説明

界面活性剤組成物

本発明は、a) 4〜8の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのリン酸化アリールフェノールアルコキシレート界面活性剤、および b) 2〜12の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのアルキルアミンアルコキシレート界面活性剤、を含有する界面活性剤組成物;これら組成物の、固形もしくはカプセル化した、殺虫活性成分もしくは配合助剤を含有する農薬製剤への使用;および農薬懸濁物の再懸濁性の改善法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、a) 4〜8の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのリン酸化アリールフェノールアルコキシレート界面活性剤、および b) 2〜12の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのアルキルアミンアルコキシレート界面活性剤、を含有する界面活性剤組成物;およびこれら組成物の、固形もしくはカプセル化した、殺虫活性成分もしくは配合助剤を含有する農薬製剤への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの農薬製剤が、液体担体、例えば水に希釈した時に溶けずに残る、固形もしくはカプセル化した、殺虫活性成分もしくは配合助剤を含有する。これらの製剤タイプの例には、カプセル懸濁剤、油性分散体、オイルフロアブル剤、懸濁濃縮物、サスポエマルション、およびこれらの混合物が含まれる。
【0003】
固形もしくはカプセル化した、殺虫活性成分もしくは配合助剤を含有する農薬濃縮物は時間とともに懸濁または分散した成分の沈降を示すおそれがある。結果、この沈降は堅固な沈殿物を作り出し、容器からこの素材を取り出すことが困難になる。多くの場合、農薬固形物もしくはカプセル化した農薬は製剤濃縮物中では懸濁したままであるが、これらのタイプの製剤が希釈されると、時間とともに懸濁あるいは分散した固形物は容器の底に沈降する。沈殿の速度は、粒子サイズ、粒子濃度、懸濁化剤の粘度、および粒子と懸濁化剤との比重の差異など多くの因子に依存する。一旦沈殿すると、沈殿物は事実上堅固となり、再分散や再懸濁をきわめて困難なものにすることがある。堅固な沈殿物の生成はタンクが攪拌されていない時に起こりうる。噴霧スケジュールの途切れは、噴霧器が通常使われない中断時間、例えば夜間、天候の変化、機械的故障や、スプレータンクを攪拌しなくなる予期せぬ事態によりしばしば発生する。
【発明の概要】
【0004】
a) 4〜8の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのリン酸化アリールフェノールアルコキシレート界面活性剤、および b) 2〜12の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのアルキルアミンアルコキシレート界面活性剤、を含有する組成物をここでは提供する。
【0005】
また、固形もしくはカプセル化した、殺虫活性成分もしくは配合助剤、および
a) 4〜8の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのリン酸化アリールフェノールアルコキシレート界面活性剤、および b) 2〜12の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのアルキルアミンアルコキシレート界面活性剤、を含有する界面活性剤組成物、を含有する農薬製剤をも提供する。
【0006】
ある実施態様は、 i) 液性の連続相、ii) a) 4〜8の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのリン酸化アリールフェノールアルコキシレート界面活性剤、および b) 2〜12の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのアルキルアミンアルコキシレート界面活性剤、を含有する界面活性剤組成物、および iii) 少なくとも1つの固形もしくはカプセル化した、殺虫活性成分もしくは配合助剤を含有する分散相、を含有する組成物に関する。
【0007】
ある実施態様は、少なくとも1つの固形もしくはカプセル化した、殺虫活性成分もしくは配合助剤、および a) 4〜8の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのリン酸化アリールフェノールアルコキシレート界面活性剤、および b) 2〜12の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのアルキルアミンアルコキシレート界面活性剤、を含有する界面活性剤組成物、を含有する組成物を作製することからなる農薬懸濁物の再懸濁性の改善法であって、該組成物が、該界面活性剤組成物を含有しないほかは同様に処方された組成物よりも容易に再懸濁する農薬懸濁物の再懸濁性の改善法に関する。
