説明

異なる炭素数を有する2種のアルキル基を有する液体アルキル化亜リン酸トリスアリール組成物

いくらかのアルキル基が他のアルキル基とは異なる炭素原子数を有する、少なくとも2種の異なる亜リン酸アルキルアリールの混合物を含む組成物であって、この混合物が大気条件で液体である組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年7月31日に出願された米国特許仮出願第61/230,652号による優先権を主張し、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ポリマー組成物における酸化防止剤としての使用に適する新規な亜リン酸エステル組成物に関する。本発明はまた、新規な液体亜リン酸エステル組成物を含む、安定化されたポリマー組成物及び安定剤コンセントレート(concentrate)にも関する。
【背景技術】
【0003】
有機亜リン酸エステルは、よく知られており、例えば、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル及びエラストマーを含む、ポリマー組成物における2次酸化防止剤として一般的に用いられている。このような亜リン酸エステルの例は、H.Zweifel(編)「プラスチック添加物ハンドブック(Plastics Additives Handbook)」第5版(Hanser Publishers、Munich 2000)に開示されている。亜リン酸エステル安定剤は、液体及び固体の両方が、当技術分野において知られている。
【0004】
固体有機亜リン酸エステル安定剤は、ポリマー組成物における2次酸化防止剤として広く用いられている。市販酸化防止剤の1つは、下に示される亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)であり、Alkanox(商標)240、Irgafos(商標)168及びDoverphos(商標)S−480として一般に知られている固体酸化防止剤である。米国特許第5,254,709号(この全体が、参照により本明細書に組み込まれる)は、触媒の存在下で、2,4−ジ−t−ブチルフェノールと三塩化リンを反応させることによる、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)の合成を記載している。単離された亜リン酸エステルは、180〜185℃の間で融解する白色結晶固体として記載されている。
【化1】

【0005】
亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)は、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ABS及びポリエステルを含め、多くのポリマーで、過酸化物に誘発される酸化分解を効果的に減らすことが示されている。亜リン酸トリアルキルアリールは、熱可塑性ポリマーの加工に一般に必要とされる高温で、それを用いることができる、低揮発性を有する。しかし、その固体の状態と付随する加工上の制約のために、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)は、全てのポリマーの安定化には十分に適切でなく、いくつかのプラスチック、特に低融点プラスチックの加工の間にプレートアウト(plate out)し、加工機表面上に付着堆積物を生成することが示されている。
【0006】
液体亜リン酸エステル組成物もまた、よく知られており、固体亜リン酸エステル化合物に付随する取扱いの問題を有さない。さらに、低温で加工されるポリマーでは、液体亜リン酸エステル組成物は、通常、固体亜リン酸エステル組成物よりも良好な加工性を示す。例えば、亜リン酸トリス(p−ノニルフェニル)(TNPP)は、大気条件(ambient conditions)で安定な液体である亜リン酸アルキルアリールの1つである。
【化2】


TNPPは、HDPE、LLDPE、SBR,ABS、PVCなどの多数のポリマーの安定化に有用である、用途が多い亜リン酸エステル安定剤である。しかし、ノニルフェノール(これは、TNPPの合成に一般に用いられる)について主張されているエストロゲン性(estrogenicity)のために、TNPPを置き換えることが求められている。
【0007】
多くの市販の亜リン酸アルキルアリールは、共通のアルキル基を共有している。例えば、米国特許第5,254,709号(この全体は、参照により本明細書に組み込まれる)は、次の反応:
【化3】


に従って、触媒の存在下で、2,4−ジ−t−ブチルフェノールと三塩化リンを反応させることによる、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)の合成を記載している。
【0008】
米国特許第7,468,410号は、亜リン酸トリ(4−sec−ブチルフェニル)及び亜リン酸トリ(2−sec−ブチルフェニル)を含む亜リン酸エステル混合物を記載している。これらの亜リン酸エステルの各々は、単離されると液体であり、その組合せも液体である。
【0009】
米国特許第5,254,709号は、2:1のモル比の2,4−ジ−t−アミルフェノールと2,4−ジ−t−ブチルフェノールから製造される固体亜リン酸エステル、及び2−t−ブチル−4−ノニルフェノールから製造される液体亜リン酸エステルを含め、様々な2次酸化防止剤を記載している。
【0010】
熱及び光分解に対してポリマー樹脂及び組成物を効果的に安定化でき、また大気条件で液体である、安全で効果的な新規な亜リン酸エステル安定剤が、依然として求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,254,709号明細書
【特許文献2】米国特許第7,468,410号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、いくつかのアルキル基が他のアルキル基とは異なる炭素原子数を有する、少なくとも2種の異なる亜リン酸アルキルアリールの混合物を含む様々な組成物を対象とし、この混合物は、大気条件で液体である。第1及び第2亜リン酸エステルは、広くは、次の構造:
【化4】


に対応し、式中、R、R及びRは、独立に選択されるアルキル化アリール基であり、各アリール部分(moiety)は、6から18個の炭素原子の独立に選択される芳香族部分であり、また、各芳香族部分は、少なくとも1つの直鎖状又は分岐状C〜C18アルキル基により置換されている。通常、R、R及びRは、次の構造:
【化5】


の独立に選択されるアルキル化アリール基であり、式中、R、R及びRは、水素、及び直鎖状又は分岐状C〜Cアルキルからなる群から独立に選択されるが、但し、R、R及びRの少なくとも1つは水素ではない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
こうして、本発明の組成物の少なくとも第1及び第2亜リン酸アルキルアリールは、異なるが、それぞれ、次の一般構造:
【化6】


を有し、式中、m、n、o、p及びqは、0、1、2及び3から独立に選択される整数であるが、但し、m+n+o+p+q=3であり、各Arは、6から18個の炭素原子の独立に選択される芳香族部分で、典型的にはフェニルであり、各Rは、同数の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状C〜C18アルキル基であり、各Rは、同数の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状C〜C18アルキル基であるが、但し、Rは、Rとは異なる炭素原子数を有し、第1亜リン酸エステルは、少なくとも1つのRによって置換された芳香族部分を含み、第2亜リン酸エステルは、少なくとも1つのRによって置換された芳香族部分を含む。R及びRは、直鎖状又は分岐状C〜C18アルキル基から、例えば、直鎖状又は分岐状C〜C12アルキル基、例えば、プロピル、ブチル及びアミルの異性体(例えば、イソプロピル、sec−ブチル、t−ブチル、sec−アミル及びt−アミル)から独立に選択される。芳香族部分がフェニルである場合、それぞれの個々のアルキル基は、典型的には、オルト及び/又はパラ位にあるが、他の位置も可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の一般的実施形態において、亜リン酸エステル組成物は、次の構造:
【化7】


を有する第1亜リン酸アルキルアリール及び次の構造:
【化8】


を有する第2亜リン酸アルキルアリールを含む。
【0015】
式中、a、b、c及びdは、0,1、2及び3から独立に選択される整数であるが、但し、a+b=3、c+d=3であり、Ar、R及びRは、上で定義された通りである。
【0016】
第2の一般的実施形態において、亜リン酸エステル組成物は、次の構造:
【化9】


を有する1種又は複数の亜リン酸エステルを含み、式中、e、f、g及びhは、0、1及び2から独立に選択されるが、但し、e+f+g+h=3、e+f=1又は2、g+h=1又は2であり、Ar、R及びRは、上で定義された通りである。
【0017】
第3の一般的実施形態において、亜リン酸エステル組成物は、mが、1、2及び3から選択される整数であり;n、o、p及びqが、0、1及び2から独立に選択される整数であるが、但し、m+n+o+p+q=3であり、Ar、R及びRは、上で定義された通りである構造XIの1種又は複数の亜リン酸エステルを含む。この実施形態において、亜リン酸エステル組成物は、少なくとも2種の異なる亜リン酸アルキルアリールを含み、そのうちの少なくとも1種の亜リン酸アルキルアリールが、異なる炭素原子数を有する2種以上のアルキル基を有する少なくとも1つのアリール部分を有する。
【0018】
別の実施形態において、本発明は、少なくとも2種の異なる亜リン酸アルキルアリールの混合物を含む組成物であり、そのうちの少なくとも1種の亜リン酸アルキルアリールが、異なる炭素原子数を有する2種以上のアルキル基を有し、これらのアルキル基は別のアリール部分の置換基であり、また、混合物は大気条件で液体である。
【0019】
亜リン酸エステル組成物は、三ハロゲン化リン、例えば、PClと、少なくとも2種の異なる亜リン酸アルキルアリールの混合物とを反応させることによって、都合よく製造される。
【0020】
本発明は、少なくとも2種の異なる亜リン酸アルキルアリールを含む亜リン酸エステル組成物を提供し、これらは、大気条件で液体であるが、但し、この亜リン酸エステル組成物は、同一の又は別の亜リン酸エステル化合物上かどうかに関わらず、2種以上のアルキル基を含み、2種以上のアルキル基は異なる炭素原子数を有する。異なる炭素原子数を有する2種以上のアルキル基の組入れは、以下のように、本発明の少なくとも3つの異なる一般的実施形態に導く。
【0021】
(i)混合亜リン酸エステル実施形態。第1の一般的実施形態において、異なる数の炭素原子を有する2種以上のアルキル基が、別の亜リン酸エステル化合物上に存在する。すなわち、少なくとも1種の亜リン酸エステルが、第1の数の炭素原子を有するアルキル基により置換されたアリール基を有し、別の亜リン酸エステルが、第2の数の炭素原子を有するアルキル基により置換されたアリール基を有し、第1及び第2の数は異なる。このような組成物が、別々に合成された2種の亜リン酸エステル又は亜リン酸エステル混合物を混合することによって都合よく生成されるので、この第1の実施形態を「混合亜リン酸エステル」実施形態と呼ぶ。
【0022】
(ii)混合アルキレート実施形態。第2の一般的実施形態において、異なる数の炭素原子を有する2種以上のアルキル基を、1つの亜リン酸エステル化合物の隣接するアリール部分上に見出すことができる。すなわち、この実施形態の亜リン酸エステルは、第1の数の炭素原子を有するアルキル基により置換された1つ又は複数のアリール部分と、さらに、第2の数の炭素原子を有するアルキル基により置換された1つ又は複数のアリール部分を含み、第1及び第2の数は異なる。このような亜リン酸エステル組成物が、ハロゲン化リンと、別々に合成された少なくとも2種のアルキレート(alkylate)又はアルキレート混合物を含むアルキレート組成物とを反応させることによって都合よく生成されるので、第2の実施形態を「混合アルキレート」実施形態と呼ぶ。
【0023】
(iii)混合オレフィン実施形態。第3の一般的実施形態において、異なる数の炭素原子を有する2種以上のアルキル基が、いずれも、1種又は複数の亜リン酸エステルの同一のアリール部分上に存在し得る。このような組成物が、異なる炭素原子数を有するオレフィンの混合物とヒドロキシアリール化合物とを反応させて、複合アルキレート組成物を生成し、このアルキレート組成物とハロゲン化リンとを反応させることによって都合よく生成されるので、第3の実施形態を「混合オレフィン」実施形態と呼ぶ。
【0024】
第1、第2及び第3の実施形態の2つ以上が、より一層多様な亜リン酸エステル組成物を生成するために組み合わされ得ることが、理解されるべきである。
【0025】
本発明の様々な実施形態は、異なる亜リン酸エステル組成物に導くが、各亜リン酸エステル組成物によって共有される一定の特性が存在する。本発明の亜リン酸エステル組成物は、大気条件で液体である。「大気条件」によって、室温、例えば25℃、及び1気圧を意味する。本明細書において論じられるように、ほとんどの場合、亜リン酸エステル組成物に含まれる個々の亜リン酸エステルのそれぞれは、単離された場合、大気条件で固体であると予想されるので、亜リン酸エステル組成物が大気条件で液体であるという事実は、驚くべきであり、予想外である。これは、先行技術が、固体亜リン酸エステル組成物で、それらの成分が大気条件で単独では固体であるいくつかの例を教示することを考えると、特に驚くべきことである(特開昭59−030842号公報;国際公開WO93/03092号;カナダ特許CA2,464,551号;米国特許第5,254,709号を参照)。対照的に、本発明の亜リン酸エステル組成物は、たとえ個々の成分が固体であると予想されるとしても、液体である。
【0026】
表1は、いくつかの純粋な亜リン酸エステル化合物について、融点を記載し、それらの各々は、室温より上である。
【表1】

【0027】
本明細書で用いられる場合、「液体」によって、亜リン酸エステル組成物が、少なくとも3回の「凍結/解凍」サイクルの後、3回又はより少ないサイクルの後で液体のままではない「準安定液体」とは対照的に、液体のままであることを意味する。凍結/解凍サイクルは、次のように定義される:1)大気温度の組成物が、0.5時間撹拌される;2)次いで、撹拌された組成物が、約−5℃から−10℃で3日間、冷凍される;及び3)次に、冷凍された組成物が、大気温度に戻され、雰囲気に3日間、保たれる。ステップ3の後、組成物は、固体含有量、例えば結晶化について調べられる。ステップ1〜3の完了が、1回の凍結/解凍サイクルと定義される。
【0028】
亜リン酸エステル組成物の粘度は、それに含まれる様々な亜リン酸エステル化合物の相対量に応じて変わり得る。例示的なある実施形態では、亜リン酸エステル組成物は、30℃で測定して、11,000cSt未満、例えば、7,300cSt未満、5,000cSt未満、3,000cSt未満、又は2850cSt未満の粘度を有する。このように、組成物の粘度は、30℃で測定して、1cStから15,000cSt、100cStから12,000cSt、500cStから10,000cSt、500cStから6,500cSt、500cStから5,000cSt、500cStから3,000cSt、1,000cStから4,000cSt、1,500cStから3,500cSt、2,000cStから3,000cSt、又は2,000から2,800cStの範囲であり得る。
【0029】
亜リン酸エステル組成物における亜リン酸アルキルアリールの多様性を増すことによって、取扱い特性(例えば、液体の物理的状態及び粘度)、さらには、様々なポリマーとの溶解性/相溶性を、有利にも改善できることが今般見出された。本発明は、異なる炭素原子数を有するアルキル基を組み入れることによって、亜リン酸エステルの多様性を増す様々な方法を提供する。様々な実施形態において、例えば、液体組成物は、少なくとも2種、例えば少なくとも4種、又は少なくとも10種の異なる亜リン酸アルキルアリールを、場合によっては、2から100種の異なる亜リン酸アルキルアリールを、例えば、3から20種の異なる亜リン酸アルキルアリール、又は4から10種の異なる亜リン酸アルキルアリールを含み得る。
【0030】
本発明の別の利点は、混合アルキレートから誘導される亜リン酸アルキルアリールが、製造コストを低減する助けとなり、また、実質的に純粋な出発材料(例えば、オレフィン及び/又はアルキル化フェノール類)に対する従来の必要性を除くことである。
【0031】
一般に、本発明の組成物における各亜リン酸エステルは、次の構造:
【化10】


