説明

畜肉加工食品又は畜肉様加工食品

【課題】
畜肉加工食品又は畜肉様加工食品において、従来の組織状大豆蛋白素材を使用した場合に比べその食感の向上を目指す事を課題とする。
【解決手段】
還元糖を0.5〜10重量%含む組織状大豆蛋白素材を用いて、水戻しした後に結着原料と共に混合し、得られた生地を成形,加熱することで、挽肉の肉粒感や肉特有の咀嚼時のほぐれ,消失感を有する、新たな畜肉加工食品又は畜肉様加工食品を得ることができる。好ましくは、粒形状と偏平形状の組織状大豆蛋白素材を組合わせ、少なくともその一方に還元糖が含まれるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜肉加工食品又は畜肉様加工食品に関する。詳しくは、還元糖を含む組織状大豆蛋白素材を使用した、畜肉加工食品又は畜肉様加工食品および、それらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、畜肉原料を取り巻く社会情勢は厳しくなる現状があり、畜肉の代替原料あるいは増量剤として大豆蛋白質等の植物性蛋白質が使用される傾向が強まっている。中でも、脱脂大豆や粉末状大豆蛋白素材を原料として組織化した組織状大豆蛋白素材は多様な用途に用いられており、ハンバーグやミートボール等の畜肉加工食品には挽肉の増量剤として粒形状あるいは偏平形状の組織状大豆蛋白が用いられている。この組織状大豆蛋白は膨化したパフ状のものが主流であり、挽肉様の食感を付与することを主目的として利用されている。
【0003】
一方、組織状大豆蛋白素材の食感の特徴として、咀嚼時のほぐれや消失感が挽肉に比べ劣るという点が挙げられる。その為に、比較的挽肉に近い形状や肉粒感を有していても、加工食品中への配合割合が多い場合には、外観は畜肉食品に極めて近いにもかかわらず、咀嚼時のほぐれや消失感が損なわれ、不自然な口残り、ほぐれにくさを生じる。
【0004】
また、組織状大豆蛋白素材の代表的な形状として、粒形状の顆粒タイプ,偏平形状のフレークタイプがある。顆粒タイプの特徴として、肉粒感には優れるものの、実際の畜肉ミンチに比べると咀嚼感が強すぎ、ほぐれ,口溶けが劣る傾向がみられる。一方フレークタイプは、肉粒感や咀嚼感はない為に食感的に畜肉に比較的馴染みやすいが、畜肉に比べるとほぐれ,口溶けが劣る傾向がみられる。
【0005】
従来より組織状大豆蛋白素材の食感改良について様々な研究がなされてきた。例えば、特許文献1のように、組織化する際にカルシウム塩を添加することで、硬くて弾力性に富み、噛み応えのある組織状大豆蛋白素材を得ることが知られている。また、特許文献2のように、組織化する際にクエン酸を添加することで、風味改良効果が得られるとともに、硬い咀嚼性ある食感を持った組織状大豆蛋白素材を得られることが知られている。いずれの組織状大豆蛋白素材も、硬くしっかりとした噛み応えある食感を得るための手法であり、ほぐれにくく口残りする食感を改良することは、目的とされていない。
このように、これまで得られている組織状大豆蛋白素材の食感改良方法では、適度な噛み応えを有しながらも、ほぐれやすく、口溶けよい食感を有する組織状大豆蛋白素材を得るには至っていない。
【0006】
一方特許文献3には、組織状大豆蛋白素材に還元糖を加えることで、メイラード反応を
起こし着色する方法が開示されているが、当該組織状大豆蛋白素材を用いた畜肉加工食品の食感改善効果を得るには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平06-165644号公報
【特許文献2】特開昭56-58460号公報
【特許文献3】W02008/036905パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、粒状あるいは挽肉状の組織状大豆蛋白を多量に使用した畜肉加工食品又は畜肉様加工食品に於いては、挽肉の肉粒感や肉特有の咀嚼時のほぐれ,消失感を有する食感を再現することが困難であった。
