説明

異なる保温特性を有する区画を含むベースレイヤー衣料品

【課題】ある程度の暖かさを維持するために、1つまたは複数の区画を含むベースレイヤー(base layer)衣服を提供する。
【解決手段】衣服構造30において、衣服の前腕上の領域と手を除く、ヒップ領域の近位から首領域の近位まで上半身の前面および後面に沿って伸展する第一の衣服領域と、前腕の上部から手首までの領域を覆い、かつ前腕筋の周囲を180°覆う第二の衣服領域32とを含む女性の胴体上部の衣服であって、第一の衣服領域が第一の熱抵抗値を有する第一の材料を含み、第二の衣服領域が第一の熱抵抗値より高い第二の熱抵抗値を有する第二の材料を含み、第一および第二の材料のそれぞれが、-1℃〜10℃の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に22℃〜約34℃の一貫した身体皮膚温度を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全内容物が参照により本明細書に組み入れられる、2007年8月2日に提出された米国特許仮出願第60/953,579号に対する優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明の局面は概して、ある程度の暖かさを維持するために1つまたは複数の区画を含むベースレイヤー(base layer)衣服に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
人体は、涼しいまたは寒冷な環境条件に曝されると、特に長い時間そのような条件に曝されると、有害な影響を受ける可能性がある。人々は、何らかの状況において寒冷な環境の有害な影響を食い止めるのに役に立つように衣類をもう1枚単に追加することができるが、この単純な解決策は、練習または競技に関わる運動選手の場合必ずしもうまくゆかない。例えば、衣類の層を加えることは、特に運動、運動競技会、または動きを必要とする他の活動に携わっている場合には、着用者が自由に動くことのできる能力に有害な影響を及ぼし得る。追加の衣類に起因する追加の重さ、かさ、および/または風の抵抗もまた、運動競技動作に有害な影響を及ぼし得、柔軟性、動作等の減損により、運動選手は損傷に曝される恐れがある。動作および快適さに及ぼす有害な影響のために、一部のユーザーは、寒さから自身を保護するために適切な服装を着なくなる。この試みられた「やむを得ない」行動はまた、着用者の保健および健康に害を及ぼし得る。その上、身体活動の際に暖かいようにデザインされた衣類は、体が熱を発生させて維持することのできる能力の性差を考慮していない。
【発明の概要】
【0004】
概要
本発明のいくつかの局面は、断熱特性と熱抵抗特性のバランス、空気透過性、布地の伸縮性、構造、および衣服構成を提供する保温材料(thermal material)を含有する衣服構造に関する。これらおよび他の有利な特性は、保温特性(thermal property)の対象区画を含む衣服構造を提供することによって、本発明の例に従って実現される可能性がある。その上、衣服の対象区画は、体がその皮膚温度を調節する場合の性差を考慮に入れる。
【0005】
衣服は、有酸素活動の際の水分を逃がすために肌の上に直接着ることが意図される衣服であるベースレイヤー衣服である。ベースレイヤー衣服はまた、望ましい一貫した身体皮膚温度を提供するために保温特性を有してもよい。
【0006】
女性の上半身用にデザインされた本発明の局面に従う衣服には、概して衣服のヒップ領域の近位から衣服の首領域の近位まで上半身の前面および後面に沿って伸展しているが、概して前腕および手を除く、第一の衣服領域;ならびに概して前腕に沿って伸展しており、少なくとも前腕の上部からの肘から手首までの領域を覆う、第二の衣服領域、ならびに概して手の上に伸展している任意の第三の衣服領域が含まれてもよく、第一の衣服領域は第一の材料を含み、第二の衣服領域は第二の材料を含み、かつ第三の衣服領域は第三の材料を含み、第一、第二、および第三の材料のそれぞれは、-1℃〜10℃(30°F〜50°F)の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に、約22℃〜約34℃(約71°F〜約93°F)の一貫した身体皮膚温度を提供する。1つの態様において、第二の衣服領域は、前腕筋の周囲を約180°包む。
【0007】
女性の下半身用にデザインされた本発明の局面に従う衣服には、概して下半身の前面および後面に沿って伸展しているが、概して大腿四頭筋、臀部、およびハムストリングを除く、第一の衣服領域;ならびに大腿四頭筋に沿って伸展しており、少なくとも膝上約2インチから脚の上部までの大腿の前面を覆い、かつ大腿筋の前面の周囲を例えば約180°包み、かつ臀部の上部からハムストリングの中央まで、脚の後面の周囲を例えば約100°包む、第二の衣服領域が含まれてもよく、第一の衣服領域は第一の材料を含み、第二の衣服領域は第二の材料を含み、第一および第二の材料のそれぞれは、-1℃〜10℃の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に、22℃〜約34℃の一貫した身体皮膚温度を提供する。
【0008】
加えて、男性の上半身用にデザインされた本発明の局面に従う衣服には、概して衣服のヒップ領域の近位から衣服の首領域の近位まで上半身の前面および後面に沿って伸展しているが、概して前腕および手を除く、第一の衣服領域;概して前腕に沿って伸展しており、少なくとも前腕の上部からの肘から手首までの領域を覆う、第二の衣服領域;ならびに手を覆う第三の任意の衣服領域が含まれてもよく、第一の衣服領域は第一の材料を含み、第二の衣服領域は第二の材料を含み、かつ第三の衣服領域は第三の材料を含み、第二および第三の材料のそれぞれは、-1℃〜10℃の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に、22℃〜約34℃の一貫した身体皮膚温度を提供する。1つの態様において、第二の衣服領域は、前腕筋の周囲を約180°包む。
【0009】
女性または男性の上半身用にデザインされた本発明の他の局面に従う衣服には、概して衣服のヒップ領域の近位から衣服の首領域の近位まで上半身の前面および後面に沿って伸展しているが、概して前腕および手を除く、第一の衣服領域;ならびに概して前腕に沿って伸展しており、少なくとも前腕の上部からの肘から手首までの領域を覆い、かつ概して手の上に伸展している、第二の衣服領域が含まれてもよく、第一の衣服領域は第一の材料を含み、かつ第二の衣服領域は第二の材料を含み、第一および第二の材料のそれぞれは、-1℃〜10℃(30°F〜50°F)の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に、約22℃〜約34℃(約71°F〜約93°F)の一貫した身体皮膚温度を提供する。
【0010】
女性または男性の下半身用にデザインされた本発明の他の局面に従う衣服には、-1℃〜10℃の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に、22℃〜約34℃の一貫した身体皮膚温度を提供する材料が含まれてもよい。
【0011】
本発明の追加の局面は、例えば先に記述した様々なタイプの衣服を形成する方法に関する。そのような方法には、様々な領域を含めるような単一のピースとしての衣服の形成(例えば、編み工程または他の衣服形成工程によって)、または縫製もしくはステッチ技術による、接着剤もしくは他の融合技術等によるなどの、従来の方法で共につなぎ合わされた多数のピースからの衣服の形成が含まれてもよい。第一、第二、および第三の衣服領域は、第四の衣服領域を具現化する布地材料の個別のピースへとつなぎ合わされる(例えば、縫製または他の技術によって)、布地材料の独立した個別のピース(任意で同じタイプの布地材料)から作製されてもよい。または、望ましければ、様々な衣服領域の1つまたは複数が、材料の単一のピースの一部として含まれてもよい。
[請求項101]
衣服のヒップ領域の近位から衣服の首領域の近位まで上半身の前面および後面に沿って伸展しているが、前腕および手を除く、第一の衣服領域と、
前腕に沿って伸展しており、少なくとも前腕の上部から手首までの領域を覆い、かつ前腕筋の周囲を180°覆う、第二の衣服領域と
を含む、人間の女性の胴体上部の少なくとも一部を覆うための衣服であって、
前記第一の衣服領域が、第一の熱抵抗値を有する第一の材料を含み、前記第二の衣服領域が、第一の熱抵抗値より高い第二の熱抵抗値を有する第二の材料を含む、
衣服。
[請求項102]
手を覆うようにスリーブから伸展している第三の衣服領域をさらに含む、請求項101記載の衣服。
[請求項103]
第三の衣服領域が、第二の熱抵抗値より高い第三の熱抵抗値を有する第三の材料を含む、請求項102記載の衣服。
[請求項104]
第二の熱抵抗値が、第一の熱抵抗値より少なくとも5%高い、請求項101記載の衣服。
[請求項105]
第二の熱抵抗値が、第一の熱抵抗値より少なくとも10%高い、請求項101記載の衣服。
[請求項106]
第三の熱抵抗値が、第二の熱抵抗値より少なくとも5%高い、請求項102記載の衣服。
[請求項107]
