説明

界面活性剤増強ポリマーを含む洗浄組成物

自由イオン硬度の存在下で界面活性剤補助特性を与えるポリマーを同定、選択、及び設計する方法。こうした方法はまた、洗浄組成物中で用いられる時に洗浄の増加を結果としてもたらす。またポリマーと界面活性剤の複合物は、自由イオン硬度(free in hardness)の存在下にある時、430以下のSB50値を示し、自由イオン硬度(free in hardness)の存在下で界面活性剤単独に比べて利用できる界面活性剤の量を増加し、及び洗浄の改善をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーと界面活性剤との複合物であって、この複合物が自由イオン硬度の存在下にある時に430以下のSB50値を示し、自由イオン硬度の存在下で界面活性剤単独に比べて利用できる界面活性剤の量を増加し、及び洗浄の改善をもたらすようなポリマー及び界面活性剤の複合物に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄条件は、多くの場合、洗浄組成物中の界面活性剤の選択を決定づける。陰イオン性界面活性剤は、軟水条件下で良好な洗浄性能が既知であるが、しかしながら、自由硬度を有する条件下では凝集することが周知である。自由硬度、例えば遊離カルシウム又はその他の多価金属陽イオンは、陰イオン性界面活性剤の存在下では、陰イオン性界面活性剤が自由硬度と結合するために、多くの場合より高次の凝集体の形成(例えば、小胞及び結晶)を結果としてもたらす。これは、洗浄のために利用可能な陰イオン性界面活性剤の損失を結果としてもたらす。
【0003】
自由硬度の存在下で用いられる時に、陰イオン性界面活性剤系を硬度に対して耐性にするには、どのようにしたらよいかについて幾つかの既知の手法がある。エトキシル化及び/又は分子中への中鎖分岐の導入を介した陰イオン性界面活性剤の修飾、ビルダーの使用、及び補助界面活性剤の利用は、より高次の凝集体形成の問題に対処する。これらの手法にもかかわらず、陰イオン性界面活性剤を自由硬度の存在下で使用する時の、より高次の凝集体形成を有効に防ぐという問題はなお未解決のまま残っている。
【0004】
洗浄組成物が、界面活性剤とポリマーの混合物を含有することは既知である。ポリマーは、洗浄組成物において、特に、汚れ懸濁剤、汚れ放出剤、粘度調整剤、構造化剤、ゲル化剤、コアセルベート形成剤及びレオロジー制御剤のような複数の用途を有する。用途に応じて、ポリマーの構造は、その他の処方成分との相互作用を最小にするように、及び/又は相互作用を最大にするように(例えば、コアセルベートの形成を実現するために)のいずれかにおいて設計されてきた。
【0005】
「界面活性剤 − ポリマー」錯体の形成が、所望の洗浄の利益を提供する場合があることもまた既知である(特許番号PCT国際公開特許WO01/79408A1)。しかしながら同時に、洗浄の利益を実現するには遊離カルシウムの効率的な制御が重要であることが、厳重に述べられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、少なくとも1つの界面活性剤及び自由イオン(即ち、Ca2+及びMg2+)の硬度の存在下でポリマーから有効な洗浄効果を得るという問題がなお未解決のまま残っている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、20℃で少なくとも10ppmの溶解度、約1500〜200,000ダルトンの重量平均分子量を含み、並びに主鎖及び主鎖から伸びる少なくとも1つの側鎖を更に含み、及び側鎖がアルコキシ部分を含み、及び側鎖が末端部を、末端部が側鎖を終了させるように含むことを特徴とするポリマーに関する。ポリマーは、少なくとも1つの界面活性剤と接触して配置される時、少なくとも2gpgの自由イオンを有する水の存在下にある時、430以下のSB50値を有する。
【0008】
本発明は更に、界面活性剤援助ポリマーの最小モル量の使用を含む、少なくとも1つの界面活性剤の大量の凝集体を防ぐ方法及び利用可能な界面活性剤濃度に関する。
【0009】
本発明は更に、少なくとも1つの界面活性剤の存在下で用いるためのポリマーを選択する及び設計する方法に関し、この方法は
(a)次の計算をする工程。
log(1/SB50)=−2.150−0.903*CD+0.227*COPC−0.792*CD+0.123*ESO−0.007*SHBint10+0.112*dxvp5
相関関係(I)
(b)相関関係(I)の計算に基づいて適切なポリマーを選択する工程を含む。
【0010】
本発明はまた、洗浄組成物の約0.1重量%〜約20重量%の陰イオン性界面活性剤、及び洗浄組成物の約0.001重量%〜約30重量%の界面活性剤援助ポリマーを含み、このポリマーが、ポリイミンポリマー、アルコキシル化モノアミン、分岐状ポリアミノアミン、変性ポリオールエトキシル化ポリマー、及び疎水性ポリアミンエトキシレートポリマーから成る群から選択される洗浄組成物にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
イオン形態のカルシウムのような自由イオンの硬度は、的確なポリマーが選択される時には、ポリマーと界面活性剤との複合物の洗浄性能にとって有害でないことが、本発明により驚くべきことに発見された。界面活性剤とポリマーの錯体が、洗浄の利益を提供するのに非常に有益であることもまた本発明により発見された。理論に束縛されるものではないが、界面活性剤とポリマーとの間の相互作用の単なる強度は、自由硬度の存在が有る又は無い場合に観測される洗浄の利益に必ずしも相関しないと考えられている。
【0012】
本発明は、界面活性剤との組み合わせにより用いられる時に、大量の界面活性剤の凝集体、例えば単層及び多層小胞、結晶、及び液晶の凝集体の形成及び成長を防ぐポリマーに関する。こうしたポリマーは、本明細書において「界面活性剤援助」ポリマーと呼ばれる。本発明は、界面活性剤援助ポリマー、好ましくは陽イオン性及び/又は双極性のポリマーの使用を通じて、界面活性剤が硬度に敏感であるという問題に対処する。また一方、中性及び陰イオン性に荷電したポリマーは、この特性を所有するとして認められてきた。本発明は更に、PCT国際公開特許WO02/044686の特許に開示されるようなものに類似したQSAR法を通じて界面活性剤援助ポリマーを選択する方法に関する。
【0013】
(界面活性剤援助ポリマー)
本発明のポリマーは、主鎖及び主鎖から伸びる末端部を有する少なくとも1つの側鎖を含む。側鎖の末端部は、側鎖を終了させる。主鎖は原子、官能基、直鎖及び/又は分岐鎖の基の群であってもよく、それは事実上、相同又は非相同(共重合)であってもよい。主鎖は、骨格鎖又はコアとして一般に既知であるが、幾つかのポリマー構造においては同定するのが困難又は不可能である場合があり、そのため本明細書で使用する時、主鎖は、骨格鎖構造であってもよく、又はデントリマー、スター、若しくはその他の複雑なポリマーの場合には、側鎖がそこから伸びる中心のコア構造であってもよく、又は側鎖がそこに結合したヘテロ原子であってもよい。
【0014】
本発明のポリマーの側鎖は、ポリマーの主鎖から伸びる。少なくとも1つ、好ましくは1を超える側鎖が存在し、各側鎖は末端部を含み、この末端部は側鎖を終了させる。側鎖の末端部は、分散機能を提供する官能基を含む。分散機能を提供する官能基には、エトキシル化基、プロポキシル化基、ブトキシル化基、及びこれらの組み合わせの群から選択されるアルコキシ部分が挙げられる。分散機能は提供しないが、1つ以上の側鎖はまた、C1〜22脂肪族又はC7〜22芳香族炭化水素であってもよい。ポリマーの側鎖のアルコキシ部分の平均の数は、好ましくはブロック構造においては、約3〜約100の範囲であってもよく、及び例えば約5〜約50、更には例えば約10〜約40、及びなおより更には例えば約15〜約30の範囲であってもよい。ポリマーの少なくとも1つの側鎖は、少なくとも1つの、より好ましくは2つ以上のブロックのアルコキシ部分、好ましくはエトキシル化、プロポキシル化、及びブトキシル化基を含有しなくてはならない。側鎖の末端部はアルコキシ部分により終了してもよいが、別の実施形態では、ポリマーの主鎖の種類に依存して更に修飾又は官能化されてもよい。本明細書で使用する時、「修飾される」及び「官能化される」とは、末端部が化学反応を受けて、化学構造、電荷密度を変えられること、又はポリマーの化学及び構造特性を変化するための他の修飾を受けられることを意味する。
【0015】
1つの実施形態では、側鎖の末端部は、四級若しくはプロトン化した窒素又はその他の窒素誘導体、サルフェート部分、スルホネート部分、カルボキシレート部分、リン酸化部分、アミンオキシド又は別の疎水性部分により更に修飾又は官能化されてもよい。
【0016】
末端部以外の側鎖もまた、四級窒素部分、プロトン化した窒素部分、その他の窒素誘導体、例えばアシル部分、サルフェート、カルボキシレート、又は疎水性部分から選択される官能基を含んでもよい。
【0017】
1つの実施形態では、本発明の界面活性剤増強ポリマーは、少なくとも1つの正電荷を含む。本明細書で使用する時、「正電荷」とは、アルキル、芳香族アルキル及び/又はアルコキシ基を介する窒素の化学的四級化を意味するが、正電荷はまた、プロトン化のための適切な条件においてプロトン化した窒素の使用も意味し、並びにこれらの混合を意味する。界面活性剤増強ポリマーは、正電荷を有しなければならない。正電荷は、主鎖上又は少なくとも1つの側鎖上に位置していてもよい。
【0018】
本発明の界面活性剤増強ポリマーは、水溶性である。本明細書で使用する時、「水溶性」とは、界面活性剤増強ポリマーが、少なくとも10ppm、及び例えば10ppmを超えて、更には例えば50ppmを超えて液体溶液に可溶性であることを意味する。
【0019】
本発明の界面活性剤増強ポリマーは、約1500〜約200,000ダルトン、及び例えば約2000〜約100,000ダルトン、更には例えば約2200〜約20,000ダルトン、及びより更には例えば約2500〜約8,000ダルトンの重量平均分子量を有する。ポリマーの分子量は、文献において詳細に論じられる多様な技術によって決定できる。この出願では、ポリマーの分子量は、以下に論じられるように、ポリマーの構造的特徴からのH−NMRを用いて、合成プロセス中に間接的に計算された。
【0020】
ポリマーの分子量を決定するための好ましい計算は、以下の式(I)により示され及び記載されるように、1H−NMRによるポリマーの既知の特性からの間接的なものである。
【数1】

