説明

界面活性化合物

少なくとも1つの自由なヒドロキシル基を有する、ジカルボン酸とポリオールとのオリゴエステルの脂肪族エステル、詳細には、式(I):R1−[OR2O−C(O)−R3−(O)C]m−R4(I)(式中、R1はH、モノカルボン酸基、又はR6O−[C(O)−R3−(O)C]−基;R2は置換基のないヒドロキシル基を少なくとも1つ有するポリオール残基;R3はヒドロカルビレン基;R4は−OH、−OM(Mは塩を生成する金属、アミン、又はアンモニウム基)、−OR6基、又は−OR2O−R7基;R5はC7〜C21ヒドロカルビル基;R6はC8〜C22ヒドロカルビル基;R7はH、又は−C(O)R5基;及びmは1〜20であり、R1及びR4のうち少なくとも一方が、C7〜C21ヒドロカルビル基を含有する基であるか、その基を含んでいることを条件とする)は、界面活性剤である。一連の界面活性特性が、これらの範囲内で分子を変化させることによって得られる。特にR2基が、ソルビトールなどのより多価のポリオールに由来し、R3基がC2〜C6で、かつ脂肪族末端基がC8〜C14である場合、生成物を水溶性が高くて効果的な水中油滴乳化剤とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリヒドロキシヒドロカルビル残基、特に単糖残基と、ジカルボン酸残基とから構成され、疎水性残基を包含させることによって改質された、オリゴエステル又はポリマーエステルを含む界面活性化合物に関し、そのような化合物を界面活性剤、特に乳化剤として、特にパーソナルケア組成物に使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
水系システム、例えば水中油滴エマルジョン、又は水中に分散した固体において効果的な界面活性を得るために、通常は、比較的親水性で典型的には中程度の水溶性である界面活性剤を使用することが望ましい。そのような界面活性剤は、通常7より大きく、一般に8〜18の範囲の高いHLB(親水/親油バランス)を有している。従来の界面活性剤は、比較的長いポリオキシエチレン鎖を有するアルコールエトキシレートを用いて得られており、そのポリオキシエチレン鎖は通常少なくとも10個、しばしば最大約100個のEO基を含み、アルコールはC12〜C18鎖を有している。あるいは、脂肪酸エステル、通常主にショ糖のような糖のモノエステルを用いて従来の界面活性剤が得られている。
【0003】
また、油系システムにおいて効果的な界面活性を得るためには、比較的疎水性で、通常油溶性で水に不溶性であることの多い、例えば7未満であって一般に4〜6の範囲の低いHLBを通常有している界面活性剤を使用することが望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、ポリオール及びジカルボン酸からなる特定のポリエステルが中間体オリゴマー又はポリマーを生成し、これらはモノカルボン酸又は1価アルコールを用いて通常さらにエステル化が可能であって、例えば水中油滴乳化剤のような界面活性を有する化合物を生成するという、我々の知見に基づいている。便宜上、この中間材料を単純にオリゴエステル又はオリゴマーと呼んでもよい。
【0005】
従って本発明は、ジカルボン酸とポリオールとのオリゴエステルの、脂肪族モノ−又はジ−エステルであり、ポリエステル化後に少なくとも1個の自由なヒドロキシル基を有している、界面活性化合物を提供する。
【0006】
本発明の化合物は、ビス−ヒドロキシル末端化オリゴエステルの脂肪酸モノ−もしくはジ−エステル;ビス−カルボキシル末端化オリゴエステルと脂肪アルコールとのモノ−もしくはジ−エステル;モノ−ヒドロキシル モノ−カルボキシル末端化オリゴエステルと脂肪酸もしくは脂肪アルコールとのモノ−エステル、又はモノ−ヒドロキシル モノ−カルボキシル末端化オリゴエステルの脂肪酸脂肪アルコール混合ビス−エステルであってよく、また本発明にはこれらの化合物の亜型が含まれる。
【0007】
詳細には、本発明の化合物は式(I)である。
1−[OR2O−C(O)−R3−(O)C]m−R4 (I)
(上式中、
1はH、R5(O)C−基、又はR6O−[C(O)−R3−(O)C]−基;
2はそれぞれ、置換基のないヒドロキシル基を少なくとも1個含む、C3〜C10ヒドロカルビル基;
3はそれぞれ、C1〜C20、特にC2〜C20のヒドロカルビレン基;
4は−OH、−OM(Mは塩を生成する金属、アミン、又はアンモニウム基)、−OR6基、又は−OR2O−R7基;
5はC7〜C21脂肪族ヒドロカルビル基;
6はそれぞれ、C8〜C22脂肪族ヒドロカルビル基;
7はH、又は−C(O)R5基(R5は上記定義した通り);及び
mは1〜20、特に3〜10、より特別には3.5〜8であり、
1及びR4のうち少なくとも一方が、C7〜C21ヒドロカルビル基を含有する基であるか、C7〜C21ヒドロカルビル基を含有する基を含んでいることを条件とする。)
【0008】
一般式(I)に含まれるものとして、3つの主な種類の化合物がある。
a)式(Ia)の、ビス−ヒドロキシル末端化オリゴエステル中間体の脂肪酸モノ−及びビス−エステル:
1a−[OR2O−C(O)−R3−(O)C]m−OR2O−R4a (Ia)
(上式中、
2のそれぞれ、R3のそれぞれ、及びmは、式(I)で定義した通り;
1aはR5(O)C−基;及び
4aは−H、又は−C(O)R5基(R5はそれぞれ式(I)で定義した通り)である。)
b)式(Ib)の、ヒドロキシルカルボキシル末端化オリゴエステル中間体と脂肪酸又は脂肪アルコールとのモノ−エステル、並びに脂肪酸及び脂肪アルコールとのビス−エステル:
1b−[OR2O−C(O)−R3−(O)C]m−R4b (Ib)
(上式中、
2のそれぞれ、R3のそれぞれ、及びmは、式(I)で定義した通り;
1bはH又はR5(O)C−基;
4bは−OH、−OM(Mは塩を生成する金属{原子}、又はアミンもしくはアンモニウム基)又は−OR6基;
5及びR6のそれぞれは、式(I)で定義した通りであって、R1b及びR4bのうち少なくとも一方がC8〜C22基であるか、C8〜C22基を含むことを条件とする。)
c)式(Ic)の、ビス−カルボキシル末端化オリゴエステル中間体と脂肪アルコールとのモノ−及びビス−エステル:
1c−[OR2O−C(O)−R3−(O)C]m−OR4c (Ic)
(上式中、
2のそれぞれ、R3のそれぞれ、及びmは、式(I)で定義した通り;
1cはR6O−C(O)−R3−(O)C−基;及び
4CはH、塩を生成する金属{原子}、アミンもしくはアンモニウム基、又は−OR6基;R6はそれぞれ式(I)で定義した通りである。)
【0009】
式(Ia)の化合物には、「追加の」残基である、ポリオール残基−OR2O−が含まれ、この残基−OR2O−が分子の親水性の主な原因であるため、そのような化合物は、比較的親水性で、一般に水溶性であって、特に8〜18のHLB値を有するように意図されることが多い。そのような化合物は、最終エステルにおいて、例えばC8〜C14、特にC10〜C12の比較的短い脂肪族モノカルボン酸鎖を利用しており、通常モノ−エステルであることが多い(ジ−エステルは親水性がより低い)。
【0010】
式(Ib)の化合物は、同数のポリオール及びジカルボン酸残基を有しており、使用する特定の残基及び最終エステルにおける脂肪族鎖の長さに依存して、親水性及び疎水性について中間的なものとなることが多い。
【0011】
式(Ic)の化合物には、「追加の」残基である、−C(O)−R3−(O)C−ジカルボン酸残基が含まれ、これが分子の疎水性の原因であるため、そのような化合物は、比較的疎水性で、一般的に水に不溶性、油溶性であることが多く、特に4〜6のHLB値を有するように意図され、かつ最終エステルにおいて、例えばC12〜C20、特にC16〜C18のアルコールに由来する比較的長い脂肪族鎖を有することが多い。
【0012】
式(I)の化合物は直鎖化合物であって、オリゴエステル鎖が分岐又は架橋していないものとして示されており、R1又はR4の脂肪族基はオリゴエステル鎖の末端として示されている。以下説明するように、式(I)の化合物を作るのに使用されるポリオール[典型的には式(II):HOR2OH]のヒドロキシル官能基は2より多い(例えば、ソルビトールは全部で6個のヒドロキシル基を有する)ため、分岐反応が生じうる可能性があり、同様にジカルボン酸[典型的には式(III):HOOC−R3−COOH]には分岐を可能にしうる官能基、例えば追加のカルボキシル基又はヒドロキシル基が含まれる場合がある。式(I)の化合物には界面活性剤としての用途があり、この種類の分岐は界面活性剤としての化合物の効果を減少させると考えられるため、この用途においては分岐を回避することが望ましい。式(I)に類似した構造を有するが、オリゴエステル鎖に分岐を含んでいる物質の比率は、望ましくは界面活性生成物の20質量%未満であり、より望ましくは10質量%未満であり、とりわけ5質量%未満である。
【0013】
