説明

異なるイオン密度の3つのセグメントを含むコポリマー、その製造プロセス、およびその使用

【課題】反応後のクリーニングステップにおいて、残留触媒またはその承継生成物(successor product)による触媒に起因する欠点により阻害されず、顔料の非常に良好な分散と、バインダーに対する幅広い相溶性とを組み合わせる、コポリマーを提供する。
【解決手段】異なるイオン密度の3つのセグメントを含むコポリマーに関し、各セグメント中のイオン性モノマー分率は1〜100mol%であり、第2のセグメントおよび第3のセグメントはそれぞれ先行するセグメントのエチレン性不飽和モノマーを含有し、NMPまたはRAFTにより単官能性開始剤を用いて製造可能なコポリマーに関する。本発明はさらに、当該コポリマーを製造するプロセスと、分散剤としてのその使用とに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なるイオン密度の3つのセグメントを含むコポリマー、その製造プロセスならびに、特に顔料を処理するための分散剤、コーティング材料および成形コンパウンドの添加剤としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブロックコポリマーの製造に適した制御された様々なリビング重合プロセスの開発が見られている。例えば、これらのプロセスとしては、例えばPolym. Int. 2000, 49, 993, Aust.、J. Chem. 2005, 58, 379、J. Polym. Sci. PartA: Polym. Chem. 2005, 43, 5347、米国特許第6291620号、国際公開第98/01478号、国際公開第98/58974号および国際公開第99/31144号に記載されるような、特定の重合調節剤を用いる場合にはMADIXおよび付加開裂連鎖移動とも呼ばれるが本明細書ではRAFTとのみ称する可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)と、例えばChem. Rev. 2001, 101, 3661に開示されるような重合調節剤としてニトロキシル化合物を用いる制御重合(NMP)と、例えばChem. Rev. 2001, 101, 2921に記載されるような原子移動ラジカル重合(ATRP)と、例えば「ポリマーサイエンスおよびエンジニアリング百科事典(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering)」、第7巻、H.F. Mark、N.M. Bikales、C.G. OverbergerおよびG. Menges編、Wiley Interscience、ニューヨーク、1987年、580頁以下の「グループ移動重合(Group Transfer Polymerization)」においてO. W. Websterにより開示されるようなグループ移動重合(GTP)と、例えばMacromol. Symp. 1996, 111, 63に記載されるようなテトラフェニルエタンにより制御されたフリーラジカル重合と、例えばMacromolecular Rapid Communications, 2001, 22, 700に記載されるような重合調節剤として1,1−ジフェニルエテンにより制御されたフリーラジカル重合と、例えばMakromol. Chem. Rapid Commun. 1982, 3, 127に開示されるようなイニファータにより制御されたフリーラジカル重合と、例えばJ. Am. Chem. Soc. 1994, 116, 7973により知られているような有機コバルト錯体により制御されたフリーラジカル重合とが挙げられる。
【0003】
このような重合プロセスで得られるブロックコポリマーは、多くの場合、湿潤剤および分散剤として使用することができる。
【0004】
OPI(公開されている)文献の国際公開第00/40630号および国際公開第03/046029号には、全てのポリマーブロック中にイオン基を含有し、ATRPによって製造されたABおよびABAブロックコポリマーを用いる顔料の製造が記載されている。この重合技術の欠点は、例えばハロゲン化銅化合物のアミン錯体などの必須の金属触媒の除去が不完全なことである。ポリマーがアミン含有モノマー、酸含有モノマーまたはイオン性モノマーなどの極性モノマーを含む場合には、この除去は特に困難である。ポリマー溶液中に触媒が残留すると、ポリマー溶液に緑色または青色の望ましくない着色を生じると共に、残留触媒またはその承継生成物(successor product)による触媒に起因する分解反応の結果としてポリマーのより急速な分解を引き起こし、従って望ましくない。
【0005】
EP1275689には、イオン基を持つポリマーブロックと、イオン基を持たないポリマーブロックとを含み、NMPによって製造されるジブロックコポリマーを用いる顔料の製造が記載されている。EP1275689に記載されるブロックコポリマーは様々な媒体中でミセルを形成する傾向があり、その結果、顔料およびその他の固形物はよりゆっくりと分散されるか、または全く分散されない。さらに、この文献に記載されるブロックコポリマーは、例えばポリエステルバインダーなどの様々な種類のバインダーに対して非常に限られた相溶性を示し、湿潤剤および分散剤としてのその使用が著しく制限される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、コポリマーを提供し、反応後のクリーニングステップにおいて上述した欠点により阻害されないようにコポリマーを構築し、顔料の非常に良好な分散と、バインダーに対する幅広い相溶性とを組み合わせることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、異なるイオン密度の3つのセグメントを含み、各セグメント中のイオン性モノマーの分率が1〜100mol%であり、第2のセグメントおよび第3のセグメントが、それぞれ先行するセグメントのエチレン性不飽和モノマーを含有するコポリマーで、NMP又はRAFTにより単官能性開始剤を用いて製造可能なコポリマーを供することにより達成された。この場合において、第1のセグメントの重合を使用されるモノマー又はモノマー混合物の10〜95mol%の転化率まで行い、第1のセグメントへの第2のセグメントの重合は、第1のセグメントの未反応モノマーおよび少なくとも使用するイオン性モノマー又はイオン性モノマー前駆体の量の、第1のセグメントのモノマー又はモノマー混合物とは異なるモノマーまたはモノマー混合物を含めて行う。この第2のセグメントの重合は、反応に得られるモノマーの10〜95mol%の転化率まで行う。さらに、第2のセグメントへの第3のセグメントの重合は、第2のセグメントの未反応モノマーおよび、適切な場合には、第1のセグメントの未反応モノマー、ならびに少なくとも使用するイオン性モノマー又はイオン性モノマー前駆体の量の、第2のセグメントのモノマー又はモノマー混合物とは異なるモノマーまたはモノマー混合物を含めて行う。なお、該イオン性モノマー前駆体を使用する場合には、その全量または一部がイオン性モノマーに転化される。
【0008】
セグメントのモノマーは当然ながら、そのセグメント内で共重合した形で存在する。
