説明

界面活性剤組成物

【課題】殺菌性を有する、安価で量産可能な界面活性剤組成物を実現する。
【解決手段】界面活性剤組成物は、陽イオン界面活性剤と、解離により陽イオン界面活性剤に対して対イオンとなる陰イオンを生成可能な、イオン性界面活性剤とは異なる塩とを含むものであり、通常、水溶液状で用いられる。ここで用いられる陽イオン界面活性剤は、例えば、脂肪族アミン塩、脂肪族四級アンモニウム塩、芳香族四級アンモニウム塩および複素環四級アンモニウム塩のうちの少なくとも一つである。また、ここで用いられる塩は、例えば、陰イオンとして塩素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸水素イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、ギ酸イオンおよび酢酸イオンのうちの一つを生成可能な塩の群から選択された少なくとも一つのものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性剤組成物、特に、陽イオン界面活性剤を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関、食品工場および製薬工場等では、従事する作業者の手指等の身体および各種器具や機器の衛生を保つため、洗浄時において、汚れを除去するとともに殺菌が求められる。このため、殺菌性を有する洗浄剤の開発が進められている。
【0003】
殺菌性を有する洗浄剤として、特許文献1には、石鹸よりも低刺激性の界面活性剤、緩衝剤および抗菌剤を含む抗菌性液体洗浄組成物が記載されている。しかし、ここで用いられる抗菌剤は、2−ヒドロキシ−4,2’,4’−トリクロロジフェニルエーテルや2,6−ジメチル−4−ヒドロキシクロロベンゼン等といった高価なものであることから、組成物の価格を高めることになる。また、このような抗菌剤は、多量に入手するのが困難であることから、上記組成物は量産が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平10−500962号公報(特許請求の範囲、3頁4〜13行および12頁11行〜13頁18行等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、殺菌性を有する、安価で量産可能な界面活性剤組成物を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の界面活性剤組成物は、陽イオン界面活性剤と、解離により陽イオン界面活性剤に対して対イオンとなる陰イオンを生成可能な、イオン性界面活性剤とは異なる塩とを含むものである。
【0007】
ここで用いられる陽イオン界面活性剤は、例えば、脂肪族アミン塩、脂肪族第四級アンモニウム塩、芳香族第四級アンモニウム塩および複素環第四級アンモニウム塩からなる群から選択された少なくとも一つである。
【0008】
また、塩は、例えば、陰イオンとして塩素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸水素イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、ギ酸イオンおよび酢酸イオンのうちの一つを生成可能な塩の群から選択された少なくとも一つのものである。
【0009】
本発明の界面活性剤組成物は、通常、陽イオン界面活性剤と上記塩とを含む溶液である。この場合、塩として、例えば、中性塩を選択する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の界面活性剤組成物は、陽イオン界面活性剤に対して上述の特定の塩を組み合わせたものであるため、実用的な殺菌性を有し、しかも安価で量産可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実験例A1〜A9についての菌数の対数減少値を示す図。
【図2】実験例B1〜B5についての菌数の対数減少値を示す図。
【図3】実験例C1〜C11についての菌数の対数減少値を示す図。
【図4】実験例D1〜D7についての菌数の対数減少値を示す図。
【図5】実験例E1〜E11についての菌数の対数減少値を示す図。
【図6】実験例F1〜F7についての菌数の対数減少値を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の界面活性剤組成物は、陽イオン界面活性剤と特定の塩とを含む。ここで用いられる陽イオン界面活性剤は、アミン塩型や第四級アンモニウム塩型の各種のものであって、特に限定されない。
【0013】
アミン塩型の陽イオン界面活性剤としては、例えば、モノメチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン塩酸塩、トリメチルアミン塩酸塩およびドデシルアミン塩酸塩等の脂肪族アミン塩を挙げることができる。
