異常な僧帽弁の修復のための弁形成リング
僧帽弁閉鎖不全症(IMVI)における僧帽弁尖の間の癒合を再生するための、減少した前〜後寸法を有する再造形僧帽弁形成リング。このリングは、短軸に垂直な長軸を有するほぼ卵形状の本体を有し、これら両方の軸は、血流軸と直交している。前セクションは、前外側三角と後内側三角との間に存在し、他方、後セクションは、残りのリング本体を規定し、そして僧帽弁の後尖の同じ名前の3つのスキャロップに対応するP1、P2、およびP3セグメントに分けられる。このリング本体の前〜後寸法は、従来のリングから、例えば、心房平面図において、引き込まれたP3セグメントを提供することにより、減少されている。別な見方をすれば、P3セグメントの凸部は、P1セグメントの凸部ほどには顕著でない。さらに、このリング本体は、後セクションに、好ましくはP2セグメントおよびP3セグメント内に、下向きに反った部分を有し得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、米国特許法第120条に基づき、同時係属中の「Mitral Valve Annuloplasty Ring Having a Posterior Bow」と題する米国特許出願第10/192,516号(2002年7月8日出願)および同時係属中の「Annular Prosthesis for Mitral Valve」と題する米国特許出願第10/144,932号(2002年5月15日出願)に対する優先権を主張し、これらの同時係属中の出願は、米国特許法第119条に基づき、イタリア国特許出願第MI2001A 001012号(2001年5月17日出願)に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に、医療用デバイスに関し、具体的には、患者の心臓の僧帽弁輪を外科的に再構築するための弁形成リングおよび関連する手順に関する。より具体的には、本発明は、虚血性僧帽弁閉鎖不全症(IMVI)とともに見られるあらゆる機能異常と遭遇した病状、または機能性僧帽弁逆流をもたらす他の病状における異常な輪を矯正するように設計された僧帽弁弁形成リングおよび対応する技術に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
心臓の解剖学的構造において、左心房は、酸素付加した血液を肺静脈を通して肺から受容する。僧帽弁は、左心房を左心室から分離する。拡張期の間、洞房結節により引き起こされる収縮が心房を通って進行するにつれて、酸素付加された血液が僧帽弁を通って左心室に入る。この相において、上行大動脈につながる大動脈弁は閉じ、左心室が血液で満たされることが可能になる。静脈血の同様の流れは、右心房から三尖弁を通って右心室へと生じる。ひとたびそれらの心室が満たされると、それらは、収縮相の間収縮し、そして血液を心臓から外へポンプ輸送する。収縮期の間、僧帽弁は閉じ、大動脈弁は開き、従って、血液が左心房中へ逆流することを防ぎ、そして血液を大動脈中に、そしてそこから身体全体に送り出す。収縮期の間の左心室に関連する高い圧力に起因して、血液がこの系を通って流れ戻ることを防ぐための僧帽弁の適切な機能は、非常に重要である。
【0004】
健康な僧帽弁の種々の解剖学的構成要素が、図1に示される。僧帽弁輪MAは、左心室LAと左心房LVとの間の開口の周りを一周する線維リングを備える。ヒトの僧帽弁輪の平均断面積は、4〜10cm2である。僧帽弁は、後尖PLおよび前尖ALを有する二尖弁である。心内腱索CT(または単に「索」)は、これら2つの弁尖の自由端および基部からLV中に位置する一対の乳頭筋に延びる。これら2つの乳頭筋は、LVの前外側壁および後内側壁に沿って位置し、それ故に、それぞれ前外側乳頭筋APおよび後方内部乳頭筋PPと称される。
【0005】
左心室の通常の拡張および乳頭筋APおよびPPの下向きの変位は、心内腱索CTを引っ張り、このことは今度は上記弁尖を引っ張って開ける。心室が収縮するとき、乳頭筋は上向きに変位され、上記乳頭筋と上記輪との間の距離hは減少する。心内腱索が緩んだ状態になり、上記弁尖が一緒になるか、または「癒合」することを可能にする。図1に見られるように、弁尖は、正常に機能する心臓の実質的な表面領域に沿って癒合し、その弁尖の自由端が、左心室LVに向かって相互に曲がる。議論の目的のために、正常な、健康な心臓の僧帽弁輪MAは、僧帽弁MVを貫く平均的な血液流れの方向22に直交して規定される基準面20内に、一般に位置する。代表的な僧帽弁輪MAは、三次元的であり得るが、基準面20は、その輪の前側および後側の相対的位置を示している。
【0006】
心臓発作または心筋症を患う患者において、左心室の領域は、その収縮性および拡張性を失っている。左心室の拡張は、多くの場合、乳頭筋の下向きおよび外向きの変位を伴う。乳頭筋の位置の変化は、乳頭筋と僧帽弁尖との間の距離を増加させる。心内腱索は、その長さを顕著には変化させないので、上記弁尖を引っ張るかまたは「つなぎ止める」傾向がある。左心室の拡張の重篤な場合には、上記索のつなぎ止めは、その弁尖が癒合するのを防ぎ、僧帽弁逆流をもたらす。このタイプの逆流は、僧帽弁装置のいかなる疾患および損傷にも関与しないので、それは、多くの場合、「機能性」僧帽弁逆流と称される。左心室LVの拡張はまた、特発性拡張型心筋症または虚血性心筋症を有する患者、および他の病因(例えば、粘液腫性疾患、心内膜炎、先天的欠陥またはリウマチ性弁疾患)に由来する長年にわたる弁逆流を有する患者における、僧帽弁逆流を伴う症状である。
【0007】
図2に見られるように、左心室LVの拡張は、一般に、乳頭筋PM1およびPM2と僧帽弁輪MAとの間の距離h’を増加させる。乳頭筋PM1およびPM2と僧帽弁輪MAとの間の増加した距離h’は、今度は、心内腱索CTにおける張力を増加させ、そして基準面20の下の輪の後面の凹部を生成し得るが、しかしこの凹部は、h’を減少させるに十分に顕著ではない。その結果生じる索における張力の増加は、その弁尖が収縮期に一緒になる能力を低下させ、このことは僧帽弁閉鎖不全症につながり得る。
【0008】
図3a〜3cは、外科手術の間に露わにされるように左心房から、つまり心房平面図で、正常な僧帽弁および異常な僧帽弁を図示する。僧帽弁輪MAの前面は、「心臓骨格」の一部を形成し、そして左線維三角LTおよび右線維三角RTを含む。左三角LTおよび右三角RTは、前尖ALおよび後尖PLの接合点に示される。これらの接合点はまた、前外側三角および後内側三角または弁尖間の交連としても公知である。僧帽弁輪MAの後面は、前面とは対照的に、主に、心臓の外壁の筋組織からなる。後尖PLは、左三角LTから反時計回りに右三角RTまで、順にP1、P2およびP3として示される3つのスキャロップに分けられる。図3aは、左心房から見た僧帽弁および正常な僧帽弁の乳頭筋を示す。図3bは、僧帽装置の幾何構造に及ぼす左心室LVの後内側壁の梗塞の効果を示し、それは非対称的な拡張を引き起こす傾向がある。梗塞は、後内側壁を拡張させ、後内側乳頭筋PPを外側へ移動させる。この後内側乳頭筋PPに結合される心内腱索CTは、後尖PLおよび前尖ALの自由縁を、癒合の自然線から離して引っ張る。この後尖PLのP2〜P3領域に沿った尖弁の間に空隙が生成される。P2〜P3領域における逆流ジェットに関連する左心室LVの非対称な拡張は、虚血性僧帽弁逆流を有する患者において非常に一般的である。対照的に、図3cは、LVの対称的な拡張の場合の機能性僧帽弁逆流を図示する。両方の乳頭筋APおよびPPは、外側に移動し、後尖PL全体を外側に伸張し、そして引っ張る。LVの対称的な拡張は、僧帽弁輪の後セグメントの拡張およびそのPLのP2領域に沿った中央逆流ジェットを伴う。LVの対称的な拡張は、心筋症を有する患者において非常に一般的である。
【0009】
僧帽弁閉鎖不全症は、僧帽弁を修復するかまたは置き換えることにより、一般に処置される。僧帽弁修復について最も広く受け入れられた技術は、弁形成による僧帽弁輪の再造形である。この弁形成の目的は、2つある。輪状領域をその正常なサイズへ減少させること、および健康な僧帽弁輪の正常な幾何構造を再確立するためにその輪を作り直すことである。機能性僧帽弁逆流の場合には、不全の根本原因は、LVの拡張およびそれに関連する乳頭筋の変位である。弁形成の目的は、LVの正常なサイズを超えてその断面積を減少させることにより、LVの拡張を補償することである。小型化された輪は、2つの弁尖を一緒に近づけ、これらの弁尖の癒合を再確立する。
【0010】
市販されている弁形成外科手術のための補綴具は、ほぼ2タイプあり、何らかの混成体もある。それらは、種々の材料から作製され、輪の周縁の「直線的な」減少を可能にする可撓性輪状補綴具、ならびに種々の材料から作製され、輪の周縁の「直線的な」減少およびその輪の生理学的な収縮形状を再確立するような幾何学的再造形を可能にする剛性もしくは半剛性輪状補綴具である。さらに、半剛性補綴具は、その補綴具が心臓段階(cardiac stage)の間の輪の変形に従うことを可能にするために、何らかの変形を許容する。すべての剛性補綴具および半剛性補綴具は、インゲン豆様またはつながったD形状を有し、第1近似において直線的であり、前弁尖に対応して縫合されるリングの前半分、および後弁尖に対応して縫合される、湾曲したリングの後半分を有する。問題となっているこの輪状補綴具の形状は、心室の収縮の間、そしてそれ故に、弁が閉じる段階での弁輪の形態を再現する。現在市販されているすべてのモデルにおいて、短軸と長軸との比は、約3:4である。なぜなら、それが、正常な解剖学的比を再現するからである。
【0011】
「小型化」技術は、例えば、短軸/長軸サイズ比をなお約3:4に維持したまま、通常の28mm輪に対して26mm輪を選択することを必要とする。サイズ命名法は、上記長軸の幅に言及している。この小型化技術を用いて良好な結果が報告されているが、虚血性僧帽弁閉鎖不全症を矯正するためのこの手術の信頼性および持続性は、同じ技術を用いた僧帽弁閉鎖不全症の他の原因に対するほどには良好ではない。このことは、大体、現在利用可能な輪を用いる再造形弁形成が、ただ1つの異常を矯正し、そして虚血性僧帽弁閉鎖不全症において見られる種々の他の機能異常は、効果的には矯正され得ないという事実に起因する。
【0012】
弁形成リングは、多年にわたって種々の形状および形態で開発されてきており、僧帽弁逆流および弁の機能を低下させる他の状態を矯正している。例えば、Carpentierらは、特許文献1において、心臓弁のための2つの半剛性支持体を開示し、そのうちの一方は、閉じており(すなわち、D形状)、そしてもう一方は開いている(すなわち、C形状)。この閉じた形態において、このリングは、前後面のまわりでほぼ対称的であり、凸状の後側およびほぼ直線状の前側を有する。特許文献2、特許文献3および特許文献4はすべて、その前側でわずかに上向きに曲がった閉鎖型の弁形成リングを開示する。僧帽弁輪MAの前面は、線維状であり、従って、相対的に非可撓性(少なくとも、後面と比較して)であるので、各リングの前側における上向きの曲線は、上記リングを僧帽弁輪の解剖学的輪郭により密接に適合させる。この三次元的形態は、その輪の過度の変形を低減させる。
【0013】
一般に、従来の弁形成リングは、僧帽弁輪MAの元の形態を再生することを意図されている。図2に見られるような状態を矯正する場合、この弁形成リングを上記輪の後面に連結する縫合糸に高い応力が生成される。なぜなら、「過剰矯正リング」、すなわち、正常なサイズよりも1〜2サイズ小さいリングは、その輪を内側および上向きに「引っ張る」からである。この応力は、時には、その輪からのリングの披裂または分離を生じる。なぜなら、その縫合糸は、その組織を通して引っ張るからである。
【0014】
大動脈輪の矯正は、僧帽弁輪とは非常に異なるリングを必要とすることが、ここで注記されるべきである。例えば、特許文献5および特許文献6は、洞様毛細血管弁形成リング、すなわちいわゆる「スキャロップ型」弁形成リングを開示し、その弁形成リングは、3つの心臓弁膜尖大動脈輪の起伏のある形状に従う。このようなリングは、僧帽弁の欠損を矯正するためには適していない。
【特許文献1】米国特許第4,055,861号明細書
【特許文献2】米国特許第5,104,407号明細書
【特許文献3】米国特許第5,201,880号明細書
【特許文献4】米国特許第5,607,471号明細書
【特許文献5】米国特許第5,258,021号明細書
【特許文献6】米国特許第6,231,602号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
僧帽弁閉鎖不全症、うっ血性心不全、および僧帽弁逆流の処置における良好な結果が、上記の方法および装置の予備的な適用において得られているが、これらの結果は顕著に改良され得ると考えられる。具体的には、虚血性僧帽弁閉鎖不全症に存在する機能不全のすべて、すなわち、その輪の拡張、その輪の非対称的な変形、および後乳頭筋とその輪との間の距離の増加を考慮に入れた僧帽弁形成リングを製造することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の要旨)
本発明者らは、特定の病理学的状態において、僧帽弁の再構築の手術をより効果的にするために、例えば、片方または両方の弁尖の解剖学的または機能的な組織不全の場合には、弁尖を互いにより近づけるために、短軸/長軸のサイズ比を改変する必要が存在することに気づいた。3:4という従来受け入れられている比に対応しない解剖学的バリエーションが、自然状態で頻繁であることもまた観察された。
【0017】
本発明によれば、より良好な僧帽弁輪修復結果が、補綴具の最大幅セクションを規定する第1の横断面上で互いに結合されたリングの後半分およびリングの前半分から構成される輪状補綴具によって達成された。この輪状補綴具は、上記第1の面に直交し、上記結合物に対して等距離にある第2の面に沿って測定された場合の、このリングの前半分とリングの後半分との距離と、その補綴具の上記最大幅との比が3:4未満であることを特徴とする。
【0018】
1つの局面では、本発明は、僧帽弁輪の後面が下向きに異常に垂れ下がるような病理学的状態を有する僧帽弁輪における移植のための弁形成リングを提供する。この弁形成リングは、前セクションおよび後セクションを有する丸いリング本体を備える。このリング本体は、中央流れ軸の周りに配置され、この流れ軸は、上向きの方向および下向きの方向を規定し、この下向きの方向は、僧帽弁輪を通る血流の方向に対応する。後セクションで、このリング本体は、この中央流れ軸に直交する面から下向きに曲がる。
【0019】
このリング本体は、その1つの端部から最低点へ約2〜15mmの間、下向きに曲がり得、そして望ましくは、その1つの端部から最低点へ約4〜8mmの間、下向きに曲がり得る。このリング本体の弓状部は、後セクションの中心にあってもなくてもよく、そして虚血性僧帽弁閉鎖不全症の特定の場合には、それは上記リングのP3セグメントの中心にある。好ましくは、このリング本体は、リング本体中の弓状部が手作業で作り直され得るように、可鍛性の材料から作製される。望ましくは、リング本体は、各心拍サイクル全体にわたって心臓の筋肉により付与される応力に対向してその後部の弓状部を保持する半剛性な材料から作製される。このリング本体は、後セクションにおいてを除き、実質的に平面状であり得るか、またはリング本体の前セクションは、その1つの端部からその最低点へ上向きに曲がり得る。
【0020】
流れ軸に沿って見た場合の平面図おいて、このリング本体は、好ましくは、短軸と直交する長軸を有する卵形を規定し、上記短軸は、前セクションおよひ後セクションの両方を二分する。さらに、後セクションにおける弓状部は、リング本体の周りに長軸から、約0〜45°の間の、より好ましくは約30°の角度θで間隔を空けた、短軸に関して対称的な位置から始まり得る。
【0021】
上記リング本体は、後セクション上の下向きの弓状部のいずれかの側に2つの上向きの弓状部をさらに備え、ここで下向きの弓状部は、約2〜15mmの間であり得る。1つの実施形態では、そのリング本体は、同心円上に配置される複数のリング要素を備える。各リング要素の間にポリマーの細片が提供され得る。必要に応じて、このリング要素は、流れ軸に直交する寸法においてよりも流れ軸寸法において実質的により大きい高さを有するバンドを備える。さらに、このリング要素は、そのリング本体が、リング本体の残りの周りよりも後セクションにおいてより可撓性であるように、変化する高さを有し得る。
【0022】
本発明の別の局面は、前面に対して、血流軸に沿って下向きに押し下げられた後面を有する心臓の僧帽弁輪を修復する方法である。この方法は、その輪の前面に適合するような大きさである前セクションおよび後面に適合するような大きさである後セクションを有する弁形成リングを移植する工程を包含し、ここでこのリングの後セクションは、前セクションに対して中央軸に平行に下向きに曲がる。この弁形成リングは、可鍛性であり得、そして外科医は、この弓状部を後セクションにおいて手作業で調整する。
【0023】
本発明の別の局面は、後面、前面、および血流軸を有する心臓の僧帽弁輪を修復する方法である。この方法は、僧帽弁輪の形状を検査する工程、およびその僧帽弁輪の形状に基づき、三次元的な弁形成リングを選択する工程を包含する。選択された弁形成リングは、中央軸の周りに全体的に配列された前セクションおよび後セクションを有する。この中央軸は、上向きの方向および下向きの方向を規定し、ここでリングの後セクションは、この中央軸に直交する面から下向きに曲がる。この方法は、このリングの後セクションが僧帽弁輪の後面に結合し、その後セクションが血流方向に曲がるように、弁形成リングを移植する工程を包含する。
【0024】
さらなる局面において、本発明は、僧帽弁輪における移植のための弁形成リングを提供し、この弁形成リングは、前セクションおよび後セクションを有する丸いリング本体を備える。このリング本体は、中央流れ軸の周りに配置され、この中央流れ軸は、上向きの方向および下向きの方向を規定し、この下向きの方向は、僧帽弁輪を通る血流の方向に対応する。上に記載された弁の機能不全の3つの原因を矯正するために、このリングの形状および寸法は、現在利用可能なリングの形状および寸法とは異なる:1)心室の直径が減少している;2)このリングは、非対称的であり、PC〜P3領域の内側方向の前進が、そこから前側への斜めの距離の減少をもたらす;そして3)このリングのP2およびP3領域は、輪と後乳頭筋との間の増加した距離h’を減少させるために、下向きに反っている。
【0025】
