説明

異なる放出プロフィールを有する活性物質ぺレット含有カプセル

本発明は少なくとも2つの異なる活性物質を有する異なる活性物質のペレットを含むカプセルに関するものであり、活性物質は消化管におけるその放出プロフィールに関して異なる。これらの活性物質はビタミン、ミネラル物質、微量元素、不飽和脂肪酸、アミノ酸並びに/又は植物抽出物及び物質からなる群より選ばれる。異なる放出プロフィールは素早い、中程度の及び/又はゆっくりとした活性物質ペレットの溶解によって表される。この制御放出は消化管における異なる吸収領域へ活性物質の目的指向型吸収をもたらす。本発明に従って調製される剤形は、非常に多くの利用可能な活性物質の場合でさえ、バイオアベイラビリティが高度に改善されることを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は少なくとも3つの異なる活性物質を含む活性物質のペレットを含むカプセルに関するものであり、活性物質は、例えばビタミン、ミネラル、微量元素、不飽和脂肪酸及びアミノ酸のような栄養素又は植物物質及び抽出物の中から選ばれる。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
活性物質は、それらが最も効率的に身体に吸収され得る場所に放出されるべきであることはよく知られた事実である。しかしながら、これはそれほど容易に実現しない。
中に含まれる薬を長期にわたって又は遅延後に放出するためにコーティングされ、それによっていわゆる徐放性効果を生じる製剤が知られている。これらの医薬組成物は活性物質の制御された又は変えられた放出をもつものと区別されなければならない。これらのうち後者の形態は、活性物質が特に遠い吸収部位に達しなければならない場合に特に使用される。活性物質の供給は投与される量のみならずバイオアベイラビリティによって決定される。各活性物質について、最適な放出又は吸収部位がある。消化管を通過する際の異なるpH値、温度などの結果として、本発明によって回避される喪失が生じることが想定される。これは、異なる活性物質を異なる吸収部位に与える場合に特に問題である。
【0003】
多くの活性物質成分を有する製剤の場合、活性物質の存在が互いに影響を及ぼす危険が存在し、その結果として、それらの活性は抑制又は阻害さえされ、このためその活性のスペクトルは低下し、又はそのポテンシャルは失われる。また、食品成分はある特定の活性成分の吸収を下げる場合がある。例えば、ホウレンソウのシュウ酸や全粒生成物におけるフィチン酸はカルシウムの吸収を抑制し得る。一方、吸収を高める場合もある。このように、ビタミンDの同時投与は小腸におけるカルシウムの吸収を高める。したがって、十分に活性物質を利用するためには、種々の個々の物質を摂取する複雑で、正確な時間順序を有する必要があり、複雑さ及び関連する時間のために、毎日使用することは考えられない。
したがって、従来技術において、上述の問題をどのように克服するかに関していくつかの提案がある。
WO 01/72286 A1は、医薬組成物が制御された速度で放出される、経口投与用のパール形態の治療製剤を提供する。パールは3つの層(遅延後に放出される薬を含む球状の押出内核、すぐに放出される薬を含む外層及び2つの層の間の中間層(内核の薬の放出をさらに制御することができる))からなる。したがって、いくつかの異なる放出速度が各別個のペレットに与えられた製剤が提案される。
【0004】
米国特許第3939259号の教示によれば、ゼインの分解性コーティングを有する粒子及び治療上の活性物質を含むシェラックからなる治療剤が記載され、放出は層の厚みを変えることによって制御されている。また、ビタミンを使用してもよい。
国際特許出願WO 98/19667には、腫瘍学的に活性な薬DFMOについて「徐放性」製剤が提案されている。
国際特許出願WO 00/69420には、ビタミンCが3つの放出カプセル内の、消化管においてマイクロカプセルの形態で放出されるビタミンCのための製剤が記載されている。
さらに、ドイツ実用新案DE20202984U1は、消化管において元素栄養素の時間遅延放出用のマルチチャンバーカプセルに関するものであり、前記カプセルは互いに内部に配置された又は互いに結合したいくつかのチャンバーからなる。個々のチャンバーは異なる活性物質(例えば、ビタミン、微量元素、ミネラル及びアミノ酸)を含む。このように、複雑な方法で互いに内部に入れ子になったカプセルが得られる。この技術的解決法は技術的に極めて複雑であるようにみえ、さらに複雑な構造要素のために製造が難しく、工業的用途で経済的に実施可能ではない。