【0014】
また、第四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤としては、例えば、塩化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化デシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムおよび臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム等の脂肪族第四級アンモニウム塩、塩化ドデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウムおよび塩化ベンゼトニウム等の芳香族第四級アンモニウム塩、塩化ブチルピリジニウム、塩化ドデシルピリジニウム(1−ドデシルピリジニウムクロリド)および塩化セチルピリジニウム等の複素環第四級アンモニウム塩を挙げることができる。
【0015】
陽イオン界面活性剤は、上述の脂肪族アミン塩、脂肪族第四級アンモニウム塩、芳香族第四級アンモニウム塩および複素環第四級アンモニウム塩のうちの一つが用いられてもよいし、任意の組合せで二種以上のものが併用されてもよい。
【0016】
一方、ここで用いられる塩は、水中等で解離することにより陽イオン界面活性剤に対して対イオンとなる陰イオンを生成可能なものであり、イオン性界面活性剤、すなわち、陽イオン界面活性剤および陰イオン界面活性剤ではないものである。陽イオン界面活性剤に対して対イオンとなる陰イオンとしては、塩素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、ギ酸イオンおよび酢酸イオンを例示することができる。
【0017】
上記のような対イオンを生成可能な塩の例としては、次のものを挙げることができる。
塩素イオンを生成可能なもの:
塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化銅、塩化リチウム、塩化鉄および塩化マンガン。
硫酸イオンを生成可能なもの:
硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸銅、硫酸カルシウム、硫酸アンモニウムおよび硫酸鉄。
硝酸イオンを生成可能なもの:
硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸アンモニウムおよび硝酸鉄。
リン酸イオンを生成可能なもの:
リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三マグネシウム、リン酸三カルシウムおよびリン酸アンモニウム。
リン酸水素イオンを生成可能なもの:
リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸水素カルシウムおよびリン酸水素二アンモニウム。
炭酸イオンを生成可能なもの:
炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸リチウム、炭酸カルシウムおよび炭酸アンモニウム。
炭酸水素イオンを生成可能なもの:
炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウムおよび炭酸水素アンモニウム。
ギ酸イオンを生成可能なもの:
ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、ギ酸カルシウムおよびギ酸アンモニウム。
酢酸イオンを生成可能なもの:
酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸アンモニウムおよび酢酸鉄。
【0018】
塩は、それぞれが単独で用いられてもよいし、2種以上のものが併用されてもよい。塩として好ましいものは、本発明の界面活性剤組成物において実用的な殺菌性を実現しやすいことから、対イオンとなる陰イオンとして塩素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸水素イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、ギ酸イオンおよび酢酸イオンのうちの一つを生成可能な塩の群から選択された少なくとも一つのものである。
【0019】
本発明の界面活性剤組成物において、陽イオン界面活性剤に対する塩の含有割合は、通常、0.05〜300重量倍になるよう設定するのが好ましく、0.1〜250重量倍になるよう設定するのがより好ましい。塩の含有割合が0.05重量倍未満の場合は、界面活性剤組成物の殺菌効果が高まりにくい可能性がある。逆に、300重量倍を超える場合は、後述する界面活性剤組成物の用途に応じた陽イオン界面活性剤の作用を阻害してしまう可能性がある。