本発明の1つの特定の局面によれば、僧帽弁輪における移植のための弁形成リングが提供され、そのリングは、虚血性僧帽弁閉鎖不全症を矯正するために設計されている。この弁形成リングは、中央流れ軸の周りに配置されたほぼ卵形状のリング本体を備え、この中央流れ軸は、上向きの方向および下向きの方向を規定する。この下向きの方向は、左心房から左心室への僧帽弁輪を通る血流の方向に対応する。この流れ軸に沿って見た場合の平面図において、このリング本体は、短軸に直交する長軸を有し、この長軸と短軸とは、この流れ軸と直交している。心房平面図において、前外側三角と後内側三角との間に一般に規定される前セクション、およびこのリング本体の残りの周囲の周りでかつ三角の間の後セクションを有する。この後セクションは、前外側三角から始まって反時計回り方向に連続する3つの一連のセグメントP1、P2、およびP3に分けられ、この短軸は、この前セクションおよびこの後セクションのP2セグメントの両方を横断する。
【0026】
虚血性僧帽弁閉鎖不全症を矯正するために設計されているリングの1つの別のバージョンでは、所定の長軸寸法が与えられると、上記短軸の寸法の絶対値を、正確な3:4比から約2〜4mmの間だけ減少させることにより、上記長軸の寸法に対するこの短軸の寸法の比が、3:4未満にされ、その結果、上記弁形成リングの開口領域全体を過剰に減少させることなく、上記2つの弁尖の間の癒合を再生する。
【0027】
虚血性僧帽弁閉鎖不全症を矯正するために設計されているリングの1つのバージョンでは、上記リング本体は、このリング本体の残りのセクションに対して下向きに反っているP2セグメントおよびP3セグメント内に位置する後セクションの一部を除いて、この長軸および短軸により規定される平面内またはサドル型三次元表面内に実質的に存在する。上記下方向に反っている部分は、上記リング本体の最低の高さである先端をさらに含み、この先端は、このリング本体のP1セグメントに向かって、この下向きに反っている部分の中で中心からずれている。結果として、後部立面図において、このP1セグメントとこの先端との間のこのリング本体の移行部が、この先端とこのP3セグメントの下向きに反っていない部分との間のこのリング本体の移行部よりも、上記リング本体の周りで短い距離を延びる。
【0028】
本発明の弁形成リングのいずれかは、半径方向に隣接した2列の縫合糸線を収容し得る、上記リング本体の周囲のまわりに拡大部分を有する、リング本体の周りの縫い付けカフをさらに備え得る。上記半径方向に隣接した2列の縫合糸線の配置を示すために、望ましくは、マーキングが上記縫い付けカフ上に提供される。上記縫い付けカフの拡大部分は、上記リングの全周を、この全周よりも短く延び得、そして好ましくは、少なくとも部分的に上記P3セグメント中にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(好ましい実施形態の説明)
本発明は、虚血性僧帽弁閉鎖不全症、および先行技術の補綴リングによって十分に矯正されない他の病状において存在するすべての機能不全を矯正するための種々の弁形成リングを提供する。種々の実施形態が、独立してかまたは組合せて利用され得る特徴とともに本出願において示されかつ記載される。それ故に、本明細書中に記載される任意の特徴は、1つ以上の他の特徴により補完され得ることが理解されるべきである。実際、特に有用な組合せは、前セクションにおける下向きの弓状部と組合せた、前後寸法の減少または「引き込まれた」P3セグメントのいずれかであると考えられる。
【0030】
添付された図面は、本発明の弁形成リングのいくつかの例示的な実施形態を図示し、それらの弁形成リングは、連続的なものであり、前セクション、後セクションおよび右側部および左側部を有するものとして記載され得る。これらの側部のすべては、全体的に曲線からなり、それらの間の唐突な移行部を示す特定の区分けはない。むしろ、それらの隣接する側部の間の滑らかな移行部セクションは、上記リングに全体的に丸い(例えば、卵形の)形態を与える、曲線的な連結を提供する。
【0031】
本発明の弁形成リングは、一般的に卵形状を有するものとして記載される。この定義は、周囲のまわりで連続的であり、かつ(長軸に沿った)1つの次元では、(短軸に沿った)直交方向におけるよりも長い、心房平面図における種々の形状を包含することを意図されている。図面に見られるように、その形状は正確には卵形ではないが、大文字の「D」により近いか、またはインゲン豆に模せられ得る。種々の形状は、生得の僧帽弁輪に適合することがまた意図されているが、虚血性僧帽弁の種々の変形および機能不全をも考慮に入れていることが理解されるべきである。
【0032】
代表的な僧帽弁形成再造形において、その広がった輪よりもわずかに小さいサイズの弁形成リングが移植される。このリングは、1サイズか2サイズ小型化され得、このことは、代表的には、2〜4mmの長軸寸法の減少に対応する。本発明の弁形成リングは、現在利用可能なリングに比べて2〜4mmの短軸寸法の減少を有することにより、この減少を取り込む。望ましくは、所定の長軸寸法が与えられると、この長軸寸法に対する短軸寸法の比は、正確な3:4の比から約2〜4mmの間だけ短軸寸法の絶対値を減少させることにより、3:4未満であり、その結果、上記弁形成リングの開口領域全体を過剰に減少させることなく、上記2つの弁尖の間の癒合を再生する。
【0033】
さらに、前後または短軸サイズの減少は、上記P3領域においてより明確であり得、その結果、この領域における後尖の支配的なつなぎとめおよび輪の拡張をさらに過剰矯正する。このことは、リングの非対称的な形状を生じる。このリングの後セクションの作り直しによってもたらされる短軸に沿ったサイズ減少が、より成功裏の弁尖の癒合および全般的によりよい臨床的結果を生じることが見出された。この形態は、そのリングの前セクションを再形成することだけにより短軸寸法を減少させたいくつかの以前の弁形成リングとは、異なる。
【0034】
いくつかの実施形態において、後セクションは、血流の方向において下向きに曲がり、左心室LVに向かってより近い後尖スキャロップP2およびP3(図3bを参照のこと)の領域において僧帽弁輪を再形成するのに役立つ。このような形態によって上記輪は、その輪と乳頭筋との間の距離を減少させ、そしてそれ故に輪状縫合糸上の応力を減少させるために、これらのセグメントにおいて下向きに変位される。
【0035】
図4において、先行技術に従う輪状僧帽弁のための補綴具が示される。それは、インゲン豆様またはD形状を有し、そして第1近似では直線的であり、前弁尖2の結合に対応して縫合されているリングの前半分1および後弁尖の結合に対応して縫合されている湾曲したリングの後半分から構成される。リングの後半分2およびリングの前半分1は、この補綴具の最大幅セクションを規定する横断面3上に位置する2つの点5および6で結合される。さらに、長軸方向面4もまた規定され、それは、横断面3に対して直交して配列され、結合点5および6から等距離にある点7および8でこの補綴具を横断する。リングの後半分2は、従って、点5と7との間に位置する第1の側方ゾーン(左)9および点6と7との間に位置する第2の側方ゾーン(右)10に再分割される。それぞれ、平面3および4に対する上記補綴具の横断点5、6および7、8は、その補綴具の寸法の計算のための項を規定する。公知技術によれば、点7と8との距離(本明細書中でこの補綴具の高さとしても規定される)と点5と6との距離(本明細書中でこの補綴具の幅としても規定される)との間の比は、代表的には3:4に等しい。
【0036】
図5において、本発明に従う僧帽弁のための輪状補綴具の第1の実施形態が示される。それは、図4に描写された補綴具と実質的に同じ形状を有するが、その補綴具の高さと幅との間の比は、3:4未満であり、例えば、2.5:4に等しいか、または2:4に等しい。
【0037】
それ故に、あらゆるサイズの補綴具に対して、2つ以上の減少した比が提供され得る。「サイズ」によって、この補綴具の横断方向の幅の寸法が意味され;「サイズ」は、臨床的パラメータを示し、それに基づいて、検討されている各単一の臨床症例においてこの補綴具が選択され、そしてそれはまた、この補綴具の識別パラメータでもある。
【0038】
弁形成手術のために現在使用されている補綴具に比べてより小さい比は、従来の補綴具では十分な仕方で処置不能である病状という選択された症例におけるその使用を可能にする。
【0039】
この場合のより小さい比は、中程度かまたは重大な割合で、繋ぎとめ(心臓の先端に向かって伸張する)対称的(各弁尖に関して)である弁尖の減少された動きを特徴とする病状を処置するための機能を有する。この比の減少は、上記補綴具により「変形された」形状を与え、その形状は、その選択された症例において、弁尖のよりよい並置を可能にする。例えば、拡張型心筋症において、左心室の膨張が乳頭筋の先端に向かう側方の動きを決定する場合、この弁尖は、心臓の先端に向かって伸張し、従って中央レベルで並置はなくなる。さらに、可能なサイズ決めは、解剖学的要件:リングの前半分1(前尖の移植片に対する基部)は、解剖学的に固定されており、改変不可能であるということ、を尊重せねばならず、それゆえにそのサイズ決めは、この構造体には適用されるべきではなく、この補綴具の幅に適用されるべきである。この補綴具の通常の前面の幅の維持は、高さの減少に伴って、前尖の変形を起こしにくい小型化を可能にし、それ故に閉鎖不全症の残存のリスクを低減する。
【0040】
図6において、本発明に従う僧帽弁のための輪状補綴具の第2の実施形態が示される。この場合、リングの前半分の2つの側方部分の曲率半径を規定するために、3:4という自然の高さ/幅比は維持される。中央ゾーンにおいて、点7の近くにおいて、3:4未満の高さ/幅比を得る目的で、リングの後半分1とリングの前半分2との間の距離は減少されている。それ故に、リングの後半分2の中央ゾーンは、犬の骨またはかもめの羽の形状を思い起こさせ、そして交連のレベルで輪の減少を制限することにより中央レベルで癒合を増加させる形態を取る。
【0041】
いくつかの極端な場合において、8の字形状の形態を得るために、中央レベルでの癒合を改良するために、上記中央ゾーンにおける2つの半リングの間の距離をゼロに等しくすることが有用であり得る。この再造形は、中央の癒合を強制するために、弁の中央で弁尖が結合されている二重開口手術を模倣する。この補綴具はまた、縫合糸上の応力を減少するため、かつ弁領域の減少を最小にするために、このタイプの技術とともに使用され得る。
【0042】
図7において、本発明に従う僧帽弁のための輪状補綴具の第3の実施形態が示される。この実施形態において、上記側方ゾーンのうちの1つ(例えば、第2の側方ゾーン(右)10)の曲率半径は、弁尖の順応性の減少(虚血性病状におけるような弁尖の病的な非対称的な並置)に伴うバルブセクターに対応して反応力の選択的増加を誘導するように、増加される。従って、上記補綴具の1つの部分(例えば、第1の側方ゾーン(左)9)は、従来の補綴具と実質的に類似の形態を維持し、そして1つの部分(例えば、第2の側方ゾーン(右)10)は、小型の形態を取る。換言すれば、第1の側方ゾーン(左)9の中央点と長軸方向平面4との間の距離は、第2の側方ゾーン(右)10の中央点とその長軸方向平面との間の距離よりも大きい。
【0043】
本発明によれば、上記補綴具は、ヒトの器官により非常に許容された不活性な材料から作製され得、上記使用に対して適切な耐性を有し得、そしてそれに与えられた形状を実質的に維持し得る。
【0044】
本発明の例示的な弁形成リング30が、図8に、僧帽弁輪MAの周りに移植されて示される。上記のように、僧帽弁輪は、前尖ALおよび後尖PLを有する。リング30が移植される場合、これらの弁尖は、それらが癒合面32で出会うように、一緒に近づけられて支持される。従って、リング30は、機能性僧帽弁逆流の問題を矯正する。
【0045】
リング30は、卵形または多少D形状の形態を有し、相対的にまっすぐな前セクション34が、湾曲した後セクション36に対向している。1対の三角または交連マーカ38a、38bが、前側34の境界を全体的に定め、他方1対の反対側セクション40a、40bが、これらのマーカの各々と後セクション36との間に延びる。複数の結紮された縫合糸ループ42が、代表的には使用されて、リング30が僧帽弁輪MAに固定されるが、ステープル、フィブリン接着剤などの他の固定具が使用され得る。
【0046】
弁形成リング30が最も適する病理学的状態において、図2に示されるように、僧帽弁輪の後面は、前面に対して押し下げられている。図8の視野において、その後面は、その前面に対してその頁の中に押し下げられている。本発明の弁形成リング30は、僧帽弁輪MAの改変された形状に全体的に従うように形作られた後セクション36を有する。換言すれば、後セクション36は、前セクション34に対してそのページへと曲がっている。縫合糸42で適所に固定される場合、例えば、リング30は、僧帽弁輪MAを、その輪を元の実質的に平面状の形態に戻そうとするのではなくその改変された形状で支持する。同時に、リング30は、望ましくは、その輪により規定される開口の周縁を締め付け、その結果、前尖ALおよび後尖PLを一緒により近づける。リング30は、僧帽弁輪MAの後面をその改変された位置から上向きに引っ張らないので、取り付け縫合糸42中に高い応力を発生させず、従って披裂の可能性がより低い。
【0047】
図9および10は、例示的な弁形成リング30を、その後側に押し下げられている僧帽弁輪の上に斜視図で示す。後セクション36におけるリング30のその弓状部は、図10において最もよく見られ、それは、機能性僧帽弁逆流とともに遭遇する病状における僧帽弁輪MAの後面の押し下げを模倣する。
【0048】
図8〜10の例示的な弁形成リング30が、図11A〜11Cにおいて、詳細に示される。リング30は、織物カバーを完備して示される。方向付けの目的のために、図11Aは、X軸およびY軸が図1〜2に関して上で言及されたような基準面20を全体的に規定する直交軸を図示する。X軸は、最大寸法の点で一方の側40aからその反対側40bへリング30を横切って延びる。従って、X軸は、リング30の長軸を規定する。Y軸は、リング30についての対称面を規定し、前側34の中間点と後セクション36の中間点との間に延びる。Y軸はまた、リング30についての短軸を規定する。
【0049】
多くの従来のリングの場合のように、この長軸寸法に対する短軸寸法の比は、望ましくは約3:4である。このサイズ比は、僧帽弁輪の「古典的」形状であり、弁形成リング30の最良の形態であり得る。しかし、より小さい短軸/長軸比を有する他の形状が、現実には、弁尖の癒合を増加し得ることが企図される。幾何学的には正確ではないが、非円形のリング形態は、卵形、楕円形、またはD形状であると考えられ得る。本発明はまた、例えば、C形状を有する不連続なリングの形態をとり得ることが注記されるべきである。このようなリングにおける裂け目は、前セクションに存在し得、そして後セクションは連続的であり、説明されたような下向きの弓状部を示す。
【0050】
図11BにおけるZ軸は、移植された場合の、リング30を通る血流の軸に沿って存在し、そして正のZ方向が「上向き」方向であり負のZ方向が「下向き」方向であり、リング30は、血液が下向き方向に流れるように僧帽弁中に移植されるように設計されていることが理解される。
【0051】
後の弓状部を説明するのに役立つように、リング30の周りでいくつかの点が注記されている。これらの点、および図12A〜12Bに示される点は、リング30の断面を通る想像上の中心点である。2つの点Aは、X軸から角距離θでY軸のいずれかの側上に対称的に位置している。後セクション36の中間点は、Bで示される。リング30は、点BがZ軸に沿って最低の高さになるように、後部弓状部を有する。この後部弓状部の大きさは、図11Cの寸法Z1により示される。後セクション36のいずれかの側の点Aは、後部弓状部が始まる位置を示す。すなわち、後セクションを除いて、リング30は、好ましくは実質的に平面状である。しかし、先行技術の特定のリングにおけるように、前セクション34は、約2〜4mm(0.08〜0.16インチ)の間の距離だけ、必要に応じて上向きに曲げられ得る。後者の例では、後セクション36は、三角マーカ38a、38bの高さに対してZ方向で下向きに曲がる。
【0052】
図11A〜11Cに見られるような、リング30についての種々の可能な形態が企図され、寸法Z1および角度θは、僧帽弁輪全体のサイズ、後面の解剖学的な垂れ下がりの程度、および外科医の好みを含む他の要因によって決定される範囲の間で変動する。しかしながら、特定の範囲は、本明細書中に記載されるような特定の解剖学的不規則性を示す大多数の患者を支援し矯正するために適切であると考えられる。下向きの弓状部または後部弓状部は、好ましくは、後セクション36の大部分に沿って、X軸から0°と45°との間(θ)にある点Aの間に延びる。より好ましくは、点Aは、X軸から20°と40°との間、より具体的には約30°である。弓状部の大きさZ1は、上記リングのサイズに依存して、約2〜15mm(0.08〜0.59インチ)の間であり得、より代表的には約4〜8mm(0.16〜0.31インチ)の間である。
【0053】
リング30は、Y軸の周りに対称的であるとして図11A〜11Cに示されているが、それは、そうでなければならないということは必ずしもない。例えば、点Bは、上記下向きの弓状部が後セクション36の中心にならないように、Y軸からずらされ得る。非対称的なリングは、図13Aおよび13Bを参照して、以下に示されかつ説明される。
【0054】
図12A〜12Cは、上向き弓状部および下向き弓状部の両方を有する本発明の代替の弁形成リング50を図示する。この図においても、リング50は、織物カバーを完備して示される。リング50は、前セクション52、後セクション54およびそれらの間の1対の側方セクション(番号付けせず)を備える。リング50は、前セクション52上でほぼ平面状であり、後セクション54上では方向付けられている。この図においても、Y軸を横切って対称的に配置される点Aは、各々の側で、リング50が平面から湾曲し始める位置を示す。この実施形態において、リングは、図12Bで最もよく見られるように、点Aから高い点Cへ、Z軸方向において上向きに湾曲し、そして後セクション54の中間点Bへと下向きに下がる。点AとBとの間の上記リングの下向き弓状部は、図12Cにおいて、寸法Z2として示され、これは、図11CにおいてZ1に対して与えられた大きさと類似の大きさを有する。上向き弓状部は、患者の輪の形状により適合するように選択され得る。さらに、前セクション52は、約2〜4mm(0.08〜0.16インチ)の間の距離だけ上向きに曲がり得る。
【0055】
図12A〜12Cに示されるリング50の種々の置き換えが企図され、その寸法は、多数の因子に基づいて変更される。例示の実施形態では、点Aは、望ましくは、約0〜15°の間、より望ましくは約5〜10°の間のX軸からの角度αで配置される。リング50の最大高さである点Cは、好ましくは、約15〜45°の間、より好ましくは約25〜35°の間のX軸からの角度βで間隔を空けて置かれる。リング50の最低点Bは、図11A〜11Cの実施形態におけるように、Z軸に沿って曲がり得、その結果、図12Cに示されるように、Z2は、このリングのサイズに依存して、望ましくは、約2〜15mm(0.08〜0.59インチ)の間、より典型的には約4〜8mm(0.16〜0.31インチ)の間である。それ故に、リング50の全体の高さは、少なくとも2mmであり、15mmより大きくあり得る。