第三の熱抵抗値が、第二の熱抵抗値より少なくとも10%高い、請求項102記載の衣服。
[請求項108]
第一および第二の材料のそれぞれが、-1℃〜10℃の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に22℃〜約34℃の一貫した身体皮膚温度を提供する、請求項101記載の衣服。
[請求項109]
第一、第二、および第三の材料のそれぞれが、-1℃〜10℃の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に22℃〜約34℃の一貫した身体皮膚温度を提供する、請求項103記載の衣服。
[請求項110]
第一の材料が約0.013〜約0.020のRCT値を満たす、請求項101記載の衣服。
[請求項111]
第二の材料が約0.029〜約0.040のRCT値を満たす、請求項101記載の衣服。
[請求項112]
第三の材料が約0.029〜約0.040のRCT値を満たす、請求項103記載の衣服。
[請求項113]
少なくとも1つの衣服領域に結合している衣服クロージャーシステムをさらに含む、請求項101記載の衣服。
[請求項114]
下半身の前面および後面に沿って伸展しているが、大腿四頭筋、臀部、およびハムストリングを除く、第一の衣服領域と、
大腿四頭筋に沿って伸展しており、膝上約2インチから脚の上部までの大腿の前面を覆い、かつ大腿筋の前面の周囲を約180°包む、第二の衣服領域と、
を含む、女性の胴体下部の少なくとも一部を覆うための衣服であって、
前記第一の衣服領域が、第一の熱抵抗値を有する第一の材料を含み、前記第二の衣服領域が、第一の熱抵抗値より高い第二の熱抵抗値を有する第二の材料を含む、
衣服。
[請求項115]
臀部およびハムストリングの上に伸展しており、かつ大腿の後面を覆う、第三の衣服領域
をさらに含む衣服であって、
前記第三の衣服領域が、第一の熱抵抗値より高い第三の熱抵抗値を有する第三の材料を含む、
請求項114記載の衣服。
[請求項116]
第一の領域が、膝まで、ふくらはぎまで、または足首まで伸展している第一の材料を含む、請求項114記載の衣服。
[請求項117]
第三の領域が、
膝上約8インチからウエストバンドの底部まで伸展しており、かつ脚筋の後面の周囲を100°包む、第三の材料
を含む、請求項114記載の衣服。
[請求項118]
第一の材料が約0.013〜約0.020のRCT値を満たす、請求項114記載の衣服。
[請求項119]
第二の材料が約0.029〜約0.040のRCT値を満たす、請求項114記載の衣服。
[請求項120]
第三の材料が約0.029〜約0.040のRCT値を満たす、請求項115記載の衣服。
[請求項121]
衣服のウエスト領域の近位から衣服の首領域の近位まで上半身の前面および後面に沿って伸展しているが、前腕および手を除く、第一の衣服領域と、
前腕に沿って伸展しており、少なくとも前腕の上部から手首までの領域を覆い、かつ前腕筋の周囲を180°覆う、第二の衣服領域と
を含む、人間の男性の胴体上部の少なくとも一部を覆うための衣服であって、
前記第一の衣服領域が、約ゼロである第一の熱抵抗値を有する第一の材料を有する材料を含み、前記第二の衣服領域が、第二の熱抵抗値を有する第二の材料を含む、
衣服。
[請求項122]
手を覆うようにスリーブから伸展している第三の衣服領域をさらに含む、請求項121記載の衣服。
[請求項123]
第三の衣服領域が、第二の熱抵抗値より高い第三の熱抵抗値を有する第三の材料を含む、請求項122記載の衣服。
[請求項124]
第二の熱抵抗値が、第一の熱抵抗値より少なくとも5%高い、請求項123記載の衣服。
[請求項125]
第二の熱抵抗値が、第一の熱抵抗値より少なくとも10%高い、請求項124記載の衣服。
[請求項126]
第一および第二の材料のそれぞれが、-1℃〜10℃の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に22℃〜約34℃の一貫した身体皮膚温度を提供する、請求項121記載の衣服。
[請求項127]
第一、第二、および第三の材料のそれぞれが、-1℃〜10℃の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に22℃〜約34℃の一貫した身体皮膚温度を提供する、請求項123記載の衣服。
[請求項128]
第二の材料が約0.013〜約0.020のRCT値を満たす、請求項121記載の衣服。
[請求項129]
第三の材料が約0.029〜約0.040のRCT値を満たす、請求項123記載の衣服。
[請求項130]
少なくとも1つの衣服領域に結合している衣服クロージャーシステムをさらに含む、請求項121記載の衣服。
[請求項131]
衣服のヒップ領域の近位から衣服の首領域の近位まで上半身の前面および後面に沿って伸展しているが、前腕および手を除く、第一の衣服領域と、
前腕に沿って伸展しており、少なくとも前腕の上部から手首までの領域を覆い、前腕筋の周囲を180°覆い、かつ手を覆う、第二の衣服領域と
を含む、人間の胴体上部の少なくとも一部を覆うための衣服であって、
前記第一の衣服領域が、第一の熱抵抗値を有する第一の材料を含み、前記第二の衣服領域が、第一の熱抵抗値より高い第二の熱抵抗値を有する第二の材料を含む、
衣服。
[請求項132]
衣服のウエスト領域の近位から衣服の首領域の近位まで上半身の前面および後面に沿って伸展しているが、前腕および手を除く、第一の衣服領域と、
前腕に沿って伸展しており、少なくとも前腕の上部からの肘から手首までの領域を覆い、かつ前腕筋の周囲を180°覆う、第二の衣服領域と
を含む、衣服構造
を形成する段階を含む、女性の胴体上部の少なくとも一部を覆うための衣服を形成する方法であって、
前記第一の衣服領域が、第一の熱抵抗値を有する第一の材料を含み、前記第二の衣服領域が、第一の熱抵抗値より高い第二の熱抵抗値を有する第二の材料を含む、
方法。
[請求項133]
衣服のウエスト領域の近位から衣服の首領域の近位まで上半身の前面および後面に沿って伸展しているが、前腕および手を除く、第一の衣服領域と、
前腕に沿って伸展しており、少なくとも前腕の上部からの肘から手首までの領域を覆い、かつ前腕筋の周囲を180°覆う、第二の衣服領域と
を含む、男性の胴体上部の少なくとも一部を覆うための衣服を形成する方法であって、
前記第一の衣服領域が、約ゼロである第一の熱抵抗値を有する第一の材料を含み、前記第二の衣服領域が、第二の熱抵抗値を有する第二の材料を含む、
方法。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の様々な局面、目的、特色、および長所は、添付の図面に関連して、以下の詳細な説明からより容易に明らかとなり、より十分に理解されると考えられる。
【図1】図1Aおよび1Bは、女性の体の前面および後面の温度区画を図示する。
【図2】図2Aおよび2Bは、男性の体の前面および後面の温度区画を図示する。
【図3】図3Aおよび3Bはそれぞれ、本発明の局面に従う衣服構造の前面および後面を図示し、かつ図3Cは、任意の内部指スリーブを図示する。
【図4】図4Aおよび4Bはそれぞれ、本発明の別の局面に従う衣服構造の前面および後面を図示する。
【図5】図5Aおよび5Bはそれぞれ、本発明の例に従う衣服構造の前面および後面を図示し、かつ5Cは、任意の内部指スリーブを図示する。
【図6】図6Aおよび6Bはそれぞれ、本発明の別の局面に従う衣服構造の前面および後面を図示する。
【図7】図7Aおよび7Bはそれぞれ、本発明の別の局面に従う衣服構造の前面および後面を図示する。
【図8】図8Aおよび8Bは、本発明の別の局面に従うスリーブ衣服構造を図示する。
【図9】本発明の別の局面に従う衣服構造を図示する。
【0013】
添付の図面は、本発明の実施例に従う衣服の様々な構造および特色を図によって説明していることを、読者に忠告する。これらの図面は、製作図ではなく、それらは必ずしも一定の比に縮小して描かれいるわけではない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
本発明の様々な特定の実施例を、添付の図面に関連して以下に詳細に記述する。以下は、以下の特定の構造のより詳細な説明に対する序章としての、本発明の実施例に従う構造の局面および特色の一般的な説明を提供する。
【0015】
本発明の局面は、衣服が男性用であるかまたは女性用であるかに応じて、体の異なる領域の熱快適性を改善するために、衣料の設計された区画に材料を戦略的に配置することに向けられる。
【0016】
本明細書において用いられる「熱抵抗性」または「熱抵抗率」(「RCT」とも呼ばれる)という用語は、材料が伝導、放射、および対流による熱の移動に抵抗することのできる能力に関する。布地材料または衣服に関して、これらの用語は、戸外または環境の気温がより涼しい場合に、皮膚と布地のあいだの空気の温度を一定に保つために必要なエネルギー量に関連すると見なされてもよい。熱は常に温かいところから冷たいところへと流れることから、衣服の外部への熱の伝導を制御する1つの方法は、衣服に断熱材料を用いることであり、断熱材料の「熱抵抗性」または「熱抵抗率」は、材料が熱のこの移動に耐えることのできる能力の測定である。RCTは予測不可能である。より詳しくは、材料の重量および厚さはRCTの予測因子ではない。
