説明

異常ヘモグロビン症及び貧血症の治療及び管理のための方法及び組成物

【課題】鎌形赤血球貧血症、及び疾病又は薬物誘発貧血症のような他の貧血症の如き異常ヘモグロビン症の治療、予防及び/又は管理に有用な医薬組成物の提供。
【解決手段】下記式で表される免疫調節性化合物;


と、さらにヒドロキシ尿素、亜酸化窒素、クロトリマゾール、又はサイトカインを含む組み合わせで、胎児ヘモグロビン遺伝子、赤血球形成に不可欠な遺伝子、アルファヘモグロビン安定化タンパク質をコードする遺伝子をCD34+細胞群内で誘発して貧血症を治療する組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件出願は、引用により全面的に本明細書に組み込まれている、2003年12月2日に出願
された米国予備出願第60/526,910号の利益を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、IMiDs(商標)、特にIMiDs(商標) 4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル
))-イソインドリン-1,3-ジオン(α-(3-アミノフタルイミド)グルタルイミド(セルジーン
・コーポレーション)としても知られている)、及び3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ
イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン(3-(4'アミノイソインドリン-1'-オン)-
1-ピペリジン-2,6-ジオン(セルジーン・コーポレーション)としても知られている)サリド
マイド類似体類の構成要素、並びにそのような化合物を含む医薬組成物を投与することに
より、鎌形赤血球貧血症、及び疾病又は薬物誘発貧血症のような他の貧血症の如き異常ヘ
モグロビン症の治療、予防及び/又は管理を行う方法に向けられる。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
2.1.鎌形赤血球貧血症及び他の異常ヘモグロビン症
鎌形赤血球貧血症(「SCA」)は、ヘモグロビンSと呼ばれる異常ヘモグロビンに伴う遺伝
的溶血性貧血症である。この疾病は、アミノ酸置換によりヘモグロビンSにおける電荷が
減少し、その結果として置換ヘモグロビンSの溶解度が低下することによって引き起こさ
れると報告されている。The Merck Manual of Diagnosis and Therapy, 第17版, Merck R
esearch Laboratories(ニュージャージ州、Whitehouse Station)878頁(1999)参照。より
溶解度の小さいヘモグロビンSは、赤血球に半月状の鎌形を帯びさせる棒状タクトイドの
半固体ゲルを形成する。これらの歪んだ非融通性の赤血球が、血管内皮に付着し、小動脈
及び毛管を詰まらせ、閉塞及び亀裂骨折をもたらす。鎌形赤血球は、脆弱であるために血
液循環の機械的圧力に耐えられないため、それらが血液循環に加わると溶血が生じる。
【0004】
SCAは、一般には、特定の民族、すなわちアフリカ系アメリカ人、及び熱帯準サハラア
フリカ人の子孫である他の人種に伴う。患者は、鎌形赤血球によって引き起こされる閉塞
によって起こる急性痛に苦しむ。鎌形赤血球の寿命は、約2カ月であるのに対して、正常
な赤血球の平均寿命は約4カ月である。この短い寿命は、結果として、慢性貧血症をもた
らす。
【0005】
SCAの症状は、成長及び発達の阻害;感染症にかかりやすくなること;塔状頭蓋、皮膚性
薄化、不規則な骨密度、及び髄管内での新しい骨の形成の如き骨の変化;自己脾転位症に
よる小脾臓;リウマチ又は先天性心臓病の可能性の上昇;肺及び腎臓機能の漸進的低下;並
びに急性胸部疾患症候群を含む。急性胸部疾患症候群は、主要な死亡原因であり、熱の突
発、胸痛、白血球症、及び胸部x線における肺動脈柔組織浸透によって特徴付けられる。
【0006】
SCAの治療の最近の手法としては、胎児ヘモグロビンの導入、血管の弛緩、赤血球粘着
の低減、及びガルドスチャネル拮抗剤の利用が挙げられる(Iyamu及びAsakura, Expert Op
in. Ther. Patents, 13(6): 807〜813 頁(2003)参照)。ガルドスチャネルは、ガルドスに
よって示されたカルシウム活性化カリウムチャネルである(Curr. Top. Membr. Transp. 1
0: 217〜277頁(1978)及びNature London 279: 248〜250頁(1979)参照)。
【0007】
最も研究され利用されているSCA治療は、ヒドロキシ尿素(HU)の経口投与である。HUは
、胎児ヘモグロビン(HbF)の生成を誘発することによって、その効果を発揮すると考えら
れている。しかし、HUは、どの患者にも有効であるというわけではなく、ある患者は、HU
に全く応答できず、ある患者は骨髄抑制を経験する(Iyamu及びAsakuraの上記論文参照)。
SCAは、また、HbSに共有結合することによってその抗鎌形赤血球化効果を発揮するものと
思われる、HEMOXIN(商標)(公式にはNIPRISAN(商標)と呼ばれる。)として知られる天然の
植物抽出物で治療されてきた(米国特許第5,800819号、Iyamu及びAsakuraの上記論文参照)
。HEMOXIN(商標)は、SCAの治療での使用に対して、まだFDAの承認を得ていない。1グルー
プが、鎌形赤血球の脱水性を低減しようとする試みにおいて、クロトリマゾール及び他の
ガルドスチャネル遮断剤の利用を現在探求している(Iyamu及びAsakuraの上記論文参照)。
しかし、そのような化合物の効能は、証明されていない。他のSCA治療としては、グルコ
ース及び電解質の静脈内投与用溶液、麻薬性鎮痛剤、及び極めて重症な貧血症の場合に対
する輸血が挙げられる。SCA治療の多くが初期の段階であることを考えれば、SCAの治療及
び管理に対してより安全且つ効果的な治療が必要とされる。
【0008】
胎児ヘモグロビンの生成を増加させる治療は、異常ヘモグロビン症又は貧血症に苦しむ
個人に対して利用可能な全ヘモグロビンの量を増加させるため、魅力的である。成人にお
いては、二種類のヘモグロビン、すなわちヘモグロビンα及びヘモグロビンβが、他のヘ
モグロビン種をほとんど排他して支配的である。対照的に、2つの追加的なヘモグロビン
、すなわちヘモグロビンε及びヘモグロビンγは、胎児内に存在する。ヘモグロビンεは
、初期発生においては支配的な形態であるが、発生から約8週間までには胎児に存在しな
くなる。ヘモグロビンγは、対照的に、発生の初期に存在し、妊娠約6〜30週において全
ヘモグロビンに対する最大比率、すなわち約45%に達する。次いで、出生の約6週間前か
ら出生後約40週間にかけて、全ヘモグロビンに対する比率が低下する。40週間齢でも個体
中に存在するが、その後は血流中に存在する全ヘモグロビンの2%未満になる。
【0009】
2.2.IMIDS(商標)
TNFαに対する強力な抑制、並びにLPS誘発探求IL-1β及びIL-12生成に対する顕著な抑
制を示すIMiDs(商標)(セルジーン・コーポレーション)又は免疫調節性薬剤と称する化合
物類が特定された。LPS誘発IL-6も、部分的ではあるが、免疫調節化合物によって抑制さ
れる。これらの化合物は、LPS誘発IL-10の強力な刺激剤である。IMiDs(商標)は、脊髄及
び赤血球経路に沿ってCD34+細胞の分化を調節することが証明されている(参照により全面
的に本明細書に組み込まれている、2003年12月25日に公開された米国出願公開第2003/023
5909号参照)。IMiDs(商標)の特定の例としては、共にG.W.Muller他による米国特許第6,28
1,230号及び米国特許6,316,471号に記載されている置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イ
ル)フタルイミド及び置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドール
が挙げられるが、それらに限定されない。IMiDs(商標)は、これまでは、異常ヘモグロビ
ン症又は貧血症の治療のための候補として、或いは赤血球形成に関わる遺伝子のモジュレ
ータとして特定されていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、貧血症又は異常ヘモグロビン症の個体を治療する方法であって、有効量の本
発明の化合物を投与するステップを含む方法に向けられる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、一実施態様において、本発明は、貧血症又は異常ヘモグロビン症の個体を
治療する方法であって、前記個体に免疫調節性化合物、又はその医薬として許容し得る塩
、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接体若しくはプロドラッグを投与するステップを含
む方法を提供する。特定の実施態様において、前記貧血症は、薬物の投与又は化学療法に
より誘発される、又はそれに関連する貧血症である。他の特定の実施態様において、前記
免疫調節性化合物は、アミノ置換サリドマイドである。より具体的な実施態様において、
前記免疫調節性化合物は、IMiD(商標)である。より具体的な実施態様において、前記IMiD
(商標)は、α-(3-アミノフタルイミド)グルタルイミド(4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-
ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンとしても知られる);α-(3-アミノフタルイミド
)グルタルイミドの類似体又はプロドラッグ;3-(4'アミノイソインドリン-1'-オン)-1-ピ
ペリジン-2,6-ジオン;3-(4'アミノイソインドリン-1'-オン)-1-ピペリジン-2,6-ジオンの
類似体、又はプロドラッグ、或いは下記の式の化合物である。
【0012】
【化1】

【0013】
他のより具体的な実施態様において、前記IMiDは、1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジ
ン-3-イル)-5-アミノイソインドリン、1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-
アミノイソインドリン、1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-6-アミノイソイ
ンドリン、1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-5-アミノイソインドリン、1,3
-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-アミノイソインドリン、又は1,3-ジオ
キソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-5-アミノイソインドリンである。
【0014】
他の具体的な実施態様において、その治療方法は、前記個体を第2の化合物で治療する
ステップであって、前記第2の化合物は、胎児ヘモグロビンを誘発する化合物、血管を弛
緩する化合物、ヘモグロビンSに共有結合するとヘモグロビンSの自己凝集を低減する化合
物、ガルドスチャネル拮抗剤である化合物、又は赤血球粘着を低減する化合物であるステ
ップをさらに含む。より具体的な実施態様において、前記第2の化合物は、ヒドロキシ尿
素、グアニジノ誘導体、亜酸化窒素、酪酸塩若しくは酪酸塩誘導体、アルデヒド若しくは
アルデヒド誘導体、抗鎌形赤血球化活性を有する植物抽出物(例えばNIPRISAN(商標)、(HE
MOXIN)(商標))、クロトリマゾール、トリアリールメタンの誘導体、モノクローナル抗体
、又はポリエチレングリコール誘導体である。
【0015】
他の具体的な実施態様において、その治療方法は、前記個体を少なくとも1つのサイト
カインで治療することをさらに含む。より具体的な実施態様において、前記少なくとも1
つのサイトカインは、エリスロポイエチン(Epo)、SCF、GM-CSF、Flt-3L、TNFα、IL-3、
又はそれらの任意の組合せである。その方法の他の具体的な実施態様において、前記個体
は哺乳類である。より具体的な実施態様において、前記個体はヒトである。
【0016】
他の実施態様において、本発明は、CD34+幹細胞又は前駆細胞の赤血球系列への分化を
調節する方法であって、好適な条件及び免疫調節性化合物、又はその医薬として許容し得
る塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接体若しくはプロドラッグの存在下で前記細胞
を分化するステップを含む方法を提供する。より具体的な実施態様において、前記免疫調
節性化合物は、アミノ置換サリドマイドである。他のより具体的な実施態様において、前
記免疫調節化合物はIMiDである。さらにより具体的な実施態様において、前記IMiDは、α
-(3-アミノフタルイミド)グルタルイミド(4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-
イソインドリン-1,3-ジオンとしても知られる);α-(3-アミノフタルイミド)グルタルイミ
ドの類似体、又はプロドラッグ;3-(4'アミノイソインドリン-1'-オン)-1-ピペリジン-2,6
-ジオン;3-(4'アミノイソインドリン-1'-オン)-1-ピペリジン-2,6-ジオンの類似体、又は
プロドラッグ、或いは下記の式の化合物である。
【0017】
【化2】

