説明

留め具

【課題】板部材を安定した状態で係止することができる留め具を提供する。
【解決手段】支柱部20と、撓みしろ37を空けて前記支柱部20を囲う複数の弾性脚部30とを、頭部40から垂下させ、弾性脚部30に、薄いドアパネル1に係止する薄板用係止肩部35を頭部40に近い位置に、厚いドアパネル3に係止する厚板用係止肩部34を頭部40から遠い位置に、それぞれ形成し、撓みしろ37から幅方向に連なるスリット4を基部31に形成し、薄板用係止肩部35を、スリット4を挟んで頭部40に対峙させて留め具10を構成し、この留め具10を用いて、弾性脚部30に貫通させた薄いドアパネル1または厚いドアパネル3を、弾性脚部30と頭部40とで係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品類を自動車に取り付ける留め具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の本体内側に取り付ける、例えば、トリムボード、ガーニッシュ、サイドパネルなどの部品類を、自動車の本体またはパネルに取り付ける際に用いられる留め具として、下記特許文献1に記載の留め具が提案されている。
【0003】
この留め具は、頭部と、この頭部の下側に垂設された弾性片部の、上下方向の途中の外側面に膨出部を設けた複数の弾性係止片を有する係止脚とから構成され、隣り合う膨出部の高さが異なると共に、対角位置の膨出部の高さが同じとなるように形成されている。
【0004】
この留め具を用いて、例えば、トリムボードを自動車のパネルへ取り付けるには、係止脚をパネルの取付孔に挿入し、弾性係止片を縮径させながら頭部をパネルの表面に圧接するまで圧入する。留め具は、頭部と膨出部とがパネルに係止されて取り付けられる。そして、頭部にトリムボードが取り付けられる。
【0005】
この留め具は、二種類の高さの膨出部が形成されているため、板厚が異なるパネルへの取り付けを許容できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−100901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の留め具は、隣り合う膨出部の高さが異なると共に、対角位置の膨出部の高さが同じとなるように形成されているため、一対の対角位置の膨出部でパネルを係止した状態において、他の対角位置の膨出部が機能せず、パネルの支持状態が不安定となる。
【0008】
本発明は、上記の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、板部材を安定した状態で係止することができる留め具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、支柱部と、撓みしろを空けて前記支柱部を囲う複数の弾性脚部とが、頭部に連接され、垂下されてなり、前記弾性脚部に貫通させた板部材を、前記弾性脚部と前記頭部とで係止する留め具において、前記撓みしろが、前記弾性脚部のうち前記頭部が連接された基部から軸方向に延ばして形成され、薄い前記板部材である薄板部材を係止する薄板用係止肩部が前記基部に近い位置に、厚い前記板部材である厚板部材を係止する厚板用係止肩部が前記基部から遠い位置に、それぞれ形成され、前記撓みしろから幅方向に連なるスリットが前記基部に形成され、前記薄板用係止肩部が、前記スリットを挟んで前記頭部と対峙していることを特徴としている。
【0010】
また、前記弾性脚部には、径方向に隆起した挿入抵抗部が形成され、この挿入抵抗部が、隣り合う前記弾性脚部において軸方向に異なる位置に形成されたことを特徴としている。
【0011】
また、前記薄板用係止肩部が、前記基部の軸から幅方向に離れて形成されたことを特徴としている。
【0012】
また、前記薄板用係止肩部が、径方向に隆起したことを特徴としている。
【0013】
また、前記撓みしろが前記基部側で狭く、前記弾性脚部の先端側で広く形成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る留め具では、撓みしろは、弾性脚部のうち頭部が連接された基部から軸方向に延ばして形成され、薄い板部材である薄板部材を係止する薄板用係止肩部が基部に近い位置に、厚い板部材である厚板部材を係止する厚板用係止肩部が基部から遠い位置に、それぞれ形成された構成とした。この構成により、留め具は、厚さが異なる板部材を、複数の弾性脚部で同時に係止することができる。したがって、係りしろが増え、厚さが異なる板部材を安定して係止することができる。