【0017】
布地の場合、熱抵抗を、国際標準化機構の試験ISO11092(「定常状態条件での熱および水蒸気抵抗の測定(Measurement of Thermal and Water-Vapour Resistance Under Steady-State Conditions)」と題する試験(例えば、Seattle, WashingtonのMeasurement Technology Northwestから入手可能な市販の「Sweating Guarded Hotplate」システムによって測定可能))によって測定してもよい。この試験法は公知であり、参照により本明細書に組み入れられる。一般的には、この試験法において、一体型の「発汗」表面を有するホットプレートを、流速が可変である空気流のフード、重力によって送られる液体供給システム、ならびに周囲の気温および湿度プローブを有する人工気候室に置く(それによって温度、相対湿度、および風速に関する現実世界の条件における人の皮膚を複製またはシミュレートする)。材料試料を越える熱の移動は、このシステムを用いて測定することができる(例えば、布地の相対比較を可能にするために、温度、湿度および風速などの様々なパラメータを制御してもよい(制御された方法で変化させてもよく、または一定に保持してもよい))。このシステムによる試験結果は、「メートルの二乗×「°ケルビン/ワット」」(m2×K/W)の単位で表記される。
【0018】
低い温度において、特に約-1℃〜約10℃(約30°F〜約50°F)の特定の温度において、中等度から高い有酸素活動(例えば、ランニング)を維持する場合、体温調節に性差が存在することが発見された。最も有意な差は、上半身、前腕、手および大腿四頭筋、臀部、およびハムストリングの皮膚温度について見いだされ、女性は男性より低い温度を維持した。特に、女性は、男性とは異なる温度区画を有する。温度区画は以下のように特徴付けされ得る。

【0019】
図1Aおよび1Bにおいて示されるように、女性の保温区画(thermal zone)は、寒冷気候において一般的には以下のとおりである。

【0020】
前腕の保温区画(12)は概して、肘関節から手首までの領域を覆い、概して前腕筋の周囲を約180°包む。
【0021】
大腿四頭筋の保温区画(14)は概して、膝上約2インチから脚の上部-脚が曲がるところ-までの大腿の前面を覆い、概して筋の周囲を約180°包む。
【0022】
臀部およびハムストリングの保温区画(15)は概して、膝の裏の約8インチ上からウエストバンドの底部までの領域を覆い、概して筋の周囲を約100°包む。
【0023】
図2Aおよび2Bにおいて示されるように、男性の保温区画は一般的には寒冷気候において以下のとおりである。

【0024】
前腕の保温区画(21)は概して、肘関節から手首までの領域を覆い、概して前腕筋の周囲を約180°包む。
【0025】
低い温度(5℃/41°F)の中を走っている場合の男性の平均皮膚温度は、上半身、前腕、手、および大腿四頭筋に関して、一般的に女性より温かい。しかし、男性においても、寒さの中を走っている場合、手は体の最も冷たい領域であった。
【0026】
様々な区画において用いられる材料には、男性であれ、女性であれ、その区画に関して約22℃〜約34℃の一貫した身体皮膚温度を維持するのに適した材料が反映されるべきである。一貫しているとは、常に一貫して、特定の温度範囲内にあるということである。望ましい皮膚温度は、活動のタイプに依存し得る。例えば安静時の望ましい皮膚温度は29℃〜34℃であり得、軽度の運動時には25℃〜33℃であり得、および激しい運動時には22℃〜32℃であり得る。軽度の運動は例えば散歩であってもよく、激しい運動は例えばランニングであってもよい。
【0027】
例えば区画Bのベース材料は、区画Aのベース材料よりも多大な暖かさを提供すると考えられる。一般的には、身体の快適な区画または僅かに冷たい区画のために選択される布地は、約0.013〜約0.020のRCT値を満たし、冷たい/非常に冷たい区画のために選択される布地は約0.029〜約0.040のRCT値を満たす。
【0028】
しかし、重要なのは単に保温材料のRCTではない。理想的な温度を維持するように正しいタイプの保温材料を得るために、RCT、空気透過性、伸縮性、衣服構造、および衣服構成を考慮すべきである。区画のそれぞれにおいて用いるように正しいタイプの材料を提供するのは、これらの検討のバランスである。空気透過性とは、材料の2つの表面のあいだの規定の空気圧の差の下で公知の領域の中を垂直に通過する空気の流れの速度を指す。布地の2つの表面のあいだの規定の圧の差における布地の空気透過性は一般的には、SI単位でcm3/s/cm2として表記され、およびインチポンド単位で表記され、または操作条件で計算されたft3/min/ft2として表記される。
【0029】
例えば、ベースレイヤー衣服は、RCT 0.44(これはベースレイヤーとしては非常に高い)を有してもよいが、これが高い空気透過性(100を越える)を有する場合、衣服は体を過度に熱して、布地の中を空気が流れると、さらに「勾配効果」が感じられる(この場合、体は寒気と冷たい湿気とを感じる)。これは望ましい保温結果を提供しない。このように、RCTと空気透過性の双方を考慮してバランスをとるべきである。材料の構成も同様に重要である。例えば、球形(sphere)の布地構成は、熱をよりよく捕らえることができる可能性があり、ジャージー(jersey)構成より性能がよい可能性がある。別の要因は、人体において伸びた状態で布地が編まれているかどうかを検討することであり、これはRCTと空気透過性に影響を及ぼし得る。伸縮性とは、体に着用した場合に布地が伸縮する量を指す。運動選手が使用するための典型的な布地は、5〜20%のあいだで伸縮して、約15%の伸縮を対象とする。ベースレイヤー衣服は典型的にはきっちり編まれている。
【0030】
ランニングなどの有酸素活動の期間の際に、過度に熱することも、または不当な発汗を促進することもなく、一貫した身体皮膚温度を維持することが望ましい。したがって、衣服において用いられる布地は、効果的な水分管理を有するべきである。例えば、布地は、ウィッキングに関するDriFIT標準に基づいて体からの水分を逃がすことができるべきである。
【0031】
以下の説明において、保温材料は、-1℃〜10℃(30°F〜50°F)の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に、22℃〜約34℃(約71°F〜約93°F)の一貫した身体皮膚温度を提供するように体の区画において用いられる。環境室の中で被験体は、一般的には戸外の環境でのランニングをシミュレーションするためにトレッドミル上で走っている。典型的には前頭、胸部、腹部、前腕、手、大腿、肩甲骨、および腰椎などの体の様々な部位にサーミスタを適用する。サーミスタは、皮膚温度をモニターして記録することができる。
【0032】
被験体は典型的には人間の被験体である。しかし、被験体は、マネキンなどの人体を模倣する装置であってもよい。他の適切な手段を用いて体温を測定してもよい。
【0033】
I.本発明の局面の全般的な説明
A.本発明の例としての局面に従う衣服
1)女性用衣服
女性用衣服は、-1℃〜10℃(30°F〜50°F)の低い温度でのランニングまたは他の有酸素活動を行う際に、体の様々な領域を快適に保つように、様々な材料を組み入れる。
【0034】
概して、本発明の少なくともいくつかの例としての局面は、女性用にデザインされた(本明細書において「衣料品」とも呼ばれる)衣服に関する。女性の上半身用の衣服には、(a)概して上半身の前面および後面に沿って伸展しているが、概して少なくとも前腕の上部および手を除く、第一の衣服領域;(b)概して前腕に沿って伸展しており、例えば前腕の上の領域、肘から手首までを覆う、第二の衣服領域;ならびに任意で(c)手を覆うように概してスリーブから伸展している第三の衣服領域が含まれてもよい。1つの態様において、第二の衣服領域は、前腕筋の周囲を約180°包む。
【0035】
本発明の少なくともいくつかの局面に従う第一の衣服領域には第一の材料が含まれ、第二の衣服領域には第二の材料が含まれ、かつ第三の衣服領域には第三の材料が含まれると考えられる。第一、第二、および第三の材料のそれぞれは、-1℃〜10℃(30°F〜50°F)の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に、22℃〜約34℃(約71°F〜約93°F)の一貫した身体皮膚温度を提供する。
【0036】
本発明の例に従う衣服構造は、多様な型または構造をとってもよく、これは本発明から逸脱しない。例えば、第一の衣服領域には、モックタートルネックなどの首領域の一部が含まれてもよい。第一の衣服領域はまた、それぞれが望ましい体温を提供する2つのタイプの材料から作られてもよい。例えば、よりかさの低い材料を、効率的な腕の振りおよびより見栄えのよいシームラインを提供するために、衣服の上半身の腕の下の側面部分に用いてもよい。
【0037】