欧州特許出願EP0820703には、脂肪親和性活性物質が素早く放出され(1時間未満で)、親水性物質がゆっくりと放出される(8時間かけて)製剤が記載されている。この欧州特許出願には特定の放出部位の記載はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、上述の複雑な構造に頼る必要がない、放出部位の点で、より多くの異なる活性物質の製剤及び制御放出が可能なシステムの供給は、まだ従来技術において未解決の問題である。
このように、本発明は活性物質、特に栄養素(例えば、ビタミン、ミネラル、微量元素、不飽和脂肪酸、アミノ酸又は植物抽出物及び物質)について改善されたバイオアベイラビリティを得る単純な製剤を提供することの問題に基づく。この製剤は放出プロフィールの点で柔軟性を与え、素早い及び遅延した放出はともに胃及び腸の対応する部分の吸収部位で制御される又は標的にされる方法で可能である。この製剤は容易に、かつ、経済的に生成すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の詳細な説明)
上述の問題は、本発明に従って、消化管におけるその放出プロフィールの点で異なる少なくとも3つの異なる活性物質を有する活性物質ペレットを含むカプセルによって解決され、前記活性物質はビタミン、ミネラル、微量元素、不飽和脂肪酸、アミノ酸、植物活性物質及び植物抽出物の中から選ばれる。多くの異なる放出速度が各別個のペレットにおいて達成されているWO 01/72286の開示とは異なり、本発明の特定の活性物質ペレットはただ1つの放出プロフィールを有する。放出プロフィールは活性物質のペレットを速く、中程度に及び/又はゆっくりと溶解する性質であってもよ。このように、多くの異なるペレットを含むカプセルが提供され、それぞれは異なる放出プロフィールを有する。したがって、その中に含まれる活性物質は、消化管においてそれらが最も効果的に吸収される場所で制御された方法で放出される。
【0007】
このように、本発明は消化管におけるその放出プロフィールの異なる活性物質ペレットを含むカプセルに関するものであり、これらのペレットはビタミン、ミネラル、微量元素、不飽和脂肪酸、アミノ酸並びに/又は植物抽出物及び物質の中から選ばれる少なくとも2つの異なる活性物質を含み、それぞれ同じ放出プロフィールを有する少なくとも3つのグループのペレットが存在し、特定の活性物質の放出は、消化管の全吸収領域に渡って(グループI)、十二指腸のみ若しくは十二指腸と空腸のみ(グループII)、又は空腸のみ、空腸と回腸のみ若しくは回腸のみ(グループIII)で生じる。
異なる放出プロフィールは活性物質ペレットの組成及び/又は構造によって調整されてもよい。おそらく、特定の放出プロフィールは、ペレットについて異なるコーティングを用いて、例えばコーティングの厚みを変えることによって及び/又は例えばpH制御放出を利用するために、コーティングの組成の選択によって達成される。薬理学及び技術で共通して使用される典型的なコーティングはフィルム及び糖衣である。遅延放出性のコーティング(遅延放出性錠剤)は、例えば拡散コーティング又は水溶性コーティング(例えば、腸で溶けやすいコーティング、すなわち胃液に対して実質的に耐性であるが、その腸の通過の際に溶解する)である。適したコーティングの例としては、シェラック、ゼイン、ゼラチン、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、エチルセルロース、ステアリン酸、カルナバワックス、ベヘン酸グリセロール、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルのポリマー、例えばEudragit(商標)コーティング材料などが挙げられる。
【0008】
個々の場合に、ゼイン及びシェラックのコーティングが使用されない場合が有利であり得る。生薬学におけるコーティング技術は当業者の技術力の範囲内であり、したがってさらなる詳細な説明は不要である。