【0020】
本発明の界面活性剤組成物は、陽イオン界面活性剤に対して汎用的で入手が容易な塩を組合せたものであることから、安価に提供することができ、量産も容易である。なお、本発明の界面活性剤組成物は、後述する用途に応じて、上述の陽イオン界面活性剤および塩以外の成分、例えば、香料、色材、保湿剤、坑酸化剤、酸化防止剤および金属イオン封鎖剤等の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0021】
本発明の界面活性剤組成物は、陽イオン界面活性剤を含むものであることから、人間の手指等の身体、犬や馬等の動物の身体や体毛、衣類、寝具、食器類や調理器具等の台所用品および各種の医療器具を洗浄するための洗浄剤として、或いは、居室、浴室、トイレおよび洗面室等の生活空間や手術室等の壁面や床面を洗浄するための洗浄剤として用いることができ、また、各種の合成樹脂の乳濁液を調製するための乳化剤や樹脂成形品等の帯電し易い製品の帯電防止剤として用いることもできる。
【0022】
これらの用途において、本発明の界面活性剤組成物は、陽イオン界面活性剤自体が有する殺菌力が塩の作用により高まることから、細菌に対する実用的な殺菌力を発揮し得、また、真菌および酵母等の菌類の増殖も効果的に抑制することができる。このため、本発明の界面活性剤組成物は、洗浄剤として用いられる場合、被洗浄物を洗浄すると同時に殺菌処理することができる。また、乳化剤として用いられる場合、調製された乳濁液に対し、雑菌や菌類が繁殖、増殖するのを抑制する抗菌作用を付与することができる。さらに、帯電防止剤として用いられる場合、樹脂成形品等の被処理物に対し、雑菌や菌類が繁殖、増殖するのを抑制する抗菌作用を同時に付与することができる。
【0023】
上述の用途において、本発明の界面活性剤組成物は、陽イオン界面活性剤、所定の塩およびその他の成分の混合物状のものを溶媒に溶解した溶液状のものとして用いることができる。ここで用いられる溶媒としては、例えば、水道水並びに純水、蒸留水およびイオン交換水等の精製水のような水の他に、メタノールやエタノール等のアルコール類、アセトン、クロロホルムおよびキシレン等の有機溶媒を挙げることができる。溶媒は、2種以上のものが併用されてもよい。溶媒は、界面活性剤組成物の用途に応じて選択することができる。例えば、界面活性剤組成物を洗浄剤、特に身体や体毛の洗浄剤として用いる場合、水や水と生体に対して安全な有機溶媒(例えば、安全なアルコール類等)との混合物を溶媒とするのが好ましい。一方、乳化剤や帯電防止剤として用いる場合は、その使用方法に応じて水や有機溶媒を選択することができる。
【0024】
溶液状の界面活性剤組成物は、界面活性剤組成物を使用するときに調製されてもよいし、予め調製されていてもよい。いずれの場合においても、溶液状の界面活性剤組成物は、界面活性剤の溶液を先ず調製し、必要な場合はこの溶液をpH調製した後に所定の塩およびその他の成分を添加、溶解することで調製するのが好ましい。
【0025】
例えば、界面活性剤組成物の用途が洗浄剤の場合、界面活性剤溶液のpHは、陽イオン界面活性剤の洗浄力が高まる範囲に設定するのが好ましく、具体的には、4〜11に設定するのが好ましい。特に、身体の洗浄剤としての使用を予定する場合、界面活性剤溶液のpHは、皮膚への刺激を与えにくい5〜10の範囲に設定するのが好ましい。但し、このようにpH調整された界面活性剤溶液は、塩を添加したときにpHが大きく変動し、pH調整の意義が損なわれることがある。このため、洗浄剤として利用可能な溶液状の界面活性剤組成物を調製する場合、界面活性剤溶液に添加する塩は、界面活性剤溶液のpHを変動させにくい中性塩、例えば、リン酸イオン、リン酸水素イオンまたは炭酸水素イオンを生成可能な塩を選択するのが好ましい。
【0026】
一方、用途が乳化剤や帯電防止剤の場合、界面活性剤組成物は、その使用目的に応じて任意にpHを設定することができる。このため、このような用途の界面活性剤組成物の溶液を調製するときは、界面活性剤溶液に中性塩以外の塩を添加してpHを変動させることで、所望のpHの界面活性剤組成物の溶液を調製することができ、また、予めpH調整された界面活性剤溶液に中性塩を添加することで、所望のpHの界面活性剤組成物の溶液を調製することもできる。
【0027】
溶液状の界面活性剤組成物における陽イオン界面活性剤の濃度は、界面活性剤組成物の用途に応じて適宜調整することができ、特に限定されるものではないが、通常は0.01W/V%以上40W/V%以下に設定するのが好ましい。
【0028】