女性の下半身用衣服には、(a)概して下半身の前面および後面に沿って伸展しているが、概して大腿四頭筋、臀部、およびハムストリングを除く、第一の衣服領域;(b)概して大腿四頭筋に沿って伸展しており、膝上約2インチから脚の上部(脚が曲がるところ)までの大腿の前面を覆い、かつ大腿筋の前面の周囲を例えば約180°包む、第二の衣服領域;ならびに任意で(c)概して臀部およびハムストリングの上に伸展しており、膝上約8インチからウエストバンドの底部までの大腿の後面を覆い、かつ脚筋の後面の周囲を例えば約100°包む、第三の衣服領域が含まれてもよい。第一の衣服領域は、膝まで、ふくらはぎまで、または足首まで伸展している材料を含んでもよい。
【0038】
本発明の少なくともいくつかの局面に従う第一の衣服領域には第二の材料が含まれ、第二および第三の衣服領域には第三の材料が含まれると考えられる。第一、第二、および第三の材料のそれぞれは、-1℃〜10℃の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に、22℃〜約34℃の一貫した身体皮膚温度を提供する。
【0039】
下半身用の衣服には、膝関節の裏などにメッシュ材料が含まれてもよい。加えて、色彩を提供して脚を細く長く見せるように下半身の外部側面にパネルが存在してもよい。
【0040】
セパレートの上半身および下半身の衣服の代わりに、1つのユニスーツまたはワンピースの衣服を製作してもよい。そのようなワンピースの衣服は、(a)概して上半身の前面および後面に沿って伸展しているが、概して少なくとも前腕の上部および手を除く、第一の衣服領域;(b)概して前腕に沿って伸展しており、前腕の上の領域、肘から手首までを覆う、第二の衣服領域;(c)概して下半身の前面および後面に沿って伸展しているが、概して大腿四頭筋、臀部、およびハムストリングを除く、第三の衣服領域;(d)概して大腿四頭筋に沿って伸展しており、膝上約2インチから脚の上部(脚が曲がるところ)までの大腿の前面を覆い、かつ大腿筋の前面の周囲を例えば180°包む、第四の衣服領域;任意で(e)概して臀部およびハムストリングの上に伸展しており、膝上約8インチからウエストバンドの底部までの大腿の後面を覆い、かつ脚筋の後面の周囲を例えば100°包む、第五の衣服領域;ならびに任意で(f)手を覆うように概してスリーブから伸展している第六の衣服領域を有してもよい。1つの態様において、第二の衣服領域は、前腕筋の周囲を約180°包む。
【0041】
本発明の少なくともいくつかの局面に従う第一の衣服領域には第一の材料が含まれ、第二および第三の衣服領域には第二の材料が含まれ、かつ第四、第五、および第六の衣服領域には第三の材料が含まれると考えられる。材料のそれぞれは、-1℃〜10℃の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に、22℃〜約34℃の一貫した身体皮膚温度を提供する。加えて、布地は、適切な水分管理特性、例えば、ウィッキングに関するDriFIT標準に基づいた、体からの水分の効果的なウィッキングを提供する。
【0042】
2)男性用衣服
男性用保温ベースレイヤーは、-1℃〜10℃(30°F〜50°F)の低い温度でランニングまたは他の有酸素活動を行う場合に、体を快適に保つように、異なる材料を組み入れる。
【0043】
概して、本発明の少なくともいくつかの例としての局面は、男性用にデザインされた、本明細書において「衣料品」とも呼ばれる衣服に関する。男性の上半身用の衣服には、(a)概して上半身の前面および後面に沿って伸展しているが、概して少なくとも前腕の上部および手を除く、第一の衣服領域;(b)概して前腕に沿って伸展しており、前腕の上の領域、肘から手首までを覆う、第二の衣服領域;ならびに任意で(c)手首を覆うように概してスリーブから伸展している第三の衣服領域が含まれてもよい。1つの態様において、第二の衣服領域は前腕筋の周囲を約180°包む。
【0044】
本発明の少なくともいくつかの局面に従う第一の衣服領域には、測定可能な保温値(appreciable thermal value)を有しない第一の材料が含まれ、第二の衣服領域には第二の材料が含まれ、かつ第三の衣服領域には材料が含まれると考えられる。第二および第三の材料のそれぞれは、-1℃〜10℃の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に、22℃〜約34℃の一貫した身体皮膚温度を提供する。加えて、布地は、適切な水分管理特性、例えば、ウィッキングに関するDriFIT標準に基づいた、体からの水分の効果的なウィッキングを提供する。
【0045】
本発明の例に従う衣服構造は、多様な型または構造をとってもよく、これは本発明から逸脱しない。例えば、第一の衣服領域にはまた、モックタートルネックなどの首領域の一部が含まれてもよい。第一の衣服領域はまた、望ましい身体皮膚温度を提供する2つのタイプの材料から作られてもよい。例えば、効率的な腕の振りおよびより見栄えのよいシームラインを提供するために、よりかさの低い材料を、衣服の上半身の腕の下の側面部分に用いてもよい。
【0046】
測定可能な保温値を有しない材料で作製された衣料などの任意の適切な衣料を下半身のために用いてもよい。
【0047】
セパレートの上半身および下半身の衣服の代わりに、単一のユニスーツまたはワンピースの衣服を製作してもよい。そのようなワンピースの衣服は、(a)概して上半身および下半身の前面および後面に沿って伸展しているが、概して少なくとも前腕の上部および手を除く、第一の衣服領域;(b)概して前腕に沿って伸展しており、前腕の上の領域、肘から手首までを覆う、第二の衣服領域;ならびに任意で(c)手を覆うように概してスリーブから伸展している第三の衣服領域を有してもよい。1つの態様において、第二の衣服領域は、前腕筋の周囲を約180°包む。
【0048】
本発明の少なくともいくつかの局面に従う第一の衣服領域には、測定可能な保温値を有しない材料が含まれ、第二の衣服領域には第二の材料が含まれ、かつ第三の衣服領域には第三の材料が含まれると考えられる。第二および第三の材料のそれぞれは、-1℃〜10℃の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に、22℃〜約34℃の一貫した身体皮膚温度を提供する。加えて、布地は、適切な水分管理特性、例えば、ウィッキングに関するDriFIT標準に基づいた、体から水分の効果的なウィッキングを提供する。
【0049】
衣服には追加の特色が含まれてもよく、これは本発明から逸脱しない。例えば、本発明の少なくともいくつかの例に従う衣服には、クロージャーシステムおよび/またはオープニングサイズ調節システムが含まれてもよい。そのようなシステムの例には、ジッパー、ボタン、スナップ、ストラップ、バックル、フックタイプファスナー、面ファスナー(hook-and-loop type fastener)、引き紐(draw string)調節機構、弾性材料等が含まれる。
【0050】
ポケットは、例えばそれぞれ、図3および5におけるポケット36および56を参照されたいが、そのようなポケットを、手袋、鍵等の収納を提供するために衣服のいずれかに加えてもよい。
【0051】
広く多様な衣服構造全体が提供されてもよく、これは本発明から逸脱しない。そのような衣服は、-1℃〜10℃(30°F〜50°F)の温度でのベースレイヤーとして意図される。本発明の少なくともいくつかの例に従う衣服構造は、人体の胴体上部の少なくとも一部を覆ってもよく、シャツ、T-シャツ、タートルネック、モックタートルネック、衣服ライナー等などの多様な型をとってもよい。加えて、本発明の少なくともいくつかの例に従う衣服構造には、人間の胴体上部の少なくとも一部を覆うことに加えて、レオタード、アスレチックスーツ(例えば、スピードスケート、スキー、ボブスレー、リュージュ等において着用されるユニタードなどの、ウィンタースポーツにおいて運動選手が用いるタイプのもの)等などの、骨盤および/または胴体下部の少なくとも一部を覆う衣服が含まれてもよい。
【0052】
別のタイプの衣服は、腕の上にはめるスリーブである。スリーブは、筒状であってもよく、スリーブが腕の上まで移動しないように手袋またはバンドのいずれかを含有してもよい。例えば、女性用スリーブには、(a)概して腕の長さに沿って伸展しているが、少なくとも前腕の上部および手を除く、第一の衣服領域;(b)概して前腕に沿って伸展しており、前腕の上部から手首までの領域を覆い、かつ包む、第二の衣服領域;ならびに任意で(c)手を覆うように概してスリーブから伸展している第三の衣服領域が含まれてもよい。1つの態様において、第二の衣服領域は、前腕筋の周囲を約180°包む。
【0053】
本発明の少なくともいくつかの局面に従う第一の衣服領域には第一の材料が含まれ、第二の衣服領域には第二の材料が含まれ、かつ第三の衣服領域には第三の材料が含まれると考えられる。第一、第二、および第三の材料のそれぞれは、-1℃〜10℃の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に、22℃〜約34℃の一貫した身体皮膚温度を提供する。
【0054】
男性用スリーブには、(a)概して腕の長さに沿って伸展しているが、少なくとも前腕の上部および手を除く、第一の衣服領域;(b)概して前腕に沿って伸展しており、前腕の上部から手首までの領域を覆い、かつ包む、第二の衣服領域;ならびに任意で(c)手を覆うように概してスリーブから伸展している第三の衣服領域が含まれてもよい。1つの態様において、第二の衣服領域は、前腕筋の周囲を約180°包む。