を有し、式中、R、R及びRは、独立に選択されるアルキルアリール基であり、また、組成物は、大気温度で液体である。
【0032】
本発明の化合物中に存在するアリール部分(Ar)は、6から18個の炭素原子の芳香族部分、例えば、フェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラシル、ビフェニル、ターフェニル、o−クレジル、m−クレジル、p−クレジル、キシレノールなどであり、好ましくはフェニルである。
【0033】
一般に、各芳香族部分は、少なくとも1つの分岐鎖又は直鎖C〜C18アルキル基、例えば、C〜C12アルキル基、C〜Cアルキル基、又はC〜Cアルキル基により置換されているが、特定の実施形態において、無置換芳香族部分を有する少量の亜リン酸エステルが存在する。一実施形態において、異なる炭素原子数を有する2種以上のアルキル基は、分岐鎖又は直鎖C〜C12アルキル基、例えば、C〜Cアルキル基、又はC〜Cアルキル基から選択される。アルキル基は、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、ヘキシル、へプチル、オクチル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル及びこれらの異性体からなる群から選択される。アルキル基はノニルであり得るが、これは通常避けられる。特定の実施形態において、アルキル基は、プロピル、ブチル及びアミル基、例えば、イソプロピル、sec−ブチル、t−ブチル、sec−アミル、t−アミル及びネオアミルから選択される。多くの実施形態において、アルキル基のいずれもC〜C10アルキル、例えば、Cアルキルではない。このように、好ましい実施形態において、アルキル部分はノニルを含まず、これは、亜リン酸エステル組成物が、好ましくは、50wppm未満、例えば、10wppm未満、又は5wppm未満のノニル置換アリール亜リン酸エステル化合物を含み、最も好ましくは、検出できるノニル置換アリール亜リン酸エステル化合物を全く含まないことを意味する。さらに、亜リン酸エステル組成物は、好ましくは、50wppm未満、例えば、10wppm未満、又は5wppm未満のノニルフェノールを含み、最も好ましくは、検出できるノニルフェノールを全く含まない。
【0034】
芳香族部分は、通常オルト及び/又はパラ位で、モノ、ジ及びより少ない度合で、トリ置換されているが、組成物の各亜リン酸エステルは、モノ置換アリールだけを排他的に、又はジ置換アリールだけを排他的に、又はトリ置換アリールだけを排他的に含むわけではない。典型的には、本発明の亜リン酸エステル組成物は、モノアルキル化及びジアルキル化されているアリール部分を有するいくらかの亜リン酸エステル化合物を一般に含む。様々なアルキル基を用いることと組み合わせたモノ及びジ−置換アリール部分の組合せは、非常に多様な亜リン酸エステル組成物を許容する。たとえ存在するとしても、少量のアリール部分がトリ置換されており、例えば、0から5wt%、又は0.1から5wt%のいずれかのアリール部分がトリ置換されており、例えば、1〜3wt%、例えば、2〜3wt%がトリ置換されている。しばしば、3wt%より少量の、例えば、2wt%より少量、又は1wt%より少量のアリール部分が、トリ置換されている。
【0035】
通常、たとえ存在するとしても、少量のアリール部分がオルト位でモノ置換されており、例えば、0から5wt%で、しばしば、3wt%未満、例えば、2wt%未満、又は1wt%未満のアリール部分が、オルト位でモノ置換されている。ある実施形態では、例えば、0.1から5wt%、1〜3wt%、又は2〜3wt%のアリール部分が、オルト位でモノ置換されている。同じ様に少量の無置換アリール基が存在し得る。
【0036】
亜リン酸エステル組成物は、α位に水素原子を有するアルキル基、例えば、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、n−アミル、sec−アミル、イソアミルなどにより置換されたアリール基を有する亜リン酸エステル化合物を含み得る。別の実施形態において、亜リン酸エステル組成物は、α位に水素原子を有するアルキル基により置換されたアリール基を有する亜リン酸エステル化合物を実質的に含まない、例えば、ある実施形態では、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%のアリール部分が、第3級α−炭素を有するアルキル基、例えば、t−ブチル及び/又はt−アミルにより置換されている。
【0037】
、R及びRは、例えば、次の構造:
【化11】


の独立に選択されるアルキル化アリール基であり、式中、R、R及びRは、水素、及び直鎖状又は分岐状C〜Cアルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、ヘキシル、へプチル、オクチル及びこれらの異性体(例えば、イソプロピル、sec−ブチル、t−ブチル、sec−アミル、t−アミル、ネオアミル)からなる群から独立に選択されるが、但し、R、R及びRの少なくとも1つは水素ではない。一実施形態において、R及びRは水素であり、Rは水素ではない。一実施形態では、オルトのアルキル基、すなわち、R及びRは、α−水素原子を有さない。一実施形態において、オルトのアルキル基、すなわち、R及びRは、t−ブチル及びt−アミルからなる群から選択される第3級α−炭素原子を有する。
【0038】
一実施形態において、R及びRは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、ヘキシル及びこれらの異性体からなる群から独立に選択され、Rは水素である。別の実施形態において、R及びRは水素であり、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、ヘキシル及びこれらの異性体からなる群から独立に選択される。これらの実施形態の一態様において、R、R及びRの少なくとも1つは、C又はCアルキルであり、しばしば、t−ブチル又はt−アミルである。
【0039】
一実施形態において、R、R及びRは、次の構造:
【化12】


の独立に選択される基であり、式中、R、R及びRは、上で定義されており、Rは水素又はメチルであるが、但し、R、R、R及びRの1つはメチルであり、またR、R、R及びRの少なくとも2つは水素ではない。このような亜リン酸エステルは、例えば、1種又は複数のアルキル化クレゾール化合物(例えば、アルキル化オルト−、メタ−、及び/又はパラ−クレゾール)と、ハロゲン化リン(例えば、PCl)との反応によって生成される。
【0040】
亜リン酸エステル組成物は、通常、TNPP以上の全リン含有量、例えば、少なくとも4.5モル%、例えば、少なくとも4.8モル%、又は少なくとも5.1モル%を有する。範囲に関しては、亜リン酸エステル組成物の全リン含有量は、亜リン酸エステル組成物中の全てのリン含有化合物の4.5から10.0モル%、4.8から8.0モル%、又は5.1から6.0モル%の範囲であり得る。
【0041】
一般に、液体亜リン酸エステル組成物は、アルキル化されているか又はアルキル化されていないかどうかに関わらず、亜リン酸エステル組成物に含まれている場合、本明細書において「遊離フェノール」と呼ばれるフェノール類(例えば、フェノール、クレゾール又はキシレノール)を低レベルで含む、又は実質的にこれらを含まない。多くの実施形態において、少量の遊離フェノール類は、例えば粘度低下剤として、有益であり得る。本発明でのこれらの遊離フェノールは、通常、三ハロゲン化リンとの反応からの未反応フェノール類であり、亜リン酸エステルのアルキル化アリール基の構造を反映しており、例えば、遊離フェノールは、次の構造:
【化13】


を有し、式中、R及びRは、前記の通りである。亜リン酸エステル組成物は、亜リン酸エステルと上で示された遊離フェノールを合わせた重量に対して、好ましくは、0から10wt%の、例えば、0.01から5wt%、0.01から4wt%、0.5から3wt%、又は0.1から3wt%の遊離フェノールを含む。一実施形態において、亜リン酸エステル組成物は、少量の、例えば、0.1から5重量パーセント、又は1から5重量パーセントの、例えば、0.1から4重量パーセントの、例えば2から3重量パーセントの遊離フェノール類を含み、例えば、5wt%未満の、例えば、3wt%未満、1wt%未満の、ある実施形態では、0.5wt%未満の、例えば、0.2wt%未満、又は0.1wt%未満の遊離フェノール類が存在する。亜リン酸エステルは、しばしば、特定のヒンダードフェノール1次酸化防止剤と組み合わせて用いられ、本発明の亜リン酸エステル組成物もまた、このような1次酸化防止剤と組み合わせて用いられ得る。しかし、本発明の組成物は、特に、混合亜リン酸エステル組成物であり、これは、本質的に前記亜リン酸エステル及び先の構造の遊離フェノール類からなる場合、室温で液体であり、この組成物は、他の材料とブレンドされ得る。
【0042】
さらに、亜リン酸エステル組成物は、無置換アリール部分を有する亜リン酸エステル化合物を、例えば、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸ビス(フェニル)アルキルフェニル、又は亜リン酸ビス(アルキルフェニル)フェニルを、しばしば、実質的に含まない。すなわち、通常、亜リン酸エステル組成物は、亜リン酸エステル組成物の全重量に対して、2wt%未満の、例えば、1wt%未満、又は0.5wt%未満の、無置換アリール部分を有する亜リン酸エステル化合物を含む。別の見方では、亜リン酸エステル組成物を製造するために用いられるアルキレートは、少量のフェノールを、すなわち、10%以下の、通常5%未満の、例えば、0.01から10重量パーセント、0.01から5重量%の、通常3%以下のフェノールを含み得るが、これは、亜リン酸エステル合成プロセスの間に反応して、亜リン酸フェニルを生成し得る。
【0043】
このように、本発明の組成物は、通常、少なくとも2種の異なる亜リン酸アルキルアリールの亜リン酸エステル組成物であり、構造(XI)の第1亜リン酸アルキルアリール及び第2亜リン酸アルキルアリールを少なくとも含み、
【化14】


[式中、m、n、o、p及びqは、0、1、2及び3から独立に選択される整数であるが、但し、m+n+o+p+q=3であり、各Arは、6から18個の炭素原子の独立に選択される芳香族部分で、好ましくはフェニルであり、各Rは、同数の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状C〜C18アルキル基であり、各Rは、同数の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状C〜C18アルキル基であるが、但し、Rは、Rとは異なる炭素原子数を有し、前記第1亜リン酸アラルキルは、少なくとも1つのRによって置換された芳香族部分を含み、前記第2亜リン酸アラルキルは、少なくとも1つのRによって置換された芳香族部分を含み、組成物の亜リン酸エステルにおけるR基とR基のモル比は、1:10から10:1である]かつ、次の構造:
【化15】


を有する1種又は複数の遊離フェノールを、組成物中の全ての亜リン酸エステルと前記遊離フェノールを合わせた重量に対して、0から10重量%含み、上記亜リン酸エステル組成物は、m、p及びqが0であり、n+o=3である構造(XI)の1種又は複数の亜リン酸トリス(モノアルキルアリール)、例えば、亜リン酸トリス(4−tert−アルキルフェニル)を、亜リン酸エステル組成物中の全ての亜リン酸エステルの全重量に対して、20から80重量パーセントの量で含み、また、m+p+q=1であり、n+o=2である構造(XI)の1種又は複数の亜リン酸ビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリール、例えば、亜リン酸ビス(4−tert−アルキルフェニル)−2,4−ジ−tert−アルキルフェニルを、15から60重量パーセントの量で含み、組成物は、大気条件で液体である。
【0044】
典型的には、亜リン酸エステル組成物は、また、m+p+q=2であり、n+o=1である構造(XI)の1種又は複数の亜リン酸ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリールを、亜リン酸エステル組成物中の全ての亜リン酸エステルの全重量に対して、2から20重量パーセント、例えば、4から20重量パーセント、又は5から10重量パーセントの量で含む。m+p+q=3であり、n及びoが0である構造(XI)の亜リン酸トリス(ジアルキルアリール)もまた、亜リン酸エステル組成物中の全ての亜リン酸エステルの全重量に対して、通常、0.1から20重量パーセント、例えば、0.3から5重量パーセント、又は0.5から1重量パーセントの量で存在する。
【0045】
亜リン酸エステル組成物中の亜リン酸エステルの相対量は、亜リン酸エステル組成物が大気条件で液体である範囲内で、変わり得る。一実施形態において、第1亜リン酸エステル(単数又は複数)と第2亜リン酸エステル(単数又は複数)のモル比は、1:10から10:1、例えば、1:4から4:1、又は2:1から1:1である。例えば、より小さいアルキル基を有する亜リン酸エステルを、より多くの量で含めることによって、全リン含有量が、有利にも、最大化され得る、又は、亜リン酸エステルの1種は、亜リン酸エステル組成物全体の粘度及び加工特性を改善する、例えば、粘度を下げるように選択される。
【0046】
ある実施形態では、亜リン酸エステル組成物は、1種又は複数の加水分解安定剤(hydrolytic stabilizer)を含む。好ましい安定剤には、次の構造:
【化16】


