説明

異なる粒子径を有する薬物封入ナノ粒子の作製方法および当該方法で得られたナノ粒子

【課題】 これまで十分に達成されなかった有機物ポリマーナノ粒子の粒子径の調製方法を可能にする効果を有し、薬物を封入した有機物ポリマーのナノ粒子の粒子径を任意、自在に調製することを目的とする。
【解決手段】 薬物および有機物ポリマーを有機溶媒に溶解し、この溶液を異なる量の水または含水有機溶媒に拡散させて異なる粒子径を有する薬物封入ナノ粒子を作製し、次いで当該ナノ粒子を含有する溶液を濃度の異なる含水有機溶媒系で処理することにより10nm程度までダウンサイズされた粒子を作製できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物を封入したナノ粒子において、その粒子径を任意、自在に調整した粒子を調製する方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、薬物封入ナノ粒子を含水有機溶媒で処理することによりその粒子径を調整すること、好ましくはダウンサイズする方法、および当該方法で得られた薬物封入ナノ粒子に関する。さらに、本発明は粒子径の異なる有機ポリマーナノ粒子の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物封入ナノ粒子は、封入された薬物の徐放ばかりでなく、ターゲット療法、バリアー通過技術に使用されており、今後種々の技術の進歩に伴いこの分野の発展が見込まれる。本発明者の一人である水島はプロスタグランジン類、ステロイド類をナノレベルの脂肪乳剤に封入し、ターゲット療法に成功し(特許文献1、2および3)、その技術によって数種類の医薬品が現在臨床の場で汎用されている。
【0003】
薬物を封入する粒子としては、界面活性剤を用いたナノ・マイクロ粒子、例えば脂肪乳剤、リポソームのほか、微細な炭酸カルシウム粒子中に封入する方法(特許文献4)、微細な多孔性ハイドロキシアパタイト粒子中に封入する方法(特許文献5)、乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)、乳酸重合体(PLA)等の生分解性の微粒子中に封入する方法(特許文献6)等が知られている。
【0004】
これらの粒子は、それぞれ粒子径を異にするものであり、使用目的に応じてそれぞれの調製方法が用いられている。例えば、血管内投与による炎症・動脈硬化部位への移行を目的とする場合は約200nmの粒子とし、静脈注射をする場合は、出来るだけ細い注射針が使用可能となるよう1〜2μm程度以下とし、また経皮投与、経腸投与する場合はより吸収し易くするために100nm以下の粒子径を有する粒子が好ましい。
【0005】
これまでは、粒子径の異なる粒子を調製する方法として、作製する過程において撹拌速度の調節、使用する界面活性剤、有機溶媒量の調節などが試みられており、それによってある程度粒子径を調節することができたが、例えばPLGAナノ粒子の場合は100nm以下、特に50nm以下の粒子を大量に作ることは困難であった。さらに、ナノ粒子を異なる濃度の含水有機溶媒系で処理することにより、その粒子径を任意、自在に調整した粒子を調製する方法は知られていなかった。
【0006】
【特許文献1】特開昭56−167616号公報
【特許文献2】特開昭58−222014号公報
【特許文献3】特開昭60−149524号公報
【特許文献4】特開2002−348234号公報
【特許文献5】特開2004−75662号公報
【特許文献6】特開平8−217691号公報
【0007】
上述したように、薬物の徐放、ターゲット療法、バリアー通過を目的とするための薬物封入ナノ粒子が知られているが、これらを効果的なものとするためには、目的に合った粒子径を有する粒子を使用することが好ましい。そのような方法として、撹拌速度の調節、使用する界面活性剤、有機溶媒量の調節などが試みられているが、これらの方法では十分に目的を達成することができていない。そのため、それらの目的に沿った粒子を得る方法が望まれているのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明は、薬物を封入したナノ粒子において、その粒子径を任意、自在に調整した粒子を調製する方法を提供することを課題とする。
【0009】
かかる課題を解決するべく、本発明者らは鋭意検討した結果、薬物を封入したナノ粒子を、濃度の異なる含水有機溶媒で処理することにより、粒子径の異なる粒子を作製することができることを見出した。すなわち、薬物および有機物ポリマーを有機溶媒に溶解し、水または含水有機溶媒に拡散させることにより1次粒子を作製し、当該1次粒子を含水有機溶媒系で処理することにより、またこの操作を繰り返すことにより粒子径の異なる、好ましくはダウンサイズされた薬物封入ナノ粒子の作製方法を提供することを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって本発明は、薬物を封入した有機物ポリマーのナノ粒子を作製し、このナノ粒子を濃度の異なる含水有機溶媒で処理することにより粒子径の異なる、好ましくはダウンサイズされた粒子を作製する方法、およびその方法によって得られる薬物封入ナノ粒子を提供し、さらに同様の方法により作製される粒子径の異なる有機物ポリマーナノ粒子の作製方法を提供する。
【0011】
より具体的には、本発明は、その態様として、
