説明

畦塗り機

【課題】畦法面の整畦の効果を維持しつつ、法面羽根板の摩耗を低減させ、さらに、重量に対する強度を備えた法面整畦体を搭載する畦塗り機を提供する。
【解決手段】法面羽根板21の張出部22から下段部23における接触延長線Ma、Mb及びMcと、リング部材40との位置関係を示す部分断面図であり、リング部材40は、法面羽根板21の円弧部分25における張出部22から下段部23に亘って、法面羽根板21の畦法面70bに接触する側の接触面MSから延びる接触延長線Ma、Mb及びMcに対して、法面羽根板21の接触面MSとは反対側に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畦法面を整畦する法面整畦体を搭載した畦塗り機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、整畦体の前側に配設された前処理部において、耕耘爪が旧畦の側部等を切り崩すとともに切り崩した土を撥ね上げ、その後、前処理部の後側に配設された整畦体において、撥ね上げられた土を旧畦上に塗り付けて新畦を形成する畦塗り機が知られている。
【0003】
整畦体は、畦の上面を整える上面整畦部と、畦の法面を整える法面整畦体とから成り、法面整畦体は、複数枚の法面羽根板を周方向に連結して構成されている。
【0004】
ここで、法面整畦体は、整畦体の回転により、複数枚の法面羽根板によって畦の法面を整畦することが可能であるものの、その複数枚の法面羽根板と畦の法面との間に摩擦を生じ、特に、法面整畦体の重量の影響に伴う激しい摩耗を引き起こし、消耗品として度々交換する必要があった。
【0005】
このため、法面整畦体の周縁に沿って、リング部材を周設し、そのリング部材が圃場の底面に着地した状態で進行することによって、法面整畦体の重量を支えることができる構成が知られている。
また、複数枚の法面羽根板が組み合わさって構成された法面整畦体自体の補強部材として、当該リング部材を法面整畦体の周縁に沿って周設することも一般的に行われている。
【0006】
さらに、法面整畦体における土面に対する面(表面)から、リング部材をやや突出させた状態で、法面整畦体の周縁に周設させることで、整畦体による整畦の際に、畦の法面と圃場の底面との境の土面をより効果的に締め固める構成も知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−140210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、法面整畦体の周縁に沿ってリング部材を周設させた構成において、当該リング部材が整畦体の表面から少しでも突出していると、その突出部分によって、整畦中の畦法面の表面を崩してしまうこととなり、整畦の効果が損なわれてしまうといった問題があった。
【0009】
そこで本発明は、畦法面の整畦の効果を維持しつつ、法面羽根板の摩耗を低減させ、さらに、重量に対する強度を備えた法面整畦体を搭載する畦塗り機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、扇形の複数枚の法面羽根板を周方向に連結して頂部及び裾部を有する略円錐形状として構成され、軸回りの回転により畦法面を整畦する法面整畦体を備える畦塗り機であって、前記法面羽根板の円弧部分が連なって構成される前記法面整畦体の前記裾部の周縁に沿って、略円形のリング部材を設け、前記法面羽根板は、前記法面整畦体の回転方向の後方側に向けて張り出す張出部及び前記回転方向の前方側に向けて延びる下段部を有しており、周方向に隣接する前記法面羽根板は、前記回転方向の後方側に位置する後方側法面羽根板の前記下段部と、前方側に位置する前方側法面羽根板の前記張出部とが、互いに上下間隔を置いて配置され、前記リング部材は、外周の直径が前記裾部の外周の直径よりも大きく、前記法面羽根板の前記円弧部分における前記張出部から前記下段部に亘り、前記畦法面と接触する側の接触面から延びる接触延長線に対して、前記法面羽根板の前記接触面とは反対側の位置に配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、扇形の複数枚の法面羽根板を周方向