ヒドロカルビル基R2は、2個のヒドロキシル基を除いた後に相当する、ポリオールHO−R2−OHの残基とみなすことができる。R2は望ましくは脂肪族ヒドロカルビル基であって、通常飽和しており、炭素原子を3〜10個、特に4〜8個、とりわけ6個有しており、分岐を含んでもよいが一般に直鎖である。残基R2には少なくとも1つ、より一般的には1〜6個、特に1〜4個、とりわけ4個のヒドロキシル基が含まれ、それらは一般に2級ヒドロキシル基である(同様に以下参照)。
【0014】
所望の直鎖オリゴマー中間生成物の製造を補助するために、ポリオール(II)は望ましくは2個の比較的反応性のヒドロキシル基を含み、残りの基の反応性は実質的により低い。従って、ポリオール(II)をジカルボン酸(III)又は反応性誘導体(以下参照)と反応させることを含む合成における支配的な反応は、カルボン酸基とより反応性のヒドロキシル基との間で起こって直鎖オリゴマーを生成する[このオリゴマーは引き続きモノカルボン酸(IV)もしくは反応性誘導体又はアルコール(V)と反応する(以下参照)]。特に、ポリオール(II)は2個の1級ヒドロキシル基を有し、かつ1〜6個、特に1〜4個、とりわけ4個の2級ヒドロキシル基を有している。
【0015】
特に望ましくは、R2は式:−(CH2p1(CHOH)p2(CH2p3−であって、式中p1及びp3はそれぞれ1〜3、望ましくは1であって、p2は1〜6、より一般的には1〜4である。相当するポリオールには、グリセロール、C4ポリオール、例えばスレイトール及びエリスリトール、C5ポリオール、例えばイノシトール、アラビトール及びキシリトール、並びにC6ポリオール、例えばソルビトールが含まれる。C4〜C6ポリオールは一般に、対応するテトロース、ペントース及びヘキソースといった糖類の還元体、又は水素化体である。そのようなポリオールには、2個の1級ヒドロキシル基及び1〜4個の2級ヒドロキシル基がある。通常は、分子のこの部分の親水性への寄与を最大にするために、自由なヒドロキシル基が比較的大量にあることが望ましいが、必要であれば、自由なヒドロキシル基の数は、例えばエーテル化又はエステル化によってその基を反応させたため、あるいは例えばソルビトールの無水物化によるソルビタンの形成による修飾ポリオールを用いたために、可能な最大数、例えばソルビトールについては4よりも小さくなってもよい。
【0016】
例えば、エチレン、ジエチレン、トリエチレンもしくはプロピレングリコールに由来する自由なヒドロキシル基のないポリオール残基、又は、例えばソルビトールの二無水物化に由来するイソソルビドの場合のように、ヒドロキシル基を2個だけ有するようにポリオールを反応させたことに由来する自由なヒドロキシル基のないポリオール残基を、比較的低比率で含むことも可能である。しかしながら、親水性を提供するために分子のこの部分を使用するのが一般には望ましいため、そのような残基の比率は一般に低く、通常は平均で分子中のポリオール残基の25mol%以下、より一般的には10mol%以下、望ましくは5mol%以下である。
【0017】
3基は、カルボン酸基を除いた後に相当する、ジカルボン酸HOOC−R3−COOH(III)の残基とみなすことができ、ジカルボン酸(III)又は反応性誘導体は一般に合成前駆体となって、本発明の化合物にR3基を提供する。R3は飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐であってよく、芳香族、例えばフェニル環(従ってフタル酸、テレフタル酸又はイソフタル酸といったジカルボン酸となる)であるか、又は/及び望ましくは脂肪族、典型的にはアルキレンもしくはアルケニレン基であってよく、R3は直鎖もしくは分岐であってよく、開鎖が望ましいが環状としてもよい。一般にR3は−(CH2n−基であり、ここでnは1〜10、通常2〜10、特に2〜8、より特別には2〜6である。異種のジカルボン酸(又は反応性誘導体)の混合物を用いて本発明の実施に使用する材料を作ることができるため、nは平均値であって非整数として表現される場合もある。R3基は通常非置換であるが、例えば(両方を有する)クエン酸のように、追加のヒドロキシル基又はカルボキシル基で置換されていてもよい。
【0018】
7〜C21脂肪族ヒドロカルビル基R5は、対応するカルボン酸、特に脂肪酸であるR5COOH(IV)の残基とみなすことができ、本発明の化合物の範囲内で、通常カルボキシル残基R5(O)C−の一部として表される。望ましくは、R5はC7〜C17のアルキル、アルケニル又はアルカジエニル基である。R5は一般的にこの範囲にあり、最終生成物が親水性であることが望ましい場合は、R5はC7〜C13、特にC9〜C13の基であり、最終生成物が疎水性であることが望ましい場合は、C15〜C17の基である。
【0019】
6基はC8〜C22ヒドロカルビル基であり、対応するアルコール、特に脂肪アルコールであるR1OH(V)の残基とみなすことができ、本発明の化合物の範囲内で、通常ヒドロカルビルオキシ基−OR6の一部として表される。望ましくは、R6はC8〜C18の基であり、特にアルキル、アルケニル又はアルカジエニル基である。
【0020】
5基又はR6基はそれぞれ、望ましくはアルキル、アルケニル又はアルカジエニル基である。使用時には、R5基又はR6基がそれぞれ異なる、例えばそれぞれが天然の脂質及び油に由来するような基であるか、あるいはそれぞれがイソステアリン酸又はイソステアリルアルコールのような基である、化合物の混合物を使用することが望ましい場合もある。さらにR5及びR6はそれぞれ直鎖又は分岐、例えばそれぞれがイソステアリン酸又はイソステアリルアルコールに由来するようなものであってよく、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸もしくはイソステアリン酸、又はラウリルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコールもしくはイソステアリルアルコールにそれぞれが由来するように飽和していてもよく、あるいはオレイン酸、リノール酸もしくはパルミトレイン酸、又はオレイルアルコール、リノレイルアルコールもしくはパルミトレイルアルコールにそれぞれが由来するように不飽和であってもよい。
【0021】
いわゆる「イソステアリン酸」は例えばUniqemaから市販されている物質であり、14〜22個の炭素原子、うち約2/3が18個の炭素原子を有する酸の混合物であり、短い側鎖、主にメチルだけでなく、いくつかのエチル側鎖をも含み、その側鎖は主に主鎖の中央、18炭素分子の場合は通常9位の辺り、6位の辺りから12位の辺りから分岐している。(例えば酸の数によって)分析した分子量はステアリン酸と近い。「イソステアリン酸」は、いわゆる「ダイマー酸」の製造から(分離及び水素化した後に)得られる共生成物であり、ダイマー酸は触媒的熱重合によってC18不飽和脂肪酸(主にオレイン酸及びリノール酸)から製造される。
【0022】
Mは塩を生成する金属、アミン又はアンモニウム基である。金属の場合、Mは特にアルカリ金属、例えばナトリウム又はカリウム原子であり;アミンの場合、Mは特にモノ−、ジ−又はトリ−アルキル又はヒドロキシアルキルアミンであって、通常は合計1〜12個の炭素原子を含み;アンモニウムの場合、Mは非置換でも例えば1〜4個のアルキル基で置換されてもよく、通常は合計1〜16個の炭素原子を含む。
【0023】
指数mは、分子のオリゴマーエステル部分における繰り返し単位の平均数を表す。通常mは少なくとも3であり、より一般的には少なくとも3.5であり、望ましくは少なくとも5であるが、一般的に20以下であり、望ましくは10以下であり、望ましくは3.5〜7、特に4〜7である。数値は平均であるため、mが非整数であってもよい。
【0024】
本発明の化合物の特性、特にHLBは、分子の親水性及び疎水性成分の選択によって変化させることができる。従って、ヒドロカルビレン基R3及び/又はR5基、並びに/又はR6基の長さを延ばすと、これらがヒドロカルビルの場合、より疎水性の生成物が得られる。また、一般にはR2鎖の長さを延ばすことと連動するが、R2基の自由なヒドロキシル基の数を増やすと、式(I)の化合物の親水性が増大する。さらに、ビス−ヒドロキシル末端化オリゴエステル中間体は、(若干)高い比率でヒドロキシル含有基を有するために、対応するモノ−又はビス−カルボキシル末端化中間体と比べて、一般的により親水性の生成物を与える。式(I)の化合物が自由なカルボキシル基を有する場合、その化合物は、(ポリエステルをアルカリ条件に置くと何らかの加水分解が生じうるが)特にアルカリ条件下で、非イオン性特性だけでなくアニオン性界面活性特性をも有する場合がある。
【0025】
本発明の化合物のポリマー鎖により、例えばアルコールエトキシレート界面活性剤と比較して、化合物の分子量及び大きさは一般に増大する。このことにより、分子が界面から容易には移動しなくなるために、エマルジョンなどでの界面、例えば油水界面における安定化剤として有用な特性がもたらされる場合がある。
