説明

留置針組立体

【課題】穿刺後に格別の操作を要することなく内針を筐体内に収納できる留置針組立体を提供する。
【解決手段】留置針組立体1は、筐体5を保持して対象部位に内針3及び外針21を穿刺した後、筐体5を保持している手の親指又は人差し指で操作部64、83を押すだけで、内針基4の揺動の阻止が解除されて内針基4が揺動し、これにより押圧スプリング7に抗した内針基4の支持が解除され、押圧スプリング7により内針基4が基端方向へ移動され、内針3が筺体5内へ収容されるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管等に穿刺されて輸液ライン等との接続に用いられる留置針を備える留置針組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外針に内針を挿入し、内針に案内させて外針を血管等に穿刺した後、内針を抜去して留置された外針に輸液ラインを接続するようにした留置針が知られている。しかし、従来の留置針では外針から内針を抜去する際に、血管に留置した外針から患者の血液が流出して医師や看護師に付着したり、抜去した内針を医師や看護師に誤って穿刺したりすることがある。このとき、患者がHIV等の感染症の患者である場合、付着した血液や誤穿刺により医師や看護師が罹患するおそれがある。
【0003】
そこで、内針と、内針を出入自在に設けたケースと、内針とケースとの間に取り付けられたバネとを備える留置針組立体が知られている(例えば特許文献1参照)。この留置針組立体では、内針がケースから突出しているときは、バネが、内針をケース内に収納する方向に付勢した状態でストッパにより係止されている。そして、医師や看護師が、ストッパを直接操作し、バネがストッパにより係止された状態を解除すると、内針がバネの弾性力により後退して穿刺部位から抜去され、ケース内に収納される。
【0004】
この留置針組立体によれば、抜去された内針はケース内に収納されるので、医師や看護師に対する内針の誤穿刺を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−49607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の留置針組立体によれば、医師や看護師が、穿針後にストッパを別途操作し、バネがストッパにより係止された状態を解除しなければ、バネの弾性力による内針の後退を発動することができないという不都合がある。
【0007】
本発明の目的は、かかる従来技術の問題点に鑑み、穿刺後に格別の操作を要することなく内針を筐体内に収納できる留置針組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る留置針組立体は、管状の外針及び該外針の基端部が固定される外針基と、前記外針及び外針基の内部に挿通可能な内針及び該内針の基端部が固定される内針基と、前記内針基を軸方向及び径方向に移動可能に収納する筒状の筐体と、前記外針基を取外し自在に保持し、前記筐体に対して所定の第1位置から前記外針の針先方向の第2位置まで移動可能な移動部材と、前記内針基を前記筐体の基端方向へ付勢する付勢部材とを備え、前記移動部材は、前記第1位置にあるときに前記筐体内での前記内針基の径方向の移動を阻止する移動阻止部と、前記第2位置にあるときに前記内針基を前記筐体内で径方向に押圧する押圧部とを有し、前記内針基は、前記移動部材が前記第1位置にあるときは、前記付勢部材による付勢力に抗して前記筐体の前方位置に係止されると共に、前記移動阻止部によって径方向への移動が阻止され、前記移動部材が前記第2位置に移動されたときは、前記内針基の前記移動阻止部による径方向への移動阻止が解除され、前記内針基が前記押圧部により前記筐体内で径方向に押圧されて前記筐体との係止が解除され、前記付勢部材の付勢力により前記筐体の基端方向に移動され、前記内針の先端部が前記筐体内に収容されることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、筐体を保持して対象部位に内針及び外針を穿刺した後、筐体を保持している手の親指又は人差し指で移動部材を第2位置へ移動させて外針のみを前進させる操作を行うだけで、内針基は、径方向への移動阻止が解除され、筐体との係止が解除され、付勢部材により筐体の基端方向へ移動されるので、格別の操作を要することなく内針を筐体内に収納することができる。