したがって、本発明は、遅延及び部位制御放出に従うペレットに含まれる活性物質を選ぶことを可能にする。例えば、多くのペレットは同じ放出プロフィールを有してもよく、それによって速い、中程度の及び/又はゆっくりとした放出プロフィールを有するペレットの1つ又は2つ以上グループが存在する。また、全消化管又は全小腸で活性物質を放出する可能性があり、すなわち即時の、素早い発生及びまた時間遅延放出であってもよい。したがって、速い、中程度の及び/又はゆっくりとした放出の上記変化は代替としてだけでなく、互いに同時に理解されるべきであり、いくつかの活性物質を使用する場合、多くの放出プロフィールを有することが可能であり、所望される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の「ペレット」という用語は、経口投与用の全ての可能な製剤(例えば、押出材料、錠剤、粒子、パール、顆粒、被覆錠剤など)を意味するものであり、そのサイズのために、ペレットは、それらを含むカプセルのサイズによる嚥下における望まれない問題を生じることなしにカプセルにおいて投与される。好ましくは、ペレットは押出活性物質及び賦形剤である。
本発明のカプセルは、それに含まれる活性物質ペレットの放出のために、及びそれらにその対応する放出プロフィールを与えるために、消化管における所望の放出部位で必要な程度溶解される中性キャリア媒体としてのみ機能する。硬及び軟カプセルの両方を使用してもよく、後者が好ましい。
好ましくは、本発明のカプセルは少なくとも1つのビタミン、特に少なくとも2つのビタミン、最も好ましくは2〜10のビタミンを含む。
【0010】
本発明を説明するために、一例として、活性物質はビタミン及びミネラルの中から選ばれる。他の可能な成分は微量元素、不飽和脂肪酸、アミノ酸並びに/又は植物物質及び抽出物に由来する。ビタミンのうち、水溶性及び脂溶性ビタミンの両方を用いてもよい。適したビタミンとしては、水溶性ビタミン(例えば、ビタミンC(例えば、L−(+)−アスコルビン酸、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸カリウム、6−パルミトイル−L−アスコルビン酸)、ビタミンB1(例えば、チアミン塩酸塩、チアミンモノニトラート)、ビタミンB2(例えば、リボフラビン、リボフラビン−5’−ホスファートナトリウム)、ビタミンB6(例えば、ピリドキシン塩酸塩)、ビタミンB12(例えば、シアノコバラミン)、ビタミンH(例えば、D−ビオチン)、葉酸、ビタミンPP(ナイアシン)(例えば、ニコチンアミド、ニコチン酸)、プロ−ビタミンB5(例えば、パンテノール(D及びDL形)、エチルパンテノール及びカルシウム−D−パントテナートである。適した脂溶性ビタミンは、例えばビタミンA(例えば、ビタミンA−パルミタート、ビタミンA−アセタート、ビタミンA−プロピナート、trans-レチノール)、ビタミンD(例えば、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、コレカルシフェロール−コレステロール)、ビタミンE(例えば、alpha-トコフェロール、alpha-トコフェリルアセタート、alpha-トコフェリル酸スクシナート(D及びDL形)、ビタミンK(例えば、ビタミン K1(例えば、フィトメナジオン))、及びカロテノイド(プロビタミン)(例えば、リコペン、ゼアキサンチン、ルテイン、alpha-カロテン、beta-カロテン、アポカロチナール、gamma-カロテン及びbeta-クリプトキサンチン)である。リボフラビンは、好ましくは塩の形態(例えば、リボフラビンホスファートとして)で使用される(塩の形態は安定性が優れている)。
【0011】
好ましくは、本発明のカプセルは20〜150、特に40〜120、最も好ましくは約100mgのビタミンC、0.5〜2.0、特に0.8〜1.5、最も好ましくは約1.1mgのビタミンB1、0.8〜2.5、特に1.0〜2.0、最も好ましくは約1.2mgのビタミンB2、0.8〜2.5、特に1.0〜2.0、最も好ましくは約1.5mgのビタミンB6、0.8〜5.0、特に1.2〜3.5、最も好ましくは約3.0μgのビタミンB12、5〜200、特に10〜100、最も好ましくは約50μgのD−ビオチン、50〜600、特に100〜500、最も好ましくは約400μgの葉酸、5.0〜50.0、特に10〜30、最も好ましくは約16mgのビタミンPP(ナイアシン)、1.0〜50.0、特に2〜20、最も好ましくは約6mgのパンテノール、300〜1300、特に500〜1000、最も好ましくは約800μgのビタミンA、0〜20、特に2.5〜15.0、最も好ましくは約5μgのビタミンD、0.1〜300.0、特に5.0〜15.0、最も好ましくは約12mgのビタミンE、及び10〜200、特に25〜150、最も好ましくは約75μgのビタミンKを含む。
