留具
【課題】より幅が広いバンドに適用した場合であっても、ワンタッチで確実にバンドの端部を留めることができ、強風下においても信頼性が高い長寿命の留具を提供する。
【解決手段】嵌入部44内に嵌入された基部55の前記延出部42,42間に臨む面の両側縁に壁部53,53を立設して係合凸部43に係合させる係合凹部54にしてある。ロック部4の延出部42,42間内に係止部52が挿入するまで回動された巻戻防止ピン5を嵌入部44の深さ方向及び幅方向へ撓ませて、係止部52の係合凹部54をロック部4の係合凸部43,43の何れか一方に係合させ、巻戻防止ピン5をロック部4にワンタッチでロックさせる。
【解決手段】嵌入部44内に嵌入された基部55の前記延出部42,42間に臨む面の両側縁に壁部53,53を立設して係合凸部43に係合させる係合凹部54にしてある。ロック部4の延出部42,42間内に係止部52が挿入するまで回動された巻戻防止ピン5を嵌入部44の深さ方向及び幅方向へ撓ませて、係止部52の係合凹部54をロック部4の係合凸部43,43の何れか一方に係合させ、巻戻防止ピン5をロック部4にワンタッチでロックさせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の骨材上を合成樹脂製のシートで覆ってなる、所謂ビニルハウスにおいて、前記シートを骨材に押圧すべく、シート上に張設した帯状部材の端部を留める留具に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の骨材上に合成樹脂製のシートを展張させてなる、所謂ビニルハウスにあっては、シートを骨材に押圧する複数のハウスバンドをビニルハウスの長手方向へ適宜の間隔で配置し、各ハウスバンドをシート上に、ビニルハウスの一側から他側に亘って張設させることによって、前記シートが風で煽られることを可及的に抑制している。かかるビニルハウスでは塩化ビニル製のシートが用いられており、この場合、ゴム紐状のハウスバンドの両端をビニルハウスの両側下部に配設した横材にそれぞれ繋止させることによって、当該ハウスバンドを張設させていた。
【0003】
また、比較的幅が狭い帯状のハウスバンドの両端を、前記両横材にそれぞれ外嵌させた先端フック状のバンド留具の基端部によって挟持固定する場合もあった(たとえば、特許文献1参照。)。
【0004】
ところで、前述した塩化ビニル製のシートに代えて、農業用ポリオレフィン系のシートが用いられる場合がある。これは、前者のシートに比べて後者のシートの方が、透明度が高い上に寿命が長く、更に、後者のシートは、燃焼させても有害なガスを発生しないため焼却処理を行なうことができるからである。ところが、農業用ポリオレフィン系のシートを用いた場合、当該シートの摩擦耐性が小さいので、擦れによって破損し易いという問題があった。そこで、展張したシートとハウスバンドとの間に擦れが生じることを可及的に防止すべく、当該シートを同じ材料を用いてなり、比較的幅が広い帯状のハウスバンドが用いられており、かかるハウスバンドの端部を留めるために、次のような留具が開発されている(たとえば、特許文献2参照。)。
【0005】
図9は、従来の留具の正面図であり、図10は、図9に示した留具の使用様態を示す側断面図である。図9及び図10に示した如く、留具80は、2段梯子形状の本体81の中央両段部をバンド巻回部86,87にしてなり、両バンド巻回部86,87の間上には、本体81の両側柱部82,82の間の内寸より少し長い寸法の棒状のバンド挿通部88が、両バンド巻回部86,87と平行に配置してある。このバンド挿通部88は、本体81の一方の側柱部82の正面側であって前記両バンド巻回部86,87の間の位置に突設した支持部によって片持支持されており、バンド挿通部88の解放端から帯状のバンドVを、バンド挿通部88と両バンド巻回部86,87との間に挿通させるようになっている。
【0006】
また、前述した両側柱部86,87の一端近傍の正裏面には、後述するストッパ杆83が嵌合する嵌合凹部82a,82a、82a(82a)がそれぞれ設けてあり、一方の側柱部82の一端近傍の外側面から、可撓性を有する帯板状のヒンジ部84が延出してある。ストッパ杆部83は、前記嵌合凹部82a,82aに内嵌する幅寸法であり、両側柱部82,82の間の外寸より少し長い長さ寸法を有する杆状部の両端に、前記両側柱部82,82の側面に係止する係止部83a,83aを突設してなり、前述したヒンジ部84の先端は一方の係止部83aの略中央に連結してある。
【0007】
このような留具80によって、図10に示した如く、ハウスの一側下縁に配置した横パイプに一端を掛け回したバンドVの端部を留めるには、嵌合凹部82a(82a)からストッパ杆83を予め外しておき、バンドVの2重になった部分をバンド挿通部88の解放端からバンド挿通部88と両バンド巻回部86,87との間に挿通させた状態で、バンド挿通部88及びバンド巻回部86,87を回転軸に、両側柱部82,82を例えば矢符で示した右回転で回転させることによって、バンド挿通部88及びバンド巻回部86,87の周りにバンドVを巻回させて、バンドVを展張させる。
【0008】
そして、ストッパ杆83を両側柱部82,82の回転方向とは逆の側の嵌合凹部82a(82a)に着脱可能に嵌合させると共に、ストッパ杆83の係止部83a,83aを両側柱部82,82の外側面に係止させ、ストッパ杆83の外側からバンドVをストッパ杆83に当接させる。これによって、バンドVが巻き戻ることを防止すると共に、バンドVの張力によってストッパ杆83を嵌合凹部82a(82a)内に圧接させて、バンドVの端部を留めることができる。
【特許文献1】特開平10−229762号公報
【特許文献2】特開2000−297803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来の留具にあっては、ストッパ杆83を両側柱部82,82の嵌合凹部82a(82a)に嵌合させてあるだけあるため、強風でハウスのシートが煽られて、バンドVに撓みが生じた場合、嵌合凹部82a(82a)からストッパ杆83が外れて、バンドVが巻き戻ってしまうという問題があった。
【0010】