【0010】
本発明においては、前記内針基は、外周面に前記筐体に係止される被係止部と、前記移動部材の押圧部に押圧される被押圧部とが形成され、前記筐体は、内周面に前記被係止部を係止する係止部と、前記係止部よりも前方位置で前記内針基を支持する支持部とが形成され、前記付勢部材は、前記筐体の支持部と前記内針基との間に挟持され、前記移動部材は、前記押圧部が前記筐体内に挿入されて前記内針基の基端部を超えて前記筐体の基端側に配置され、前記移動阻止部が前記内針基を挟んで前記押圧部の反対側に配置されていてもよい。
【0011】
これによれば、移動部材が第1位置に位置するときに必要な内針基の筐体前方位置における係止及び径方向への移動阻止と、移動部材が第2位置へ移動したときに必要な該径方向への移動阻止の解除及び該筐体との係止の解除を、簡便な構成により実現することができる。
【0012】
また、本発明においては、前記移動部材が前記第1位置から第2位置へ移動されるとき、該移動部材が前記筺体から抜けるのを防止する抜け防止機構と、該移動部材が該第2位置へ移動された後、該移動部材が該第1位置の方へ戻るのを防止する戻り防止機構とを備えていてもよい。
【0013】
これによれば、移動部材が筺体から抜け落ちて穿刺部位に損傷を与えたり、移動部材が第1位置の方へ戻って移動部材の先端から内針が露出したりするのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る留置針組立体の分解斜視図である。
【図2】図1の留置針組立体における内針基の詳細を示す図である。
【図3】図1の留置針組立体におけるストッパの詳細を示す図である。
【図4】図1の留置針組立体におけるケースの詳細を示す図である。
【図5】図1の留置針組立体における外筒の詳細を示す図である。
【図6】図1の留置針組立体におけるケースが移動するときの様子を示す断面図である。
【図7】図1の留置針組立体におけるケースの張出し部が外筒の戻り防止部を乗り越えたときの様子を示す図である。
【図8】図1の留置針組立体における操作部の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る留置針組立体の分解斜視図である。
【0016】
図1に示すように、留置針組立体1は、対象部位に留置される留置部2と、留置部2に挿入される内針3と、内針3の基端部が固定される内針基4と、内針基4を軸方向及び径方向に移動可能に収納して保持する筐体5と、筐体5の先端部に対し、所定の第1位置からその先端側の第2位置へ摺動し得るように取り付けられるケース6と、内針基4を、筐体5の基端方向へ付勢する圧縮スプリング7とを備える。
【0017】
ケース6は、本発明における移動部材を構成する。また、圧縮スプリング7は、本発明における付勢部材を構成する。なお、第1位置は、後述するように、図6(a)におけるケース6の位置であり、第2位置は、図6(c)及び(d)におけるケース6の位置である。
【0018】
留置部2は、管状の外針21と、外針21の基端部が固定された外針基22とを備える。外針21は、先端部に削ぎ竹状の穿刺部21aを備える。内針3は、その先端が外針21の先端から突出するように、外針21及び外針基22の内部に挿入される。筐体5は、外筒8と、外筒8に固定されるストッパ9とを備える。筐体5の先端部には、プロテクタ10が取り付けられ、留置部2や内針3が保護される。
【0019】
図2は、内針基4の詳細を示す。図2(a)は平面図、図2(b)は正面図、図2(c)は左側面図、図2(d)は右側面図、図2(e)は図2(c)のA−A断面図、そして図2(f)は図2(b)のB−B断面図である。
