説明

界面活性剤含有水の処理方法および処理装置

【課題】オゾン含有ガスの吹き込みによる発泡を抑制し、安定した処理を行うことができる界面活性剤含有水の処理方法および処理装置を提供する。
【解決手段】界面活性剤含有水を流路5に導入して入口51から出口52方向に流し、界面活性剤含有水の流れに沿った複数の位置でオゾンを添加する。オゾンの添加量は、出口52に最も近い位置に配置された最終段オゾン反応設備20での添加量が最も多くなるようにする。例えば、前段側オゾン反応設備10と最終段オゾン反応設備20の2箇所でオゾンを添加する場合、前段側オゾン反応設備10で全オゾン添加量の5〜40容量%程度を添加し、残りのオゾンを最終段オゾン反応設備20で添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品洗浄廃水等の界面活性剤含有水の処理方法および処理装置に関し、特に、オゾンガスによる界面活性剤含有水の処理方法および処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工場や液晶等の表示装置製造工場では、製品の製造過程でウェハ等を洗浄する洗浄用水として不純物濃度が極めて少ない超純水が使用されている。しかし、超純水のみによる洗浄では、表面張力のためにウェハ等の微細な部分の洗浄が困難となる場合がある。そこで近年、超純水に界面活性剤やアルコール等の有機物を添加して表面張力を低下させてウェハ等を洗浄する方法が用いられるようになっている。
【0003】
このため、半導体製造過程等で排出される廃水には超純水に添加された界面活性剤が含まれる場合がある。こうした電子部品洗浄廃水等の界面活性剤含有水の処理方法としては、活性炭吸着法、泡沫分離法、化学的分解法、および生物処理法等が知られている。化学的分解法としては、界面活性剤含有水に紫外線を照射する紫外線照射法、オゾン等の酸化剤を添加する酸化剤添加法等がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、界面活性剤含有水にオゾンを添加した後、水素を添加する界面活性剤含有水の処理方法が開示されている。特許文献1に開示された方法では、界面活性剤含有水にオゾンを添加して界面活性剤を酸化分解させる。次に、水素を添加することにより、処理水に残存するオゾン等の酸化剤を還元する。
【特許文献1】特開2000−271577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでオゾンの生成方法としては、空気または酸素を原料として放電を行うことによりオゾンを発生させる放電方式と、純水を電気分解してオゾンを発生させる電解方式とがある。電解方式では、オゾン濃度が20質量%程度のオゾン水溶液が得られる等の理由で、特許文献1では電解方式により発生させたオゾンを用いることが好ましいとされている。しかし、電解方式で発生させることができるオゾンは1g/h程度にも満たず、電解方式では大量のオゾンを発生させることができない。
【0006】
一方、放電方式によれば300kg/h程度ものオゾンを発生させることができる。このため、従来、大量の界面活性剤含有水をオゾンにより処理する場合、放電方式で発生させたオゾン含有ガスが用いられている。しかし、放電方式で発生させたオゾンを含むオゾン含有ガスのオゾン濃度は低い。例えば、空気を原料として発生させたオゾン含有ガスのオゾン濃度は40g/Nm(2.7質量%)程度であり、酸素を原料として発生させたオゾン含有ガスでもオゾン濃度は150〜200g/Nm(10〜13質量%)程度に留まる。
【0007】
したがって、界面活性剤含有水に含まれる界面活性剤等の有機物を酸化分解させるためには大量のオゾン含有ガスを界面活性剤含有水に吹き込む必要がある。例えば、界面活性剤含有水に含まれる全有機態炭素(TOC)を分解するために必要なオゾン量をTOCの8倍(質量比)とした場合、TOC濃度が20mg/Lの廃水処理に必要なオゾン量は160mg/Lとなる。この場合、濃度150mg/Lのオゾン含有ガスを使用しても、オゾンによる酸化分解を行う反応槽の気液比は1.0を超え、反応槽に大量のオゾン含有ガスを吹き込むことにより、激しい発泡が生じる。