【0015】
また、弾性脚部は、撓みしろから幅方向に連なるスリットが基部に形成され、薄板用係止肩部が、スリットを挟んで頭部と対峙している。この構成により、薄板用係止肩部が、スリットにより頭部から離されて自由端となるため、基部を支点とするモーメントが自由端に作用して、弾性脚部が撓みやすくなる。したがって、留め具の挿入力を低減させることができる。
【0016】
特に、弾性脚部には、径方向に隆起した挿入抵抗部が形成され、この挿入抵抗部が、隣り合う弾性脚部において軸方向に異なる位置に形成されたことが好ましい。この構成により、留め具の挿入時の抵抗が二段階に分散される。したがって、留め具の挿入力を低減させることができる。
【0017】
特に、薄板用係止肩部が、基部の軸から幅方向に離れて形成されたことが好ましい。この構成により、支点である基部から作用点である自由端までの腕の長さが長くなり、自由端に作用するモーメントが増して弾性脚部が撓みやすくなる。したがって、留め具の挿入力をさらに低減させることができる。
【0018】
特に、薄板用係止肩部が径方向に隆起していることが好ましい。この構成により、留め具に係止させた板部材への係りを確保することができる。したがって、留め具は、板部材を保持する保持力を安定させることができる。
【0019】
特に、撓みしろが薄板用係止肩部側で狭く、弾性脚部の先端側で広く形成されたことが好ましい。この構成により、弾性脚部は撓みしろが狭い分、弾性脚部は薄板用係止肩部側の幅が広くなり、軸とする基部から薄板用係止肩部までの腕の長さが長くなって自由端に作用するモーメントが増えて撓みやすくなる。また、弾性脚部は撓みしろが広い分、先端側の幅が狭くなり、撓みやすくなる。したがって、留め具の挿入力を更に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る留め具の実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る留め具の実施形態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)の一部A−A断面側面図、(c)は(a)のB−B断面図である。
【図3】本発明に係る留め具の使用状態を示す正面概略図であり、(a)は挿入抵抗部の作用を説明する概略説明図、(b)は(a)と異なる位置の挿入抵抗部の作用を説明する概略説明図である。
【図4】本発明に係る留め具の使用状態を示す図であり、(a)は薄板部材に取り付けた状態を示す側面図、(b)は(a)のC−C断面図である。
【図5】本発明に係る留め具の使用状態を示す図であり、(a)は厚板部材に取り付けた状態を示す側面図、(b)は(a)のD−D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1において、本実施形態に係る留め具10は、支柱部20と、撓みしろ37を空けてこの支柱部20の軸線を囲う複数の弾性脚部30とが、垂下するように頭部40に連接されて形成されている。留め具10には、例えば、ポリアセタール(POM)などの素材が用いられる。
【0023】
頭部40は、略円柱状の頸部41(図2参照)と、この頸部41を中心軸に、小径鍔42と、中径鍔43と、大径鍔44とから同一軸上に形成されて構成されている。小径鍔42、中径鍔43、大径鍔44は、それぞれ頸部41から径方向に延設された略円環状である。これらは、頸部41の一端側から支柱部20側に向けて、小径鍔42、中径鍔43、大径鍔44の順に形成され、徐々に直径が大きくなっている。
【0024】
図2(b)において、頸部41は、一端側が軸方向に陥没している。小径鍔42は、頸部41の一端側の縁から径方向に延設されている。中径鍔43は、小径鍔42と軸方向に間隔を空けて、頸部41から径方向に延びて縦断面略へ字状に形成されている。すなわち、中径鍔43は一旦、頸部41から小径鍔42に近づく方向に傾斜したのち、小径鍔42から離れる方向に傾斜している。大径鍔44は、頸部41と支柱部20との連接箇所から、頸部41から径方向に延設され、中径鍔43から離れる方向に傾斜している。
