説明

界面活性剤組成物

【課題】硬度が高い水を用いた場合であっても、水中に含まれるカルシウムイオンやマグ
ネシウムイオンとの塩の形成を抑制し、優れた洗浄効果を有する界面活性剤組成物および
これを含む洗剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アル
キル硫酸およびアルキル硫酸塩からなる群から選ばれる1種以上と、(b)炭素数10〜
30の炭化水素基を有し、オキシアルキレン基の炭素数が3以下のポリオキシアルキレン
基および水酸基の合計質量が化合物全質量100%に対して75〜95%である炭化水素
基含有ポリオキシアルキレン系化合物と、を含有し、(a)と(b)との含有質量比が(
a):(b)=100:0.1〜100:17である界面活性剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキルベンゼンスルホン酸塩などのアニオン界面活性剤と特定の炭化水素基含有ポリオキシアルキレン系化合物を含有する界面活性剤組成物に関するものである。特に、本発明は、硬度が高い水を用いた場合であっても優れた洗浄効果を有する界面活性剤組成物およびこれを含有する洗剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドデシルベンゼンスルホン酸などの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)やアルキル硫酸塩(AS)が、その優れた洗浄効果から衣料類に用いられる洗剤に使用されるアニオン界面活性剤として、汎用されている。アルキルベンゼンスルホン酸塩やアルキル硫酸塩は、カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの硬度成分に敏感であることが知られている。すなわち、アルキルベンゼンスルホン酸塩やアルキル硫酸塩と、水中に存在するカルシウムやマグネシウムとが、カルシウム塩やマグネシウム塩を形成する。そして、これらの塩が洗濯水中に析出沈殿し、その結果、洗剤濃度の低下および洗浄力の低下を招く。このため、カルシウム塩の沈殿を抑制する目的で、一般的に金属イオンを捕捉する、縮合リン酸塩やゼオライト、ケイ酸塩、または炭酸塩などのビルダーが洗剤では用いられる。しかし、これらのビルダーを、カルシウム捕捉能を満たすほどに十分に添加すると、洗剤の長期保存安定性や衣類へのビルダー付着といった問題点が生ずることがあった。この問題点を解決するための手段として、非特許文献1には、ビルダーの添加量が少ない場合であってもノニオン界面活性剤を添加することにより、上記カルシウム塩の沈殿が軽減されることが報告されている。
【非特許文献1】ルイス・ホ・タン・タイ(Louis Ho Tan Tai)著、「界面活性剤およびパーソナルケア製品の作製(Formulating Detergents and Personal Care Products)」、エーオーシーエス・プレス(AOCS Press)、2000、p53−54
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、どのようなアニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤とを組み合わせることにより、カルシウムやマグネシウム濃度の高い高硬度条件下においてもアニオン界面活性剤が塩を形成せずに、優れた洗浄効果を有するかについて、具体的な知見は得られていないのが現状である。
【0004】
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、硬度が高い水を用いた場合であっても、水中に含まれるカルシウムイオンやマグネシウムイオンとの塩の形成を抑制し、優れた洗浄効果を有する界面活性剤組成物およびこれを含む洗剤組成物を提供することを目的とするものである。
【0005】
本発明の他の目的は、このような界面活性剤組成物または洗剤組成物と、硬度が高い水と、を用いる洗濯方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために様々なアニオン界面活性剤およびノニオン界面活性剤について鋭意検討を行なった結果、アルキルベンゼンスルホン酸塩などのアニオン界面活性剤と特定の炭化水素基含有ポリオキシアルキレン系化合物とを含有する界面活性剤組成物が、アニオン界面活性剤と水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンとから形成される塩の沈殿を抑制し、その結果として優れた洗浄効果を維持できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、(a)アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸およびアルキル硫酸塩からなる群から選ばれる1種以上と、(b)炭素数10〜30の炭化水素基を有し、オキシアルキレン基の炭素数が3以下のポリオキシアルキレン基および水酸基の合計質量が化合物全質量100%に対して75〜95%である炭化水素基含有ポリオキシアルキレン系化合物と、を含有し、(a)と(b)との含有質量比が(a):(b)=100:0.1〜100:17である界面活性剤組成物である。
【0008】
さらに、本発明は、(a)アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸およびアルキル硫酸塩からなる群から選ばれる1種以上と、(b)炭素数10〜30の炭化水素基を有し、グリフィンのHLBが15.0〜19.0である炭化水素基含有ポリオキシアルキレン系化合物と、を含有し、(a)と(b)との含有質量比が(a):(b)=100:0.1〜100:17である界面活性剤組成物である。
