説明

異なる地図を同時に表示する地図表示装置及び方法

【課題】優れた操作性と視認性で、異なる地図を同時に表示すること。
【解決手段】制御手段30が、第1の表示手段10及び第2の表示手段20を制御することにより、地図表示画面について、その左半分を第1の領域に、残る右半分を第2の領域に、境界線で区分するとともに、第1の領域には第1の地図を、第2の領域には第2の地図を、相互に同じ縮尺で、かつ、双方の地図の相互に対応する箇所同士が前記境界線で接するように表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータを用いて地図を表示する技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、PC(パーソナルコンピュータ)や携帯電話からのインターネットアクセスで地図を表示する電子地図サービスが普及している。この種のサービスでは、通常の地図画像だけでなく、衛星写真や異なる年代の地図などが用意され、タブ切替など所定操作により、同一地点の通常の地図と衛星写真等との表示切替を行うことが出来る(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
また、ナビゲーション装置などでは、現在地付近の詳細な地図と、より広域な地図を同一のディスプレイで画面を分割して表示することが行なわれている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−025232号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】エヌ・ティ・ティ レゾナント株式会社、「goo地図」、[online]、[2009年5月1日検索]、インターネット〈URL:http://map.goo.ne.jp/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のような従来の技術では、同一地点の地図であっても、通常の地図と衛星写真や異なる年代の地図のように種類の異なる地図同士で細かい比較や照合を行う場合の操作性や見易さが不十分であった。
【0007】
すなわち、従来、そのような異なった地図同士の比較や照合では、地図表示画面全体の切替操作を繰り返したり、それぞれ別々のウィンドウに表示し、交互に確認したりするなど、煩雑な操作が必要で操作性に難があったうえ、相互に別々の地図間の視点移動を要すると両者の違いを見逃しがちという課題もあった。また、詳細さや範囲の互いに異なる地図を、一つの画面を領域分割するなどして表示する場合は、個々の表示領域が狭いため情報の一覧性すなわち視認性を損なうという問題があった。
【0008】
本発明は、上記のような課題に対応するもので、その目的は、優れた操作性と視認性で、異なる地図を同時に表示することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的をふまえ、本発明の一態様は、表示装置で実現する所定の地図表示画面にコンピュータが地図を表示する地図表示装置において、第1の地図データを記憶している第1の記憶手段と、前記第1の地図データを用いて第1の地図を前記地図表示画面に表示する第1の表示手段と、第2の地図データを記憶している第2の記憶手段と、前記第2の地図データを用いて第2の地図を前記地図表示画面に表示する第2の表示手段と、前記第1の表示手段及び前記第2の表示手段を制御することにより、前記地図表示画面を第1の領域と第2の領域に境界線で区分するとともに、前記第1の領域には前記第1の地図を、前記第2の領域には前記第2の地図を、相互に同じ縮尺で、かつ、双方の地図の相互に対応する箇所同士が前記境界線で接するように表示させる制御手段と、を前記コンピュータが実現することを特徴とする。
【0010】