また、農業用ポリオレフィン系のシートを用いるハウスでは、展張したシートとバンドとの間に擦れが生じることを更に抑制すべく、60mmを超えるより広い幅のバンドVを適用することが要求されている。この場合、前述した従来の留具にあっては、バンドVの幅に応じてストッパ杆83の寸法を長くするが、ストッパ杆83を長くした場合、ストッパ杆83の両端を対応する嵌合凹部82a(82a)に嵌合させる作業に手間を要するという問題もあった。
【0011】
更に、繰り返して使用する際及びバンドVを締めなおす際に、ストッパ杆83を開閉させる都度、帯板状のヒンジ部84が屈曲・伸張されるため、ヒンジ部84の強度が低下し、留具の寿命が短いという問題もあった。
【0012】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、より幅が広いバンドに適用した場合であっても、ワンタッチで確実にバンドの端部を留めることができ、強風下においても信頼性が高い長寿命の留具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の本発明は、適当な距離を隔てて互いに平行に配した両側柱部の一端側に、帯体を挿入する挿入部と前記帯体を巻回させる巻回部とが設けてあり、両側柱部の他端側に前記巻回部に巻回させた帯体の巻き戻りを防止する巻戻防止部が開閉自在に設けてあり、巻戻防止部が開状態で、前記巻回部に帯体の端部及び/又はその近傍を巻回させて、巻戻防止部を閉状態になすことによって、当該帯体の端部を留める留具において、一方の側柱部の他端に設けたヒンジ部に杆状の巻戻防止部の一端が、前記側柱部の長手方向と交わる方向の軸周りに回動自在に軸支してあり、他方の側柱部の他端には、環状体の一部に開口を設けた嵌入部内に前記巻戻防止部の他端部を嵌入させてロックするロック部が設けてあることを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の本発明は、前記嵌入部は、他方の側柱部の他端に所要距離を隔てて立設した両側壁部の先端部にそれぞれ両側壁部の内側へ延出させた延出部を設けてなり、両延出部には嵌入部の底部へ向かう凸部がそれぞれ設けてあり、前記巻戻防止部の他端部は両延出部の間を通過し得る幅寸法になしてあり、この他端部には、前記凸部に係合させる係合部が設けてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の本発明では、適当な距離を隔てて互いに平行に配した両側柱部の一端側に、帯体を挿入する挿入部と前記帯体を巻回させる巻回部とが設けてあり、両側柱部の他端側に前記巻回部に巻回させた帯体の巻き戻りを防止する巻戻防止部が開閉自在に設けてあり、巻戻防止部が開状態で、前記巻回部に帯体の端部及び/又はその近傍を巻回させて、巻戻防止部を閉状態になすことによって、当該帯体の端部を留める留具において、一方の側柱部の他端に設けたヒンジ部に杆状の巻戻防止部の一端が、前記側柱部の長手方向と交わる方向の軸周りに回動自在に軸支してあり、他方の側柱部の他端には、環状体の一部に開口を設けた嵌入部内に前記巻戻防止部の他端部を嵌入させてロックするロック部が設けてある。従って、強風でハウスのシートが煽られて、帯体に撓みが生じた場合であっても、ロック部の嵌入部内に嵌入されてロックされた巻戻防止部がロック部から外れることが防止される。
【0016】
また、より広い幅の帯体に適用すべく、両側柱部間寸法及び巻戻防止部の寸法を長くした場合であっても、その一端がヒンジ部に回動自在に軸支された巻戻防止部を回動させることによって、確実に巻戻防止部の他端部がロック部の嵌入部内に嵌入するため、巻戻防止部をワンタッチで確実にロックすることができる。更に、巻戻防止部は、その一端がヒンジ部に回動自在に軸支されているため、巻戻防止部を繰り返し開閉させても、ヒンジ部の強度が低下することが防止され、留具の寿命が長い。
【0017】
請求項2記載の本発明では、前記嵌入部は、他方の側柱部の他端に所要距離を隔てて立設した両側壁部の先端部にそれぞれ両側壁部の内側へ延出させた延出部を設けてなり、両延出部には嵌入部の底部へ向かう凸部がそれぞれ設けてあり、前記巻戻防止部の他端部は両延出部の間を通過し得る幅寸法になしてあり、この他端部には、前記凸部に係合させる係合部が設けてあるため、嵌入部の内部に嵌入させた巻戻防止部の他端部を、当該他端部に設けた係合部を嵌入部の何れかの凸部に係合させることによって、簡単にロックすることができる。また、このように巻戻防止部の他端部の係合部を嵌入部の何れかの凸部に係合させて巻戻防止部の他端部をロックすることができるため、帯体の巻回部への巻回方向に拘らず、巻戻防止部の他端部をロックすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る留具は、適当な距離を隔てて互いに平行に配した両側柱部の一端側に、帯体を挿入する挿入部と前記帯体を巻回させる巻回部とが設けてあり、両側柱部の他端側に前記巻回部に巻回させた帯体の巻き戻りを防止する巻戻防止部が開閉自在に設けてあり、巻戻防止部が開状態で、前記巻回部に帯体の端部及び/又はその近傍を巻回させて、巻戻防止部を閉状態になすことによって、当該帯体の端部を留めるようにしてある。そして、一方の側柱部の他端に設けたヒンジ部に杆状の巻戻防止部の一端が、前記側柱部の長手方向と交わる方向の軸周りに回動自在に軸支してあり、他方の側柱部の他端には、環状体の一部に開口を設けた嵌入部内に前記巻戻防止部の他端部を嵌入させてロックするロック部が設けてある。
【0019】
また、嵌入部は、他方の側柱部の他端に所要距離を隔てて立設した両側壁部の先端部にそれぞれ両側壁部の内側へ延出させた延出部を設けてなり、両延出部には嵌入部の底部へ向かう凸部がそれぞれ設けてあり、前記巻戻防止部の他端部は両延出部の間を通過し得る幅寸法になしてあり、この他端部には、前記凸部に係合させる係合部が設けてある。
【0020】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。
【0021】
図1及び図2は、本発明に係る留具の斜視図であり、図1は後述する巻戻防止ピン5が開いた状態を、また、図2は当該巻戻防止ピン5が閉じた状態を示している。図1及び図2に示した如く、金属製の留具は、当該留具を取り付けるバンド(帯体)の幅寸法に応じた距離を隔てて平行に配した2本の側柱部2,2の一端側近傍の間に、前記バンドを巻回させる巻回杆部6,7を側柱部2,2の長手方向へ、二重にしたバンドの厚さ寸法より少し長い距離を隔てて架設してなり、一方の側柱部2の両巻回杆部6,7間の略中央位置を切欠して、他方の側柱部2の先端部に対向する側柱片部21を形成すると共に、バンドを入出させる開口9が形成してある。
