説明

異なる設計の連結器を適合させるためのアダプターカプラ

【課題】手動による操作をより容易にすることのできる軽量の構造物からなるアダプターカプラを提供する。
【解決手段】異なる設計の連結器を適合させるためのアダプターカプラ1に関し、このアダプターカプラ1を第1の連結器に対して取り外し可能に結合するための第1の結合メカニズム5と、このアダプターカプラ1を第2の連結器に対して取り外し可能に結合するための第2の結合メカニズム16と、第1の結合メカニズム5を第2の結合メカニズム16に対して結合するためのカプラ筐体10と、を備えている。カプラ筐体10は、繊維複合材料、特に、炭素繊維複合材料から形成されているとともに、金属によって構成されている従来のアダプターカプラに適合されている形状を有している。このカプラ筐体10は、それが受ける応力荷重に対して頑丈な繊維構造を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる設計の連結器を適合させるためのアダプターカプラに関する。このアダプターカプラは、このアダプターカプラを第1のカプラに対して取り外し可能に結合するための第1の結合ゾーンと、このアダプターカプラを第2のカプラに対して取り外し可能に結合するための第2の結合ゾーンと、第1の結合メカニズムと第2の結合メカニズムとを結合するためのカプラ筐体とを備えている。
【0002】
したがって、本発明は、たとえば自動中心緩衝連結器とネジ式のまたはAARの連結器とをつなぎ合わせるためのアダプターカプラに関する。これにより、第1の結合ゾーンを、自動中心緩衝連結器のカプラヘッドに対してアダプターカプラを取り外し可能に結合するためのカップリングロックとして構成することが可能となるとともに、第2の結合ゾーンを、ネジまたはAAR連結器のカプラヘッドに対してアダプターカプラを取り外し可能に結合するための、ネジ式のまたはAARの連結器におけるドローフック内にはめ込まれる、カップリングヨークとして構成することが可能となる。
【0003】
この明細書において、「結合ゾーン」という用語は、一方の側にあるアダプターカプラのカプラ筐体と、このアダプターカプラによって結合されている連結器との間のインターフェイスとして、一般的に理解されるべきである。この結合ゾーンについては、たとえば、自動中心緩衝連結器のカプラヘッドに対してアダプターカプラを取り外し可能に結合するためのカップリングロックとして構成することが可能であり、または、このようなカップリングロックを備えることが可能である。他方において、この結合ゾーンが、ネジ式のまたはAARの連結器のドローフック内にはめ込まれることの可能なカップリングヨークを有することも想定することが可能である。当然のことながら、この結合ゾーンにおける他の実施形態を実現することも可能である。
【背景技術】
【0004】
上述した種類のアダプターカプラは、鉄道技術において一般的に知られており、異なる連結器システム(たとえば、AARのヘッドまたはドローフックに対するScharfenberg(登録商標)連結器)を有する軌道車同士を結合するために使用されている。たとえばドローフックまたはAARのヘッドに対してアダプターカプラを結合することは、通常、手動で実施されている。一方、中心緩衝連結器の場合には、連結プロセスを自動化することが可能である。
【0005】
自動中心緩衝連結器と、たとえばネジ式の連結器とをつなぎ合わせるための、従来型のアダプターカプラは、通常、カプラ筐体を有している。このカプラ筐体は、自動中心緩衝連結器のカプラヘッド内に設けられているカップリングロックに対して、アダプターカプラを機械的に結合するための第1の結合メカニズムとしてのカップリングロックを収容している。連結されている状態では、カプラ筐体の前面は、自動中心緩衝連結器におけるカプラヘッドの前面に隣接している。
【0006】
アダプターカプラの前面の反対側の端部には、第2の結合メカニズムとして、カップリングヨークを設けることが可能である。これは、たとえば、ネジ式の連結器またはAAR連結器のドローフック内に装着されることが可能であり、ネジ式のまたはAARの連結器に対するアダプターカプラの機械的な結合を実現することができる。
【0007】
動作時には、引張荷重および圧縮荷重が、ネジ式のまたはAARの連結器のドローフックから、カップリングヨークとして構成されているアダプターカプラにおける第2の結合メカニズムに加えられる。カップリングヨークおよび第2の結合メカニズムに誘導される圧縮荷重は、それぞれカプラ筐体の壁面を介して、アダプターカプラの前面に導かれ、そして、ここから、アダプターカプラに対して機械的に結合されている自動中心緩衝連結器におけるカプラヘッドの前面に伝達される。
【0008】
他方において、引張荷重は、第1の結合メカニズム、たとえば、機械的に結合されている、アダプターカプラのカップリングロックおよび自動中心緩衝連結器のカップリングロックを介して伝達される。これらのカップリングロックは、たとえば、メインピンによってカプラ筐体に対して回動可能に取り付けられているコアピースを備えている。このコアピースは、それに備え付けられているカップリンググロメットを有している。したがって、引張力は、対応するコアピースと係合している個々のカップリンググロメットを介して伝達される。
【0009】
ここで、本発明は、自動中心緩衝連結器をネジ式の連結器に対して結合するように設計されているアダプターカプラに限られるわけではない、ということに留意するべきである。むしろ、本発明は、一般的に、異なる設計の連結器を適合させるためのアダプターカプラに関し、この場合に、このアダプターカプラは、第1の設計タイプの連結器に適合しているとともに、第1の設計タイプの連結器に対する取り外し可能な結合を形成するように設けられている第1の結合メカニズムを備えている。さらに、このアダプターカプラは、第2の設計タイプの連結器に適合しているとともに、第2の設計タイプの連結器に対する取り外し可能な結合を形成するように設けられている第2の結合メカニズムをさらに備えている。
【0010】
これら第1および第2の結合メカニズムは、それぞれ、一般的なアダプターカプラにおけるカプラ筐体を介して、互いに結合している。このため、このアダプターカプラが、第1の設計タイプの連結器を第2の設計タイプの連結器に適合させるために使用されている場合には、動作の際に生じる引張荷重および圧縮荷重が、カプラ筐体を介して、第1の結合メカニズムから第2の結合メカニズムに対して伝達される。
【0011】
したがって、アダプターカプラの筐体は、引張荷重および圧縮荷重の双方の場合において、力の伝達に関与している。このため、筐体は、それに応じて、高い圧縮および引張強さを有する必要がある。このため、従来型のアダプターカプラに設けられているカプラ筐体は、通常、金属製の構造物(精密な鋳造物)として実現されている。したがって、比較的に高い引張および圧縮強さを呈するとともに、特に、等方性(すなわち、全ての方向において物理的に均一であること)を有する材料が使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
