説明

異常処理装置

【課題】放電管の安定器に印加される電圧或いは電流を調整器を介して調整する場合に、調整作業の効率化を図る。
【解決手段】異常処理装置100は、過電流の検知の有無を行う判断基準として2段階の閾値を設定する。異常処理装置100は、第1閾値を超えた場合には、過電流の発生を予告する警告のみを行い、第1閾値より大きい第2閾値を超えた場合に、過電流異常処理として、調整器である変圧器20と安定器30との電気的な接続を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電管の安定器に過電流が流入されることを防止する異常処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光管などの放電管には、点灯時に放電管の両端に必要な電圧を与える、或いは放電管に一定の電流を供給し、安定した点灯を維持させる役割を果たす安定器が接続される。
【0003】
安定器は、上記役割を果たすためにコイルを備えるが、このコイルに対して流れる電流が増加すると、磁気飽和が発生することがある。磁気飽和が発生すると、コイルのインピーダンスが低下し、安定器に過電流が印加されることがある。
【0004】
磁気飽和による過電流の発生は、例えば、図4に示すような放電灯システムにおいても起こりうる。つまり、図4において、交流電源1からの電圧を変圧器2により変圧した後、安定器3に供給する場合にも起こりうる。
【0005】
図4に示すようなシステムにおいて、コイルの磁気飽和により安定器3に過電流が印加されると、安定器等に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
特許文献1には、負荷に対して過電流が流入したことを検知することが可能な技術が開示されている。より具体的には、システムの起動開始から一定期間、実負荷状態における主回路の電流値をサンプリングし、サンプリングした電流値群に基づいて定常電流値を求める。当該定常電流値に基づいて異常判定用基準値となる過負荷保護特性を求め、異常判定用保護特性に基づいて異常を検知する。
【特許文献1】特開平6−105452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、交流電源からの電圧を変圧器により変圧して安定器に供給する場合、図5に示すように、例えば、変圧器の出力電圧Voが増加していく過程で徐々に電流が増加することがある。このような現象が起こる場合、特許文献1のように、異常判定用基準値を一つ設定しておき、測定電流値が異常判定用基準値を超えた時点で例えばシステムを停止すれば、安定器に過電流が印加されることを防止することができる。
【0008】
しかし、例えば、変圧器による出力電圧の変圧の調整を手動で行い安定器に供給する電圧を調整する場合、測定電流値が異常判定用基準値を超えた時点で即座にシステムを停止してしまうと、変圧器の電圧調整を改めて行う必要があり、調整作業が非効率となる場合がある。このような調整作業の非効率さは、電磁誘導を利用して出力電圧を調整する変圧器以外にも、スイッチ素子のスイッチング動作によって交流電源から供給された電流或いは電圧を調整する所謂電力調整装置などの場合も起こりうる。
【0009】
本発明は、放電管の安定器に印加される電流或いは電圧を調整する場合に、調整作業の効率化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る異常処理装置は、交流電源の電圧或い電流を調整する調整器を介して放電管の安定器に入力される電流値を検知する電流検知部と、前記電流検知部で検知された電流値に基づいて、第1閾値と当該第1閾値より大きい第2閾値とを設定する閾値設定部と、前記第1及び第2閾値の設定後、前記電流検知部で検知される電流値が前記第1閾値を超えた場合に、過電流の発生の警告を通知し、当該電流値が前記第2閾値を超えた場合に、前記調整器から前記安定器への電流の印加を遮断する異常処理部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る異常処理装置によれば、電流検知部で検知された電流値が第1閾値を超えた場合に、過電流の発生の警告が通知され、当該電流値が第1閾値より大きい第2閾値を超えた場合に、調整器から安定器への電流の印加が遮断されるので、例えば調整器による電圧或いは電流の調整を手動で行い安定器に供給する電圧或いは電流を調整する場合、即座に調整器から安定器への電流の印加が遮断されないため、調整作業を効率化することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電流検知部で検知された電流値が第1閾値を超えた場合に、過電流の発生の警告が通知され、当該電流値が第1閾値より大きい第2閾値を超えた場合に、調整器から安定器への電流の印加が遮断されるので、例えば調整器による電圧或いは電流の調整を手動で行い安定器に供給する電圧を調整する場合、即座に調整器から安定器への電流の印加が遮断されないため、調整作業を効率化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態と称す)について、以下図面を用いて説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る放電灯システムの全体構成を示す図である。