【0056】
図13Aおよび13Bは、本発明の弁形成リングにおける使用のための内側リング本体60を示す。リング本体60は、後セクション64の中心からずれている後部弓状部62を有する。図示された実施形態では、弓状部62は、後内側に向かって(右へ)リング本体60の長軸幅全体の約20%だけずれている。別の言い方では、そのずれは、平面図において、弓状部62は、時計配置で中心にあり、12:00が前側の中心に存在する。その意味で、弓状部62は、3:00と6:00との間に中心を置き、より好ましくは約5:00に中心を置く(図15Aおよび16Aの用語を使用すると、弓状部62は、後セグメントP2およびP3のどこかに中心を置くが、P2セグメントの中心からはずれている)。下向き弓状部の軸方向の大きさZ3が示され、そしてこの大きさZ3は、リングサイズに依存して、約2.0mm(0.08インチ)から約4.0mm(0.16インチ)まで、より好ましくは約3.0mm(0.12インチ)から約3.8mm(0.15インチ)まで変動し得る。さらに、リング本体60は、約2〜4mm(0.08〜0.16インチ)の間の距離だけ上向きに曲がった前セクション66を有する。
【0057】
内側リング本体60は、中央線からずらされた後部輪弓状部を有する患者に適合する非対称なリングを例証する。多くの患者は、本明細書中に記載される病理学的状態から生じるこのような奇形の解剖学的構造を有すると考えられる。しかし、中心に存在するかまたは左にずれてさえいる後部弓状部が観察されている。それ故に、本発明において具現化されるリングの1つの形態は、中央または右に後部弓状部で予め形作られ、そして患者の輪の正確な形状を調べたあとで外科医によりその弓状部が拡大または縮小され得るように可鍛性である形態である。さらに、このような変換可能なリングにおいて、この弓状部は、例えば、右から左へずらされさえもし得る。このリングの材料は、手作業による変形を許容するが、ひとたび移植され、正常な生理学的応力に曝されると、さらなる変形に耐えるに十分堅い。
【0058】
このリングは、好ましくは、内側リング本体およびこのリング本体が僧帽弁輪に縫合されることを許容する外側縫い付けシースを備える。この縫い付けシースは、縫合糸がそれを通るに十分多孔性である、および/または可撓性であるべきである。1つの例示的構築は、内部リング本体を縫合糸が透過可能な材料(例えば、シリコーン)の管状シースの中に封入し、次いでそのシースを布の管(例えば、ポリエチレンテレフタレート(polyethyl terapthalate))で覆うことである。
【0059】
単に僧帽弁輪の周縁を減らすために設計されている可撓性弁形成リングとは対照的に、本発明の弁形成リングは、少なくとも半剛性でなければならない。それは、後部弓状部を各心拍サイクル全体にわたって心臓の筋肉により付与される応力に対向してその後部弓状部を保持せねばならない。例えば、上記リング本体は、Elgiloy(コバルト−ニッケル合金)、チタン、またはNitinol(チタン−ニッケル合金)のような材料から作製され得る。例示的なリング構築物は、CARPENTIER−EDWARDS CLASSIC Annuloplasty RingおよびCARPENTIER−EDWARDS PHYSIO Annuloplasty Ringに見られ、これらはともに、Irvine、CaliforniaのEdwards Lifescienceにより製造され販売されている。
【0060】
図14は、Elgiloyの複数の平坦なバンドを複合構造体で利用する本発明の弁形成リングの内側本体の1つの例示的構築物を図示する。具体的には、外側から内側へ4つのバンド70a、70b、70c、および70dが存在する。これら4つのバンドは、リングの形状で同心状に配置される。各バンドは、約1.4〜2.0mm(0.056〜0.078インチ)の間の幅を有する材料の平坦な細片である。1つの実施形態では、バンド70は、そのリング本体の前セクション72中で重なっており、そして例えば多点でのスポット溶接により一緒に固定されている。各細片の幅はまた、後セクション74においてよりも前セクション72においてより大きくあり得、このことは、このリング本体が他の任意のセクションにおいてよりも後セクションにおいてより可撓性であることを意味する。示されてはいないが、保護フィルムの複数の細片が各バンド70の間、そして外側バンド70aの外側面上で使用される。この細片は、Mylarのようなポリマーであり得る。この細片は、バンド70間のこすれを低減するのに役立ち、また縫合糸の針を外側バンド70aから反らせ、従ってそれに対するひっかきを防ぐ。
【0061】
本弁形成リングで僧帽弁輪を支持することによって、前尖の下に押し下げられている後尖が維持され、従ってそれらの間の癒合の領域が健康な弁におけるのと異なることが容易に明らかとなる。このことは、乳頭筋および後尖のずれを伴う心室の病状により必要とされる。しかし、当業者は、癒合のために利用可能な弁尖の余りの領域に起因して、そしてこの再配列は、2つの弁尖の癒合を経時的に改善し、それ故に逆流を低減するはずの輪の形状の変化によりずらされるので、弁尖のこのわずかな再配列が受容可能であることを認識する。
【0062】
本発明の弁形成リング130のさらなる例示的な実施形態が図15Aおよび15Bに見られる。図15Aは、いわゆる心房平面図である。なぜなら、それは、心房側から流れ軸132に沿ってリング130を描くからである。つまり、血流は、図15Aに見られるように、リング130を通ってページの中へであり、図15Bにおいては下向きである。
【0063】
弁形成リング130は、内部リング本体の上に外側の布カバー(番号付けせず)とともに完全に構築されて示される。この可撓性布カバーは、リング130の全体的な形状に対して相対的にほとんど何も付加しせず、それ故にその形態は内部リング本体の形状に依存することがまた理解される。それ故に、本明細書中のリングの種々の形状が説明される場合、それは、実際には、参照されるリング本体の形状である。
【0064】
弁形成リング130は、前外側三角T1と後内側三角T2との間に規定される前セクションASを備え、このリングの残りは、3つの一連のセグメントP1、P2、およびP3から構成される後セクションにより上記三角の間に規定される。弁形成リング130は、ほぼ卵形であり、より長い寸法は長軸134に沿い、より短い寸法は短軸136に沿っている。短軸136は、前セクションASおよび後セグメントP2の両方を横切る。好ましい実施形態では、短軸136は、前セクションASおよび後セグメントP2を両方とも二分する。
【0065】
図15Bに見られるように、弁形成リング130は、長軸134および短軸136により規定される平面に実質的に存在し、この平面は、望ましくは、流れ軸132に直交している。代替の実施形態では、前セクションASは、AS’として示される点線により見られるように、(流れ軸132に対して)上向きに反っていてもよい。この上向きに反った前セクションAS’は、僧帽弁輪の上向きに曲がった前面に適合する、望ましい三次元的形態を提供する。
【0066】
再び図15Aを参照して、4本の半径方向の線140a、140b、140c、140dは、流れ軸132から外方向へ広がり、前セクションASと後セグメントP1、P2、およびP3との間の分割線を示す。前セクションASは、三角T1とT2との間にかなり正確に位置決めされ得、三角T1とT2は、代表的には、図3aに見られるような生得の三角または交連の位置に対応するマーカ筋である。他方、後セグメントP1、P2、およびP3は、後セクションの周囲の周りの取り囲む特定の弧として、いくらか概略的に示される。後セグメントP1、P2、およびP3により規定される弧の大きさは、僧帽弁後弁尖スキャロップの実際の測定値、および外科医の好みを含む種々の要因に依存して変動する。しかし、概して、長軸134は、第1の後セグメントP1および第2の後セグメントP3の両方を横断し、そして短軸136は、中央後セグメントP2を横断する。
【0067】
弁形成リング130は、短軸136に対して非対称的な形態を有し、後セクションのP1セグメントの凸部は、P3セグメントの凸部よりも大きい。特に、P3側の一部は、上記リングの中心に向かって引き込まれ、その結果、斜め内側寸法線142bよりも短い斜め内側寸法線142aを規定する。寸法線142a、142bは、前セクションASの中央内側端上の短軸136上の点144から測定される。寸法線142aは、前セクションASの中央の点144に最も近いP3ゾーン中の点へ引かれ、短軸136と角度θを形成する。寸法線142bもまた、短軸136から角度θで、しかし線142aとは反対の回転方向で配置される。
【0068】
別の言い方をすれば、弁形成リング130は、短軸136と後セグメントP2との交点にある点152と、第2三角T2との間に延びる減少した湾曲部分150を除いて、ほぼ卵形を有する。「減少した湾曲」は、短軸136に対してリング130の反対側の湾曲に関連するものである。つまり、セグメントP1、およびセグメントP2の左側に関連している。リング130の従来の「卵」形は、そのリングの改変部分の周りの点線伸張部154により示され、そして減少した湾曲150の逸脱は明らかである。減少した湾曲150は、中央後セグメントP2のほぼ半分および第3の後セグメントP3の全体を通って延びて示される。あるいは、中央後セグメントP2は、リング130の残りの卵形形状を続け得、そして減少した湾曲部分150は、想像上の点156からのみ第2三角T2へ延び得る。減少した湾曲150は、望ましくは、想像上の卵形154ほどには凸状ではないが、直線的でさえあり得、またはわずかに凹状でさえあり得る。
【0069】
P3セグメントの減少した湾曲150を提供することの効果は、他のスキャロップよりも流れ軸に向かってより近い後尖スキャロップP3(図3bを参照のこと)の領域において僧帽弁輪を再造形することである。この様式での僧帽弁輪の前後寸法の減少は、虚血性僧帽弁閉鎖不全症において存在する機能不全をより効果的に矯正すると考えられる。
【0070】
図16A〜16Cは、本発明の代替的な弁形成リング160の平面図および立面図であり、そのリングはまた、虚血性僧帽弁閉鎖不全症において存在するすべての機能不全を矯正するような形態である。上で説明したリング130の場合のように、弁形成リング160は、流れ軸162の周りで、そして長軸164および短軸166に対して、ほぼ卵形である。リング160は、2つの三角T1とT2との間に規定される前セクションAS、およびこのリングの残りの周りで上記三角の間に延び、そして3つの一連のセグメントP1、P2、およびP3から構成される後セクションを有する。
【0071】
弁形成リング160は、P2セグメントおよびP3セグメント内に位置する後セクションの一部分170(流れ軸162に対して下向きに反っている)を除いて、実質的に平面(またはサドル型の三次元的表面)に存在する。図16Bで最もよく見られるように、下向きに反った部分170は、リング160の最低の高さである先端Aを備える。下向きに反った部分170は、望ましくは、もっぱらP2セグメントおよびP3セグメント内にあり、後セクションの周りに点Bから点Cへ延びるように示される。点Bは、望ましくは、第1の後セグメントP1と第2の後セグメントP2との間の交点に存在し、他方、点Cは、望ましくは長軸164と第3の後セグメントP3との交点にに存在する。点A、B、およびCの正確な位置は、反った部分170がリング160の後セクション中に、そして主に第1の後セグメントP1の外側に存在する限り、変動し得る。
【0072】
好ましい実施形態では、反った部分170の先端Aは、P1セグメントに向かって中心をはずれており、その結果、図16Bに見られるように、点Aと点Bとの間の移行部172は、リング160の周りで、点Aと点Cとの間の移行部174よりも短い距離に沿って延びる。より好ましくは、点Aと点Cとの間の移行部174は、示されるように、ほとんど直線的である。下向きに反った部分170および細長の移行部174を提供することの効果は、輪と乳頭筋との間の距離h’の増加を減少させるため、そして輪状縫合糸上の応力を減少させるために、これらのセグメントおいてこの輪を下向きにずらすように、左心室LVに向かってより近い後尖スキャロップP2およびP3(図3bを参照のこと)の領域において僧帽弁輪を再造形することである。
【0073】
前セクションASは、直線的であるとして図16Aに示されるが、代替の形態がAS’に点線で示される。代替の前セクションAS’は、短軸166に沿ってわずかに内側に反っており、従って、リング160の前後寸法を減少させる。上述のように、図15Aにおけるリング130の減少した湾曲部分150はまた、下向きに反った部分170と合わされ得、さらに前後寸法を減少させる。
【0074】
本発明の弁形成リング180のさらなる例示的な実施形態が、図17Aおよび17Bに示される。上記リングの周りのセクションおよびセグメントに関して上で使用される命名法は、一貫性がある。リング180は、多くの点で、図16A〜16Cに見られるリング160と類似している。なぜなら、それは後セクションに下向きに反った部分182を組み込むからである。再び、反った部分182は、後セクションのP1セグメントに向かって、リング180の短軸(示さず)に対して中心からずれた先端Aを有する。実際、本発明者らは、後側の下向きの反りと減少した前後寸法または斜めの(非対称的な)引き込まれた後セクションとの組合せが、虚血性僧帽弁閉鎖不全症(IMVI)を矯正するために、特に効果的であることを決定した。これらの特徴が本明細書中に独立に説明されていようがいまいが、それらのいかなる組合せも、本発明により包含されないことが注記されるべきである。
【0075】
弁形成リング180は、実質的に平面状であるのとは対照的に、実質的にサドル型である。つまり、後セグメントP1およびP3は、参照平面184から上向きに隆起し、他方、前セクションASは、ほぼ参照平面上にある。リング180が完全にサドル型であるなら、中央後セグメントP2はまた、その参照点上にあるであろう。代わりに、下向きに反った部分182は、後セグメントP2を参照平面184の下に導く。それ故に、部分182は、リング180のサドル型の残りから下向きに反っていることが理解されるべきである。
【0076】
好ましい構築物において、本発明のいくつかのリングの弁形成リング本体は、前セクションASにおいてよりも後セクションにおいて、より可撓性であるように構築される。例えば、上記リング本体は、異なる厚みの金属製コアを有してか、または前セクションに重なり、そのセクションを後セクションにおけるほどには可撓性にしない、一連の輪状バンドを有して構築され得る。代替の構築物においては、そのリングは、全体が完全に剛性である。
【0077】
図18A〜18Gは、異なる患者のための大きさにされた、本発明の一連の弁形成リング200a〜200gを図示する。これらの図面は、心房平面図において示される一連の原型については、寸法上正確である。各リングは、1つの平面内に作製されてもよく、または図17A〜17Bの弁形成リング180のようなサドル型を有してもよい。つまり、後セグメントP1およびP3(図18Fにのみ示されている)は、中央後セグメントP2および前セクションASに対して、上向きに隆起し得る。
【0078】
長軸202および短軸204は、図18Bのリング200bについて示され、同じ配置が各リング200a〜200gに当てはまる。長軸202に沿った寸法xiおよび短軸204に沿った寸法yiが、各リング200a〜200gについて示されている。以下の表は、これらの寸法、および特定のリングを選択するために使用される標識されたリングサイズを提供する。つまり、サイズ34のリングは、長軸に沿った約34mmという、測定された生得の輪、または外科医が決定した輪を有する患者に移植される予定であるリングに対する標識である。これらの寸法は、慣例に従って、それぞれの軸に沿って各リングの内面の間で測定されている。
【0079】
【表1】
上述のように、短軸寸法yiは、各リングについて減少され、その結果、長軸寸法に対する短軸寸法の比は、3:4未満(すなわち、75%未満)である。絶対値では、これは、弁形成リングの開口領域全体を過剰に減少することなく、2つの弁尖の間の癒合を再生するように、正確な3:4比から約2〜4mmの間の減少である。例えば、図18Aのサイズ24のリング200aは、0.885インチ(22.5mm)の長軸寸法xaを有する。正確な3:4の短軸/長軸の比なら、0.664インチ(16.9mm)の短軸寸法になる。しかし、短軸寸法yaは、0.534インチ(13.6mm)であり、正確な3:4の比から約3.3mmの減少である。
【0080】
別の見方をすれば、各リング200a〜200gは、従来または正常なリングサイズから約14%の短軸寸法の減少を有する。これは、約1リングサイズの減少にほぼ等しい(例えば、サイズ26のリングからサイズ24のリングへは、1リングサイズの減少である)。しかし、本発明のリングの使用は、現在の「小型化」の実施とは同じではない。なぜなら、最終的に使用されるリングは、より小さいサイズのリングとして標識されないからである。例えば、現在の実施は、サイズ26と測定された患者に対して、「小型化」してサイズ24のリングを使用することであり得る。図18Bのリング200bは、サイズ26の患者に対する、本発明に従って選択されるリングである。リング200bは、サイズ26のリングとして標識されているが、従来のリングサイズから寸法が小型化されている。それ故に、どのリングを選択するかについての不確かさは存在せず、サイズ26のリングは、サイズ26の患者用である。また、従来の実施は、24mmの輪サイズを有する小柄な患者に対する「小型化」の選択は残されていない。つまり、代表的には、サイズ22のリングは、利用可能ではない。他方、本発明の24サイズのリング200aは、すでに小型化されており、そして示された患者に対して以前に言及された、改善された癒合結果を提供する。
【0081】
しかし、最も顕著には、小型化は、多くの場合、僧帽弁輪の1つのセグメントだけが矯正される必要がある場合に、リングの周囲全体を減少させる。例えば、図3bに見られるような非対称的な拡張は、P2〜P3弁尖スキャロップの領域において、後面の一部分だけの矯正を必要とする。単により小さいリングを移植することで、冒された領域は矯正されるが、また健康な領域を締め付け、そして特に、代表的にはサイズも形状も変えないより線維状の前面に応力を加え得る。本発明のリングは、虚血性僧帽弁逆流のような特定の病状に起因して必要とされる選択的な周囲の小型化を考慮している。
【0082】
