説明

異収縮紡績糸

【課題】衣料用途においては腰があって柔らかく、ボアー用途、マイヤー毛布用途においてはパイルでの刺し毛のヘタリを防ぎ、生地の硬化を生じない紡績糸を提供する。
【解決手段】アクリル系繊維からなる収縮性の異なる2種以上の収縮繊維と、非収縮繊維とからなる混紡紡績糸であって、収縮繊維と非収縮繊維とが収縮繊維40〜90質量%、非収縮繊維60〜10質量%の構成比率で、かつ収縮繊維中の高収縮繊維が25質量%以上の混紡率で、綿状或いはスライバー状にて混合され、紡績されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系繊維からなる収縮繊維と非収縮繊維からなる異収縮紡績糸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、収縮性の異なる繊維からなる異収縮紡績糸は、合成繊維の収縮繊維と、天然繊維或いは合成繊維の非収縮繊維を、原綿の段階で混合し、ローラーカードでスライバーとし、紡績して作成されるか、収縮繊維、非収縮繊維それぞれのスライバーの段階でギルで混合し、紡績して作成され、一般的には収縮繊維の混紡率は30〜40質量%である。かかる異収縮紡績糸は、衣料用途、ボアー用途、マイヤー毛布用途に用いられている。
【0003】
近年、消費者需要の多様化により、従来の異収縮紡績糸では得られない腰があって柔らかい糸、膨らみ感の強い糸等が求められ、従来の異収縮紡績糸における収縮繊維の混紡率の変更も対応策の一つとして考えられる。
【0004】
しかしながら、単純に収縮繊維の混紡率を高めると、収縮させた後の衣料製品の風合いが硬くなり、またボアー用途、マイヤー毛布用途では、その製造工程で、パイル繊維のサバキ加工による分繊、ポリッシャー加工による脱捲縮が行われるが、単純に収縮繊維の混紡率を高めると、収縮させた後の糸が硬く、編み立て不良、サバキ加工、ポリッシャー加工が困難になる等の問題が生ずる。例えば、収縮繊維と非収縮繊維の組み合わせでは、特許文献1には、収縮繊維と非収縮繊維とからなる紡績糸を染色して収縮させた後、延伸糸に弾性を付与することが示されているが、この方法は、高弾性紡績糸の製造方法であり、収縮繊維の構成が異なるものである。
【0005】
【特許文献1】特開昭59−199832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来の異収縮紡績糸では得られない、衣料用途においては腰があって柔らかく、ボアー用途、マイヤー毛布用途においてはパイルでの刺し毛のヘタリを防ぎ、生地の硬化を生じない糸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は、アクリル系繊維からなる収縮性の異なる2種以上の収縮繊維と、非収縮繊維とからなる混紡紡績糸であって、収縮繊維と非収縮繊維とが収縮繊維40〜90質量%、非収縮繊維60〜10質量%の構成比率で、かつ収縮繊維中の高収縮繊維が25質量%以上の混紡率で、原綿或いはスライバー(トップを含む)の段階にて混合され、紡績されてなる異収縮紡績糸、にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、紡績糸の繊維構成により、紡績糸を任意の繊維構造体とした後、熱水等により紡績糸中の収縮繊維を収縮させたときに、糸に3層以上の多層の糸構造を形成させることができ、柔軟で膨らみ感があり、腰が強いものとなる。また、本発明の異収縮紡績糸は、柔軟で膨らみ感があり、腰が強いうえに、収縮繊維が収縮したときに、立毛製品のパイルの分繊性、立毛性を極めて良好なるものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、アクリル系繊維からなる収縮性の異なる2種以上の収縮繊維は、それぞれが軸収縮、捲縮発現により収縮する繊維であり、それぞれの収縮繊維は収縮率で10%以上の収縮性を有しながら、収縮レベルの異なる収縮性を有するものであり、高収縮繊維とその下位の低収縮繊維との間の収縮レベルの差は収縮率で5%以上あることが好ましい。収縮繊維間の収縮率差が5%未満では、糸の形態で収縮させたときに意匠効果に乏しいものとなる。