【0026】
本発明及び特に式(I)の化合物は、前駆体オリゴエステル(もしくは反応性誘導体)を、脂肪族モノカルボン酸(もしくは反応性誘導体)又は脂肪アルコール(もしくは反応性誘導体)のいずれか一方又は両方である反応剤と、エステル化条件下で反応させることによって作ることができる。ある特定の場合に使用する反応剤の選択は、前駆体オリゴエステルがビス−ヒドロキシル末端、モノ−ヒドロキシル モノ−カルボキシル末端、又はビス−カルボキシル末端であるかに左右される。ビス−ヒドロキシル末端化前駆体オリゴエステルの場合、反応剤はカルボン酸(又は反応性誘導体)であり、ビス−カルボキシル末端化前駆体オリゴエステルの場合、反応剤はアルコール(又は反応性誘導体)であり、モノ−ヒドロキシル モノ−カルボキシル末端化前駆体オリゴエステルの場合、反応剤は、所望する生成物がモノ−エステルであればカルボン酸(もしくは反応性誘導体)又はアルコール(もしくは反応性誘導体)のいずれか一方であり、所望する生成物がジエステルであればそのような両方の反応剤である。実際の前駆体オリゴエステルは2種類又は場合によっては3種類全ての異なる末端基の混合物であって、その後の反応剤の選択はその特定の混合物によって決定してもよいといった場合がしばしばあることは、当業者であれば理解する。
【0027】
従って本発明には、本発明の界面活性化合物の製造方法が含まれ、その方法は、前駆体オリゴエステル(又は反応性誘導体)を、脂肪族モノカルボン酸(もしくは反応性誘導体)又は脂肪アルコール(もしくは反応性誘導体)のいずれか一方又は両方である反応剤とエステル化条件下で反応させて、オリゴエステル中間体の脂肪族エステル界面活性剤を生成することを含む。
【0028】
特に本発明には、上記定義した式(I)の化合物の製造方法が含まれ、その方法は、前駆体オリゴエステル(又は反応性誘導体)を、C8〜C22モノカルボン酸(IV):R5COOHもしくは反応性誘導体、又はC8〜C22アルコール(V):R6OH(もしくは反応性誘導体)のいずれか一方又は両方である反応剤とエステル化条件下で反応させて、式(I)の脂肪族エステル界面活性剤を生成することを含む。
【0029】
オリゴエステル前駆体は一般に式(VI)である。
H−[OC(O)−R3−(O)C]n1−[OR2O−C(O)−R3−(O)C]m1−[OR2n2−OH (VI)
(上式中、
2のそれぞれ及びR3のそれぞれは、式(I)で定義した通り;
m1は1〜20、特に3〜10、より特別には3.5〜8;
n1は0又は1;及び
n2は0又は1であり、
n1及びn2が両方とも1ではないことを条件とする。n1及びn2が両方とも1であれば、実際にはm1が1だけ減らされていることになる。)
【0030】
上述した本発明の化合物の3つのサブグループに対応して、本発明にはさらに以下が含まれる。
a)本発明の界面活性化合物の製造方法であって、その方法は、ビス−ヒドロキシル末端化前駆体オリゴエステル(又は反応性誘導体)を、脂肪族モノカルボン酸(又は反応性誘導体)とエステル化条件下で反応させて、オリゴエステル中間体の脂肪族エステル界面活性剤を生成することを含み、特に
上記定義した式(I)の化合物の製造方法であって、その方法は、上記定義した式(VIaは下記)の前駆体オリゴエステル(又は反応性誘導体)を、C8〜C22モノカルボン酸(IV):R5COOH(又は反応性誘導体)とエステル化条件下で反応させて、式(Ia)の脂肪族エステル界面活性剤を生成することを含む。
b)本発明の界面活性化合物の製造方法であって、その方法は、モノ−ヒドロキシル モノ−カルボキシル末端化前駆体オリゴエステル(又は反応性誘導体)を、脂肪族モノカルボン酸(もしくは反応性誘導体)及び/又は脂肪アルコール(もしくは反応性誘導体)とエステル化条件下で反応させて、オリゴエステル中間体の脂肪族エステル界面活性剤を生成することを含み、特に
上記定義した式(I)の化合物の製造方法であって、その方法は、上記定義した式(VIbは下記)の前駆体オリゴエステル(又は反応性誘導体)を、C8〜C22モノカルボン酸(IV):R5COOH(もしくは反応性誘導体)又はC8〜C22アルコール(V):R6OH(もしくは反応性誘導体)のいずれか一方又は両方である反応剤とエステル条件下で反応させて、式(Ib)の脂肪族エステル界面活性剤を生成することを含む。
c)本発明の界面活性化合物の製造方法であって、その方法は、ビス−カルボキシル末端化前駆体オリゴエステル(又は反応性誘導体)を、脂肪アルコール(又は反応性誘導体)とエステル条件下で反応させて、オリゴエステル中間体の脂肪族エステル界面活性剤を生成することを含み、特に
上記定義した式(I)の化合物の製造方法であって、その方法は、式(VIcは下記)の前駆体オリゴエステル(又は反応性誘導体)を、C8〜C22アルコール(V):R6OH(又は反応性誘導体)である反応剤とエステル化条件下で反応させて、式(Ic)の脂肪族エステル界面活性剤を生成することを含む。
【0031】
オリゴエステル前駆体がビス−ヒドロキシ末端である場合、その前駆体は一般に式(VIa):
H−[OR2−OC(O)−R3−(O)C]m−[OR2]−OH (VIa)
(上式中、R2、R3及びmは式(I)で上記定義した通り。)
であって、式(IV)の酸とエステル化条件下で反応して、式(I)の化合物を作る。式(IV)の酸のモル比は、一般的には、エステル化するオリゴマー(IVa)中のヒドロキシル1モル当たり少なくとも1モルであり、通常モノ−エステルについては1モル、ジ−エステルについては2モルである。エステル生成物の生成を促進するために、モノカルボン酸を大過剰のモル数で使用する必要性は概ね確認されていない。
【0032】
オリゴエステル前駆体がモノ−ヒドロキシ モノ−カルボキシ末端である場合、その前駆体は一般に式(IVb):
H−[OR2−OC(O)−R3−(O)C]m−OH (VIb)
であって、式(IV)の酸又は式(V)のアルコールとエステル化条件下で反応して、式(I)の化合物を作る。酸及び/又はアルコールのモル比は、一般的には、エステル化するオリゴマー(VIb)中のヒドロキシル1モル当たり少なくとも1モルであり、通常モノ−エステルについては1モル、ジ−エステルについては2モルである(当然ながらジ−エステルについてはこのモル数のうち1モルはモノ−カルボン酸に由来し、もう1モルはアルコールに由来する)。エステル生成物の生成を促進するために、モノカルボン酸を大過剰のモル数で使用する必要性は概ね確認されていない。
【0033】
オリゴエステル前駆体がビス−カルボキシ末端である場合、その前駆体は一般に式(IVc):
HO−C(O)−R3−(O)C−[OR2−OC(O)−R3−(O)C]m−OH (VIc)
(上式中、R2、R3及びmは式(I)で上記定義した通り。)
であって、式(V)のアルコールとエステル化条件下で反応して、式(I)の化合物を作る。式(V)のアルコールのモル比は、一般的には、エステル化するオリゴマー(VIc)中のカルボキシル1モル当たり少なくとも1モルであり、通常モノ−エステルについては1モル、ジ−エステルについては2モルである。
【0034】
当然ながら、中間で得られる生成物はモノ−エステル、ジ−エステル及び未反応オリゴマーの統計的混合物であり、その比率はオリゴマーと酸との比率、及び使用する反応条件に左右される。
【0035】
式(VIa)、(VIb)及び(VIc)の前駆体オリゴエステルは、ポリオール(III)及びジカルボン酸(IV)をエステル化条件下で反応させて作ることができ、特に触媒、例えばアルカリ触媒を用いて行われる。オリゴエステルの固有の性質、又は混合物中のオリゴエステル(VIa)、(VIb)及び(VIc)の比率は、出発ポリオール(II)及びジカルボン酸(III)の実効モル比、及びエステル化反応に使用する反応条件に依存する。出発物質が、マロン酸のように脱炭酸反応の影響を受けやすい基を含む場合、あるいはクエン酸などのトリカルボン酸のように分岐反応を受けやすい基を含む場合(クエン酸は脱炭酸も受けやすいと思われる)、比較的穏和なオリゴマー化(エステル化)条件を用いると、所望の生成物を得るのに有用な場合がある。以下説明するように、触媒の使用による作用が事実上副反応を望ましくない程度まで促進しうる場合、触媒を別途添加せずに(出発物質の酸基も何らかの触媒作用をもたらす)比較的適度に昇温した条件下で反応を行うと、そのような物質、特にマロン酸及びクエン酸との良好な反応が実現できることが分かっている。
【0036】
特にポリオール(II)が4個以上の炭素原子を有し、かつ4個以上のヒドロキシル基、通常は2個の1級ヒドロキシル基と2個以上の2級ヒドロキシル基を有する場合、そのポリオールは環状エーテルを生成するような反応を起こしがちである。例えばソルビトールはソルビタン環状エーテルを形成する場合があり、さらに反応して二環式ジエーテルであるイソソルビドを形成する場合がある。この反応は自由なヒドロキシル基の数を減らすため一般に望ましくないことから、中間オリゴエステルを作るための出発物質の比率を選択する際に考慮しなければならない場合がある。中間オリゴマーがヒドロキシル末端、又は主にヒドロキシル末端である場合、ポリオール(II)をモル過剰で用いて、中間体の生成において迅速なポリエステル化を促進し、この段階で未反応のポリオールを残しておくことが望ましい場合もある。このような未反応のポリオールを第2段階反応の前に除去する必要性は概ね確認されていない。