本発明の局面の1つに従って、各リングの長軸に沿った寸法は、前後の寸法ちょうどではなくて、測定されたかまたは別の方法で決定された輪のサイズより小さく、このことはリング全体を小型化することがまた、注記されるべきである。所望される長軸寸法の絶対的な減少は、約1.0〜1.5mmの間である。例えば、図18Aのサイズ24のリング200aの従来または通常の長軸寸法は、約24mmである。しかし、図18Aのリング200aは、0.885インチ(22.5mm)の現実の長軸寸法xaを有し、これは約1.5mmの減少、すなわち約6%の減少である。当業者は、同じ比率の3:4のサイズ比の「小型化」リングを選択することと、本発明のリングを使用することとの間の違いを理解する。つまり、サイズ26の患者に対する「小型化」の従来の実施は、24mmの長軸および18mmの短軸(3:4比)を有する従来のサイズ24のリングを使用することを押しつける。他方、本発明のサイズ26のリングは、24.4mmの長軸寸法および14.7mmの短軸寸法(3:5比)を有する。
【0083】
図18A〜18Gに示される弁形成リング200a〜200gのすべては、以前に注記された非対称性を有し、P3弁尖に対応するP3セグメント(図18Fを参照のこと)は、P1セグメントに対して減少した湾曲を有する(すなわち、P1セグメントの凸部は、P3セグメントの凸部より大きい)。この非対称性は、図15Aおよび15Bのリング130に関して上で示されそして説明された。
【0084】
2つの特定の例を見て、図18Aおよび18Gは、それぞれ、サイズ24のリング200aおよびサイズ36のリング200gを図示し、これらは減少した湾曲、すなわち、P3セグメントにほぼ沿って「引き込まれた」長さを有する。引き込まれている各リング200a〜200gに沿う長さは、望ましくは、P2セグメントおよびP3セグメント内に位置するリング周囲の周りの特定の弧内にある。水平線206は、そのリングの前セクションASの内面に沿って引かれ、3つの角度αおよびβは、短軸204に沿って中央参照点208のまわりでそこから時計回りに延びて示される。「引き込まれた」長さ、またはそのリングの反対側と比べて減少した凸部の長さは、角度αとβとの間に位置する。図18Aのリング200aに対して、αは、23.2°であり、βは、90°である。図18Gのリング200gに対して、αは、15.8°であり、βは、90°である。角度βは短軸204に沿って存在し、そしてリングの後側を横断する。これらは、リング200a〜200gの外側境界であり、その結果、αは、15.8〜23.2°の間であり、そして「引き込まれた」長さは、約57〜74°の間であり、それは短軸204と上記リングの後側との交点から反時計回りに延びる。
【0085】
第3の角度θがまた、図18Aおよび18Gに描かれ、それは、リング周囲の「引き込まれた」長さに沿った、中央参照点208との距離が最小である角度を示す。つまり、点210は、「引き込まれた」長さに沿った任意の点のうちで、点208に最も近く、その距離が寸法線212により示されている。さらなる点214は、リング周囲上であるが、短軸204に対して(P1セグメントに)点210の反対側に示される。点214は、中央参照点208の周りに水平線206から同じ角度θであるが、反時計回りに位置する。これらの線212、216は、それぞれのセグメントと前セクションと短軸との交点との間に広がる線に沿って引かれる。線216は、点208と214との間の「正常な」寸法を示す。好ましい実施形態では、「正常な」寸法216に対する「引き込まれた」寸法212の比は、約0.89(89%)であり、角度θは、約51°である。リング200aについては、寸法212は、約0.503インチ(12.8mm)であり、そして寸法216は、約0.564インチ(14.3mm)であり、約89%の比である。リング200gについては、寸法212は、約0.754インチ(19.2mm)であり、そして寸法216は、約0.846インチ(21.5mm)であり、これもまた約89%の比である。
【0086】
弁形成リング130、160、180または200a〜200gは、輪に、従ってこれらのリングそれ自体の一部である縫い付けカフに配置される縫合糸を使用して、患者の輪に固定される。この意味での縫い付けカフは、リングの一体化部分であり、そして少なくとも一列の縫合糸を受容するに十分大きい任意の縫合糸透過性の材料またはその組合せを意味する。従来のモデルでは、この縫い付けカフは、弁形成リングの外周上での約2〜5mm幅であり、一列の縫合糸を収容する。
【0087】
例えば、図19A〜19Bは、図15Aおよび15Bのリング130の形状に類似の形状を有する弁形成リング250を図示し、このリングは、周囲のまわりに一列の縫合糸線252を示す。図19Bの断面は、リング250の縫い付けカフ254、および代表的にはステンレス鋼、チタン、または他の適切な金属のワイヤまたはバンドである内部構造体構成要素256を図示する。
【0088】
図20A〜20Bは、虚血性疾患に罹患した輪の修復に特に適している弁形成リング260の好ましい構築物を図示する。これらの図においても、リング260は、図15Aおよび15Bのリング130の形状にほぼ類似の形状を有する。図20Bは、図19A〜19Bのカフ254よりも半径方向に広い、リング260の外周上の縫い付けカフ262を示す。例示的な実施形態では、縫い付けカフ262は、約5〜10mmの間の半径方向寸法rを有する。図19Aに見られるように、より大きい縫い付けカフ262は、外科医のためのガイドとしてのマーカ264の列によって示されるように、2列の縫合糸線を収容する。これは、リング260の病んだ輪へのより確かな固定を提供し、披裂を防止するのに役立つ。
【0089】
図21A〜21Cは、P3領域に縫合糸カフ領域272を備える、本発明の代替の弁形成リング270を示し、そのカフ領域272は残りの縫合糸カフ274に比べて半径方向に拡大されている。P3領域は、多くの場合、生得の輪のうちの最も広がった脆い部分であり、従って拡大された縫合糸カフ領域272は、リング270の病んだ輪へのより確かな固定を提供し、その位置での披裂を防止するのに役立つ。縫合糸カフ274の大部分は、半径方向寸法が約2〜5mmの間であり得、他方、縫合糸カフ領域272は、約5〜10mmの間である。当然、拡大されている縫い付けカフの周囲の全体未満およびセグメントのみを有するこのような形態は、他の疾患の状態、または外科医の好みにさえも適用可能であり、それ故に縫合糸カフ領域272は、P3領域以外の他の領域に位置し得る。
【0090】
本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の改変または変更が、この仮出願中に記載された本発明の実施例および実施形態になされ得ることがまた当該分野の当業者により理解される。この点に関して、本明細書中に記載された本発明の特定の実施形態は、本出願において開示されたより広い発明の概念の例として理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1は、前尖と後尖との間で僧帽弁を通る、健康な左心室の断面である。
【図2】図2は、前尖と後尖との間で僧帽弁を通る、拡張した左心室の断面である。
【図3】図3a〜3cは、手術の間に露わにされるように、つまり、心房平面図において、左心房から正常な僧帽弁および異常な僧帽弁を図示する。
【図4】図4は、公知技術に従う、僧帽弁のための輪状補綴具を示す。
【図5】図5は、本発明に従う、僧帽弁のための輪状補綴具の第1の実施形態を示す。
【図6】図6は、本発明に従う、僧帽弁のための輪状補綴具の第2の実施形態を示す。
【図7】図7は、本発明に従う、僧帽弁のための輪状補綴具の第3の実施形態を示す。
【図8】図8は、僧帽弁に対する反応能を再生するように移植された本発明の弁形成リングの平面図である。
【図9】図9は、後側から見た場合の異常な僧帽弁の上にある本発明の弁形成リングの斜視図である。
【図10】図10は、側方から見た場合の異常な僧帽弁の上にある図9の弁形成リングの斜視図である。
【図11】図11A〜11Cは、後部弓状部を有する本発明の例示的な弁形成リングの平面図、正面図、および側面図である。
【図12】図12A〜12Cは、2つの隆起した部分の間に後部弓状部を有する本発明の代替の弁形成リングの平面図、正面図、および側面図である。
【図13】図13Aおよび13Bは、それぞれ、中心をはずれた後部弓状部および前部弓状部を有する本発明のならなる弁形成リングの内側リング本体の正面立面図および上方側面図である。
【図14】図14は、複合材バンド構築物の詳細を示す、本発明の弁形成リングの内側リング本体の上面図である。
【図15】図15Aおよび15Bは、それぞれ、本発明のほぼ平面状の例示的な弁形成リングの心房平面図および後方立面図であり、この弁形成リングは、短軸のまわりで非対称な構成を有し、その結果、減少した前後寸法を有する。
【図16】図16A、16Bおよび16Cは、それぞれ、下向きに反った後部分を有する本発明のさらなる例示的な弁形成リングの心房平面図、後方立面図、中央平面図である。
【図17】図17Aおよび17Bは、下向きに反った後部分を有する本発明のサドル型弁形成リングの、それぞれ、後方立面図および内側立面図である。
【図18】図18A〜18Gは、異なる患者のための大きさにされた、一連の本発明の寸法上正確な原型となる弁形成リングの心房平面図である。
【図19】図19Aおよび19Bは、標準的な縫い付けカフを示す、本発明の弁形成リングの心房平面図および断面図である。
【図20】図20Aおよび20Bは、リング全周の周りに半径方向に拡大された改変された縫い付けカフを示す、本発明の弁形成リングの心房平面図および断面図である。
【図21】図21A〜21Cは、半径方向に拡大されたセグメントを有して改変された縫い付けカフを示す、本発明の弁形成リングの心房平面図および断面図である。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、米国特許法第120条に基づき、同時係属中の「Mitral Valve Annuloplasty Ring Having a Posterior Bow」と題する米国特許出願第10/192,516号(2002年7月8日出願)および同時係属中の「Annular Prosthesis for Mitral Valve」と題する米国特許出願第10/144,932号(2002年5月15日出願)に対する優先権を主張し、これらの同時係属中の出願は、米国特許法第119条に基づき、イタリア国特許出願第MI2001A 001012号(2001年5月17日出願)に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に、医療用デバイスに関し、具体的には、患者の心臓の僧帽弁輪を外科的に再構築するための弁形成リングおよび関連する手順に関する。より具体的には、本発明は、虚血性僧帽弁閉鎖不全症(IMVI)とともに見られるあらゆる機能異常と遭遇した病状、または機能性僧帽弁逆流をもたらす他の病状における異常な輪を矯正するように設計された僧帽弁弁形成リングおよび対応する技術に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
心臓の解剖学的構造において、左心房は、酸素付加した血液を肺静脈を通して肺から受容する。僧帽弁は、左心房を左心室から分離する。拡張期の間、洞房結節により引き起こされる収縮が心房を通って進行するにつれて、酸素付加された血液が僧帽弁を通って左心室に入る。この相において、上行大動脈につながる大動脈弁は閉じ、左心室が血液で満たされることが可能になる。静脈血の同様の流れは、右心房から三尖弁を通って右心室へと生じる。ひとたびそれらの心室が満たされると、それらは、収縮相の間収縮し、そして血液を心臓から外へポンプ輸送する。収縮期の間、僧帽弁は閉じ、大動脈弁は開き、従って、血液が左心房中へ逆流することを防ぎ、そして血液を大動脈中に、そしてそこから身体全体に送り出す。収縮期の間の左心室に関連する高い圧力に起因して、血液がこの系を通って流れ戻ることを防ぐための僧帽弁の適切な機能は、非常に重要である。
【0004】
健康な僧帽弁の種々の解剖学的構成要素が、図1に示される。僧帽弁輪MAは、左心室LAと左心房LVとの間の開口の周りを一周する線維リングを備える。ヒトの僧帽弁輪の平均断面積は、4〜10cm2である。僧帽弁は、後尖PLおよび前尖ALを有する二尖弁である。心内腱索CT(または単に「索」)は、これら2つの弁尖の自由端および基部からLV中に位置する一対の乳頭筋に延びる。これら2つの乳頭筋は、LVの前外側壁および後内側壁に沿って位置し、それ故に、それぞれ前外側乳頭筋APおよび後方内部乳頭筋PPと称される。
【0005】
左心室の通常の拡張および乳頭筋APおよびPPの下向きの変位は、心内腱索CTを引っ張り、このことは今度は上記弁尖を引っ張って開ける。心室が収縮するとき、乳頭筋は上向きに変位され、上記乳頭筋と上記輪との間の距離hは減少する。心内腱索が緩んだ状態になり、上記弁尖が一緒になるか、または「癒合」することを可能にする。図1に見られるように、弁尖は、正常に機能する心臓の実質的な表面領域に沿って癒合し、その弁尖の自由端が、左心室LVに向かって相互に曲がる。議論の目的のために、正常な、健康な心臓の僧帽弁輪MAは、僧帽弁MVを貫く平均的な血液流れの方向22に直交して規定される基準面20内に、一般に位置する。代表的な僧帽弁輪MAは、三次元的であり得るが、基準面20は、その輪の前側および後側の相対的位置を示している。
【0006】
心臓発作または心筋症を患う患者において、左心室の領域は、その収縮性および拡張性を失っている。左心室の拡張は、多くの場合、乳頭筋の下向きおよび外向きの変位を伴う。乳頭筋の位置の変化は、乳頭筋と僧帽弁尖との間の距離を増加させる。心内腱索は、その長さを顕著には変化させないので、上記弁尖を引っ張るかまたは「つなぎ止める」傾向がある。左心室の拡張の重篤な場合には、上記索のつなぎ止めは、その弁尖が癒合するのを防ぎ、僧帽弁逆流をもたらす。このタイプの逆流は、僧帽弁装置のいかなる疾患および損傷にも関与しないので、それは、多くの場合、「機能性」僧帽弁逆流と称される。左心室LVの拡張はまた、特発性拡張型心筋症または虚血性心筋症を有する患者、および他の病因(例えば、粘液腫性疾患、心内膜炎、先天的欠陥またはリウマチ性弁疾患)に由来する長年にわたる弁逆流を有する患者における、僧帽弁逆流を伴う症状である。
【0007】
図2に見られるように、左心室LVの拡張は、一般に、乳頭筋PM1およびPM2と僧帽弁輪MAとの間の距離h’を増加させる。乳頭筋PM1およびPM2と僧帽弁輪MAとの間の増加した距離h’は、今度は、心内腱索CTにおける張力を増加させ、そして基準面20の下の輪の後面の凹部を生成し得るが、しかしこの凹部は、h’を減少させるに十分に顕著ではない。その結果生じる索における張力の増加は、その弁尖が収縮期に一緒になる能力を低下させ、このことは僧帽弁閉鎖不全症につながり得る。
【0008】
図3a〜3cは、外科手術の間に露わにされるように左心房から、つまり心房平面図で、正常な僧帽弁および異常な僧帽弁を図示する。僧帽弁輪MAの前面は、「心臓骨格」の一部を形成し、そして左線維三角LTおよび右線維三角RTを含む。左三角LTおよび右三角RTは、前尖ALおよび後尖PLの接合点に示される。これらの接合点はまた、前外側三角および後内側三角または弁尖間の交連としても公知である。僧帽弁輪MAの後面は、前面とは対照的に、主に、心臓の外壁の筋組織からなる。後尖PLは、左三角LTから反時計回りに右三角RTまで、順にP1、P2およびP3として示される3つのスキャロップに分けられる。図3aは、左心房から見た僧帽弁および正常な僧帽弁の乳頭筋を示す。図3bは、僧帽装置の幾何構造に及ぼす左心室LVの後内側壁の梗塞の効果を示し、それは非対称的な拡張を引き起こす傾向がある。梗塞は、後内側壁を拡張させ、後内側乳頭筋PPを外側へ移動させる。この後内側乳頭筋PPに結合される心内腱索CTは、後尖PLおよび前尖ALの自由縁を、癒合の自然線から離して引っ張る。この後尖PLのP2〜P3領域に沿った尖弁の間に空隙が生成される。P2〜P3領域における逆流ジェットに関連する左心室LVの非対称な拡張は、虚血性僧帽弁逆流を有する患者において非常に一般的である。対照的に、図3cは、LVの対称的な拡張の場合の機能性僧帽弁逆流を図示する。両方の乳頭筋APおよびPPは、外側に移動し、後尖PL全体を外側に伸張し、そして引っ張る。LVの対称的な拡張は、僧帽弁輪の後セグメントの拡張およびそのPLのP2領域に沿った中央逆流ジェットを伴う。LVの対称的な拡張は、心筋症を有する患者において非常に一般的である。
【0009】
僧帽弁閉鎖不全症は、僧帽弁を修復するかまたは置き換えることにより、一般に処置される。僧帽弁修復について最も広く受け入れられた技術は、弁形成による僧帽弁輪の再造形である。この弁形成の目的は、2つある。輪状領域をその正常なサイズへ減少させること、および健康な僧帽弁輪の正常な幾何構造を再確立するためにその輪を作り直すことである。機能性僧帽弁逆流の場合には、不全の根本原因は、LVの拡張およびそれに関連する乳頭筋の変位である。弁形成の目的は、LVの正常なサイズを超えてその断面積を減少させることにより、LVの拡張を補償することである。小型化された輪は、2つの弁尖を一緒に近づけ、これらの弁尖の癒合を再確立する。
【0010】
市販されている弁形成外科手術のための補綴具は、ほぼ2タイプあり、何らかの混成体もある。それらは、種々の材料から作製され、輪の周縁の「直線的な」減少を可能にする可撓性輪状補綴具、ならびに種々の材料から作製され、輪の周縁の「直線的な」減少およびその輪の生理学的な収縮形状を再確立するような幾何学的再造形を可能にする剛性もしくは半剛性輪状補綴具である。さらに、半剛性補綴具は、その補綴具が心臓段階(cardiac stage)の間の輪の変形に従うことを可能にするために、何らかの変形を許容する。すべての剛性補綴具および半剛性補綴具は、インゲン豆様またはつながったD形状を有し、第1近似において直線的であり、前弁尖に対応して縫合されるリングの前半分、および後弁尖に対応して縫合される、湾曲したリングの後半分を有する。問題となっているこの輪状補綴具の形状は、心室の収縮の間、そしてそれ故に、弁が閉じる段階での弁輪の形態を再現する。現在市販されているすべてのモデルにおいて、短軸と長軸との比は、約3:4である。なぜなら、それが、正常な解剖学的比を再現するからである。
【0011】
「小型化」技術は、例えば、短軸/長軸サイズ比をなお約3:4に維持したまま、通常の28mm輪に対して26mm輪を選択することを必要とする。サイズ命名法は、上記長軸の幅に言及している。この小型化技術を用いて良好な結果が報告されているが、虚血性僧帽弁閉鎖不全症を矯正するためのこの手術の信頼性および持続性は、同じ技術を用いた僧帽弁閉鎖不全症の他の原因に対するほどには良好ではない。このことは、大体、現在利用可能な輪を用いる再造形弁形成が、ただ1つの異常を矯正し、そして虚血性僧帽弁閉鎖不全症において見られる種々の他の機能異常は、効果的には矯正され得ないという事実に起因する。