【0018】
他のより具体的な実施態様において、前記IMiDは、1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジ
ン-3-イル)-5-アミノイソインドリン、1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-
アミノイソインドリン、1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-6-アミノイソイ
ンドリン、1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-5-アミノイソインドリン、1,3
ジオキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-アミノイソインドリン、及び1,3-ジオ
キソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-5-アミノイソインドリンである。他の具体的
な実施態様において、前記CD34+幹細胞又は前駆細胞は、in vitroの細胞である。他の具
体的な実施態様において、前記CD34+幹細胞又は前駆細胞は、in vivoの細胞である。
【0019】
他の具体的な実施態様において、その方法は、前記細胞を少なくとも1つのサイトカイ
ンに接触させることをさらに含む。より具体的な実施態様において、前記少なくとも1つ
のサイトカインは、エリスロポイエチン、SCF、GM-CSF、Flt-3L、TNFα、IL-3、又はそれ
らの任意の組合せである。
【0020】
本発明は、本発明の化合物、及び他の化合物又はサイトカインを含む医薬組成物をも提
供する。したがって、本発明は、医薬として許容し得る担体にIMiD(商標)及び第2の化合
物を含む医薬組成物であって、前記第2の化合物は、胎児ヘモグロビンを誘発する化合物
、血管を弛緩する化合物、ヘモグロビンSに共有結合するとヘモグロビンSの自己凝集を低
減する化合物、ガルドスチャネル拮抗剤である化合物、又は赤血球粘着を低減する化合物
である医薬化合物を提供する。より具体的な実施態様において、前記第2の化合物は、ヒ
ドロキシ尿素、グアニジノ誘導体、亜酸化窒素、酪酸塩若しくは酪酸塩誘導体、アルデヒ
ド若しくはアルデヒド誘導体、抗鎌形赤血球化活性を有する植物抽出物(例えばHEMOXIN(
商標))、クロトリマゾール、トリアリールメタンの誘導体、モノクローナル抗体、又はポ
リエチレングリコール誘導体である。
【0021】
本発明は、医薬として許容し得る担体にIMiD(商標)、及び少なくとも1つのサイトカイ
ンを含む医薬組成物をも提供する。具体的な実施態様において、前記サイトカインは、エ
リスロポイエチン(Epo)、SCF、GM-CSF、Flt-3L、TNFα、IL-3、又はそれらの任意の組合
せである。
【0022】
本発明は、異常ヘモグロビン症又は貧血症の個体を治療する方法であって、アルファヘ
モグロビン安定化タンパク質(AHSP)の量の検出可能な増加をもたらすのに十分な量及び時
間で化合物を前記個体に投与するステップを含む方法をさらに提供する。その方法の一実
施態様において、前記化合物はIMiD(商標)である。具体的な実施態様において、前記化合
物は、α-(3-アミノフタルイミド)グルタルイミド(4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペ
リジル))-イソインドリン-1,3-ジオンとしても知られる)又は3-(4'アミノイソインドリン
-1'-オン)-1-ピペリジン-2,6-ジオンである。
【0023】
本明細書に用いられているように、「異常ヘモグロビン症」という用語は、個体の任意
のヘモグロビンの構造、又は機能の任意の欠陥を意味し、任意のヘモグロビン遺伝子のコ
ード領域の欠失変異又は置換変異、又は正常又は標準的な状態と比較して、生成されるヘ
モグロビンの量の減少を引き起こす当該遺伝子のプロモータ又はエンハンサの変異、又は
欠失の如き任意の変異によって引き起こされるヘモグロビンの一次、二次、三次、又は四
次構造の欠陥を含む。その用語は、疾病、化学療法、毒素、又は毒等の外部要因によって
引き起こされる正常又は異常なヘモグロビンの量、又は効果の任意の低下をさらに含む。
【0024】
本明細書に用いられているように、「貧血症」とは、正常な状態と比較して、血流中の
ヘモグロビンの量の任意の低下を意味する。そのような低下は、血球の欠如、鉄の不足、
毒素、毒、疾病、又は任意の他の生理的原因によるものでありうる。
【0025】
本明細書に用いられているように、「異常ヘモグロビン症の症状」及び「貧血症の症状
」という用語は、目眩、息切れ、意識不明、倦怠感、脱力感、溶血、異常ヘモグロビンに
伴う痛み、赤血球数の低下(すなわちヘマトクリットの低下)、正常な血液の容量と比べた
場合における所定容量の血液の酸素運搬能力の低下、及び顕微鏡下で確認可能な赤血球の
変形等を含むが、それらに限定されない任意の異常ヘモグロビン症又は貧血症に伴う任意
の生理的又は生物学的症状を意味する。その用語は、憂鬱、自尊心の低下、病気の認知及
び身体的能力の限界の認知のような負の心理的症状をも含む。
【0026】
本明細書に用いられているように、「IMiD」は、化合物4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3
-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン(α-(3-アミノフタルイミド)グルタルイミド
としても知られる)及び3-(4'アミノイソインドリン-1'-オン)-1-ピペリジン-2,6-ジオン
を含む以下のセクション5.2に開示された化合物類を意味する。
【0027】
本明細書に用いられているように、「CC-5013」及び「Revimid(商標)」という用語は、
化合物3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジ
オン(3-(4'アミノイソリンドリン-1'-オン)-1-ピペリジン-2,6-ジオンとしても知られる)
を意味する。
【0028】
本明細書に用いられているように、「CC-4047」及び「Actimid(商標)」という用語は、
化合物4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン(α-(3-
アミノフタルイミド)グルタルイミドとしても知られる)を意味する。
本明細書に用いられているように、「CD34+」細胞という用語は、CD34+幹、前駆又は先
駆細胞を意味する。
【0029】
本明細書に用いられているように、HEMOXIN(商標)及びNIPRISAN(商標)という用語は、
約12から約17重量部のパイパーギニーンス(Piper guineense)種と、約15から約19重量部
のプテロカルパスオスン(Pterocarpus osun)幹と、約12から約18重量部のユーゲニアカリ
オフィラタ(Eugenia caryophyllata)果実と、約25から約32重量部のソルガムビカラー(So
rghum bicolor)葉と、場合によっては15から22重量部の炭酸カリウムとの混合物であって
、冷水で抽出される混合物を特徴とする米国特許第5,800,819号に記載された植物抽出物
を意味する。この植物抽出物は、抗鎌形赤血球化活性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(発明の詳細な説明)
5.1.CD34+細胞の赤血球系列への分化
本発明は、CD34+幹、先駆又は前駆細胞の赤血球を主とする系統への分化を調節する方
法を提供する。本発明者は、IMiDs(商標)として知られる免疫調節性化合物類は、適切な
条件下で当該細胞に接触すると、赤血球系統へ向かって分化をシフトさせることを発見し
た。この分化のシフトは、グリコホリンA、並びにヘモグロビンγ及びヘモグロビンεの
如き胎児ヘモグロビンをコードする遺伝子の発現の増加を含むが、それらに限定されない
遺伝子発現の特徴的変化によって明示される。したがって、本発明の方法は、個体のヘモ
グロビン生成細胞の自然発生集団に取って代わることが可能であるヘモグロビン生成細胞
の集団の生成を増強する手段を提供するという点において大いに有用である。
【0031】
IMiDs(商標)はまた、アルファヘモグロビン安定化タンパク質、すなわちアルファヘモ
グロビンを優先的に結合させるが、ベータヘモグロビン又はヘモグロビンA(Hbα2β2)は
結合させないタンパク質の分化CD34+細胞の発現の増加を引き起こす。これは、ベータヘ
モグロビンの量をアルファヘモグロビンが上回ると、赤血球を損傷させる沈殿を形成する
傾向があるため、有益である。そのように、AHSP、及びIMiDが仲介するAHSP発現の増加は
、ベータサラセミアを含めて、アルファヘモグロビンが余剰の病理的状態を調節するもの
と想定される。AHSPの発現に対するそのような効果は、胎児ヘモグロビン発現の増強と相
俟って、胎児ヘモグロビンの発現を増加させる他の薬物に対するIMiD処理の利点である。
【0032】
したがって、本発明は、第1に、CD34+細胞の赤血球系統への分化を調節する方法であっ
て、好適な条件下、及びIMiDの如き免疫調節性化合物、又はその医薬として許容し得る塩
、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接体又はプロドラッグの存在下で前記細胞を分化す
るステップを含む方法を提供する。本発明に使用できるIMiDs(商標)の実施例は、以下の
セクション5.2に詳細に記載されている。しかし、特に好ましいIMiDs(商標)は、3-(4-
アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン及び4-(
アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンである。
【0033】
CD34+細胞は、赤血球細胞に分化することが可能である任意の幹、前駆又は委任細胞で
あってもよい。そのような細胞は、全能性又は多能性細胞であってもよいし、造血系統に
委任されてもよい。CD34+細胞は、任意の源から誘導されうるが、特に好ましいのは、胎
盤から誘導された「胚性様」幹細胞である。そのような胚性様幹細胞、及びそれらを得る
ための方法の説明については、参照により全面的に本明細書に組み込まれている、2003年
9月25日に公開された米国出願公開第2003/0180269 A1号を参照されたい。本発明の方法に
有用な他のCD34+細胞としては、任意の組織から得られた幹細胞(例えば、造血幹細胞又は
胚幹細胞)、及び任意の組織からの非委任前駆細胞が挙げられる。そのようなCD34+細胞は
、その分化が本発明の方法に従って調節されるそのような細胞を使用して、貧血症又は異
常ヘモグロビン症を治療する場合に、意図する受容体を基準として、異種又は自己由来の
ものであってもよい。
【0034】
CD34+細胞の分化は、典型的に、3から6日の期間にわたって生じうる。CD34+細胞をIMiD
の存在下で培養したin vitro試験(実施例に記載されている)において、赤血球経路に沿う
分化を示す遺伝子発現における変化が、培養の3日目までに顕著になった。赤血球特有の
遺伝子発現が著しく増加され、赤血球細胞の表現型特徴が、培養の6日目までにCD34+細胞
に現れた。
【0035】
したがって、本発明によれば、免疫調節性化合物などの本発明の化合物、具体的にはIM
iDの存在下で、赤血球特有の遺伝子発現、特に胎児ヘモグロビン遺伝子発現、及び/又は
細胞特徴の出現に十分な日数にわたって、CD34+細胞をin vitro培養することができる。
様々な実施態様において、CD34+細胞を3、6、9、12日、又はそれ以上にわたって培養する
ことができる。培養の開始時に本発明の化合物を一度導入し、分化が実質的に完了するま
で、又は3、6、9、12日、又はそれ以上にわたって培養を続けることができる。或いは、
培養時に、本発明の化合物をCD34+細胞の培養物に培養中に複数回投与することもできる
。本発明の単一化合物の存在下、又は本発明の複数の異なる化合物の存在下で、CD34+
胞の培養及び分化を行うことができる。
【0036】
本発明の化合物は、0.01μMから10 mMの任意の濃度で使用できる。好ましくは、4-(ア
ミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンの濃度は、0.01から
10μMで、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-
ジオンの濃度は好ましくは、0.01から100μMである。
【0037】
CD34+細胞をin vitroで分化するのに加えて、そのような細胞を個体内でin vivoで分化
することができる。そのような個体は、好ましくは哺乳類で、さらにより好ましくはヒト
である。CD34+細胞のin vitro分化と同様に、個体内のCD34+細胞を本発明の1つ又は複数
の免疫調節性化合物の投与によって分化することができる。そのような投与は、単一投与
の形をとることができる。或いは、個体に本発明の1つ又は複数の化合物を複数回投与す
ることもできる。そのような投与を例えば3、6、9、12日、又はそれ以上の日数にわたっ
て行うことができ、以下のセクション5.4に記載されている投与規則及び形態に従うこ
とができる。
【0038】
CD34+細胞の分化をin vivoで遂行する場合は、免疫調節性化合物のみ、又は免疫調節性
化合物と1つ又は複数のサイトカインとの組合せを使用して分化を遂行することができる
。例えば、鎌形赤血球貧血又はサラセミアのような異常ヘモグロビン症にかかっている個
体であって、SCF及び/又はエリスロポイエチンのレベルが正常より高い個体については、
1つ又は複数の免疫調節性化合物(例えば4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イ
ソインドリン-1,3-ジオン)を投与することによってin vivo分化を遂行することができる
。逆に、個体が、赤血球形成サイトカイン(例えばSCF又はエリスロポイエチン)のレベル
が正常より低いことによるものである、又は低いことによって特徴付けられる貧血にかか
っている場合は、そのようなサイトカインを免疫調節性化合物の投与と同時に、又はその
前に投与することができる。例えば、化学療法誘発貧血症にかかっている個体に1つ又は
複数のサイトカイン(例えばSCF、Flt-3L及びIL-3の組合せ)を例えば3から6日間投与した
後に、例えば3から6日間にわたって、本発明の1つ又は複数の免疫調節性化合物を特にSCF
及びエリスロポイエチンと共に、前記個体のCD34+細胞における胎児ヘモグロビン発現の
検出可能な増加をもたらすのに十分な量投与することができる。或いは、そのような個体
に、1つ又は複数のサイトカイン(例えばSCF、Flt-3L及びIL-3)にin vitroで接触させたCD
34+細胞を例えば3から6日間にわたって投与した後に、個体に対して、それらの細胞をSCF
及びエリスロポイエチンと共に、CD34+細胞における胎児ヘモグロビン発現の検出可能な
増加をもたらすのに十分な量投与することができる。そのような投与を一度、又は複数回
行うことができ、本発明の化合物(セクション5.3参照)、第2の化合物(以下参照)又は3
つすべての組合せの投与によって、任意の1つ又は複数の当該投与を遂行することができ
る。
【0039】
赤血球形成及び/又は造血に伴う、又はそれらに必要な細胞内の1つ又は複数の遺伝子、
特に胎児ヘモグロビンをコードする1つ又は複数の遺伝子を誘発するために、本発明の化
合物のいずれか(例えば4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,
3-ジオン又は3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソインドール-2-イル)-ピペリジン-2
,6-ジオン)をCD34+幹、前駆又は先駆細胞に接触させることができる。一実施態様におい
て、本発明は、赤血球形成又は造血に伴う、又はそれに不可欠な1つ又は複数の遺伝子を
誘発する方法であって、造血幹、前駆又は先駆細胞をエリスロポイエチン及び幹細胞因子
の存在下で免疫調節剤に接触させるステップにおいて、前記免疫調節剤は、前記造血幹、
前駆又は先駆細胞に、胎児ヘモグロビンをコードする1つ又は複数の遺伝子を発現させる
のに十分な量存在するステップを含む方法を提供する。具体的な実施態様において、前記
造血幹、前駆又は先駆細胞はCD34+細胞である。他の具体的な実施態様において、赤血球
形成又は造血に伴う、又はそれに不可欠な前記1つ又は複数の遺伝子は、クルッペル(Krup
pel)状因子1赤血球、Rh式血液型関連糖タンパク質、グリコホリンB、インテグリンアルフ
ァ2b、赤血球関連因子、グリコホリンA、ケル式血液型先駆体、ヘモグロビンα2、溶質担
体4、陰イオン交換体、炭酸脱水酵素1、ヘモグロビンγA、ヘモグロビンγG、ヘモグロビ
ンε1、又はそれらの任意の組合せをコードする遺伝子である。他の具体的な実施態様に
おいて、前記免疫調節剤は、IMiD(商標)である。より具体的な実施態様において、前記IM
iD(商標)は、α-(3-アミノフタルイミド)グルタルイミド、α-(3-アミノフタルイミド)グ
ルタルイミドの類似体又はプロドラッグ、3-(4'アミノイソインドリン-1'-オン)-1-ピペ
リジン-2,6-ジオン、3-(4'アミノイソインドリン-1'-オン)-1-ピペリジン-2,6-ジオンの
類似体又はプロドラッグ、又は下記の式の化合物である。
【0040】
【化3】

