説明

畦付け機

【課題】塊が出来易い土壌の耕作地の畦付けを円滑に良好に行い、畦の固着力を向上させる。
【解決手段】本発明の畦付け機1は、耕作地5の地面5aを掘削し、側部外方Bに耕耘土Gを跳ね上げて盛り土Aを形成する耕耘爪51を備えた耕耘ロータリー31と、耕耘土Gの後方への移動を規制して側部外方Bに導く前面板33と、塊になった耕耘土Gを崩して下方に落下させる崩し板34と、前記盛り土Aの表面を押圧して畦法面7bを成形する揺動板35と、前記成形された畦法面7bの表面を押し固める押固め部材36と、走行車両のドライブシャフト21から動力を得て耕耘ロータリー31と崩し板34と揺動板35と押固め部材36とを駆動する動力伝達機構39と、を備えることによって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田、畑に畦を形成するのに使用される畦付け機に係り、特に塊が出来易い土壌に対しても良好な畦法面の成形を可能にする叩打式の畦付け機に関する。
【背景技術】
【0002】
畦付け機には、回転ドラム式と叩打式があり、前者は、畦法面と常時密着し、均一な畦法面が成形できるが、固着力が弱く、成形した畦法面が崩れ易いという欠点を有している。一方、叩打式は、間欠的ではあるが下記の特許文献1に示すように成形した畦法面の表面を土押体によって押し固めるため、固着力が強く成形した畦法面が崩れにくいという特徴を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−84807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そして、従来の叩打式の畦付け機には、耕耘ロータリー直後に耕耘によって跳ね上げられた耕耘土の後方への移動を規制する前面板と揺動板と叩き板とが設けられており、前記耕耘によって跳ね上げられた耕耘土が側面に回り込み、畦法面を成形する揺動板や成形された畦法面の表面を押し固める叩き板が耕耘土を畦に押し付けて畦法面を成形するように構成されていた。
しかし、畦付けを行う土壌の性質は地域や場所によって大きく異なり、湿った土の土壌、乾いた土の土壌、中間の湿り具合の土の土壌、砂地の土壌、粘土質の土壌等、種々の土壌が存在する。特に日本海側では場所によって土の湿り具合に偏りがある土壌が数多く存在し、中でも中間の湿り具合の土壌や粘土質の土壌で次のような問題が生じている。
【0005】
即ち、中間の湿り具合の土壌や粘土質の土壌では、土が塊になってほぐれないという問題が生じている。そして、塊になった土は畦の高い部分に集まり易く、逆に畦の低い部分では土が不足して欠損部が生じるなど良好な畦法面の成形に際して上記土壌の性質が大きな障害になっていた。
【0006】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、塊が出来易い土壌に対しても良好で固着力の強い畦法面の成形が可能な叩打式の畦付け機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するべく本発明の請求項1による畦付け機は、耕作地の地面を掘削し、側部外方に掘削した耕耘土を跳ね上げて盛り土を形成する耕耘爪を備えた耕耘ロータリーと、前記耕耘ロータリーによって跳ね上げられた耕耘土の後方への移動を規制して側部外方に導くように案内する前面板と、前記耕耘ロータリーによって上方に跳ね上げられた塊になった耕耘土を崩して下方に落下させる崩し板と、前記耕耘ロータリーによって形成された盛り土の表面を押圧して畦法面を成形する揺動板と、前記揺動板によって成形された畦法面の表面を押し固める押固め部材と、走行車両のドライブシャフトから動力を得て前記耕耘ロータリーと崩し板と揺動板と押固め部材とを駆動する動力伝達機構と、を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項2による畦付け機は、請求項1に記載の畦付け機において、前記動力伝達機構は、走行車両のドライブシャフトからの動力をチェーン駆動伝達手段とクランク軸とを介して昇降ロッドの昇降動作に変換する昇降動作変換機構と、前記昇降ロッドの昇降動作を、前記崩し板と揺動板と押固め部材の各動作に変換する第2動作変換機構と、を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項3による畦付け機は、請求項1または2に記載の畦付け機において、前記崩し板は、盛り土上部に塊になって推積した団塊土に作用する土崩し片と、盛り土下部に落下した破砕土を盛り土側に寄せる土寄せ片と、を有しており、回動支点を中心に所定の角度、前記崩し板を回動させることによって前記土崩し片と土寄せ片とが選択的に団塊土または破砕土に作用するように構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項4による畦付け機は、請求項3に記載の畦付け機において、前記崩し板は、前記前面板に対して前記回動支点を介して回動自在に接続されており、連結支点を介して前記揺動板に接続されていて、該揺動板から動力を受けて回動するように構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項5による畦付け機は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の畦付け機において、前記耕耘爪は、前記耕耘ロータリーの耕耘軸の軸方向に沿って適宜の間隔を空けて複数設けられており、畦付け方向に行くに従って耕耘爪先端の刃先の外方への張出し量が小さくなるように配設されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項6による畦付け機は、請求項5に記載の畦付け機において、前記耕耘爪は、耕耘爪先端の刃先の張出し量が大きな第1耕耘爪と、前記刃先の張出し量が小さな第2耕耘爪と、前記刃先の張出し量が極小さな第3耕耘爪の3種類が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項7による畦付け機は、請求項6に記載の畦付け機において、前記耕耘爪は、前記耕耘軸に動力を伝達する動力伝達部の外方に設けられている複数枚の第1耕耘爪と、前記第1耕耘爪の外方に設けられている複数枚の第2耕耘爪と、前記第2耕耘爪の外方に設けられている複数枚の第3耕耘爪とを備えることによって構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項8による畦付け機は、請求項7に記載の畦付け機において、前記第2耕耘爪と第3耕耘爪との間には、20〜30mmの間隙が設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項9による畦付け機は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の畦付け機において、前記押固め部材は、走行車両のドライブシャフトから動力を受けて回転し、畦法面に合わせた傾斜姿勢で支持されている回転体と、該回転体の周面に取り付けられている複数枚の押圧弾性片と、を備えることによって構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