ここで、式(I)のMWポリマーは、ポリマーの平均分子量であり、式(I)のMW骨格鎖は、骨格鎖の平均分子量であり、式(I)の#側_鎖は、ポリマー分子中の側鎖の合計数であり、式(I)のMW側_鎖は、1つの側鎖の平均分子量であり、及び式(I)のMW官能化基は、すべての官能化基の分子量である。このプロセスでは、対イオンは、分子量の計算において無視される。
【0021】
骨格鎖の分子量は、ポリマー合成に用いられる骨格鎖の既知の構造から、有機合成反応において側鎖により及び/又は官能化基により置換されることになる基/原子を引き算することにより決定できる。
H−NMRを介する分子量の決定 − アルコキシ単位
【0022】
ポリマーの側鎖(類)がアルコキシル化を含有する場合には、側鎖の平均分子量は、ポリマー中のアルコキシル化度の合計から、H−NMRを介して決定できる。H−NMRのための試料を重水(DO)中に5重量%濃度まで溶解し、及び水酸化ナトリウム−d1(NaOD)を加えてpHを少なくとも10に調整し、分子中に存在するいずれのアミン基もプロトン化されないことを確実にする。アミン基のプロトン化は、正確な特徴付けの妨げになる可能性がある。バリアン(Varian)300又は500MHzフーリエ変換NMRスペクトロメーターのようなNMRスペクトロメーター上で、45°のパルス及び5秒の緩和遅延を周囲温度(20℃)で用いて、重水素で置換された(deuteriated)トリメチルシリルプロピオン酸を参照として用いて、H−NMRスペクトルを得る。一般に、ポリマー主鎖のプロトンは、明確なパターン及びシフトを有する。主鎖中の水素原子の既知の位置及び数が、ポリマー中に存在するその他の水素の量/数の定量化のための標準/参照として用いられる。
【0023】
例えば、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)のH−NMRのスペクトルは、三級窒素に結合した4つのメチレン水素(下線が引かれた、NCCHCHCHCHN)に相当する化学シフト2.44〜2.64で狭いピークを示し、及び8つの「内部」メチレン水素(下線が引かれた、NCHCHN)に相当するシフト1.2〜1.6ppmで2つのより広いピークを示す。ポリマー分子の他の水素量の定量化のための内部標準として使用できるのはこれらの水素である。
【0024】
一般に、ポリマー上のどこか他の場所にある、ポリ(エチレンオキシド)単位のようなアルコキシ部分に属する水素は、シフト3.4〜3.95における広い共振ピークにより検出される。残りの例については、ポリ(エチレンオキシド)単位について論じるが、本発明へのその他のアルコキシ単位の使用を制限することを目的とするのではなく、例を簡単にするために論じる。計算手順は、許容できる結果をもたらすために、ポリマーの性質に依存して当業者により修正され得る。以下の式(II)に示されるように、ポリマー分子中のポリオキシエチレン単位の合計数を決定するために、ポリオキシエチレン単位のピーク面積を包含して主鎖のピーク面積を計算する。
合計#EO=(PAEO/PA骨格鎖(bacbone))(#プロトン骨格鎖/4)
式(II)
ここで、式(II)の合計#EOは、ポリマー分子中のエトキシ単位の合計数であり、式(II)のPAEOは、ポリマー中のすべてのエトキシ単位の水素の合計ピーク面積であり、式(II)の#プロトン骨格鎖は、内部標準として選択された主鎖中の水素の数である。この計算は、ポリマー分子中の他のアルコキシル化/アルキル化単位の合計量を決定するために、一貫した方式で変更及び修正することができる。
【0025】
以下の式(III)に示されるように、ポリマー中のアルコキシル化単位の合計数を側鎖の数で割って、側鎖当たりのアルコキシル化単位の数を計算する。
#AO側鎖=合計#AO/#側鎖
式(III)
ここで、式(III)の#AO側鎖は、側鎖当たりのアルコキシル化単位の数であり、式(III)の合計#AOは、ポリマー中のアルコキシル化単位の合計数であり、及び式(III)の#側鎖は、ポリマー中の側鎖の数である。
【0026】
別の例は、ポリエチレンイミン類縁体のようなポリマーのエトキシル化度の計算である。H−NMRは、窒素に結合したすべてのメチレン基のプロトンについて、化学シフト2.2〜2.8ppmで広いピークを示し、及びポリ(エチレンオキシド)鎖(C
O)のメチレン基のプロトンについて化学シフト3.2〜3.8ppmで広いピークを示す。EO繰り返し単位の合計#EOは、以下に示されるような式IVを用いて計算することができる。
合計#EO=(PAEO/PA窒素メチレン)(#プロトン窒素メチレン/4)
式(IV)
ここで、式IVの合計#EOは、ポリマー分子中のエトキシル化単位の合計数であり、式IVのPAEOは、ポリマー分子中のすべてのオキシエチレン基の水素の合計ピーク面積であり、式IVのPA窒素メチレンは、窒素に結合したすべてのメチレン基の水素の合計ピーク面積であり(出発アミン物質の骨格鎖中及び窒素に直接結合したエトキシル化単位からの両方)、式IVの#プロトン窒素メチレンは、内部標準として選択された、窒素に直接結合したエトキシル化単位のメチレン基の骨格鎖中の水素の数である。側鎖当たりのエトキシル化単位の数は、以上に示されるような式IIIから計算することができる。
【0027】
H−NMRを介する分子量の決定 − 四級化度
ポリマー中の四級化度もまたH−NMRから決定することができる。H−NMRは、三級窒素に結合したメチレン基のプロトンについて広い共振ピークを示す。窒素の四級化の際に、これらのメチレン基の信号は四級化度のそれに比例して小さくなる。この相関関係から、四級化の平均度を計算することができる。例えば、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)について、四級化度が、式(V)及び(VI)の次の関係によって計算できる。
PA骨格鎖内部メチレン−2*(PA三級メチレン)=PA四級内部メチレン
式(V)
及び
PA四級内部メチレン/PA骨格鎖内部メチレン*100=%四級化度
式(VI)
ここで、式(V)のPA三級メチレンは、三級窒素に結合した4つのメチレン水素(下線が引かれた、NCCHCHCHCHN)に対応する化学シフト2.44〜2.64でのプロトンのピーク面積であり、式(V)のPA骨格鎖内部メチレンは、8つの「内部」メチレン水素(下線が引かれた、NCHCHN)に対応するシフト1.2〜2.1ppmでのプロトンのピーク面積であり、及び式(V)及び(VI)のPA四級内部メチレンは、HMDA中に存在する四級窒素に結合したメチレンプロトンのピーク面積である。同様な手法が他の骨格鎖及び/又は側鎖についてもまた展開され得る。
H−NMRを介する分子量の決定 − 硫酸化度又は陰イオン単位
【0028】
サルフェート基により修飾されていないメチレン基のプロトンに対して、サルフェート基に結合したメチレン基のプロトンのシフトの決定を通じてH−NMRを介して硫酸化度を計算する。あるいは、ポリマー主鎖の「標準プロトン」は、サルフェート基に結合したメチレン基のプロトンを推定するために用い得る。こうした計算の例は、以下の式(VII)及び(VIII)に示される。
PA理論上100%サルフェート=(PA骨格鎖内部メチレン)(#プロトンEO鎖の末端メチレン基/#プロトン骨格鎖内部メチレン)。
式(VII)
(PAサルフェートメチレン/PA理論上100%サルフェート)*100=%硫酸化度
式(VIII)
ここで、式(VII)及び(VIII)のPA理論上100%サルフェートは、サルフェート基に結合したエトキシレート鎖の末端部で、こうした部位がすべて100%硫酸化された場合のこの末端部のメチレン基のプロトンに対応するシフト4.15〜4.25ppmでのピークの理論上の面積であり、式(VII)のPA骨格鎖内部メチレンは、8つの「内部」メチレン水素(下線が引かれた、NCHCHN)に対応するシフト1.2〜2.1ppmでのプロトンのピーク面積であり、式(VII)の#プロトンEO鎖の末端メチレン基は、エトキシレート鎖のすべての末端メチレン基の水素の数であり、式(VII)の#プロトン骨格鎖内部メチレンは、内部標準として選択された骨格鎖中の水素の数であり、式(VIII)のPAサルフェートメチレンは、サルフェート基に結合したエトキシレート鎖の末端部のメチレン基のプロトンに対応するシフト4.15〜4.25ppmでの実際に測定された面積である。同様な手法が、HMDAよりむしろ他の骨格鎖及び/又は側鎖についてもまた展開され得る。界面活性剤増強ポリマーの効率は、SB50によって測定される。本明細書で使用する時「SB50」は、ブランク(ブランクは、ポリマーなしの等価の界面活性剤溶液である)の液体溶液中の利用可能な界面活性剤に対して、液体溶液中の利用可能な界面活性剤の50%増加を生み出すポリマーの濃度の実験的なモルの尺度である。液体溶液は、少なくとも1つの界面活性剤の指定量、少なくとも1つの界面活性剤増強ポリマー、及び液体好ましくは水溶液の指定硬度を含む。SB50は、C10〜13直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩界面活性剤(以後「LAS」)の可溶性百分率として、界面活性剤増強ポリマーの効率の尺度として実験的に決定される。SB50は、有効性の尺度及び個々のポリマー間の比較を提供し、並びにまた表面上の液晶界面活性剤相の成長を防ぎ、したがって一般洗浄を改善するためのポリマーの有効性にも相関関係があることが見出されている。当業者は、サルフェート/スルホネート以外の陰イオン性単位、例えばカーボネートの重量を決定する際にこの方法を使用することができる。
【0029】
SB50の測定及び計算
17.8gpg(グレイン毎ガロン)硬度溶液(CaClとして2モルのCa2+、MgClとして1モルのMg2+)18.0mLをシンチレーションバイアル瓶に移す。界面活性剤増強ポリマーの評価は、所望の利用について環境が変わる場合もあるため様々なpHで行われてもよい。例えば、浴室用硬質表面洗浄剤は低いpHを有し、液体洗濯洗剤は比較的に、より高いpHを有する。様々なpHでは、適した緩衝液を用いることができる。以下の、こうした緩衝剤の非限定例を参照のこと。あるいは、調査されている種の溶液が所望のpH範囲内である場合には、緩衝剤の添加は必要ではない。6.75、13.50、20.25、及び27.00ppmのポリマー濃度における可溶性直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)の百分率を決定するために、540ppmのポリマー溶液の0.25、0.50、0.75、及び1.00mLをそれぞれシンチレーションバイアル瓶に加える。脱イオン水(16MΩ以上)の0.75、0.50、0.25、及び0mLをそれぞれシンチレーションバイアル瓶に加えて体積を19.05mLにする。Ωバイアル瓶に蓋をし及び約1分間よく攪拌する。10,000ppmLAS溶液の1.0mLを試験バイアル瓶に加える。試験バイアル瓶に蓋をし、約30秒間激しく振盪することにより素早く混合し、及び15分間静置する。15分後、およそ8mLの溶液を10mLのシリンジに移す。溶液を0.10μmのメンブレン・シリンジフィルターを通して濾過する。これらのシリンジフィルターは、VWR、ポール(Pall)、ゲルマン(Gelman)のような多様な供給源及び供給元から購入されてもよく、及び商標名スーパー(SUPOR)(登録商標)として見出すことができる。最初の3mLの濾過液を捨て、及び残りの濾過液を収集する。0.5mLを0.5mLのエタノールで希釈し、及び勾配溶離逆相HPLCにより分析してLASの量を決定する。溶液中のLASの量を、式(IX)に示されるように、試料のすべてのLAS構成成分のすべてのピーク面積の合計、及び外部標準のすべてのLAS構成成分のすべてのピーク面積の合計から計算することができる。あるいは、同じ濃度の幾つかの標準が分析されてもよく、この場合、すべてのLAS構成成分のすべてのピーク面積の合計が平均化される。
【数2】