(1)薬物および有機物ポリマーを有機溶媒に溶解し、この溶液を異なる量の水または含水有機溶媒に拡散させることを特徴とする、異なる粒子径を有する薬物封入ナノ粒子の作製方法、
(2)薬物および有機物ポリマーを有機溶媒に溶解し、この溶液を異なる量の水または含水有機溶媒に拡散させることにより異なる粒子径を有する薬物封入ナノ粒子を作製し、次いで当該ナノ粒子を含有する溶液または懸濁液に有機溶媒および/または水を加えることにより濃度の異なる含水有機溶媒系として処理することによる、粒子径の異なる薬物封入ナノ粒子の作製方法、
(3)当該ナノ粒子を含有する溶液または懸濁液に有機溶媒および/または水を加えることにより濃度の異なる含水有機溶媒系として処理し、この操作を繰り返し行うことにより、粒子径を段階的にダウンサイズすることを特徴とする上記(2)に記載の作製方法、
(4)薬物および有機物ポリマーを有機溶媒に溶解し、この溶液を異なる量の水または含水有機溶媒に拡散させることにより異なる粒子径を有する薬物封入ナノ粒子を作製し、次いで当該ナノ粒子を含有する溶液または懸濁液に有機溶媒および/または水を加えることにより濃度の異なる含水有機溶媒系として処理することによる、薬物封入率の異なる薬物封入ナノ粒子の作製方法、
(5)ナノ粒子の粒子径が10〜1000nm、好ましくは20〜500nmの範囲である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の作製方法、
(6)薬物封入率が0.1〜30%である上記(4)に記載の作製方法、
(7)有機物ポリマーが生分解性ポリマーである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の作製方法、
(8)生分解性ポリマーが乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)または乳酸重合体(PLA)である上記(7)に記載の作製方法、
(9)含水有機溶媒が、使用する薬物および有機物ポリマーを好ましくは同程度に溶解するものである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の作製方法、
(10)有機溶媒がアセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ジクロルメタン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドおよびジメチルホルムアミドから選択されるものである上記(1)〜(4)および(9)のいずれかに記載の作製方法、
(11)有機溶媒がアセトンまたはメチルエチルケトンである上記(10)に記載の作製方法、
(12)薬物が、水含水率が50%以下である含水有機溶媒に溶解する薬物または水溶性薬物を脂溶性化した薬物である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の作製方法、
(13)水含有率が50%以下である含水有機溶媒に溶解する薬物が、ステロイド、免疫抑制・調節薬、抗癌薬、抗生物質、化学療法薬、抗ウイルス薬、非ステロイド性抗炎症薬、抗精神病薬、カルシウム拮抗薬、降圧薬、プロスタグランジン系薬、ビタミン類、診断薬用蛍光物質および粒子分布を調べるための蛍光物質から選択されるものである上記(12)に記載の作製方法、
(14)水含水率が50%以下である含水有機溶媒に溶解する薬物が、エナント酸テストステロン、プロピオン酸テストステロン、テストステロン、エストラジオール、吉草酸エストラジオール、安息香酸エストラジオール、酢酸デキサメタゾン、ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、酢酸プレドニゾロン、プロスタグランジンE、そのエステル体、シクロスポリン、タクロリムス、パクリタキセル、塩酸イリノテカン、シスプラチン、メソトレキセート、カルマフール、テガフール、ドキソルビシン、クラリスロマイシン、アズトレオナム、セフニジル、ナリジクス酸、オフロキサシン、ノルフロキサシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、フルルビプロフェンアキセチル、クロルプロマジン、ジアゼパム、ニフェジピン、塩酸ニカルジピン、ベシル酸アムロジピン、カンデサルタンシレキセチル、アシクロビル、ビダラビン、エファビレンツ、アルプロスタジル、ジノプロストン、ユビデカレノン、ビタミンA(レチノール)、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ローダミン、フルオロセインおよびその誘導体から選択されるものである上記(12)または(13)に記載の作製方法、
(15)水溶性薬物を脂溶性化する方法が亜鉛、鉄、銅などの2価または3価の金属イオンとの接触またはグリセリンとの接触である上記(12)に記載の作製方法、
(16)水溶性薬物が、生理活性タンパク質およびペプチドならびに水溶性のステロイド、免疫抑制・調節薬、抗癌薬、抗生物質、化学療法薬、抗ウイルス薬、非ステロイド性抗炎症薬、抗精神病薬、降圧薬、プロスタグランジン系薬およびビタミンから選択されるものである(12)または(15)に記載の作製方法、