【0012】
本発明の特に好ましい実施態様によれば、活性物質又は栄養素を3つのグループに分けてもよい。すなわち、消化管の全吸収領域に渡って放出される活性物質(グループI)、十二指腸又は十二指腸と空腸において放出される活性物質(グループII)及び空腸、空腸と回腸又は回腸において放出される活性物質(グループIII)。選択された活性物質について最適な吸収部位を表すこの分類によれば、特定の活性物質は、所望の吸収部位まで活性物質を運ぶために適切な放出プロフィールを有するペレットに好都合に割り当てられる。
この原理を、例としてビタミンを用いて説明うる。グループIのビタミンは、例えばナイアシン、パントテン酸、ビタミンD及びビオチンから選ばれ、グループIIのビタミンはビタミンA、リボフラビン、チアミン及び葉酸から選ばれ、グループIIIのビタミンはビタミンB6、ビタミンC及びビタミンKから選ばれる。言うまでもなく、これは完全なリストではなく単に説明として機能する。他の例については、当業者は精通している。
【0013】
本発明のこの変形によれば、各活性物質ペレットはグループI、II又はIIIの1つ又は2つ以上のビタミンを含む。しかしながら、また組合せも提供されてもよい。グループIのビタミンは全領域に渡って放出及び吸収されるように意図されるために、2つのタイプの活性物質ペレット、グループI及びIIのビタミンを含む1つのタイプとグループI及びIIIのビタミンを含むもう1つのタイプが存在することも可能である。このように、領域全体で放出されるビタミンは、より直接的、すなわち素早い放出プロフィールを有するペレットとより間接的及び/又はゆっくりとした放出プロフィールを有するペレットの両方にある。
「素早い」放出は、ビタミンの所望の血漿濃度が相対的に短い時間、例えば投与後約0.5〜1時間で、又は投与後胃を通過して小腸で吸収される活性物質の場合には、実質的に、ペレットの全ビタミン含量が同時に放出されて達成されることを意味する。放出及び吸収は主に胃又は小腸の上部で起こるが、事前に食べた食事の量及び性質並びに最後の食事を食べた時の時間もこの点に関して重要である。したがって、「速い」、「中程度の」及び「ゆっくりとした」放出という用語は相対的な期間であり、任意の絶対値を表すことなくパラメータとして機能する。
例えば、ビタミンのような活性物質の所望の放出プロフィールへの割り当ては、次いで放出が起こる吸収部位を決定し、それは大きな配慮がここで行われる必要があることを意味する。間違った放出部位は、明らかに活性物質の活性の可能性を相当下げる。
【0014】
また、本発明は、以下を含む本発明のカプセルを調製する方法に関するものである。
- それぞれの吸収部位に基づいて、例えばビタミン、ミネラル、微量元素、不飽和脂肪酸、アミノ酸又は植物物質若しくは抽出物の形態の活性物質を選ぶこと、
- それぞれの吸収部位について異なる放出プロフィールを有する活性物質ペレットのいくつかのグループを生成し、その放出プロフィール及び吸収部位に従って活性物質ペレットのグループの間で分けられるビタミンと必要により他の活性物質を混合すること、及び
- 活性物質ペレットをカプセルに導入すること。
1つ又は2つ以上の活性物質の形態において活性物質は、好ましくは約0.001〜約99重量%の量で本発明の活性物質ペレットに含まれる。
本発明のカプセルに含まれる活性物質ペレットは上述のビタミンに加えて他の活性物質(例えば、ミネラル、微量元素、植物抽出物、アミノ酸及び不飽和脂肪酸)を含んでもよい。
【0015】
ミネラルの例としては、カルシウム(例えば、リン酸水素カルシウム、クエン酸カルシウム)、マグネシウム(例えば、炭酸マグネシウム、乳酸マグネシウム)、カリウム(例えば、塩化カリウム、硫酸カリウム)、リン(例えば、リン酸カルシウム)及び塩素(例えば、塩化カリウム、塩化マグネシウム)などが挙げられる。適した微量元素は無機及び有機塩の両方であってもよい。