【0037】
式(I)の化合物を作るためには、最初にアルカリ触媒条件下でポリオール(II)とジカルボン酸(III)とを反応させてオリゴエステル(IV)を作り、次にそのオリゴマーをカルボン酸(IV)及び/又はアルコール(V)とさらに反応させるのが実際的であることが分かっている。同じ反応容器を使用してもよく、また次の反応の前にオリゴマーを分離又は精製する必要がない場合もある。アルカリ金属に由来するアルカリ、例えばナトリウムもしくはカリウムの水酸化物もしくは炭酸塩、特に炭酸塩のような弱アルカリ、とりわけ炭酸カリウムは、特にヒドロキシル末端のオリゴエステル、例えばとりわけ式(Ia)のビス−ヒドロキシル末端化オリゴエステルを作る場合に効果的であると思われる。さらにそのような触媒は次のエステル化にも使用できるため、オリゴマー化に使用したのと同じ触媒を使用することが可能である。必要であれば、別の触媒を第1及び第2の反応段階の間に追加してもよい。
【0038】
中間オリゴエステルの合成に関連して、本発明はオリゴエステルの製造方法を含み、その方法は、ポリオール(又は反応性誘導体)をジカルボン酸(又は反応性誘導体)とエステル化条件下で反応させて、オリゴエステルを生成することを含む。
【0039】
この態様において、本発明は、特に上記定義した式(VI)のオリゴエステルの製造方法を提供し、その方法は、式(II):HO−R2−OHのポリオール(又は反応性誘導体)を式(III):HOOC−R3−COOHのジカルボン酸(又は反応性誘導体)とエステル化条件下で反応させて、オリゴエステルを生成することを含む。上述したように、オリゴエステルは、式(VIa)のビス−ヒドロキシル末端、式(VIc)のビス−カルボキシル末端、又は式(VIb)のモノ−ヒドロキシル モノ−カルボキシル末端であってよい。
【0040】
望ましくはエステル化条件には以下が含まれる。
a)アルカリ触媒、特に弱アルカリ触媒、とりわけ炭酸カリウムの使用;及び/又は
b)反応温度 100℃〜200℃、より一般的には120℃〜185℃、望ましくは150℃〜180℃、例えば約170℃;及び/又は
c)準大気圧である反応圧力 特に50〜250mbar(0.5〜25kPa)、例えば約100mbar(10kPa)
【0041】
これらの反応(オリゴエステル中間体を作る反応、又はその次に界面活性化合物を生成するエステル化)では、カルボン酸官能基が反応性誘導体で置換されてもよく、その反応性誘導体とは、低級(例えばC1〜C6)アルキル、特にメチル又はエチルのエステル、例えばジカルボン酸(III)のジアルキルエステル、もしくは脂肪酸(IV)の残基を有するトリグリセリドのようなグリセリドであってよい、酸(IV)のエステルなどのエステル、又は酸無水物などである。中間オリゴエステルを作るのに酸無水物をうまく使用することができるが、酸無水物は比較的反応性が高く、オリゴマーを作る際により反応性の低いヒドロキシル基とも反応する場合があって、その結果、次のエステル化を行った後でさえも、水に不溶性又は扱いにくいゲルを生成する傾向を有して乳化剤としての価値が低い分岐オリゴマーを生成する可能性があるために、酸無水物を使用する場合は注意を払わなければならない場合がある。酸ハロゲン化物のように、さらにより反応性が高いカルボン酸誘導体は、この理由から一般に使用されない。エステルをカルボン酸源として使用する場合、使用する触媒は上述したアルカリであってもよく、トランス−エステル化反応向けの触媒、例えばテトラブチルチタネートのようなチタネートエステルであってもよい。
【0042】
特にオリゴエステル中間体を作るのに使用するポリオールが3個より多いヒドロキシル基を有する場合、例えば5個以上のヒドロキシル基を、特に隣接する炭素原子上に有する場合は、ポリオールは、例えばソルビトールからソルビタンを生成する環化反応、あるいは十分に加熱した場合熱分解などの反応を起こしやすい場合がある。従って、これらの物質を使用する場合、特に比較的長鎖の酸を用いる場合は、カルボン酸エステルを作るのに典型的な温度より低温を使用するのが望ましい。そのような物質を用いる場合は通常、使用する温度は少なくとも100℃、より一般的には少なくとも120℃、望ましくは少なくとも150℃であるが、200℃以下、より一般的には185℃以下、特に180℃以下であり、反応温度を約170℃とするのが特に適している。またそのような比較的穏和なエステル化温度は、2級ヒドロキシル基へ反応が及ぶことを防ぐ又は低減すると思われ、このことは界面活性化合物の側鎖エステル化について、オリゴエステル中間体の分岐度を最小限にする。弱い準大気圧、例えば50〜250mbar(0.5〜25kPa)、例えば約100mbar(10kPa)を使用すると、そのような温度をより実用的に使用できる反応速度を得ることができる。
【0043】
合成して生成した物質が、特に着色した不純物によって着色している場合、その着色度は、特にパーソナルケア最終用途向けの製品を製造する場合、活性炭を用いた処理によって及び/又は例えば過酸化水素を用いた漂白によって低減できる。
【0044】
本発明の化合物は、水溶性及び/又は油溶性の範囲となるように作ることができ、従って水系又は油系システムにおける界面活性剤として使用できる。詳細には、本発明の化合物のHLB値は、4〜18の範囲にあってよく、比較的親水性の範囲である8〜18及び比較的親油性(疎水性)の範囲である4〜6が含まれる。
【0045】
水系システムに使用する界面活性剤は一般に水溶性であり、そのHLBは7より大きく、特に8〜18である。そのような物質は、特にパーソナルケア用途での水中油滴乳化剤として;顔料の分散剤として;乳化重合の乳化剤として;水系システムの湿潤剤として;特に洗濯組成物での家庭用洗剤の界面活性剤として;作物保護組成物における、特に農薬組成物のアジュバント、分散剤及び/又は乳化剤として;並びに他の用途において使用できる。
【0046】
本発明の界面活性剤の特性もまた、例えばパーソナルケア用途の、特に水中油滴エマルジョンにおける乳化剤として適したものとなる。パーソナルケアエマルジョン製品は望ましくはクリーム又は乳液の状態であってよく、通常エマルジョンの生成及び安定化を補助する乳化剤を含む。通常パーソナルケアエマルジョン製品は、エマルジョンの約3〜約5質量%の乳化剤(エマルジョン安定化剤を含む)を使用する。
【0047】
そのようなエマルジョンの油相は、通常パーソナルケア製品又は化粧品に使用される種類の皮膚軟化オイルである。皮膚軟化オイルは、周囲温度で液体であるか、あるいは通常は最大で100℃、より一般的には約80℃の高温で液体であることを条件として、バルク状態で一般的にワックス状固体である、周囲温度で固体の油状物質である。そのため、そのような固体皮膚軟化剤の融点は、望ましくは100℃未満、一般に70℃未満であって、その温度で組成物に混ぜて乳化することができる。
【0048】
油相の濃度は幅広く変化させてもよく、油の量については、通常は全体のエマルジョンの1〜90質量%、一般的に3〜60質量%、より一般的には5〜40質量%、特に8〜20質量%、とりわけ10〜15質量%である。エマルジョンに存在する水(又はポリオール、例えばグリセリン)の量については、通常は全体の組成物の5質量%より多く、一般的に30〜90質量%、より一般的には50〜90質量%、特に70〜85質量%、とりわけ75〜80質量%である。そのようなエマルジョンに使用される界面活性剤の量は、通常はエマルジョンの0.1〜10質量%、より一般的には0.5〜8質量%、より望ましくは1〜7質量%、特に1.5〜6質量%、とりわけ2〜5.5質量%である。
【0049】
そのようなエマルジョンの最終用途組成物には、保湿剤、日焼け止め、アフターサン製品、ボディバター、ゲルクリーム、高濃度香料含有製品、香料クリーム、ベビーケア製品、ヘアコンディショナー、化粧水及び美白製品、水分非含有製品、制汗剤及びデオドラント製品、日焼け用製品、クレンジング、2イン1フォームエマルジョン、多重エマルジョン、防腐剤非含有製品、乳化剤非含有製品、マイルドフォーミュレーション、例えば固体ビーズを含有するスクラブ組成物、水中シリコーン組成物、顔料含有製品、スプレー可能なエマルジョン、カラー化粧品、コンディショナー、シャワー製品、フォームエマルジョン、メイクアップリムーバー、アイメイクリムーバー、及びワイプが含まれる。好ましい組成物の種類は、1種以上の有機日焼け止め、及び/又は金属酸化物のような無機日焼け止めを含有する日焼け止めであり、望ましくは少なくとも1種の粒子状二酸化チタン及び/又は酸化亜鉛を含む。