そして、前記手段によって以下のような作用が得られる。耕耘ロータリーの耕耘爪によって後方に跳ね上げられた耕耘土は、後方の前面板に当たって側部外方に導かれ盛り土を形成する。また、盛り土上部に推積した塊になった団塊土は崩し板によってその塊が崩されて破砕土として盛り土下部の近傍に落下し、盛り土下部の欠損部において不足している土量を補う。
次に、揺動板が作用して団塊土の除去と欠損部の補修が行われた盛り土の表面を押圧して畦法面を成形する。続いて、押固め部材が作用して成形された畦法面の表面を押し固める。
従って、本発明によると耕耘ロータリーによって後方に跳ね上げられた耕耘土が効率良く畦付けする側部外方に向けて運ばれ畦付けに利用されるようになる。また、盛り土上部に推積した団塊土が除去されて破砕土として畦法面の成形に利用されるから、団塊土が出来易い土壌に対しても良好な畦法面の成形が可能になる。
【0017】
また、昇降動作変換機構と第2動作変換機構とを備えた動力伝達機構の採用によって、崩し板と揺動板と押固め部材の動力を走行車両のドライブシャフトから得ることができ、動力の有効利用と部品点数の削減が図られる。
また、崩し板と揺動板と押固め部材の動力源を同じにすることで、これらの部材の動きを互いに連動させることが可能になる。
【0018】
また、単一の崩し板に、盛り土上部の団塊土を崩す破砕作用と、破砕されて下方に落下した破砕土を盛り土側に寄せて盛り土下部の欠損部を補修する補修作用とを担わせることによって少ない部品点数と簡単な構造によって良好な畦法面の成形が可能になる。
【0019】
また、前記崩し板を前面板に対して回動支点を介して回動自在に接続し、連結支点を介して揺動板から動力が伝達されるように構成した場合には、前面板と揺動板との間の限られた狭い空間を利用して前面板の傾斜に合わせて崩し板を配設することが可能になり、揺動板の動きを崩し板の動力として利用することで動力の有効活用と揺動板の動きに連動した崩し板の動きが可能になる。
【0020】
また、耕耘爪を耕耘軸に沿って複数設け、畦付け方向に行くに従って耕耘爪先端の刃先の外方への張出し量が小さくなるように配設した場合には、耕耘爪によって堀削され側部外方に跳ね上げられた耕耘土の移送距離が畦付けする盛り土に近い位置に配設されている耕耘爪ほど短くなるため、盛り土の上部に推積する団塊土の量を少なくすることができる。
また、耕耘爪の種類を刃先の張出し量の大小によって第1耕耘爪と第2耕耘爪と第3耕耘爪の3種類を設け、前記配列によって配設した場合には、耕耘爪の刃先の張出し量を当該耕耘爪の位置によって細かく調節しなくても同様の耕耘土の移送距離の調整作用が得られるようになる。
【0021】
そして、耕耘軸に動力を伝達する動力伝達部の外方に複数枚の第1耕耘爪を設け、該第1耕耘爪の外方に複数枚の第2耕耘爪を設け、該第2耕耘爪の外方に複数枚の第3耕耘爪を設けた場合には、塊が出来易い土壌に対して効率的な耕耘土の移送が実現できるようになる。
更に、上記構成で第2耕耘爪と第3耕耘爪との間に20〜30mmの間隙を形成すれば、塊が出来易い土壌に対して最適な耕耘土の移送が可能になって良好な畦法面の成形が図られるようになる。
また、前記押固め部材を回転体と、該回転体の周面に取り付けられている複数枚の押圧弾性片と、を備えることによって構成した場合には、上記回転体を一回転させる間に複数枚の押圧弾性片によって複数回の押固め動作を実行できるから、該押固め作業の高速化を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明による畦付け機によると、崩し板の採用によって塊が出来易い土壌の耕作地であっても盛り土上部に団塊土を残すことなく、盛り土下部に欠損部を生じさせない良好な畦法面の成形と畦の固着力の向上とが図られるようになる。
また、耕耘爪の刃先の外方への張出し量を畦付け方向に行くに従って小さくなるように配設することによって耕耘土の移送量と移送距離を調節できるから、当該土壌の畦付けに適した耕耘土の供給によって上記畦法面の成形と固着力の一層の向上が図られるようになる。
更に、回転体と複数枚の押圧弾性片とを備えた押固め部材の採用によって押固め作業の高速化を図ることができ、より高速で確実な畦付け作業を実行することかできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、畦付け機を搭載したトラクターを示す側面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、耕耘作業前の畦付け機を示す側面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を示す図で、耕耘作業時の畦付け機を示す側面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態を示す図で、角度調整機構の断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態を示す図で、畦付け機を搭載したトラクターを示す背面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態を示す図で、昇降ロッドが下限位置に位置している時の畦付け機を示す背面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態を示す図で、昇降ロッドが上限位置に位置している時の畦付け機を示す背面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態を示す図で、前面板と崩し板の周辺を拡大して示す上方からの斜視図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態を示す図で、トラクターのドライブシャフトから畦付け機のクランク軸までの動力伝達機構を模式的に示す平面図である。
【図10】本発明の第1の実施に形態を示す図で、崩し板の構造と動作の過程を土崩し作用時(a)と土寄せ作用時(b)とに分けて示す背面図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態を示す図で、耕耘爪の配列を示す背面図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態を示す図で、動作開始前の叩き板撓み規制機構を示す斜視図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態を示す図で、叩き板撓み規制機構の動作の過程を段階的に示す説明図である。
【図14】本発明の第1の実施の形態を示す図で、畦付け機を使用した畦付け作業の様子を示す背面側からの斜視図である。