本発明はかかる実情に鑑みて、肉類を主体とする畜肉加工食品又は畜肉様加工食品において、従来の組織状大豆蛋白素材を使用した場合に比べその食感の向上を目指す事を課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題に鑑み、畜肉加工食品又は畜肉様加工食品に、還元糖を一定量含有する組織状大豆蛋白素材を添加することで、適度な噛み応えを有しながらも、ほぐれやすく、口溶けよい食感を有する畜肉加工食品および畜肉様加工食品が得られることを見出した。また、粒形状の組織状大豆蛋白素材と偏平形状(フレークタイプ)組織状大豆蛋白素材を組み合わせる事で、更に品質が向上することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は
(1)還元糖を0.5〜10重量%含む組織状大豆蛋白素材を使用してなることを特徴とする、畜肉加工食品又は畜肉様加工食品。
(2)組織状大豆蛋白素材が、偏平形状の組織状大豆蛋白素材と、粒形状の組織状大豆蛋白素材を組合わせたものであって、少なくともその一方の組織状大豆蛋白素材が還元糖を含むものである、(1)に記載の畜肉加工食品又は畜肉様加工食品。
(3)偏平形状である組織状大豆蛋白素材が、長径が7〜20mm、厚みが1〜5mmである、(2)に記載の畜肉加工食品又は畜肉様加工食品。
(4)粒形状である組織状大豆蛋白素材が、短径が1〜8mm、長径が3〜15mmである、(2)に記載の畜肉加工食品又は畜肉様加工食品。
(5)粒形状である組織状大豆蛋白素材が還元糖を含むものである、(2)に記載の畜肉加工食品又は畜肉様加工食品。
(6)還元糖を0.5〜10重量%含む組織状大豆蛋白素材を水戻しした後に、結着原料と共に混合し、得られた生地を成形、加熱することを特徴とする、畜肉加工食品又は畜肉様加工食品の製造方法。
(7)結着原料として、粉末状大豆蛋白素材又は畜肉から選ばれる1種以上を用いる、(6)に記載の製造方法。
(8)結着原料としてさらに卵白を混合する、(6)に記載の製造方法。
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、肉類を主体とする畜肉加工食品において、従来の組織状大豆蛋白素材を使用した場合に比べその食感を改良したり、又は食感を損なうことなく肉類の使用を減らすことが可能となる。またさらに肉類の使用量が少ないか又は実質的に使用しない畜肉様加工食品において肉類と同等の質感を再現することが可能となる。具体的には、いわゆるミートレスのハンバーグ様食品やミートボール様食品について、畜肉と遜色のない食感を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(畜肉加工食品又は畜肉様加工食品)
本発明において畜肉加工食品および畜肉様加工食品とは、以下のように区別する。すなわち、本発明では原料中における
「畜肉の使用量が加工食品中の30重量%以上」のものを畜肉加工食品とし、
「畜肉の使用量が加工食品中の30重量%未満」のものを畜肉様加工食品とする。
畜肉の使用量が0重量%のものは、特にミートレスの畜肉様加工食品と呼ばれるが、これも本発明の畜肉様加工食品に含める。畜肉としては牛,豚,鶏,馬,羊,鹿,猪,七面鳥,駝鳥,鯨等の鳥獣肉を単独でまたは組み合わせて使用することができるが、偶蹄目であり家畜としての供給量が多いことから、牛,豚が最も好ましい。畜肉の使用量は製品に求める品質やコンセプトに応じて適宜決定すればよく、例えばミートレス食品にするならば畜肉は全く使用しない。
【0012】