【0008】
特に、TOC成分として非イオン性の界面活性剤を含む界面活性剤含有水を反応槽に導入し、反応槽の下部に設けた散気管からオゾン含有ガスを吹き込む場合、激しい発泡が生じる。この結果、反応槽の気液界面を安定させることができず、廃オゾン含有ガスを排出する廃オゾン管から泡が流出するといったトラブルが生じる。
【0009】
本発明は上記課題に対し、発泡性の強い界面活性剤含有水のオゾン処理に際し、オゾン含有ガスの吹き込みによる発泡を抑制し、安定した処理を行うことができる界面活性剤含有水の処理方法および処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
具体的には、本発明は以下を提供する。
【0011】
(1) 界面活性剤含有水にオゾンを添加する界面活性剤含有水の処理方法であって、 前記界面活性剤含有水を、入口および出口を備える流路に流して前記流路に沿う複数の位置で前記オゾンを前記界面活性剤含有水に添加し、前記出口に最も近い位置において最も多くのオゾンを添加する界面活性剤含有水の処理方法。
【0012】
(2) 前記オゾンを添加する前に、前記界面活性剤含有水にアルカリを添加する(1)に記載の界面活性剤含有水の処理方法。
【0013】
(3) 前記オゾンを添加する前に、前記界面活性剤含有水にアルカリと過酸化水素とを添加する(1)に記載の界面活性剤含有水の処理方法。
【0014】
(4) 入口から出口に向かって界面活性剤含有水が流れる流路を含む界面活性剤含有水の処理装置であって、 前記流路に沿って設けられ、前記流路を流れる前記界面活性剤含有水に前記オゾンを添加して界面活性剤を酸化分解する複数のオゾン反応設備をさらに含み、 前記複数のオゾン反応設備のうち、前記出口に最も近い位置に設けられた最終段オゾン反応設備は、他のオゾン反応設備より多くの前記オゾンを前記界面活性剤含有水に添加する界面活性剤含有水の処理装置。
【0015】
(5) 前記最終段オゾン反応設備は、オゾン供給手段を有する気液接触型の反応槽であり、 前記他のオゾン反応設備として、前記流路に前記オゾンを供給する流路内オゾン供給手段と、前記流路内の界面活性剤含有水を攪拌する攪拌手段と、を有する攪拌反応設備を含む(4)に記載の界面活性剤含有水の処理装置。
【0016】
(6) 前記複数のオゾン反応設備の少なくともいずれか一つより入口に近い位置に設けられ、前記界面活性剤含有水にアルカリを添加するアルカリ添加手段をさらに含む(4)または(5)に記載の界面活性剤含有水の処理装置。
【0017】
(7) 前記複数のオゾン反応設備の少なくともいずれか一つより入口に近い位置に設けられ、前記界面活性剤含有水にアルカリを添加するアルカリ添加手段と、過酸化水素を添加する過酸化水素添加手段と、をさらに含む(4)または(5)に記載の界面活性剤含有水の処理装置。
【0018】
本発明により処理される被処理液は、少なくとも界面活性剤を含む。界面活性剤の濃度は特に限定されず、例えば界面活性剤の濃度が3〜30mg/Lであって、界面活性剤以外の有機物を含んでTOC濃度が5〜50mg/L程度の界面活性剤含有水の処理に用いることができる。本発明は特に、電子部品製造工場廃水のような低TOC濃度廃水にも使用でき、具体的には界面活性剤の濃度が1〜5mg/L程度、TOC濃度が2〜10mg/L程度の界面活性剤含有水にも適用できる。
【0019】
本発明は特に、発泡性の強い非イオン性界面活性剤を含む界面活性剤含有水の処理に好適に使用でき、エチレンオキサイド(EO)鎖を有する難分解性の界面活性剤を含む界面活性剤含有水の処理にも適している。ただし、界面活性剤の種類は特に限定されず、アニオン性界面活性剤、およびカチオン性界面活性剤を含むイオン性界面活性剤を含む界面活性剤含有水の処理に本発明を用いることは排除されない。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(APE)、脂肪酸アルカノールアミド、およびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等がある。
【0020】