に連結して頂部及び裾部を有する略円錐形状として構成され、軸回りの回転により畦法面を整畦する法面整畦体を備える畦塗り機であって、前記法面羽根板の円弧部分が連なって構成される前記法面整畦体の前記裾部の周縁に沿って、略円形のリング部材を設け、前記法面羽根板は、前記法面整畦体の回転方向の後方側に向けて張り出す張出部及び前記回転方向の前方側に向けて延びる下段部を有しており、周方向に隣接する前記法面羽根板は、前記回転方向の後方側に位置する後方側法面羽根板の前記下段部と、前方側に位置する前方側法面羽根板の前記張出部とが、互いに上下間隔を置いて配置され、前記リング部材は、外周の直径が前記裾部の外周の直径よりも大きく、前記法面羽根板の前記円弧部分における前記張出部から前記下段部に亘り、前記畦法面と接触する側の接触面から延びる接触延長線に対して、前記法面羽根板の前記接触面とは反対側の位置に配置されている部分を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リング部材を法面整畦体の裾部の周縁に沿って配置するとともに、当該リング部材を法面羽根板であって畦法面と接触する側の接触面から延びる接触延長線に対して、当該接触面とは反対側に配置させたことで、畦の法面へのリング部材の接触による影響を抑制し、リング部材によって畦の法面を崩してしまうといった問題を解消できる。
【0013】
さらに、リング部材を配置したことにより、法面整畦体自体の補強としての効果を発揮するとともに、法面整畦体の重量を支えることも可能であるため、法面羽根板の周縁部の摩耗の低減も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した畦塗り機の部分平面図を示す。
【図2】本発明を適用した畦塗り機の側面図を示す。
【図3】本発明を適用した畦塗り機の斜視図を示し、同図(a)は畦塗り機の左斜め後方から見た畦塗り機の斜視図であり、同図(b)は畦塗り機の左斜め後方から見た畦塗り機の斜視図である。
【図4】本発明を適用した畦塗り機に設けられたオフセットフレームの先端側の部分拡大模式側面図を示す。
【図5】本発明の第一実施形態における法面整畦体の斜視図を示す。
【図6】本発明の第一実施形態における整畦体により、畦を整畦している状態を前方から見た前方視の図を示す。
【図7】本発明の第一実施形態における法面羽根板及びリング部材の部分断面図を示す。
【図8】本発明の第二実施形態における整畦体により、畦を整畦している状態を前方から見た前方視の図を示す。
【図9】本発明の第二実施形態における法面羽根板及びリング部材の部分断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る整畦体の好ましい実施の形態について、説明する。
ここにおいて、先ず、図1(部分平面図)及び図2(側面図)を参照しながら、走行機体に牽引される畦塗り機の全体的な概要を説明し、説明の参考として、畦塗り機の斜視図(図3)も参照する。
【0016】
畦塗り機1は、図1及び図2に示すように、走行機体90の後部に設けられた三点リンク連結機構91に連結されて、走行機体90の前進及び後進に応じて畦塗り作業を行うものである。この畦塗り機1は、走行機体90に装着されて走行機体90からの動力が入力される入力軸8aを備えた装着部5と、装着部5に設けられ進行方向に対して左右方向に回動可能に支持されたオフセット機構部10と、オフセット機構部10の先端側に旋回自在に配設されて入力軸8aから伝達される動力によって作業を行なう作業部60を有して構成される。
【0017】
装着部5は、機体幅方向に延びるヒッチフレーム6と、ヒッチフレーム6の前方に設けられて走行機体90の後部に設けられた三点リンク連結機構91に連結される連結フレーム7を有して構成される。ヒッチフレーム6の幅方向の中央下部にはギアボックス8が設けられ、このギアボックス8には前述した入力軸8aが設けられている。
【0018】
オフセット機構部10は、その基端側をヒッチフレーム6に回動自在に連結されて後方側へ延びるオフセットフレーム11と、オフセットフレーム11の幅方向一方側に沿って並設されて基端側がヒッチフレーム6の一方側端に回動自在に連結されたリンク部材13と、オフセットフレーム11の先端側とリンク部材13の先端側との間に回動自在に連結された回動支持アーム15とを有して構成される。