ここで、式(IX)のPA試料は、試料中のLASのすべての構成成分の合計ピーク面積であり、式(IX)のPA標準は、標準中のLASのすべての構成成分のピーク面積の平均であり、及び式(IX)のppmLAS可溶性は、溶液中の可溶性LAS界面活性剤のppmである。可溶性LASの百分率(%)は、以下の式(X)に示されるように、式(IX)のppmLAS可溶性を、濾過前に溶液中に存在するLASの合計ppmで割り、及び100を掛けることにより決定できる。
【数3】

ここで、式(X)のppmLAS可溶性は、溶液中の可溶性LASのppmであり、式(X)のppmLAS合計は、濾過前に溶液中に存在するLASの合計ppmであり、及び式(X)の%LAS可溶性は、溶液中に可溶性のLASの質量百分率である。あるいは、試料中のLASの量はまた、MS、NMRにより、並びに/又は界面活性剤及び/若しくはLASの分析に特有の別の技術により決定することができる。
【0030】
ポリマーのppmに対して、可溶性LASの百分率、%LAS可溶性をプロットすると、「質量効率曲線」がもたらされる。ポリマーの質量濃度(ppm)は次に、式(XI)により、ポリマー濃度のモルの尺度、SBに変換される。
【数4】

ここで、式(XI)のSBは、ポリマーのモル濃度の尺度であり、式(XI)のppmポリマーは、試験バイアル瓶中のポリマーのppm量であり、及び式(XI)のMWポリマーは、上記の方法に記載されるように、ポリマーの分子量である。SBに対して、可溶性LASの百分率、%LAS可溶性をプロットすると、モル効率曲線が与えられ、これは、以下に論じられる、代表セットのポリマーから得られる実験データからの内挿及び/又は外挿を通じて、SB50値を与える。SB50は、LAS可溶性の50%増加を、ブランク(ポリマーなし)のそれに対して生み出すポリマーのSB濃度である。一般に、ブランク(ポリマーなし)は、約18%の%LAS可溶性を有する。これは、SB50%は、68%の%LAS可溶性と相関していることを意味する。
【0031】
SB50値が小さいほど、界面活性剤増強ポリマーは、より高次の界面活性剤の凝集体(例えば小胞及び結晶)の形成を防ぐ際に、より効率がよくなる。本明細書で使用する時、「界面活性剤補助」は、ポリマーにより、そのSB50値が約430より小さければ実証される。好ましくは、SB50は、1〜430であり、より好ましくは1〜350であり、更により好ましくは1〜275であり、更により好ましくは1〜200であり、及び更により好ましくは1〜150である。
【0032】
本発明は、少なくとも1つの界面活性剤の大量の凝集体を防ぐ方法に関し、これは20℃で少なくとも10ppmの溶解度を有し、約1500〜200,000ダルトンの重量平均分子量を有し、並びに主鎖及び主鎖から伸びる1つ以上の側鎖を含み、側鎖は末端部を、末端部が側鎖を終了させるように含み、少なくとも1つの側鎖がアルコキシ部分を含むポリマーであって、該ポリマーが、界面活性剤、例えば陰イオン性界面活性剤、更には例えばLAS、及び少なくとも2gpgの自由イオンを有する水の存在下にある時430以下のSB50値を有するポリマーの最小モル量の使用を含む。好ましくは、最小モル量は、6〜30ppmのポリマー、より好ましくは6.75、13.50、20.25、及び27.00ppmのポリマーである。
【0033】
本発明はまた、少なくとも1つの界面活性剤、例えば陰イオン界面活性剤、更には例えばLASの利用可能な界面活性剤濃度を増加する方法に関し、これは20℃で少なくとも10ppmの溶解度、約1500〜200,000ダルトンの重量平均分子量を含み、並びに主鎖及び主鎖から伸びる1つ以上の側鎖を含み、及び側鎖は末端部を、末端部が側鎖を終了させるように含み、少なくとも1つの側鎖がアルコキシ部分を含むポリマーであって、該ポリマーが、界面活性剤及び少なくとも2gpgの自由イオンを有する水の存在下にある時430以下のSB50値を有するポリマーの最小モル量の使用を含む。好ましくは、最小モル量は、6〜30ppmのポリマー、より好ましくは6.75、13.50、20.25、及び27.00ppmのポリマーである。
【0034】
本発明はまた、本発明の所望の界面活性剤補助特性を提供する好ましいポリマーを同定、選択、設計、又はこれらのいずれかの組み合わせをするために定量的構造活性相関(QSAR)により開発された相関関係を用いることにより、界面活性剤増強ポリマーを同定、選択、及び設計する方法に関する。本発明の方法は次の工程を含む
(a)相関係数R=0.853を用いて、以下に相関関係(I)として表される相関関係を計算する工程
log(1/SB50)=−2.150−0.903*CD+0.227*COPC−0.792*CD+0.123*ESO−0.007*SHBint10+0.112*dxvp5
相関関係(I)
式中、相関関係(I)のCDは、ポリマーの正電荷密度であり、相関関係(I)のCOPCは、ポリマー分子中の正電荷の総数であり、相関関係(I)のCDは、側鎖周囲の平均電荷密度であり、相関関係(I)のESOは、側鎖上の負電荷の合計数であり、相関関係(I)のSHBint10は、キール(Kier)及びホール(Hall)によって記述されているように、10の端(結合)により分離される分子内水素結合対についてのトポロジー状態の指標の積の合計であり、及び相関関係(I)のdxvp5記述子は、キール(Kier)及びホール(Hall)[L.H.ホール(L.H.Hall)及びL.B.キール(L.B.Kier)の「構造物性相関における分子結合性χ指標及びκ形状指標(The Molecular Connectivity Chi Indexes and Kappa Shape Indexes in Structure-Property Relations)」、計算化学概説(Reviews of Computational Chemistry)、2巻、9章、367〜422ページ、ドナルド・ボイド(Donald Boyd)及びケニー B.リプコウィッツ(Kenny B.Lipkowitz)編集、VCH出版社(VCH Publishers,Inc.)(1991年)]により記載されるように、価数差を補正された5次経路分子結合性指標である、これらのパラメータの更なる論議は以下に包含されるが、直下のものはQSARモデル理論の概要及び相関関係(I)の決定についてである。
【0035】
方法は、相関関係(I)の計算に基づいて適切なポリマーを選択する工程を更に含み、このポリマーは、20℃で少なくとも10ppmの溶解度、約1500〜200,000ダルトンの重量平均分子量を含み、並びに主鎖及び主鎖から伸びる少なくとも1つの側鎖を含み、及び側鎖は末端部を、末端部が側鎖を終了させるように含み、少なくとも1つの側鎖がアルコキシ部分を含み、任意にポリマーは少なくとも1つの正電荷を更に有し、該ポリマーは、界面活性剤の存在下で430以下のSB50値を示すようなポリマーである。選択は、相関関係(I)の計算を、主鎖及び側鎖の化学構造に適した官能基に適合することに基づいている。当業者は、所望される主鎖及び側鎖の適した部分を決定し、新しく設計された界面活性剤増強ポリマーが結果として得られる。
【0036】
QSARモデル理論
定量的構造活性相関(QSAR)又は定量的構造物性相関(QSPR)は、物質の代表セットの構造が物理的性質を特徴とし、これが、関心のある特性(特徴)を予測するために用いられる方法である。例えば、代表セットのlogP(オクタノール−水の分配係数Pの10を底とする対数)、ハメットのσのようなフラグメント定数、又は多数の計算された分子記述子のいずれか(例えば、P.C.ジュルス(P.C.Jurs)、S.L.ディクソン(S.L.Dixon)、及びL.M.エゴロフ(L.M.Egolf)の、分子設計における化学計量法の分子の表現(Representations of Molecules,in Chemometric Methods in Molecular Design)、ハン・ファン・デ・ウォータービームド(Han van de Waterbeemd)編集、ドイツ、ワインハイムのVCHにより出版、1995年を参照のこと)が、QSAR法において、界面活性剤補助特性のような所望の特性(特徴)を有する物質を同定する、物質を選択する、及び更には物質を設計するために使用されてもよい。
【0037】
本明細書で使用する時、物質の「代表セット」(さもなければ、「トレーニングセット」として既知である)は、関心のある特性(特徴)及び物理的性質、例えばそれらの物質の分子構造の種類(即ち、分子記述子)を代表するように選択された物質の集まりであり、これらは関心のある特性(特徴)のスペクトル(例えば、所望されるものから所望されないものまで)を表す。代表セットの大きさは、物理的性質の多様性及びモデルが検証される必要があるパラメータの範囲に依存する。
【0038】
代表セットの大きさ
典型的には、統計的に有効なモデルの生成を始めるためには、約20〜約25の物質を有する必要がある。しかしながら、物理的性質の間の類似性の度合いが大きい場合には、物質のより小さいセットを有する有効なモデルを得ることも可能である。一般的経験則は、統計的に安定な方程式を実現し、及びデータの「過剰適合」、即ちモデル中に統計雑音を包含することを避けるために、最終的なQSARモデルは、QSARモデルの各パラメータ(物理的性質)について少なくとも約5の異なる物質を代表セット中に包含すべきであることを示唆する。
【0039】
モデル化されたスペクトルの特性範囲はまた、実験測定に関連する不確実性の大きさを考慮して、代表セットの物質の間に統計的有意差を検出するように十分広くなければならない。例えば、生物学的特性の典型的な最小範囲は、生物学的実験に関連する相対的に大きい不確実性のために、約2桁の大きさ(最低値と最高値の間の違いが100倍)である。ポリマーの場合には、物理的性質(例えば、沸点、表面張力、水溶解度)についての特性範囲は、こうした特性を測定する際に実現されるより高い精度及び正確さのために、通常より小さい。
【0040】
代表セットの物理的性質の記述
小さい分子
