説明

界面活性剤組成物

【課題】プロピレンオキサイドが付加した構造を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩を高濃度で含有し、且つ長期保存条件下での匂いや色相の安定性にも優れた界面活性剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)プロピレンオキサイドが付加した構造を有する特定のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩40〜58質量%、(b)炭素数が1〜6のアルコール13〜20質量%、(c)アルカリ剤0.002〜0.5質量%、及び水を含有する界面活性剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性剤組成物に関する。具体的には、特定の構造を有するアルキルエーテル硫酸エステル塩を含有する界面活性剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩は、高級アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物の硫酸エステル塩からなるアニオン界面活性剤であり、皮膚に対する刺激が少なく、液体洗浄剤、例えば、食器用洗剤、シャンプー、衣料用洗剤等の主活性剤として広く使用されている。
【0003】
また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩はその一般的な製造法から、単一な物質ではなく、また、主には水を含む組成物として流通されている。その組成物中の一般的なポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の含有量は、溶液物性から、30質量%未満若しくは70質量%付近となっている。該含有量が30質量%未満の場合、組成物の貯槽や反応槽の容量や生産効率、輸送にかかる経費等の面から好ましいとは言えない。そのため可能な限り高濃度であることが望ましい。また80質量%を超えると流動性が無いため取扱いの面で好ましいとは言えない。
【0004】
このように、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩を高濃度に含有する組成物は、工業段階では有用であり、従来そのような組成物を得るための技術が種々提案されている。特許文献1には、所定の製造方法により、エタノール、水、高級第二アルコールエトキシレート硫酸エステル塩を所定比率で含有する溶液が得られることが開示されている。また、特許文献2には、所定の製造方法により、高濃度でアルコールエトキシルサルフェートを含有し、実質的にエタノールやメタノール等の低級アルコールを含まない液状の表面活性組成物が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭49−15706号公報
【特許文献2】特開平3−93900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では、このようなポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩を高濃度で配合した場合に、長期保存条件下において匂いや色相が損なわれることがあった。
【0007】
本発明の課題は、プロピレンオキサイドが付加した構造を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩を高濃度で含有し、且つ長期保存条件下での匂いや色相の安定性にも優れた界面活性剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(a)下記一般式(1)で表される化合物〔以下、(a)成分という〕40〜58質量%、(b)炭素数が1〜6のアルコール〔以下、(b)成分という〕13〜20質量%、(c)アルカリ剤〔以下、(c)成分という〕0.002〜0.5質量%、及び水を含有する界面活性剤組成物に関する。
RO−〔(PO)m/(EO)n〕SO3M (1)
(式中、Rは炭素数8〜24の炭化水素基であり、POとEOは夫々プロピレンオキシ基とエチレンオキシ基であり、m、nはPO又はEOの付加モル数を示し、それぞれ0<m<5、0<n≦20となる数である。Mは陽イオンである(但し水素イオンを除く)。POとEOの付加はブロックでもランダムでもよい。)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プロピレンオキサイドが付加した構造を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩を高濃度で含有し、且つ長期保存条件下での匂いや色相の安定性にも優れた界面活性剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔(a)成分〕