上記態様を方法として把握した態様としては、第1の地図データを記憶している第1の記憶手段と、第2の地図データを記憶している第2の記憶手段と、を備えたサーバコンピュータが、通信ネットワーク経由でアクセスしてくるクライアント端末において表示装置で実現する所定の地図表示画面に地図を表示させる地図表示システム、を用いる地図表示方法において、前記第1の地図データを用いて第1の地図を前記地図表示画面に表示する第1の表示処理と、前記第2の地図データを用いて第2の地図を前記地図表示画面に表示する第2の表示処理と、前記第1の表示処理及び前記第2の表示処理を制御することにより、前記地図表示画面を第1の領域と第2の領域に境界線で区分するとともに、前記第1の領域には前記第1の地図を、前記第2の領域には前記第2の地図を、相互に同じ縮尺で、かつ、双方の地図の相互に対応する箇所同士が前記境界線で接するように表示させる制御処理と、を実行するウェブページデータを前記サーバコンピュータから前記クライアント端末へ送信することを特徴とする。
【0011】
上記態様をコンピュータ・プログラムとして把握した態様としては、第1の地図データを記憶している第1の記憶手段と、第2の地図データを記憶している第2の記憶手段と、を備えたコンピュータにおいて、表示装置で実現する所定の地図表示画面に地図を表示させる地図表示プログラムであって、そのプログラムは前記コンピュータを制御することにより、前記第1の地図データを用いて第1の地図を前記地図表示画面に表示する第1の表示手段と、前記第2の地図データを用いて第2の地図を前記地図表示画面に表示する第2の表示手段と、前記第1の表示手段及び前記第2の表示手段を制御することにより、前記地図表示画面を第1の領域と第2の領域に境界線で区分するとともに、前記第1の領域には前記第1の地図を、前記第2の領域には前記第2の地図を、相互に同じ縮尺で、かつ、双方の地図の相互に対応する箇所同士が前記境界線で接するように表示させる制御手段と、を実現させることを特徴とする。
【0012】
このように、一つの地図画面を境界線で分割した各領域に、二種類の地図を同縮尺で同時に、相互に対応する同じ緯度経度の位置同士が領域間の境界線で接し切り替わるように表示する構成により、全体として通常の地図と同様の広い表示面積を維持しつつ、種類の異なる複数の地図を表示することが出来る。
【0013】
本発明の他の態様は、上記いずれかの態様において、前記制御手段(制御処理)は、前記境界線の位置を固定したまま、前記第1の地図と前記第2の地図を略同期してスクロール表示させることを特徴とする。
【0014】
このように、与えられる操作などに応じ、境界線を動かさず双方の地図を同期してスクロールさせる構成により、見たい場所を、望む側の地図領域まで移動させる直感的なスクロール操作により、切替操作無しで見たい種類の地図で見ることができる。さらに、見たい対象を目で追いながら双方の領域にスクロールで往復させれば、種類の異なる地図表示に交互に切り替えて見るような見え方になるので、比較照合など自由度が高く優れた操作が実現できる。
【0015】
本発明の他の態様は、上記いずれかの態様において、前記制御手段(制御処理)は、前記境界線で相互に隣接している前記第1の地図又は前記第2の地図のうち一方の地図に対しスクロール移動操作が行われた場合に、前記スクロール移動操作後に、前記一方の地図のうち前記境界線で他方の地図と接する端辺の中心位置の緯度経度を第1の緯度経度として求め、前記他方の地図において前記第1の緯度経度に対応するピクセル座標を求め、前記他方の地図において前記ピクセル座標からその他方の地図側にその他方の地図における幅の半分移動した位置の緯度経度を第2の緯度経度として求め、求めた前記第2の緯度経度の位置を前記他方の地図におけるスクロール移動操作後の新たな表示範囲の中心位置として、その地図に対応する前記第1の表示手段又は前記第2の表示手段に対して指定することを特徴とする。
【0016】
このように、相互に表示範囲を同期すべき両方の地図の一方にスクロール移動操作が行われた場合、移動された側の地図における新たな範囲の境界線部分の中点位置を基に、他方の地図についてそのピクセル座標系から新たな表示範囲における中心位置の緯度経度を計算して表示範囲の指定に用いる。これにより、地図表示範囲を中心位置の緯度経度で指定するタイプの既存の一般的な処理系を利用する場合に、両地図間の座標系や表示画像生成処理の異同を問わず、緯度経度という世界共通のデータ表現によって両地図間の表示の同期が実現できる。
【0017】
本発明の他の態様は、上記いずれかの態様において、前記境界線に対応した位置にユーザの操作によりその境界線を移動させるための操作部品をグラフィック表示し、前記ユーザの操作に応じて前記境界線を平行移動させるとともに前記第1の地図及び前記第2の地図の各表示範囲を変更する境界線移動手段(処理)を前記コンピュータが実現(実行)することを特徴とする。