【0050】
本発明の界面活性剤は乳化重合における乳化剤として使用できる。通常、乳化重合はエチレン性不飽和モノマーの水中エマルジョンにて行われる。適したモノマーには、不飽和カルボン酸及びそのアルキルエステル、アミド、N−置換アミド及びニトリル、芳香族ビニル化合物、モノマーとして又は特に架橋剤として含まれてもよいジエン化合物、ビニルエーテル、ビニルエステル、オレフィン、並びに疎水性アリル化合物が含まれる。
【0051】
そのような乳化重合法は、特にアクリルコポリマーの製造、例えばモノマーの少なくとも50質量%、より一般的には少なくとも60質量%、望ましくは少なくとも80質量%、例えば90質量%以上、最大100質量%がアクリルモノマーであるようなアクリルコポリマーの製造に適用できる。アクリルポリマーは、とりわけ主なモノマーがメチルメタクリレートである場合、混合したアルキルアクリレートに基づくものであってもよく、アニオン性単位、例えば(メタクリル)アクリル酸単位、又はカチオン性単位、例えばアミノ置換されたエチレン性不飽和モノマーを含んでもよい。
【0052】
使用する界面活性剤の量は、使用する特定のモノマー及び重合システム、必要なコロイド安定性の程度、及び製品ラテックスにおいて所望するポリマー粒径に左右される。他の従来の水中油滴乳化重合の場合、粒径が80〜500nmのラテックスを得るために通常使用する界面活性剤の量は、全モノマー100質量部に対して界面活性剤0.25〜5質量部(phm)である。より一般的には、その量は0.5〜2.5phm、特に1〜2phmである。
【0053】
マイクロエマルジョン重合システムでは、モノマー濃度は、従来の乳化重合又は他の分散重合システムよりも実質的に低いのが通常であり、例えば3〜10質量%である。小さいエマルジョン粒径に対応して、マイクロエマルジョンにおけるモノマー単位質量当たりの界面領域は大きいため、モノマー量に対する界面活性剤の比率も比較的高く、典型量は10〜150phmであってよい。マイクロエマルジョンシステムの全体の固形分含量はは、一般に全体のエマルジョンの15〜30質量%である。
【0054】
本発明の界面活性剤は水系媒体の固体分散剤として使用でき、特に、無機顔料、例えば二酸化チタン、顔料用酸化鉄、及び有機顔料、例えばフタロシアニン顔料、カーボンブラック、並びに同様の物質を含む顔料の分散剤として使用できる。そのような分散用途で使用する界面活性剤の量は、使用する物質及び必要な分散濃度に左右されるが、一般的に固体、例えば分散される顔料の0.2〜10質量%である。水系分散物において、無機顔料の場合、その使用量は一般に分散する固体の0.05〜5質量%、より一般的には0.1〜2.5質量%であり、有機顔料の場合、その使用量は一般に分散する固体の3〜10質量%である。典型的な分散物は、無機顔料を最大で約70質量%、しばしば最大で約65質量%含み、有機顔料を最大で約35質量%含むが、顔料ペーストについては最大で50質量%含んでもよい。塗料のような最終用途製品に組み入れた場合、最終製品における典型的な顔料の量は、無機顔料については約3〜30%、特に約20〜約25%、有機顔料については約1〜約15%、とりわけフタロシアニン型の有機顔料については特に約10〜約12%であり、カーボンブラックについては約0.5〜約5%、特に約3〜約3%である。そのような分散物の連続相は一般に水系である。
【0055】
本界面活性剤は、例えば洗濯用途における家庭用洗剤としても使用でき、単独で、又は他の非イオン性、アニオン性、カチオン性、両性及び/もしくは両性イオン界面活性剤と組み合わせて使用してもよい。本発明の界面活性剤を含む洗濯用途向け組成物には、通常さらに別の成分も含まれる。例えば、1種以上のビルダー、例えばリン酸塩、特にトリポリリン酸ナトリウム;クエン酸塩及び/又は酒石酸塩のような有機物;及び/又はゼオライト;一般に粉末組成物に使用される流動及び/又は濾過助剤(特にビルダーがゼオライトである粉末の場合には、粉末組成物に炭酸ナトリウム及び/又は重炭酸ナトリウムのような共ビルダーが含まれてもよいが、典型的な共ビルダーはアルカリであるため、手洗い組成物には一般に使用されない);腐食防止剤;カルボキシメチルセルロースのような再付着防止助剤;並びに蛍光増白剤が挙げられる。さらに別の成分として、香料;リパーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ及び/又はアミラーゼを含む酵素;通常ナトリウム過ホウ酸、ナトリウム過炭酸もしくは同様の物質に基づく漂白剤(通常テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)のような漂白活性剤と一緒に使用される);並びに一般にナトリウム塩であるリン酸塩もしくはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような安定化剤;石けん;フォーム制御剤(石けんであることが多い)及び衣類仕上げ剤(柔軟剤)、例えば4級アンモニウム塩及びベントナイト型粘土に被着してもよいアミンオキシドも挙げられる。
【0056】
本発明の化合物は農薬組成物の界面活性剤としても使用でき、特に、例えば除草剤、殺菌剤、殺虫剤、ダニ駆除剤、及び植物成長を調節する組成物と一緒に使用するアジュバント、分散物並びに/又は乳化剤として使用できる。農薬の分散に使用する界面活性剤の量は組成物の1〜30%の濃度であり、アジュバントとして使用する場合は濃厚組成物の5〜60%の濃度であり、タンク混合物に追加する成分中、又はその成分として1〜100%である。鉱物油、植物油及びアルキル化植物油のような油;溶剤及び/又は希釈剤;並びにアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤であってよい他の界面活性剤のような他の従来の成分が、そのような組成物に含まれてもよい。従来の界面活性剤のみを組成物に用いる場合と同じく、そのような他の成分は、所望する効果に基づいた量が使用される。
【0057】
本発明の界面活性剤は、例えばフォーム・ドリリングにおけるフォーム剤として、ガスハイドレートの速度論的阻害剤として、及びドリリング用水系流体潤滑剤として、油田用途に使用することもできる。
【0058】
フォーム・ドリリング用流体は、例えば水に敏感な地層への地層ダメージを最少に抑えるため水相を泡立ててある、水系のドリリング流体である。フォーム・ドリリング流体中にフォーム剤として使用する場合の界面活性剤の量は、通常はドリリング流体の1〜3質量%、より一般的には1〜2質量%である。
【0059】
ガスハイドレートの速度論的阻害剤は、ガスハイドレート生成速度を低下させるために、あるいは配管又は同様のものを閉塞すると思われる結晶凝集を低減する目的で、ガスハイドレートの結晶形を変化させるために、炭化水素含有水、特にC1〜C4の炭化水素アルカン含有流に添加される物質である。ガスハイドレート阻害の場合、界面活性剤は、処理流の水相に対して通常0.05〜5質量%使用される。
【0060】
本発明の界面活性化合物を、水系ドリリング流体の潤滑性を高めるために使用してもよい。この用途に使用する場合、使用する界面活性剤の量は流体の通常0.05〜10質量%である。
【0061】
油系システムに使用する界面活性剤は、一般に油溶性で、通常は水に不溶性であり、詳しくはHLBが7未満、より一般的には4〜6である。そのような物質は、油中水滴エマルジョンの乳化剤及び/又は安定化剤として、あるいは非水系液体の固体分散剤として使用できる。そのようなものとして、これらの界面活性剤は幅広い種類の用途、例えば(油中水滴)乳化重合、特にポリアクリルアミド(PAM)又はフリーラジカル反転乳化重合による関連するポリマー(i−PAM)を作るための乳化重合;エマルジョン爆薬;油中水滴化粧品エマルジョン中;農薬、特に植物成長調節剤、除草剤、及び/又は殺虫剤のエマルジョン、分散物及びサスポエマルジョン;並びに乳化剤及び/又は分散剤として;固体の分散剤、例えば顔料及び/又は不活性無機金属塩の、特に有機媒体中への分散剤;油田ドリリング流体添加剤、特にドリリング泥水用及び反転エマルジョンドリリング流体用の分散剤及び/又は乳化剤としての添加剤;金属加工用途、特に圧延油エマルジョン、及び切削液中で使用することができる。
【0062】
本発明の界面活性剤はi−PAM重合の乳化剤として使用でき、この重合では、アクリルアミド及び任意のコモノマーを水中に溶解し、乳化剤及び安定化剤として界面活性剤を用いてこの溶液を油中に乳化して重合を開始する。得られるものは、油中に溶解したPAMを含有する、水滴の分散物である。水系PAM溶液の粘度は高いが、エマルジョンの有効粘度は、適当に低くなるよう選択された油の連続相によって主に決定される。例えば水処理に使用する場合、一般に水中希釈して反転させることによりエマルジョンを破壊しなければならない。界面活性剤システムは、重合前、重合中及び重合後(貯蔵のため)における適当なエマルジョン安定性を提供しなければならないが、ポリアクリルアミドポリマーが機能する水相へそのポリマーを速やかに放出させるために、水中希釈して反転させている間にエマルジョンの容易な破壊を可能にするものでなければならない。反転は一般に、重合後に親水性界面活性剤を添加することによって促進される。本発明の比較的親油性の界面活性剤は、この種類の重合プロセスに使用される油中水滴エマルジョンを、乳化及び/又は安定化するために使用できる。