オゾンは、空気または酸素を原料として製造されるオゾン含有ガスとして界面活性剤含有水に添加できるが、電解方式で製造されたオゾンを使用することは排除されない。オゾンの添加量は、界面活性剤を炭酸ガスにまで完全に分解するために必要な量(以下、「完全分解必要量」)であることが好ましい。ただし、反応効率によっては完全分解必要量を超えるオゾンを添加してもよく、本発明に係る処理を行った後、生物処理、吸着処理、または脱イオン処理等を行う場合等は、完全分解必要量未満の添加量としてもよい。
【0021】
具体的には、界面活性剤を炭酸ガスにまで完全分解する場合はオゾンの添加量は、界面活性剤に対して20〜50倍(質量比)とすることが好ましい。また、本発明による処理後に生物処理を行う場合、オゾンの添加量は、界面活性剤に対して2〜10倍(質量比)として界面活性剤を生物分解可能な形態、すなわち有機酸やグリコール類にまで分解することが好ましい。
【0022】
本発明では、界面活性剤を分解するために必要なオゾンを、一定方向に流れる界面活性剤含有水の流れ方向に沿った複数の位置で分割して添加し、特に最終段、つまり出口に最も近接する位置において最も多くのオゾンを添加する。最終段で添加するオゾンの添加量は、全体の添加量の60〜95%とすることが好ましい。本発明では、オゾンの添加位置を複数に分割していることから、反応効率等によっては、最終段で添加するオゾン量をあらかじめ設定した添加量より多くしてもよく、逆に少なくしてもよい。
【0023】
オゾンの添加位置は2箇所以上であればよく、オゾン添加位置を2箇所とする場合は、最終段より前段、つまり最初のオゾン添加位置で、全体の添加量の5〜40%のオゾンを添加する。また、オゾンの添加位置を3箇所以上とする場合、最終段以外の複数のオゾン添加位置でのオゾン添加量は、互いに同一であってもよく、異なってもよい。オゾン添加位置が多いと界面活性剤の分解率を向上させることができる一方、オゾン添加のために要する機器類が多くなるため、オゾン添加位置は2〜3箇所とすることが好ましい。
【0024】
本発明に従い、界面活性剤の分解に必要なオゾンの添加位置を、界面活性剤含有水の流れに沿った複数箇所に分割すれば、1箇所でオゾンを添加する場合に比して、1箇所あたりのオゾン添加量が少なくなるため、発泡を抑制することができる。特に、本発明では、界面活性剤含有水の流路の出口に最も近接する最終段で全体の添加量の大部分を添加し、最終段より入口側、つまり前段側でのオゾン添加量を少なくすることにより、発泡を抑制しつつ、高いオゾン分解効率を得ることができる。
【0025】
これは、入口側で添加された少量のオゾンが、界面活性剤の界面活性を示す部分(疎水性部分と親水性部分との境界部)と容易かつ速やかに反応することにより、界面活性剤が変性されるためと推察される。すなわち、まず、入口側で添加された少量のオゾンにより界面活性剤が変性されることで発泡性が低減されるため、最終段で大量のオゾンを添加しても発泡を抑制できるものと考えられる。
【0026】
オゾン添加位置には、界面活性剤含有水にオゾンを添加することでオゾンと界面活性剤とを反応させるオゾン反応設備を設ける。オゾン反応設備は、界面活性剤含有水にオゾンを添加するオゾン供給手段を備えていればよいが、オゾンと界面活性剤とを十分に反応させるため、界面活性剤含有水が所定の時間滞留できる反応槽をさらに備えることが好ましい。特に、界面活性剤含有水が流れる流路の出口に最も近い位置に設けられるオゾン反応設備(最終段オゾン反応設備)は、界面活性剤とオゾンとの反応時間を確保するため、散気管等のオゾン供給手段を有する気液接触型の反応槽を備えることが好ましい。
【0027】
一方、界面活性剤の界面活性を示す部分はオゾンとの反応速度が高いため、最終段オゾン反応設備より入口側に設けられるオゾン反応設備(以下、「前段側オゾン反応設備」は、流路内を流れる界面活性剤にオゾンを添加する流路内オゾン供給手段を少なくとも備えていればよい。流路内オゾン供給手段としては、オゾン注入用の配管、エジェクタ、多孔管、および給気口付き渦流ポンプ等が挙げられる。前段側オゾン反応設備は、特に、オゾンと界面活性剤含有水との接触効率を高めるため、流路内オゾン供給手段に加え、流路内の界面活性剤含有水を攪拌する作用を有する攪拌手段を備えることが好ましい。攪拌手段としては、含気運転可能な渦流ポンプ、およびラインミキサ等が挙げられる。このように、前段側オゾン反応設備では反応槽を省略することで装置を簡素にできる。
