説明

異なる放出速度の構成要素を有するナノキャリア

本発明は、差次的に合成ナノキャリアから放出される、免疫調節薬および抗原を含んでなる、合成ナノキャリア組成物、および関連方法に関する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本明細書は、米国特許法第119条の下に、そのそれぞれの内容全体を参照によって本明細書に援用する、それぞれ2009年5月27日に出願された、米国仮特許出願第61/217129号、米国仮特許出願第61/217117号、米国仮特許出願第61/217124号、および米国仮特許出願第61/217116号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、差次的に合成ナノキャリアから放出される免疫調節薬および抗原を含んでなる合成ナノキャリア組成物と、関連方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的なワクチン接種ストラテジーとしては、アジュバント添加抗原の投与が挙げられる。しかしこれらの2種の薬剤間の生物学的相互作用、そしてそれらの送達の制御がどのように最適生体内効果を提供し得るかに関する情報が欠けている。最適生体内効果を可能にするアジュバント添加抗原を送達する新しい方法、ならびに関連組成物に対する必要性がある。
【0004】
本発明の態様は、合成ナノキャリアと共役している免疫調節薬、および合成ナノキャリアと共役した抗原を含んでなる合成ナノキャリアを含んでなる組成物に関し、免疫調節薬および抗原は以下の関係式に従って合成ナノキャリアから分離する。IA(rel)%/A(rel)%≧1.2;式中、IA(rel)%は、重量%として表され、合成ナノキャリアのサンプル全体を平均した、pH=4.5で24時間にわたる生体外水性環境に対する合成ナノキャリアの曝露に際して放出される免疫調節薬の重量と、pH=4.5で24時間にわたる生体外水性環境に対する合成ナノキャリアの曝露に際して合成ナノキャリア中に保持される免疫調節薬の重量との和によって除した、pH=4.5で24時間にわたる生体外水性環境に対する合成ナノキャリアの曝露に際して放出される免疫調節薬の重量と定義され、A(rel)%は、重量%として表され、合成ナノキャリアのサンプル全体を平均した、pH=4.5で24時間にわたる生体外水性環境に対する合成ナノキャリアの曝露に際して放出される抗原の重量と、pH=4.5で24時間にわたる生体外水性環境に対する合成ナノキャリアの曝露に際して合成ナノキャリア中に保持される抗体の重量との和によって除した、pH=4.5で24時間にわたる生体外水性環境に対する合成ナノキャリアの曝露に際して放出される抗原の重量と定義される。
【0005】
いくつかの実施形態では、免疫調節薬は、共役部分を通じて合成ナノキャリア免疫調節薬と共役している。特定の実施形態では、免疫調節薬は、合成ナノキャリアと共有結合的に共役している。いくつかの実施形態では、免疫調節薬は、合成ナノキャリア中にカプセル化される。特定の実施形態では、抗原は抗原共役部分を通じて合成ナノキャリアと共役している。いくつかの実施形態では、抗原は合成ナノキャリアと共有結合的に共役している。特定の実施形態では、抗原は合成ナノキャリア中にカプセル化される。
【0006】
いくつかの実施形態では、抗原はB細胞抗原である。特定の実施形態では、B細胞抗原は感染性因子に由来する抗原である。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は免疫原性に劣る抗原である。特定の実施形態では、B細胞抗原は乱用物質またはその一部、あるいは常習性薬物またはその一部である。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は毒素または有害な環境因子である。特定の実施形態では、B細胞抗原はアレルゲン、変性疾患抗原、がん抗原、アトピー性疾患抗原、または代謝疾患抗原である。
【0007】
いくつかの実施形態では、抗原はT細胞抗原である。特定の実施形態では、T細胞抗原はMHCクラスI抗原である。いくつかの実施形態では、免疫調節薬はアジュバントである。いくつかの実施形態では、アジュバントは、TLR3作動薬、TLR7作動薬、TLR8作動薬、TLR7/8作動薬、またはTLR9作動薬などのToll様受容体(TLR)作動薬を含んでなる。いくつかの実施形態では、TLR作動薬はイミダゾキノリンである。特定の実施形態では、イミダゾキノリンはレシキモドまたはイミキモドである。いくつかの実施形態では、TLR作動薬は、免疫賦活性DNAまたは免疫賦活性RNAなどの免疫賦活性核酸である。特定の実施形態では、免疫賦活性核酸はCpG含有免疫賦活性核酸である。
【0008】
いくつかの実施形態では、アジュバントは普遍的T細胞抗原を含んでなる。特定の実施形態では、合成ナノキャリアは1つ以上の生分解性ポリマーを含んでなる。いくつかの実施形態では、免疫調節薬は免疫調節薬共役部分を通じて1つ以上の生分解性ポリマーと共役している。特定の実施形態では、免疫調節薬は1つ以上の生分解性ポリマーと共有結合的に共役している。いくつかの実施形態では、免疫調節薬共役部分はアミド結合を含んでなる。特定の実施形態では、免疫調節薬共役部分はエステル結合を含んでなる。いくつかの実施形態では、免疫調節薬は静電結合を含んでなる。
【0009】
いくつかの実施形態では、生分解性ポリマーは、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、またはポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を含んでなる。特定の実施形態では、生分解性ポリマーはゲル透過クロマトグラフィーを使用した測定で、800ダルトン〜10,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは抗原提示細胞(APC)標的特性をさらに含んでなる。
【0010】
いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは、脂質ベースナノ粒子、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性剤ベースエマルジョン、デンドリマー、バッキーボール、ナノワイヤ、ウィルス様粒子、ペプチドもしくはタンパク質ベース粒子、ナノ材料の組み合わせを含んでなるナノ粒子、球状ナノ粒子、立方体ナノ粒子、錐体のナノ粒子、長円形ナノ粒子、円柱状ナノ粒子、またはドーナツ型ナノ粒子を含んでなる。特定の実施形態では、本発明と関係がある組成物は、薬学的に許容できる賦形剤をさらに含んでなる。
【0011】
本発明のさらなる態様は、本発明と関係がある組成物のいずれかを含んでなるワクチンを含んでなる組成物に関する。
【0012】
本発明のさらなる態様は、本発明と関係がある組成物のいずれかを対象に投与するステップを含んでなる方法に関連する。いくつかの実施形態では、組成物は免疫応答を誘発するか、または増強するのに効果的な量である。いくつかの実施形態では、対象はがん、感染症、非自己免疫性代謝障害、変性疾患、または依存症を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ニコチン抗原およびアジュバントを有して24時間目に抗原でなくアジュバントを検出可能に放出する合成ナノキャリアによって、ニコチン特異的抗体が誘発されたことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
具体的に例証される材料または方法パラメーターはもちろん変動してもよいので、本発明を詳細に説明する前に、本発明がこれらに限定されるものではないことを理解すべきである。また本明細書で使用される用語法は、本発明の特定の実施形態について述べることのみを目的とし、本発明に記載される用語法の代案の使用を制限することは、意図されないこともまた理解すべきである。
【0015】
本明細書に引用される全ての出版物、特許、および特許出願は、前出または後述に関わらず、あらゆる目的のためにその内容全体を参照によってここに援用する。
【0016】
本明細書および添付の特許請求範囲の用法では、単数形「a」、「an」、および「the」は、別段の明確な指示がない限り複数の指示対象を含む。例えば「a polymer(ポリマー)」への言及は、2つ以上のこのような分子の混合物を含み、「a solvent(溶剤)」への言及は、2つ以上のこのような溶剤の混合物を含み、「an adhesive(接着剤)」への言及は、2つ以上のこのような材料の混合物を含む。
【0017】
序論
本発明は、抗原に対する免疫応答をより最適に誘発する免疫調節薬を伴う抗原を送達する方法を提供することから、有用である。提供される組成物および方法は、抗原に先だってまたはそれと同時に免疫調節薬を放出させる。このような放出は、強力な長期の免疫応答を提供し得るので、予防的なおよび治療目的のワクチンの使用において特に興味深い。抗原は実施形態によっては、それらが合成ナノキャリア表面に存在するように、ナノキャリア中にカプセル化されるように、または双方であるように、合成ナノキャリアと共役し得る。実施形態では、免疫調節薬は抗原に対する免疫応答を増強する。
【0018】
本発明者らは、意外にもそして驚いたことに、本明細書で開示される本発明を実施することにより、上記の問題および制限を克服し得ることを発見した。具体的には本発明者らは、(a)合成ナノキャリアと共役している免疫調節薬、および(b)合成ナノキャリアと共役している抗原を含んでなる、組成物および関連方法を提供することが可能であることを意外にも発見し、免疫調節薬および抗体は、以下の関係式に従って合成ナノキャリアから分離する。
IA(rel)%/A(rel)%≧1.2
式中、IA(rel)%は、重量%として表され、合成ナノキャリアのサンプル全体を平均した、pH=4.5でt時間にわたる生体外水性環境に対する合成ナノキャリアの曝露に際して放出される免疫調節薬の重量と、pH=4.5でt時間にわたる生体外水性環境に対する合成ナノキャリアの曝露に際して合成ナノキャリア中に保持される免疫調節薬の重量との和によって除した、pH=4.5でt時間にわたる生体外水性環境に対する合成ナノキャリアの曝露に際して放出される免疫調節薬の重量と定義され、A(rel)%は、重量%として表され、合成ナノキャリアのサンプル全体を平均した、pH=4.5でt時間にわたる生体外水性環境に対する合成ナノキャリアの曝露に際して放出される抗体の重量と、pH=4.5でt時間にわたる生体外水性環境に対する合成ナノキャリアの曝露に際して合成ナノキャリア中に保持される抗体の重量との和によって除した、pH=4.5でt時間にわたる生体外水性環境に対する合成ナノキャリアの曝露に際して放出される抗体の重量と定義され、式中、tは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、18、24、30、36、42または48時間である。好ましい実施例では、tは、12、24、または48時間である。
【0019】
実施形態では、免疫調節薬および抗原は、以下の関係式に従って合成ナノキャリアから分離する。IA(rel)%/A(rel)%≧1.3、IA(rel)%/A(rel)%≧1.4、IA(rel)%/A(rel)%≧1.5、IA(rel)%/A(rel)%≧1.6、IA(rel)%/A(rel)%≧1.7、IA(rel)%/A(rel)%≧1.8、IA(rel)%/A(rel)%≧1.9、IA(rel)%/A(rel)%≧2、IA(rel)%/A(rel)%≧2.5、IA(rel)%/A(rel)%≧3、IA(rel)%/A(rel)%≧3.5、IA(rel)%/A(rel)%≧4、IA(rel)%/A(rel)%≧4.5、IA(rel)%/A(rel)%≧5、IA(rel)%/A(rel)%≧6、IA(rel)%/A(rel)%≧7、IA(rel)%/A(rel)%≧8、IA(rel)%/A(rel)%≧9、IA(rel)%/A(rel)%≧10、IA(rel)%/A(rel)%≧15、IA(rel)%/A(rel)%≧20、IA(rel)%/A(rel)%≧25、IA(rel)%/A(rel)%≧30、IA(rel)%/A(rel)%≧40、IA(rel)%/A(rel)%≧50、IA(rel)%/A(rel)%≧75、またはIA(rel)%/A(rel)%≧100、式中、IA(rel)%、A(rel)%、およびtは上で定義されるとおりである。
【0020】
いくつかの実施形態では、組成物、および関連方法は、(a)合成ナノキャリアと共役している免疫調節薬と、(b)合成ナノキャリアと共役している抗原とを含んでなる合成ナノキャリアを含んでなり、免疫調節薬の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、17%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%または90%が放出されるのに対し、抗原は検出可能に放出されない。これらの実施形態では、%放出は100×(合成ナノキャリアのサンプル全体を平均した、pH=4.5でt時間にわたる生体外水性環境に対する合成ナノキャリアの曝露に際して放出される免疫調節薬の重量と、pH=4.5でt時間にわたる生体外水性環境に対する合成ナノキャリアの曝露に際して合成ナノキャリア中に保持される免疫調節薬の重量との和によって除した、pH=4.5でt時間にわたる生体外水性環境に対する合成ナノキャリアの曝露に際して放出される免疫調節薬の重量)である。これらの実施形態では、tは上で定義されるとおりである。好ましい実施形態では、tは、12、24、または48時間である。
【0021】
特に本発明者らは、免疫細胞リソソームが、細胞によってエンドサイトーシスされた後、24〜48時間以内に「消化」されない粒子状物質を含有すると、それらの性格が変化することに気付いた。典型的に、ほとんどのエンドサイトーシスされた生物由来物質は、細胞代謝または細胞外廃棄で利用できるようなより小さな分子(アミノ酸、小型ペプチド、または核酸など)に消化される。しかし含有する粒子を24〜48時間以内に分解できないリソソームは、細胞によって修飾される。シグナル伝達受容体およびその他のシステムは失われて、リソソームは「行き止まり(dead end)」小胞に変換され、それはやがて細胞からの除去のために処理される。したがって免疫系細胞による粒子飲食作用に続いて、時間の制限枠がある。合成ナノキャリアがこの24〜48時間の制限枠内、好ましくは12時間内に免疫調節薬の装填を放出しないと、それが標的にすることを意図するシグナル伝達受容体は、小胞から除去されるかもしれない。これは次に免疫原性応答に影響する上で、その小胞内でのあらゆる引き続く免疫調節薬の放出をほとんど無意味なものにする。
【0022】
本発明者らはまた、抗原取り込み中のToll様受容体などのシグナル伝達受容体の存在および会合が、免疫細胞活性化および/または成熟(例えば食胞成熟)の動態および結果を制御し得ることに気付いた。シグナル伝達受容体の存在および会合は、より高速な免疫細胞成熟をもたらすだけでなく、主要組織適合性複合体(MHC)分子による認識のためにペプチドを提供する、免疫細胞の優れた能力をもたらす(Blander,Ann Rheum Dis 2008年:67(Suppl III):iii44〜iii49))。
【0023】
免疫細胞中の受容体シグナル伝達は、抗原取り込みに先だってまたはそれと同時に起きることが望ましい。本明細書で提供される組成物および方法は、合成ナノキャリアの一部として免疫調節薬および抗原を送達することで、このような受容体シグナル伝達を提供し、それによって抗原に先だつまたはそれと同時の免疫調節薬の放出が可能になる。実施形態では、免疫調節薬またはペプチドもしくは抗原の合成ナノキャリアへの共役が顕著に低下しまたは消失した場合に、免疫調節薬または抗原の放出が起きる。このような共役は、免疫調節薬または抗原と、共役部分との間の結合(それぞれ免疫調節薬または抗原共役部分)の低下または消失によって、低下または消失し得る。このような共役はまた、免疫調節薬または抗原が合成ナノキャリア内「格納」状態から放出されるように、合成ナノキャリアの分解によって低下または消失し得る。このような実施形態では、免疫調節薬または抗原は、前記分解に先だつ結合の結果として合成ナノキャリアと共役していない。さらにこのような共役は、免疫調節薬または抗原が(例えばそれぞれ免疫調節性または抗原共役部分を通じて)なおも合成ナノキャリアの一部と共役しているが、前記部分が免疫応答を誘発するのには十分に分解しているような、合成ナノキャリアの分解によって低下または消失し得る。実施形態では、免疫応答は、合成ナノキャリアの一部と共役していない免疫調節薬または抗原によって同一環境内で誘発される免疫応答と同様であり、またはそれと同じである。
【0024】
好ましくは、免疫調節薬または抗原の放出はリソソームまたはエンドソーム内で起きる。したがって免疫調節薬または抗原の放出は、好ましくはpH4.5で起きる。時間の制限枠内の免疫調節薬放出の効率は、およそ4.5の環境pH下において、合成ナノキャリアからの抗原の生体外放出速度と、免疫調節薬の生体外放出速度とを比較することで近似し得る。合成ナノキャリアからの抗原放出は、免疫系細胞のリソソームによって、どれくらいの速さで合成ナノキャリアが消化されるかの指標として役立つ。実際、抗原はpH4.5の生体外では放出が検出されず、代わりに非常に塩基性の条件で検出されるような様式で、合成ナノキャリアと共役し得ることが分かった。このような場合、これは、合成ナノキャリアに対する抗原の結合が生理学的条件下において(例えばpH7.4または4.5で)非常に安定していること、そして一般に、合成ナノキャリアが生体内で消化されると抗原の放出が起きることを実証する。従ってこのような合成ナノキャリアは、より迅速な免疫調節薬の放出を可能にする。
【0025】
免疫調節薬が、リソソームの低pHの模擬条件下で適切な時間の制限枠内に、抗原よりも迅速に合成ナノキャリアから放出されれば、それは活性リソソーム、ひいては免疫系細胞が、免疫調節薬によって影響されるかもしれないことの徴候である。逆が真であれば、それは免疫調節薬装填量のいくらかまたは全てが、細胞に対して最適効果を有さないかもしれない徴候である。したがって本発明に従った合成ナノキャリアは、より大きな免疫応答を提供してもよく、その結果、改善された治療的な利点を対象に提供してもよい。
【0026】
定義
「乱用物質」は、指定された目的以外の目的で、または医師によって指示された以外の様式または量で、対象(例えばヒト)によって摂取されるあらゆる物質である。いくつかの実施形態では、乱用物質は非合法薬物などの薬物である。特定の実施形態では、乱用物質は一般用医薬品である。いくつかの実施形態では、乱用物質は処方薬である。乱用物質は、いくつかの実施形態では、常習性薬物である。いくつかの実施形態では、乱用物質は気分を変える効果を有し、したがって吸入剤および溶剤を含む。別の実施形態では、乱用物質は、気分を変える効果または陶酔特性を有さず、したがってタンパク同化ステロイドを含む。乱用物質としては、カンナビノイド(例えばハシシュ、マリファナ)、抑制剤(例えばバルビツール、ベンゾジアゼピン、フルニトラゼパム(ロヒプノール)、GHB、メタカロン(クエールード))、解離性麻酔薬(例えばケタミン、PCP)、幻覚剤(例えばLSD、メスカリン、シロシビン)、オピオイドおよびモルフィン誘導体(例えばコデイン、フェンタニル、ヘロイン、モルフィン、アヘン)、賦活薬(アンフェタミン、コカイン、エクスタシー(MDMA)、メタンフェタミン、メチルフェニデート(リタリン)、ニコチン)、タンパク同化ステロイド、および吸入剤が挙げられるがこれに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、ナノキャリア中に包含するための乱用物質は、完全な分子またはその一部である。
【0027】
「常習性薬物」は、強迫観念、強迫衝動、または生理的依存症もしくは心理的依存症を引き起こす物質である。いくつかの実施形態では、常習性薬物は非合法薬物である。別の実施形態では、常習性薬物は一般用医薬品である。なおも別の実施形態では、常習性薬物は処方薬である。常習性薬物としては、コカイン、ヘロイン、マリファナ、メタンフェタミン、およびニコチンが挙げられるがこれに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、ナノキャリアに包含するための常習性薬物は、完全な分子またはその一部である。
【0028】
「アジュバント」は、特異的抗原を構成しないが、抗原の免疫応答の強度および寿命を増進する作用薬を意味する。このようなアジュバントとしては、以下が挙げられるがこれに限定されるものではない。Toll様受容体、RIG−1、およびNOD様受容体(NLR)などのパターン認識受容体の刺激薬;ミョウバンなどの無機塩類;大腸菌(Escherichia coli)、サルモネラ・ミネソタ(Salmonella minnesota)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、もしくはフレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)などの腸内細菌のモノホスホリル脂質(MPL)Aと組み合わせられるか、または特に上述の細菌のMPL AであるMPL(登録商標)(AS04)と別々に組み合わせられたミョウバン;QS−21、Quil−A、ISCOM、ISCOMATRIXTMなどのサポニン;MF59TM、Montanide(登録商標)ISA 51、およびISA 720、AS02(QS21+スクアレン+MPL(登録商標))などのエマルジョン;AS01などのリポソームおよびリポソーム製剤;淋菌(N.gonorrhoeae)、トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)その他の細菌由来の外膜小胞(OMV)、またはキトサン粒子などの、合成されるか、または特異的に調製される微粒子およびマイクロキャリア;プルロニック(Pluronic)(登録商標)ブロックコ−ポリマーなどの貯蔵形成剤、ムラミルジペプチドなどの特異的に修飾されるか、または調製されたペプチド、RC529などのアミノアルキルグルコサミニド4−ホスフェート;あるいは細菌類毒素または毒素断片などのタンパク質。実施形態では、アジュバントは、Toll様受容体(TLR)、具体的にはTLR 2、3、4、5、7、8、9および/またはそれらの組み合わせをはじめとするが、これに限定されるものではない、パターン認識受容体(PRR)のための作動薬を含んでなる。別の実施形態では、アジュバントは、Toll様受容体3の作動薬、Toll様受容体7および8の作動薬、またはToll様受容体9の作動薬を含んでなり;好ましくは、上記アジュバントは、レシキモド(R848としてもまた知られている)などのイミダゾキノリン類;米国特許第6,329,381号明細書(住友製薬株式会社)で開示されるものなどのアデニン誘導体;免疫賦活性DNA;または免疫賦活性RNAを含んでなる。特定の実施形態では、合成ナノキャリアは、アジュバント化合物としてToll様受容体(TLR)7および8(「TLR 7/8作動薬」)の作動薬を包含する。有用なのは、イミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、6,7−縮合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、および1,2−架橋イミダゾキノリンアミンをはじめとするが、これに限定されるものではない、Tomaiらに付与された米国特許第6,696,076号明細書で開示されるTLR7/8作動薬化合物である。好ましいアジュバントは、イミキモドおよびレシキモドを含んでなる。特定の実施形態では、アジュバントはDC表面分子CD40の作動薬であってもよい。特定の実施形態では、合成ナノキャリアは、DC成熟(未感作T細胞の効果的な初回刺激のために必要とされる)およびI型インターフェロンなどのサイトカインの産生を促進するアジュバントを包含し、それは次に所望の抗原に対する抗体および細胞毒性免疫応答を刺激する。実施形態では、アジュバントはまた、dsRNAまたはポリI:C(TLR3賦活薬)および/またはF.Heilら、「Species−Specific Recognition of Single−Stranded RNA via Toll−like Receptor 7 and 8」Science 303(5663),1526〜1529(2004年);J.Vollmerら、「Immunemodulation by chemically modified ribonucleosides and oligoribonucleotides」国際公開第2008033432A2号パンフレット;A.Forsbachら、「Immunostimulatory oligoribonucleotides containing specific sequence motif(s)and targeting the Toll−like receptor 8 pathway」国際公開第2007062107A2号パンフレット;E.Uhlmannら、「Modified oligoribonucleotide analogs with enhanced immunostimulatory activity」米国特許出願公開第2006241076号明細書;G.Lipfordら、「Immunostimulatory viral RNA oligonucleotides and use for treating cancer and infections」国際公開第2005097993A2号パンフレット;G.Lipfordら、「Immunostimulatory G,U−containing oligoribonucleotides,compositions,and screening methods」国際公開第2003086280A2号パンフレットで開示されるものなどであるが、これに限定されるものではない、免疫賦活性RNA分子を含んでなってもよい。いくつかの実施形態では、アジュバントは、細菌性リポ多糖(LPS)、VSV−G、および/またはHMGB−1などのTLR−4作動薬であってもよい。いくつかの実施形態では、アジュバントは、米国特許第6,130,082号明細書、米国特許第6,585,980号明細書、および米国特許第7,192,725号明細書で開示されるものをはじめとするが、これに限定されるものではない、フラジェリン、またはその一部もしくは誘導体などのTLR−5作動薬を含んでなってもよい。特定の実施形態では、合成ナノキャリアは、I型インターフェロン分泌を誘発してTおよびB細胞活性化を刺激し、抗体産生増大と細胞毒性T細胞応答をもたらす、CpGを含んでなる、免疫賦活性DNA分子などのToll様受容体(TLR)−9のリガンドを包含する(Kriegら、CpG motifs in bacterial DNA trigger direct B cell activation.Nature.1995年.374:546〜549;Chuら CpG oligodeoxynucleotides act as adjuvants that switch on T helper 1(Th1)immunity.J.Exp.Med.1997年.186:1623〜1631;Lipfordら CpG−containing synthetic oligonucleotides promote B and cytotoxic T cell responses to protein antigen:a new class of vaccine adjuvants.Eur.J.Immunol.1997年.27:2340〜2344;Romanら、Immunostimulatory DNA sequences function as T helper−1−promoting adjuvants.Nat.Med.1997年.3:849〜854;Davisら、CpG DNA is a potent enhancer of specific immunity in mice immunized with recombinant hepatitis B surface antigen.J.Immunol.1998年.160:870〜876;Lipfordら、Bacterial DNA as immune cell activator.Trends Microbiol.1998年.6:496〜500)。いくつかの実施形態では、アジュバントは壊死細胞から放出された炎症促進性刺激(例えば尿酸結晶)であってもよい。いくつかの実施形態では、アジュバントは、補体カスケードの活性化構成要素であってもよい(例えばCD21、CD35など)。いくつかの実施形態では、アジュバントは、免疫複合体の活性化構成要素であってもよい。アジュバントはまた、CD21またはCD35に結合する分子などの補体受容体作動薬を含む。いくつかの実施形態では、補体受容体作動薬は、合成ナノキャリアの内因性補体オプソニン作用を誘発する。いくつかの実施形態では、アジュバントはサイトカインであり、それは細胞によって放出され、細胞−細胞相互作用、情報交換、およびその他の細胞の行動に対して特定の効果を有する、小型タンパク質または生物学的因子(5kD〜20kDの範囲)である。いくつかの実施形態では、サイトカイン受容体作動薬は、小分子、抗体、融合タンパク質、またはアプタマーである。
【0029】
「投与する」または「投与」は、薬理学的に有用な様式で薬剤を患者に提供することを意味する。
【0030】
「アレルゲン」は、対象中でアレルギー性応答を引き起こし得るあらゆる作用因子を指す。アレルゲンとしては、一般的なほこり、花粉、植物、動物の鱗屑、薬剤(例えばペニシリン)、食物アレルゲン、昆虫毒、真菌胞子、ウィルス、および細菌が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0031】
「抗原共役部分」は、それを通じて抗原が合成ナノキャリアに結合するあらゆる部分を意味する。このような部分としては、アミド結合またはエステル結合などの共有結合、ならびに抗原を(共有結合的にまたは非共有結合的に)合成ナノキャリアに結合する分離した分子が挙げられる。このような分子としては、リンカーまたはポリマーあるいはその単位が挙げられる。例えば抗原共役部分は、それに抗原が静電的に結合する荷電ポリマーを含んでなり得る。別の例として、抗原共役部分は、それに抗原が共有結合するポリマーまたはその単位を含んでなり得る。いくつかの実施形態では、上記部分はポリエステルを含んでなる。別の実施形態では、上記部分は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、またはポリカプロラクトンを含んでなる。上記部分はまた、ラクチドまたはグリコリドなどの前述のポリマーのいずれかの単位を含んでなってもよい。
【0032】
「APC標的徴群」は、樹状細胞、SCSマクロファージ、濾胞性樹状細胞、およびB細胞をはじめとするが、これに限定されるものではない、本発明の合成ナノキャリアを構成する1つ以上の部分を意味し、それは合成ナノキャリアの標的指向性をプロフェッショナル抗原提示細胞(「APC」)に向かわせる。実施形態では、APC標的徴群は、APC上の既知の標的に結合する、免疫特性表面および/または標的部分を含んでなってもよい。実施形態では、APC標的徴群は、合成ナノキャリア表面に存在する1つ以上のB細胞抗原を含んでなってもよい。実施形態では、APC標的徴群はまた、APCによる取り込みを促進するように選択された、合成ナノ粒子の1つ以上の寸法を含んでなってもよい。
【0033】
実施形態では、マクロファージ(「Mph」)上の既知の標的を指向する部分は、マクロファージ上に顕著に発現されおよび/または存在する(すなわち被膜下洞−Mphマーカー)あらゆる実体(例えばタンパク質、脂質、炭水化物、小分子など)と特異的に結合する、あらゆる標的部分を含んでなる。例示的なSCS−Mphマーカーとしては、CD4(L3T4、W3/25、T4);CD9(p24、DRAP−1、MRP−1);CD11a(LFA−1α、αLインテグリン鎖);CD11b(αMインテグリン鎖、CR3、Mo1、C3niR、Mac−1);CD11c(αXインテグリン、p150、95、AXb2);CDw12(p90−120);CD13(APN、gp150、EC3.4.11.2);CD14(LPS−R);CD15(X−Hapten、Lewis X、SSEA−1、3−FAL);CD15s(シアリルLewis X);CD15u(3’スルホLewis X);CD15su(6スルホ−シアリルLewis X);CD16a(FCRIIIA);CD16b(FcgRIIIb);CDw17(ラクトシルセラミド、LacCer);CD18(インテグリンβ2、CD11a,b,c β−サブユニット);CD26(DPP IV外酵素、ADA結合タンパク質);CD29(血小板GPIIa、β−1インテグリン、GP);CD31(PECAM−1、Endocam);CD32(FCγRII);CD33(gp67);CD35(CR1、C3b/C4b受容体);CD36(GpIIIb、GPIV、PASIV);CD37(gp52−40);CD38(ADP−リボシルシクラーゼ、T10);CD39(ATPデヒドロゲナーゼ、NTPデヒドロゲナーゼ−1);CD40(Bp50);CD43(シアロホリン、ロイコシアリン);CD44(EMCRII、H−CAM、Pgp−1);CD45(LCA、T200、B220、Ly5);CD45RA;CD45RB;CD45RC;CD45RO(UCHL−1);CD46(MCP);CD47(gp42、IAP、OA3、ニューロフィリン);CD47R(MEM−133);CD48(Blast−1、Hulym3、BCM−1、OX−45);CD49a(VLA−1α、α1インテグリン);CD49b(VLA−2α、gpla、α2インテグリン);CD49c(VLA−3α、α3インテグリン);CD49e(VLA−5α、α5インテグリン);CD49f(VLA−6α、α6インテグリン、gplc);CD50(ICAM−3);CD51(インテグリンα、VNR−α、ビトロネクチン−Rα);CD52(CAMPATH−1、HE5);CD53(OX−44);CD54(ICAM−1);CD55(DAF);CD58(LFA−3);CD59(1F5Ag、H19、Protectin、MACIF、MIRL、P−18);CD60a(GD3);CD60b(9−O−アセチルGD3);CD61(GPIIIa、β3インテグリン);CD62L(L−セレクチン、LAM−1、LECAM−1、MEL−14、Leu8、TQ1);CD63(LIMP、MLA1、gp55、NGA、LAMP−3、ME491);CD64(FcγRI);CD65(セラミド、VIM−2);CD65s(シアル酸付加−CD65、VIM2);CD72(Ly−19.2、Ly−32.2、Lyb−2);CD74(Ii、不変鎖);CD75(シアロマスク(sialo−masked)ラクトサミン);CD75S(α2,6シアル酸付加ラクトサミン);CD80(B7、B7−1、BB1);CD81(TAPA−1);CD82(4F9、C33、IA4、KAI1、R2);CD84(p75、GR6);CD85a(ILT5、LIR2、HL9);CD85d(ILT4、LIR2、MIR10);CD85j(ILT2、LIR1、MIR7);CD85k(ILT3、LIR5、HM18);CD86(B7−2/B70);CD87(uPAR);CD88(C5aR);CD89(IgAFc受容体、FcαR);CD91(α2M−R、LRP);CDw92(p70);CDw93(GR11);CD95(APO−1、FAS、TNFRSF6);CD97(BL−KDD/F12);CD98(4F2、FRP−1、RL−388);CD99(MIC2、E2);CD99R(CD99 Mab制限型);CD100(SEMA4D);CD101(IGSF2、P126、V7);CD102(ICAM−2);CD111(PVRL1、HveC、PRR1、Nectin1、HIgR);CD112(HveB、PRR2、PVRL2、Nectin2);CD114(CSF3R、G−CSRF、HG−CSFR);CD115(c−fms、CSF−1R、M−CSFR);CD116(GMCSFRα);CDw119(IFNγR、IFNγRA);CD120a(TNFRI、p55);CD120b(TNFRII、p75、TNFRp80);CD121b(タイプ2IL−1R);CD122(IL2Rβ);CD123(IL−3Rα);CD124(IL−4Rα);CD127(p90、IL−7R、IL−7Rα);CD128a(IL−8Ra、CXCR1、(暫定的にCD181と改名));CD128b(IL−8Rb、CSCR2、(暫定的にCD182と改名));CD130(gp130);CD131(一般的なβサブユニット);CD132(一般的なγ鎖、IL−2Rγ);CDw136(MSP−R、RON、p158−ron);CDw137(4−1BB、ILA);CD139;CD141(トロンボモジュリン、フェトモジュリン);CD147(バシジン、EMMPRIN、M6、OX47);CD148(HPTP−η、p260、DEP−1);CD155(PVR);CD156a(CD156、ADAM8、MS2);CD156b(TACE、ADAM17、cSVP);CDw156C(ADAM10);CD157(Mo5、BST−1);CD162(PSGL−1);CD164(MGC−24、MUC−24);CD165(AD2、gp37);CD168(RHAMM、IHABP、HMMR);CD169(シアロアドヘシン、シグレック−1);CD170(シグレック5);CD171(L1CAM、NILE);CD172(SIRP−1α、MyD−1);CD172b(SIRPβ);CD180(RP105、Bgp95、Ly64);CD181(CXCR1、(以前はCD128aとして知られていた));CD182(CXCR2、(以前はCD128bとして知られていた));CD184(CXCR4、NPY3R);CD191(CCR1);CD192(CCR2);CD195(CCR5);CDw197(CCR7(以前はCDw197であった));CDw198(CCR8);CD204(MSR);CD205(デカ−25);CD206(MMR);CD207(ランゲリン);CDw210(CK);CD213a(CK);CDw217(CK);CD220(インシュリンR);CD221(IGF1R);CD222(M6P−R、IGFII−R);CD224(GGT);CD226(DNAM−1、PTA1);CD230(プリオンタンパク質(PrP));CD232(VESP−R);CD244(2B4、P38、NAIL);CD245(p220/240);CD256(APRIL、TALL2、TNF(リガンド)スーパーファミリー、メンバー13);CD257(BLYS、TALL1、TNF(リガンド)スーパーファミリー、メンバー13b);CD261(TRAIL−R1、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー10a);CD262(TRAIL−R2、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー10b);CD263(TRAIL−R3、TNBF−Rスーパーファミリー、メンバー10c);CD264(TRAIL−R4、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー10d);CD265(TRANCE−R、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー11a);CD277(BT3.1、B7ファミリー:ブチロフィリン3);CD280(TEM22、ENDO180);CD281(TLR1、Toll様受容体1);CD282(TLR2、Toll様受容体2);CD284(TLR4、Toll様受容体4);CD295(LEPR);CD298(ATP1B3、Na K ATPアーゼ、β3サブユニット);CD300a(CMRF−35H);CD300c(CMRF−35A);CD300e(CMRF−35L1);CD302(DCL1);CD305(LAIR1);CD312(EMR2);CD315(CD9P1);CD317(BST2);CD321(JAM1);CD322(JAM2);CDw328(シグレック7);CDw329(シグレック9);CD68(gp 110、マクロシアリン);および/またはマンノース受容体が挙げられるが、これに限定されるものではなく、括弧内に列挙した名称は代案の名称を表す。
【0034】
実施形態では、樹状細胞(「DC」)上の既知の標的を指向する部分は、DC上に顕著に発現されおよび/または存在する(すなわちDCマーカー)あらゆる実体(例えばタンパク質、脂質、炭水化物、小分子など)と特異的に結合するあらゆる標的部分を含んでなる。例示的なDCマーカーとしては、CD1a(R4、T6、HTA−1);CD1b(R1);CD1c(M241、R7);CD1d(R3);CD1e(R2);CD11b(αMインテグリン鎖、CR3、Mo1、C3niR、Mac−1);CD11c(αXインテグリン、p150、95、AXb2);CDw117(ラクトシルセラミド、LacCer);CD19(B4);CD33(gp67);CD35(CR1、C3b/C4b受容体);CD36(GpIIIb、GPIV、PASIV);CD39(ATPデヒドロゲナーゼ、NTPデヒドロゲナーゼ−1);CD40(Bp50);CD45(LCA、T200、B220、Ly5);CD45RA;CD45RB;CD45RC;CD45RO(UCHL−1);CD49d(VLA−4α、α4インテグリン);CD49e(VLA−5α、α5インテグリン);CD58(LFA−3);CD64(FcγRI);CD72(Ly−19.2、Ly−32.2、Lyb−2);CD73(エクト−5’−ヌクレオチダーゼ);CD74(Ii、不変鎖);CD80(B7、B7−1、BB1);CD81(TAPA−1);CD83(HB15);CD85a(ILT5、LIR3、HL9);CD85d(ILT4、LIR2、MIR10);CD85j(ILT2、LIR1、MIR7);CD85k(ILT3、LIR5、HM18);CD86(B7−2/B70);CD88(C5aB);CD97(BL−KDD/F12);CD101(IGSF2、P126、V7);CD116(GM−CSFRα);CD120a(TMFRI、p55);CD120b(TNFRII、p75、TNFRp80);CD123(IL−3Rα);CD139;CD148(HPTP−η、DEP−1);CD150(SLAM、IPO−3);CD156b(TACE、ADAM17、cSVP);CD157(Mo5、BST−1);CD167a(DDR1、trkE、cak);CD168(RHAMM、IHABP、HMMR);CD169(シアロアドヘシン、シグレック−1);CD170(シグレック−5);CD171(L1CAM、NILE);CD172(SIRP−1α、MyD−1);CD172b(SIRPβ);CD180(RP105、Bgp95、Ly64);CD184(CXCR4、NPY3R);CD193(CCR3);CD196(CCR6);CD197(CCR7(wsCDw197));CDw197(CCR7、EBI1、BLR2);CD200(OX2);CD205(デカ−205);CD206(MMR);CD207(ランゲリン);CD208(DC−LAMP);CD209(DCSIGN);CDw218a(IL18Rα);CDw218b(IL8Rβ);CD227(MUC1、PUM、PEM、EMA);CD230(プリオンタンパク質(PrP));CD252(OX40L、TNF(リガンド)スーパーファミリー、メンバー4);CD258(LIGHT、TNF(リガンド)スーパーファミリー、メンバー14);CD265(TRANCE−R、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー11a);CD271(NGFR、p75、TNFRスーパーファミリー、メンバー16);CD273(B7DC、PDL2);CD274(B7H1、PDL1);CD275(B7H2、ICOSL);CD276(B7H3);CD277(BT3.1、B7ファミリー:ブチロフィリン3);CD283(TLR3、Toll様受容体3);CD289(TLR9、Toll様受容体9);CD295(LEPR);CD298(ATP1B3、Na K TPアーゼβ3サブユニット);CD300a(CMRF−35H);CD300c(CMRF−35A);CD301(MGL1、CLECSF14);CD302(DCL1);CD303(BDCA2);CD304(BDCA4);CD312(EMR2);CD317(BST2);CD319(CRACC、SLAMF7);CD320(8D6);およびCD68(gp110、マクロシアリン);class II MHC;BDCA−1;シグレック−Hが挙げられるがこれに限定されるものではなく、括弧内に列挙した名称は代案の名称を表す。
【0035】