一般式(1)において、Rは、好ましくは炭素数8〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又はアルケニル基である。更にRの炭素数が10〜20であれば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の、界面活性能及び水に対する溶解性のバランスがより良好となる。アルキル基及びアルケニル基としては、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、各種イコシル基、各種オクタデセニル基等が挙げられる。
【0011】
(a)成分は、一般式(1)中のRがアルキル基である化合物を含むことが好ましい。また、Rの炭素数が8〜16、更に10〜14、特に12〜14である化合物を含むことが好ましい。(a)成分は、石化原料由来のアルコール又は天然油脂原料由来のアルコールから誘導されたものが使用できる。
【0012】
また、一般式(1)中のmはPO付加モル数であり、(a)成分における平均値が0超であって5未満となる数であるが、液体洗浄剤の主活性剤として用いる場合、長期保存安定性を考えたとき、平均値は好ましくは0.1〜3であり、また、基本性能である洗浄性、低温安定性、洗浄剤組成物の物性、生分解性などを総合的に考えたとき、平均値は好ましくは0.1〜3であり、より好ましくは0.2〜2、特に好ましくは0.3〜0.9である。なお、一般式(1)中の「/」はPOとEOとを区切るための便宜的な記号である。
【0013】
一般式(1)中のnはEO付加モル数であり、(a)成分における平均値が0超であって20以下となる数であり、PO付加モル数と同様に液体洗浄剤の主活性剤としての基本性能を総合的に考えたとき、平均値は好ましくは0.3〜12であり、より好ましくは0.6〜10、さらに洗浄性や安定性から、より好ましくは0.8〜5であり、特に好ましくは1〜2.3である。
【0014】
また、一般式(1)中のPOとEOの付加方法において、EOとPOはブロックでもランダムでもよく、ブロックでの付加の場合はEOとPOの付加の順番は任意で、たとえば、EO/PO、PO/EO、EO/PO/EOなどが好ましい。なかでも、RO−に、PO、EOの順でブロック付加した化合物が好ましい。
【0015】
また、一般式(1)中のMは、塩を形成する陽イオン基であり、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、およびモノ、ジ、トリエタノールアンモニウムイオン等のアルカノールアンモニウムイオン等が挙げられる。アルカリ金属としてはナトリウム、カリウム、リチウムなどが、またアルカリ土類金属としてはカルシウムが挙げられるが、これらの中でナトリウム、カリウムがより好ましく、ナトリウムが特に好ましい。
【0016】
(a)成分としては、一般式(1)のRO−に、PO、EOの順でブロック付加した、下記一般式(1')で表される化合物が好ましい。一般式(1')の好ましいR、m、Mは、それぞれ一般式(1)と同じである。
RO−(PO)m−(EO)nSO3M (1')
(式中、Rは炭素数8〜24の炭化水素基であり、POとEOは夫々プロピレンオキシ基とエチレンオキシ基であり、m、nはPO又はEOの付加モル数を示し、それぞれ0<m<5、0<n≦20となる数である。Mは陽イオンである(但し水素イオンを除く。)
【0017】
本発明の界面活性剤組成物に用いられる(a)成分は、特に限定されるものではないが、例えば、RO−に、PO、EOの順でブロック付加した化合物の場合には、以下の工程(I)〜(III)を含む工程から製造することができる。
工程(I):炭素数8〜24の炭化水素基、好ましくは炭素数8〜24のアルキル基を有するアルコール1モルにプロピレンオキサイドを平均で0モル超、5モル未満の範囲で付加させる工程。
工程(II):上記工程(I)で得られたプロピレンオキサイド付加物にエチレンオキサイドを平均で0モル超、20モル以下の範囲で付加させる工程。
工程(III):上記工程(II)で得られたアルコキシレートを硫酸化し、次いで中和する工程。
【0018】
前記工程(I)で使用されるアルコールの具体例としては、ヤシ油、パーム油又は牛脂等から誘導された天然アルコール、並びに、オキソ法、チーグラー法及びパラフィン直接酸化法等によって得られた合成高級アルコール等が挙げられる。アルコールは、飽和、不飽和のいずれでもよく、1級、2級のいずれでもよいが、飽和、1級が好ましい。また、アルコールは分岐鎖のものを用いても良い。
【0019】
また、上記アルコール1モルに対するプロピレンオキサイドの使用量は、一般式(I)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩を製造できる量であることが好ましい。具体的には、上記アルコール1モルに対するプロピレンオキサイドを0モル超であって5モル未満の数であるが、液体洗浄剤の主活性剤として用いる場合、基本性能である洗浄性、低温安定性、生分解性、洗浄剤組成物の物性などを総合的に考えたとき、好ましくは0.1〜3モルであり、また、製造時における反応性から、より好ましくは0.2〜2モルであり、より好ましくは0.3〜0.9である。
【0020】