【0041】
本発明の1つ又は複数の化合物に加えて、1つ又は複数のサイトカインの存在下で、CD34
+細胞をin vivo又はin vitroでさらに分化することができる。CD34+細胞を赤血球分化経
路に沿って誘導するのに有用なサイトカインとしては、エリスロポイエチン(Epo)、TNFα
、幹細胞因子(SCF)、Flt-3L及び顆粒細胞マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)が挙
げられるが、それらに限定されない。Epo及びSCFは、赤血球サイトカインであることが知
られている。したがって、一実施態様において、CD34+細胞は、Epo又はSCFの存在下で分
化される。他の好ましい実施態様において、CD34+細胞は、Epo及びSCFの存在下で分化さ
れる。他の実施態様において、CD34+細胞は、TNFα、SCF、Flt-3L及びGM-CSFの組合せの
存在下で分化される。他の実施態様において、分化される前記細胞は、細胞培養における
1つ又は複数の細胞である。他の実施態様において、分化される前記細胞は、個体内の細
胞である。in vitro分化の実施態様において、Epo、TNFα、SCF、Flt-3L、及びGM-CSFの
うちの1つ又は複数の因子を1つ又は複数のIMiDs(商標)に接触させる。in vivo分化の実施
態様において、Epo、TNFα、SCF、Flt-3L、及びGM-CSFのうちの1つ又は複数の因子を、1
つ又は複数のIMiDs(商標)と同じ治療規則で個体に投与する。
【0042】
本発明の方法に使用されるサイトカインは、天然のサイトカインであってもよいし、或
いはそれらのサイトカインの人工的な誘導体又は類似体であってもよい。例えば、本発明
の化合物と併用できるエリスロポイエチンの類似体又は誘導体としては、Aranesp(商標)
及びDarbopoietin(商標)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0043】
使用されるサイトカインは、天然源から精製されてもよいし、或いは組換えにより製造
されてもよい。本発明の方法に使用できる組換えサイトカインの例としては、Neupogen(
登録商標)(Amgen、カリフォルニア州、Thousand Oaks)の商品名で米国で販売されている
フィルグラスチム又は組換え顆粒細胞コロニー刺激因子(G-CSF);Leukine(登録商標)(Immu
nex、ワシントン州、Seattle)の商品名で米国で販売されているサルグラモスチム又は組
換えGM-CSF;Epogen(登録商標)(Amgen、カリフォルニア州、Thousand Oaks)の商品名で米
国で販売されている組換えEpo;及びAncestimの商品名で米国で販売されているメチオニル
幹細胞因子(SCF)が挙げられる。いずれも参照により本明細書に組み込まれている米国特
許第5,391,485号、5,393,870号及び5,229,496号に記載されているように、GM-CSFの組換
え及び変異形態を調製することが可能である。いずれも参照により本明細書に組み込まれ
ている米国特許第4,810,643号、4,999,291号、5,528,823号、及び5,580,755号に記載され
ているように、G-CSFの組換え及び変異形態を調製することが可能である。
【0044】
造血先駆細胞及び免疫活性造血細胞のin vitro又はin vivoでの生存及び/又は増殖を促
す、或いはin vitro又はin vivoでの細胞における委任赤血球前駆体の分割及び分化を刺
激する他のサイトカインを使用することができる。そのようなサイトカインとしては、IL
-2(組換えIL-II(「rIL2」)及びカナリア痘IL-2を含む)、IL-10、IL-12及びIL-18の如きイ
ンターロイキン、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、インタ
ーフェロンアルファ-n1、インターフェロンアルファ-n3、インターフェロンベータ-Ia及
びインターフェロンガンマ-Ibの如きインターフェロン;並びにG-CSFが挙げられるが、そ
れらに限定されない。
【0045】
異常ヘモグロビン症のヒトに投与される場合は、本発明の化合物は、特にEpoの存在下
で、特にTNFα、SCF、Flt-3L及びGM-CSFの組合せの存在下で、さらに特にはEpo及びSCFの
存在下で、赤血球の生成、胎児ヘモグロビンの生成、並びにAHSPの生成を誘発する。上述
したように、使用されるサイトカインは、精製又は組換え形態、或いは特定のサイトカイ
ンの類似体又は誘導体を含むことができる。
【0046】
本発明の化合物を、異常ヘモグロビン症に対して有益な効果を有することが知られてい
る、又は有するものと思われる1つ又は複数の第2の化合物と併用して投与することもでき
る。この脈絡において、「有益な効果」とは、異常ヘモグロビン又は貧血症の任意の症状
の何らかの低減を意味する。
【0047】
例えば、異常ヘモグロビン症鎌形赤血球貧血症を具体的に参照すると、第2の化合物は
、胎児ヘモグロビンの生成を誘発することが知られている、又は誘発すると思われる本発
明の化合物以外の化合物でありうる。そのような化合物としては、ヒドロキシ尿素、及び
酪酸塩又は酪酸塩誘導体が挙げられる。第2の化合物は、亜酸化窒素、例えば外因的に添
加又は投与された亜酸化窒素の如き、血管を弛緩する化合物であってもよい。第2の化合
物は、ヘモグロビンSに直接結合して、それが鎌形誘導配座を帯びるのを防ぐ化合物であ
ってもよい。例えば、約12から17重量部のパイパーギニーンス種と、約15から約19重量部
のプテロカルパスオスン幹と、約12から約18重量部のユーゲニアカリオフィラタ果実と、
約25から約32重量部のソルガムビカラー葉と、場合によっては15から22重量部の炭酸カリ
ウムとの混合物であって、冷水で抽出される混合物の抽出物であるHEMOXIN(商標)(NIPRIS
AN(商標)、米国特許第5,800,819号参照)として知られる植物抽出物は、抗鎌形赤血球化活
性を有する。第2の化合物は、ガルドスチャネル拮抗剤であってもよい。ガルドスチャネ
ル拮抗剤の例としては、クロトリマゾール及びトリアリールメタン誘導体が挙げられる。
第2の化合物は、赤血球粘着性を低減することにより、鎌形赤血球貧血症において支配的
な凝固の量を減少させる化合物であってもよい。
【0048】
特定の状態に対して効果的であることが知られている、又は効果的であると思われる第
2の化合物で他の異常ヘモグロビン症を治療することができる。例えば、βサラセミアを
、第2の化合物デフェロキサミン、血中の鉄の蓄積の防止に役立つ鉄キレート剤、又は葉
酸塩(ビタミンB9)でさらに治療することができる。サラセミア又は鎌形赤血球貧血症を第
2の化合物としてのタンパク質Cで治療することもできる(米国特許第6,372,213号)。植物
医薬品が、異常ヘモグロビン症の症状、例えばサラセミアを改善できるという何らかの証
拠がある。そのような医薬品、及びそれに含まれる特定活性化合物のいずれかを本発明の
方法における第2の化合物として使用することもできる。例えば、Wu Zhikuiらの論文「遺
伝子レベルでのβ-サラセミアに対するBushen Shengxue Fangの効果」(Journal of Tradi
tional Chinese Medicine 18(4):300-303(1998))、及び米国特許第6,538,023号「鎌形赤
血球病に対する緑茶ポリフェノールの治療用途」参照。自己免疫性溶血性貧血症の治療は
、第2の化合物としてコルチコステロイドを含むことが可能である。
【0049】
タンパク質である第2の化合物は、他のタンパク質の誘導体又は類似体であってもよい
。そのような誘導体としては、それらの天然形態(例えば非グリコシル化形態)に通常存在
する炭水化物成分が欠如しているタンパク質、ペギル化誘導体、及びIgG1又はIgG3をタン
パク質又は対象となるタンパク質の活性部に融合することによって形成されるタンパク質
のような融合タンパク質を挙げることができるが、それらに限定されない。例えば、Peni
chet, M.L.及びMorrison, S.L.、J. Immunol. Methods 248:91-101 (2001)参照。
【0050】
サイトカイン、及び/又は貧血症又は異常ヘモグロビン症の治療に潜在的に有用な他の
化合物を本発明に有用な免疫調節性化合物として同時に投与することができる。この点に
おいて、サイトカイン又は他の化合物を免疫調節性化合物から分離した製剤として投与し
てもよいし、可能であれば単一医薬組成物としての投与に向けて免疫調節性化合物と調合
してもよい。或いは、サイトカイン、他の化合物又はその両方を、本発明の方法に使用さ
れる免疫調節性化合物とは別に投与し、同一又は異なる投与スケジュールに従うこともで
きる。好ましい実施態様において、免疫調節性化合物、例えばIMiDs(商標)、サイトカイ
ン、及び貧血症又は異常ヘモグロビン症の治療に有用な任意の他の化合物を同時に、しか
し投与の柔軟性のために個別の医薬製剤で投与する。
【0051】
上記の治療の組合せに加えて、治療される個体に輸液を注入することができる。そのよ
うな輸液は、血液、好ましくは対応血液、又はHemospan(商標)、又はHemospan(商標) PS(
Sangart)のような血液代替物であってもよい。
本明細書に記載されている治療の組合せのいずれかにおいて、治療される個体は、真核
生物である。治療される個体は、好ましくは哺乳類であり、さらにより好ましくはヒトで
ある。
【0052】
本発明の方法を用いて、異常ヘモグロビン症に起因する貧血症を含む任意の貧血症を治
療することができる。本発明の方法により治療可能な異常ヘモグロビン症及び貧血症は、
鎌形赤血球貧血症又はサラセミアの如き本来遺伝的なものであってもよい。異常ヘモグロ
ビン症は、造血又はリンパ系の癌を含むが、それらに限定されない癌のような疾病による
ものであってもよい。本発明の方法を用いて治療可能な他の状態としては、脾機能亢進、
脾摘出、腸摘出及び骨髄浸透が挙げられる。本発明の方法を用いて、計画的又は突発的な
毒、毒素又は薬物の導入に起因する貧血症を治療することもできる。例えば、癌化学療法
に起因する貧血症を本発明の方法及び化合物を使用して治療することができる。そのよう
に、貧血症又は異常ヘモグロビン症が、治療すべき一次的状態である場合、又は主要な疾
病若しくは治療レジメンによって引き起こされる二次的状態である場合に、本発明の方法
を採用することができる。
【0053】
5.2.本発明の化合物
本発明の化合物は、商業的に購入してもよいし、本明細書に開示されている特許又は特
許公開に記載された方法に従って調製してもよい。さらに、知られている分解剤又はキラ
ルカラム、並びに他の標準的な合成有機化学技術を用いて、光学的に純粋な組成物を非対
称的に合成又は分解することが可能である。本発明に使用される化合物としては、ラセミ
、立体的に濃縮された、又は立体的に純粋な免疫調節性化合物、並びにその医薬として許
容し得る塩、溶媒和物、立体異性体及びプロドラッグを挙げることができる。
【0054】
本発明に使用される好ましい化合物は、分子量が約1000 g/mol未満の小さい有機分子で
、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、オリゴ糖又は他の巨大分子ではない。
本明細書に用いられているように、且つ特に指定のない限り、「免疫調節性化合物」及
び「IMiDs(商標)」(セルジーン・コーポレーション)という用語は、TNF-α、LPS誘発単細
胞IL1β、及びIL12を顕著に阻害し、IL6生成物を部分的に阻害する小さい有機分子を包括
する。具体的な免疫調節性化合物について以下に述べる。
【0055】
TNF-αは、急性炎症を通じてマクロファージ及び単細胞によって生成される炎症性サイ
トカインである。TNF-αは、細胞内の多様な範囲のシグナリング事象に関与する。理論に
制限されることなく、本発明の免疫調節性化合物によって発揮される生物学的効果の1つ
は、TNF-αの合成の低減である。本発明の免疫調節性化合物は、TNF-α mRNAの分解を高
める。
【0056】
さらに、理論に制限されることなく、本発明に使用される免疫調節性化合物は、T細胞
の強力な共刺激剤であってもよく、投与に依存して、細胞増殖を著しく増強させることが
できる。本発明の免疫調節性化合物は、CD4+T細胞部分集合体に対するよりも、CD8+T細胞
部分集合体に対してより高い共刺激効果を有することもできる。加えて、それらの化合物
は、抗炎症特性を有し、T細胞を効率的に共刺激するのが好ましい。さらに、特定の理論
に制限されることなく、本発明に使用される免疫調節性化合物は、サイトカイン活性化を
通じて間接的にも、直接的にもナチュラルキラー(「NK」)細胞に作用することが可能であ
り、IFN-γを含むが、それに限定されない有益なサイトカインを生成するNK細胞の能力を
高めることができる。
【0057】
免疫調節性化合物の具体的な例としては、米国特許第5,929,117号に記載されているよ
うな置換スチレンのシアノ及びカルボキシ誘導体;米国特許第5,874,448号、及び5,955,47
6号に記載されているような1-オキソ-2-(2,6-ジオキソ-3-フルオロピペリジン-3-イル)イ
ソインドリン及び1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソ-3-フルオロピペリジン-3-イル)イソイ
ンドリン;米国特許第5,798,368号に記載されているようなテトラ置換2-(2,6-ジオキソピ
ペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン;米国特許第5,635,517号、6,476,052号、6,55
5,554号、及び6,403,613号に記載されている化合物を含むが、それらに限定されない1-オ
キソ及び1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドリン(例えばサリ
ドマイドの4-メチル誘導体);米国特許第6,380,239号に記載されているインドリン環の4-
又は5-位に置換された1-オキソ及び1,3-ジオキソイソインドリン(例えば4-(4-アミノ-1,3
-ジオキソイソインドリン-2-イル)-4-カルバモイルブタン酸);米国特許第6,458,810号に
記載されている2-位に2,6-ジオキソ-3-ヒドロキシピペリジン-5-イルが置換されたイソイ
ンドリン-1-オン及びイソインドリン-1,3-ジオン(例えば2-(2,6-ジオキソ-3-ヒドロキシ-
5-フルオロピペリジン-5-イル)-4-アミノイソインドリン-1-オン);米国特許第5,698,579
号、及び5,877,200号に記載されているような非ポリペプチド環状アミド類;米国特許第6,
281,230号、及び6,316,471号に記載されているようなアミドサリドマイド、並びにアミノ
サリドマイドの類似体、加水分解生成物、代謝物、誘導体及び先駆体、並びに置換2-(2,6
-ジオキソピペリジン-3-イル)フタルイミド及び置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)
-1-オキソイソインドール;及び2001年10月5日に出願された米国特許出願第09/972,487号
、2001年12月21日に出願された米国特許出願10/032,286号、及び国際出願第PCT/US01/504
01号(国際出願第WO02/059106号)に記載されているようなイソインドール-イミド化合物が
挙げられるが、それらに限定されない。本明細書に特定されている特許及び特許出願の各
々のすべてが、参照により本明細書に組み込まれている。
免疫調節性化合物は、サリドマイドを含まない。
【0058】
本発明の他の具体的な免疫調節性化合物としては、参照により本明細書に組み込まれて
いる米国特許第5,635,517号に記載されているベンゾ環においてアミノに置換された1-オ
キソ-及び1,3ジオキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドリンが挙げられる
が、それらに限定されない。これらの化合物は、構造Iを有する。
【0059】
【化4】

【0060】
(式中、X及びYの一方はC=Oであり、X及びYの他方はC=O又はCH2であり、R2は水素原子又は
低級アルキル、特にメチルである。具体的な免疫調節性化合物としては、
1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-アミノイソインドリン、
1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-5-アミノイソインドリン、
1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-6-アミノイソインドリン、
1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-7-アミノイソインドリン、
1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-アミノイソインドリン、及び
1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-5-アミノイソインドリンが挙げら
れるが、それらに限定されない。)。
【0061】
本発明の他の具体的な免疫調節性化合物は、それぞれが参照により本明細書に組み込ま
れている米国特許第6,281,230号、6,316,471号、6,335,349号、及び6,476,052号、並びに
国際特許出願第PCT/US97/13375号(国際公開第WO 98/03502号)に記載されているような置
換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)フタルイミド及び置換2-(2,6-ジオキソピペリジン
-3-イル)-1-オキソイソインドールの類に属する。代表的な化合物は、下記の式で表され
る。
【0062】
【化5】

【0063】
(式中、X及びYの一方はC=Oであり、X及びYの他方はC=O又はCH2であり、
(i)R1、R2、R3及びR4のそれぞれは、互いに独立に、ハロ、炭素原子数1〜4のアルキル
、又は炭素原子数1〜4のアルコキシであり、或いは(ii)R1、R2、R3及びR4の1つは-NHR5
あり、R1、R2、R3及びR4の残りは水素原子であり、
R5は、水素原子、又は炭素原子数1〜8のアルキルであり、
R6は、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル、ベンジル又はハロであり、
X及びYがC=Oの場合にR6が水素原子以外であれば、(i)R1、R2、R3及びR4のそれぞれはフ
ルオロであり、又は(ii)R1、R2、R3及びR4の1つはアミノである。)。
【0064】
この類を代表する化合物は、下記の式で表される。
【0065】
【化6】

【0066】
(式中、R1は、水素又はメチルである。個別的な実施態様において、本発明は、これらの
化合物の鏡像異性体的に純粋な形態(例えば光学的に純粋な(R)又は(S)鏡像異性体)の使用
を包括する。)。
【0067】
本発明のさらに他の具体的な免疫調節性化合物は、それぞれが参照により本明細書に組
み込まれている米国特許出願公開第2003/0096841号及び2003/0045552号並びに国際出願第
PCT/US01/50401号(国際公開第WO 02/059106号)に記載されているイソインドール-イミド
類に属する。代表的な化合物は、式IIで表される化合物、並びにその医薬として許容し得
る塩、水和物、溶媒和物、包接体、鏡像異性体、ジアステレオ異性体、ラセミ体、及びそ
れらの立体異性体の混合物である。
【0068】
【化7】

【0069】
(式中、X及びYの一方はC=Oであり、他方はCH2又はC=Oであり、
R1は、H、(C1〜C8)アルキル、(C3〜C7)シクロアルキル、(C2〜C8)アルケニル、(C2〜C8
)アルキニル、ベンジル、アリール、(C0〜C4)アルキル-(C1〜C6)ヘテロシクロアルキル、
(C0〜C4)アルキル-(C2〜C5)ヘテロアリール、C(O)R3、C(S)R3、C(O)OR4、(C1〜C8)アルキ
ル-N(R6)2、(C1〜C8)アルキル-OR5、(C1〜C8)アルキル-C(O)OR5、C(O)NHR3、C(S)NHR3、C
(O)NR3R3'、C(S)NR3R3'又は(C1〜C8)アルキル-O(CO)R5であり、
R2は、H、F、ベンジル、(C1〜C8)アルキル、(C2〜C8)アルケニル又は(C2〜C8)アルキニ
ルであり、
R3及びR3'は、独立に、(C1〜C8)アルキル、(C3〜C7)シクロアルキル、(C2〜C8)アルケ
ニル、(C2〜C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C0〜C4)アルキル-(C1〜C6)ヘテロシ
クロアルキル、(C0〜C4)アルキル-(C2〜C5)ヘテロアリール、(C0〜C8)アルキル-N(R6)2
(C1〜C8)アルキル-OR5、(C1〜C8)アルキル-C(O)OR5、(C1〜C8)アルキル-O(CO)OR5又はC(O
)OR5であり、
R4は、(C1〜C8)アルキル、(C2〜C8)アルケニル、(C2〜C8)アルキニル、(C1〜C4)アルキ
ル-OR5、ベンジル、アリール、(C0〜C4)アルキル-(C1〜C6)ヘテロシクロアルキル又は(C0
〜C4)アルキル-(C2〜C5)ヘテロアリールであり、
R5は、(C1〜C8)アルキル、(C2〜C8)アルケニル、(C2〜C8)アルキニル、ベンジル、アリ
ール又は(C2〜C5)ヘテロアリールであり、
R6の各発生物は、独立に、H、(C1〜C8)アルキル、(C2〜C8)アルケニル、(C2〜C8)アル
キニル、ベンジル、アリール、(C2〜C5)ヘテロアリール又は(C0〜C8)アルキル-C(O)OR5
あり、或いはR6基が加わって、ヘテロシクロアルキル基を形成することが可能であり、n
は、0又は1であり、*は、キラル-炭素核を表す。)。
【0070】
式IIの具体的な化合物において、nが0の場合は、R1は、(C3〜C7)シクロアルキル、(C2
〜C8)アルケニル、(C2〜C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C0〜C4)アルキル-(C1〜C
6)ヘテロシクロアルキル、(C0〜C4)アルキル-(C2〜C5)ヘテロアリール、C(O)R3、C(O)OR4
、(C1〜C8)アルキル-N(R6)2、(C1〜C8)アルキル-OR5、(C1〜C8)アルキル-C(O)OR5、C(S)N
HR3又は(C1〜C8)アルキル-O(CO)R5であり、
R2は、H又は(C1〜C8)アルキルであり、
R3は、(C1〜C8)アルキル、(C3〜C7)シクロアルキル、(C2〜C8)アルケニル、(C2〜C8)ア
ルキニル、ベンジル、アリール、(C0〜C4)アルキル-(C1〜C6)ヘテロシクロアルキル、(C0
〜C4)アルキル-(C2〜C5)ヘテロアリール、(C5〜C8)アルキル-N(R6)2、(C0〜C8)アルキル-
NH-C(O)O-R5、(C1〜C8)アルキル-OR5、(C1〜C8)アルキル-C(O)OR5、(C1〜C8)アルキル-O(
CO)R5又はC(O)OR5であり、他の変数は同じ定義を有する。
【0071】
式IIの他の具体的な化合物において、R2は、H又は(C1〜C4)アルキルである。
式IIの他の具体的な化合物において、R1は、(C1〜C8)アルキル又はベンジルである。
式IIの他の具体的な化合物において、R1は、H、(C1〜C8)アルキル、ベンジル、CH2OCH3
、CH2CH2OCH3、又は
【0072】
【化8】