【0009】
イオン密度は、次のように定義される。
【0010】
【数1】

【0011】
3つのセグメントのイオン密度の計算は、分析データに基づいて、ポリマー3の製造のための合成の説明の後に例示される。
【0012】
セグメントAおよびセグメントCは鎖の最初および鎖の最後によってそれぞれ定義され、さらに1つまたは複数の新しいモノマー混合物または新しいモノマーの反応容器内への供給が開始される重合中の時点によっても定義されるが、セグメントBは、1つまたは複数の新しいモノマー混合物または新しいモノマーの反応容器への供給が開始される重合中の時点によってのみ定義される。この場合、3つのセグメントは異なるイオン密度を有する。2つ以上のモノマー混合物、1つのモノマー混合物および1つのモノマーまたは2つのモノマーを互いに独立して供給することによって1つのセグメントが製造される場合、供給は同時に開始されるが、その長さが異なることがあり得る。これは、ポリマー3およびポリマー4の第3のセグメントの重合との関連で実施例において説明される。
【0013】
1つの有益な実施の形態においては、第1のセグメントに対して、並びに第1のセグメントの未反応モノマーに対して、少なくとも使用されるイオン性モノマーまたはイオン性モノマー前駆体の量の、第1のセグメントのモノマーまたはモノマー混合物とは異なるモノマー混合物またはモノマーが、供給の速度および/または異なる共重合パラメータを特徴とする、供給されるモノマーまたはモノマー混合物中のモノマーの反応速度の違いによって第3のセグメント内でイオン密度の連続的な遷移(progressive transition)が得られるような形で重合に供給されることである。
【0014】
特に有益なことは、本発明のコポリマーを製造する操作が、第1のセグメントおよび第2のセグメントから形成されるプレポリマーに対して、並びに第2のセグメントおよび適切な場合には第1のセグメントの未反応モノマーに対して、少なくとも使用されるイオン性モノマーまたはイオン性モノマー前駆体の量の、第2のセグメントのモノマーまたはモノマー混合物とは異なるモノマー混合物またはモノマーが、供給の速度および/または異なる共重合パラメータを特徴とする、供給されるモノマーまたはモノマー混合物中のモノマーの反応速度の違いによって第3のセグメント内でイオン密度の連続的な遷移が得られるような形で重合に供給されるように行われることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ポリマーを3つのセグメントに構造的に区別し、セグメント自体を構造的に区別することによって、例えばEP−A−1416019に記載される種類のようなグラジエントコポリマーまたはABブロックコポリマーと比較して、本発明のコポリマーの特性をより効果的に調整して、湿潤剤および分散剤として所望の特性の取り合わせにすることが可能になる。
【0016】
本発明のコポリマーは、ポリマー鎖に沿ってイオン密度が遷移し、それにより3つのセグメントが定義されることによって特徴付けられるコポリマーであると理解される。上記の制御されたリビング重合プロセスとの関連で、イオン密度またはモノマー組成におけるこの遷移は、モノマーまたはモノマー混合物の逐次付加によって達成することができる。ポリマーセグメントの合成では、重合は100mol%の転化率までは実行されないが、代わりに10%〜95%、好ましくは20%〜95%、より好ましくは50%〜90%のモノマーの転化率が実現され、続いて、それぞれ次のモノマー混合物または次のモノマーの添加によって、次のポリマーセグメントの合成が開始されるという事実によって、各ポリマーセグメント中のポリマーの組成に連続的な遷移が生じる。
【0017】
さらに、各ポリマーセグメントの間の差異は、非イオン性モノマーに対して異なる割合のイオン性モノマーを含有することを特徴とし、各ポリマーセグメントは少なくとも1つのイオン性モノマーを含むことが必要である。一つのセグメント中のイオン性モノマー分率は、好ましくは、このセグメント中のモノマーの総数を基準として1から100mol%まで変化し、用途の特定の要求に適応させることができる。
【0018】
これに関連して、最高のイオン性モノマー濃度を有するポリマーセグメントは、イオン基を有するエチレン性不飽和モノマーのみを含有するか、またはイオン基を有するエチレン性不飽和モノマーおよび非イオン基を有するエチレン性不飽和モノマーを含む混合物を含有する。より低濃度のイオン基を有するポリマーセグメントは、イオン基を有するエチレン性不飽和モノマーおよび非イオン基を有するエチレン性不飽和モノマーの混合物によって特徴付けられる。3つのセグメントは全て異なる濃度のイオン基を有する。
【0019】
分散剤として使用するための本発明のコポリマーは、好ましくは、1000〜20000g/mol、より好ましくは2000〜20000g/mol、非常に好ましくは2000〜15000g/molの数平均分子量Mnを有する。
【0020】
これら3つのセグメントはそれぞれ、少なくとも、300g/molの数平均分子量を有する。
【0021】
イオン基はアニオンまたはカチオン基であるか、もしくはそれぞれ形式的に負または正の電荷を帯びた基である。これに関連して、例えば、両性イオン化合物またはベタインのように、エチレン性不飽和モノマーに2つ以上のイオン基が存在することも可能である。
【0022】
イオン基は対応するイオン性のエチレン性不飽和モノマーの形態でポリマー中に導入されてもよいし、または、例えば第3級アミノ化合物の4級化または塩形成などのポリマー類似反応(polymer-analogous reaction)によって、後で生成されてもよい。
【0023】
従って、例えば、例えばカルボン酸およびリン酸エステルなどのポリマー中の酸官能基を塩基と反応させること、および/または水、一価アルコールまたはポリエーテルなどのOH官能性化合物の存在下で、例えば無水マレイン酸などの酸無水物を塩基と反応させることが可能である。
【0024】
ポリマー中のオキシラン構造は、o−リン酸などの求核試薬と反応させ、次に塩基で塩化して、イオン基を形成することができる。
【0025】
ポリマー中のヒドロキシル官能性は、ポリリン酸と反応させてリン酸エステルを形成し、次に塩基で塩化してイオン基を形成することができる。
【0026】
好適な塩基は、例えばジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)プロパン−1−オール、トリエチルアミン、ブチルアミンおよびジブチルアミン等のアミン類、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウムおよび炭化水素ナトリウム等の元素周期表の主族元素の1〜3族からの金属水酸化物、金属酸化物、並びに金属炭酸塩および金属炭化水素塩である。
【0027】
例えば、米国特許第6111054号に記載されるように、カルボン酸またはリン酸およびそのエステルを用いて、ポリマーに結合したアミンの塩化(salification)を行うことも可能である。
【0028】
さらに、例えば塩化ベンジルなどのハロゲン化アルキルとのアルキル化反応において、またはオキシランとカルボン酸との組み合わせにより、アミンを第4級アンモニウム塩に転化することが可能である。