【0008】
これらおよび他の便益は、以下の詳細な説明から明らかになるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の組成物は、a) 4〜8の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのリン酸化アリールフェノールアルコキシレート界面活性剤、および b) 2〜12の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのアルキルアミンアルコキシレート界面活性剤を含有する。
【0010】
リン酸化アリールフェノールアルコキシレート界面活性剤には、次の化学式の1つ以上の化合物が含まれ、
[R1(Z)ab
ここで、
1は置換されたフェノキシ基;
Zは−CHR2CHR3−O−、ここでR2およびR3は、同一でも異なっていてもよい、水素またはメチル基であり、
aは4〜8であり、
bは1〜2であり、そして
Aはリン酸基またはその塩である。
【0011】
ある実施態様では、R1は2個または3個の1−フェニルエチル基で置換される。好ましくは、R1は2、4、および6位で1−フェニルエチル基で置換された三置換のフェノキシ基であり、Zは−CH2CH2−O−である。技術的にはこの化合物はリン酸化トリスチリルフェノールエトキシレートとして知られている。
【0012】
リン酸化アリールフェノールアルコキシレート界面活性剤は、アルキレンオキシドとアリールフェノールとの縮合、その後リン酸化によりアニオン系界面活性剤を生成することで作製してもよい。リン酸化は、慣用技術の一つとして知られる方法、例えば、アルコキシル化アルコールを五酸化リンまたはポリリン酸と反応させて行なえる。リン酸化アリールフェノールアルコキシレートのジエステル、すなわちbが2のとき、の含量は、リン酸化アリールフェノールアルコキシレートの0〜100重量%のいずれであってもよい。
【0013】
リン酸化アリールフェノールアルコキシレートはまた、この界面活性剤生産物の副産物として遊離のノニオン系界面活性剤を含んでもよい。従って、リン酸化アリールフェノールアルコキシレート界面活性剤のノニオン系界面活性剤の含量は、0〜50パーセントのいずれであってもよい。さらに、アニオン系界面活性剤生成の副産物として存在するノニオン系アリールフェノールアルコキシレート界面活性剤の量に加えてノニオン系アリールフェノールアルコキシレート界面活性剤が追加されることも考えられる。
【0014】
アルキルアミンアルコキシレート界面活性剤は i) 次の化学式を有するアミンであって、
【化1】

ここでRは約8〜約22の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基を表わし、Bはアルキレン基、たとえばエチレンまたはプロピレン基を表わし、そしてnおよびn’は、n+n’が約2〜約12の値を有するような整数であるようなアミン、ii) 異なるR基を有するこのようなアミンの混合物であって、R基の平均炭素原子数が約8〜約22であるようなアミンの混合物、または、iii) nとn’が異なる値を有するこのようなアミンの混合物であって、nとn’はこの混合物中でのn+n’の平均値が約2〜約12となるような整数であり、Rは単一の値または混合物 ii)のように平均値を有するようなアミンの混合物、を含有する。
【0015】
上記化学式の範囲内で入手可能なアミン界面活性剤は、単一の化合物であるよりも、むしろ混合物であることが多い。これらには、R基が、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、およびステアリン酸などの多種の脂肪酸に由来するアルキル基に相当する「ココアミン」のアルコキシレート化誘導体が含まれる。ココアミンのRの平均炭素原子数は12〜14である。他の例は、Rの主たる炭素鎖がオレイン酸のそれ(18炭素原子)に相当する「オレイルアミン」のアルコキシレート化誘導体であり、ならびに、Rが主にヘキサデシルとオクタデシルの混合物である、「タロウアミン」のアルコキシレート化誘導体である。このような市場の界面活性剤はまた、通常はn+n’の様々な値を有する分子の混合物であり、n+n’が低い平均値を有する界面活性剤は、アルコキシレート化されていないアミンやモノ〜アルコキシレート化アミンを少量の割合で含んでいる可能性がある。好ましいアルコキシレート化誘導体は、エトキシレート化誘導体である。
【0016】
好ましい実施態様においては、アルキルアミンアルコキシレート界面活性剤は、Bがエチレン基を表わす化合物であり、また、R基または複数のR基の炭素原子数または平均炭素原子数が約10〜約20の化合物である。n+n’の値あるいはその平均値は、好ましい界面活性剤では、2〜12の範囲になる。好ましい界面活性剤の具体例は、それぞれの場合に、n+n’が2〜12、より好ましくは2〜8、の平均値を有するココアミン、タロウアミン、およびオレイルアミンのエトキシレート化誘導体である。