【0055】
本発明の少なくともいくつかの局面に従う第一の衣服領域には第一の材料が含まれ、第二の衣服領域には第二の材料が含まれ、かつ第三の衣服領域には第三の材料が含まれると考えられる。第一、第二、および第三の材料のそれぞれは、-1℃〜10℃の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に、22℃〜約34℃の一貫した身体皮膚温度を提供する。
【0056】
別の衣服には、第一の熱抵抗値を有する第一の材料から作られた女性用タンクトップがある(B)。タンクトップを上記のスリーブと組み合わせると、適切なランニング用の服装一式が提供される。
【0057】
B.本発明の例としての局面に従う衣服を作製する方法
本発明の追加の局面は、例えば先に記述した様々なタイプの衣服を形成する方法に関する。そのような方法には、例えば、(a)概して上半身の前面および後面に沿って伸展しているが、概して少なくとも前腕の上部および手を除く、第一の衣服領域;(b)概して前腕に沿って伸展しており、前腕の上の領域、肘から手首までを覆う、第二の衣服領域;ならびに任意で(c)手を覆うように概してスリーブから伸展している第三の衣服領域を含む上半身の衣服構造を形成する段階が含まれてもよい。1つの態様において、第二の衣服領域は、前腕筋の周囲を約180°包む。
【0058】
別の方法には、(a)概して下半身の前面および後面に沿って伸展しているが、概して大腿四頭筋、臀部、およびハムストリングを除く、第一の衣服領域;(b)概して大腿四頭筋に沿って伸展しており、膝上約2インチから脚の上部(脚が曲がるところ)までの大腿の前面を覆い、かつ大腿筋の前面の周囲を例えば約180°包む、第二の衣服領域;ならびに任意で(c)概して臀部およびハムストリングの上に伸展しており、膝上約8インチからウエストバンドの底部までの大腿の後面を覆い、かつ脚筋の後面の周囲を例えば約100°包む、第三の衣服領域を含む女性の下半身用の衣服を形成する段階が含まれる。
【0059】
別の方法には、(a)概して上半身の前面および後面に沿って伸展しているが、概して少なくとも前腕の上部および手を除く、第一の衣服領域;(b)概して前腕に沿って伸展しており、前腕の上の領域、肘から手首までを覆う、第二の衣服領域;ならびに任意で(c)手を覆うように概してスリーブから伸展している第三の衣服領域を含む男性の上半身用の衣服を形成する段階が含まれる。1つの態様において、第二の衣服領域は、前腕筋の周囲を約180°包む。
【0060】
そのような衣服構造は、任意の様々な型をとってもよく、および/または先に記述した様々な特徴または特徴の組み合わせのいずれかを有してもよい。
【0061】
本発明の少なくともいくつかの例に従う方法には、単一のピースとしての衣服の形成(例えば、編み工程によって、または他の衣服形成工程によって)が含まれてもよい。または、望ましければ、本発明の少なくともいくつかの例に従う衣服構造は、例えば当技術分野において公知で用いられる従来の方法(縫製またはステッチ技術、接着剤または他の融合技術等によるなどの)で、互いにつなぎ合わされた多数の布地ピースから作製されてもよい。望ましければ、第一、第二、および第三の衣服領域は、第四の衣服領域を具現化する布地材料の1つまたは複数の個別のピースへとつなぎ合わされる(例えば、縫製または他の技術によって)、布地材料の独立した個別のピース(任意で同じタイプの布地材料)から作製されてもよい。または、望ましければ、様々な領域の2つまたは複数が、材料の単一のピースの一部として含まれてもよい。フリースの貼り合わせ領域を有するシームレスニット衣服を提供するなどの、異なる方法を組み合わせて衣服を形成してもよい。
【0062】
本発明の特定の実施例を以下により詳細に記述する。読者は、これらの特定の実施例が本発明の例を単に図示するために述べられるのであって、それらは本発明を限定すると解釈されるべきではないと理解すべきである。
【実施例】
【0063】
II.本発明の特定の実施例
本出願における図3A〜3C、4A〜4B、5A〜5C、6A〜6B、7A〜7B、8A〜8B、および9は、本発明に従う衣服構造の様々な例を図示する。1つより多い図面において同じ参照番号が出現するが、その参照番号は、全体を通して同じまたは類似のパーツまたは要素を指すために本明細書および図面において一貫して用いられる。
【0064】
図3Aおよび3Bはそれぞれ、本発明の1つの例に従う衣服構造30の前面および後面を図示する。この衣服構造は、女性の上半身用にデザインされている。示されるように、この衣服構造30は、全体の衣服構造30の大部分(例えば、衣服の内部表面、外部表面、および/または体積の大部分)を占める1つの衣服領域31を有する。この図示される例において、衣服領域31は、衣服の前面、後面、および上腕のほとんど、ならびに下腕の一部を形成する。衣服領域31は、1つまたは多数のピースから作製されてもよく、これは本発明から逸脱しない。
【0065】
衣服構造30には、他の不連続領域も同様に含まれる。領域31と比較して、これらの追加の領域の少なくともいくつかは、約22℃〜約34℃の望ましい一貫した身体皮膚温度を達成するために、異なる断熱特性、熱抵抗性、空気透過性、伸縮性等などの異なる特性を有する領域であると考えられる。図3Aにおいて示されるように、これらの領域の1つである領域32は、衣服構造31の前腕に沿って伸展しており、少なくとも前腕の上部から手首までの領域を覆い、かつ前腕筋の周囲を180°覆う。本実施例の衣服構造30におけるこれらの領域のうちの別の領域33は、図3Cにおいて示されるように、手を覆うように手首におけるスリーブの末端から伸展している。望ましければ、領域32および33のいずれかまたは全てが布地の多数のピースから作製されてもよく、これは本発明から逸脱しない。
【0066】
女性の体に対する熱的研究から、体は女性の上半身で熱を、女性の前腕でさらにより多くの熱を、および女性の手でさらにより多くの熱を逃がすことが証明されている。ゆえに、衣服のこれらの領域において、調整された特性を提供することは、この逃がした熱を体の近くで保持することによって、衣服の着用者を温かい状態に維持するために役立ち得る。
【0067】
体のこれらの対象区画または位置の1つまたは複数において、調整された特性を有する材料の不連続な区画を衣服構造に提供することによって、比較的軽量で比較的かさの低い、それでもなお着用者を温かい状態に維持するために十分な性能を有するベースレイヤー衣服を製作することができる。そのような軽量でかさの低い衣服は、自由な動きおよび柔軟性が重要である運動選手および他の人にとって特に有用となり得る。計量でかさの低い衣服はまた、比較的コンパクトな荷造り目的にとって(例えば、製造元または卸売りの観点から(例えば、製品の輸送および保管)、小売りの観点から(例えば、ディスプレイまたは保管)、および/または末端ユーザーの観点から(旅行のために荷造りする場合、家庭で保管する場合等)の、製品の体積の低減にとって)有利である。
【0068】
衣服の保温特性の差は、多様な異なる方法によって、衣服構造30の様々な異なる領域31、32、および33において達成されてもよく、これは本発明から逸脱しない。例えば、望ましければ、衣服構造30の様々な領域は、異なる保温特性を有する布地材料の個別の独自のピースから作製されてもよく、材料のこれらの様々なピースは、衣服構造30における望ましい位置(領域31、32、および33)で望ましい材料を提供するように、共に縫製されてもよく、またはそうでなければ共に結合されてもよい(例えば、衣服製作技術分野において公知で従来用いられている方法で)。別の例として、望ましければ、異なる保温特性を有する衣服構造30の領域31、32および33は、異なるタイプの充填材料を用いることによって、充填材料を提供することによって、および/または領域31と比較して領域32および33においてより多くの充填材料を提供することによって提供されてもよい。ダウン材料、断熱織物、または布地充填材料等などの任意の望ましい保温材料を用いてもよく、これは本発明から逸脱しない。なお追加の例として、望ましければ、領域31、32および/または33は、コーティング、ラミネート加工、含浸加工、ドープ処理、および/またはそれ以外のように処置してもよく(および/または領域31および/または32と比較して領域33を処置してもよく)、それによってその保温特性を変更してもよい。
【0069】
任意の望ましい布地材料を、本発明の例に従う衣服構造のために用いてもよい。いくつかのより特定の例として、衣服(注目される領域31〜33の全てが含まれる)は、1つまたは複数の「保温材料」、例えば体の熱を保有するために役立つ、または熱の移動に対して抵抗性である材料から作製されてもよい。保温材料は、天然または合成布地(例えば、綿、ポリエステル、または他のポリマー材料等)であってもよい。いくつかのなおより特定の例として、全体の衣服構造108の任意のおよび/または全ての領域31〜33に関する保温材料は、Beaverton, OregonのNIKE, Inc.からの様々な衣服製品において市販されているTHERMA-FIT(登録商標)およびSPHERE(登録商標)保温布地材料などのポリエステルフリースまたは他のポリエステル保温材料であってもよい。