【0029】
第3級アミンは、酸素、過カルボン酸などのペルオキソ化合物、および過酸化水素を用いて、アミン酸化物に転化させることができ、これらのアミン酸化物はさらに、例えば塩酸などの酸で塩化することができる。
【0030】
イオン性のエチレン性不飽和モノマーの例は、以下に続くリストから選択することができる。(メタ)アクリレートの表記は、アクリレート類だけでなく、メタクリレート類を含む:アクリル酸、メタクリル酸またはマレイン酸の塩;例えば、2−トリメチルアンモニオエチルメタクリレート塩化物および2−ベンジルジメチルアンモニオエチル(メタ)アクリレート塩化物等の4級アミノアルキル(メタ)アクリレート類;例えば、トリプロピレングリコールメタクリレートリン酸ナトリウム塩等のリン酸含有モノマーの塩をも含む。
【0031】
非イオン性のエチレン性不飽和モノマーの例は、以下のリストから選択することができる。(メタ)アクリレートの表記は、アクリレートだけでなく、メタクリレートを含む:例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートおよびイソボルニル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜22の直鎖、分岐、または脂環式アルコール類のアルキル(メタ)アクリレート類、例えば、4−メチルフェニルメタクリレート等の、いずれの場合でもアリールラジカルを4回まで非置換または置換することのできるベンジルメタクリレートまたはフェニルアクリレートのようなアリール(メタ)アクリレート、例えば、3,4−ジヒドロキシブチルモノメタクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートおよび2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジオールモノメタクリレート等の炭素数3〜36の直鎖、分岐、または脂環式ジオール類のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、好ましくは、炭素数2〜8の直鎖、分岐または脂環式ジオール類由来の220〜1,200の平均分子量Mnを有するカプロラクトン変性および/またはバレロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、または炭素数10〜80のポリプロピレングリコール類のモノ(メタ)アクリレート類、例えば、炭素数6〜20のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート類等のハロゲン化アルコール類の(メタ)アクリレート類のような(メタ)アクリル酸エステル;例えば、2,3−エポキシブチルメタクリレート、3,4−エポキシブチルメタクリレートおよびグリシジル(メタ)アクリレート等のオキシラニル(メタ)アクリレート類;炭素数10〜80のポリエチレングリコール類の2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよびモノ(メタ)アクリレート類;例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、およびN,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類;例えば、4−メチルスチレン、4−ビニル安息香酸および4−ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のスチレンおよびスチレン誘導体;例えば、メタクリロニトリルおよびアクリロニトリル;例えば、酢酸ビニル等の特に炭素数1〜20のカルボン酸のビニルエステル類;例えば、マレイミドおよびN−フェニルマレイミドのようなN置換マレイミド類、またはN−エチルマレイミドおよびN−オクチルマレイミド等の炭素数1〜22の直鎖、分岐、または脂環式アルキル基を有するN置換マレイミド類をも含む。
【0032】
例えば、4−ビニルピリジンおよび1−[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]−2−イミダゾリジノン等のエチレン性不飽和単位を有する窒素または硫黄含有複素環;(メタ)アクリルアミド;例えば、N−(tert−ブチル)アクリルアミドおよびN,N−ジメチルアクリルアミド等の炭素数1〜22の直鎖、分岐、または脂環式アルキル基を有するN−アルキル置換、またはN,N−ジアルキル置換アクリルアミド類。
【0033】
本発明はさらに、異なるイオン密度の3つのセグメントを含むコポリマーを製造するプロセスを提供するものであり、該コポリマーの各セグメント中のイオン性モノマー分率は1〜100mol%であり、各セグメントは少なくとも1つのイオン性モノマーを含有し、第2のセグメントおよび第3のセグメントはそれぞれ先行するセグメントのモノマーを含有し、該コポリマーはNMPまたはRAFTにより単官能性開始剤を用いて製造可能である。ここで、第1のセグメントの重合は、使用されるモノマーまたはモノマー混合物の10〜95mol%の転化率まで行われ、第1のセグメントへの第2のセグメントの重合は、第1のセグメントの未反応モノマーと、少なくとも使用されるイオン性モノマーまたはイオン性モノマー前駆体の量の、第1のセグメントのモノマーまたはモノマー混合物とは異なるモノマーまたはモノマー混合物とを含有して行われ、第2のセグメントの重合は反応に使用可能なモノマーの10〜95mol%の転化率まで行われ、第2のセグメントへの第3のセグメントの重合は、第2のセグメントおよび適切な場合には第1のセグメントの未反応モノマーと、少なくとも使用されるイオン性モノマーまたはイオン性モノマー前駆体の量の、第2のセグメントのモノマーまたはモノマー混合物とは異なるモノマーまたはモノマー混合物とを含有して行われ、イオン性モノマー前駆体は使用される場合には、全量またはその一部がイオン性モノマーに転化される。
【0034】
本発明のプロセスのさらに好ましい実施形態は、本発明のコポリマーを特徴付けるために記載されるプロセスの特徴から明らかであり、そのうちのいくつかは、請求項10〜13においても保護される。
【0035】
本発明のコポリマーを製造するのに使用される単官能性開始剤は、ただ1つの成長方向でポリマー連鎖を開始する。それぞれの制御されたリビング重合プロセスにおいて使用される単官能性開始剤は、当業者に知られている。使用可能な開始剤としては、例えば、アゾジイソブチロニトリルなどのアゾ開始剤、過酸化ジベンゾイルおよび過酸化ジクミルなどの過酸化化合物、並びにペルオキソ二硫酸カリウムなどの過硫酸塩が挙げられる。
【0036】
重合調節剤の例は、上記の文献で提示される。NMPに関しては、例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンオキシル(TEMPO)またはN−tert−ブチル−N−[1−ジエチルホスホノ(2,2−ジメチルプロピル)]ニトロキシル、およびRAFTに関しては、例えば、チオカルボン酸エステル類またはキサントゲン酸エステル類が好適である。
【0037】