【0028】
本発明では、オゾンによる酸化反応を促進するために、界面活性剤含有水にオゾンを添加する前にアルカリを添加し、アルカリの共存下で界面活性剤含有水にオゾンが添加されるようにしてもよい。アルカリの添加量は、界面活性剤含有水のpHを9〜11にするために必要な量とすることが好ましい。添加するアルカリの種類は特に限定されず、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム等を使用できる。
【0029】
また、アルカリに加え過酸化水素も界面活性剤含有水に添加してもよい。オゾン添加前の界面活性剤含有水にアルカリおよび過酸化水素を添加する場合、アルカリと過酸化水素の添加順序は特に限定されない。また、アルカリの添加量は過酸化水素を添加しない場合と同様とすればよく、過酸化水素の添加量は、オゾンの添加量に対して質量比で0.1〜1となる程度が好ましい。
【0030】
このように、界面活性剤含有水にアルカリを単独または過酸化水素とともに添加した後、オゾンを添加することで、ヒドロキシルラジカルを生成させ、酸化反応を促進できる。アルカリ(および過酸化水素)は、複数に分割したオゾン添加位置の少なくとも1箇所で、オゾン添加に先立って添加すればよいが、各オゾン添加位置の前で添加してもよい。特に、ヒドロキシルラジカルの生成効率を向上させるためには、最も出口に近いオゾン添加位置の前でアルカリ(および過酸化水素)を添加することが好ましい。
【0031】
反応槽の形状は限定されず、反応槽の下部からオゾン含有ガスを界面活性剤含有水に供給し、反応槽の上部から廃オゾン含有ガスを取り出す構成を有していることが好ましい。また、被処理水は反応槽下部から供給してもよいし、反応槽の上部に散水手段を設けて被処理水を散水手段から散水して供給してもよい。このように液面に散水すれば発泡をより抑制しやすい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、界面活性剤含有水の発泡を抑制し、界面活性剤を酸化分解するために必要な量のオゾンを添加できる。このため本発明によれば、高い分解率で界面活性剤を分解させ、かつ、発泡によるトラブルを防止して安定して界面活性剤含有水を処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明について図面を用いて詳細に説明する。以下、同一部材には同一符号を付し、説明を省略又は簡略化する。図1は、本発明の一実施形態に係る界面活性剤含有水の処理装置(以下、単に「処理装置」という)1の模式図である。処理装置1は、被処理液である界面活性剤を含む界面活性剤含有水が流れる流路5と、流路5の途中に設けられた前段側オゾン反応設備10と、最終段オゾン反応設備20と、を含む。流路5は入口51および出口52を備え、界面活性剤含有水は入口51から出口52に向かって流れるように入口51から処理装置1内に導入され、出口52から排出される。
【0034】
本実施形態では、前段側オゾン反応設備10より入口51側に第1過酸化水素添加手段および第1アルカリ添加手段が設けられている。また、最終段オゾン反応設備20より入口51側には、第2過酸化水素添加手段および第2アルカリ添加手段が設けられている。上述したとおり、これらの過酸化水素添加手段およびアルカリ添加手段は省略することもできる。
【0035】
過酸化水素添加手段は、流路5内を流れる界面活性剤含有水に過酸化水素を添加できる部材で構成でき、例えば一端が過酸化水素を貯留する貯槽に接続された配管とすることができる。本実施形態では、第1過酸化水素添加手段は、第1過酸化水素注入管31で構成され、第2過酸化水素添加手段は、第2過酸化水素注入管32で構成されている。第1過酸化水素注入管31および第2過酸化水素注入管32は、どちらも一端が過酸化水素貯槽30に接続され、他端が流路5を構成する配管に接続されている。
【0036】
