説明

留具位置確認方法および留具位置確認装置

【課題】 金属製の間柱に打ち込まれたビス等の金属製留具の位置を間仕切壁の施工後にあって上張材を剥がすことなく確認できる技術を提供することにある。
【解決手段】 構造物中に鉛直方向に埋め込まれている間柱の位置を探知センサーにて確認する間柱位置確認工程と、構造物中の金属に反応する測定センサーを壁表面から一定の間隔を維持しながら移動(スライド)させて、測定センサーの移動した距離及び測定センサーの反応した数値を測定データとして取得するデータ取得工程と、取得された測定データの測定センサーの移動距離と測定センサーの反応数値を関連させて図表化(グラフ化)するデータ変換工程と、図表化(グラフ化)された測定結果を出力する出力工程とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、間仕切壁や防火区画壁などの壁を構成する間柱にケイ酸カルシウム板などの下張材を取り付けるために用いたビス等の金属製留具の位置を壁施工後に確認する留具位置確認技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より一般的に施工されている耐火間仕切壁の内部構造を図6に示す。耐火間仕切壁構造10は、水平方向に設けられた略コ字形をした上部ランナー11及び下部ランナー12をつなぐように垂直方向等間隔に取り付けられた間柱(金属製スタッド)20,20,…と、その間柱20に向かい合うようにして取り付けられる一対の間仕切壁30とを備えている。この間仕切壁30は、下張材31と上張材32からなる。下張材31が、ビス・タッカー等の打込型留具37を間柱20に打ち込むとともに、上張材32が、工業用ステープルや接着剤(図示省略)を用いて下張材31に接着することで、間仕切壁30は間柱20に取付固定されている。
【0003】
ここで、下張材31を間柱20に取り付けているビス等37は、耐火性能認定仕様によって一定の間隔内で留め付けることが定められている。この場合、間仕切壁30の施工前であれば上張材32が無いので、簡単にビス等37の位置を確認できるが、間仕切壁30の施工後にあっては上張材32に隠れて肉眼上ビス37等の位置を確認することはできない。
【0004】
そこで、間仕切壁30の施工後に上張材32を剥がすことなくビス等37の位置を確認する手段として内部に埋設された埋設物を外側から探知するセンサーを利用することが考えられる(特許文献1等)。また、こうしたセンサーによる内部探知の精度を上げて内部欠陥等を測定できる技術も開示されている(特許文献2等)
【0005】
【特許文献1】特開昭60−233584号公報
【特許文献2】特開平11−337534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
確かに、間仕切壁30の施工後にあっては上張材32に隠れたビス等37の位置を確認するためには測定センサーを利用することが必要となる。しかしながら、金属製のビス等37は同じ金属製の間柱20に打ち込まれているため、金属製の躯体にある金属製の部材を検出する作業となり、一般的なセンサーによる測定作業では確実に検出できるものではない。
【0007】
そこで、本願発明者らは、このような金属製の間柱に打ち込まれたビス等の金属製留具の位置を間仕切壁30の施工後にあって上張材を剥がすことなく確認できる技術の提供を目的として鋭意試験・研究の結果、本願発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の発明は、壁(例:間仕切壁・防火区画壁)を構成する間柱(=金属製スタッド)に下張材(例:ケイカル板)を取り付けるために用いた金属製留具(例:ビス)の位置を壁施工後に確認する留具位置確認方法であって、構造物中の金属に反応する測定センサーを壁表面から一定の間隔を維持しながら移動(スライド)させて、測定センサーの移動した距離及び測定センサーの反応した数値を測定データとして取得するデータ取得工程と、取得された測定データの測定センサーの移動距離と測定センサーの反応数値を関連させて図表化(グラフ化)するデータ変換工程と、図表化(グラフ化)された測定結果を出力する出力工程とを備えたことを特徴とするものである。
第2の発明は、データ取得工程の前に、構造物中に鉛直方向に埋め込まれている間柱の位置を探知センサーにて確認する間柱位置確認工程を備えたことを特徴とする同留具位置確認方法である。