レール技術において知られている上述した従来型のアダプターカプラの欠点は、金属製の構造物、特にカプラ筐体に関するものが、適合されるべき連結器(たとえばネジ式のまたはAARの連結器のドローフック)間のインターフェイス内にアダプターカプラを手動によってはめ込むことを困難にしている、という点にある。
【0013】
したがって、従来から、手動による操作をより容易にすることのできる軽量の構造物からなるアダプターカプラを設計しようとする努力がなされてきた。
【0014】
本発明は、アダプターカプラのためのカプラ筐体の設計において、軽量の構造物を実現しようとする従前のアプローチを利用できない、または、容易には利用できないという問題に基づいている。一方、この問題は、アダプターカプラのために使用することのできる空間は、規定の限定された空間しかないために、軽量の構造物からなるアダプターカプラに関する幾何学的なサイズは、従来のアダプターカプラのサイズと本質的に一致していなければならないということに起因する。他方において、アダプターカプラは、力の流れの中に(力の伝達経路の途中に)配置されており、比較的に強く応力を受ける部材であり、圧縮荷重を受けるだけでなく、特に、引張荷重にもさらされている。このため、アダプターカプラにおけるカプラ筐体のための材料として、たとえば、比較的に低い引張強さしか有していないという理由で、アルミニウムを使用することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この問題に基づいて、本発明は、最初に示した種類のアダプターカプラを軽量の構造物に設計することによって、特に、その手動による操作を容易にする、という課題に取り組んでいる。
【0016】
この課題は、一方においては、カプラ筐体を、繊維複合材料、特に、炭素繊維複合材料によって設計するとともに、金属によって構築されている従来のカプラ筐体の幾何学形状に適合した形状に設計することによって、解決される。
【0017】
他方において、本発明は、受ける応力荷重に対して頑丈な繊維構造を有する、カプラ筐体を提供する。
【0018】
引張力および圧縮力の誘導に対する本発明の解決策における、1つの可能性のある具現案では、第1および/または第2の結合メカニズムを、挿入部として設計するとともに、カプラ筐体内の収容部に収容して、前記カプラ筐体に対して固定して結合することも、追加的に想定することが可能である。
【0019】
この明細書において使用されている「挿入部」という用語によっておおまかに理解されるものは、引張力および圧縮力がアダプターカプラ内に誘導されるポイントにおいて、繊維複合材料の繊維に対して力が直接的に印加されないことを確保するように機能する挿入部のことである。むしろ、アダプターカプラ内に誘導された力が挿入部を介して伝達され、そして散逸されるまで、繊維複合材料の繊維に対して力は印加されない。これにより、繊維複合材料の繊維に対して力のピーク(最大の力)が作用することを防止している。
【0020】
繊維強化プラスチックは、ポリマー母材に埋め込まれた強化用繊維を構造のベースとしている。所定の位置に繊維を保持するとともに、繊維間において引張力を伝達して、外部の影響から繊維を保護している母材によって、この強化用繊維は、機械的な耐荷重特性を得ている。アラミド、ガラス、および炭素の繊維は、強化用繊維として特に適切である。これらの弾力性のために、アラミド繊維だけは、低い剛性を有している。このため、剛性のある構造用部品には、ガラスおよび炭素の繊維が使用される。これらが高い比強度を呈するために、炭素繊維は、もっぱら、アダプターカプラのカプラ筐体などの、高い荷重を受ける部品に使用される。
【0021】
たとえば宇宙航空技術において知られているように、炭素繊維強化プラスチック(CFP)は、高い比剛性および比強度を有しており、このことによって、構造的に魅力的なもの、すなわち耐荷重性を有する構造となり得る。解決されないままに残っている問題点は、炭素繊維強化プラスチックにおける機械的な特性が、異方性を有していること(すなわち、方向的な依存性のあること)にある。繊維の種類にもよるが、繊維の方向に垂直な引張強さは、いずれの場合にも、繊維の方向における引張強さの約5%にしか到達しない。したがって、一見したところでは、繊維複合体から構成されているカプラ筐体は、アダプターカプラとともに使用するためには、不適当であるようにも思われる。
【0022】
本発明の場合には、予測される荷重状態に適合する特性を維持するために、アダプターカプラのカプラ筐体を構築する際に、特定の繊維構造を実現する必要がある。具体的にいえば、本発明は、カプラ筐体のための材料として、繊維における少なくとも大部分が、あらかじめ計算された荷重経路の方向に沿って走っているような炭素繊維強化プラスチックを使用することを提案する。特定の部分が、いろいろな方向からの荷重を受けている場合には、必要に応じて、これらの特定の部分のために、異なる空間方向において同様の大きさを有する、準等方的な繊維構造を選択することが可能である。
【0023】
さらに、このカプラ筐体の外形は、金属製の構造物からなるカプラ筐体の外形に基づいている。しかしながら、この場合、存在する可能性のある鋭いエッジを有する屈曲部、ひだ、および何らかの硬化リブ(stiffening ribs)は、精密鋳造の際に容易に現れ、また、機械的な見地からは意味をもつものであるが、好ましくは、意識的に排除されている。繊維複合材料から形成されている本発明のカプラ筐体は、金属製の構造物からなるカプラ筐体に適合された形状を有しており、好ましくは、丸みを帯びている。このため、実質的に同質の構造空間において、力束ベクトル(force flux vectors)に沿った繊維の方向の突然の変化(これらは、繊維におけるノッチング効果および構造的な破損を招来する可能性がある)を効果的に防止することが可能である。
【0024】
アダプターカプラのカプラ筐体が、比較的複雑な3次元の幾何学形状を有しているために、従来から知られているプロセスを用いて複合材料を製造することには問題がある。上述したように、本発明のアダプターカプラにおけるカプラ筐体の繊維は、これらの受ける応力荷重に抵抗できるように設計されている。すなわち、これらの繊維は、あらかじめ計算された力束ベクトルに沿ってニア・ネット・シェイプ成形される。このため、これらの繊維は、しばしばそれらの間隔を互いに変更する必要がある。なぜなら、狭窄点、すなわち、第1および/または第2の結合メカニズムを介して引張荷重および圧縮荷重がカプラ筐体内に誘導されるエリアにおいて力束線が集中することがあるからである。しかしながら、繊維が不変の空間を必要としているために、これらを任意に密集配置することはできない。むしろ、狭窄点において(すなわち、高い応力を受けるエリアにおいて)は、繊維の数を減少する必要がある。このような場合には、すなわち、カプラ筐体における高い応力を受けるエリアでは、繊維の配置経路に沿ってギャップが成長している。これらのギャップは、これらの高い応力を受けるエリアにおいて、複合材料における機械的な挙動にマイナスの影響を及ぼす可能性がある。
【0025】