【0020】
図2に示すように、内針基4は、内針3が挿入され、固定される中空円筒状の内針固定部41と、内針固定部41の基端側に隣接し、内針固定部41よりも径が大きい中空円筒状の穿刺確認部42と、穿刺確認部42の基端側に隣接し、穿刺確認部42よりも径が大きい中空円筒状のフィルタ挿入部43とを備える。内針固定部41から穿刺確認部42へ移行する部分は、圧縮スプリング7により押圧される段差部44となっている。
【0021】
フィルタ挿入部43側面の上方側には、ケース6が第1位置から第2位置へ移動されるときにケース6により下方へ押下される突出部45が設けられる。突出部45には、該押下を可能にするための傾斜面が設けられる。突出部45は、本発明における被押圧部を構成する。
【0022】
穿刺確認部42側面の上方側には溝部46が設けられる。溝部46は、内針基4の軸線に直交する方向に沿って延在する。溝部46を構成する両側の内面のうちの内針基4先端側の面は、ストッパ9により支持される被支持面46aとなっている。被支持面46aは本発明における被係止部を構成する。
【0023】
図2(f)のように、穿刺確認部42の左右方向両側の側面は、内針基4の軸線に平行に上下方向に延びる切断面において若干切断されたような形状を有する。留置針組立体1をコンパクトなものとするためである。溝部46は、この一方の切断面から他方の切断面まで延在する。
【0024】
穿刺確認部42で生じる血液のフラッシュバックを視認できるように、穿刺確認部42の周囲は透明の部材で構成される。フィルタ挿入部43には、気体のみを通過させ、液体の通過を抑制するフィルタ(散気栓)47(図1)が挿入される。
【0025】
図3は、ストッパ9の詳細を示す。図3(a)は上面図、図3(b)は正面図、図3(c)は下面図、図3(d)は左側面図、図3(e)は右側面図、図3(f)は図3(d)のA−A断面図、図3(g)は図3(b)のB−B断面図、そして図3(h)は図3(b)のC−C断面図である。
【0026】
図3に示すように、ストッパ9は、内針基4の溝部46に嵌合する凸部91と、凸部91のストッパ9先端側に隣接する半円筒状の半円筒部92と、半円筒部92の先端面を構成し、内針基4の先端側を支持する支持部93と、凸部91のストッパ9基端側に隣接する部分円筒部94と、筐体5の基端面を構成する円盤状の基端部材95と、部分円筒部94及び基端部材95間を連結する連結部96とを備える。
【0027】
半円筒部92は、内針基4の溝部46より先端側の部分の上側半分を覆う。連結部96は、その存在範囲において、筐体5の上部を構成する。部分円筒部94は、その存在範囲において、図3(h)のように、筐体5の上部から、筐体5の基端方向に見て右側の上下方向半分までを構成する。
【0028】
支持部93は、内針基4を基端方向へ抜去し得るように、かつ内針基4の基端側が所定の支持位置から支持解除位置まで揺動して径方向へ移動し得るように、内針基4の先端側を支持する。なお、後述のように、内針基4は、支持解除位置まで揺動した場合、圧縮スプリング7の付勢力により支持部93から抜去されることになる。
【0029】
凸部91は、図3(g)のように、内針基4の溝部46との嵌合に適合した形状を有する。凸部91のストッパ9先端側の面は、内針基4の被支持面46aを支持する支持面91aとなっている。支持面91aは、内針基4が上述の支持位置に位置するときに圧縮スプリング7による付勢力に抗して被支持面46aを支持し、かつ内針基4が上述の支持解除位置まで揺動されたときに該支持が解除されるように形成される。支持面91aは、本発明における係止部を構成する。
【0030】
支持部93は、ストッパ9の先端側端部に設けられ、下端が開放された部分円環状で平板状の部材として構成される。該円環の軸線は、筐体5の軸線に一致する。半円筒部92の外径及び内径はそれぞれ、部分円筒部94の外径及び内径よりも小さい。半円筒部92の内径は、内針基4の穿刺確認部42の外径と同程度の大きさを有する。
【0031】