【0063】
i−PAMにおいて、油相は通常鉱物油、特にパラフィン油、又はエステル油であり、使用する乳化界面活性剤の量は、重合エマルジョンの通常2.5〜7質量%、一般に3〜4質量%である。典型的な乳化システムでは、ポリマー界面活性剤、特に式(I)の本発明の界面活性剤を含むポリマー界面活性剤と、低分子量で低HLBの界面活性剤(エマルジョン安定化剤としては比較的効果が低いため、エマルジョンの安定性は反転が困難なほど良好ではない)とを組み合わせる。低分子量のおかげで、後者の界面活性剤を反転中に相の界面から離れて容易に拡散させることが可能である。一般に低分子量界面活性剤は、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ソルビタンエステル又は同様の界面活性剤である。ポリマー界面活性剤と低HLB低分子量界面活性剤との質量相対比は、通常5:95〜50:50、より一般的には10:90〜40:60、一般に約15:85〜30:70である。
【0064】
本発明の親油性型の界面活性剤は、固体、特に上述したものような顔料を、非水系媒体、例えばホワイトスピリット又は芳香族媒体に分散するのにも使用できる。そのような用途で使用する界面活性剤の量は、分散物の通常0.5〜7.5質量%、より一般的には1〜5質量%である。
【0065】
本発明の化合物は、エマルジョン爆薬の乳化剤又はエマルジョン安定化剤としても有用であり、そのエマルジョン爆薬においては、酸化剤、通常は酸化剤の塩、一般には硝酸塩の水溶液が、液体燃料、通常は炭化水素燃料、例えば鉱物油及び/又はパラフィン油に乳化されており、その液体燃料は、他の石油成分、例えばマイクロ結晶ワックス、パラフィンワックス、スラックワックス、及び/又は石油精製蒸留残渣を含んでいてもよい。酸化剤溶液は、一般に硝酸塩、特にNH4NO3、アルカリ金属硝酸塩もしくはアルカリ土類金属硝酸塩の、飽和又は過飽和の水溶液であり、必要に応じて少量の他の塩、例えばNH4Clを含んでおり、この酸化剤溶液は通常、硝酸アンモニウムを40質量%〜70質量%と他の硝酸塩を20%含有している。内部の酸化剤相は、通常エマルジョン爆薬の少なくとも75体積%、より一般的には90体積%より多く、例えば約95体積%である。使用時のエマルジョン爆薬は、通常組成物を感作して爆発させる添加剤も含有している。一般には、固体表面、例えば、特に小球(prill)とした固体NH4NO3;ガスの充満した空隙、例えば化学反応でガスを発生する亜硝酸ナトリウムを含有させて得られる空隙;又は物理的空孔をもたらすガラスマイクロスフェア;を提供する物質を添加して行われる。
【0066】
本発明の化合物、特に式(I)の化合物は、単独で乳化剤として使用でき、あるいは他の典型的な油溶性乳化剤、特に、ソルビタン脂肪酸エステル、例えばソルビタンオレイン酸モノエステル(SMO);リン脂質、例えば大豆レシチン、又はそのオキサゾリンもしくはイミダゾリン誘導体;PIBSAアルカノールアミン反応生成物;又はポリエチレングリコールとの脂肪酸縮合生成物と組み合わせても使用できる。エマルジョン爆薬に使用する乳化剤の合計量は、通常は全体のエマルジョンの0.5〜5質量%、より一般的には1〜4質量%である。望ましくは、式(I)の乳化剤の比率は、エマルジョン爆薬に使用する全乳化剤の少なくとも50質量%、より一般的には少なくとも75質量%である。
【0067】
本発明の化合物は、パーソナルケア及び化粧品用途の油中水滴分散剤及び/又は乳化剤として使用でき、特に、分散された親水相に溶質を比較的高濃度で含む組成物において、及び多重エマルジョンの製造において使用できる。本発明のこの態様で使用する油相は、周囲温度で液体又は固体であってよい皮膚軟化オイルであるのが普通である。
【0068】
不連続相、一般に不連続の水相は、水もしくは水系液体、又は親水性物質の水溶液でありうる親水性相であってよく、ある場合では、不連続相が実質的に水を含まない親水性物質の液相であってよい。そのようなシステムに使用する本発明の界面活性剤は、全エマルジョンの通常0.5〜5質量%、より一般的には1〜2質量%である。
【0069】
本発明の界面活性剤は、農薬用途の乳化剤及び/又は分散剤として使用できる。従って本発明には農薬のエマルジョン又は分散物が含まれ、これらにおいて、本発明の、特に式(I)の少なくとも1種の界面活性化合物が、乳化剤又は分散剤として含まれている。この中で、より詳細には、本発明は以下を含む:
i)第2の液体成分中に乳化された第1の液体成分中に、溶解、分散もしくは乳化している農薬活性物質を含む農薬エマルジョン;
ii)第1の液体成分中に、溶解、分散もしくは乳化している農薬活性物質を含む農薬エマルジョンで、第2の液体成分が該第1の液体成分中に乳化されているもの;
iii)固体成分が液相に分散している農薬分散物。
【0070】
本発明のこの態様において、エマルジョン及び/又は分散物に含まれる農薬活性物質には、1種以上の、植物成長調節剤、除草剤、及び/又は殺虫剤、例えば殺虫剤(insecticides)、殺菌剤(fungicides)、ダニ駆除剤(acaricides)、抗線虫剤、殺ダニ剤(miticides)、殺鼠剤、殺菌剤(bactericides)、軟体動物駆除剤、及び鳥除け剤が含まれてもよい。活性物質の種類の例として、除草剤:水溶性、特に非選択性の除草剤など、特にN−ホスホノメチルグリシン除草剤、例えばグリホセート及びスルホセート、並びグルホシネート及びビピリジル型の非選択性除草剤、トリアジン、置換尿素、スルホニル尿素、ピリジンカルボン酸、アリールオキシアルカン酸、2−(4−アリールオキシ−フェノキシ)プロピオン酸、ビス−カルバメート;殺菌剤(fungicides):チオカルバメートなど、特にアルキレンビス(ジチオカルバメート)、ストロビルリン、ジカルボキシイミド、ベンズイミダゾール、アゾール、無機殺菌剤;殺虫剤(insecticides):ベンゾイル尿素など;ダニ駆除剤(acaricides)テトラジンなど、が挙げられる。
【0071】
農薬における本発明のポリマー界面活性剤の特定用途には、以下が含まれる:
水相及び非水相の両方を含む濃厚エマルジョンで、連続相が一般に水系のもの。
スプレータンクでさらに希釈した後に適用される、一般に不透明の白色エマルジョンである、農薬の水中油滴エマルジョン。
一般に不透明の(白色)エマルジョンであって、組成物、超低体積システム及び他の特殊用途に使用できる状態で通常市販されている、油中水滴エマルジョン。
水系液体又は油系液体中の、一般に不溶性の活性物質、特に殺菌剤(fungicides)又は除草剤であるが、非農薬活性の不溶性固体成分であってもよい、固体成分の分散体。
少なくとも1種の液体と少なくとも1種の固体分散相が連続相に含まれており、その連続相が一般に水系であるシステムのサスポエマルジョン。
組み合わせ組成物、特に式(I)の化合物が組成物中の分散剤として使用可能であって、その組成物が、組成物中で様々な物理的形状もしくは物理的表現及び/又は様々な活性を有する、農薬の組み合わせである濃厚分散物。
【0072】
農薬組成物において、本発明の界面活性剤、特に式(I)の界面活性剤は、単独で又は他のポリマー界面活性剤と組み合わせて使用できるが、望ましくは、本発明の界面活性剤、特に式(I)の界面活性剤の比率は、組成物で乳化剤及び/又は安定化剤及び/又は分散剤として使用する全ポリマー界面活性剤の少なくとも50質量%、より一般的には少なくとも75質量%である。
【0073】
本発明のこの態様における実際に重要な分野の1つは、サンフィルター及び日焼け止め、又はサンフィルター及び/もしくは日焼け止め成分を含有する他の化粧品である。サンフィルター又は日焼け止めは、紫外線照射を強力に散乱して作用すると考えられている二酸化チタン、例えば微細二酸化チタン、又は酸化亜鉛に基づくもののような物理的日焼け止めであってよく、あるいは、紫外線照射を吸収する化合物、特にUVB及びUVA日焼け止め剤のような化学的サンフィルター又は日焼け止めであってよい。サンフィルター及び/又は日焼け止めの使用量は使用する物質の特性に左右されるが、物理的日焼け止めについては、通常は全体のエマルジョンの0.1〜5質量%、より一般的には0.25〜2.5質量%であり、化学的サンフィルター及び/又は日焼け止めについては、通常は全体のエマルジョンの0.05〜3質量%、より一般的には0.1〜1.5質量%である。性質に応じて、サンフィルター及び日焼け止め成分は、ほぼ水系の不連続相もしくは油の連続相、又は両方の相に存在していてもよい。特に日焼け止めが物理的日焼け止めである場合、全体のエマルジョンは分散物とエマルジョンとの組み合わせとしてもよく、これらを一般にサスポエマルジョン(以下参照)と言う。