(17)生理活性タンパク質およびペプチドが、インスリン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、成長ホルモン、G−CSF、GM−CSF、エリスロポエチン、シクロスポリン、トロンボポエチン、ウロキナーゼ、t−PA、IL−11、エタネルセプト、インフリキシマブ、SOD、FGF、EGF、HGF、NGF、BDNF、レプチン、NT−3、抗原、抗体、酵素、カルシトニン、PTH、ACTH、GnRH、TRHおよびバソプレシンから選択されるものである上記(16)に記載の作製方法、
(18)水溶性薬物が、リン酸ベタメタゾン、リン酸デキサメタゾン、リン酸プレドニゾロン、コハク酸ヒドロコルチゾン、バンコマイシン、ビンクリスチン、ビンプラスチン、コハク酸クロラムフェニコール、ラタモキセフ、セフピロム、カルモナム、リン酸クリンダマイシンおよびアバカビルから選択されるものである(12)または(16)に記載の作製方法、
である。
【0012】
また本発明は、別の態様として、
(19)上記した(1)〜(18)のいずれかに記載の作製方法で得られた薬物封入ナノ粒子、および
(20)上記(19)に記載の薬物封入ナノ粒子を含有する医薬、
である。
【0013】
さらに本発明は、別の態様として、粒子径の異なる有機ポリマーナノ粒子の作製方法に関するものでもあり、具体的には、
(21)有機物ポリマーを有機溶媒に溶解し、この溶液を異なる量の水または含水有機溶媒に拡散させることにより異なる粒子径を有する有機ポリマーナノ粒子を作製し、次いで当該ナノ粒子を含有する溶液または懸濁液に有機溶媒および/または水を加えることにより濃度の異なる含水有機溶媒系として処理することによる、粒子径の異なる有機ポリマーナノ粒子の作製方法、
(22)当該ナノ粒子を含有する溶液または懸濁液に有機溶媒および/または水を加えることにより濃度の異なる含水有機溶媒系として処理し、この操作を繰り返し行うことにより、粒子径を段階的にダウンサイズすることを特徴とする上記(21)に記載の作製方法、
(23)ナノ粒子の粒子径が10〜1000nm、好ましくは20〜500nmの範囲である上記(21)または(22)に記載の作製方法;および、
(24)有機物ポリマーが、生分解性ポリマー、スチレン系ポリマー、ビニル系ポリマーから選択されるものである上記(21)に記載された作製方法;
を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明が提供する方法は、出来るだけ小さなナノ粒子を作製する方法であり、有機物ポリマーと薬物を有機溶媒に溶解し、それを異なる量の水または含水有機溶媒に拡散することにより粒子径の異なる1次粒子を作製し、次いでその1次粒子を異なる濃度の含水有機溶媒系で処理することにより、1次ナノ粒子の粒子径を任意、自在にダウンサイズすることができる。
したがって、本発明で提供される粒子は、治療部位への投与、封入した薬物の投与形態などに応じて種々の目的にかなった粒子径を有する薬物封入ナノ粒子として作製することができる利点を有している。
さらに、本発明の方法により、薬物を含有しない有機物ポリマーのナノ粒子を同様の方法により、所望の粒子径にサイズダウンすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、薬物および有機物ポリマーを有機溶媒に溶解し、この溶液を異なる量の水または含水有機溶媒に拡散させることにより異なる粒子径を有する薬物封入ナノ粒子(1次粒子)を作製し、次いで当該ナノ粒子を含有する溶液または懸濁液に有機溶媒および/または水を加えることにより、濃度の異なる含水有機溶媒系として処理を行い、粒子径の異なる薬物封入ナノ粒子(2次粒子)を得ることからなる粒子の作製方法である。
【0016】
さらに、当該2次粒子を含有する溶液または懸濁液に、再度有機溶媒および/または水を加えることにより、濃度の異なる含水有機溶媒系として処理し、この操作を繰り返し行うことにより、粒子径を段階的にダウンサイズする作製方法である。この方法により粒子径を10nmまで小さくすることができる。
【0017】
また、本発明は、薬物および有機物ポリマーを有機溶媒に溶解し、この溶液を異なる量の水または含水有機溶媒に拡散させることにより異なる粒子径を有する薬物封入ナノ粒子(1次粒子)を作製し、次いで当該ナノ粒子を含有する溶液または懸濁液に有機溶媒および/または水を加えることにより、濃度の異なる含水有機溶媒系として処理を行い、薬物の封入率の異なる薬物封入ナノ粒子(2次粒子)を得ることからなる粒子の作製方法である。
有機溶媒の量と水および有機物ポリマーの量を適宜調節することにより、薬物封入率を0.1〜30%までに増加することができる。
【0018】
本発明においては、薬物および有機物ポリマーを有機溶媒に溶解し、この溶液を異なる量の水または含水有機溶媒に拡散させることにより1次粒子を作製するが、水に拡散させるよりも含水有機溶媒に拡散させるほうが小さな粒子径を得ることができる。1次粒子を作製するのに使用する有機溶媒と、2次粒子を作製するのに使用する有機溶媒は同一であっても、異なっていてもよいが、同一の溶媒を用いるほうが好ましい。1次粒子を作製する段階で、pH調節するためにクエン酸ナトリウム、バッファー緩衝液などのpH調節剤を加えてもよい。また、有機物ポリマーと有機溶媒濃度との配合比率の調節によっても、若干のサイズダウンがみられる。
【0019】
2次粒子を作製する段階では、時間経過にともなって粒子径がアップサイズされることが判明した。したがって、2次粒子の作製の際、ダウンサイズを目的とする場合は、粒子径の変化を停止させるために、含水有機溶媒の濃度を一定濃度に保持するか、または2次粒子形成後、含水有機溶媒をすばやく除去することが好ましい。