【0017】
ある実施態様においては、アルキルアミンアルコキシレート界面活性剤は2〜8の平均エトキシル化度を有するアルキルアミンエトキシレートであり、ある好ましい実施態様においては、アルキルアミンエトキシレート界面活性剤は2〜8の平均エトキシル化度を有するココアミンエトキシレートを含有し、ある好ましい実施態様においては、アルキルアミンエトキシレート界面活性剤は2〜12の平均エトキシル化度を有するタロウアミンエトキシレートを含有する。
【0018】
ある実施態様においては、固形もしくはカプセル化した、殺虫活性成分もしくは配合助剤、および、 a) 4〜8の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのリン酸化アリールフェノールアルコキシレート界面活性剤、および b) 2〜12の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのアルキルアミンアルコキシレート界面活性剤、を含有する界面活性剤組成物、を含有する農薬製剤を提供する。
【0019】
ある実施態様においては、i) 液性の連続相、ii) a) 4〜8の平均エトキシル化度を有する、少なくとも1つのリン酸化アリールフェノールアルコキシレート界面活性剤、および b) 2〜12の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのアルキルアミンアルコキシレート界面活性剤、を含有する界面活性剤組成物、および iii) 少なくとも1つの固形もしくはカプセル化した、殺虫活性成分もしくは配合助剤を含有する分散相、を含有する組成物を提供する。
【0020】
本発明の組成物は、固形もしくはカプセル化した、殺虫活性成分および/もしくは配合助剤および、 a) 4〜8の平均エトキシル化度を有する、少なくとも1つのリン酸化アリールフェノールアルコキシレート界面活性剤、および b) 2〜12の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのアルキルアミンアルコキシレート界面活性剤、を含有する界面活性剤組成物を含む濃縮製剤を含有し得る。好ましくは、固形もしくはカプセル化した、殺虫活性成分および/もしくは配合助剤は、濃縮製剤中に懸濁または分散されている。濃縮製剤には、カプセル懸濁剤、油性分散体、オイルフロアブル剤、懸濁濃縮物、サスポエマルション、およびこれらの混合物が含まれる。
【0021】
ある実施態様においては、農薬製剤は、適量の液体担体中の少なくとも1つの固形もしくはカプセル化した殺虫活性成分を含有する濃縮製剤を希釈して、所望の濃度の、少なくとも1つの固形もしくはカプセル化した殺虫活性成分とすることで得られる農薬製剤であって、界面活性剤a)およびb)がそれぞれ濃縮製剤中に存在するか、希釈製剤もしくは液体担体に別々に添加されるか、あるいはこれらの組合せからなる。
【0022】
ある実施態様においては、界面活性剤a)およびb)は濃縮製剤中に存在する。別の実施態様においては、界面活性剤a)またはb)の少なくとも1つが液体担体に添加され、液体担体に添加される界面活性剤a)またはb)の少なくとも幾分かの量は、濃縮製剤中に存在しない。例えば、界面活性剤a)およびb)の少なくとも1つは別の容器に存在しており、タンク内混合添加物として使用してもよい。
【0023】
製品によって、成分a)およびb)の量は大きく変わり得る。成分a)は0.0001〜95重量%の量で存在し、成分b)は0.0001〜95重量%の量で存在する。成分a)およびb)の所要量はその特性、例えば、粒子径、疎水性等、及び組成物中に存在する、固形もしくはカプセル化した、殺虫活性成分および/もしくは配合助剤の量によって変わる。好ましい実施態様においては、成分a)およびb)は20:1〜1:20、好ましくは4:1〜1:4の比率で存在する。
【0024】
ある実施態様においては、本発明の組成物は界面活性剤a)およびb)を含有する界面活性剤濃縮物を含有する。好ましい実施態様においては、界面活性剤a)およびb)の濃縮物は、農薬が実質上フリーであり、好ましくは農薬フリーである。この界面活性剤濃縮物においては、界面活性剤a)およびb)は合わせて濃縮物の20〜100重量%の量で存在する。ある実施態様においては、界面活性剤濃縮物は容器、例えば、スプレータンクに、固形および/もしくはカプセル化した、殺虫活性成分もしくは配合助剤を含有する農薬組成物の前、後、もしくは同時に、そして担体、好ましくは水の添加の前、後、もしくは同時に添加される。
【0025】
ある実施態様においては、本発明の組成物は、少なくとも1つの固形もしくはカプセル化した、殺虫活性成分もしくは配合助剤と、界面活性剤a)およびb)を含有する界面活性剤濃縮物を含有する農薬濃縮物を含有する。この農薬濃縮物においては、界面活性剤a)およびb)は合わせて、好ましくは、濃縮物の0.01〜60重量%の量で存在する。