図4は、ケース6の詳細を示す。図4(a)は上面図、図4(b)は正面図、図4(c)は左側面図、図4(d)は右側面図、図4(e)は図4(c)のA−A断面図、そして図4(f)は図4(b)のB−B断面図の一部である。
【0032】
図4に示すように、ケース6は、外針基22の基端部が外嵌されて取外し自在に取り付けられる中空円筒状の外針基取付部61と、外針基取付部61の基端側に隣接し、ストッパ9の半円筒部92が嵌合される中空円筒状の円筒部62と、円筒部62の基端側に隣接する部分円筒状の揺動阻止部63と、円筒部62の上部に設けられ、ケース6を第1位置から第2位置へ移動させるための操作部64とを備える。揺動阻止部63は、内針基4の径方向の移動を阻止するものであり、本発明の移動阻止部を構成する。
【0033】
揺動阻止部63は、ケース6が第1位置に位置するときに上述の揺動(径方向への移動)を阻止しかつケース6が第2位置へ移動するときに該阻止を解除するように形成される。この目的のために、揺動阻止部63の内面は、内針基4のフィルタ挿入部43の側面の、内針基4の先端方向に見て右側を覆う半円筒状の形状を有し、フィルタ挿入部43の外径にほぼ等しい径を有する。
【0034】
揺動阻止部63の基端側には、ケース6が第2位置へ移動するときに内針基4の突出部45と接触して突出部45を下方に押下し、内針基4に上述の揺動を生じさせる押圧部65を備える。押圧部65は、ストッパ9の凸部91と協働して抜け防止機構を構成する。すなわち、押圧部65は、ケース6が第1位置から第2位置へ移動されるときにストッパ9の凸部91に接触し、ケース6が筐体5から抜け落ちるのを防止する。
【0035】
すなわち、ケース6は、押圧部65が筐体5内に挿入されて内針基4の基端部を超えて筐体5の基端側に配置され、揺動阻止部63が内針基4を挟んで押圧部65の反対側に配置されている。
【0036】
操作部64の上面は、筐体5を保持している手の親指又は人差し指でケース6を筐体5の先端方向に押しやすいように、先端側がやや上方に反り返った面となっている。操作部64と円筒部62との間は、円筒部62と同じ長さで一定の横幅を有する結合部66を介して結合されている。ただし、結合部66の、ケース6の先端方向に見て左側の側面の後端部には、左側に張り出した張出し部67が設けられる。
【0037】
張出し部67は、ケース6が第1位置から第2位置へ移動されたとき、後述する外筒8の戻り防止部82と協働して、第1位置の方へ戻るのを阻止する。そのために、張出し部67の第1位置側は移動方向に垂直な面となっており、第2位置側は傾斜面となっている。
【0038】
図5は外筒8の詳細を示す。図5(a)は平面図、図5(b)は正面図、そして図5(c)は右側面図である。図5に示すように、外筒8は、底面及び上面のない中空円筒状の形状を有する。ただし、外筒8の上部は、基端から先端までの全体にわたってスリット状に開放しているスリット部81となっている。
【0039】
スリット部81の先端側は、ケース6の結合部66の横幅と同等の幅を有し、結合部66を第1位置から第2位置まで案内する案内部81aとなっている。案内部81aの基端側に隣接するスリット部81の部分は、ストッパ9の連結部96の幅に適合した一定の幅を有する。
【0040】
スリット部81の先端側には、上述のケース6の張出し部67と協働して戻り防止機構を構成する戻り防止部82が設けられる。戻り防止部82は、スリット部81からの切れ込みにより形成され、スリット部81の長さ方向に延びた片持ち梁状の部分の自由端において、スリット部81内に突出した部分として構成される。これにより戻り防止部82は、ケース6が第1位置から第2位置へ移動するときに、ケース6の張出し部67によって弾性的に押圧され、復帰することができるようになっている。
【0041】
戻り防止部82の外筒8基端側の面は張出し部67が乗り越え易いように傾斜面となっている。戻り防止部82の外筒8先端側の面は、乗り越えた張出し部67が基に戻るのを阻止できるように、外筒8の軸線に垂直な面となっている。
【0042】