【0073】
である。
式IIの化合物の他の実施態様において、R1は、
【0074】
【化9】

【0075】
であり、
Qは、O又はSであり、R7の各発生物は、独立に、H、(C1〜C8)アルキル、(C3〜C7)シクロ
アルキル、(C2〜C8)アルケニル、(C2〜C8)アルキニル、ベンジル、アリール、ハロゲン、
(C0〜C4)アルキル-(C1〜C6)ヘテロシクロアルキル、(C0〜C4)アルキル-(C2〜C5)ヘテロア
リール、(C0〜C8)アルキル-N(R6)2、(C1〜C8)アルキル-OR5、(C1〜C8)アルキル-C(O)OR5
、(C1〜C8)アルキル-O(CO)R5又はC(O)OR5であり、或いはR7の隣接発生物を一緒にして、
二環式アルキル又はアリール環を形成することが可能である。
【0076】
式IIの他の具体的な化合物において、R1はC(O)R3である。
式IIの他の具体的な化合物において、R3は、(C0〜C4)アルキル-(C2〜C5)ヘテロアリー
ル、(C1〜C8)アルキル、アリール又は(C0〜C4)アルキル-OR5である。
式IIの他の具体的な化合物において、ヘテロアリールは、ピリジル、フリル又はチエニ
ルである。
式IIの他の具体的な化合物において、R1はC(O)OR4である。
式IIの他の具体的な化合物において、C(O)NHC(O)のHを(C1〜C4)アルキル、アリール又
はベンジルで置換することが可能である。
【0077】
この類における化合物のさらなる例としては、
[2-(2,6-ジオキソ-ピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドー
ル-4-イルメチル]-アミド;(2-(2,6-ジオキソ-ピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソ-2,3-ジ
ヒドロ-1H-イソインドール-4-イルメチル)-カルバミン酸tertブチルエステル;4-(アミノ
メチル)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン;N-(2-(2,6-ジオ
キソ-ピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-4-イルメチル
)-アセトアミド;N-{(2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イ
ル)メチル}シクロプロピル-カルボキサミド;2-クロロ-N-{(2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジ
ル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)メチル}アセトアミド;N-(2-(2,6-ジオキソ(3-
ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)-3-ピリジルカルボキサミド;3-{1-オ
キソ-4-(ベンジルアミノ)イソインドリン-2-イル}ピペリジン-2,6-ジオン;2-(2,6-ジオキ
ソ(3-ピペリジル))-4-(ベンジルアミノ)イソインドリン-1,3-ジオン;N-{(2-(2,6-ジオキ
ソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)メチル}プロパンアミド;N-{(2-
(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)メチル}-3-ピリジ
ルカルボキサミド;N-{(2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4
-イル)メチル}ヘプタンアミド;N-{(2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソ
インドリン-4-イル)メチル}-2-フリルカルボキサミド;{N-(2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジ
ル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)カルバモイル}メチルアセテート;N-(2-(2,6-
ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)ペンタンアミド;N-(2-(2
,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)-2-チエニルカルボキ
サミド;N-{[2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル]メチ
ル}(ブチルアミノ)カルボキサミド;N-{[2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソ
イソインドリン-4-イル]メチル}(オクチルアミノ)カルボキサミド;及びN-{[2-(2,6-ジオ
キソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル]メチル}(ベンジルアミノ)カ
ルボキサミドが挙げられるが、それらに限定されない。
【0078】
本発明のさらに他の具体的な免疫調節性化合物は、それぞれが参照により本明細書に組
み込まれている米国特許出願公開第2002/0045643号、国際公開第WO 98/54170号、及び米
国特許第6,395,754号に開示されているイソインドール-イミド類に属する。代表的な化合
物は、式IIIで表される化合物、及びその医薬として許容し得る塩、水和物、溶媒和物、
包接体、鏡像異性体、ジアステレオ異性体、ラセミ体、及びそれらの立体異性体の混合物
である。
【0079】
【化10】

【0080】
(式中、X及びYの一方はC=Oであり、他方はCH2又はC=Oであり、
Rは、H又はCH2OCOR'
(i)R1、R2、R3又はR4のそれぞれは、互いに独立に、ハロ、炭素原子数1〜4のアルキル
、又は炭素原子数1〜4のアルコキシであり、或いは(ii)R1、R2、R3又はR4の1つはニトロ
又は-NHR5であり、R1、R2、R3又はR4の残りは水素原子であり、
R5は、水素原子、又は炭素原子数1〜8のアルキルであり、
R6は、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル、ベンゾ、クロロ又はフルオロであり、
R'は、R7-CHR10-N(R8R9)であり、
R7は、m-フェニレン、又はp-フェニレン、又はnが0〜4の値を有する-(CnH2n)-であり、
R8及びR9はそれぞれ、互いに独立に、水素原子、又は炭素原子数1〜8のアルキルであり
、或いはR8及びR9は、共に、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、又はX1
が-O-、-S-若しくは-NH-である-CH2CH2X1CH2CH2-であり、
R10は、水素原子、炭素原子数8までのアルキル、又はフェニルであり、
*は、キラル炭素核を表す。)。
他の代表的な化合物は、下記の式で表される。
【0081】
【化11】

【0082】
(式中、X及びYの一方はC=Oであり、X及びYの他方はC=O又はCH2であり、
(i)R1、R2、R3又はR4のそれぞれは、互いに独立に、ハロ、炭素原子数1〜4のアルキル
、又は炭素原子数1〜4のアルコキシであり、或いは(ii)R1、R2、R3及びR4の1つは-NHR5
あり、R1、R2、R3及びR4の残りは水素原子であり、
R5は、水素原子、又は炭素原子数1〜8のアルキルであり、
R6は、水素、炭素数1〜8のアルキル、ベンゾ、クロロ、又はフルオロであり、
R7は、m-フェニレン、又はp-フェニレン、又はnが0〜4の値を有する-(CnH2n)-であり、
R8及びR9はそれぞれ、互いに独立に、水素原子、又は炭素原子数1〜8のアルキルであり
、或いはR8及びR9は、共に、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、又はX1
が-O-、-S-若しくは-NH-である-CH2CH2X1CH2CH2-であり、
R10は、水素原子、炭素原子数8までのアルキル、又はフェニルである。)。
他の代表的な化合物は、下記の式で表される。
【0083】
【化12】

【0084】
(式中、X及びYの一方はC=Oであり、X及びYの他方はC=O又はCH2であり、
R1、R2、R3及びR4のそれぞれは、互いに独立に、ハロ、炭素原子数1〜4のアルキル、又
は炭素原子数1〜4のアルコキシであり、或いは(ii)R1、R2、R3及びR4の1つはニトロ又は
保護アミノであり、R1、R2、R3及びR4の残りは水素原子であり、
R6は、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル、ベンゾ、クロロ、又はフルオロである。
)。
他の代表的な化合物は、下記の式で表される。
【0085】
【化13】

【0086】
(式中、X及びYの一方はC=Oであり、X及びYの他方はC=O又はCH2であり、
(i)R1、R2、R3及びR4のそれぞれは、互いに独立に、ハロ、炭素原子数1〜4のアルキル
、又は炭素原子数1〜4のアルコキシであり、或いは(ii)R1、R2、R3及びR4の1つは-NHR5
あり、R1、R2、R3及びR4の残りは水素原子であり、
R5は、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキルであり、又はR7、R8、R9及びR10のそれぞ
れが本明細書に定められている通りであるCO-R7-CH(R10)NR8R9であり、
R6は、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル、ベンゾ、クロロ、又はフルオロである。
)。
化合物の具体的な例は、下記の式で表される。
【0087】
【化14】

【0088】
(式中、X及びYの一方はC=Oであり、X及びYの他方はC=O又はCH2であり、
R6は、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル、ベンジル、クロロ又はフルオロであり、
R7は、m-フェニレン、p-フェニレン、又はnが0〜4の値を有する-(CnH2n)-であり、
R8及びR9はそれぞれ、互いに独立に、水素原子、又は炭素原子数1〜8のアルキルであり
、或いはR8及びR9は、共に、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、又はX1
が-O-、-S-若しくは-NH-である-CH2CH2X1CH2CH2-であり、
R10は、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル、又はフェニルである。)。
【0089】
本発明の好ましい免疫調節性化合物は、4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-
イソインドリン-1,3-ジオン及び3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-
イル)-ピペリジン-2,6-ジオンである。それらの化合物は、標準的な合成方法(例えば参照
により本明細書に組み込まれている米国特許第5,635,517号参照)により得ることが可能で
ある。それらの化合物は、セルジーン・コーポレーション(ニュージャージ州、Warren)か
ら入手可能である。4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-
ジオンは、以下の化学構造を有する。
【0090】
【化15】

【0091】
化合物3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-
ジオンは、以下の化学構造を有する。
【0092】
【化16】

【0093】
他の実施態様において、本発明の具体的な免疫調節性化合物は、いずれも参照により本
明細書に組み込まれている、2003年9月4日に出願された米国暫定出願第60/499,723号、及
び2004年9月3日に出願された対応する米国非暫定出願に開示されている形態A、B、C、D、
E、F、G、及びHの如き3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピ
ペリデン-2,6-ジオンの多型形態を包括する。例えば、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3ジヒド
ロ-イソインドール-2-イル)-ピペリデン-2,6-ジオンの形態Aは、非水性溶媒系から得るこ
とが可能である非溶媒和結晶材料である。形態Aは、約8、14.5、16、17.5、20.5、24及び
26度2θに大きなピークを含むX線粉末回折パターンを有し、示差走査熱分析溶融温度最大
値が約270℃である。形態Aは、吸湿性が弱いか、又は非吸湿性であり、これまでに発見さ
れた3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオ
ンの最も熱力学的に安定した無水異形体である。
【0094】
3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン
の形態Bは、ヘキサン、トルエン及び水を含むが、それらに限定されない様々な溶媒系か
ら得ることが可能である半水結晶材料である。形態Bは、約16、18、22及び27度2θに大き
なピークを含むX線粉末回折パターンを有し、ホットステージ顕微鏡実験による特定され
た脱水及び溶融である、約146から268℃のDSC曲線からの吸熱性を有する。相互変換試験
により、形態Bは、水性溶媒系において形態Eに変換し、アセトン及び他の無水系において
他の形態に変換することが示されている。
【0095】
3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリデン-2,6-ジオン
の形態Cは、アセトンを含むが、それに限定されない溶媒から得ることが可能である半水
結晶材料である。形態Cは、約15.5及び25度2θに大きなピークを含むX線粉末回折パター
ンを有し、示差走査熱分析溶融温度最大値が約269℃である。形態Cは、約85%RH未満では
吸湿性を有さないが、より高い相対湿度で形態Bに変換しうる。
【0096】
3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリデン-2,6-ジオン
の形態Dは、アセトニトリル及び水の混合物から調製された結晶性溶媒和異形体である。
形態Dは、約27及び28度2θに大きなピークを含むX線粉末回折パターンを有し、示差走査
熱分析溶融温度最大値が約270℃である。形態Dは、吸湿性が弱いか、又は非吸湿性である
が、典型的には、より高い相対湿度において応力を受けると形態Bに変換することになる

【0097】
3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリデン-2,6-ジオン
の形態Eは、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリデン-2,
6-ジオンを水でスラリ状にし、アセトンと水の比率が約9:1の溶媒系で3-(4-アミノ-1-オ
キソ-1,3ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリデン-2,6-ジオンを徐々に蒸発させる
ことによって得ることが可能である二水結晶材料である。形態Eは、約20、24.5及び29度2
θに大きなピークを含むX線粉末回折パターンを有し、示差走査熱分析溶融温度最大値が
約269℃である。形態Eは、アセトン溶媒系において形態Cに変換し、THF溶媒系において形
態Gに変換しうる。水性溶媒系において、形態Eは、最も安定した形態である。形態Eに対
して実施された脱溶媒実験により、約125℃で約5分間にわたって加熱すると、形態Eが、
形態Bに変換しうることが示されている。175℃で約5分間にわたって加熱すると、形態Bが
、形態Fに変換しうる。
【0098】
3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリデン-2,6-ジオン
の形態Fは、形態Eの脱水により得ることが可能である非溶媒和結晶材料である。形態Fは
、約19、19.5及び25度2θに大きなピークを含むX線粉末回折パターンを有し、示差走査熱
分析溶融温度最大値が約269℃である。
【0099】
3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリデン-2,6-ジオン
の形態Gは、テトラヒドロフラン(THF)を含むが、それに限定されない溶媒で形態B及びEを
スラリ状にすることにより得ることが可能である非溶媒和結晶材料である。形態Gは、約2
1、23及び24.5度2θに大きなピークを含むX線粉末回折パターンを有し、示差走査熱分析
溶融温度最大値が約267℃である。
【0100】
3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリデン-2,6-ジオン
の形態Hは、形態Eを0%相対湿度に曝すことによって得ることが可能である部分水和(約0.
25モル)結晶材料である。形態Hは、約15、26及び31度2θに大きなピークを含むX線粉末回
折パターンを有し、示差走査熱分析溶融温度最大値が約269℃である。
【0101】
本発明の他の具体的な免疫調節性化合物としては、それぞれが参照により本明細書に組
み込まれている米国特許第5,874,448号及び5,955,476号に記載されているような1-オキソ
-2-(2,6-ジオキソ-3-フルオロピペリジン-3-イル)イソインドリン及び1,3-ジオキソ-2-(2
,6-ジオキソ-3-フルオロピペリジン-3-イル)イソインドリンが挙げられるが、それらに限
定されない。代表的な化合物は、下記の式で表される。
【0102】
【化17】

【0103】
(式中、Yは、酸素原子又はH2であり、
R1、R2、R3及びR4のそれぞれは、互いに独立に、水素原子、ハロ、炭素原子数1〜4のア
ルキル、炭素原子数1〜4のアルコキシ、又はアミノである。)。
【0104】
本発明の他の具体的な免疫調節性化合物としては、参照により本明細書に組み込まれて
いる米国特許第5,798,368号に記載されているテトラ置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-
イル)-1-オキソイソインドリンが挙げられるが、それに限定されない。代表的な化合物は
、下記の式で表される。
【0105】
【化18】

【0106】
(式中、R1、R2、R3及びR4のそれぞれは、互いに独立に、ハロ、炭素原子数1〜4のアルキ
ル、又は炭素原子数1〜4のアルコキシである。)。
【0107】
本発明の他の具体的な免疫調節性化合物としては、参照により本明細書に組み込まれて
いる米国特許第6,403,613号に開示されている1-オキソ及び1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキ
ソピペリジン-3-イル)イソインドリンが挙げられるが、それらに限定されない。代表的な
化合物は、下記の式で表される。
【0108】
【化19】

【0109】
(式中、Yは、酸素又はH2であり、
R1及びR2の第1の基は、ハロ、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルア
ミノ、シアノ又はカルバモイルであり、R1及びR2の第2の基は、第1の基と独立に、水素原
子、ハロ、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シアノ又はカル
バモイルであり、
R3は、水素原子、アルキル又はベンジルである。)。
化合物の具体的な例は、下記の式で表される。
【0110】
【化20】

【0111】
(式中、R1及びR2の第1の基は、ハロ、炭素原子数1〜4のアルキル、炭素原子数1〜4のアル
コキシ、各アルキルが炭素原子数1〜4のジアルキルアミノ、シアノ又はカルバモイルであ
り、
R1及びR2の第2の基は、第1の基と独立に、水素原子、ハロ、炭素原子数1〜4のアルキル
、炭素原子数1〜4のアルコキシ、アルキルが炭素原子数1〜4のアルキルアミノ、各アルキ
ルが炭素原子数1〜4のジアルキルアミノ、シアノ又はカルバモイルであり、
R3は、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル、又はベンジルである。)。具体的な例と
しては、1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-メチルイソインドリンが挙げ
られるが、それに限定されない。
他の代表的な化合物は、下記の式で表される。
【0112】
【化21】