畜肉加工食品又は畜肉様加工食品は、一般に結着原料を主原料とする原材料をミキサーやサイレントカッター等の混練機で混練して生地を調製し、これを適当な大きさ,形状に成形し、蒸し,フライ,焼成等により加熱し、ヒートセットさせて得られるものをいう。得られた食品は冷蔵又は冷凍して流通させることができ、消費者が直接電子レンジ,煮込み,フライ,焼成等の調理を行うか、あるいは小売業者や外食業者が間接的に調理を行い、食に供される。
【0013】
畜肉加工食品は畜肉様加工食品又の具体例としては、ハンバーグ,パティ,ミートボール,ナゲット,つくね,ハム,ソーセージ,餃子,しゅうまい,肉饅頭等が挙げられる。尚、本発明の「加工食品」は、畜肉の肉組織そのものを崩すことなく加熱処理した、ステーキ,唐揚げ,豚カツのような食品を含めない。
【0014】
畜肉を30重量%以上含有するような畜肉加工食品の場合、本発明では還元糖を0.5〜10重量%含む組織状大豆蛋白素材を使用して、好ましくは、少なくともその一方の組織状大豆蛋白素材が還元糖を含むものである、長径が7〜20mm、厚みが1〜5mmの偏平形状である組織状大豆蛋白素材と、短径が1〜8mm、長径が3〜15mmである粒形状の組織状大豆蛋白素材を組み合わせて使用して、畜肉と一部置換して使用することにより、適度な噛み応えを有しながらも、ほぐれやすく、口溶けよい食感を維持しつつ畜肉の使用量を減らし、コストダウンを図り、場合によっては畜肉により繊維感を付与し、品質を改良することができる。
【0015】
また畜肉の含有率が30重量%未満の畜肉様加工食品の場合、本発明では還元糖を0.5〜10重量%含む組織状大豆蛋白素材、好ましくは、少なくともその一方の組織状大豆蛋白素材が還元糖を含むものである、長径が7〜20mm、厚みが1〜5mmの偏平形状である組織状大豆蛋白素材と、短径が1〜8mm、長径が3〜15mmである粒形状の組織状大豆蛋白素材を組み合わせて主原料として使用することにより、従来の同様の製品よりもほぐれやすく、口溶けよい食感が付与され、肉類主体の畜肉加工食品と同等の食感が付与することができる。
【0016】
(還元糖を含む組織状大豆蛋白素材)
本発明は、還元糖を0.5〜10重量%含む組織状大豆蛋白素材を用いることが最大の特徴である。組織状大豆蛋白は、一般に分離大豆蛋白,濃縮大豆蛋白や脱脂大豆等の大豆蛋白原料に加水し、エクストルーダー(押出成型機)を用いて加圧加熱処理し、熱可塑性となった原料をスクリューの先端部に設けたダイ(口金)より押し出し、組織を所望な程度に膨化させ、次いで細断、乾燥・冷却、整粒工程を経て製造される。本発明の組織状大豆蛋白素材は、その原料に還元糖を0.5〜10重量%添加することで、ほぐれ易く口残りしにくい特異な効果と、風味の改善効果を併せ持つ。加圧加熱処理は、公知のエクストルーダーを用い、公知の方法に従って行なうことができる。混練が強く安定的に組織化しやすい二軸以上の軸を有するエクストルーダーを用いることが好ましい。組織状大豆蛋白素材の原料をエクストルーダーに供給し、加水しながら加圧加熱下にダイより押し出す際の条件は公知の条件に基づいて適宜選択および調整できる。
【0017】
本発明に用いる組織状大豆蛋白素材の形状は、偏平形状の組織状大豆蛋白素材と、粒形状の組織状大豆蛋白素材とを組合わせるものであり、少なくともその一方の組織状大豆蛋白素材が還元糖を含む。形状の異なる組織状大豆蛋白素材を用いることで、挽肉的な噛み応えを付与すると共に、肉の肉粒感と噛み応え、ほぐれ感が組み合わさった、肉のより複雑な食感を再現することができる。各々の組織状大豆蛋白素材の大きさについても特に限定するものではないが、例を示すと、偏平形状の組織状大豆蛋白素材は、長径が7〜20mm、厚みが1〜5mmであることが好ましく、長径が10〜15mm、厚みが2〜4mmであることが更に好ましい。粒形状の組織状大豆蛋白素材は、短径が1〜8mm、長径が3〜15mmであることが好ましく、短径が2〜4mm、長径が5〜10mmであることが更に好ましい。
【0018】