【0019】
オフセットフレーム11は、内部が中空状に形成された箱状部材であり、オフセットフレーム11の先端側とヒッチフレーム6の一方側端部との間に接続された揺動シリンダ17の伸縮により、オフセットフレーム11は進行方向に対して左右方向に揺動可能である。また、オフセットフレーム11の上部には動力伝達機構(図示省略)が設けられ、この動力伝達機構によって、走行機体90から入力軸8aに伝達された動力がオフセットフレーム11の先端側に回転自在に配設された従動軸12に伝達可能に構成されている。
【0020】
リンク部材13の先端部は、オフセットフレーム11の先端部に回動自在に設けられた回動支持アーム15の一方側端に回動自在に取り付けられている。
ここで、図3(a)を参照しながら詳細に説明すると、回動支持アーム15は、進行方向に対して左右方向に延びる平行リンクフレーム部15aと、平行リンクフレーム部15aの基端側端部分から装着部5側へ延びるリンクアーム部15bとを有してなり、リンクアーム部15bの基端側がオフセットフレーム11の先端側下部に回動自在に取り付けられている。
このように構成されたオフセット機構部10は、図1に示す通り、オフセットフレーム11、リンク部材13、ヒッチフレーム6及び回動支持アーム15によって平行リンク機構を形成している。
【0021】
なお、揺動シリンダ17は、電動式油圧シリンダであり、図示しない制御装置からの制御信号に応じて伸縮するようになっている。
【0022】
また、図4(部分拡大模式側面図)に示すように、オフセットフレーム11の先端部に設けられた従動軸12の下部には、動力伝達軸14が従動軸12と同軸上に配置されて下方へ連結されて、動力伝達軸14は従動軸12の回転に伴って回転する。またオフセットフレーム11の先端下部には、動力伝達軸14と同軸上に配置された円筒状の連結部18がオフセットフレーム11に対して回動自在に取り付けられている。この連結部18は動力伝達軸14と非結合状態にあり、動力伝達軸14を回動中心として回動自在である。この連結部18の下部に作業部60の一部である伝動支持ケース61の基端部が接続され、連結部18の上部に作業部60の一部である伝動支持フレーム65が接続されている。このため、作業部60はオフセット機構部10に設けられた動力伝達軸14の中心軸線を回動支点Oとして回動可能である。
【0023】
なお、本実施形態においては、畦塗り機の構成のうち、回動支点Oを回動の中心軸として回動することが可能な部位であって、伝動支持ケース61及び伝動支持フレーム65を含み、その先端部側に配設される天場処理部62、前処理部64、整畦体66の構成を、作業部60として定義し、説明する。
【0024】
伝動支持ケース61には、図1、図3(a)、図3(b)に示すように、その先端側には、圃場の周辺に沿って形成された旧畦の上部を切り崩す天場処理部62と、切り崩した土の土盛りを行なう前処理部64が配設され、伝動支持ケース61の基端側には盛られた土を切り崩された旧畦上に塗り付ける整畦体66が配設されている。伝動支持ケース61内には不図示の動力伝達機構が内蔵され、この動力伝達機構は、従動軸12からの動力を受けて天場処理部62、前処理部64、整畦体66に動力伝達可能に構成されている。
【0025】
天場処理部62は、回転自在な天場処理ロータ62a(図3(b)参照)を備える。天場処理ロータ62aは天場動力伝達ケース63を介して上下方向に回動可能に伝動支持ケース61に連結された前処理部64の先端部に連結されるとともに、伝動支持フレーム65を介して支持されている。天場動力伝達ケース63内には図示しない動力伝達機構が内蔵され、この動力伝達機構を介して伝動支持ケース61の動力伝達機構に伝達された動力が天場処理ロータ62aに伝達されるようになっている。
【0026】
前処理部64は、回転自在な耕耘爪64a(図2参照)を備える。耕耘爪64aは伝動支持ケース61内の動力伝達機構を介して動力が伝達され、前処理部64は伝動支持ケース61に連結され伝動支持フレーム65を介して支持されている。
【0027】