工程(II)は、上記工程(I)で得られたプロピレンオキサイド付加物にエチレンオキサイドを平均で0モル超、20モル以下の範囲で付加させる工程である。上記アルコール1モルに対するエチレンオキサイドの使用量は、(a)成分を製造できる量であることが好ましい。具体的には、上記アルコール1モルに対するエチレンオキサイドが0モル超であって20モル以下の数であるが、PO付加モル数と同様に液体洗浄剤の主活性剤としての基本性能を総合的に考えたとき、好ましくは0.3〜12、より好ましくは0.6〜10、さらに洗浄性や安定性より、好ましくは0.8〜5モルであり、より好ましくは1〜2.3モルである。
【0021】
工程(I)、(II)を実施する方法としては、従来公知の方法が使用可能である。すなわち、オートクレーブにアルコールとアルコールに対し0.5〜1モル%の水酸化カリウム(KOH)等を触媒として仕込み、昇温・脱水し、130〜160℃の温度で、それぞれ所定量のプロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドを付加反応させることにより製造できる。このとき、付加形態はブロック付加であり、かつプロピレンオキサイド付加〔工程(I)〕、エチレンオキサイド付加〔工程(II)〕の順に行う。使用するオートクレーブには攪拌装置、温度制御装置、自動導入装置を備えられていることが望ましい。
【0022】
工程(III)は、上記工程(II)で得られたアルコキシレートを硫酸化し、次いで中和させる工程である。硫酸化の方法としては、三酸化硫黄(液体又は気体)、三酸化硫黄含有ガス、発煙硫酸、クロルスルホン酸等を用いる方法が挙げられるが、特に、廃硫酸及び廃塩酸等の発生を防止する観点から、三酸化硫黄をアルコキシレートと同時にガス状又は液状で連続的に供給する方法が好ましい。
【0023】
硫酸化物の中和方法としては、所定量の中和剤へ硫酸化物を添加・攪拌しながら中和を行うバッチ式と、硫酸化物と中和剤を配管内へ連続的に供給し、攪拌混合機にて中和を行う連続式などが挙げられるが、本発明では中和方法に限定はない。ここで使用される中和剤としてはアルカリ金属水溶液、アンモニア水、トリエタノールアミンなどが挙げられるが、アルカリ金属水溶液が好ましく、より好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0024】
上記のようにして得られた(a)成分は、該(a)成分の濃度が10〜70質量%の水溶液として使用することが好ましい。この水溶液を用いて、最終的に(a)〜(c)成分が本発明所望の比率となるように調整する。なお、中和剤(水酸化ナトリウム等)又はその水溶液に(b)成分を混合して中和を行うことは、製法の簡易さ等から好ましい。また中和剤と(c)成分を同時に添加しても良く、また中和剤と(b)成分、(c)成分を同時に添加しても良い。なお、中和剤として(c)成分に該当する化合物を用いる場合、該(c)成分の使用量は、(a)成分の前駆化合物である硫酸化物、例えば、前記した工程(III)で得られた硫酸化物の中和に必要な量に加え、本発明の界面活性剤組成物中の(c)成分含量が0.002〜0.5質量%、好ましくは0.025〜0.3質量%、特に好ましくは0.05〜0.1質量%となる量、更に本発明の界面活性剤組成物のpH(20℃)が10〜13.6、好ましくは11〜13.5、より好ましくは11.5〜13.4となる量を用いることで、簡便に本発明の界面活性剤組成物を得ることができる。
【0025】
従って、本発明により、以下の工程(i)〜(iii)を含む、(a)成分40〜58質量%、(b)成分13〜20質量%、(c)成分0.002〜0.5質量%、及び水を含有する界面活性剤組成物の製造方法が提供される。
工程(i):炭素数8〜24の炭化水素基、好ましくは炭素数8〜24のアルキル基を有するアルコール1モルに、プロピレンオキサイドを0モル超、5モル未満且つエチレンオキサイドを0モル超、20モル以下の範囲で付加する工程。
工程(ii):上記工程(i)で得られたアルコキシレートを硫酸化する工程。
工程(iii):上記工程(ii)で得られたアルコキシレートの硫酸化物に、該硫酸化物の中和に必要な量よりも多い量の(c)成分と(b)成分と水とを含有する混合物を添加して、前記硫酸化物の中和物である(a)成分と、(b)成分と、(c)成分と、水とを含む混合物を得る工程。
【0026】
工程(i)は、前記した工程(I)、(II)と同様に行うことができる。また、工程(ii)の硫酸化は、前記した工程(III)と同様に行うことができる。また、工程(iii)は、硫酸化物の中和量に対して過剰の(c)成分を(b)成分と水とを含む液体混合物(好ましくは水溶液)として用いて、硫酸化物の中和とともに所定量の(c)成分を供給するものである。なお、(c)成分について、「硫酸化物の中和に必要な量よりも多い量」とは、原料からの理論値を採用できる。また、(c)成分は、最終的な界面活性剤組成物のpH(20℃)が10〜13.6、更に11〜13.5、より更に11.5〜13.4となる量を用いることが好ましい。なお、工程(iii)により得られた混合物は、(a)〜(c)成分の含有量が本発明の範囲であれば本発明の界面活性剤組成物であり、そのままあるいは更に本発明の範囲で組成を調整して使用することができる。また、工程(iii)により得られた混合物の(a)〜(c)成分の含有量が本発明の範囲にない場合は、本発明の範囲となるように組成を調整して本発明の界面活性剤混合物とする。
【0027】