【0022】
他方の側柱部2の前記開口9に対向する部分は、両側柱部2,2の外側へ凸な円弧状に曲成してあり、この曲成部2b及び前記両巻回杆部6,7で囲まれる領域は、前記開口9からその内部にバンドを挿入させる挿入部8にしてある。一方の側柱部2の一端部及び側柱片部21の一端部は、挿入部8の開口9へ突出させて、挿入部8内に挿入したバンドが開口9から外へ突出するのを防止する突出防止凸部2a,21aにしてある。両突出防止凸部2a,21aの先端はそれぞれ曲面にしてあり、これによって、バンドを挿入部8へ挿入する際、及びバンドを挿入部8から取出す際に、バンドの表面に疵が生じることを防止してある。
【0023】
また、他方の側柱部2の一端部及び前記側柱片部21の他端部はそれぞれ、外側の巻回杆部7から突出させて脚部22,22にしてあり、両脚部22,22間にバンドが嵌入して、巻回杆部6,7の周りに巻回させるバンドがその幅方向へずれないようにしてある。この脚部22,22の先端も曲面にしてあり、両脚部22,22の先端がバンドの表面に接触した場合であっても、バンドの表面に疵が生じることを防止してある。
【0024】
前述した一方の側柱部2の他端にはヒンジ部3が設けてあり、ヒンジ部3には、後述する如くビニルハウスの一側から他側へ展張されたバンドに当接して、巻回杆部6,7の周りに巻回させたバンドの巻き戻りを防止する巻戻防止ピン(巻戻防止部)5の一端が、止ピン(支持軸)33によって回動自在に軸支されている。また、他方の側柱部2の他端には、前記巻戻防止ピン5の他端部を嵌入させて、当該他端部をロックするロック部4が設けてある。
【0025】
図3は、図2に示した一方の側柱部2の側面図であり、ヒンジ部3の構造を説明するものである。また、図4は、図2に示した他方の側柱部2の側端面図であり、ロック部4の構造を説明するものである。図3及び図1に示した如く、ヒンジ部3は、環状のヘッド部(支持片部)31,31を両ヘッド部31,31の中心軸を一致させて、一方の側柱部2の奥行き方向へ所要寸法を隔てて設けてなり、ヒンジ部3の両ヘッド部31,31間の底部32、側柱部2の長手方向と直交する平坦面にしてある。
【0026】
一方、巻戻防止ピン5の一端には、ヒンジ部3のヘッド部31より少し小さい外寸であり、両ヘッド部31,31の間の寸法より少し薄い厚さの環状基部51が設けてあり、巻戻防止ピン5の底部を構成する環状基部51の底部51aは平坦面にしてある。そして、環状基部51をヒンジ部3の両ヘッド部31,31の間に嵌入させ、これらヘッド部31,31及び環状基部51内に止ピン33を貫通させることによって、巻戻防止ピン5を回動自在に軸支してある。このとき、前述した如く環状基部51の厚さ寸法は、両ヘッド部31,31の間の寸法より少し狭くしてあるため、環状基部51の両側面とヘッド部31,31との間には僅かな遊びが生じ、これによって、巻戻防止ピン5の他端が巻戻防止ピン5の長手方向と直交する方向へ揺動し得るようになしてある。
【0027】
従って、巻戻防止ピン5が閉じた状態の場合、巻戻防止ピン5の環状基部51の底部51aがヒンジ部3の底部32に当接して、巻戻防止ピン5が側柱部2,2の長手方向と略直交する姿勢で巻戻防止ピン5の回動が停止すると共に、その姿勢で、巻戻防止ピン5がヒンジ部3の底部32に担持される。
【0028】
また、図4及び図2に示した如く、ロック部4は、平板片状の側壁部41,41を、一方の側柱部2の奥行き方向へ所要寸法を隔てて設けてなり、両側壁部41,41の先端部から、側壁部41,41の間の内側へ向かってアーチ状に成形した延出部42,42を突出させて、前記巻戻防止ピン5の他端部を嵌入させる側面視が矩形略C字の嵌入部44になしてある。そして、両延出部42,42の先端に、嵌入部44の底部へ向かう係合凸部43,43がそれぞれ設けてある。
【0029】
一方、巻戻防止ピン5の他端部には、前述した延出部42,42の間を通過し得るようにその幅寸法を他の部分の幅寸法より狭くして、前記ロック部4に嵌入係止する係止部52が形成してある。
【0030】
図4は、図1に示したロック部4に巻戻防止ピン5の係止部52が係止している状態を示す拡大側面図である。図4に示した如く、係止部52は、側面視が縦長長方形状の基部55を備えており、基部55の幅寸法はロック部4の延出部42,42の間の寸法より少し狭くしてある。基部55は延出部42,42間を通過して嵌入部44内に嵌入させてあり、嵌入部44内に嵌入された基部55の前記延出部42,42間に臨む面の両側縁にそれぞれ、適宜長さの壁部53,53を立設することによって、両壁部53,53の間内を前記係合凸部43に係合させる係合凹部54にしてある。巻戻防止ピン5は、嵌入部44の深さ方向及び幅方向へ僅かに可撓性を有しており、ロック部4の延出部42,42間内に係止部52が挿入するまで回動された巻戻防止ピン5を嵌入部44の深さ方向及び幅方向へ撓ませることによって、係止部52の係合凹部54をロック部4の係合凸部43,43の何れか一方に係合させることによって、巻戻防止ピン5がロック部4にワンタッチでロックされるようになっている。
【0031】
次に、かかる留具を用いてバンドの端部を留める方法について説明する。
【0032】
図5は、図1に示した留具の使用様態を示す斜視図であり、図中、Hはハウスである。ハウスHは、適宜距離を隔てて互いに平行に立設したアーチ状の複数の骨パイプBP,BP,…を農業用ポリオレフィン系のシートSで覆ってなり、該シートSは、骨パイプBP,BP,…間に架設したシート止用条材(図示せず)にその一部を係止固定してある。また、ハウスHの両側下縁には、1又は複数の横パイプSP(SP)がハウスHの長手方向の略全領域に亘って前記骨パイプBP,BP,…に連結固定してある。
【0033】
1又は複数間隔で骨パイプBP,BP,…上には、農業用ポリオレフィン製であり120mm程度の幅の帯状のバンド(帯体)V,V,…が配置してある。そして、各バンドV,V,…はその端部を、対応する横パイプSP(SP)に掛け回して各バンドV,V,…の端部近傍の部分に重積させてあり、各重積部分をそれぞれ留具1,1,…に巻回させて、各バンドV,V,…を展張させると共に、各バンドV,V,…の端部を留具1,1,…によって留めてある。