例としては、鉄(例えば、フマル酸鉄、クエン酸鉄、乳酸鉄)、亜鉛(例えば、乳酸亜鉛、クエン酸亜鉛、酸化亜鉛)、ヨウ素(例えば、ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ化カリウム)、銅(例えば、グルコン酸銅、硫酸銅)、マンガン(例えば、クエン酸マンガン、硫酸マンガン)、モリブデン(例えば、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸アンモニウム)、セレン(例えば、セレン酸ナトリウム、亜セレン酸ナトリウム)、クロム(例えば、塩化クロム、クエン酸クロム)、ケイ酸塩(例えば、二酸化珪素、ケイ酸ナトリウム)及びフッ素(例えば、フッ化ナトリウム)などが挙げられる。本発明によれば、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、セレン、リン及びヨウ素、これらの塩並びにこれらの混合物がミネラル及び微量元素として特に好ましい。
好ましくは、本発明のカプセルは、特定の量で以下のミネラルの1つ又は2つ以上を含む1つ又は2つ以上のミネラルペレットを含む。
100〜2500、特に500〜1200、最も好ましくは約1000mgのカルシウム、50〜1000、特に100〜600、最も好ましくは約375mgのマグネシウム、500〜5000、特に1500〜3000、最も好ましくは約2000mgのカリウム、100〜2000、特に300〜1500、最も好ましくは約700mgのリン、500〜7500、特に750〜5000、最も好ましくは約800mgの塩化物、0.5〜50、特に1.0〜20、最も好ましくは約2.0mgのマンガン、5.0〜50、特に7.5〜25、最も好ましくは約5.0mgの鉄、1.0〜50、特に2.5〜20、最も好ましくは約5.0mgの亜鉛、10〜500、特に100〜200、最も好ましくは約150μgヨウ素、0.1〜5.0、特に0.5〜5.0、最も好ましくは約1.0mgの銅、0.5〜15.0、特に1.0〜12.5、最も好ましくは約2.0mgのマンガン、10〜500、特に20〜450、最も好ましくは約50μgのモリブデン、5〜250、特に10〜200、最も好ましくは約55μgのセレン、5〜200、特に10〜150、最も好ましくは約40μgのクロム及び0.5〜15.0、特に1.0〜10.0、最も好ましくは約3.5mgのフッ化物。
【0016】
使用してもよい植物抽出物は、好ましくはイチョウ、チョウセンニンジン、ブドウ、すなわちブドウの葉及びまたブドウの種、ガラナ、ブラックコホシュ並びにダミアナ、すなわちダミアナの葉又はケンペロール若しくはケンペロールグルコシドに富む及び/若しくはルテイン若しくは他のフラボノイドに富む特定の植物抽出物から選ばれる。所望の用途に応じて、アミノ酸を加えてもよく、中でもリジン、アルギニン及びタウリンは特に好ましい。ω-脂肪酸、特にDHAのような不飽和脂肪酸も存在していてもよい。
本発明のカプセルに含まれる活性物質ペレットは、例えば多くの活性物質ペレットの間で分けられる又は1つの活性物質ペレットに含まれる栄養素の通常の1回の投与量が推奨される日用量の約10〜300%の範囲、好ましくは約100%であるように構成される。存在するミネラル及び微量元素の追加の量は、好ましくは推奨される日用量の約1〜100%の範囲である。
本発明の活性物質ペレットは、可塑剤、例えばグリセロール、ポリエチレングリコール、ヒマシ油及びアセチル化モノグリセリド、pH調整剤、例えばリン酸水素カリウム、充填剤、例えば炭酸カルシウム、結合剤、例えば微結晶性セルロース、安定剤、潤滑剤、崩壊剤、分解剤、着色剤などのような他の賦形剤を含んでもよい。
【0017】
本発明に関連した利点は多い。異なる放出特性を有する多くの錠剤を投与する必要がない。これは、種々の活性物質を使用する多成分製剤において、より重要である。例えば、食品サプリメントとして与えられる総合ビタミン製剤は素早い放出を意図した10種のビタミン、5種のミネラル及び12種の微量元素並びによりゆっくりと放出されるように意図される等しい数の活性物質を含む場合がある。これは、異なる放出特性をもつ54種の異なる活性物質を含み、仮に消費者がそれら全てを個々に摂取しなければならなかった場合、消費者は非常に困るであろう。
したがって、異なるビタミン及び他の活性物質又は栄養素を含む、本発明の多成分カプセルを摂取することは、消費者又は患者にとって非常に便利であり、快適であり、日用量は1つのカプセル又は少ないカプセルに減る。さらに、活性物質は実際お互いに影響しないで実質的に吸収される。中に含まれる活性物質、特にビタミン及び他の栄養素並びに植物抽出物及び物質は、それらが最も効率よく、すなわちそのバイオアベイラビリティが著しく改善される点で消化管において放出される。異なる活性物質の制御放出の結果として、投与量はかなり正確に調整でき、それによって活性物質の量を減少、すなわち最適化し、過剰摂取を防止する。本発明の制御放出のために、各活性物質を所望の吸収部位に運ぶことができ、その活性の最適なスペクトルをもたらす。