【0026】
ある実施態様においては、本発明の組成物は、スプレータンク中の農薬組成物のように希釈した組成物を含有し、少なくとも1つの固形もしくはカプセル化した、殺虫活性成分もしくは配合助剤、および界面活性剤a)およびb)を含有する界面活性剤濃縮物を含有する。この希釈組成物においては、界面活性剤a)およびb)は合わせて、好ましくは、希釈組成物の0,0001〜10重量%の量で存在する。
【0027】
少なくとも1つの固形もしくはカプセル化した、殺虫活性成分もしくは配合助剤、および、 a) 4〜8の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのリン酸化アリールフェノールアルコキシレート界面活性剤、および b) 2〜12の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのアルキルアミンアルコキシレート界面活性剤、を含有する界面活性剤組成物、を含有する組成物を作製することからなる農薬懸濁物の再懸濁性の改善法であって、該組成物が、該界面活性剤組成物を含有しないほかは同様に処方された組成物よりも容易に再懸濁する農薬懸濁物の再懸濁性の改善法。
【0028】
a) 4〜8の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのリン酸化アリールフェノールアルコキシレート界面活性剤、および b) 2〜12の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのアルキルアミンアルコキシレート界面活性剤、もしくはこれらの少なくとも1つの成分、を含有する界面活性剤組成物、が、固形もしくはカプセル化した、殺虫活性成分もしくは配合助剤を含有する濃縮物中に存在する、農薬懸濁物の再懸濁性の改善法。
【0029】
a) 4〜8の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのリン酸化アリールフェノールアルコキシレート界面活性剤、および b) 2〜12の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのアルキルアミンアルコキシレート界面活性剤、を含有する界面活性剤組成物、を、固形もしくはカプセル化した、殺虫活性成分もしくは配合助剤を含有する希釈組成物に添加する、農薬懸濁物の再懸濁性の改善法。
【0030】
本発明中での使用に適した固形の殺虫活性成分もしくは配合助剤には、希釈組成物など製剤中で分散または懸濁した状態のままの固形成分が含まれる。殺虫活性成分もしくは配合助剤は担体、好ましくは水、の中で幾分かの溶解性を示すかもしれないが、一般に殺虫活性成分もしくは配合助剤は、この選択された担体中では事実上不溶となる。これら事実上不溶の殺虫活性成分および/もしくは配合助剤は、たとえこの選択された担体中で測定可能なほどの溶解性を有するとしても、本願明細書中では簡潔のために「水に不溶の」有効成分もしくは配合助剤ということがある。担体が水の場合、これら有効成分および/もしくは配合助剤は好ましくは、農薬組成物の水相のpHで測定されるとき、20℃の水中で約5000mg/lを超えない溶解度を有する。有効成分のいくつかは、滴定可能な酸性あるいは塩基性官能基を有する場合、その水中での溶解度はpHに依存するということは当業者には明白であろう。具体的には、酸はそのpKa以上でより溶解性を示し、塩基はそのpKb以下でより溶解性を示す。従って、酸は、水相がそのpKa近傍または以下のpHを維持されていれば、たとえより高いpHで約5000mg/l以上溶けようとも、この議論を進める上で、水中では不溶であるとして差し支えない。本発明に有用で特に好ましい水不溶性の有効成分は20℃の水相で約2000mg/lを超えない溶解度を有する。
【0031】
沈降し堅固な沈殿物を生成するに十分な量で存在する、いかなる固形もしくはカプセル化された殺虫活性成分および/もしくは配合助剤も、本発明への使用に適する。液体中の農薬粒子の安定な懸濁液、例えば懸濁濃縮物(SC)は、非常に一般的なタイプの製剤になりつつある。例えば、The Pesticide Manual 13th Edition (British Crop Protection Council)には、SC製品として275の項目がある。
【0032】
懸濁濃縮物は通常、有効成分の粉末を、湿潤剤と分散剤の水相中でプレミックスしてのち、ビーズミルでの湿式粉砕工程により所望の粒子径にすることで作られる。懸濁濃縮物として製剤に適した有効成分の一般的な必須要件としては、高い、好ましくは80度を超える融点、低い水溶解性、ならびに水中での化学安定性がある。代表的な固形殺虫活性成分には、アゾキシストロビン;クロロタロニル;フルジオキソニル;イソキサフルトール;メソトリオン;これらの塩やキレート;ブタフェナシルなどのPPO阻害剤;プロジアミン;アトラジン、シマジン、およびテルブチラジンなどのトリアジン;およびチアベンダゾールが含まれる。
【0033】