第3の発明は、壁(例:間仕切壁・防火区画壁)を構成する間柱(=金属製スタッド)に下張材(例:ケイカル板)を取り付けるために用いた金属製留具(例:ビス)の位置を壁施工後に確認するための留具位置確認装置であって、構造物中の金属に反応してそれを数値として測定できる測定センサー部と、測定センサー部を壁表面から一定の間隔を維持しながら移動(スライド)させる軌道支持部と、測定センサー部が軌道支持部を移動することによって取得した測定データの測定センサーの移動距離と測定センサーの反応数値を関連させてグラフ化(数値化)する制御部と、制御部によって図表化(グラフ化)された測定結果を出力する出力部とを備えたことを特徴とするものである。
第4の発明は、測定センサー部又は軌道支持部は、軌道支持部を移動した測定センサー部の移動距離を測定するカウンター機能を備えたことを特徴とする同留具位置確認装置である。
第5の発明は、軌道支持部は、測定センサー部を自動的に移動させることを特徴とする同留具位置確認装置である。
【発明の効果】
【0009】
本願発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)測定センサーを壁表面から一定の間隔を維持しながら移動(スライド)させて、測定センサーの移動した距離及び測定センサーの反応した数値を測定データとして取得することで、金属製留具のある間柱部分と金属製留具のない間柱部分とで異なる測定データを取得することができる。そして、この測定データを図表化(グラフ化)し、さらに出力することで、壁施工後であっても金属製留具の位置を確認することができる。
(2)金属製留具の位置に限らず、間柱の位置も壁施工後にあっては分からない。従って、まず測定データ取得の前に、構造物中に鉛直方向に埋め込まれている間柱の位置を探知センサーにて確認することで、金属製留具位置の確認作業を効率良く進めることができる。
(3)測定センサー部又は軌道支持部が軌道支持部を移動した測定センサー部の移動距離を測定するカウンター機能を備えたことで、測定センサー部の移動距離を簡易かつ確実に測定できる。
(4)軌道支持部が測定センサー部を自動的に移動させることで、作業者の測定作業負担を軽減できるとともに、一定の速度を保持して信頼性の高い測定データを取得できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態においては耐火間仕切壁を例に説明する。
図1は、本願発明に係る留具位置確認方法の施工手順を示した説明図である。
図1に示すように、本願発明に係る留具位置確認方法の施工手順は、次の通りである。
第1工程(図1(a))は、間柱位置確認工程である。施工後の耐火間仕切壁の表面上からは間柱の位置は確認できない。そこで、まず、間柱の位置を探知センサーを利用して確認する工程である。ここで、利用する探知センサーは間柱の存在を確認できる程度の簡易なものであればよい(例:シンワ製 下地センサー等)。そして、探知センサーで確認した間柱の位置をマスキングテープ等にてマーキングするとともに、マーキング位置をスケールで測定する。
【0011】
第2工程(図1(b))は、データ取得工程である。第1工程でマーキングした間柱の位置(測定場所)ごとに留具位置(以下「ビス位置」)を確認するための測定データを取得するものである。測定データの取得方法は、構造物中の金属に反応する測定センサーを壁表面から一定の間隔を維持しながら移動(スライド)させて、測定センサーの移動した距離及び測定センサーの反応した数値の少なくとも2種類の測定データを取得する。測定センサーはできるだけ間柱の中央部を上(測定開始位置)から下(測定終了位置)へ移動させるようにする。間柱の中央部で十分な測定データを取得できなかった場合には、測定センサーを中央部から多少左右にずらして再度測定を行う。留具(以下「ビス」)が間柱の中央部に打ち込まれているとは限らず、左右にずれて打ち込まれている場合も考えられるからである。
【0012】
第3工程(図1(c))は、データ変換工程である。第2工程で取得した測定データの測定センサーの移動距離と測定センサーの反応数値を関連させて図表化(グラフ化)するものである。測定センサーは壁表面から一定の間隔を維持しながら移動するものであるから、ビスのある間柱部分とビスのない間柱部分とでは測定センサーの反応数値が異なる。すなわち、仮にビスの全く無い間柱を測定すると測定センサーの反応数値は理論上変化が無いものになる(上張材の厚み・密度・含水率等で実際には多少の変化は生じる)が、ビスがあることでこの反応数値に何かしらの変化が生じる。従って、これに測定センサーの移動距離を関連させることで、図表化(グラフ化)が可能となる。そして、第4工程(図1(d))の出力工程において、図表化(グラフ化)された測定結果をモニターやペーパーなどに出力することで、ビスの位置を確認することができる。