NMPの場合、さらに、例えばChem. Rev. 2001, 101, 3661, 「V.アルコキシアミンへのアプローチ(V. Approaches to Alkoxyamines)」、またはAngewandte Chemie Int. Ed. 2004, 43, 6186に記載されるように、開始剤と重合調節剤との付加生成物を使用することが可能である。
【0038】
重合は、無溶媒のバルクで、または有機溶媒および/または水中で行うことができる。溶媒が使用される場合、重合は、ポリマーを溶媒に溶解して従来の溶液重合のように行うこともできるし、または、例えばAngewandte Chemie Int. Ed. 2004, 43, 6186およびMacromolecules 2004, 37, 4453に記載されるエマルション重合またはミニエマルション重合のように行うこともできる。結果として得られるエマルションポリマーまたはミニエマルションポリマーは、塩の形成によって水溶性にすることができ、均一なポリマー溶液が形成される。ポリマーは、塩化後もまだ水に不溶性であることも可能である。
【0039】
得られるコポリマーは、末端基として重合調節剤により自動的に定義されない。例えば、重合の後に、末端基は完全または部分的に脱離され得る。従って、例えば熱的な手段で、温度を重合温度よりも高くすることによって、NMPにより製造されたポリマーのニトロキシル末端基を脱離することが可能である。例えば、この重合調節剤の脱離は、例えば重合阻害剤、フェノール誘導体などの化学化合物をさらに添加することによって、またはMacromolecules 2001, 34, 3856に記載されるようなプロセスによって行なうこともできる。
【0040】
RAFT調節剤は、ポリマーの温度を上昇させることによって熱的に脱離するか、過酸化水素、過酸、オゾン若しくは他の漂白剤などの酸化剤を添加することによってポリマーから除去するか、または、アミンなどの求核試薬と反応させてチオール末端基を形成することができる。
【0041】
重合が行われた後、次にコポリマーをポリマー類似反応で変性することができる。例えば、ポリマー中のヒドロキシル官能性は、例えばε−カプロラクトンなどのラクトンと反応させてポリエステルを形成することができる。この場合、上述のようにポリマー中にイオン基を生成することも可能である。
【0042】
本発明のコポリマーは、例えば顔料を分散させるための分散剤として、本発明に従って使用することができる。分散剤として本発明のコポリマーを含む顔料分散体は、多数の用途において使用することができる。本発明の1つの使用は、例えば、適切な場合にはバインダーおよび従来のコーティング助剤の存在下、有機溶媒および/または水に顔料を分散させることである。
【0043】
したがって本発明のコポリマーは、本発明に従って、例えば塗料、ペースト、および/または成形コンパウンド等のコーティング材料、特に着色コーティング材料の製造に使用することができる。この種の分散剤は、例えば、被膜形成バインダーおよび/または溶媒並びにまた、固形物(つまり、顔料)、並びに適切であれば従来の助剤を混合する場合、顔料塗料の製造に使用することができる。被膜形成バインダーは、被膜形成に関与する高分子物質または高分子形成物質である。好適なこれらの被膜形成バインダーとしては、例えば、二成分反応性ワニス、空気乾燥ワニス、湿分硬化ワニス、酸硬化ワニス、放射線硬化ワニス、分散ワニスまたは焼成ワニスが挙げられる。ビニルエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステル/ポリイソシアネートの組み合わせ、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂エステル、エチレン−酢酸ビニルポリマー、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド類、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ酪酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、塩化ゴム、シクロゴム、シリコーンポリマー、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルポリマー、ポリブタジエン等、およびまた前述の物質の配合物を例示することができる。バインダーの中には、少なくとも2つの非共役エチレン性不飽和二重結合を有する架橋モノマーの可能性があるものも存在する。このような例は、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−プロピレングリコールジアクリレート、1,2−プロピレングリコールジメタクリレート、およびまたアリル(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ジアリルマレエート、トリアリルシアヌル酸またはトリアリルイソシアヌル酸である。したがって、本発明に従い、バインダー、1つまたは複数の有機溶媒および/または水、顔料、分散剤、ならびに適切であればさらに通常のコーティング助剤を共に分散させたコーティング材料を製造するために本発明のコポリマーを使用する。
【0044】
また本発明は、着色成形コンパウンドおよび着色コーティング材料、および/または基材上の着色コーティング(この場合、着色塗料が基材に塗布され、基材に塗布された着色塗料は、焼付けまたは硬化および/若しくは架橋される)の製造における分散剤としての本発明のコポリマーの使用も提供する。分散剤は、この場合、単独で使用することもできるし、または官能基が結合されていないバインダーと一緒に使用することもできる。
【0045】
分散剤としてのイオン性コポリマーの1つの本発明の使用は、分散剤でコーティングされた分散可能な顔料の製造にもあり得る。この種類の顔料におけるコーティングは、例えばEP−A−0270126に記載されているように行うことができる。
【0046】
顔料分散体の使用のさらなる例は、国際公開第00/40630号において与えられる。
【0047】
分散剤は、アゾ縮合体およびジアゾ縮合体等の有機顔料、並びにこれらの金属複合体、フタロシアニン類、キナクリドン類、インドール類、チオインドール類、ペリレン類、アントラキノン類、アントラピリミジン類、ジケトピロロピロール類およびカルバゾール類を分散するのに使用することができる。さらに、顔料の例は、以下のモノグラフ:W. Herbst, K. Hunger「工業的有機顔料(Industrial Organic Pigments)」, 1997(発行元:Wiley-VCH,ISBN:3−527−28836−8)に見出される。
【0048】
加えて、例えば、酸化鉄(III)、酸化クロム(III)、硫化モリブデン、硫化カドミウム、カーボンブラック、グラファイト、バナジウム酸ビスマス、クロム酸鉛またはモリブデン酸鉛を分散することが可能である。
【0049】
イオン基およびエチレン性不飽和モノマーの選択は、分散される顔料によって、そして液体媒体およびバインダーによっても導かれ、それぞれの場合で異なり得る。モノマーは、例えば、分散される材料と相互作用するように選択することができる。多くの場合、これらのモノマーは、例えば、アミン官能性が酸で塩化されるか、またはアルキル化剤と反応されて第4級アンモニウム基を形成しているアミノアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される。