【0009】
さらに本発明は、前記界面活性剤組成物を含む洗剤組成物、および前記界面活性剤組成物または前記洗剤組成物と、硬度が高い水と、を用いる洗濯方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の界面活性剤組成物および洗剤組成物を用いれば、高硬度の水を用いて洗浄した場合であっても、アニオン界面活性剤とカルシウムイオンやマグネシウムイオンとから形成される塩の沈殿を抑制することができ、その結果として高い洗浄効果を維持できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
第一の実施形態である界面活性剤組成物は、(a)アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸およびアルキル硫酸塩からなる群から選ばれる1種以上を必須成分として含有する。
【0013】
アルキルベンゼンスルホン酸/塩としては、本願の効果が得られるものであれば特に制限されず、アルキル基が直鎖であっても分岐であってもよい。好ましくは、アルキル基の炭素数が8〜20、より好ましくは10〜18、さらに好ましくは11〜16、特に好ましくは11〜14である。また、好ましくは、直鎖アルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸/塩である。さらに、アルキルベンゼンスルホン酸と塩を形成するカチオンとしては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類が挙げられ、中でもナトリウムを用いることが好ましい。
【0014】
アルキル硫酸/塩としては、本願の効果が得られるものであれば特に制限されず、アルキル基が直鎖であっても分岐であってもよい。好ましくは、アルキル基の炭素数が8〜20、より好ましくは10〜18、さらに好ましくは12〜18、特に好ましくは14〜18である。また、好ましくは、直鎖アルキル基を有するアルキル硫酸/塩である。アルキル硫酸と塩を形成するカチオンとしては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類が挙げられ、中でもナトリウムを用いることが好ましい。
【0015】
界面活性剤組成物中のアルキルベンゼンスルホン酸/塩、アルキル硫酸/塩の含有量は、特に制限されるものではないが、カルシウム、マグネシウムイオンとの塩の形成を効果的に抑制するために、好ましくは組成物の全量に対して10〜30質量%(以下、単に%とする)、より好ましくは10〜25%である。
【0016】
本発明の効果を得るためには、成分(a)は、最終的な使用形態(例えば、洗剤組成物)までに、塩の形のアニオン界面活性剤となっていることが必要である。具体的には、界面活性剤組成物が、当初から塩の形であるアルキルベンゼンスルホン酸塩やアルキル硫酸塩を含有してもよいし、また、界面活性剤組成物が、アルキルベンゼンスルホン酸やアルキル硫酸と塩基とを含有して最終的に界面活性剤組成物中でアニオン界面活性剤となるようにしてもよいし、さらにアルキルベンゼンスルホン酸やアルキル硫酸を含有する界面活性剤組成物に後から塩基を添加してアニオン界面活性剤とすることもできる。
【0017】
前記成分(a)に加えて、成分(b)炭化水素基含有ポリオキシアルキレン系化合物を含むことが本願発明の特徴である。成分(b)の添加により、硬度の高い水を用いて洗浄しても、カルシウムイオンやマグネシウムイオンとアニオン界面活性剤との塩の形成が少なく、良好な洗浄効果が得られる。なお、炭化水素基含有ポリオキシアルキレン系化合物とは、化合物中に炭素数10〜30の炭化水素基とポリオキシアルキレン基とを少なくとも含有する化合物を指す。炭化水素基は、特に制限されるものではなく、直鎖であっても、分岐鎖であっても、飽和であっても、不飽和であってもよい。
【0018】
本発明で用いられる成分(b)の一実施形態は、オキシアルキレン基の炭素数が3以下であるポリオキシアルキレン基および水酸基の合計質量が化合物全質量100%に対して75〜95%である炭化水素基含有ポリオキシアルキレン系化合物である。アニオン界面活性剤と水中のカルシウム等との塩の形成を抑制する観点から、炭素数3以下のポリオキシアルキレン基および水酸基の合計質量が化合物全質量100%に対して、87〜94%であることが好ましい。ここで、炭化水素基含有ポリオキシアルキレン系化合物中のオキシアルキレン基は1種のみが単独で存在していてもよいし、2種以上が存在してもよい。なお、ポリオキシアルキレン基中のオキシアルキレン基は、炭素数が3以下のオキシアルキレン基のみで構成される場合だけではなく、オキシアルキレン基の炭素数が4以上であるオキシアルキレン基をポリオキシアルキレン基中に含んでいてもよい。
【0019】
本発明で用いられる成分(b)の他の実施形態は、アニオン界面活性剤と水中のカルシウム等との塩の形成を抑制する観点から、グリフィンの式による計算でHLBが15.0〜19.0であり、より好ましくはHLBが17.5〜18.8の範囲であるものである。上記HLBは、「界面活性剤 物性・応用・化学生態学」(北原文雄他編、p.24−25、講談社)中に記載の方法で算出される。
【0020】
炭化水素基含有ポリオキシアルキレン系化合物は、本願発明の効果が得られる限り、特に制限されるものではないが、前記塩の形成抑制の点から、好ましくは下記化学式(1)で表される化合物である。
【0021】
【化1】