【0025】
図1において、支柱部20は、頭部40から同軸上に突出して形成されている。また、支柱部20は、横断面が、長手の板状片21が直交して一体的に形成された略十字型であり(図2(c)参照)、その先端部22が軸方向に窄まって形成されている。板状片21同士の間には、撓みしろ37を介して弾性脚部30がそれぞれ備えられている。
【0026】
弾性脚部30の全体の形状は、略ロケット形状であり、支柱部20を中心軸として、その先端部22から徐々に拡径されて頭部40に連接されている。弾性脚部30は、先端部22と頭部40とによって支持され、支柱部20の先端部22から頭部40に至るまで、軸方向に延びている。弾性脚部30は、先端部22に連接される側が先端基部32であり、頭部40に連接される側が基部31である。弾性脚部30は、横断面が、支柱部20を中心軸とした四つの扇形片から構成され、頭部40と同心円となるように形成されている(図2(c)参照)。
【0027】
弾性脚部30の表面には、軸方向において先端基部32から基部31にかけて起伏が形成されている。この起伏は、留め具10を板部材に挿入する際の抵抗となる挿入抵抗部36と、板部材を係止する板部材係止部33とから構成されている。さらに、挿入抵抗部36は、挿入する際の抵抗を二段階に分散させる第一挿入抵抗部36aと第二挿入抵抗部36bとから構成され、板部材係止部33は、厚い板部材を係止する厚板用係止肩部34と、薄い板部材を係止する薄板用係止肩部35とから構成されている。
【0028】
ここで、第一挿入抵抗部36aおよび第二挿入抵抗部36b、厚板用係止肩部34および薄板用係止肩部35の起伏の形状を理解しやすくするために、正面側に形成された起伏を側面から視した図2(b)に基づいて、側面側に形成された起伏を正面から視した図2(a)に基づいてそれぞれ説明する。
【0029】
図2(a)において、挿入抵抗部36は、弾性脚部30の側面側が、板状片21の端を基準として径方向に隆起して形成されている。ここで、挿入抵抗部36は、隣り合う弾性脚部30での軸方向における位置が異なっている。すなわち、隣り合う弾性脚部30をそれぞれ第一弾性脚部30a、第二弾性脚部30bとすれば、第一弾性脚部30aには先端基部32から軸方向の略半分の位置に第一挿入抵抗部36aが、第二弾性脚部30bには第一挿入部36aから軸方向にさらに頭部40寄りの位置に第二挿入抵抗部36bがそれぞれ形成されている。
【0030】
図2(b)において、厚板用係止肩部34は、弾性脚部30の正面側が、板状片21を基準に径方向に隆起した第一隆起部39によって基部31側に形成された斜面である。同様に、薄板用係止肩部35は、弾性脚部30の正面側が、板状片21を基準に径方向に隆起した第二隆起部38によって基部31側に形成された斜面である。これらは、第二隆起部38が第一隆起部39よりも径方向に高く隆起されている。
【0031】
図1、図2(a)において、薄板用係止肩部35と厚板用係止肩部34とは、軸方向において異なる位置に形成されている。すなわち、軸方向において、薄板用係止肩部35が頭部40を基準として近い位置に、厚板用係止肩部34が遠い位置にそれぞれ形成されている。
【0032】
厚板用係止肩部34は、弾性脚部30の幅方向において湾曲して弧状に形成され、第二隆起部38に連なっている。また、厚板用係止肩部34は、軸方向において基部31に連なっている。第二隆起部38は、径方向に切り立って隆起し、頭部40に対峙して傾斜する薄板用係止肩部35が形成している。
【0033】
薄板用係止肩部35は、後述するスリット4が基部31に形成されたことで、頭部40と間隔を空けて対峙している。第二隆起部38(薄板用係止肩部35)は、スリット4と、このスリット4が連なった撓みしろ37とから板状片21および頭部40との間に間隔が空けられたことで、基部31を軸に支柱部20側に撓む自由端となっている。
【0034】
図1において、撓みしろ37は、支柱部20と弾性脚部30との間に間隔を空けるように設けられ、基部31側から先端基部32に至るまで軸方向に延びている。撓みしろ37は、軸方向に長手の孔が、弾性脚部30を正面側から支柱部20の中心に向けて貫通すると共に、軸方向に長手の溝が、側面側から支柱部20の中心に向けて形成され、長手の孔と長手の溝とが連通している。撓みしろ37は弾性脚部30の正面側において、先端基部32側で広く、薄板用係止肩部35側で狭く形成されている。また、側面側において、弾性脚部30と板状片21とが平行になるように形成されている。