【0018】
すなわち、同じ場所について地図の種類を切り替えて比較照合したい場合でも、地図全体をスクロール移動させると確認したい部分の位置が変わり視認性を損ないがちであるところ、上記のように、操作部品への境界線移動操作に応じて境界線の位置と各地図の表示範囲を変更することにより、動画のワイプ処理のように表示対象の位置が変わらず視認性が維持できる。
【0019】
本発明の他の態様は、上記の態様において、前記制御手段(処理)は、前記境界線移動操作が行われた場合に、境界線の移動前後における位置の差分を取得し、取得した前記差分に基づいて前記第1の地図及び前記第2の地図における境界線移動後の新たな各横幅を計算し、前記各横幅に基づいて、前記第1の地図及び前記第2の地図の各中心位置を計算し、前記第1の地図及び前記第2の地図を、それぞれ計算された前記中心位置に移動するとともに前記横幅に変更して、前記第1の表示手段又は前記第2の表示手段に表示させることを特徴とする。
【0020】
このように、境界線をどちらにどれだけ動かしても、その差分をもとに、境界線移動操作後の各地図について、新たな横幅と中心位置を計算しそれらに基づいて表示を更新させるという簡明な処理によって、見かけ上の中心位置を変化なく維持できるので、スムースで自然な境界線移動が実現できる。
【0021】
なお、上記の各態様で示した装置、方法又はプログラムといったカテゴリの別は説明上の例示であり、本発明は上記の態様ごとに、記載しなかった他のカテゴリも含むものであり、また、以下に説明するより具体的な各態様も含むものである。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、優れた操作性と視認性で、異なる地図を同時に表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態の構成を示す機能ブロック図。
【図2】本発明の実施形態における処理手順を示すフローチャート。
【図3】本発明の実施形態における地図表示の一例を示す図。
【図4】本発明の実施形態におけるスクロール表示に関する位置情報の処理を示す概念図。
【図5】本発明の実施形態において、地図内のある領域Aを左地図L寄りにスクロールさせた表示状態を示す図。
【図6】本発明の実施形態において、地図内のある領域Aを右地図R寄りにスクロールさせた表示状態を示す図。
【図7】本発明の第2実施形態の構成を示す機能ブロック図。
【図8】本発明の第2実施形態における処理手順を示すフローチャート。
【図9】本発明の第2実施形態における地図表示の一例を示す図。
【図10】本発明の第2実施形態における境界線の移動に関する位置情報の処理を示す概念図。
【図11】本発明の第2実施形態において、地図内のある領域Aが主に左地図L内に位置するように境界線を移動させた表示状態を示す図。
【図12】本発明の第2実施形態において、地図内のある領域Aを主に右地図R内に位置するように境界線を移動させた表示状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明を実施するための形態(「実施形態」と呼ぶ)について、図に沿って説明する。なお、背景技術や課題などで既に述べた内容と共通の前提事項については適宜省略する。
【0025】
〔1.構成〕
まず、本実施形態は、表示装置で実現する所定の地図表示画面にコンピュータが地図を表示する地図表示装置を、クライアント・サーバ・システムとして実現する例であり、その構成を図1に示す。この図に示すように、本実施形態は、通信ネットワークN経由でアクセスしてくる一又は二以上(通常は多数)のクライアント端末Tの表示装置Dで実現する所定の地図表示画面Gに、地図を表示するコンピュータであるサーバ装置(以下「本装置」とも呼ぶ)1に関するもので、本装置1に対応する方法やコンピュータ・プログラムとしても把握可能であるし、クライアント端末Tを含めて地図表示装置と把握してもよい。なお、クライアント端末Tについては、不特定多数のパーソナルコンピュータや携帯電話端末装置などを想定し、以下、単に「端末」とも呼ぶ。
【0026】