小さい分子を含む代表セットの物理的性質を記述するための1つの手法は、グループ寄与法である。この手法では、代表セット中の分子構造は小さいフラグメントに分けられる。ソフトウェアは、各フラグメントの数及び種類を把握している。データベースが次に検索され、及びフラグメント定数が分子構造の各フラグメントについて見出される。次に、分子構造において見出されたすべてのフラグメントについての定数に、分子構造においてフラグメントが見出される回数を掛けその合計を計算することにより物理的性質が推定される。A.レオ(A.Leo)の包括的医薬品化学(Comprehensive Medicinal Chemistry)、4巻、C.ハンシュ(C.Hansch)、P.G.サメンズ(P.G.Sammens)、J.B.テイラー(J.B.Taylor)、及びC.A.ラムスデン(C.A.Ramsden)編集、295ページ、ペルガモン出版(Pergamon Press)、1990年を参照のこと。
【0041】
あるいは、全分子構造記述子が、QSARモデルを開発する際に物理的性質を定義するために用いられてもよい。「小さい多官能性有機分子の標準沸点を推定するための定量的構造物性相関モデルの開発(Development of a Quantitative Structure-Property Relationship Model for Estimating Normal Boiling Points of Small Multifunctional Organic Molecules)」、デーヴィッドT.スタントン(David T.Stanton)、化学情報及びコンピュータ科学誌(Journal of Chemical Information and Computer Sciences)、40巻、1号、2000年、81〜90ページを参照のこと。全分子の手法では、物理的性質は構造的特徴のフラグメントに分けられず、むしろ多様な構造的特徴の測定値が全構造を用いて計算される。
【0042】
ポリマー
小さい分子のために有用な手法は、しかしながら典型的には、実験データの非常に大きなセットを必要とする、ポリマーのための予測QSARモデルを開発するためには適用できない。本明細書で使用する時、用語「ポリマー」は、ホモポリマー及びコポリマーの両方、及びこれらの混合物を含む。酵素のような幾つかの天然ポリマーを除いて、大部分のポリマー、特に合成ポリマーは、様々な分子量、大きさ、構造、及び組成のポリマー分子の混合物である。ポリマーは、最も一般的には、それらの平均的特性、例えば平均分子量、粘度、ガラス転移温度、融点、溶解度、曇点、熱容量、界面張力、及び粘着性、屈折率、応力緩和、薄さ(sheer)、伝導度、浸透性などにより特徴付けられる。ポリマーが特徴付けられる別の一般的方法は、モノマーの数と種類による。
【0043】
ポリマーへのQSAR/QSPR手法の適用は、繰り返し単位について得られる物理的性質の記述子、例えば繰り返し単位の分子量、繰り返し単位のその完全に伸ばされた配置における末端部から末端部までの距離、繰り返し単位のファンデルワールス体積、原子の数により正規化された正及び負の部分表面積、繰り返し単位について計算されるトポロジーのランディック指標(topological Randic index)、グループ寄与法を用いて推定することができる凝集エネルギー、及び繰り返し単位の構造から得られるポリマー鎖の骨格鎖の回転自由度の数に関連するパラメータを典型的には使用する。応用ポリマー科学誌(Journal of Applied Polymer Science)、49巻、1993年、1331〜1351ページを参照のこと。あるいは、ポリマー特性の予測(Prediction of Polymer Properties)、第2版、マーセル・デッカー社(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク、バーゼル、1996年の中でJ.ビセラノ(J.Bicerano)により記載されるように、トポロジーの結合性指標が用いられてもよい。
【0044】
ホモポリマー
大部分のQSAR/QSPRポリマーモデルは、ガラス転移温度、屈折率などのようなポリマーの大部分の物理的性質に関して、ホモポリマーについて、繰り返し単位の理論的に計算された物理的性質の記述子を相関させる。加えて、これらのQSARモデルの開発は、原子の及び/又は基の修正項を必要とする。正規構造のホモポリマーの特性を予測するための別の手法は、各ポリマーについて3つの繰り返し単位のモデルを作り、及び中央の単位についてのみ記述子を計算することである。こうすることにより、化学情報及びコンピュータ科学誌(Journal of Chemical Information and Computer Sciences)38巻、1998年、300〜304ページに、カトリツキーA.R.(Katritzky A.R.)らにより記載されるように、隣接する単位の影響もまた考慮することができる。
【0045】
コポリマー
コポリマーの特性を予測することへの1つの手法は、ポリマー特性の予測(Prediction of Polymer Properties)、第2版、マーセル・デッカー社(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク、バーゼル、1996年の中でJ.ビセラノ(J.Bicerano)により記載されるように、コポリマーのブロックを別個のポリマーとして扱い、及び広範囲の特性の予測のために単純な加法則を行うことである。ランダムコポリマーの特性の計算は、本明細書の以上で引用した、ポリマー特性の予測(Prediction of Polymer Properties)、第2版の中でJ.ビセラノ(J.Bicerano)により記載されるように、すべての広範囲の特性の重量平均(繰り返し単位のモル分率から)及び広範囲の特性から見た集約的特性についての適切な定義を用いることが必要とされる。
【0046】
QSARモデル化の結果
開発されたQSARモデルは、多変量である。それは、モデルが多くのパラメータを伴うことを意味し、及び関心のある特性(特徴)の測定値に対して、分子記述子のような物理的性質の選択されたセットを回帰させることにより計算される線形回帰方程式であることを意味する(例えば、Y=m+m...+m、式中、Yは関心のある測定された特性(特徴)であり、x、x...xは、物理的性質であり、m、m...mは、回帰係数であり、及びnはモデル中の物理的性質の数である)。
【0047】
QSARモデルの質の決定
重決定係数
重決定係数(R)が、回帰モデルの質を判断するために用いられる。Rは、モデル中の物理的性質(独立変数)のセットが説明するモデル化された特性(特徴)(従属変数)の変動の割合を判定する。一般的に相関係数と呼ばれる重相関係数又はRは、Rの正の平方根であるが、計算値(モデルを用いて)と実験値との間の相関関係に関する。すべての市販の統計パッケージは、Rを回帰分析の結果の標準部品として報告する。許容できるQSARモデルのためには高いR値が必要であるが、それ自体だけでは、許容できるQSARモデルのために十分な条件ではない。検証を行わないと、データの過剰適合が結果としてもたらされる場合がある。
【0048】
QSARモデルの検証
QSARモデルが開発されたら、それは検証されなければならない。このプロセスには、(1)モデルの全体としての統計的検証の考察(例えば、分散分析、AOVからの全体的F値)、(2)方程式の個々の係数の統計的検証の考察(例えば、部分的F値)、(3)独立変数間の共線性の分析(例えば、分散拡大要因又はVIF)、及び(4)安定性の統計的分析(例えば、クロス確認)が挙げられる。大部分の市販されている統計ソフトウェアは、これらの診断値を計算及び報告することができる。外部の予測セットを採用することは好ましい。本明細書で使用する時、「外部の予測セット」とは、関心のある特性(特徴)が実験的に測定されてきたが、QSARモデルの開発には包含されていない物質のセットである。次に外部予測セットが、QSARモデルの予測精度を評価及び実証するために用いられる。
【0049】
本発明はまた、ポリマーを同定、選択、及び設計するためのQSAR法に関し、用いられるポリマーの物理的性質の組み合わせは、構造記述子であり、これは1つ以上の分析方法を用いて、及びポリマーの分子構造から計算された構造記述子を用いて実験的に生成及び/又は獲得される。
【0050】
相関関係(I)及び境界条件
上記のように、本発明は、相関関係(I)を計算する工程を含む、適した界面活性剤増強ポリマーを選択する方法、同定する方法、及び設計する方法に更に関する。
【0051】
log(1/SB50)=−2.150−0.903*CD+0.227*COPC−0.792*CD+0.123*ESO−0.007*SHBint10+0.112*dxvp5
相関関係(I)
式中、相関関係(I)のCDは、ポリマーの正電荷密度であり、相関関係(I)のCOPCは、ポリマー中の正電荷の総数であり、相関関係(I)のCDは、側鎖周囲の平均電荷密度であり、相関関係(I)のESOは、側鎖上の負電荷の合計数であり、相関関係(I)のSHBint10は、10の端(結合)により分離される分子内水素結合対についてのトポロジー状態の指標の積の合計であり、及び相関関係(I)のdxvp5記述子は、価数差を補正された5次経路分子結合性指標である。SB50は、以上に論じられたように、%LAS可溶性の50%増加を、ブランク(ポリマーなし)のそれに対して生み出すポリマーのモル濃度の尺度である。理論に束縛されるものではないが、SB50は、表面上の液晶界面活性剤相の成長を防ぎ、したがって一般洗浄を改善するためのポリマーの有効性にも相関すると考えられている。
【0052】
方法は、相関関係(I)の計算に基づいて適切なポリマーを選択する工程を更に含むが、このポリマーは、20℃で少なくとも10ppmの溶解度、約1500〜200,000ダルトンの重量平均分子量を含み、並びに主鎖及び主鎖から伸びる少なくとも1つの側鎖を含み、及び側鎖は末端部を、末端部が側鎖を終了させるように含み、少なくとも1つの側鎖がアルコキシ部分を含み、ポリマーは少なくとも1つの正電荷を更に有し、該ポリマーは、界面活性剤の存在下で430以下のSB50値を示すようなポリマーである。
【0053】
相関関係(I)のCD
CDは、ポリマーの正電荷密度であり、及び次の式により計算される。
【数5】