これを回避するために、本発明の解決策における1つの好ましい具現案は、第1および/または第2の結合メカニズムを介してカプラ筐体に伝達される引張力および圧縮力の誘導に関して、挿入部、たとえば、金属製またはセラミック製の挿入部として設計されているとともに、カプラ筐体内に収容されており、さらに、前記カプラ筐体に対して固定して結合されている、第1および/または第2の結合メカニズムを提供する。力は、繊維複合材料の繊維内にしかるべく誘導される一方、引張荷重および圧縮荷重がアダプターカプラ内に誘導されるエリアに対しては、直接的には誘導されない。したがって、アダプターカプラ内に誘導された力が、挿入部として構成されている結合メカニズムを介して伝達され、そして散逸されるまで、繊維複合材料の繊維内に力が誘導されない。このようにすることにより、繊維複合材料の繊維に対して力のピークが作用することを防止している。
【0026】
したがって、カプラ筐体が前記のような特別な構造を有しているので、繊維複合材料を使用することが可能である。これにより、高い応力を受けるカプラ筐体の場合においても、金属製の構造物に対する最大制限重量の利点を、同程度の比強度および比剛性とともに得ることが可能となる。
【0027】
本発明のアダプターカプラにおけるさらに有利な実施形態は、従属請求項に示されている。
【0028】
上述したように、本発明の解決策における1つの好ましい具現案は、第1および/または第2の結合メカニズムを介してカプラ筐体内に伝達される引張力および圧縮力の誘導に関して、前記第1および/または第2の結合メカニズムを、挿入部、たとえば金属製の挿入部として構成するとともに、これをカプラ筐体内に収容し、さらに、これを前記カプラ筐体に対して固定して結合する。力は、繊維複合材料の繊維内にしかるべく誘導される一方、引張荷重および圧縮荷重がアダプターカプラ内に誘導されるエリアに対しては、直接的には誘導されない。この場合、アダプターカプラ内に誘導された力が、挿入部として構成されている結合メカニズムを介して伝達され、そして散逸されるまで、繊維複合材料の繊維内に力が誘導されない。このようにすることにより、繊維複合材料の繊維に対して力のピークが作用することを、防止している。
【0029】
他方において、カプラ筐体が、第1の結合メカニズムおよび/または第2の結合メカニズムを介してカプラ筐体内に誘導される圧縮荷重を迂回させる特定の繊維構造を有しており、これにより、その少なくとも一部が、引張荷重として、炭素繊維強化材料によって吸収されることが好ましい。
【0030】
これに対して代替的または追加的に、カプラ筐体が、引張繊維エリアまたは圧縮繊維エリア(図1参照)を備えており、これらのエリアが、少なくとも部分的に、互いに空間的に分離されているとともに、炭素繊維複合材料に一体化されている。これにより、第1および/または第2の結合メカニズムを介してカプラ筐体内に誘導される引張力は、引張繊維エリアによって実質的に吸収され、また、第1および/または第2の結合メカニズムを介してカプラ筐体内に誘導される圧縮力は、圧縮繊維エリアによって実質的に吸収されるということも想定することが可能である。
【0031】
応力に耐えうる特定の繊維構造として構築されているカプラ筐体によって、本発明の解決策は実現されている。圧縮の荷重経路と引張の荷重経路とは、これらが受ける応力に耐えうるものであり、これらは空間的に分かれている。これにより、圧縮荷重および引張荷重が異なる荷重領域を有しているカプラ筐体には特有の荷重がはたらく。これらの荷重経路に相応して、本発明の解決策における上記した後者の具現案には、特別な引張繊維ストランドおよび圧縮繊維ストランドが一体化されている。
【0032】
本発明の解決策における1つの可能性のある具現案では、第1の結合メカニズムは、中心緩衝連結器のカプラヘッドに対してアダプターカプラを取り外し可能に結合するためのカップリングロックを有している。また、第2の結合メカニズムは、ネジ式のまたはAARの連結器のカプラヘッドに対してアダプターカプラを取り外し可能に結合するための、ネジ式のまたはAARの連結器のドローフック内に挿入可能なカップリングヨークを有している。この具現案は、上述した圧縮繊維エリアおよび引張繊維エリアを提供している。ここでは、圧縮繊維エリアが、炭素繊維複合材料に一体化されている圧縮弦材(compression chord)として構成されている。この圧縮弦材は、カプラ筐体における列車側の前面から、圧縮荷重を受けるカップリングヨークのエリアに向かって延びている。また、引張繊維エリアは、炭素繊維複合材料に一体化されている引張弦材(traction chord)として構成されている。この引張弦材は、カップリングロックのメインピンを引張荷重を受けるカップリングヨークのエリアに結合している。
【0033】
引張荷重および圧縮荷重は、通常同じ経路をとるため、上記した圧縮荷重経路と引張荷重経路と(すなわち、圧縮力を受けるカプラヘッドのエリアと引張力を受けるカプラヘッドのエリアと)の空間的な分離は、著しく独特なものである。圧縮荷重経路と引張荷重経路との空間的な分離を意識的に選択することにより、カプラヘッドのCFP構造が、両方の荷重を等しく吸収しなければならなくなることを、効率的に防止することが可能となっている。本発明の解決策によって提案されているように、カプラヘッドのCFP構造における圧縮力を受けるエリアと引張力を受けるエリアとを、空間的に分離することにより、CFP材料をより有効に利用することが可能となる。
【0034】
他方において、カプラ筐体が、その先細りの端部における水平な長手方向に向かって、円錐またはじょうご形状の外形を有するように設計されているとともに、アダプターカプラにおける長手方向の軸に沿って延びる凹部を有するように構成されており、さらに、挿入部として構成されているカップリングヨークは、前記凹部内に受け入れられているとともに、カプラ筐体に対して固定して結合されていることも、原理的には、想定することが可能である。したがって、自動中心緩衝連結器のカプラヘッド、特に、Scharfenberg(登録商標)タイプの自動中心緩衝連結器におけるカプラヘッドに適合されているカプラ筐体のための外形が提案される。この外形は、自動中心緩衝連結器におけるカプラヘッドの位置を揃えるとともに、それを中心に配置し、さらに、狭いカーブの内部および高さのずれている部分においても、自動中心緩衝連結器のカプラヘッドに対してアダプターカプラを自動的に結合することを保証している。
【0035】
カプラ筐体における先細りの端部に設けられている凹部内に受け入れられる挿入部として構成されているとともに、前記カプラ筐体に対して固定して結合されているカップリングヨークは、ネジ式の連結器におけるドローフックからカップリングヨークに伝達される力を、カプラ筐体の材料内に、および特にあらかじめ計算された力の流れる経路に沿って配置されている繊維に向けて、横方向に誘導することを可能にする。
【0036】
特に、カプラ筐体における先細りの端部に設けられている凹部が、長手方向の部分に丸みを帯びたエッジを有する、U字形状の断面形状を有していることが好ましい。このことは、挿入部として構成されているカップリングヨークと繊維複合体のカプラ筐体における位置合わせされた繊維との間において伝達される力束ベクトルに、屈曲部が生じることを効果的に防止することを可能とする。このような屈曲部は、繊維におけるノッチング効果および構造的な破損を招来する可能性がある。
【0037】