【0010】
アクリル系繊維からなる収縮繊維としては、市販のアクリル系収縮繊維を用いることができ、アクリル系繊維からなる収縮繊維としては、例えば、三菱レイヨン社製のV37BHH3.3VCL(収縮率23%)、V85BSH3.3TVCM(収縮率35%)等が挙げられ、またストレッチブレーキングマシンを用いて繊維トウを牽切して収縮繊維を作成する場合は、三菱レイヨン社製H815BRE2.2T107KTEXを牽切することにより収縮繊維スライバー(収縮率18〜22%)を得ることができる。
【0011】
本発明で用いる収縮繊維において、収縮繊維を構成するアクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリルを主要構成成分とするものであり、通常のアクリル系繊維の製造に用いられるアクリロニトリル系重合体或いは本発明で用いられる他のアクリル系繊維の製造に用いられるアクリロニトリル系重合体と同様のものであり、特に限定されない。用いられるアクリロニトリル系重合体には、少なくとも50質量%のアクリロニトリル単位を含有していることが必要であり、これによりアクリル系繊維本来の特性を発揮するすることができる。
【0012】
アクリロニトリル系重合体において、アクリロニトリルと共重合可能なモノマーとしては、特にに限定はなく、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等に代表されるアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル等に代表されるメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、またp−スルホフェニルメタリルエーテル、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2メチルプロパンスルホン酸及びこれらのアルカリ塩等が挙げられ、これらは単独で或いは2種以上組み合わせで用いられる。
【0013】
収縮繊維は、短繊維がランダムな方向に向いて集合した或いはカーディングにより短繊維がほぼ一方向に向いて展開している原綿の状態で用いてもよいし、原綿或いは短繊維がほぼ一方向に緩く紐状に伸びたスライバーの状態で用いてもよい。また、レギュラー繊維の製造方法により得た繊維トウをストレッチブレーキングマシンを用いて牽切し、原綿の製造工程を経ることなく、スライバーを製造する際、繊維には収縮性が付与されることから、繊維トウをストレッチブレーキングマシンを用いて牽切した収縮繊維スライバーを用いてもよい。収縮レベルの異なる収縮性は牽切条件により任意に設定される。
【0014】
本発明において、非収縮繊維は、収縮率が2%未満の実質的に収縮性を有しない繊維であり、収縮繊維と同様に、原綿或いはスライバーの状態で用いられる。非収縮繊維としては、ウール、木綿、麻等の天然繊維、レギュラーアクリル繊維である非収縮性のアクリル繊維が挙げられ、天然繊維は原綿、トップ或いはスライバーの状態で用いられ、また非収縮性のアクリル繊維は、原綿或いはスライバーの状態で用いられる。また非収縮性のアクリル繊維スライバーは、レギュラー繊維トウをストレッチブレーキングマシンを用いて牽切したスライバーを弛緩処理して非収縮化した非収縮繊維スライバーであってもよい。また、非収縮繊維のアクリル繊維は扁平断面等の異形断面繊維であってもよい。
【0015】