【図15】本発明の第1の実施の形態を示す図で、畦の成形の過程を段階的に示す説明図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態を示す図で、畦付け機を取り付けた耕耘機を示す側面図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態を示す図で、畦付け機周辺を拡大して示す背面図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態を示す図で、押固め部材の構造と該押固め部材に対する動力伝達機構を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1〜図15に示す第1の実施の形態と、図16、17に示す第2の実施の形態と、図18に示す第3の実施の形態と、を例にとって、本発明の畦付け機1の構成を説明する。
尚、以下の説明では、上記第1の実施の形態では、本発明の畦付け機1を装着する走行車両として比較的広い耕作地5に適用される図1に示すような農業用の乗用トラクター(以下、トラクターという)3を例にとり、上記第2の実施の形態では、本発明の畦付け機1を装着する走行車両として上記トラクター3が進入できない比較的狭い耕作地5に適用される図16に示すような農業用ないし園芸用に使用される手押し式の耕耘機4を例にとって説明している。
【0025】
また、以下の説明では、耕作地5に対して図14及び図15に示すような断面形状が台形の畦7を形成する場合について説明しており、本明細書中では、畦7の上面を畦天面7a、畦7の畦付け機1側の法面を畦法面7bと定義する。
また、本明細書中で使用する前後とは、走行車両の進行方向の前後であり、本明細書中で使用する左右とは、走行車両の車幅方向の左右である。また、本明細書で使用する上下とは、走行車両の車高方向の上下であり、水平とは、耕耘地5の地面5aと平行な向き、垂直とは、耕耘地5の地面5aと直交する向きである。
【0026】
(1)第1の実施の形態(図1〜図15参照)
最初に本実施の形態に係る畦付け機1Aを装着するトラクター3の構造の概略を図1及び図5に基づいて説明する。
このトラクター3は、前方にエンジン室9、後方に運転席11を備えた車体13と、前記エンジン室9の下部に設けられる左右一対の小径の前輪15、15と、前記運転席11の下部に設けられる左右一対の大径の後輪17、17と、図示しない油圧装置によって昇降動される牽引フレーム19と、前記エンジン室9から前記牽引フレーム19側にかけて延びるドライブシャフト21と、前記運転席11の上部に設けられる安全キャブ23とを具備する4輪駆動方式の農業用のトラクターである。
【0027】
そして、前記牽引フレーム19を利用して本実施の形態に係る畦付け機1Aが取り付けられており、前記ドライブシャフト21からの動力を受けて畦付け機1Aが作動するように構成されている。
即ち、この畦付け機1Aは、耕耘ロータリー31と、前面板33と、崩し板34と、揺動板35と、押固め部材36の一例である叩き板37と、これらに動力を伝達する動力伝達機構39と、前記諸部材を一体に支持する可動フレーム41と、を具備することによって基本的に構成されており、前記可動フレーム41は、トラクター3の前記牽引フレーム19に対して回動軸43を中心にして所定角度の範囲で上下に回動し得るように連結されている。
また、前記耕耘ロータリー31と前面板33と崩し板34と揺動板35と叩き板37と動力伝達機構39とは、可動フレーム41に対して左右方向の取り付け位置が調節自在に設けられている。具体的には、前記諸部材に設けられた筒状取り付け部材42を可動フレーム41に外嵌めしてスライド自在に取り付けられる。そして、前記筒状取り付け部材42に設けられた2つのロックボルト44を利用して前記諸部材のトラクター3の後輪17に対する位置を決めて固定する。以上の構成により、前記諸部材の取り付け位置を後輪17外側に近付けることで畦7を厚く作れ、後輪17外側から離すことで薄く作れるようになる。
【0028】
また、前記動力伝達機構39は、図9に示すように前記ドライブシャフト21からの動力をユニバーサルジョイント25を介してベベルギヤユニット45の入力軸45aに伝達し、ベベルギヤユニット45の出力軸であり前記回動軸43と同軸となる駆動軸47の回転を後述するように適宜分配することで、前記耕耘ロータリー31と、崩し板34と、揺動板35と、叩き板37とを同時に駆動できるように構成されている。
前記動力伝達機構39は回動軸43と同軸の駆動軸47を中心にして所定角度の範囲で上下に回動することにより、耕耘ロータリー31と、前面板33と、崩し板34と、揺動板35と、叩き板37と、これらに動力を伝達する動力伝達機構39を一体に支持する可動フレーム41を回動させ、動力の伝達が可能となる。
また、本実施の形態では図5に示すように、畦付け機1Aは、トラクター3の後部右端側に配置されており、図14に示すようにトラクター3の進行方向右側の後輪17の後部外方に畦7が形成されるように構成されている。
【0029】
そして、本実施の形態では、前記可動フレーム41に対する耕耘ロータリー31と、前面板33と、崩し板34と、揺動板35と、叩き板37の取付け角度が、図3に示す耕耘作業時において前面板33の下縁が垂直姿勢から所定の傾斜角度θ分、耕耘ロータリー31側に接近した後傾姿勢になるように設定されている。
【0030】
前記前面板33の後傾角度θは、例えば5°〜10°程度の範囲で設定されており、本実施の形態では前記後傾角度θを一例として7°に設定している。
尚、前面板33の後傾角度θをこのような角度に設定することにより、前記耕耘によって跳ね上げられた耕耘土Gが前面板33により持ち上げられながら上部に溜められた状態でより後側に持って行く力が出る。つまり、耕耘土Gの落下位置が前面板33より後ろ側に移行し、畦付け機1Aの進行により側部外方Bに回り込むようになる。また、耕耘ロータリー31に詰まる耕耘土Gは少なくなるので畦付け機1Aの進行はスムーズになる。
そして、耕耘土Gが側部外方Bに回り込むことにより豊富に揺動板35や叩き板37側に供給されることによって、畦法面7bを成形する揺動板35や成形された畦法面7bの表面を押し固める叩き板37の効果が一層向上し、その結果、良好な畦法面7bの成形と畦の固着力の向上とが図られる。
【0031】
次に、畦付け機1Aの具体的構造を図1〜図15に基づいて説明する。
耕耘ロータリー31は、トラクター3の車幅方向に水平に架け渡されている多角形断面(一例として6角形断面)または円形断面の耕耘軸49と、該耕耘軸49に対して放射状に所定間隔で複数枚が取り付けられ、軸方向で位相を所定ピッチずつずらして取り付けられているナタ刃状の耕耘爪51と、を具備する回転体である。
そして、本発明の特徴的構成の1つとして前記複数の耕耘爪51は、畦付け方向となる側部外方Bに行くに従って耕耘爪51先端の刃先51aの外方への張出し量Dが小さくなるように配設されている。
【0032】
