説明

異常検出装置、異常検出方法、異常検出プログラム

【課題】構造物の状態変化を、より効率良く的確に把握する。
【解決手段】構造物に設置されたセンサから出力される測定値が異常であるか否かを示す異常閾値が記憶されている異常閾値記憶部と、複数のセンサから出力される複数の測定値に相関があるとみなす相関係数の閾値が記憶されている相関係数閾値記憶部と、を備えた異常検出装置が、複数のセンサから出力される測定値を受信するステップと、受信した測定値と異常閾値とを比較して、測定値が異常であるか否かを判定するステップと、測定値が異常であると判定した場合、複数のセンサの組み合わせ毎に、組み合わせのセンサから出力された測定値の相関係数を算出し、相関係数の閾値を超える測定値を出力したセンサの組み合わせを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物に設置されたセンサから出力される測定値に基づいて異常を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁やトンネルなどの構造物の保全のため、検査員が建造地に定期的に赴くことなどにより目視等によって実地点検が行われていたが、センサ技術やネットワーク技術等が発展し、構造物に設置した各種センサから得られる測定値を遠隔地において分析することが可能となってきている。これにより、構造物の疲労度合いや劣化状態等の状態変化を、実地点検無しにある程度把握することができ、点検の効率化が図られるとともに保全にかかるコスト削減が期待できる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−2986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、構造物の状態変化には、経年変化による緩やかな劣化や、地震などによって引き起こされる突発的な劣化や破壊が考えられる。ここで、構造物にひびが入ったり、ある部分が欠けたりするような突発的な状態変化が生じた場合には、そのことをリアルタイムで把握することが望ましい。このような状態変化をリアルタイムで把握することにより、例えば、その構造物の使用を緊急に停止させることや、センサ自体に異常が生じた場合には至急新たなセンサに取り替える等、状況に応じた処置をすることができる。すなわち、具体的な処置を行うためには、単に状態変化したことを検出するだけでなく、状態変化の原因やその影響等の可能性を、より効率良く的確に把握することが望ましい。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、構造物の状態変化を、より効率良く的確に把握する異常検出装置、異常検出方法、異常検出プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、構造物に設置されたセンサから出力される測定値が異常であるか否かを示す異常閾値が記憶されている異常閾値記憶部と、複数のセンサから出力される複数の測定値に相関があるとみなす相関係数の閾値が記憶されている相関係数閾値記憶部と、複数のセンサから出力される測定値を受信する受信部と、受信部が受信した測定値と異常閾値とを比較して、測定値が異常であるか否かを判定する異常判定部と、異常判定部によって、測定値が異常であると判定された場合、複数のセンサの組み合わせ毎に、組み合わせのセンサから出力された測定値の相関係数を算出し、相関係数の閾値を超える測定値を出力したセンサの組み合わせを検出する相関検出部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、相関検出部が、相関係数が閾値を超える測定値の組み合わせを検出しなかった場合、異常であると判定された測定値を出力したセンサにおいてのみ異常が発生したと判定する事象判定部を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、構造物には、同位置に複数のセンサが設置され、相関検出部が検出したセンサの組み合わせが、同位置に設置された複数のセンサを含む場合、構造物に異常が発生したと判定する事象判定部を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、構造物には、定められた間隔をおいた複数位置にセンサが設置され、相関検出部が検出したセンサの組み合わせが、複数個所に設置された複数のセンサを含む場合、構造物に外力が働いたことによる異常が発生したと判定する事象判定部を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、複数のセンサから一定時間毎に出力される測定値の履歴が記憶される履歴記憶部を備え、相関検出部は、履歴記憶部に記憶されている履歴を読み出し、複数のセンサの組み合わせ毎に、組み合わせのセンサから出力された測定値の出力時刻をずらした遅延相関係数を算出し、遅延相関係数が相関係数の閾値を超える測定値を出力したセンサの組み合わせを検出することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