実施形態では、標的技術は、B細胞上に顕著に発現されおよび/または存在する(すなわちB細胞マーカー)あらゆる実体(例えばタンパク質、脂質、炭水化物、小分子など)と特異的に結合するあらゆる標的部分によって達成され得る。例示的なB細胞マーカーとしては、CD1c(M241、R7);CD1d(R3);CD2(Eロ−ゼットR、T11、LFA−2);CD5(T1、Tp67、Leu−1、Ly−1);CD6(T12);CD9(p24、DRAP−1、MRP−1);CD11a(LFA−1α、αLインテグリン鎖);CD11b(αMインテグリン鎖、CR3、Mo1、C3niR、Mac−1);CD11c(αXインテグリン、P150、95、AXb2);CDw17(ラクトシルセラミド、LacCer);CD18(インテグリンβ2、CD11a、b、cβ−サブユニット);CD19(B4);CD20(B1、Bp35);CD21(CR2、EBV−R、C3dR);CD22(BL−CAM、Lyb8、シグレック−2);CD23(FceRII、B6、BLAST−2、Leu−20);CD24(BBA−1、HSA);CD25(Tac抗原、IL−2Rα、p55);CD26(DPP IV外酵素、ADA結合タンパク質);CD27(T14、S152);CD29(血小板GPIIa、β−1インテグリン、GP);CD31(PECAM−1、Endocam);CD32(FCγRII);CD35(CR1、C3b/C4b受容体);CD37(gp52−40);CD38(ADPリボシルシクラーゼ、T10);CD39(ATPデヒドロゲナーゼ、NTPデヒドロゲナーゼ−1);CD40(Bp50);CD44(ECMRII、H−CAM、Pgp−1);CD45(LCA、T200、B220、Ly5);CD45RA;CD45RB;CD45RC;CD45RO(UCHL−1);CD46(MCP);CD47(gp42、IAP、OA3、ニューロピリン);CD47R(MEM−133);CD48(Blast−1、Hulym3、BCM−1、OX−45);CD49b(VLA−2α、gpla、α2インテグリン);CD49c(VLA−3α、α3インテグリン);CD49d(VLA−4α、α4インテグリン);CD50(ICAM−3);CD52(CAMPATH−1、HES);CD53(OX−44);CD54(ICAM−1);CD55(DAF);CD58(LFA−3);CD60a(GD3);CD62L(L−セレクチン、LAM−1、LECAM−1、MEL−14、Leu8、TQ1);CD72(Ly−19.2、Ly−32.2、Lyb−2);CD73(エクト−5’−ヌクレオチダーゼ);CD74(Ii、不変鎖);CD75(シアロマスク(sialo−masked)ラクトサミン);CD75S(α2,6シアル化ラクトサミン);CD77(Pk抗原、BLA、CTH/Gb3);CD79a(Igα、MB1);CD79b(Igβ、B29);CD80;CD81(TAPA−1);CD82(4F9、C33、IA4、KAI1、R2);CD83(HB15);CD84(P75、GR6);CD85j(ILT2、LIR1、MIR7);CDw92(p70);CD95(APO−1、FAS、TNFRSF6);CD98(4F2、FRP−1、RL−388);CD99(MIC2、E2);CD100(SEMA4D);CD102(ICAM−2);CD108(SEMA7A、JMH血液型抗原);CDw119(IFNγR、IFNγRa);CD120a(TNFRI、p55);CD120b(TNFRII、p75、TNFRp80);CD121b(タイプ2IL−1R);CD122(IL2Rβ);CD124(IL−4Rα);CD130(gp130);CD132(一般的なγ鎖、IL−2Rγ);CDw137(4−1BB、ILA);CD139;CD147(バシジン、EMMPRIN、M6、OX47);CD150(SLAM、IPO−3);CD162(PSGL−1);CD164(MGC−24、MUC−24);CD166(ALCAM、KG−CAM、SC−1、BEN、DM−GRASP);CD167a(DDR1、trkE、cak);CD171(L1CMA、NILE);CD175s(シアリル−Tn(S−Tn));CD180(RP105、Bgp95、Ly64);CD184(CXCR4、NPY3R);CD185(CXCR5);CD192(CCR2);CD196(CCR6);CD197(CCR7(以前はCDw197であった));CDw197(CCR7、EBI1、BLR2);CD200(OX2);CD205(デカ−205);CDw210(CK);CD213a(CK);CDw217(CK);CDw218a(IL18Rα);CDw218b(IL18Rβ);CD220(インシュリンR);CD221(IGF1R);CD222(M6P−R、IGFII−R);CD224(GGT);CD225(Leu13);CD226(DNAM−1、PTA1);CD227(MUC1、PUM、PEM、EMA);CD229(Ly9);CD230(プリオンタンパク質(Prp));CD232(VESP−R);CD245(p220/240);CD247(CD3 ζ鎖);CD261(TRAIL−R1、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー10a);CD262(TRAIL−R2、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー10b);CD263(TRAIL−R3、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー10c);CD264(TRAIL−R4、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー10d);CD265(TRANCE−R、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー11a);CD267(TACI、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー13B);CD268(BAFFR、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー13C);CD269(BCMA、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー16);CD275(B7H2、ICOSL);CD277(BT3.1.B7ファミリー:ブチロフィリン3);CD295(LEPR);CD298(ATP1B3 Na K ATPアーゼβ3サブユニット);CD300a(CMRF−35H);CD300c(CMRF−35A);CD305(LAIR1);CD307(IRTA2);CD315(CD9P1);CD316(EW12);CD317(BST2);CD319(CRACC、SLAMF7);CD321(JAM1);CD322(JAM2);CDw327(シグレック6、CD33L);CD68(gp100、マクロシアリン);CXCR5;VLA−4;クラスII MHC;表面IgM;表面IgD;APRL;および/またはBAFF−Rが挙げられるがこれに限定されるものではなく、括弧内に列挙した名称は代案の名称を表す。マーカーの例は、本明細書の他の部分で提供されるものを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、B細胞標的技術は、活性化に際してB細胞上に顕著に発現されおよび/または存在するあらゆる実体(すなわち活性化B細胞マーカー)(例えばタンパク質、脂質、炭水化物、小分子など)と特異的に結合するあらゆる標的部分によって達成され得る。例示的な活性化B細胞マーカーとしては、CD1a(R4、T6、HTA−1);CD1b(R1);CD15s(シアリルLewis X);CD15u(3’スルホLewis X);CD15su(6スルホ−シアリルLewis X);CD30(Ber−H2、Ki−1);CD69(AIM、EA1、MLR3、gp34/28、VEA);CD70(Ki−24、CD27リガンド);CD80(B7、B7−1、BB1);CD86(B7−2/B70);CD97(BLKDD/F12);CD125(IL−5Rα);CD126(IL−6Rα);CD138(シンデカン−1、ヘパラン硫酸プロテオグリカン);CD152(CTLA−4);CD252(OX40L、TNF(リガンド)スーパーファミリー、メンバー4);CD253(TRAIL、TNF(リガンド)スーパーファミリー、メンバー10);CD279(PD1);CD289(TLR9、Toll様受容体9);およびCD312(EMR2)が挙げられるがこれに限定されるものではなく、括弧内に列挙した名称は代案の名称を表す。マーカーの例は、本明細書の他の部分で提供されるものを含む。
【0037】
「A(rel)%」は、重量%として表され、合成ナノキャリアサンプル全体を平均した、pH=4.5でt時間にわたる生体外水性環境に対する合成ナノキャリアの曝露に際して放出される抗原重量と、pH=4.5でt時間にわたる、生体外水性環境に対する合成ナノキャリアの曝露に際して、合成ナノキャリア中に保持される抗原重量の和によって除した、pH=4.5でt時間にわたる生体外水性環境に対する合成ナノキャリアの曝露に際して放出される抗原重量と定義される。tは本明細書では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、18、24、30、36、42または48時間と定義される。好ましい実施形態では、tは、12、24、または48時間である。
【0038】
「B細胞抗原」は、天然でB細胞によって認識され、または認識されるように遺伝子操作されて、B細胞中において(天然で、または当該技術分野で知られているように遺伝子操作されて)免疫応答を作動させるあらゆる抗原を意味する(例えばB細胞上のB細胞受容体によって特異的に認識される抗原)。いくつかの実施形態では、T細胞抗原である抗原はまたB細胞抗原でもある。別の実施形態では、T細胞抗原はB細胞抗原でない。B細胞抗原としては、タンパク質、ペプチド、小分子、および炭水化物が挙げられるがこれに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は非タンパク質抗原である(すなわちタンパク質またはペプチド抗原でない)。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は感染性因子に付随する炭水化物である。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は感染性因子に付随する糖タンパク質またはグリコペプチドである。感染性因子は、細菌、ウィルス、真菌、原生動物、寄生生物またはプリオンであり得る。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、免疫原性に劣る抗原である。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は乱用物質またはその一部である。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は、常習性薬物またはその一部である。常習性薬物としては、ニコチン、麻薬、咳止め薬、精神安定剤、および鎮静薬が挙げられるがこれに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、B細胞抗原は化学兵器または天然原料からの毒素、あるいは汚染物質などの毒素である。B細胞抗原はまた、有害な環境因子であってもよい。別の実施形態では、B細胞抗原は、アロ抗原、アレルゲン、接触感作性物質、変性疾患抗原、ハプテン、感染症抗原、がん抗原、アトピー性疾患抗原、常習性薬物、異種抗原、または代謝疾患酵素あるいはその酵素生成物である。
【0039】
「生分解性ポリマー」は、対象の身体に取り込まれると時間経過と共に分解するポリマーを意味する。生分解性ポリマーとしては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリケタール、またはポリアミドが挙げられるがこれに限定されるものではない。このようなポリマーはポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、またはポリカプロラクトンを含んでなってもよい。いくつかの実施形態では、生分解性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)などのポリエーテルのブロック−コ−ポリマー、およびポリエステル、ポリカーボネート、またはポリアミドまたはその他の生分解性ポリマーを含んでなる。実施形態では、生分解性ポリマーはポリ(エチレングリコール)とポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、またはポリカプロラクトンとのブロック−コ−ポリマーを含んでなる。しかしいくつかの実施形態では、生分解性ポリマーはポリ(エチレングリコール)などのポリエーテルを含まないか、またはポリエーテルのみからなる。一般に、合成ナノキャリアの一部として使用するためには、生分解性ポリマーはpH=7.4および25℃で水不溶性である。生分解性ポリマーは、実施形態では、ゲル透過クロマトグラフィーを使用した測定で、約800〜約50,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーを使用した測定で約800ダルトン〜約10,000ダルトン、好ましくは800ダルトン〜10,000ダルトンである。別の実施形態では、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーによる測定で1000ダルトン〜10,000ダルトンである。一実施形態では、生分解性ポリマーはポリケタールもその単位も含まない。
【0040】
「共役する(Couple)」または「共役した(Coupled)」または「共役(Couples)」(など)は、合成ナノキャリアへの付着またはその中への包含を意味する。いくつかの実施形態では、共役は共有結合である。いくつかの実施形態では、共有共役は、1つ以上のリンカーによって仲介される。いくつかの実施形態では、共役は非共有結合である。いくつかの実施形態では、非共有共役は、電荷相互作用、親和力相互作用、金属配位、物理吸着、ホストゲスト相互作用、疎水性相互作用、TTスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファンデルワールス相互作用、磁気相互作用、静電相互作用、双極子−双極子相互作用、および/またはそれらの組み合わせによって仲介される。実施形態では、共役は、従来の技術を使用した、合成ナノキャリア内へのカプセル封入の文脈で起きてもよい。前述の共役のいずれかは、本発明の合成ナノキャリアの表面またはその中にあるように配置されてもよい。
【0041】
「由来する」は、元の起源から適合され、または改変されたことを意味する。例えば非限定的例として、感染性株に由来するペプチド抗原は、感染性株中に見られる元の抗原に見られる天然のアミノ酸残基から置換された、いくつかの非天然アミノ酸残基を有してもよい。適合または改変は、特異性の増大、より容易な抗原処理、または安全性の改善をはじめとするがこれに限定されるものではない、多様な理由のためであってもよい。
【0042】
「剤形」は、媒体、キャリア、ビヒクル、または対象への投与に適した装置内の薬剤を意味する。
【0043】
本発明の組成物の「有効量」は、特定の目的のために効果的な量である。例えば有効量が治療目的である場合、量は本明細書で提供される疾患、障害、および/または病状を治療し、緩和し、寛解し、軽減し、1つ以上の症状または徴群の発症を遅延させ、進行を抑制して、重篤性を減少させおよび/または発生率を低下させるのに効果的である。
【0044】
「カプセル化する」は、合成ナノキャリア内に封入する、好ましくは合成ナノキャリア内に完全に封入することを意味する。カプセル化された大部分のまたは全ての物質は、合成ナノキャリアの外部の局所的環境に曝露しない。カプセル封入は、大部分のまたは全ての物質を合成ナノキャリアの表面に配置させて、物質を合成ナノキャリアの外部の局所的環境に露出したままにする吸収とは異なる。
【0045】
「pH感応性解離を示す」は、それぞれ免疫調節薬もしくは抗原と合成ナノキャリアまたは免疫調節薬もしくは抗原共役部分などの2つの実体間の共役が、環境pHを変化させることで顕著に減少するか、または排除されることを意味する。実施形態では、妥当なpH感応性解離は、本明細書で提供される関係式のいずれかを満たしてもよい。一般に、pH4.5では、免疫調節薬と合成ナノキャリアの間の共役は、抗原と合成ナノキャリア間の共役よりも大きく低下し、または消失した。免疫調節剤と抗原の解離を定義する関係式は、本明細書の他の部分で提供される。
【0046】
「IA(rel)%」は、重量%として表され、合成ナノキャリアのサンプル全体を平均した、pH=4.5でt時間にわたる生体外水性環境に対する合成ナノキャリアの曝露に際して放出される免疫調節薬の重量と、pH=4.5でt時間にわたる生体外水性環境に対する合成ナノキャリアの曝露に際して合成ナノキャリア中に保持される免疫調節薬の重量との和によって除した、pH=4.5でt時間にわたる生体外水性環境に対する合成ナノキャリアの曝露に際して放出される免疫調節薬の重量と定義される。tは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、18、24、30、36,42、または48時間である。好ましい実施形態では、tは12、24、または48時間である。
【0047】
「免疫調節薬」は、免疫応答を調節する薬剤を意味する。「調節する」は、本明細書での用法では、免疫応答を誘発し、増強し、刺激して、または指示することを指す。このような薬剤としてはアジュバントが挙げられ、それは抗原に対する免疫応答を刺激する(またブーストする)が、抗原ではなくまた抗原に由来しない。いくつかの実施形態では、免疫調節薬は合成ナノキャリアの表面にあり、および/または合成ナノキャリア内に組み込まれる。実施形態では、免疫調節薬はポリマーまたはその単位を通じて、合成ナノキャリアと共役している。
【0048】
いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアの全ての免疫調節薬が、互いに同一である。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアはいくつかの異なるタイプの免疫調節薬を含んでなる。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは複数の個々の免疫調節薬を含んでなり、それらは全て互いに同一である。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは厳密に1つのタイプの免疫調節薬を含んでなる。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは厳密に2つの異なるタイプの免疫調節薬を含んでなる。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは2つを超える異なるタイプの免疫調節薬を含んでなる。
【0049】
「免疫調節薬共役部分」は、免疫調節薬がそれを通じて合成ナノキャリアに結合するあらゆる部分である。このような部分としては、アミド結合またはエステル結合などの共有結合、ならびに免疫調節薬を合成ナノキャリアに(共有結合的にまたは非共有結合的に)結合させる別々の分子が挙げられる。このような分子としては、リンカーまたはポリマーあるいはその単位が挙げられる。例えば免疫調節薬共役部分は、免疫調節薬(例えば免疫賦活性核酸)がそれに静電的に結合する荷電ポリマーを含んでなり得る。別の例として、免疫調節薬共役部分は、免疫調節薬がそれに共有結合的に結合するポリマーまたはその単位を含んでなり得る。いくつかの実施形態では、上記部分はポリエステルを含んでなる。別の実施形態では、上記部分はポリ(エチレングリコール)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、またはポリカプロラクトンを含んでなる。上記部分はまた、ラクチドまたはグリコリドなどの前述のポリマーのいずれかの単位を含んでなってもよい。
【0050】
「感染性因子」は、細菌、真菌、ウィルス、原生動物、または寄生生物に由来するあらゆる作用因子を指す。いくつかの実施形態では、ウィルスは、ポックスウィルス、天然痘ウィルス、エボラウィルス、マールブルグウィルス、デング熱ウィルス、インフルエンザウィルス、パラインフルエンザウィルス、呼吸器合胞体ウィルス、麻疹ウィルス、ヒト免疫不全症ウィルス、ヒトパピローマウィルス、水痘帯状疱疹ウィルス、単純ヘルペスウィルス、サイトメガロウィルス、エプスタイン・バーウィルス、JCウィルス、ラブドウィルス、ロタウィルス、ライノウィルス、アデノウィルス、パピローマウィルス、パルボウィルス、ピコルナウィルス、ポリオウィルス,おたふく風邪を引き起こすウィルス、狂犬病を引き起こすウィルス、レオウィルス、風疹ウィルス、トガウィルス、オルソミクソウィルス、レトロウィルス、ヘパドナウィルス、コクサッキーウィルス、ウマ脳炎ウィルス、日本脳炎ウィルス、黄熱病ウィルス、リフトバレー熱ウィルス、肝炎Aウィルス、肝炎Bウィルス、肝炎Cウィルス、肝炎Dウィルス、または肝炎Eウィルスである。
【0051】
「合成ナノキャリアの最大寸法」は、合成ナノキャリアのいずれかの軸に沿って測定されるナノキャリアの最大寸法を意味する。「合成ナノキャリアの最小寸法」は、合成ナノキャリアのいずれかの軸に沿って測定されるナノキャリアの最小寸法を意味する。例えば球状合成ナノキャリアでは、合成ナノキャリアの最大および最小寸法は実質的に同一であり、その直径のサイズである。同様に立方体合成ナノキャリアでは、合成ナノキャリアの最小寸法は、その高さ、幅または長さの内最小のものである一方、合成ナノキャリアの最大寸法は、その高さ、幅または長さの内最大のものである。一実施形態では、サンプル中の合成ナノキャリアの総数を基準にして、サンプル中の合成ナノキャリアの最小寸法の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%は100nmを超える。実施形態では、サンプル中の合成ナノキャリアの総数を基準にして、サンプル中の合成ナノキャリアの最大寸法の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%は5μm以下である。好ましくは、サンプル中の合成ナノキャリアの総数を基準にして、サンプル中の合成ナノキャリアの最小寸法の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%は、110nm以上、より好ましくは120nm以上、より好ましくは130nm以上、なおもより好ましくは150nm以上である。好ましくは、サンプル中の合成ナノキャリアの総数を基準にして、サンプル中の合成ナノキャリアの最大寸法の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%は、3μm以下、より好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、より好ましくは800nm以下、より好ましくは600nm以下、なおもより好ましくは500nm以下である。好ましい実施形態では、サンプル中の合成ナノキャリアの総数を基準にして、サンプル中の合成ナノキャリアの最大寸法の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%は、100nm以上、より好ましくは120nm以上、より好ましくは130nm以上、より好ましくは140nm以上、なおもより好ましくは150nm以上である。合成ナノキャリアサイズの測定は、合成ナノキャリアを(通常は水性の)液体媒体に懸濁して動的光散乱を使用して(例えばBrookhaven ZetaPALS装置を使用して)得られる。
【0052】
「得られる」は、元の起源から適応または修正なしに取らたことを意味する。例えば実施形態では、起源から得られる抗原は、その起源中に見られる元のアミノ酸残基配列を含んでなってもよい。別の実施形態では、例えば起源から得られる抗原は、その起源中に見られる元の分子構造を含んでなってもよい。
【0053】
「薬学的に許容できる賦形剤」は、組成物の投与をさらに容易にするために、本発明の組成物に添加される薬理学的不活性物質を意味する。薬学的に許容できる賦形剤の例としては、制限なしに、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な希釈剤、様々な糖および各種デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0054】
「免疫原性に劣る抗原」は、所望の免疫応答を全く引き起こさず、または十分なレベルで引き起こさない抗原を指す。「十分な」は、本明細書での用法では、本明細書に記載されるナノキャリアを用いない組成物中で、例えばナノキャリアの不在下でアジュバントと混合された遊離抗原として投与されると、検出可能なまたは防御免疫応答を誘発する能力を指す。いくつかの実施形態では、所望の免疫応答は、疾患または病状を治療または予防する。特定の実施形態では、所望の免疫応答は、疾患または病状の1つ以上の症状を軽減する。免疫原性に劣る抗原性抗原としては、小分子および炭水化物が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0055】
「放出速度」は、生体外放出試験において、共役した免疫調節薬または抗原が粒子から周囲の媒体に流れ出す速度を意味する。最初に、適切な生体外放出媒体に入れることで、放出試験のための合成ナノキャリアを調製する。これは一般に遠心分離後に合成ナノキャリアをペレット化し、穏和な条件下で合成ナノキャリアを水戻して、緩衝液を交換することにより実施される。37℃で適切な温度制御された装置にサンプルを入れることにより、アッセイを開始する。サンプルは様々な時点で取り出される。一般に、生理学的pH(例えばpH4.5)では、免疫調節薬共役部分を通じた合成ナノキャリアへの免疫調節薬の結合よりも、抗原共役部分を通じた合成ナノキャリアへの抗原の結合の方がより安定している。実施形態では、合成ナノキャリアへの免疫調節薬の結合よりも、合成ナノキャリアへの抗原の結合の方が、pH感応性がより低い。実施形態では、合成ナノキャリアから放出される抗原量を測定して、合成ナノキャリアへの抗原の結合安定性を判定する。実施形態では、合成ナノキャリアから放出される抗原の量は、pH4.5とpH7.4で顕著に異ならない。実施形態では、pH4.5で合成ナノキャリアから放出される抗原の量は、合成ナノキャリアから放出される免疫調節薬の量より少ない。実施形態では、放出される抗原量はpH7.4においても4.5においても検出できない。
【0056】
遠心分離して合成ナノキャリアをペレット化することにより、合成ナノキャリアを放出媒体から分離する。合成ナノキャリアから分散した免疫調節薬または抗原について、放出媒体をアッセイする。HPLCを使用して免疫調節薬または抗原を測定し、免疫調節薬または抗原の含量および質を判定する。残留する捕捉された免疫調節薬または抗原を含有するペレットを溶剤に溶解するか、または塩基によって加水分解して、捕捉された免疫調節薬または抗原を合成ナノキャリアから遊離させる。次にペレットに含有される免疫調節薬または抗原もまたHPLCによって測定し、所定の時点で放出されなかった免疫調節薬または抗原の含量および質を判定する。
【0057】
放出媒体中に放出された免疫調節薬または抗原と、合成ナノキャリア中に残留したものとの間では質量平衡が閉じている。データは経時的に放出された割合として、または放出されたマイクログラムとして示される正味放出として示される。
【0058】
「小分子」は、当該技術分野でサイズが約2000g/mol未満の有機分子と理解される。いくつかの実施形態では、小分子は約1500g/mol未満または約1000g/mol未満である。いくつかの実施形態では、小分子は約800g/mol未満または約500g/mol未満である。いくつかの実施形態では、小分子は高分子でなくおよび/またはオリゴマーでない。いくつかの実施形態では、小分子はタンパク質、ペプチド、またはアミノ酸でない。いくつかの実施形態では、小分子は核酸またはヌクレオチドでない。いくつかの実施形態では、小分子は糖類または多糖類でない。
【0059】
「対象」は、ヒトおよび霊長類などの哺乳類;鳥類;ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、畜牛、ウマ、およびブタなどの愛玩動物または家畜;マウス、ラット、およびモルモットなどの実験動物;魚などをはじめとする動物を意味する。
【0060】
「合成ナノキャリア」は自然界に見られず、5μm以下のサイズの少なくとも1つの寸法を有する離散した物体を意味する。アルブミンナノ粒子は、合成ナノキャリアとして明示的に含まれる。
【0061】
合成ナノキャリアとしては、ポリマーナノ粒子が挙げられる。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは1つ以上のポリマーマトリックスを含んでなり得る。しかし合成ナノキャリアはまたその他のナノ材料も含んでなり得て、例えば脂質−ポリマーナノ粒子であってもよい。いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスは、被覆層(例えばリポソーム、脂質単層、ミセルなど)で取り囲まれ得る。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアはミセルでない。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは、脂質層(例えば脂質二重層、脂質単層など)で取り囲まれるポリマーマトリックスを含んでなるコアを含んでなってもよい。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアの様々な要素は、ポリマーマトリックスと共役され得る。
【0062】
合成ナノキャリアは、1つ以上の脂質を含んでなってもよい。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアはリポソームを含んでなってもよい。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは脂質二重層を含んでなってもよい。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは脂質単層を含んでなってもよい。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアはミセルを含んでなってもよい。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは脂質層(例えば脂質二重層、脂質単層など)で取り囲まれる非高分子コア(例えば金属粒子、量子ドット、セラミック粒子、骨の粒子、ウィルス粒子、タンパク質、核酸、炭水化物など)を含んでなってもよい。
【0063】
合成ナノキャリアは、脂質ベースナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性剤ベースエマルジョン、デンドリマー、バッキーボール、ナノワイヤ、ウィルス様粒子、ペプチドもしくはタンパク質ベース粒子(アルブミンナノ粒子など)を含んでなってもよい。合成ナノキャリアは、球状、立方体、錐体、長方形、円柱状、ドーナツ型などをはじめとするがこれに限定されるものではない、多様な異なる形状であってもよい。本発明に従った合成ナノキャリアは、1つ以上の表面を含んでなる。本発明の実施における仕様に適応させ得る例示的な合成ナノキャリアとしては、以下が挙げられる。(1)Grefらに付与された米国特許第5,543,158号明細書で開示される生分解性ナノ粒子、(2)Saltzmanらに付与された米国特許出願公開第20060002852号明細書のポリマーナノ粒子、(3)DeSimoneらに付与された米国特許出願公開第20090028910号明細書のリソグラフィーによって構築されたナノ粒子、(4)von Andrianらに付与された国際公開第2009/051837号パンフレットの開示、または(5)Penadesらに付与された米国特許出願公開第2008/0145441号明細書で開示されるナノ粒子。
【0064】
約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有する本発明に従った合成ナノキャリアは、補体を活性化する水酸基がある表面を含まないか、または代案としては、補体を活性化する水酸基でない部分から本質的になる表面を含んでなる。好ましい実施形態では、約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有する本発明に従った合成ナノキャリアは、実質的に補体を活性化する表面を含まないか、または代案としては、実質的に補体を活性化しない部分から本質的になる表面を含んでなる。より好ましい実施形態では、約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有する本発明に従った合成ナノキャリアは、補体を活性化する表面を含まないか、または代案としては、補体を活性化しない部分から本質的になる表面を含んでなる。実施形態では、合成ナノキャリアは、1:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7を超えるか、または1:10を超える縦横比を有してもよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは球体または回転楕円体である。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは扁平または円盤状である。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは正六面体または立方体である。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは卵形または長円である。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは、円柱、錐体、またはピラミッドである。
【0066】
各合成ナノキャリアが類似した特性を有するように、サイズ、形状、および/または組成に関して比較的一様の合成ナノキャリア集団を使用することが望ましいことが多い。例えば少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の合成ナノキャリアは、平均直径または平均寸法の5%、10%、または20%以内に入る最小寸法または最大寸法を有してもよい。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリア集団は、サイズ、形状、および/または組成に関して不均一であってもよい。
【0067】
合成ナノキャリアは中実または中空であり得て、1つ以上の層を含んでなり得る。いくつかの実施形態では、各層はその他の層と比較してユニークな組成およびユニークな特性を有する。一例として、合成ナノキャリアは、コアが第1層(例えば高分子コア)でシェルが第2層(例えば脂質二重層または単層)であるコア/シェル構造を有してもよい。合成ナノキャリアは、複数の異なる層を含んでなってもよい。
【0068】
「T細胞抗原」は、T細胞によって認識され、免疫応答を引き起こすあらゆる抗原を意味する(例えばクラスIまたはクラスII主要組織適合遺伝子複合体分子(MHC)に結合するか、またはCD1複合体に結合する、抗原またはその一部の提示を通じて、T細胞またはNKT細胞上のT細胞受容体によって特異的に認識される抗原)。いくつかの実施形態では、T細胞抗原である抗原はB細胞抗原でもある。別の実施形態では、T細胞抗原はB細胞抗原ではない。T細胞抗原は、一般にタンパク質またはペプチドである。T細胞抗原は、CD8+T細胞応答、CD4+T細胞応答、または双方を刺激する抗原であってもよい。したがってT細胞抗原は、いくつかの実施形態では双方のタイプの応答を効果的に刺激し得る。
【0069】
いくつかの実施形態ではT細胞抗原はTヘルパー抗原であり、それはT細胞ヘルプの刺激を通じて、無関係のB細胞抗原に対する増強された応答を発生させ得るT細胞抗原である。実施形態では、Tヘルパー抗原は、破傷風類毒素、エプスタイン・バーウィルス、インフルエンザウィルス、呼吸器合胞体ウィルス、はしかウィルス、おたふく風邪ウィルス、風疹ウィルス、サイトメガロウィルス、アデノウィルス、ジフテリア類毒素、またはPADREペプチドに由来する1つ以上のペプチドを含んでなってもよい。別の実施形態では、Tヘルパー抗原は、α−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)、α−結合スフィンゴ糖脂質(スフィンゴモナス(Sphingomonas)種からの)、ガラクトシルジアシルグリセロール(ボレリア・ブルグドルフェリ((Borrelia burgdorferi)からの)、リポホスホグリカン(熱帯リーシュマニア(Leishmania donovani)からの)、およびホスファチジルイノシトールテトラマンノシド(PIM4)(ライ菌(Mycobacterium leprae)からの)をはじめとするがこれに限定されるものではない、1つ以上の脂質または糖脂質を含んでなってもよい。Tヘルパー抗原として有用な追加的脂質および/または糖脂質については、V.Cerundoloら、「Harnessing invariant NKT cells in vaccination strategies」Nature Rev Immun,9:28〜38(2009年)を参照されたい。実施形態では、CD4+T細胞抗原は、天然原料などの起源から得られるCD4+T細胞抗原の誘導体であってもよい。このような実施形態では、MHCIIに結合するペプチドなどのCD4+T細胞抗原配列は、原料から得られる抗原と少なくとも70%、80%、90%、または95%の同一性を有してもよい。実施形態では、T細胞抗原、好ましくは、Tヘルパー抗原は、合成ナノキャリアと共役していても、または共役していなくてもよい。
【0070】
「その単位」は、一般に一連の連結されたモノマーで構成されるポリマーのモノマー単位を指す。
【0071】
「ワクチン」は、特定の病原体または疾患に対する免疫応答を改善する組成物を意味する。ワクチンは、典型的に、対象の免疫系が特異的抗原を外来性として認識し、それを対象の身体から排除するように刺激する因子を含有する。ワクチンはまた、個人が再攻撃された場合に抗原が迅速に認識して反応するように、免疫「記憶」も確立する。ワクチンは予防的(例えばあらゆる病原体による将来の感染症を予防する)、または治療的(例えばがん治療のための腫瘍特異的抗原に対するワクチン)であり得る。本発明に従ったワクチンは、本明細書で提供される合成ナノキャリアまたは組成物の1つ以上を含んでなってもよい。
【0072】
本発明の化合物、抱合体、または合成ナノキャリアを作成する方法
免疫調節薬および抗原は、合成ナノキャリアからの免疫調節薬および抗原の解離が、本明細書で提供される解離関係式を満たすような、あらゆる様式で合成ナノキャリアと共役し得る。解離関係式が満たされるかどうかを判断する方法は、上の他の部分および実施例で提示される。
【0073】
いくつかの実施形態では、免疫調節薬および/または抗原は、それぞれ免疫調節薬共役部分または抗原共役部分を通じて、合成ナノキャリアと(例えば共有結合的に)共役し得る。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは、生分解性ポリマーなどのポリマー(例えば低分子量生分解性ポリマー)を含んでなり、免疫調節薬および/または抗原は、それぞれ免疫調節薬共役部分または抗原共役部分を通じて、ポリマーと共役する。免疫調節薬および抗原をポリマーに共役して本発明の合成ナノキャリアを形成する方法は、下ならびに実施例をはじめとして本明細書の他の部分に提供される。
【0074】
抗原共役部分は、pH感応性に解離するそれらの傾向を低下させる技術を使用して合成し得る。このような技術としては、抗原共役部分に存在する、環境pH効果に起因する切断に感応性の化学結合を除去し、またはその数を減少させることが挙げられる。その代わりに感応性の低い結合で置換してもよい。その他の技術としては、酸性または塩基性分解に感応性の立体障害化学結合の使用が挙げられる。
【0075】
酸/塩基安定性の抗原共役部分を合成する方法としては、アルキンとアジ化物との1,3−双極性環状付加を通じてトリアゾールを形成するクリックケミストリー;六員環複素環を形成するディールス・アルダー付加環化;イオウ−炭素結合を形成するチオール基によるマイケル付加もしくはエポキシド開環;アミンによるエポキシド開環またはアルデヒドまたはケトンによるアミンの還元性アミノ化による窒素−炭素結合;アミンとイソシアネートまたはシアネートの反応による尿素およびカルバメート形成;酸化によるイオウ−イオウ結合;またはアミンによるエポキシド開環が挙げられる。実施形態では、チオール、アミン、アルキンまたはアジ化物などの反応性基または二重結合が、抗原の一部であり得る。実施形態では、このような反応性基は、例えばシステイン(チオール)またはリジン(アミノ基)などのアミノ酸の1つの一部であり得て、あるいはペプチドまたは同様の化学現象を通じて抗原に添加される。
【0076】
さらに抗原は、免疫調節薬が環境に曝露した後にそれが曝露するように、合成ナノキャリア内に含有されてもよい。例えば合成ナノキャリアは2つ以上の層から構成され得て、免疫調節薬が外層と共役していてもよいのに対して、抗原は内層と共役し得る。別の例として、抗原が合成ナノキャリア中にカプセル化される一方で、免疫調節薬は合成ナノキャリア表面と共役し得る。
【0077】
対照的に免疫調節薬共役部分は、それらのpH感応性解離傾向を増大させる技術を使用して合成され得る。このような技術としては、抗原共役部分に、環境pH効果に起因する切断に感応性の化学結合を含め、またはその数を増大させることが挙げられる。このような結合については、下でより詳細に記載する。
【0078】
提供される以下の方法、または方法のあらゆる工程は例示的であり、あらゆる適切な条件下で実施してもよい。場合によっては、提供される方法の反応またはあらゆる工程は、溶剤または溶剤混合物の存在下で実施してもよい。本発明で使用するのに適するかもしれない溶剤の非限定的例としては、p−クレゾール、トルエン、キシレン、メシチレン、ジエチルエーテル、グリコール、石油エーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、ジクロロメタン(または塩化メチレン)、クロロホルム、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸エチル(EtOAc)、トリエチルアミン、アセトニトリル、メチル−t−ブチルエーテル(MTBE)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、イソプロパノール(IPA)、それらの混合物などが挙げられるがこれに限定されるものではない。場合によっては、溶剤は、酢酸エチル、塩化メチレン、THF、DMF、NMP、DMAC、DMSO、およびトルエン、またはその混合物からなる群から選択される。
【0079】
提供される方法の反応またはあらゆる工程は、あらゆる適切な温度で実施してもよい。場合によっては、提供される方法の反応またはあらゆる工程は、室温前後(例えば約25℃、約20℃、約20℃〜約25℃など)で実施される。しかし場合によっては、提供される方法の反応またはあらゆる工程は、例えば約−20℃、約−10℃、約0℃、約10℃、約30℃、約40℃、約50℃、約60℃、約70℃、約80℃、約90℃、約100℃、約120℃、約140℃、約150℃以上などの室温未満、またはそれを超える温度で実施してもよい。特定の実施形態では、提供される方法の反応またはあらゆる工程は0℃〜120℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、提供される方法の反応またはあらゆる工程は、1つを超える温度で実施してもよい(例えば反応物質が第1の温度で添加され、反応混合物が第2の温度で撹拌され、第1の温度から第2の温度への移行は漸進的または迅速であってもよい)。
【0080】
提供される方法の反応またはあらゆる工程は、あらゆる適切な期間継続してもよい。場合によっては、提供される方法の反応またはあらゆる工程は、約10分間、約20分間、約30分間、約40分間、約50分間、約1時間、約2時間、約4時間、約8時間、約12時間、約16時間、約24時間、約2日間、約3日間、約4日間以上継続される。場合によっては、中間時点で反応混合物のアリコートを取って分析し、提供される方法の反応の進展またはあらゆる段階を判定してもよい。いくつかの実施形態では、提供される方法の反応またはあらゆる工程は、無水条件の不活性雰囲気下で実施してもよい(例えば窒素またはアルゴン雰囲気下、無水溶剤など)。
【0081】
反応生成物および/または中間体は、一般に知られている既知の技術を使用して単離し(例えば蒸留、カラムクロマトグラフィー、抽出、沈殿などを通じて)、および/または分析してもよい(例えばガス液体クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴分光法など)。場合によっては、例えば逆相HPLCを使用して合成ナノキャリアを分析し、免疫調節薬または抗原の装填量を測定してもよい。
【0082】
ポリマーは、あらゆる適切な分子量を有してもよい。例えばポリマーは、低または高分子量を有してもよい。非限定的分子量値としては、100ダルトン、200ダルトン、300ダルトン、500ダルトン、750ダルトン、1000ダルトン、2000ダルトン、3000ダルトン、4000ダルトン、5000ダルトン、6000ダルトン、7000ダルトン、8000ダルトン、9000ダルトン、10,000ダルトン以上が挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリマーは、約800ダルトン〜約10,000ダルトンの重量平均分子量を有する。別の実施形態では、本明細書で提供されるポリマーのいずれかは約800ダルトン〜10,000ダルトン(例えば2,000ダルトン)の重量平均分子量を有する。ポリマー分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーを使用して測定されてもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、ポリマーはpH=7.4および25℃で水不溶性であり、生分解性であり、または双方である。別の実施形態では、ポリマーはpH=7.4および25℃で水不溶性であるが、pH=4.5および25℃で可溶性である。なおも別の実施形態では、ポリマーはpH=7.4および25℃で水不溶性であるが、pH=4.5および25℃で可溶性であり、生分解性である。
【0084】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、またはポリエーテルを含んでなる。別の実施形態では、ポリマーはポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、またはポリカプロラクトンを含んでなる。いくつかの実施形態では、ポリマーは生分解性であることが好ましい。したがってこれらの実施形態では、ポリマーがポリ(エチレングリコール)またはその単位などのポリエーテルを含んでなる場合、ポリマーが生分解性であるように、ポリマーが、ポリエーテルと生分解性ポリマーのブロックコ−ポリマーを含んでなることが好ましい。別の実施形態では、ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)などのポリエーテルだけを含むことはない。したがって本明細書で提供される共役部分は、前述のポリマーまたはその単位(例えばラクチドまたはグリコリド)の1つを含んでなり得る。
【0085】
制限を意図しない例示的な反応を下に提供する。免疫調節薬はこれらの例示的な反応の1つに従って、免疫調節薬共役部分に共役する。
【0086】
方法1
一般にアミド合成で使用される活性化試薬を使用して、少なくとも1つの酸末端基があるポリマー(例えばPLA、PLGA)またはその単位をアシルハロゲン化物、アシルイミダゾール、活性エステルなどの反応性アシル化剤に転換する。
【0087】
この二段法では、例えば以下のスキームに示すように、得られる活性化ポリマーまたはその単位(例えばPLA、PLGA)を単離して、次に塩基存在下で免疫調節薬(例えばR848)と反応させて、所望の抱合体(例えばPLA−R848)を得る。
【化1】