【0113】
(式中、R1及びR2の第1の基は、ハロ、炭素原子数1〜4のアルキル、炭素原子数1〜4のアル
コキシ、各アルキルが炭素原子数1〜4のジアルキルアミノ、シアノ又はカルバモイルであ
り、
R1及びR2の第2の基は、第1の基と独立に、水素原子、ハロ、炭素原子数1〜4のアルキル
、炭素原子数1〜4のアルコキシ、アルキルが炭素原子数1〜4のアルキルアミノ、各アルキ
ルが炭素原子数1〜4のジアルキルアミノ、シアノ又はカルバモイルであり、
R3は、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル、又はベンジルである。)。
具体的な例としては、1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-メチルイソイ
ンドリンが挙げられるが、それに限定されない。
【0114】
本発明の他の具体的な免疫調節性化合物としては、参照により本明細書に組み込まれて
いる、2004年6月28日に出願された米国特許第6,380,239号、及び米国同時係属出願第10/9
00,270号に記載されているインドリン環の4-又は5-位で置換された1-オキソ及び1,3-ジオ
キソイソインドリンが挙げられるが、それに限定されない。代表的な化合物は、下記の式
で表される化合物、及びその塩である。
【0115】
【化22】

【0116】
(式中、C*で表される炭素原子は、(nが0でなく、R1がR2と同じでない場合に)鏡像異性の
核を構成し、X1及びX2の一方は、アミノ、ニトロ、炭素数1〜6のアルキル、又はNH-Zであ
り、X1又はX2の他方は水素原子であり、互いに独立したR1及びR2のそれぞれは、ヒドロキ
シ又はNH-Zであり、R3は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル、ハロ又はハロアルキルであ
り、Zは、水素原子、アリール、炭素数1〜6のアルキル、ホルミル、又は炭素数1〜6のア
シルであり、nは、0、1又は2の値を有し、X1がアミノで、nが1又は2であれば、R1及びR2
は共にヒドロキシではない。)。
さらなる代表的な化合物は、下記の式で表される。
【0117】
【化23】

【0118】
(式中、C*で表される炭素原子は、nが0でなく、R1がR2でない場合に鏡像異性の核を構成
し、X1及びX2の一方は、アミノ、ニトロ、炭素数1〜6のアルキル、又はNH-Zであり、X1
はX2の他方は水素原子であり、互いに独立したR1及びR2のそれぞれは、ヒドロキシ又はNH
-Zであり、R3は、炭素数1〜6のアルキル、ハロ又は水素原子であり、Zは、水素、アリー
ル、又は炭素数1〜6のアルキル若しくはアシルであり、nは、0、1、又は2の値を有する。
)。
【0119】
具体的な例としては、それぞれ以下の構造を有する2-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒド
ロ-イソインドール-2-イル)-4-カルバモイル-酪酸及び4-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒド
ロ-イソインドール-2-イル)-4-カルバモイル-酪酸、並びにその医薬として許容し得る塩
、溶媒和物、プロドラッグ及び立体異性体が挙げられるが、それらに限定されない。
【0120】
【化24】

【0121】
他の代表的な化合物は、下記の式で表される化合物、及びその塩である。
【0122】
【化25】

【0123】
(式中、C*で表される炭素原子は、nが0でなく、R1がR2でない場合に鏡像異性の核を構成
し、X1及びX2の一方は、アミノ、ニトロ、炭素数1〜6のアルキル、又はNH-Zであり、X1
はX2の他方は水素原子であり、互いに独立したR1及びR2のそれぞれは、ヒドロキシ又はNH
-Zであり、R3は、炭素数1〜6のアルキル、ハロ又は水素原子であり、Zは、水素原子、ア
リール、又は炭素数1〜6のアルキル若しくはアシルであり、nは、0、1、又は2の値を有す
る。)。
【0124】
具体的な例としては、それぞれ以下の構造を有する4-カルバモイル-4-{4-[(フラン-2-
イル-メチル)-アミノ]-1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル}-酪酸、4-カ
ルバモイル-2-{4-[(フラン-2-イル-メチル)-アミノ]-1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソイ
ンドール-2-イル}-酪酸、2-{4-[(フラン-2-イル-メチル)-アミノ]-1,3-ジオキソ-1,3-ジ
ヒドロ-イソインドール-2-イル}-4-フェニルカルバモイル-酪酸及び2-{4-[(フラン-2-イ
ル-メチル)-アミノ]-1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル}-ペンタン二酸
、並びにその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、プロドラッグ及び立体異性体が挙げら
れるが、それらに限定されない。
【0125】
【化26】

【0126】
化合物の他の具体的な例は、下記の式で表される。
【0127】
【化27】

【0128】
(式中、X1及びX2の一方は、ニトロ又はNH-Zであり、X1又はX2の他方は水素原子であり、
互いに独立したR1及びR2のそれぞれは、ヒドロキシ又はNH-Zであり、
R3は、炭素数1〜6のアルキル、ハロ又は水素原子であり、
Zは、水素原子、フェニル、は炭素数1〜6のアシル、又は炭素数1〜6のアルキルであり

nは、0、1又は2の値を有し、
X1及びX2の一方がニトロで、nが1又は2であれば、R1及びR2はヒドロキシ以外であり、
-COR2及び-(CH2)nCOR1が異なる場合は、C*で表される炭素原子は鏡像異性の核を構成す
る。)。他の代表的な化合物は、下記の式で表される。
【0129】
【化28】

【0130】
(式中、X1及びX2の一方は、炭素数1〜6のアルキルであり、
互いに独立したR1及びR2のそれぞれは、ヒドロキシ又はNH-Zであり、
R3は、炭素数1〜6のアルキル、ハロ又は水素原子であり、
Zは、水素原子、フェニル、は炭素数1〜6のアシル、又は炭素数1〜6のアルキルであり

nは、0、1、又は2の値を有し、
-COR2及び-(CH2)nCOR1が異なる場合は、C*で表される炭素原子は鏡像異性の核を構成す
る。)。
【0131】
本発明のさらに他の具体的な免疫調節性化合物としては、参照により本明細書に組み込
まれている米国特許第6,458,810号に記載されている2位が2,6-ジオキソ-3-ヒドロキシピ
ペリジン-5-イルで置換されたイソインドリン-1-オン及びイソインドリン-1,3-ジオンが
挙げられるが、それらに限定されない。代表的な化合物は、下記の式で表される。
【0132】
【化29】

【0133】
(式中、C*で表される炭素原子は鏡像異性の核を構成し、
Xは、-C(O)-又は-CH2-であり、
R1は、炭素原子数1〜8のアルキル、又は-NHR3であり、
R2は、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル、又は水素原子であり、
R3は水素原子、
非置換、若しくは炭素原子数1〜8のアルコキシで置換された炭素原子数1〜8のアルキル
、ハロ、アミノ、又は炭素原子数1〜4のアルキルアミノ、
炭素原子数3〜18のシクロアルキル、
非置換、若しくは炭素原子数1〜8のアルキルで置換されたフェニル、炭素原子数1〜8の
アルコキシ、ハロ、アミノ、又は炭素原子数1〜4のアルキルアミノ、
非置換、若しくは炭素原子数1〜8のアルキルで置換されたベンジル、炭素原子数1〜8の
アルコキシ、ハロ、アミノ、又は炭素原子数1〜4のアルキルアミノ、或いは
R4が水素原子、
非置換、若しくは炭素原子数1〜8のアルコキシで置換された炭素原子数1〜8のアルキル
、ハロ、アミノ、又は炭素原子数1〜4のアルキルアミノ、
炭素数3〜18のシクロアルキル、
非置換、若しくは炭素原子数1〜8のアルキルで置換されたフェニル、炭素原子数1〜8の
アルコキシ、ハロ、アミノ、又は炭素数1〜4のアルキルアミノ、
非置換、若しくは炭素原子数1〜8のアルキルで置換されたベンジル、炭素原子数1〜8の
アルコキシ、ハロ、アミノ、又は炭素原子数1〜4のアルキルアミノである-COR4である。)

【0134】
本発明の化合物を商業的に購入するか、又は本明細書に開示されている特許又は特許公
報に記載された方法に従って調製することが可能である。さらに、知られている分解剤又
はキラルカラム、並びに標準的な合成有機化学技術を用いて、光学的に純粋な組成物を非
対称的に合成又は分解することが可能である。
【0135】
本明細書に用いられているように、且つ特に指定のない限り、「医薬として許容し得る
塩」は、その用語が指す化合物の無毒性酸及び塩基付加塩を包括する。許容可能な無毒性
酸付加塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、メタンスルフォン酸、酢
酸、酒石酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、ソルビン酸、アコニッ
ト酸、サリチル酸、フタル酸、エンボル酸、及びエナント酸等を含む当該技術分野で知ら
れている有機及び無機酸又は塩基から誘導された塩が挙げられる。
【0136】
本来酸性である化合物は、様々な医薬として許容し得る塩基と塩を形成することが可能
である。そのような酸性化合物の医薬として許容し得る塩基付加塩を調製するのに使用で
きる塩基は、無毒性塩基付加塩、すなわちアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、及び特
にはカルシウム、マグネシウム、ナトリウム又はカリウム塩を含むが、それらに限定され
ない医薬として許容し得るカチオンを含む塩を形成する化合物である。好適な有機塩基と
しては、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールア
ミン、エチレンジアミン、メグルマイン(N-メチルグルカミン)、リシン、及びプロカイン
が挙げられるが、それらに限定されない。
【0137】
本明細書に用いられているように、且つ特に指定のない限り、「溶媒和物」という用語
は、非共有分子間力によって結合した化学量論的又は非化学量論的な量の溶媒をさらに含
む本発明の化合物又はその塩を意味する。溶媒が水の場合には、溶媒和物は水和物である