本発明の界面活性剤組成物は、(a)成分である上記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩を40〜58質量%、好ましくは50〜58質量%、特に好ましくは52〜56質量%含有する。なお、本発明において、「ポリオキシアルキレンアルキルエステル硫酸エステル塩」には、アルケニル基等、アルキル基以外の構造を有するものも、便宜上、包含するものとする。
【0028】
〔(b)成分〕
(b)成分としては、特に限定されるものではないが、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等が挙げられ、汎用で且つ、取り扱い性からより好ましくはエタノールがよい。本発明の界面活性剤組成物は、(b)成分を13〜20質量%、好ましくは13〜18質量%、特に好ましくは13〜16質量%含有する。
【0029】
〔(c)成分〕
(c)成分としては、特に限定されるものではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機化合物、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機化合物等が挙げられ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機化合物が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。本発明の界面活性剤組成物は、(c)成分を0.002〜0.5質量%、好ましくは0.025〜0.3質量%、特に好ましくは0.05〜0.1質量%含有する。
【0030】
〔界面活性剤組成物〕
本発明の界面活性剤組成物は、組成物の安定性を維持できる範囲で、(a)〜(c)成分以外の成分を含有していてもよい。好ましくは、(a)〜(c)成分の合計が、組成物中、50質量%以上であり、より好ましくは60〜99質量%である。
【0031】
本発明の界面活性剤組成物は水を含有する。水の含有量は、組成物中45質量%以下が好ましく、より好ましくは25〜40質量%である。本発明の界面活性剤組成物は、(a)〜(c)成分を含有する水溶液であってもよい。また、リン酸塩、クエン酸塩などのpH緩衝剤や防腐剤、抗菌剤、金属キレート剤等を含有することができる。また、硫酸化反応後に残留するポリオキシアルキレンアルキルエーテル、中和時に副生する無機硫酸塩など(a)成分、その他の成分の製造過程で取り込まれる成分が、本発明の効果を損なわない範囲で存在していてもよい。
【0032】
また、本発明の界面活性剤組成物は、常温(20℃)にて粘度が好ましくは1000mPa・s以下、更に好ましくは500mPa・s以下、より好ましくは200mPa・s以下、特に好ましくは100mPa・s以下である。この粘度は、ブルックフィールド形(B形)粘度計により20℃の条件で測定されたものである。
【0033】
本発明の界面活性剤組成物は、長期間の保存安定性の観点から、pH(20℃)が弱アルカリ性〜アルカリ性(好ましくはpH10〜13.6)であることが好ましく、pH11〜13.5であることがより好ましく、pH11.5〜13.4であることが特に好ましい。また、本発明の界面活性剤組成物は、液体洗浄剤組成物の成分として好適に使用することができる。この場合、該液体洗浄剤組成物には、必要に応じて色素、香料、可溶化剤、ビルダー等の補助剤を適宜加えることができる。更に、洗浄力や泡立ちを調整する目的で、他のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、アミド型非イオン界面活性剤等を添加することができる。かかる液体洗浄剤組成物は、例えば、シャンプー、ボディシャンプー、台所用洗剤、リキッドソープ等に用いられる。
【実施例】
【0034】
実施例1〜5、比較例1、2
炭素数12のアルコール(花王(株)、製品名:カルコール2098)3447g、炭素数14のアルコール(花王(株)、製品名:カルコール4098)1341g、およびKOH6.8gを攪拌装置、温度制御装置、自動導入装置を備えたオートクレーブに仕込み、110℃、1.3kPaにて30分間脱水を行った。脱水後窒素置換を行い、120℃まで昇温した後、プロピレンオキサイドを575g仕込んだ。120℃にて付加反応・熟成を行った後、145℃に昇温し、エチレンオキサイドを1625g仕込んだ。145℃にて付加反応・熟成を行った後、80℃まで冷却し、4.0kPaで未反応のエチレンオキサイドを除去した。未反応エチレンオキサイド除去後、7.3gの酢酸をオートクレーブ内に加え、80℃で30分間攪拌した後、抜き出しを行い、平均プロピレンオキサイド付加モル数が0.4モル、平均エチレンオキサイド付加モル数が1.5モルであるアルコキシレートを得た。
【0035】
得られたアルコキシレートを、SO3ガスを用いて薄膜式硫酸化反応器にて硫酸化した。得られた硫酸化物に、エタノールを含有する水酸化ナトリウム水溶液を加えて、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩〔(a)成分〕、エタノール〔(b)成分〕及び水酸化ナトリウム〔(c)成分〕を表1に示す濃度で含有する界面活性剤組成物を得た。エタノールを含有する水酸化ナトリウム水溶液は、界面活性剤組成物中のエタノール及び水酸化ナトリウムの濃度が表1の値となるように用いた。界面活性剤組成物の組成分析は、以下の方法で行ったものである。また、界面活性剤組成物のpH、粘度、匂い、色相を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0036】