具体的には、図11に示すように耕耘爪51先端の刃先51aの張出し量Dが大きな第1耕耘爪51Aと、上記刃先51aの張出し量Dが小さな第2耕耘爪51Bと、上記刃先51aの張出し量Dを極小さく(ほぼ0)にした第3耕耘爪51Cの3種類が設けられている。
そして、本実施の形態では前記耕耘軸49に動力を伝達する動力伝達部となる後述する第2チェーン駆動伝達手段95の内方に3枚の第1耕耘爪51Aを設け、上記第2チェーン駆動伝達手段95の外方に4枚の第1耕耘爪51Aを設け、上記第1耕耘爪51Aの外方に3枚の第2耕耘爪51Bを設け、所定量の間隙Eを隔てて上記第2耕耘爪51Bの外方に2枚の第3耕耘爪51Cを設けることによって耕耘爪51の配列が構成されている。尚、一例として上記間隙Eは20〜30mmの範囲に設定されている。
前記第1耕耘爪51Aは、第2チェーン駆動伝達手段95の内方にも3枚設けており、耕耘した土の量をより多くするために設けた方が好ましいが省略しても良い。
【0033】
尚、上記耕耘爪51の刃先51aの張出し量Dは、堀削した耕耘土Gを側部外方Bに移送する移送量と移送距離と関係し、上記張出し量Dが大きいと耕耘土Gの移送量と移送距離が大きくなり、上記張出し量Dが小さいと耕耘土Gの移送量と移送距離が小さくなる。
また、張出し量Dを極小さく(ほぼ0)にすると耕耘土Gの移送量と移送距離がほぼ0となる。
そして、上記3種類の耕耘爪51A、51B、51Cを使用した上述のような配列を採用することによって畦7の成形に利用される理想的な盛り土Aが形成される。
【0034】
前面板33は、前記耕耘ロータリー31によって跳ね上げられた耕耘土Gの後方への移動を規制して側部外方Bに導くように案内する板状の部材である。
【0035】
崩し板34は、塊が出来易い土壌の耕作地5で効果を発揮する本発明の特徴的構成になっている部材で、前記耕耘ロータリー31によって上方に跳ね上げられた塊になった耕耘土G(以下、団塊土G1ともいう)を崩して下方に落下させる役割を有している。
具体的には、図8に示すように前面板33と揺動板35との間の限られた狭い空間を利用して崩し板34は設けられており、図10に示すように盛り土Aの上部に塊になって推積した上記団塊土G1に作用する土崩し片34aと、盛り土Aの下部に落下した上記土崩し片34aによって破砕された耕耘土G(以下、破砕土G2ともいう)を盛り土A側に寄せる土寄せ片34bと、を有する平板状部材である。
【0036】
また、上記崩し板34の上部には、前記前面板33に接続されている回動支点34cが設けられており、該回動支点34cを中心に所定の角度、崩し板34を回動させることによって図10(a)、(b)に示すように上記土崩し片34aと土寄せ片34bが選択的に突出させられて上記形成された盛り土Aに作用するように構成されている。
更に、上記崩し板34の中間付近の高さには、連結支点34dが設けられており連結ブラケット34eを介して次に述べる揺動板35に接続されている。そして、後述するコネクティングロッド111を介して揺動板35との接続点34fに伝達された力F、Rを利用して揺動板35側から動力を受けて回動するように崩し板34は構成されている。
【0037】
したがって、揺動板35が盛り土Aと反対の耕作地5の内側に揺動すると、上記接続点34fに図10(a)に示すように側部内方に向かう力Rが作用して上記崩し板34を図中、時計方向に回動させて上部の土崩し片34aを側部外方Bに突出させ、盛り土Aの上部に推積した団塊土G1に作用させて、該団塊土G1を破砕する。
一方、揺動板35が盛り土A側に揺動すると、上記接続点34fに図10(b)に示すように側部外方Bに向かう力Fが作用して上記崩し板34を図中、反時計方向に回動させて下部の土寄せ片34bを側部外方Bに突出させ、盛り土Aの近傍の下部に落下した破砕土G2に作用させて盛り土Aの下部に生じた欠損部Cを埋める充填土として盛り土A側に土寄せする。
【0038】
揺動板35は、前記耕耘ロータリー31によって形成され、前記崩し板34によって団塊土G1が取り除かれた盛り土Aの表面に作用して畦天面7aと畦法面7bとを同時に成形する屈曲した板状の部材である。
具体的には、図8に示すように前記前面板33側に面した規制平板部53と、該規制平板部53の外側端縁から外方に向けて斜めに延びている案内作用部55と、該案内作用部55の外側端縁から後方に向けて延びており、実質的に畦法面7bの成形に使用される側板部57と、該側板部57の後端縁を内側に折り曲げ、下方に揺動支点63を備えた折曲げ部65と、を具備することによって揺動板35は基本的に構成されている。
【0039】
尚、前述した崩し板34は、上記規制平板部53に対して上述したように連結支点34dで連結ブラケット34eを介して接続されており、上記揺動支点63を中心とする揺動板35の揺動に応動して回動する。具体的には、揺動板35が側部内方に揺動した時に崩し板34の土崩し辺34aが突出するように回動して土崩し動作を実行し、揺動板35が側部外方Bに揺動した時に崩し板34の土寄せ片34bが突出するように回動して土寄せ動作を実行するように構成されている。
また、本実施の形態では、揺動板35の表面への耕耘土Gの付着を防止する合成ゴム製あるいは合成樹脂製の防護シート59が揺動板35の表面を被覆するように取り付けられており、同様の防護シート59が前記側板部57の上部において外方に張り出すように設けられ、実質的に畦天面7aの成形に使用される天板部61の下面にも取り付けられている。
【0040】
叩き板37は、押固め部材36の一例であり、前記揺動板35によって成形された畦天面7aと畦法面7bの表面を叩いて押し固める板状の部材である。
具体的には、斜め上方に向って延びる回動軸67に外嵌して、所定の角度の範囲で内方と外方とに回動する支持基板69と、該支持基板69の表面側に取り付けられ、前記揺動板35によって成形された畦法面7bを叩いて、実質的に押し固め作用を実行する法面叩打板71と、ブラケット73を介して前記法面叩打板71の表面側に水平に取り付けられ、前記揺動板35によって成形された畦天面7aを叩いて、実質的に押し固め作用を実行する天面叩打板75と、を具備することによって叩き板37は基本的に構成されている。
【0041】
尚、前記支持基板69とブラケット73は金属製で、前記法面叩打板71と天面叩打板75は合成樹脂製で、畦天面7aや畦法面7bを叩いた時、最適なしなりを有する一例としてウレタン樹脂が使用できる。
また、前記回動軸67の中間部には、後述する叩打変換機構77の構成部材の一例である上方のコネクティングロッド79と回転自在に接続される上部押圧体83と、下方のコネクティングロッド81と回転自在に接続される下部押圧体85と、が回動自在に接続されており、前記支持基板69の裏面側には、前記上部押圧体83に当接する一例としてウレタンゴム製で円柱形状の上部受圧体87と、前記下部押圧体85に当接する同じく一例としてウレタンゴム製で円柱形状の下部受圧体89と、が設けられている。
【0042】