【0015】
図1において、交流電源10からの電力供給を受ける変圧器20と、変圧器20から出力された電力の供給を受ける安定器30と、安定器30から出力された電力の供給を受けて発光する放電管40と、変圧器20から安定器30に入力される電流を測定する電流センサ50と、電流センサ50で測定された電流に基づいて過電流の検知を行い、必要に応じて過電流の流入防止のための異常処理を行う異常処理装置100とを備える。なお、本実施形態では、交流電源10から入力された電圧或いは電流を調整して出力する調整器として、電磁誘導の作用により電圧を調整する変圧器20を例に説明する。
【0016】
図2は、異常処理装置100のより詳細な構成を示す図である。図2において、異常処理装置100は、それぞれ通信バス150を介して接続された、CPU112、ROM114、RAM116、記憶装置118、及び外部インタフェース130を備える。外部インタフェース130には、図示しないが、電流センサ50、変圧器20、異常処理の際の警告を行うためのLEDランプ或いはスピーカなどが接続されている。CPU112は、ROM114に記憶されたBIOSプログラムなどの基本的な制御プログラムをRAM116に展開して、通信バス150を介して各部を制御する。記憶装置118は、異常処理を実行するためのプログラム120を記憶する。
【0017】
記憶装置118は、プログラム120として、電流検知部122と、閾値設定部124と、異常処理部126とを記憶する。
【0018】
電流検知部122は、電流センサ50で測定された交流電流に対応する電流信号の入力を外部インタフェース130を介して受け、当該電流信号に基づいてピーク電流値を検知する。なお、電流検知部122は、例えば、入力された電流信号を所定期間(例えば、交流電源10の一周期に相当する期間)サンプリングして、その期間にサンプリングされた電流値の中で最大値を示す電流値をピーク電流値として検知する。
【0019】
閾値設定部124は、例えば放電灯システムの起動した直後(つまり、放電管の発光開始直後)に、電流検知部122において検知されたピーク電流値に基づいて、過電流の判断基準となる第1閾値と、第1閾値より大きい第2閾値を設定する。より具体的には、電流検知部122は、ピーク電流値に予め定められた第1係数K1(K1>1)を乗算することで得られた値を第1閾値として設定する。さらに、電流検知部122は、ピーク電流値に予め定められた第2係数K2(K2>K1>1)を乗算することで得られた値を第2閾値として設定する。
【0020】
異常処理部126は、電流検知部122において検知されたピーク電流値と、閾値設定部124で設定された第1及び第2閾値とに基づいて、安定器30に過電流が流入するおそれがあるか否か、或いは安定器30に過電流が入力しているか否かの判定を行い、過電流の発生のおそれがある、或いは過電流が発生している場合は、過電流の流入を防止する処理を実行する。
【0021】
図3は、異常処理部126が実行する異常判定処理の手順を示すフローチャートである。異常処理部126は、当該異常判定処理を周期的に実行する。
【0022】
図3において、異常処理部126は、電流検知部122において検知されたピーク電流値を所定期間取得する。さらに、異常処理部126は、取得したピーク電流値群を加算して、加算して得られた合計ピーク電流値をピーク電流値群の総数で除算することでピーク電流値の平均値を算出する(S100)。次いで、異常処理部126は、平均値が第2閾値以上か否かを判定し(S102)、平均値が第2閾値以上の場合には(ステップS102の判定結果が、肯定「Y」)、過電流異常処理を実行する(S104)。ここで、過電流異常処理は、安定器30に過電流が入力されることを防ぐための処理であり、例えば、変圧器20と安定器30とを接続する導線上に設けられたスイッチ22をオフすることで、変圧器20と安定器30との電気的な接続を遮断して安定器30に過電流が入力されることを防ぐ。
【0023】