、構造物に設置されたセンサから出力される測定値が異常であるか否かを示す異常閾値が記憶されている異常閾値記憶部と、複数のセンサから出力される複数の測定値に相関があるとみなす相関係数の閾値が記憶されている相関係数閾値記憶部と、を備えた異常検出装置が、複数のセンサから出力される測定値を受信するステップと、受信した測定値と異常閾値とを比較して、測定値が異常であるか否かを判定するステップと、測定値が異常であると判定した場合、複数のセンサの組み合わせ毎に、組み合わせのセンサから出力された測定値の相関係数を算出し、相関係数の閾値を超える測定値を出力したセンサの組み合わせを検出するステップと、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、構造物に設置されたセンサから出力される測定値が異常であるか否かを示す異常閾値が記憶されている異常閾値記憶部と、複数のセンサから出力される複数の測定値に相関があるとみなす相関係数の閾値が記憶されている相関係数閾値記憶部と、を備えた異常検出装置のコンピュータに、複数のセンサから出力される測定値を受信するステップと、受信した測定値と異常閾値とを比較して、測定値が異常であるか否かを判定するステップと、測定値が異常であると判定した場合、複数のセンサの組み合わせ毎に、組み合わせのセンサから出力された測定値の相関係数を算出し、相関係数の閾値を超える測定値を出力したセンサの組み合わせを検出するステップと、を実行させる異常検出プログラムである。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、構造物に設置されたセンサから出力される測定値が異常であるか否かを示す異常閾値が記憶されている異常閾値記憶部と、複数のセンサから出力される複数の測定値に相関があるとみなす相関係数の閾値が記憶されている相関係数閾値記憶部と、を備えた異常検出装置が、複数のセンサから出力される測定値を受信するステップと、受信した測定値と異常閾値とを比較して、測定値が異常であるか否かを判定するステップと、測定値が異常であると判定した場合、複数のセンサの組み合わせ毎に、組み合わせのセンサから出力された測定値の相関係数を算出し、相関係数の閾値を超える測定値を出力したセンサの組み合わせを検出するようにしたので、構造物の状態変化を、より効率良く的確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態による異常検出システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態により異常検出対象に設置されるセンサの例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による異常検出対象に設置されるセンサの例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態によるセンサから出力される波形データの例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による履歴記憶部に記憶される履歴情報のデータ例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態による平均値・分散記憶部に記憶される平均値、分散の例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態による異常閾値記憶部に記憶される異常閾値のデータ例を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態により異常と判定された測定値の例を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態による遅延相関を説明する図である。
【図10】本発明の一実施形態により遅延相関があると判定された場合の測定値の例を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態による異常検出装置が構造物の異常を検出する動作例を示すフローチャートである。
【図12】本発明の一実施形態による異常検出装置が閾値を更新する動作例を示すフローチャートである。
【図13】本発明の一実施形態によるセンサから測定値に基づいて判定する状態変化のパターンの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態による異常検出システム1構成を示すブロック図である。異常検出システム1は、複数のセンサ100(センサ100−1、センサ100−2、センサ100−3、・・・)と、測定器200と、異常検出装置300とを備えている。複数のセンサ100は、同様の構成であるので、特に区別しないで説明する場合には「−1」、「−2」等を省略してセンサ100として説明する。
【0016】