【0088】
PLAまたはPLGAなどのポリマーあるいはその単位を活性化アシル化形態に転換するのに使用し得る活性化試薬としては、シアヌル酸フッ化物、N,N−テトラメチルフルオロホルムアミジニウムヘキサフルオロホスファート(TFFH);カルボニルジイミダゾール(CDI)、N,N’−カルボニルビス(3−メチルイミダゾリウム)トリフレート(CBMIT)などのアシルイミダゾール;およびN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N−エチル−N’−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)またはN、N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)などのカルボジイミドの存在下のN−ヒドロキシルスクシンイミド(NHSまたはHOSu)などの活性エステル;炭酸N,N’−ジスクシンイミジル(DSC);DCCもしくはEDCまたはDICの存在下のペンタフルオロフェノール;トリフルオロ酢酸ペンタフルオロフェニルが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0089】
活性化ポリマーまたはその単位は、活性化に続いて、(例えば沈殿、抽出などを通じて)単離し、および/または適切な条件下で(例えば低温で、アルゴン下で)保存してもよく、あるいは即座に使用してもよい。活性化ポリマーまたはその単位は、あらゆる適切な条件下で免疫調節薬と反応させてもよい。場合によっては、反応は、塩基および/または触媒存在下で実施される。塩基/触媒の非限定的例としては、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)および4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)が挙げられる。
【0090】
方法2
酸末端基があるポリマーまたはその単位(例えばあらゆる適切な分子量を有するPLA、PLGA)は、活性化または共役試薬の存在下で免疫調節薬(例えばR848)と反応し、それはポリマーまたはその単位(例えばPLA、PLGA)を原位置で反応性アシル化剤に転換して、所望の抱合体(例えばPLA−R848、PLGA−R848)を与える。
【化2】