カプセル化された殺虫活性成分は当技術分野では良く知られている。マイクロカプセル化製剤は、生物学的に活性な素材をバリア、またはポリマーあるいは同様の材質の膜で囲むことで、有効成分の放出を制御あるいは遅延させる製品を含有する。この処理はまた、取扱者の安全性、環境の安全性やタンク混合時の適合性に多くの場合利益をもたらす。
【0034】
このタイプの一般的な製剤はマイクロカプセル懸濁液(CS)であり、有効成分の核素材とポリマー素材の外殻壁からなる、一般に直径0.1〜20μmの小さな球状の粒子が水中に懸濁している。他のマイクロカプセル化製剤のタイプには、種子処理のためのカプセル懸濁液(CF)、カプセル化顆粒(CG)、CSとSCの混合製剤(ZC)、CSとサスポエマルションの混合製剤(ZE)、およびCSと水中油型エマルジョンの混合製剤(ZW)がある。
【0035】
カプセル化の特性は本発明には重要でなく、またカプセル化される殺虫活性成分の特性・特質が重要でもない。有効成分カプセル化の方法は当業者に良く知られており、これには、例えば油水エマルジョン界面での油溶性と水溶性のモノマーの反応による界面重合による、インシチュ(in situ)重合による、またはアミノプラストプレポリマー工程によるマイクロカプセル懸濁液の調製;液滴形成によるマイクロカプセルの調製;スプレーカプセル化による固形マイクロカプセルの調製;溶融分散液の冷却によるマイクロカプセルの調製;および溶剤蒸発によるマイクロカプセルの調製が含まれる。
【0036】
好適な外壁素材は当業者に公知であり、これにはポリ尿素、ポリアミド、ポリ尿素/ポリアミドの混合物、ポリウレタン、尿素/ホルムアルデヒド、メラミン樹脂、ナイロン、およびゼラチン/ゼラチン−アラビア・ゴムが含まれる。
【0037】
カプセル化製品としての使用に適した代表的殺虫活性成分には、アセフェート、アセトクロル、アラクロル、バチルス・スフェリクス(Bacillus sphaericus),バチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)、デルタエンドトキシン、カルボスルファン、クロマゾン、クロルピリホス、ラムダ−シハロトリン、ベータ−シペルメトリン、シフェノトリン、ダイアジノン、ジクロルミド、EPTC,エスプロカルブ、エトフェンプロックス、フェニトロチオン、フルロクロリドン、フラチオカルブ、ハルフェンプロックス、ヘキサセ−11−エナール、ヘキサデカ−13−エンー11−イニル酢酸、メトプレン、メトラクロル、S−メトラクロル、パラチオン、パラチオン−メチル、ペルメトリン、ピリミフォス−エチル、テフルトリン、およびトリデカ−4−エニル酢酸が含まれる。ある実施態様では、カプセル化殺虫活性成分はテフルトリンではない。
【0038】
「殺虫活性成分」という用語は、本明細書中で記載される組成物のような化学的、および生物学的組成物を指し、これらは植物、昆虫、ネズミ、微生物、藻類、カビ類、バクテリアなどのような、望ましくない有害生物を殺し、阻み、あるいはその生育をコントロールするのに効果的である。この用語はまた、植物の生育を望ましい仕方でコントロールする化合物(たとえば、成長調節物質)、植物種に見られる自然の浸透性の活性化耐性反応を模倣する化合物(たとえば、植物活性化剤)、あるいは除草剤に対する植物毒性反応を軽減する化合物(たとえば、除草剤薬害軽減剤)に適用してもよい。殺虫活性成分は、必要であれば、組成物を好適な量の液体担体、たとえば水、に希釈したときに、生物学的に効果的な量で存在し、目的のターゲット、たとえば植物の群葉やその中心部に適用したり、あるいは建材のような素材に組み込みあるいは塗布される。
【0039】
本願の範囲内において、固形の配合助剤について特別制限はない。液体組成物中で固形粒子のままの配合助剤は当技術分野では知られており、アタパルジャイト、モンモリロナイトおよびカオリン粘土、シリカ、ラテックス、および二酸化チタンが含まれる。
【0040】
希釈製剤中に存在する有効成分の農薬有効量は、好ましくは、組成物が目的のターゲット、たとえば植物の群葉あるいはその中心部、植物の繁殖用素材にいつでも適用できる状態にあるとき、あるいは建材のような素材に組み込みあるいは塗布されるとき、生物学的に効果的な量である。本明細書中で使われるように、「農薬有効量」という用語は、有害生物を不利な方向にコントロールし改変を加える農薬化合物の量を意味する。たとえば、除草剤の場合、「除草剤有効量」は植物の生育をコントロールし改変を加えるに十分な除草剤の量である。コントロールや改変の効果には、自然な発達からのあらゆる逸脱、たとえば殺草、生育遅滞、葉枯れ、白化、矮化、などが含まれる。植物という用語は植物体上のあらゆる部分を指し、種子、苗木、若木、根、塊茎、茎(stems)、茎(stalks)、葉および果実が含まれる。防カビ剤の場合、「防カビ剤」という用語は、カビを殺し、あるいはその生育、繁殖、分裂、生殖、もしくは拡散を著しく阻害する素材を意味する。