のアミンが含まれ、式中、xは1、2又は3であり;R10は、水素、及び直鎖状若しくは分岐状C〜Cアルキル、好ましくは、直鎖状若しくは分岐状C〜Cアルキル(例えば、メチル又はエチル)からなる群から選択され、またR11は、直鎖状若しくは分岐状C〜C30アルキル、好ましくは、C〜C20アルキル、例えば、直鎖状若しくは分岐状C10〜C20アルキル、又は直鎖状若しくは分岐状C12〜C18アルキルである。一実施形態において、xは1であり、R11は、直鎖状若しくは分岐状C〜C20アルキル、例えば、C12〜C18アルキルである。一実施形態では、xは2であり、R11は、直鎖状若しくは分岐状C10〜C20アルキル、例えば、C12〜C18アルキルである。
【0047】
一態様において、前記アミンは、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びテトライソプロパノールエチレンジアミンからなる群から選択される。
【0048】
別の態様において、前記アミンは、オクチル−ビス(2−エタノール)アミン、ノニル−ビス(2−エタノール)アミン、デシル−ビス(2−エタノール)アミン、ウンデシル−ビス(2−エタノール)アミン、ドデシル−ビス(2−エタノール)アミン、トリデシル−ビス(2−エタノール)アミン、テトラデシル−ビス(2−エタノール)アミン、ペンタデシル−ビス(2−エタノール)アミン、ヘキサデシル−ビス(2−エタノール)アミン、ヘプタデシル−ビス(2−エタノール)アミン、オクタデシル−ビス(2−エタノール)アミン、オクチル−ビス(2−プロパノール)アミン、ノニル−ビス(2−プロパノール)アミン、デシル−ビス(2−プロパノール)アミン、ウンデシル−ビス(2−プロパノール)アミン、ドデシル−ビス(2−プロパノール)アミン、トリデシル−ビス(2−プロパノール)アミン、テトラデシル−ビス(2−プロパノール)アミン、ペンタデシル−ビス(2−プロパノール)アミン、ヘキサデシル−ビス(2−プロパノール)アミン、ヘプタデシル−ビス(2−プロパノール)アミン、オクタデシル−ビス(2−プロパノール)アミン、及びこれらの異性体からなる群から選択される。
【0049】
さらなる加水分解安定剤には、エポキシ、例えば、Drapex(商標)39、Drapex 392、Drapex 4.4、及びDrapex 6.8(Chemtura Corp.)として市販されているエポキシ化大豆油(ESBO)が含まれる。
【0050】
アミンは、亜リン酸エステル組成物の全重量に対して、0.01から5wt%、例えば、0.1から1.5wt%、又は0.2から0.8wt%の量で存在し得る。
【0051】
本発明の一般的実施形態が、下でより詳細に説明される。
【0052】
混合亜リン酸エステル実施形態
一般的一実施形態において、亜リン酸エステル組成物は、第1アルキル基だけを排他的に有する1種又は複数の第1亜リン酸エステル、及び第2アルキル基だけを排他的に有する1種又は複数の第2亜リン酸エステルを含み、第1アルキル基は、第2アルキル基とは異なる炭素原子数を有する。亜リン酸エステル組成物は、少なくとも次の2つの構造:
【化17】


を有する亜リン酸エステルを含み、式中、a、b、c及びdは、0、1、2及び3から独立に選択される整数であるが、但し、a+b=3、c+d=3であり、Ar、R及びRは、前記の通りである。
【0053】
例えば、第1亜リン酸エステルは、アルキル−A基、すなわち、A個の炭素原子を有するアルキル基を有するアリール部分を含み、第2亜リン酸エステルは、アルキル−B基、すなわち、B個の炭素原子を有するアルキル基を有するアリール部分を含む。アルキル−A及びアルキル−Bの各々は、同数の炭素原子を有するアルキル基の複数の異性体を含み得ることが指摘されるべきである。例えば、アルキル−A基は、sec−ブチル及びt−ブチルを含んでいてもよく、アルキル−Bは、sec−アミル及びt−アミルを含み得る。
【0054】
それゆえに、第1亜リン酸エステルは、亜リン酸トリス(アルキル−A−アリール)、亜リン酸トリス(ジ−アルキル−A−アリール)、亜リン酸ビス(アルキル−A−アリール)ジ−アルキル−A−アリール及び亜リン酸ビス(ジ−アルキル−A−アリール)アルキル−A−アリールからなる群から選択される;また、第2亜リン酸エステルは、亜リン酸トリス(アルキル−B−アリール)、亜リン酸トリス(ジ−アルキル−B−アリール)、亜リン酸ビス(アルキル−B−アリール)ジ−アルキル−B−アリール及び亜リン酸ビス(ジ−アルキル−B−アリール)アルキル−B−アリールからなる群から選択される。他の亜リン酸エステルもまた存在し得る。
【0055】
具体的に述べると、アルキル−Aがイソプロピルであり、またアルキル−Bがt−ブチルである場合、第1亜リン酸エステルは、亜リン酸トリス(4−イソプロピルフェニル)、亜リン酸トリス(2,4−ジプロピルフェニル)、亜リン酸ビス(4−プロピルフェニル)−2,4−ジプロピルフェニル及び亜リン酸ビス(2,4−ジ−イソプロピルフェニル)−4−イソプロピルフェニルからなる群から選択され、第2亜リン酸エステルは、亜リン酸トリス(4−t−ブチルフェニル)、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)、亜リン酸ビス(4−t−ブチルフェニル)−2,4−ジ−t−ブチルフェニル及び亜リン酸ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4−t−ブチルフェニルからなる群から選択される。
【0056】
別の例では、アルキル−Aはイソプロピルであり、アルキル−Bはt−アミルであり、こうして、第1亜リン酸エステルは、亜リン酸トリス(4−イソプロピルフェニル)、亜リン酸トリス(2,4−ジ−イソプロピルフェニル)、亜リン酸ビス(4−イソプロピルフェニル)−2,4−ジ−イソプロピルフェニル及び亜リン酸ビス(2,4−ジ−イソプロピルフェニル)−4−イソプロピルフェニルからなる群から選択され、第2亜リン酸エステルは、亜リン酸トリス(4−t−アミルフェニル)、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)、亜リン酸ビス(4−t−アミルフェニル)−2,4−ジ−t−アミルフェニル及び亜リン酸ビス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)−4−t−アミルフェニルからなる群から選択される。
【0057】
第3の例では、アルキル−Aはt−ブチルであり、アルキル−Bはt−アミルであり、その結果、第1亜リン酸エステルは、亜リン酸トリス(4−t−ブチルフェニル)、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)、亜リン酸ビス(4−t−ブチルフェニル)−2,4−ジ−t−ブチルフェニル及び亜リン酸ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4−t−ブチルフェニルからなる群から選択され、第2亜リン酸エステルは、亜リン酸トリス(4−t−アミルフェニル)、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)、亜リン酸ビス(4−t−アミルフェニル)−2,4−ジ−t−アミルフェニル及び亜リン酸ビス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)−4−t−アミルフェニルからなる群から選択される。
【0058】
ある実施形態において、亜リン酸エステル組成物は、少なくとも3種、例えば、少なくとも4種、又は少なくとも5種の、上で特定された一般的又は具体的亜リン酸エステルを含む。
【0059】
亜リン酸エステル組成物は、亜リン酸トリス(モノアルキルアリール)を、例えば、亜リン酸トリス(アルキル−A−フェニル)及び亜リン酸トリス(アルキル−B−フェニル)を、亜リン酸エステル組成物中の全ての亜リン酸エステルの全重量に対して、20から80重量パーセント、ある実施形態では、55から80重量パーセント、20から55重量パーセント、又は37から54重量パーセントの量で含む。亜リン酸トリス(モノアルキルアリール)成分は、亜リン酸トリス(アルキル−A−アリール)又は亜リン酸トリス(アルキル−B−アリール)であり得るが、しばしば、亜リン酸トリス(モノアルキルアリール)成分は、亜リン酸トリス(アルキル−A−アリール)及び亜リン酸トリス(アルキル−B−アリール)の両方を含む。
【0060】
亜リン酸エステル組成物は、また、亜リン酸ビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリールを、例えば、亜リン酸ビス(アルキル−A−フェニル)ジ−アルキル−A−フェニル及び亜リン酸ビス(アルキル−B−フェニル)ジ−アルキル−B−フェニルを、亜リン酸エステル組成物中の全ての亜リン酸エステルの全重量に対して、15から60重量パーセント、例えば、31から50重量パーセントの量で含む。上の亜リン酸トリス(モノアルキルアリール)と同じく、この一般的実施形態の亜リン酸ビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリール成分は、亜リン酸(アルキル−A−アリール)ジ−アルキル−A−アリール及び亜リン酸ビス(アルキル−B−アリール)ジ−アルキル−B−アリールの組合せであり得る。
【0061】
存在する場合、亜リン酸エステル組成物は、亜リン酸ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリールを、例えば、亜リン酸ビス(ジ−アルキル−A−フェニル)アルキル−A−フェニル及び亜リン酸ビス(ジ−アルキル−B−フェニル)アルキル−B−フェニルを、亜リン酸エステル組成物中の全ての亜リン酸エステルの全重量に対して、2から20重量パーセント、例えば、4から20重量パーセント、又は5から10重量パーセントの量で含む。存在する場合、亜リン酸エステル組成物は、亜リン酸トリス(ジアルキルアリール)を、例えば、亜リン酸トリス(ジ−アルキル−A−フェニル)及び/又は亜リン酸トリス(ジ−アルキル−B−フェニル)を、亜リン酸エステル組成物中の全ての亜リン酸エステルの全重量に対して、0.1から20重量パーセント、例えば、0.3から5重量パーセント、又は0.5から1重量パーセントの量で含む。
【0062】
混合亜リン酸エステル実施形態の亜リン酸エステル組成物は、通常、それぞれの亜リン酸エステルを別々に製造し、別個の亜リン酸エステルを一緒にブレンドすることによって、製造される。亜リン酸エステルは、また、下のスキームのように、三ハロゲン化リンと、ヒドロキシアリール化合物及び第1オレフィンの間の反応により生成されるモノ、ジ、及び場合によってはトリ置換されたアリールの混合物であり得る第1アルキレート組成物とを反応させることによって、同様に、三ハロゲン化リンと、ヒドロキシアリール化合物及び第2オレフィンの間の反応により生成される第2アルキレート組成物とを反応させることによって、都合よく製造することができ、ここで、第2オレフィンは、第1オレフィンとは異なる炭素原子数を有する。
【化18】


次いで、2つの反応混合物は、一緒にされる。少量の他のアルキル化フェノール、例えば、オルト−置換モノアルキル化フェノールが、上の反応スキームにおいて、さらなる反応物として含まれ得る、そして、さらなる誘導体亜リン酸エステルを生成し得るが、これらのさらなる反応物及び生成物は、簡明さのために、この反応から省かれている。
【0063】
本発明は、異なるアルキル基を有する2種の異なる亜リン酸エステルを含むので、スキーム(VII)において上で示された1種又は複数の生成物は、任意選択で、他の反応生成物から分離され得る、又は部分的に分離され得る(例えば、蒸留により)。この態様において、それぞれが異なるアルキル基を有する、2種の比較的純粋な亜リン酸エステルが、任意選択で、加熱され、ブレンドされて、亜リン酸エステル化合物の混合物を生成し得る。
【0064】
混合アルキレート実施形態
第2の一般的実施形態において、液体亜リン酸アルキルアリール組成物は、2種以上の亜リン酸エステル化合物を含み、そのうち少なくともいくらかの亜リン酸エステル化合物は、第1アルキル基と、第1アルキル基とは異なる炭素原子数を有する第2アルキル基とを少なくとも含む複数のアルキル基により置換されているが、但し、どの個々のアリール部分も、第1アルキル基及び第2アルキル基の両方により置換されていない。すなわち、それぞれの個々のアリール部分は、第1アルキル基又は第2アルキルのいずれかだけにより排他的に置換されているが、両方によっては置換されていない。
【0065】
それゆえに、この実施形態における少なくとも1種の亜リン酸エステルは、次の構造(VI):
【化19】