また、前記筒状取り付け部材42の下方には、本実施の形態に係る畦付け機1Aを支持する支持フレーム66が側部外方Bに延びるように延長形成されており、該支持フレーム66と前記支持基板69との間には、適宜のブラケットを介して図6〜図8に示すように前記支持基板69を内方に向けて付勢する一例として引張りコイルバネによって構成される付勢バネ68が張設されている。
【0043】
動力伝達機構39は、走行車両のドライブシャフト21からの動力を3つのチェーン駆動伝達手段91、95、97とクランク軸99とを介して昇降ロッド103の昇降動作に変換する昇降動作変換機構100を備えている。
昇降動作変換機構100は、走行車両3のドライブシャフト21から動力を得て回転する駆動軸47と、第1チェーン駆動伝達手段91を介して前記駆動軸47の回転が伝達される中間軸93と、第2チェーン駆動伝達手段95を介して前記中間軸93の回転が分配されて上述した耕耘ロータリー31の構成部材でもある耕耘軸49と、第3チェーン駆動伝達手段97を介して前記中間軸93の回転が分配されて伝達されるクランク軸99と、を備えることによって構成されている。
【0044】
また、動力伝達機構39には、前記クランク軸99に接続される昇降ロッド103の昇降動作を前記揺動板35の揺動動作に変換する揺動変換機構101と、リンク機構122を介して前記昇降ロッド103の昇降動作を、前記リンク機構122の最終出力端に取り付けられている上部押圧体83と下部押圧体85の叩打動作に変換して前記叩き板37背面の上部受圧体87と下部受圧体89を介して前記回動軸67を中心とする叩き板37の回動動作に変換する叩打変換機構77と、を備える第2動作変換機構78が備えられている。
尚、前記動力伝達機構39では、多角形断面(一例として6角形断面)または円形断面の駆動軸47に対して第1チェーン駆動伝達手段91を軸方向に移動可能且つ駆動軸47の回転を伝達可能に構成されている。これにより、前記耕耘ロータリー31と前面板33と崩し板34と揺動板35と叩き板37と動力伝達機構39とを可動フレーム41に対して左右方向に移動して任意の位置に固定した場合にも、駆動力の伝達が可能になっている。
【0045】
揺動変換機構101は、前記昇降ロッド103の下端に対して回転自在に一端が接続されている第1リンク105と、該第1リンク105の他端に対して一端が回転自在に接続され、中間部に設けられる回動支点107を中心にして所定の角度回動する第2リンク109と、該第2リンク109の他端に対して一端が回転自在に接続され、他端が前記揺動板35の折曲げ部65の上部に対して回転自在に接続されているコネクティングロッド111とを具備することによって構成されている。
【0046】
したがって、図6に示すように昇降ロッド103が下限位置に位置している時には、第2リンク109が反時計方向に回動するため、揺動板35は下方の揺動支点63を中心にして揺動板35の上部が内側に移動して畦天面7a及び畦法面7bから離反した状態の退避姿勢になる。
一方、図7に示すように昇降ロッド103が上限位置に位置している時には、第2リンク109が時計方向に回動するため、揺動板35は下方の揺動支点63を中心にして揺動板35の上部が外側に移動して畦天面7a及び畦法面7bに当接した状態の成形姿勢になる。
【0047】
叩打変換機構77は、前記昇降ロッド103の下端に対して回転自在に一端が接続されている第3リンク113と、該第3リンク113の他端に対して一端が回転自在に接続され、中間部に設けられる回動支点115を中心にして所定の角度回動する第4リンク117と、前記回動支点115を挟んで同一直線上の対向する位置に存する2つの出力端119、121のうち上方の上部出力端119に対して一端が回動自在に接続され、他端が前記上部押圧体83に対して回転自在に接続されている上述したコネクティングロッド79と、下方の下部出力端121に対して一端が回転自在に接続され、他端が前記下部押圧体85に対して回転自在に接続されている上述したコネクティングロッド81と、を具備することによって構成されている。
【0048】
また、前記第4リンク117と、2本のコネクティングロッド79、81によって増速リンク機構123が構成されており、前記昇降ロッド103の1行程の昇降動作の間に前記叩き板37の叩打動作を2回実行するように構成されている。
具体的には、図6に示すように昇降ロッド103が下限位置に位置している時には、第4リンク117が時計方向に回動して上方のコネクティングロッド79を叩き板37側に移動させ、上部押圧体83を上部受圧体87に当接させて叩き板37を畦7側に回動させることで叩打動作を1回実行する。
【0049】
一方、図7に示すように昇降ロッド103が上限位置に位置している時には、第4リンク117が反時計方向に回動して下方のコネクティングロッド81を叩き板37側に移動させ、下部押圧体85を下部受圧体89に当接させて叩き板37を畦7側に回動させることで叩打動作を更に1回実行する。
尚、叩き板37における支持基板69は前述したように付勢バネ68によって常時内側に回動するように付勢されており、前記上部押圧体83が上部受圧体87に当接し、叩き板37を外側に押し込んだ時と、前記下部押圧体85が下部受圧体89に当接し、叩き板37を外側に押し込んだ時の2つの位置に来た時に外側に回動して叩打動作を実行するように構成されている。
【0050】
したがって、前記揺動板35の1回の揺動動作の間に前記叩き板37は2回の叩打動作を実行するように構成されており、例えば揺動板35が1分間に100回の揺動動作を行うように設定してある場合には、叩き板37はその倍の1分間に200回の叩打動作を実行する。
【0051】
本実施の形態による畦付け機1Aには、この他、前記可動フレーム41の自由端とトラクター3の牽引フレーム19との間に、可動フレーム41の回動角度を調整する角度調整機構125が設けられている。この角度調整機構125は、前記耕耘ロータリー31と前面板33と崩し板34と揺動板35と叩き板37と動力伝達機構39の地面5aからの深さに応じてこれを操作することによって、前記可動フレーム41の耕耘作業時における角度出しを実行するものである。まず、耕耘ロータリー31と前面板33と崩し板34と揺動板35と叩き板37と動力伝達機構39とは予め水平状態に支持した可動フレーム41に対して所定の後傾角度θ分、後傾姿勢になるように取り付けられている。
【0052】
前記角度調整機構125は、図4に示すように雄ねじ部127とこれに螺合する雌ねじ部129からなる伸縮機構131と、雄ねじ部127の一端に取り付けられた角度調整ハンドル133と、前記可動フレーム41の自由端に設置された水平器135と、から構成されている。そして、前記水平器135に基づいて前記角度調整ハンドル133を操作することによって、前記可動フレーム41の耕耘作業時における水平位置の位置出しが実行できるようになっている。具体的には、図2に示す耕耘ロータリー31と前面板33と崩し板34と揺動板35と叩き板37と動力伝達機構39を上昇させた状態から、畦7の高さに応じて前記耕耘ロータリー31と前面板33と崩し板34と揺動板35と叩き板37と動力伝達機構39を地面5aから所定の深さに下降させるものであり、この時、図3に示すように前記水平器135に基づいて、角度調整ハンドル133を操作して前記可動フレーム41の水平位置の位置出しを実行する。これにより、可動フレーム41に対する前記耕耘ロータリー31と前面板33と崩し板34と揺動板35と叩き板37と動力伝達機構39の取付け角度は、自動的に耕耘作業時において耕耘ロータリー31と前面板33と崩し板34と揺動板35と叩き板37の下縁が所定の後傾角度θ分、前方に突出した後傾姿勢になる。