【0022】
上記化学式(1)中のRは、炭素数10〜30の炭化水素基を表し、直鎖であっても、分岐鎖であっても、飽和であっても、不飽和であってもよい。好ましくは、Rは、炭素数が10〜20であり、より好ましくは10〜18、さらに好ましくは12〜16、特に好ましくは12〜15である。また、Rは、好ましくはアルキル基またはアルケニル基である。アルキル基としては、例えば、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基などが挙げられる。また、アルケニル基としては、例えば、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、イコシレン基などが挙げられる。なかでも、Rは、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基であることが好ましく、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基であることがより好ましい。
【0023】
上記化学式(1)中のXは、
【0024】
【化2】

【0025】
である。また、上記化学式(1)中のpは整数を表し、好ましくは0または1、より好ましくは0である。
【0026】
上記化学式(1)中のYは、
【0027】
【化3】

【0028】
である。カルシウム塩形成抑制の点から、より好ましくは、上記化学式(1)中のYが、−O−Rである。なお、式中、R1〜Rはそれぞれ独立して、アルキレン基を表し、好ましくは炭素数2〜6、より好ましくは2〜4、さらに好ましくは、2〜3、特に好ましくは2のアルキレン基である。また、Rは水素原子、または下記化学式(2)で表される基;
【0029】
【化4】