【0070】
断熱特性または熱抵抗特性の差のいかなる望ましい程度も、様々な領域において提供されてもよく、これは本発明から逸脱しない(例えば、領域32および/または33と比較して領域31において)。領域31と比較して、これらの追加の領域の少なくともいくつかは、約22℃〜約34℃の望ましい一貫した身体皮膚温度を達成するために、異なる断熱特性、熱抵抗性、空気透過性、伸縮性等などの異なる特性を有する領域であると考えられる。
【0071】
いくつかの局面において、第二の領域において用いられる布地の熱抵抗値は、第一の領域において用いられる布地の熱抵抗値より少なくとも5%または10%高く、第三の領域において用いられる布地の熱抵抗値は、第二の領域において用いられる布地の熱抵抗値より少なくとも5%または10%高い。
【0072】
衣服構造30における様々な領域31、32、および/または33も同様に、広く多様な異なるサイズおよび/または形状をとってもよく、これは本発明から逸脱しない。図示される例において、第一の衣服領域31は、衣服構造30の首領域34の近位からウエスト領域の近位まで連続的に伸展している。首領域34は、領域31と同じRCT値を有する材料で作製される。衣服領域31はまた、断熱特性、空気透過性、伸縮性等などの同じ特性を有する2つのタイプの材料から作られてもよい。例えば、効率のよい腕の振りおよびより見栄えのよいシームラインを提供するために、よりかさの低い材料を、衣服の上半身の腕の下の側面領域35に用いてもよい。
【0073】
本実施例構造30の側面領域35は、前面から後面の方向に衣服30の周囲を包み、衣服構造30の腕の下の領域の近位からウエスト領域の近位のあいだまで連続的に伸展している。側面領域は、衣服が意図される特定のスポーツに応じて多様であってもよい。
【0074】
図3Aは、本発明の実施例に従う衣服構造30にクロージャーシステム37がさらに含まれてもよいことをさらに図示する。衣服構造30において任意の望ましい位置で任意のタイプのクロージャーシステムが含まれてもよく、これは本発明から逸脱しない。この図示された例の衣服構造30において、クロージャーシステム37は従来のジッパータイプクロージャーシステムである。ジッパーは、熱を放散させる可能性がある。本発明から逸脱せずに衣服構造に含まれ得る、可能性のある他のクロージャーシステムには、例えば、ボタン、スナップ、フックタイプファスナー、面ファスナー、引き紐、およびタイタイプファスナー(tie type fastener)、ストラップ、バックル等が含まれる。
【0075】
先に言及したように、衣服構造の様々な領域は多様な形状、サイズ、および/または取り合わせを有してもよく、これは本発明から逸脱しない。
【0076】
図4Aおよび4Bは、本発明に従う女性の下半身用の衣服構造の例を図示する。衣服40には、下半身の前面および後面に沿って伸展しているが、大腿四頭筋、臀部、およびハムストリングを除く衣服領域41が含まれる。衣服領域42は、大腿四頭筋に沿って伸展しており、膝上約2インチから脚の上部(脚が曲がるところ)までの大腿の前面を覆い、かつ大腿筋の前面の周囲を180°包む。第三の衣服領域33は、臀部およびハムストリングの上に伸展しており、膝上約8インチからウエストバンドの底部までの大腿の後面を覆い、かつ脚筋の後面の周囲を100°包む。
【0077】
いくつかの局面において、第二および第三の領域において用いられる布地の熱抵抗値は、第一の領域において用いられる布地の熱抵抗値より少なくとも5%または10%高い。
【0078】
図5Aおよび5Bは、本発明の別の例に従う衣服構造50のそれぞれ、前面および後面を図示する。この衣服構造は、男性の上半身用にデザインされる。示されるように、この衣服構造50は、全体の衣服構造50の大部分(例えば、衣服の内部表面、外部表面、および/または体積の大部分)を占める1つの衣服領域51を有する。この図示される例において、衣服領域51は、衣服の前面、後面、および上腕のほとんど、ならび下腕の一部を形成する。衣服領域51は、1つまたは多数のピースから作製されてもよく、これは本発明から逸脱しない。衣服領域51は概して、保温特性を有しないか、または非常に低い保温特性を有する。
【0079】
衣服構造50には、他の不連続領域も同様に含まれる。これらの追加の領域の少なくともいくつかは、領域51と比較して増大した断熱特性または増大した熱抵抗性を有する領域であると考えられる。図5Aにおいて示されるように、これらの領域の1つである領域52は、衣服構造51の前腕に沿って伸展しており、少なくとも前腕の上部から手首までの領域を覆い、かつ前腕筋の周囲を180°覆う。本実施例の衣服構造50におけるこれらの領域のうちの別の領域53は、図5Cにおいて示されるように、手を覆うように手首においてスリーブの末端から伸展している。本実施例の構造50における領域53は、領域32と比較して異なる保温特性を有する。望ましければ、領域52および53のいずれかまたは全ては、布地の多数のピースから作製されてもよく、これは本発明から逸脱しない。
【0080】
男性の体に関する熱的研究から、上半身は快適なままであるが、男性の前腕ではやはり熱が維持されず、男性の手ではより多くの熱が維持されないことが証明されている。ゆえに、衣服の領域52および53において適切な断熱を提供することは、この逃がした熱を体の近くで保持することによって、衣服の着用者を温かい状態に維持するために役立ち得る。
【0081】
先に考察した女性の衣服と同様に、衣服構造50の様々な異なる領域52および53において、多様な異なる方法で、断熱特性または熱抵抗性の差が達成されてもよく、これは本発明から逸脱しない。例えば、望ましければ、衣服構造50の様々な領域は、異なる保温特性を有する布地材料の個別の独自のピースから作製されてもよく、材料のこれらの様々なピースは、衣服構造50における望ましい位置(領域52および53)で望ましい保温特性を提供するために、共に縫製されてもよく、またはそうでなければ共に結合されてもよい(例えば、衣服製作技術分野において公知で従来用いられている方法で)。別の例として、望ましければ、より高い断熱特性または熱抵抗特性を有する衣服構造50の領域52および53は、異なるタイプの充填材料を用いることによって、充填材料を提供することによって(領域51に充填材料を提供しないことと比較して)、提供されてもよい。ダウン材料、絶縁織物、または布地充填材料等などの任意の望ましい断熱または熱抵抗性充填材料を用いてもよく、これは本発明から逸脱しない。なお追加の例として、望ましければ、領域52および/または53は、コーティング、ラミネート加工、含浸加工、ドープ処理、および/または領域51と比較してそれ以外のように処置してもよく(および/または領域51および52と比較して領域53を処置してもよく)、それによってその断熱特性および/または熱抵抗特性を変更してもよい。
【0082】
任意の望ましい布地材料を、本発明の例に従う衣服構造のために用いてもよい。いくつかのより特定の例として、衣服(注目される領域52〜53の全てが含まれる)は、1つまたは複数の「保温材料」、例えば体の熱を保有するために役立つ、または熱の移動に対して抵抗性である材料から作製されてもよい。保温材料は、天然または合成布地(例えば、綿、ポリエステル、または他のポリマー材料等)であってもよい。いくつかのなおより特定の例として、全体の衣服構造108の任意のおよび/または全ての領域52〜53に関する保温材料は、Beaverton, OregonのNIKE, Inc.からの様々な衣服製品において市販されているTHERMA-FIT(登録商標)およびSPHERE(登録商標)保温布地材料などのポリエステルフリースまたは他のポリエステル保温材料であってもよい。
【0083】
保温特性の差の任意の望ましい程度が、様々な領域に提供されてもよく、これは本発明から逸脱しない(例えば、領域52および/または53と比較して領域51において)。
【0084】
いくつかの局面において、第二の領域において用いられる布地の熱抵抗値は、第一の領域において用いられる布地の熱抵抗値より少なくとも5%または10%高く、第三の領域において用いられる布地の熱抵抗値は、第二の領域において用いられる布地の熱抵抗値より少なくとも5%または10%高い。
【0085】
衣服構造50における様々な領域51、52、および/または53はまた、広く多様な異なるサイズおよび/または形状をとってもよく、これは本発明から逸脱しない。図示される例において、第一の衣服領域51は、衣服構造50の首領域54の近位からウエスト領域の近位まで連続的に伸展している。首領域54は、領域51と同様に全く保温特性を有しない、またはほとんど保温特性を有しない材料で作製される。衣服領域51はまた、保温特性を有しないまたはほとんど有しない2つのタイプの材料から作られてもよい。例えば、効率的な腕の振りおよびより見栄えのよいシームラインを提供するために、よりかさの低い材料を、衣服の上半身の腕の下の側面領域55に用いてもよい。
【0086】
本実施例構造50における側面領域55は、前面から後面の方向に衣服50の周囲を包み、衣服構造50の腕の下の領域の近位からウエスト領域の近位のあいだに連続的に伸展している。側面領域は、衣服が意図される特定のスポーツに応じて多様であってもよい。