留置針組立体1の組立は次のようにして行われる。すなわち、図1〜図5から理解されるように、まず、圧縮スプリング7を圧縮しながら、その一端が、内針基4の段差部44を押圧するようにして、内針基4の内針固定部41に装着する。
【0043】
次に、内針基4に対し、ストッパ9を上方から装着する。すなわち、ストッパ9先端の支持部93に内針固定部41が嵌合して支持部93が圧縮スプリング7の他端を押圧し、かつ内針基4の溝部46にストッパ9の凸部91が嵌合するように、内針基4に対してストッパ9を配置する。このとき、ストッパ9の支持面91aは、圧縮スプリング7の付勢力に抗して、内針基4の被支持面46aを支持することになる。
【0044】
これにより、内針基4の先端側は、支持部93により、内針基4の基端側が下方に揺動し得るように支持される。ただし、内針基4の基端側は、被支持面46aが支持面91aで支持されるので、ストッパ9に固定される。
【0045】
次に、ケース6を、図1の姿勢状態から、ケース6の先端側に向かって時計回りに90°程度回転させた状態で、ストッパ9の半円筒部92がケース6の円筒部62に嵌合するように、ストッパ9の先端側から基端方向に移動させる。ストッパ9先端の支持部93が、ケース6の円筒部62の先端側端部に達すると、ケース6を、先端側に向かって反時計回りに90°程度回転させる。
【0046】
これにより、ケース6は、ストッパ9に対し、第1位置に取り付けられたことになる。このとき、ケース6の揺動阻止部63は、内針基4のフィルタ挿入部43の、先端側に向かって右側を覆い、フィルタ挿入部43が支持部93を中心として下方向に揺動するのを阻止した状態となる。
【0047】
また、押圧部65は、ストッパ9の内側において、その先端方向に位置する内針基4の突出部45、及びその背後のストッパ9の凸部91と対峙した状態となる。また、内針基4の内針固定部41の先端が、ケース6の外針基取付部61の先端から若干突出した状態となる。
【0048】
次に、内針3の基端部に接着剤を塗布し、該基端部を内針基4の内針固定部41に挿入して接着する。そして、内針3にシリコンを塗布する。また、内針3の詰まりが無いことを確認する。さらに、内針基4のフィルタ挿入部43に、上述のフィルタ(散気栓)47を挿入する。
【0049】
次に、円筒部62を先端側から外筒8の基端部に挿入し、外筒8の基端がストッパ9の基端部材95に接するまで、外筒8を、ケース6及びストッパ9に対してスライドさせる。このとき、ケース6の結合部66と、ストッパ9の連結部96とが、外筒8のスリット部81によって案内される。
【0050】
外筒8の基端がストッパ9の基端部材95に接すると、外筒8の基端と基端部材95との間に溶剤を付与して外筒8とストッパ9とを結合させる。これにより、外筒8の装着が完了し、ケース6は第1位置に位置した状態となる。
【0051】
次に、ケース6の外針基取付部61を留置部2の外針基22に嵌合することにより、留置部2をケース6に取り付ける。さらに、外筒8の先端部をプロテクタ10の基端部に挿入してプロテクタ10を外筒8に取り付ける。これにより、留置針組立体1の組立てが完了する。
【0052】
留置針組立体1の使用に際しては、まず、留置針組立体1からプロテクタ10を取り外し、外針21を露出させる。そして、外針基22がケース6の外針基取付部61に確実に取り付けられていることを確認する。次に、筐体5を保持し、内針3及び外針21を、血管の対象部位に穿刺する。このとき、内針3及び外針21が血管に穿刺されたことは、内針基4の穿刺確認部42において、血液のフラッシュバックが生じることにより確認することができる。
【0053】
なお、内針基4の基端部は、フィルタ挿入部43に挿入されたフィルタ(散気栓)47により閉塞されているので、内針基4の基端部から血液が流出することはなく、かつ先端側への血液の逆流が制限される。
【0054】
次に、外針21及び内針3を寝かせて血管に対する穿刺角度を浅くし、さらに数mm程度血管内に送る。次に、操作部64を、筐体5を保持している手の親指又は人差し指で押すことにより、外針21のみを血管内へさらに送出する。このとき、ケース6は、第1位置から第2位置へ移動する。