複数のセンサ100としては、例えばFBG(Fiber Bragg Grating)傾斜計、FBG変位計、FBG温度計等のセンサが適用でき、状態変化に応じた波長データを出力する。センサ100は、図2に示すように、異常検出システム1による異常検出対象である構造物に、定められた間隔をおいて複数位置に設置される。ここでは、構造物である橋梁を異常検出対象とする例を説明する。複数のセンサ100は、橋梁の橋脚の支承付近にそれぞれ設置される。このように、複数の位置にセンサ100を設置し、複数のセンサ100が異常を検出した場合、センサ間の遅延相関をとることで、例えば構造物にひびが入るなどの異常が発生したことや、自身や強風等の外力が働いたことによる異常が発生したことを把握することができる。
【0017】
また、ここでは、同位置に複数のセンサ100が設置される。例えば、図3に示すように、各設置位置には、X軸方向(橋軸方向)、Y軸方向(橋軸直角方向)、Z軸方向(鉛直方向)の3方向における状態変化を検出するように、3つのセンサ100が設置される。これにより、異常が発生した方向を把握することができる。図3における数字は、各センサ100のID(Identifier、識別情報)を示すものとする。本実施形態では、異常検出対象の橋梁における8箇所の位置に、それぞれセンサ100が3つずつ設置されるため、8×3=24個のセンサ100が設置される例を説明する。
【0018】
測定器200は、複数のセンサ100に接続されており、複数のセンサ100から出力される波長データに基づいて、定められた変換式により傾斜や変位等の数値データである測定値を算出する。測定器200は、センサ100から出力される波長データに基づいて、一定時間毎に測定値を算出し、算出した測定値を、異常検出装置300に出力する。
【0019】
異常検出装置300は、測定器200に接続されたコンピュータ装置である。異常検出装置300と測定器200は、例えばインターネット等のネットワークを介して接続されていても良い。異常検出装置300は、履歴記憶部301と、平均値・分散記憶部302と、異常閾値記憶部303と、相関係数閾値記憶部304と、受信部305と、欠損値補間部306と、フーリエ変換部307と、異常閾値算出部308と、異常判定部309と、相関検出部310と、事象判定部311と、出力部312とを備えている。
【0020】
履歴記憶部301には、複数のセンサ100から一定時間(例えば、1秒)毎に出力される測定値の履歴が記憶される。例えば、履歴記憶部301には、図4に示すような、一定の時間幅であるウィンドウ幅に応じて、時刻毎の変位を示す測定値が記憶される。図5は、履歴記憶部301に記憶される履歴情報のデータ例を示す図である。履歴情報には、ウィンドウ幅に応じた時刻毎に、センサ100から出力された波長データに基づく測定値が対応付けられて記憶される。ここでは、履歴情報の平均値や分散を算出するため、定められたウィンドウ幅分の履歴情報を保持することとするが、ウィンドウ幅を超える件数の、例えば全ての履歴情報を記憶しておき、平均値や分散を算出する際にはウィンドウ幅分の測定値を用いるようにしても良い。
【0021】
平均値・分散記憶部302には、履歴記憶部301に記憶されている履歴情報に基づいて算出される平均値、分散が記憶される。図6は、平均値・分散記憶部302に記憶される平均値、分散の例を示す図である。本実施形態では、8×3=24個のセンサ100からの測定値が出力されるため、最大24次元の測定値から、いくつかの範囲の平均値、分散が算出され、記憶される。
【0022】
例えば、(a)は、全てのセンサ100からの24次元の正規分布に対する平均値と分散の例である。(b)は、隣接する複数位置の単位をエリアとし、エリア毎の9次元(または12次元)の平均値と分散の例である。ここでは、エリアID「1」のように、両側に隣接する位置が存在しない場合には9次元となり、エリアID「7」のように、両側に隣接する位置が存在する場合には12次元となる。(c)は、3つのセンサ100が設置された位置の単位を拠点とし、拠点毎の3次元の平均値と分散の例である。(d)は、センサ100毎の1次元の平均値と分散の例である。
【0023】
異常閾値記憶部303には、異常検出対象である構造物に設置されたセンサ100から出力される測定値が異常であるか否かを示す異常閾値が記憶されている。図7は、異常閾値記憶部303に記憶される異常閾値のデータ例を示す図である。(a)は、複数のセンサ100全体に対する異常閾値であり、(b)は、エリア毎の異常閾値であり、(c)は、拠点毎の異常閾値であり、(d)は、センサ毎の異常閾値である。
【0024】
相関係数閾値記憶部304は、複数のセンサ100から出力される複数の測定値に相関があるとみなす相関係数の閾値が記憶されている。相関係数は、あるセンサ100の測定値と他のセンサ100の測定値との間の類似の度合いを示す値である。相関係数の閾値としては、例えば0.5が設定される。
【0025】
受信部305は、異常検出対象の構造物に設置された複数のセンサ100から出力される測定値を、測定器200を介して受信し、履歴記憶部301に記憶させる。