ここで、式(XII)の#ofNは、ポリマー中の正に帯電した窒素(又はその他の正に帯電したヘテロ原子)の数であり、ポリマーが正電荷を含有しない場合でも包含され、そういう場合には、#ofNは0に等しく、及び式(XII)のMWポリマーは、以上に指定された方法により決定されるポリマーの分子量である。数平均分子量を決定するための、又は数平均分子量の決定をもたらす別の方法もまた用いられてもよい。
【0054】
四級化を有するポリマーについては、式(XII)の#ofNは、窒素(又はヘテロ原子)の合計数と上記のようなポリマーの四級化度の掛け算により計算することができる。四級電荷を持たないが、窒素(又はヘテロ原子)のプロトン化が生じるpHにおいて用いられることが設計されるポリマーについては、式(XII)の#ofNは、窒素(又はヘテロ原子)の合計数と所与のpHにおけるポリマーのプロトン化度の掛け算により決定される。ポリマーが正電荷を含有しない場合には、そういう場合には、#ofNはゼロに等しい。
【0055】
好ましい物質は、2未満の式(XII)のCDを有し、好ましくは物質は、0〜2、より好ましくは0〜1.2、更により好ましくは0〜0.7、及び最も好ましくは0.1〜0.4の式(XII)のCDを有する。
【0056】
相関関係(I)のCOPC
COPCは、ポリマー中の正電荷の総数であり、一般に正電荷は、ポリマー中のすべての正に四級化された及び/又はプロトン化された窒素の数である。好ましい物質は、0〜20、好ましくは0〜約10、より好ましくは0〜約3、好ましくは1〜20、より好ましくは1.8〜20、及び最も好ましくは3〜20のCOPC値を有する。
【0057】
相関関係(I)のCD
CDは、側鎖周囲の平均電荷密度であり、式(XIII)から計算される。
【数6】

ここで、式(XIII)の#側_鎖は、ポリマー分子中の側鎖の数であり、#価数は、側鎖中の陰イオン性基の価数の電荷であり、例えばサルフェートは、−1の価数を有し、ホスフェートは−2の価数を有し、式(XIII)の#陰イオン性_側_鎖は、硫酸化された及び/又は陰イオン性に修飾された側鎖の数であり、式(XIII)の#陰イオン性_側_鎖は、ポリマー分子中の陰イオン性の百分率と側鎖の数の掛け算により計算される。式(XIII)のMW側_鎖は、式(XIV)により決定される側鎖の平均分子量である。
【数7】

ここで、式(XIII)及び(XIV)のMW側_鎖は、上記の方法により決定されるような側鎖の平均分子量であり、式(XIV)のΣ(#AO*MWAO)は、アルコキシル化単位の合計数とアルコキシル化単位の分子量の積の合計であり、アルコキシル化単位の分子量は上記のように決定され、及び式(XIV)のΣ(#修飾基*MW修飾基)は、修飾単位(官能化単位)の合計数と上記のように決定される修飾単位の分子量の積の合計である。
【0058】
好ましい物質は、0〜1.5、好ましくは0〜1、より好ましくは0〜0.7、及び更により好ましくは0〜0.4の式(VIII)のCD値を有する。
【0059】
相関関係(I)のESO
ESOは、ポリマーの側鎖上の負電荷の合計数であり、及び式(XV)により計算される。
ESO=#価数(%陰イオン性濃度)*#側鎖
式(XV)
【0060】
ESOは、相関関係(I)の他のパラメータと相関し及びそれらに依存して変化するパラメータである。#価数は、上記の式(XIII)に記載されるような陰イオン性基の電荷の価数である。%陰イオン性濃度は、以上の(XIII)に記載されるものと同じであり、及び#側鎖は、以上の式(XIII)に記載されるものと同じである。したがって、ESO値は、0〜15のいずれにおいて変化してもよく、好ましくはESO値は、相関関係(I)の他のパラメータ、主として相関関係(I)のCD及びCDにより決定される。
【0061】
相関関係(I)のSHBint10
SHBint10は、キール(Kier)及びホール(Hall)により記載されているように、10の端(結合)により分離される分子内水素結合対についてのトポロジー状態の指標の積の合計であり、以下に列挙される。このパラメータは、ポリマー主鎖のみに基づいて計算されており、及び内部又は分子内水素結合についての可能性を表し、次のように決定される。経路に沿って10の結合により分離される供与体と受容体があり、供与体は水素のE−状態値を特徴とし、受容体はE−状態値を特徴とし、及び内部水素結合記述子、SHBint10は、水素のE−状態値掛けるE状態値の積として計算される(キール,L.B.(Kier,L.B.)、ホール,L.H.(Hall,L.H.)の分子構造記述子−電子トポロジー状態(Molecular Structure Description-The Electrotopological State)、アカデミック(Academic):カリフォルニア州、サンディエゴ、1999年を参照のこと)。SHBint10値は、0〜30の間のいずれかであってもよい。このパラメータの好ましい値は他の記述子、主としてCOPC及びdxvp5の値に高度に依存する。
【0062】
相関関係(I)のdxvp5
dxvp5記述子は、キール(Kier)及びホール(Hall)[L.H.ホール(L.H.Hall)及びL.B.キール(L.B.Kier)の「構造物性相関における分子結合性χ指標及びκ形状指標(The Molecular Connectivity Chi Indexes and Kappa Shape Indexes in Structure-Property Relations)」、計算化学概説(Reviews of Computational Chemistry)、2巻、9章、367〜422ページ、ドナルド・ボイド(Donald Boyd)及びケニーB.リプコウィッツ(Kenny B.Lipkowitz)編集、VCH出版社(VCH Publishers,Inc.)(1991年)]により記載されるように、価数差を補正された5次経路分子結合性指標である。この分子記述子は、ポリマー主鎖のみに基づいて計算されており、及び側鎖を介した分岐を除く5つの隣接する非環式結合を伴う構造的特徴(例えば、経路)を表す。価数補正により、このパラメータは、5結合のフラグメント中に包含される炭素原子と他のへテロ原子(例えば、窒素、酸素)とを識別できる。「差」の表記は、π及び価電子の寄与のみを反映させるために、σ結合の寄与は引かれていることを示す。このパラメータは、主としてCOPC及びSHBint10と相関し、したがってその好ましい値はポリマーの他の構造的特徴に高度に依存する。この記述子の値は−7〜0の間のいずれにあることもできる。
【0063】
界面活性剤増強ポリマーの部類の非限定例には、ポリシロキサン及びそれらの誘導体、ポリエチレンオキシ/ポリプロピレンオキシブロックコポリマー、それらの誘導体、それらの同族体、多糖類ポリマー、それらの同族体、それらの誘導体、(例えば、アルキル、アシル、カルボキシ−、カルボキシメチル−、ニトロ−、サルホ−、及びこれらの混合物)、ポリビニルホモポリマー及び/又はコポリマー、及びそれらの誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピリジンN−オキシドのブロック及び/又はランダムコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピロリドン及びポリビニルイミダゾールのブロック及び/又はランダムコポリマーであって、それらの構造同族体及び誘導体、例えば、荷電した親水性及び/又は疎水性修飾基、例えばエトキシル化、プロポキシル化、アルキル化、及び/又はスルホン化基を包含するもの、ポリスチレン、ポリスチレンとポリマレアート、ポリアクリレート、又はポリメタクリレートとのブロック及び/又はランダムコポリマー、ポリビニルカルボン酸、それらのアルキルエステル、それらのアミド、及びこれらの混合物、ポリアミン及びそれらの化学修飾誘導体、ポリアミド、それらの同族体及び/又はそれらの誘導体、及びポリアミドアミン、ポリテレフタラート、それらの異性体、それらの同族体、及び/又はそれらの誘導体、例えば硫酸化、スルホン化、エトキシル化、アルキル化(例えば、メチル、エチル、及び/又はグリセロール)誘導体、ポリエステル及びそれらの化学修飾誘導体、ポリウレタン、イミダゾールとエピクロルヒドリンの縮合生成物であって、荷電した親水性及び疎水性修飾基、例えば、エトキシル化、プロポキシル化、アルキル化、及び/又はスルホン化基を包含するもの、ホルムアルデヒドの芳香族ポリマー縮合物であって、エーテル架橋及びメチレン架橋フェノール、ナフタレン、置換ナフタレンを包含するもの、並びにこれらの混合物が挙げられる。本明細書の以上に与えられるコポリマーは、所望の特性を提供するために、1つ以上のアリール、アルキル、アリル、メチル、エチル、エトキシレート、プロポキシレート、ニトロ、アミノ、イミド、スルホ、カルボ、ホスホ基などを組み込むことにより更に修飾されることができる。ポリマーは、ブロック、ランダム、グラフト、樹木状などを包含するいずれの構造を有することもできる。
【0064】
以下の表Iは、測定されたSB50及び予測されたSB50の値を有する非限定の好ましい合成された新しい物質の分子記述子及び構造を列挙する。
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【0065】
ポリイミンポリマー
界面活性剤増強ポリマーの好ましい例は、以下の式(II)に例示されるポリイミンポリマーである。
【化1】

ここで、式(II)のRは、水素、C〜C22芳香族、及び/又はC〜C22直鎖若しくはC〜C22分岐鎖アルキル、C〜C22アルコキシ、及びこれらの混合物である。Rが分岐鎖であるとして選択される場合は、分岐は1〜4個の炭素原子を含んでもよい。式(II)のXは、水素、C〜C20直鎖又はC〜C20分岐鎖アルキレン、C〜C直鎖又はC〜C分岐鎖オキシアルキレン、及びこれらの混合物の群から選択される。Xが分岐鎖であるとして選択される時は、分岐は1〜4個の炭素原子を含んでもよい。式(II)の添え字aは、0〜50であり、式(II)のaが0である時、式(II)のb又はcは0より大きくなければならない。式(II)のYは、水素、C〜C20直鎖又はC〜C20分岐鎖アルキレン、C〜C直鎖又はC〜C分岐鎖オキシアルキレン、及びこれらの混合物の群から選択される。Yが分岐鎖であるとして選択される場合は、分岐は1〜4個の炭素原子を含んでもよい。式(II)の添え字bは、0〜50の数であり、式(II)のbが1つ以上である時、式(II)のXは水素ではない。式(II)のAは、サルフェート、スルホネート、カルボキシレート、ホスフェート、及びこれらの混合物から選択されるキャッピング基である。式(II)の添え字cは0又は1であり、式(II)のcが1である時、式(II)のX及びYは水素ではない。式(II)の添え字nは、0〜16である。式(II)の添え字mは、0〜5である。式(II)のMは、水素、ナトリウム、カルシウム、及びこれらの混合物のような水溶性陽イオンである。式(II)の添え字dは0又は1であり、式(II)のcが1である時、式(II)のdは1である。米国特許第4,659,802号、米国特許第4,664,848号、米国特許第4,661,288号、米国特許第6,087,316号、及びPCT国際公開特許WO01/05874もまた参照のこと。好ましいポリイミンポリマーの非限定例は、上記の構造6〜15に示される。
【0066】
アルコキシル化モノアミン
本発明の別の好ましいポリマーには、式(III)及び(IV)を有するアルコキシル化モノアミンが挙げられる。
【化2】