洗浄剤として本発明の界面活性剤組成物を用いる場合、例えば、溶液状の界面活性剤組成物の適量を被洗浄物または布帛やスポンジ等の洗浄具に対して適用し、水を適宜適用して泡だてながら被洗浄物を洗浄する。この場合、洗浄後の被洗浄物に付着している界面活性剤組成物は、清浄な水で流し落とすのが好ましい。乳化剤として本発明の界面活性剤組成物を用いる場合、その使用方法は特に限定されるものではなく、通常の乳化剤と同様にして本発明の界面活性剤組成物を用いることができる。この場合、本発明の界面活性剤組成物は、水溶液状のものとして用いられてもよいし、有機溶媒に溶解した溶液として用いられてもよい。帯電防止剤として本発明の界面活性剤組成物を用いる場合、帯電しやすい樹脂製品等の処理対象物の表面に対して溶液状の界面活性剤組成物を適宜塗布した後に乾燥する。このため、溶液状の界面活性剤組成物は、揮発性が高くかつ処理対象物を溶解する等の不具合を生じない有機溶媒を用いて調製したものを用いるのが好ましい。
【0029】
[実験例]
実験例A
(実験例A1)
蒸留水にドデシルアミン塩酸塩を溶解し、ドデシルアミン塩酸塩濃度を0.06w/v%に調整した界面活性剤水溶液を調製した。そして、調製した界面活性剤水溶液の1mLを試料水として分取し、これを37℃のウォーターバス中でプレインキュベートした。
【0030】
次に、プレインキュベートした試料水に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC13276)を菌数が3.4E+08CFU/mLになるよう添加して10秒間接触させた後、試料水の一部を100μL分取した。そして、分取した試料水を日本製薬株式会社製のSCDLP培地へ添加して界面活性剤を不活化した後に適宜希釈し、この希釈された試料水について、日本製薬株式会社製のSCDLP寒天培地を用いた塗抹法により36℃で24時間経過後の菌数を測定した。菌数の対数減少値を表1および図1に示す。
【0031】
(実験例A2〜A5)
実験例A1で調製した界面活性剤水溶液の一部を試料水として採取し、この試料水へ表1に示す塩を同表に示す濃度になるよう添加することで試料水の量を1mLに調整した。そして、この試料水を37℃のウォーターバス中でプレインキュベートした。
【0032】
次に、プレインキュベートした試料水について、実験例A1のプレインキュベート後と同様の処理をし、菌数を測定した。菌数の対数減少値を表1および図1に示す。
【0033】
(実験例A6〜A9)
実験例A1で用いたものと同じ蒸留水を試料水とし、この試料水へ表1に示す塩のみを同表に示す濃度になるよう添加することで試料水の量を1mLに調整した。そして、この試料水を37℃のウォーターバス中でプレインキュベートした。
【0034】
次に、プレインキュベートした試料水について実験例A1のプレインキュベート後と同様の処理をし、菌数を測定した。菌数の対数減少値を表1および図1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
実験例B
(実験例B1)
蒸留水にドデシルアミン塩酸塩を溶解し、ドデシルアミン塩酸塩濃度を0.06w/v%に調整した界面活性剤水溶液を調製した。そして、調製した界面活性剤水溶液の1mLを試料水として分取し、これを37℃のウォーターバス中でプレインキュベートした。
【0037】
次に、プレインキュベートした試料水に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC13276)を菌数が2.7E+08CFU/mLになるよう添加して10秒間接触させた後、試料水の一部を100μL分取した。そして、分取した試料水を日本製薬株式会社製のSCDLP培地へ添加して界面活性剤を不活化した後に適宜希釈し、この希釈された試料水について、日本製薬株式会社製のSCDLP寒天培地を用いた塗抹法により36℃で24時間経過後の菌数を測定した。菌数の対数減少値を表2および図2に示す。
【0038】
(実験例B2〜B3)
実験例B1で調製した界面活性剤水溶液の一部を試料水として採取し、この試料水へ表2に示す塩を同表に示す濃度になるよう添加することで試料水の量を1mLに調整した。そして、この試料水を37℃のウォーターバス中でプレインキュベートした。
【0039】
次に、プレインキュベートした試料水について、実験例B1のプリインキュベート後と同様の処理をし、菌数を測定した。菌数の対数減少値を表2および図2に示す。
【0040】
(実験例B4〜B5)
実験例B1で用いたものと同じ蒸留水を試料水とし、この試料水へ表2に示す塩のみを同表に示す濃度になるよう添加することで試料水の量を1mLに調整した。そして、この試料水を37℃のウォーターバス中でプレインキュベートした。
【0041】
次に、プレインキュベートした試料水について実験例B1のプレインキュベート後と同様の処理をし、菌数を測定した。菌数の対数減少値を表2および図2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