【0055】
図6は、ケース6が第1位置から第2位置へ移動するときの様子を示す断面図である。ケース6が第1位置に位置するとき、図6(a)に示すように、内針基4は、内針固定部41の先端側がストッパ9の支持部93によって揺動可能に支持され、ストッパ9の支持面91aにより、圧縮スプリング7の付勢力に抗して、内針基4の被支持面46aを介して支持されている。また、ケース6の揺動阻止部63がフィルタ挿入部43下部の、先端側に向かって右半分程度を覆っていることにより、フィルタ挿入部43の下方への揺動が阻止されている。
【0056】
この状態において、上述のようにしてケース6が図6(a)の第1位置から先端方向へ移動され、第2位置近傍に至ると、図6(b)のように、揺動阻止部63がフィルタ挿入部43の位置から外れて、フィルタ挿入部43よりも径の小さな穿刺確認部42の位置に移動する。これにより、揺動阻止部63による内針基4の揺動の阻止が解除されることになる。
【0057】
そして、ケース6が第2位置に至ると、図6(c)のように、ケース6の押圧部65が内針基4の突出部45に接触し、突出部45を押下する。これにより、内針基4がストッパ9の支持部93を中心として揺動し、内針基4のフィルタ挿入部43が下方に変位する。これに伴い、ストッパ9の支持面91aは下方に変位し、内針基4の被支持面46aを支持し得る位置から外れる。これにより、支持面91aによる被支持面46aの支持が解除される。
【0058】
これにより、図6(d)のように、圧縮スプリング7が伸張し、内針基4をストッパ9の基端部材95に接するまで移動させる。これに伴い、内針基4に固定された内針3は外針21から引き抜かれ、筐体5内に収容される。
【0059】
なお、ケース6が第2位置に到達すると、図6(c)のように、ケース6の押圧部65がストッパ9の凸部91に接触するので、ケース6のそれ以上の移動は阻止される。また、ケース6が第2位置に到達するとき、ケース6の張出し部67が外筒8の戻り防止部82を乗り越える。これにより、図7のように、張出し部67のケース6基端側端面が、戻り防止部82のケース6先端側端面と対向した状態となるので、第2位置に到達したケース6は、第1位置の方向へ戻ることが不能となる。
【0060】
この後、ケース6の外針基取付部61を外針基22から取り外すことにより、外針基22を伴う外針21を、対象部位に留置することができる。留置された外針基22に輸液ライン等を接続することにより、輸液等の処置が施される。
【0061】
以上のように、本実施形態によれば、筐体5を保持して対象部位に内針3及び外針21を穿刺した後、筐体5を保持している手の親指又は人差し指で操作部64を押して外針21のみを血管内へさらに送出するだけで、内針基4の揺動の阻止が解除されて内針基4が揺動し、これにより押圧スプリング7(付勢部材)に抗した内針基4の支持が解除され、押圧スプリング7により内針基4が基端方向へ移動され、内針3が筺体5内へ収容されるので、格別な操作を要することなく内針3を筺体5内に収納することができる。
【0062】
また、筺体5を、外筒8と、外筒8に固定され、支持部93及び支持面91aを備えたストッパ9とで構成し、押圧スプリング7を、ケース6(移動部材)が第1位置に位置するとき、支持部93の内面と、内針基4との間に介在させるようにしたため、ストッパ9に対して、支持部93及び支持面91a間に、圧縮コイルばね7によって内針基4を保持させることができる。
【0063】
そしてその後に、ケース6や外筒8を容易に組み付けることができる。したがって、留置針組立体1を容易に組み立てることができる。
【0064】
また、ケース6が第1位置から第2位置へ移動されるとき、ケース6が筺体5から抜けるのを防止する抜け防止機構と、ケース6が第2位置へ移動された後、ケース6が第1位置の方へ戻るのを防止する戻り防止機構とを設けたため、対象部位への穿刺後にケース6が筺体5から抜け落ちて穿刺部位に損傷を与えたり、ケース6が第1位置の方へ戻って穿刺部位から外針21が外れたりするのを防止することができる。