【0091】
共役または活性化剤としては、以下が挙げられるがこれに限定されるものではない。EDCまたはDCCまたはDICなどのカルボジイミドの存在下で使用される、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)、3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン(HO−Dhbt)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHSもしくはHOSu)、ペンタフルオロフェノール(PFP)などの活性化剤;カルボジイミドのない活性化剤:O−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート(BOP)、O−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート(PyBOP)、7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート(PyAOP)などのホスホニウム塩;O−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TBTU)およびヘキサフルオロホスファート(HBTU)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HATU)、O−(1,2−ジヒドロ−2−オキソ−1−ピリジル)−1,1,3,3−テトラメチル−ウロニウムテトラフルオロボラート(TPTU)などのウロニウム塩;ビス(テトラメチレン)フルオロホルムアミジニウムヘキサフルオロホスファート(BTFFH)、ブロモトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート(BroP)、ブロモトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート(PyBroP)およびクロロトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート(PyClop)などのハロウロニウムおよびハロホスホニウム塩;O−(3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン−3−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸(TDBTU)および3−(ジエチルオキシホスホリルオキシ)−1,2,3−ベンゾトリアジン−4(3H)−オン(DEPBT)などのベンゾトリアジン誘導体。適切な溶剤の非限定的例としては、本明細書に記載されるようなDMF、DCM、トルエン、酢酸エチルなどが挙げられる。
【0092】
方法3
R848などの免疫調節薬もまた、水酸基で終結するポリマーまたはその単位と共役し得る。このようなポリマーまたはその単位としては、ポリエチレングリコール、ポリラクチド、ポリラクチド−コ−グリコリド、ポリカプロラクトン、およびポリエステルなど、またはその単位が挙げられる。一般に、反応は次のように進展し、そこではラクトン開環重合で使用される触媒を使用して、一般構造(IV)のイミドを前述のポリマーまたはその単位の末端ヒドロキシルと反応させる。得られる反応生成物(II)は、ポリマーまたはその単位エステル結合を通じて薬剤のアミドを結合する。式(IV)および(II)の化合物は、次のようである。
【化3】

式中、
=H、OH、SH、NH、または置換もしくは非置換アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、またはアルキルアミノであり;R=H、アルキル、または置換アルキルであり;Y=NまたはCであり;Y=NであればRは不在であり;またはY=CであればH、アルキル、置換アルキルであるか、またはRと組み合わさってそれらが結合するピリジン環の炭素原子と共に炭素環または複素環を形成し;RはRと組み合わさってそれらが結合するピリジン環の炭素原子と共に炭素環または複素環を形成しなければ、H、または置換もしくは非置換アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、またはアルキルアミノであり;あるいはRと組み合わさってそれらが結合するピリジン環の炭素原子と共に炭素環または複素環を形成し;Rはポリマーまたはその単位であり;XはC、N、O、またはSであり;RおよびRはそれぞれ独立してHであるか、または置換されており;R、R10、R11、およびR12はそれぞれ独立してH、ハロゲン、OH、チオ、NH、または置換もしくは非置換アルキル、アリール、複素環、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルアミノ、またはアリールアミノである。
【0093】
触媒としては、ホスファゼン塩基、1,8−ジアザビシクロウンデカ−7−エン(DBU)、1,4,7−トリアザビシクロデセン(TBD)、およびN−メチル−1,4,7−トリアザビシクロデセン(MTDB)が挙げられるがこれに限定されるものではない。その他の触媒が当該技術分野で知られており、例えばKamberら、Organocatalytic Ring−Opening Polymerization,Chem.Rev.2007年,107,58−13−5840で提供される。適切な溶剤の非限定的例としては、塩化メチレン、クロロホルム、およびTHFが挙げられる。
【0094】
このような方法によって完了した反応の具体例をここに示す。
【化4】

式中、
−OHは、2つの水酸基(例えばジオール、HO−R−OH)を含有し、そのそれぞれはR848に付随するイミドとの反応によって官能化されている。場合によっては、HO−R−OHは、ポリ(炭酸ヘキサメチル)ジオールまたはポリカプロラクトンジオールなどのポリジオールである。
【0095】
ポリジオールが用いられる実施形態では、ジオール基の1つが保護基(例えばt−ブチルオキシカルボニル)で保護されてもよく、したがってポリジオールは式HO−R−OP(式中、Pは保護基である)の化合物である。免疫調節薬−R−OP抱合体を形成する免疫調節薬との反応に続いて、保護基を除去してもよく、第2のジオール基をあらゆる適切な試薬(例えばPLGA、PLA)と反応させてもよい。
【0096】
方法4
抱合体(例えばR848−PLA)は、例えば以下のスキームに示すように、触媒存在下で、免疫調節薬(例えばR848)とポリマーまたはその単位(例えばD/L−ラクチド)とのワンポット開環重合を通じて形成され得る。
【化5】

【0097】
一段階法では、免疫調節薬およびポリマーまたはその単位を、触媒を含んでなる単一反応混合物に合わせてもよい。反応は適切な温度(例えば約150℃)で進展させてもよく、得られる抱合体を一般に知られている技術を使用して単離してもよい。適切な触媒の非限定的例としては、DMAPおよびエチルヘキサン酸スズが挙げられる。
【0098】
方法5
抱合体は、例えば以下のスキームに示すように、触媒存在下で、免疫調節薬(例えばR848)と1つ以上のポリマーまたはその単位(例えばD/L−ラクチドおよびグリコリド)との二段階開環重合によって形成し得る。
【化6】