アルカリ添加手段は、流路5内を流れる界面活性剤含有水にアルカリを添加できる部材で構成でき、例えば一端がアルカリを貯留する貯槽に接続された配管とすることができる。本実施形態では、第1アルカリ添加手段は、第1アルカリ注入管41で構成され、第2アルカリ添加手段は、第2アルカリ注入管42で構成されている。第1アルカリ注入管41および第2アルカリ注入管42は、どちらも一端がアルカリ貯槽40に接続され、他端が流路5を構成する配管に接続されている。
【0037】
前段側オゾン反応設備10は、流路5の途中に設けられた攪拌手段としての渦流ポンプ11および渦流ポンプ11より入口51側の流路5に接続された流路内オゾン供給手段を含んで構成されている。本実施形態では、流路内オゾン供給手段は、オゾン含有ガスを流路5に吹き込む部材で構成でき、例えば本実施形態では、一端が流路5に接続されたオゾン注入管12で構成されている。オゾン注入管12の他端は、オゾン発生器25に接続されている。
【0038】
最終段オゾン反応設備20は、被処理水(前段側オゾン反応設備10からの処理水)供給手段としての散水管23とオゾン供給手段としての散気管21を有する気液接触型の反応槽22で構成されている。散気管21は、一端がオゾン発生器25と接続されており、オゾン発生器25で生成されたオゾン含有ガスが散気管21を介して反応槽22下部から界面活性剤含有水に添加される。反応槽22の大きさは特に限定されないが、界面活性剤含有水の滞留時間が、界面活性剤がオゾンにより酸化分解されるために必要な時間となるようにすることが好ましく、例えば、界面活性剤含有水の滞留時間が5〜10分となるようにするとよい。
【0039】
本実施形態では、オゾン発生器25で生成されたオゾン含有ガスは、オゾン路25Aを介してオゾン注入管12と、散気管21とに供給される。本発明では特に、界面活性剤含有水に添加されるオゾン含有ガスの大部分(60〜95%程度)は最終段オゾン反応設備20から界面活性剤含有水に添加する。このため、オゾン発生器25で生成されたオゾン含有ガスの大部分は散気管21に供給され、オゾン注入管12には生成されたオゾン含有ガスの5〜40%程度が供給されるように構成されている。
【0040】
次に、上記の処理装置1を用いて、界面活性剤含有水を処理する方法について説明する。まず、半導体製造廃水等の界面活性剤含有水を被処理液として、入口51から流路5内に導入する。流路5の途中には必要に応じてポンプ等を設け、界面活性剤含有水が入口51側から出口52側に向かって流速0.5〜2m/sec程度の速さで流路5内を流れるようにするとよい。
【0041】
本実施形態に係る処理装置1では、流路5に沿って、入口51側から出口52側に向かって第1過酸化水素注入管31、第1アルカリ注入管41、オゾン注入管12、渦流ポンプ11、第2過酸化水素注入管32、第2アルカリ注入管42、および反応槽22がこの順に設けられている。そして、入口51側から出口52側に向かう方向に流れる界面活性剤含有水には、その流れ方向に沿ってまず、第1過酸化水素注入管31から過酸化水素、および第1アルカリ注入管41から水酸化ナトリウム等のアルカリが添加され、pHが9〜11程度に調整される。
【0042】
次いで、pHを上げた界面活性剤にオゾン注入管12から少量のオゾン含有ガスが添加される。オゾン注入管12の直後には渦流ポンプ11が設けられており、少量のオゾンが添加された界面活性剤含有水は、渦流ポンプ11により攪拌される。前段側オゾン反応設備10では少量のオゾンが添加できればよいため、渦流ポンプ11は省略してもよい。また、オゾン注入管12と渦流ポンプ11とを設ける代わりに、エジェクタとラインミキサを流路5の途中に設けてもよい。このように、前段側オゾン反応設備10で少量のオゾンを添加した界面活性剤含有水を、渦流ポンプ11等で攪拌して大きなせん断力を与えることで、少量のオゾンを界面活性剤と効率よく反応させることができる。
【0043】