実験例C
(実験例C1)
蒸留水に臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを溶解し、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム濃度を0.015w/v%に調整した界面活性剤水溶液を調製した。そして、調製した界面活性剤水溶液の1mLを試料水として分取し、これを37℃のウォーターバス中でプレインキュベートした。
【0044】
次に、プレインキュベートした試料水に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC13276)を菌数が1.3E+08CFU/mLになるよう添加して10秒間接触させた後、試料水の一部を100μL分取した。そして、分取した試料水を日本製薬株式会社製のSCDLP培地へ添加して界面活性剤を不活化した後に適宜希釈し、この希釈された試料水について、日本製薬株式会社製のSCDLP寒天培地を用いた塗抹法により36℃で24時間経過後の菌数を測定した。菌数の対数減少値を表3および図3に示す。
【0045】
(実験例C2〜C6)
実験例C1で調製した界面活性剤水溶液の一部を試料水として採取し、この試料水へ表3に示す塩を同表に示す濃度になるよう添加することで試料水の量を1mLに調整した。そして、この試料水を37℃のウォーターバス中でプレインキュベートした。
【0046】
次に、プレインキュベートした試料水について、実験例C1のプレインキュベート後と同様の処理をし、菌数を測定した。菌数の対数減少値を表3および図3に示す。
【0047】
(実験例C7〜C11)
実験例C1で用いたものと同じ蒸留水を試料水とし、この試料水へ表3に示す塩のみを同表に示す濃度になるよう添加することで試料水の量を1mLに調整した。そして、この試料水を37℃のウォーターバス中でプレインキュベートした。
【0048】
次に、プレインキュベートした試料水について実験例C1のプレインキュベート後と同様の処理をし、菌数を測定した。菌数の対数減少値を表3および図3に示す。
【0049】
【表3】

【0050】
実験例D
(実験例D1)
蒸留水に塩化ベンザルコニウムを溶解し、塩化ベンザルコニウム濃度を0.025w/v%に調整した界面活性剤水溶液を調製した。そして、調製した界面活性剤水溶液の1mLを試料水として分取し、これを37℃のウォーターバス中でプレインキュベートした。
【0051】
次に、プレインキュベートした試料水に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC13276)を菌数が3.4E+08CFU/mLになるよう添加して10秒間接触させた後、試料水の一部を100μL分取した。そして、分取した試料水を日本製薬株式会社製のSCDLP培地へ添加して界面活性剤を不活化した後に適宜希釈し、この希釈された試料水について、日本製薬株式会社製のSCDLP寒天培地を用いた塗抹法により36℃で24時間経過後の菌数を測定した。菌数の対数減少値を表4および図4に示す。
【0052】
(実験例D2〜D4)
実験例D1で調製した界面活性剤水溶液の一部を試料水として採取し、この試料水へ表4に示す塩を同表に示す濃度になるよう添加することで試料水の量を1mLに調整した。そして、この試料水を37℃のウォーターバス中でプレインキュベートした。
【0053】
次に、プレインキュベートした試料水について、実験例D1のプレインキュベート後と同様の処理をし、菌数を測定した。菌数の対数減少値を表4および図4に示す。
【0054】
(実験例D5〜D7)
実験例D1で用いたものと同じ蒸留水を試料水とし、この試料水へ表4に示す塩のみを同表に示す濃度になるよう添加することで試料水の量を1mLに調整した。そして、この試料水を37℃のウォーターバス中でプレインキュベートした。
【0055】
次に、プレインキュベートした試料水について実験例D1のプレインキュベート後と同様の処理をし、菌数を測定した。菌数の対数減少値を表4および図4に示す。
【0056】
【表4】

【0057】
実験例E
(実験例E1)
蒸留水に塩化ベンザルコニウムを溶解し、塩化ベンザルコニウム濃度を0.025w/v%に調整した界面活性剤水溶液を調製した。そして、調製した界面活性剤水溶液の1mLを試料水として分取し、これを37℃のウォーターバス中でプレインキュベートした。
【0058】
次に、プレインキュベートした試料水に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC13276)を菌数が3.5E+08CFU/mLになるよう添加して10秒間接触させた後、試料水の一部を100μL分取した。そして、分取した試料水を日本製薬株式会社製のSCDLP培地へ添加して界面活性剤を不活化した後に適宜希釈し、この希釈された試料水について、日本製薬株式会社製のSCDLP寒天培地を用いた塗抹法により36℃で24時間経過後の菌数を測定した。菌数の対数減少値を表5および図5に示す。