【0138】
本明細書に用いられているように、且つ特に指定のない限り、「プロドラッグ」という
用語は、加水分解、酸化、或いは生物学的条件下(in vitro又はin vivo)で反応して、化
合物を供給することができる化合物の誘導体を意味する。プロドラッグの例としては、生
加水分解性アミド、生加水分解性エステル、生加水分解性カルバマート、生加水分解性カ
ーボネート、生加水分解性ウレイド及び生加水分解性リン酸塩類似体のような加水分解性
成分を含む本発明の免疫調節性化合物の誘導体が挙げられるが、それらに限定されない。
プロドラッグの他の例としては、-NO、-NO2、-ONO、又は-ONO2成分を含む本発明の免疫調
節性化合物の誘導体が挙げられる。プロドラッグは、典型的には、1 Burger's Medicinal
Chemistry and Drug Discovery, 172-178, 949-982(Manfred E. Wolff編、第5版、1995)
、及びDesign of Prodrugs(H. Bundgaard編、Elselvier, New York、1985)に記載されて
いる方法等のよく知られた方法を用いて調製することができる。
【0139】
本明細書に用いられているように、且つ特に指定のない限り、「生加水分解性アミド」
、「生加水分解性エステル」、「生加水分解性カルバマート」、「生加水分解性カーボネ
ート」、「生加水分解性ウレイド」、及び「生加水分解性リン酸塩」という用語は、1)化
合物の生物学的活性に干渉せず、作用の取込み、持続又は作用の発現のような有益な特性
をin vivoでその化合物に付与することが可能であり、或いは2)生物学的に不活性である
が、生物学的に活性の化合物にin vivoで変換される化合物のそれぞれアミド、エステル
、カルバマート、カーボネート、ウレイド、又はリン酸塩を意味する。生加水分解性エス
テルの例としては、低級アルキルエステル、低級アシルオキシアルキルエステル(アセト
キシルメチル、アセトキシエチル、アミノカルボニルオキシメチル、ピバロイルオキシメ
チル及びピバロイルオキシエチルエステル等)、ラクトニルエステル(フタリジル及びチオ
フタリジルエステル等)、低級アルコキシアシルオキシアルキルエステル(メトキシカルボ
ニル-オキシメチル、エトキシカルボニルオキシエチル及びイソプロポキシカルボニルオ
キシエチルエステル等)、アルコキシアルキルエステル、コリンエステル及びアシルアミ
ノアルキルエステル(アセトアミドメチルエステル等)が挙げられるが、それらに限定され
ない。生加水分解性アミドの例としては、低級アルキルアミド、α-アミノ酸アミド、ア
ルコキシアシルアミド、及びアルキルアミノアルキルカルボニルアミドが挙げられるが、
それらに限定されない。生加水分解性カルバマートの例としては、低級アルキルアミン、
置換エチレンジアミン、アミノ酸、ヒドロキシアルキルアミン、複素環式及び複素環式芳
香族アミン、及びポリエーテルアミンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0140】
本明細書に用いられているように、且つ特に指定のない限り、「立体異性体」という用
語は、本発明のすべての鏡像異性的/立体異性的に純粋な化合物及び鏡像異性的/立体異性
的に濃縮された化合物を包括する。
【0141】
本明細書に用いられているように、且つ特に指定のない限り、「立体異性的に純粋」又
は「鏡像異性的に純粋」という用語は、化合物が1つの立体異性体を含み、その反対の立
体異性体又は鏡像異性体を実質的に持たないことを意味する。例えば、化合物が、1つの
立体異性体を80%、90%又は95%又はそれ以上含み、反対の立体異性体を20%、10%又は
5%又はそれ以下の量だけ含むときに、その化合物は立体異性的又は鏡像異性的に純粋で
ある。特定の場合において、本発明の化合物は、化合物が約80%ee(鏡像異性体過剰率)又
はそれ以上、好ましくは特定のキラル核に対して90%ee以上、より好ましくは特定のキラ
ル核に対して95%ee以上であるときに、キラル核に対して光学的に活性、又は立体異性的
/鏡像異性的に純粋(実質的にR-形態又は実質的にS-形態)であると見なされる。
【0142】
本明細書に用いられているように、且つ特に指定のない限り、「立体異性的に濃縮」又
は「鏡像異性的に濃縮」という用語は、本発明の化合物の立体異性体のラセミ混合物並び
に他の混合物を包括する(例えば、R/S=30/70、35/65、40/60、45/55、55/45、60/40、65/
35、及び70/30。)。本発明の様々な免疫調節性化合物は、1つ又は複数のキラル核を含み
、鏡像異性体のラセミ混合物又はジアステレオ異性体の混合物として存在しうる。本発明
は、そのような化合物の立体異性的に純粋な形態の使用、並びにそれらの形態の混合物の
使用を包括する。例えば、本発明の特定の免疫調節性化合物の等量又は不等量の鏡像異性
体を本発明の方法及び組成物に使用できる。キラルカラム又はキラル分解剤のような標準
的な技術を用いて、これらの異性体を非対称的に合成又は分解することができる。例えば
、Jacques,J.ら、Enantiomers, Racemates and Resolutions(Wiley-Interscience, New Y
ork, 1981);Wilen, S.H.ら、Tetrahedron 33:2725(1977);Eliel, E. L.、Stereochemistr
y of Carbon Compounds (McGraw-Hill, NY, 1962);及びWilen, S.H.、Tables of Resolvi
ng Agents and Optical Resolutions、268頁(E.L. Eliel編、Univ. of Notre Dame Press
、Notre Dame, IN, 1972)参照。
【0143】
示された構造と、その構造が与えられた名称との間に差がある場合は、示された構造に
より大きなウェイトがおかれることに留意されたい。加えて、構造又は構造の一部の立体
化学が、例えば太字体又は破線で示されていない場合は、その構造又は構造の一部が、そ
のすべての立体異性体を包括するものと解釈されるべきである。
【0144】
5.3.医薬組成物及び投与形態
個別的な単一の単位投与形態の調製に医薬組成物を使用することが可能である。本発明
の医薬組成物及び投与形態は、本発明の免疫調節性化合物、或いはその医薬として許容し
得る塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接体又はプロドラッグを含む。本発明の医薬
組成物及び投与形態は、1つ又は複数の賦形剤をさらに含むことが可能である。
【0145】
本発明の医薬組成物及び投与形態は、1つ又は複数のさらなる活性成分を含むことも可
能である。結果として、本発明の医薬組成物及び投与形態は、本明細書に開示されている
活性成分(例えば免疫調節性化合物及び第2の活性剤)を含む。随意の第2の又は追加的な活
性成分の例は、本明細書に開示されている(例えばセクション5.1参照)。
【0146】
本発明の単一の単位投与形態は、患者に対する経口、粘膜(例えば鼻、舌下、腔口、頬
、又は直腸)、非経口(例えば皮下、静脈、大量瞬時注入、筋肉内、又は動脈内)、局所的(
例えば点眼剤、又は他の眼科用薬剤)、又は経皮投与に好適である。投与形態の例として
は、錠剤、キャプレッツ、軟質弾性ゼラチンカプセルのようなカプセル、カシェ剤、トロ
ーチ、糖衣錠、分散物、座薬、粉末、煙霧剤(例えば経鼻スプレー又は吸入剤)、ゲル、懸
濁物(例えば水性若しくは非水性懸濁液、水中油エマルジョン、又は油中水液体エマルジ
ョン)溶液、及びエリキシル剤を含む、患者に対する経口又は粘膜投与に好適な液体投与
形態、患者に対する非経口投与に好適な液体投与形態、点眼剤、又は局所的投与に好適な
他の眼科用薬剤、並びに患者に対する非経口投与に好適な液体投与形態を供給するように
復元できる無菌固形物(例えば結晶又は非結晶固形物)が挙げられるが、それらに限定され
ない。
【0147】
本発明の投与形態の組成、形状及び種類は、典型的にはそれらの用途に応じて異なる。
例えば、疾病の急性治療に使用される投与形態は、それが含む1つ又は複数の活性成分を
、同じ疾病の慢性治療に使用される投与形態より多量に含有することができる。同様に、
非経口投与形態は、それが含む1つ又は複数の活性成分を、同じ疾病を治療するのに用い
られる経口投与形態より少量に含有することができる。本発明に包括される具体的な投与
形態がそれぞれ異なるこれら及び他の方法を当業者であれば容易に理解するであろう。例
えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第18版、Mack Publishing、Easton PA(19
90)参照。
【0148】
典型的な医薬組成物及び投与形態は、1つ又は複数の賦形剤を含む。好適な賦形剤は、
医薬分野の当業者によく知られており、好適な賦形剤の非限定的な例が本明細書に提示さ
れている。特定の賦形剤が、医薬組成物又は投与形態への導入に好適であるかどうかは、
投与形態を患者に投与する方法を含むが、それに限定されない当該技術分野でよく知られ
ている様々な要因に依存する。例えば、錠剤のような経口投与形態は、非経口投与形態で
の使用に適さない賦形剤を含有しうる。特定の賦形剤の好適さは、投与形態における具体
的な活性成分にも依存しうる。例えば、ある活性成分の分解は、乳糖のようなある賦形剤
により、又は水に接触させると加速されうる。第一級又は第二級アミンを含む活性成分は
、特にそのような加速分解を生じやすい。結果として、本発明は、乳糖又は他の単糖又は
二等類をほとんど含有していない医薬組成物及び投与形態を包括する。本明細書に用いら
れているように、「乳糖フリー」という用語は、乳糖が存在していても、その量は、活性
成分の分解速度を実質的に高めるのに不十分であることを意味する。
【0149】
本発明の乳糖フリー組成物は、当該技術分野でよく知られており、米国薬局法(USP)25-
NF20(2002)にリストされている賦形剤を含むことが可能である。概して、乳糖フリー組成
物は、活性成分、バインダ/充填剤及び潤滑剤を薬学的に適合可能且つ医薬として許容し
得る量だけ含む。好ましい乳糖フリー投与形態は、活性成分、微結晶セルロース、予めゲ
ル化されたデンプン、及びステアリン酸マグネシウムを含む。
【0150】
水はある化合物の分解を促進しうるため、本発明は、活性成分を含む無水医薬組成物及
び投与形態をさらに含む。例えば、医薬技術分野では、経時的な製剤の保存性又は安定性
のような特性を判断するために、長期的保存をシミュレートする手段として、水(例えば5
%)の添加が広く受け入れられている。例えば、Jens T. Carstensen、Drug Stability: P
rinciples & Practice、第2版、Marcel Dekker、NY, NY、1995、379〜380頁参照。実際、
水及び熱は、ある化合物の分解を加速させる。したがって、水分及び/又は湿気は、製剤
の製造、取扱い、梱包、保存、出荷及び使用時によく発生するため、製剤に対する水の影
響は非常に大きいといえる。
【0151】
本発明の無水医薬組成物及び投与形態は、無水又は低水分含有成分及び低水分又は低湿
度条件を用いて、調製されうる。乳糖、及び第一級又は第二級アミンを含む少なくとも1
つの活性成分を含む医薬組成物及び投与形態は、製造、梱包及び/又は使用時に水分及び/
又は湿気に実質的に接触する場合には、無水であることが好ましい。
【0152】
無水医薬組成物は、無水性が維持されるように、調製及び保存されるべきである。よっ
て、無水組成物は、好適な処方キットに含めることができるように、水への接触を防止す
ることが知られている材料を使用して梱包されるのが好ましい。好適な梱包材の例として
は、気密密封箔、プラスチック、単位投与容器(例えばバイアル)、ブリスタパック、及び
ストリップパックが挙げられるが、それらに限定されない。
【0153】
本発明は、活性成分の分解速度を低下させる1つ又は複数の化合物を含む医薬組成物及
び投与形態をさらに含む。本明細書では「安定化剤」と称するそのような化合物としては
、アスコルビン酸のような抗酸化剤、pH緩衝剤、又は塩緩衝剤が挙げられるが、それらに
限定されない。
【0154】
賦形剤の量及び種類と同じように、投与形態における活性成分の量及び種類は、患者に
投与する経路を含むが、それに限定されない要因に応じて異なりうる。しかし、本発明の
典型的な投与形態は、本発明の免疫調節性化合物、又はその医薬として許容し得る塩、溶
媒和物、水和物、立体異性体、包接体又はプロドラッグを約0.10から約150mg含む。典型
的な投与形態は、本発明の免疫調節性化合物、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和
物、水和物、立体異性体、包接体又はプロドラッグを約0.1、1、2、5、7.5、10、12.5、1
5、17.5、20、25、50、100、150、又は200 mg含む。特定の実施態様において、好ましい
投与形態は、4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル)-イソインドリン-1,3-ジオン(
すなわちα-(3-アミノフタルイミド)グルタルイミド)約1、2、5、10、25、又は50 mg含む
。具体的な実施態様において、好ましい投与形態は、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒド
ロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンを約5、10、25、又は50 mg含む。典
型的な投与形態は、第2の活性成分を1から約1000 mg、約5から約500 mg、約10から約350
mg、又は約50から約200 mg含む。勿論、抗癌薬の具体的な量は、使用される具体的な薬剤
、治療又は管理される癌の種類、並びに本発明の免疫調節性化合物、及び患者に対して同
時に投与される随意の追加的な活性剤の量に依存することになる。
【0155】
本発明の1つ又は複数の化合物がサイトカインと共に個体に投与される場合は、サイト
カインを本明細書の他の個所に記載されている任意の医薬として許容し得る投与形態、又
は許容可能な濃度で使用できる。典型的には、例えば、ニューポゲン(Neupogen)は、好中
球数が10000/mm3に達するまで、注入可能な丸薬として約4から約8マイクログラム/kg/日
の投与量で投与される。アンセスチム(Ancestim)(組換型メチオニルヒト幹細胞因子)は、
典型的には、皮下注射(静脈注射ではない)により、9から12日間にわたって、1から20マイ
クログラム/kg/日の投与量で投与される。組換型ヒト幹細胞因子も同様の投与量で投与す
ることができる。サルグラモスチム(Sargramostim)は、典型的には、約250マイクログラ
ム/m2/日までの投与量で、白血球数が約50000/mm3を超えるときまで、静脈又は皮下投与
される。ペグフィルグラスチム(Pegfilgrastim)(Neulasta(商標))は、典型的には、必要
に応じて約6ミリグラムの量で皮下投与される。特定の白血球細胞群の数、又は全白血球
細胞の数を求めることによって、血液中の白血球の数に影響を与えるサイトカインの適切
な投与量を患者毎に決定することができる。例えばR&D Systems, Inc.(ミネソタ州、Minn
eapolis)から組換型IL-3を入手することができる。組換型IL-3は、in vitroで約0.1から
約0.4 ng/mlのED50を有し、in vivoでも同等の濃度で使用できる。例えばBioSource Inte
rnational(カリフォルニア州Camarillo)から組換型ヒト幹細胞因子(SCF)を入手できる。
組換型SCFは、in vitroで約2から約5 ng/mlのED50を有し、in vivoでも同等の濃度で使用
できる。例えばProSpec-Tany TechnoGene LTD(イスラエル、Rehovot)又はU.S. Biologica
l(マサチューセッツ州、Swampscott)から組換型ヒトFms状チロシンキナーゼ-3リガンド(F
lt-3L)を入手できる。組換型ヒトFlt-3Lは、in vitroで約1から約10 ng/mlのED50を有し
、in vivoでも同等の濃度で使用できる。先述のいずれの物質の実際の使用濃度も、当該
技術分野で知られている方法に従って、培養物、又は個体から採取した血液サンプルにお
ける白血球又は赤血球の数の経時変化を求めることにより、個体毎に決定することができ
る。CD34+細胞の赤血球経路に沿った分化、及び胎児ヘモグロビン遺伝子の発現を、知ら
れている技術(例えば、胎児ヘモグロビン転写又は胎児ヘモグロビンのPCR仲介又は抗体仲
介検出)を用いて評価することが可能である。
【0156】
エリスロポイエチン(例えばEpogen(登録商標))は、典型的には、約12.5 U/kgから525 U
/kg、一般的には約100 U/kg以下の投与量で、静脈又は皮下投与される。エリスロポイエ
チンの変異体であるAranesp(商標)も、典型的には、同様の投与量で投与される。エリス
ロポイエチン及びエリスロポイエチン類似体については、投与量は、ヘマトクリットが約
10 g/dLと約12 g/dLの間になり、任意の2週間の期間で増加量が1.0 g/dLを上回るのを回
避する投与量である。
【0157】
5.3.1.経口投与形態
経口投与に好適である本発明の医薬組成物を、錠剤(例えば咀嚼錠)、キャプレッツ、カ
プセル、及び液体(例えば香味シロップ)を含むが、それらに限定されない個別の投与形態
として提供することが可能である。そのような投与形態は、所定量の活性成分を含み、当
業者によく知られている製薬方法によって調製されうる。一般には、Remington's Pharma
ceutical Sciences、第18版、Mark Publishing、Easton PA(1990)参照。
【0158】
本発明の典型的な経口投与形態は、混和物中の活性成分を、従来の医薬調合技術に従っ
て、少なくとも1つの賦形剤と混合することによって調製される。賦形剤は、投与に対し
て望ましい形態の製剤に応じて広範な形態をとることが可能である。例えば、経口の液体
又は煙霧投与形態での使用に好適な賦形剤としては、水、グリコール、油、アルコール、
香料、防腐剤、及び着色剤が挙げられるが、それらに限定されない。固体の経口投与形態
(例えば粉末、錠剤、カプセル、及びキャプレッツ)での使用に好適な賦形剤の例としては
、デンプン、砂糖、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、バインダ、及び崩壊剤
が挙げられるが、それらに限定されない。
【0159】
投与が容易であるため、錠剤及びカプセルが最も有益な経口投与単位形態であり、その
場合は、固体の賦形剤が採用される。望まれる場合は、標準的な水性又は非水性技術によ
って錠剤にコートすることが可能である。そのような投与形態を製薬の方法のいずれかに
よって調製することが可能である。概して、医薬組成物及び投与形態は、活性成分を液体
の担体、微細固体担体と均一且つ均質に混合し、次いで、必要ならば、製品を所望の形に
成形することによって調製される。
【0160】
例えば、圧縮又は成型によって錠剤を調製することが可能である。圧縮錠剤は、場合に
よっては賦形剤と混合された粉末又は顆粒の如き自由流動形態の活性成分を好適な機械で
圧縮することによって調製されうる。成型錠剤は、不活性な希釈液で湿らせた粉末化合物
の混合物を好適な機械で成型することによって製造されうる。
【0161】
本発明の経口投与形態に使用できる賦形剤の例としては、バインダ、充填剤、崩壊剤及
び潤滑剤が挙げられるが、それらに限定されない。医薬組成物及び投与形態での使用に好
適なバインダとしては、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン若しくは他のデンプ
ン、ゼラチン、アカシアの如き天然及び合成ゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、
他のアルギン酸塩、粉末トラガカント、ガーゴム、セルロース、及びその誘導体(例えば
エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、及びナト
リウムカルボキシメチルセルロース)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、予め
ゲル化されたデンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば第2208号、2906号
及び2910号)、微結晶セルロース、並びにそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定
されない。
【0162】
微結晶セルロースの好適な形態としては、AVICEL-PH-101、AVICEL-PH-103、AVICEL RC-
581、AVICEL-PH-105(FMC Corporation、American Viscose Division、Avicel Sales(ペン
シルバニア州、Marcus Hook)として販売されている材料及びそれらの混合物が挙げられる
が、それらに限定されない。具体的なバインダは、AVICEL RC-581として販売されている
微結晶セルロースとナトリウムカルボキシメチルセルロースの混合物である。好適な無水
若しくは低水分賦形剤又は添加剤としては、AVICEL-PH-103(商標)及びStarch 1500 LMが
挙げられる。
【0163】
本明細書に開示されている医薬組成物及び投与形態での使用に好適な充填剤の例として
は、タルク、炭酸カルシウム(例えば顆粒又は粉末)、微結晶セルロース、粉末セルロース
、デキストレート、カオリン、マンニトール、珪酸、ソルビトール、デンプン、予めゲル
化したデンプン、及びそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。本発明の
医薬組成物におけるバインダ又は充填剤は、典型的には、約50から約99重量パーセントの
医薬組成物又は投与形態で存在する。
【0164】
水性環境に曝されると崩壊する錠剤を提供するために、本発明の組成物に崩壊剤を使用
する。含有する崩壊剤が多すぎる錠剤は、保存中に崩壊するおそれがあるのに対して、含
有する崩壊剤が少なすぎる錠剤は、所望の速度で、又は所望の条件下で崩壊しないおそれ
がある。したがって、活性成分の放出を悪い方向に変化させるほど多すぎたり少なすぎた
りしない十分量の崩壊剤を使用して、本発明の固体経口投与形態を形成する必要がある。
使用される崩壊剤の量は、製剤の種類に応じて異なり、当業者にとって容易に区別可能で
ある。典型的な医薬組成物は、約0.5から約15重量パーセントの崩壊剤、好ましくは約1か
ら約5重量パーセントの崩壊剤を含む。
【0165】
本発明の医薬組成物及び投与形態に使用できる崩壊剤としては、寒天、アルギン酸、炭
酸カルシウム、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポ
ラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモ又はタピオカデンプ
ン、他のデンプン、予めゲル化したデンプン、他のデンプン、粘土、他のアルギン、他の
セルロース、ゴム、及びそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0166】
本発明の医薬組成物及び投与形態に使用できる潤滑剤としては、ステアリン酸カルシウ
ム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール
、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、
タルク、水素化植物油(例えば落花生油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、コ
ーン油及び大豆油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリル酸エチル、寒天、
及びそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。さらなる潤滑剤としては、
例えば、サイロイドシリカゲル(AEROSIL 200、W.R. Grace Co.(メリーランド州、Baltimo
re)製)、合成シリカの凝固煙霧剤(Degussa Co.(テキサス州、Plano)により市販)、CAB-O-
SIL(Cabot Co.(マサチューセッツ州、Boston)が販売する熱分解性二酸化珪素製品)、及び
それらの混合物が挙げられる。潤滑剤は、使用される場合でも、典型的には、潤滑剤が導
入される医薬組成物又は投与形態の約1重量パーセント未満の量で使用される。
【0167】
本発明の好ましい固体経口投与形態は、本発明の免疫調節性化合物、無水乳糖、微結晶
セルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸、コロイド性無水シリカ、及びゼラチ
ンを含む。
【0168】
5.3.2.放出遅延投与形態
放出制御手段、又は当業者によく知られている供給装置によって本発明の活性成分を投
与することが可能である。例としては、それぞれが参照により本明細書に組み込まれてい
る米国特許第3,845,770号、3,916,899号、3,536,809号、3,598,123号及び4,008,719号、5
,674,533号、5,059,595号、5,591,767号、5,120,548号、5,073,543号、5,639,476号、5,3
54,556号、及び5,733,566号に記載されているものが挙げられるが、それらに限定されな
い。例えばヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマー基材、ゲル、浸透膜、浸透系
、多層コーティング、微粒子、リポソーム、マイクロスフェア、又は所望の放出プロフィ
ルを提供する様々な割合のそれらの組合せを使用して1つ又は複数の活性成分の放出を遅
延又は制御して、そのような投与形態を使用することが可能である。当業者に知られてい
る好適な放出制御製剤は、本明細書に記載されているものも含めて、本発明の活性成分と
共に使用するために容易に選択されうる。したがって、本発明は、放出制御に適応する錠
剤、カプセル、ゲルキャップ、及びキャプレッツを含むが、それらに限定されない、経口
投与に好適な単一の単位投与形態を包括する。
【0169】
すべての放出制御医薬品は、非制御性医薬品によって達成される薬物治療に比べてその
薬物治療を向上させるという共通の目標を有する。理想的には、最適に設計された放出制
御製剤の医療における使用は、最小限の医薬物質を採用して、最小限の時間で状態を治癒
又は制御することによって特徴付けられる。放出制御製剤の利点としては、薬物の活性化
の増強、投与頻度の減少、及び患者コンプライアンスの上昇が挙げられる。加えて、放出
制御製剤を使用して、作用の発生の時間、又は薬物の血中濃度のような他の特性に影響を
与えることが可能であるため、副(有害)作用の発生に影響を与えることが可能である。
【0170】
たいていの放出制御製剤は、所望の治療効果を即座にもたらすある量の薬物(活性成分)
を最初に放出し、他の量の薬物を徐々に且つ継続的に放出して、長期間にわたって、この
レベルの治療又は予防効果を維持するように設計されている。体内にこの一定量の薬物を
維持するために、代謝する薬物及び体内から排泄される薬物の量に取って代わる速度で投
与形態から薬物を放出させなければならない。pH、温度、酵素、水、又は他の生理的条件
若しくは化合物を含むが、それらに限定されない様々な条件によって、活性成分の放出制
御を刺激することが可能である。
【0171】
5.3.3.非経口投与形態
皮下、静脈内(大量瞬時投与)、筋肉及び動脈内を含むが、それらに限定されない様々な
経路によって、非経口投与形態を患者に投与することが可能である。それらの投与は、典
型的には、汚染に対する患者の自然防御を回避するため、非経口投与形態は、好ましくは
、無菌であるか、又は患者への投与に先立って滅菌することが可能である。非経口投与形
態の例としては、注射に対応する溶液、注射に対応する医薬として許容し得る媒体に溶解
又は懸濁される乾燥製品、注射に対応する懸濁物、及びエマルジョンが挙げられるが、そ
れらに限定されない。
【0172】
本発明の非経口投与形態を供給するのに使用できる好適な媒体は、当業者によく知られ
ている。例としては、注射用水USP;塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、ブドウ糖注
射液、ブドウ糖及び塩化ナトリウム注射液、及び乳酸加リンゲル注射液を含むが、それら
に限定されない水性媒体;エチルアルコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピ
レングリコールを含むが、それらに限定されない水溶性媒体;並びにトウモロコシ油、綿
実油、ピーナッツ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、及び安息
香酸ベンジルを含むが、それらに限定されない非水性媒体が挙げられるが、それらに限定
されない。
【0173】
本明細書に開示されている1つ又は複数の活性成分の溶解性を高める化合物を本発明の
非経口投与形態に導入することも可能である。例えば、シクロデキストリン及びその誘導
体を使用して、本発明の免疫調節性化合物及びその誘導体の溶解度を高めることが可能で
ある(例えば、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,134,127号参照。)。
【0174】
5.3.4.局所的及び粘膜投与形態
本発明の局所的及び粘膜投与形態としては、噴霧、煙霧、溶液、エマルジョン、懸濁物
、点眼若しくは他の眼科用薬剤、又は当業者に知られている他の形態が挙げられるが、そ
れらに限定されない。例えば、RemingtonのPharmaceutical Sciences、第16及び第18版、
Mack Publishing、Easton PA(1980 & 1990);及びIntroduction to Pharmaceutical Dosag
e Forms、第4版、Lea & Febiger、Philadelphia(1985)参照。口腔内の粘膜組織を治療す
るのに好適な投与形態を洗口液又は経口ゲルとして調合することが可能である。
【0175】
好適な賦形剤(例えば担体及び希釈剤)、並びに本発明に包括される局所的及び粘膜投与
形態を供給するのに使用できる他の材料は、医薬技術分野の当業者によく知られており、
所定の医薬組成物又は投与形態が適用される特定の組織に依存する。そのことを念頭にお
くと、典型的な賦形剤としては、無毒性で医薬として許容し得る溶液、エマルジョン又は
ゲルを形成する水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール
、ブタン-1,3-ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱油
、及びそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。望まれる場合は、加湿剤
又は湿潤剤を医薬組成物及び投与形態に添加することも可能である。そのような追加的な
成分は、当該技術分野でよく知られている。例えば、RemingtonのPharmaceutical Scienc
es、第16及び第18版、Mack Publishing、Easton PA(1980及び1990)参照。
【0176】
医薬組成物又は投与形態のpHを調整して、1つ又は複数の活性成分の配達を向上させる
こともできる。同様に、配達を向上させるために、溶媒担体の極性、そのイオン強度、又
は張度を調整することが可能である。ステアリン酸塩の如き化合物を医薬組成物又は投与
形態に添加して、配達を向上させるように1つ又は複数の活性成分を親水性又は親油性を
有利に変化させることも可能である。この点において、ステアリン酸塩は、乳化剤又は界
面活性剤としての製剤の脂質媒体として、且つ配達促進剤又は浸透促進剤として機能する
ことが可能である。活性成分の異なる塩、水和物又は溶媒和物を使用して、得られる組成
物の特性をさらに調整することが可能である。
【0177】
5.3.5.キット
典型的には、本発明の活性成分は、好ましくは、同時に、異なる投与経路によって、患
者に投与されるが、異なる時間に、同一の投与経路によって投与されてもよい。したがっ
て、本発明は、医療実務者によって用いられるときに、適切な量の活性成分の患者への投
与を単純化することができるキットを包括する。
【0178】
本発明の典型的なキットは、本発明の免疫調節性化合物の投与形態、或いはその医薬と
して許容し得る塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、プロドラッグ又は包接体を含む。好
ましくは、キットを備えた免疫調節性化合物は、4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリ
ジル))-イソインドリン-1,3-ジオン又は3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソインド
ール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン、或いは下記の式を有する化合物である。
【0179】
【化30】

