説明

畜産廃水の微細藻類による資源化処理法

【課題】畜産廃水を浄化処理するとともに副産物を簡単に有効利用できる方法を提供する。
【解決手段】畜産廃水を固液分離し、その液分で微細藻類を培養し、該液を浄化するとともに、これによって得た微細藻類生長液にγ−ポリグルタミン酸又はγ−ポリグルタミン酸塩の放射線架橋体を主成分とする凝集剤を添加し、該微細藻類を凝集させ、これによって得た微細藻類湿物と、糖質を添加し乳酸菌混在下乳酸発酵させた液との混合物を、飼料として家畜に給与する、畜産廃水の微細藻類による資源化処理法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、畜産廃水の資源化処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、畜産廃水でクロレラ等微細藻類を培養し、該廃水の水質を浄化するとともに、該微細藻類を回収し、これを家畜飼料に再利用することは、古くから提案されていた。微細藻類は太陽光を利用し、酸素を発生し増殖し、これによって廃水が浄化されるため、微細藻類による処理は、活性汚泥法のように大量の空気曝気電力が必要なく、経済的かつ温室効果ガス排出削減につながる利点を有している。また、増殖した微細藻類を回収し、飼料として利用することにより、農家の経営にも役立つ。
微細藻類の回収には、自然沈降濃縮、遠心分離濃縮、凝集分離濃縮等がある。自然沈降濃縮は、沈降速度の小さい藻体も混在しているため回収率が悪い、遠心分離濃縮は、遠心分離機が高価であり、電力費も高価であるため経済性がない、凝集分離濃縮は、家畜が食べても無害で効率的な凝集剤がない、等の問題点があり、微細藻類の回収を農家が簡単に実施することが難しい面があった。近年、特許第3854466号に示したように、家畜が食べても害がない凝集剤が開発、商業化された。本発明はこの凝集剤を利用した発明である。
【特許文献1】特許第3854466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、畜産廃水を浄化処理するとともに副産物を簡単に有効利用できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
即ち、第1に、畜産廃水を固液分離し、その液分で微細藻類を培養し、該液を浄化するとともに、これによって得た微細藻類生長液にγ−ポリグルタミン酸又はγ−ポリグルタミン酸塩の放射線架橋体を主成分とする凝集剤を添加し、該微細藻類を凝集させ、これによって得た微細藻類湿物と、糖質を添加し乳酸菌混在下乳酸発酵させた液との混合物を、飼料として家畜に給与することを特徴とする畜産廃水の微細藻類による資源化処理法であり、第2に、畜産廃水を固液分離し、その液分で微細藻類を培養し、該液を浄化するとともに、これによって得た微細藻類生長液にγ−ポリグルタミン酸又はγ−ポリグルタミン酸塩の放射線架橋体を主成分とする凝集剤を添加し、該微細藻類を凝集させ、これによって得た微細藻類湿物と、糖質を添加し乳酸菌混在下乳酸発酵させた液との混合物を、飼料として家畜に給与するとともに、糖質を添加し乳酸菌混在下乳酸発酵させた液または該液と前記微細藻類湿物との混合物を水で希釈し、これを豚房に散布することを特徴とする畜産廃水の微細藻類による資源化処理法である。
【発明の実施形態】
【0005】
本発明の実施態様を図面により詳しく説明する。図1は、本発明の第1の実施態様を示す流れ図である。糞尿分離豚舎1から排出される廃水は、固液分離装置2に送られる。し渣・汚泥7は堆肥化装置16に送られる。分離液8は、微細藻類培養槽3へ送られる。ここで、微細藻類は光の照射を受け、酸素を発生し、BOD源、窒素、リン等を吸収し資化または分解する。共存するバクテリアは酸素を用いて、BOD源、窒素、リン等を吸収し資化または分解する。これによって、分離液8は浄化される。微細藻類培養槽3から微細藻類及び他の浮遊物と浄化された液の混合物である生長液mを抜き取り、微細藻類凝集分離槽4に投入する。ここでγ−ポリグルタミン酸又はγ−ポリグルタミン酸塩の放射線架橋体を主成分とする凝集剤14(以後ポリグル凝集剤14と記す)を添加し、攪拌後、静置しフロックを沈殿させる。その後、上澄液を処理水槽6に抜き取り、残った微細藻類濃縮液9を殺菌装置15で処理したのち、乳酸発酵槽5に送る。ここで、フスマ等糖質12及び乳酸菌11を添加混合し、乳酸発酵を行わせる。この微細藻類と乳酸発酵させた液との混合物である乳酸菌発酵液fは、水分を調整されたのち、ポンプ等で豚舎に送られ、飲料として給与される。豚は、1日に7〜10リットルの水分を必要とする。
固液分離装置2としては、自然沈降槽、スクリーン、遠心分離機、濾過機等従来の装置を用いればよい。これら装置で除去しきれないSSは、凝集剤を用いて除去するとよい。凝集剤としては、ポリグル凝集剤14は食害がないので好適である。自然沈降槽、スクリーン、遠心分離機、濾過機等従来の装置の後で、ポリグル凝集剤14を用いる事で、ポリグル凝集剤14費用がより安価となる。
微細藻類培養槽3は、水深10cm程度の開放池等従来の装置を用いればよい。微細藻類としては、クロレラ、セネデスムス等緑藻類が適する。これらは、沼等から容易に分離取得できる。糞尿分離豚舎1から排出される廃水のSSを除去したものを、BOD50以下に浄化するのに必要な開放池の面積は、豚1頭に対して0.5〜1平方メートルであり、これから生産されるクロレラは4〜20グラムである。クロレラは、栄養分、ミネラル、葉緑素に富み、健康補助食品として利用されており、豚の健康増進にも効果がある。