を有し、式中、e、f、g及びhは、0、1及び2から独立に選択されるが、但し、e+f+g+h=3、e+f=1又は2、g+h=1又は2であり、Ar、R及びRは前記の通りである。
【0066】
この実施形態では、亜リン酸エステル組成物は、ビス(アルキル−A−アリール)ジ−アルキル−B−アリールホスファイト、ビス(アルキル−B−アリール)ジ−アルキル−A−アリールホスファイト、ビス(ジ−アルキル−A−アリール)アルキル−B−アリールホスファイト、ビス(ジ−アルキル−B−アリール)アルキル−A−アリールホスファイト、(アルキル−A−アリール)(アルキル−B−アリール)(ジ−アルキル−A−アリール)ホスファイト、(アルキル−A−アリール)(アルキル−B−アリール)(ジ−アルキル−B−アリール)ホスファイト、(アルキル−A−アリール)(ジ−アルキル−B−アリール)(ジ−アルキル−A−アリール)ホスファイト、(アルキル−B−アリール)(ジ−アルキル−B−アリール)(ジ−アルキル−A−アリール)ホスファイト、ビス(ジ−アルキル−A−アリール)ジ−アルキル−B−アリールホスファイト、及びビス(ジ−アルキル−B−アリール)ジ−アルキル−A−アリールホスファイトからなる群から選択される亜リン酸エステルを含む。可能性として、アルキル−A及びアルキル−B以外のアルキル置換基を有する他の亜リン酸エステルもまた、亜リン酸エステル組成物に含まれ得る。
【0067】
前と同じく、本組成物の亜リン酸トリス(モノアルキルアリール)は、亜リン酸トリス(アルキル−A−アリール)及び亜リン酸トリス(アルキル−B−アリール)のいずれか、又は両方を含み得るが、この実施形態では、混合アルキレート実施形態におけるように、亜リン酸トリス(モノアルキルアリール)は、また、亜リン酸ビス(アルキル−A−フェニル)アルキル−B−アリール及び亜リン酸ビス(アルキル−B−フェニル)アルキル−A−アリールも含み得る。
【0068】
この実施形態の特定の態様において、アルキル−Aはプロピル、例えばイソプロピルであり、アルキル−Bはブチル、例えば、t−ブチルである;別の態様において、アルキル−Aはプロピル、例えば、イソプロピルであり、アルキル−Bはアミル、例えば、t−アミルである;別の態様において、アルキル−Aはブチル、例えば、t−ブチルであり、アルキル−Bはアミル、例えば、t−アミルである。
【0069】
この実施形態では、亜リン酸エステル組成物は、異なる多くの亜リン酸エステル化合物を含み、特に多様であり得る。例えば、亜リン酸トリス(モノアルキルアリール)及び亜リン酸トリス(ジアルキルアリール)は、同じアルキル基(アルキル−A若しくはアルキル−B)だけを排他的に有するトリス化合物を含み得る、又は、アルキル基の混合物(例えば、アルキル−A及びアルキル−B)を含み得る。同様に、亜リン酸ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリール及び亜リン酸ビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリールは、同じアルキル基だけを排他的に含み得る、又は異なるアルキル基を含み得る。
【0070】
一般に、第2の実施形態の亜リン酸エステルは、ハロゲン化リンと、アルキル化ヒドロキシアリール化合物の混合物であるアルキレート組成物との反応生成物であって、アルキレート組成物のいくらかは、アルキル−Aによりアルキル化されており、アルキレート組成物のいくらかは、アルキル−Bによりアルキル化されている。混合亜リン酸エステル実施形態の製造とは対照的に、アルキル化ヒドロキシルアリール化合物は、ハロゲン化リンとの反応の前に一緒にされて、混合アルキレート組成物を生成する。例えば、アルキレート組成物は、(i)モノ及び/又はジ−アルキル−A−フェノールを含む第1アルキレート組成物、並びに(ii)モノ及び/又はジ−アルキル−B−フェノールを含む第2アルキレート組成物を含み得る。
【0071】
好ましい一実施形態において、アルキレート組成物は、プロピル化ヒドロキシアリール化合物、ブチル化ヒドロキシアリール化合物、及びアミル化ヒドロキシアリール化合物からなる群から選択される2種以上の化合物を含む。プロピル化ヒドロキシアリール化合物は、好ましくは、4−イソプロピルフェノール及び2,4−ジ−イソプロピルフェノールからなる群から選択され;ブチル化ヒドロキシアリール化合物は、好ましくは、4−t−ブチルフェノール及び2,4−ジ−t−ブチルフェノールからなる群から選択され;また、アミル化ヒドロキシアリール化合物は、好ましくは、4−t−アミルフェノール及び2,4−ジ−t−アミルフェノールからなる群から選択されるが、多くの実施形態において、他の異性体及び/又は他のアルキル基が存在する。
【0072】
混合オレフィン実施形態
本発明の第3の一般的実施形態において、液体亜リン酸エステル組成物は、異なる炭素原子数を有する2種以上のアルキル基を含む少なくとも1つのアリール部分を有する、1種又は複数の、好ましくは、2種以上、3種以上、又は4種以上の亜リン酸エステルを含み、例えば、亜リン酸エステル組成物は、次の構造:
【化20】


の少なくとも1種の亜リン酸エステルを含み、式中、mは、1、2及び3から選択される整数であり、n、o、p及びqは、0、1及び2から独立に選択される整数であるが、但し、m+n+o+p+q=3であり、Ar、R及びRは、前記の通りである。通常、R及びRは、先に記載された一般的実施形態におけるように、プロピル、ブチル及びアミルの異性体から選択される。一般的構造(XI)を有さない亜リン酸エステルを含め、他の亜リン酸エステルもまた、存在し得る。
【0073】
この実施形態では、亜リン酸エステル組成物は、異なる多くの亜リン酸エステル化合物を含み、個々のそれぞれのアリール部分が、R及びRの両方によって置換されているという選択肢を有するので、可能性として、第1又は第2の一般的実施形態のいずれかよりも、特に多様であり得る。すなわち、第3アルキルアリール部分、アルキル−A−アルキル−B−アリールもまた利用できる。
【0074】
一般に、第3の一般的実施形態の液体亜リン酸エステル組成物は、ハロゲン化リンと、アルキレート組成物との反応生成物であって、このアルキレート組成物は、異なる炭素原子数を有する2種以上のオレフィンと、少なくとも1種のヒドロキシアリール化合物との反応生成物である。こうして、混合亜リン酸エステル実施形態は、亜リン酸アルキル−A置換アリール及び亜リン酸アルキル−B置換アリールを別々に製造し、混合アルキレート実施形態は、アルキル化ヒドロキシアリールを別々に製造するが、それらをハロゲン化リンとの反応の前に混合するのに対して、混合オレフィン実施形態は、ヒドロキシルアリール部分と様々なオレフィンとの反応によってアルキレートの混合物を製造し、次いで、この混合物とハロゲン化リンとを反応させる。プロセスにおいて様々なオレフィンを用いることにより、ヒドロキシアリール化合物であって、それらの少なくともいくらかが、異なる炭素原子数を有する2種以上のアルキル基により置換されたヒドロキシアリール化合物が生成され得る。アルキレート組成物の組成は、反応物の種類と比(例えば、オレフィンとヒドロキシアリール化合物、さらには、第1オレフィンと第2オレフィンの比)を変えることによって、及び/又は、アルキル化プロセスのプロセス条件を変更することによって、変更され得る。オレフィンの混合物は、2種以上の直鎖状若しくは分岐状C〜C18オレフィン、例えば、C〜Cオレフィン、又はC〜Cオレフィンを独立に含む。一実施形態において、第1オレフィンは、C〜C12オレフィンであり、第2オレフィンは、C〜C18オレフィンである。好ましくは、第1又は第2オレフィンの少なくとも一方は、分岐状オレフィンである。しばしば、オレフィンは、プロピレン、イソブチレン及びイソアミレンを含む。
【0075】
アルキル化の間、オレフィンの混合物は、並行して、ヒドロキシアリール化合物と反応させられ得る、すなわち、第1及び第2オレフィンは、一緒に反応させられる。別の実施形態において、オレフィンの混合物は、逐次方式で、ヒドロキシアリール化合物と反応させられ得る、例えば、最初に第1オレフィンが、その後、第2オレフィンが反応させられる。これらの実施形態の各々が、下で詳細に説明される。
【0076】
ヒドロキシアリール部分のアルキル化
各実施形態におけるヒドロキシアリール化合物は、少なくとも1つのヒドロキル、及び6から18個の炭素原子を有する芳香族部分、例えば、フェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、9−フェナントロール、インダノール、カテコール、レソルシノール、アントラセン−2−オール、4−ビフェノール、4,4’−ビフェノール、キシレノール、クレゾール及びこれらの誘導体であり、好ましくはフェノールである。
【0077】
一態様において、混合亜リン酸エステル及び混合アルキレート実施形態におけるように、アルキル置換ヒドロキシアリール(本明細書では、アルキレートとも呼んでいる)のそれぞれは、オレフィン、例えば、プロピレン、ブチレン又はアミレンと、ヒドロキシアリール化合物、例えば、フェノールとの間の反応によって、別々に生成され得る。例えば、第1アルキレートは、第1オレフィンから誘導され、第2アルキレートは、第1オレフィンとは異なる炭素原子数を有する第2オレフィンから誘導される。代わりに、混合オレフィン実施形態におけるように、アルキレート組成物は、第1及び第2オレフィンと、ヒドロキシアリール化合物との間の1回だけの反応で生成され得る、例えば、低級アルケンなどのアルケンの混合物(例えば、2種以上のC〜Cオレフィン、例えば、ブチレンとアミレンの混合物)が、並行して(オレフィンA及びBの同時フィード)、又は逐次的に(すなわち、最初にオレフィンAが、その後で、オレフィンBが反応させられる)のいずれかで、フェノールと反応させられ得る。
【0078】
このように、アルキレートは、1種又は複数のフェノール類と、2種以上のオレフィンとを(別個の反応において、又は1回だけの反応プロセスにおいて)、触媒の存在下で、またアルキレート組成物を生成するのに効果的な条件下で、接触させることによって生成され得る。2種以上のオレフィンの各々は、2から18個の炭素、例えば、2から8個の炭素、又は3から5個の炭素を含むが、但し、第1オレフィンは、第2オレフィンとは異なる炭素原子数を有する。オレフィンアルキル化剤を用いる代わりとして、1種又は複数のハロゲン化C〜C18アルキル、アルコール、MTBE、又はTAMEが用いられ得る。アルキル化剤は、アルカン及びアルケンを含む炭化水素流、例えば、C若しくはCフラクションからの石油化学ラフィネート流、又は、アルカン、例えば、イソブタン又はイソペンタンの脱水素反応生成物を含み得る、或いはそれから誘導され得る。この態様において、アルカンは、変わらずに、アルキル化プロセスを通過し、生成物のアルキレート組成物から容易に分離され得る。
【0079】
得られるアルキレート、例えば第1アルキレートは、別のアルキレート、例えば第2アルキレートとブレンドされて、亜リン酸エステル組成物を合成するのに用いられるアルキレート組成物を生成することに留意して、オレフィンとフェノールの比は、得られるアルキレート組成物がハロゲン化リンと反応した時に、望みの亜リン酸エステル組成物に変換されるのに適するようなものである。ある例示的な実施形態において、全オレフィンとフェノール化合物のモル比は、1:1から6:1、例えば、1.1:1から2:1、又は1.25:1から1.4:1の範囲にある。この比は、例えば、アルキル化プロセスにおいて用いられる触媒、並びに最終的に生成される亜リン酸エステル組成物に望まれる組成及び粘度に応じて変わり得る。
【0080】
特定の実施形態において、フェノールと2種以上のオレフィンとの反応(第1及び第2アルキレートを別々に、又は一緒に生成するかどうかに関わらず)は、不活性雰囲気中で(例えば、窒素の下で)、60から160℃、例えば、70から145℃、又は80から140℃の温度で、通常、0.2から10atm、例えば、0.2から5atm、又は0.2から4atmの圧力で行われる。バッチ反応では、反応時間は、1から12時間、例えば、2から10時間、又は3から5時間、続き得る。連続反応では、滞留時間は、0.1から5時間、例えば、0.2から4時間、又は0.5から1時間であり得る。アルキル化は、通常、触媒の存在下で実施される。触媒は、例えば、酸性クレー触媒、陽イオン交換樹脂、ブレーンステッド酸、例えば、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸(トリフル酸)及びリンタングステン酸、並びにルイス酸、例えば、BFからなる群から選択され得る。適切な市販の酸性クレー触媒には、Fulcat(商標)22Bが含まれる。一実施形態において、本発明において有用なスルホン酸型陽イオン交換樹脂触媒は、例えば、スルホン化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、スルホン化架橋スチレンポリマー、フェノールホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂、又はベンゼンホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂であり得る。多くの一般的な市販の陽イオン交換樹脂が、本発明において有用であり、これらには、例えば、スチレン−ジビニルベンゼン型の強酸性イオン交換樹脂、例えば、Dowex(商標)50WX4、Dowex 50WX2、Dowex M−31、Dowex Monosphere M−31、Dowex DR−2030及びDowex Monosphere DR−2030触媒が含まれる。他の適切な樹脂には、Amberlyst(商標)15、Amberlyst 131、Amberlyst 35、Amberlyst 36、及びA21;Diaion(商標)WA30、Diaion SK104、Diaion SK1B、Diaion PK208、Diaion PK212、及びDiaion PK216;Tulsion(商標)T−38、Tulsion T−62、Tulsion T−66、Tulsion T−3825、及びTulsion T−3830;Lewatit(商標)K1131、Lewatit K1221、Lewatit K1261、及びLewatit SC 104;Indion(商標)180、及びIndion 225;並びにPurolite(商標)CT−175、Purolite(商標)CT−169、及びPurolite(商標)CT−275が含まれる。
【0081】
一実施形態において、アルキレートのバッチ合成は、ポット型反応器において行われる。別の実施形態において、アルキレートの合成は、連続型反応器において、連続ベースで実施される。前記プロセスの一態様において、オレフィンと反応しない如何なる遊離フェノール化合物も、例えば、70から160℃の温度、1から10mbarの圧力での蒸留により、反応生成物の混合物から除去され得る。
【0082】
アルキレート組成物における成分及び成分濃度は、アルキレート組成物、さらには最終的に生成される亜リン酸エステル組成物に望まれる組成及び目標粘度に応じて変わり得る。例えば、一実施形態において、アルキレート組成物は、4−ブチルフェノール、例えば、4−t−ブチルフェノール及び2,4−ジアミルフェノール、例えば、2,4−ジ−t−アミルフェノールを、組合せとして、80wt%を超える、90wt%を超える、又は95wt%を超える量で含む。別の具体例において、アルキレート組成物は、4−アミルフェノール、例えば、4−t−アミルフェノール及び2,4−ジブチルフェノール、例えば、2,4−ジ−t−ブチルフェノール;4−イソプロピルフェノール及び2,4−ジブチルフェノール、例えば、2,4−ジ−t−ブチルフェノール;4−ブチルフェノール、例えば、4−t−ブチルフェノール及び2,4−ジ−イソプロピルフェノール;4−イソプロピルフェノール及び2,4−ジアミルフェノール、例えば、2,4−ジ−t−アミルフェノール;又は、4−アミルフェノール、例えば、4−t−アミルフェノール及び2,4−ジ−イソプロピルフェノールを、それぞれ組合せとして、80wt%を超える、90wt%を超える、又は95wt%を超える量で含む。別の実施形態において、アルキレート組成物は、次のフェノール:4−ブチルフェノール(例えば、4−t−ブチルフェノール)、2,4−ジブチルフェノール(例えば、2,4−ジ−t−ブチルフェノール)、4−アミルフェノール(例えば、4−t−アミルフェノール)及び2,4−ジアミルフェノール(例えば、2,4−ジ−t−アミルフェノール)の、例えば、3又は4種を含むフェノール類の複合混合物を、好ましくは、組合せとして、80wt%を超える、90wt%を超える、又は95wt%を超える量で含む。類似の複合アルキレート組成物は、また、プロピル/アミル、及びプロピル/ブチル、さらには、C1〜18アルキル基の他の組合せによっても可能である。
【0083】
成分濃度に関しては、アルキレート組成物は、例えば、5から95wt%、例えば、10から80wt%、又は30から65wt%の1種又は複数のp−アルキル化フェノール、及び10から70wt%、又は30から65wt%の1種又は複数のo,p−ジアルキル化フェノールを含み得る。
【0084】
典型的には、アルキレート組成物は、モノアルキルフェノール、例えば、1種又は複数の4−アルキルフェノール及びジアルキルフェノール、例えば、1種又は複数の2,4−ジ−アルキルフェノールを含む。4−アルキルフェノールは、通常、40wt%を超える、50wt%を超える、60wt%を超える、70wt%を超える、又は75wt%を超える量で、95wt%未満、例えば、85wt%未満、80wt%未満、75wt%未満、又は65wt%未満の量で存在する。範囲に関しては、ある実施形態では、4−アルキルフェノールは、25wt%から99wt%、例えば、45wt%から80wt%、60wt%から75wt%、又は65wt%から75wt%の範囲の量で存在する。この態様において、ジアルキルフェノールは、通常、1wt%から60wt%、例えば、10wt%から50wt%、25wt%から40wt%、又は25wt%から35wt%の範囲の量で存在する。任意選択で、ジアルキルフェノールは、60wt%未満、例えば、55wt%未満、45wt%未満、又は35wt%未満の量で存在する。範囲の下限に関しては、ジアルキルフェノール、例えば、2,4−ジ−t−アミルフェノール及び/又は2,4−ジ−t−ブチルフェノールは、10wt%を超える、20wt%を超える、30wt%を超える、又は40wt%を超える量で、任意選択で存在する。
【0085】
モノアルキルフェノールとジアルキルフェノールの重量比は、大気条件で液体である亜リン酸アルキルアリール組成物を生成するための反応物として用いられるのに適切である望みのアルキレート組成物を生ずるように選択される、又は調節される。例えば、アルキレート組成物におけるモノアルキルフェノールとジアルキルフェノールの重量比は、9:1から1:1、例えば、8:1から1:1、8:1から1.5:1、又は7:1から2:1の範囲にある。
【0086】
前記のように、通常、混合オレフィン実施形態は、ヒドロキシアリール部分と様々なオレフィンとの反応によって製造されるアルキレートの混合物から、並行アルキル化プロセス又は逐次アルキル化プロセスのいずれかを多くの場合用いて、生成される。
【0087】
並行して供給される場合、すなわち並行アルキル化の場合、アルキレート組成物は、1種又は複数のヒドロキシアリール化合物と2種以上のオレフィンの混合物とを、通常、触媒の存在下で、また先の実施形態において記載されたアルキレート組成物を生成するのに効果的である条件下で、接触させることによって生成され得る。オレフィンアルキル化剤を用いる代わりとして、2種以上のハロゲン化アルキル、又はアルコールが用いられてもよく、この場合、2種以上のハロゲン化アルキル、又はアルコールは、異なる炭素原子数を有する。用いられるアルキル化剤は、アルカン及びアルケンの両方の組合せを含む石油化学ラフィネート(raffinate)流、例えば、C若しくはCラフィネート流を含み得る、又はそれから誘導され得る。
【0088】
一実施形態において、オレフィンの混合物は、ヒドロキシアリール化合物のアルキル化の前に、予め混合される。
【0089】
アルキレート組成物を生成するために並行アルキル化を用いる1つの反応方法の概略が、下に示され、ここで、オレフィン及びオレフィンは、独立に、異なる炭素原子数を有する直鎖状又は分岐状C〜C(例えば、C〜C、又はC〜C)オレフィンであり、Rは、オレフィンから生成するアルキル基であり、R’は、オレフィンから生成するアルキル基である。
【化21】