【0020】
すなわち、本発明は、薬物を封入したナノ粒子の粒子径を調節する、好ましくはダウンサイズする方法であり、それは濃度の異なる含水有機溶媒系で処理することにより達成することができる点に特徴がある。また、同様の方法によって薬物の封入率の異なるナノ粒子とすることができる。
【0021】
薬物を封入したナノ粒子は治療部位への投与、封入した薬物の投与形態などに応じて種々の目的に使用されるが、本発明の作製方法はその目的を達成するために、任意な粒子径にすることが可能であり、10〜1000nmの範囲、好ましくは20〜500nmの範囲で自在に調製することができる。
【0022】
本発明の方法によれば、薬物のナノ粒子への封入を調節することが可能であり、封入率が0.1〜30%の範囲で調節することができる。含水有機溶媒における有機溶媒の濃度が増加するほど封入率の増加が見られた。
【0023】
本発明の方法に使用する有機物ポリマーは、生体内で分解し人体に悪影響を及ぼさない生分解性ポリマーであればいずれでも良く、例えばα−ヒドロキシカルボン酸類〔グリコール酸、乳酸、2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、2−ヒドロキシカプリル酸等〕、α−ヒドロキシ酸の環状二量体類〔グリコリド、ラクチド等〕、ヒドロキシジカルボン酸類〔リンゴ酸〕、ヒドロキシトリカルボン酸類〔クエン酸〕等の単独重合体〔乳酸重合体、ポリグリコール酸等〕、これらの2種以上の共重合体〔乳酸−グリコール酸共重合体、2−ヒドロキシ酪酸−グリコール酸共重合体等〕、これらの単独重合体および/または共重合体の混合物〔乳酸重合体と2−ヒドロキシ酪酸/グリコール酸共重合体との混合物等〕、ポリグリコシド〔ヒアルロン酸、アルギン酸、コンドロイチン硫酸、キチン、キトサン、酸化セルロース等〕、ポリアミノ酸〔ポリ−L−グルタミン酸、ポリ−L−アラニン、ポリ−γ−メチル−L−グルタミン酸等〕、ポリ−α−シアノアクリル酸エステル、無水マレイン酸系共重合体〔スチレン−マレイン酸共重合体等〕、などが用いられる。これらの中では、α−ヒドロキシモノカルボン酸類〔グリコール酸、乳酸等〕、α−ヒドロキシジカルボン酸類〔リンゴ酸〕、α−ヒドロキシトリカルボン酸類〔クエン酸〕などのα−ヒドロキシカルボン酸類の1種以上から合成され、遊離の末端カルボキシル基を有する重合体、共重合体、またはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0024】
モノマーの結合様式としては、ランダム、ブロックあるいはグラフト結合のいずれでもよい。また、前記のα−ヒドロキシモノカルボン酸類、α−ヒドロキシジカルボン酸類、α−ヒドロキシトリカルボン酸類が光学活性中心を有する場合には、D−体、L−体、DL−体のいずれを用いてもよい。
【0025】
本発明の生分解性ポリマーとしては、カルボキシル基の数を考慮した場合、乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)または乳酸重合体(PLA)が好ましく使用される。
【0026】
本発明の方法に用いられる有機溶媒は、使用する薬物および有機物ポリマーを溶解し、かつ水と混和するものであればいずれでもよい。なかでも、使用する薬物と有機物ポリマーとの有機溶媒、特に水含有率が50%以下である含水有機溶媒への溶解度が同程度であるものが好ましい。そのためには、選択する薬物の含水有機溶媒への溶解度を調べ、同程度の溶解度を有する有機物ポリマーを選択するか、または選択する有機物ポリマーの含水有機溶媒への溶解度を調べ、同程度の溶解度を有する薬物を選択することがよい。すなわち、薬物、有機物ポリマーおよび有機溶媒の種類を適宜組み合わせることにより効率よく本発明の目的を達成することができる。
【0027】
これは、2次粒子を作製する際、有機溶媒に対する薬物の溶解度が低すぎると薬物が沈殿し、ポリマー中へ薬物が封入されにくくなり、逆に高すぎると粒子化されにくくなるためである。
【0028】
使用する有機溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ジクロルメタン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどであり、その他上記の条件を満たす溶媒であればいずれでも使用することができる。
【0029】
本発明において好ましいのは、薬物が脂溶性の高いステロイド、有機物ポリマーがPLGAまたはPLA、有機溶媒がアセトンまたはメチルエチルケトンの組み合わせであるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
本発明に使用される薬物は、水含有率が50%以下である含水有機溶媒に溶解する薬物または水溶性薬物を脂溶性化した薬物である。
【0031】