【0074】
サスポエマルジョンは、本発明のこの態様における別の重要な分野である。サスポエマルジョンは、日焼け止めと関連させて簡単に上で触れたが、メイクアップ化粧品に含まれることが多い顔料のような他の固体成分が含まれてもよい。顔料を使用する場合、それらは有機顔料又は無機顔料であってよく、特に有機顔料及び疎水性無機顔料については油相に存在していてもよく、又は特に親水性無機顔料については水相に存在していてもよく、両方の相に存在していてもよい。使用時の濃度は、通常はエマルジョンの0.5〜20質量%、より一般的には1〜10質量%である。
【0075】
一般的に、本発明のこの態様の化粧品組成物における、式(I)の化合物の使用量は、組成物の0.5〜7質量%、より一般的には1〜5質量%である。式(I)の化合物は、単独で、又は他のポリマー乳化剤と一緒に使用してもよいが、望ましくは、式(I)の化合物の比率は、化粧品エマルジョンを安定化するのに使用する全乳化剤の、少なくとも50質量%、より一般的には少なくとも75質量%である。
【0076】
本発明の界面活性化合物は、油田用途の乳化破壊剤としても使用できる。乳化破壊剤は通常、油の炭化水素相中に乳化している水の分離を補助するために使用される。乳化破壊剤として使用する場合、乳化破壊剤として使用する界面活性剤の量は、油の流れの質量の、通常1〜500ppm、特に5〜150ppmである。
【0077】
本発明の界面活性化合物は、金属加工用途、特に圧延油エマルジョン及び切削液中で、乳化剤及び/又は潤滑剤としても使用できる。
【0078】
本発明の化合物を、非水系流体、特に液体有機媒体中の、細かく分割された固体の分散剤として使用することもできる。そのような物質の例として、顔料、特に塗料及び溶剤インク用;分散染料などの染料;磁性金属酸化物;増量剤及びフィラー;蛍光増白剤;繊維助剤;油系及び反転エマルジョンのドリリング泥水用固体;ドライクリーニング流体中のゴミ及び固体粒子;並びに磁気記録媒体用磁性材料が挙げられる。媒体は通常炭化水素のような油、又は天然もしくは合成のエステル油、あるいはアルキド樹脂のようなコーティング組成物樹脂、あるいは多目的顔料ペースト又は顔料濃縮物の調製に通常使用する、グリコールの特殊混合物である。そのような分散物は、固体の性質及び相対密度に応じて、固体を通常5〜95質量%、より一般的には10〜60質量%、とりわけ20〜50質量%含んでいる。分散物は、分散物を製造する従来法により作ってもよい。
【実施例】
【0079】
以下の例で本発明を詳述する。全ての部及びパーセントは他の記載のない限り質量部及び質量パーセントである。
【0080】
原料
ポリオール
PC6a ソルビトール(100%活性)
PC6b ソルビトール(70質量%水溶液)
PC3 グリセロール(100%活性)
PC5 キシリトール(100%活性)
PC3/C6 グリセロール−ソルビトール混合物(モル比1:3)
二酸
DAC6 アジピン酸
DADMA アジピン酸ジメチル
DAC4 コハク酸
DAC8 コルク酸
DAC10 セバシン酸
DAC5 グルタル酸
一酸
MAC8 オクタン酸
MAC12 ラウリン酸−Prifac2922(前Uniquema)
MAcofa ココナッツ油脂肪酸(主にC12
MAC16 パルミチン酸
MAC18 ステアリン酸
MAC18i イソステアリン酸(C14〜C22脂肪酸の混合物、平均約C18
触媒
Cat1 K2CO3
Cat2 NaOH

Oil1 イソヘキサデカン油(Arlamol HD、前Uniquema)
界面活性剤
Surf1 ステアリルアルコール20エトキシレート(Brij78、前Uniquema)
【0081】
試験法
酸値(AV)をASTM D1980−87の方法により測定した。
エマルジョン安定性
水中油滴エマルジョン(1%w/w乳化剤、20%w/w油)を、脱塩水158gを400mLの背の高いビーカーに秤量し、試験する乳化剤2gを加え、完全に溶解するまで、室温で撹拌子とホットプレートスターラーを用いて混合物を撹拌して調製した。Oil1 40gを水溶液に加え、Ultra Turrax T25 混合機を用いて11000rpm(約183Hz)で2分間混合物を均質化した。得られたエマルジョンを2つの50mLのメスシリンダーに移し、片方を室温で保管し(Amb)、他方を50℃のホットボックスで保管した。保管したサンプルの平均エマルジョン液滴径(μm)を、Coulter Multisizer IIを用いて、1日後(1D)、1週間後(1W)及び1月後(1M)に測定した。
【0082】
合成例
例SE1−ポリ(ソルビトールアジペート)ラウレート
無水ソルビトール(182g、1mol)、アジピン酸(87.6g、0.6mol)及び炭酸カリウム(9.66g、ソルビトールに対して7mol%)を、プロペラ攪拌機、枝付の水冷冷却管及び回収フラスコ、真空ポンプ、窒素スパージャー及び温度計(熱電対)が取り付けてあり、恒温マントルにのせた250mLの丸底フラスコに入れた。混合物を撹拌(200rpm)しながら加熱して、自由水を(大部分は130℃未満で)留去し、真空(100mbar)にして、温度を170℃まで上げ、混合物の酸値が5mgKOH・g-1未満になるまで保持した(通常3〜4時間)。その後真空を解除して、溶融したラウリン酸(30.1g、0.15mol)を約90℃で添加した。再度真空(500mbar)にして、酸値が5mgKOH・g-1未満になるまで(通常さらに約3〜4時間後)窒素スパージャーを用いて混合物を撹拌(300rpm)した。その後真空を解除して、生成物を取り出した。
【0083】
生成物の構造は、MALDI質量分析法及びゲル浸透クロマトグラフィで確認した。
【0084】
オリゴポリオールエステルのさらなるエステル化生成物を、出発原料、原料比及び条件を変更したことを除き、例SE1に記載した一般的な方法に従って作った。下の表1a(SE1を含んで完成している)では、使用した二酸及び他の原料、並びにオリゴマーエステル化の反応条件が記載され、表1bでは、作った生成物の特性に関するいくつかの情報と併せて、一酸及び第2段階のエステル化の反応条件が記載されている。これらの表におけるモルパーセントは、使用したポリオールに対するものである。
【0085】
これらの化合物を作るにあたり、例SE1に記載した合成経路の変形も使用した。詳細には、無水ソルビトールをSE1で使用したソルビトール水溶液と置き換えてもよく、コハク酸残基を含有する原料については、例えば以下の手順を使用して、コハク酸の代わりに無水コハク酸を用いてもよい。
【0086】
無水ソルビトール200g(1.10mol)、無水コハク酸65.9g(0.66mol)及び炭酸カリウム11.5g(ソルビトールに対して7.5mol%)を、SE1と同じようにした500mL丸底フラスコに入れた。混合物を撹拌(200rpm)しながら140℃まで加熱した。30分後この温度で、(無水物がなくなったことを確認するために)サンプルのFT−IR分析を行った。温度を165℃まで上げ、真空(100mbar)にした。反応混合物の酸値が5mgKOH・g-1未満になるまで、反応をこの条件下で維持した(通常3〜4時間)。真空を解除し、生成物を取り出した。
【0087】
これらの方法を用いた生成物は、SE1の方法を用いて作った相当する化合物と非常に類似していた。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
適用例
適用例AE1:試験用水中油滴エマルジョンを、以下の一般的なエマルジョン組成を用いて構成した。
原料 量(質量%)
界面活性剤 1
Oil1 20
塩 0又は3
水 合計が100となる量
【0091】
これらのエマルジョンの安定性を上述のように試験した結果を下の表2に記載する。
【0092】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸とポリオールとのオリゴエステルの、脂肪族モノ−又はジ−エステルであり、ポリエステル化の後に少なくとも1個の自由なヒドロキシル基を有している、界面活性化合物。
【請求項2】
式(I)の、請求項1に記載の化合物。
1−[OR2O−C(O)−R3−(O)C]m−R4 (I)
(上式中、
1はH、R5(O)C−基、又はR6O−[C(O)−R3−(O)C]−基;
2はそれぞれ、置換基のないヒドロキシル基を少なくとも1個含む、C3〜C10ヒドロカルビル基;
3はそれぞれ、C1〜C20、特にC2〜C20のヒドロカルビレン基;
4は−OH、−OM(Mは塩を生成する金属、アミン、又はアンモニウム基)、−OR6基、又は−OR2O−R7基;
5はC7〜C21脂肪族ヒドロカルビル基;
6はそれぞれ、C8〜C22脂肪族ヒドロカルビル基;
7はH、又は−C(O)R5基(R5は上記定義した通り);及び
mは1〜20であり、