整畦体66は、伝動支持ケース61に回転自在に支持された略円錐形状の法面整畦体20と、法面整畦体20の頂部に取り付けられて畦方向に延びる上面整畦部30とを有してなる。整畦体66は伝動支持ケース61内の動力伝達機構を介して回転動力が伝達されるように構成され、伝動支持ケース61に支持されている。このため、作業部60は連結部18を介してオフセット機構部10の先端側に設けられた動力伝達軸14(図4参照)の中心軸線を回動支点Oとして旋回可能である。
【0028】
次に、本発明に係る法面整畦体20の第一実施形態について、図5を参照しながら説明する。
法面整畦体20は、図5に示す通り、扇形をした複数枚の法面羽根板21を半径方向の直線部分で互いに連結することにより全体として略円錐形状に形成されており、中心位置である頂部(図中D)には、複数枚の法面羽根板21を連結する際の位置決めの基準になるとともに、上面整畦部30(図示省略)を固定するための固定部26が配置されている。
【0029】
また、本実施形態において各々の法面羽根板21は、法面整畦体20の回転方向(図中矢印V)の後方側に向けて張り出す張出部22と、回転方向の前方側に向けて延びる下段部23と、重なり部24と、を有している。
【0030】
そして、周方向に隣接する複数枚の法面羽根板21は、法面整畦体20における回転方向の後方側に位置する後方側法面羽根板21bの重なり部24を、前方側に位置する前方側法面羽根板21aの張出部22の背面側に連結することで、後方側法面羽根板21bの下段部23及び前方側法面羽根板21aの張出部22が、互いに上下間隔を置いて配置される。
【0031】
さらに、互いに隣接する前方側法面羽根板21a及び後方側法面羽根板21bは、前方側法面羽根板21aと後方側法面羽根板21bとの間に固定部26の保持部26aを挟み込むことで支持され、この前方側法面羽根板21a及び後方側法面羽根板21bの間に上下間隔が形成された状態で、互いに溶接等により接合されている。
【0032】
このように、上下間隔を設けておくことで、法面整畦体20が図中矢印Vに向けて回転して、整畦が行われる際には、各法面羽根板21の表面と畦の法面との間の距離は、この回転方向の前方側から後方側へかけて次第に小さくなるため、各法面羽根板21による畦の法面を押圧する力が前方側から後方側へかけて次第に大きくなり、特に張出部22において、より効果的に土表面を締め固めることが可能となっている。
【0033】
さらに、本発明に係る法面整畦体20は、図5に示す通り、法面羽根板21の円弧部分25が連なって構成される法面整畦体20の裾部(図中E)の周縁に沿って、略円形のリング部材40を設けてある。
【0034】
また、本実施形態においてリング部材40は、法面整畦体20の裾部Eに、適宜溶接固定されており、より詳細には、リング部材40の周方向に亘って、複数枚の法面羽根板21の円弧部分25に溶接され、固定されている。
【0035】
次に、本発明の第一実施形態に係る法面整畦体20及び上面整畦部30が一体化して構成された整畦体66を用いて、畦を整畦する状態について、図6を参照しながら説明する。
図6に示す通り、整畦作業は、法面整畦体20がスリップ回転しながら押圧して畦法面70bを整形し、同時に上面整畦部30がスリップ回転しながら押圧して畦上面70aを整形することで行われる。
【0036】
そして、図6に示す通り、リング部材40の外周の直径(図中L)は、法面整畦体20の裾部Eの直径(図中S)よりも大きく構成されているため、畦法面70bを法面整畦体20により押圧している際には、リング部材40が圃場の底面(70c)へ優先的に接触し、法面整畦体20の重量を支えることが可能となっている。
【0037】
このため、法面整畦体20を構成する法面羽根板21の周縁部に過剰な重力が働くことがなくなり、法面羽根板21と畦法面70bとの間で発生する摩擦の影響を抑制し、法面羽根板21の周縁部の摩耗の低減が図れる。
【0038】
また、法面羽根板21のサイズが大きくなり、法面整畦体20の重量が増えた場合においても、このリング部材40が、隣接する複数枚の法面羽根板21同士の連結固定をサポートすることとなり、法面整畦体20の補強部材としても効果を発揮する。
【0039】