【0050】
さらに本発明によって提供されるのは、本発明のコポリマーと、1つまたは複数の顔料と、有機溶媒および/または水とを含み、そして適切であればバインダーおよび通常のコーティング助剤も含む塗料、ペーストおよび成形コンパウンドである。さらに、本発明のコポリマーでコーティングされた顔料も本発明によって提供される。
【実施例】
【0051】
ポリマーの合成
ポリマー1
48gの2−メトキシプロパノール、3.7gのSG1(すなわち、N−tert−ブチル−N−[1−ジエチルホスホノ(2,2−ジメチルプロピル)]−ニトロキシル、製造についてはMacromolecules 2000, 33, 1141を参照)、1.3gの2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、8gのメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(61.5mmol)、39.32gのアクリル酸n−ブチル(307mmol)、17.3gのメタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(112mmol)および18.4gのスチレン(177mmol)を、反応容器中の不活性ガス雰囲気(窒素)下に120℃で、95%の転化(1H−NMRにより測定)が達成されるまで反応させる。次に、21.5gのスチレン(207mmol)および64.7gのアクリル酸n−ブチル(505mmol)を10秒間で添加し、24gのメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(185mmol)および36gの2−メトキシプロパノールの混合物を120℃で180分間にわたって添加する。計量の終了後、94%の転化(1H−NMRにより測定)が達成されており、室温に冷却することにより反応を終了させる。生成したポリマー溶液を2−メトキシプロパノールにより50%の固形分に調整する。
【0052】
湿潤剤/分散剤1(WA/D1)(比較ポリマー:イオン性ブロックを有するABブロックコポリマー)
イオン基の形成:
120gのポリマー1の溶液を、4.0gの安息香酸および7.25gのtert−ブチルフェニルグリシジルエーテルと、120℃で2時間反応させる。生成したポリマー溶液を2−メトキシプロパノールにより50%の固形分に調整する。
【0053】
ポリマー2
48gの2−メトキシプロパノール、3.7gのSG1(すなわち、N−tert−ブチル−N−[1−ジエチルホスホノ(2,2−ジメチルプロピル)]−ニトロキシル、この製造についてはMacromolecules 2000, 33, 1141を参照)、1.3gの2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、104gのアクリル酸n−ブチルおよび39.9gのスチレンを反応容器中で、不活性ガス雰囲気(窒素)下に120℃で反応させ、反応の間に、36gの2−メトキシプロパノール中の17.3gのメタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルおよび32gのメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(185mmol)を300分間にわたって添加する。計量の終了後、93%の転化(1H−NMRにより測定)が達成されており、室温に冷却することにより反応を終了させる。生成したポリマー溶液を2−メトキシプロパノールにより50%の固形分に調整する。
【0054】
湿潤剤/分散剤2(WA/D2)(比較ポリマー:グラジエントポリマー)
イオン基の形成:
120gのポリマー2の溶液を、4.0gの安息香酸および7.25gのtert−ブチルフェニルグリシジルエーテルと、120℃で2時間反応させる。ポリマー溶液を2−メトキシプロパノールにより50%の固形分に調整する。
【0055】
ポリマー3
48gの2−メトキシプロパノール、3.7gのSG1、1.3gの2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、39.32gのアクリル酸n−ブチル(307mmol)および6.6gのメタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(42mmol)を反応容器中で、不活性ガス雰囲気(窒素)下に120℃まで加熱する。120℃の反応温度が達成されてから15分後に、メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルでは90%の転化率、アクリル酸n−ブチルでは29%の転化率が達成された(GCにより測定)。次に、8gのメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(61.5mmol)、11.0gのメタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(70mmol)および18.4gのスチレン(177mmol)の混合物を30分間にわたって計量供給する。約4時間後、メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルおよびスチレンでは95%の転化、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルでは99%の転化、そしてアクリル酸n−ブチルでは90%の転化が達成された(GCにより測定)。その後、21.5gのスチレン(207mmol)および64.7gのアクリル酸n−ブチル(505mmol)を1分間にわたって添加し、24gのメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(185mmol)、1.5gのメタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(9.5mmol)および36gの2−メトキシプロパノールの混合物を120℃で180分間にわたって計量供給する。計量供給の終了後、96%の転化(1H−NMRにより測定)が達成されており、室温に冷却することにより反応を終了させる。ポリマー溶液を2−メトキシプロパノールにより50%の固形分に調整する。
【0056】
湿潤剤/分散剤3(WA/D3)(イオン密度(mol%):第1のセグメント30%、第2のセグメント14%および第3のセグメント1%)
イオン基の形成:
120gのポリマー3の溶液を、4.3gの安息香酸および7.9gのtert−ブチルフェニルグリシジルエーテルと、120℃で2時間反応させる。ポリマー溶液を2−メトキシプロパノールにより50%の固形分に調整する。
【0057】
【表1】

【0058】
ポリマー4