このような本実施形態における地図表示は、本装置1から端末Tのウェブブラウザに、ウェブページデータを送ることで実現するが、その際の具体的なウェブページ構築手法は自由であり、例えば、HTMLファイルや画像などを用いる基本的なウェブ実現手法で実現してもよいし、ブラウザのスクリプト(例えばJavaScript(登録商標))機能、アプリケーションプラットフォーム(Flash(登録商標)など)のブラウザ用プラグイン、Ajaxなど、任意の技術や手法で実現してよい。
【0027】
ここで、本装置1は、一般的なサーバコンピュータの構成として、少なくとも、CPUなどの演算制御部5と、外部記憶装置(HDD等)や主メモリ等の記憶装置6と、通信ネットワークNとの通信手段7(LANアダプタなど)と、を有し、端末Tは、それら一般的なパーソナルコンピュータの構成(上記に準じた演算制御部5、記憶装置6、通信手段7)に加え、マウスやキーボードなどの入力装置Mと、液晶パネルなどの表示装置Dと、記憶装置6に予め記憶(インストール)したウェブブラウザBと、を備える。さらに、ウェブブラウザBに上記のようなプラグインPを組み込んでもよい。
【0028】
そして、本装置1では、記憶装置6に予め記憶(インストール)した図示しない所定のコンピュータ・プログラムが演算制御部5を制御することで、図1に示す各手段などの要素(10,15,20,25など)を実現する。これら各要素のうち、情報を記憶する各手段(15,25)は、記憶装置6においてファイルや各種データベース(「DB」とも表す)、配列等の変数、システム設定値など任意の形式で実現するもので、そのうち、第1の記憶手段15は、第1の地図データ(例えば、ある地域の10年前の地図データ)を予め記憶しており、また、第2の記憶手段25は、第2の地図データ(例えば、前記地域の現在の地図データ)を予め記憶している。
【0029】
また、その他の情報処理を行う各要素のうち、第1の表示手段10は、第1の記憶手段15に記憶されている第1の地図データを用いて第1の地図(例えば、前記地域の10年前の地図)を地図表示画面Gに表示する手段であり、第2の表示手段20は、第2の記憶手段25に記憶されている第2の地図データを用いて第2の地図(例えば、前記地域の現在の地図)を地図表示画面Gに表示する手段である。また、制御手段30は、後述する機能や処理を実現・実行する処理手段である。
【0030】
〔2.作用〕
ここで、本装置1について、地図表示に関する処理手順を図2のフローチャートに示し、地図表示の一例を図3に示す。すなわち、本実施形態における地図表示では、図2に示すように、まず、制御手段30が、第1の表示手段10及び第2の表示手段20を制御することにより、地図表示画面について(図3)、その左半分を第1の領域Lに、残る右半分を第2の領域Rに、境界線Kで区分するとともに(ステップS01)、第1の領域Lには第1の地図(領域と同じ符号「L」で表す)を、第2の領域Rには第2の地図(領域と同じ符号「R」で表す)を、相互に同じ縮尺で、かつ、双方の地図の相互に対応する箇所同士が境界線Kで接するように表示させる(ステップS02。制御処理)。
【0031】
なお、上記のように地図表示画面を境界線Kで区分することと、その左右の各領域に各地図L,Rを表示することは、説明上分けて示したもので、実際には、境界線の左右となる各領域L,Rに各地図を表示することで、その接する部分が結果的に境界線Kとなる実施態様も本発明に含まれるものである。
【0032】
ここで、図3に例示する第1の地図Lは、区画Aを含むある地域の10年前(西暦1999年)の地図であり、説明の便宜上、左地図Lとも呼ぶこととする。また、第2の地図Rは、前記地域の現在(西暦2009年)の地図であり、説明の便宜上、右地図Rとも呼ぶこととする。区画Aは、10年前はある省庁「△△庁」であったが、その後の再開発の結果、現在では、複数の高層オフィスビル等からなる「○○タウン」という民間施設となっている。
【0033】
そして、制御手段30は、図3のように表示されている地図に対するスクロール移動操作を受け付けるたびに、境界線Kの位置を固定したまま、左地図Lと右地図Rを略同期してスクロール表示させる(ステップS03〜S27)。このスクロール表示は、左地図Lの右端と右地図Rの左端が同じ位置になるように各地図を動かすものである。
【0034】
より具体的な処理の一例として、表示する地図の範囲をその中心位置で指定する処理系の場合、図4の概念図に例示するように、左地図Lについて、マウスカーソルMCにより矢印Bのようにスクロール移動操作が行われ、この移動後の表示範囲に合わせて右地図Rの表示を更新する場合を考える。この場合(ステップS03)、