【0090】
前と同じく、ヒドロキシアリール化合物とオレフィン混合物のモル比は、得られるアルキレート組成物が、ハロゲン化リンと反応した時に、望みの亜リン酸エステル組成物に変換されるのに適するようなものである。例えば、ヒドロキシアリール化合物とオレフィン混合物のモル比は、1:6から1:1、例えば、1:4から1:1.2、又は1.5:1から1:1.5の範囲にある。
【0091】
逐次アルキル化では、1種又は複数のヒドロキシアリール化合物が、通常、触媒の存在下で、また部分アルキレート組成物を生成するのに効果的な条件下で、1種のオレフィンと反応させられる。ヒドロキシアリール化合物と第1オレフィンのモル比は、6:1から1:2、例えば、5:1から2:3、又は2:1から3:4である。次いで、部分アルキレート組成物は、アルキレート組成物を生成するために、同様の条件下で、第2オレフィン(第1オレフィンとは異なる炭素原子数を有する)と反応させられる。任意選択で、さらなる量のヒドロキシアリール化合物もまた、部分アルキレート組成物に投入されてもよい。部分アルキレートと第2オレフィンのモル比は、15:1から2:1、例えば、8:1から3:1、又は6:1から4:1である。逐次的に添加される場合、より少ない炭素原子数を有するオレフィンが最初に添加され、その後で、他のオレフィンが添加されることが好ましい。並列反応に関連して記載されたオレフィンアルキル化剤の代わりとなるものは、また、逐次アルキル化においても使用され得る。
【0092】
アルキレート組成物を生成するために逐次アルキル化を用いる1つの反応方法の概略は、次の通りであり、ここで、オレフィン、オレフィン、R及びR’は上で定義された通りである。望みのアルキレート組成物を生成するのに効果的な条件は、通常、先の実施形態において記載された通りである。
【化22】

【0093】
このように、アルキレート組成物は、アルキル−A及びアルキル−Bの両方により置換された、少なくともいくらかのジアルキル化ヒドロキシアリール化合物、例えば、o,p−ジアルキル化フェノールを含む。さらに、アルキレート組成物は、p−アルキル−Aフェノール、p−アルキル−Bフェノール、又はp−アルキル−Aフェノール及びp−アルキル−Bフェノールの両方などのp−アルキル化フェノールを含み得る。アルキレート組成物におけるさらなるo,p−ジアルキル化フェノールには、o,p−ジ−アルキル−Aフェノール、o,p−ジ−アルキル−Bフェノール、又はo,p−ジ−アルキル−Aフェノール及びo,p−ジ−アルキル−Bフェノールの両方が含まれ得る。
【0094】
次に、本発明の亜リン酸エステル組成物は、三ハロゲン化リン(三塩化リン及び三臭化リンから好ましくは選択される)と、前記アルキレート組成物の1つとを反応させることによって、都合よく製造され得る。触媒が用いられる場合、触媒は、ピリジン、N,N−ジメチルドデシルアミン及びジラウリルメチルアミン、又はこれらの塩酸塩からなる群から選択され得る。アルキレート組成物(すなわち、アルキル化フェノール化合物)と三ハロゲン化リンのモル比は、好ましくは、3:1から5:1、例えば、3:1から4:1、又は3:1から3.7:1である。
【0095】
アルキル化フェノールと三ハロゲン化リンとの反応は、不活性雰囲気(例えば、窒素)下で、5から70℃、例えば、40から70℃、又は50から70℃の温度で実施され得る。好ましくは、温度は、三ハロゲン化リンの還流を避けるために、アルキレート組成物の添加の間、70℃以下に保たれる。任意選択で、アルキレート組成物が反応器に投入され、それに三ハロゲン化リンが添加される。アルキレート組成物の添加の後、通常、0.8から4atm、例えば、0.9から3atm、又は1から2atmの圧力で、その温度が、10分から12時間、例えば、30分から10時間、又は1時間から3時間、任意選択で保たれる。次に、温度は、70℃から250℃、例えば、80℃から225℃、又は90℃から200℃の範囲の高い温度に上げられ得る。好ましくは、反応物は、任意選択で0.01から0.5atm、例えば0.03から0.4atm、又は0.04から0.1atmの低下させた圧力で、高い温度に、10分から12時間、例えば、30分から10時間、又は1時間から3時間保たれる。反応時間の間、塩化水素又は臭化水素ガスが発生し、約0.05atmに圧力を下げることによって、又は、反応混合物の上を窒素などの不活性ガスでスイーピングすることによって、除去され得る。一態様において、このようなガスの除去は、反応混合物中の全塩化物含有量が50wppm未満、例えば、25wppm未満、又は10wppm未満になるまで、実施され得る。
【0096】
前記プロセスの一態様において、三ハロゲン化リンと反応しなかった如何なる遊離フェノールも、0.0001から0.1atmの圧力の真空で、275℃まで、例えば250℃まで、又は225℃まで、又は200℃まで、反応温度を上げることによって放出され得る。一実施形態において、ワイプトフィルム(wiped−film)分子(短路)蒸留器、ワイプトフィルム蒸発装置(WFE)、薄膜蒸発装置、又は類似の装置が、遊離クレゾール又はフェノールを、上で示された非常に低レベルまでさらに除去するために使用され得る。
【0097】
一実施形態において、亜リン酸エステル組成物を生成するステップは、1種又は複数の中性溶媒中で行われ、これらの溶媒には、トルエン、キシレン、塩化メチレン、ヘプタン、クロロホルム及びベンゼンが含まれる。
【0098】
安定剤
安定化する量又は効果のある量の本発明の亜リン酸エステル組成物が、様々な種類のポリマーに対する2次酸化防止剤として使用され得る。本明細書で用いられる場合、「安定化する量」及び「効果のある量」によって、本発明の亜リン酸エステル組成物を含むポリマー組成物が、その物理的特性又は色の特性のいずれかにおいて、本発明の亜リン酸エステル組成物を含まない類似のポリマー組成物と比較して、改善された安定性を示す場合を意味する。改善される安定性の例には、例えば、溶融加工、風化(weathering)、並びに/或いは、熱、光、及び/又は他の要素への長期屋外暴露による、例えば、分子量の低下、色の劣化などに対する安定化の改善が含まれる。一例として、改善された安定性は、例えば、初期黄色度(YI)によって、又は黄変及び変色に対する耐性によって評価して、安定剤添加剤を含まない組成物と比べた場合、より低い初期の色、若しくは風化に対するさらなる耐性の一方又は両方の形で得られる。
【0099】
本明細書に記載されている添加剤及び安定剤は、組成物の安定性を改善するのに効果のある量で存在する。例えば、亜リン酸エステル組成物は、亜リン酸エステル組成物及び任意の他の安定剤又は添加剤の重量を含め、ポリマーの全重量に対して、通常、約0.001から約5wt%、例えば、約0.0025から約2wt%、又は約0.005から約1wt%の量で存在する。本発明の亜リン酸エステル組成物は、樹脂を、特に高温加工の間、安定化させ、メルトインデックス及び/又は色の変化が、複数回の押出の後でさえ、比較的少ない。
【0100】
本発明は、さらに、ベースポリマー、及び本発明の亜リン酸エステル組成物を含む、安定化された熱可塑性樹脂に関する。ポリマー樹脂は、ポリオレフィンなどのポリマーであってよく、液体亜リン酸エステル組成物は、共安定剤、例えば、ヒンダードフェノール類、芳香族アミン、ヒドロキシルアミン、ラクトン及びチオエーテルと共に用いられ得る。熱可塑性樹脂は、本発明の亜リン酸エステル組成物によって安定化され、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、紫外線吸収剤、亜リン酸エステル、亜ホスホン酸エステル、脂肪酸のアルカリ金属塩、ハイドロタルサイト、金属酸化物、エポキシ化大豆油、ヒドロキシルアミン、第3級アミンオキシド、ラクトン、第3級アミンオキシドの熱反応生成物及び硫黄含有相乗剤(thiosynergist)からなる群から選択される1種又は複数のさらなる安定剤又は安定剤混合物を任意選択で含む。
【0101】
一実施形態において、安定化混合物中の各成分の量が、ポリマー又はポリマー樹脂の全重量パーセントに対して、表4に示される。
【表2】