【0035】
スリット4は、頭部40と薄板用係止肩部35との間に間隔を空けるように基部31に形成され、撓みしろ37から幅方向に連なっている。
【0036】
基部31は、スリット4が形成されたことで、弾性脚部30の、幅方向の端寄りに形成されている。これにより、基部31は、第二隆起部38(薄板用係止肩部35)から幅方向に離れて形成されている。
【0037】
以上のようにして、本実施形態は構成されている。次に、本実施形態を用いて、トリムボードを、板部材である薄板部材としての自動車のドアパネル1に取り付ける方法を説明するとともに、本実施形態の作用について説明する。なお、トリムボードは図示省略する。
【0038】
トリムボードには、通常、略ひょうたん型の孔が形成されている。孔は、頭部40の小径鍔42と略同径の挿通孔と、頸部41と略同径の係止孔とが連なって構成されている。
【0039】
留め具10を、小径鍔42側から挿通孔に挿通し、頸部41を挿通孔内に入れる。留め具10を移動して、頸部41を挿通孔から係止孔側にスライドさせ、係止孔よりも形が大きく形成された小径鍔42によって、留め具10の抜去方向を規制する。このようにして、頸部41を係止孔に係止させて、留め具10をトリムボードに取り付ける。
【0040】
この状態で、留め具10をドアパネル1に取り付ける。留め具10は、弾性脚部30がドアパネル1に貫通することで、このドアパネル1を弾性脚部30と頭部40とで挟んで係止する。以下、本実施形態の作用を理解しやすくするため、正面から視した図3で挿入抵抗部36の状態を、側面から視した図4で板部材係止部33の状態をそれぞれ説明する。
【0041】
図3(a)において、留め具10を、先端部20側からドアパネル1に形成された、径が頭部40より小さく板状片21の幅よりもわずかに大きな取付孔2に挿入する。例えば、取付孔2の径が8.5mmであれば、板状片21の幅は8.3mm程度である。留め具10を取付孔2に略半分程度まで挿入すると、留め具10は、先端部22から徐々に拡径された弾性脚部30により取付孔2に詰まる。すなわち、板状片21よりも径方向に隆起した第一挿入抵抗部36aが取付孔2の縁と接触し、留め具10の挿入時の抵抗となる。一方、第一弾性脚部30aと隣り合う第二弾性脚部30bは、第二挿入抵抗部36bの位置が頭部40寄りに形成されているため、この時点では取付孔2の縁と接触せず、留め具10の挿入時の抵抗とはならない。
【0042】
支柱部20と径方向に撓みしろ37を空けつつ軸方向に伸びた弾性脚部30(30a)は、取付孔2の縁に規制されることで、先端基部32および基部31を基点として中心軸である支柱部20に向かって内側に撓み、縮径される。弾性脚部30(30a)を取付孔2と略同径となるまで縮径させつつ、留め具10をさらに挿入する。
【0043】
図3(b)において、留め具10は、頭部40に近づくにつれて拡径された弾性脚部30により再び取付孔2に詰まる。すなわち、板状片21よりも径方向に隆起した第二挿入抵抗部36bが取付孔2の縁と接触し、留め具10の挿入時の抵抗となる。弾性脚部30(30b)は、取付孔2の縁に規制されることで、先端基部32および基部31を基点として中心軸である支柱部20に向かって内側に撓み、縮径される。弾性脚部30(30b)を取付孔2と略同径となるまで縮径させつつ、留め具10をさらに挿入する。
【0044】
図4(a)、(b)において、弾性脚部30は、板状片21より径方向に隆起した第一隆起部39および第二隆起部38が取付孔2に詰まる。特に、第一隆起部39よりも径方向に高く隆起した第二隆起部38が取付孔2に接触するが、弾性脚部30は取付孔2の縁に規制されることで、先端基部32および基部31を基点として中心軸である支柱部20に向かって内側に撓む。
【0045】