上述した実施形態のアダプターカプラにおける1つの好ましい具現案は、挿入部として構成されているカップリングヨークを提供している。このカップリングヨークは、長手方向の部分において、U字形状の断面幾何学形状を有している。これにより、さらに、ドローフックピンが、U字形状のカップリングヨークにおける2つの突出部を互いに結合するように設けられているとともに、ネジ式のまたはAARの連結器のドローフックから、挿入部として構成されているカップリングヨークに向けて、引張力または圧縮力を伝達するように設計されている。この構成に関して、特に、挿入部として構成されているカップリングヨークから離れているとともに、カップリングヨークにおける2つの突出部に設けられているドリル孔に対して軸方向が揃うように受け入れられているドローフックピンを実現することを想定することが可能である。
【0038】
挿入部として構成されているカップリングヨークと繊維複合体のカプラ筐体との間における、可能な限り安定的な結合を得るために、アダプターカプラにおける1つの好ましい具現案は、挿入部として設けられているカップリングヨークを提供しており、このカップリングヨークは、カップリングヨークの突出部に設けられているドリル孔に対して軸を揃えるように配置されている、スリーブ状部を有している。これらのスリーブ状部は、さらに、カプラ筐体を通過して延びるドリル孔に受け入れられている。したがって、挿入部として構成されているカップリングヨークは、カプラ筐体に対して、圧力によって結合されているだけでなく、形状的にも結合されている。
【0039】
したがって、カップリングヨークのドローフックピンが、一方の側において、カップリングヨークにおけるスリーブ状部を介して延びている一方、他方の側において、カプラ筐体内に設けられているとともにカップリングヨークにおけるスリーブ状部に対して軸を揃えるように配置されている、ドリル孔を介して延びていることが好ましい。これにより、繊維複合体のカプラ筐体から挿入部として構成されているカップリングヨークを分離することを要することなく、必要に応じて、ドローフックピンを交換することが可能となる。
【0040】
本発明のアダプターカプラにおける後者の実施形態では、カプラ筐体を通過して延びているドリル孔における周辺の領域が、厚肉部として構成されていることは、特に有利である。このドリル孔における周辺の領域は、ドローフックピンから繊維複合体のカプラ筐体に誘導されるものに寄与する。このため、厚肉部は、カプラ筐体における上記のエリアに設けられている繊維構造の引張および圧縮強さを増大する。
【0041】
アダプターカプラは、好ましくは、Scharfenberg(登録商標)タイプの自動中心緩衝連結器とネジ式の連結器との間における、多目的の連結のために設計されている。この場合には、アダプターカプラのカップリングロックは、コアピースを備えており、このコアピースが、鉛直方向に延びているメインピンによってカプラ筐体に対して回動可能になっている、カップリンググロメットを備え付けている。少なくとも、アダプターカプラに結合されている自動中心緩衝連結器から前記アダプターカプラに伝達された引張力は、繊維複合体のカプラ筐体におけるメインピンおよびコアピースを介して伝達される。このため、メインピンにおける上側および/または下側の端部が、ベース本体に設けられる挿入部として構成されているスリーブ状部内に取り付けられており、メインピンの長手方向において延びているドリル孔に設置されており、さらに、ベース本体に対して固定して結合されていることが好ましい。したがって、アダプターカプラにおける上記の好ましい具現案では、繊維複合体のカプラ筐体内における力の伝達は、メインピンを介して直接的に生じることはない。この伝達は、むしろ、スリーブ状部を介して、間接的に生じる。このため、誘導される力を、繊維複合体のカプラ筐体における繊維に対して、横方向に分散することが可能となる。このことは、メインピンの近傍における、繊維複合体のカプラ筐体の構造的な破損を、効果的に防止する。
【0042】
原理的には、繊維複合体のベース本体は、連続繊維の形状を有する炭素繊維から形成された、うねりのある本体として、一体的に形成されていることが好ましい。カプラ筐体の製造に対して非常に適しているものは、いわゆるテーラード・ファイバー・プレースメント(TFP)プロセスである。このプロセスでは、繊維は、ステッチングによって固定されており、これにより、たとえばガラス繊維または炭素繊維の織物材料などの基材が平坦化されている。固定については、さまざまな異なる縫い糸材料によって達成することが可能である。たとえば、ポリエステルの糸は、最近のCFP材料の強度に貢献することが可能である。一方、アラミド、ガラス、または炭素の糸は、層間せん断強度を改善することが可能である。原理的には、浸透フェーズの際に溶ける、可溶性の糸を使用することも可能である。これにより、固定縫いされた繊維が緩むので、均一な繊維構造が得られる。
【0043】
しかしながら、当然ではあるが、繊維複合体のカプラ筐体を製造するために、いわゆるプリプレグプロセスを選択することも想定することが可能である。このプリプレグプロセスは、粘着性のあるポリマー樹脂をあらかじめ染み込ませてある平行な連続フィラメントからなる、薄い繊維ストランドによって開始される。これらのプリプレグは、両側にある紙またはフィルムをはがされ、ロール状態から処理される。この材料は、切断され、そして、レイアウト計画にしたがって、層状に構成される。
【0044】
このプリプレグプロセスは、比較的に大きくてわずかに曲がっている部品、および、複雑でない3次元構造にとって、特に適している。このため、本発明のアダプターカプラにおいて使用されているカプラ筐体の製造においては、いわゆる浸透プロセスを使用することが好ましい。このプロセスは、まず、「ドライの」、すなわち、樹脂を含まない、半仕上げの炭素繊維製品をプレフォームに加工すること、および、その後に、これに対して低粘度のポリマー樹脂を浸透させること、を必要とする。
【0045】
以下では、本発明にかかるアダプターカプラにおける好ましい実施形態を説明するにあたって、添付図面を参照することとする。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるアダプターカプラの3次元斜視図である。
【図2】本発明にかかるアダプターカプラの別の実施形態を示す3次元斜視図である。
【図3】図3aは、本発明の一実施形態にかかる挿入物を備えた、アダプターカプラのカプラ筐体の後部を示す3次元斜視図である。図3bは、図3aに示すカプラ筐体の3次元の正面斜視図である。
【図4】挿入物をもたない本発明の一実施形態にかかる、アダプターカプラのカプラ筐体の後部を示す3次元斜視図である。
【図5】図5aは、たとえば図4に示すカプラ筐体において使用するための挿入部として構成されているカップリングヨークの3次元斜視図である。図5bは、たとえば図4に示すカプラ筐体において使用するためのドローフックピンの3次元斜視図である。
【図6】図6aは、たとえば図4に示すカプラ筐体においてメインピンを受容するための挿入部、たとえば金属製の挿入部として構成されているスリーブ状部を上方および下方から望む3次元斜視図である。図6bは、たとえば図4に示すカプラ筐体において使用するためのメインピンの3次元斜視図である。