【0099】
ポリマーまたはその単位は、最初に合わせてもよく、場合によっては(例えば135℃まで)加熱して、溶液を形成する。ポリマーまたはその単位を含んでなる溶液に免疫調節薬を添加してもよく、触媒(例えばエチルヘキサン酸スズ)の添加がそれに続く。得られる抱合体を一般に知られている技術を使用して単離してもよい。適切な触媒の非限定的例としては、DMAPおよびエチルヘキサン酸スズが挙げられる。
【0100】
免疫調節薬(または抗原)はまた、ナノキャリア中にカプセル化し得る。したがってナノキャリアは、得られる本発明の合成ナノキャリアが、本明細書で提供される解離関係式を満たすという条件で、pH感応性のあらゆる材料であり得る。このような合成ナノキャリアについては当該技術分野で良く知られており、Grisetら、J.Am.Chem.Soc.2009年,131,2469〜2471に記載されるような、それらの初期状態においては疎水性であるが細胞内移行時に親水性構造(ヒドロゲル粒子)に転換する、ポリケタールナノキャリア、pH感応性リポソーム、酸膨潤架橋ナノ粒子と、Grisetによる「Delivery of Paclitaxel via pH−Responsive Polymeric Nanoparticles for Prevention of Lung Cancer and Mesothelioma Recurrence」と題された学位論文、Ohio State University,2003年に記載されるようなポリマーナノ粒子とが挙げられる。pH感応性合成ナノキャリアとしてはまた、pH6未満で溶解するポリマーまたは酸性pHで膨潤するポリマーを含んでなるものが挙げられる。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは非ポリケタール材料である。別の実施形態では、合成ナノキャリアはミセルでない。
【0101】
いくつかの実施形態では、免疫調節薬、抗原、および/または標的部分は、ポリマーマトリックスと共有結合している。いくつかの実施形態では、共有結合はリンカーによって仲介される。いくつかの実施形態では、免疫調節薬、抗原、および/または標的部分は、ポリマーマトリックスと非共有結合している。例えばいくつかの実施形態では、免疫調節薬、抗原、および/または標的部分が、ポリマーマトリックス中にカプセル化され、それによって取り囲まれ、および/またはそれ全体に分散され得る。代案としては、またはそれに加えて、免疫調節薬、抗原、および/または標的部分は、疎水性相互作用、電荷相互作用、ファンデルワールス力などによって、ポリマーマトリックスと共有結合し得る。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは、1つ以上のポリマーマトリックスを含んでなる。いくつかの実施形態では、このようなポリマーマトリックスは、被覆層(例えばリポソーム、脂質単層、ミセルなど)で取り囲まれ得る。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアの様々な要素が、ポリマーマトリックスと共役し得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは1つ以上の脂質を任意に含んでなってもよい。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアはリポソームを含んでなってもよい。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは脂質二重層を含んでなってもよい。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは脂質単層を含んでなってもよい。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアはミセルを含んでなってもよい。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは、脂質層(例えば脂質二重層、脂質単層など)で取り囲まれるポリマーマトリックスを含んでなるコアを含んでなってもよい。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは、脂質層(例えば脂質二重層、脂質単層など)で取り囲まれる非高分子コア(例えば金属粒子、量子ドット、セラミック粒子、骨の粒子、ウィルス粒子、タンパク質、核酸、炭水化物など)を含んでなってもよい。
【0103】
それからポリマーマトリックスを形成するための多種多様なポリマーおよび方法が、従来知られている。一般に、ポリマーマトリックスは1つ以上のポリマーを含んでなる。ポリマーは、天然または非天然(合成)ポリマーであってもよい。ポリマーは、2つ以上のモノマーを含んでなるホモポリマーまたは共重合体であってもよい。配列の観点から、共重合体は、ランダム、ブロックであっても、またはランダムおよびブロック配列の組み合わせを含んでなってもよい。典型的に、本発明に従ったポリマーは有機ポリマーである。
【0104】
本発明で使用するのに適したポリマーの例としては、ポリエチレン、ポリカーボネート(例えばポリ(1,3−ジオキサン−2−オン))、ポリ酸無水物(例えばポリ(セバシン酸無水物))、ポリヒドロキシ酸(例えばポリ(β−ヒドロキシアルカノアート))、ポリプロピルフマラート、ポリカプロラクトン、ポリアミド(例えばポリカプロラクタム)、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル(例えばポリラクチド、ポリグリコリド)、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ尿素、ポリスチレン、ポリアミン、および多糖類(例えばキトサン)が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0105】
いくつかの実施形態では、本発明に従ったポリマーとしては、ポリエステル(例えばポリ乳酸、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(1,3−ジオキサン−2−オン));ポリ酸無水物(例えばポリ(セバシン酸無水物));ポリエーテル(例えばポリエチレングリコール);ポリウレタン;ポリメタクリレート;ポリアクリレート;およびポリシアノアクリレートをはじめとするがこれに限定されるものではない、米国食品医薬品局(FDA)による21C.F.R.§177.2600に従った、ヒトにおける使用について認可されたポリマーが挙げられる。
【0106】
いくつかの実施形態では、ポリマーは親水性であり得る。例えばポリマーは、アニオン性基(例えばリン酸基、硫酸基、カルボキシレート基);カチオン性基(例えば四級アミン基);または極性基(例えば水酸基、チオール基、アミン基)を含んでなってもよい。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは、合成ナノキャリア内に親水性環境を作り出す親水性ポリマーマトリックスを含んでなる。いくつかの実施形態では、ポリマーは疎水性であり得る。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは、合成ナノキャリア内に疎水性環境を発生させる疎水性ポリマーマトリックスを含んでなる。ポリマーの親水性か、疎水性かの選択は、合成ナノキャリアに組み込まれる(例えば共役)材料の性質に影響を与えるかもしれない。
【0107】
いくつかの実施形態では、ポリマーは1つ以上の部分および/または官能基によって修飾されてもよい。本発明に従って、多様な部分または官能基を使用し得る。いくつかの実施形態では、ポリマーは、PEGによって、炭水化物によって、および/または多糖類から誘導される非環式ポリアセタール(Papisov,2001年,ACSシンポジウムシリーズ,786:301)によって修飾されてもよい。
【0108】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、脂質または脂肪酸基によって修飾されてもよい。いくつかの実施形態では、脂肪酸基は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、またはリグノセリン酸の1つ以上であってもよい。いくつかの実施形態では、脂肪酸基は、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、α−リノール酸、γ−リノール酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、またはエルカ酸の1つ以上であってもよい。
【0109】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、本明細書で集合的に「PLGA」と称されるポリ(乳酸−コ−グリコール酸)およびポリ(ラクチド−コ−グリコリド)などの乳酸およびグリコール酸単位を含んでなる共重合体;および本明細書で「PGA」と称されるグリコール酸単位、および本明細書で集合的に「PLA」と称されるポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、ポリ−D,L−乳酸、ポリ−L−ラクチド、ポリ−D−ラクチド、およびポリ−D,L−ラクチドなどの乳酸単位を含んでなるホモポリマーをはじめとする、ポリエステルであってもよい。いくつかの実施形態では、例示的なポリエステルとしては、例えばポリヒドロキシ酸;PEG共重合体およびラクチドとグリコリドの共重合体(例えばPLA−PEG共重合体、PGA−PEG共重合体、PLGA−PEG共重合体、およびその誘導体が挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリエステルとしては、例えばポリ酸無水物、ポリ(オルトエステル)、ポリ(オルトエステル)−PEG共重合体、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)−PEG共重合体、ポリリジン、ポリリジン−PEG共重合体、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンイミン)−PEG共重合体、ポリ(L−ラクチド−コ−L−リジン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)、ポリ[α−(4−アミノブチル)−L−グリコール酸]、およびその誘導体が挙げられる。
【0110】
いくつかの実施形態では、ポリマーはPLGAであってもよい。PLGAは、乳酸とグリコール酸の生体適合性かつ生分解性コポリマーであり、様々な形態のPLGAが、乳酸:グリコール酸の比率によって特徴付けられている。乳酸は、L−乳酸、D−乳酸、またはD,L−乳酸であり得る。PLGAの分解速度は、乳酸:グリコール酸比率を変えることで調節し得る。いくつかの実施形態では、本発明に従って使用されるPLGAは、およそ85:15、およそ75:25、およそ60:40、およそ50:50、およそ40:60、およそ25:75、またはおよそ15:85の乳酸:グリコール酸比によって特徴付けられる。
【0111】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、1つ以上のアクリルポリマーであってもよい。特定の実施形態では、アクリルポリマーとしては、例えばアクリル酸およびメタクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸シアノエチル、メタクリル酸アミノアルキル共重合体、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミド共重合体、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸無水物)、メタクリル酸メチル、ポリメタクリレート、ポリ(メタクリル酸メチル)共重合体、ポリアクリルアミド、メタクリル酸アミノアルキル共重合体、メタクリル酸グリシジル共重合体、ポリシアノアクリル酸、および前述のポリマーの1つ以上を含んでなる組み合わせが挙げられる。アクリルポリマーは、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルが完全に重合されて、四級アンモニウム基の含有量が低い共重合体を含んでなってもよい。
【0112】
いくつかの実施形態では、ポリマーはカチオン性ポリマーであり得る。一般に、カチオン性ポリマーは、負に帯電した核酸鎖(例えばDNA、RNA、またはその誘導体)を濃縮および/または保護できる。ポリ(リジン)などのアミン含有ポリマー(Zaunerら、1998年、Adv.Drug Del.Rev.,30:97;およびKabanovら、1995年,Bioconjugate Chem.,6:7)、ポリ(エチレンイミン)(PEI;Boussifら、1995年,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,1995年,2:7297)、およびポリ(アミドアミン)デンドリマー(Kukowska−Latalloら、1996年,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA、93:4897;Tangら、1996年,Bioconjugate Chem.、7:703;およびHaenslerら、1993年,Bioconjugate Chem.,4:372)は、生理学的pHで正に荷電して核酸とイオン対を形成し、多様な細胞系中で形質移入を仲介する。
【0113】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、カチオン性側鎖がある分解性ポリエステルであり得る(Putnamら、1999年,Macromolecules,32:3658;Barreraら、1993年,J.Am.Chem.Soc.,115:11010;Kwonら、1989年,Macromolecules,22:3250;Limら、1999年,J.Am.Chem.Soc.,121:5633;およびZhouら、1990年,Macromolecules,23:3399)。これらのポリエステルの例としては、ポリ(L−ラクチド−コ−L−リジン)(Barreraら、1993年,J.Am.Chem.Soc.,115:11010)、ポリ(セリンエステル)(Zhouら、1990年,Macromolecules,23:3399)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)(Putnamら、1999年,Macromolecules,32:3658;およびLimら、1999年,J.Am.Chem.Soc.,121:5633)、およびポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)(Putnamら、1999年,Macromolecules,32:3658;およびLimら、1999年,J.Am.Chem.Soc.,121:5633)が挙げられる。
【0114】
これらおよびその他のポリマーの特性、およびそれらを調製するための方法については、当該技術分野で良く知られている(例えば米国特許第6,123,727号明細書;米国特許第5,804,178号明細書;米国特許第5,770,417号明細書;米国特許第5,736,372号明細書;米国特許第5,716,404号明細書;米国特許第6,095,148号明細書;米国特許第5,837,752号明細書;米国特許第5,902,599号明細書;米国特許第5,696,175号明細書;米国特許第5,514,378号明細書;米国特許第5,512,600号明細書;米国特許第5,399,665号明細書;米国特許第5,019,379号明細書;米国特許第5,010,167号明細書;米国特許第4,806,621号明細書;米国特許第4,638,045号明細書;および米国特許第4,946,929号明細書;Wangら、2001年,J.Am.Chem.Soc.,123:9480;Limら、2001年,J.Am.Chem.Soc.,123:2460;Langer,2000年,Acc.Chem.Res.,33:94;Langer,1999年,J.Control.Release,62:7;およびUhrichら、1999年,Chem.Rev.,99:3181を参照されたい)。より一般に、特定の適切なポリマーを合成する多様な方法が、「Concise Encyclopedia of Polymer Science and Polymeric Amines and Ammonium Salts」Goethals編,Pergamon Press,1980年;「Principles of Polymerization」Odian,John Wiley & Sons,第4版,2004年;「Contemporary Polymer Chemistry」Allcockら、Prentice−Hall,1981年;Demingら、1997年,Nature,390:386;および米国特許第6,506,577号明細書、米国特許第6,632,922号明細書、米国特許第6,686,446号明細書、および米国特許第6,818,732号明細書に記載される。
【0115】
いくつかの実施形態では、ポリマーは直鎖状または分枝状ポリマーであり得る。いくつかの実施形態では、ポリマーはデンドリマーであり得る。いくつかの実施形態では、ポリマーは実質的に互いに架橋し得る。いくつかの実施形態では、ポリマーは、実質的に架橋フリーであり得る。いくつかの実施形態では、ポリマーは架橋工程を施すことなく、本発明に従って使用し得る。本発明の化合物および合成ナノキャリアは、前述およびその他のポリマーのいずれかのブロック共重合体、グラフト共重合体、配合物、混合物、および/または付加物を含んでなってもよいことをさらに理解すべきである。当業者は、本明細書に列挙されるポリマーが、例示的であって包括的でない、本発明に従って有用であり得るポリマーの一覧を示すことを認識するであろう。
【0116】
いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子などを含んでなってもよい。
【0117】
いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは、1つ以上の両親媒性実体を任意に含んでなってもよい。いくつかの実施形態では、両親媒性実体は、安定性増大、均一性改善、または粘度増大によって、合成ナノキャリアの生成を促進し得る。いくつかの実施形態では、両親媒性実体は、(例えば脂質二重層、脂質単層などの)脂質膜内面と結合し得る。当該技術分野で知られている多数の両親媒性実体が、本発明に従った合成ナノキャリア作成で使用するのに適する。このような両親媒性実体としては、ホスホグリセリド;ホスファチジルコリン;ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE);ジオレイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム(DOTMA);ジオレオイルホスファチジルコリン;コレステロール;コレステロールエステル;ジアシルグリセロール;ジアシルグリセロールスクシネート;ジホスファチジルグリセロール(DPPG);ヘキサンデカノール;ポリエチレングリコール(PEG)などの脂肪アルコール;ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル;パルミチン酸またはオレイン酸などの表面活性脂肪酸;脂肪酸;脂肪酸モノグリセリド;脂肪酸ジグリセリド;脂肪酸アミド;ソルビタントリオレアート(Span(登録商標)85);グリココレート;ソルビタンモノラウレート(Span(登録商標)20);ポリソルベート20(Tween(登録商標)20);ポリソルベート60(Tween(登録商標)60);ポリソルベート65(Tween(登録商標)65);ポリソルベート80(Tween(登録商標)80);ポリソルベート85(Tween(登録商標)85);ポリオキシエチレンモノステアレート;スルファクチン;ポロキサマー;ソルビタントリオレアートなどのソルビタン脂肪酸エステル;レシチン;リゾレシチン;ホスファチジルセリン;ホスファチジルイノシトール;スフィンゴミエリン;ホスファチジルエタノールアミン(ケファリン);カルジオリピン;ホスファチジン酸;セレブロシド;ジセチルホスフェート;ジパルミトイルホスファチジルグリセロール;ステアリルアミン;ドデシルアミン;ヘキサデシル−アミン;アセチルパルミテート;グリセロールリシノレエート;ヘキサデシルステアレート;ミリスチン酸イソプロピル;チロキサポール;ポリ(エチレングリコール)5000−ホスファチジルエタノールアミン;ポリ(エチレングリコール)400−モノステアレート;リン脂質;高界面活性を有する合成および/または天然の洗剤;デオキシコレート;シクロデキストリン;カオトロピック塩;イオン対形成剤;およびそれらの組み合わせが挙げられるがこれに限定されるものではない。両親媒性実体構成要素は、異なる両親媒性実体の混合物であってもよい。当業者は、これが例示的であって包括的でない、界面活性のある物質の一覧であることを認識するであろう。本発明に従って使用される合成ナノキャリアを生成するために、あらゆる両親媒性実体を使用してもよい。
【0118】
いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは、任意に1つ以上の炭水化物を含んでなってもよい。炭水化物は、天然であっても合成であってもよい。炭水化物は、誘導体化された天然炭水化物であってもよい。特定の実施形態では、炭水化物は、グルコース、果糖、ガラクトース、リボース、乳糖、スクロース、マルトース、トレハロース、セロビオース、マンノース、キシロース、アラビノース、グルクロン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸、グルコサミン、ガラクトサミン、およびノイラミン酸をはじめとするがこれに限定されるものではない、単糖類または二糖類を含んでなる。特定の実施形態では、炭水化物は、プルラン、セルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシセルロース(HC)、メチルセルロース(MC)、デキストラン、シクロデキストラン、グリコーゲン、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、カラゲナン、グリコン、アミロース、キトサン、N,O−カルボキシルメチルキトサン、アルギンおよびアルギン酸、デンプン、キチン、ヘパリン、コンニャク、グルコマンナン、プスツラン、ヘパリン、ヒアルロン酸、カードラン、およびキサンタンをはじめとするがこれに限定されるものではない多糖類である。特定の実施形態では、炭水化物は、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、およびラクチトールをはじめとするがこれに限定されるものではない、糖アルコールである。
【0119】
合成ナノキャリアは、当該技術分野で知られている多種多様な方法を使用して調製してもよい。例えば合成ナノキャリアは、ナノ沈殿、流体チャネルを使用したフロー収束、噴霧乾燥、単一および二重エマルジョン溶剤蒸発、溶剤抽出、相分離、製粉、微小エマルジョン処置、マイクロ加工、ナノ加工、犠牲層、単純および複合コアセルベーション、および当業者に良く知られているその他の方法などの方法によって形成し得る。代案としては、またはそれに加えて、単分散半導体、導電性、磁性、有機、およびその他のナノ材料の水性および有機溶媒合成について記載されている(Pellegrinoら、2005年,Small,1:48;Murrayら、2000年,Ann.Rev.Mat.Sci.,30:545;およびTrindadeら、2001年,Chem.Mat.,13:3843)。追加的方法が文献に記載されている(Doubrow編,「Microcapsules and Nanoparticles in Medicine and Pharmacy」CRC Press,Boca Raton,1992年;Mathiowitzら、1987年,J.Control.Release,5:13;Mathiowitzら、1987年,Reactive Polymers,6:275;およびMathiowitzら、1988年,J.Appl.Polymer Sci.,35:755、そしてまた米国特許第5578325号明細書および米国特許第6007845号明細書を参照されたい)。
【0120】
特定の実施形態では、ナノ沈殿処理または噴霧乾燥によって合成ナノキャリアが調製される。合成ナノキャリアの調製で使用される条件は、所望のサイズまたは特性(例えば疎水性、親水性、外的形態、「粘性」、形状など)の粒子を生じるように変更されてもよい。合成ナノキャリアを調製する方法および使用される条件(例えば溶剤、温度、濃度、気流速度など)は、合成ナノキャリアと共役される材料および/またはポリマーマトリックス組成に左右されるかもしれない。
【0121】
上記の方法のいずれかによって調製される粒子が、所望範囲外のサイズ範囲を有する場合、例えばふるいを使用して粒子を分粒し得る。
【0122】
共役は多様な異なるやり方で達成し得て、共有結合または非共有結合であり得る。このような共役は、本発明の合成ナノキャリアの表面または内部に配置されてもよい。本発明の合成ナノキャリアの要素(免疫特性表面がそれからなる部分、標的部分、ポリマーマトリックスなど)は、例えば1つ以上の共有結合によって互いに直接共役されてもよく、または1つ以上のリンカーの手段によって共役されてもよい。合成ナノキャリアを官能化する追加的方法は、Saltzmanらに付与された米国特許出願公開第2006/0002852号明細書、DeSimoneらに付与された米国特許出願公開第2009/0028910号明細書、またはMurthyらに付与された国際公開第2008/127532A1号パンフレットから適合されてもよい。
【0123】
本発明に従って、あらゆる適切なリンカーを使用し得る。リンカーを使用して、アミド結合、エステル結合、ジスルフィド結合などを形成してもよい。リンカーは、炭素原子またはヘテロ原子(例えば窒素、酸素、イオウなど)を含有してもよい。いくつかの実施形態では、リンカーは脂肪族またはヘテロ脂肪族リンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーはポリアルキルリンカーである。特定の実施形態では、リンカーはポリエーテルリンカーである。特定の実施形態では、リンカーはポリエチレンリンカーである。特定の実施形態では、リンカーはポリエチレングリコール(PEG)リンカーである。
【0124】
いくつかの実施形態では、リンカーは切断可能リンカーである。例としていくつか挙げると、切断可能リンカーとしては、プロテアーゼ切断可能ペプチドリンカー、ヌクレアーゼ感応性核酸リンカー、リパーゼ感応性脂質リンカー、グリコシダーゼ感応性炭水化物リンカー、pH感応性リンカー、低酸素状態感応性リンカー、光切断可能リンカー、易熱性リンカー、酵素切断可能リンカー(例えばエステラーゼ切断可能リンカー)、超音波感応性リンカー、X線切断可能リンカーなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、リンカーは切断可能リンカーでない。
【0125】
多様な方法を使用して、リンカーまたは合成ナノキャリアのその他の要素を合成ナノキャリアに共役し得る。一般ストラテジーとしては、(例えば静電相互作用を通じた)受動的吸着、多価キレート化、特異的結合対のメンバー間の高親和性非共有結合、共有結合形成などが挙げられる(Gaoら、2005年,Curr.Op.Biotechnol.,16:63)。いくつかの実施形態では、クリックケミストリーを使用して、材料を合成ナノキャリアに共役し得る。
【0126】
非共有特異的結合の相互作用を用い得る。例えば粒子または生体分子のどちらかをビオチンで官能化して、もう片方をストレプトアビジンで官能化し得る。これらの2つの部分は互いに非共有性かつ高親和性に特異的に結合し、それによって粒子と生体分子が共役する。その他の特異結合対も同様に使用できる。代案としては、ニッケル−ニトリロ三酢酸(Ni−NTA)と共役する粒子に、ヒスチジン標識生体分子を共役し得る。
【0127】
共役の追加的な一般情報については、Columbus OH,PO Box 3337,Columbus,OH,43210の米国化学会(The American Chemical Society)により発行されるBioconjugate Chemistry学術誌;Pierceウェブサイトで入手でき、元は1994〜95年Pierce Catalogで公開された「Cross−Linking」,Pierce Chemical Technical Library,およびその中の引用文献;Wong SS,「Chemistry of Protein Conjugation and Cross−linking」、CRC Press Publishers,Boca Raton,1991年;およびHermanson、G.T.、「Bioconjugate Techniques」Academic Press,Inc.,San Diego,1996年を参照されたい。
【0128】
本発明の組成物は、あらゆる適切な様式で作成し得て、本発明は、本明細書に記載される方法を使用して作成し得る組成物に決して限定されないことを理解すべきである。適切な方法の選択には、共役させる特定部分の特性に対して注意を払う必要があるかもしれない。
【0129】
医薬組成物および使用方法
本発明に従った組成物は、薬学的に許容できる賦形剤と組み合わされた本発明の合成ナノキャリアを含んでなる。組成物は、従来の製薬および調剤技術を使用して作成し、有用な剤形にしてもよい。実施形態では、本発明の合成ナノキャリアは注射のために、保存料と共に無菌の食塩溶液に懸濁される。
【0130】
いくつかの実施形態では、本発明の合成ナノキャリアは無菌条件下で製造されるか、または最後に滅菌される。これは得られる組成物が無菌かつ非感染性であることを確実にし得て、したがって非無菌の組成物と比較して安全性が改善される。これは特に合成ナノキャリアを投与される対象が、免疫欠如を有し、感染症を患っており、および/または感染症に罹患しやすい場合に、有益な安全対策を提供する。いくつかの実施形態では、製剤ストラテジー次第で、本発明の合成ナノキャリアを凍結乾燥し、懸濁状態で、または凍結乾燥粉末として、長期活性を失うことなく保存してもよい。
【0131】
本発明の組成物は、皮下、筋肉内、皮内、経口、非経口、経鼻、経粘膜、直腸、点眼、経皮(transdermal)、経皮(transcutaneous)、またはこれらの経路の組み合わせをはじめとするがこれに限定されるものではない、多様な投与経路によって投与してもよい。
【0132】
本明細書に記載される組成物および方法を使用して、免疫応答を誘発し、増強し、刺激し、調節し、または誘導し得る。本明細書に記載される組成物および方法は、がん、感染症、代謝疾患、変性疾患、炎症性疾患、免疫学的疾患、またはその他の障害および/または病状などの病状の診断、予防、および/または治療で使用し得る。本明細書に記載される組成物および方法はまた、ニコチンまたは麻薬に対する依存症などの依存症の予防または治療のためにも使用し得る。本明細書に記載される組成物および方法はまた、毒素、有害物質、環境毒素、またはその他の有害な作用因子への曝露に起因する病状の予防および/または治療のためにも使用し得る。
【実施例】
【0133】
実施例1:活性化ポリマーの調製
PLA(dl−ポリラクチド)(Boehringer−IngelheimからのResomer R202H、KOH相当酸価0.21mmol/g、固有粘度(iv):0.21dl/g)(10g、2.1mmol、1.0当量)をジクロロメタン(DCM)(35mL)に溶解した。EDC(2.0g、10.5mmol、5当量)およびNHS(1.2g、10.5mmol、5当量)を添加した。超音波処理の助けを借りて、固形物を溶解した。得られた溶液を室温で6日間撹拌した。溶液を濃縮してDCMの大部分を除去し、残液を250mLのジエチルエーテルおよび5mLのMeOH溶液に添加して、活性化PLA−NHSエステルを沈殿させた。溶剤を除去してポリマーをエーテルで2回洗浄し(2×200mL)、真空下で乾燥させてPLA−NHS活性化エステルを白色の泡状固体として得た(約8gを回収し、H NMRを使用してNHSエステルの存在を確認した)。PLA−NHSエステルは、−10度未満の冷凍庫内でアルゴン下において使用時まで保存した。
【0134】
代案としては、DCMの代わりにDMF、THF、ジオキサン、またはCHCl中で反応を実施し得る。EDCの代わりにDCCを使用し得る(得られるDCC−尿素は、PLA−NHSエステルのエーテルからの沈殿の前に濾過して除去する)。EDCまたはDCCおよびNHSの量は、PLAの2から10当量の範囲であり得る。
【0135】
同様に、ivが0.33dl/gで酸価が0.11mmol/gのPLAまたはPLGA(Resomer RG653H、65%ラクチド−35%グリコリド、iv:0.39dl/gおよび酸価0.08mmol/g)またはPLGA(Resomer RG752H、75%ラクチド−25%グリコリド、iv:0.19dl/gおよび酸価0.22mmol/g)を対応するPLA−NHSまたはPLGA−NHS活性化エステルに変換し、−10度未満の冷凍庫内でアルゴン下において使用時まで保存する。
【0136】
実施例2:活性化ポリマーの調製
PLA(R202H、酸価0.21mmol/g)(2.0g、0.42mmol、1.0当量)を10mLの乾燥アセトニトリルに溶解した。N’,N−ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)(215mg、1.26mmol、3.0当量)および触媒量の4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)を添加した。得られた混合物をアルゴン下で1日間撹拌した。得られた溶液をほぼ乾燥するまで濃縮した。次に残留物を40mLのエーテルに添加してポリマーを沈殿させ、それをエーテルで2回洗浄し(2×30mL)、真空下で乾燥させてPLA−NHS活性化エステルを得た(1H NMRはNHSエステル量が約80%であることを示した)。
【0137】
実施例3:活性化ポリマーの調製
PLA(R202H)(5.0g、1.05mmol)を25mLの無水DCMおよび2.5mLの無水DMFに溶解した。DCC(650mg、3.15mmol、5.0当量)およびペンタフルオロフェノール(PFP)(580mg、3.15mmol、5.0当量)を添加した。得られた溶液を室温で6日間撹拌し、次に濃縮してDCMを除去した。得られた残留物を250mLのエーテルに添加して、活性化PLAポリマーを沈殿させ、それをエーテルで洗浄し(2×100mL)、真空下で乾燥させてPLA−PFP活性化エステルを白色の泡状固体(4.0g)として得た。
【0138】
実施例4:免疫調節薬の共役
PLA−NHS(1.0g)、R848(132mg、0.42mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(0.073mL、0.42mmol)をアルゴン下で2mLの乾燥DMFに溶解した。得られた溶液を50〜60℃で2日間加熱した。溶液を室温に冷却し、40mLの脱イオン(DI)水に添加して、ポリマー生成物を沈殿させた。次にポリマーをDI水(40mL)およびエーテル(2×40mL)で洗浄し、真空下30℃で乾燥させて、R848−PLA抱合体を白色の泡状固体として得た(0.8g、H NMRはアミド結合を通じたR848のPLAへの共役を示した)。ポリマー上のR848の共役の程度(装填量)は、次のようにしてHPLC分析によって確認した。秤量された量のポリマーをTHF/MeOHに溶解して15%NaOHで処理した。得られた加水分解ポリマー生成物をR848の量について、HPLCによって標準曲線と比較して分析した。
【0139】
実施例5:免疫調節薬の共役
PLA−NHS(1.0g、0.21mmol、1.0当量)、R848(132mg、0.42mmol、2.0当量)、DIPEA(0.15mL、0.84mmol、4.0当量)、およびDMAP(25mg、0.21mmol、1.0当量)をアルゴン下で2mLの乾燥DMFに溶解した。得られた溶液を50〜60℃で2日間加熱した。溶液を室温に冷却して、40mLの脱イオン(DI)水に添加してポリマー生成物を沈殿させた。次にポリマーをDI水(40mL)とエーテル(2×40mL)で洗浄し、真空下30℃で乾燥させてPLA−R848抱合体を白色の泡状固体として得た(0.7g;20mgのポリマーを0.2mLのTHF、0.1mLのMeOH、および0.1mLの15%NaOHの溶液中で加水分解した。ポリマー上のR848の量は、逆相HPLC分析(C18カラム、移動相A:水中の0.1%TFA、移動相B:CHCN中の0.1%TFA、勾配)によって約35mg/gと測定された)。
【0140】
実施例6:免疫調節薬の共役
PLA(R202H)(2.0g、0.42mmol、1.0当量)、DCC(260mg、1.26mmol、3.0当量)、NHS(145mg、1.26mmol、3.0当量)、R848(200mg、0.63mmol、1.5当量)、DMAP(77mg、0.63mmol、1.5当量)、およびDIPEA(0.223mL、1.26mmol、3.0当量)を4mLの乾燥DMFに溶解した。混合物を50〜55℃で3日間加熱した。混合物を室温に冷却し、DCMで希釈した。DCC−尿素を濾過して濾液を濃縮し、DCMを除去した。得られたDMF中の残留物を水(40mL)に添加して、ポリマー生成物を沈殿させ、それを水(40mL)、エーテル/DCM(40mL/4mL)、およびエーテル(40mL)で洗浄した。真空下30℃で乾燥後、所望のPLA−R848抱合体を白色の泡状固体(1.5g)として得た。
【0141】
実施例7:免疫調節薬の共役
PLA(R202H)(2.0g、0.42mmol、1.0当量)、EDC(242mg、1.26mmol、3.0当量)、HOAt(171mg、1.26mmol、3.0当量)、R848(200mg、0.63mmol、1.5当量)、およびDIPEA(0.223mL、1.26mmol、3.0当量)を4mLの乾燥DMFに溶解した。混合物を50〜55℃で2日間加熱した。溶液を室温に冷却して水(40mL)に添加し、ポリマー生成物を沈殿させて、それを水(40mL)、エーテル/MeOH(40mL/2mL)、およびエーテル(40mL)で洗浄した。オレンジ色のポリマーを4mLのDCMに溶解し、得られた溶液を40mLのエーテルに添加して、ポリマーをほぼオレンジ色なしに沈殿させた。淡色のポリマーをエーテル(40mL)で洗浄した。真空下30℃で乾燥後、所望のPLA−R848抱合体を淡褐色泡状固体(1.5g)として得た。
【0142】
実施例8:免疫調節薬の共役
PLA(R202H)(1.0g、0.21mmol、1.0当量)、EDC(161mg、0.84mmol、4.0当量)、HOBt.H2O(65mg、0.42mmol、2.0当量)、R848(132mg、0.42mmol、2.0当量)、およびDIPEA(0.150mL、0.84mmol、4.0当量)を2mLの乾燥DMFに溶解した。混合物を50〜55℃で2日間加熱した。溶液を室温に冷却し、水(40mL)に添加してポリマー生成物を沈殿させた。オレンジ色のポリマーを2mLのDCMに溶解し、得られた溶液を40mLのエーテルに添加してポリマーを沈殿させ、それを水/アセトン(40mL/2mL)およびエーテル(40mL)で洗浄した。真空下30℃で乾燥後、灰色がかった泡状固体として、所望のPLA−R848抱合体を得た(1.0g;ポリマー上のR848の装填量はHPLC分析に基づいて約45mg/gであり、H NMRによって確認された)。同様にして、PLGA(75%ラクチド)−R848およびPLGA(50%ラクチド)−R848を調製した。
【0143】
実施例9:免疫調節薬の共役
【化7】