【0053】
更に、本実施の形態に係る畦付け機1Aには、叩き板撓み規制機構141が備えられている。この叩き板撓み規制機構141は、前記叩き板37の先端部38背面に当接することで前記叩き板37先端部38の撓み量を制限するストッパ143を備えた機構である。
そして、前記叩き板37の先端部38背面が前記ストッパ143に当接することによって畦法面7bに対する前記叩き板37先端部38の浮きを小さくするように構成されている。従って、モータ等の他の動力を使用することなく前記叩き板37先端部38の撓み量を制限している。
【0054】
具体的には、図12に示すように前記回動軸67を中心に回動する角棒状の回動アーム145と、該回転アーム145の先端部に取付けバー147を介して取り付けられる一例として3つのストッパ143と、前記回動アーム145の中間部に設けられ、前記上部押圧体83または下部押圧体85に当接することによって前記回動アーム145の畦法面7bから離間する内方への回動を規制する当接バー149と、を備えることによって前記叩き板撓み規制機構141は構成されている。
【0055】
尚、前記3つのストッパ143は、ボルト・ナット151の締め付け具合を調整することによってストッパ143の突出量を調整できるように構成されており、ストッパ143の突出量を調整することによって当該ストッパ143の動作開始タイミングを早くしたり、遅くしたりすることができるように構成されている。
そして、離間状態の上部押圧体83ないし下部押圧体85が、上部受圧体87ないし下部受圧体89に向けて接近し、図13(a)に示すように上部押圧体83が上部受圧体87に、あるいは下部押圧体85が下部受圧体89に当接した状態になると、前記叩き板37は、畦法面7bへの押込み動作を開始する。
【0056】
尚、前記叩き板37の押込み動作の開始直後は、前記上部押圧体83ないし下部押圧体85と前記当接バー149との間には所定厚さの空隙部Sが形成されており、当該押込み動作の進行に伴なって上記空隙部Sは徐々に小さくなって行く。
そして、この状態では図13(b)に示すように叩き板37の先端部38が畦法面7bに当接して畦法面7bを押し固めており、叩き板37の先端部38は撓み変形して、そのしなりによって畦法面7bに強く密着した状態になっている。
【0057】
また、前記上部押圧体83ないし下部押圧体85による押込み動作が更に進むと、前記空隙部Sは0になり、前記上部押圧体83ないし下部押圧体85が図13(c)に示すように前記当接バー149に当接した状態になる。
そして、この状態になると、前記回動アーム145の回動軸67を中心とした回動ができなくなって、前記叩き板37の先端部38が内方に撓もうとしてもストッパ143に当接してそれ以上の撓み変形は規制されるようになる。これにより、叩き板37先端部の過剰な撓み変形を防止して叩き板37の押し固め不足を回避するように作用する。
【0058】
次に、このようにして構成される本実施の形態による畦付け機1Aの作動態様を畦付けの作業手順にしたがって説明する。
最初に、トラクター3を耕作地5における畦付けを行う作業場所に移動させ、図示しない油圧装置を駆動して牽引フレーム19を下方に降ろして行き、耕耘ロータリー31の耕耘深さを調整する。次に、水平器135を見ながら角度調整ハンドル133を操作して可動フレーム41の水平位置の位置出しを行う。
そして、前記可動フレーム41の水平位置の位置出しを行うことで前面板33の耕耘作業時における後傾角度θの設定も同時に実行される。
【0059】
以上で畦付け作業を行う準備が完了し、ドライブシャフト21に動力を伝えてトラクター3を前方に走行させることで畦付け作業を開始する。耕耘ロータリー31の回転に伴って耕作地5の地面5aが所定の深さ掘り起こされ、掘り起こされた耕耘土Gは側部外方Bに向けて跳ね上げられ、図15(a)に示すように盛り土Aを形成する。
尚、耕耘ロータリー31によって跳ね上げられた耕耘土Gが前面板33により持ち上げられながら上部に溜められた状態でより後側に持っていく力が出る。つまり、耕耘土Gの落下位置が前面板33より後ろ側に移行し、畦付け機1Aの進行により側部外方Bに回り込むようになる。また、耕耘ロータリー31に詰まる耕耘土Gは少なくなるので畦付け機1Aの進行はスムーズになる。そして、耕耘土Gが側部外方Bに回り込むことにより揺動板35の規制平板部53や案内作用部55に案内されて前記盛り土A上に供給される。
【0060】
次に、上記耕耘ロータリー31と前面板33の作用によって形成された盛り土Aに対して、図15(b)に示すように崩し板34の土崩し片34aと土寄せ片34bを選択的に作用させて、盛り土A上部の団塊土G1の破砕と、破砕されて下方に落下した破砕土G2を使用した盛り土A下部の欠損部Cの補修を実行する。
そして、上記崩し板34によって団塊土G1が取り除かれた盛り土Aに対して、図15(c)に示すように揺動支点63を中心に揺動運動する揺動板35の側板部57と天板部61がその表面に当接して畦法面7bと畦天面7aを成形する。
更に、成形された畦法面7bと畦天面7aには、図15(d)に示すように回動軸67を中心にして外方に向けて回動する法面叩打板71と天面叩打板75が前記揺動板35の2倍の回数作用して畦法面7bと畦天面7aを押し固めて行く。
以下、前記作動態様を繰り返しながら、順次畦7が形成されて行く。
【0061】
(2)第2の実施の形態(図16、図17参照)
第2の実施の形態に係る畦付け機1Bは、基本的には前記第1の実施の形態に係る畦付け機1Aと同様の構成を有しており、叩き板撓み規制機構141Bの構成の一部を変更した点と、走行車両として小回りの利く、手押し式の耕耘機4を適用した点で相違する。
従って、ここでは前記第1の実施の形態と相違する叩き板撓み規制機構141Bの構成と耕耘機4の概略の構成を中心に説明する。
【0062】
最初に、耕耘機4の概略の構成について説明する。この耕耘機4は、前方に耕耘ローターリー31,後方に各種の操作レバーが取り付けられているハンドル12、中間にエンジン10を設けている。
また、前記耕耘ロータリー31の前方には、左右一対の小径の前輪15、15、耕耘ロータリー31の上部には泥除けガード14、前記ハンドル12の基部に左右一対の大径の後輪17、17がそれぞれ設けられている。
【0063】
そして、前記エンジン10の下部と前記右側の後輪17の側部外方Bの空間を利用して本実施の形態に係る畦付け機1Bが設けられている。