【0087】
さらなる例は、自転車競技者またはトライアスロン運動選手が着用するスーツなどのユニスーツまたはワンピーススーツを図示する。図6Aおよび6Bは、女性用のそのようなスーツを図示し、図7Aおよび7Bは男性用のそのようなスーツを図示する。
【0088】
図6Aおよび6Bはそれぞれ、本発明の1つの例に従う衣服構造60の前面および後面を図示する。この衣服構造は、女性用ワンピースまたはユニスーツとしてデザインされている。衣服60は、上半身用の衣服30および下半身用の衣服40に関して記述された特色と類似の特色を有する。示されるように、この衣服構造60は、全身の衣服構造60の大部分(例えば、衣服の内部表面、外部表面、および/または体積の大部分)を占める1つの衣服領域61を有する。この図示される例において、衣服領域61は、上半身の衣服の前面および後面のほとんど、上腕、下腕の一部、ならびに下半身の前面および後面を形成するが、大腿四頭筋、臀部、およびハムストリングを除外する。衣服領域61は、1つまたは多数のピースから作製されてもよく、これは本発明から逸脱しない。図示される衣服は、膝上までの長さを有する。長さは膝まで、ふくらはぎまで、または足首までなどの任意の適切な長さであってもよいと理解すべきである。
【0089】
衣服構造60には、他の不連続領域も同様に含まれる。これらの追加の領域の少なくともいくつかは、領域61と比較して増大した保温特性を有する領域であると考えられる。図6Aにおいて示されるように、これらの領域の1つである領域62は、衣服構造61の前腕に沿って伸展しており、少なくとも前腕の上部から手首までの領域を覆い、かつ前腕筋の周囲を180°覆う。領域62は、領域61と比較して異なる特性を有する。衣服領域63は、大腿四頭筋に沿って伸展しており、膝上約2インチから脚の上部(脚が曲がるところ)までの大腿の前面を覆い、かつ大腿筋の前面の周囲を180°包む。第三の衣服領域64は、臀部およびハムストリングの上に伸展しており、膝上約8インチからウエストバンドの底部までの大腿の後面を覆い、かつ脚筋の後面の周囲を100°包む。
【0090】
望ましければ、任意のまたは全ての領域は布地の多数のピースから作製されてもよく、これは本発明から逸脱しない。
【0091】
断熱特性または熱抵抗性の差は、多様な異なる方法によって、衣服構造60の様々な異なる領域61、62、63、および64において達成されてもよく、衣服30および40において考察されかつ参照により本明細書に組み入れられるように、本発明から逸脱しない。
【0092】
図7Aおよび7Bはそれぞれ、本発明の1つの例に従う衣服構造70の前面および後面を図示する。この衣服構造は、男性用のワンピースまたはユニスーツとしてデザインされている。衣服70は、上半身用衣服50に関して記述した特色と類似の特色を有する。示されるように、この衣服構造70は、全身の衣服構造70の大部分(例えば、衣服の内部表面、外部表面および/または体積の大部分)を占める1つの衣服領域71を有する。この図示される例において、衣服領域71は、上半身の衣服の前面および後面のほとんど、上腕、下腕の一部、および下半身を形成する。図示される衣服は、膝上の長さを有する。長さは膝まで、ふくらはぎまで、または足首までなどの任意の適切な長さであってもよいと理解すべきである。
【0093】
衣服構造70には、少なくとも1つの他の不連続領域も同様に含まれる。これらの追加の領域の少なくともいくつかは、領域71と比較して異なる保温特性を有する領域であると考えられる。図7Aにおいて示されるように、領域72は、衣服構造70の前腕に沿って伸展しており、少なくとも前腕の上部から手首までの領域を覆い、かつ前腕筋の周囲を180°覆う。本実施例の構造70における領域72は、領域71と比較して異なる保温特性を有する。望ましければ、任意のまたは全ての領域は布地の多数のピースから作製されてもよく、これは本発明から逸脱しない。
【0094】
保温特性は、多様な異なる方法で衣服構造70の領域72において達成されてもよく、衣服50において考察されかつ参照により本明細書に組み入れられるように、本発明から逸脱しない。
【0095】
女性用および男性用ワンピースデザインの双方において、スリーブは、手の保温カバーを提供するために、図3Aのアイテム33、および図5Aのアイテム53において図示されるように伸展していてもよい。
【0096】
本発明の別の局面は、前腕に対する断熱を提供する取り外し可能なスリーブに関する。図8Aおよび8Bを参照されたい。そのようなスリーブは、自転車競技者によって、例えばウォーミングアップのために用いられるが、乗っているあいだに止まらずに取り外すまたは捨てることができる。スリーブは、男性用または女性用として用いられてもよい。
【0097】
スリーブ80は筒状であってもよく、スリーブが腕の上まで移動しないように手袋またはバンドのいずれかを含有してもよい。例えば、女性用または男性用スリーブ80には、(a)腕の長さに沿って伸展しているが、前腕および手を除く、第一の衣服領域81;(b)前腕に沿って伸展しており、少なくとも前腕の上部から手首までの領域を覆い、かつ前腕筋の周囲を180°覆う、第二の衣服領域82;ならびに任意で(c)手を覆うようにスリーブから伸展している第三の衣服領域83(図8bを参照されたい)が含まれてもよい。
【0098】
女性の場合、本発明の少なくともいくつかの局面に従う第一の衣服領域には、第一の材料が含まれ、第二の衣服領域には第二の材料が含まれ、かつ第三の衣服領域には第三の材料が含まれると考えられる。第一、第二、および第三の材料のそれぞれは、-1℃〜10℃の温度の環境室中で被験体において試験した場合に、22℃〜約34℃の一貫した身体皮膚温度を提供する。
【0099】
男性の場合、本発明の少なくともいくつかの局面に従う第一の衣服領域には、保温値をほとんどまたは全く有しない第一の材料が含まれ、第二の衣服領域には第二の材料が含まれ、かつ第三の衣服領域には第三の材料が含まれると考えられる。第二および第三の材料のそれぞれは、-1℃〜10℃の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に、22℃〜約34℃の一貫した身体皮膚温度を提供する。
【0100】
図9において示されるように、別の衣服には、第一の材料から作られた女性用タンクトップ90がある。材料は、-1℃〜10℃の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に、22℃〜約34℃の一貫した身体皮膚温度を提供する。タンクトップを上記の取り外し可能なスリーブ80と共に組み合わせると、適切なランニング用の服装一式が提供される。
【0101】
衣服構造の様々な領域のサイズ、構造、および/または取り合わせにおける広く多様な他のバリエーションが可能であり、これは本発明から逸脱しない。例えば、先に記述した様々な衣服構造30、40、50、60、および70において、領域は連続している。これは必要条件ではない。
【0102】
女性または男性の上半身用としてデザインされた本発明の他の局面に従う衣服には、概して衣服のヒップ領域の近位から衣服の首領域の近位まで上半身の前面および後面に沿って伸展しているが、概して前腕および手を除く、第一の衣服領域;ならびに概して前腕に沿って伸展しており、少なくとも前腕の上部からの肘から手首までの領域を覆い、かつ概して手の上に伸展している、第二の衣服領域が含まれてもよく、第一の衣服領域は第一の材料を含み、第二の衣服領域は第二の材料を含み、第一および第二の材料のそれぞれは、-1℃〜10℃(30°F〜50°F)の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に、約22℃〜約34℃(約71°F〜約93°F)の一貫した身体皮膚温度を提供する。このように、図5aおよび5cにおいて、アイテム51、54、55、および56は、第一の材料で作製され、アイテム52および53は先に記述されたように第二の材料で作製されると考えられる。
【0103】
女性または男性の下半身のためにデザインされた本発明の他の局面に従う衣服には、-1℃〜10℃の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に、22℃〜約34℃の一貫した身体皮膚温度を提供する材料が含まれてもよい。このように、図4aおよび4bにおいて、衣服全体は第一の材料で作製されると考えられる。
【0104】
本発明の実施例に従う衣服は、少なくとも部分的に、衣服形成技術分野において公知で用いられる従来の製作段階および/または従来の製作設備を用いることによることが含まれる、任意の望ましい方法で製作されてもよく、これは本発明から逸脱しない。例えば、望ましければ、材料の1つまたは複数の個別のピースを様々な領域(例えば、領域31〜35)のそれぞれのために提供してもよく、材料の様々なピースを、先に記述したようにその望ましい位置で様々な領域を配置するために互いに結合してもよい。縫製、ステッチ、接着剤、融合技術等を用いて、材料の様々なピースを共に結合させてもよい。加えて、もしあれば、クロージャーシステムおよび/またはサイズ調節システム(例えば、ボタン、スナップ、ストラップ、バックル、フックタイプファスナー、面ファスナー、引き紐、および/またはタイタイプファスナー、弾性材料等)が、当技術分野において従来から用いられる公知の方法を含む任意の望ましい方法で、衣服構造に含まれてもよく、これは本発明から逸脱しない。追加の例として、市販の衣服編み機および/または織機を、異なる断熱特性または熱抵抗特性の望ましい領域を含む望ましい衣服構造を製作するように(例えば、望ましい領域の様々な位置で異なる糸、ステッチパターン、織りパターン、テクスチャリング等を選択することによって)プログラムしてもよい。