<組成分析方法>
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩〔(a)成分〕量はエプトン法より求めた。エタノール〔(b)成分〕量はガスクロマトグラフィーより求めた。水酸化ナトリウム〔(c)成分〕量はHClによる中和滴定より求めた。
【0037】
<pH>
pH標準液で校正したpH計(株式会社堀場製作所 pHメータ D−51)を用いて測定を行った。界面活性剤組成物又はその希釈液を20℃にした後、pH計のpHガラス電極を浸けて表示が安定したところを読み取った。
【0038】
<粘度>
界面活性剤組成物を測定温度に設定した恒温槽で1時間静置させた後に、株式会社トキメック製ディジタル粘度計(DVL−B II形)を用いて測定した。粘度は、20℃で測定した。
【0039】
<匂い>
界面活性剤組成物を槽内の温度が一定に制御できる恒温槽内にて50℃で30日間静置した。製造直後のものと30日間保存後のものを、以下の基準に従って、香料開発部門に10年以上従事している研究員が評価した。
○:製造直後と同様のにおいの強さ、質感である。
×:製造直後よりもにおいが強くなる、又は質感が異なる。
【0040】
<色相>
界面活性剤組成物を槽内の温度が一定に制御できる恒温槽内にて50℃で15日間静置させた。製造直後、静置5日後、及び静置15日後のそれぞれについて10%クレットナンバーを以下の方法に従って測定した。なお、クレットナンバーは値が小さいほど着色が低いことを意味する。
*10%クレットナンバーの測定方法
(a)成分として10gとなるように界面活性剤組成物を採取、水を加えて全量を100mLとし試料溶液とする。均一に溶解した試料溶液をリン酸を用いてpH=7.0±0.1に調整した後、10mmガラスセルに入れて、水を対照に分光光度計を用い波長420nmの吸光度を測定する。得られた値を1000倍した値を10%クレットナンバーとした。
【0041】
【表1】

【0042】
表中、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩は、一般式(1)においてRO−にPO、EOの順でブロック付加した化合物であり、一般式(1)中のRが炭素数12のアルキル基と炭素数14のアルキル基の混合アルキル基であり、mが0.4、nが1.5、Mがナトリウムの化合物である。また、比較例2では、静置5日後の色相変化に鑑み、静置15日後の色相の評価は行わなかった。
【0043】
実施例6〜8、比較例3、4
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩〔(a)成分〕として、表2に示す化合物を用いた以外は、実施例1等と同様にして表2に示す組成の界面活性剤組成物を得た。なお、表2のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩〔(a)成分〕は、実施例1等の製法に準じて得られたものであり、アルコールにエチレンオキサイドを1モル付加した後、プロピレンオキサイドを2.5モル付加したエトキシレートの硫酸化物から得られたものである。実施例1等と同様の評価を行った結果を表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
表中、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩は、一般式(1)においてRO−にEO、POの順でブロック付加した化合物であり、一般式(1)中のRが炭素数12のアルキル基と炭素数14のアルキル基の混合アルキル基であり、mが2.5、nが1、Mがナトリウムの化合物である。また、比較例4では、静置5日後の色相変化に鑑み、静置15日後の色相の評価は行わなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(1)で表される化合物40〜58質量%、(b)炭素数が1〜6のアルコール13〜20質量%、(c)アルカリ剤0.002〜0.5質量%、及び水を含有する界面活性剤組成物。
RO−〔(PO)m/(EO)n〕SO3M (1)
(式中、Rは炭素数8〜24の炭化水素基であり、POとEOは夫々プロピレンオキシ基とエチレンオキシ基であり、m、nはPO又はEOの付加モル数を示し、それぞれ0<m<5、0<n≦20となる数である。Mは陽イオンである(但し水素イオンを除く)。POとEOの付加はブロックでもランダムでもよい。)
【請求項2】
水の含有量が45質量%以下である請求項1記載の界面活性剤組成物。

【公開番号】特開2010−168554(P2010−168554A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284895(P2009−284895)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】