【0034】
このように、骨パイプBP,BP,…上にバンドV,V,…を配置した場合、シートSの相隣る骨パイプBP,BP,…間の部分が、バンドV,V,…によって変形されず、例えば当該骨パイプBP,BP,…の適宜位置に凸状部材を配設することによって、シートSの当該凸状部材より下方の部分の巻き上げ・巻き戻し作業を容易に行なうことができる。
【0035】
一方、図8に示した如く、骨パイプBP,BP,…の間に、60mm程度の幅のバンドV,V,…を配置して、前同様、横パイプSP(SP)に掛け回したバンドV,V,…の端部近傍の重積部分をそれぞれ留具1,1,…に巻回させて、各バンドV,V,…を展張させると共に、各バンドV,V,…の端部を留具1,1,…によって留めることもできる。このように、幅が広いバンドVを用いることによって、農業用ポリオレフィン製のシートSに対しても、バンドVとシートSとの擦れによってシートSの表面に疵が生じることを可及的に防止できる。
【0036】
図6は、図5に示したハウスHの部分拡大斜視図であり、図7は、図6に示した留具1、シートS、及び骨パイプBPの部分拡大側面図である。なお、両図中、図5に示した部分に対応する部分には同じ番号を付してある。
【0037】
図6及び図7に示した如く、巻戻防止ピン5を開いた状態で、バンドVの2重になった部分を留具1の開口9から挿通部8内に挿入させ、その状態で、両巻回杆部6,7を回転軸にして、両側柱部2,2を適宜の方向へ回転させることによって、両巻回杆部6,7の周りにバンドVを巻回させて、バンドVを展張させる。
【0038】
そして、巻戻防止ピン5の係止部52に設けた係合凹部54を、両側柱部2,2の回転方向の側、即ち側面視において左回転であれば左側の係合凸部43に係合させ、巻戻防止ピン5の外側からバンドVを巻戻防止ピン5に当接させる。これによって、バンドVが巻き戻ることを防止する。
【0039】
このように、巻戻防止ピン5の係止部52を、ロック部4を構成する嵌入部44内に嵌入させ、係止部52に設けた係合凹部54をロック部4に設けた係合凸部43に係合させることによって、巻戻防止ピン5をロックするようにしてあるため、強風でハウスHのシートSが煽られて、バンドVに撓みが生じた場合であっても、ロック部4の嵌入部44内に嵌入されてロックされた巻戻防止ピン5の係止部52がロック部4から外れることが防止される。
【0040】
また、より広い幅のバンドVに適用すべく、両側柱部2,2の間の寸法及び巻戻防止部5の寸法を長くした場合であっても、巻戻防止ピン5を回動させることによって、巻戻防止ピン5の係止部52がロック部4の嵌入部44内に確実に嵌入するため、巻戻防止ピン5をワンタッチで確実にロックすることができる。更に、巻戻防止ピン5は、その一端がヒンジ部3に回動自在に軸支されているため、巻戻防止ピン5を繰り返し開閉させても、ヒンジ部3の強度が低下することが防止され、留具1の寿命が長い。
【0041】
ところで、ロック部4による巻戻防止ピン5のロックは、係止部52に設けた係合凹部54を嵌入部44に設けた何れかの係合凸部43,43に係合させることによって、簡単に行なうことができる。また、このように巻戻防止ピン5の係合部52を嵌入部44の何れかの係合凸部43,43に係合させて巻戻防止ピン5の他端部をロックすることができるため、バンドVの巻回杆部6,7への巻回方向に拘らず、巻戻防止ピン5の他端部をロックすることができる。
【0042】
更に、ヒンジ部3の両ヘッド部31,31間の底部32平坦面にしてあり、巻戻防止ピン5の環状基部51の底部51aも平坦面にしてあり、巻戻防止ピン5を回動させた場合、環状基部51の底部51aが前記ヒンジ部3の底部32に当接して、巻戻防止ピン5を閉姿勢で支持するようにしてあるため、簡単な構造で、巻戻防止ピン5の回動を所要の閉姿勢で停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る留具の斜視図である。
【図2】本発明に係る留具の斜視図である。
【図3】図2に示した一方の側柱部の側面図である。
【図4】図1に示したロック部に巻戻防止ピンの係止部が係止している状態を示す拡大側面図である。
【図5】図1に示した留具の使用様態を示す斜視図である。
【図6】図5に示したハウスの部分拡大斜視図である。
【図7】図6に示した留具、シート、及び骨パイプの部分拡大側面図である。
【図8】図1に示した留具の他の使用様態を示す斜視図である。
【図9】従来の留具の正面図である。
【図10】図9に示した留具の使用様態を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 留具
2 側柱部
2a 突出防止凸部
3 ヒンジ部
4 ロック部
5 巻戻防止ピン
6 巻回杆部
7 巻回杆部
8 挿入部
9 開口
31 ヘッド部
32 底部
33 止ピン
41 側壁部
42 延出部
43 係合凸部
44 嵌入部
51 環状基部
51a 底部
52 係止部
53 壁部
54 係合凹部
55 基部
H ハウス
BP 骨パイプ
SP 横パイプ
S シート
V ベルト
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の骨材上を合成樹脂製のシートで覆ってなる、所謂ビニルハウスにおいて、前記シートを骨材に押圧すべく、シート上に張設した帯状部材の端部を留める留具に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の骨材上に合成樹脂製のシートを展張させてなる、所謂ビニルハウスにあっては、シートを骨材に押圧する複数のハウスバンドをビニルハウスの長手方向へ適宜の間隔で配置し、各ハウスバンドをシート上に、ビニルハウスの一側から他側に亘って張設させることによって、前記シートが風で煽られることを可及的に抑制している。かかるビニルハウスでは塩化ビニル製のシートが用いられており、この場合、ゴム紐状のハウスバンドの両端をビニルハウスの両側下部に配設した横材にそれぞれ繋止させることによって、当該ハウスバンドを張設させていた。
【0003】