【0065】
なお、本発明は上述実施形態に限定されない。例えば、上述においては、ケース6を第2位置へ移動させるための操作部として、先端側がやや上方に反り返った上面を有する操作部64を採用したが、この代わりに、図8に示すような操作部83を採用してもよい。図8(a)は操作部83の上面図であり、図8(b)は正面図である。図8に示すように、操作部83は、前端側の操作面83a及び後端側の操作面83bを有する。操作面83a及び83bはそれぞれ、操作部83の前端及び後端から中央部にかけて上方に反った形状を有する。
【符号の説明】
【0066】
1…留置針組立体、2…留置部、3…内針、4…内針基、5…筐体、6…ケース(移動部材)、7…圧縮スプリング(付勢部材)、8…外筒、9…ストッパ、21…外針、22…外針基、45…突出部(被押圧部)、46a…被支持面(被係止部)、63…揺動阻止部(移動阻止部)、64,83…操作部、65…押圧部、91a…支持面(係止部)、93…支持部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の外針及び該外針の基端部が固定される外針基と、
前記外針及び外針基の内部に挿通可能な内針及び該内針の基端部が固定される内針基と、
前記内針基を軸方向及び径方向に移動可能に収納する筒状の筐体と、
前記外針基を取外し自在に保持し、前記筐体に対して所定の第1位置から前記外針の針先方向の第2位置まで移動可能な移動部材と、
前記内針基を前記筐体の基端方向へ付勢する付勢部材とを備え、
前記移動部材は、前記第1位置にあるときに前記筐体内での前記内針基の径方向の移動を阻止する移動阻止部と、前記第2位置にあるときに前記内針基を前記筐体内で径方向に押圧する押圧部とを有し、
前記内針基は、前記移動部材が前記第1位置にあるときは、前記付勢部材による付勢力に抗して前記筐体の前方位置に係止されると共に、前記移動阻止部によって径方向への移動が阻止され、
前記移動部材が前記第2位置に移動されたときは、前記内針基の前記移動阻止部による径方向への移動阻止が解除され、前記内針基が前記押圧部により前記筐体内で径方向に押圧されて前記筐体との係止が解除され、前記付勢部材の付勢力により前記筐体の基端方向に移動され、前記内針の先端部が前記筐体内に収容されることを特徴とする留置針組立体。
【請求項2】
前記内針基は、外周面に前記筐体に係止される被係止部と、前記移動部材の押圧部に押圧される被押圧部とが形成され、
前記筐体は、内周面に前記被係止部を係止する係止部と、前記係止部よりも前方位置で前記内針基を支持する支持部とが形成され、
前記付勢部材は、前記筐体の支持部と前記内針基との間に挟持され、
前記移動部材は、前記押圧部が前記筐体内に挿入されて前記内針基の基端部を超えて前記筐体の基端側に配置され、前記移動阻止部が前記内針基を挟んで前記押圧部の反対側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の留置針組立体。
【請求項3】
前記移動部材が前記第1位置から第2位置へ移動されるとき、該移動部材が前記筺体から抜けるのを防止する抜け防止機構と、該移動部材が該第2位置へ移動された後、該移動部材が該第1位置の方へ戻るのを防止する戻り防止機構とを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の留置針組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−22263(P2013−22263A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160188(P2011−160188)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(390029676)株式会社トップ (106)
【Fターム(参考)】