偏平形状の組織状大豆蛋白素材と、粒形状の組織状大豆蛋白素材とは、少なくともその一方に還元糖が含まれることが重要であり、両方に還元糖が含まれていても効果を得る事ができる。その中でも、粒形状の組織状大豆蛋白素材に還元糖を加えた場合は、更に良好な食感を得ることができる。偏平形状の組織状大豆蛋白素材:粒形状の組織状大豆蛋白素材の混合比は、粒形状の組織状大豆蛋白素材に還元糖を加えた場合は、1:0.5〜2.5が好ましく、1:1〜2が更に好ましい。偏平形状の組織状大豆蛋白素材に還元糖を加えた場合は、1:0.5〜2.3が好ましく、1:1〜1.8が更に好ましい。偏平形状,粒形状の組織状大豆蛋白素材に両方に還元糖を加えた場合は、1:0.5〜2が好ましく、1:1〜1.5が更に好ましい。
【0019】
(還元糖)
本発明の組織状大豆蛋白素材に用いる還元糖は、還元性を有する糖質を広く使用することができる。具体的には、グルコース,フルクトース,マンノース,アラビノース,フコース,キシロース,リボース等の単糖類、マルトース,ラクトース,セロビオース等の二糖類、マルトトリオース等の三単糖や、他の還元性オリゴ糖を用いることができる。また、みりん類,酒,果汁、並びに麦汁等の野菜や穀物の抽出物も、還元糖を豊富に含むものは使用することができる。還元糖は、少なくとも一方の形状の組織状大豆蛋白素材について、その乾燥量に対して、0.5重量%以上が含まれることが必要であり、1重量%以上含まれることが好ましい。また、上限は10重量%以下であり、5重量%以下が好ましい。0.5重量%未満では所望の効果が得られない場合があり、10重量%を超えると強い褐変や不要な甘味が発現する場合がある。
【0020】
(生地及び結着原料)
畜肉加工品または畜肉様加工食品を調製するに当たり、まずは還元糖を含む組織状大豆蛋白素材に、必要によっては還元糖を含まない組織状大豆蛋白素材を加え、更に原材料同士をつなぎ合わせる役目を有する結着原料を加えた、生地の調製が必要である。畜肉加工品と畜肉様加工食品とは典型的には生地の結着原料が異なるが、一般に畜肉加工品では挽肉等の畜肉原料自体を結着原料として混練し、畜肉生地を調製する一方、畜肉様加工食品では、例えば粉末状大豆蛋白素材を結着原料として水、あるいはさらに油脂を加えて混練し、大豆蛋白生地を調製することができる。
【0021】
(粉末状大豆蛋白素材)
本発明で用いる粉末状大豆蛋白素材としては、脱脂大豆から得られる固形分あたりの蛋白質含量が60重量%以上の脱脂豆乳粉末,濃縮大豆蛋白や分離大豆蛋白が好ましく、蛋白質含量が85重量%以上の分離大豆蛋白がより好ましい。
畜肉様加工食品に於いて、生地の結着原料として利用される場合は、粉末状大豆蛋白素材を水、さらには油脂と共に混練して生地を調製する。この場合、生地中に粉末状大豆蛋白素材は1〜15重量%用いることが好ましい。粉末状大豆蛋白素材は、畜肉加工食品においては肉質改良剤として用いることができるが、この場合も、粉末状大豆蛋白素材を原料中1〜15重量%用いることが好ましい。
【0022】
(卵白)
本発明の畜肉加工食品又は畜肉様加工食品にはさらに、結着原料として卵白を使用することができる。卵白は生の卵白,凍結卵白,乾燥卵白のいずれも選択できる。特に畜肉様加工食品において、加熱後の生地の結着力が弱く保形性が低下する傾向にある場合に、添加することが好ましい。卵白は乾燥重量として生地中0.1〜5重量%添加するのが好ましく、0.2〜3重量%が特に好ましい。
【0023】
(副材料)
生地中には、上記の結着原料,組織状大豆蛋白以外の副材料として、水,油脂類,糖類,調味料等の生地の骨格を構成する材料のほか、人参,ごぼう,ごま,タマネギ等の野菜類や、ワカメ,ひじき等の海藻類等の生地中に分散させる固形具材を加えることができる。
【0024】
(畜肉加工食品又は畜肉様加工食品の製法)