また、比較的幅が狭い帯状のハウスバンドの両端を、前記両横材にそれぞれ外嵌させた先端フック状のバンド留具の基端部によって挟持固定する場合もあった(たとえば、特許文献1参照。)。
【0004】
ところで、前述した塩化ビニル製のシートに代えて、農業用ポリオレフィン系のシートが用いられる場合がある。これは、前者のシートに比べて後者のシートの方が、透明度が高い上に寿命が長く、更に、後者のシートは、燃焼させても有害なガスを発生しないため焼却処理を行なうことができるからである。ところが、農業用ポリオレフィン系のシートを用いた場合、当該シートの摩擦耐性が小さいので、擦れによって破損し易いという問題があった。そこで、展張したシートとハウスバンドとの間に擦れが生じることを可及的に防止すべく、当該シートを同じ材料を用いてなり、比較的幅が広い帯状のハウスバンドが用いられており、かかるハウスバンドの端部を留めるために、次のような留具が開発されている(たとえば、特許文献2参照。)。
【0005】
図9は、従来の留具の正面図であり、図10は、図9に示した留具の使用様態を示す側断面図である。図9及び図10に示した如く、留具80は、2段梯子形状の本体81の中央両段部をバンド巻回部86,87にしてなり、両バンド巻回部86,87の間上には、本体81の両側柱部82,82の間の内寸より少し長い寸法の棒状のバンド挿通部88が、両バンド巻回部86,87と平行に配置してある。このバンド挿通部88は、本体81の一方の側柱部82の正面側であって前記両バンド巻回部86,87の間の位置に突設した支持部によって片持支持されており、バンド挿通部88の解放端から帯状のバンドVを、バンド挿通部88と両バンド巻回部86,87との間に挿通させるようになっている。
【0006】
また、前述した両側柱部86,87の一端近傍の正裏面には、後述するストッパ杆83が嵌合する嵌合凹部82a,82a、82a(82a)がそれぞれ設けてあり、一方の側柱部82の一端近傍の外側面から、可撓性を有する帯板状のヒンジ部84が延出してある。ストッパ杆部83は、前記嵌合凹部82a,82aに内嵌する幅寸法であり、両側柱部82,82の間の外寸より少し長い長さ寸法を有する杆状部の両端に、前記両側柱部82,82の側面に係止する係止部83a,83aを突設してなり、前述したヒンジ部84の先端は一方の係止部83aの略中央に連結してある。
【0007】
このような留具80によって、図10に示した如く、ハウスの一側下縁に配置した横パイプに一端を掛け回したバンドVの端部を留めるには、嵌合凹部82a(82a)からストッパ杆83を予め外しておき、バンドVの2重になった部分をバンド挿通部88の解放端からバンド挿通部88と両バンド巻回部86,87との間に挿通させた状態で、バンド挿通部88及びバンド巻回部86,87を回転軸に、両側柱部82,82を例えば矢符で示した右回転で回転させることによって、バンド挿通部88及びバンド巻回部86,87の周りにバンドVを巻回させて、バンドVを展張させる。
【0008】
そして、ストッパ杆83を両側柱部82,82の回転方向とは逆の側の嵌合凹部82a(82a)に着脱可能に嵌合させると共に、ストッパ杆83の係止部83a,83aを両側柱部82,82の外側面に係止させ、ストッパ杆83の外側からバンドVをストッパ杆83に当接させる。これによって、バンドVが巻き戻ることを防止すると共に、バンドVの張力によってストッパ杆83を嵌合凹部82a(82a)内に圧接させて、バンドVの端部を留めることができる。
【特許文献1】特開平10−229762号公報
【特許文献2】特開2000−297803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来の留具にあっては、ストッパ杆83を両側柱部82,82の嵌合凹部82a(82a)に嵌合させてあるだけあるため、強風でハウスのシートが煽られて、バンドVに撓みが生じた場合、嵌合凹部82a(82a)からストッパ杆83が外れて、バンドVが巻き戻ってしまうという問題があった。
【0010】
また、農業用ポリオレフィン系のシートを用いるハウスでは、展張したシートとバンドとの間に擦れが生じることを更に抑制すべく、60mmを超えるより広い幅のバンドVを適用することが要求されている。この場合、前述した従来の留具にあっては、バンドVの幅に応じてストッパ杆83の寸法を長くするが、ストッパ杆83を長くした場合、ストッパ杆83の両端を対応する嵌合凹部82a(82a)に嵌合させる作業に手間を要するという問題もあった。
【0011】
更に、繰り返して使用する際及びバンドVを締めなおす際に、ストッパ杆83を開閉させる都度、帯板状のヒンジ部84が屈曲・伸張されるため、ヒンジ部84の強度が低下し、留具の寿命が短いという問題もあった。
【0012】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、より幅が広いバンドに適用した場合であっても、ワンタッチで確実にバンドの端部を留めることができ、強風下においても信頼性が高い長寿命の留具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の本発明は、適当な距離を隔てて互いに平行に配した両側柱部の一端側に、帯体を挿入する挿入部と前記帯体を巻回させる巻回部とが設けてあり、両側柱部の他端側に前記巻回部に巻回させた帯体の巻き戻りを防止する巻戻防止部が開閉自在に設けてあり、巻戻防止部が開状態で、前記巻回部に帯体の端部及び/又はその近傍を巻回させて、巻戻防止部を閉状態になすことによって、当該帯体の端部を留める留具において、一方の側柱部の他端に設けたヒンジ部に杆状の巻戻防止部の一端が、前記側柱部の長手方向と交わる方向の軸周りに回動自在に軸支してあり、他方の側柱部の他端には、環状体の一部に開口を設けた嵌入部内に前記巻戻防止部の他端部を嵌入させてロックするロック部が設けてあることを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の本発明は、前記嵌入部は、他方の側柱部の他端に所要距離を隔てて立設した両側壁部の先端部にそれぞれ両側壁部の内側へ延出させた延出部を設けてなり、両延出部には嵌入部の底部へ向かう凸部がそれぞれ設けてあり、前記巻戻防止部の他端部は両延出部の間を通過し得る幅寸法になしてあり、この他端部には、前記凸部に係合させる係合部が設けてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の本発明では、適当な距離を隔てて互いに平行に配した両側柱部の一端側に、帯体を挿入する挿入部と前記帯体を巻回させる巻回部とが設けてあり、両側柱部の他端側に前記巻回部に巻回させた帯体の巻き戻りを防止する巻戻防止部が開閉自在に設けてあり、巻戻防止部が開状態で、前記巻回部に帯体の端部及び/又はその近傍を巻回させて、巻戻防止部を閉状態になすことによって、当該帯体の端部を留める留具において、一方の側柱部の他端に設けたヒンジ部に杆状の巻戻防止部の一端が、前記側柱部の長手方向と交わる方向の軸周りに回動自在に軸支してあり、他方の側柱部の他端には、環状体の一部に開口を設けた嵌入部内に前記巻戻防止部の他端部を嵌入させてロックするロック部が設けてある。