この畦付け機1Bは、前記第1の実施の形態に係る畦付け機1Aと概略において同様の構成を有しており、前記実施の形態と違うところは、天面叩打板75を有しない点(取り付けることも可能)と、叩き板37の厚さを薄くして該叩き板37の先端部38背面に角棒状の補強部材173を配置した点と、叩き板撓み規制機構141Bの取付けバー147を排して回動アーム145の先端部38に直接、ストッパ143を取り付けた点である。
【0064】
そして、このような構成の本実施の形態に係る畦付け機1Bによっても前記第1の実施の形態と同様の作用、効果が発揮される。
更に、本実施の形態の場合には、走行車両として耕耘機4を採用しているから、山間地等の狭い耕作地5でも畦付けを行うことができるようになり、補強部材173の採用によって厚さが薄く剛性の低い叩き板37を使用している場合であっても、該叩き板37を変形させたり破損させることなく、所望の畦付けを実行できるようになる。
【0065】
(3)第3の実施の形態(図18参照)
第3の実施の形態に係る畦付け機1Cは、基本的には前記第1の実施の形態に係る畦付け機1Aと同様の構成を有しており、押固め部材36の構成と、該押固め部材36を駆動する第2動作変換機構78の一部の構成を変更した点で相違する。
したがって、ここでは前記第1の実施の形態と相違する押固め部材36の構成と、第2動作変換機構78の変更した一部の構成を中心に説明する。
【0066】
即ち、本実施の形態では押固め部材36として図18に示すような多角柱形状(一例として8角柱形状)の回転体181と、該回転体181の周面に取り付けられている複数枚(一例として8枚)の押圧弾性片182と、を備える構成の押固め部材36が採用されている。
また、上記回転体181は、前記揺動板35によって成形された畦法面7bの傾斜に合わせた傾斜姿勢で回転軸187によって支持されており、上記押圧弾性片182は、上記畦法面7bの表面に摺接して押し固めるのに適した適度なしなりを有する樹脂材料(例えばウレタン樹脂)等によって構成されている。
【0067】
また、図示の実施の形態では上記押圧弾性片182の先端部182aが幾分屈曲ないし湾曲されており、押固め作用時に押圧弾性片182を上記畦法面7bの表面を撫でるように作用させるために押圧弾性片182の取付け角度と、回転体181の回転方向が設定されている。
また、図示の実施の形態では押固め部材36の取付け角度を耕耘作業を行っている耕耘姿勢において前記押固め部材36の下縁が所定の後傾角度θ分、前方に突出した後傾姿勢になるように設定されており、これによって、押圧弾性片182が畦法面7bの表面を下から上へ撫で上げるように作用させるためにより美しい仕上げ面が得られる。
【0068】
また、上記回転体181を回転駆動するための動力は上記昇降動作変換機構100を介して伝達される走行車両のドライブシャフト21から受けており、以下のような構成の動力伝達機構188によって一例として構成されている。
即ち、この動力伝達機構188は、上記昇降動作変換機構100の第3チェーン駆動伝達手段97の出力スプロケット98が取り付けられているクランク軸99に取り付けられるユニバーサルジョイント183と、該ユニバーサルジョイント183の他端に取り付けられている駆動プーリ184と、ベルト(一例としてVベルト)185を介して上記駆動プーリ184の回転が伝達される従動プーリ186と、該従動プーリ186が取り付けられている上記回転軸187と、を備えることによって一例として構成されている。
【0069】
そして、上記出力スプロケット98の回転がユニバーサルジョイント183、駆動プーリ184、ベルト185、従動プーリ186、回転軸187の順で伝達されて、上述した回転体181の回転として出力され、当該回転体181の1回転で押圧弾性片182の数に対応した回数(図示の実施の形態では8回)の押固め動作が実行できるように構成されている。
また、図示の実施の形態では押圧弾性片182の先端部182aを屈曲ないし湾曲させているため、該屈曲点ないし湾曲点の前後で2回の押固め動作が実行できる。したがって、これを含めれば、回転体181の1回転で押圧弾性片182の数の2倍の回数(図示の実施の形態では16回)の押固め動作が実行でき、畦法面7bの押固め作業の高速化に対応した構造になっている。
【0070】
このような構成の本実施の形態に係る畦付け機1Cによっても前記第1の実施の形態と同様の作用、効果が発揮でき、更に本実施の形態にあっては、上記回転体181と複数枚の押圧弾性片182とを備える回転式の押固め部材36の採用によって良好な畦法面7bの成形に加えて畦法面7bの押固め作業の高速化が図られ、畦付け作業の高速化が実現できるようになる。
【0071】
尚、本発明の畦付け機1は、前記第1〜第3の実施の形態のものに限定されず、その発明の要旨内での設計変更が可能である。例えば、本発明の畦付け機1は、乗用式の農作業トラクター3や耕耘機4に限らずその他の構造の走行車両に取り付けることが可能であるし、畦付け機1自体に走行機能を付加した専用機とすることも可能である。
また、本発明の畦付け機1を使用する耕作地5の土壌は、中間の湿り具合の土壌や粘土質の土壌に限らず湿っていても乾いていてもよく、砂地の種々の性状の耕作地5にも適用可能である。
【0072】
また、本実施の形態の畦付け機1は、前記前面板33と崩し板34と揺動板35と押固め部材36の取付け角度を耕耘作業を行っている耕耘姿勢において前記前面板33と崩し板34と揺動板35と押固め部材36の下縁が所定の後傾角度θ分、前方に突出した後傾姿勢になるように設定されているものを示したが、必ずしもこのような構成のものに限られるものではなく、耕耘ロータリー31の直後に耕耘によって跳ね上げられた耕耘土Gの後方への移動を規制する前面板33と崩し板34と揺動板35と押固め部材36とが耕耘姿勢において垂直姿勢で設けられているなど他の構成とすることも可能である。
【0073】
また、動力伝達機構39において、駆動軸47、中間軸93、耕耘軸49及びクランク軸99間の動力伝達に使用されていた第1〜第3のチェーン駆動伝達手段91、95、97に代えてギヤ輪列等、他の駆動伝達手段を適用することも可能である。
また、揺動板35は、下方の揺動支点63を中心にして揺動板35の上部が揺動する構成のものを一例として説明したがこれに限られるものではなく、上部や中間部を揺動支点とした揺動機構を適用することも可能である。
【0074】
また、崩し板34の形状は前述した実施の形態の形状に限らず、同様の土崩し作用と土寄せ作用を実行する種々の形状の崩し板34が採用可能である。また、崩し板34は1枚に限らず複数枚設けたり、複数枚の崩し板34を交互に動作させるようにすることも可能である。
また、耕耘爪51の刃先51aの形状は、前述した実施の形態の形状に限らず側部外方Bへの同様の耕耘土Gの移送作用を実行し得る張出し量の異なる刃先や大小大きさの異なる刃先とするなど種々の刃先51aの形状の耕耘爪51を採用することが可能である。また、耕耘爪51の配列も図示の実施の形態のものに限らず、畦付けする耕作地5の土壌の違いに応じて適宜変更することが可能である。