次に本発明の畜肉又は畜肉様加工食品の製造法について説明する。本発明の畜肉加工食品又は畜肉様加工食品の製造法は、上述した還元糖を0.5〜10重量%含む組織状大豆蛋白素材を必須とし、好ましくは少なくともその一方が還元糖を含むものである、偏平形状組織状大豆蛋白素材と粒形状の組織状大豆蛋白素材を組み合わせて使用する。これら組織状大豆蛋白素材は通常乾燥体であるので、その場合はまず水を吸水させ、組織を軟化させる「水戻し」を行う。次に結着原料と共に混合し生地を得るが、畜肉を結着原料とする畜肉生地でもよいし、粉末状大豆蛋白を結着原料とし、水さらには油脂を混練して得られる大豆蛋白生地でもよい。何れの生地を調製するかは畜肉の使用量によって当業者が適宜選択できる。次に以下の通り、これらの原料を混練して生地を調製した後、所望の形状に成形し、加熱処理を行う。組織状大豆蛋白素材は、畜肉加工食品の場合は、生地中に0.5〜10重量%、好ましくは2〜7重量%添加されることが適切である。また、畜肉様加工食品の場合は、生地中に2〜15重量%、好ましくは4〜10重量%添加されることが適切である。但し、目的とする食品により、本範囲は増減する場合がある。特に、粒形状および偏平形状の組織状大豆蛋白素材の両方に還元糖を含む場合、組織状大豆蛋白素材は畜肉加工食品に、生地中の0.5〜13重量%、好ましくは2〜9重量%添加されることが適切であり、また畜肉様加工食品に、生地中の2〜16重量%、好ましくは4〜12重量%添加されることが適切である。
【0025】
(混練・成形)
原料をサイレントカッター等の混練機で均一に混練する。さらに加水した本発明の組織状大豆蛋白素材、および従来食感の組織状大豆蛋白素材等の副材料を添加して生地を調製し、成形機で所望の大きさと形状に成形した成形物を得る。次いでこれを加熱工程に供する。
【0026】
(加熱工程)
本発明における加熱手段は、焼成加熱,蒸し加熱,ボイル加熱,フライ加熱,電磁波加熱等を適宜組み合わせて用いることができる。これによって成形した生地が加熱凝固し、形状が安定化される。
【0027】
以上により得られた製品は、バンバーグ,ミートボール等の畜肉加工食品の形態として提供することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例等により本発明の実施形態をより具体的に記載する。なお、以下特に断りがない限り、「%」や「部」は「重量%」、「重量部」を意味するものとする。
【0029】
(製造例1) 還元糖を含む粒形状組織状大豆蛋白素材の製造
n-ヘキサンで脱脂した脱脂大豆100重量部に、醸造調味料みりんタイプ(還元糖含量27.1重量%,以下同じ)2重量部、グルコース1.5重量部および、水40部を押出機に供給して加熱、加圧処理を行い、組織化した。なお、押出機は幸和工業(株)社製二軸押出機を用い、使用ダイの直径2.5mm×10穴、処理量は粉体原料流量30kg/h、スクリュー回転数200rpm、バレル入口側温度80℃、中央部120℃、出口側150℃の条件で加圧処理を行った。
得られた蛋白組織物は、長さ5mm程度となるようにダイス出口直後にカッターで切断し、乾燥機にて水分8重量%となるように80℃の熱風で乾燥を行い、還元糖を含む粒形状組織状大豆蛋白素材とした。直径は、短径がおよそ2〜4mm、長径が5〜10mmであった。
尚、還元糖を含まない偏平形状組織状大豆蛋白素材としては、「ニューフジニック50」(不二製油(株)製、およそ長径5mm×短径3mm×厚み2mm)を、分離大豆蛋白としては、「ニューフジプロSE」(不二製油(株)製)を用いた。
【0030】
(製造例2) 還元糖を含む偏平形状組織状大豆蛋白素材の製造
n-ヘキサンで脱脂した脱脂大豆100重量部に、醸造調味料みりんタイプ2重量部、グルコース1.5重量部および、水40部を押出機に供給して加熱、加圧処理を行い、組織化した。なお、押出機は幸和工業(株)社製二軸押出機、使用ダイの直径5.0mm×1穴、処理量は粉体原料流量30kg/h、スクリュー回転数200rpm、バレル入口側温度80℃、中央部120℃、出口側150℃の条件で用いた。得られた蛋白組織物は、長さ15mm程度となるようにダイス出口直後にカッターで切断し、さらに粉砕機にて長径が10〜15mm、厚みが2〜4mmの偏平形状となるように粉砕後、乾燥機にて水分8重量%となるように80℃の熱風で乾燥を行い、還元糖を含む偏平形状組織状大豆蛋白素材とした。