従って、強風でハウスのシートが煽られて、帯体に撓みが生じた場合であっても、ロック部の嵌入部内に嵌入されてロックされた巻戻防止部がロック部から外れることが防止される。
【0016】
また、より広い幅の帯体に適用すべく、両側柱部間寸法及び巻戻防止部の寸法を長くした場合であっても、その一端がヒンジ部に回動自在に軸支された巻戻防止部を回動させることによって、確実に巻戻防止部の他端部がロック部の嵌入部内に嵌入するため、巻戻防止部をワンタッチで確実にロックすることができる。更に、巻戻防止部は、その一端がヒンジ部に回動自在に軸支されているため、巻戻防止部を繰り返し開閉させても、ヒンジ部の強度が低下することが防止され、留具の寿命が長い。
【0017】
請求項2記載の本発明では、前記嵌入部は、他方の側柱部の他端に所要距離を隔てて立設した両側壁部の先端部にそれぞれ両側壁部の内側へ延出させた延出部を設けてなり、両延出部には嵌入部の底部へ向かう凸部がそれぞれ設けてあり、前記巻戻防止部の他端部は両延出部の間を通過し得る幅寸法になしてあり、この他端部には、前記凸部に係合させる係合部が設けてあるため、嵌入部の内部に嵌入させた巻戻防止部の他端部を、当該他端部に設けた係合部を嵌入部の何れかの凸部に係合させることによって、簡単にロックすることができる。また、このように巻戻防止部の他端部の係合部を嵌入部の何れかの凸部に係合させて巻戻防止部の他端部をロックすることができるため、帯体の巻回部への巻回方向に拘らず、巻戻防止部の他端部をロックすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る留具は、適当な距離を隔てて互いに平行に配した両側柱部の一端側に、帯体を挿入する挿入部と前記帯体を巻回させる巻回部とが設けてあり、両側柱部の他端側に前記巻回部に巻回させた帯体の巻き戻りを防止する巻戻防止部が開閉自在に設けてあり、巻戻防止部が開状態で、前記巻回部に帯体の端部及び/又はその近傍を巻回させて、巻戻防止部を閉状態になすことによって、当該帯体の端部を留めるようにしてある。そして、一方の側柱部の他端に設けたヒンジ部に杆状の巻戻防止部の一端が、前記側柱部の長手方向と交わる方向の軸周りに回動自在に軸支してあり、他方の側柱部の他端には、環状体の一部に開口を設けた嵌入部内に前記巻戻防止部の他端部を嵌入させてロックするロック部が設けてある。
【0019】
また、嵌入部は、他方の側柱部の他端に所要距離を隔てて立設した両側壁部の先端部にそれぞれ両側壁部の内側へ延出させた延出部を設けてなり、両延出部には嵌入部の底部へ向かう凸部がそれぞれ設けてあり、前記巻戻防止部の他端部は両延出部の間を通過し得る幅寸法になしてあり、この他端部には、前記凸部に係合させる係合部が設けてある。
【0020】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。
【0021】
図1及び図2は、本発明に係る留具の斜視図であり、図1は後述する巻戻防止ピン5が開いた状態を、また、図2は当該巻戻防止ピン5が閉じた状態を示している。図1及び図2に示した如く、金属製の留具は、当該留具を取り付けるバンド(帯体)の幅寸法に応じた距離を隔てて平行に配した2本の側柱部2,2の一端側近傍の間に、前記バンドを巻回させる巻回杆部6,7を側柱部2,2の長手方向へ、二重にしたバンドの厚さ寸法より少し長い距離を隔てて架設してなり、一方の側柱部2の両巻回杆部6,7間の略中央位置を切欠して、他方の側柱部2の先端部に対向する側柱片部21を形成すると共に、バンドを入出させる開口9が形成してある。
【0022】
他方の側柱部2の前記開口9に対向する部分は、両側柱部2,2の外側へ凸な円弧状に曲成してあり、この曲成部2b及び前記両巻回杆部6,7で囲まれる領域は、前記開口9からその内部にバンドを挿入させる挿入部8にしてある。一方の側柱部2の一端部及び側柱片部21の一端部は、挿入部8の開口9へ突出させて、挿入部8内に挿入したバンドが開口9から外へ突出するのを防止する突出防止凸部2a,21aにしてある。両突出防止凸部2a,21aの先端はそれぞれ曲面にしてあり、これによって、バンドを挿入部8へ挿入する際、及びバンドを挿入部8から取出す際に、バンドの表面に疵が生じることを防止してある。
【0023】
また、他方の側柱部2の一端部及び前記側柱片部21の他端部はそれぞれ、外側の巻回杆部7から突出させて脚部22,22にしてあり、両脚部22,22間にバンドが嵌入して、巻回杆部6,7の周りに巻回させるバンドがその幅方向へずれないようにしてある。この脚部22,22の先端も曲面にしてあり、両脚部22,22の先端がバンドの表面に接触した場合であっても、バンドの表面に疵が生じることを防止してある。
【0024】
前述した一方の側柱部2の他端にはヒンジ部3が設けてあり、ヒンジ部3には、後述する如くビニルハウスの一側から他側へ展張されたバンドに当接して、巻回杆部6,7の周りに巻回させたバンドの巻き戻りを防止する巻戻防止ピン(巻戻防止部)5の一端が、止ピン(支持軸)33によって回動自在に軸支されている。また、他方の側柱部2の他端には、前記巻戻防止ピン5の他端部を嵌入させて、当該他端部をロックするロック部4が設けてある。
【0025】
図3は、図2に示した一方の側柱部2の側面図であり、ヒンジ部3の構造を説明するものである。また、図4は、図2に示した他方の側柱部2の側端面図であり、ロック部4の構造を説明するものである。図3及び図1に示した如く、ヒンジ部3は、環状のヘッド部(支持片部)31,31を両ヘッド部31,31の中心軸を一致させて、一方の側柱部2の奥行き方向へ所要寸法を隔てて設けてなり、ヒンジ部3の両ヘッド部31,31間の底部32、側柱部2の長手方向と直交する平坦面にしてある。
