本発明品1〜3と、これらの成分の配合割合を変えた比較品(1a,2a,3a)を試作し、ポリエステル60%/コットン35%のワイシャツ,アクリル45%/ポリエステル35%/コットン20%のセーターの2種を、それぞれ3着洗濯とすすぎ(2分)、脱水(2分)を行い、温度30℃,湿度70%RHの空間で24時間放置して自然乾燥(室内干し)させた時の、臭気と風合いを比較した。
2種の洗濯物を水洗いしたものをブランクとし、それとの対比を5人のモニターによって官能テストを実施し、その結果を示す。結果の表示は下記の通り。
ブランクと比べて優れている:○
ブランクと比べて変わらず:△
ブランクと比べて劣る:×
【表4】

【表5】

以上から、本発明の重曹のイオン効果が風合いと臭いの項目で有意義を生じた事を証明している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重炭酸ナトリウムを主成分とし、次の組成物類を含有する、界面活性剤を含まない洗浄剤組成物。
(1)〜(4)であって、
(1)重曹(NaHCO)が30〜70w%
(2)クエン酸塩(Na)が5〜20w%
(3)グルコン酸塩(Na)が5〜25w%
(4)アルカリ分散ビルダーが5〜60w%
5000ppmの水溶液のpHが8.5〜11で、組成成分の80%以上が食用または食品添加物成分とする洗浄剤組成物。
【請求項2】
[請求項1]記載のアルカリ分散ビルダーとして、炭酸塩が少なくとも10w%以上、珪酸塩が少なくとも10w%以上、過酸化物(PC,PSなど)が5〜30w%含んでなる洗浄剤組成物。
【請求項3】
[請求項2]記載のアルカリ分散ビルダーとして、炭酸塩,珪酸塩,過酸化物に加え、酵素及び再汚染防止剤として水溶性ポリマーを含む洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2013−53288(P2013−53288A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205252(P2011−205252)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(509036300)株式会社東企 (13)
【Fターム(参考)】