48gの2−メトキシプロパノール、3.7gのSG1、1.3gの2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、39.32gのアクリル酸n−ブチル(307mmol)および6.6gのメタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(42mmol)を、反応容器中で不活性ガス雰囲気(窒素)下に120℃に加熱する。120℃の反応温度が達成されてから15分後に、メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルでは90%の転化率、アクリル酸n−ブチルでは29%の転化率が達成された(GCにより測定)。次に、8gのメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(61.5mmol)、11.0gのメタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(70mmol)および18.4gのスチレン(177mmol)の混合物を30分間にわたって計量供給する。約4時間後、メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルおよびスチレンでは95%の転化、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルでは99%の転化、そしてアクリル酸n−ブチルでは90%の転化が達成された(GCにより測定)。その後、21.5gのスチレン(207mmol)および64.7gのアクリル酸n−ブチル(505mmol)を1分間にわたって添加し、24gのメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(185mmol)、6gのメタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(38mmol)および36gの2−メトキシプロパノールの混合物を120℃で180分間にわたって計量供給する。計量供給の終了後、97%の転化(1H−NMRにより測定)が達成されており、室温に冷却することにより反応を終了させる。ポリマー溶液を2−メトキシプロパノールにより50%の固形分に調整する。
【0059】
湿潤剤/分散剤4(WA/D4)(イオン密度(mol%):第1のセグメント30%、第2のセグメント14%および第3のセグメント1%)
イオン基の形成:
120gのポリマー4の溶液を、5.3gの安息香酸および9.8gのtert−ブチルフェニルグリシジルエーテルと、120℃で2時間反応させる。ポリマー溶液を2−メトキシプロパノールにより50%の固形分に調整する。
【0060】
ポリマー5
48gの2−メトキシプロパノール、3.7gのSG1、1.3gの2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、47.32gのアクリル酸n−ブチル、17.3gのメタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルおよび18.4gのスチレンを、90%の転化率(1H−NMR)が達成されるまで、反応容器中で不活性ガス雰囲気(窒素)下に120℃に加熱する。次に、89gのアクリル酸n−ブチルおよび21.5gのスチレンの混合物を添加し、98%の転化率(1H−NMR)が達成されるまで重合させる。生成したポリマー溶液を2−メトキシプロパノールにより50%の固形分に調整する。
【0061】
湿潤剤/分散剤5(WA/D5)(比較ポリマー:ABブロックコポリマー)
100gのポリマー5の溶液を、3.2gの塩化ベンジルと120℃で4時間反応させる。生成したポリマー溶液を2−メトキシプロパノールにより40%の固形分に調整する。
【0062】
湿潤剤/分散剤6(WA/D6)(比較ポリマー:ABブロックコポリマー)
100gのポリマー5の溶液を、3.4gの安息香酸と反応させて、ポリマー5の安息香酸塩溶液を形成する。生成したポリマー溶液を2−メトキシプロパノールにより50%の固形分に調整する。
【0063】
湿潤剤/分散剤7(WA/D7)(比較ポリマー:ABブロックコポリマー)
100gのポリマー5の溶液を、14.8gのDisperbyk(登録商標)102(Byk Chemie(ドイツ)からのポリエーテルモノホスフェイト)と反応させ、ポリマーの塩溶液を形成する。生成したポリマー溶液を2−メトキシプロパノールにより50%の固形分に調整する。
【0064】
ポリマー6
48gの2−メトキシプロパノール、3.7gのSG1、1.3gの2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、39.32gのアクリル酸n−ブチル(307mmol)および6.6gのメタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(42mmol)を、反応容器中で不活性ガス雰囲気(窒素)下に120℃に加熱する。120℃の反応温度が達成されてから15分後に、31%の転化率が達成された(1H−NMRにより測定)。次に、8gのアクリル酸n−ブチル(62.5mmol)、11.0gのメタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(70mmol)および18.4gのスチレン(177mmol)の混合物を30分間にわたって計量供給する。約4時間後、89%の転化が達成された(1H−NMRにより測定)。その後、21.5gのスチレン(207mmol)および64.7gのアクリル酸n−ブチル(505mmol)を1分間にわたって添加し、24gのアクリル酸n−ブチル(187.5mmol)、1.5gのメタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(9.5mmol)および36gの2−メトキシプロパノールの混合物を120℃で180分間にわたって計量供給する。計量供給の終了後、96%の転化(1H−NMRにより測定)が達成されており、室温に冷却することにより反応を終了させる。生成したポリマー溶液を2−メトキシプロパノールにより50%の固形分に調整する。
【0065】
湿潤剤/分散剤8(WA/D8)本発明によるポリマー)
100gのポリマー6の溶液を、3.2gの塩化ベンジルと120℃で4時間反応させる。生成したポリマー溶液を2−メトキシプロパノールにより40%の固形分に調整する。
【0066】
湿潤剤/分散剤9(WA/D9)(本発明によるポリマー)
100gのポリマー6の溶液を、3.4gの安息香酸と反応させて、ポリマー5の安息香酸塩溶液を形成する。生成したポリマー溶液を2−メトキシプロパノールにより50%の固形分に調整する。
【0067】
湿潤剤/分散剤10(WA/D10)(本発明によるポリマー)
100gのポリマー6の溶液を、14.8gのDisperbyk(登録商標)102(Byk Chemie(ドイツ)からのポリエーテルモノホスフェイト)と反応させ、ポリマーの塩溶液を形成する。生成したポリマー溶液を2−メトキシプロパノールにより50%の固形分に調整する。
【0068】
性能試験

顔料濃縮物
酢酸2−メトキシプロピル 51.8
Starsol 5.8
WA/D 1〜10 34.0
Bayferrox 130 M 204.0
Aerosil R 972 4.5
300.0

分散:40℃および8000rpmで40分、Dispermat CV