本発明の紡績糸は、アクリル系繊維からなる収縮性の異なる2種以上の収縮繊維と、非収縮繊維とからなり、収縮繊維40〜90質量%、非収縮繊維60〜10質量%の比率で構成され、かつ収縮繊維中の高収縮繊維が25質量%以上、好ましくは30質量%以上の混紡率で、混合され、紡績されてなる。高収縮繊維の混紡率が25質量%未満では、収縮力が不十分で、収縮処理後の形態安定性に欠ける。
【0016】
2種以上の収縮繊維と非収縮繊維との混合は、短繊維の集合形態によって、綿状或いはスライバー状にて混合される。それぞれの混合手段については特に限定はなく、原綿であれば紡績投入段階に計量混綿した後、開綿機を経てカード機(短綿紡ではフラットカード、梳毛紡ではローラーカードの使用が一般的である)へ供給され混綿スライバーが形成される。単独スライバーであればギルまたは練条機にて混合される。
【0017】
本発明の紡績糸は、衣料用途、ボアー用途、マイヤー毛布用途等の任意の繊維構造体とした後、熱水や熱スチーム等により紡績糸中の収縮繊維を収縮させたときに、糸に3層以上の多層の糸構造が形成される。紡績糸中の収縮繊維を収縮させための処理は、独立した処理であってもよいし、染色加工や仕上加工における処理で兼用してもよく、例えば染色加工時の沸騰染色によって行ってもよい。
【0018】
本発明の紡績糸の製造方法は、アクリル系繊維からなる収縮性の異なる2種以上の収縮繊維と、非収縮繊維とを、収縮繊維と非収縮繊維とを収縮繊維40〜90質量%、非収縮繊維60〜10質量%の構成比率で、かつ高収縮繊維を25質量%以上の混紡率で、綿状或いはスライバー状の段階で混合して、紡績することにある。
【0019】
本発明の紡績糸の製造の際に用いられる紡績方式には、原綿或いはスライバーを用いる任意の紡績方式が用いられ、例えば綿紡績、2“紡績、梳毛紡績、オープンエンド紡績、3“紡績等が用いられ、綿、スライバー等の短繊維の集合体の形態に応じて用いる。また、紡績糸の使用用途に応じて、それぞれの紡績方式に合った単繊維繊度及び繊維長の綿、スライバー等を用いる。
【0020】
例えば、衣料用途、ボアー用途、マイヤー毛布用途に用いる紡績糸においては、梳毛紡績の場合は、収縮繊維には単繊維繊度が2.2〜5.6dtex、繊維長が76〜140mmのバリアブルカットの繊維長の短繊維を用い、非収縮繊維にはアクリル繊維のときは単繊維繊度が2.2〜5.6dtex、繊維長が76〜140mmのバリアブルカットの繊維長の短繊維、天然繊維は通常の繊度のものを用いる。さらに、非収縮繊維にはアクリル繊維のとき単繊維繊度が5.6〜40dtexの繊維を併用することもできる。また、梳毛紡績の場合は、撚り係数K(T=K√M(T:撚り数、M:メートル番手))は、綿紡95〜110、梳毛紡60〜75の範囲とすることが好ましい。
【0021】
また、衣料用途に用いる紡績糸において、綿紡績の場合は、収縮繊維には単繊維繊度0.5〜3.3dtex、繊維長38〜51mmの定長カットの短繊維を用い、短綿紡績の場合は、収縮繊維には単繊維繊度0.5〜3.3dtex、繊維長38〜51mmの定長カットの短繊維を用いる。非収縮繊維にアクリル系または他の化学繊維を用いるときは、綿紡績の場合は、収縮繊維には単繊維繊度0.5〜3.3dtex、繊維長38〜51mmの定長カットの短繊維を用い、短綿紡績の場合は、収縮繊維には単繊維繊度0.5〜3.3dtex、繊維長38〜51mmの定長カットの短繊維を用いる。また、天然繊維はいずれも非収縮繊維であり、綿紡績の場合は、そのまま使用可能であるが、品質面の制約によりコーマ綿スライバーを用い、ウール等の獣毛繊維やシルク、麻等は使用する紡績機械の条件に合わせてカットして原綿での混綿に使用する必要があり、綿紡績の場合は40mm、短綿紡績の場合は50mm程度にカットして用いる。また、綿紡績、短綿紡績の場合の撚り係数(メートル式)は、80〜120の範囲とすることが好ましい。また、いずれの紡績方式でも、双糸加工の場合は単糸設計での撚り数の55〜70%の逆撚りを施すこともできる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0023】