撹拌棒および冷却管を装着した丸底フラスコに、イミダゾキノリン、レシキモド(R−848、218mg、6.93×10−4モル)、D/Lラクチド(1.0g、6.93×10−3モル)、および無水硫酸ナトリウム(800mg)を添加した。フラスコおよび内容物を真空下55℃で8時間乾燥させた。冷却後、次にフラスコをアルゴンでフラッシュしてトルエン(50mL)を添加した。反応を全てのラクチドが溶解するまで120℃に設定された油浴内で撹拌し、次にピペットでエチルヘキサン酸スズ(19mg、15μL)を添加した。アルゴン下で16時間加熱を継続した。冷却後、反応をエーテル(200mL)で希釈して、溶液を水(200mL)で洗浄した。溶液を硫酸マグネシウム上で乾燥させて、濾過して真空下で蒸発させて880mgの粗製ポリ乳酸−R−848抱合体を得た。塩化メチレン中の10%メタノールを溶出剤として使用して、シリカ上で粗製ポリマーをクロマトグラフ分析した。抱合体を含有する画分をプールして蒸発させ、精製抱合体を得た。これを高真空下で乾燥させ、抱合体を固体フォームとして702mg(57.6%)の収率で得た。キノリンの芳香族部分のNMRシグナルを統合し、これを乳酸のCHプロトンの統合強度と比較することで、抱合体の分子量はおよそ2KDと判定された。GPCは、抱合体が5%未満の遊離R848を含有したことを示した。
【0144】
実施例10:低分子量PLA−R848抱合体の調製
【化8】

EtOAc(120mL)中のPLA−COH(平均分子量:950、DPI:1.32;5.0g、5.26mmol)およびHBTU(4.0g、10.5mmol)溶液をアルゴン下室温で45分間撹拌した。化合物R848(1.65g、5.26mmol)を添加して、DIPEA(5.5mL、31.6mmol)がそれに続いた。混合物を室温で6時間、次に50〜55℃で15時間撹拌した。冷却後、混合物をEtOAc(150mL)で希釈して、1%クエン酸溶液(2×40mL)、水(40mL)、および鹹水溶液(40mL)で洗浄した。溶液をNaSO(10g)上で乾燥させ、ゲル様残留物に濃縮した。次にメチルt−ブチルエーテル(MTBE)(150mL)を添加して、ポリマー抱合体を溶液から析出させた。次にポリマーをMTBE(50mL)で洗浄し、真空下室温で2日間乾燥させて白色フォームにした(5.3g、GPCによる平均分子量は1200、PDI:1.29;HPLCによるR848装填量は20%)。
【0145】
実施例11:低分子量PLA−R848抱合体の調製
【化9】

EtOAc(120mL)中のPLA−CO2H(平均分子量:1800、DPI:1.44;9.5g、5.26mmol)およびHBTU(4.0g、10.5mmol)の溶液をアルゴン下室温で45分間撹拌した。化合物R848(1.65g、5.26mmol)を添加して、DIPEA(5.5mL、31.6mmol)がそれに続いた。混合物を室温で6時間、次に50〜55℃で15時間撹拌した。冷却後、混合物をEtOAc(150mL)で希釈して、1%クエン酸溶液(2×40mL)、水(40mL)、および鹹水溶液(40mL)で洗浄した。溶液をNaSO(10g)上で乾燥させ、ゲル様残留物に濃縮した。次にメチルt−ブチルエーテル(MTBE)(150mL)を添加して、ポリマー抱合体を溶液から析出させた。次にポリマーをMTBE(50mL)で洗浄し、真空下室温で2日間乾燥させ白色フォームにした(9.5g、GPCによる平均分子量は1900、PDI:1.53;HPLCによるR848装填量は17%)。
【0146】
実施例12:イミド開環を通じたPCADKへのR848の共役
以下の実施例は、下のステップ1で例証されるような、Pulendranらに付与された国際公開第2008/127532号パンフレットで提供される方法に従った、ポリケタールPCADKの合成について記載する。
【0147】
短経路蒸留ヘッドに接続された50mL二口フラスコ内で、PCADKを合成する。最初に5.5mgの再結晶化p−トルエンスルホン酸(0.029mmol、Aldrich,St.Louis,MO)を6.82mLの酢酸エチルに溶解して、1,4−シクロヘキサンジメタノール(12.98g、90.0mmol、Aldrich)を含有する30mLのベンゼン溶液(100℃に保持される)に添加する。酢酸エチルを煮沸して取り除き、蒸留2,2−ジメトキシプロパン(10.94mL、90.0mmol、Aldrich)をベンゼン溶液に添加して重合反応を開始する。引き続いて計量漏斗を通じて、追加的用量の2,2−ジメトキシプロパン(5mL)およびベンゼン(25mL)を6時間にわたって反応に毎時添加し、蒸留除去される2,2−ジメトキシプロパンおよびベンゼンを補う。8時間後、500μLのトリエチルアミンの添加によって反応を停止する。ポリマーを冷ヘキサン(−20℃で保存される)中の沈殿によって単離し、真空濾過がそれに続く。UV検出器を装着したゲル透過クロマトグラフィー(GPC)(日本国京都の島津製作所)によって、PCADKの分子量を測定する。THFを流速1ml/分の移動相として使用する。Polymer Laboratories(Amherst,MA)からのポリスチレン標準を使用して、分子量較正曲線を確立する。この化合物を使用して、引き続く全実験においてPCADK粒子を作成する。
【0148】
R848は、下に示すステップ2に従ってイミド開環を通じて、分子量6000を有するPCADKの末端アルコール基に共役してもよい。
【0149】
ステップ1:PCADKの調製
【化10】

ステップ2:PCADKのR848への共役
【化11】

【0150】
ステップ2では、ステップ1(12g、2.0×10−3モル)からのポリマーを塩化メチレン100mLに溶解し、R848のラクタム(3.3g、8.0×10−3モル)を添加する。1,5,7−トリアザビシクロ−[4,4,0]デカ−5−エン(TBD、0.835g、6×10−3モル)を一度に添加しながら、このスラリーを撹拌する。室温で一晩の撹拌後、透明溶液が形成する。溶液を塩化メチレン(100mL)で希釈し、溶液を5%クエン酸で洗浄する。この溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、その後それを濾過して真空下で蒸発させる。高真空下での乾燥後、11.3グラム(81%)のポリマーが得られる。一部を酸の中で加水分解して、R848含量は9重量%と測定される。
【0151】
実施例13:イミド開環を通じたポリ−カプロラクトンジオールへのR848の共役
イミド開環を使用して、分子量2000のポリ−カプロラクトンジオールの末端アルコール基にR854を付着する。ポリカプロラクトンジオールはAldrich Chemical Company(カタログ番号189421)から購入され、以下の構造を有する。
【化12】

【0152】
ポリカプロラクトンジオール−R854抱合体は、以下の構造を有する。
【化13】

【0153】
ポリマー(5g、2.5×10−3モル)を塩化メチレン25mLに溶解し、R854のラクタム(2.4g、5.0×10−3モル)を添加する。1,5,7−トリアザビシクロ−[4,4,0]デカ−5−エン(TBD、0.557g、4×10−3モル)を一度に添加しながら、このスラリーを撹拌する。室温で15分間撹拌した後、透明な淡黄色溶液が形成する。溶液を塩化メチレン(100mL)で希釈し、溶液を5%クエン酸で洗浄する。この溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、その後それを濾過して真空下で蒸発させる。高真空下での乾燥後、5.2グラム(70%)のポリマーが得られる。一部を酸の中で加水分解して、R848含量が18.5重量%であると判定される。
【0154】
実施例14:イミド開環を通じたポリ−(ヘキサメチレンカーボネート)ジオールへのR848の共役
イミド開環を使用して、分子量2000のポリ−(ヘキサメチレンカーボネート)ジオールの末端アルコール基にR848を付着する。ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオールは、Aldrich Chemical Company(カタログ番号461164)から購入されて、以下の構造を有する。
HO−[CH(CHCHOCO]nCH(CHCH−OH
【0155】
ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール−R848抱合体は以下の構造を有する。
【化14】

【0156】
ポリマー(5g、2.5×10−3モル)を塩化メチレン25mLに溶解し、R848のラクタム(2.06g、5.0×10−3モル)を添加する。1,5,7−トリアザビシクロ−[4,4,0]デカ−5−エン(TBD、0.557g、4×10−3モル)を一度に添加しながら、このスラリーを撹拌する。室温で一晩の撹拌後、透明な淡黄色溶液が形成する。溶液を塩化メチレン(100mL)で希釈し、溶液を5%クエン酸で洗浄する。この溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、その後それを濾過して真空下で蒸発させる。高真空下での乾燥後、5.9グラム(84%)のポリマーが得られる。NMRを使用してR848含量を測定し、それは21%と判定される。
【0157】
実施例15:エチルヘキサン酸スズ触媒を使用したイミダゾキノリンのポリ乳酸抱合体
【化15】

撹拌棒および冷却管を装着した二口丸底フラスコに、イミダゾキノリンレシキモド(R−848、100mg、3.18×10−4モル)、D/Lラクチド(5.6g、3.89×10−2モル)、および無水硫酸ナトリウム(4.0g)を入れた。フラスコおよび内容物を真空下50℃で8時間乾燥させた。次にフラスコをアルゴンでフラッシュし、トルエン(100mL)を添加した。反応を全てのラクチドが溶解するまで、120℃に設定された油浴内で撹拌し、次にエチルヘキサン酸スズ(75mg、60μL)をピペットで添加した。アルゴン下で16時間加熱を継続した。冷却後、水(20mL)を添加し、30分間撹拌を継続した。反応を追加的なトルエン(200mL)で希釈して、次に水(200mL)で洗浄した。次にトルエン溶液を5%濃塩酸(200mL)を含有する10%塩化ナトリウム溶液で洗浄し、飽和炭酸水素ナトリウム(200mL)がそれに続いた。TLC(シリカ、塩化メチレン中の10%メタノール)は、溶液が遊離R−848を含有しないことを示した。溶液を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過して真空下で蒸発させて3.59グラムのポリ乳酸−R−848抱合体を得た。ポリマーの一部を塩基中で加水分解し、HPLCによってR−848含量について調べた。R−848濃度の標準曲線とHPLC応答とを比較することで、ポリマーは、ポリマー1gあたり4.51mgのR−848を含有すると判定された。ポリマーの分子量は、GPCによって約19,000と測定された。
【0158】
実施例16:イミダゾキノリンの低分子量ポリ乳酸抱合体
【化16】

撹拌棒および冷却管を装着した丸底フラスコに、イミダゾキノリン、レシキモド(R−848、218mg、6.93×10−4モル)、D/Lラクチド(1.0g、6.93×10−3モル)、および無水硫酸ナトリウム(800mg)を添加した。フラスコおよび内容物を真空下55℃で8時間乾燥させた。次に冷却後、フラスコをアルゴンでフラッシュしてトルエン(50mL)を添加した。反応を全てのラクチドが溶解するまで120℃に設定された油浴内で撹拌し、次にエチルヘキサン酸スズ(19mg、15μL)をピペットで添加した。アルゴン下で16時間加熱を継続した。冷却後、反応をエーテル(200mL)で希釈して、溶液を水(200mL)で洗浄した。溶液を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過して真空下で蒸発させて880mgの粗製ポリ乳酸−R−848抱合体を得た。塩化メチレン中の10%メタノールを溶出剤として使用して、シリカ上で粗製ポリマーをクロマトグラフ分析した。抱合体を含有する画分をプールして蒸発させ、精製抱合体を得た。これを高真空下で乾燥させて、抱合体を702mg(57.6%)の収率で固体フォームとして得た。キノリンの芳香族部分のNMRシグナルを統合し、これを乳酸のCHプロトンの統合強度と比較することで、抱合体の分子量はおよそ2KDと判定された。GPCは、抱合体が5%未満の遊離R848を含有したことを示した。
【0159】
実施例17:低分子量のイミダゾキノリンのポリ乳酸−コ−グリコール酸抱合体
【化17】

撹拌棒および冷却管を装着した丸底フラスコに、イミダゾキノリン、レシキモド(R−848、436mg、1.39×10−3モル)、グリコリド(402mg、3.46×10−3モル)、D/Lラクチド(2.0g、1.39×10−2モル)、および無水硫酸ナトリウム(1.6g)を入れた。フラスコおよび内容物を真空下55℃で8時間乾燥させた。次に冷却後、フラスコをアルゴンでフラッシュしてトルエン(60mL)を添加した。反応を全てのR848、グリコリド、およびラクチドが溶解するまで、120℃に設定した油浴内で撹拌し、次にエチルヘキサン酸スズ(50mg、39μL)をピペットで添加した。アルゴン下で16時間加熱を継続した。冷却後、反応を酢酸エチル(200mL)で希釈して、溶液を水(200mL)で洗浄した。溶液を硫酸マグネシウム上で乾燥させて、濾過して真空下で蒸発させ、粗製PLGA−R−848抱合体を得た。塩化メチレン中の10%メタノールを溶出剤として使用して、シリカ上で粗製ポリマーをクロマトグラフ分析した。抱合体を含有する画分をプールして蒸発させ、精製抱合体を得た。これを高真空下で乾燥させて抱合体を1.55g(54.6%)の収率で固体フォームとして得た。キノリンの芳香族部分のNMRシグナルを統合し、これを乳酸のCHプロトンの統合強度と比較することで、抱合体の分子量はおよそ2KDと判定された。GPCは、抱合体が検出可能な遊離R848を含有しないことを示した。
【0160】
実施例18:リチウムジイソプロピルアミド触媒作用を使用したイミダゾキノリンのポリ乳酸抱合体
イミダゾキノリン(R−848)、D/Lラクチド、および関連ガラス器具を使用に先だって、全て真空下50℃で8時間乾燥させた。撹拌棒および冷却管を装着した丸底フラスコに、R−848(33mg、1.05×10−4モル)および乾燥トルエン(5mL)を入れた。これを加熱して還流し、全てのR−848を溶解した。溶液を窒素下で撹拌し、室温に冷却して超微粒子R−848の懸濁液を得た。この懸濁液にリチウムジイソプロピルアミド(THF中の2.0M、50μL、1.0×10−4モル)の溶液を添加して、その後撹拌を室温で5分間継続した。形成された淡黄色溶液に、シリンジを通じて窒素下で、D/Lラクチドの熱(120℃)溶液(1.87g、1.3×10−2モル)を添加した。淡黄色溶液を冷ましてから、室温で1時間撹拌した。溶液を塩化メチレン(200mL)で希釈して、次にそれを1%塩酸(2×50mL)で洗浄し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(50mL)がそれに続いた。溶液を硫酸マグネシウム上で乾燥させて濾過し、真空下で蒸発させてポリ乳酸−R−848抱合体を得た。TLC(シリカ、塩化メチレン中の10%メタノール)は、溶液が遊離R−848を含有しないことを示した。ポリマーを塩化メチレン(10mL)に溶解し、溶液を撹拌されるヘキサン(200mL)に滴下した。沈殿したポリマーをデカンテーションによって単離し、真空下で乾燥させて1.47グラムのポリ乳酸-R−848抱合体を白色固体として得た。ポリマーの一部を塩基中で加水分解し、HPLCによってR−848含量について調べた。R−848濃度の標準曲線をHPLC応答と比較することで、ポリマーは、ポリマー1gあたり10.96mgのR−848を含有すると判定された。
【0161】
実施例19:低分子量PLAへの免疫調節薬の付着
分子量が5000(10.5g、2.1mmol、1.0当量)であるPLA(D/L−ポリラクチド)をジクロロメタン(DCM)(35mL)に溶解する。EDC(2.0g、10.5mmol、5当量)およびNHS(1.2g、10.5mmol、5当量)を添加する。得られる溶液を室温で3日間撹拌する。溶液を濃縮してDCMの大部分を除去し、残留物を250mLのジエチルエーテルおよび5mLのMeOHの溶液に添加して、活性化PLA−NHSエステルを沈殿させる。溶剤を除去して、ポリマーをエーテルで2回洗浄し(2×200mL)、真空下で乾燥させてPLA−NHS活性化エステルを白色の泡状固体として得る(約8gが回収され、H NMRを使用してNHSエステルの存在を確認し得る)。PLA−NHSエステルを−10度未満の冷凍庫内でアルゴン下において使用時まで保存する。
【0162】
代案としては、反応をDCMの代わりに、DMF、THF、ジオキサン、またはCHCl中で実施し得る。EDCの代わりにDCCを使用し得る(得られるDCC−尿素は、エーテルからのPLA−NHSエステルの沈殿前に濾過して取り除かれる)。EDCまたはDCCおよびNHSの量は、PLAの2〜10当量の範囲であり得る。
【0163】
実施例20:低分子量PLGAへの免疫調節薬の付着
ポリマー活性化について上述したのと同様に、50%〜75%のグリコリドがある低分子量PLGAを対応するPLGA−NHS活性化エステルに変換して、−10度未満の冷凍庫内でアルゴン下において使用時まで保存する。
【0164】
実施例21:触媒存在下におけるD/L−ラクチドによるR848のワンポット開環重合
【化18】

2mLの無水トルエン中のR848(0.2mmol、63mg)、D/L−ラクチド(40mmol、5.8g)、および4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(50mg、0.4mmol)の混合物を150℃(油浴温度)に緩慢に加熱して、18時間この温度に保った(3時間後、R848は残留しなかった)。混合物を周囲温度に冷却し、得られた混合物を水(50mL)で急冷して、結果として生じるポリマーR848−PLAを沈殿させた。次にポリマーを各45mLのMeOH、iPrOH、およびエチルエーテルで逐次洗浄した。ポリマーを真空下30℃で乾燥させて、灰色がかった膨脹性固体(5.0g)を得た。ポリマー構造をCDCl中でH NMRによって確認した。ポリマーの少量のサンプルをTHF/MeOH中の2N NaOH aqで処理し、逆相HPLCによってポリマー上のR848の装填量を測定した。R848の装填量は、1グラムのポリマーあたり3mgであった(0.3%装填量−理論量の27.5%)。
【0165】
実施例22:D/L−ラクチドおよびグリコリドによるR848の二段階開環重合
【化19】