水含有率が50%以下である含水有機溶媒に溶解する薬物としては、ステロイド、免疫抑制・調節薬、抗癌薬、抗生物質、化学療法薬、抗ウイルス薬、非ステロイド性抗炎症薬、抗精神病薬、カルシウム拮抗薬、降圧薬、プロスタグランジン系薬、ビタミン類、診断薬用蛍光物質および粒子分布を調べるための蛍光物質などが使用される。さらに具体的にはエナント酸テストステロン、プロピオン酸テストステロン、テストステロン、エストラジオール、吉草酸エストラジオール、安息香酸エストラジオール、酢酸デキサメタゾン、ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、酢酸プレドニゾロン、プロスタグランジンE1、そのエステル体、シクロスポリン、タクロリムス、パクリタキセル、塩酸イリノテカン、シスプラチン、メソトレキセート、カルマフール、テガフール、ドキソルビシン、クラリスロマイシン、アズトレオナム、セフニジル、ナリジクス酸、オフロキサシン、ノルフロキサシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、フルルビプロフェンアキセチル、クロルプロマジン、ジアゼパム、ニフェジピン、塩酸ニカルジピン、ベシル酸アムロジピン、カンデサルタンシレキセチル、アシクロビル、ビダラビン、エファビレンツ、アルプロスタジル、ジノプロストン、ユビデカレノン、ビタミンA(レチノール)、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ローダミン、フルオロセインおよびその誘導体などが使用されるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
本発明における脂溶性化された水溶性薬物は、当該水溶性薬物を亜鉛、鉄、銅などの2価または3価の金属イオンとの接触またはグリセリンとの接触により、脂溶性化薬物とすることができる。なかでも2価または3価の金属イオンとの接触による方法により良好に脂溶性化でき、金属イオンとしては特に亜鉛イオンが好ましい。例えば、水溶性薬物を水に溶解し、適量の塩化亜鉛を加えることにより脂溶性化薬物とすることができる。
【0033】
脂溶性化される水溶性薬物としては、生理活性タンパク質およびペプチドならびに水溶性のステロイド、免疫抑制・調節薬、抗癌薬、抗生物質、化学療法薬、抗ウイルス薬、非ステロイド性抗炎症薬、抗精神病薬、降圧薬、プロスタグランジン系薬またはビタミンなどであるが、さらに具体的には、インスリン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、成長ホルモン、G−CSF、GM−CSF、エリスロポエチン、シクロスポリン、トロンボポエチン、ウロキナーゼ、t−PA、IL−11、エタネルセプト、インフリキシマブ、SOD、FGF、EGF、HGF、NGF、BDNF、レプチン、NT−3、抗原、抗体、酵素、カルシトニン、PTH、ACTH、GnRH、TRHまたはバソプレシンなどの生理活性タンパク質またはペプチド、あるいは、リン酸ベタメタゾン、リン酸デキサメタゾン、リン酸プレドニゾロン、コハク酸ヒドロコルチゾン、バンコマイシン、ビンクリスチン、ビンプラスチン、コハク酸クロラムフェニコール、ラタモキセフ、セフピロム、カルモナム、リン酸クリンダマイシンまたはアバカビルなどが使用されるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
さらに本発明は、前述した方法で作製した薬物封入ナノ粒子に関する。当該薬物封入ナノ粒子は粒子径が10〜1000nmの範囲にあるので、徐放、ターゲット療法、バリアー通過のいずれの目的にも適用できる。また、粒子径を10nm程度まで微小にすることができるので、経皮吸収、経粘膜に使用することができるとともに、注射剤、経口剤としても使用することができる。
【0035】
さらにまた本発明は、前述した方法で作製した薬物封入ナノ粒子を含有する医薬に関する。医薬品としては経口剤、非経口剤のいずれにも使用することができる。経口剤としては錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤などであり、非経口剤としては、軟膏剤、ゲル剤、ハイドロゲル剤、ローション剤、懸濁剤、貼付剤、パップ剤、舌下錠、口腔錠剤、液剤、口腔・下気道用噴霧剤、吸引剤などの外用剤、静脈・皮下・筋肉内投与用の注射剤などである。
【0036】
本発明の薬物封入ナノ粒子を製剤化するには、得られたナノ粒子を含有する溶液または懸濁液を凍結乾燥、減圧乾燥、噴霧乾燥などにより溶媒を除去し、得られた粉末または固形物に所望の製剤化用基剤を添加し、慣用方法により所望の剤型の製剤化医薬品とすることができる。凍結乾燥する場合、ナノ粒子の凝集を抑制し分散性を良くするためにマンニトール、ソルビトール、シュークロースなどの糖類、界面活性剤、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)などを適宜選択して使用するのが好ましい。
【0037】
本発明はまた、薬物を封入しない有機物ポリマーのナノ粒子の作製および当該ナノ粒子の粒子径を調節する方法をも提供する。
【0038】
すなわち、有機物ポリマーを有機溶媒に溶解し、この溶液を異なる量の水または含水有機溶媒に拡散させることにより異なる粒子径を有する有機ポリマーナノ粒子(1次粒子)を作製し、次いで当該ナノ粒子を含有する溶液または懸濁液に有機溶媒および/または水を加えることにより、濃度の異なる含水有機溶媒系として処理を行い、粒子径の異なる有機ポリマーナノ粒子(2次粒子)を作製する。また、当該2次粒子を含有する溶液または懸濁液に有機溶媒および/または水を加えることにより濃度の異なる含水有機溶媒系として処理し、この操作を繰り返し行うことにより、粒子径を段階的にダウンサイズすることができる。これらのナノ粒子の粒子径は10〜1000nm、好ましくは20〜500nmの範囲である。
【0039】