一方、平均値が第2閾値未満の場合には(ステップS102の判定結果が、否定「N」)、異常処理部126は、続いて平均値が第1閾値以上か否かを判定する(S106)。判定の結果、平均値が第1閾値以上の場合には(ステップS106の判定結果が、肯定「Y」)、過電流警報処理を実行する(S108)。ここで、過電流警報処理は、このまま変圧器20による昇圧を継続し、安定器30に印加される電圧を増加し続けると、磁気飽和が進行し、安定器30に過電流が流入するおそれがあることを外部に警告するための処理である。例えば、異常処理部126は、過電流警報処理として、外部インタフェース130を介して接続されたLEDランプ(不図示)を点灯する、あるいは、外部インタフェース130を介して接続されたスピーカ(不図示)からブザー音等の音声を出力する。一方、平均値が第1閾値未満の場合には(ステップS106の判定結果が、否定「N」)、異常処理部126は、現時点で安定器30に過電流が流入するおそれがないと判断して処理を終了する。
【0024】
以上、本実施形態では、異常処理装置100は、過電流の検知の有無を行う判断基準として2段階の閾値を設定する。異常処理装置100は、第1段階の閾値(第1閾値)を超えた場合には、過電流の発生を予告する警告のみを行い、第2段階の閾値(第2閾値)を超えた場合に、過電流異常処理として、変圧器20と安定器30との電気的な接続を遮断する。
【0025】
よって、本実施形態によれば、例えば、変圧器20による入力電圧と出力電圧との比を示す変圧比の調整を手動で行い安定器30に供給する電圧を調整する場合、調整の途中で即座にシステムが停止しないため、電圧調整作業を効率化することができる。
【0026】
なお、本実施形態では、変圧器20を介して安定器30に供給する電圧を制御する際に異常処理装置100において過電流の有無を検知する場合について説明した。しかし、本実施形態に係る異常処理装置100は、電力調整器を介して安定器30に供給する電流を制御する場合に過電流の発生の有無を検知することもできる。ここで、電力調整器とは、スイッチング素子(例えば、半導体素子であるサイリスタやIGBTなど)を有し、当該スイッチング素子のオン/オフ動作を交流電源の周波数に同期して制御することにより、交流電源から供給された電流を制御して電力の調整を行う調整器のことをいう。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、電流検知部で検知された電流値が第1閾値を超えた場合に、過電流の発生の警告が通知され、当該電流値が第1閾値より大きい第2閾値を超えた場合に、出力電圧或いは出力電流を調整する調整器から安定器への電流の印加が遮断されるので、例えば調整器による電圧或いは電流の調整を手動で行い安定器に供給する電圧或いは電流を調整する場合、即座に調整器から安定器への電流の印加が遮断されないため、電圧或いは電流の調整作業を効率化することができる。よって、本発明は、放電管の安定器に過電流が流入されることを防止する異常処理装置等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態に係る放電灯システムの全体構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係る異常処置装置の構成を示す図である。
【図3】異常処理部が実行する異常判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】交流電源からの電圧を変圧器により変圧して放電管の安定器に供給する一般的な放電灯システムの全体構成を示す図である。
【図5】安定器における磁気飽和により発生する過電流について説明するための図である。
【符号の説明】
【0029】
10 交流電源
20 変圧器
22 スイッチ
30 安定器
40 放電管
50 電流センサ
112 CPU
114 ROM
116 RAM
118 記憶装置
120 プログラム
122 電流検知部
124 閾値設定部
126 異常処理部
130 外部インタフェース
150 通信バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源の電圧或いは電流を調整する調整器を介して放電管の安定器に入力される電流値を検知する電流検知部と、
前記電流検知部で検知された電流値に基づいて、第1閾値と当該第1閾値より大きい第2閾値とを設定する閾値設定部と、
前記第1及び第2閾値の設定後、前記電流検知部で検知される電流値が前記第1閾値を超えた場合に、過電流の発生の警告を通知し、当該電流値が前記第2閾値を超えた場合に、前記調整器から前記安定器への電流の印加を遮断する異常処理部と、
を備える異常処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−98818(P2010−98818A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266459(P2008−266459)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】