【0013】
図2は、本願発明に係る留具位置確認装置を示した説明図である。
図2に示す留具位置確認装置40は、測定センサー部50、軌道支持部60、制御部70及び出力部80を備えるものである。測定センサー部50は構造物中の金属に反応してそれを数値として測定できる測定部材である。例えば、非接触で検出物体が近づいたことを検出できる「近接センサー」などを測定センサー部50として使用するとよい。「近接センサー」には、動作原理によって、電磁誘導を利用した高周波発振型、磁石を用いた磁気型、静電容量の変化を利用した静電容量型の3種類があるが、その種類は特に限定されるものではない。
【0014】
また、軌道支持部60は、測定センサー部50を耐火間仕切壁90の表面から一定の間隔tを維持しながら移動(スライド)させる支持部材である。この軌道支持部60があることによって、測定センサー部50と耐火間仕切壁90表面の間が常に一定間隔となり、間柱91にビス92がない場合、壁の厚み等が計測方向で異なっても、それに伴う計測数値の変化はほぼ一定となる。しかし、ビス92のある位置では、計測数値の変化が急激であり、これによりビス92の位置の検出が容易となる。従って、本実施形態においてこの「軌道支持部60」の存在は極めて重要なものとなっている。換言すれば、本実施形態に示す「軌道支持部60」等によって測定センサー部50と耐火間仕切壁90表面の間を常に一定間隔に維持しなければ、ビス92の位置を確実に検出することは困難になる。
【0015】
さらに、制御部70は、この測定センサー部50が軌道支持部60を移動することによって取得した測定データの「測定センサーの移動距離」と「測定センサーの反応数値」を関連させてグラフ化(数値化)する制御部材である。そして、出力部80は、制御部70によって図表化(グラフ化)された測定結果を出力する出力部材である。
【0016】
ここで、耐火間仕切壁90は、間柱91にビス92を打ち込んで取り付けられた下張材93としてのケイ酸カルシウム板とその外側に貼り付けられた上張材94としての石こう板からなっている。そして、この耐火間仕切壁90の上張材94を剥がすことなく、ビス92の位置を確認する装置が留具位置確認装置40である。すなわち、軌道支持部60の測定開始位置にセットされた測定センサー部50aを軌道支持部60の測定終了位置にまで移動させた測定センサー部50bからは、間柱91とビス92が同じ金属であっても、ビス92が突出しているために、測定センサー50は、ビス92のある間柱91部分とビス92のない間柱91部分とでは異なる反応数値を示すのである。
【0017】
また、図示省略するが、測定センサー部50又は軌道支持部60は、軌道支持部60を移動した測定センサー部50の移動距離を測定するカウンター機能を備える。これにより、測定センサー部50の移動距離を簡易かつ確実に測定できる。
さらに、軌道支持部60は、測定センサー部50を作業者の手作業により又は自動的に移動させるようにする。自動的に移動させる場合には、モーター等の動力を用いて移動させてもよいし、自重落下させてもよい。なお、自重落下の場合には、落下の速度を調整するために、測定センサー部50との接触部分に弾性部材(例:ゴムパッキン)を取り付けて、その弾性部材の押し付け圧力を調整することで速度調整できるようにしてもよい。また、軌道支持部60の測定開始位置にセットされた測定センサー部50aが移動を始めると軌道支持部60に設けられているスイッチがONになり測定を開始し、測定センサー部50bのように軌道支持部60の測定終了位置にまで移動すると軌道支持部60に設けられているスイッチがOFFになるようにしてもよい。
【実施例】
【0018】
[実施例1]
まず、実施例1として、本願発明に係る留具位置確認方法(装置)を用いて実際に耐火間仕切壁の留具位置を測定した実験結果を説明する。
図3は、上記する本願発明の実施形態によって、耐火間仕切壁(壁番号14−1)の間柱6箇所(12〜17)を測定した測定結果を示したものである。このグラフ上、大きく窪んで波長の乱れた箇所がビスの打ち込まれた箇所であると計測される。なお、グラフの横軸は測定センサーの移動した距離を示し、縦軸は電圧を示している。
また、図4は、図3で出力された測定結果を基に、耐火間仕切壁(壁番号14−1)の間柱に打ち込まれたビスの位置を数値で表記したものである。