【0012】
弁形成リングは、多年にわたって種々の形状および形態で開発されてきており、僧帽弁逆流および弁の機能を低下させる他の状態を矯正している。例えば、Carpentierらは、特許文献1において、心臓弁のための2つの半剛性支持体を開示し、そのうちの一方は、閉じており(すなわち、D形状)、そしてもう一方は開いている(すなわち、C形状)。この閉じた形態において、このリングは、前後面のまわりでほぼ対称的であり、凸状の後側およびほぼ直線状の前側を有する。特許文献2、特許文献3および特許文献4はすべて、その前側でわずかに上向きに曲がった閉鎖型の弁形成リングを開示する。僧帽弁輪MAの前面は、線維状であり、従って、相対的に非可撓性(少なくとも、後面と比較して)であるので、各リングの前側における上向きの曲線は、上記リングを僧帽弁輪の解剖学的輪郭により密接に適合させる。この三次元的形態は、その輪の過度の変形を低減させる。
【0013】
一般に、従来の弁形成リングは、僧帽弁輪MAの元の形態を再生することを意図されている。図2に見られるような状態を矯正する場合、この弁形成リングを上記輪の後面に連結する縫合糸に高い応力が生成される。なぜなら、「過剰矯正リング」、すなわち、正常なサイズよりも1〜2サイズ小さいリングは、その輪を内側および上向きに「引っ張る」からである。この応力は、時には、その輪からのリングの披裂または分離を生じる。なぜなら、その縫合糸は、その組織を通して引っ張るからである。
【0014】
大動脈輪の矯正は、僧帽弁輪とは非常に異なるリングを必要とすることが、ここで注記されるべきである。例えば、特許文献5および特許文献6は、洞様毛細血管弁形成リング、すなわちいわゆる「スキャロップ型」弁形成リングを開示し、その弁形成リングは、3つの心臓弁膜尖大動脈輪の起伏のある形状に従う。このようなリングは、僧帽弁の欠損を矯正するためには適していない。
【特許文献1】米国特許第4,055,861号明細書
【特許文献2】米国特許第5,104,407号明細書
【特許文献3】米国特許第5,201,880号明細書
【特許文献4】米国特許第5,607,471号明細書
【特許文献5】米国特許第5,258,021号明細書
【特許文献6】米国特許第6,231,602号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
僧帽弁閉鎖不全症、うっ血性心不全、および僧帽弁逆流の処置における良好な結果が、上記の方法および装置の予備的な適用において得られているが、これらの結果は顕著に改良され得ると考えられる。具体的には、虚血性僧帽弁閉鎖不全症に存在する機能不全のすべて、すなわち、その輪の拡張、その輪の非対称的な変形、および後乳頭筋とその輪との間の距離の増加を考慮に入れた僧帽弁形成リングを製造することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の要旨)
本発明者らは、特定の病理学的状態において、僧帽弁の再構築の手術をより効果的にするために、例えば、片方または両方の弁尖の解剖学的または機能的な組織不全の場合には、弁尖を互いにより近づけるために、短軸/長軸のサイズ比を改変する必要が存在することに気づいた。3:4という従来受け入れられている比に対応しない解剖学的バリエーションが、自然状態で頻繁であることもまた観察された。
【0017】
本発明によれば、より良好な僧帽弁輪修復結果が、補綴具の最大幅セクションを規定する第1の横断面上で互いに結合されたリングの後半分およびリングの前半分から構成される輪状補綴具によって達成された。この輪状補綴具は、上記第1の面に直交し、上記結合物に対して等距離にある第2の面に沿って測定された場合の、このリングの前半分とリングの後半分との距離と、その補綴具の上記最大幅との比が3:4未満であることを特徴とする。
【0018】
1つの局面では、本発明は、僧帽弁輪の後面が下向きに異常に垂れ下がるような病理学的状態を有する僧帽弁輪における移植のための弁形成リングを提供する。この弁形成リングは、前セクションおよび後セクションを有する丸いリング本体を備える。このリング本体は、中央流れ軸の周りに配置され、この流れ軸は、上向きの方向および下向きの方向を規定し、この下向きの方向は、僧帽弁輪を通る血流の方向に対応する。後セクションで、このリング本体は、この中央流れ軸に直交する面から下向きに曲がる。
【0019】
このリング本体は、その1つの端部から最低点へ約2〜15mmの間、下向きに曲がり得、そして望ましくは、その1つの端部から最低点へ約4〜8mmの間、下向きに曲がり得る。このリング本体の弓状部は、後セクションの中心にあってもなくてもよく、そして虚血性僧帽弁閉鎖不全症の特定の場合には、それは上記リングのP3セグメントの中心にある。好ましくは、このリング本体は、リング本体中の弓状部が手作業で作り直され得るように、可鍛性の材料から作製される。望ましくは、リング本体は、各心拍サイクル全体にわたって心臓の筋肉により付与される応力に対向してその後部の弓状部を保持する半剛性な材料から作製される。このリング本体は、後セクションにおいてを除き、実質的に平面状であり得るか、またはリング本体の前セクションは、その1つの端部からその最低点へ上向きに曲がり得る。
【0020】
流れ軸に沿って見た場合の平面図おいて、このリング本体は、好ましくは、短軸と直交する長軸を有する卵形を規定し、上記短軸は、前セクションおよひ後セクションの両方を二分する。さらに、後セクションにおける弓状部は、リング本体の周りに長軸から、約0〜45°の間の、より好ましくは約30°の角度θで間隔を空けた、短軸に関して対称的な位置から始まり得る。
【0021】
上記リング本体は、後セクション上の下向きの弓状部のいずれかの側に2つの上向きの弓状部をさらに備え、ここで下向きの弓状部は、約2〜15mmの間であり得る。1つの実施形態では、そのリング本体は、同心円上に配置される複数のリング要素を備える。各リング要素の間にポリマーの細片が提供され得る。必要に応じて、このリング要素は、流れ軸に直交する寸法においてよりも流れ軸寸法において実質的により大きい高さを有するバンドを備える。さらに、このリング要素は、そのリング本体が、リング本体の残りの周りよりも後セクションにおいてより可撓性であるように、変化する高さを有し得る。
【0022】
本発明の別の局面は、前面に対して、血流軸に沿って下向きに押し下げられた後面を有する心臓の僧帽弁輪を修復する方法である。この方法は、その輪の前面に適合するような大きさである前セクションおよび後面に適合するような大きさである後セクションを有する弁形成リングを移植する工程を包含し、ここでこのリングの後セクションは、前セクションに対して中央軸に平行に下向きに曲がる。この弁形成リングは、可鍛性であり得、そして外科医は、この弓状部を後セクションにおいて手作業で調整する。
【0023】
本発明の別の局面は、後面、前面、および血流軸を有する心臓の僧帽弁輪を修復する方法である。この方法は、僧帽弁輪の形状を検査する工程、およびその僧帽弁輪の形状に基づき、三次元的な弁形成リングを選択する工程を包含する。選択された弁形成リングは、中央軸の周りに全体的に配列された前セクションおよび後セクションを有する。この中央軸は、上向きの方向および下向きの方向を規定し、ここでリングの後セクションは、この中央軸に直交する面から下向きに曲がる。この方法は、このリングの後セクションが僧帽弁輪の後面に結合し、その後セクションが血流方向に曲がるように、弁形成リングを移植する工程を包含する。
【0024】
さらなる局面において、本発明は、僧帽弁輪における移植のための弁形成リングを提供し、この弁形成リングは、前セクションおよび後セクションを有する丸いリング本体を備える。このリング本体は、中央流れ軸の周りに配置され、この中央流れ軸は、上向きの方向および下向きの方向を規定し、この下向きの方向は、僧帽弁輪を通る血流の方向に対応する。上に記載された弁の機能不全の3つの原因を矯正するために、このリングの形状および寸法は、現在利用可能なリングの形状および寸法とは異なる:1)心室の直径が減少している;2)このリングは、非対称的であり、PC〜P3領域の内側方向の前進が、そこから前側への斜めの距離の減少をもたらす;そして3)このリングのP2およびP3領域は、輪と後乳頭筋との間の増加した距離h’を減少させるために、下向きに反っている。
【0025】
本発明の1つの特定の局面によれば、僧帽弁輪における移植のための弁形成リングが提供され、そのリングは、虚血性僧帽弁閉鎖不全症を矯正するために設計されている。この弁形成リングは、中央流れ軸の周りに配置されたほぼ卵形状のリング本体を備え、この中央流れ軸は、上向きの方向および下向きの方向を規定する。この下向きの方向は、左心房から左心室への僧帽弁輪を通る血流の方向に対応する。この流れ軸に沿って見た場合の平面図において、このリング本体は、短軸に直交する長軸を有し、この長軸と短軸とは、この流れ軸と直交している。心房平面図において、前外側三角と後内側三角との間に一般に規定される前セクション、およびこのリング本体の残りの周囲の周りでかつ三角の間の後セクションを有する。この後セクションは、前外側三角から始まって反時計回り方向に連続する3つの一連のセグメントP1、P2、およびP3に分けられ、この短軸は、この前セクションおよびこの後セクションのP2セグメントの両方を横断する。
【0026】
虚血性僧帽弁閉鎖不全症を矯正するために設計されているリングの1つの別のバージョンでは、所定の長軸寸法が与えられると、上記短軸の寸法の絶対値を、正確な3:4比から約2〜4mmの間だけ減少させることにより、上記長軸の寸法に対するこの短軸の寸法の比が、3:4未満にされ、その結果、上記弁形成リングの開口領域全体を過剰に減少させることなく、上記2つの弁尖の間の癒合を再生する。
【0027】
虚血性僧帽弁閉鎖不全症を矯正するために設計されているリングの1つのバージョンでは、上記リング本体は、このリング本体の残りのセクションに対して下向きに反っているP2セグメントおよびP3セグメント内に位置する後セクションの一部を除いて、この長軸および短軸により規定される平面内またはサドル型三次元表面内に実質的に存在する。上記下方向に反っている部分は、上記リング本体の最低の高さである先端をさらに含み、この先端は、このリング本体のP1セグメントに向かって、この下向きに反っている部分の中で中心からずれている。結果として、後部立面図において、このP1セグメントとこの先端との間のこのリング本体の移行部が、この先端とこのP3セグメントの下向きに反っていない部分との間のこのリング本体の移行部よりも、上記リング本体の周りで短い距離を延びる。
【0028】
本発明の弁形成リングのいずれかは、半径方向に隣接した2列の縫合糸線を収容し得る、上記リング本体の周囲のまわりに拡大部分を有する、リング本体の周りの縫い付けカフをさらに備え得る。上記半径方向に隣接した2列の縫合糸線の配置を示すために、望ましくは、マーキングが上記縫い付けカフ上に提供される。上記縫い付けカフの拡大部分は、上記リングの全周を、この全周よりも短く延び得、そして好ましくは、少なくとも部分的に上記P3セグメント中にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(好ましい実施形態の説明)
本発明は、虚血性僧帽弁閉鎖不全症、および先行技術の補綴リングによって十分に矯正されない他の病状において存在するすべての機能不全を矯正するための種々の弁形成リングを提供する。種々の実施形態が、独立してかまたは組合せて利用され得る特徴とともに本出願において示されかつ記載される。それ故に、本明細書中に記載される任意の特徴は、1つ以上の他の特徴により補完され得ることが理解されるべきである。実際、特に有用な組合せは、前セクションにおける下向きの弓状部と組合せた、前後寸法の減少または「引き込まれた」P3セグメントのいずれかであると考えられる。
【0030】
添付された図面は、本発明の弁形成リングのいくつかの例示的な実施形態を図示し、それらの弁形成リングは、連続的なものであり、前セクション、後セクションおよび右側部および左側部を有するものとして記載され得る。これらの側部のすべては、全体的に曲線からなり、それらの間の唐突な移行部を示す特定の区分けはない。むしろ、それらの隣接する側部の間の滑らかな移行部セクションは、上記リングに全体的に丸い(例えば、卵形の)形態を与える、曲線的な連結を提供する。
【0031】
本発明の弁形成リングは、一般的に卵形状を有するものとして記載される。この定義は、周囲のまわりで連続的であり、かつ(長軸に沿った)1つの次元では、(短軸に沿った)直交方向におけるよりも長い、心房平面図における種々の形状を包含することを意図されている。図面に見られるように、その形状は正確には卵形ではないが、大文字の「D」により近いか、またはインゲン豆に模せられ得る。種々の形状は、生得の僧帽弁輪に適合することがまた意図されているが、虚血性僧帽弁の種々の変形および機能不全をも考慮に入れていることが理解されるべきである。
【0032】
代表的な僧帽弁形成再造形において、その広がった輪よりもわずかに小さいサイズの弁形成リングが移植される。このリングは、1サイズか2サイズ小型化され得、このことは、代表的には、2〜4mmの長軸寸法の減少に対応する。本発明の弁形成リングは、現在利用可能なリングに比べて2〜4mmの短軸寸法の減少を有することにより、この減少を取り込む。望ましくは、所定の長軸寸法が与えられると、この長軸寸法に対する短軸寸法の比は、正確な3:4の比から約2〜4mmの間だけ短軸寸法の絶対値を減少させることにより、3:4未満であり、その結果、上記弁形成リングの開口領域全体を過剰に減少させることなく、上記2つの弁尖の間の癒合を再生する。
【0033】
さらに、前後または短軸サイズの減少は、上記P3領域においてより明確であり得、その結果、この領域における後尖の支配的なつなぎとめおよび輪の拡張をさらに過剰矯正する。このことは、リングの非対称的な形状を生じる。このリングの後セクションの作り直しによってもたらされる短軸に沿ったサイズ減少が、より成功裏の弁尖の癒合および全般的によりよい臨床的結果を生じることが見出された。この形態は、そのリングの前セクションを再形成することだけにより短軸寸法を減少させたいくつかの以前の弁形成リングとは、異なる。
【0034】
いくつかの実施形態において、後セクションは、血流の方向において下向きに曲がり、左心室LVに向かってより近い後尖スキャロップP2およびP3(図3bを参照のこと)の領域において僧帽弁輪を再形成するのに役立つ。このような形態によって上記輪は、その輪と乳頭筋との間の距離を減少させ、そしてそれ故に輪状縫合糸上の応力を減少させるために、これらのセグメントにおいて下向きに変位される。
【0035】
図4において、先行技術に従う輪状僧帽弁のための補綴具が示される。それは、インゲン豆様またはD形状を有し、そして第1近似では直線的であり、前弁尖2の結合に対応して縫合されているリングの前半分1および後弁尖の結合に対応して縫合されている湾曲したリングの後半分から構成される。リングの後半分2およびリングの前半分1は、この補綴具の最大幅セクションを規定する横断面3上に位置する2つの点5および6で結合される。さらに、長軸方向面4もまた規定され、それは、横断面3に対して直交して配列され、結合点5および6から等距離にある点7および8でこの補綴具を横断する。リングの後半分2は、従って、点5と7との間に位置する第1の側方ゾーン(左)9および点6と7との間に位置する第2の側方ゾーン(右)10に再分割される。それぞれ、平面3および4に対する上記補綴具の横断点5、6および7、8は、その補綴具の寸法の計算のための項を規定する。公知技術によれば、点7と8との距離(本明細書中でこの補綴具の高さとしても規定される)と点5と6との距離(本明細書中でこの補綴具の幅としても規定される)との間の比は、代表的には3:4に等しい。
【0036】
図5において、本発明に従う僧帽弁のための輪状補綴具の第1の実施形態が示される。それは、図4に描写された補綴具と実質的に同じ形状を有するが、その補綴具の高さと幅との間の比は、3:4未満であり、例えば、2.5:4に等しいか、または2:4に等しい。
【0037】
それ故に、あらゆるサイズの補綴具に対して、2つ以上の減少した比が提供され得る。「サイズ」によって、この補綴具の横断方向の幅の寸法が意味され;「サイズ」は、臨床的パラメータを示し、それに基づいて、検討されている各単一の臨床症例においてこの補綴具が選択され、そしてそれはまた、この補綴具の識別パラメータでもある。
【0038】
弁形成手術のために現在使用されている補綴具に比べてより小さい比は、従来の補綴具では十分な仕方で処置不能である病状という選択された症例におけるその使用を可能にする。
【0039】
この場合のより小さい比は、中程度かまたは重大な割合で、繋ぎとめ(心臓の先端に向かって伸張する)対称的(各弁尖に関して)である弁尖の減少された動きを特徴とする病状を処置するための機能を有する。この比の減少は、上記補綴具により「変形された」形状を与え、その形状は、その選択された症例において、弁尖のよりよい並置を可能にする。例えば、拡張型心筋症において、左心室の膨張が乳頭筋の先端に向かう側方の動きを決定する場合、この弁尖は、心臓の先端に向かって伸張し、従って中央レベルで並置はなくなる。さらに、可能なサイズ決めは、解剖学的要件:リングの前半分1(前尖の移植片に対する基部)は、解剖学的に固定されており、改変不可能であるということ、を尊重せねばならず、それゆえにそのサイズ決めは、この構造体には適用されるべきではなく、この補綴具の幅に適用されるべきである。この補綴具の通常の前面の幅の維持は、高さの減少に伴って、前尖の変形を起こしにくい小型化を可能にし、それ故に閉鎖不全症の残存のリスクを低減する。
【0040】
図6において、本発明に従う僧帽弁のための輪状補綴具の第2の実施形態が示される。この場合、リングの前半分の2つの側方部分の曲率半径を規定するために、3:4という自然の高さ/幅比は維持される。中央ゾーンにおいて、点7の近くにおいて、3:4未満の高さ/幅比を得る目的で、リングの後半分1とリングの前半分2との間の距離は減少されている。それ故に、リングの後半分2の中央ゾーンは、犬の骨またはかもめの羽の形状を思い起こさせ、そして交連のレベルで輪の減少を制限することにより中央レベルで癒合を増加させる形態を取る。
【0041】
いくつかの極端な場合において、8の字形状の形態を得るために、中央レベルでの癒合を改良するために、上記中央ゾーンにおける2つの半リングの間の距離をゼロに等しくすることが有用であり得る。この再造形は、中央の癒合を強制するために、弁の中央で弁尖が結合されている二重開口手術を模倣する。この補綴具はまた、縫合糸上の応力を減少するため、かつ弁領域の減少を最小にするために、このタイプの技術とともに使用され得る。
【0042】