【0059】
(実験例E2〜E6)
実験例E1で調製した界面活性剤水溶液の一部を試料水として採取し、この試料水へ表5に示す塩を同表に示す濃度になるよう添加することで試料水の量を1mLに調整した。そして、この試料水を37℃のウォーターバス中でプレインキュベートした。
【0060】
次に、プレインキュベートした試料水について、実験例E1のプレインキュベート後と同様の処理をし、菌数を測定した。菌数の対数減少値を表5および図5に示す。
【0061】
(実験例E7〜E11)
実験例E1で用いたものと同じ蒸留水を試料水とし、この試料水へ表5に示す塩のみを同表に示す濃度になるよう添加することで試料水の量を1mLに調整した。そして、この試料水を37℃のウォーターバス中でプレインキュベートした。
【0062】
次に、プレインキュベートした試料水について実験例E1のプレインキュベート後と同様の処理をし、菌数を測定した。菌数の対数減少値を表5および図5に示す。
【0063】
【表5】

【0064】
実験例F
(実験例F1)
蒸留水に1−ドデシルピリジニウムクロリドを溶解し、1−ドデシルピリジニウムクロリド濃度を0.02w/v%に調整した界面活性剤水溶液を調製した。そして、調製した界面活性剤水溶液の1mLを試料水として分取し、これを37℃のウォーターバス中でプレインキュベートした。
【0065】
次に、プレインキュベートした試料水に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC13276)を菌数が2.6E+08CFU/mLになるよう添加して10秒間接触させた後、試料水の一部を100μL分取した。そして、分取した試料水を日本製薬株式会社製のSCDLP培地へ添加して界面活性剤を不活化した後に適宜希釈し、この希釈された試料水について、日本製薬株式会社製のSCDLP寒天培地を用いた塗抹法により36℃で24時間経過後の菌数を測定した。菌数の対数減少値を表6および図6に示す。
【0066】
(実験例F2〜F4)
実験例F1で調製した界面活性剤水溶液の一部を試料水として採取し、この試料水へ表6に示す塩を同表に示す濃度になるよう添加することで試料水の量を1mLに調整した。そして、この試料水を37℃のウォーターバス中でプレインキュベートした。
【0067】
次に、プレインキュベートした試料水について、実験例F1のプレインキュベート後と同様の処理をし、菌数を測定した。菌数の対数減少値を表6および図6に示す。
【0068】
(実験例F5〜F7)
実験例F1で用いたものと同じ蒸留水を試料水とし、この試料水へ表6に示す塩のみを同表に示す濃度になるよう添加することで試料水の量を1mLに調整した。そして、この試料水を37℃のウォーターバス中でプレインキュベートした。
【0069】
次に、プレインキュベートした試料水について実験例F1のプレインキュベート後と同様の処理をし、菌数を測定した。菌数の対数減少値を表6および図6に示す。
【0070】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽イオン界面活性剤と、
解離により前記陽イオン界面活性剤に対して対イオンとなる陰イオンを生成可能な、イオン性界面活性剤とは異なる塩と、
を含む界面活性剤組成物。
【請求項2】
前記陽イオン界面活性剤が脂肪族アミン塩、脂肪族第四級アンモニウム塩、芳香族第四級アンモニウム塩および複素環第四級アンモニウム塩からなる群から選択された少なくとも一つである、請求項1に記載の界面活性剤組成物。
【請求項3】
前記塩は、前記陰イオンとして塩素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸水素イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、ギ酸イオンおよび酢酸イオンのうちの一つを生成可能な塩の群から選択された少なくとも一つのものである、請求項1または2に記載の界面活性剤組成物。
【請求項4】
前記陽イオン界面活性剤と前記塩とを含む溶液である、請求項1から3のいずれかに記載の界面活性剤組成物。
【請求項5】
前記塩として中性塩を選択する、請求項4に記載の界面活性剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−35923(P2013−35923A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172019(P2011−172019)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】