上記有機物ポリマーは生分解性ポリマー、スチレン系ポリマー、ビニル系ポリマーから選択されるものであり、したがって、作製された有機物ポリマーナノ粒子は医薬品、診断薬、イメージングのほか、化粧品、洗剤、電子工学、粒子科学などの分野に利用することができる。
【実施例】
【0040】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
実施例1アセトン濃度による粒子径の変化
PLGA5020(和光純薬工業社製、以下同様)1gおよびジプロピオン酸ベタメタゾン(以下「BDP」とする。)50mgをアセトン10mLに溶解し、1時間放置した。この溶液を精製水に拡散させて、最終のアセトン濃度がそれぞれ10、30、40、50%となるように調整することによりBDPが封入されたナノ粒子を作製した。その後、各溶液のアセトン濃度が25%になるように精製水を加え、粒子径の変化を停止させた。撹拌、遠心分離後、上清の粒子含有液の粒子径を、粒径アナライザー(FRAR−1000、大塚電子社製、以下同様)で測定した。その結果を図1に示した。
図1の結果から判明するように、アセトン濃度の変化によって、粒子径値の異なる粒子が作製された。
【0042】
実施例2アセトン濃度による薬物封入率
PLGA600mgおよびBDP30mgをアセトン15mLに溶解し、1時間放置した。この溶液を精製水に拡散させ、溶液のアセトン濃度がそれぞれ10、25、30、35、40%となるよう調製し、ナノ粒子を作製した。その後、各溶液のアセトン濃度が30%になるように精製水を加え、粒子径の変化を停止させた。撹拌、遠心分離を行い、得られた上清を粒子含有液とした。
粒子含有液にドデシル硫酸ナトリウム溶液を若干添加して高速遠心することにより粒子を沈殿させ、沈殿した粒子をアセトニトリルに溶解させた後、HPLC法を用いてBDP濃度を定量した。また、同様に沈殿させた粒子を精製水中へ再分散させ、これを凍結乾燥して粒子重量を測定した。粒子中のBDP濃度および粒子重量から粒子内のBDP封入率を算出した。その結果を図2に示した。
図2の結果から判明するように、アセトン濃度の増加により封入率の上昇が見られた。
【0043】
実施例3PLGA濃度(1次粒子)およびアセトン濃度(2次粒子)の変化によるナノ粒子のダウンサイズ
アセトンに対するPLGAの濃度がそれぞれ3、5、10%となるように、下記表1に示した容量のPLGAおよびBDPをアセトン1mLに溶解し、1時間放置した。この溶液を9mLの精製水に拡散させてナノ粒子を作製した。その後、0.5Mクエン酸ナトリウム水溶液1mLを加え撹拌し、遠心分離後上清を得た。この上清には1次粒子が含有されている。
上記で得た1次粒子含有液1mLに、再度アセトンを加え、各溶液のアセトン濃度をそれぞれ65、70、75%となるように調製した。その後、各溶液のアセトン濃度が30%となるように精製水を加えて粒子径の変化を停止させた。得られた2次粒子含有液および1次粒子含有液の粒子径を測定したところ、図3に示した結果となった。図3から判明するように、異なるPLGA濃度によってもダウンサイズが確認され、2次粒子については、アセトン濃度の増加によって十分なダウンサイズが認められた。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例4異なるPLGA/アセトン比による粒子径への影響
アセトンに対するPLGAの濃度がそれぞれ1、3、4、5、10%となるように、下記表2に示した用量のPLGAおよびBDPをアセトン1mLに溶解し、1時間放置した。この溶液を9mLの精製水に拡散させてナノ粒子を作製した。その後、撹拌、遠心分離して上清を得た。この上清に含まれる1次粒子の粒子径を粒径アナライザーで測定した。図4に示すように、アセトンに対するPLGA濃度の低下に伴い、粒子径が小さくなる傾向が見られた。
次いで、前述の実施例1と同様に、分散液の容量を変化させて実施した。PLGAおよびBDPを各濃度で溶解させたアセトン溶液を精製水に拡散させてアセトン濃度が10%および30%となるナノ粒子含有液を作製し、撹拌、遠心分離後、上清に含まれる粒子の粒子径を粒径アナライザーで測定した。その結果を図4に示した。図4から明らかなように、PLGA濃度の低下に伴う粒径値の減少、および実施例1と同様に、アセトン濃度の上昇による粒径値の減少が認められた。
【0046】
【表2】

【0047】
実施例52次粒子のダウンサイズおよび粒子径変化の時間経過による影響
PLGA50mgおよびBDP2.5mgをアセトン1mLに溶解し、1時間放置した。この溶液を9mLの精製水に拡散させてナノ粒子(1次粒子)を作製した。その後、0.5Mクエン酸ナトリウム水溶液1mLを加え撹拌し、遠心分離後、1次粒子を含有している上清を得た。この粒子の粒子径を、粒径アナライザーを用いて測定したところ、平均粒子径は181.2nmであった。
上記の1次粒子含有液各5mLに、79%および85%のアセトン水溶液20mLを加え、各溶液のアセトン濃度をそれぞれ65および70%にした。この粒子含有液をそれぞれ5本のコニカルチューブに分注し、チューブローテーター(TR350、アズワン社製)で持続的に混和させた。0、0.5、1、2、3時間後、各1本ずつコニカルチューブを取り出し、各溶液のアセトン濃度が30%となるように精製水を加えて粒子径の変化を停止させた。得られた2次粒子の粒子径を測定した。その結果を図5に示した。図に示した結果からも判明するように、0時間の粒子径は117.8nm(65%)、および103.6nm(70%)とダウンサイズされていた。また、時間経過に伴って粒子径が大きく(アップサイズ)なる傾向が認められた。