具体的には、基部31を軸として、幅方向に離れると共に自由端である第二隆起部38(薄板用係止肩部35)は、基部31を基点として弧状軌道を描いて支柱部20側へ撓み、板状片21に近づくと共に、取付孔2の内側に収まって元の径に戻ろうとする復元力が規制される(図5(b)参照)。留め具10をさらに挿入すると、第二隆起部38が取付孔2を通過して規制が解除され、弾性脚部30は復元力によって元の径に戻る。同時に、ドアパネル1の表面に大径鍔44の先端が接触し、大径鍔44から近い位置に形成された薄板用係止肩部35がドアパネル1の裏面に接触する。大径鍔44は水平に近づくように撓って傾斜角が広がる。特に、第二隆起部38が径方向に隆起している分、弾性脚部30の径が取付孔2の径よりも大きくなり、留め具10が深くドアパネル1に係止する。
【0046】
留め具10は、縮径した弾性脚部30が復元力により元の径に戻り、大径鍔44から近い位置に形成された薄板用係止肩部35がドアパネル1の裏面に接触し、水平に近づくように撓った大径鍔44が元の傾斜角に戻ろうとする。このように、径方向と軸方向とから弾性による反発力を生じさせ、留め具10を取付孔2に係止してドアパネル1に取り付ける。
【0047】
次に、留め具10を厚板部材としてのドアパネル3に取り付けた状態を説明する。なお、取付方法、作用については薄板部材としてのドアパネル1の場合と同じであるため説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0048】
図5(a)、(b)において、ドアパネル3の取付孔2に挿入した留め具10が、取付孔2に係止してドアパネル3に取り付けられている。基部31を軸として、幅方向に離れると共に自由端である第二隆起部38(薄板用係止肩部35)は、基部31を基点として弧状軌道を描いて支柱部20側へ撓み、板状片21に近づくと共に、取付孔2に収まって元の径に戻ろうとする復元力が規制されている。特に、第二隆起部38が径方向に隆起した分、大きく半径が形成された弾性脚部30は大きく撓む。また、留め具10は、厚板用係止肩部34がドアパネル3の裏面に接触し、ドアパネル3の表面に大径鍔44の先端が接触して大径鍔44が水平に近づくように撓って傾斜角が広がっている。
【0049】
すなわち、留め具10は、縮径した弾性部材30が復元力により元の径に戻ろうとして、第二隆起部38が取付孔2の内側を押え付け、大径鍔44から遠い位置に形成された厚板用係止肩部34がドアパネル3の裏面から取付孔2の縁に接触し、大径鍔44がドアパネル3の表面を押え付ける。このように、径方向と軸方向とから弾性による反発力を生じさせ、留め具10を取付孔2に係止してドアパネル3に取り付ける。
【0050】
上記したように、本実施形態によれば、留め具10は、軸方向において、ドアパネル1に係止する薄板用係止肩部35が大径鍔44に近い位置に、ドアパネル3に係止する厚板用係止肩部34が大径鍔44から遠い位置に、それぞれ形成されている。この構成により、留め具10は、厚さが異なるドアパネル1又はドアパネル3のいずれかを、四つすべての弾性脚部30で同時に係止することができる。具体的に、留め具10が許容できる板部材の厚さは、薄板用係止肩部35では0.65mm〜1.5mmであり、厚板用係止肩部34では1.4mm〜2.3mmである。すなわち、留め具10は、厚さが0.65mm〜2.3mmまでの板部材を許容することができる。したがって、係りしろが増え、厚さが異なるドアパネルを安定して係止することができる。
【0051】
また、弾性脚部30は、撓みしろ37が基部31から軸方向に延ばして形成され、基部31に撓みしろ37から幅方向に連なるスリット4が形成され、薄板用係止肩部35が、スリット4を挟んで頭部30と対峙している。この構成により、薄板用係止肩部35が、スリット4により頭部30から離されて自由端となるため、基部31を支点とするモーメントが第二隆起部38(薄板用係止肩部35)に作用して、弾性脚部30が撓みやすくなる。したがって、留め具10の挿入力を低減させることができる。
【0052】
また、弾性脚部20には、径方向に隆起した挿入抵抗部36が形成され、第一挿入抵抗部36aおよび第二挿入抵抗部36bが、隣り合う弾性脚部30において軸方向に異なる位置に形成されている。この構成により、挿入時に挿入抵抗部36が取付孔2の縁と接触し、留め具10の挿入時の抵抗が、第一挿入抵抗部36aと第二挿入抵抗部36bとで二段階に分散される。したがって、留め具10の挿入力を低減させることができる。
【0053】