【図7】本発明にかかるアダプターカプラの実施形態のための、ハイブリッド構造のカップリンググロメットの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図面に示されている本発明のアダプターカプラ1の実施形態は、軽量の構造物からなるとともに、繊維複合材料から形成されているカプラ筐体10によって構成されている。カップリングロック5が、第1の結合メカニズムとしてカプラ筐体10内に収容されており、自動中心緩衝連結器のカプラヘッドに対してアダプターカプラ1を取り外し可能に結合する役割を果たしている。具体的には、図面に示されているアダプターカプラ1は、Scharfenberg(登録商標)タイプの自動中心緩衝連結器と連結するように設計されている。
【0048】
繊維複合体のカプラ筐体10内に収容されているカップリングロック5は、特に、コアピース6を備えており、これは、鉛直方向のメインピン8によって、カプラ筐体10に対して回動可能に取り付けられている。カップリンググロメット7は、コアピース6に備え付けられており、アダプターカプラ1に連結される自動中心緩衝連結器のコアピースに係合するように機能する。
【0049】
明確に図示しないが、カップリングロック5は、メインピン8を介してカプラ筐体10内に回動可能に取り付けられているとともに、カップリンググロメット7を備え付けている上述のコアピース6に加えて、引張スプリング、スプリングベアリング、および、パンチガイドを有するラチェットロッドをさらに備え、これにより、たとえばScharfenberg(登録商標)タイプの自動中心緩衝連結器に対するアダプターカプラ1の自動的な連結および切り離しを可能としていると当然想定することが可能である。したがって、カプラ筐体10内に収容されているカップリングロック5は、従来の回転式のロックとして構成されていること、および、自動中心緩衝連結器のカプラヘッドに対して取り外し可能に機械的に結合されるように設計されていることが好ましい。
【0050】
図面に示されている本発明のアダプターカプラ1の実施形態では、コアピース6、メインピン8、およびカップリンググロメット7は、金属製の構造物(精密な鋳造物)からなる。極めて軽いアダプターカプラ1を実現するために、カップリングロック5を構成する少なくとも一部の部品(たとえばカプラ筐体10)を繊維複合体構造として実現することも、当然に想定することが可能である。
【0051】
たとえば、図7の描写から推測することができるように、カップリンググロメット7をハイブリッド構造として構成することも、想定することが可能である。図7に示すカップリンググロメット7の場合、カップリングロック5のコアピース6に対して引張力を伝達するように機能している前記カップリンググロメット7の部分は、挿入部、たとえば金属製の挿入部として構成されている。一方、前記カップリンググロメット7の中央部分における少なくとも一部は、繊維複合材料から形成されている。
【0052】
自動中心緩衝連結器のカプラヘッドに対してアダプターカプラ1が機械的に結合されている場合(明確に図示せず)には、カプラ筐体10内に収容されているカップリングロック5は、引張荷重を伝達するように機能する。他方において、圧縮荷重は、カプラ筐体10のフラットな前面11を介して伝達される。この目的を達成するために、カプラ筐体10は、たとえば図1および図2の描写からわかるように、幅の広いフラットなエッジ13および円錐/じょうご形状のガイド面から構成されている外形を呈している。この外形は、アダプターカプラ1に対して機械的に結合される自動中心緩衝連結器に対して、アダプターカプラ1の位置を自動的にそろえるとともに、それを中心に配置し、さらに、狭いカーブの内部および高さのずれている部分においても、これらを互いにスライドさせることを可能としている。
【0053】
詳細にいえば、図3bの描写に示すように、カプラ筐体10の前面11(前記カプラ筐体10とともに一体的に形成されている)は、幅の広いフラットなエッジ13を有しており、このエッジ13には、幅の広いフラットな環状部12が追加的に備え付けられている。追加的に設けられている前記環状部12は、金属製の構造物からなるカプラ筐体と比較して、繊維複合体のカプラ筐体10の前面11と、アダプターカプラ1に対して機械的に結合されている自動中心緩衝連結器におけるカプラヘッドの前面との間の、接触エリアを増大させている。これによって得られる拡大された接触エリアは、圧縮力が伝達される間に、カプラ筐体10の前面11に力束ベクトルが集中することを、防止または低減している。
【0054】
すでに上述したように、圧縮力は、本発明にかかるアダプターカプラ1内のフラットな前面11および追加的な環状部12を介して、アダプターカプラ1に対して機械的に結合されている自動中心緩衝連結器のカプラ筐体に伝達される。このため、本発明のアダプターカプラ1における有利な実施形態を示す図2は、金属から構成されている前面プレート2を示している。これは、繊維複合体のカプラ筐体10の前面11に対して、取り外し可能に結合されている。金属から構成されている前面プレート2は、アダプターカプラ1のカプラ筐体10に誘導される圧縮力が、広い表面にわたって効率的に分散されることを可能としており、これにより、カプラ筐体10の前面エリア内に力束ベクトルが集中することを防止している。
【0055】
特に図1からわかるように、アダプターカプラ1における繊維複合体のカプラ筐体10も、同様に、カプラ筐体10とともに一体的に構成されている、繊維複合体構造の前面11を備えることが可能である。前記前面11は、好ましくは、アダプターカプラ1に対して機械的に結合されている自動中心緩衝連結器のカップリンググロメットを受容するための、じょうご部14を備えている。カプラ筐体10の前面11に形成されているじょうご部14に隣接した位置には、繊維複合体構造の錐体部15が、図1のアダプターカプラ1におけるカプラ筐体10の前面11に、さらに形成されている。
【0056】
このように、アダプターカプラ1の前面11は、自動中心緩衝連結器のカプラヘッドの外形に適合した外形を有している。
【0057】
図3aの描写からわかるように、カプラ筐体10の前面11とは反対側のアダプターカプラ1の端部に、カップリングヨーク16が設けられている。このカップリングヨーク16は、前記ネジ式の連結器に対してアダプターカプラ1を取り外し可能に結合するために、ネジ式の連結器におけるドローフック100内に挿入することの可能なものである。この目的を達成するために、繊維複合体のカプラ筐体10は、凹部17を備えており、この凹部17は、前面11とは反対側のアダプターカプラ1の端部において、アダプターカプラ1における長手方向の軸の延長上にある。挿入部、たとえば金属製の挿入部として構成されているカップリングヨーク16は、凹部17内に収容されており、具体的には接着剤によって、カプラ筐体10の繊維複合材料に対して固定して結合されている。
【0058】
カップリングヨーク16を形成している挿入部、たとえば金属製の挿入部は、図5aにおいて個別的に示されている。この挿入部は、その断面がU字型となる幾何学形状を有しており、このために、凹部に挿入される挿入部品は、アダプターカプラ1における長手方向の軸に沿って延びる、溝18を形成している。図1および図2に示唆されているように、前記溝18内に、ネジ式の連結器におけるドローフック100を挿入することが可能である。