図7において、本発明に従う僧帽弁のための輪状補綴具の第3の実施形態が示される。この実施形態において、上記側方ゾーンのうちの1つ(例えば、第2の側方ゾーン(右)10)の曲率半径は、弁尖の順応性の減少(虚血性病状におけるような弁尖の病的な非対称的な並置)に伴うバルブセクターに対応して反応力の選択的増加を誘導するように、増加される。従って、上記補綴具の1つの部分(例えば、第1の側方ゾーン(左)9)は、従来の補綴具と実質的に類似の形態を維持し、そして1つの部分(例えば、第2の側方ゾーン(右)10)は、小型の形態を取る。換言すれば、第1の側方ゾーン(左)9の中央点と長軸方向平面4との間の距離は、第2の側方ゾーン(右)10の中央点とその長軸方向平面との間の距離よりも大きい。
【0043】
本発明によれば、上記補綴具は、ヒトの器官により非常に許容された不活性な材料から作製され得、上記使用に対して適切な耐性を有し得、そしてそれに与えられた形状を実質的に維持し得る。
【0044】
本発明の例示的な弁形成リング30が、図8に、僧帽弁輪MAの周りに移植されて示される。上記のように、僧帽弁輪は、前尖ALおよび後尖PLを有する。リング30が移植される場合、これらの弁尖は、それらが癒合面32で出会うように、一緒に近づけられて支持される。従って、リング30は、機能性僧帽弁逆流の問題を矯正する。
【0045】
リング30は、卵形または多少D形状の形態を有し、相対的にまっすぐな前セクション34が、湾曲した後セクション36に対向している。1対の三角または交連マーカ38a、38bが、前側34の境界を全体的に定め、他方1対の反対側セクション40a、40bが、これらのマーカの各々と後セクション36との間に延びる。複数の結紮された縫合糸ループ42が、代表的には使用されて、リング30が僧帽弁輪MAに固定されるが、ステープル、フィブリン接着剤などの他の固定具が使用され得る。
【0046】
弁形成リング30が最も適する病理学的状態において、図2に示されるように、僧帽弁輪の後面は、前面に対して押し下げられている。図8の視野において、その後面は、その前面に対してその頁の中に押し下げられている。本発明の弁形成リング30は、僧帽弁輪MAの改変された形状に全体的に従うように形作られた後セクション36を有する。換言すれば、後セクション36は、前セクション34に対してそのページへと曲がっている。縫合糸42で適所に固定される場合、例えば、リング30は、僧帽弁輪MAを、その輪を元の実質的に平面状の形態に戻そうとするのではなくその改変された形状で支持する。同時に、リング30は、望ましくは、その輪により規定される開口の周縁を締め付け、その結果、前尖ALおよび後尖PLを一緒により近づける。リング30は、僧帽弁輪MAの後面をその改変された位置から上向きに引っ張らないので、取り付け縫合糸42中に高い応力を発生させず、従って披裂の可能性がより低い。
【0047】
図9および10は、例示的な弁形成リング30を、その後側に押し下げられている僧帽弁輪の上に斜視図で示す。後セクション36におけるリング30のその弓状部は、図10において最もよく見られ、それは、機能性僧帽弁逆流とともに遭遇する病状における僧帽弁輪MAの後面の押し下げを模倣する。
【0048】
図8〜10の例示的な弁形成リング30が、図11A〜11Cにおいて、詳細に示される。リング30は、織物カバーを完備して示される。方向付けの目的のために、図11Aは、X軸およびY軸が図1〜2に関して上で言及されたような基準面20を全体的に規定する直交軸を図示する。X軸は、最大寸法の点で一方の側40aからその反対側40bへリング30を横切って延びる。従って、X軸は、リング30の長軸を規定する。Y軸は、リング30についての対称面を規定し、前側34の中間点と後セクション36の中間点との間に延びる。Y軸はまた、リング30についての短軸を規定する。
【0049】
多くの従来のリングの場合のように、この長軸寸法に対する短軸寸法の比は、望ましくは約3:4である。このサイズ比は、僧帽弁輪の「古典的」形状であり、弁形成リング30の最良の形態であり得る。しかし、より小さい短軸/長軸比を有する他の形状が、現実には、弁尖の癒合を増加し得ることが企図される。幾何学的には正確ではないが、非円形のリング形態は、卵形、楕円形、またはD形状であると考えられ得る。本発明はまた、例えば、C形状を有する不連続なリングの形態をとり得ることが注記されるべきである。このようなリングにおける裂け目は、前セクションに存在し得、そして後セクションは連続的であり、説明されたような下向きの弓状部を示す。
【0050】
図11BにおけるZ軸は、移植された場合の、リング30を通る血流の軸に沿って存在し、そして正のZ方向が「上向き」方向であり負のZ方向が「下向き」方向であり、リング30は、血液が下向き方向に流れるように僧帽弁中に移植されるように設計されていることが理解される。
【0051】
後の弓状部を説明するのに役立つように、リング30の周りでいくつかの点が注記されている。これらの点、および図12A〜12Bに示される点は、リング30の断面を通る想像上の中心点である。2つの点Aは、X軸から角距離θでY軸のいずれかの側上に対称的に位置している。後セクション36の中間点は、Bで示される。リング30は、点BがZ軸に沿って最低の高さになるように、後部弓状部を有する。この後部弓状部の大きさは、図11Cの寸法Z1により示される。後セクション36のいずれかの側の点Aは、後部弓状部が始まる位置を示す。すなわち、後セクションを除いて、リング30は、好ましくは実質的に平面状である。しかし、先行技術の特定のリングにおけるように、前セクション34は、約2〜4mm(0.08〜0.16インチ)の間の距離だけ、必要に応じて上向きに曲げられ得る。後者の例では、後セクション36は、三角マーカ38a、38bの高さに対してZ方向で下向きに曲がる。
【0052】
図11A〜11Cに見られるような、リング30についての種々の可能な形態が企図され、寸法Z1および角度θは、僧帽弁輪全体のサイズ、後面の解剖学的な垂れ下がりの程度、および外科医の好みを含む他の要因によって決定される範囲の間で変動する。しかしながら、特定の範囲は、本明細書中に記載されるような特定の解剖学的不規則性を示す大多数の患者を支援し矯正するために適切であると考えられる。下向きの弓状部または後部弓状部は、好ましくは、後セクション36の大部分に沿って、X軸から0°と45°との間(θ)にある点Aの間に延びる。より好ましくは、点Aは、X軸から20°と40°との間、より具体的には約30°である。弓状部の大きさZ1は、上記リングのサイズに依存して、約2〜15mm(0.08〜0.59インチ)の間であり得、より代表的には約4〜8mm(0.16〜0.31インチ)の間である。
【0053】
リング30は、Y軸の周りに対称的であるとして図11A〜11Cに示されているが、それは、そうでなければならないということは必ずしもない。例えば、点Bは、上記下向きの弓状部が後セクション36の中心にならないように、Y軸からずらされ得る。非対称的なリングは、図13Aおよび13Bを参照して、以下に示されかつ説明される。
【0054】
図12A〜12Cは、上向き弓状部および下向き弓状部の両方を有する本発明の代替の弁形成リング50を図示する。この図においても、リング50は、織物カバーを完備して示される。リング50は、前セクション52、後セクション54およびそれらの間の1対の側方セクション(番号付けせず)を備える。リング50は、前セクション52上でほぼ平面状であり、後セクション54上では方向付けられている。この図においても、Y軸を横切って対称的に配置される点Aは、各々の側で、リング50が平面から湾曲し始める位置を示す。この実施形態において、リングは、図12Bで最もよく見られるように、点Aから高い点Cへ、Z軸方向において上向きに湾曲し、そして後セクション54の中間点Bへと下向きに下がる。点AとBとの間の上記リングの下向き弓状部は、図12Cにおいて、寸法Z2として示され、これは、図11CにおいてZ1に対して与えられた大きさと類似の大きさを有する。上向き弓状部は、患者の輪の形状により適合するように選択され得る。さらに、前セクション52は、約2〜4mm(0.08〜0.16インチ)の間の距離だけ上向きに曲がり得る。
【0055】
図12A〜12Cに示されるリング50の種々の置き換えが企図され、その寸法は、多数の因子に基づいて変更される。例示の実施形態では、点Aは、望ましくは、約0〜15°の間、より望ましくは約5〜10°の間のX軸からの角度αで配置される。リング50の最大高さである点Cは、好ましくは、約15〜45°の間、より好ましくは約25〜35°の間のX軸からの角度βで間隔を空けて置かれる。リング50の最低点Bは、図11A〜11Cの実施形態におけるように、Z軸に沿って曲がり得、その結果、図12Cに示されるように、Z2は、このリングのサイズに依存して、望ましくは、約2〜15mm(0.08〜0.59インチ)の間、より典型的には約4〜8mm(0.16〜0.31インチ)の間である。それ故に、リング50の全体の高さは、少なくとも2mmであり、15mmより大きくあり得る。
【0056】
図13Aおよび13Bは、本発明の弁形成リングにおける使用のための内側リング本体60を示す。リング本体60は、後セクション64の中心からずれている後部弓状部62を有する。図示された実施形態では、弓状部62は、後内側に向かって(右へ)リング本体60の長軸幅全体の約20%だけずれている。別の言い方では、そのずれは、平面図において、弓状部62は、時計配置で中心にあり、12:00が前側の中心に存在する。その意味で、弓状部62は、3:00と6:00との間に中心を置き、より好ましくは約5:00に中心を置く(図15Aおよび16Aの用語を使用すると、弓状部62は、後セグメントP2およびP3のどこかに中心を置くが、P2セグメントの中心からはずれている)。下向き弓状部の軸方向の大きさZ3が示され、そしてこの大きさZ3は、リングサイズに依存して、約2.0mm(0.08インチ)から約4.0mm(0.16インチ)まで、より好ましくは約3.0mm(0.12インチ)から約3.8mm(0.15インチ)まで変動し得る。さらに、リング本体60は、約2〜4mm(0.08〜0.16インチ)の間の距離だけ上向きに曲がった前セクション66を有する。
【0057】
内側リング本体60は、中央線からずらされた後部輪弓状部を有する患者に適合する非対称なリングを例証する。多くの患者は、本明細書中に記載される病理学的状態から生じるこのような奇形の解剖学的構造を有すると考えられる。しかし、中心に存在するかまたは左にずれてさえいる後部弓状部が観察されている。それ故に、本発明において具現化されるリングの1つの形態は、中央または右に後部弓状部で予め形作られ、そして患者の輪の正確な形状を調べたあとで外科医によりその弓状部が拡大または縮小され得るように可鍛性である形態である。さらに、このような変換可能なリングにおいて、この弓状部は、例えば、右から左へずらされさえもし得る。このリングの材料は、手作業による変形を許容するが、ひとたび移植され、正常な生理学的応力に曝されると、さらなる変形に耐えるに十分堅い。
【0058】
このリングは、好ましくは、内側リング本体およびこのリング本体が僧帽弁輪に縫合されることを許容する外側縫い付けシースを備える。この縫い付けシースは、縫合糸がそれを通るに十分多孔性である、および/または可撓性であるべきである。1つの例示的構築は、内部リング本体を縫合糸が透過可能な材料(例えば、シリコーン)の管状シースの中に封入し、次いでそのシースを布の管(例えば、ポリエチレンテレフタレート(polyethyl terapthalate))で覆うことである。
【0059】
単に僧帽弁輪の周縁を減らすために設計されている可撓性弁形成リングとは対照的に、本発明の弁形成リングは、少なくとも半剛性でなければならない。それは、後部弓状部を各心拍サイクル全体にわたって心臓の筋肉により付与される応力に対向してその後部弓状部を保持せねばならない。例えば、上記リング本体は、Elgiloy(コバルト−ニッケル合金)、チタン、またはNitinol(チタン−ニッケル合金)のような材料から作製され得る。例示的なリング構築物は、CARPENTIER−EDWARDS CLASSIC Annuloplasty RingおよびCARPENTIER−EDWARDS PHYSIO Annuloplasty Ringに見られ、これらはともに、Irvine、CaliforniaのEdwards Lifescienceにより製造され販売されている。
【0060】
図14は、Elgiloyの複数の平坦なバンドを複合構造体で利用する本発明の弁形成リングの内側本体の1つの例示的構築物を図示する。具体的には、外側から内側へ4つのバンド70a、70b、70c、および70dが存在する。これら4つのバンドは、リングの形状で同心状に配置される。各バンドは、約1.4〜2.0mm(0.056〜0.078インチ)の間の幅を有する材料の平坦な細片である。1つの実施形態では、バンド70は、そのリング本体の前セクション72中で重なっており、そして例えば多点でのスポット溶接により一緒に固定されている。各細片の幅はまた、後セクション74においてよりも前セクション72においてより大きくあり得、このことは、このリング本体が他の任意のセクションにおいてよりも後セクションにおいてより可撓性であることを意味する。示されてはいないが、保護フィルムの複数の細片が各バンド70の間、そして外側バンド70aの外側面上で使用される。この細片は、Mylarのようなポリマーであり得る。この細片は、バンド70間のこすれを低減するのに役立ち、また縫合糸の針を外側バンド70aから反らせ、従ってそれに対するひっかきを防ぐ。
【0061】
本弁形成リングで僧帽弁輪を支持することによって、前尖の下に押し下げられている後尖が維持され、従ってそれらの間の癒合の領域が健康な弁におけるのと異なることが容易に明らかとなる。このことは、乳頭筋および後尖のずれを伴う心室の病状により必要とされる。しかし、当業者は、癒合のために利用可能な弁尖の余りの領域に起因して、そしてこの再配列は、2つの弁尖の癒合を経時的に改善し、それ故に逆流を低減するはずの輪の形状の変化によりずらされるので、弁尖のこのわずかな再配列が受容可能であることを認識する。
【0062】
本発明の弁形成リング130のさらなる例示的な実施形態が図15Aおよび15Bに見られる。図15Aは、いわゆる心房平面図である。なぜなら、それは、心房側から流れ軸132に沿ってリング130を描くからである。つまり、血流は、図15Aに見られるように、リング130を通ってページの中へであり、図15Bにおいては下向きである。
【0063】
弁形成リング130は、内部リング本体の上に外側の布カバー(番号付けせず)とともに完全に構築されて示される。この可撓性布カバーは、リング130の全体的な形状に対して相対的にほとんど何も付加しせず、それ故にその形態は内部リング本体の形状に依存することがまた理解される。それ故に、本明細書中のリングの種々の形状が説明される場合、それは、実際には、参照されるリング本体の形状である。
【0064】
弁形成リング130は、前外側三角T1と後内側三角T2との間に規定される前セクションASを備え、このリングの残りは、3つの一連のセグメントP1、P2、およびP3から構成される後セクションにより上記三角の間に規定される。弁形成リング130は、ほぼ卵形であり、より長い寸法は長軸134に沿い、より短い寸法は短軸136に沿っている。短軸136は、前セクションASおよび後セグメントP2の両方を横切る。好ましい実施形態では、短軸136は、前セクションASおよび後セグメントP2を両方とも二分する。
【0065】
図15Bに見られるように、弁形成リング130は、長軸134および短軸136により規定される平面に実質的に存在し、この平面は、望ましくは、流れ軸132に直交している。代替の実施形態では、前セクションASは、AS’として示される点線により見られるように、(流れ軸132に対して)上向きに反っていてもよい。この上向きに反った前セクションAS’は、僧帽弁輪の上向きに曲がった前面に適合する、望ましい三次元的形態を提供する。
【0066】
再び図15Aを参照して、4本の半径方向の線140a、140b、140c、140dは、流れ軸132から外方向へ広がり、前セクションASと後セグメントP1、P2、およびP3との間の分割線を示す。前セクションASは、三角T1とT2との間にかなり正確に位置決めされ得、三角T1とT2は、代表的には、図3aに見られるような生得の三角または交連の位置に対応するマーカ筋である。他方、後セグメントP1、P2、およびP3は、後セクションの周囲の周りの取り囲む特定の弧として、いくらか概略的に示される。後セグメントP1、P2、およびP3により規定される弧の大きさは、僧帽弁後弁尖スキャロップの実際の測定値、および外科医の好みを含む種々の要因に依存して変動する。しかし、概して、長軸134は、第1の後セグメントP1および第2の後セグメントP3の両方を横断し、そして短軸136は、中央後セグメントP2を横断する。
【0067】
弁形成リング130は、短軸136に対して非対称的な形態を有し、後セクションのP1セグメントの凸部は、P3セグメントの凸部よりも大きい。特に、P3側の一部は、上記リングの中心に向かって引き込まれ、その結果、斜め内側寸法線142bよりも短い斜め内側寸法線142aを規定する。寸法線142a、142bは、前セクションASの中央内側端上の短軸136上の点144から測定される。寸法線142aは、前セクションASの中央の点144に最も近いP3ゾーン中の点へ引かれ、短軸136と角度θを形成する。寸法線142bもまた、短軸136から角度θで、しかし線142aとは反対の回転方向で配置される。
【0068】
別の言い方をすれば、弁形成リング130は、短軸136と後セグメントP2との交点にある点152と、第2三角T2との間に延びる減少した湾曲部分150を除いて、ほぼ卵形を有する。「減少した湾曲」は、短軸136に対してリング130の反対側の湾曲に関連するものである。つまり、セグメントP1、およびセグメントP2の左側に関連している。リング130の従来の「卵」形は、そのリングの改変部分の周りの点線伸張部154により示され、そして減少した湾曲150の逸脱は明らかである。減少した湾曲150は、中央後セグメントP2のほぼ半分および第3の後セグメントP3の全体を通って延びて示される。あるいは、中央後セグメントP2は、リング130の残りの卵形形状を続け得、そして減少した湾曲部分150は、想像上の点156からのみ第2三角T2へ延び得る。減少した湾曲150は、望ましくは、想像上の卵形154ほどには凸状ではないが、直線的でさえあり得、またはわずかに凹状でさえあり得る。
【0069】
P3セグメントの減少した湾曲150を提供することの効果は、他のスキャロップよりも流れ軸に向かってより近い後尖スキャロップP3(図3bを参照のこと)の領域において僧帽弁輪を再造形することである。この様式での僧帽弁輪の前後寸法の減少は、虚血性僧帽弁閉鎖不全症において存在する機能不全をより効果的に矯正すると考えられる。