【0105】
当然のこととして、布地、衣服、および/またはその製作工程における広く多様なバリエーションが可能であり、これは本発明から逸脱しない。例えば、望ましければ、高度に熱抵抗性の様々な領域の1つまたは複数を、本発明の少なくともいくつかの例に従って特定の衣服構造から省略してもよい。その上、製作工程における様々な異なる段階を変化させてもよく、順序を変化させてもよく、追加の段階を加えてもよく、および/または記述の段階を削除してもよく、および/または他の段階または技法と交換してもよく、これは本発明から逸脱しない。
【0106】
III.結論
本発明の局面は、同一出願人による同時係属中の特許出願である、Edward L. Harberによる「熱プロファイルに基づいて定義され得る対象換気区画または熱保有区画を利用する衣料品(Articles of Apparel Utilizing Targeted Venting or Heat Retention Zones that may be Defined Based on Thermal Profiles)」と題する2005年2月17日に提出された米国特許出願第11/059,357号、およびEdward L. Harberによる「ディメンショナライズドメッシュおよび他の布地を含む布地および衣料品(Fabrics and Articles of Apparel Including Dimensionalized Mesh and Other Fabrics)」と題する2006年6月19日に提出された米国特許出願第11/424,991号において記述されるものようなシステムおよび方法に関連して、用いられてもよい。これらの同時係属中の米国特許出願は完全に参照により本明細書に組み入れられる。
【0107】
本発明の様々な例を先に記述してきたが、本発明の範囲内に、これらの実施例の全ての組み合わせおよび部分的な組み合わせが含まれることは当業者によって理解されると考えられる。加えて、当業者は上記の実施例が本発明の単なる例示であることを認識すると考えられる。様々な変化および改変を行ってもよく、それらは添付の特許請求の範囲において定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服のヒップ領域の近位から衣服の首領域の近位まで上半身の前面および後面に沿って伸展しているが、前腕の上の領域および手を除く、第一の衣服領域と、
前腕に沿って伸展しており、少なくとも前腕の上部から手首までの領域を覆い、かつ前腕筋の周囲を180°覆う、第二の衣服領域と
を含む、人間の女性の胴体上部の少なくとも一部を覆うための衣服であって、
前記第一の衣服領域が、第一の熱抵抗値を有する第一の材料を含み、前記第二の衣服領域が、第一の熱抵抗値より高い第二の熱抵抗値を有する第二の材料を含み、
前記第一および第二の材料のそれぞれが、-1℃〜10℃の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に22℃〜約34℃の一貫した身体皮膚温度を提供する、
衣服。
【請求項2】
衣服のウエスト領域の近位から衣服の首領域の近位まで上半身の前面および後面に沿って伸展しているが、前腕の上の領域および手を除く、第一の衣服領域と、
前腕に沿って伸展しており、少なくとも前腕の上部から手首までの領域を覆い、かつ前腕筋の周囲を180°覆う、第二の衣服領域と
を含む、人間の男性の胴体上部の少なくとも一部を覆うための衣服であって、
前記第一の衣服領域が、約ゼロである第一の熱抵抗値を有する第一の材料を有する材料を含み、前記第二の衣服領域が、第二の熱抵抗値を有する第二の材料を含み、
前記第一および第二の材料のそれぞれが、-1℃〜10℃の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に22℃〜約34℃の一貫した身体皮膚温度を提供する、
衣服。
【請求項3】
手を覆うようにスリーブから伸展している第三の衣服領域をさらに含む、請求項1または2記載の衣服。
【請求項4】
第三の衣服領域が、第二の熱抵抗値より高い第三の熱抵抗値を有する第三の材料を含む、請求項3記載の衣服。
【請求項5】
第二の熱抵抗値が、第一の熱抵抗値より少なくとも5%高い、請求項1または2記載の衣服。
【請求項6】
第二の熱抵抗値が、第一の熱抵抗値より少なくとも10%高い、請求項1または2記載の衣服。
【請求項7】
第三の熱抵抗値が、第二の熱抵抗値より少なくとも5%高い、請求項3記載の衣服。
【請求項8】
第三の熱抵抗値が、第二の熱抵抗値より少なくとも10%高い、請求項3記載の衣服。
【請求項9】
第一、第二、および第三の材料のそれぞれが、-1℃〜10℃の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に22℃〜約34℃の一貫した身体皮膚温度を提供する、請求項4記載の衣服。
【請求項10】
少なくとも1つの衣服領域に結合している衣服クロージャーシステムをさらに含む、請求項1または2記載の衣服。
【請求項11】
第一の材料が約0.013〜約0.020のRCT値を満たす、請求項1または2記載の衣服。
【請求項12】
第二の材料が約0.013〜約0.020のRCT値を満たす、請求項1または2記載の衣服。
【請求項13】
第二の材料が約0.029〜約0.040のRCT値を満たす、請求項1または2記載の衣服。
【請求項14】
第三の材料が約0.029〜約0.040のRCT値を満たす、請求項4記載の衣服。
【請求項15】
衣服のヒップ領域の近位から衣服の首領域の近位まで上半身の前面および後面に沿って伸展しているが、前腕の上の領域および手を除く、第一の衣服領域と、
前腕に沿って伸展しており、少なくとも前腕の上部から手首までの領域を覆い、前腕筋の周囲を180°覆い、かつ手を覆う、第二の衣服領域と
を含む、人間の胴体上部の少なくとも一部を覆うための衣服であって、
前記第一の衣服領域が、第一の熱抵抗値を有する第一の材料を含み、前記第二の衣服領域が、第一の熱抵抗値より高い第二の熱抵抗値を有する第二の材料を含み、
前記第一および第二の材料のそれぞれが、-1℃〜10℃の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に22℃〜約34℃の一貫した身体皮膚温度を提供する、
衣服。
【請求項16】
衣服のウエスト領域の近位から衣服の首領域の近位まで上半身の前面および後面に沿って伸展しているが、前腕の上の領域および手を除く、第一の衣服領域と、
前腕に沿って伸展しており、少なくとも前腕の上部からの肘から手首までの領域を覆い、かつ前腕筋の周囲を180°覆う、第二の衣服領域と
を含む、衣服構造
を形成する段階を含む、女性の胴体上部の少なくとも一部を覆うための衣服を形成する方法であって、
前記第一の衣服領域が、第一の熱抵抗値を有する第一の材料を含み、前記第二の衣服領域が、第一の熱抵抗値より高い第二の熱抵抗値を有する第二の材料を含み、
前記第一および第二の材料のそれぞれが、-1℃〜10℃の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に22℃〜約34℃の一貫した身体皮膚温度を提供する、
方法。
【請求項17】
衣服のウエスト領域の近位から衣服の首領域の近位まで上半身の前面および後面に沿って伸展しているが、前腕の上の領域および手を除く、第一の衣服領域と、
前腕に沿って伸展しており、少なくとも前腕の上部からの肘から手首までの領域を覆い、かつ前腕筋の周囲を180°覆う、第二の衣服領域と
を含む、衣服構造
を形成する段階を含む、男性の胴体上部の少なくとも一部を覆うための衣服を形成する方法であって、
前記第一の衣服領域が、約ゼロである第一の熱抵抗値を有する第一の材料を含み、前記第二の衣服領域が、第二の熱抵抗値を有する第二の材料を含み、
前記第一および第二の材料のそれぞれが、-1℃〜10℃の温度の環境室の中で被験体において試験した場合に22℃〜約34℃の一貫した身体皮膚温度を提供する、
方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−36160(P2013−36160A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−207717(P2012−207717)
【出願日】平成24年9月21日(2012.9.21)
【分割の表示】特願2010−520140(P2010−520140)の分割
【原出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(505424859)ナイキ インターナショナル リミテッド (249)
【Fターム(参考)】