欠損値補間部306は、センサ100からの測定値の取得に失敗した場合などに、失敗した時刻の測定値を補間する値を算出し、履歴記憶部301に記憶させる。このような欠損値は、同一のセンサ100から出力される履歴に基づいて、例えば欠損値の前後の測定値の平均値を補間値として算出することができる。
【0026】
フーリエ変換部307は、センサ100から出力された測定値のフーリエ変換を行い、低周波成分を除去して履歴記憶部301に記憶させる。例えば、0.01Hz以下の固有振動を除去する。これにより、例えば状態的な風等の影響による揺れの影響を低減し、突発的な状態変化を検出することができる。
【0027】
異常閾値算出部308は、履歴記憶部301に記憶されている履歴情報に基づいて、多変量正規分布(24次元、9/12次元、3次元、1次元の正規分布)を算出し、平均値と分散とを算出する。そして、平均値と分散とに基づいて、例えばマハラノビスの汎距離を算出し、異常閾値を算出して履歴記憶部301に記憶させる。例えば、履歴における3σ相当の値を異常閾値とすることができる。あるいは、例えば平均値と分散から、各時点の測定値毎にマハラノビスの汎距離を算出し、大きい順に測定値を並べたときに上位3%に該当する値を異常閾値とすることができる。
【0028】
異常判定部309は、受信部305が受信した測定値と、異常閾値記憶部303に記憶されている異常閾値とを比較して、測定値が異常であるか否かを判定する。例えば、異常判定部309は、受信部305が受信した測定値と、複数のセンサ100全体に対する異常閾値と、エリア毎の異常閾値と、拠点毎の異常閾値と、センサ毎の異常閾値とを比較する。ここで、異常判定部309は、測定値が異常閾値を超える場合、その測定値が異常であると判定する。例えば、図8は、24個のセンサ100のうち、IDが「12」であるセンサ100が異常と判定された場合の例である。
【0029】
相関検出部310は、異常判定部309によって、測定値が異常であると判定された場合、異常と判定された測定値を出力したセンサ100と他のセンサとの組み合わせ毎に、その組み合わせのセンサ100から出力された測定値の相関係数を算出し、算出した相関係数と、相関係数閾値記憶部304に記憶されている相関係数の閾値とを比較し、相関係数が閾値を超えるか否かを判定する。そして、相関係数の閾値を超える測定値を出力したセンサ100の組み合わせを検出する。
【0030】
また、相関検出部310は、履歴記憶部301に記憶されている履歴情報を読み出し、複数のセンサ100の組み合わせ毎に、その組み合わせのセンサ100から出力された測定値の出力時刻をずらした遅延相関係数を算出し、その遅延相関係数が相関係数の閾値を超える測定値を出力したセンサ100の組み合わせを検出する。(遅延相関について、例えば以下参照「データストリームのための時系列処理」 インターネットURL:http://www.kc.tsukuba.ac.jp/colloqium/070118.pdf [平成23年7月22日検索])
【0031】
図9は、遅延相関の算出を説明する図である。例えば、あるセンサAから出力された波形データと、同時刻に他のセンサBから出力された波形データとを比較する場合、遅延間隔が0である相関係数が算出される。これに対し、あるセンサAから出力された波形データと、時刻を1(秒)ずらした他のセンサBから出力された波形データとを比較する場合、遅延間隔が1である相関係数が算出される。同様に、あるセンサAから出力された波形データと、時刻を2ずらした他のセンサBから出力された波形データとを比較する場合、遅延間隔が2である相関係数が算出される。ここでは、例えば相関係数が0.5以上、遅延間隔が{−1、0、1}のとき、遅延相関ありとみなす。このように出力時刻をずらした測定値同士の相関係数を算出することで、例えば図10に示すように、地震による構造物の状態変化が、複数位置に伝播して発生したことを検出することができる。
【0032】
事象判定部311は、相関検出部310が算出した相関に基づいて、構造物に起きた事象を判定する。例えば、事象判定部311は、相関検出部310が、相関係数が閾値を超える測定値の組み合わせを検出しなかった場合、異常であると判定された測定値を出力したひとつのセンサ100においてのみ異常が発生したと判定する。あるいは、相関検出部310が検出したセンサ100の組み合わせが、同位置に設置された複数のセンサ100を含む場合、構造物に異常が発生したと判定する。すなわち、この場合は、例えば経年変化によりその材質が劣化した結果、突発的にヒビや、破損等の局所的な異常が発生したと考えることができる。あるいは、相関検出部310が検出したセンサ100の組み合わせが、複数位置に設置された複数のセンサを含む場合、地震や強風等の外力が働いたことにより構造物に異常が発生したと判定する。すなわち、この場合は、地震や強風等の外力により発生した異常が構造物を伝播したと考えることができる。
出力部312は、事象判定部311による判定結果を出力する。例えば、出力部312はディスプレイであり、事象判定部311による判定結果を表示する。判定結果としては、例えば、異常なし、センサ異常、拠点異常、エリア異常、構造物異常等の情報や、異常発生時刻、異常発生時点での波形データ、測定値の平均値や振動数等の統計情報を出力するようにしても良い。