【0059】
図5aに示すカップリングヨーク16を形成する挿入部に代えて、全体的にCFPによって形成されている挿入部として構成されている、2つの支持構造物からカップリングヨークを形成することも、想定することが可能である。2つの支持構造物を互いに結合するためにピンを押しつける2つの端部に、金属製のブッシングを一体形成することも可能である。これらのピンは、2つの支持構造物の間において太い中心を有しているとともに、横方向において、前記支持構造物と同一平面内にある。衝撃保護物として、ハーフシェル形状の金属材料を、前面に向かって傾斜している側面に備え付ける(たとえば溶接する)ことも可能である。
【0060】
アダプターカプラ1の後端部に設けられているカップリングヨーク16は、さらに、ドローフックピン19を備えている。このドローフックピン19は、アダプターカプラ1における長手方向の軸に沿って延びている溝18を橋渡しするとともに、挿入部、たとえば金属製の挿入部として構成されているカップリングヨーク16における、突出部16.1、16.2を互いに結合するものである。図5bは、ドローフックピン19を個別的に描いている。これは、金属製の構造物から構成されていることが好ましく、また、挿入部、たとえば金属製の挿入部として構成されているカップリングヨーク16に対して、固定して結合することが可能なものである。
【0061】
逆にいえば、これらの図に示すアダプターカプラ1に対して、一方においてドローフックピン19が、また、他方において、挿入部、たとえば金属製の挿入部として構成されているカップリングヨーク16が、それぞれ独立した部品として構成されている。
【0062】
アダプターカプラ1の後端部に設けられているカップリングヨーク16によって、および、それにより結合されているドローフックピン19によって、アダプターカプラ1の動作の際に生じる引張力および圧縮力が、ネジ式の連結器におけるドローフック100から、繊維複合体のカプラ筐体10に誘導される。したがって、ネジ式の連結器におけるドローフック100は、アダプターカプラ1の後端部に設けられている溝18内に挿入されている。繊維複合体のカプラ筐体10に荷重が誘導されたときに大きなピークを有する力が局所的にかかるのを防止するために、挿入部、たとえば金属製の挿入部として構成されているカップリングヨーク16の突出部16.1、16.2が、比較的に広い幅を有しているとともに、カプラ筐体10の繊維複合材料に対して強固に平らに接着されている。
【0063】
この場合には、繊維複合体のカプラ筐体10の後端部に設けられている凹部17は、挿入部、たとえば金属製の挿入部として構成されているカップリングヨーク16と、カプラ筐体10の繊維複合材料との間において伝達される、可能性のある最も連続的な力束ベクトルの進行を確保するために、相応するように丸みのある幾何学形状を呈していることが好ましい。
【0064】
挿入部、たとえば金属製の挿入部として構成されているカップリングヨーク16は、上述したように、突出部16.1、16.2の表面を介して、カプラ筐体10の繊維複合材料に対して、強固に結合されている(具体的にいえば、接着されている)。この強固な結合に加えて、図示されている本発明のアダプターカプラ1の実施形態は、さらに、確実な結合を提供している。具体的にいえば、挿入部、たとえば金属製の挿入部として構成されているカップリングヨーク16における2つの突出部16.1、16.2のそれぞれの外表面上に、複数のスリーブ状部20が形成されている(または設けられている)(図5aを参照)。これらのスリーブ状部20は、それぞれ、繊維複合体のカプラ筐体10に設けられた水平方向のドリル孔21のそれぞれに、確実に受け入れられている(図3aを参照)。
【0065】
上述したドローフックピン19は、挿入部、たとえば金属製の挿入部として構成されているカップリングヨーク16における、スリーブ状部20を介して延びている。ドローフックピン19における個々の端部は、補強部22およびナットのそれぞれによって、相応するように固定されている。これにより、水平方向のドリル孔21、および、この水平方向のドリル孔21内に収容されているカップリングヨーク16におけるスリーブ状部20のそれぞれから、ドローフックピン19が抜け落ちてしまうことを防止している。
【0066】
カップリングロック5における鉛直方向のメインピン8は、カプラ筐体10に対するコアピース6の回転を可能とするものであり、図6bに個別に示されている。このメインピン8は、繊維複合体のカプラ筐体10に対して、類似の手法によって結合されている。具体的には、図面に示されている本発明のアダプターカプラ1における好ましい実施形態に設けられているスリーブ状部23は、好ましくは金属製の構造物であり、この部材23を介して、カップリングロック5における鉛直方向のメインピン8がガイドされている。また、この部材23は、繊維複合体のカプラ筐体10において、鉛直方向のドリル孔24内に受け入れられている。スリーブ状部23は、好ましくは挿入部、たとえば金属製の挿入部として構成されており、図6aに個別に示されている。
【0067】
図6aおよび図3aは、これらを統合して見れば、カプラ筐体10に設けられているとともに、メインピン8の長手方向において延びている、ドリル孔24における周辺の領域が、好ましくは、厚肉部26として構成されている。このために、スリーブ状部23は、前記厚肉部26を押さえつけるための、外側に突き出ている環状部27を有している。
【0068】
ドローフックピン19およびメインピン8を収容するための、スリーブ状部20および23を使用することによって、メインピン8およびドローフックピン19のそれぞれから繊維複合体のカプラ筐体10に対して伝達される力が、繊維複合材料における可能なかぎりの最も広い表面エリアにわたって、誘導される。このように、力は、可能なかぎりの最も広い表面エリアにわたって、繊維複合材料内を誘導されるために、特に、力の印加を受けるポイントにおいて力束ベクトルが集中することが防止される。
【0069】
この効果は、好ましくは、既に示唆しているように、繊維複合体のカプラ筐体10に設けられているドリル孔21、24における周辺の領域が、相応するように補強されているという点において、補強される。カプラ筐体10に設けられているドリル孔21、24の周辺の領域における、これらの厚くなっている部分25、26は、好ましくは、力の印加を受けるポイントに対して、対称的に設けられている。
【0070】
図1および図2からわかるように、繊維複合体のカプラ筐体10は、丸みを帯びてはいるが、金属製のカプラ筐体10に適合する一体的な形状を有している。この手法では、本発明のアダプターカプラ1における幾何学的なサイズは、アダプターカプラ1の使用に影響するスペース的な要請からはみ出さないように、実質的に、金属製の従来のアダプターカプラのサイズと一致している。繊維複合体のカプラ筐体10のための丸みを帯びている形状は、鋭いエッジを有する屈曲部、ひだなどの部分が形成されるのを防止するように機能する。これにより、繊維複合体のカプラ筐体10を形成する際に、予測される力束ベクトルに沿って繊維を配置することが可能となる。そして、これにより、急激な鋭いエッジを有する方向変化を回避することが可能となる。このような方向変化は、繊維のノッチング効果および構造的な破損を招来する。