本明細書中で使われるように、防カビ剤化合物に関して「防カビ剤有効量」あるいは「カビをコントロールあるいは減少させる有効量」という用語は、かなりの数のカビを殺し、あるいはその生育、繁殖、分裂、生殖、もしくは拡散を著しく阻害する量である。本明細書中で使われるように、「殺虫剤」、「殺線虫剤」、あるいは「ダニ駆除剤」という用語は、それぞれ昆虫、線虫、あるいはコナダニを殺し、あるいはその生育、繁殖、生殖、もしくは拡散を著しく阻害する素材を意味する。殺虫剤、殺線虫剤、あるいはダニ駆除剤の「有効量」は、かなりの数の昆虫、線虫、コナダニを殺し、あるいはその生育、繁殖、生殖、もしくは拡散を著しく阻害する量である。殺虫活性成分の濃度および本発明の組成物の散布頻度は多くの要因に依存しており、これらには、たとえば使用に選んだ有効成分、コントロールする有害生物のタイプと量、植物の状態、土壌のタイプ、天候ならびに生育条件、望ましい制限量、およびラベルの適用散布頻度規制のどれもが含まれる。これらの量は既知の農薬の認可されたラベルの散布頻度およびその使用法に従い、また所定の実験によって容易に決定し得る。
【0041】
殺虫活性成分および配合助剤の量は当業者により容易に決定できるが、沈殿が生じた場合に沈殿物の再分散または再懸濁が困難なほど事実上堅固となりうる量で、固形および/もしくはカプセル化した、殺虫活性成分もしくは配合助剤が存在するとき、本発明の便益が最も明白に認められる。0.0001〜10重量%の固形もしくはカプセル化した、殺虫活性成分もしくは配合助剤の存在は、沈殿物および堅固物となりうる、希釈製剤中に存在する典型的な固形もしくはカプセル化粒子の量である。
【実施例】
【0042】
中間体の「カプセルベース」を、水相中にピレスロイド系殺虫剤、溶剤およびイソシアナートを含む有機相を乳化し調製した。シヤーをかけて好適な粒子径を得ると、内容物を加熱してイソシアナートを界面で反応させ、ピレスロイドと溶剤の周りにポリ尿素の外壁を形成した。生じたマイクロカプセル懸濁液はその後冷却され、凍結防止剤、保存剤、および増粘剤などの成分とともに処方された。
【0043】
マイクロカプセル(D95=7.5マイクロメータ、D50=3.7マイクロメータ)製剤を、さまざまな分散剤添加のための0.5重量%の余地を残して調製した。約50gのサンプルをマスターバッチから分けとり、25の異なる製剤を完成させるために、表1に記載したさまざまな分散剤あるいは分散剤の組合せを添加した。さらに、コントロールサンプルを、分散剤を加えず、製剤を完成させるために水を用いて、調製した。試料は添加した分散剤が確実に組み込まれるよう、激しく混ぜ合わせた。
【0044】
2つの異なるレベルの水の硬度を用い室温で希釈テストを行なった。エッペンドルフピペットで、4mLの各製剤を96mLの水に、100mLの硝子製目盛付きシリンダー中で希釈した。50ppmと1000ppmの希釈物を、4時間後と16時間後の評価のために用意した、2セットのそれぞれの水の硬度で、製剤ごとに調製した。これらの時間間隔は、典型的な噴霧器の「中断時間」(4時間)および夜間(16時間)にわたり希釈製品が放置されたままの状態をシミュレートすべく選んだ。希釈物は20回転倒し放置した。所要時間の放置後、シリンダーは沈んだ沈殿物の容積を記録され、その後シリンダーの底に沈殿が見えなくなるまで転倒サイクルにさらされた。転倒は手動で行なった。
【0045】
製剤中に0.5重量%で評価した分散剤には、リン酸ポリアリールフェノールエトキシレートとアルキルアミンエトキシレートの混合物(ほとんどが重量で1/1)、ならびに単一成分のリン酸ポリアリールフェノールエトキシレート、ポリアリールフェノールエトキシレート、およびアルキルアミンエトキシレートを含んだ。ブロック共重合体、アニオン系ポリマー分散剤、およびリグノスルホン酸塩などの典型的な農薬懸濁用分散剤も含んだ。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0046】
この実験においては、硬水および軟水の両方で、最小の攪拌(すなわち、再転倒)で固形物の再懸濁を可能にしつつ、放置時に沈む沈殿物量を最小に出来る分散剤/再懸濁剤を見つけることが求められる。とりわけ多くのマイクロカプセルに関連し、また問題となるのは軟水中での性能である。データは、50ppmと1000ppmの水の両方の結果ならびに双方の時間間隔の結果を考慮すると、項目2、3、および7(本発明の組成物)が概してベストな結果を提示しているということを示している。3項目全てが中間HLB域のアルキルアミンエトキシレートとPOE−8のリン酸ポリアリールフェノールエトキシレートの組合せである。
【0047】
上記カプセルベースと同様に、プロジアミン原体を、湿潤剤、分散剤、消泡剤、および凍結防止剤を含む攪拌水溶液に添加して、中間体のプロジアミンミルベース製剤を調整した。このミルベースは粒子径を小さくするため、横型ミルで粉砕した。このミルベースには、1.5%の表2に記載した分散剤を粉砕中に加えた。増粘剤、保存剤、および水を加えることで製剤は完成した。
【表5】

【0048】