・左地図Lの右端辺(境界線Kを兼ねる)について中点すなわち中心位置P1の緯度経度X1,Y1を求め(ステップS14)、
・右地図Rにおける上記位置のピクセル座標P2を求め(ステップS15)、
・求めたピクセル座標から右に地図の幅の半分移動した位置P3の緯度経度X3,Y3を求め(ステップS16)、
・求めた緯度経度X3,Y3の位置を右地図Rの中心位置に指定する(ステップS17)。
【0035】
逆に、右地図Rが動かされた場合(ステップS03)、図示は省略するが、図4の場合とは左右対称で、
・右地図Rの左端の中心位置の緯度経度を求め(ステップS24)、
・左地図Lにおける上記位置のピクセル座標を求め(ステップS25)、
・求めたピクセル座標から左に地図の幅の半分移動した位置の緯度経度を求め(ステップS26)、
・求めた緯度経度の位置を左地図Lの中心位置に指定する(ステップS27)。
【0036】
以上のようなスクロール処理によって、例えば図3の状態から、区画Aの部分をマウスカーソルMCでホールドしたまま左地図L寄りに移動(いわゆるドラッグ操作)すれば、図5の状態となって10年前の「△△庁」の建物平面配置の状態がよくわかり、逆に、区画Aの部分をマウスカーソルMCでホールドしたまま右地図R寄りに移動すれば、図6の状態となって、現在の「○○タウン」の様子がわかる。このような図5と図6の状態を往復させるなどして比較すると、10年前の「△△庁」と現在の「○○タウン」では、各建物の平面形状も向き(配置方位)も大きく異なっていることを、容易に確認、把握することができる。
【0037】
〔3.効果〕
以上のように、本実施形態では、一つの地図画面を境界線で分割した各領域に、二種類の地図を同縮尺で同時に、相互に対応する同じ緯度経度の位置同士が領域間の境界線で接し切り替わるように表示する構成により、全体として通常の地図と同様の広い表示面積を維持しつつ、種類の異なる複数の地図を表示することが出来る。
【0038】
特に、本実施形態では、上記のように、与えられる操作などに応じ、境界線を動かさず双方の地図を同期してスクロールさせる構成により、見たい場所を、望む側の地図領域まで移動させる直感的なスクロール操作により、切替操作無しで見たい種類の地図で見ることができる。さらに、見たい対象を目で追いながら双方の領域にスクロールで往復させれば、種類の異なる地図表示に交互に切り替えて見るような見え方になるので、比較照合など自由度が高く優れた操作が実現できる。
【0039】
すなわち、本実施形態における図3のような表示によれば、関心のある場所について、地図表示画面の中心線となる境界部分を横切らせることで各地図間で表示がどう異なるかを確認する場合でも、視点は中心線付近に落ち着くため視認性が高く、地図間の違いが認識しやすい。また、本実施形態では、2つの地図が中心線で合体しているため、各地図を別ウィンドウ等に別々に表示する場合より広い範囲の地図が表示可能であり、操作性も視認性も改善される。
【0040】
さらに、本実施形態では、上記のように、相互に表示範囲を同期すべき両方の地図の一方にスクロール移動操作が行われた場合、移動された側の地図における新たな範囲の境界線部分の中点位置を基に、他方の地図についてそのピクセル座標系から新たな表示範囲における中心位置の緯度経度を計算して表示範囲の指定に用いる。これにより、地図表示範囲を中心位置の緯度経度で指定するタイプの既存の一般的な処理系を利用する場合に、両地図間の座標系や表示画像生成処理の異同を問わず、緯度経度という世界共通のデータ表現によって両地図間の表示の同期が実現できる。
【0041】
〔4.他の実施形態〕
なお、上記各実施形態は例示に過ぎず、本発明は、以下に例示するものやそれ以外の他の実施態様も含むものである。例えば、本発明において、各手段などの要素は、コンピュータの演算制御部に限らず、ワイヤードロジック等に基づく電子回路で実現してもよい。また、各構成図、データの図、フローチャートの図などは例示に過ぎず、各要素の有無、その順序や具体的内容などは適宜変更可能である。
【0042】
一例として、上記実施形態では、クライアント・サーバ・システムを構成するサーバ装置を中心に本発明の実現態様を説明したが、実際の実現態様は自由に選択可能であり、本発明は、スタンドアロンコンピュータにおける装置、方法やプログラムとしても把握可能であるし、また、ウェブページデータとして端末に送り込まれたスクリプト等のプログラムとしても把握可能である。