【0071】
特別な構成では、繊維複合体のカプラ筐体10内の繊維を、あらかじめ計算されている力束ベクトルに沿って配置している。これにより、前記の繊維は、これらの受ける力に対抗することが可能となる。事前に計算されている力束ベクトルに沿って繊維を配置することにより、3次元的に繊維を方向付けることが可能となる。このため、カプラ筐体10の壁を層状に構成するとともに、各層における最適化された繊維の方向付けを実現することが好ましい。このようにすることにより、予測される荷重に適合されている、アダプターカプラ1のカプラ筐体10における特性を維持するように設計された、特定の繊維構造が実現される。この場合には、準等方的な繊維構造、たとえば、引張方向および圧縮方向において、同一の大きさの繊維成分を有する繊維構造などを選択することが好ましい。
【0072】
繊維複合体のカプラ筐体10の設計においては、連続繊維の形状を有する炭素繊維を使用することが好ましい。いわゆる前駆体が、このような連続繊維を製造するために使用される。すなわち、これは、炭素含有率の高いポリマーに端を発する。このポリマーは、比較的に容易に連続繊維を形成するように紡ぐことの可能なものであり、また、その後の熱分解ステップにおいて、炭素繊維に変換される。一般的にいえば、炭素繊維は、連続的な平行繊維から構成されており、これは、技術用語では、「ロービング(rovings)」とも称されている。
【0073】
繊維複合材料から構成されるカプラ筐体10を製造するためには、原理的には、さまざまな異なるプロセスを想定することが可能である。しかしながら、カプラ筐体10を製造するために特に適しているプロセスは、いわゆるテーラード・ファイバー・プレースメント(TFP)法である。この方法では、繊維は、固定縫いされており、これにより、たとえばガラス繊維または炭素繊維の織物材料などの基質が平坦化されている。このような固定については、さまざまな異なる縫い糸材料によって達成することが可能である。
【0074】
詳細にいえば、繊維複合体のカプラ筐体10の製造では、計算された力束ベクトルに応じた、あらかじめ計算された経路に沿って、炭素繊維をニア・ネット・シェイプ構造に配置するために、TFP法を使用することが好ましい。しかしながら、繊維複合体から構成されているカプラ筐体10は、金属から形成されているカプラ筐体10の形状に類似させられているために、比較的に複雑な3次元形状を呈している。このため、TFPプロセスであっても、特にカプラ筐体10の前方および後方のエリアにおいては、比較的にきつい曲率半径をもって配置される連続的な炭素繊維を有することを、回避することはできない。曲率半径がきつい場合には、ロービングは、湾曲している領域において、上方に傾いたり盛り上がったりしやすくなる。配置されている経路における内側の湾曲部では、外側の湾曲部に向かって、フィラメントが崩れるまたは膨張することを余儀なくされることになる可能性がある。しかしながら、強化用繊維の剛性は、フィラメントの引張および圧縮強さに対する、長手方向における何らの相殺(これは、構造強度の劣化を招来することになる)も許さない。
【0075】
したがって、繊維複合体のカプラ筐体10については、うねりのある本体として形成することが好ましい。この場合、連続的な炭素繊維は、ループ状に配される。本発明のアダプターカプラ1における繊維複合体のカプラ筐体10に対しては直接的に印加されないけれども、むしろ比較的に大きな挿入部、たとえば、金属製の挿入部16、20、23にわたって力が印加されることによって、これは、広いエリア(力が、十分な数の耐荷重性をもつ繊維に向けて、誘導され、かつ、常に迂回されるようなエリア)にわたって荷重が分散されることを、効果的に防止する。
【0076】
本発明は、図面を参照しながら上述した、アダプターカプラ1の実施形態に限られるわけではない。したがって、たとえば、繊維複合体またはハイブリッド構造のカプラ筐体10に加えて、アダプターカプラ1における別の部材を実現することも、想定することが可能である。たとえば、カプラ筐体10の前面11に、同様に繊維複合体構造を有するグリッパー30を設けることも可能であり、かつ、これを、繊維複合体のカプラ筐体10とともに一体的に形成することも可能である。
【0077】
他方において、カップリングロックのカップリンググロメット7を、ハイブリッド構造として構成することも、想定することが可能である。この場合、力を受けるカップリンググロメット7のエリアは、挿入部、たとえば金属製の挿入部として構成される。一方、繊維複合体は、残りのエリアのために用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる型式の連結器を適合させるためのアダプターカプラ(1)であって、
前記アダプターカプラ(1)を第1のカプラに対して取り外し可能に結合するための第1の結合メカニズム(5)と、
前記アダプターカプラ(1)を第2のカプラに対して取り外し可能に結合するための第2の結合メカニズム(16)と、
前記第1の結合メカニズム(5)を前記第2の結合メカニズム(16)に対して結合するためのカプラ筐体(10)と、を備え、
前記カプラ筐体(10)は、繊維複合材料、特に炭素繊維複合材料から形成されているとともに、金属製の構造物からなるカプラ筐体に設けられているアダプターカプラに適合されている形状を有しており、前記カプラ筐体(10)は、それが受ける応力荷重に耐えることのできる頑丈な繊維構造を有しており、
前記カプラ筐体(10)に引張力および圧縮力を誘導するために、前記第1の結合メカニズム(5)および/または第2の結合メカニズム(16)は、挿入部として設計されているとともに、前記カプラ筐体(10)内に収容されており、さらに、前記カプラ筐体(10)に対して固定して結合されていることを特徴とする、アダプターカプラ(1)。
【請求項2】
前記カプラ筐体(10)は、前記第1の結合メカニズム(5)および/または前記第2の結合メカニズム(16)を介して、前記カプラ筐体(10)内に誘導される圧縮荷重を迂回させる、特定の繊維構造を有しており、その少なくとも一部が引張荷重として、炭素繊維強化材料によって吸収される、請求項1に記載のアダプターカプラ。
【請求項3】
前記カプラ筐体(10)は、引張繊維エリアまたは圧縮繊維エリアを備えており、これらのエリアは、少なくとも部分的に、互いに空間的に分離されているとともに、前記炭素繊維複合材料において一体化されており、
前記第1および/または第2の結合メカニズム(5,16)を介して前記カプラ筐体(10)内に誘導される引張荷重は、前記引張繊維エリアによって実質的に吸収され、前記第1および/または第2の結合メカニズム(5,16)を介して前記カプラ筐体(10)内に誘導される圧縮荷重は、前記圧縮繊維エリアによって実質的に吸収される、請求項1または2に記載のアダプターカプラ。
【請求項4】
前記第1の結合メカニズム(5)が、中心緩衝連結器のカプラヘッドに対して前記アダプターカプラ(1)を取り外し可能に結合するためのカップリングロックを有しており、