【0030】
である。化学式(2)中、R、Rは、それぞれ独立して炭素数2〜6のアルキレン基を表し、好ましくは炭素数2〜6、より好ましくは2〜4、さらに好ましくは、2〜3、特に好ましくは2のアルキレン基である。sは整数を表し、好ましくは0〜200、より好ましくは0〜100、さらに好ましくは、0〜70、特に好ましくは0〜55の整数である。なお、Rとしては、1種のみが単独で存在していてもよいし、2種以上が存在してもよい。
【0031】
上記化学式(1)中のZはオキシアルキレン基を表す。好ましくは、炭素数が2〜6、より好ましくは2〜4、さらに好ましくは、2〜3、特に好ましくは2のオキシアルキレン基である。なお、Zとしては、1種のみが単独で存在していてもよいし、2種以上が存在してもよい。qは整数を表し、好ましくは17〜200、より好ましくは18〜100、さらに好ましくは28〜70、特に好ましくは34〜55の整数である。
【0032】
さらに、上記化学式(1)中のrは、整数であり、好ましくは、1〜6、より好ましくは1〜2の整数、さらに好ましくは1である。rが2以上の場合、−X−Y−(Z)−OHは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。なお、rが2以上である場合、化学式(1)中のRの異なる(rの数の)炭素原子に、上記化学式(1)の−X−Y−(Z)−OHがそれぞれ結合していることを意味し、−X−Y−(Z)−OHの部分を繰り返し単位とする繰り返し構造がr個続くことを意味するものではない。
【0033】
前記化学式(1)を表す化合物の中でも、アニオン界面活性剤と水中のカルシウム等との塩の形成を抑制する観点から、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが、好ましい。このようなポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシプロピレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル,ポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル,ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテルなどが挙げられる。この中でも、特にポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルが好ましい。また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルのアルキル鎖は、好ましくは炭素数が10〜20であり、より好ましくは10〜18、さらに好ましくは12〜16、特に好ましくは12〜15である。
【0034】
また、成分(b)を1%水溶液とした際の曇点が100℃以上であることが好ましい。曇点が100℃以上であると、界面活性剤の親水性が高まり、水への溶解性が良好となるため好ましい。なお、曇点は通常公知の方法により測定することができる。
【0035】
前記成分(a)と前記成分(b)との含有質量比は、(a):(b)=100:0.1〜100:17である。この範囲であると、アニオン界面活性剤と水中のカルシウムやマグネシウムとの塩の形成が抑制されるため、好ましい。成分(a)100質量%に対して成分(b)が17質量%を超えると、成分(b)の添加量に見合った効果がみられなくなる場合がある。また、粉体界面活性剤組成物である場合、粉体化するために、ゼオライトや孔質性無機塩のような吸収剤を過剰に加える必要があり、界面活性剤の組成比が低下することから、洗浄力が低下する虞がある。また、粉体化のために、ゼオライト等を増加させると界面活性剤組成物の水中への溶解性が低下し、洗剤用途で用いた場合には、洗剤の溶け残りが増加し、汚れの原因となる。より好ましくは、(a):(b)=100:2〜100:16、さらに好ましくは(a):(b)=100:4〜100:15、特に好ましくは(a):(b)=100:5〜100:12である。
【0036】
本発明の界面活性剤組成物の用途としては、衣料用、食器用、住居用、毛髪用、身体用、歯磨き用、および自動車用などの洗剤、乳化剤、可溶化剤、帯電防止剤、分散剤などが挙げられる。本発明の効果を鑑みると、好ましい使用用途は、洗剤である。洗剤は、衣料用、食器用、住居用、身体用などいずれにも使用することができるが、好ましいのは、衣料用洗剤としての使用である。使用用途、使用性、機能性の点から、前記界面活性剤組成物には、適宜公知の任意成分を添加することができる。
【0037】
本発明の界面活性剤をそのまま上記用途の洗剤として使用することもできるし、適宜用途に応じて必要な成分を添加して、洗剤組成物として使用することも可能である。したがって、本発明の第二の実施形態は、洗剤組成物である。
【0038】
成分(a)と成分(b)との含有量(合計)は、本願発明の効果が得られる限り特に限定されるものではないが、液体洗剤組成物100%に対して好ましくは1〜40%、より好ましくは5〜35%、さらに好ましくは10〜30%である。この範囲であれば、良好な洗浄効果が得られるので好ましい。
【0039】
前記洗剤組成物には、通常、洗剤に用いられる成分(a)、(b)以外の界面活性剤、および添加剤を用いることができる。
【0040】
界面活性剤は、成分(a)以外のアニオン界面活性剤、成分(b)以外のノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種であり、これらの界面活性剤は1種または2種以上を使用することができる。
【0041】