この他、揺動板35を駆動する駆動系統は、押固め部材36を駆動する駆動系統と同じであっても別々であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の畦付け機は、田、畑等の耕作地の地面に畦付けを行う作業現場等において利用でき、特に塊が出来易い土壌の耕作地に対して円滑で良好、そして固着力の強い畦付けを行いたい場合に利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0076】
1 畦付け機
3 トラクター(走行車両)
4 耕耘機(走行車両)
5 耕作地
5a 地面
7 畦
7a 畦天面
7b 畦法面
9 エンジン室
10 エンジン
11 運転席
12 ハンドル
13 車体
14 泥除けガード
15 前輪
17 後輪
19 牽引フレーム
21 ドライブシャフト
23 安全キャブ
25 ユニバーサルジョイント
31 耕耘ロータリー
33 前面板
34 崩し板
34a 土崩し片
34b 土寄せ片
34c 回動支点
34d 連結支点
34e 連結ブラケット
34f 接続点
35 揺動板
36 押固め部材
37 叩き板
38 先端部
39 動力伝達機構
41 可動フレーム
42 筒状取り付け部材
43 回動軸
44 ロックボルト
45 ベベルギヤユニット
45a 入力軸
47 駆動軸
49 耕耘軸
51 耕耘爪
51A 第1耕耘爪
51B 第2耕耘爪
51C 第3耕耘爪
51a 刃先
53 規制平板部
55 案内作用部
57 側板部
59 防護シート
61 天板部
63 揺動支点
65 折曲げ部
66 支持フレーム
67 回動軸
68 付勢バネ
69 支持基板
71 法面叩打板
73 ブラケット
75 天面叩打板
77 叩打変換機構
78 第2動作変換機構
79 コネクティングロッド
81 コネクティングロッド
83 上部押圧体
85 下部押圧体
87 上部受圧体
89 下部受圧体
91 第1チェーン駆動伝達手段
93 中間軸
95 第2チェーン駆動伝達手段
97 第3チェーン駆動伝達手段
98 出力スプロケット
99 クランク軸
100 昇降動作変換機構
101 揺動変換機構
103 昇降ロッド
105 第1リンク
107 回動支点
109 第2リンク
111 コネクティングロッド
113 第3リンク
115 回動支点
117 第4リンク
119 上部出力端
121 下部出力端
122 リンク機構
123 増速リンク機構
125 角度調整機構
127 雄ねじ部
129 雌ねじ部
131 伸縮機構
133 角度調整ハンドル
135 水平器
141 叩き板撓み規制機構
143 ストッパ
145 回動アーム
147 取付けバー
149 当接バー
151 ボルト・ナット
173 補強部材
181 回転体
182 押圧弾性片
182a 先端部
183 ユニバーサルジョイント
184 駆動プーリ
185 ベルト
186 従動プーリ
187 回転軸
188 動力伝達機構
G 耕耘土
G1 団塊土
G2 破砕土
A 盛り土
B 側部外方
θ 後傾角度
S 空隙部
D 張出し量
E 間隙
F 力
R 力
C 欠損部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕作地の地面を掘削し、側部外方に掘削した耕耘土を跳ね上げて盛り土を形成する耕耘爪を備えた耕耘ロータリーと、
前記耕耘ロータリーによって跳ね上げられた耕耘土の後方への移動を規制して側部外方に導くように案内する前面板と、
前記耕耘ロータリーによって上方に跳ね上げられた塊になった耕耘土を崩して下方に落下させる崩し板と、
前記耕耘ロータリーによって形成された盛り土の表面を押圧して畦法面を成形する揺動板と、
前記揺動板によって成形された畦法面の表面を押し固める押固め部材と、
走行車両のドライブシャフトから動力を得て前記耕耘ロータリーと崩し板と揺動板と押固め部材とを駆動する動力伝達機構と、を備えていることを特徴とする畦付け機。
【請求項2】
前記動力伝達機構は、走行車両のドライブシャフトからの動力をチェーン駆動伝達手段とクランク軸とを介して昇降ロッドの昇降動作に変換する昇降動作変換機構と、
前記昇降ロッドの昇降動作を、前記崩し板と揺動板と押固め部材の各動作に変換する第2動作変換機構と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の畦付け機。
【請求項3】
前記崩し板は、盛り土上部に塊になって推積した団塊土に作用する土崩し片と、盛り土下部に落下した破砕土を盛り土側に寄せる土寄せ片と、を有しており、
回動支点を中心に所定の角度、前記崩し板を回動させることによって前記土崩し片と土寄せ片とが選択的に団塊土または破砕土に作用するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の畦付け機。
【請求項4】
前記崩し板は、前記前面板に対して前記回動支点を介して回動自在に接続されており、連結支点を介して前記揺動板に接続されていて、該揺動板から動力を受けて回動するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の畦付け機。
【請求項5】
前記耕耘爪は、前記耕耘ロータリーの耕耘軸の軸方向に沿って適宜の間隔を空けて複数設けられており、畦付け方向に行くに従って耕耘爪先端の刃先の外方への張出し量が小さくなるように配設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の畦付け機。
【請求項6】
前記耕耘爪は、耕耘爪先端の刃先の張出し量が大きな第1耕耘爪と、前記刃先の張出し量が小さな第2耕耘爪と、前記刃先の張出し量が極小さな第3耕耘爪の3種類が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の畦付け機。
【請求項7】
前記耕耘爪は、前記耕耘軸に動力を伝達する動力伝達部の外方に設けられている複数枚の第1耕耘爪と、前記第1耕耘爪の外方に設けられている複数枚の第2耕耘爪と、前記第2耕耘爪の外方に設けられている複数枚の第3耕耘爪とを備えることによって構成されていることを特徴とする請求項6に記載の畦付け機。
【請求項8】
前記第2耕耘爪と第3耕耘爪との間には、20〜30mmの間隙が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の畦付け機。
【請求項9】
前記押固め部材は、走行車両のドライブシャフトから動力を受けて回転し、畦法面に合わせた傾斜姿勢で支持されている回転体と、
該回転体の周面に取り付けられている複数枚の押圧弾性片と、を備えることによって構成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の畦付け機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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