【0018】
さらに、互いに分離されているので、通常互いに配合できない活性物質も一緒に投与できる。例えば、いくつかの微量元素及びミネラルはいくつかの脂溶性ビタミンと配合できない。本発明によれば、これらは一緒に投与することができる。
したがって、本発明は、非常に多くの活性物質が存在する場合であっても、各個々の活性物質について最適なバイオアベイラビリティを得る新規製剤を提供する。
【0019】
(図面の説明)
添付図面は、それに限定することなく本発明の教示を説明する。具体的には、以下を示す。
図1:WO 01/72286の従来技術からの製剤の略図;
図2:本発明のカプセルの発明実施態様の略図;
図3:小腸の異なる部分における選択されたビタミンの吸収;
図4:従来技術からのカプセルの4つの実施態様及び本発明のカプセルの2つの実施態様;及び
図5:本発明のカプセル用ペレットの3つの異なる実施態様。
図1は、WO 01/72286の製剤を断面で図式的に示し、それにおける各個々のペットは異なる放出速度を有する層を有する。図は、ゆっくりとした放出速度のコア1.1、素早い放出速度の外層1.3及び中間層1.2を示す。このように、これは、多くの異なる放出速度が各個々のペレットにおいて達成される製剤である。
図2は、本発明のカプセルの実施態様を示す。異なるシンボルは、それぞれ異なる放出プロフィールを有する活性物質ペレットの3つの異なるグループを示すために使用される。このように、参照数字2.1の五角形はゆっくりとした放出速度のペレットであり、2.2のキューブは中程度の放出速度のペレットであり、2.3の円は素早い放出速度のペレットである。3つのグループの異なる活性物質ペレットは3つの異なる吸収部位まで運ばれ、中に含まれる活性物質はそこで放出され、吸収され、その活性の最適なスペクトルを生成することができる。
【0020】
図3は、小腸の領域における選択されたビタミンについての最適な吸収部位又は領域を示す。例えば、ナイアシン、パントテン酸及びビオチンは全領域にわたって利用可能であることが分かったので、それらを先に説明した本発明のグループIに分類する。したがって、ビタミンC、チアミン、葉酸及びビタミンA(十二指腸及び空腸で吸収される)はグループIIに分類され得る。グループIIIのビタミン(空腸及び回腸で主として吸収される)は本明細書に示されるビタミンB6、リボフラビン、ビタミンD、ビタミンB12及びビタミンKである。ビタミンB6の場合、最適な吸収領域は実際に空腸及び回腸であるが、十二指腸に及んでもよい(すなわち、中間領域に及んでもよい)ことが分かった。これは、放出プロフィールにおいて考慮に入れられ得る。
図2に示される活性物質ペレット1は、したがって1つ又は2つ以上のグループIのビタミンを含んでもよく、活性物質ペレット2は1つ又は2つ以上のグループIIのビタミンを含んでもよく、活性物質ペレット3は1つ又は2つ以上のグループIIIのビタミンを含んでもよく、必要によりミネラル及び微量元素並びに他の賦形剤と一緒に含んでもよい。また、図2に示される活性物質ペレット1は、グループI及びIIのビタミンを1つ又は2つ以上含んでもよく、活性物質ペレット2は、グループI及びIIIのビタミンを1つ又は2つ以上含んでもよい。特に、さらに活性物質及び栄養素(ミネラル、アミノ酸、不飽和脂肪酸)並びに植物抽出物及び物質が存在する場合には、多くの変形及び組合せが可能である。
【0021】
図4は従来技術から公知の4つの実施態様を示し、これは使用される特定の製剤のために相当する長期にわたる効果を示す。一番上に示されるカプセル、ファーマトン(Pharmaton)(商標)バイタル(Vital)カプセル、チョウセンニンジンを含む総合ビタミン剤/ミネラル製剤、及び示される2番目のカプセル、徐放性「Perlongette」カプセルの形態の循環薬エホチール(Effortil)(商標)において(いずれもMessrs Boehringer Ingelheim GmbHから得ることができる)、長期にわたる効果は、カプセルの相当する外部コーティングを与えることによって達成される。一方、示される2番目及び3番目のカプセル、ビタミンC製剤ツェテベ(Cetebe)(商標)及びエウノバ(Eunove)(商標)総合ビタミン剤カプセルにおいて(いずれもGlaxoSmithKline Consumer Healthcare GmbH & Co. KGから得ることができる)、例えばWO 01/72286に記載されるように(図1も参照のこと)、持続性又は長期にわたる効果を得るために、多層ペレットが使用される。