前段側オゾン反応設備10では、少量のオゾン添加により界面活性剤が変性され、発泡性が低減される。これは、少量添加されたオゾンは、主として界面活性剤の疎水性部分と親水性部分との境界部と反応して、界面活性剤の界面活性を示す部分が変性することによるものと推察される。このため、最終段オゾン反応設備20で大量のオゾンを添加しても被処理液の発泡を抑制できる。そこで、本発明では前段側オゾン反応設備10で、処理装置1で界面活性剤含有水に添加される全オゾン量の5〜40%程度を添加し、最終段オゾン反応設備20で残りの量のオゾンを添加する。
【0044】
なお、オゾンと界面活性剤との反応により、界面活性剤が変性して有機酸等が生じるため、処理装置1では最終段オゾン反応設備20の前に第2過酸化水素注入管32と第2アルカリ注入管42を設けている。これにより、前段側オゾン反応設備20を通過した界面活性剤含有水に過酸化水素とアルカリを添加し、オゾンによる酸化反応が促進される状態で、最終段オゾン反応設備20での処理を行なう。
【0045】
最終段オゾン反応設備20では、反応槽22に被処理液(界面活性剤含有水)を導入し、反応槽22下部に接続した散気管21からオゾン含有ガスを吹き込んで、被処理液を所定の時間、反応槽22内に滞留させる。最終段オゾン反応設備20では、処理装置1で界面活性剤含有水に添加される全オゾン量の大部分(60〜95%程度)を被処理液に添加して界面活性剤を分解する。最終段オゾン反応設備20での処理後、界面活性剤が分解された処理水は出口52から取り出し、必要に応じて生物処理等の後処理を行ない、超純水製造用の原水等として利用できる。
【実施例】
【0046】
[実施例]
以下、実施例に基づき、本発明をさらに詳しく説明する。実施例としては、図1に示す処理装置1を用い、界面活性剤としてAPEを含む界面活性剤含有水を被処理液とした。界面活性剤含有水は、純水にTOC濃度21mg/LとなるようにAPEを溶解させて作成した合成廃水である。
【0047】
渦流ポンプ11としては、出口圧0.3Mpaの渦流ポンプ(株式会社ニクニ製)を用い、界面活性剤含有水が、流路5内を入口51から出口52に向かって流速350L/hで流れるように処理装置1に導入した。
【0048】
本実施例では各オゾン反応設備でのオゾン添加に先立ち、過酸化水素とアルカリを添加した。過酸化水素としては、濃度35質量%のものを用い、アルカリとしては4質量%の水酸化ナトリウムを用いた。過酸化水素の添加量は、第1過酸化水素注入管31からの添加量を15mg/Lとし、第2過酸化水素注入管32からの添加量を250mg/Lとした。なお、第2過酸化水素注入管32は、流路5に接続せずに、反応槽22の下部に接続するようにした点で図1の処理装置1と異なる構成とした。
【0049】
一方、水酸化ナトリウムは、第1アルカリ注入管41および第2アルカリ注入管42それぞれから流路5に注入した。水酸化ナトリウムの添加量は、界面活性剤含有水のpHを10にする量とした。
【0050】
オゾン発生器25としては、酸素を原料として放電方式でオゾン濃度150g/Nmのオゾン含有ガスを生成する装置を用いた。オゾン発生器25で発生されたオゾン含有ガスは、20L/hの供給速度でオゾン注入管12から流路5内に注入し、反応槽22に取り付けられた散気管21への供給量は350L/hの供給速度となるようにした。
【0051】
反応槽22としては、直径300mm、高さ2,700mmの円筒状の気液接触型オゾン反応塔を用いた。反応槽22の下部には散気管21を接続してオゾン含有ガスを界面活性剤含有水に吹き込むとともに、反応槽22上部より散水管23を介して被処理水(前段側処理水)を散水した。
【0052】
上記条件で試験を行ない、渦流ポンプ11出口で、前段側オゾン反応設備10で処理された界面活性剤含有水(前段側処理水)を採取し、前段側処理水の界面活性剤濃度を測定した。また、反応槽22出口で、最終段オゾン反応設備20で処理された界面活性剤含有水(以下、最終段処理水)を採取し、最終段処理水の界面活性剤濃度の測定も行った。界面活性剤の濃度は、分光蛍光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、F−4500)を用い、励起波長230nm、蛍光波長305nmで測定した。測定結果は、前段側処理水の界面活性剤濃度が3.3mg/L、最終段処理水の界面活性剤濃度が0.37mg/Lで、界面活性剤の除去率は98.2%であった。また、反応槽22の気液界面は安定し、2時間以上の連続運転ができた。