(実施例1)
単繊維繊度3.3dtex、繊維長89〜127mm、収縮率38%のアクリル繊維(高収縮繊維)の短繊維からなる原綿30質量%、単繊維繊度2.2dtex、繊維長76〜102mm、収縮率23%のアクリル繊維(低収縮繊維)の短繊維からなる原綿30質量%、単繊維繊度2.2dtex、繊維長76〜102mmのアクリル繊維(非収縮繊維)の短繊維からなる原綿40質量%を原綿の段階で混合し、ローラーカードを経て通常の紡績工程を通し、逆撚りの双糸加工して、紡出番手2/36Nm、上撚り(S)230t/下撚り(Z)390t/mの紡績糸を作成した。得られた紡績糸を、カセ状でカチオン染料で糸染めし、コーンアップし、編地を編成した。編成時の加工性、製品性状の評価、総合評価を表1に示した。
【0024】
(実施例2)
単繊維繊度3.3dtex、繊維長89〜127mm、収縮率25%のアクリル繊維(高収縮繊維)の短繊維からなる原綿30質量%、単繊維繊度2.2dtex、繊維長76〜102mm、収縮率18%のアクリル繊維(低収縮繊維)の短繊維からなる原綿30質量%、単繊維繊度2.2dtex、繊維長76〜102mmのアクリル繊維(非収縮繊維A)の短繊維からなる原綿10質量%を原綿の段階で混合し、ローラーカード、ギルを通した後、ウール(非収縮繊維B)の64’Sのトップ30質量%をギルで混合した後通常の紡績工程を通し、紡出番手1/42Nm、撚り数453t/mの紡績糸を作成した。得られた紡績糸を、カセ状でカチオン染料で糸染めし、コーンアップし、編地を編成した。編成時の加工性、製品性状の評価、総合評価を表1に示した。
【0025】
(実施例3)
単繊維繊度3.3dtex、繊維長51mm、収縮率38%のアクリル繊維(高収縮繊維)の短繊維からなる原綿30質量%、単繊維繊度2.2dtex、繊維長51mm、収縮率18%のアクリル繊維(低収縮繊維)の短繊維からなる原綿30質量%、単繊維繊度1.0dtex、繊維長44mmのアクリル繊維(非収縮繊維)の短繊維からなる原綿40質量%を原綿の段階で混合し、ローラーカードを経て、通常の紡績工程を通し、紡出番手1/68Nm、撚り数750t/mの紡績糸を作成した。得られた紡績糸を、カセ状でカチオン染料で糸染めし、コーンアップし、編地を編成した。編成時の加工性、製品性状の評価、総合評価を表1に示した。
【0026】
(比較例1)
単繊維繊度3.3dtex、繊維長89〜127mm、収縮率38%のアクリル繊維(高収縮繊維)の短繊維からなる原綿40質量%、単繊維繊度2.2dtex、繊維長76〜102mmのアクリル繊維(非収縮繊維)の短繊維からなる原綿60質量%を原綿の段階で混合し、ローラーカードを経て、通常の紡績工程を通し、実施例1と同様の逆撚りの双糸加工して、紡出番手2/36Nm、撚り数230t/390t/mの紡績糸を作成した。得られた紡績糸を、実施例1と同様に糸染めし、編地を編成した。編成時の加工性、製品性状の評価、総合評価を表1に示した。
【0027】
(比較例2)
単繊維繊度3.3dtex、繊維長89〜127mm、収縮率38%のアクリル繊維(高収縮繊維)の短繊維からなる原綿60質量%、単繊維繊度2.2dtex、繊維長76〜102mmのアクリル繊維(非収縮繊維)の短繊維からなる原綿40質量%を原綿の段階で混合し、ローラーカードを経て、通常の紡績工程を通し、実施例1と同様の逆撚りの双糸加工して、紡出番手2/36Nm、撚り数230t/390t/mの紡績糸を作成した。得られた紡績糸を、実施例1と同様に糸染めし、編地を編成しようとしたが、糸が硬く、編成時に編み傷が多発し、評価編地を得ることができなかった。