成分(a)以外のアニオン界面活性剤としては、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはそのエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステルまたはその塩、アルケニルリン酸エステルまたはその塩等が好適である。
【0042】
成分(b)以外のノニオン界面活性剤としては、高級脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が好適である。
【0043】
カチオン界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等が好適である。
【0044】
両性界面活性剤としては、カルボキシル型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等が好適である。
【0045】
成分(a)、(b)を含む界面活性剤(合計)の配合割合は、通常、洗剤組成物100%に対して5〜60%であることが好ましい。より好ましくは、5〜50%であり、更に好ましくは、10〜45%であり、特に好ましくは、10〜40%である。この範囲であれば、良好な洗浄効果が得られるので好ましい。
【0046】
本発明の洗剤組成物は、添加剤として洗剤用ビルダーをさらに含むことが好ましい。ここでいうビルダーとは、キレートイオン交換作用、アルカリ緩衝作用、固体粒子分散作用などを有し、界面活性剤と組み合わせることによって、洗剤性能を著しく向上させる成分をいう。本発明で用いられうるビルダーとしては、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、例えば、炭酸塩、炭酸水素塩、珪酸塩、ボウ硝などのアルカリビルダーや、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、ニトリロトリ酢酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、クエン酸塩、(メタ)アクリル酸の共重合体塩、アクリル酸−マレイン酸共重合体、フマール酸塩、ゼオライト等のキレートビルダー、(メタ)アクリル酸重合体塩、アクリル酸−マレイン酸共重合体塩、フマール酸共重合体塩等の公知のポリカルボン酸塩、カルボキシメチルセルロース等の多糖類のカルボキシル誘導体等の再付着防止剤が挙げられる。上記ビルダーに用いられる対塩としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、アンモニウム、アミン等を用いることができる。粉末洗剤の場合は、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、ゼオライトを配合することが好ましい。液体洗剤の場合は、ニトリロトリ酢酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、クエン酸を配合することが好ましい。
【0047】
その他の添加剤としては、前述のビルダーの他、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等の酵素、ベンゾトリアゾールやエチレン−チオ尿素等の汚れ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、過炭酸塩等の漂白剤、漂白助剤、染料、溶媒等が挙げられる。
【0048】
添加剤の配合割合は、通常、洗剤組成物100%に対して40〜95%、より好ましくは、50〜90%、さらに好ましくは55〜90%であり、特に好ましくは60〜90%である。添加剤の配合割合がこの範囲であれば、良好な洗浄効果が得られ、また組成物の長期安定性も良好になるため、好ましい。
【0049】
なお、前記洗剤組成物は、家庭用洗剤の合成洗剤、繊維工業その他の工業用洗剤、硬質表面洗浄剤のほか、その成分の1つの働きを高めた漂白洗剤等の特定の用途にのみ用いられる洗剤も含む。
【0050】
本発明の洗剤組成物は、粉末洗剤、高嵩密度洗剤、タブレット洗剤などの固形洗剤組成物であっても、液体洗剤組成物であってもよい。いずれの形態の製造も、従来公知の製造方法を使用して製造することができる。例えば、粉末洗剤の場合、添加剤をスラリー状にし、噴霧乾燥して得られるベース顆粒に、成分(a)、(b)を含む界面活性剤等を添加することによって、粉末洗剤組成物を得ることができる。
【0051】
洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、液体洗剤組成物に含まれる水分量は、通常、液体洗剤組成物100%に対して0.1〜75%が好ましく、より好ましくは、1〜55%以下であり、最も好ましくは、1.5〜50%である。
【0052】
前記界面活性剤組成物または、前記洗剤組成物は、カルシウムイオンやマグネシウムイオンの濃度が高い硬水中で使用しても、塩の析出が少なく、優れた洗浄効果を有する。すなわち、本発明の第三の実施形態は、上記界面活性剤組成物または上記洗剤組成物と、硬度100mg/L(炭酸カルシウム換算)以上の水と、を用いて洗濯する方法である。上記成分(a)と洗浄時に使用される水中に含まれるカルシウムイオンやマグネシウムイオンとが、塩を形成し、この塩が成分(a)の洗浄効果を抑制することは、前に述べたとおりである。これは、水道水中に含まれるカルシウム濃度が高い地域、具体的には硬度が100mg/L以上の地域では、特に問題となるところである。前記界面活性剤組成物または、前記洗剤組成物を使用して洗濯を行うことによって、前記問題点は解決されうる。
【0053】