微細藻類凝集分離槽4は通常の貯水タンクでよく、1日の処理量以上の容量が適当である。フロック沈降後、70%程度の上澄液を抜き取り、残った微細藻類濃縮液9を殺菌装置15を経て乳酸発酵槽5に送る。または、フロックをろ過で分離し、これに清水を加えて乳酸発酵槽5に投入してもよい。
乳酸発酵槽5は通常の貯水タンクでよく、微細藻類濃縮液9にフスマ等糖質12及び乳酸菌11を添加混合し、望ましくは攪拌しながら、およそ一昼夜発酵させる。乳酸発酵により生じる有機酸によって雑菌が抑制される。これによって安全安心が確保される。
また本実施態様では、微細藻類、糖質、乳酸菌の投入を同時に行うが、あらかじめ乳酸発酵液を作っておき、これに微細藻類を投入し、混合放置後、豚に給与することもできる。乳酸菌は整腸作用があり、豚の健康増進にも効果がある。用いる乳酸菌は、ラクトバシラス属、ビフィドバクテリウム属、ラクトコッカス属、ペディオコッカス属、リューコノストック属、の1種または数種の混合株を用いる。
納豆菌等微生物由来のポリグル凝集剤14は、食べても安全な物質であると確認されているとともに、分子量1000万以上で、高い凝集活性を持ちかつ実用販売されているので好適である。生長液m1m3に対して200g程度添加するとよい。
殺菌装置15として、超音波殺菌装置、高電圧パルス殺菌装置、加熱殺菌装置、オゾン殺菌装置、紫外線殺菌装置が利用可能である。薬剤殺菌は、豚の飼料として好ましくないので本発明では用いない。
殺菌処理は、生長液mまたは微細藻類濃縮液9または微細藻類濃縮液9を脱水処理した後のケーキまたはこれに加水したものに対して行う。
更に、本発明の第2の実施態様については、前記「微細藻類、糖質、乳酸菌の投入を同時に行うが、あらかじめ乳酸発酵液を作っておき、これに微細藻類を投入し、混合放置後、豚に給与することもできる。」としたが、この微細藻類、糖質、乳酸菌の投入を同時にして得た乳酸発酵液あるいはあらかじめつくられた乳酸発酵液(微細藻類が入っていない)を水で希釈し、これを豚房に散布する。乳酸菌の作用で豚房内の雑菌が抑制される。
【発明の効果】
【0006】
以上のように、本発明は、γ−ポリグルタミン酸又はγ−ポリグルタミン酸塩の放射線架橋体による微細藻類の凝集と、乳酸発酵を組み合わせることにより、農家が簡単に実施可能な、畜産廃水を浄化処理するとともにクロレラ等微細藻類という副産物を簡単にかつ安全安心に有効利用できる方法を提供出来る。
更に、この乳酸菌を含む液を豚房に散布することで豚房内の雑菌が抑制されるという効果もある。
また、本発明が、養豚以外の畜産廃水に適用できる事は言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】は本発明の方法のプロセスを示す図面である。
【符号の説明】
1は糞尿分離豚舎、2は固液分離装置、3は微細藻類培養槽、4は微細藻類凝集分離槽、5は乳酸発酵槽、6は処理水貯留槽、7はし残渣・汚泥、8は分離液、9は微細藻類濃縮液、10は上澄液、11は乳酸菌、12は糖質、13は水、14はγ−ポリグルタミン酸又はγ−ポリグルタミン酸塩の放射線架橋体を主成分とする凝集剤、15は殺菌装置、16は堆肥化装置、mは生長液、fは乳酸菌発酵液である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畜産廃水を固液分離し、その液分で微細藻類を培養し、該液を浄化するとともに、これによって得た微細藻類生長液にγ−ポリグルタミン酸又はγ−ポリグルタミン酸塩の放射線架橋体を主成分とする凝集剤を添加し、該微細藻類を凝集させ、これによって得た微細藻類湿物と、糖質を添加し乳酸菌混在下乳酸発酵させた液との混合物を、飼料として家畜に給与することを特徴とする畜産廃水の微細藻類による資源化処理法。
【請求項2】
畜産廃水を固液分離し、その液分で微細藻類を培養し、該液を浄化するとともに、これによって得た微細藻類生長液にγ−ポリグルタミン酸又はγ−ポリグルタミン酸塩の放射線架橋体を主成分とする凝集剤を添加し、該微細藻類を凝集させ、これによって得た微細藻類湿物と、糖質を添加し乳酸菌混在下乳酸発酵させた液との混合物を、飼料として家畜に給与するとともに、糖質を添加し乳酸菌混在下乳酸発酵させた液または該液と前記微細藻類湿物との混合物を水で希釈し、これを豚房に散布することを特徴とする畜産廃水の微細藻類による資源化処理法。
【請求項3】
前記固液分離にγ−ポリグルタミン酸又はγ−ポリグルタミン酸塩の放射線架橋体を主成分とする凝集剤を用いることを特徴とする請求項1または請求項2記載の有機性廃水の微細藻類による資源化処理法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−235766(P2012−235766A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119703(P2011−119703)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(591110849)
【Fターム(参考)】