【0048】
実施例62次粒子のダウンサイズおよび粒子内薬物濃度
PLA0020(和光純薬工業社製)40mgおよびドデカン酸12−((7−ニトロ−4−ベンゾフラザニル)アミノ)(Molecular Probes製、以下「N−678」という。)2mgをアセトン1mLに溶解し、1時間放置した後、9mLの精製水に拡散させてナノ粒子を作製した。その後、0.5Mクエン酸ナトリウム水溶液1mLを加え、撹拌、遠心分離後、1次粒子を含有する上清を得た。この粒子の粒子径を測定したところ、平均粒径値が159.6nmであった。
1次粒子含有液1mLにアセトン3mLを加え、アセトン濃度70%となる粒子含有液を作製した。その後、この溶液のアセトン濃度が30%となるように精製水6mLを加え、粒子径の変化を停止させ、2次粒子を得た。こうして得られた2次粒子の平均粒径値は61.7nmであり、ダウンサイズされていた。
この2次粒子含有液を透析チューブ(MWCO:3,500)に入れ、チューブ周囲にポリエチレングリコール(MW:20,000)を付着させ、脱水とチューブ内への精製水添加を繰り返すことにより、バッファー交換を行った。その後さらに1mLまで濃縮した。
1次粒子1mLおよび濃縮した2次粒子1mLを、それぞれSEPHADEX G−25カラムを用いてゲル濾過し、未反応のN−678を除去することによってナノ粒子を精製した。
精製した1次粒子、2次粒子含有液のN−678濃度をフルオロメーター(BIO RAD社製)を用いて測定したところ、表3に示したように、粒子径のダウンサイズにともなって粒子内薬物濃度の減少が見られた。しかし、使用する含水有機溶媒に対してPLAと同程度の溶解度を有する薬物を使用すれば、薬物封入率の減少は抑止できるものと思われる。
【0049】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明は、有機ポリマーに薬物を封入したナノ粒子、およびその粒子を含水有機溶媒と処理することにより粒子径をダウンサイズする方法、ならびに当該方法で得られた薬物封入ナノ粒子である。含水有機溶媒の濃度を調節することにより、任意、自在に粒子径を調製できるので、治療部位への投与、封入した薬物の投与形態などに応じて種々の目的にかなった粒子径を有する薬物封入ナノ粒子として作製することができる点で、医療上の有用性は極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施例1における、含水有機溶媒の濃度による粒子径値の変化を示すグラフである。
【図2】実施例2における、含水有機溶媒の濃度によるBDPの封入率を示すグラフである。
【図3】実施例3における、含水有機溶媒の濃度変化によるナノ粒子のダウンサイズを示すグラフである。
【図4】実施例4における、薬物と含水有機溶媒の濃度の比率による粒子径値の変化を示すグラフである。
【図5】実施例5における、2次粒子のダウンサイズおよび時間経過による粒子変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物および有機物ポリマーを有機溶媒に溶解し、この溶液を、異なる量の水または含水有機溶媒に拡散させることを特徴とする、異なる粒子径を有する薬物封入ナノ粒子の作製方法。
【請求項2】
薬物および有機物ポリマーを有機溶媒に溶解し、この溶液を異なる量の水または含水有機溶媒に拡散させることにより異なる粒子径を有する薬物封入ナノ粒子を作製し、次いで当該ナノ粒子を含有する溶液または懸濁液に有機溶媒および/または水を加えることにより濃度の異なる含水有機溶媒系として処理することによる、粒子径の異なる薬物封入ナノ粒子の作製方法。
【請求項3】
当該ナノ粒子を含有する溶液または懸濁液に有機溶媒および/または水を加えることにより濃度の異なる含水有機溶媒系として処理し、この操作を繰り返し行うことにより、粒子径を段階的にダウンサイズすることを特徴とする請求項2に記載の作製方法。
【請求項4】
薬物および有機物ポリマーを有機溶媒に溶解し、この溶液を異なる量の水または含水有機溶媒に拡散させることにより異なる粒子径を有する薬物封入ナノ粒子を作製し、次いで当該ナノ粒子を含有する溶液または懸濁液に有機溶媒および/または水を加えることにより濃度の異なる含水有機溶媒系として処理することによる、薬物封入率の異なる薬物封入ナノ粒子の作製方法。
【請求項5】
ナノ粒子の粒子径が10〜1000nm、好ましくは20〜500nmの範囲である請求項1〜4いずれかに記載の作製方法。
【請求項6】
薬物封入率が0.1〜30%である請求項4に記載の作製方法。
【請求項7】
有機物ポリマーが生分解性ポリマーである請求項1〜4のいずれかに記載の作製方法。
【請求項8】
生分解性ポリマーが乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)または乳酸重合体(PLA)である請求項7に記載の作製方法。
【請求項9】
含水有機溶媒が、使用する薬物および有機物ポリマーを好ましくは同程度に溶解するものである請求項1〜4のいずれかに記載の作製方法。
【請求項10】
有機溶媒がアセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ジクロルメタン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドおよびジメチルホルムアミドから選択されるものである請求項1〜4、および9のいずれかに記載の作製方法。