1及びR4のうち少なくとも一方が、C7〜C21ヒドロカルビル基を含有する基であるか、あるいはC7〜C21ヒドロカルビル基を含有する基を含んでいることを条件とする。)
【請求項3】
a)式(Ia)の、ビス−ヒドロキシル末端化オリゴエステル中間体の脂肪酸モノ−及びビス−エステル:
1a−[OR2O−C(O)−R3−(O)C]m−OR2O−R4a (Ia)
(上式中、
2のそれぞれ、R3のそれぞれ、及びmは、式(I)について請求項2で定義した通り;
1aはR5(O)C−基;及び
4aは−H、又は−C(O)R5基(R5はそれぞれ、式(I)について請求項2で定義した通り)である。);
b)式(Ib)の、ヒドロキシルカルボキシル末端化オリゴエステル中間体と脂肪酸又は脂肪アルコールとのモノ−エステル、並びに脂肪酸及び脂肪アルコールとのビス−エステル:
1b−[OR2O−C(O)−R3−(O)C]m−R4b (Ib)
(上式中、
2のそれぞれ、R3のそれぞれ、及びmは、式(I)について請求項2で定義した通り;
1bはH又はR5(O)C−基;
4bは−OH、−OM(Mは塩を生成する金属、又はアミンもしくはアンモニウム基)又は−OR6基;
5及びR6のそれぞれは、式(I)について請求項2で定義した通りであって、R1b及びR4bのうち少なくとも一方がC8〜C22基であるか、C8〜C22基を含むことを条件とする。);あるいは
c)式(Ic)の、ビス−カルボキシル末端化オリゴエステル中間体と脂肪アルコールとのモノ−又はビス−エステル:
1c−[OR2O−C(O)−R3−(O)C]m−OR4c (Ic)
(上式中、
2のそれぞれ、R3のそれぞれ、及びmは、式(I)について請求項2で定義した通り;
1cはR6O−C(O)−R3−(O)C−基;及び
4CはH、塩を生成する金属、アミンもしくはアンモニウム基、又は−OR6基;
6はそれぞれ、式(I)について請求項2で定義した通りである。)
である、請求項2に記載の化合物。
【請求項3】
前記R2基が、1〜6個の自由なヒドロキシル基を含有する、請求項2又は3のいずれかに記載の化合物。
【請求項4】
前記R2基が、式:−(CH2p1(CHOH)p2(CH2p3−(式中、p1及びp3はそれぞれ1〜3、p2は1〜6)の基である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
p1及びp3がそれぞれ1であり、p2が4である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記R3基が、−(CH2n−基(nは2〜10)である、請求項2〜5のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項7】
nが4である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
前記R5基が、C7〜C17のアルキル、アルケニル又はアルカジエニル基であり、前記R6基が、C8〜C18のアルキル、アルケニル又はアルカジエニル基である、請求項2〜7のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項9】
前記指数mが3〜20である、請求項2〜8のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項10】
mが3.5〜10、特に4〜7である、請求項6に記載の化合物。
【請求項11】
前駆体オリゴエステル(もしくは反応性誘導体)を、脂肪族モノカルボン酸(もしくは反応性誘導体)又は脂肪アルコール(もしくは反応性誘導体)のいずれか一方又は両方である反応剤とエステル化条件下で反応させて、前記オリゴエステル中間体の脂肪族エステル界面活性剤を生成することを含む、請求項1〜10のいずれか1つに記載の化合物の製造方法。
【請求項12】
前駆体オリゴエステル(又は反応性誘導体)を、C8〜C22モノカルボン酸(IV):R5COOHもしくは反応性誘導体、又はC8〜C22アルコール(V):R6OH(もしくは反応性誘導体)のいずれか一方又は両方である反応剤とエステル化条件下で反応させて、式(I)の脂肪族エステル界面活性剤を生成することを含む(上式中、R5及びR6は請求項2〜10のいずれか1つに定義した通り)、請求項2〜10のいずれか1つに記載の式(I)の化合物を製造する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
乳化剤として、請求項1〜10のいずれか1つに記載の化合物を含む、エマルジョン。
【請求項14】
分散した油相が皮膚軟化オイル又はワックスである、パーソナルケア用水中油滴エマルジョン状態の、請求項13に記載のエマルジョン。
【請求項15】
クリーム又はミルクの状態であって、乳化剤及び/又はエマルジョン安定化剤をエマルジョンに対して3〜5質量%含んでいる、請求項14に記載のエマルジョン。
【請求項16】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の化合物を用いて水中に乳化した、1種以上のエチレン性不飽和モノマーのエマルジョンにフリーラジカル重合を行う、乳化重合方法。
【請求項17】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の化合物を固体の0.2〜10質量%含んでいる、水系媒体の固体分散物。
【請求項18】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の化合物を含む、洗濯用洗剤組成物。
【請求項19】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の化合物を、アジュバント、分散剤及び/又は乳化剤として含む、農薬組成物。
【請求項20】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の化合物を、フォーム剤としてドリリング流体の1〜3質量%含む、フォームドリリング流体。
【請求項21】
ハイドレートを生成する含水炭化水素の流れに、請求項1〜10のいずれか1つに記載の化合物をガスハイドレート阻害剤として含ませることを含む、ガスハイドレート生成の阻害方法。
【請求項22】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の化合物を、潤滑剤としてドリリング流体の0.05〜10質量%含む、水系ドリリング流体。
【請求項23】
アクリルアミド、及び共重合の場合はコモノマーを水中に溶解し、請求項1〜10のいずれか1つに記載の化合物を乳化剤として、この溶液を油中に乳化し、重合を開始する、アクリルアミドを重合又は共重合する方法。
【請求項24】
使用する乳化剤の量が、重合エマルジョンの2.5〜7質量%である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の化合物を、分散物の0.5〜7.5質量%含む、非水系媒体の固体分散物。
【請求項26】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の化合物を、乳化剤として全体のエマルジョンの0.5〜5質量%含有する、酸化剤塩の水溶液を液体燃料中に乳化して含んでいる、エマルジョン爆薬。
【請求項27】
水系液体又は親水性相を分散した皮膚軟化オイルの連続相を含み、請求項1〜10のいずれか1つに記載の化合物を乳化剤及び/又は分散剤として含む、パーソナルケア用エマルジョン又は分散物。
【請求項28】
1種以上の日焼け止め成分を含む、請求項27に記載の分散物。
【請求項29】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の化合物を、乳化破壊剤として油の流れの質量の1〜500ppmをその油の流れに加えることを含む、油中に乳化している水を含有する流れの乳化破壊方法。
【請求項30】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の化合物を、乳化剤及び/又は潤滑剤として含む、金属加工用流体。
【請求項31】
ポリオール(又は反応性誘導体)をジカルボン酸(又は反応性誘導体)とエステル化条件下で反応させて、前記生成物のオリゴエステルを生成することを含む、オリゴエステルの製造方法。

【公表番号】特表2008−516940(P2008−516940A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536267(P2007−536267)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004014
【国際公開番号】WO2006/043048
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(506352278)クローダ インターナショナル パブリック リミティド カンパニー (24)
【Fターム(参考)】