【0043】
また、本発明により同時に表示して比較できる第1と第2の各地図の組合せは、上記実施形態で例示した異なる年代の道路地図同士によるいわゆる年代比較に限らず、航空写真の年代比較、航空写真と地図、地図と同一地点の地下街、注記有りの地図と注記無しの地図、大量のアイコンが載った地図とアイコン無しの地図(アイコンの下の地図が見たい場合)など自由である。また、上記実施形態では、地図表示画面を2分割する例を示したが、4分割、8分割などでさらに多種類の地図を同時に表示して比較することも可能である。また、画面を分割する方向は、左右に限らず上下や斜めなど他の方向でもよい。
【0044】
〔5.第2実施形態〕
ところで、同じ場所について地図の種類を切り替えて比較照合したい場合について、上記のように地図全体をスクロール移動させると、確認したい部分(例えば区画A。領域Aとも呼ぶ)の位置が変わり視認性を損なう場合も考えられる。そこで、地図全体の表示範囲を固定して各地図の境界線を移動できるように構成する例も考えられる(第2実施形態)。
【0045】
〔5−1.第2実施形態の概要〕
この第2実施形態では、図7の構成図に示すように、サーバ装置11においてコンピュータが境界線移動手段40を実現する。また、第2実施形態における境界線の移動に関する処理手順を図8のフローチャートに示す。
【0046】
まず、境界線移動手段40は、図9に例示するように、境界線Kに対応した位置(図9の例では境界線の一端に近い延長上であるが、例えば、境界線上、境界線の端部などでもよい)にその境界線を移動させるための操作部品(図9の例では、黒い三角形で示す境界線移動ボタンS)をグラフィック表示する(ステップS50)。そして、境界線移動手段40は、その境界線移動ボタンSに対してマウスカーソルMCなどによるドラッグ操作でツマミを動かすような境界線移動操作が入力されるたびに(ステップS51:「YES」)、入力された境界線移動操作に応じ、境界線Kを平行移動させるとともに(ステップS52)、左地図L及び右地図Rの各表示範囲を変更する(ステップS53〜S56)。
【0047】
〔5−2.表示範囲を変更する計算の例〕
左地図L及び右地図Rの各表示範囲の変更は、具体的には、境界線移動手段40が制御手段30に指令を与えることにより、次のように行わせる。すなわち、境界線移動操作が行われた場合、制御手段30は、境界線の移動前後における位置(例えば、表示画面上における画素単位のピクセル座標値など)の差分を取得し(ステップS53)、取得した前記差分に基づいて各地図L,Rにおける境界線移動後の新たな各横幅を計算し(ステップS54)、前記各横幅に基づいて又は他の方法で各地図L,Rの各中心位置を計算し(ステップS55)、各地図L,Rを、それぞれ計算された前記中心位置に移動するとともに前記横幅に変更して、第1の表示手段10又は第2の表示手段20に表示させる(ステップS56)。
【0048】
ここで、新たな横幅と中心位置の計算例を示す。例えば、左地図Lと右地図Rがそれぞれ横幅320画素ずつという均等な大きさの状態で、各地図L,Rの間にあった境界線Kを左に20画素だけ移動させた場合、移動の前後における境界線位置についてX座標の差分を計算すると−20画素となる。ここで、各地図L,Rを並べた合計の幅は境界線Kが移動しても常に一定(320+320=640画素)であり、各地図L,Rの新しい横幅を計算すると、左地図Lは300画素(変数w1999とする)、右地図Rは340画素(変数w2009とする)となる。
【0049】
ここで、左右の各地図L,Rを並べた状態における見かけ上の中心位置を維持するため、各地図L,Rの中心位置の座標を計算により修正する。この計算は、移動前の各中心位置に対してそれぞれ境界線移動量の半分ずつを加減してもよいし、横幅から改めて計算してもよく、いずれも同じ値となるが、ここでは、横幅から計算する具体例として、次のようなソースコードの記述例が考えられる。

var p1999=_map1999.log2LatLon(newPoint(w1999/2,h));
var p2009=_map1999.log2LatLon(newPoint(w1999+(w2009/2),h));