次に、本発明の第一実施形態に係る法面羽根板21及びリング部材40の配置構成について、部分断面図である図7(a)〜(c)を参照しながら、説明する。
ここで、図7(a)は図6におけるA−A断面の図であって、法面羽根板21における張出部22とリング部材40との位置関係を示す部分断面図(重なり部24の図示は省略)である。
また、図7(b)は図6におけるB−B断面の図であって、法面羽根板21における円弧部分25の中間位置Pとリング部材40との位置関係を示す部分断面図である。
【0040】
そして、図7(c)は図6におけるC−C断面の図であって、法面羽根板21における下段部23とリング部材40との位置関係を示す部分断面図である。
なお、これら図7(a)〜(c)は、各々の断面の位置が圃場の底面(図中70c)に最も近くなった状態について示すものである。
【0041】
ここで、図7(a)においてリング部材40の最下部40Bは、畦法面70bと接触する側の法面羽根板21の接触面(図中MS)であって張出部22の部分から延びる接触延長線Maに対して、接触面MSとは反対側に位置している。
【0042】
同様に、図7(b)及び図7(c)においても、リング部材40の最下部40Bは、畦法面70bと接触する側の法面羽根板21の接触面(図中MS)であって中間位置Pの部分から延びる接触延長線Mb及び下段部23の部分から延びる接触延長線Mc対して、接触面MSとは反対側に位置している。
【0043】
つまり、本実施形態において、リング部材40は、法面羽根板21の円弧部分25における張出部22から下段部23の全てに亘って、法面羽根板21における畦法面70bと接触する側の接触面MSから延びる接触延長線Ma、Mb及びMcとは離れた位置構成となっており、接触面MSとは反対側に位置している。
【0044】
このため、畦法面70bを法面整畦体20の法面羽根板21により押圧している際には、畦法面70bへのリング部材40の接触が常に抑制され、リング部材40によって畦の法面を崩してしまうといった問題を解消できる。
【0045】
また、先述した通り、リング部材40の外周の直径を法面整畦体20の裾部Eの直径よりも大きくした(図6参照)ことから、リング部材40が圃場の底面(70c)へ優先的に接触し、そのため、リング部材40によって法面整畦体20の重量を支えることも可能となり、法面羽根板21の表面と畦法面70bとの間の摩耗の低減も可能となる。
【0046】
次に、法面羽根板21及びリング部材40における配置構成の第二実施形態について、畦を整畦する状態を示す図8を参照しながら説明する。
図8に示す通り、整畦作業は、畦上面70aに対して上面整畦部30が押圧し、畦法面70bに対して法面整畦体20が押圧して作用することで行われる。
【0047】
そして、リング部材40の外周の直径(図中K)は、法面整畦体20の裾部Eの直径(図中S)よりも大きく構成されているため、法面整畦体20により畦法面70bを押圧している際には、リング部材40が圃場の底面(70c)へ優先的に接触し、法面整畦体20の重量を支えることが可能となっている。
【0048】
このため、法面整畦体20を構成する法面羽根板21に過剰な重力が働くことがなくなり、法面羽根板21と畦法面70bとの間で発生する摩擦の影響を抑制し、法面羽根板21の摩耗の低減が図れる。
【0049】
また、この第二実施形態においては、法面整畦体20を前方から見た前方視(図8参照)に示す通り、リング部材40が法面整畦体20の裾部Eの周縁全てにおいて、張出部22から下段部23に亘る法面羽根板21の円弧部分25を部分的に覆った構成としており、リング部材40の外周の直径(図中K)は、第一実施形態におけるリング部材40の直径(図6における図中L)よりも、僅かに大きく構成されている。
【0050】
このため、第二実施形態におけるリング部材40は、第一実施形態と比べて、法面整畦体20の裾部Eにより近づけて配置固定されているため、隣接する法面羽根板21同士の連結固定をサポートするという効果に加え、全ての法面羽根板21をより強固に固定保持することができ、法面整畦体20の補強部材として、より一層の効果を発揮する。
【0051】
なお、第一実施形態と同じく、リング部材40は、法面整畦体20の裾部Eに適宜溶接固定されており、リング部材40の周方向に亘って、複数枚の法面羽根板21の円弧部分25に規則正しく溶接され、固定されている。