【0033】
次に、本実施形態による異常検出システム1の動作例を説明する。図11は、本実施形態による異常検出装置300が構造物の異常を検出する動作例を示すフローチャートである。
異常検出装置300の受信部305は、構造物に設置された複数のセンサ100による測定値を、測定器200を介して受信する(ステップS1)。異常判定部309は、異常閾値記憶部303に記憶されている異常閾値を読み出し、受信部305が受信した測定値と比較する(ステップS2)。ここでは、複数のセンサ100全体、エリア毎、拠点毎、センサ100毎の単位で比較を行う。異常判定部309が、異常なしと判定すれば(ステップS2:NO)、処理を終了する。
【0034】
異常判定部309が、異常ありと判定すれば(ステップS2:YES)、相関検出部310が、異常ありと判定した測定値を出力したセンサ100と、他のセンサ100との組み合わせ毎に、相関係数を算出する(ステップS3)。相関検出部310は、相関係数閾値記憶部304に記憶されている、対応する相関係数の閾値を読み出し、算出した相関係数と比較する(ステップS3)。ここで、相関検出部310が、相関係数が閾値を超える測定値の組み合わせがないと判定すると(ステップS3:NO)、事象判定部311は、そのセンサ100の異常であると判定する(ステップS4)。
【0035】
相関検出部310が、相関係数が閾値を超える測定値の組み合わせが存在すると判定すると(ステップS3:YES)、事象判定部311は、その組み合わせが同拠点のセンサ100の組み合わせであるか否かを判定する(ステップS5)。相関係数が閾値を超える測定値の組み合わせが、同拠点におけるセンサ100のみの組み合わせであると判定すると(ステップS5:YES)、例えば構造物の経年変化によりその材質が劣化した結果、突発的にヒビや、破損等の局所的な異常が発生したと判定する(ステップS6)。相関係数が閾値を超える測定値の組み合わせが、同拠点におけるセンサ100のみの組み合わせでないと判定すると(ステップS5:NO)、事象判定部311は、相関係数が閾値を超える測定値の組み合わせが、同エリアにおけるセンサ100のみの組み合わせであるか否かを判定する(ステップS7)。
【0036】
相関係数が閾値を超える測定値の組み合わせが、同エリアにおけるセンサ100のみの組み合わせであると判定すると(ステップS7:YES)、そのエリアにおいて外力による異常が発生したと判定する(ステップS8)。相関係数が閾値を超える測定値の組み合わせが、同エリアにおけるセンサ100のみの組み合わせでないと判定すると(ステップS7:NO)、事象判定部311は、構造物全体に外力による異常が発生したと判定し(ステップS9)、処理を終了する。
【0037】
図12は、本実施形態による異常検出装置300が閾値を更新する動作例を示すフローチャートである。
異常検出装置300の受信部305が、測定器200から送信される複数の測定値を受信し(ステップS10)、受信した測定値のうちに欠損値が存在する場合、欠損値補間部306が、履歴記憶部301に記憶されている履歴情報を読み出し、補間値を算出する(ステップS11)。フーリエ変換部307は、受信部305が受信した測定値のフーリエ変換を行い、低周波成分を除去する(ステップS12)。異常判定部309は、測定値と、異常閾値記憶部303に記憶されている異常閾値とを比較し、異常値を超える外れ値を検出する(ステップS13)。異常値がないと判定すれば(ステップS13:異常値なし)、異常閾値算出部308が新たに異常閾値を算出して更新し(ステップS18)、次の時刻における処理に戻る(ステップS19)。ステップS13において、異常判定部309が、異常値があると判定すれば(ステップS13:異常値あり)、異常値の前後の測定値を履歴記憶部301から読み出し(ステップS14)、遅延相関を算出する(ステップS15)。そして、事象判定部311が異常パターンを判定し(ステップS16)、出力部312が判定結果を出力した後(ステップS17)、ステップS18に進む。
【0038】
なお、本実施形態では、複数のセンサ100から出力される測定値の相関に基づいて事象を判定する複数の例を示したが、他にも、測定値の相関に基づいて様々な状態変化の推定を行うことができる。図13は、センサ100から測定値に基づいて判定する状態変化のパターンの例を示す図である。例えば、異常値を出力したセンサがひとつであるか否か(ステップS30)、他センサへの伝播が存在するか(遅延相関があるか)否か(ステップS31)、同期センサの位置が単一拠点であるか隣接拠点同方向センサのみであるか、隣接他拠点への伝播が存在するか否か等により、異常パターンを分類することができる。
【0039】