また、第二隆起部38(薄板用係止肩部35)が、基部31から周方向に離れて形成されている。この構成により、支点である基部31から作用点である第二隆起部38(薄板用係止肩部35)までの腕の長さが長くなり、第二隆起部38(薄板用係止肩部35)に作用するモーメントが増して弾性脚部30が撓みやすくなる。したがって、留め具10の挿入力をさらに低減させることができる。
【0054】
また、第二隆起部38(薄板用係止肩部35)が径方向に隆起している。この構成により、留め具10は、第二隆起部38が隆起した分、弾性脚部30の径が取付孔2の径よりも大きくなって係りしろが大きくなる。留め具10は、係りしろが大きいため、薄板用係止肩部35がドアパネル1に係止する際、ドアパネル1への深い係りを確保することができ、抜去方向が規制される。また、厚板用係止肩部34をドアパネル3に係止する際、第二隆起部38が取付孔2の内側と接触することで、隆起した分、半径が大きく形成された弾性脚部30は大きく撓んで反発力が高まる。したがって、留め具10は、ドアパネルの保持力を安定させることができる。
【0055】
また、留め具10は、撓みしろ37が正面側において、薄板用係止肩部35側で狭く、弾性脚部30の先端基部32で広く形成されている。この構成により、薄板用係止肩部35側では、撓みしろ37が狭い分、弾性脚部30の幅が広くなり、軸とする基部31から薄板用係止肩部35までの腕の長さが長くなって第二隆起部38(薄板用係止肩部35)に作用するモーメントが増して撓みやすくなる。また、先端基部32側では、撓みしろが広い分、弾性脚部30の幅が狭くなり、撓みやすくなる。したがって、留め具10の挿入力を更に低減させることができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1、3 ドアパネル
2 取付孔
4 スリット
10 留め具
20 支柱部
21 板状片
22 先端部
30(a、b) 弾性脚部
31 基部
32 先端基部
33 板部材係止部
34 厚板用係止肩部
35 薄板用係止肩部
36(a、b) 挿入抵抗部
37 撓みしろ
38 第二隆起部
39 第一隆起部
40 頭部
41 頸部
42 小径鍔
43 中径鍔
44 大径鍔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱部と、撓みしろを空けて前記支柱部を囲う複数の弾性脚部とが、頭部に連接され、垂下されてなり、前記弾性脚部に貫通させた板部材を、前記弾性脚部と前記頭部とで係止する留め具において、
前記撓みしろが、前記弾性脚部のうち前記頭部が連接された基部から軸方向に延ばして形成され、
薄い前記板部材である薄板部材を係止する薄板用係止肩部が前記基部に近い位置に、厚い前記板部材である厚板部材を係止する厚板用係止肩部が前記基部から遠い位置に、それぞれ形成され、
前記撓みしろから幅方向に連なるスリットが前記基部に形成され、前記薄板用係止肩部が、前記スリットを挟んで前記頭部と対峙している、
ことを特徴とする留め具。
【請求項2】
前記弾性脚部には、径方向に隆起した挿入抵抗部が形成され、この挿入抵抗部が、隣り合う前記弾性脚部において軸方向に異なる位置に形成された、
ことを特徴とする請求項1に記載の留め具。
【請求項3】
前記薄板用係止肩部が、前記基部の軸から幅方向に離れて形成された、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の留め具。
【請求項4】
前記薄板用係止肩部が、径方向に隆起した、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の留め具。
【請求項5】
前記撓みしろが前記薄板用係止肩部側で狭く、前記弾性脚部の先端側で広く形成された、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の留め具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−96519(P2013−96519A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240743(P2011−240743)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】