【0070】
図16A〜16Cは、本発明の代替的な弁形成リング160の平面図および立面図であり、そのリングはまた、虚血性僧帽弁閉鎖不全症において存在するすべての機能不全を矯正するような形態である。上で説明したリング130の場合のように、弁形成リング160は、流れ軸162の周りで、そして長軸164および短軸166に対して、ほぼ卵形である。リング160は、2つの三角T1とT2との間に規定される前セクションAS、およびこのリングの残りの周りで上記三角の間に延び、そして3つの一連のセグメントP1、P2、およびP3から構成される後セクションを有する。
【0071】
弁形成リング160は、P2セグメントおよびP3セグメント内に位置する後セクションの一部分170(流れ軸162に対して下向きに反っている)を除いて、実質的に平面(またはサドル型の三次元的表面)に存在する。図16Bで最もよく見られるように、下向きに反った部分170は、リング160の最低の高さである先端Aを備える。下向きに反った部分170は、望ましくは、もっぱらP2セグメントおよびP3セグメント内にあり、後セクションの周りに点Bから点Cへ延びるように示される。点Bは、望ましくは、第1の後セグメントP1と第2の後セグメントP2との間の交点に存在し、他方、点Cは、望ましくは長軸164と第3の後セグメントP3との交点にに存在する。点A、B、およびCの正確な位置は、反った部分170がリング160の後セクション中に、そして主に第1の後セグメントP1の外側に存在する限り、変動し得る。
【0072】
好ましい実施形態では、反った部分170の先端Aは、P1セグメントに向かって中心をはずれており、その結果、図16Bに見られるように、点Aと点Bとの間の移行部172は、リング160の周りで、点Aと点Cとの間の移行部174よりも短い距離に沿って延びる。より好ましくは、点Aと点Cとの間の移行部174は、示されるように、ほとんど直線的である。下向きに反った部分170および細長の移行部174を提供することの効果は、輪と乳頭筋との間の距離h’の増加を減少させるため、そして輪状縫合糸上の応力を減少させるために、これらのセグメントおいてこの輪を下向きにずらすように、左心室LVに向かってより近い後尖スキャロップP2およびP3(図3bを参照のこと)の領域において僧帽弁輪を再造形することである。
【0073】
前セクションASは、直線的であるとして図16Aに示されるが、代替の形態がAS’に点線で示される。代替の前セクションAS’は、短軸166に沿ってわずかに内側に反っており、従って、リング160の前後寸法を減少させる。上述のように、図15Aにおけるリング130の減少した湾曲部分150はまた、下向きに反った部分170と合わされ得、さらに前後寸法を減少させる。
【0074】
本発明の弁形成リング180のさらなる例示的な実施形態が、図17Aおよび17Bに示される。上記リングの周りのセクションおよびセグメントに関して上で使用される命名法は、一貫性がある。リング180は、多くの点で、図16A〜16Cに見られるリング160と類似している。なぜなら、それは後セクションに下向きに反った部分182を組み込むからである。再び、反った部分182は、後セクションのP1セグメントに向かって、リング180の短軸(示さず)に対して中心からずれた先端Aを有する。実際、本発明者らは、後側の下向きの反りと減少した前後寸法または斜めの(非対称的な)引き込まれた後セクションとの組合せが、虚血性僧帽弁閉鎖不全症(IMVI)を矯正するために、特に効果的であることを決定した。これらの特徴が本明細書中に独立に説明されていようがいまいが、それらのいかなる組合せも、本発明により包含されないことが注記されるべきである。
【0075】
弁形成リング180は、実質的に平面状であるのとは対照的に、実質的にサドル型である。つまり、後セグメントP1およびP3は、参照平面184から上向きに隆起し、他方、前セクションASは、ほぼ参照平面上にある。リング180が完全にサドル型であるなら、中央後セグメントP2はまた、その参照点上にあるであろう。代わりに、下向きに反った部分182は、後セグメントP2を参照平面184の下に導く。それ故に、部分182は、リング180のサドル型の残りから下向きに反っていることが理解されるべきである。
【0076】
好ましい構築物において、本発明のいくつかのリングの弁形成リング本体は、前セクションASにおいてよりも後セクションにおいて、より可撓性であるように構築される。例えば、上記リング本体は、異なる厚みの金属製コアを有してか、または前セクションに重なり、そのセクションを後セクションにおけるほどには可撓性にしない、一連の輪状バンドを有して構築され得る。代替の構築物においては、そのリングは、全体が完全に剛性である。
【0077】
図18A〜18Gは、異なる患者のための大きさにされた、本発明の一連の弁形成リング200a〜200gを図示する。これらの図面は、心房平面図において示される一連の原型については、寸法上正確である。各リングは、1つの平面内に作製されてもよく、または図17A〜17Bの弁形成リング180のようなサドル型を有してもよい。つまり、後セグメントP1およびP3(図18Fにのみ示されている)は、中央後セグメントP2および前セクションASに対して、上向きに隆起し得る。
【0078】
長軸202および短軸204は、図18Bのリング200bについて示され、同じ配置が各リング200a〜200gに当てはまる。長軸202に沿った寸法xiおよび短軸204に沿った寸法yiが、各リング200a〜200gについて示されている。以下の表は、これらの寸法、および特定のリングを選択するために使用される標識されたリングサイズを提供する。つまり、サイズ34のリングは、長軸に沿った約34mmという、測定された生得の輪、または外科医が決定した輪を有する患者に移植される予定であるリングに対する標識である。これらの寸法は、慣例に従って、それぞれの軸に沿って各リングの内面の間で測定されている。
【0079】
【表1】
上述のように、短軸寸法yiは、各リングについて減少され、その結果、長軸寸法に対する短軸寸法の比は、3:4未満(すなわち、75%未満)である。絶対値では、これは、弁形成リングの開口領域全体を過剰に減少することなく、2つの弁尖の間の癒合を再生するように、正確な3:4比から約2〜4mmの間の減少である。例えば、図18Aのサイズ24のリング200aは、0.885インチ(22.5mm)の長軸寸法xaを有する。正確な3:4の短軸/長軸の比なら、0.664インチ(16.9mm)の短軸寸法になる。しかし、短軸寸法yaは、0.534インチ(13.6mm)であり、正確な3:4の比から約3.3mmの減少である。
【0080】
別の見方をすれば、各リング200a〜200gは、従来または正常なリングサイズから約14%の短軸寸法の減少を有する。これは、約1リングサイズの減少にほぼ等しい(例えば、サイズ26のリングからサイズ24のリングへは、1リングサイズの減少である)。しかし、本発明のリングの使用は、現在の「小型化」の実施とは同じではない。なぜなら、最終的に使用されるリングは、より小さいサイズのリングとして標識されないからである。例えば、現在の実施は、サイズ26と測定された患者に対して、「小型化」してサイズ24のリングを使用することであり得る。図18Bのリング200bは、サイズ26の患者に対する、本発明に従って選択されるリングである。リング200bは、サイズ26のリングとして標識されているが、従来のリングサイズから寸法が小型化されている。それ故に、どのリングを選択するかについての不確かさは存在せず、サイズ26のリングは、サイズ26の患者用である。また、従来の実施は、24mmの輪サイズを有する小柄な患者に対する「小型化」の選択は残されていない。つまり、代表的には、サイズ22のリングは、利用可能ではない。他方、本発明の24サイズのリング200aは、すでに小型化されており、そして示された患者に対して以前に言及された、改善された癒合結果を提供する。
【0081】
しかし、最も顕著には、小型化は、多くの場合、僧帽弁輪の1つのセグメントだけが矯正される必要がある場合に、リングの周囲全体を減少させる。例えば、図3bに見られるような非対称的な拡張は、P2〜P3弁尖スキャロップの領域において、後面の一部分だけの矯正を必要とする。単により小さいリングを移植することで、冒された領域は矯正されるが、また健康な領域を締め付け、そして特に、代表的にはサイズも形状も変えないより線維状の前面に応力を加え得る。本発明のリングは、虚血性僧帽弁逆流のような特定の病状に起因して必要とされる選択的な周囲の小型化を考慮している。
【0082】
本発明の局面の1つに従って、各リングの長軸に沿った寸法は、前後の寸法ちょうどではなくて、測定されたかまたは別の方法で決定された輪のサイズより小さく、このことはリング全体を小型化することがまた、注記されるべきである。所望される長軸寸法の絶対的な減少は、約1.0〜1.5mmの間である。例えば、図18Aのサイズ24のリング200aの従来または通常の長軸寸法は、約24mmである。しかし、図18Aのリング200aは、0.885インチ(22.5mm)の現実の長軸寸法xaを有し、これは約1.5mmの減少、すなわち約6%の減少である。当業者は、同じ比率の3:4のサイズ比の「小型化」リングを選択することと、本発明のリングを使用することとの間の違いを理解する。つまり、サイズ26の患者に対する「小型化」の従来の実施は、24mmの長軸および18mmの短軸(3:4比)を有する従来のサイズ24のリングを使用することを押しつける。他方、本発明のサイズ26のリングは、24.4mmの長軸寸法および14.7mmの短軸寸法(3:5比)を有する。
【0083】
図18A〜18Gに示される弁形成リング200a〜200gのすべては、以前に注記された非対称性を有し、P3弁尖に対応するP3セグメント(図18Fを参照のこと)は、P1セグメントに対して減少した湾曲を有する(すなわち、P1セグメントの凸部は、P3セグメントの凸部より大きい)。この非対称性は、図15Aおよび15Bのリング130に関して上で示されそして説明された。
【0084】
2つの特定の例を見て、図18Aおよび18Gは、それぞれ、サイズ24のリング200aおよびサイズ36のリング200gを図示し、これらは減少した湾曲、すなわち、P3セグメントにほぼ沿って「引き込まれた」長さを有する。引き込まれている各リング200a〜200gに沿う長さは、望ましくは、P2セグメントおよびP3セグメント内に位置するリング周囲の周りの特定の弧内にある。水平線206は、そのリングの前セクションASの内面に沿って引かれ、3つの角度αおよびβは、短軸204に沿って中央参照点208のまわりでそこから時計回りに延びて示される。「引き込まれた」長さ、またはそのリングの反対側と比べて減少した凸部の長さは、角度αとβとの間に位置する。図18Aのリング200aに対して、αは、23.2°であり、βは、90°である。図18Gのリング200gに対して、αは、15.8°であり、βは、90°である。角度βは短軸204に沿って存在し、そしてリングの後側を横断する。これらは、リング200a〜200gの外側境界であり、その結果、αは、15.8〜23.2°の間であり、そして「引き込まれた」長さは、約57〜74°の間であり、それは短軸204と上記リングの後側との交点から反時計回りに延びる。
【0085】
第3の角度θがまた、図18Aおよび18Gに描かれ、それは、リング周囲の「引き込まれた」長さに沿った、中央参照点208との距離が最小である角度を示す。つまり、点210は、「引き込まれた」長さに沿った任意の点のうちで、点208に最も近く、その距離が寸法線212により示されている。さらなる点214は、リング周囲上であるが、短軸204に対して(P1セグメントに)点210の反対側に示される。点214は、中央参照点208の周りに水平線206から同じ角度θであるが、反時計回りに位置する。これらの線212、216は、それぞれのセグメントと前セクションと短軸との交点との間に広がる線に沿って引かれる。線216は、点208と214との間の「正常な」寸法を示す。好ましい実施形態では、「正常な」寸法216に対する「引き込まれた」寸法212の比は、約0.89(89%)であり、角度θは、約51°である。リング200aについては、寸法212は、約0.503インチ(12.8mm)であり、そして寸法216は、約0.564インチ(14.3mm)であり、約89%の比である。リング200gについては、寸法212は、約0.754インチ(19.2mm)であり、そして寸法216は、約0.846インチ(21.5mm)であり、これもまた約89%の比である。
【0086】
弁形成リング130、160、180または200a〜200gは、輪に、従ってこれらのリングそれ自体の一部である縫い付けカフに配置される縫合糸を使用して、患者の輪に固定される。この意味での縫い付けカフは、リングの一体化部分であり、そして少なくとも一列の縫合糸を受容するに十分大きい任意の縫合糸透過性の材料またはその組合せを意味する。従来のモデルでは、この縫い付けカフは、弁形成リングの外周上での約2〜5mm幅であり、一列の縫合糸を収容する。
【0087】
例えば、図19A〜19Bは、図15Aおよび15Bのリング130の形状に類似の形状を有する弁形成リング250を図示し、このリングは、周囲のまわりに一列の縫合糸線252を示す。図19Bの断面は、リング250の縫い付けカフ254、および代表的にはステンレス鋼、チタン、または他の適切な金属のワイヤまたはバンドである内部構造体構成要素256を図示する。
【0088】
図20A〜20Bは、虚血性疾患に罹患した輪の修復に特に適している弁形成リング260の好ましい構築物を図示する。これらの図においても、リング260は、図15Aおよび15Bのリング130の形状にほぼ類似の形状を有する。図20Bは、図19A〜19Bのカフ254よりも半径方向に広い、リング260の外周上の縫い付けカフ262を示す。例示的な実施形態では、縫い付けカフ262は、約5〜10mmの間の半径方向寸法rを有する。図19Aに見られるように、より大きい縫い付けカフ262は、外科医のためのガイドとしてのマーカ264の列によって示されるように、2列の縫合糸線を収容する。これは、リング260の病んだ輪へのより確かな固定を提供し、披裂を防止するのに役立つ。
【0089】
図21A〜21Cは、P3領域に縫合糸カフ領域272を備える、本発明の代替の弁形成リング270を示し、そのカフ領域272は残りの縫合糸カフ274に比べて半径方向に拡大されている。P3領域は、多くの場合、生得の輪のうちの最も広がった脆い部分であり、従って拡大された縫合糸カフ領域272は、リング270の病んだ輪へのより確かな固定を提供し、その位置での披裂を防止するのに役立つ。縫合糸カフ274の大部分は、半径方向寸法が約2〜5mmの間であり得、他方、縫合糸カフ領域272は、約5〜10mmの間である。当然、拡大されている縫い付けカフの周囲の全体未満およびセグメントのみを有するこのような形態は、他の疾患の状態、または外科医の好みにさえも適用可能であり、それ故に縫合糸カフ領域272は、P3領域以外の他の領域に位置し得る。
【0090】
本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の改変または変更が、この仮出願中に記載された本発明の実施例および実施形態になされ得ることがまた当該分野の当業者により理解される。この点に関して、本明細書中に記載された本発明の特定の実施形態は、本出願において開示されたより広い発明の概念の例として理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1は、前尖と後尖との間で僧帽弁を通る、健康な左心室の断面である。
【図2】図2は、前尖と後尖との間で僧帽弁を通る、拡張した左心室の断面である。
【図3】図3a〜3cは、手術の間に露わにされるように、つまり、心房平面図において、左心房から正常な僧帽弁および異常な僧帽弁を図示する。
【図4】図4は、公知技術に従う、僧帽弁のための輪状補綴具を示す。
【図5】図5は、本発明に従う、僧帽弁のための輪状補綴具の第1の実施形態を示す。
【図6】図6は、本発明に従う、僧帽弁のための輪状補綴具の第2の実施形態を示す。
【図7】図7は、本発明に従う、僧帽弁のための輪状補綴具の第3の実施形態を示す。
【図8】図8は、僧帽弁に対する反応能を再生するように移植された本発明の弁形成リングの平面図である。
【図9】図9は、後側から見た場合の異常な僧帽弁の上にある本発明の弁形成リングの斜視図である。
【図10】図10は、側方から見た場合の異常な僧帽弁の上にある図9の弁形成リングの斜視図である。
【図11】図11A〜11Cは、後部弓状部を有する本発明の例示的な弁形成リングの平面図、正面図、および側面図である。
【図12】図12A〜12Cは、2つの隆起した部分の間に後部弓状部を有する本発明の代替の弁形成リングの平面図、正面図、および側面図である。
【図13】図13Aおよび13Bは、それぞれ、中心をはずれた後部弓状部および前部弓状部を有する本発明のならなる弁形成リングの内側リング本体の正面立面図および上方側面図である。
【図14】図14は、複合材バンド構築物の詳細を示す、本発明の弁形成リングの内側リング本体の上面図である。
【図15】図15Aおよび15Bは、それぞれ、本発明のほぼ平面状の例示的な弁形成リングの心房平面図および後方立面図であり、この弁形成リングは、短軸のまわりで非対称な構成を有し、その結果、減少した前後寸法を有する。
【図16】図16A、16Bおよび16Cは、それぞれ、下向きに反った後部分を有する本発明のさらなる例示的な弁形成リングの心房平面図、後方立面図、中央平面図である。
【図17】図17Aおよび17Bは、下向きに反った後部分を有する本発明のサドル型弁形成リングの、それぞれ、後方立面図および内側立面図である。
【図18】図18A〜18Gは、異なる患者のための大きさにされた、一連の本発明の寸法上正確な原型となる弁形成リングの心房平面図である。
【図19】図19Aおよび19Bは、標準的な縫い付けカフを示す、本発明の弁形成リングの心房平面図および断面図である。
【図20】図20Aおよび20Bは、リング全周の周りに半径方向に拡大された改変された縫い付けカフを示す、本発明の弁形成リングの心房平面図および断面図である。
【図21】図21A〜21Cは、半径方向に拡大されたセグメントを有して改変された縫い付けカフを示す、本発明の弁形成リングの心房平面図および断面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
虚血性僧帽弁閉鎖不全症を矯正するために設計された、僧帽弁輪における移植のための弁形成リングであって、該弁形成リングは、
中央流れ軸の周りに配置されたほぼ卵形状のリング本体であって、該流れ軸は、上向きの方向および下向きの方向を規定し、該下方向は、左心房から左心室への僧帽弁輪を通る血流の方向に対応し、そして該流れ軸に沿って見た場合の平面図において、該リング本体は、短軸に直交する長軸を有し、該長軸および短軸は、該流れ軸と直交している、リング本体、