【0028】
【表1】

【0029】
(実施例4)
単繊維繊度3.3dtex、繊維長89〜127mm、収縮率38%のアクリル繊維(高収縮繊維)の短繊維からなる原綿40質量%、単繊維繊度2.2dtex、繊維長76〜102mm、収縮率23%のアクリル繊維(低収縮繊維)の短繊維からなる原綿30質量%、単繊維繊度11dtex、繊維長89〜127mmの扁平アクリル繊維(非収縮繊維A)の短繊維からなる原綿15質量%、単繊維繊度8dtex、繊維長89〜127mmのアクリル繊維(非収縮繊維B)の短繊維からなる原綿15質量%を原綿の段階で混合し、ローラーカードを経て通常の紡績工程を通し、実施例1と同様の逆撚りの双糸加工して、紡出番手2/32Nm、撚り数220t/360t/mの紡績糸を作成した。得られた紡績糸を、実施例1と同様にカチオン染料で糸染めし、ボアー生地を作成した。作成時の加工性、製品性状の評価、総合評価を表2に示した。
【0030】
(実施例5)
単繊維繊度3.3dtex、繊維長89〜127mm、収縮率38%のアクリル繊維(高収縮繊維)の短繊維からなる原綿40質量%、単繊維繊度3.3dtex、繊維長76〜102mm、収縮率25%のアクリル繊維(低収縮繊維)の短繊維からなる原綿30質量%、単繊維繊度27dtex、繊維長89〜127mmのアクリル繊維(非収縮繊維)の短繊維からなる原綿30質量%を原綿の段階で混合し、ローラーカードを経て通常の紡績工程を通し、実施例1と同様の逆撚りの双糸加工して、紡出番手2/32Nm、撚り数220t/360t/mの紡績糸を作成した。得られた紡績糸を、実施例1と同様にカチオン染料で糸染めし、ボアー生地を作成した。作成時の加工性、製品性状の評価、総合評価を表2に示した。
【0031】
(比較例3)
単繊維繊度3.3dtex、繊維長89〜127mm、収縮率38%のアクリル繊維(高収縮繊維)の短繊維からなる原綿70質量%、単繊維繊度27dtex、繊維長152mmの扁平アクリル繊維(非収縮繊維)の短繊維からなる原綿30質量%を原綿の段階で混合し、ローラーカードを経て通常の紡績工程を通し、実施例1と同様の逆撚りの双糸加工して、紡出番手2/32Nm、撚り数220t/360t/mの紡績糸を作成した。得られた紡績糸を、実施例1と同様にカチオン染料で糸染めし、ボアー生地を作成した。作成時の加工性、製品性状の評価、総合評価を表2に示した。
【0032】
【表2】

【0033】
(実施例6)
収縮繊維のうち高収縮繊維として、単繊維繊度2.2dtex、総繊度107ktexのアクリル繊維トウ(三菱レイヨン社製H815BRE2.2T107KTEX)を用い、ストレッチブレーキングマシン(ザイデル社製682型)にて牽切して収縮繊維スライバー(収縮率23%)を作成した。また収縮繊維のうち低収縮繊維として、単繊維繊度1.7dtex、総繊度107ktexのアクリル繊維トウ(三菱レイヨン社製H616BRE1.7T107KTEX)を用い、トウコンバーター(ザイデル社製682型)にて牽切して収縮繊維スライバー(収縮率14%)を作成した。この2種の収縮繊維スライバーとウールトップ(非収縮繊維B)をギル工程にて高収縮繊維30重量%/低収縮繊維30重量%/ウール40重量%になるよう混合し、以降通常の紡績工程を通し、実施例1と同様の逆撚りの双糸加工して、紡出番手22/40Nm、330t/440t/mの紡績糸を作成した。得られた紡績糸を、カセ状でカチオン染料で糸染めし、コーンアップし、横編地を編成した。編成時の加工性、製品性状の評価、総合評価を表3に示した。
【0034】
(実施例7)