塗料1:
Epikote 1001(キシレン中75%) 60.0
キシレン 17.0
2−メトキシプロパノール 12.8
n−ブタノール 10.0
BYK−325 0.2
100.0
硬化剤:
Versamid 115/70 71.0
キシレン 12.0
2−メトキシプロパノール 8.0
n−ブタノール 9.0
100.0
塗料2:
Joncryl 500 57.6
Cymel 303 19.8
MAK 13.0
n−ブタノール 8.0
BYK−310 0.3
Nacure 2500 1.3
100.0
【0069】
Starsol Haltermannからのジエステルの混合物
Bayferrox 130 M Lanxessからの酸化鉄顔料
Aerosil R 972 Degussaからの疎水性の発熱性(pyrogenic)シリカ
Epikote 1001 Shellからの、ビスフェノールAと
エピクロルヒドリンとの反応生成物
Joncryl 500 Johnsonからのヒドロキシ末端
ポリアクリレートバインダー
Cymel 303 Cytecからのメラミン(melamin)樹脂、バインダー
Nacure 2500 King Industriesからの触媒
MAK メチルアミルケトン
BYK−325 Byk Chemieからの変性ポリシロキサン
BYK−310 Byk Chemieからの変性ポリシロキサン
Versamid 115/70 Cognisからのアミン含有ポリアミド
【0070】
塗料1のレットダウンおよび硬化
顔料濃縮物 2.6
塗料1 18.3
硬化剤 9.1
30.0
顔料濃縮物を塗料と共に5分間振とうした後、硬化剤を添加し、振とうを5分間続ける。
塗布後、擦り取り(rub-out)試験を行う。
乾燥:室温で24時間。
Byk Gardnerからのカラーガイド・スフィア(Color-guide sphere)d/8°スピンに よりΔE値を測定する。
【0071】
塗料2のレットダウンおよび硬化
顔料濃縮物 3.6
塗料2 26.4
30.0
顔料濃縮物を塗料と共に5分間振とうする。
塗布後、擦り取り試験を実行する。
乾燥:室温で10分間、次に140℃で30分間。
Byk Gardnerからのカラーガイド・スフィアd/8°スピンによりΔE値を測定する。
【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
顔料の特有の浮遊性の結果として、擦り取り試験は、湿潤剤および分散剤が顔料分散体を安定にする能力を示す。これに関連して、ΔEの数が小さいほど塗料中の顔料粒子の湿潤剤および分散剤による安定化が優れていることを意味する。
【0075】
比較例WA/D1では液体顔料濃縮物を製造することができなかったので、このポリマーは、本発明のWA/D3およびWA/D4よりもはるかに低い湿潤特性および/または分散特性を示し、本発明のWA/D3およびWA/D4は次に、比較例WA/D2よりも有効に顔料を安定化する。
【0076】
第2の試験システムにおいて、低粘度の顔料濃縮物は、ジブロックコポリマーの使用(WA/D5、6および7)と比較して、トリブロックコポリマーの使用(WA/D8、9および10)により得られる。低粘度は、顔料濃度の高いシステムにおいて有利に使用することができる。結果として、溶媒を節約することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なるイオン密度の3つのセグメントを含み、各セグメント中のイオン性モノマー分率が1〜100mol%であり、第2のセグメントおよび第3のセグメントが、それぞれ先行するセグメントのエチレン性不飽和モノマーを含有し、NMPまたはRAFTにより単官能性開始剤を用いて製造可能なコポリマーであり、
前記第1のセグメントの重合が、使用されるモノマーまたはモノマー混合物の10〜95mol%の転化率まで行われ、
前記第1のセグメントへの前記第2のセグメントの重合が、該第1のセグメントの未反応モノマーと、少なくとも使用されるイオン性モノマーまたはイオン性モノマー前駆体の量の、該第1のセグメントの前記モノマーまたは前記モノマー混合物とは異なるモノマーまたはモノマー混合物とを含有して行われ、前記第2のセグメントの重合が反応に使用可能なモノマーの10〜95mol%の転化率まで行われ、
前記第2のセグメントへの前記第3のセグメントの重合が、該第2のセグメントおよび適切な場合には前記第1のセグメントの未反応モノマーと、少なくとも使用されるイオン性モノマーまたはイオン性モノマー前駆体の量の、前記第2のセグメントの前記モノマーまたは前記モノマー混合物とは異なるモノマーまたはモノマー混合物とを含有して行われ、
前記イオン性モノマー前駆体が使用される場合には、その全量または一部がイオン性モノマーに転化される。
【請求項2】
前記第1のセグメントおよび該第1のセグメントの前記未反応モノマーに対して、少なくとも使用されるイオン性モノマーまたはイオン性モノマー前駆体の量の、該第1のセグメントの前記モノマーまたは前記モノマー混合物とは異なるモノマー混合物またはモノマーが、供給の速度および/または供給される該モノマーまたは該モノマー混合物中のモノマーの反応速度の違いによって前記第2のセグメント内でイオン密度の連続的な遷移が得られるような形で重合に供給されるように、前記第1のセグメントへの該第2のセグメントの重合が行なわれる、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
第1のセグメントおよび第2のセグメントから形成される該プレポリマーに対して、並びに該第2のセグメントおよび適切な場合には該第1のセグメントの前記未反応モノマーに対して、少なくとも使用されるイオン性モノマーまたはイオン性モノマー前駆体の量の、該第2のセグメントの前記モノマーまたは前記モノマー混合物とは異なるモノマー混合物またはモノマーが、供給の速度および/または供給される該モノマーまたは該モノマー混合物中のモノマーの反応速度の違いによって前記第3のセグメント内でイオン密度の連続的な遷移が得られるような形で重合に供給されるように、前記第2のセグメントへの該第3のセグメントの重合が行なわれる、請求項1または2に記載のコポリマー。
【請求項4】
非イオン性の前記エチレン性不飽和モノマーまたはその前駆体が、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、スチレンおよびその誘導体、カルボン酸のビニルエステル、無水マレイン酸およびマレイン酸、マレイミドおよびそのN−置換誘導体、エチレン性不飽和単位を有する窒素または硫黄含有複素環、アクリルアミドおよびメタクリルアミド、N−アルキル置換およびN,N−ジアルキル置換アクリルアミドおよびメタクリルアミドからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項5】
イオン性の前記エチレン性不飽和モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸およびマレイン酸の塩、第4級アミノアルキルアクリレートおよびメタクリレート、並びにリン酸を含有するモノマーの塩からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項6】