分散剤 A−I を含む製剤の希釈24時間後に固形物を再懸濁するのに要する転倒の回数を測定し、表3に記載した。
【表6】

【0049】
上にはこの発明のわずか2、3の実施例しか詳細に記していないが、この発明の新規な教示と利益から著しく逸脱することなく実施例で多くの改変が可能だということを、当業者は容易にわかるだろう。従って、そのような全ての改変物が請求項中に明示されるこの発明の範囲内に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 4〜8の平均エトキシル化度を有する、少なくとも1のリン酸化アリールフェノールアルコキシレート界面活性剤、および
b) 2〜12の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのアルキルアミンアルコキシレート界面活性剤、
を含有する組成物。
【請求項2】
成分a)が前記組成物の0.0001〜95重量%の量で存在し、成分b)が0.0001〜95重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分a)とb)が合わせて20〜100重量%の量で存在する請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
成分a)とb)が合わせて0.01〜60重量%の量で存在する請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
成分a)とb)が合わせて0.0001〜10%の量で存在する請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
成分a)とb)が20:1〜1:20、好ましくは4:1〜1:4の比率で存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記アルキルアミンアルコキシレート界面活性剤が、2〜5の平均エトキシル化度を有するアルキルアミンエトキシレートである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記アルキルアミンアルコキシレート界面活性剤がココアミンエトキシレートを含有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1つの固形もしくはカプセル化した、殺虫活性成分もしくは配合助剤、および
a) 4〜8の平均エトキシル化度を有する、少なくとも1つのリン酸化アリールフェノールアルコキシレート界面活性剤、および
b) 2〜12の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのアルキルアミンアルコキシレート界面活性剤、
を含有する界面活性剤組成物、
を含有する組成物。
【請求項10】
前記組成物が、カプセル懸濁剤、油性分散体、オイルフロアブル剤、懸濁濃縮物、サスポエマルション、およびこれらの混合物からなる群から選択される濃縮製剤を含有する請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
界面活性剤a)およびb)が、濃縮製剤中に存在する請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
固形もしくはカプセル化した殺虫活性成分を0.01〜60重量%含有する請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、適量の液体担体中で少なくとも1つの固形もしくはカプセル化した殺虫活性成分を含有する濃縮製剤を希釈して、所望の濃度の、少なくとも1つの固形もしくはカプセル化した殺虫活性成分とすることで得られる組成物であって、界面活性剤a)およびb)がそれぞれ該濃縮製剤中に存在するか、液体担体に別々に添加されるか、あるいはこれらの組合せからなる、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
固形もしくはカプセル化した殺虫活性成分を0.0001〜10重量%含有する請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
界面活性剤a)またはb)の少なくとも1つが濃縮製剤とは別に液体担体に添加される請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
成分a)とb)が20:1〜1:20、好ましくは4:1〜1:4の比率で存在する請求項9に記載の組成物。
【請求項17】
前記アルキルアミンアルコキシレート界面活性剤が、2〜5の平均エトキシル化度を有するアルキルアミンエトキシレートである、請求項9に記載の組成物。
【請求項18】
前記アルキルアミンアルコキシレート界面活性剤がココアミンエトキシレートを含有する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
i) 液性の連続相、
ii) a) 4〜8の平均エトキシル化度を有する、少なくとも1つのリン酸化アリール フェノールアルコキシレート界面活性剤、および