【0052】
次に、第二実施形態における法面羽根板21及びリング部材40の配置構成について、部分断面図である図9(a)〜(c)を参照しながら、説明する。
ここで、図9(a)は図8におけるA−A断面の図であって、法面羽根板21における張出部22とリング部材40との位置関係を示す部分断面図(重なり部24の図示は省略)である。
また、図9(b)は図8におけるB−B断面の図であって、法面羽根板21における円弧部分25の中間位置Pとリング部材40との位置関係を示す部分断面図である。
【0053】
そして、図9(c)は図8におけるC−C断面の図であって、法面羽根板21における下段部23とリング部材40との位置関係を示す部分断面図である。
なお、これら図9(a)〜(c)は、各々の断面の位置が圃場の底面(図中70c)に最も近くなった状態について示すものである。
【0054】
ここで、図9(a)においてリング部材40の最下部40Bは、畦法面70bと接触する側の法面羽根板21の接触面(図中NS)であって張出部22の部分から延びる接触延長線Naに対して、接触面MSとは反対側に位置している。
【0055】
図9(b)においてリング部材40の最下部40Bは、図9(a)に示す状態とは異なり、畦法面70bと接触する側の接触面(図中NS)であって中間位置Pの部分から延びる接触延長線Nbに接触するとともに、法面羽根板21の最下端面Rと圃場の底面(図中70c)との間に配置固定されている。
【0056】
また、図9(c)においては、リング部材40の最下部40Bは、畦法面70bと接触する側の接触面(図中NS)であって下段部23の部分から延びる接触延長線Ncに交差した位置にある。
【0057】
そして、図9(b)に示す最下端面Rとの相対的な位置関係に対して、最下部40Bは畦法面70b側へ近くなっており、法面羽根板21の最下端面Rと圃場の底面(図中70c)との間に配置固定されている。
【0058】
このため、第二実施形態においては、畦法面70bを法面整畦体20により押圧している際には、先述した通り、土表面を締め固める効果を最も発揮する張出部22において、畦法面70bへのリング部材40の接触を抑制して、リング部材40によって畦の法面を崩してしまうといった問題を解消する。
【0059】
さらに、円弧部分25の中間位置Pから下段部23に亘る領域においては、法面羽根板21の最下端面Rにリング部材40を配置固定しており、最下端面Rに僅かに当接する配置構成の第一実施形態(図7(c)参照)に比べて、最下端面Rとリング部材40との接合部分を多くさせたことから、全ての法面羽根板21をより強固に固定保持することができ、法面整畦体20の補強部材として、より一層の効果を発揮する。
【0060】
そして、図9(a)〜(c)に示した通り、第一実施形態と同様に、法面羽根板21の円弧部分25が連なって構成される法面整畦体20の裾部Eの周縁全てに沿って、リング部材40が優先的に圃場の底面へ接触する構成としたため、当該リング部材40により、法面整畦体20の重量を支えることも可能となり、法面羽根板21の摩耗の低減も可能となる。
【0061】
ここにおいて、第一実施形態とは異なる第二実施形態の特徴としては、リング部材40について、張出部22から下段部23に亘る法面羽根板21の円弧部分25の接触延長線Na、Nb及びNcに対して、接触面NSとは反対側に位置する部位を部分的に限定した点にある。
【0062】
つまり、リング部材40について、接触延長線Na、Nb及びNcに対して、接触面NSとは反対側に位置する部位(図8のA−A断面及び図9(a)参照)と、法面羽根板21の最下端面Rに配置固定されるとともに接触延長線に接触又は交差する位置にある部位(図8のB−B断面及び図9(b)、図8のC−C断面及び図9(c)参照)とを併存させた構成としている。
【0063】
そして、リング部材40における接触延長線と接触又は交差する部位は、法面羽根板21の最下端面Rに配置固定されており、最下端面Rとリング部材40との接合部分を多くさせたことから、全ての法面羽根板21をより強固に固定保持することができ、法面整畦体20の補強部材として、より一層の効果を発揮する。
【0064】