尚、還元糖を含まない粒形状組織状大豆蛋白素材としては、「ニューフジニック59」(不二製油(株)製、およそ直径4〜5mm)を、分離大豆蛋白としては、「ニューフジプロSE」(不二製油(株)製)を用いた。
【0031】
(実施例1) ミートボール様食品(ミートレス)
最初に、粉末状大豆蛋白として分離大豆蛋白を3部,乾燥卵白を2部,液体油としてナタネ油を4部,水12部をサイレントカッターに投入して、約25℃で混練し、均一に乳化させ、大豆蛋白生地を調製した。次に、還元糖を含む粒形状組織状大豆蛋白素材4部に水8部を加え水戻しを行ったもの、および「ニューフジニック50」4部に水12部を加えて水戻しを行ったものを加えた後、たまねぎ20部,キャベツ4部,さらに調味料14部,固形植物油脂8部,澱粉3部を加えて混合し、生地を得た。
該生地を成形機で直径28mm球状(25g)に成形した後に、蒸し加熱(85〜95℃)を8分間行い、空冷後、-35℃で急速凍結を行い、畜肉を使用しないミートボール様食品を得た(表1の試験1)。次に表1の試験2、3の通り、本発明の組織状大豆蛋白素材の添加量を種々変更して同様にミートボール様食品を得た。
以上により得られた試験1〜3の食品について、ほぐれ、口溶け、肉粒感について
評価した。結果を表1に示した。
【0032】
(表1)配合表及び品質評価結果

【0033】
試験例1では、畜肉を全く使用していないミートレス食品であるにも関わらず、挽肉様の肉粒感に加えて、ほぐれ、口溶けも良好であり、畜肉のミートボールと全く遜色のない食感を有していた。これに対して還元糖を含む粒形状組織状大豆蛋白素材が配合されていない比較試験例1では、噛み応えはあるものの、ほぐれ感,口溶け感は感じられず、咀嚼時に口残り感のある食感であった。
試験例1に対して還元糖を含む粒形状組織状大豆蛋白素材の配合が多い試験例2,試験例3になるにつれ、肉粒感が弱くなる傾向となった。
【0034】
(実施例2)
表2の通り、組織状大豆蛋白の配合量を変更し、加水調整を行った他は、実施例1の試験例1と同様にしてミートボール様食品の調製を行った。
【0035】
(表2)配合表及び品質評価結果

【0036】
ニューフジニック50を添加せず偏平状組織状大豆蛋白の添加量自体が少ない試験例4は、ほぐれ、口溶け感と肉粒感、噛み応えの組み合わせにおいてやや肉粒感と噛み応えが不足する食感となった。ニューフジニック50の添加量が試験例1より少ない試験例5では、試験例4に比べ肉粒感は向上したものの、噛み応えはやや不足、更に添加量の増えた試験例1は全てにおいてバランス良く高得点となった。一方ニューフジニック50の添加量が多い試験例6では、ほぐれ、口溶け感にやや乏しい食感となった。
【0037】
(実施例3)
表3の通り、乾燥卵白の配合量を変更し、その他は実施例1の試験例1と同様にしてミートボール様食品の調整を行った。
【0038】
(表3)配合表及び品質評価結果

【0039】
いずれもほぐれ、口溶け感と肉粒感を有する点で食感は良好であった。その中で、乾燥卵白を添加しない試験例7では硬さがやや弱くなり、試験例8では試験例7と比較すると硬くなる傾向にはあるが試験例1に比べ食感は弱くなった。また試験例9は、他の試験区に比べしっかりとした食感になった。
【0040】
(実施例4)牛肉,豚肉,鶏肉と併用したハンバーグ