【0102】
1次酸化防止剤には、次のものが含まれる。
【0103】
(i)アルキル化モノフェノール、例えば:2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−イソブチルフェノール、2,6−ジシクロペンチル−4−メチルフェノール、2,6−ビス(α−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(α−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジオクタデシル−4−メチルフェノール、2,4,6,−トリシクロヘキシフェノール、及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシメチルフェノール。
【0104】
(ii)アルキル化ヒドロキノン、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2,5−ジ−tert−ブチル−ヒドロキノン、2,5−ジ−tert−アミル−ヒドロキノン及び2,6−ジフェニル−4−オクタデシルオキシフェノール。
【0105】
(iii)ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、例えば、2,2’−チオ−ビス−(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−チオ−ビス−(4−オクチルフェノール)、4,4’−チオ−ビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)及び4,4’−チオ−ビス−(6−tert−ブチル−2−メチルフェノール)。
【0106】
(iv)アルキリデン−ビスフェノール、例えば、2,2’−メチレン−ビス−(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−tert−ブチル−4−エチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−(α−メチルシクロヘキシル)フェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−ノニル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−ノニル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−(α−メチルベンジル)−4−ノニルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−(α,α−ジメチルベンジル)−4−ノニル−フェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデン−ビス−(6−tert−ブチル−4−イソブチルフェノール)、4,4’−メチレン−ビス−(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレン−ビス−(6−tert−ブチル−2−メチルフェノール)、1,1−ビス−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェノール)ブタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、2,2’−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,6−ジ−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール、1,1,3−トリス−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3−ドデシル−メルカプトブタン、エチレングリコール−ビス−(3,3,−ビス−(3’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−ブチレート)−ジ−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−ジシクロペンタジエン、及びジ−(2−(3’−tert−ブチル−2’ヒドロキシ−5’メチル−ベンジル)−6−tert−ブチル−4−メチルフェニル)テレフタレート。
【0107】
(v)ベンジル化合物、例えば、1,3,5−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、ビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、イソオクチル3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−メルカプト−アセテート、ビス−(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)ジチオール−テレフタレート、1,3,5−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス−(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、ジオクタデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−ホスホネート、モノエチル3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートのカルシウム塩、1,3,5−トリス−(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート。
【0108】
(vi)アシルアミノフェノール、例えば、4−ヒドロキシラウリン酸アニリド、4−ヒドロキシ−ステアリン酸アニリド、2,4−ビス−オクチルメルカプト−6−(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−s−トリアジン及びオクチル−N−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−カルバメート。
【0109】
(vii)β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオン酸と、1価又は多価アルコール(例えば、メタノール、ジエチレングリコール、オクタデカノール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ペンタエリトリトール、ネオペンチルグリコール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、チオジエチレングリコール、ジ−ヒドロキシエチルシュウ酸ジアミド)とのエステル。このようなフェノールには、また、テトラキス[メチレン{3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシシンナメート}]メタンも含まれる。
【0110】
(viii)β−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−プロピオン酸と、1価又は多価アルコール(例えば、メタノール、ジエチレングリコール、オクタデカノール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ペンタエリトリトール、ネオペンチルグリコール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、チオジエチレングリコール、ジヒドロキシエチルシュウ酸ジアミド)とのチオエステル。
【0111】
(ix)β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオン酸のアミド、例えば、N,N’−ジ−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)−ヘキサメチレン−ジアミン、N,N’−ジ−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)トリメチレンジアミン、N,N’−ジ−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)−ヒドラジン、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド、及び1,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン。
【0112】
(x)他のフェノール系酸化防止剤には、ポリマーフェノール、例えば、4−メチルフェノールとジシクロペンタジエン及びイソブチレンとの反応生成物、アルキリデン−ポリフェノール、例えば、1,3トリス(3−メチル−4−ヒドロキシル−5−t−ブチル−フェニル)−ブタン;チオフェノール、例えば2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール;4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール、エステルフェノール、例えばビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)ブタン酸]グリコールエステル及び2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレートが含まれる。
【0113】
(xi)他の1次酸化防止剤には、ヒドロキシルアミン及びn−オキシド、例えば、ビス(オクタデシル)ヒドロキシルアミンが含まれる。
【0114】
一実施形態において、安定化組成物は、テトラキスメチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシルヒドロシンナメート)メタン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、オクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ビス(オクタデシル)ヒドロキシルアミン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(α−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパン酸、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチル−フェノール、及びこれらの混合物からなる群から選択される1種の1次酸化防止剤、並びに本明細書において定義される液体亜リン酸エステル組成物を含む。
【0115】
亜リン酸エステル組成物及び/又は得られる安定化されたポリマー組成物は、また、以下のものなどの1種又は複数のUV吸収剤及び/又は光安定剤も任意選択で含む。
【0116】
(i)2−(2’−ヒドロキシフェニル)−ベンゾトリアゾール、例えば、その5’−メチル−、3’5’−ジ−tert−ブチル−、3’5’−ジ−tert−アミル−、5’−tert−ブチル−、5’−tert−アミル−、5’(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−、5−クロロ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−、5−クロロ−3’−tert−ブチル−5’メチル−、3’−sec−ブチル−5’tert−ブチル−、4’−オクトキシ、3’,5’−ditert−アミル−3’,5’−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)誘導体。
【0117】
(ii)2−ヒドロキシ−ベンゾフェノン、例えば、その4−ヒドロキシ、4−メトキシ−、4−オクトキシ、4−デシルオキシ−、4−ドデシルオキシ−、4−ベンジルオキシ−、2,4−ジヒドロキシ−、4,2’,4’−トリヒドロキシ−及び2’−ヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ誘導体。例示的な2−ヒドロキシ−ベンゾフェノンには2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−エトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、及び2−ヒドロキシ−4−プロポキシベンゾフェノンが挙げられる。
【0118】
(iii)置換及び無置換安息香酸のエステル、例えば、フェニルサリチレート、4−tert−ブチルフェニル−サリチレート、オクチルフェニルサリチレート、ジベンゾイルレソルシノール、ビス−(4−tert−ブチルベンゾイル)−レソルシノール、ベンゾイルレソルシノール、2,4−ジ−tert−ブチル−フェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート及びヘキサデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート。
【0119】
(vi)UV吸収剤及び光安定剤には、アクリレート、例えば、α−シアノ−β、β−ジフェニルアクリル酸−エチルエステル又はイソオクチルエステル、α−カルボメトキシ−桂皮酸メチルエステル、α−シアノ−β−メチル−p−メトキシ−桂皮酸メチルエステル又はブチルエステル、α−カルボメトキシ−p−メトキシ−桂皮酸メチルエステル、N−(β−カルボメトキシ−β−シアノ−ビニル)−2−メチル−インドリンもまた含まれ得る。
【0120】
(v)ニッケル化合物もまた、適切なUV吸収剤及び光安定剤である。例示的なニッケル化合物には、2,2’−チオ−ビス(4−(1,1,1,3−テトラメチルブチル)−フェノール)のニッケル錯体、例えば、1:1、又は1:2錯体(n−ブチルアミン、トリエタノールアミン、又はN−シクロヘキシル−ジエタノールアミンなどのさらなる配位子を任意選択で有する)、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンジルホスホン酸モノアルキルエステルのニッケル塩、例えば、メチル、エチル、又はブチルエステル、ケトキシム(例えば、2−ヒドロキシ−4−メチル−フェニルウンデシルケトキシム)のニッケル錯体、1−フェニル−4−ラウロイル−5−ヒドロキシ−ピラゾールのニッケル錯体(さらなる配位子を任意選択で有する)が含まれる。
【0121】
(vi)立体障害(sterically hindered)アミンは、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)−セバケート、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)−セバケート、n−ブチル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)エステル、1−ヒドロキシエチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシ−ピペリジン及びコハク酸の縮合生成物、N,N’−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)−ヘキサメチレンジアミン及び4−tert−オクチルアミノ−2,6−ジクロロ−1,3,5−s−トリアジンの縮合生成物、トリス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)−ニトリロトリアセテート、テトラキス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタン−テトラ−カルボン酸、1,1’(1,2−エタンジイル)−ビス−(3,3,5,5−テトラメチルピペラジノン)などの光安定剤として使用され得る。このようなアミンには、ジ(1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート:1−ヒドロキシ2,2,6,6−テトラメチル−4−ベンゾキシピペリジン;1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイルオキシ)−ピペルジン;及びN−(1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−イル)−エプシロンカプロラクタムなどのヒンダードアミン由来のヒドロキシルアミンが挙げられる。
【0122】
(vii)シュウ酸ジアミド、例えば、4,4’−ジオクチルオキシ−オキサニリド、2,2’−ジ−オクチルオキシ−5’,5’−ジ−tert−ブチルオキサニリド、2,2’−ジ−ドデシルオキシ−5’,5’ジ−tert−ブチル−オキサニリド、2−エトキシ−2’−エチル−オキサニリド、N,N’−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)−オキサルアミド、2−エトキシ−5−tert−ブチル−2’−エチルオキサニリド及び2−エトキシ−2’エチル−5,4−ジ−tert−ブチルオキサニリドとのその混合物、並びにo−及びp−メトキシ−、さらにはo−及びp−エトキシ−ジ置換オキサニリドの混合物。
【0123】
本発明のポリマー樹脂及び亜リン酸エステル組成物は、また、例えば1種又は複数の以下のものを含め、1種又は複数のさらなる添加剤を含み得る。
【0124】
(i)金属不活性化剤、例えば、N,N’−ジフェニルシュウ酸ジアミド、N−サリチラル−N’−サリチロイルヒドラジン、N,N’−ビス−サリチロイルヒドラジン、N,N’−ビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロフェニルプロピオニル)−ヒドラジン、サリチロイルアミノ−1,2,4−トリアゾール、ビス−ベンジリデン−シュウ酸ジヒドラジド。
【0125】
(ii)過酸化物捕捉剤、例えば、β−チオジプロピオン酸のエステル、例えば、ラウリル、ステアリル、ミリスチル又はトリデシルエステル、メルカプトベンゾイミダゾール、又は2−メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジオクタデシルジスルフィド、ペンタエリトリトールテトラキス−(β−ドデシルメルカプト)−プロピオネート。
【0126】
(iii)ポリアミド安定剤、例えば、ヨウ化物及び/又はリン化合物及び2価マンガンの塩と組み合わせた銅塩が、また、ポリマー樹脂及び/又は亜リン酸エステル組成物に含められ得る。
【0127】
(iv)塩基性共安定剤、例えば、メラミン、ポリビニルピロリドン、ジシアンジアミド、シアヌル酸トリアリル、尿素誘導体、ヒドラジン誘導体、アミン、ポリアミド、ポリウレタン、ハイドロタルサイト、高級脂肪酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、例えば、ステアリン酸Ca、ステアロイル乳酸カルシウム、乳酸カルシウム、ステアリン酸Zn、オクタン酸Zn、ステアリン酸Mg、リシノール酸Na及びパルミチン酸K、ピロカテコール酸アンチモン、又はピロカテコール酸亜鉛。
【0128】
(v)造核剤及び清澄剤、例えば、4−tertブチル安息香酸、アジピン酸、ジフェニル酢酸の金属塩、ソルビトール及びその誘導体、安息香酸ナトリウム及び安息香酸。
【0129】
(vi)アミノオキシプロピオネート誘導体、例えば、メチル−3−(N,N−ジベンジルアミノキシ)プロパノエート;エチル−3−(N,N−ジベンジルアミノキシ)プロパノエート;1,6−ヘキサメチレン−ビス(3−N,N−ジベンジルアミノキシ)プロパノエート);メチル−(2−(メチル)−3(N,N−ジベンジルアミノキシ)プロパノエート);オクタデシル−3−(N,N−ジベンジルアミノキシ)プロパン酸;テトラキス(N,N−ジベンジルアミノキシ)エチルカルボニルオキシメチ)メタン;オクタデシル−3−(N,N−ジエチルアミノキシ)−プロパノエート;3−(N,N−ジベンジルアミノキシ)プロパン酸カリウム塩;及び1,6−ヘキサメチレンビス(3−(N−アリル−N−ドデシルアミノキシ)プロパノエート)。
【0130】
(vii)他の添加剤、例えば、可塑剤、滑剤、乳化剤、顔料、染料、蛍光発光剤、防炎剤、静電防止剤、発泡剤及び硫黄含有相乗剤(例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、又はチオジプロピオン酸ジステアリル)。
【0131】
任意選択で、ポリマー又はポリマー樹脂は、5〜50wt%、例えば、10〜40wt%、又は15〜30wt%のフィラー及び強化材を、例えば、炭酸カルシウム、シリケート、ガラス繊維、アスベスト、タルク、カオリン、マイカ、硫酸バリウム、金属酸化物及び水酸化物、カーボンブラック、並びにグラファイトを含み得る。
【0132】
本発明は、さらに、1つの成分が、本発明の液体亜リン酸エステル組成物を含み、他の成分がポリマー、例えば、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニルなど、又はポリマー樹脂を含む、安定化されたポリマーに関する。
【0133】
このような液体亜リン酸エステル組成物によって安定化されたポリマーは、当技術分野において知られているどのようなポリマーであってもよく、例えば、ポリオレフィンホモポリマー及びコポリマー、熱可塑性樹脂、ゴム、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアルキレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、スチレン系ポリマー及びコポリマー、ポリカーボネート、アクリルポリマー、ポリアミド、ポリアセタール、ハロゲン化物含有ポリマー、並びに生分解性ポリマーであり得る。異なるポリマーの混合物、例えば、ポリフェニレンエーテル/スチレン系樹脂のブレンド、ポリ塩化ビニル/ABS若しくは他の耐衝撃性改良ポリマー(例えば、メタクリロニトリル及びα−メチルスチレン含有ABS)、ポリエステル/ABS、又はポリカーボネート/ABS、並びにポリエステル+他の何らかの耐衝撃性改良剤もまた用いられ得る。このようなポリマーは、市販されている、又は、当技術分野においてよく知られている手段によって製造され得る。しかし、本発明の安定剤組成物は、熱可塑性ポリマーが加工及び/又は使用されることが多い極端な温度のために、熱可塑性ポリマー、例えば、ポリオレフィン、ポリカーボナート、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル及びスチレン系ポリマーにおいて特に有用である。
【0134】
本発明の液体亜リン酸エステル組成物と組み合わせて用いられるポリマーは、溶液、高圧、スラリー及び気相を含め、様々な重合プロセスを用い、チーグラー−ナッタ、シングルサイト、メタロセン又はフィリップス型触媒を含め、様々な触媒を用いて製造される。液体亜リン酸エステル組成物が有用な非限定的ポリマーには、エチレン系ポリマー、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、エラストマー、プラストマー、高密度ポリエチレン、実質的に直鎖状の長鎖分岐ポリマー及び低密度ポリエチレン;並びにプロピレン系ポリマー、例えば、アタクチック、アイソタクチック及びシンジオタクチックポリプロピレンポリマーを含め、ポリプロピレンポリマー及びプロピレンコポリマー、例えば、プロピレンランダム、ブロック又はインパクトコポリマーが含まれる。
【0135】
本発明の液体亜リン酸エステル組成物と共に使用されるポリマーは、フィルム、シート及び繊維の押出及び共押出、さらには、ブロー成形、射出成形及び回転成形のような成形操作において有用である。フィルムには、食品接触及び非食品接触用途において、収縮フィルム、ラップ(cling)フィルム、ストレッチフィルム、シーリングフィルム、配向フィルム、スナック包材、丈夫な(heavy duty)袋、食料雑貨用袋、焼き食品及び冷凍食品包材、医療品包材、工業用ライナー、膜などとして有用で、共押出によって、又はラミネーションによって成形されるインフレーション(blown)又はキャストフィルムが含まれる。繊維には、フィルター、おむつ用生地、医療用衣類、ジオテキスタイルなどを製造するために、織られた又は織られていない状態で用いられる溶融紡糸、溶液紡糸及びメルトブロー繊維操作が含まれる。押出物品には、医療用チューブ、ワイヤ及びケーブルの被覆、ジオメンブレン及び池のライナーが含まれる。成形物品には、ボトル、タンク、大きな中空物品、硬質食品容器及び玩具などの形の単層及び多層構造物が含まれる。上記に加えて、液体亜リン酸エステル組成物は、タイヤ、バリヤ(barrier)などの様々なゴム系製品に用いられる。
【0136】
一実施形態において、液体亜リン酸エステル組成物は、飲料、食品及び他の人間の消耗品と接触した状態で用いられるポリマーに、例えば、ポリオレフィンに使用される。
【0137】
モノオレフィン及びジオレフィンのポリマー、例えば、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテン−1、ポリメチルペンテン−1、ポリイソプレン、又はポリブタジエン、さらには、シクロオレフィンの、例えば、シクロペンテン又はノルボルネンのポリマー、ポリエチレン(これは、任意選択で、架橋されてもよい)、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が使用され得る。これらのポリマーの混合物、例えば、ポリプロピレンとポリイソブチレン、ポリプロピレンとポリエチレン(例えば、PP/HDPE、PP/LDPE)及び異なる種類のポリエチレンの混合物(例えば、LDPE/HDPE)もまた使用され得る。やはり有用であるのは、モノオレフィン及びジオレフィンと、互いとの、又は他のビニルモノマーとのコポリマー、例えば、エチレン/プロピレン、LLDPE及びLDPEとのその混合物、プロピレン/ブテン−1、エチレン/ヘキセン、エチレン/エチルペンテン、エチレン/ヘプテン、エチレン/オクテン、プロピレン/イソブチレン、エチレン/ブタン−1、プロピレン/ブタジエン、イソブチレン、イソプレン、エチレン/アクリル酸アルキル、エチレン/メタクリル酸アルキル、エチレン/酢酸ビニル(EVA)、又はエチレン/アクリル酸コポリマー(EAA)及びこれらの塩(イオノマー)、エチレンとプロピレン及びジエン(例えば、ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン又はエチリデン−ノルボルネン)とのターポリマー;さらには、このようなコポリマーの混合物、及び前記ポリマーとのこれらの混合物、例えば、ポリプロピレン/エチレンプロピレンコポリマー、LDPE/EVA、LDPE/EAA、LLDPE/EVA及びLLDPE/EAAである。
【0138】
オレフィンポリマーは、例えば、チーグラー−ナッタ触媒(例えば、MgCl、クロム20塩及びこれらの錯体、シリカ、シリカ−アルミナなどに任意選択で担持されている)の存在下で、オレフィンの重合によって製造され得る。オレフィンポリマーは、また、クロム触媒、又はシングルサイト触媒(例えば、Ti及びZrなどの金属のシクロペンタジエン錯体などのメタロセン触媒)を用いて製造され得る。当業者が容易に理解し得るように、本明細書において用いられているポリエチレンポリマー、例えばLLDPEは、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン及び1−オクテンコモノマーなどの様々なコモノマーを含み得る。
【0139】
ポリマーには、また、スチレン系ポリマー、例えば、ポリスチレン、ポリ−(p−メチルスチレン)、5 ポリ−(α−メチルスチレン)、スチレン若しくはα−メチルスチレンとジエン若しくはアクリル誘導体とのコポリマー、例えば、スチレン/ブタジエン(SBR)、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/メタクリル酸アルキル、スチレン/無水マレイン酸、スチレン/マレイミド、スチレン/ブタジエン/アクリル酸エチル、スチレン/アクリロニトリル/アクリル酸メチル、スチレンコポリマーと他のポリマー、例えば、ポリアクリレート、ジエンポリマー、又はエチレン/プロピレン/ジエンターポリマーとによる高衝撃強度混合物;並びにスチレンのブロックコポリマー、例えば、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン、又はスチレン/エチレン/プロピレン/スチレンも含まれ得る。
【0140】
スチレン系ポリマーには、加えて、又は別のものとして、スチレン若しくはα−メチルスチレンのグラフトコポリマー、例えば、ポリブタジエンへのスチレン、ポリブタジエン−スチレン若しくはポリブタジエン−アクリロニトリルへのスチレン;ポリブタジエン及びそのコポリマーへのスチレン及びアクリロニトリル(若しくはメタクリロニトリル);ポリブタジエンへのスチレン及び無水マレイン酸若しくはマレイミド;ポリブタジエンへのスチレン、アクリロニトリル及び無水マレイン酸若しくはマレイミド;ポリブタジエンへのスチレン、アクリロニトリル及びメタクリル酸メチル、ポリブタジエンへのスチレン及びアクリル酸アルキル若しくはメタクリル酸アルキル、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマーへのスチレン及びアクリロニトリル、ポリアクリレート若しくはポリメタクリレートへのスチレン及びアクリロニトリル、アクリレート/ブタジエンコポリマーへのスチレン及びアクリロニトリル、さらには、上で示されたスチレン系コポリマーとのこれらの混合物が含まれ得る。
【0141】
適切なゴムには、天然ゴム及び合成ゴムの両方、並びにこれらの組合せが含まれる。合成ゴムには、これらに限らないが、例えば、熱可塑性ゴム、エチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン(EPDM)ゴム、エチレン/α−オレフィン(EPR)ゴム、スチレン/ブタジエンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、アクリロニトリル/ブタジエン(NBR)ゴム、ポリクロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、イソブチレン−イソプレンコポリマーなどが含まれる。熱可塑性ゴムには、SIS、溶液及びエマルジョンSBSなどが含まれる。
【0142】
ニトリルポリマーもまた、本発明のポリマー組成物において有用である。これらには、アクリロニトリル及びその類似体のホモポリマー及びコポリマー、例えば、ポリメタクリロニトリル、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル/ブタジエンポリマー、アクリロニトリル/アクリル酸アルキルポリマー、アクリロニトリル/メタクリル酸アルキル/ブタジエンポリマー及びスチレン系樹脂に関連して上で挙げられた様々なABS組成物が含まれる。
【0143】
アクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリル酸及びエタクリル酸、並びにこれらのエステルなどのアクリル酸系のポリマーもまた、用いられ得る。このようなポリマーには、ポリメタクリル酸メチル、及びアクリロニトリル型モノマーの全て又は一部がアクリル酸エステル又はアクリル酸アミドによって置き換えられたABS型グラフトコポリマーが含まれる。他のアクリル型モノマー、例えば、アクロレイン、メタクロレイン、アクリルアミド及びメタクリルアミドを含むポリマーもまた用いられ得る。
【0144】
ハロゲン含有ポリマーもまた、本発明の亜リン酸エステル組成物により安定化され得る。これらには、ポリクロロプレン、エピクロロヒドリンのホモ−及びコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ臭化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、フッ化ポリビニリデン、臭素化ポリエチレン、塩素化ゴム、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル−エチレンコポリマー、塩化ビニル−プロピレンコポリマー、塩化ビニル−スチレンコポリマー、塩化ビニル−イソブチレンコポリマー、塩化ビニル−塩化ビニリデンコポリマー、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸ターポリマー、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリルコポリマー、塩化ビニル−ブタジエンコポリマー、塩化ビニルイソプレンコポリマー、塩化ビニル−塩素化プロピレンコポリマー、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニルターポリマー、塩化ビニル−アクリル酸エステルコポリマー、塩化ビニル−マレイン酸エステルコポリマー、塩化ビニル−メタクリル酸エステルコポリマー、塩化ビニル−アクリロニトリルコポリマー及び内部可塑化ポリ塩化ビニルなどのポリマーが含まれる。
【0145】
他の有用なポリマーには、環状エーテルのホモポリマー及びコポリマー、例えば、ポリアルキレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、又はビスグリシジルエーテルとのこれらのコポリマー;ポリアセタール、例えば、ポリオキシメチレン及びコモノマーとしてエチレンオキシドを含むポリオキシメチレン;熱可塑性ポリウレタン、アクリレート、若しくはメタクリロニトリル含有ABSにより改質されたポリアセタール;ポリフェニレンオキシド及びポリフェニレンスルフィド、並びにポリフェニレンオキシドとポリスチレン若しくはポリアミドとの混合物;ポリカーボネート及びポリエステルカーボネート;ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びポリエーテルケトン;ジカルボン酸とジオールから、及び/又は、ヒドロキシカルボン酸若しくは対応するラクトンから誘導されるポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチロール−シクロヘキサンテレフタレート、ポリ−2−(2,2,4(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン)テレフタレート及びポリヒドロキシベンゾエート、さらには、ヒドロキシル末端基を有するポリエーテルから誘導されるブロックコポリエーテルエステルが含まれる。
【0146】
ビスアミン及びジカルボン酸から、及び/又はアミノカルボン酸若しくは対応するラクタムから誘導されるポリアミド及びコポリアミド、例えば、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド6/6、6/10、6/9、6/12及び4/6、ポリアミド11、ポリアミド12、m−キシレンビスアミンとアジピン酸の縮合によって得られる芳香族ポリアミド;ヘキサメチレンビスアミンとイソフタル酸又は/及びテレフタル酸から、また任意選択で改質剤としてのエラストマーから製造されるポリアミド、例えば、ポリ−2,4,4−トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド、又はポリ−m−フェニレンイソフタルアミドが有用であり得る。さらに、前記ポリアミドと、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、イオノマー又は化学的に結合されたか若しくはグラフトされたエラストマーとの;或いは、ポリエーテルとの、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール若しくはポリテトラメチレングリコールとのコポリマー、並びにEPDM若しくはABSにより改質されたポリアミド又はコポリアミドが用いられ得る。
【0147】
別の実施形態において、ポリマーは、生分解性ポリマー又は堆肥化可能(compostable)ポリマーを含む。生分解性ポリマーは、分解が、自然に見出される微生物、例えば、細菌、菌類及び藻類の作用により生じるポリマーである。堆肥化可能ポリマーは、堆肥にしている間に、生物学過程によって分解を受けて、他の堆肥化可能物質と調和した速度で、CO、水、無機化合物及びバイオマスを生じる。通常、生分解性又は堆肥化可能ポリマーは、植物原料から誘導され、または合成して製造される。生分解性又は堆肥化可能ポリマーの例には、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)及びこれらのコポリマーが含まれる。生分解性又は堆肥化可能ポリマーは、また、植物デンプンと通常の石油系ポリマーとのブレンドにより誘導され得る。例えば、生分解性ポリマーは、ポリオレフィンとブレンドされ得る。
【0148】
ポリオレフィン、ポリアルキレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル及びスチレン系ポリマー、並びにこれらの混合物がより好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテルのホモポリマー及びコポリマー、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、ポリカーボネート及びABS型グラフトコポリマー、並びにこれらの混合物が特に好ましい。
【0149】
一実施形態において、液体亜リン酸エステル組成物は、天然及び合成ワックス、例えば、n−パラフィンワックス、クロロパラフィン、α−オレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、アミドワックス及びフィッシャー−トロプシュワックスを安定化するために添加される。これらのワックスは、蝋燭を製造するのに適切であり得る。
【0150】
本発明の安定剤は、ポリマーに、それによる成形物品の製造の前の都合のよい任意の段階で、通常の技術によって、容易に組み入れられ得る。例えば、安定剤は、乾燥粉末状態のポリマーと混合されても、又は、安定剤の懸濁液又はエマルジョンが、ポリマーの溶液、懸濁液、若しくはエマルジョンと混合されてもよい。本発明の安定化された組成物は、また、約0.001から約5wt%、例えば、約0.0025から約2wt%、又は約0.05から約0.25wt%の様々な通常の添加剤、例えば、先に記載されたもの、又はそれらの混合物を任意選択で含み得る。
【0151】
本発明の組成物は、様々な方法によって、例えば、成分を、配合物に望まれる任意のさらなる材料とよく混合することを含む方法によって製造できる。適切な方法には、溶液ブレンド及び溶融ブレンドが含まれる。工業的なポリマー加工施設では溶融ブレンド装置が利用できるので、溶融ブレンドの方法が一般に好ましい。このような溶融混練(melt compounding)法において用いられる装置の例には、同方向回転及び異方向回転押出機、1軸押出機、ディスクパック(disc−pack)プロセッサ、並びに様々な他の種類の押出装置が含まれる。ある事例では、混練された材料が、ダイの小さな出口孔を通って押出機を出て、得られる溶融樹脂ストランドが、水浴にストランドを通すことによって冷却される。冷却されたストランドは、梱包及びさらなる取扱いのために、小さなペレットに切断され得る。
【0152】
成分の全てが、最初に加工装置に加えられ得る、さもなければ、特定の添加剤が、互いに、又はポリマー若しくはポリマー樹脂の一部と共に、予め混ぜ合わせられて、安定剤コンセントレートが製造される。さらに、溶融物の脱気(大気中又は真空のいずれか)ができるように、少なくとも1つのベントポートを用いることもまた、時には、利点がある。当業者は、ブレンド時間及び温度を、さらには、成分の添加位置及び順序を、過度の追加実験作業なしに、調整することが可能であろう。
【0153】
本発明の安定剤は、ポリマーに、それらを成形物品に製造する前に、通常の技術によって都合よく組み入れることができ、また、本発明の安定剤を、完成された物品に局所適用することによって、適用することも可能である。物品は、本発明の安定剤化合物及びポリマーを含むことができ、例えば、ヘッドランプカバー、ルーフィングシート、電話機カバー、航空機インテリア、建築物インテリア、コンピュータ及び事務機ハウジング、自動車パーツ、並びに家庭用器具に製造され得る。物品は、押出、射出成形、回転成形、圧縮成形(compaction)及び他の方法によって製造され得る。これは、繊維用途で特に有用であり、この場合、本発明の安定剤が、例えば、溶融紡糸プロセスの間に紡糸仕上げ剤として、繊維に局所適用される。
【0154】
本発明の亜リン酸エステル組成物は、ポリマーの安定化以外に用途を有し得る。例えば、亜リン酸エステル組成物を反応させて、さらなる用途があり得る新しい誘導体生成物を生成することは、望ましいことであり得る。例えば、Hechenbleikner他の米国特許第3,056,823号(これは、参照として本明細書に組み込まれる)に開示されているものなどのエステル交換プロセスもまた、用いられ得る。特に、Hechenbleikner他によって記載されたプロセスは、亜リン酸トリアリールとモノヒドロキシ炭化水素を、少量だが、触媒として効果のある量の金属アルコラート又は金属フェノラートの存在下で、エステル交換することを含む。汚染を避けるために、エステル交換される特定のアルコールのアルコラートが用いられる。予め生成したアルコラートを用いる代わりに、アルコラートは、アルコールに、亜リン酸トリアリールを添加する前に、金属、例えば、ナトリウム、カリウム又はリチウムを添加することによって、その場(in situ)に生成されてもよい。モノアルコール及び亜リン酸トリアリールは、1モルの亜リン酸トリアリールに対して3モルのアルコールのモル比で反応させる。
【0155】
本発明が、以下の非限定的実施例によりさらに説明される。
【実施例】
【0156】
(例1)
混合アミル/ブチルフェノールの合成
フェノール(105グラム、1.12モル)及びFulcat 22B触媒(2.25グラム)を、オイルジャケット付きフラスコに投入し、窒素下で130℃に加熱した。イソブチレン(64.6グラム、1.15モル)を、焼結したガラスフリット(frit)を通して、フェノールの表面の下に、一定の割合で、30分かけて添加した。添加の間に、内部温度は140℃に上昇した。添加が完了すると、反応物を、130℃のジャケット温度で1時間保った。次いで、アミレン(39.2グラム、0.56モル)を、フェノール類の表面の下に、一定の割合で、1.25時間かけて添加した。添加後、反応物を、130℃のジャケット温度で2時間保った。次に、反応物を濾過し、フェノール類の濾液を捕集した。混合ブチル化/アミル化フェノールアルキレートに、真空蒸留を行って、フェノール含有量を、0.25%未満に、水含有量を50ppm未満に減らした。収量=161.8グラム。
【0157】
GC分析により、次の主な成分を特定した:4−t−ブチル−フェノール50.8%、2,4−ジ−t−ブチル−フェノール17.6%、4−t−アミル−フェノール15.3%、2−t−アミル−4−t−ブチル−フェノール及び2−t−ブチル−4−t−アミル−フェノール10.7%、2,4−ジ−t−アミル−フェノール1.3%、2−t−ブチル−フェノール1.4%、並びに2,4,6−トリ−t−ブチル−フェノール0.3%。
【0158】
(例2)
例1により得られたアルキレートの亜リン酸エステルへの変換
混合ブチル化/アミル化フェノールアルキレート(148.7グラム、0.86モル)を、オイルジャケット付きフラスコに投入し、窒素下で80℃に加熱した。PCl(35.8グラム、0.26モル)を、一定の割合で、フェノール類の表面の下に、3時間かけて添加した。添加の間に、温度を150℃に上げた。反応物を、HClの発生が止まるまで、150℃に保ち、次いで、1時間かけて200℃に加熱し、その間に、圧力を1000から50mbarに低下させた。反応物を、全Cl含有量が50ppm未満になるまで、200℃/50mbarに保った。次いで、余分なフェノール類を、1mbarの圧力及び240℃の内部温度(蒸気の温度 140℃)の下で、蒸留によって除去した。収量=123.1グラム。
【0159】
亜リン酸エステル組成物は、30℃で8,541cSt、40℃で3,198cSt、及び50℃で812cStの動粘度を有していた。
【0160】
(例3)
73.4g(0.53モル)の三塩化リン及び1.74ml(6.41mモル)のN,N−ジメチルドデシルアミンを、窒素下でジャケット付き容器に投入する。容器の内容物を撹拌し、70℃に加熱する。別に、193.1g(1.18モル)の4−tert−アミルフェノール及び121.3g(0.56モル)の2,4−ジ−tert−ブチルフェノールの粉末ブレンドを準備する。粉末ブレンドを、3時間に渡り15分毎に、26.2gの一定の投入量で添加する。添加の間、反応物を70℃に保ち、発生するHClを除去装置(scrubber unit)によって吸収する。
【0161】
全てのフェノールを添加したら、反応温度を、1時間かけて70℃から150℃に、一定の速度で昇温する。反応物を、1時間、又はHClの発生が止まるまで、150℃に保つ。次に、反応物を、150℃から200℃にさらに加熱し、さらに1時間保つ。反応物が200℃に達したら、反応物を、60〜80mbarの圧力の真空を用いることによって、全塩素含有量が50ppm未満になるまで、脱気する。余分なフェノールは、7mbarの圧力及び200℃の内部温度(最高蒸気温度 127℃)の下で、蒸留によって除去され得る。
【0162】
1.89g(9.9mモル)のトリイソプロパノールアミンを、亜リン酸エステル組成物に加える。
【0163】
得られる亜リン酸エステルの組成物は、70℃で97cStの動粘度を有していた。全リン含有量は、5.6%である。
【0164】
(例4)
1:1のモル比の2−t−ブチル−p−クレゾール及び4−t−アミルフェノールを、オイルジャケット付きフラスコに投入し、窒素下で80℃に加熱した。PCl(73.4グラム、0.53モル)を、フェノール類の表面の下に、一定の割合で、2時間かけて加えた。添加の間に、温度を150℃に上げ、反応物を、HClの発生が止まるまで、150℃に保った。次に、反応物を1時間かけて200℃に加熱し、その間に、圧力を1000から70mbarに低下させ、全Cl含有量が50ppm未満になるまで、これらの条件に保った。次いで、余分なフェノール類を、8mbarの圧力及び200℃の内部温度の下で、蒸留によって除去した。得られた亜リン酸エステル組成物は、70℃で160cStの動粘度を有していた。全リン含有量は5.9%である。
【0165】
(例5)
例3及び4による亜リン酸エステル組成物を、試験し、亜リン酸トリス(ノニルフェニル)(Weston 399)に対して比較し、表3に下記の結果を示した。亜リン酸エステルは、比較のために、同じリン含有量(17ppm)で添加した。
【表3】