【0180】
本発明に包括されるキットは、サイトカイン、又はG-CSF、GM-CSF、Epo、Flt-3L、SCF
、IFN、IL2、IL8及びIL18等のサイトカイン誘導体、及び/又は貧血症又は異常ヘモグロビ
ン症に対して有益な影響を有することが知られている、又はそのように考えられる他の化
合物、オブリメルセン(Genasense(登録商標))、メルファラン、トポテカン、ダカルバジ
ン、イリノテカン、タクソテレ、COX-2抑制剤、ペントキシフィリン、シプロフロキサシ
ン、デキサメサゾン、Ara-C、ビノレルビン、イソトレチノイン、13シス-レチン酸、又は
それらの薬学的に活性な変異体若しくは誘導体、或いはそれらの組合せを含むが、それら
に限定されない他の化合物をさらに含むことが可能である。キットに含めることができる
他の化合物は、胎児ヘモグロビンを誘発する化合物、血管を弛緩する化合物、ヘモグロビ
ンSに共有結合すると、ヘモグロビンSの自己凝集を低減する化合物、ガルドスチャネル拮
抗剤である化合物、及び赤血球細胞粘着を低減する化合物のうちの1つ又は複数の化合物
を含む。より具体的な実施態様において、前記第2の化合物は、ヒドロキシ尿素、グアニ
ジノ誘導体、亜酸化窒素、ブチル酸塩若しくはブチル酸塩誘導体、アルデヒド又はアルデ
ヒド誘導体、抗鎌形赤血球化活性を有する植物抽出物(例えばNIPRISAN(商標)(HEMOXIN(商
標))、クロトリマゾール、トリアリールメタンの誘導体、モノクローナル抗体又はポリエ
チレングリコール誘導体である。さらなる活性成分の例としては、本明細書に開示されて
いるもの(例えばセクション5.1参照)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0181】
異常ヘモグロビン症の治療の過程のいくつかの化合物(例えば、免疫調節性化合物、例
えばIMiDs(商標)、例えば4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-
1,3-ジオン又は3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソインドール-2-イル)-ピペリジン
-2,6-ジオン;抽出物)が経口投与され、他の化合物が、他の一般的な経路により、例えば
静脈又は皮下投与により投与される場合は、本発明によるキットは、免疫調節性化合物に
対する付加物として使用される、本発明の免疫調節性化合物以外の投与対象成分又は化合
物を含むことが可能である。
【0182】
本発明のキットは、活性成分を投与するのに使用されるデバイスをさらに含むことが可
能である。そのようなデバイスの例としては、シリンジ、ドリップ、バッグ、パッチ、及
び吸入器が挙げられるが、それらに限定されない。
【0183】
本発明のキットは、移植用細胞又は血液、並びに1つ又は複数の活性成分を投与するの
に使用できる医薬として許容し得る媒体をさらに含むことができる。例えば、活性成分が
、非経口投与に向けて復元すべき固体形態で供給される場合は、キットは、活性成分を溶
解させて、非経口投与に好適な微粒子のない無菌溶液を形成できる好適な媒体の密封容器
を含むことが可能である。医薬として許容し得る媒体の例としては、注射用水USP、塩化
ナトリウム注射液、リンゲル注射液、ブドウ糖注射液、ブドウ糖及び塩化ナトリウム注射
液、及び乳酸加リンゲル注射液を含むが、それらに限定されない水性媒体;エチルアルコ
ール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールを含むが、それらに限定
されない水溶性媒体;並びにトウモロコシ油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、オレイン
酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、及び安息香酸ベンジルを含むが、それらに限定さ
れない非水性媒体が挙げられるが、それらに限定されない。
【実施例】
【0184】
6.1.実施例1:上方制御赤血球特有遺伝子を示す樹枝状細胞への骨髄由来CD34+造血前
駆細胞の分化
BM-CD34+細胞をCambrex(ニュージャージ州、East Rutherford)から入手し、幹細胞因子
(SCF)、Flt3-L、顆粒マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF)及びTNFαの存在下で6日
間にわたって、BIT 95000(英国、StemCell Technologies)によるIscove MDMで培養した。
樹枝状細胞の生成に対する4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン
-1,3-ジオンの影響を調べるために、CD34+前駆細胞を、4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-
ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンを用いて、又は用いずに6日間培養した。6日間
の培養後に、流動血球計算によって、赤血球マーカ(CD36、CD71、グリコホリンA、及び胎
児ヘモグロビン)に対する細胞の表現型特性を確立した。CD34+分化の1日、3日、及び6日
目に、マイクロアレイ分析によって遺伝子発現を監視した(図1)。
【0185】
RNA精製及びマイクロアレイ分析。RNAeasy(Qiagen)を使用して、全RNAをCD34+細胞から
単離した。遺伝子発現分析には、Affymetrix U133A遺伝子チップを使用した。5μgの全RN
Aを使用して、簡潔に、二本鎖cDNAを合成した。MessageAmp aRNAキット(Ambion)を使用し
て、ビオチン標識cRNAを合成し、15μgのcRNAを分画化し、各アレイにハイブリダイズし
た。上記手順をRNA試料毎に二度行って、複製ビオチン標識プローブを得た。複製チップ
による結果を平均して、褶曲差を計算した。
【0186】
結果:4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン処理
により、SCF、Flt3-L、GM-CSF及びTNFαの存在下で、CD34+分化中に赤血球特有遺伝子の
遺伝子発現プロフィルを上方制御した。重要なことには、4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3
-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンは、CD34+細胞分化において胎児ヘモグロビン
遺伝子発現を増加させ、具体的には胎芽ヘモグロビンεが6日目で18倍増加し、ヘモグロ
ビンγが6日目で7倍増加した(図2)。
【0187】
4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン又は3-(4-ア
ミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの存在下又
は不在下でのCD34+細胞の流動血球計算による表現型特性は、赤血球及びヘモグロビンマ
ーカーを示した。グリコホリンA(図3)及び胎児ヘモグロビン(図4)の発現は、投与に依存
して増加した。4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオ
ンは、他の赤血球特有遺伝子を誘発した(図5)。それぞれ正常な赤血球形成に不可欠であ
る遺伝子コードグリコホリンB、Rh式血液型関連糖タンパク質、ケル式血液型先駆体、EDR
F/AHSP(アルファヘモグロビン安定化タンパク質)及び赤血球クルッペル状転写因子も、4-
(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンの存在下でのCD3
4+細胞分化において上方制御されることが認められた。
【0188】
4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンによって増
加された赤血球特有遺伝子の多くは、貧血症の改善に明確な役割を有する。ヘモグロビン
量及びアルファ-ヘモグロビン安定化タンパク質(AHSP)の増加は、酸素運搬能力を高めな
がら、赤血球を損傷しうる過剰のアルファ-ヘモグロビン量を有する細胞を保護すること
になる。概して増加する赤血球形成に対するIMiD効果、及び特に上述した遺伝子は、化学
療法の貧血症効果、並びに低赤血球数が、症状又は治療の効果である疾病状態を克服する
上で有用である。
【0189】
IMiDs(商標)の効果は、エリスロポイエチンの効果に対して相乗的である。IMiDs(商標)
は、初期の赤血球先駆体の合成を誘発するのに対して、エリスロポイエチンは、分化の後
の段階における赤血球前駆体の増殖、生存、及び分化にとって重要である。
【0190】
6.2.実施例2:CD34+細胞の赤血球細胞への分化
骨髄(BM)CD34+造血前駆体細胞の分化:BM-CD34+前駆体をCambrexから入手し、成長因子
の存在下で、BIT 95000(血清代用品;StemCell Technologies)によるIscoveのMDMにて培養
した。最初の6日間にわたって、CD34+細胞をSCF(100ng/ml)、Flt3-L(100mg/ml)及びIL-3(
20ng/ml)で増殖させ、次いでSCF(50ng/ml)及びEpo(2U又は4U/ml)の存在下で6日間培養す
ることによって赤血球系統に向けて分化させた。IMiDs(商標)の効果を調べるために、4-(
アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン又は3-(4-アミノ-
1-オキソ-1,3-ジヒドロイソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの存在下又は不
在下で、6日間の期間にわたってCD34+先駆細胞を分化した(図6)。
【0191】
流動血球計算:6日間の培養後に、流動血球計算(FACScan、Coulter)によって表面抗原
発現を分析した。FITC及びPE共役モノクローナル抗体(mAbs)を使用して、6日目に、細胞
を二重染色処理した(4℃、30分間)。使用した抗体は、いずれもBD Pharmingen(カリフォ
ルニア州San Diego)からのCD34-PE、CD36-FITC、CD71-FITC、及びグリコホリンA-PEであ
った。6日間の培養後に、細胞をリン酸緩衝塩(PBS)で洗浄し、2%パラホルムアルデヒド
で固定し、Cytopermeafix(BD Pharmingen)で透過化処理し、HbF-PE(BD Pharmingen(カリ
フォルニア州、San Diego)、Hbε-FITC(Cortex Biochem(カリフォルニア州、San Leandro
)mAbs、及びHbA-FITC(Perkin Elmer)で染色し、流動血球計算(FACScan、Coulter、又はFC
ASAria、BD Pharmingen)によって分析した。
【0192】
結果:IMiDs(商標)4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-
ジオン及び3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6
-ジオンは、赤血球先駆体におけるヘモグロビンFの強力な誘発剤である。最初に、BM-CD3
4+先駆細胞を成長因子(SCF、Flt3-L及びIL-3)の組合せにより6日間にわたって増殖させた
。増殖後に、IMiDs(商標)の存在又は不在下で、6日間にわたって、SCF及びEpoにより赤血
球系統に向けてCD34細胞を分化させた(図6)。SCF及びEpoの存在下でのCD34+前駆細胞の分
化を特徴的赤血球表面マーカ、すなわちグリコホリンA(CD235)及びトランスフェリン受容
体(CD71)の発現によって監視した(図7)。IMiDs(商標)を用いて、又は用いずにCD34+細胞
を分化する場合に、赤血球表現型が存在した。興味深いことには、グリコホリンAの発現
は、IMiDs(商標)処理細胞の方が低く、CD71の発現は、両方の条件において高いレベルを
維持した。
【0193】
SCF及びEpoによる6日間の培養の後に、胎児ヘモグロビンを発現する細胞の比率を流動
血球計算で監視した。胎児ヘモグロビンの発現は、IMiDs(商標)により、投与方法に依存
して増加した(図8)。重要なことには、胎児ヘモグロビン(HbF)の増加は、成人ヘモグロビ
ン(HbA)の低下に関連していた。HbF/HbAの比は、IMiDs(商標)の存在下で増加した(図9)。
【0194】
表現型成熟に加えて、ヘモグロビン定量、細胞の増殖状態を測定した。SCF及びEpoによ
る6日間の培養の後に、細胞計数を行った。全細胞数は、IMiDs(商標)の存在下で増加し、
集団の発達段階(すなわちより未熟)とよく相関付けられた。
【0195】
6.3.実施例3:IMiDsは、現行の胎児ヘモグロビン承認治療法と相乗的に作用する
先述のように、最初に、成長因子(SCF、Flt3-L及びIL-3)の組合せにより6日間にわたっ
てCD34+前駆細胞を増殖させ、次いで、SCF及びEpoにより、6日間にわたって赤血球分化を
誘発させた。赤血球分化期間に、CD34+細胞をIMiDs(商標)の存在又は不在下で、CD34+
胞を単独又はヒドロキシ尿素及び5-アザシチジンと組み合わせて、IMiDs(商標)の効果と
、胎児ヘモグロビン合成のこれら2つの知られている誘発剤とを比較するために培養した
。分化の6日目に、流動血球計算によって細胞のヘモグロビン含有量を測定した。報告さ
れているように、ヒドロキシ尿素及び5-アザシチジンは、胎児ヘモグロビン発現を増加さ
せた(図10)。しかし、胎児ヘモグロビン生成の誘発は、IMiDではヒドロキシ尿素又は5-ア
ザシチジンと比較してより顕著であり、10μMの4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジ
ル))-イソインドリン-1,3-ジオンの存在下で10倍誘発された。興味深いことには、4-(ア
ミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンは、ヒドロキシ尿素
と組み合わせると、著しい相乗効果を示し、胎児ヘモグロビンの再活性化が著しくなった
(図11)。
【0196】
6.4.実施例4:Epo+IMiDsは、STAT5リン酸化の増加を引き起こす
Epo及びIMiDs(商標)の赤血球細胞に対する相乗効果をさらに特徴付けるために、UT-7細
胞系統においてシグナリングの実験を行って、特に、Epoをエリスロポイエチン受容体(Ep
oR)に結合させると活性化することが知られているSTAT5の発現に対するIMiDsの効果を測
定した。UT-7は、増殖についてエリスロポイエチンに完全に依存するヒト白血病細胞系統
であり、それを急性顆粒球性白血病(AML M7)の患者から単離した。これらの細胞における
EpoR発現のレベルは、約60%である。
【0197】
EpoシグナリングIMiDs(商標)の役割を調べるために、以下のように、4-(アミノ)-2-(2,
6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンの存在下で、EpoによりUT-7細胞
を刺激した。10%のFBS及びGM-CSF(5ng/ml)を有するRPMI培地でUT-7細胞を消費した。細
胞は、血清で、一晩成長因子を不足させた後に、10μMの4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-
ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン又はDMSO対照と共に45分間予め培養し、Epo(10
U/ml)で10分間刺激させた。4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリ
ン-1,3-ジオンは、Epo誘発STAT5(Tyr694)リン酸化を2倍に増加させた(図12)。この効果は
、Epoによって刺激してから10分間以内に検出された。
【0198】
6.5.実施例5:毒性試験
麻酔下の犬において、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソインドール-2-イル)-ピ
ペリジン-2,6-ジオンの心臓血管及び呼吸系の機能に対する影響を調べた。2つのグループ
のビーグル犬(2/性/グループ)を用いた。一方のグループには、3用量の媒体のみが与えら
れ、他方のグループには、昇順の3用量の3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソインド
ール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン(2、10、及び20 mg/kg)が与えられる。すべての場
合において、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソインドール-2-イル)-ピペリジン-2
,6-ジオン又は媒体の用量は、少なくとも30分間の間隔で分けられた頸静脈への注入を介
して連続的に投与される。
【0199】
媒体対照グループと比較した場合に、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソインド
ール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンによって誘発された心臓血管及び呼吸系の変化は、
いずれの用量においても最小限である。媒体グループと処理グループの間の唯一の統計的
に大きな差は、低用量の3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソインドール-2-イル)-ピ
ペリジン-2,6-ジオンの投与後の動脈血圧の小さい増加(94 mmHgから101 mmHg)である。こ
の効果は約15分間続き、用量が増加した後は見られなくなる。大腿血流、呼吸系パラメー
タ、及びQtc間隔の偏差は、対照グループ及び処理グループの両方に共通しており、処理
に関係するものとは考えられない。
【0200】
上述の本発明の実施態様は、単に例示を意図しており、当業者であれば、具体的な化合
物、材料及び手順の多くの同等物が存在することを認識し、又は単なる日常的な実験を用
いればそれを確認することができるであろう。そのようなすべての同等物は、本発明の範
囲内に含まれるものと考えられ、添付の請求項に包括される。
【0201】
7.参考文献
本明細書に引用されているすべての参考文献は、個々の出版物、特許又は特許出願が、
すべての目的で全面的に参照により組み込まれているように示されるのと同じ程度で、全
面的に且つすべての目的で参照により本明細書に組み込まれている。いずれの出版物の引
用も、出願日前の開示を対象としており、先行発明であるために本発明が当該出版物を先
行する権利がないということを認めるものとしてとらえられるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1】DMSO(対照)又は4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))イソインドリン-1,3-ジオンのいずれかの存在下におけるSCF、Flt3-L、GM-CSF及びTNFαの存在下でのCD34+細胞分化のタイムラインを示す図である。
【図2】DMSO(対照)又は4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンに応答する胎児ヘモグロビン遺伝子ヘモグロビンε1、ヘモグロビンγA及びヘモグロビンγBの発現の誘発を示す図である。ヘモグロビンε1に関連するESTの誘発に対する4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン(CC-4047)の影響も示されている。
【図3】6日間の培養後における0、0.01、0.1、1.0、10、又は100μMの4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン又は3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの存在下でのCD34+細胞中のマーカグリコホリンAの量を示す図である。
【図4】6日間の培養後における0、0.01、0.1、1.0、10、又は100μMの4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン又は3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの存在下でのCD34+細胞中の胎児ヘモグロビンの量を示す図である。
【0203】
【図5】SCF、Flt3-L、GM-CSF及びTNFαを含有する培地での0、3及び6日間の培養における赤血球特有遺伝子の相対的発現量を示すマイクロアレイの一部を示す図である。発現量は、RNA誘導ビオチン標識cRNAのアフィメトリックス(Affymetrix)U133Aマイクロアレイに対するハイブリダイゼーションによって測定された。
【図6】SCF、Flt3-L及びIL-3の存在下でのCD34+細胞の増殖と、その後のDMSO(対照)又は4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンのいずれかの存在下におけるSCF及びエリスロポイエチンの存在下での分化のタイムラインを示す図である。
【図7】4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン又はDMSO(対照)の存在下におけるEpo及びSCFの存在下での分化後のグリコホリンAのわずかな減少を示すFACS分析の結果を示す図である。各象限における数字は、グリコホリンA及び/又はCD71を発現する細胞の比率を示す。
【図8】DMSO対照及びSCF(50 ng/ml)+Epo(4単位/ml)と比較した場合における4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンの存在下での6日間にわたるCD34+細胞分化における胎児ヘモグロビン発現の増加を示す図である。4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン濃度を0.001μMから10μMまで変化させた。データ点は、胎児ヘモグロビンを発現する流動血球計算によって特定された細胞の比率を示す。
【0204】
【図9】胎児ヘモグロビン発現(Y軸)の増加が、成人ヘモグロビン発現に関連付けられることを示すFACS分析を示す図である。各象限における数字は、胎児ヘモグロビン及び/又は成人ヘモグロビンを発現する細胞の比率を示す。Epo、SCF、及び4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン又はDMSOの存在下で6日間にわたって細胞を分化した。
【図10】ヒドロキシ尿素又は5-アザシチジンによって誘発された胎児ヘモグロビンの発現に対する4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンによる胎児ヘモグロビンの発現の増加を示す図である。SCF(50 ng/ml)及びEpo(2 U/ml)、並びにDMSO(対照)、4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン(0.1、1、又は10μM)、5-アザシチジン(0.1、1μM;10μMで毒性を有する)又はヒドロキシ尿素(0.1、1、又は10μM)のいずれかの存在下で、細胞を6日間培養した。
【図11】胎児ヘモグロビン発現の増加における4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンとヒドロキシ尿素との相乗効果を示す流動血球計算分析を示す図である。上記のSCF及びEpo、並びに3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン又は4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンのいずれかの存在下でCD34+細胞を6日間にわたって分化した(セクション5.2参照)。各パネルにおける数字は、胎児ヘモグロビンを発現する細胞の比率を示す。
【図12】Epoの存在又は不在下における、且つ4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン又はDMSO(対照)によるUT-7からのSTAT5のゲルを示す図である。下部パネル:STAT5タンパク質の絶対量。上部パネル:リン酸化STAT5タンパク質の量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常ヘモグロビン症又は貧血症の個体を治療する方法であって、前記異常ヘモグロビン
症の1つ又は複数の症状を低減するのに十分な量及び時間で免疫調節性化合物を前記個体
に投与するステップを含む方法。
【請求項2】
前記異常ヘモグロビン症は、鎌形赤血球貧血症又はサラセミアである、請求項1記載の
方法。
【請求項3】
前記貧血症は、化学療法又は薬物の投与によって誘発される、又はそれに関連する貧血
症である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
免疫調節性化合物の医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接体
又はプロドラッグを前記個体に投与する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記免疫調節性化合物は、アミノ置換サリドマイドである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記免疫調節性化合物は、α-(3-アミノフタルイミド)グルタルイミド、α-(3-アミノ
フタルイミド)グルタルイミドの類似体若しくはプロドラッグ、3-(4'アミノイソインドリ
ン-1'-オン)-1-ピペリジン-2,6-ジオン、3-(4'アミノイソインドリン-1'-オン)-1-ピペリ
ジン-2,6-ジオンの類似体若しくはプロドラッグ、又は下記の式の化合物である、請求項
4記載の方法:
【化1】