ここで、「_map1999.log2LatLon(newPoint(…」は、引数となる表示画面上の画素座標値(X,Y)をもとに、地図の新たな表示範囲の中心位置の緯度経度を得る関数である。また、各変数はそれぞれ:
・hが左右の地図の高さ(共通)
・w1999が左の地図の新しい横幅
・w2009が右の地図の新しい横幅
・p1999が左の地図の新しい中心位置
・p2009が右の地図の新しい中心位置
・_map1999が左の地図オブジェクト
を表す。
【0050】
このように得た新たな中心位置(緯度経度)と横幅(画素数)すなわち例えば左地図Lについてはp1999とw1999、右地図Rについてはp2009とw2009、を用いてAPIや関数などを呼び出すことで、各地図の新たな中心位置への移動と、新たな横幅への変更を伴う再描画が実現できる。
【0051】
〔5−3.境界線移動の例〕
ここで、図10の概念図は、境界線K1⇒K2という位置の移動に伴って、左地図Lでは矢印で示す幅がWLa⇒WLbに、黒点で示す中心位置がPLa⇒PLbと変化し、同様に右地図Rでは幅がWRa⇒WRbに、中心位置がPRa⇒PRbと変化する様子を示している。
【0052】
また、図9の状態から、境界線Kを右寄りに移動した表示状態を示すのが図11であり、図3同様に10年前の地図(左)と現在の地図(右)の組合せであるが、図11の状態では、地図内のある領域Aが主に左地図L内に位置しており、10年前に「△△庁」があった様子がよくわかる。逆に、境界線Kを左寄りに移動した表示状態を示すのが図12であり、この状態では、領域Aに現在「○○タウン」がある様子がわかる。地図上の所望の地域について、境界線Kを左右に何度でも動かし、上記のような図11と図12の状態を行き来して繰り返し確認すれば、対象の地域が画面上で移動して表示がちらつく問題もなく、10年前と現在の様子など各地図での見え方の異同を容易に確認、把握することができる。
【0053】
〔5−4.第2実施形態の効果〕
以上のように、第2実施形態では、操作部品への境界線移動操作に応じて境界線の位置と各地図の表示範囲を変更することにより、動画のワイプ処理のように表示対象の位置が変わらず視認性が維持できる。
【0054】
特に、第2実施形態では、境界線をどちらにどれだけ動かしても、その差分をもとに、境界線移動操作後の各地図について、新たな横幅と中心位置を計算しそれらに基づいて表示を更新させる(図8のステップS53〜S56)という簡明な処理によって、見かけ上の中心位置を変化なく維持できるので、スムースで自然な境界線移動が実現できる。
【符号の説明】
【0055】
1 サーバ装置
T クライアント端末
5 演算制御部
6 記憶装置
7 通信手段
10 第1の表示手段
15 第1の記憶手段
20 第2の表示手段
25 第2の記憶手段
30 制御手段
40 境界線移動手段
D 表示装置
M 入力装置
B ウェブブラウザ
P プラグイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置で実現する所定の地図表示画面にコンピュータが地図を表示する地図表示装置において、
第1の地図データを記憶している第1の記憶手段と、
前記第1の地図データを用いて第1の地図を前記地図表示画面に表示する第1の表示手段と、
第2の地図データを記憶している第2の記憶手段と、
前記第2の地図データを用いて第2の地図を前記地図表示画面に表示する第2の表示手段と、
前記第1の表示手段及び前記第2の表示手段を制御することにより、前記地図表示画面を第1の領域と第2の領域に境界線で区分するとともに、前記第1の領域には前記第1の地図を、前記第2の領域には前記第2の地図を、相互に同じ縮尺で、かつ、双方の地図の相互に対応する箇所同士が前記境界線で接するように表示させる制御手段と、
を前記コンピュータが実現することを特徴とする地図表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記境界線の位置を固定したまま、前記第1の地図と前記第2の地図を略同期してスクロール表示させることを特徴とする請求項1記載の地図表示装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記境界線で相互に隣接している前記第1の地図又は前記第2の地図のうち一方の地図に対しスクロール移動操作が行われた場合に、