このため、法面整畦体20の補強の効果を重視する場合と、リング部材40の畦法面70bへの接触を抑制して畦法面70bに対する整畦の効果を重視する場合とにより、リング部材40における接触延長線と接触又は交差する部位を多く採る、あるいは、接触延長線に対して接触面NSとは反対側に位置する部位を多く採るといった設計変更が可能となる。
【0065】
例えば、法面羽根板21が大型となり、法面整畦体20の重量が全体的に増えた際には、リング部材40における接触延長線と接触又は交差する部位を多く採り、法面整畦体20の重量に対する補強の効果を発揮させることができる。
【0066】
あるいは、法面整畦体20が比較的小型である場合には、リング部材40における接触延長線に対して接触面NSとは反対側に位置する部位を多く採り、整畦の効果を一層高めることが可能となる。
【0067】
さらに、第一実施形態及び第二実施形態においては、リング部材40の太さを同一のものとして図示しているものの、適宜リング部材40の太さを設計変更してもよい。特に、先述した補強効果を目的とする場合に、リング部材40を太くすることも可能である。
【0068】
また、図7及び図9に示したように、リング部材40の断面形状を丸型として示してきたものの、本願発明の効果を損わない限り、形状は特に限定されるものではなく、その断面形状を角型、楕円型としてもよく、板部材を丸めてリング部材40としてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 畦塗り機
20 法面整畦体
21 法面羽根板
21a 前方側法面羽根板
21b 後方側法面羽根板
22 張出部
23 下段部
24 重なり部
30 上面整畦部
40 リング部材
70b 畦法面
D 頂部
E 裾部
MS、NS 接触面
TS、US 非接触面
Ma、Mb、Mc、Na、Nb、Nc 接触延長線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
扇形の複数枚の法面羽根板を周方向に連結して頂部及び裾部を有する略円錐形状として構成され、軸回りの回転により畦法面を整畦する法面整畦体を備える畦塗り機であって、
前記法面羽根板の円弧部分が連なって構成される前記法面整畦体の前記裾部の周縁に沿って、略円形のリング部材を設け、
前記法面羽根板は、前記法面整畦体の回転方向の後方側に向けて張り出す張出部及び前記回転方向の前方側に向けて延びる下段部を有しており、
周方向に隣接する前記法面羽根板は、前記回転方向の後方側に位置する後方側法面羽根板の前記下段部と、前方側に位置する前方側法面羽根板の前記張出部とが、互いに上下間隔を置いて配置され、
前記リング部材は、外周の直径が前記裾部の外周の直径よりも大きく、
前記法面羽根板の前記円弧部分における前記張出部から前記下段部に亘り、前記畦法面と接触する側の接触面から延びる接触延長線に対して、前記法面羽根板の前記接触面とは反対側の位置に配置されていることを特徴とする畦塗り機。
【請求項2】
扇形の複数枚の法面羽根板を周方向に連結して頂部及び裾部を有する略円錐形状として構成され、軸回りの回転により畦法面を整畦する法面整畦体を備える畦塗り機であって、
前記法面羽根板の円弧部分が連なって構成される前記法面整畦体の前記裾部の周縁に沿って、略円形のリング部材を設け、
前記法面羽根板は、前記法面整畦体の回転方向の後方側に向けて張り出す張出部及び前記回転方向の前方側に向けて延びる下段部を有しており、
周方向に隣接する前記法面羽根板は、前記回転方向の後方側に位置する後方側法面羽根板の前記下段部と、前方側に位置する前方側法面羽根板の前記張出部とが、互いに上下間隔を置いて配置され、
前記リング部材は、外周の直径が前記裾部の外周の直径よりも大きく、
前記法面羽根板の前記円弧部分における前記張出部から前記下段部に亘り、前記畦法面と接触する側の接触面から延びる接触延長線に対して、前記法面羽根板の前記接触面とは反対側の位置に配置されている部分を有することを特徴とする畦塗り機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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