b) 2〜12の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのアルキルアミ ンアルコキシレート界面活性剤、
を含有する界面活性剤組成物、および
iii) 少なくとも1つの固形もしくはカプセル化した、殺虫活性成分もしくは配合助剤を含有する分散相、
を含有する組成物。
【請求項20】
成分a)とb)が20:1〜1:20、好ましくは4:1〜1:4の比率で存在する、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記アルキルアミンアルコキシレート界面活性剤が、2〜5の平均エトキシル化度を有するアルキルアミンエトキシレートである、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記アルキルアミンアルコキシレート界面活性剤がココアミンエトキシレートを含有する、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
少なくとも1つの固形もしくはカプセル化した、殺虫活性成分もしくは配合助剤、および
a) 4〜8の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのリン酸化アリールフェノールアルコキシレート界面活性剤、および
b) 2〜12の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのアルキルアミンアルコキシレート界面活性剤、
を含有する界面活性剤組成物、
を含有する組成物を作製することからなる農薬懸濁物の再懸濁性の改善法であって、該組成物が、該界面活性剤組成物を含有しないほかは同様に処方された組成物よりも容易に再懸濁する農薬懸濁物の再懸濁性の改善法。
【請求項24】
a) 4〜8の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのリン酸化アリールフェノールアルコキシレート界面活性剤、および
b) 2〜12の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのアルキルアミンアルコキシレート界面活性剤、
を含有する界面活性剤組成物、もしくは
該界面活性剤組成物の少なくとも1つの成分、
が、固形もしくはカプセル化した、殺虫活性成分もしくは配合助剤を含有する濃縮物中に存在する、請求項23に係わる農薬懸濁物の再懸濁性の改善法。
【請求項25】
a) 4〜8の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのリン酸化アリールフェノールアルコキシレート界面活性剤、および
b) 2〜12の平均アルコキシル化度を有する、少なくとも1つのアルキルアミンアルコキシレート界面活性剤、
を含有する界面活性剤組成物、もしくは
該界面活性剤組成物の少なくとも1つの成分、
を、固形もしくはカプセル化した、殺虫活性成分もしくは配合助剤を含有する希釈組成物に添加する、請求項23に係わる農薬懸濁物の再懸濁性の改善法。
【請求項26】
前記界面活性剤組成物が、固形もしくはカプセル化した、殺虫活性成分もしくは配合助剤を含有する濃縮物中に存在する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記界面活性剤組成物を、固形もしくはカプセル化した、殺虫活性成分もしくは配合助剤を含有する希釈組成物に添加する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
成分a)とb)が合わせて0.0001〜10%の量で存在する、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
成分a)とb)が20:1〜1:20、好ましくは4:1〜1:4の比率で存在する、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記アルキルアミンアルコキシレート界面活性剤が、2〜5の平均エトキシル化度を有するアルキルアミンエトキシレートである、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
前記アルキルアミンアルコキシレート界面活性剤がココアミンエトキシレートを含有する、請求項30に記載の方法。

【公表番号】特表2011−518777(P2011−518777A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501943(P2011−501943)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/037934
【国際公開番号】WO2009/120621
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【Fターム(参考)】