さらに、図4は、1つのカプセル中に異なる放出プロフィールを有する異なる活性物質ペレットを示す本発明のカプセルの2つの実施態様を示す。カプセルIは、活性物質ペレットの2つのグループを示し、カプセルIIは異なる放出プロフィールを有する活性物質ペレットの3つのグループを示す。したがって、放出プロフィールは異なるグループにおいて時間遅延される。所望の吸収部位を目標とした制御放出のために、各個々の活性物質の最適な吸収がもたらされる最適な投薬量を達成できる。
以下の実施例は本発明の製剤を説明するために与えられる。それらは、その内容に本発明を限定することなく一例として記載される可能な手順として単に意図される。
【実施例】
【0022】
(実施例)
GITの通過のために、最近の文献(Dressman、2003)では、以下の通過時間及びpH値を仮定している。

これらの生理学的事実及びそれらの仮定(「小腸におけるビタミンの吸収」)の観点から、ペレットの3つのタイプに成分を分けることを提案する。
【0023】
(ペレット1:ミネラルペレット)
安定性の理由で、ミネラルをビタミンから分離することが有利である。前記ペレットの略図を図5aに示す。ミネラル含有ペレットコア5.1を押し出しにより調製し、必要によりシェラックの着色保護フィルム5.2が与えられる。コーティングは機能的ではない。必要に応じて、ペレットは、シェラックコーティングの厚みを増加させることによって胃液に対する耐性を作られてもよい。
【0024】
(ペレットタイプ2:ビタミンペレットグループI+II)
このペレットグループの略図を図5bに示す。活性物質グループ(この場合、例えばビタミングループ)I及びII(例えば、ナイアシン、ビタミンA、チアミン、葉酸など)は、小腸の全領域で、又は好ましくは空腸の範囲で放出されるべきである。これは、胃液耐性(GJR)であるフィルムコーティング5.4を必要とし、これは1〜2時間酸がペレットコア5.3に浸透しないようにし、一旦十二指腸に達すると、ビタミンを溶解及び放出し始める。例えば、ビタミングループI及びIIは以下の組成を有する。

ペレットコアは押し出しによっても調製され、次いでシェラックでコートされてそれを胃液に対して耐性にする。放出特性は相当する薬局方モノグラフに従って試験される。
【0025】
(ペレットタイプ3:ビタミンペレットグループIII)
このペレットグループの略図を図5bに示す。タイプ3のペレットは、空腸又はそれ以降において最も早くその含有量を放出することを目的とする。これは、GJRコーティング5.7の下の遅延膜5.6の使用を必要とし、これは活性物質の放出の開始を遅らせ、活性物質の実際の放出をも遅らせる。それは、ステアリン酸、カルナバワックス、グリセロールベヘナートなどのような物質から作られてもよい。ペレットコア5.5は、押し出しによっても生成され、例えば以下の組成を有してもよい。

あるいは、これらの脂肪親和性添加剤を有するマトリックスを生成することも可能であり、又は簡単にGJRコーティングのフィルム厚を増加させることも可能である。放出特性はまた調整され、EuAB又はUSPに従って試験される。
【0026】
(ペレットの混合及びカプセル充填)
得られた3つの異なるペレットの着色タイプを一緒に混合し、サイズ0又は0el硬ゼラチンカプセル(又は2×サイズ1)に充填する。
ビタミン及びミネラルの正確な定性及び定量組成は、特別な必要性又は要求に柔軟に適合させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】WO 01/72286の従来技術からの製剤の略図である。
【図2】本発明のカプセルの発明実施態様の略図である。
【図3】小腸の異なる部分における選択されたビタミンの吸収を示す。
【図4】従来技術からのカプセルの4つの実施態様及び本発明のカプセルの2つの実施態様である。