該イオン性のエチレン性不飽和モノマーの前駆体が、アクリル酸、メタクリル酸およびマレイン酸、無水マレイン酸、並びにオキシランまたはアミノ基を有するエチレン性不飽和モノマーからなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項7】
前記コポリマーが、1000〜20000g/mol、好ましくは2000〜20000g/mol、非常に好ましくは2000〜15000g/molの数平均分子量Mnを有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項8】
異なるイオン密度の隣接するセグメントは、少なくとも2mol%、好ましくは少なくとも4mol%、より好ましくは少なくとも6mol%だけイオン性モノマー分率が異なる、請求項1〜7のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項9】
異なるイオン密度の3つのセグメントを含み、各セグメント中のイオン性モノマー分率が1〜100mol%であり、各セグメントが少なくとも1つの非イオン性モノマーおよび少なくとも1つのイオン性モノマーを含有し、第2のセグメントおよび第3のセグメントが、それぞれ先行するセグメントのモノマーを含有し、NMPまたはRAFTにより単官能性開始剤を用いて製造されるコポリマーを製造するプロセスであって、該プロセスにおいて、該第1のセグメントの重合が、使用されるモノマーまたはモノマー混合物の10〜95mol%の転化率まで行われ、
該第1のセグメントへの前記第2のセグメントの重合が、該第1のセグメントの未反応モノマーと、少なくとも使用されるイオン性モノマーまたはイオン性モノマー前駆体の量の、該第1のセグメントの前記モノマーまたは前記モノマー混合物とは異なるモノマーまたはモノマー混合物とを含有して行われ、前記第2のセグメントの重合が反応に使用可能なモノマーの10〜95mol%の転化率まで行われ、
前記第2のセグメントへの前記第3のセグメントの重合が、該第2のセグメントおよび適切な場合には前記第1のセグメントの未反応モノマーと、少なくとも使用されるイオン性モノマーまたはイオン性モノマー前駆体の量の、前記第2のセグメントの前記モノマーまたは前記モノマー混合物とは異なるモノマーまたはモノマー混合物とを含有して行われ、
前記イオン性モノマー前駆体が使用される場合には、その全量または一部がイオン性モノマーに転化される。
【請求項10】
前記第1のセグメントに対して、並びに該第1のセグメントの前記未反応モノマーに対して、少なくとも使用されるイオン性モノマーまたはイオン性モノマー前駆体の量の、該第1のセグメントの前記モノマーまたは前記モノマー混合物とは異なるモノマー混合物またはモノマーが、供給の速度および/または供給される該モノマーまたは該モノマー混合物中のモノマーの反応速度の違いによって前記第2のセグメント内でイオン密度の連続的な遷移が得られるような形で重合に供給されるように、前記第1のセグメントへの第2のセグメントの重合が行なわれる、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記第1のセグメントおよび前記第2のセグメントから形成されるプレポリマーに対して、並びに該第2のセグメントおよび適切な場合には該第1のセグメントの前記未反応モノマーに対して、少なくとも使用されるイオン性モノマーまたはイオン性モノマー前駆体の量の、該第2のセグメントの前記モノマーまたは前記モノマー混合物とは異なるモノマー混合物またはモノマーが、供給の速度および/または供給される該モノマーまたは該モノマー混合物中のモノマーの反応速度の違いによって前記第3のセグメント内でイオン密度の連続的な遷移が得られるような形で重合に供給されるように、前記第2のセグメントへの該第3のセグメントの重合が行なわれる、請求項9または10に記載のプロセス。
【請求項12】
重合調節剤が、さらなるステップでポリマーから切断される、請求項9〜11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記得られたコポリマーが、ポリマー類似反応におけるさらなるステップにおいて変性される、請求項9〜12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれか一項に記載される、または請求項9〜13のいずれか一項に記載のプロセスにより製造されるコポリマーの分散剤としての使用。
【請求項15】
分散される1つまたは複数の固形物と相互作用をするモノマーが、アミン官能性が酸で塩化されるか、またはアルキル化剤と反応されて第4級アンモニウム基を形成しているアミノアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載される、または請求項9〜13のいずれか一項に記載のプロセスにより製造されるコポリマーの使用。
【請求項16】
適切な場合にはバインダーおよび従来のコーティング助剤の存在下で、有機溶媒および/または水中に顔料を分散させるための、請求項1〜8のいずれか一項に記載されるか、または請求項9〜13のいずれか一項に記載のプロセスにより製造されるコポリマーの使用。
【請求項17】
顔料を含有するコーティング材料および成形コンパウンドを製造するため、並びに顔料をコーティングするための、請求項1〜8のいずれか一項に記載されるか、または請求項9〜13のいずれか一項に記載のプロセスにより製造されるコポリマーの使用。
【請求項18】
バインダー、1つまたは複数の有機溶媒および/または水、顔料、分散剤、そしてさらに通常の助剤が一緒に分散されたコーティング材料を製造するための、請求項1〜8のいずれか一項に記載されるか、または請求項9〜13のいずれか一項に記載のプロセスにより製造されるコポリマーの使用。
【請求項19】
顔料と、請求項1〜8のいずれか一項に記載されるか、または請求項9〜13のいずれか一項に記載のプロセスにより製造されるコポリマーとを含む、塗料、ペーストおよび成形化合物。
【請求項20】
適切な場合にはバインダーおよび従来のコーティング助剤の存在下で、1つまたは複数の顔料、有機溶媒および/または水を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載されるか、または請求項9〜13のいずれか一項に記載のプロセスにより製造されるコポリマーを含む、コーティング材料、ペーストおよび/または成形化合物。
【請求項21】
請求項1〜8のいずれか一項に記載されるか、または請求項9〜13のいずれか一項に記載のプロセスにより製造されるコポリマーでコーティングされた顔料。

【公開番号】特開2007−217664(P2007−217664A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−279(P2007−279)
【出願日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(598067245)ベーイプシロンカー ヘミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング (30)
【Fターム(参考)】