ここで、式(III)及び(IV)のR、R、R、及びRは、水素、脂肪族、芳香族、好ましくはアルキルC〜C20、芳香族C〜C18、並びに単一及び/又は繰り返しブロック単位の直鎖又は分岐鎖アルキレン(C〜C20)、直鎖又は分岐鎖オキシアルキレン(C〜C)及びこれらの混合物の群から独立して選択され、分岐鎖として選択された時、分岐は1〜4個の炭素原子を含み、好ましくはR、R、R及びRは、約1〜約30の平均アルコキシル化度を有するC2〜3直鎖オキシアルキレンであるように独立して選択される。式(III)及び(IV)のA、A、Aは、水素、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、イミド、スルホ、カルボ、ホスホ、硫酸化、スルホン化、カルボキシル化、リン酸化、及びこれらの混合物から独立して選択されるキャッピング基である。
【0067】
分岐鎖ポリアミノアミン
界面活性剤増強ポリマーの好ましい例は、以下の構造式(V)に例示される。
【化3】

ここで、式(V)のxは、1〜12、より好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6、及び更により好ましくは1〜4であることができ、式(V)のR及びRは存在しなくてもよく(この場合Nは中性である)、及び/又はH、脂肪族C〜C、アルキレンC〜C、アリーレン若しくはアルキルアリーレンの群から独立して選択されてもよく、式(V)のR、R、R、及びRは、H、OH、脂肪族C〜C、アルキレンC〜C、アリーレン又はアルキルアリーレンの群から独立して選択され、好ましくはポリオキシアルキレンC〜Cの少なくとも1つ以上のブロック、並びに直鎖又は分岐鎖アルキレン(C〜C20)の単一及び/又は繰り返しブロック単位、直鎖又は分岐鎖オキシアルキレン(C〜C)、並びにこれらの混合物から独立して選択される。式(V)のA、A、A、A、A、及びAは、水素、ヒドロキシ、サルフェート、スルホネート、カルボキシレート、ホスフェート、及びこれらの混合物から独立して選択されるキャッピング基である。R、R、R、又はRがN(CHCHである場合は、それは分岐によるこの構造の連続を表す。米国特許第4,597,898号、米国特許第4,891,160号、米国特許第5,565,145号、及び米国特許第6,075,000号もまた参照のこと。分岐状ポリアミノアミンから選択された界面活性剤増強ポリマーの好ましい例は、上記の構造18及び19に例示される。更に、構造17のエトキシ部分もまた、プロポキシ及びブトキシのようなその他のアルコキシ部分を含むことができる。平均アルコキシ度はまた7を超える、好ましくは約7〜約40であり得る。
【0068】
変性ポリオール系エトキシル化ポリマー 本発明に用いるのに適したポリマーの別の好ましい例には、少なくとも3つのヒドロキシ部分、好ましくは3を超えるヒドロキシ部分を含むポリオール化合物が挙げられる。最も好ましくは6以上のヒドロキシ部分である。ヒドロキシ部分の少なくとも1つは、アルコキシ部分を更に含み、アルコキシ部分は、エトキシ(EO)、プロポキシ(PO)、ブトキシ(BO)、及びこれらの混合物から成る群から選択され、好ましくはエトキシ及びプロポキシ部分から成る群から選択され、より好ましくはエトキシ部分から成る群から選択される。平均アルコキシ度は、約1〜約100、好ましくは約4〜約60、より好ましくは約10〜約40である。アルコキシル化は、好ましくはブロックアルコキシル化である。
【0069】
本発明に有用なポリオール化合物は、少なくとも1つの陰イオン性キャッピング単位を含むアルコキシ部分の少なくとも1つを更に有する。化合物の更なる修飾が生じてもよいが、1つの陰イオン性キャッピング単位が本発明の化合物中に存在しなくてはならない。1つの実施形態は、陰イオン性キャッピング単位を有するアルコキシ部分を更に含む、1を超えるヒドロキシ部分を含む。例えば、式(VI)である。
【化4】

式(VI)
ここで、式(VI)のxは、約1〜約100、好ましくは約10〜約40である。適した陰イオン性キャッピング単位には、サルフェート、スルホスクシネート、スクシネート、マレアート、ホスフェート、フタレート、スルホカルボキシレート、スルホジカルボキシレート、プロパンスルトン、1,2−ジスルホプロパノール、スルホプロピルアミン、スルホネート、モノカルボキシレート、メチレンカルボキシレート、エチレンカルボキシレート、カーボネート、メリト、ピロメルト、スルホフェノール、スルホカテコール、ジスルホカテコール、タータラート、シトレート、アクリレート、メタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリレート−マレアートコポリマー、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましくは陰イオン性キャッピング単位は、サルフェート、スルホスクシネート、スクシネート、マレアート、スルホネート、メチレンカルボキシレート、及びエチレンカルボキシレートである。本発明に用いる出発物質として適したポリオール化合物には、マルチトール、スクロース、キシリトール、グリセロール、ペンタエリスリトール(pentaerythitol)、グルコース、マルトース、マルトトリオース(matotriose)、マルトデキストリン、マルトペントース、マルトヘキソース、イソマルツロース、ソルビトール、ポリビニルアルコール、部分的に加水分解されたポリビニルアセテート、キシラン還元マルトトリオース、還元マルトデキストリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセロール、ジグリセロールエーテル、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、ポリオール化合物は、ソルビトール、マルチトール、スクロース、キシラン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びこれらの混合物である。好ましくは、ソルビトール、マルチトール、スクロース、キシラン、及びこれらの混合物である。
【0070】
ポリオール化合物の修飾は、所望の処方可能性及び性能要件に依存している。修飾は、陰イオン性、陽イオン性、又は双極性の電荷をポリオール化合物に組み込むことを包含することができる。
【0071】
本発明の1つの実施形態では、少なくとも1つのヒドロキシ部分が、アルコキシ部分を含み、少なくとも1つのアルコキシ部分は、少なくとも1つの陰イオン性キャッピング単位を更に含む。
【0072】
本発明の別の実施形態では、少なくとも1つのヒドロキシ部分は、アルコキシ部分を含み、アルコキシ部分は更に1つ以上の陰イオン性キャッピング単位を含み、少なくとも1つの陰イオン性キャッピング単位であるが、すべてではない陰イオン性キャッピング単位は、次にアミンキャッピング単位により選択的に置換される。アミンキャッピング単位は、一級アミン含有キャッピング単位、二級アミン含有キャッピング単位、三級アミン含有キャッピング単位、及びこれらの混合物から選択される。
【0073】
本発明に有用なポリオール化合物は、少なくとも1つのアミンキャッピング単位を含むアルコキシ部分の少なくとも1つを更に有する。化合物の更なる修飾が生じてもよいが、1つのアミンキャッピング単位が本発明の化合物中に存在しなくてはならない。1つの実施形態は、アミンキャッピング単位を有するアルコキシ部分を更に含む、1つ上のヒドロキシ部分を含む。
【0074】
本発明の別の実施形態では、アミンキャッピング単位中の窒素の少なくとも1つが四級化されている。本明細書で使用する時、「四級化された」とは、アミンキャッピング単位が、アミンキャッピング単位の四級化又はプロトン化を通じて正電荷を与えられることを意味する。例えば、ビス−DMAPAは、3つの窒素を含有し、窒素の1つのみが四級化される必要がある。しかしながら、いずれかの所与のアミンキャッピング単位上ですべての窒素が四級化されることは好ましい。
【0075】
一級アミン含有キャッピング単位のための適した一級アミンには、モノアミン、ジアミン、トリアミン、ポリアミン、及びこれらの混合物が挙げられる。二級アミン含有キャッピング単位のための適した二級アミンには、モノアミン、ジアミン、トリアミン、ポリアミン、及びこれらの混合物が挙げられる。三級アミン含有キャッピング単位のための適した三級アミンには、モノアミン、ジアミン、トリアミン、ポリアミン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0076】
本発明に用いるために適したモノアミン、ジアミン、トリアミン、又はポリアミンには、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、エチレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ビスジメチルアミノプロピルアミン(ビスDMAPA)、ヘキサメチレンジアミン、ベンジルアミン、イソキノリン、エチルアミン、ジエチルアミン、ドデシルアミン、タロートリエチレンジアミン、単一置換モノアミン、単一置換ジアミン、単一置換ポリアミン、二置換モノアミン、二置換ジアミン、二置換ポリアミン、三置換トリアミン、三置換ポリアミン、3つ以上の置換を含む多置換ポリアミンであって、ただし少なくとも1つの窒素は水素を含有することを条件とするもの、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0077】
本発明の別の実施形態では、アミンキャッピング単位中の少なくとも1つの窒素は四級化されている。本明細書で使用する時、「四級化された」とは、アミンキャッピング単位が、アミンキャッピング単位の四級化又はプロトン化を通じて正電荷を与えられることを意味する。例えば、ビス−DMAPAは、3つの窒素を含有し、窒素の1つのみが四級化される必要がある。しかしながら、いずれかの所与のアミンキャッピング単位上ですべての窒素が四級化されることは好ましい。
【0078】
所望の配合可能性及び性能要件に依存して、修飾を組み合わせてもよい。本発明の好ましい変性ポリオール化合物の具体的な非限定例には、上記の構造19〜21が挙げられる。
【0079】
疎水性ポリアミンエトキシレートポリマー
本出願の発明に包含される物質には、一般式(VI)を含むことを特徴とする疎水性ポリアミンエトキシレートポリマーが挙げられる。
【化5】