【0026】
一方、巻戻防止ピン5の一端には、ヒンジ部3のヘッド部31より少し小さい外寸であり、両ヘッド部31,31の間の寸法より少し薄い厚さの環状基部51が設けてあり、巻戻防止ピン5の底部を構成する環状基部51の底部51aは平坦面にしてある。そして、環状基部51をヒンジ部3の両ヘッド部31,31の間に嵌入させ、これらヘッド部31,31及び環状基部51内に止ピン33を貫通させることによって、巻戻防止ピン5を回動自在に軸支してある。このとき、前述した如く環状基部51の厚さ寸法は、両ヘッド部31,31の間の寸法より少し狭くしてあるため、環状基部51の両側面とヘッド部31,31との間には僅かな遊びが生じ、これによって、巻戻防止ピン5の他端が巻戻防止ピン5の長手方向と直交する方向へ揺動し得るようになしてある。
【0027】
従って、巻戻防止ピン5が閉じた状態の場合、巻戻防止ピン5の環状基部51の底部51aがヒンジ部3の底部32に当接して、巻戻防止ピン5が側柱部2,2の長手方向と略直交する姿勢で巻戻防止ピン5の回動が停止すると共に、その姿勢で、巻戻防止ピン5がヒンジ部3の底部32に担持される。
【0028】
また、図4及び図2に示した如く、ロック部4は、平板片状の側壁部41,41を、一方の側柱部2の奥行き方向へ所要寸法を隔てて設けてなり、両側壁部41,41の先端部から、側壁部41,41の間の内側へ向かってアーチ状に成形した延出部42,42を突出させて、前記巻戻防止ピン5の他端部を嵌入させる側面視が矩形略C字の嵌入部44になしてある。そして、両延出部42,42の先端に、嵌入部44の底部へ向かう係合凸部43,43がそれぞれ設けてある。
【0029】
一方、巻戻防止ピン5の他端部には、前述した延出部42,42の間を通過し得るようにその幅寸法を他の部分の幅寸法より狭くして、前記ロック部4に嵌入係止する係止部52が形成してある。
【0030】
図4は、図1に示したロック部4に巻戻防止ピン5の係止部52が係止している状態を示す拡大側面図である。図4に示した如く、係止部52は、側面視が縦長長方形状の基部55を備えており、基部55の幅寸法はロック部4の延出部42,42の間の寸法より少し狭くしてある。基部55は延出部42,42間を通過して嵌入部44内に嵌入させてあり、嵌入部44内に嵌入された基部55の前記延出部42,42間に臨む面の両側縁にそれぞれ、適宜長さの壁部53,53を立設することによって、両壁部53,53の間内を前記係合凸部43に係合させる係合凹部54にしてある。巻戻防止ピン5は、嵌入部44の深さ方向及び幅方向へ僅かに可撓性を有しており、ロック部4の延出部42,42間内に係止部52が挿入するまで回動された巻戻防止ピン5を嵌入部44の深さ方向及び幅方向へ撓ませることによって、係止部52の係合凹部54をロック部4の係合凸部43,43の何れか一方に係合させることによって、巻戻防止ピン5がロック部4にワンタッチでロックされるようになっている。
【0031】
次に、かかる留具を用いてバンドの端部を留める方法について説明する。
【0032】
図5は、図1に示した留具の使用様態を示す斜視図であり、図中、Hはハウスである。ハウスHは、適宜距離を隔てて互いに平行に立設したアーチ状の複数の骨パイプBP,BP,…を農業用ポリオレフィン系のシートSで覆ってなり、該シートSは、骨パイプBP,BP,…間に架設したシート止用条材(図示せず)にその一部を係止固定してある。また、ハウスHの両側下縁には、1又は複数の横パイプSP(SP)がハウスHの長手方向の略全領域に亘って前記骨パイプBP,BP,…に連結固定してある。
【0033】
1又は複数間隔で骨パイプBP,BP,…上には、農業用ポリオレフィン製であり120mm程度の幅の帯状のバンド(帯体)V,V,…が配置してある。そして、各バンドV,V,…はその端部を、対応する横パイプSP(SP)に掛け回して各バンドV,V,…の端部近傍の部分に重積させてあり、各重積部分をそれぞれ留具1,1,…に巻回させて、各バンドV,V,…を展張させると共に、各バンドV,V,…の端部を留具1,1,…によって留めてある。
【0034】
このように、骨パイプBP,BP,…上にバンドV,V,…を配置した場合、シートSの相隣る骨パイプBP,BP,…間の部分が、バンドV,V,…によって変形されず、例えば当該骨パイプBP,BP,…の適宜位置に凸状部材を配設することによって、シートSの当該凸状部材より下方の部分の巻き上げ・巻き戻し作業を容易に行なうことができる。
【0035】
一方、図8に示した如く、骨パイプBP,BP,…の間に、60mm程度の幅のバンドV,V,…を配置して、前同様、横パイプSP(SP)に掛け回したバンドV,V,…の端部近傍の重積部分をそれぞれ留具1,1,…に巻回させて、各バンドV,V,…を展張させると共に、各バンドV,V,…の端部を留具1,1,…によって留めることもできる。このように、幅が広いバンドVを用いることによって、農業用ポリオレフィン製のシートSに対しても、バンドVとシートSとの擦れによってシートSの表面に疵が生じることを可及的に防止できる。
【0036】
図6は、図5に示したハウスHの部分拡大斜視図であり、図7は、図6に示した留具1、シートS、及び骨パイプBPの部分拡大側面図である。なお、両図中、図5に示した部分に対応する部分には同じ番号を付してある。
【0037】
図6及び図7に示した如く、巻戻防止ピン5を開いた状態で、バンドVの2重になった部分を留具1の開口9から挿通部8内に挿入させ、その状態で、両巻回杆部6,7を回転軸にして、両側柱部2,2を適宜の方向へ回転させることによって、両巻回杆部6,7の周りにバンドVを巻回させて、バンドVを展張させる。
【0038】
そして、巻戻防止ピン5の係止部52に設けた係合凹部54を、両側柱部2,2の回転方向の側、即ち側面視において左回転であれば左側の係合凸部43に係合させ、巻戻防止ピン5の外側からバンドVを巻戻防止ピン5に当接させる。これによって、バンドVが巻き戻ることを防止する。
【0039】