収縮繊維のうち高収縮繊維として、実施例6で作成した収縮繊維スライバー(収縮率23%)を用い、また収縮繊維のうち低収縮繊維として、単繊維繊度2.2dtex、繊維長64〜127mmのアクリル繊維バリアブルカット綿(三菱レイヨン社製V81BMH2.2TVCM)をローラーカードにて作成した収縮繊維スライバー(収縮率14%)を用いた。この2種の収縮繊維スライバーとウールトップ(非収縮繊維B)をギル工程にて高収縮繊維30重量%/低収縮繊維30重量%/ウール40重量%になるよう混合し、以降通常の紡績工程を通し、実施例1と同様の逆撚りの双糸加工して、紡出番手22/40Nm、330t/440t/mの紡績糸を作成した。得られた紡績糸を、カセ状でカチオン染料で糸染めし、コーンアップし、横編地を編成した。編成時の加工性、製品性状の評価、総合評価を表3に示した。
【0035】
(比較例4)
収縮繊維として、単繊維繊度2.2dtex、繊維長64〜127mmのアクリル繊維バリアブルカット綿(三菱レイヨン社製V815BMB2.2TBCM)をローラーカードにて作成した収縮繊維スライバー(収縮率23%)を用い、この収縮繊維スライバーとウールトップ(非収縮繊維B)をギル工程にて収縮繊維70重量%/ウール30重量%になるよう混合し、以降通常の紡績工程を通し、実施例1と同様の逆撚りの双糸加工して、紡出番手22/40Nm、330t/440t/mの紡績糸を作成した。得られた紡績糸を、カセ状でカチオン染料で糸染めし、コーンアップし、横編地を編成した。編成時の加工性、製品性状の評価、総合評価を表3に示した。
【0036】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の混紡紡績糸は、収縮扁平繊維が収縮したときに糸が2層以上に多層化されることで、柔軟で膨らみ感を与え、腰が強いことから、衣料分野での新たな展開を可能とし、また立毛製品のパイルに用いるときには、収縮扁平繊維が収縮したときに、パイル部の根元にねじり解除によるばらけ易さを生じて、分繊性、脱捲縮性が良好であり、生地の硬化を防ぐことから、ボアー、マイヤー毛布のみならず、フェイクファー分野での用途展開を可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の紡績糸の沸騰染色後の側面概略図である。
【図2】本発明の紡績糸を用い、作成したマイヤー毛布のパイルの一部の拡大モデル図である。
【符号の説明】
【0039】
1 高収縮繊維
2 低収縮繊維
3 非収縮繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系繊維からなる収縮性の異なる2種以上の収縮繊維と、非収縮繊維とからなる混紡紡績糸であって、収縮繊維と非収縮繊維とが収縮繊維40〜90質量%、非収縮繊維60〜10質量%の構成比率で、かつ収縮繊維中の高収縮繊維が25質量%以上の混紡率で、原綿或いはスライバーの段階にて混合され、紡績されてなる異収縮紡績糸。
【請求項2】
スライバー状にて混合される収縮性の異なる2種以上の収縮繊維の少なくとも一方が、アクリル系繊維トウをストレッチブレーキングマシンを用いて牽切して収縮性を付与した収縮繊維スライバーであり、非収縮繊維が、天然繊維或いはアクリル系繊維からなる非収縮繊維スライバーである請求項1に記載の異収縮紡績糸。
【請求項3】
非収縮繊維スライバーが、天然繊維からなる非収縮繊維のトップ又はカードスライバー、或いはアクリル系繊維からなる非収縮繊維のカードスライバー又は牽切してなる収縮繊維スライバーを非収縮化した非収縮繊維スライバーである請求項2に記載の異収縮紡績糸。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−1589(P2010−1589A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162838(P2008−162838)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】