D/L−ラクチド(10.8g、0.075モル)およびグリコリド(2.9g、0.025モル)の混合物をアルゴン下で135℃に加熱した。ひとたび全ての材料が溶解して透明溶液が得られたら、R848(1.08g、3.43×10−3モル)を添加した。この溶液を緩慢なアルゴン流の下において、135℃で1時間撹拌した。エチルヘキサン酸スズ(150μL)を添加し、加熱を4時間継続した。冷却後、固体淡褐色の塊を塩化メチレン(250mL)に溶解して、溶液を5%酒石酸溶液(2×200mL)で洗浄した。塩化メチレン溶液を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過して次に真空下で濃縮した。残留物を塩化メチレン(20mL)に溶解し、2−プロパノール(250mL)を撹拌しながら添加した。分離したポリマーを2−プロパノールのデカンテーションによって単離し、高真空下で乾燥させた。NMRはポリマーが分子量4000であり、ラクチドが71.4%およびグリコリドが28.6%であることを示した。NMRによるR848の装填量は、理論量に近かった。
【0166】
実施例23:PLGA−R848抱合体の調製
【化20】

無水EtOAc(160mL)中のPLGA(Lakeshores Polymers、分子量約5000、7525DLG1A、酸価0.7mmol/g、10g、7.0mmol)およびHBTU(5.3g、14mmol)の混合物をアルゴン下室温で50分間撹拌した。化合物R848(2.2g、7mmol)を添加して、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(5mL、28mmol)がそれに続いた。混合物を室温で6時間、次に50〜55℃で一晩(約16時間)撹拌した。冷却後、混合物をEtOAc(200mL)で希釈して、飽和NHCl溶液(2×40mL)、水(40mL)、および鹹水溶液(40mL)で洗浄した。溶液をNaSO(20g)上で乾燥させて、ゲル様残留物に濃縮した。次にイソプロピルアルコール(IPA)(300mL)を添加して、ポリマー抱合体を溶液から析出させた。次にポリマーをIPA(4×50mL)で洗浄して残留試薬を除去し、真空下35〜40℃で3日間乾燥させて白色粉末にした(10.26g、GPCによる分子量は5200、HPLCによるR848装填量は12%)。
【0167】
実施例24:PLGA−854A抱合体の調製
【化21】

無水EtOAc(20mL)中のPLGA(Lakeshores Polymers、分子量約5000、7525DLG1A、酸価0.7mmol/g、1.0g、7.0mmol)およびHBTU(0.8g、2.1mmol)の混合物をアルゴン下室温で45分間撹拌した。化合物845A(0.29g、0.7mmol)を添加して、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(0.73mL、4.2mmol)がそれに続いた。混合物を室温で6時間、次に50〜55℃で一晩(約15時間)撹拌した。冷却後、混合物をEtOAc(100mL)で希釈し、飽和NHCl溶液(2×20mL)、水(20mL)、および鹹水溶液(20mL)で洗浄した。溶液をNaSO(10g)上で乾燥させてゲル様残留物に濃縮した。次にイソプロピルアルコール(IPA)(40mL)を添加して、ポリマー抱合体を溶液から析出させた。次にポリマーをIPA(4×25mL)で洗浄して残留試薬を除去し、真空下35〜40℃で2日間乾燥させて白色粉末にした(1.21g、GPCによる分子量は4900、HPLCによる854A装填量は14%)。
【0168】
実施例25:PLGA−BBHA抱合体の調製
【化22】

無水EtOAc(30mL)中のPLGA(Lakeshores Polymers、分子量約5000、7525DLG1A、酸価0.7mmol/g、1.0g、7.0mmol)およびHBTU(0.8g、2.1mmol)の混合物をアルゴン下室温で30分間撹拌した。2mLの乾燥DMSO中の化合物BBHA(0.22g、0.7mmol)を添加して、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(0.73mL、4.2mmol)がそれに続いた。混合物を室温で20時間撹拌した。追加量のHBTU(0.53g、1.4mmol)およびDIPEA(0.5mL、2.8mmol)を添加し、混合物を50〜55℃で4時間加熱した。冷却後、混合物をEtOAc(100mL)で希釈し、飽和NHCl溶液(20mL)、水(2×20mL)、および鹹水溶液(20mL)で洗浄した。溶液をNaSO(10g)上で乾燥させて、ゲル様残留物に濃縮した。次にイソプロピルアルコール(IPA)(35mL)を添加して、茶色がかったポリマー抱合体を溶液から析出させた。次にポリマーをIPA(2×20mL)で洗浄して残留試薬を除去し、真空下35〜40℃で2日間乾燥させて、茶色がかった粉末(1.1g)にした。
【0169】
実施例26:ポリアミドであるポリグリシンへのR848の共役
【化23】

Aliferisら(Biomacromolecules,5,1653,(2004年))の方法によって、6−アミノヘキサン酸ベンジルエステル(Aldrich、カタログ番号S33465)を使用して、グリシンN−カルボキシ無水物(Aldrich、カタログ番号369772)の開環重合によって、t−ブチルオキシカルボニル(tBOC)で保護されるポリグリシンカルボン酸(I)を調製する。t−BOCカルバメートとしての末端アミノ基の保護と、それに続くパラジウム炭素への水素付加がベンジルエステルを除去して、BOC保護ポリグリシンカルボン酸(I)の合成が完了する。
【0170】
無水DMF(100mL)中のBOC保護ポリグリシンカルボン酸(5gm、分子量=2000、2.5×10−3モル)およびHBTU(3.79gm、1.0×10−2モル)の混合物をアルゴン下室温で50分間撹拌する。次にR848(1.6gm、5.0×10−3モル)を添加して、ジイソプロピルエチルアミン(4mL、2.2×10−2モル)がそれに続く。混合物を室温で6時間、次に50〜55℃で一晩(16時間)撹拌する。冷却後、DMFを真空下で蒸発させて、残留物をEtOAc(100mL)中で磨砕する。ポリマーを濾過によって単離し、次にポリマーを2−プロパノール(4×25mL)で洗浄して、残留試薬を除去して真空下35〜40℃で3日間乾燥させる。ポリマーは灰色がかった固体として、5.1g(88%)の収率で単離される。R848装填量はNMRによって測定され得て、10.1%である。
【0171】
トリフルオロ酢酸を使用してt−BOC保護基を除去し、得られたポリマーを従来の方法によってカルボキシル末端基を用いて、PLAにグラフトする。
【0172】
実施例27:ポリグリシン/R848ポリマーのPLGA抱合体の調製
ステップ1:t−BOC保護ポリグリシン/R848抱合体(5g)をトリフルオロ酢酸(25mL)に溶解し、この溶液を50℃で1時間加温する。冷却後、トリフルオロ酢酸を真空下で除去し、残留物を酢酸エチル(25mL)中で磨砕する。ポリマーを濾過によって単離し、2−プロパノールで十分洗浄した。真空下で乾燥後、4.5グラムのポリマーが灰色がかった固体として得られる。
【0173】
ステップ2:無水DMF(100mL)中のPLGA(Lakeshores Polymers、分子量約5000、7525DLG1A、酸価0.7mmol/g、10g、7.0mmol)およびHBTU(5.3g、14mmol)の混合物をアルゴン下室温で50分間撹拌する。乾燥DMF(20mL)に溶解させた上からのポリマー(1.4g、7mmol)を添加し、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(5mL、28mmol)がそれに続く。混合物を室温で6時間、次に50〜55℃で一晩(16時間)撹拌する。冷却後、DMF真空下で蒸発させ、残留物を塩化メチレン(50mL)に溶解する。ポリマーを2−プロパノール(200mL)の添加によって沈殿させる。ポリマーをデカンテーションによって単離し、2−プロパノール(4×50mL)で洗浄して残留試薬を除去し、次に真空下35〜40℃で一晩乾燥させる。9.8g(86%)のブロック共重合体が得られる。
【0174】
実施例28:PLGA−2−ブトキシ−8−ヒドロキシ−9−ベンジルアデニン抱合体の調製
【化24】

無水EtOAc(30mL)中のPLGA(Lakeshores Polymers、分子量約5000、7525DLG1A、酸価0.7mmol/g、1.0g、7.0mmol)およびHBTU(0.8g、2.1mmol)の混合物をアルゴン下室温で30分間撹拌する。2mLの乾燥DMSO中の化合物(I)(0.22g、0.7mmol)を添加して、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(0.73mL、4.2mmol)がそれに続く。混合物を室温で20時間撹拌する。追加量のHBTU(0.53g、1.4mmol)およびDIPEA(0.5mL、2.8mmol)を添加して、混合物を50〜55℃で4時間加熱する。冷却後、混合物をEtOAc(100mL)で希釈して、飽和NHCl溶液(20mL)、水(2×20mL)、および鹹水溶液(20mL)で洗浄する。溶液をNaSO(10g)上で乾燥させて、ゲル様残留物に濃縮する。次にイソプロピルアルコール(IPA)(35mL)を添加して、茶色がかったポリマー抱合体を溶液から析出させる。次にポリマーをIPA(2×20mL)で洗浄して残留試薬を除去し、真空下35〜40℃で2日間乾燥させて、茶色がかった粉末(1.0g)にする。
【0175】
実施例29:PLGA−2,9−ジベンジル−8−ヒドロキシアデニン抱合体の調製
【化25】

無水EtOAc(30mL)中のPLGA(Lakeshores Polymers、分子量約5000、7525DLG1A、酸価0.7mmol/g、1.0g、7.0mmol)およびHBTU(0.8g、2.1mmol)の混合物をアルゴン下室温で30分間撹拌する。2mLの乾燥DMSO中の化合物(II)(0.24g,0.7mmol)を添加して、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(0.73mL、4.2mmol)がそれに続く。混合物を室温で20時間撹拌する。追加量のHBTU(0.53g、1.4mmol)およびDIPEA(0.5mL、2.8mmol)を添加して、混合物を50〜55℃で4時間加熱する。冷却後、混合物をEtOAc(100mL)で希釈して、飽和NHCl溶液20mL)、水(2×20mL)および鹹水溶液(20mL)で洗浄する。溶液をNaSO(10g)上で乾燥させて、ゲル様残留物に濃縮する。次にイソプロピルアルコール(IPA)(35mL)を添加して、茶色がかったポリマー抱合体を溶液から析出させる。次にポリマーをIPA(2×20mL)で洗浄して残留試薬を除去し、真空下35〜40℃で2日間乾燥させて、茶色がかった粉末(1.2g)にする。
【0176】
実施例30:2−ペンチル−8−ヒドロキシ−9−ベンジルアデニンを分子量2000のポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオールの末端アルコール基に付着させるために使用されるイミド開環
ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオールは、Aldrich Chemical Company(カタログ番号461164)から購入される。
ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール
HO−[CH(CHCHOCO]nCH(CHCH−OH
ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール-8−オキソアデニン抱合体
【化26】

【0177】
ポリマー(5g、2.5×10−3モル)を塩化メチレン25mLに溶解し、2−ペンチル−8−ヒドロキシ−9−ベンジルアデニンのラクタム(2.05g、5.0×10−3モル)を添加する。1,5,7−トリアザビシクロ−[4,4,0]デカ−5−エン(TBD、0.557g、4×10−3モル)を一度に添加しながら、このスラリーを撹拌する。室温で一晩の撹拌後、透明な淡黄色溶液が形成する。溶液を塩化メチレン(100mL)で希釈し、溶液を5%クエン酸で洗浄する。この溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、その後それを濾過して真空下で蒸発させる。高真空下での乾燥後、5.5グラム(78%)のポリマーが得られる。NMRを使用して、ベンジルアデニン含量が18%と測定される。
【0178】
実施例31:ニコチン−PEG−PLA抱合体
3−ニコチン−PEG−PLAポリマーは、次のように合成した。
最初に分子量3.5KD(0.20gm、5.7×10−5モル)のJenKem(登録商標)からのモノアミノポリ(エチレングリコール)と過剰な4−カルボキシコチニン(0.126gm、5.7×10−4モル)をジメチルホルムアミド(5.0mL)に溶解した。溶液を撹拌して、ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.124gm、6.0×10−4モル)を添加した。この溶液を室温で一晩撹拌した。水(0.10mL)を添加し、さらに15分間撹拌を継続した。ジシクロヘキシル尿素沈殿物を濾過により除去して、濾液を真空下で蒸発させた。残留物を塩化メチレン(4.0mL)に溶解し、この溶液をジエチルエーテル(100mL)に添加した。溶液を冷蔵庫内で2時間冷却して、沈殿したポリマーを濾過により単離した。ジエチルエーテルでの洗浄後、固体白色ポリマーを高真空下で乾燥させた。収率は0.188gmであった。このポリマーをさらなる精製なしに、次のステップで使用した。
【0179】
コチニン/PEGポリマー(0.20gm、5.7×10−5モル)を乾燥テトラヒドロフラン(10mL)に窒素下で溶解し、テトラヒドロフラン中の水素化アルミニウムリチウムの溶液(1.43mLの2.0M、2.85×10−3モル)を添加しながら、溶液を撹拌した。水素化アルミニウムリチウムの添加は、ポリマーをゼラチン様の塊として沈殿させた。反応を緩慢な窒素流の下で80℃に加熱して、テトラヒドロフランを蒸発させた。次に残留物を80℃で2時間加熱した。冷却後、水(0.5mL)を注意深く添加した。ひとたび水素の発生が停止したら塩化メチレン(50mL)中の10%メタノールを添加し、ポリマーが溶解するまで反応混合物を撹拌した。この混合物をCelite(登録商標)銘柄の珪藻土(EMD Inc.からCelite(登録商標)545、パーツ番号CX0574−3として入手できる)を通して濾過し、乾燥するまで濾液を真空下で蒸発させた。残留物を塩化メチレン(4.0mL)に溶解し、この溶液をジエチルエーテル(100mL)に緩慢に添加した。ポリマーは白色綿状の固体として分離し、遠心分離によって単離された。ジエチルエーテルでの洗浄後、固体を真空下で乾燥させた。収率は0.129グラムであった。
【0180】
次撹拌棒および還流冷却管に装着した100mLの丸底フラスコに、PEG/ニコチンポリマー(0.081gm、2.2×10−5モル)、D/Lラクチド(0.410gm、2.85×10−3モル)、および無水硫酸ナトリウム(0.380gm)を装入した。これを真空下55℃で8時間乾燥させた。フラスコを冷却し、アルゴンでフラッシュして次に乾燥トルエン(10mL)を添加した。フラスコを120℃に設定された油浴に入れて、ひとたびラクチドが溶解したらエチルヘキサン酸スズ(5.5mg、1.36×10−5モル)を添加した。反応を120℃で16時間進行させた。室温に冷却後、水(15mL)を添加して30分間撹拌を継続した。塩化メチレン(200mL)を添加して分液漏斗内で撹拌後、相を十分安定させた。塩化メチレン層を単離して、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。濾過して乾燥剤を除去した後、濾液を真空下で蒸発させてポリマーを無色のフォームとして得た。ポリマーをテトラヒドロフラン(10mL)に溶解し、この溶液を撹拌しながら緩慢に水(150mL)に添加した。沈殿したポリマーを遠心分離によって単離し、固体を塩化メチレン(10mL)に溶解した。塩化メチレンを真空下で除去し、残留物を真空下で乾燥させた。3−ニコチン−PEG−PLAポリマーの収率は0.38グラムであった。
【0181】
実施例32:合成ナノキャリア製剤
Gersterらに付与された米国特許第5,389,640号明細書の実施例99に提供される合成に従って、カプセル化アジュバント製剤のためにレシキモド(別名R848)を合成した。
【0182】
R848は上で提供される方法によってPLAに共役され、PLA構造はNMRによって確認された。
【0183】
PLA−PEG−ニコチン抱合体を実施例31に従って調製した。
【0184】
PLAは購入した(Boehringer Ingelheim Chemicals,Inc.,2820 North Normandy Drive,Petersburg,VA 23805)。ポリビニルアルコール(Mw=11KD〜31KD、85〜89%加水分解)は、VWR Scientificから購入した。オボアルブミンペプチド323−339は、Bachem Americas Inc.(3132 Kashiwa Street,Torrance CA 90505.パーツ番号4064565)から得られた。
【0185】
上の材料を使用して、以下の溶液を調製した。
1.塩化メチレン中のレシキモド(R848)(10mg/mL)およびPLA(100mg/mL)、または塩化メチレン中のPLA−R848抱合体(100mg/mL)
2.塩化メチレン中のPLA−PEG−ニコチン(100mg/mL)
3.塩化メチレン中のPLA(100mg/mL)
4.水中のオボアルブミンペプチド323−339(10または69mg/mL)
5.水中のポリビニルアルコール(50mg/mL)
【0186】
溶液#1(0.25〜0.75mL)、溶液#2(0.25mL)、溶液#3(0.25〜0.5mL)および溶液#4(0.1mL)を小型バイアル内で合わせて、Branson Digital Sonifier 250を使用して、混合物を50%振幅で40秒間超音波処理した。このエマルジョンに溶液#5(2.0mL)を添加して、Branson Digital Sonifier 250を使用して35%振幅で40秒間超音波処理し、第2のエマルジョンを形成した。これをリン酸緩衝液溶液(30mL)を含有するビーカーに入れて、この混合物を室温で2時間撹拌してナノ粒子を形成した。
【0187】
粒子を洗浄するため、ナノ粒子分散体の一部(7.4mL)を遠心管に移し、5,300gで1時間遠沈させて上清を除去し、ペレットを7.4mLのリン酸緩衝食塩水に再懸濁した。遠心分離処置を繰り返して、ペレットを2.2mLのリン酸緩衝食塩水に再懸濁して、約10mg/mLの最終ナノ粒子分散体にした。
【0188】
実施例33:複数の一次エマルジョンがある二重エマルジョン
材料
オボアルブミンタンパク質のT細胞エピトープであることが知られている、アミノ酸17個のペプチドであるオボアルブミンペプチド323−339は、Bachem Americas Inc.(3132 Kashiwa Street,Torrance CA 90505)から購入した。
【0189】
レシキモド(別名R848)は、米国特許第6,608,201号明細書で提供される方法に従って合成された。
【0190】
PLA−R848、レシキモドは、上で提供される方法に従って、分子量がおよそ2,500ダルトンのPLAに共役された。
【0191】
PLGA−R848、レシキモドは、上で提供される方法に従って、分子量がおよそ4,100ダルトンのPLGAに共役された。
【0192】
ナトリウム対イオンがある、ヌクレオチド配列5’−TCC ATG ACG TTC CTG ACG TT−3’を有する完全にホスホロチオ化(phosphorothioated)された主鎖があるPS−1826 DNAオリゴヌクレオチドは、Oligos Etc(9775 SW Commerce Circle C−6,Wilsonville,OR 97070)から購入した。
【0193】
ナトリウム対イオンがある、ヌクレオチド配列5’−TCC ATG ACG TTC CTG ACG TT−3’を有するリン酸ジエステル主鎖があるPO−1826 DNAオリゴヌクレオチドは、Oligos Etc(9775 SW Commerce Circle C−6,Wilsonville,OR 97070)から購入した。
【0194】
インヘレント粘度が0.21dL/gであるPLAは、SurModics Pharmaceuticals(756 Tom Martin Drive,Birmingham,AL 35211.製品コード100 DL 2A)から購入した。
【0195】
インヘレント粘度が0.71dL/gであるPLAは、SurModics Pharmaceuticals(756 Tom Martin Drive,Birmingham,AL 35211.製品コード100 DL 7A)から購入した。
【0196】
インヘレント粘度が0.19dL/gであるPLAは、Boehringer Ingelheim Chemicals,Inc.(Petersburg,VA.製品コードR202H)から購入した。
【0197】
分子量がおよそ18,500〜22,000ダルトンであるPLA−PEG−ニコチンは、上で提供される方法に従って調製された。
【0198】
分子量がおよそ15,000ダルトンであるPLA−PEG−R848は合成され、上で提供される方法に従って調製された。
【0199】
ポリビニルアルコール(Mw=11,000〜31,000、87〜89%加水分解)はJ.T.Baker(パーツ番号U232−08)から購入した。
【0200】
二重エマルジョン法を使用し、複数の一次エマルジョンを用いてバッチを製造した。下の表は溶液の添え字(例えば溶液#1の縦列中のBは、溶液#1Bが使用されたことを示す)、および使用された溶液の体積を参照する。
【0201】
【表1】

【0202】
溶液1A:希塩酸溶液中のオボアルブミンペプチド323−339(35mg/mL)。オボアルブミンペプチドを0.13N塩酸溶液に室温で溶解して、溶液を調製した。
【0203】
溶液1B:希塩酸溶液中のオボアルブミンペプチド323−339(70mg/mL)。オボアルブミンペプチドを0.13N塩酸溶液に室温で溶解して、溶液を調製した。
【0204】
溶液2A:塩化メチレン中の0.21−IV PLA(75mg/mL)およびPLA−PEG−ニコチン(25mg/ml)。最初に2種の別々の溶液を室温で調製して、溶液を調製した。純粋塩化メチレン中の0.21−IV PLA(100mg/mL)、および純粋塩化メチレン中のPLA−PEG−ニコチン(100mg/mL)。各1部のPLA−PEG−ニコチン溶液に3部のPLA溶液を添加して、最終溶液を調製した。
【0205】
溶液2B:塩化メチレン中の0.71−IV PLA(75mg/mL)およびPLA−PEG−ニコチン(25mg/ml)。最初に2種の別々の溶液を室温で調製して、溶液を調製した。純粋塩化メチレン中の0.71−IV PLA(100mg/mL)、および純粋塩化メチレン中のPLA−PEG−ニコチン(100mg/mL)。各1部のPLA−PEG−ニコチン溶液に3部のPLA溶液を添加して、最終溶液を調製した。
【0206】
溶液2C:塩化メチレン中の0.19−IV PLA(75mg/mL)およびPLA−PEG−ニコチン(25mg/ml)。最初に2種の別々の溶液を室温で調製して、溶液を調製した。純粋塩化メチレン中の0.19−IV PLA(100mg/mL)、および純粋塩化メチレン中のPLA−PEG−ニコチン(100mg/mL)。各1部のPLA−PEG−ニコチン溶液に3部のPLA溶液を添加して、最終溶液を調製した。
【0207】
溶液3A:精製水中のオリゴヌクレオチド(PS−1826またはPO−1826のどちらか)(200mg/ml)。オリゴヌクレオチドを精製水に室温で溶解して、溶液を調製した。
【0208】
溶液4A:溶液#2Aと同じ。
【0209】
溶液4B:溶液#2Bと同じ。
【0210】
溶液4C:溶液#2Cと同じ。
【0211】
溶液5A:100mM pH8のリン酸緩衝液中のポリビニルアルコール(50mg/mL)。
【0212】
2種の別々の油中水エマルジョンを調製した。W1/O2は、小型圧力管内で溶液1および溶液2を合わせて、Branson Digital Sonifier250を使用して50%振幅で40秒間超音波処理して調製した。W3/O4は、小型圧力管内で溶液3および溶液4を合わせて、Branson Digital Sonifier250を使用して50%振幅で40秒間超音波処理して調製した。2種の内部エマルジョン([W1/O2、W3/O4]/W5)がある第3のエマルジョンは、0.5mLの各一次エマルジョン(W1/O2およびW3/O4)と溶液5を合わせ、Branson Digital Sonifier250を使用して30%振幅で40〜60秒間超音波処理して調製した。
【0213】
70mMリン酸緩衝液溶液(30mL)を含有するビーカーに、第3のエマルジョンを入れて室温で2時間撹拌し、塩化メチレンを蒸発させてナノキャリアを形成した。ナノキャリア懸濁液を遠心管に移し、13,823gで1時間遠沈して上清を除去し、ペレットをリン酸緩衝食塩水に再懸濁して、ナノキャリアの一部を洗浄した。洗浄処置を繰り返し、ペレットをリン酸緩衝食塩水に再懸濁して、約10mg/mLの最終ナノキャリア分散体にした。
【0214】
ナノキャリア中のオリゴヌクレオチドおよびペプチドの量をHPLC分析によって測定した。
【0215】
実施例34:標準二重エマルジョン
材料
上の実施例33で提供されるのと同じ。
標準二重エマルジョン法を使用して、バッチを製造した。下の表は溶液の添え字(例えば溶液#1の縦列中のBは、溶液#1Bが使用されたことを示す)、および使用された溶液の体積を参照する。
【0216】
【表2】