第2の結合メカニズム(16)は、ネジ式の連結器またはAAR連結器のカプラヘッドに対して前記アダプターカプラ(1)を取り外し可能に結合するために、前記ネジ式の連結器またはAAR連結器のドローフック(100)に差込可能なカップリングヨークを有している、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアダプターカプラ(1)。
【請求項5】
前記第1の結合メカニズム(5)は、中心緩衝連結器のカプラヘッドに対して前記アダプターカプラ(1)を取り外し可能に結合するためのカップリングロックを有しており、
第2の結合メカニズム(16)は、ネジ式の連結器またはAAR連結器のカプラヘッドに対して前記アダプターカプラ(1)を取り外し可能に結合するために、前記ネジ式の連結器またはAAR連結器のドローフック(100)に差込可能なカップリングヨークを有しており、
前記圧縮繊維エリアは、前記炭素繊維複合材料において一体化されている圧縮弦材として構成されており、この圧縮弦材は、カプラ筐体(10)における列車側の前面から、圧縮荷重を受ける前記カップリングヨークのエリアに向かって延びており、
前記引張繊維エリアは、前記炭素繊維複合材料において一体化されている引張弦材として構成されており、この引張弦材は、前記カップリングロックのメインピンを、引張荷重を受ける前記カップリングヨークのエリアに結合している、請求項3に記載のアダプターカプラ(1)。
【請求項6】
前記カプラ筐体(10)は、その先細りの端部における水平な長手方向に向かって、円錐またはじょうご形状の外形を呈しているとともに、前記アダプターカプラ(1)における長手方向の軸に沿って延びる凹部(17)を有するように構成されており、
挿入部として構成されているカップリングヨーク(16)は、前記カプラ筐体における先細りの端部に設けられている前記凹部(17)内に受け入れられているとともに、前記カプラ筐体(10)に結合されている、請求項4または5に記載のアダプターカプラ(1)。
【請求項7】
挿入部として構成されている前記カップリングヨーク(16)は、前記カプラ筐体(10)に対して整列するように固定して結合されている、実質的に平行な2つの突出部(16.1、16.2)を備えており、
ドローフックピン(19)がさらに設けられており、
このドローフックピン(19)は、挿入部として構成されている前記カップリングヨーク(16)における前記2つの突出部(16.1、16.2)を、好ましくはそれらの自由端部分において、互いに結合しており、
前記ドローフックピン(19)は、ネジ式の連結器またはAAR連結器のドローフック(100)から、挿入部として構成されている前記カップリングヨーク(16)に向けて、引張力または圧縮力を伝達するように設計されている、請求項4〜6のいずれか1項に記載のアダプターカプラ(1)。
【請求項8】
前記ドローフックピン(19)は、挿入部として構成されている前記カップリングヨーク(16)とは別体として設けられているとともに、挿入部として構成されている前記カップリングヨーク(16)における2つの突出部(16.1、16.2)に設けられているドリル孔に、軸方向が揃うように受け入れられている、請求項7に記載のアダプターカプラ(1)。
【請求項9】
挿入部として構成されている前記カップリングヨーク(16)は、前記カップリングヨーク(16)における前記2つの突出部に設けられている前記ドリル孔に対して軸方向が揃うように配置された2つのスリーブ状部(20)を有しており、これらスリーブ状部(20)は、前記カプラ筐体(10)に設けられている水平方向のドリル孔(21)に受け入れられており、
前記ドローフックピン(19)は、一方の側において、前記カップリングヨーク(16)における前記2つのスリーブ状部(20)を通って延びているとともに、他方の側において、前記カプラ筐体(10)に設けられている前記水平方向のドリル孔(21)を通って延びている、請求項8に記載のアダプターカプラ(1)。
【請求項10】
前記カプラ筐体(10)を貫通して延びている前記ドリル孔(21)の周囲の領域は、厚肉部(25)として構成されている、請求項9に記載のアダプターカプラ(1)。
【請求項11】
前記カップリングロック(5)は、コアピース(6)を備えており、このコアピース(6)は、鉛直方向に延びているメインピン(8)によって前記カプラ筐体(10)に対して回動可能に構成されているカップリンググロメット(7)が備え付けられており、
前記メインピン(8)における上側および/または下側の端部は、挿入部として構成されているスリーブ状部(23)内にそれぞれ取り付けられており、
挿入部として構成されている前記スリーブ状部(23)は、前記カプラ筐体(10)に設けられているとともに前記メインピンの長手方向に延びるドリル孔(24)に配置されており、さらに、前記カプラ筐体(10)に対して固定して結合されている、請求項4〜10のいずれか1項に記載のアダプターカプラ(1)。
【請求項12】
前記カプラ筐体(10)に設けられ、前記メインピン(8)の長手方向に延びる前記ドリル孔(24)の周囲の領域は、厚肉部(26)として構成されており、
前記スリーブ状部(23)は、前記厚肉部(26)を押さえつけるために、半径方向外側に突き出ている環状部(27)を有している、請求項11に記載のアダプターカプラ(1)。
【請求項13】
前記カプラ筐体(10)は、第1の結合メカニズム(5)側および/または第2の結合メカニズム(16)側に前面(11)を有し、前記前面(11)は、幅の広いフラットなエッジ(13)、およびこのエッジ(13)にさらに備え付けられている環状部(12)を有している、請求項1〜12のいずれか1項に記載のアダプターカプラ(1)。
【請求項14】
前面プレート(2)、特に金属から構成されている前面プレートをさらに備えており、
この前面プレート(2)は、前記カプラ筐体(10)の前面(11)に取り外し可能に結合されている、請求項13に記載のアダプターカプラ(1)。
【請求項15】
前記カプラ筐体(10)は、繊維複合材料から構成されているグリッパー(30)を備えており、このグリッパー(30)は、前記カプラ筐体(10)の前記前面(11)に固定して結合されているか、または、前記カプラ筐体(10)の前記前面(11)に形成されている、請求項13または14に記載のアダプターカプラ(1)。
【請求項16】
前記カプラ筐体(10)の前面(11)には、自動中心緩衝連結器のカップリンググロメットを受け入れるためのじょうご部(14)が設けられているとともに、前記じょうご部(14)から少し離れた位置に、繊維複合材料により構成されている錐体部(15)が設けられている、請求項13〜15のいずれか1項に記載のアダプターカプラ(1)。
【請求項17】
前記カプラ筐体(10)は、少なくとも一部が、うねった形状を有している、請求項1〜16のいずれか1項に記載のアダプターカプラ(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−1056(P2011−1056A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136281(P2010−136281)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(506294244)ボイス パテント ゲーエムベーハー (57)
【氏名又は名称原語表記】Voith Patent GmbH
【Fターム(参考)】