【請求項7】
前記免疫調節性化合物が、1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-5-アミノイ
ソインドリン、1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-アミノイソインドリン
、1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-6-アミノイソインドリン、1-オキソ-2-
(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-5-アミノイソインドリン、1,3ジオキソ-2-(2,6-ジオ
キソピペリジン-3-イル)-4-アミノイソインドリン、又は1,3ジオキソ-2-(2,6-ジオキソピ
ペリジン-3-イル)-5-アミノイソインドリンである、請求項4記載の方法。
【請求項8】
前記個体を第2の化合物で治療するステップであって、前記第2の化合物は、胎児ヘモグ
ロビンを誘発する化合物、血管を弛緩する化合物、ヘモグロビンSに共有結合すると、ヘ
モグロビンSの自己凝集を低減する化合物、ガルドスチャネル拮抗剤である化合物、又は
赤血球粘着を低減する化合物であるステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記第2の化合物は、ヒドロキシ尿素、グアニジノ誘導体、亜酸化窒素、酪酸塩若しく
は酪酸塩誘導体、アルデヒド若しくはアルデヒド誘導体、抗鎌形赤血球化活性を有する植
物抽出物、クロトリマゾール、トリアリールメタンの誘導体、モノクローナル抗体、又は
ポリエチレングリコール誘導体である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記個体を少なくとも1つのサイトカインで治療するステップをさらに含む、請求項1
記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのサイトカインは、エリスロポイエチン(Epo)、SCF、GM-CSF、Flt-3
L、TNFα、IL-3、又はその任意の組合せである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記個体は、Epo及びSCFで治療される、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記個体は、哺乳類である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記個体は、ヒトである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記治療するステップは、前記個体を幹細胞因子(SCF)とFlt-3LとIL-3との組合せで治
療することと、次いで前記個体をSCFとエリスロポイエチンの組合せで治療することを含
み、少なくとも1つの胎児ヘモグロビン遺伝子の発現の検出可能な増加をもたらすのに十
分である、請求項10記載の方法。
【請求項16】
CD34+幹細胞又は前駆細胞の赤血球系統への分化を調節する方法であって、好適な条件
下で、且つ免疫調節性化合物の存在下で前記細胞を分化させるステップを含む方法。
【請求項17】
前記分化は、免疫調節性化合物の医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、立体異
性体、包接体又はプロドラッグの存在下で行われる、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記免疫調節性化合物は、アミノ置換サリドマイドである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記免疫調節性化合物は、α-(3-アミノフタルイミド)グルタルイミド、α-(3-アミノ
フタルイミド)グルタルイミドの類似体若しくはプロドラッグ、3-(4'アミノイソインドリ
ン-1'-オン)-1-ピペリジン-2,6-ジオン、3-(4'アミノイソインドリン-1'-オン)-1-ピペリ
ジン-2,6-ジオンの類似体若しくはプロドラッグ、又は下記の式の化合物である、請求項
17記載の方法:
【化2】


【請求項20】
前記免疫調節性化合物が、1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-5-アミノイ
ソインドリン、1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-アミノイソインドリン
、1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-6-アミノイソインドリン、1-オキソ-2-
(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-5-アミノイソインドリン、1,3ジオキソ-2-(2,6-ジオ
キソピペリジン-3-イル)-4-アミノイソインドリン、又は1,3ジオキソ-2-(2,6-ジオキソピ
ペリジン-3-イル)-5-アミノイソインドリンである、請求項17記載の方法。
【請求項21】
前記CD34+幹細胞又は前駆細胞は、in vitro細胞である、請求項16記載の方法。
【請求項22】
前記CD34+幹細胞又は前駆細胞は、in vivo細胞である、請求項16記載の方法。
【請求項23】
前記細胞を少なくとも1つのサイトカインに接触させるステップをさらに含む、請求項
16記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つのサイトカインは、エリスロポイエチン(Epo)、SCF、GM-CSF、Flt-3
L、TNF-α、IL-3、又はその任意の組合せである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
医薬として許容し得る担体中に第1の免疫調節性化合物及び第2の化合物を含む医薬組成
物であって、前記第2の化合物は、胎児ヘモグロビンを誘発する化合物、血管を弛緩する
化合物、ヘモグロビンSに共有結合すると、ヘモグロビンSの自己凝集を低減する化合物、
ガルドスチャネル拮抗剤である化合物、又は赤血球粘着を低減する化合物である医薬組成
物。
【請求項26】
前記第2の化合物は、ヒドロキシ尿素、グアニジノ誘導体、亜酸化窒素、酪酸塩若しく
は酪酸塩誘導体、アルデヒド若しくはアルデヒド誘導体、抗鎌形赤血球化活性を有する植
物抽出物、クロトリマゾール、トリアリールメタンの誘導体、モノクローナル抗体、又は
ポリエチレングリコール誘導体である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
医薬として許容し得る担体に免疫調節性化合物及び少なくとも1つのサイトカインを含
む医薬組成物であって、前記少なくとも1つのサイトカインは、エリスロポイエチン(Epo)
、SCF、GM-CSF、Flt-3L、TNF-α、IL-3、又はその任意の組合せである医薬組成物。
【請求項28】
異常ヘモグロビン症又は貧血症の個体を治療する方法であって、アルファヘモグロビン
安定化タンパク質(AHSP)の量の検出可能な増加を引き起こすのに十分な量及び時間で化合
物を前記個体に投与するステップを含む方法。
【請求項29】
前記化合物は、免疫調節性化合物である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記免疫調節性化合物は、α-(3-アミノフタルイミド)グルタルイミド又は3-(4'アミノ
イソインドリン-1'-オン)-1-ピペリジン-2,6-ジオンである、請求項29記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−207906(P2011−207906A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129684(P2011−129684)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【分割の表示】特願2006−542711(P2006−542711)の分割
【原出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(500026935)セルジーン コーポレイション (41)
【Fターム(参考)】