式(I)のRは、直鎖又は分岐鎖のC〜C22アルキル、直鎖又は分岐鎖のC〜C22アルコキシル、直鎖又は分岐鎖のC〜C22アシル、及びこれらの混合物であり、Rが分岐鎖であるとして選択される場合には、分岐鎖は、1〜4個の炭素原子を含んでもよく、好ましくは式(I)のRは、直鎖のC12〜C18アルキルである。アルキル、アルコキシル、及びアシルは、飽和型又は不飽和型であってもよいが、好ましくは飽和型である。式(I)の添え字nは、約2〜約9、好ましくは約2〜約5、最も好ましくは3である。理論に制限されるものではないが、式(I)の疎水性尾部Rが、油のような疎水性の染みの除去をもたらすと考えられている。更に、式(I)の疎水性尾部Rが、自由硬度の存在下での陰イオン性界面活性剤のより大量の凝集体の形成をいくらか防止すると考えられている。
【0080】
式(I)のQは、電子対、水素、メチル、エチル、及びこれらの混合物から独立して選択される。配合者が疎水性ポリアミンエトキシレートの中性の骨格鎖を望む場合、式(I)のQは、電子対又は水素になるように選択されるべきである。配合者が疎水性ポリアミンエトキシレートの四級化骨格鎖を望むならば、式(I)の少なくともQは、メチル、エチル、好ましくはメチルから選択されるべきである。式(I)の添え字mは、2〜6、好ましくは3である。式(I)の添え字xは、非四級化窒素を含有するポリマーについては、平均約1〜約70、好ましくは平均約20〜約70、好ましくは約30〜約50のエトキシ単位になるように独立して選択され、四級化窒素を含有するポリマーについては、好ましくは、約1〜約10になるように独立して選択される。
【0081】
疎水性ポリアミンエトキシレートのエトキシ単位は、陰イオン性キャッピング単位をいずれか又はすべてのエトキシ単位に独立して加えることによって、更に修飾されてもよい。適した陰イオン性キャッピング単位としては、サルフェート、スルホスクシネート、スクシネート、マレアート、ホスフェート、フタレート、スルホカルボキシレート、スルホジカルボキシレート、プロパンスルトン、1,2−ジスルホプロパノール、スルホプロピルアミン、スルホネート、モノカルボキシレート、メチレンカルボキシレート、カーボネート、メリト、ピロメリト、シトレート、アクリレート、メタクリレート、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましくは陰イオン性キャッピング単位は、サルフェートである。
【0082】
本発明の別の実施形態では、疎水性ポリアミンエトキシレートの窒素には、四級化を通じて正電荷が与えられる。本明細書で使用する時、「四級化」は、疎水性ポリアミンエトキシレートの窒素に正電荷を与えるように窒素を四級化又はプロトン化することを意味する。
【0083】
所望の配合可能性及び性能要件に依存して、調整(tuning)又は修飾を組み合わせてもよい。本発明の好ましい疎水性ポリアミンエトキシレートの具体的な非限定例には、上記の構造22及び式(VIII)が挙げられる。
【化6】

式(VIII)のRは、直鎖又は分岐鎖のC12〜C16アルキル、及びこれらの混合物であり、Rが分岐鎖であるとして選択される場合には、分岐鎖は、1〜4個の炭素原子を有してもよく、式(VIII)のxは約20〜約70である。
【0084】
以下の表IIは、所望のパラメータ、及び予測されたSB50を有する設計された物質の幾つかの非限定例を列挙する。
【表2】

【0085】
表IIの設計されたポリマーは次に、相関関係(I)を通じて主鎖及び側鎖の化学構造に適した官能基と適合されることができる。当業者は、所望の主鎖及び側鎖の適した部分を決定し、新しく設計されたポリマーが結果として得られる。
【0086】
対照的に、相関関係(I)はまた、所望の界面活性剤補助特性を得るために好適でない構造を決定するために用いられることもできる。以下の表IIIは、本発明に包含されない、予測されたSB50を有する、設計された物質の分子記述子の幾つかの非限定例を列挙する。
【表3】