このように、巻戻防止ピン5の係止部52を、ロック部4を構成する嵌入部44内に嵌入させ、係止部52に設けた係合凹部54をロック部4に設けた係合凸部43に係合させることによって、巻戻防止ピン5をロックするようにしてあるため、強風でハウスHのシートSが煽られて、バンドVに撓みが生じた場合であっても、ロック部4の嵌入部44内に嵌入されてロックされた巻戻防止ピン5の係止部52がロック部4から外れることが防止される。
【0040】
また、より広い幅のバンドVに適用すべく、両側柱部2,2の間の寸法及び巻戻防止部5の寸法を長くした場合であっても、巻戻防止ピン5を回動させることによって、巻戻防止ピン5の係止部52がロック部4の嵌入部44内に確実に嵌入するため、巻戻防止ピン5をワンタッチで確実にロックすることができる。更に、巻戻防止ピン5は、その一端がヒンジ部3に回動自在に軸支されているため、巻戻防止ピン5を繰り返し開閉させても、ヒンジ部3の強度が低下することが防止され、留具1の寿命が長い。
【0041】
ところで、ロック部4による巻戻防止ピン5のロックは、係止部52に設けた係合凹部54を嵌入部44に設けた何れかの係合凸部43,43に係合させることによって、簡単に行なうことができる。また、このように巻戻防止ピン5の係合部52を嵌入部44の何れかの係合凸部43,43に係合させて巻戻防止ピン5の他端部をロックすることができるため、バンドVの巻回杆部6,7への巻回方向に拘らず、巻戻防止ピン5の他端部をロックすることができる。
【0042】
更に、ヒンジ部3の両ヘッド部31,31間の底部32平坦面にしてあり、巻戻防止ピン5の環状基部51の底部51aも平坦面にしてあり、巻戻防止ピン5を回動させた場合、環状基部51の底部51aが前記ヒンジ部3の底部32に当接して、巻戻防止ピン5を閉姿勢で支持するようにしてあるため、簡単な構造で、巻戻防止ピン5の回動を所要の閉姿勢で停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る留具の斜視図である。
【図2】本発明に係る留具の斜視図である。
【図3】図2に示した一方の側柱部の側面図である。
【図4】図1に示したロック部に巻戻防止ピンの係止部が係止している状態を示す拡大側面図である。
【図5】図1に示した留具の使用様態を示す斜視図である。
【図6】図5に示したハウスの部分拡大斜視図である。
【図7】図6に示した留具、シート、及び骨パイプの部分拡大側面図である。
【図8】図1に示した留具の他の使用様態を示す斜視図である。
【図9】従来の留具の正面図である。
【図10】図9に示した留具の使用様態を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 留具
2 側柱部
2a 突出防止凸部
3 ヒンジ部
4 ロック部
5 巻戻防止ピン
6 巻回杆部
7 巻回杆部
8 挿入部
9 開口
31 ヘッド部
32 底部
33 止ピン
41 側壁部
42 延出部
43 係合凸部
44 嵌入部
51 環状基部
51a 底部
52 係止部
53 壁部
54 係合凹部
55 基部
H ハウス
BP 骨パイプ
SP 横パイプ
S シート
V ベルト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
適当な距離を隔てて互いに平行に配した両側柱部の一端側に、帯体を挿入する挿入部と前記帯体を巻回させる巻回部とが設けてあり、両側柱部の他端側に前記巻回部に巻回させた帯体の巻き戻りを防止する巻戻防止部が開閉自在に設けてあり、巻戻防止部が開状態で、前記巻回部に帯体の端部及び/又はその近傍を巻回させて、巻戻防止部を閉状態になすことによって、当該帯体の端部を留める留具において、
一方の側柱部の他端に設けたヒンジ部に杆状の巻戻防止部の一端が、前記側柱部の長手方向と交わる方向の軸周りに回動自在に軸支してあり、他方の側柱部の他端には、環状体の一部に開口を設けた嵌入部内に前記巻戻防止部の他端部を嵌入させてロックするロック部が設けてあることを特徴とする留具。
【請求項2】
前記嵌入部は、他方の側柱部の他端に所要距離を隔てて立設した両側壁部の先端部にそれぞれ両側壁部の内側へ延出させた延出部を設けてなり、両延出部には嵌入部の底部へ向かう凸部がそれぞれ設けてあり、
前記巻戻防止部の他端部は両延出部の間を通過し得る幅寸法になしてあり、この他端部には、前記凸部に係合させる係合部が設けてある
請求項1記載の留具。
【請求項1】
適当な距離を隔てて互いに平行に配した両側柱部の一端側に、帯体を挿入する挿入部と前記帯体を巻回させる巻回部とが設けてあり、両側柱部の他端側に前記巻回部に巻回させた帯体の巻き戻りを防止する巻戻防止部が開閉自在に設けてあり、巻戻防止部が開状態で、前記巻回部に帯体の端部及び/又はその近傍を巻回させて、巻戻防止部を閉状態になすことによって、当該帯体の端部を留める留具において、
一方の側柱部の他端に設けたヒンジ部に杆状の巻戻防止部の一端が、前記側柱部の長手方向と交わる方向の軸周りに回動自在に軸支してあり、他方の側柱部の他端には、環状体の一部に開口を設けた嵌入部内に前記巻戻防止部の他端部を嵌入させてロックするロック部が設けてあることを特徴とする留具。
【請求項2】
前記嵌入部は、他方の側柱部の他端に所要距離を隔てて立設した両側壁部の先端部にそれぞれ両側壁部の内側へ延出させた延出部を設けてなり、両延出部には嵌入部の底部へ向かう凸部がそれぞれ設けてあり、
前記巻戻防止部の他端部は両延出部の間を通過し得る幅寸法になしてあり、この他端部には、前記凸部に係合させる係合部が設けてある
請求項1記載の留具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2006−217862(P2006−217862A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−34321(P2005−34321)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(597088591)佐藤産業株式会社 (30)
【出願人】(503423317)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(597088591)佐藤産業株式会社 (30)
【出願人】(503423317)
【Fターム(参考)】
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