【0166】
(例6)
例3の方法を用い、亜リン酸エステル組成物を、4−t−アミルフェノール(4−TAP)と2,4−ジ−t−ブチルフェノール(2,4−DTBP)の1:1(モル)混合物から製造した。粘度を、下の表4に記載する。
【0167】
(比較例A)
米国特許第5,254,709号による、三塩化リン(1/3モル)と、2,4−ジ−tert−アミルフェノール(2/3モル)との、次いで、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール(1/3モル)との反応は、固体亜リン酸エステル組成物を生じる。
【0168】
1/3モルの三塩化リン(46g)を、500mlの三口フラスコに投入した。100立方センチメートルのトルエン、及び0.2gのメルカプトベンゾチアゾールを加えた。次いで、156g(2/3モル)の溶融した2,4−ジ−tert−アミルフェノールを、2時間かけて滴下し、温度を、55°と65℃の間に保った。次に、温度を、2時間で、120〜123℃に上げた。窒素ガスを該高温の混合物の中に通して、残留塩化水素を除去した。混合物を、室温で、週末に渡り静置した。赤外分析はヒドロキシルを示さなかった。混合物を60℃に温め、68.3g(1/3モル)の2,4−ジ−tert−ブチルフェノール(固体)を加えた。混合物を、127℃に(2時間かけて)徐々に加熱し、次いで、3時間以上、その温度近くで加熱した。窒素ガスを、該高温の混合物の中を通してバブリングして、残留塩化水素を除去した。トルエンを、減圧下で加熱することによって除去した。残留生成物は、冷めると透明なガラス状生成物に固化する透明な液体であった。300ccのメタノールを加え、混合物を撹拌し、60℃に加熱した。生成物は、白色粉末へと徐々に結晶化した。メタノール中に室温で1晩静置した後、固体生成物を濾別し、100ccのメタノールで洗った。乾燥した生成物は、197.6g(理論値の90%)の重さであった。この物質は、89〜93℃で融解した。
【0169】
(比較例B及びC)
比較例B及びCを、下の表4に示す、異なるモル比のフェノールと別のフェノールを用い、同様の量で製造した。比較例B及びCは、4−t−ブチルフェノール(4−TBP)を用いる。
【表4】