これによって、金属製の間柱に打ち込まれたビス等の金属製留具の位置を間仕切壁30の施工後にあって上張材を剥がすことなく確認できることが証明された。なお、ビス位置の間隔に40〜70mmの狭い箇所があるが、これは、下張材と下張材のつなぎ目に該当するために、間隔が短くなっているものである。
【0019】
[実施例2]
次に、実施例2として、本願発明に係る留具位置確認方法(装置)を用いて留具位置を測定した測定結果(測定値)と実際の留具位置(実測値)を確認した実験結果を説明する。
図5は、上記する本願発明の実施形態によって耐火間仕切壁の間柱2箇所のビス位置を測定した測定結果(測定値)と、当該間柱に取り付けられた上張材を実際に剥がしてビス位置を測定した測定結果(実測値)を示したものである。図5に示された数値は、測定値であり、その測定値から確認されたビス位置を「○」印で示している。また、下線付数値は実測値であり、「×」印は実際に確認されたビス位置を示している。
この実験結果によれば、測定値から確認されたビス位置はほぼ実際のビス位置と一致していることが証明された。従って、耐火性能認定仕様(一定間隔内での留め付け)を確認するための方法・装置としては、十分にその役割を果たすものと思料される。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本願発明は、金属製の間柱に打ち込まれたビス等の金属製留具の位置を壁の施工後にあっても上張材を剥がすことなく確認できる技術として利用できるものである。壁の種類は特に問わず、間柱を使用した壁に幅広く利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本願発明に係る留具位置確認方法の施工手順を示した説明図。
【図2】本願発明に係る留具位置確認装置を示した説明図。
【図3】本願発明の実施例1による測定結果を示すグラフ。
【図4】本願発明の実施例1による測定結果に基づくビス位置の表記図。
【図5】本願発明の実施例2による測定値と実測値を示した表記図。
【図6】従来より一般的に施工されている耐火間仕切壁の内部構造を示した説明図。
【符号の説明】
【0022】
40 留具位置確認装置
50 測定センサー部
60 軌道支持部
70 制御部
80 出力部
90 耐火間仕切壁
91 間柱
92 ビス
93 下張材
94 上張材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁を構成する間柱に下張材を取り付けるために用いた金属製留具の位置を壁施工後に確認する留具位置確認方法であって、
構造物中の金属に反応する測定センサーを壁表面から一定の間隔を維持しながら移動させて、測定センサーの移動した距離及び測定センサーの反応した数値を測定データとして取得するデータ取得工程と、
取得された測定データの測定センサーの移動距離と測定センサーの反応数値を関連させて図表化するデータ変換工程と、
図表化された測定結果を出力する出力工程とを備えたことを特徴とする留具位置確認方法。
【請求項2】
データ取得工程の前に、構造物中に鉛直方向に埋め込まれている間柱の位置を探知センサーにて確認する間柱位置確認工程を備えたことを特徴とする請求項1記載の留具位置確認方法。
【請求項3】
壁を構成する間柱に下張材を取り付けるために用いた金属製留具の位置を壁施工後に確認するための留具位置確認装置であって、
構造物中の金属に反応してそれを数値として測定できる測定センサー部と、
測定センサー部を壁表面から一定の間隔を維持しながら移動させる軌道支持部と、
測定センサー部が軌道支持部を移動することによって取得した測定データの測定センサーの移動距離と測定センサーの反応数値を関連させてグラフ化する制御部と、
制御部によって図表化された測定結果を出力する出力部とを備えたことを特徴とする留具位置確認装置。
【請求項4】
測定センサー部又は軌道支持部は、軌道支持部を移動した測定センサー部の移動距離を測定するカウンター機能を備えたことを特徴とする請求項3記載の留具位置確認装置。
【請求項5】
軌道支持部は、測定センサー部を自動的に移動させることを特徴とする請求項3又は4記載の留具位置確認装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−133130(P2010−133130A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308929(P2008−308929)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)