【0087】
洗浄組成物
本発明は更に、本発明の界面活性剤増強ポリマーを含む洗浄組成物に関する。洗浄組成物は、従来のあらゆる形態にすることができ、即ち、液体、粉末、顆粒、粒塊、ペースト、錠剤、パウチ、棒状固形物(bar)、ゲル、2区画容器で供給されるタイプ、スプレー若しくはフォーム洗剤、ウェットタオル(premoistened wipes)(即ち、米国特許6,121,165号(マッケイ(Mackey)ら)で論じられているような不織布材と組み合わせた洗浄組成物)、消費者が水で活性化させるドライタオル(即ち、米国特許第5,980,931号(フォウラー(Fowler)ら)で論じられているような不織布材と組み合わせた洗浄組成物)、並びに他の均質な又は多相の消費者洗浄製品形態にすることができる。
【0088】
洗浄組成物に加えて、本発明の化合物は、また、工業用洗浄剤(即ち、床洗浄剤)に使用する又は組み込むのに適した場合がある。これらの洗浄組成物は、しばしば追加的に界面活性剤及び他の洗浄補助成分を含んでおり、それについては以下でより詳細に説明する。1つの実施形態では、本発明の洗浄組成物は、液体又は固体洗濯洗剤組成物である。
【0089】
他の実施形態では、本発明の洗浄組成物は、硬質表面洗浄組成物であり、好ましくはこの硬質表面洗浄組成物が不織布基材に含浸する。本明細書で使用する時、「含浸」は、不織布基材の少なくとも一部分に硬質表面洗浄組成物が染み込むように、好ましくは硬質表面洗浄組成物が不織布基材に十分に染み渡るように、硬質表面洗浄組成物が不織布基材と接触して配置されることを意味する。
【0090】
他の実施形態では、洗浄組成物は、液体食器手洗い組成物のような液体食器洗浄組成物、固体自動食器洗い機用洗浄組成物、液体自動食器洗い機用洗浄組成物、及び自動食器洗い機用洗浄組成物のタブ(tab)/単位用量形態である。
【0091】
洗浄組成物は、また、ハードウッド、タイル、セラミック、プラスチック、革、金属、ガラスなど、様々な表面を洗浄するカーケア組成物で使用されてもよい。この洗浄組成物は、また、シャンプー組成物、身体洗浄剤、液体若しくは固体石鹸、及び界面活性剤が自由硬度と接触する他の洗浄組成物など、パーソナルケア組成物で使用されるように設計することもでき、また、石油採掘組成物(oil drilling compositions)のような硬度に対して耐性の界面活性剤系を必要とするすべての組成物で使用されるように設計することもできる。
【0092】
界面活性剤増強ポリマー
本発明に用いるのに適した界面活性剤増強ポリマーは、洗浄組成物中に、洗浄組成物の約0.001重量%〜約30重量%、好ましくは洗浄組成物の約0.05重量%〜約10重量%、より好ましくは約0.1重量%〜約5重量%で存在する。
【0093】
界面活性剤 − 本発明に用いてもよい界面活性剤は、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性界面活性剤、両性、双極性イオン性、半極性の非イオン性界面活性剤から選択される界面活性剤、アルキルアルコールのようなその他の補助剤又はこれらの混合物を含む界面活性剤又は界面活性剤系を含んでもよい。
【0094】
本発明の洗浄組成物は更に、1つ以上の界面活性剤を有する界面活性剤系を、洗浄組成物の約0.1重量%〜約20重量%、好ましくは約0.2重量%〜約10重量%、より好ましくは約0.2重量%〜約5重量%含む。
【0095】
陰イオン性界面活性剤
本明細書で有用な陰イオン性界面活性剤の非限定例には、C〜C18アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、C10〜C20一級分岐鎖及びランダムアルキルサルフェート(AS)、C10〜C18二級(2,3)アルキルサルフェート、C10〜C18アルキルアルコキシサルフェート(AES)であって、好ましくはxが1〜30であるもの、好ましくは1〜5のエトキシ単位を含むC10〜C18アルキルアルコキシカルボキシレート、米国特許第6,020,303号及び米国特許第6,060,443号で論じられるような中鎖分岐状アルキルサルフェート、米国特許第6,008,181号及び米国特許第6,020,303号で論じられるような中鎖分岐状アルキルアルコキシサルフェート、PCT国際公開特許WO99/05243、PCT国際公開特許WO99/05242、及びPCT国際公開特許WO99/05244で論じられるような変性アルキルベンゼンスルホネート(MLAS)、メチルエステルスルホネート(MES)、並びにα−オレフィンスルホネート(AOS)が挙げられる。
【0096】
洗浄補助物質
一般に、洗浄補助剤は、最低限の必須成分だけを含有する洗浄組成物を、洗濯、硬質表面、パーソナルケア、消費者、商業、及び/又は工業洗浄目的に有用な洗浄組成物へと転換するのに必要な、あらゆる物質である。特定の実施形態では、洗浄補助剤は、洗浄製品、特に家庭環境で消費者による直接使用が意図された洗浄製品の特徴を絶対的に示すものとして、当業者には容易に認識可能である。
【0097】
これら追加構成成分の精確な性質、及びそれらを組み込む濃度は、洗浄組成物の物理形態、及びそれが使用されることになる洗浄操作の性質に依存する。
【0098】
洗浄補助成分は、漂白剤と併せて使用される場合、その漂白剤との良好な安定性を有するべきである。本明細書の洗浄組成物の特定の実施形態は、法律で定められるように、無ホウ素及び/又は無リン酸塩であるべきである。洗浄補助剤の濃度は、洗浄組成物の約0.00001重量%〜約99.9重量%である。全体的な洗浄組成物の使用濃度は、目的とする用途に依存して大きく異なることができ、例えば、溶液中で数ppmの濃度から、洗浄すべき表面への非希釈(neat)洗浄組成物のいわゆる「直接適用」までにわたる場合がある。
【0099】
ごく典型的には、本明細書の洗浄組成物、例えば、洗濯洗剤、洗濯洗剤添加剤、硬質表面洗浄剤、合成及び石鹸系の洗濯用棒状固形物(laundry bars)、布地柔軟仕上げ剤及び布地処理液、固体、並びにすべての種類の処理物品などは、幾つかの補助剤を必要とするが、漂白添加剤のような単純に配合された特定の製品は、例えば、酸素漂白剤及び本明細書に記載の界面活性剤しか必要としない場合がある。適した洗濯又は洗浄補助物質の包括的な一覧は、PCT国際公開特許WO99/05242に見出すことができる。
【0100】
通常の洗浄補助剤としては、ビルダー、酵素、以上に論じられていないポリマー、漂白剤、漂白活性化剤、触媒物質などが挙げられるが、本発明の洗浄組成物の必須構成成分の一部として以上に既に定義されたいかなる物質も除く。本明細書の他の洗浄補助剤としては、起泡促進剤、抑泡剤(消泡剤)など、各種の活性成分若しくは特殊な物質、例えば、前述した以外の分散性ポリマー(例えばBASF社(BASF Corp.)若しくはローム・アンド・ハース(Rohm & Haas)から得られるもの)、カラースペックル(color speckles)、シルバーケア(silvercare)、曇り防止剤及び/又は耐食剤、染料、フィラー、殺菌剤、アルカリ源、ヒドロトロープ、酸化防止剤、酵素安定化剤、プロ香料、香料、可溶化剤、キャリア、加工助剤、顔料、並びに、液体製剤の場合、溶媒、キレート剤、移染阻害剤、分散剤、増白剤、抑泡剤、染料、構造弾性化剤(structure elasticizing agents)、布地柔軟仕上げ剤、磨耗防止剤、ヒドロトロープ、加工助剤、並びに他の布地ケア剤、表面及び皮膚ケア剤を挙げることができる。このような他の洗浄補助剤の適した例及び使用濃度は、米国特許第5,576,282号、同第6,306,812B1号、及び同第6,326,348B1号に見出される。
【0101】
酵素
洗浄組成物は、洗浄性能及び/又は布地ケアの利益を提供する1つ以上の洗剤用酵素を含むことができる。適した酵素の例としては、ヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ケラタナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マラナーゼ、β−グルカナーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、及び既知のアミラーゼ、又はこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。好ましい組み合わせは、本発明のアミラーゼと併用して、プロテアーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、及び/又はセルラーゼのような従来型適用可能な酵素のカクテルを有する洗浄組成物である。
【0102】
方法
本発明は、表面又は布地を洗浄する方法を包含する。こうした方法は、本発明の界面活性剤増強ポリマー、又は本発明の界面活性剤増強ポリマーを含む洗浄組成物の実施形態を、非希釈(neat)形態で、又は洗浄液で希釈して、表面又は布地の少なくとも一部分と接触させ、次いで任意にこうした表面又は布地をすすぐ工程を包含する。好ましくは、表面若しくは布地には、前述した任意のすすぎ工程の前に洗浄工程が実施される。本発明の目的では、洗浄には、これらに限定するものではないが、擦り洗い及び機械的攪拌が包含される。
【0103】
当業者には理解されるように、本発明の洗浄組成物は、理想的には、ホームケア(硬質表面洗浄組成物)、パーソナルケア、及び/又は洗濯用途で使用するのに適している。それ故に、本発明には、表面洗浄、及び/又は布地洗濯方法が包含される。この方法は、洗浄/洗濯すべき表面及び/若しくは布地を、界面活性剤増強ポリマー、又は界面活性剤増強ポリマーを含む洗浄組成物と接触させる工程を含む。表面は、ハードウッド、タイル、セラミック、プラスチック、革、金属、ガラスなど、通常の家庭で見られるほとんどの硬質表面を含んでよく、又は、毛髪及び皮膚のようなパーソナルケア製品における洗浄表面から成るものであってもよい。表面には、また、食器、ガラス製品、及び他の調理表面を包含してもよい。布地は、通常の消費者使用条件で洗濯可能なほとんどのいずれの布地を含んでもよい。
【0104】
洗浄組成物溶液のpHは、洗浄すべき表面に対して最も補足的になるように選択され、pH約5〜約11の広い範囲にわたる。皮膚及び毛髪洗浄のようなパーソナルケアの場合、こうした組成物のpHは、好ましくはpH約5〜約8であり、洗濯洗浄組成物の場合、pH約8〜約10である。組成物は、好ましくは、溶液中で約200ppm〜約10,000ppmの濃度で用いられる。水温は、好ましくは約5℃〜約100℃にわたる。
【0105】
洗濯洗浄組成物で使用される場合、組成物は、好ましくは、溶液(又は洗浄液)中で約200ppm〜約10000ppmの濃度で用いられる。水温は、好ましくは約5℃〜約60℃にわたる。水:布地の比率は、好ましくは約1:1〜約20:1である。
【0106】
当業者には理解されるように、本発明の洗浄組成物は、また、パーソナル洗浄ケア用途で使用するのにも適している。それ故に、本発明には、皮膚又は毛髪を洗浄する方法が包含される。この方法は、洗浄されるべき皮膚/毛髪を、洗浄溶液、又は出願人の洗浄組成物の実施形態で含浸された不織布基材と接触させる工程を含む。皮膚及び毛髪と接触する時には、不織布基材の使用方法は、ユーザーの手によってもよく、又は不織布基材がそれに取り付けられる道具を用いてもよい。
【0107】
発明を実施するための最良の形態において引用されるすべての文献は、その関連部分において本明細書に参考として組み込まれるが、いずれの文献の引用も、それが本発明に対する先行技術であることを認めるものと解釈されるべきではない。
【0108】
本発明の特定の実施形態を例示し記載したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を実施できることが、当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
20℃で少なくとも10ppmの溶解度、約1500〜200,000ダルトンの重量平均分子量を含み、並びに主鎖及び前記主鎖から伸びる少なくとも1つの側鎖を含み、及び前記側鎖が末端部を、前記末端部が前記側鎖を終了させるように含み、少なくとも1つの側鎖がアルコキシ部分を含むことを特徴とするポリマーであって、前記ポリマーが、少なくとも1つの界面活性剤と接触して配置される時、16gpgの自由イオンを有する水の存在下で430以下のSB50値を有するポリマー。
【請求項2】
前記ポリマーが、少なくとも1つの正電荷を更に含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記界面活性剤が、陰イオン性界面活性剤である、請求項1に記載の界面活性剤。
【請求項4】
20℃で少なくとも10ppmの溶解度、約1500〜200,000ダルトンの重量平均分子量を含み、並びに主鎖及び前記主鎖から伸びる少なくとも1つの側鎖を含み、及び前記側鎖が末端部を、前記末端部が前記側鎖を終了させるように含み、少なくとも1つの側鎖がアルコキシ部分を含むポリマーであって、前記ポリマーが、前記界面活性剤及び少なくとも2gpgの自由イオンを有する水の存在下にある時430以下のSB50値を有するポリマーの最小モル量の使用を含む、少なくとも1つの界面活性剤の大量の凝集体を防ぐ方法。
【請求項5】
20℃で少なくとも10ppmの溶解度、約1500〜200,000ダルトンの重量平均分子量を含み、並びに主鎖及び前記主鎖から伸びる少なくとも1つの側鎖を含み、及び前記側鎖が末端部を、前記末端部が前記側鎖を終了させるように含み、少なくとも1つの側鎖がアルコキシ部分を含むポリマーであって、前記ポリマーが、前記界面活性剤及び少なくとも2gpgの自由イオンを有する水の存在下にある時430以下のSB50値を有するポリマーの最小モル量の使用を含む、少なくとも1つの界面活性剤の利用可能な界面活性剤濃度を増加する方法。
【請求項6】
少なくとも1つの界面活性剤の存在下で用いるためのポリマーを選択する方法であって、
(a)次の計算をする工程、
log(1/SB50)=−2.150−0.903*CD+0.227*COPC−0.792*CD+0.123*ESO−0.007*SHBint10+0.112*dxvp5
相関関係(I)
式中、相関関係(I)のCDは、ポリマーの正電荷密度であり、相関関係(I)のCOPCは、ポリマー分子中の正電荷の総数であり、相関関係(I)のCDは、側鎖周囲の平均電荷密度であり、相関関係(I)のESOは、側鎖上の負電荷の合計数であり、相関関係(I)のSHBint10は、10の端(結合)により分離される分子内水素結合対についてのトポロジー状態の指標の積の合計であり、及び相関関係(I)のdxvp5記述子は、価数差を補正された5次経路分子結合性指標である。
(b)20℃で少なくとも10ppmの溶解度、約1500〜200,000ダルトンの重量平均分子量を含み、並びに主鎖及び前記主鎖から伸びる少なくとも1つの側鎖を含み、及び前記側鎖が末端部を、前記末端部が前記側鎖を終了させるように含み、少なくとも1つの側鎖がアルコキシ部分を含むポリマーであって、前記ポリマーが少なくとも1つの正電荷を更に有し、前記ポリマーが、前記界面活性剤の存在下で430以下のSB50値を示すように、前記相関関係(I)の計算に基づいて適切なポリマーを選択する工程、
を含む、方法。
【請求項7】
少なくとも1つの界面活性剤の存在下で用いるためのポリマーを設計する方法であって、
(a)次の計算をする工程、
log(1/SB50)=−2.150−0.903*CD+0.227*COPC−0.792*CD+0.123*ESO−0.007*SHBint10+0.112*dxvp5
相関関係(I)
式中、相関関係(I)のCDは、ポリマーの正電荷密度であり、相関関係(I)のCOPCは、ポリマー分子中の正電荷の総数であり、相関関係(I)のCDは、側鎖周辺の平均電荷密度であり、相関関係(I)のESOは、側鎖上の負電荷の合計数であり、相関関係(I)のSHBint10は、10の端(結合)により分離される分子内水素結合対についてのトポロジー状態の指標の積の合計であり、及び相関関係(I)のdxvp5記述子は、価数差を補正された5次経路分子結合性指標である。
(b)20℃で少なくとも10ppmの溶解度、約1500〜200,000ダルトンの重量平均分子量を含み、並びに主鎖及び前記主鎖から伸びる少なくとも1つの側鎖を含み、及び前記側鎖が末端部を、前記末端部が前記側鎖を終了させるように含み、少なくとも1つの側鎖がアルコキシ部分を含むポリマーであって、前記ポリマーが少なくとも1つの正電荷を更に有し、前記ポリマーが、前記界面活性剤の存在下で430以下のSB50値を示すように、前記相関関係(I)の計算に基づいて適切なポリマーを選択する工程であって、前記選択が、前記相関関係(I)の計算を、前記主鎖及び側鎖の化学に適した官能基と適合させることを含む工程、
を含む、方法。
【請求項8】
前記方法が、前記相関関係Iの結果を前記ポリマーの前記主鎖及び側鎖に適した官能基と適合させる更なる工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
洗浄組成物であって、
A.前記洗浄組成物の約0.1重量%〜約20重量%の陰イオン性界面活性剤、及び
B.前記洗浄組成物の約0.001重量%〜約30重量%の請求項1に記載のポリマーを含み、前記ポリマーが、ポリイミンポリマー、アルコキシル化モノアミン、分岐状ポリアミノアミン、変性ポリオールエトキシル化ポリマー、及び疎水性ポリアミンエトキシレートポリマーから成る群から選択される洗浄組成物。
【請求項10】
前記組成物が、少なくとも1つの酵素を更に含む、請求項8に記載の組成物。

【公表番号】特表2007−517933(P2007−517933A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545602(P2006−545602)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/043073
【国際公開番号】WO2005/063957
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】