【0170】
表4に示すように、4−TBPを4−TAPに置き換えると、低い温度(30〜50℃)で粘度が下がる。さらに、2,4−DTBPと4−TAPのモル比を1:2にすると、さらに粘度は下がる。
【0171】
本発明の根底にある原理から逸脱することなく成され得る多くの変更及び修正を考慮して、本発明に与えられるべき保護の範囲の理解のためには、添付の特許請求の範囲が参照されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種の異なる亜リン酸アルキルアリールの亜リン酸エステル組成物であって、構造(XI)の第1亜リン酸アルキルアリール及び第2亜リン酸アルキルアリールを少なくとも含み、
【化1】


[式中、m、n、o、p及びqは、0、1、2及び3から独立に選択される整数であるが、但し、m+n+o+p+q=3であり、
各Arは、6から18個の炭素原子の独立に選択される芳香族部分であり、
各Rは、同数の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状C〜C18アルキル基であり、
各Rは、同数の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状C〜C18アルキル基であるが、
但し、Rは、Rとは異なる炭素原子数を有し、該第1亜リン酸アラルキルは、少なくとも1つのRによって置換された芳香族部分を含み、該第2亜リン酸アラルキルは、少なくとも1つのRによって置換された芳香族部分を含み、
組成物の亜リン酸エステルにおけるR基とR基のモル比は、1:10から10:1である]
かつ、次の構造:
【化2】


を有する1種又は複数の遊離フェノールを、該組成物中の全ての亜リン酸エステルと該遊離フェノールを合わせた重量に対して、0から10重量%含み、
該亜リン酸エステル組成物は、m、p及びqが0であり、n+o=3である構造(XI)の1種又は複数の亜リン酸トリス(モノアルキルアリール)を、該亜リン酸エステル組成物中の全ての亜リン酸エステルの全重量に対して、20から80重量パーセントの量で含み、大気条件で液体である上記亜リン酸エステル組成物。
【請求項2】
前記組成物が、m+p+q=1であり、n+o=2である構造(XI)の1種又は複数の亜リン酸ビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリールを、15から60重量パーセントの量で含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、m+p+q=2であり、n+o=1である構造(XI)の1種又は複数の亜リン酸ビス(ジアルキルアリール)アルキルアリールを、2から20重量パーセントの量で含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、m+p+q=3であり、n及びoが0である構造(XI)の1種又は複数の亜リン酸トリス(ジアルキルアリール)を、0.1から20重量パーセントの量で含む、請求項1、2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物中の全ての亜リン酸エステルと前記遊離フェノールの全重量に対して、0.01から5重量パーセントの該フェノールを含む、請求項1から4までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
及びRが、プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−アミル、sec−アミル、ネオアミル及びt−アミルから選択される、請求項1から5までのいずれか一項に記載の亜リン酸エステル組成物。
【請求項7】
次の構造:
【化3】


を有する第1亜リン酸アルキルアリール、及び次の構造:
【化4】


を有する第2亜リン酸アルキルアリール
[式中、a、b、c及びdは独立に、0、1、2及び3から選択される整数であるが、但し、a+b=3、c+d=3であり、各Arは、フェニルであり、各Rは、同数の炭素原子を有するアルキル基であり、各Rは、同数の炭素原子を有するアルキル基であるが、但し、Rは、Rとは異なる炭素原子数を有する]
を含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
がプロピル又はt−ブチルである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
がt−アミルである、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
がt−ブチルであり、Rがt−アミルである、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1又は第2亜リン酸エステルの少なくとも一方が、次の構造:
【化5】


[式中、e、f、g及びhは、0、1及び2から独立に選択されるが、但し、e+f+g+h=3、e+f=1又は2、g+h=1又は2であり、Arはフェニルであり、R及びRは、直鎖状又は分岐状C〜C18アルキル基から独立に選択されるが、但し、Rは、Rとは異なる炭素原子数を有する]
を有する、請求項1から6までのいずれか一項に記載の亜リン酸エステル組成物。
【請求項12】
がプロピル又はt−ブチルである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
がt−アミルである、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
がt−ブチルであり、Rがt−アミルである、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
前記第1又は第2亜リン酸アルキルアリールの少なくとも一方が、mが、1、2及び3から選択される整数であり;n,o、p及びqが、0、1及び2から独立に選択される整数であるが、但し、m+n+o+p+q=3であり;各Arがフェニルであり;各Rが同数の炭素原子を有するアルキル基であり、各Rが同数の炭素原子を有するアルキル基であるが、但し、Rは、Rとは異なる炭素原子数を有する構造(XI)を有する、請求項1から6までのいずれか一項に記載の亜リン酸エステル組成物。
【請求項16】
がプロピル又はt−ブチルである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
がt−アミルである、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
がt−ブチルであり、Rがt−アミルである、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
ポリマー、及び請求項1から18までのいずれか一項に記載の亜リン酸エステル組成物を含む、安定化されたポリマー組成物。

【公表番号】特表2013−500271(P2013−500271A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521882(P2012−521882)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/043309
【国際公開番号】WO2011/014477
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(508201282)ケムチュア コーポレイション (69)
【Fターム(参考)】