を備え、
該リング本体は、心房平面図において、前外側三角と後内側三角との間に一般に規定される前セクション、および該リング本体の残りの周囲の周りでかつ三角に間の後セクションを有し、該後セクションは、前外側三角から始まって反時計回り方向に連続する3つの一連のセグメントP1、P2、およびP3に分けられ、該短軸は、該前セクションおよび該後セクションのP2セグメントを横断し、そして該リング本体は、該リング本体の残りのセクションに対して下向きに反っている後セクションの一部を除いて、該長軸および短軸により規定される平面内またはサドル型三次元表面内に実質的に存在し;そして
所定の長軸の寸法が与えられると、該長軸寸法に対する該短軸寸法の比が3:4未満である、弁形成リング。
【請求項2】
平面図における前記リング本体が、前記後セクションのP1セグメントの凸部が前記P3セグメントの凸部よりも大きい、非対称的な構成を有する、請求項1に記載の弁形成リング。
【請求項3】
前記それぞれのセグメントに沿った最も近い点と、前記前セクションと前記短軸との交点にある中央参照点との間に広がる線に沿って測定される場合に、前記P3セグメントが、前記P1セグメントの凸部と比較して約89%だけ引き込まれている凸部を有する、請求項2に記載の弁形成リング。
【請求項4】
前記下向きに反っている後セクションの一部が、前記P2セグメントおよびP3セグメント内に排他的に位置している、請求項1に記載の弁形成リング。
【請求項5】
前記下向きに反っている後セクションの一部が、前記P2セグメントおよびP3セグメント内に位置しており、前記リング本体の最低の高さである該下向きに反っている部分に先端をさらに含み、該先端は、該リング本体の前記P1セグメントに向かって、該下向きに反っている部分の中で中心からずれており、その結果、後部立面図において、該P1セグメントと該先端との間の該リング本体の移行部が、該先端と該P3セグメントの残りの部分との間の該リング本体の移行部よりも、該リング本体の周りで短い距離を延びる、請求項1に記載の弁形成リング。
【請求項6】
後部立面図において、前記先端と前記P3セグメントの残りのほぼ平面部分との間の前記リング本体の移行部が、実質的に直線的である、請求項5に記載の弁形成リング。
【請求項7】
心房平面図において、前記P3セグメントが、実質的に直線的である、請求項1に記載の弁形成リング。
【請求項8】
前記リング本体が、前記前セクションにおいてよりも前記後セクションにおいてより可撓性であるように構築されている、請求項1に記載の弁形成リング。
【請求項9】
前記リング本体の寸法が、前記前セクションにおける内側に反った部分により前記短軸に沿って減少される、請求項1に記載の弁形成リング。
【請求項10】
半径方向に隣接した2列の縫合糸線を収容し得る、前記リング本体の周囲のまわりに拡大部分を有するリング本体の周りの縫い付けカフをさらに備える、請求項1に記載の弁形成リング。
【請求項11】
前記半径方向に隣接した2列の縫合糸線の配置を示すために前記縫い付けカフ上に提供されるマーキングをさらに備える、請求項10に記載の弁形成リング。
【請求項12】
前記縫い付けカフの拡大部分が、前記リングの全周を、この全周よりも短く延びる、請求項10に記載の弁形成リング。
【請求項13】
前記拡大部分が、少なくとも部分的に前記P3セグメント中にある、請求項12に記載の弁形成リング。
【請求項14】
前記短軸の寸法の絶対値を、正確な3:4比から約2〜4mmの間だけ減少させることにより、前記長軸寸法に対する該短軸寸法の比が、3:4未満にされ、その結果、前記弁形成リングの開口領域全体を過剰に減少させることなく、前記2つの弁尖の間の癒合を再生する、請求項1に記載の弁形成リング。
【請求項15】
前記長軸寸法に対する前記短軸寸法の比が、約3:5である、請求項1に記載の弁形成リング。
【請求項16】
虚血性僧帽弁閉鎖不全症を矯正するために設計された、僧帽弁輪における移植のための弁形成リングであって、該弁形成リングは、
中央流れ軸の周りに配置されたほぼ卵形状のリング本体であって、該流れ軸は、上向きの方向および下向き方向を規定し、該下向きの方向は、左心房から左心室への僧帽弁輪を通る血流の方向に対応し、そして該流れ軸に沿って見た場合の平面図において該リング本体は、短軸に直交する長軸を有し、該長軸および短軸は、該流れ軸と直交している、リング本体、を備え、
該リング本体は、心房平面図において、前外側三角と後内側三角との間に一般に規定される前セクション、および該リング本体の残りの周囲の周りでかつ、三角の間の後セクションを有し、該後セクションは、前外側三角から始まって反時計回り方向に連続する3つの一連のセグメントP1、P2、およびP3に分けられ、該短軸は、該前セクションおよび該後セクションのP2セグメントを横断し、そして
該リング本体は、該リング本体の残りのセクションに対して下向きに反っている後セクションの一部を除いて、該長軸および短軸により規定される平面内またはサドル型三次元表面内に実質的に存在し、平面図における該リング本体が、非対称的形態を有し、該後セクションのP1セグメントの凸部は、該P3セグメントの凸部よりも大きい、弁形成リング。
【請求項17】
前記それぞれのセグメントに沿った最も近い点と、前記前セクションと前記短軸との交点にある中央参照点との間に広がる線に沿って測定される場合に、前記P3セグメントが、前記P1セグメントの凸部と比較して約89%だけ引き込まれている凸部を有する、請求項16に記載の弁形成リング。
【請求項18】
前記リング本体の下向きに反っている部分が、前記P2セグメントおよびP3セグメント内に位置している、請求項16に記載の弁形成リング。
【請求項19】
前記下向きに反っている部分が、前記リング本体の最低の高さである先端をさらに含み、該先端は、該リング本体の前記P1セグメントに向かって、該下向きに反っているP2部分の中で中心からずれており、その結果、後部立面図において、下向きに反っていないP1セグメントと該先端との間の該リング本体の移行部が、該先端と該P3セグメントの下向きに反っていない部分との間の該リング本体の移行部よりも、該リング本体の周りで短い距離を延びる、請求項18に記載の弁形成リング。
【請求項20】
後部立面図において、前記先端と前記P3セグメントの下向きに反っていない部分との間の前記リング本体の移行部が、実質的に直線的である、請求項19に記載の弁形成リング。
【請求項21】
心房平面図において、前記P3セグメントが、実質的に直線的である、請求項19に記載の弁形成リング。
【請求項22】
前記リング本体が、剛性である、請求項16に記載の弁形成リング。
【請求項23】
前記リング本体が、完全に可撓性である、請求項16に記載の弁形成リング。
【請求項24】
前記リング本体が、前記リング本体の残りのまわりよりも前記後セクションにおいてより可撓性であるように構築されている、請求項16に記載の弁形成リング。
【請求項25】
前記リング本体の寸法が、前記前セクションの内側に反った部分によって前記短軸に沿って減少される、請求項16に記載の弁形成リング。
【請求項26】
半径方向に隣接した2列の縫合糸線を収容し得る、前記リング本体の周囲のまわりに拡大部分を有する、リング本体の周りの縫い付けカフをさらに備える、請求項16に記載の弁形成リング。
【請求項27】
前記半径方向に隣接した2列の縫合糸線の配置を示すために前記縫い付けカフ上に提供されるマーキングをさらに備える、請求項26に記載の弁形成リング。
【請求項28】
前記縫い付けカフの拡大部分が、前記リングの全周を、この全周よりも短く延びる、請求項26に記載の弁形成リング。
【請求項29】
前記拡大部分が、少なくとも部分的に前記P3セグメント中にある、請求項28に記載の弁形成リング。
【請求項30】
前記長軸寸法に対する前記短軸寸法の比が、3:4未満である、請求項16に記載の弁形成リング。
【請求項31】
前記長軸寸法に対する前記短軸寸法の比が、約3:5である、請求項30に記載の弁形成リング。
【請求項1】
虚血性僧帽弁閉鎖不全症を矯正するために設計された、僧帽弁輪における移植のための弁形成リングであって、該弁形成リングは、
中央流れ軸の周りに配置されたほぼ卵形状のリング本体であって、該流れ軸は、上向きの方向および下向きの方向を規定し、該下方向は、左心房から左心室への僧帽弁輪を通る血流の方向に対応し、そして該流れ軸に沿って見た場合の平面図において、該リング本体は、短軸に直交する長軸を有し、該長軸および短軸は、該流れ軸と直交している、リング本体、
を備え、
該リング本体は、心房平面図において、前外側三角と後内側三角との間に一般に規定される前セクション、および該リング本体の残りの周囲の周りでかつ三角に間の後セクションを有し、該後セクションは、前外側三角から始まって反時計回り方向に連続する3つの一連のセグメントP1、P2、およびP3に分けられ、該短軸は、該前セクションおよび該後セクションのP2セグメントを横断し、そして該リング本体は、該リング本体の残りのセクションに対して下向きに反っている後セクションの一部を除いて、該長軸および短軸により規定される平面内またはサドル型三次元表面内に実質的に存在し;そして
所定の長軸の寸法が与えられると、該長軸寸法に対する該短軸寸法の比が3:4未満である、弁形成リング。
【請求項2】
平面図における前記リング本体が、前記後セクションのP1セグメントの凸部が前記P3セグメントの凸部よりも大きい、非対称的な構成を有する、請求項1に記載の弁形成リング。
【請求項3】
前記それぞれのセグメントに沿った最も近い点と、前記前セクションと前記短軸との交点にある中央参照点との間に広がる線に沿って測定される場合に、前記P3セグメントが、前記P1セグメントの凸部と比較して約89%だけ引き込まれている凸部を有する、請求項2に記載の弁形成リング。
【請求項4】
前記下向きに反っている後セクションの一部が、前記P2セグメントおよびP3セグメント内に排他的に位置している、請求項1に記載の弁形成リング。
【請求項5】
前記下向きに反っている後セクションの一部が、前記P2セグメントおよびP3セグメント内に位置しており、前記リング本体の最低の高さである該下向きに反っている部分に先端をさらに含み、該先端は、該リング本体の前記P1セグメントに向かって、該下向きに反っている部分の中で中心からずれており、その結果、後部立面図において、該P1セグメントと該先端との間の該リング本体の移行部が、該先端と該P3セグメントの残りの部分との間の該リング本体の移行部よりも、該リング本体の周りで短い距離を延びる、請求項1に記載の弁形成リング。
【請求項6】
後部立面図において、前記先端と前記P3セグメントの残りのほぼ平面部分との間の前記リング本体の移行部が、実質的に直線的である、請求項5に記載の弁形成リング。
【請求項7】
心房平面図において、前記P3セグメントが、実質的に直線的である、請求項1に記載の弁形成リング。
【請求項8】
前記リング本体が、前記前セクションにおいてよりも前記後セクションにおいてより可撓性であるように構築されている、請求項1に記載の弁形成リング。
【請求項9】
前記リング本体の寸法が、前記前セクションにおける内側に反った部分により前記短軸に沿って減少される、請求項1に記載の弁形成リング。
【請求項10】
半径方向に隣接した2列の縫合糸線を収容し得る、前記リング本体の周囲のまわりに拡大部分を有するリング本体の周りの縫い付けカフをさらに備える、請求項1に記載の弁形成リング。
【請求項11】
前記半径方向に隣接した2列の縫合糸線の配置を示すために前記縫い付けカフ上に提供されるマーキングをさらに備える、請求項10に記載の弁形成リング。
【請求項12】
前記縫い付けカフの拡大部分が、前記リングの全周を、この全周よりも短く延びる、請求項10に記載の弁形成リング。
【請求項13】
前記拡大部分が、少なくとも部分的に前記P3セグメント中にある、請求項12に記載の弁形成リング。
【請求項14】
前記短軸の寸法の絶対値を、正確な3:4比から約2〜4mmの間だけ減少させることにより、前記長軸寸法に対する該短軸寸法の比が、3:4未満にされ、その結果、前記弁形成リングの開口領域全体を過剰に減少させることなく、前記2つの弁尖の間の癒合を再生する、請求項1に記載の弁形成リング。
【請求項15】
前記長軸寸法に対する前記短軸寸法の比が、約3:5である、請求項1に記載の弁形成リング。
【請求項16】
虚血性僧帽弁閉鎖不全症を矯正するために設計された、僧帽弁輪における移植のための弁形成リングであって、該弁形成リングは、
中央流れ軸の周りに配置されたほぼ卵形状のリング本体であって、該流れ軸は、上向きの方向および下向き方向を規定し、該下向きの方向は、左心房から左心室への僧帽弁輪を通る血流の方向に対応し、そして該流れ軸に沿って見た場合の平面図において該リング本体は、短軸に直交する長軸を有し、該長軸および短軸は、該流れ軸と直交している、リング本体、を備え、
該リング本体は、心房平面図において、前外側三角と後内側三角との間に一般に規定される前セクション、および該リング本体の残りの周囲の周りでかつ、三角の間の後セクションを有し、該後セクションは、前外側三角から始まって反時計回り方向に連続する3つの一連のセグメントP1、P2、およびP3に分けられ、該短軸は、該前セクションおよび該後セクションのP2セグメントを横断し、そして
該リング本体は、該リング本体の残りのセクションに対して下向きに反っている後セクションの一部を除いて、該長軸および短軸により規定される平面内またはサドル型三次元表面内に実質的に存在し、平面図における該リング本体が、非対称的形態を有し、該後セクションのP1セグメントの凸部は、該P3セグメントの凸部よりも大きい、弁形成リング。
【請求項17】
前記それぞれのセグメントに沿った最も近い点と、前記前セクションと前記短軸との交点にある中央参照点との間に広がる線に沿って測定される場合に、前記P3セグメントが、前記P1セグメントの凸部と比較して約89%だけ引き込まれている凸部を有する、請求項16に記載の弁形成リング。
【請求項18】
前記リング本体の下向きに反っている部分が、前記P2セグメントおよびP3セグメント内に位置している、請求項16に記載の弁形成リング。
【請求項19】
前記下向きに反っている部分が、前記リング本体の最低の高さである先端をさらに含み、該先端は、該リング本体の前記P1セグメントに向かって、該下向きに反っているP2部分の中で中心からずれており、その結果、後部立面図において、下向きに反っていないP1セグメントと該先端との間の該リング本体の移行部が、該先端と該P3セグメントの下向きに反っていない部分との間の該リング本体の移行部よりも、該リング本体の周りで短い距離を延びる、請求項18に記載の弁形成リング。
【請求項20】
後部立面図において、前記先端と前記P3セグメントの下向きに反っていない部分との間の前記リング本体の移行部が、実質的に直線的である、請求項19に記載の弁形成リング。
【請求項21】
心房平面図において、前記P3セグメントが、実質的に直線的である、請求項19に記載の弁形成リング。
【請求項22】
前記リング本体が、剛性である、請求項16に記載の弁形成リング。
【請求項23】
前記リング本体が、完全に可撓性である、請求項16に記載の弁形成リング。
【請求項24】
前記リング本体が、前記リング本体の残りのまわりよりも前記後セクションにおいてより可撓性であるように構築されている、請求項16に記載の弁形成リング。
【請求項25】
前記リング本体の寸法が、前記前セクションの内側に反った部分によって前記短軸に沿って減少される、請求項16に記載の弁形成リング。
【請求項26】
半径方向に隣接した2列の縫合糸線を収容し得る、前記リング本体の周囲のまわりに拡大部分を有する、リング本体の周りの縫い付けカフをさらに備える、請求項16に記載の弁形成リング。
【請求項27】
前記半径方向に隣接した2列の縫合糸線の配置を示すために前記縫い付けカフ上に提供されるマーキングをさらに備える、請求項26に記載の弁形成リング。
【請求項28】
前記縫い付けカフの拡大部分が、前記リングの全周を、この全周よりも短く延びる、請求項26に記載の弁形成リング。
【請求項29】
前記拡大部分が、少なくとも部分的に前記P3セグメント中にある、請求項28に記載の弁形成リング。
【請求項30】
前記長軸寸法に対する前記短軸寸法の比が、3:4未満である、請求項16に記載の弁形成リング。
【請求項31】
前記長軸寸法に対する前記短軸寸法の比が、約3:5である、請求項30に記載の弁形成リング。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図18E】
【図18F】
【図18G】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図18E】
【図18F】
【図18G】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【公表番号】特表2007−507309(P2007−507309A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534215(P2006−534215)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/032596
【国際公開番号】WO2005/034813
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(500218127)エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション (93)
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
【出願人】(506107483)
【出願人】(506107623)
【出願人】(506107494)
【出願人】(506107335)
【出願人】(506107508)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/032596
【国際公開番号】WO2005/034813
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(500218127)エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション (93)
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
【出願人】(506107483)
【出願人】(506107623)
【出願人】(506107494)
【出願人】(506107335)
【出願人】(506107508)
【Fターム(参考)】
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