【請求項11】
有機溶媒がアセトンまたはメチルエチルケトンである請求項1〜4のいずれかに記載の作製方法。
【請求項12】
薬物が、水含有率が50%以下である含水有機溶媒に溶解する薬物または水溶性薬物を脂溶性化した薬物である請求項1〜4のいずれかに記載の作製方法。
【請求項13】
水含有率が50%以下である含水有機溶媒に溶解する薬物が、ステロイド、免疫抑制・調節薬、抗癌薬、抗生物質、化学療法薬、抗ウイルス薬、非ステロイド性抗炎症薬、抗精神病薬、カルシウム拮抗薬、降圧薬、プロスタグランジン系薬、ビタミン類、診断薬用蛍光物質および粒子分布を調べるための蛍光物質から選択されるものである請求項12に記載の作製方法。
【請求項14】
水含有率が50%以下である含水有機溶媒に溶解する薬物が、エナント酸テストステロン、プロピオン酸テストステロン、テストステロン、エストラジオール、吉草酸エストラジオール、安息香酸エストラジオール、酢酸デキサメタゾン、ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、酢酸プレドニゾロン、プロスタグランジンE1、そのエステル体、シクロスポリン、タクロリムス、パクリタキセル、塩酸イリノテカン、シスプラチン、メソトレキセート、カルマフール、テガフール、ドキソルビシン、クラリスロマイシン、アズトレオナム、セフニジル、ナリジクス酸、オフロキサシン、ノルフロキサシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、フルルビプロフェンアキセチル、クロルプロマジン、ジアゼパム、ニフェジピン、塩酸ニカルジピン、ベシル酸アムロジピン、カンデサルタンシレキセチル、アシクロビル、ビダラビン、エファビレンツ、アルプロスタジル、ジノプロストン、ユビデカレノン、ビタミンA(レチノール)、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ローダミン、フルオロセインおよびその誘導体から選択されるものである請求項12に記載の作製方法。
【請求項15】
水溶性薬物を脂溶性化する方法が、亜鉛、鉄、銅などの2価または3価の金属イオンとの接触またはグリセリンとの接触である請求項12に記載の作製方法。
【請求項16】
水溶性薬物が、生理活性タンパク質およびペプチドならびに水溶性のステロイド、免疫抑制・調節薬、抗癌薬、抗生物質、化学療法薬、抗ウイルス薬、非ステロイド性抗炎症薬、抗精神病薬、降圧薬、プロスタグランジン系薬およびビタミンから選択されるものである請求項12または15に記載の作製方法。
【請求項17】
生理活性タンパク質およびペプチドがインスリン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、成長ホルモン、G−CSF、GM−CSF、エリスロポエチン、シクロスポリン、トロンボポエチン、ウロキナーゼ、t−PA、IL−11、エタネルセプト、インフリキシマブ、SOD、FGF、EGF、HGF、NGF、BDNF、レプチン、NT−3、抗原、抗体、酵素、カルシトニン、PTH、ACTH、GnRH、TRHおよびバソプレシンから選択されるものである請求項16に記載の作製方法。
【請求項18】
水溶性薬物が、リン酸ベタメタゾン、リン酸デキサメタゾン、リン酸プレドニゾロン、コハク酸ヒドロコルチゾン、バンコマイシン、ビンクリスチン、ビンプラスチン、コハク酸クロラムフェニコール、ラタモキセフ、セフピロム、カルモナム、リン酸クリンダマイシンおよびアバカビルから選択されるものである請求項12または16に記載の作製方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載の作製方法で得られた薬物封入ナノ粒子。
【請求項20】
請求項19に記載の薬物封入ナノ粒子を含有する医薬。
【請求項21】
有機物ポリマーを有機溶媒に溶解し、この溶液を異なる量の水または含水有機溶媒に拡散させることにより異なる粒子径を有する有機ポリマーナノ粒子を作製し、次いで当該ナノ粒子を含有する溶液または懸濁液に有機溶媒および/または水を加えることにより濃度の異なる含水有機溶媒系として処理することによる、粒子径の異なる有機ポリマーナノ粒子の作製方法。
【請求項22】
当該ナノ粒子を含有する溶液または懸濁液に有機溶媒および/または水を加えることにより濃度の異なる含水有機溶媒系として処理し、この操作を繰り返し行うことにより、粒子径を段階的にダウンサイズすることを特徴とする請求項21に記載の作製方法。
【請求項23】
ナノ粒子の粒子径が10〜1000nm、好ましくは20〜500nmの範囲である請求項21または22に記載の作製方法。
【請求項24】
有機物ポリマーが、生分解性ポリマー、スチレン系ポリマー、ビニル系ポリマーから選択されるものである請求項21に記載された作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−131577(P2006−131577A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324455(P2004−324455)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(303010452)株式会社LTTバイオファーマ (27)
【Fターム(参考)】