【0053】
[比較例]
比較例として、オゾン注入管12に設けたバルブ(図示せず)を閉じることで前段側オゾン反応設備10でのオゾン添加を行わず、反応槽22で全オゾン量を添加するようにした。具体的には、反応槽22に接続した散気管21からのオゾン含有ガスの供給量を370L/hとした。その他の条件は実施例と同じにして試験を行なったところ、反応槽22の気液界面が乱れた。この結果、最終段処理水の界面活性剤濃度は2.4mg/Lであり、界面活性剤の除去率は88.5%に低下した。また、反応槽22内に気泡が充満して気液界面が低下したため、約30分で処理を停止せざるを得なくなった。
【0054】
このように本発明によれば、発泡による処理装置1の運転トラブルを防止し、界面活性剤を高い分解率で安定して分解することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、界面活性剤を含む排水の処理に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係る界面活性剤含有水の処理装置の模式図である。
【符号の説明】
【0057】
1 処理装置
5 流路
10 前段側オゾン反応設備
11 渦流ポンプ
12 オゾン注入管
20 最終段オゾン反応設備
21 散気管
22 反応槽
23 散水管
25 オゾン発生器
25A オゾン路
31 第1過酸化水素注入管
32 第2過酸化水素注入管
41 第1アルカリ注入管
42 第2アルカリ注入管
51 入口
52 出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤含有水にオゾンを添加する界面活性剤含有水の処理方法であって、
前記界面活性剤含有水を、入口および出口を備える流路に流して前記流路に沿う複数の位置で前記オゾンを前記界面活性剤含有水に添加し、前記出口に最も近い位置において最も多くのオゾンを添加する界面活性剤含有水の処理方法。
【請求項2】
前記オゾンを添加する前に、前記界面活性剤含有水にアルカリを添加する請求項1に記載の界面活性剤含有水の処理方法。
【請求項3】
前記オゾンを添加する前に、前記界面活性剤含有水にアルカリと過酸化水素とを添加する請求項1に記載の界面活性剤含有水の処理方法。
【請求項4】
入口から出口に向かって界面活性剤含有水が流れる流路を含む界面活性剤含有水の処理装置であって、
前記流路に沿って設けられ、前記流路を流れる前記界面活性剤含有水に前記オゾンを添加して界面活性剤を酸化分解する複数のオゾン反応設備をさらに含み、
前記複数のオゾン反応設備のうち、前記出口に最も近い位置に設けられた最終段オゾン反応設備は、他のオゾン反応設備より多くの前記オゾンを前記界面活性剤含有水に添加する界面活性剤含有水の処理装置。
【請求項5】
前記最終段オゾン反応設備は、オゾン供給手段を有する気液接触型の反応槽であり、
前記他のオゾン反応設備として、前記流路に前記オゾンを供給する流路内オゾン供給手段と、前記流路内の界面活性剤含有水を攪拌する攪拌手段と、を有する攪拌反応設備を含む請求項4に記載の界面活性剤含有水の処理装置。
【請求項6】
前記複数のオゾン反応設備の少なくともいずれか一つより入口に近い位置に設けられ、前記界面活性剤含有水にアルカリを添加するアルカリ添加手段をさらに含む請求項4または5に記載の界面活性剤含有水の処理装置。
【請求項7】
前記複数のオゾン反応設備の少なくともいずれか一つより入口に近い位置に設けられ、前記界面活性剤含有水にアルカリを添加するアルカリ添加手段と、過酸化水素を添加する過酸化水素添加手段と、をさらに含む請求項4または5に記載の界面活性剤含有水の処理装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−152185(P2007−152185A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348475(P2005−348475)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】