ミキサーにて、分離大豆蛋白2部,水19部、φ約6mmの牛肉ブリスケット,豚肉ウデ,鶏肉ムネ計50部、φ約3mmの豚背脂6部を混合した。試験例10では還元糖を含む粒形状組織状大豆蛋白素材6部を水12部で戻したものを添加し、試験例11では還元糖を含む粒形状組織状大豆蛋白素材4部、ニューフジニック50を2部、それらを水12部で戻したものを添加した。さらに各々に調味料2部,たまねぎ20部,パン粉4部を加え、全体を100部としてハンバーグ生地を得た。生地を成形機で重量70gのハンバーグ状に成形した後、これに焼き蒸し加熱(210℃,7分)を行い、空冷し、急速冷凍を行った。
比較試験例2では、還元糖を含む粒形状組織状大豆蛋白素材の代わりに還元糖を含まない粒形状組織状大豆蛋白素材として「ニューフジニックBSN」を使用した。比較試験例3では還元糖を含まない偏平形状組織状大豆蛋白素材として「ニューフジニック50」を使用した。表4に内材配合及び結果を示した。
【0041】
(表4)配合表及び品質評価結果

【0042】
以上の通り、本発明の還元糖を含む粒形状組織状大豆蛋白を使用した試験例10ではほぐれ、口溶け感が付与され肉粒感も比較的付与されており、更にニューフジニック50を組み合わせた試験例11ではより肉粒感を感じ良好な結果となった。
還元糖を含まない粒形状のニューフジニックBSNを使用した比較試験例2では肉粒感は付与されたものの、ほぐれ、口溶け感が少ない品質となった。また還元糖を含まない偏平状のニューフジニック50のみの比較試験例3では、肉粒感は得られず、ほぐれ、口溶け感は比較試験例1程劣らないものだった。
【0043】
(実施例5)還元糖を含む偏平形状組織状大豆蛋白素材の使用
還元糖を含む組織状大豆蛋白素材には偏平形状のものを、従来食感の組織状大豆蛋白素材には粒形状のニューフジニック59を使用し、加水調整を行った他は、実施例1の試験例1と同様にしてミートボール様食品の調製を行った。
【0044】
(表5)配合表及び品質評価結果

【0045】
試験例12では、畜肉を全く使用していないミートレス食品であるにも関わらず、挽肉様の肉粒感に加えて、ほぐれ、口溶けも良好であり、畜肉のミートボールと全く遜色のない食感を有していた。これに対して還元糖を含む偏平形状組織状大豆蛋白素材が配合されていない比較試験例4では、肉粒感、噛み応えはあるものの、ほぐれ感,口溶け感は感じられず、咀嚼時に非常に口残り感のある食感であった。
試験例12に対して還元糖を含む偏平形状組織状大豆蛋白素材の配合が多い試験例13,試験例14になるにつれ、肉粒感,噛み応えが弱くなる傾向となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元糖を0.5〜10重量%含む組織状大豆蛋白素材を使用してなることを特徴とする、畜肉加工食品又は畜肉様加工食品。
【請求項2】
組織状大豆蛋白素材が、偏平形状の組織状大豆蛋白素材と、粒形状の組織状大豆蛋白素材を組合わせたものであって、少なくともその一方の組織状大豆蛋白素材が還元糖を含むものである、請求項1に記載の畜肉加工食品又は畜肉様加工食品。
【請求項3】
偏平形状である組織状大豆蛋白素材が、長径が7〜20mm、厚みが1〜5mmである、請求項2に記載の畜肉加工食品又は畜肉様加工食品。
【請求項4】
粒形状である組織状大豆蛋白素材が、短径が1〜8mm、長径が3〜15mmである、請求項2に記載の畜肉加工食品又は畜肉様加工食品。
【請求項5】
粒形状である組織状大豆蛋白素材が還元糖を含むものである、請求項2に記載の畜肉加工食品又は畜肉様加工食品。
【請求項6】
還元糖を0.5〜10重量%含む組織状大豆蛋白素材を水戻しした後に、結着原料と共に混合し、得られた生地を成形、加熱することを特徴とする、畜肉加工食品又は畜肉様加工食品の製造方法。
【請求項7】
結着原料として、粉末状大豆蛋白素材又は畜肉から選ばれる1種以上を用いる、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
結着原料としてさらに卵白を混合する、請求項6に記載の製造方法。