【0217】
溶液1A:脱イオン水中のオボアルブミンペプチド323−339(69mg/mL)。室温で混合しながらオボアルブミンペプチドを水に緩慢に添加して、溶液を調製した。
【0218】
溶液1B:希塩酸溶液中のオボアルブミンペプチド323−339(70mg/mL)。オボアルブミンペプチドを室温で0.13N塩酸溶液に溶解して、溶液を調製した。
【0219】
溶液1C:精製水中のオリゴヌクレオチド(PS−1826)(50mg/ml)。オリゴヌクレオチドを室温で精製水に溶解して、溶液を調製した。
【0220】
溶液1D:希塩酸溶液中のオボアルブミンペプチド323−339(17.5mg/mL)。オボアルブミンペプチド(70mg/ml)を室温で0.13N塩酸溶液に溶解し、次に溶液を1部の開始溶液あたり3部の精製水で希釈して、溶液を調製した。
【0221】
溶液2A:室温で調製された純粋塩化メチレン中のR848(10mg/ml)および0.19−IV PLA(100mg/mL)。
【0222】
溶液2B:室温で調製された純粋塩化メチレン中のPLA−R848(100mg/ml)。
【0223】
溶液2C:室温で調製された純粋塩化メチレン中のPLGA−R848(100mg/ml)。
【0224】
溶液2D:室温で調製された純粋塩化メチレン中のPLA−PEG−R848(100mg/ml)。
【0225】
溶液3A:室温で調製された純粋塩化メチレン中のPLA−PEG−ニコチン(100mg/ml)。
【0226】
溶液4A:室温で調製された純粋塩化メチレン中の0.19−IV PLA(100mg/mL)。
【0227】
溶液5A:脱イオン水中のポリビニルアルコール(50mg/mL)。
【0228】
溶液5B:100mM pH8リン酸緩衝液中のポリビニルアルコール(50mg/mL)。
【0229】
溶液1および溶液2、溶液3、および溶液4を小型圧力管内で合わせ、Branson Digital Sonifier 250を使用して50%振幅で40秒間超音波処理して、油中水(W/O)一次エマルジョンを調製した。溶液5を一次エマルジョンに添加して、Branson Digital Sonifier 250を使用して30%〜35%振幅で40秒間超音波処理して、水/油/水(W/O/W)二重エマルジョンを調製した。
【0230】
リン酸緩衝液溶液(30mL)を含有するビーカーに二重エマルジョンを入れて、室温で2時間撹拌して塩化メチレンを蒸発させ、ナノキャリアを形成した。ナノキャリア懸濁液を遠心管に移して5,000〜9,500RPMで1時間遠沈し、上清を除去してペレットをリン酸緩衝食塩水に再懸濁して、ナノキャリアの一部を洗浄した。洗浄処置を繰り返し、ペレットをリン酸緩衝食塩水に再懸濁して、約10mg/mLの最終ナノキャリア分散体にした。
【0231】
実施例35:薬剤量の測定
R848およびペプチド(例えばovaペプチド、ヒトペプチド、TT2pDT5t)のための方法
Agilent Zorbax SB−C18カラム(3.5μm.75×4.6mm.カラム温度=40℃(パーツ番号866953−902))を装着した、Agilent 1100システム上の逆相HPLCを使用して、適切な波長(R848ではλ=254nm、ovaペプチドでは215nm)で、95%水/5%アセトニトリル/0.1%TFAの移動相A(MPA)、および90%アセトニトリル/10%水/0.09%TFAの移動相B(MPB)を使用して、R848(免疫賦活剤)およびovaペプチド(T細胞抗原)の量を測定した。(勾配:7分間でB=5〜45%;9分間で95%Bに上昇させ;9.5分間で5%のBに低下させて、終わりまで平衡を保った。総実行時間は、流速1mL/分で13分間であった)。
【0232】
CpGのための方法
Waters XBridge C−18(2.5μm粒子、50×4.6mm内径(パーツ番号186003090)、カラム温度600℃)を装着した、Agilent 1100システム上の逆相HPLCを使用して、260nmで、100mM TEA−酢酸緩衝液中の2%アセトニトリル、pH約8.0の移動相A、および90%アセトニトリルと10%水の移動相Bを使用して、CpG(免疫賦活剤)量を測定した。(カラムを5%のBで平衡化させ、8.5分間で55%のBに増大させて、次に12分間で90%のBに上昇させた。Bの濃度を1分間で迅速に5%に低下させ、停止時点まで16分間平衡化させた。流速は、方法終了時まで16分間1mL/分であった)。
【0233】
ニコチン類似体のための方法
Waters X−Bridge C−18(5μm粒子、100×4.6mm内径、カラム温度400℃)を装着した、Agilent 1100システム上の逆相HPLCを使用して、254nmで、95%水/5%アセトニトリル/0.1%TFAの移動相A(MPA)、および90%アセトニトリル/10%水/0.09%TFAの移動相B(MPB)を使用して、ニコチン類似体を測定した。(勾配:カラムを5%のBで平衡化させ、14分間で45%のBに増大させた。次に14〜20分間で95%Bに上昇させた。移動相Bの濃度を迅速に5%に低下させ、方法終了時まで平衡化した。方法の流速は、25分間の総実行時間0.5mL/分に保った。NC懸濁液を14000rpmで粒度に応じて約15〜30分間分遠心分離した。収集されたペレットを撹拌しながら溶液が透明になるまで、200μLの濃NHOH(8M)で2時間処理した。200μLの1%TFAを添加して混合物溶液を中和すると、ペレット溶液の総体積は200μLになった。溶液の50μLのアリコートをMPA(または水)で200μLに希釈して、上と同様にHPLC上で分析し、ペレット中に存在する量を測定した。
【0234】
ナノキャリア中のカプセル化遊離R848
0.5mLのNC懸濁液を14000rpmで約15分間遠心分離した。収集されたペレットを0.3mLのアセトニトリルで溶解して、14000rpmで短時間遠心分離して、あらゆる残留不溶性物質を除去した。透明溶液をMPAの4倍相当体積でさらに希釈して、上述の逆相HPLC上でアッセイした。
【0235】
ナノキャリア中のカプセル化CpG
製造からの330μLのNC懸濁液(PBS中の約10mg/mLの懸濁液)を14000rpmで粒度に応じて15〜30分間遠沈した。収集されたペレットを500μLの水に再懸濁し、30分間超音波処理して粒子を完全に分散させた。次にNCを600℃で10分間加熱した。追加的な200μLの1N NaOHを混合物に添加してさらに5分間加熱したところ、混合物は透明になった。加水分解されたNC溶液を14000rpmで短時間遠心分離した。次に水を使用して透明溶液の最終2倍希釈を行い、上述の逆相HPLC上でアッセイした。
【0236】
カプセル化T細胞抗原(例えばovaペプチド、またはヒトペプチド、TT2pDT5t)
製造からの330μLのNC懸濁液(PBS中の約10mg/mL懸濁液)を14000rpmで15〜30分間遠沈した。100μLのアセトニトリルをペレットに添加して、NCのポリマー構成要素を溶解した。混合物をボルテックスして1〜5分間超音波処理した。100μLの0.2%TFAを混合物に添加してペプチドを抽出し、さらに5分間超音波処理して、凝集体の崩壊を確実にした。混合物を14000rpmで15分間遠心分離して、あらゆる不溶性物質(例えばポリマー)を分離した。150μLのMPA(または水)で希釈された上清の50μLのアリコートを取って、上述のように逆相HPLCでアッセイした。
【0237】
ナノキャリア中の抱合型ニコチン類似体(B細胞抗原)量
1.5mLのNC懸濁液を14000rpmで約15分間遠沈して、150μLの濃NHOH(8M)を使用して約2〜3時間、溶液が透明になるまでペレットを加水分解した。150μLの2%TFA(aq)溶液をペレット混合物に添加して、溶液を中和した。混合物の100μLのアリコートを200μLの水で希釈し、上述の逆相HPLC上でアッセイし、製造で使用されるPLA−PEG−ニコチン前駆物質(PEG−ニコチン)を使用して確立された標準曲線に基づいて、定量化した。
【0238】
実施例36:放出速度試験
37℃におけるリン酸緩衝食塩水溶液(PBS)(100mM、pH=7.4)およびクエン酸緩衝液(100mM、pH=4.5)中での合成ナノキャリアからの抗原(ニコチン類似体)および免疫賦活剤(R848)の放出を次のように実施する。
【0239】
分析法:放出されたR848およびニコチン類似体の量は、λ=215nmでAgilent Zorbax SB−C18カラム(3.5μm。75×4.6mm。カラム温度=40℃(パーツ番号866953−902))を装着したAgilent 1100システム上の逆相HPLCを使用して、98%水/2%アセトニトリル/0.1%TFAの移動相A(MPA)、および90%アセトニトリル/10%水/0.09%TFAの移動相B(MPB)を使用して測定される(勾配:7分間でB=5〜45%;9分間で95%のBに上昇させ;終わりまで再平衡化させる、13分間の実行時間、流速=1mL/分)。
【0240】
合成ナノキャリア中に存在するR848およびニコチン類似体の総量は、最初に合成ナノキャリア中のR848およびニコチン類似体の装填量に基づいて推定される。次に試験された合成ナノキャリアの水性懸濁液をPBSで最終貯蔵体積4.4mLに希釈する。
【0241】
PBS(pH=7.4)中の生体外放出速度測定:
T0サンプルでは、200μLのアリコートをNCの各サンプルから即座に取って、微量遠心機(型名:Galaxy 16)を使用して微小遠心管内で14000rpmで遠心分離する。100μLの上清を取ってHPLC移動相A(MPA)で200μLに希釈し、放出されたR848およびニコチン類似体の量について逆相HPLC上でアッセイする。
【0242】
各時点の測定では、9×200μL(非抱合型では3×200)の各サンプルを微小遠心管に入れて、上記各アリコートに300μLの37℃のPBSを添加して、サンプルを即座に37℃のオーブンに入れる。(抱合型R848では)2時間、12時間、24時間、48時間、96時間、および144時間、または(非抱合型(カプセル化)R848では)2時間、12時間、16時間、および24時間の時点でサンプルを遠心分離して、放出されたR848およびニコチン類似体の量について、上のT0サンプルと同様にしてアッセイする。
【0243】
クエン酸緩衝液(pH=4.5)中の生体外放出速度測定:
T0サンプルでは、各サンプルから200μLのアリコートを取って6000rpmで20分間遠心分離し、上清を除去する。残留合成ナノキャリアを200μLのクエン酸緩衝液に再懸濁し、14000rpmで15分間遠心分離する。100μLの上清を取ってMPAで200μLに希釈し、上記のようにR848およびニコチン類似体についてアッセイする。
【0244】
各時点の測定では、9×200μL(非抱合型では3×200)の各サンプルを微小遠心管に入れて6000rpmで20分間遠心分離し、上清を除去する。次に残留NCを500μLのクエン酸緩衝液に再懸濁して、37℃のオーブンに入れる。(抱合型R848では)12時間、24時間、48時間、96時間、および144時間、または(非抱合型(カプセル化)R848では)2時間、12時間、16時間、および24時間の時点でサンプルを遠心分離し、上のT0サンプルと同様にして、放出されたR848およびニコチン類似体の量についてアッセイする。
【0245】
上のPBSおよびクエン酸緩衝液中の測定からの質量平衡を完結するために、各サンプルからの残留ペレットを混合しながら、200μLの濃NHOH(8M)で3時間処理する。混合物が沈降した後、200μLの1%TFAを添加して、ペレット溶液の総体積を400μLにする。50μLのアリコートの溶液をMPAで200μLに希釈して、上記のようにHPLCで分析し、生体外放出後にペレット中に残留する未放出R848およびニコチン類似体の量を測定して質量平衡を閉じる。非抱合型サンプルでは、サンプルをアセトニトリル中のTFAで希釈し、上のR848およびペプチドと同様にしてアッセイする。
【0246】
実施例37:放出速度試験
37℃におけるリン酸緩衝食塩水溶液(PBS)(100mM、pH=7.4)およびクエン酸緩衝液(100mM、pH=4.5)中での合成ナノキャリアからの抗原(例えばovaペプチド、T細胞抗原)および免疫賦活剤(例えばR848、CpG)の放出を次のようにして測定した。
【0247】
抱合型R848およびovaペプチドから構成されるナノキャリアからのR848の放出は、製造から得られた試験する合成ナノキャリアの所望量の水性懸濁液(例えばPBS中の約10mg/mL)を遠心分離および再懸濁することで、同一体積の適切な放出媒体(クエン酸緩衝液100mM)と交換して達成した。
【0248】
PBS(pH=7.4)中の生体外放出速度測定
1mLのPBS懸濁NCを微小遠心管内で14000rpmで、粒度に応じて一般に15〜30分間遠心分離した。次に収集された上清を等体積の移動相A(MPA)または水で希釈して、保存中に放出されたR848の量について逆相HPLC上でアッセイした。残留するペレットを1mLのPBS中で均質な懸濁液に再懸濁し、絶えず穏やかに撹拌しながら37℃の加温チャンバーに入れた。
【0249】
T0サンプルは、NC懸濁液を37℃加温チャンバーに入れるのに先立って、NC懸濁液から150μLのアリコートを即座に取り出して、微量遠心機(Model:Galaxy 16)を使用して微小遠心管内で14000rpmで遠心分離した。100μLの上清を取り出してHPLC移動相A(MPA)または水で200μLに希釈し、放出されたR848およびovaペプチド量について、逆相HPLC上でアッセイした。
【0250】
時点測定では、37℃のNCサンプル懸濁液から150μLのアリコートを取り出して、サンプルを遠心分離し、T0サンプルと同様に、放出されたR848およびovaペプチドの量についてアッセイした。放出されたR848およびovaペプチドを通例のモニタリングのために6時間、24時間で試験し、完全な放出プロフィールを確立するために、2時間、48時間、96時間、および144時間で追加的に試験した。
【0251】
クエン酸緩衝液(pH=4.5)中の生体外放出速度測定
pH=7.4のPBS緩衝液の代わりに100mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH=4.5)を用いて、元のNC保存溶液(例えばPBS)を交換した。上のPBSおよびクエン酸緩衝液中における測定からの質量平衡を完結するために、各時点で残留したペレットを溶液が透明になるまで、100μLのNHOH(8M)で撹拌しながら2時間(または2時間以上)処理した。100μLの1%TFAを添加して混合物を中和し、ペレット溶液の総体積を200μLにした。混合物の50μLのアリコートをMPA(または水)で200μLに希釈して、上記のようにHPLC上で分析し、生体外放出後にペレット中に残留する未放出のR848量を測定して、質量平衡を閉じた。非抱合型サンプルでは、サンプルをアセトニトリル中のTFAで希釈し、上のR848と同様にしてアッセイした。
【0252】
CpGの放出を試料調製およびモニター時点に関しては、R848およびovaペプチドと同様にして測定した。しかし放出媒体中のCpGの量は、上述の逆相HPLC方法によってアッセイした。
【0253】
実施例38:R848を有するNC−Nicによる免疫化
一群の5匹のマウスを2週間間隔で(0、14、および28日目)、100μgのNC−Nicで3回免疫化した(皮下、後肢)。ナノキャリアは上述の製剤ストラテジーを使用して作成され、ovaペプチドと、その50%がPLGA−R848であり、その25%がPLAであり、その25%がPLA−PEG−Nicであるポリマーとを含有した。次に26、40、54、および69日目に、血清抗ニコチン抗体を測定した。ポリリジン−ニコチンに対して標準ELISAで測定された、抗ニコチン抗体のEC50値を図1に示す。
【0254】
NC−NicからのR848の放出速度は、37℃で24時間のインキュベーション(pH=4.5)で、1mgのNC−Nicあたり19.8μgであった。同様の処置は、NC−Nicからのいかなる検出可能なPEG−ニコチン抗原の放出ももたらさなかった。PEG−ニコチンは(NHOHまたはTFAでの処理時に)極端なpH値においてのみNC−Nicから放出され、5.2%の放出を示した(1mgのNC−Nicあたり52μg)。
【0255】
この実験は、生理学的条件(pH=4.5)で抗原(PEG−ニコチン)よりもはるかにより高速にNC−Nicから放出されるR848(Th1アジュバント、TLR7/8作動薬)を有するNC−Nicの利用が、NCの保有抗原に対する強力で長期にわたる体液性免疫応答を生じさせることを実証する。アジュバントR848もまた保有するNC−Nic(PLA−PEG−ニコチンの形態で外面にニコチンを提示するナノキャリア)による免疫化後の抗体誘導。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)合成ナノキャリアと共役している免疫調節薬、および
(b)前記合成ナノキャリアと共役している抗原
を含むナノキャリア
を含んでなる組成物であって、前記免疫調節薬および抗体が、
IA(rel)%/A(rel)%≧1.2
の関係式に従って前記合成ナノキャリアから分離し、
式中、
IA(rel)%は、重量%として表され、前記合成ナノキャリアのサンプル全体を平均した、pH=4.5で24時間にわたる生体外水性環境に対する前記合成ナノキャリアの曝露に際して放出される前記免疫調節薬の重量と、pH=4.5で24時間にわたる生体外水性環境に対する前記合成ナノキャリアの曝露に際して前記合成ナノキャリア中に保持される前記免疫調節薬の重量との和によって除した、pH=4.5で24時間にわたる生体外水性環境に対する前記合成ナノキャリアの曝露に際して放出される前記免疫調節薬の重量と定義され、
A(rel)%は、重量%として表され、前記合成ナノキャリアのサンプル全体を平均した、pH=4.5で24時間にわたる生体外水性環境に対する前記合成ナノキャリアの曝露に際して放出される抗体の重量と、pH=4.5で24時間にわたる生体外水性環境に対する前記合成ナノキャリアの曝露に際して合成ナノキャリア中に保持される前記抗体の重量との和によって除した、pH=4.5で24時間にわたる生体外水性環境に対する前記合成ナノキャリアの曝露に際して放出される前記抗体の重量と定義される、組成物。
【請求項2】
前記免疫調節薬が、免疫調節薬共役部分を通じて前記合成ナノキャリアと共役している、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記免疫調節薬が前記合成ナノキャリアと共有結合的に共役している、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記免疫調節薬が前記合成ナノキャリア中にカプセル化される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
前記抗原が抗原共役部分を通じて前記合成ナノキャリアと共役している、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗原が前記合成ナノキャリアと共有結合的に共役している、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記抗原が前記合成ナノキャリア中にカプセル化される、請求項1または5に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗原がB細胞抗原である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記B細胞抗原が感染性因子に由来する抗原である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記B細胞抗原が免疫原性に劣る抗原である、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記B細胞抗原が、乱用物質またはその一部あるいは常習性薬物またはその一部である、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
前記B細胞抗原が毒素または有害な環境因子である、請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
前記B細胞抗原が、アレルゲン、変性疾患抗原、がん抗原、アトピー性疾患抗原、または代謝疾患抗原である、請求項8に記載の組成物。
【請求項14】
前記抗原がT細胞抗原である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記T細胞抗原がMHCクラスI抗原である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記免疫調節薬がアジュバントである、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記アジュバントがToll様受容体(TLR)作動薬を含んでなる、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記TLR作動薬がTLR3作動薬、TLR7作動薬、TLR8作動薬、TLR7/8作動薬、またはTLR9作動薬である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記TLR作動薬がイミダゾキノリンである、請求項17または18に記載の組成物。
【請求項20】
前記イミダゾキノリンがレシキモドまたはイミキモドである、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記TLR作動薬が免疫賦活性核酸である、請求項17または18に記載の組成物。
【請求項22】
前記免疫賦活性核酸が免疫賦活性DNAまたは免疫賦活性RNAである、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記免疫賦活性核酸がCpG含有免疫賦活性核酸である、請求項21または22に記載の組成物。
【請求項24】
前記アジュバントが普遍的T細胞抗原を含んでなる、請求項16に記載の組成物。
【請求項25】
前記合成ナノキャリアが1つ以上の生分解性ポリマーを含んでなる、請求項1〜24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記免疫調節薬が前記免疫調節薬共役部分を通じて前記1つ以上の生分解性ポリマーと共役している、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記免疫調節薬が前記1つ以上の生分解性ポリマーと共有結合的に共役している、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記免疫調節薬共役部分がアミド結合を含んでなる、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記免疫調節薬共役部分がエステル結合を含んでなる、請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
前記免疫調節薬共役部分が静電結合を含んでなる、請求項26に記載の組成物。
【請求項31】
前記生分解性ポリマーが、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、またはポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を含んでなる、請求項25〜29に記載の組成物。
【請求項32】
前記生分解性ポリマーが、ゲル透過クロマトグラフィーを使用した測定で、800ダルトン〜10,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する、請求項25〜29および31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
前記合成ナノキャリアが抗原提示細胞(APC)標的特性をさらに含んでなる、請求項1〜32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記合成ナノキャリアが、脂質ベースナノ粒子、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性剤ベースエマルジョン、デンドリマー、バッキーボール、ナノワイヤ、ウィルス様粒子、ペプチドもしくはタンパク質ベース粒子、ナノ材料の組み合わせを含んでなるナノ粒子、球状ナノ粒子、立方体ナノ粒子、錐体のナノ粒子、長円形ナノ粒子、円柱状ナノ粒子、またはドーナツ型ナノ粒子を含んでなる、請求項1〜33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
薬学的に許容できる賦形剤をさらに含んでなる、請求項1〜34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
請求項1〜35のいずれか一項に記載の組成物を含んでなる、ワクチンを含んでなる組成物。
【請求項37】
請求項1〜36のいずれか一項に記載の組成物を対象に投与するするステップを含んでなる方法。
【請求項38】
前記組成物が免疫応答を誘発するか、または増強するのに効果的な量である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記対象が、がん、感染症、非自己免疫代謝疾患、変性疾患、または依存症を有する、請求項38に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−528153(P2012−528153A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513051(P2012−513051)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/001559
【国際公開番号】WO2010/138192
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(511254321)セレクタ バイオサイエンシーズ インコーポレーテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】SELECTA BIOSCIENCES,INC.
【住所又は居所原語表記】480 Arsenal Street,Building One,Watertown,MA 02472,U.S.A.
【Fターム(参考)】