前記スクロール移動操作後に、前記一方の地図のうち前記境界線で他方の地図と接する端辺の中心位置の緯度経度を第1の緯度経度として求め、
前記他方の地図において前記第1の緯度経度に対応するピクセル座標を求め、
前記他方の地図において前記ピクセル座標からその他方の地図側にその他方の地図における幅の半分移動した位置の緯度経度を第2の緯度経度として求め、
求めた前記第2の緯度経度の位置を前記他方の地図におけるスクロール移動操作後の新たな表示範囲の中心位置として、その地図に対応する前記第1の表示手段又は前記第2の表示手段に対して指定する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の地図表示装置。
【請求項4】
前記境界線に対応した位置にユーザの操作によりその境界線を移動させるための操作部品をグラフィック表示し、前記ユーザの操作に応じて前記境界線を平行移動させるとともに前記第1の地図及び前記第2の地図の各表示範囲を変更する境界線移動手段を前記コンピュータが実現することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の地図表示装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記境界線移動操作が行われた場合に、
境界線の移動前後における位置の差分を取得し、
取得した前記差分に基づいて前記第1の地図及び前記第2の地図における境界線移動後の新たな各横幅を計算し、
前記各横幅に基づいて、前記第1の地図及び前記第2の地図の各中心位置を計算し、
前記第1の地図及び前記第2の地図を、それぞれ計算された前記中心位置に移動するとともに前記横幅に変更して、前記第1の表示手段又は前記第2の表示手段に表示させる
ことを特徴とする請求項4記載の地図表示装置。
【請求項6】
第1の地図データを記憶している第1の記憶手段と、第2の地図データを記憶している第2の記憶手段と、を備えたサーバコンピュータが、通信ネットワーク経由でアクセスしてくるクライアント端末において表示装置で実現する所定の地図表示画面に地図を表示させる地図表示システム、を用いる地図表示方法において、
前記第1の地図データを用いて第1の地図を前記地図表示画面に表示する第1の表示処理と、
前記第2の地図データを用いて第2の地図を前記地図表示画面に表示する第2の表示処理と、
前記第1の表示処理及び前記第2の表示処理を制御することにより、前記地図表示画面を第1の領域と第2の領域に境界線で区分するとともに、前記第1の領域には前記第1の地図を、前記第2の領域には前記第2の地図を、相互に同じ縮尺で、かつ、双方の地図の相互に対応する箇所同士が前記境界線で接するように表示させる制御処理と、
を実行するウェブページデータを前記サーバコンピュータから前記クライアント端末へ送信することを特徴とする地図表示方法。
【請求項7】
第1の地図データを記憶している第1の記憶手段と、第2の地図データを記憶している第2の記憶手段と、を備えたコンピュータにおいて、表示装置で実現する所定の地図表示画面に地図を表示させる地図表示プログラムであって、
そのプログラムは前記コンピュータを制御することにより、
前記第1の地図データを用いて第1の地図を前記地図表示画面に表示する第1の表示手段と、
前記第2の地図データを用いて第2の地図を前記地図表示画面に表示する第2の表示手段と、
前記第1の表示手段及び前記第2の表示手段を制御することにより、前記地図表示画面を第1の領域と第2の領域に境界線で区分するとともに、前記第1の領域には前記第1の地図を、前記第2の領域には前記第2の地図を、相互に同じ縮尺で、かつ、双方の地図の相互に対応する箇所同士が前記境界線で接するように表示させる制御手段と、
を実現させることを特徴とする地図表示プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−2801(P2011−2801A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181536(P2009−181536)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(500257300)ヤフー株式会社 (1,128)
【Fターム(参考)】