【図5】本発明のカプセル用ペレットの3つの異なる実施態様である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消化管におけるその放出プロフィールの点で異なる活性物質ペレットを含むカプセルであって、これらのペレットはビタミン、ミネラル、微量元素、不飽和脂肪酸、アミノ酸並びに/又は植物抽出物及び物質の中から選ばれる少なくとも2つの異なる活性物質を含み、それぞれ同じ放出プロフィールを有する少なくとも3つのグループのペレットが含まれ、個々の活性物質の放出が消化管の(グループI)、十二指腸又は十二指腸と空腸の(グループII)、又は空腸、空腸と回腸又は回腸の(グループIII)全吸収領域に渡って生じる前記カプセル。
【請求項2】
異なる放出プロフィールが活性物質ペレットの素早い、中程度の及び/又はゆっくりとした溶解を示す、請求項1記載のカプセル。
【請求項3】
活性物質ペレットがコートされ、このコーティングの厚さ及び/又は組成が異なる放出プロフィールを決定する、請求項1又は請求項2記載のカプセル。
【請求項4】
各ペレットが選ばれた放出プロフィールを有し、それに含まれるビタミン、ミネラル、微量元素、不飽和脂肪酸、アミノ酸並びに/又は植物抽出物及び物質が放出プロフィールに従って選ばれる、請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のカプセル。
【請求項5】
グループIのビタミンがナイアシン、パントテン酸、ビオチン及びビタミンDから選ばれる、請求項1〜請求項4のいずれか1項記載のカプセル。
【請求項6】
グループIIのビタミンがビタミンA、チアミン、ビタミンB2及び葉酸から選ばれる、請求項1〜請求項5のいずれか1項記載のカプセル。
【請求項7】
グループIIIのビタミンがビタミンB6、ビタミンC及び及びビタミンKから選ばれる、請求項1〜請求項6のいずれか1項記載のカプセル。
【請求項8】
各活性物質ペレットがグループI、II若しくはIIIのビタミン及び/又はミネラル及び/又は微量元素及び/又はアミノ酸及び/又は不飽和脂肪酸及び/又は植物抽出物/物質のいずれかを含む、請求項1〜請求項7のいずれか1項記載のカプセル。
【請求項9】
2つのタイプの活性物質ペレットが存在し、1つのタイプがグループI及びIIのビタミン、ミネラル、技量元素、不飽和脂肪酸、アミノ酸並びに/又は植物抽出物及び物質を含み、他のタイプがグループI及びIIIの物質を含む、請求項1〜請求項8のいずれか1項記載のカプセル。
【請求項10】
ミネラル及び微量元素がカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、カリウム、マンガン、セレン、クロム、フッ化物、リン及びヨウ素、これらの塩並びにこれらの混合物から選ばれる、請求項1〜請求項9のいずれか1項記載のカプセル。
【請求項11】
植物抽出物がイチョウ、チョウセンニンジン、ブドウ、ガラナ、ブラックコホシュ、ダミアナ、ケンペロール又はケンペロールグルコシドに富む及び/若しくはルテイン又は他のフラボノイドに富む特殊植物抽出物から選ばれる、請求項1〜請求項10のいずれか1項記載のカプセル。
【請求項12】
アミノ酸がリジン、アルギニン及びタウリンから選ばれる、請求項1〜請求項11のいずれか1項記載のカプセル。
【請求項13】
不飽和脂肪酸がω-脂肪酸である、請求項1〜請求項12のいずれか1項記載のカプセル。
【請求項14】
以下を含む請求項1〜請求項13のいずれか1項記載のカプセルを調製する方法。
- それぞれの吸収部位に基づいて活性物質を選ぶこと、
- それぞれの吸収部位について異なる放出プロフィールを有する少なくとも3つグループの活性物質ペレットを生成し、その放出プロフィール及び吸収部位に従って活性物質ペレットのグループの間で分けられるビタミンと必要により他の活性物質とを混合すること、及び
- 活性物質ペレットをカプセルに導入すること。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【公表番号】特表2007−504189(P2007−504189A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525084(P2006−525084)
【出願日】平成16年8月28日(2004.8.28)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009617
【国際公開番号】WO2005/023229
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】