本実施形態の洗濯方法において用いられる界面活性剤組成物および洗剤組成物は、前記のものである。洗濯時において使用される界面活性剤組成物および洗剤組成物の量は、本発明の効果が得られる限り、特に制限されるものではないが、通常は、界面活性剤組成物の場合、洗濯水中0.1g/L〜0.6g/Lで使用される。この範囲の使用量であれば、洗浄性や洗剤の溶解性などの点で、好ましい。
【0054】
本発明において、洗濯に使用される水は、硬度が100mg/L(炭酸カルシウム換算)以上のものであるが、より好ましくは、硬度100〜500mg/L(炭酸カルシウム換算)である。なお、本発明でいう硬度は、JIS K0101に従って測定される全硬度を指す。
【0055】
上記方法において、上記界面活性剤組成物または上記洗剤組成物を用いて、硬度100mg/L以上の水で洗濯する限りは特に、用いる手段(洗濯機、手洗い等)、洗濯回数などは制限されない。
【実施例】
【0056】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0057】
(実施例)
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを200mg/L、ならびに下記表1の構造およびHLB値を有する炭化水素基含有ポリオキシアルキレン系化合物を表1に示す量含有する水(pH10)に、炭酸カルシウム濃度で610mg/Lの硬度を有するように塩化カルシウム水溶液を添加し、以下の手法によりカルシウム塩析出抑制能を測定した。
(1)まず、塩化カルシウム2水和物14.7gに純水を加えて100gとし、1mol/Lの塩化カルシウム水溶液を調製した。
(2)グリシン4.5g、塩化ナトリウム3.5gに純水を加えて1,000gとし、グリシン緩衝液を作製した。なお、pHは水酸化ナトリウムにて10に調整した。
(3)ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0gに、炭化水素基含有ポリオキシエチレンアルキルエーテルを表1の割合で加え、これに純水を加えて200gとし、界面活性剤組成物水溶液を調製した。
(4)(2)のグリシン緩衝液3.6g、(3)の界面活性剤組成物水溶液1.8gに純水を加えて90gとした後、マグネチックスターラーを用いて十分に攪拌してサンプル溶液を調製した。
(5)(4)で作製したサンプル溶液に、平沼産業製自動滴装置(本体:COM−550、光度速度ユニット;M−500)を用いて、1mol/L塩化カルシウム水溶液で滴定した後、サンプル水溶液の透過率を測定(波長:650nm)した。なお、塩化カルシウム水溶液の滴定量は0.55ml、滴下速度は0.025ml/sとした。
【0058】
結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
上記表1に示すように、比較例1〜4の界面活性剤組成物と比較して、実施例1〜7の
界面活性剤組成物の透過率は、いずれも高く、実施例1〜7の実施例はカルシウム塩の析
出を抑制しうることが示された。以上の結果から、本発明の界面活性剤組成物は、硬度が
高い水を用いた場合であっても、カルシウム塩の析出を抑制することが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸およびアルキル硫酸塩からなる群から選ばれる1種以上と、(b)炭素数10〜30の炭化水素基を有し、オキシアルキレン基の炭素数が3以下のポリオキシアルキレン基および水酸基の合計質量が化合物全質量100%に対して75〜95%である炭化水素基含有ポリオキシアルキレン系化合物と、を含有し、(a)と(b)との含有質量比が(a):(b)=100:0.1〜100:17である界面活性剤組成物。
【請求項2】
(a)アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸およびアルキル硫酸塩からなる群から選ばれる1種以上と、(b)炭素数10〜30の炭化水素基を有し、グリフィンのHLBが15.0〜19.0である炭化水素基含有ポリオキシアルキレン系化合物と、を含有し、(a)と(b)との含有質量比が(a):(b)=100:0.1〜100:17である界面活性剤組成物。
【請求項3】
前記炭化水素基含有ポリオキシアルキレン系化合物が下記化学式(1)で表される請求項1または請求項2に記載の界面活性剤組成物:
【化1】

式中、Rは直鎖または分岐の炭素数10〜20のアルキル基またはアルケニル基を表し;Xは、
【化2】

を表し;pは0または1であり;Yは、
【化3】

式中、R1〜Rは炭素数2〜6のアルキレン基を表し、Rは水素原子、または下記化学式(2)で表される基;
【化4】

式中、R、Rは、炭素数2〜6のアルキレン基を表し、sは0〜200の整数である
である:
であり;Zは炭素数2〜6のオキシアルキレン基を表し;qは17〜200の整数であり;rは1〜6の整数である。
【請求項4】
前記(a)を、組成物全量に対して10〜30質量%含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の界面活性剤組成物。
【請求項5】
洗剤組成物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の界面活性剤組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の界面活性剤組成物と、硬度100mg/L(炭酸カルシウム換算)以上の水と、を用いる洗濯方法。

【公開番号】特開2007−284674(P2007−284674A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77704(P2007−77704)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】