以上説明したように、構造物に設置した複数のセンサ100から取得される測定値の相関関係を分析することによって、突発的な異常が起きたかどうか、さらにどのような異常が生じたのかを判定することが可能となる。例えば、ひび割れや交通事故などによって、構造物そのものに異常が生じた場合、センサが故障した場合、地震や強風によって突発的に大きく揺れた場合、等の判定を行うことができる。例えば、異常の遅延相関を検出することにより、特定の拠点、エリアにおけるセンサ100にのみ遅延相関がみられる場合には、ひび割れ等により構造物そのものに異常が発生したと推定できる。どのセンサ100間にも遅延相関がみられない場合には、センサ故障等によりそのセンサに異常が発生したと推定できる。広域のエリアにおけるセンサ100間に遅延相関がみられる場合には、地震や強風等の外力によって異常が発生したと推定できる。これにより、構造物の保全のための人員や費用等のコスト削減が期待できるとともに、タイミング良く橋梁等の構造物の保全を実施することが可能となる。
【0040】
なお、本発明における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより異常検出を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0041】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0042】
1 異常検出システム
100 センサ
200 測定器
300 異常検出装置
301 履歴記憶部
302 平均値・分散記憶部
303 異常閾値記憶部
304 相関係数閾値記憶部
305 受信部
306 欠損値補間部
307 フーリエ変換部
308 異常閾値算出部
309 異常判定部
310 相関検出部
311 事象判定部
312 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に設置されたセンサから出力される測定値が異常であるか否かを示す異常閾値が記憶されている異常閾値記憶部と、
複数の前記センサから出力される複数の前記測定値に相関があるとみなす相関係数の閾値が記憶されている相関係数閾値記憶部と、
複数の前記センサから出力される測定値を受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記測定値と前記異常閾値とを比較して、当該測定値が異常であるか否かを判定する異常判定部と、
前記異常判定部によって、前記測定値が異常であると判定された場合、複数の前記センサの組み合わせ毎に、当該組み合わせのセンサから出力された測定値の相関係数を算出し、前記相関係数の閾値を超える測定値を出力した前記センサの組み合わせを検出する相関検出部と、
を備えることを特徴とする異常検出装置。
【請求項2】
前記相関検出部が、相関係数が閾値を超える測定値の組み合わせを検出しなかった場合、異常であると判定された前記測定値を出力した前記センサにおいてのみ異常が発生したと判定する事象判定部
を備えることを特徴とする請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項3】
前記構造物には、同位置に複数のセンサが設置され、
前記相関検出部が検出した前記センサの組み合わせが、前記同位置に設置された複数のセンサを含む場合、当該構造物に異常が発生したと判定する事象判定部
を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の異常検出装置。
【請求項4】
前記構造物には、定められた間隔をおいた複数位置にセンサが設置され、
前記相関検出部が検出した前記センサの組み合わせが、前記複数個所に設置された複数のセンサを含む場合、前記構造物に外力が働いたことによる異常が発生したと判定する事象判定部
を備えることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の異常検出装置。
【請求項5】
前記複数のセンサから一定時間毎に出力される測定値の履歴が記憶される履歴記憶部を備え、
前記相関検出部は、前記履歴記憶部に記憶されている前記履歴を読み出し、複数の前記センサの組み合わせ毎に、当該組み合わせのセンサから出力された測定値の出力時刻をずらした遅延相関係数を算出し、当該遅延相関係数が前記相関係数の閾値を超える測定値を出力した前記センサの組み合わせを検出する
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の異常検出装置。
【請求項6】
構造物に設置されたセンサから出力される測定値が異常であるか否かを示す異常閾値が記憶されている異常閾値記憶部と、複数の前記センサから出力される複数の前記測定値に相関があるとみなす相関係数の閾値が記憶されている相関係数閾値記憶部と、を備えた異常検出装置が、
複数の前記センサから出力される測定値を受信するステップと、
受信した前記測定値と前記異常閾値とを比較して、当該測定値が異常であるか否かを判定するステップと、
前記測定値が異常であると判定した場合、複数の前記センサの組み合わせ毎に、当該組み合わせのセンサから出力された測定値の相関係数を算出し、前記相関係数の閾値を超える測定値を出力した前記センサの組み合わせを検出するステップと、
を備えることを特徴とする異常検出方法。
【請求項7】
構造物に設置されたセンサから出力される測定値が異常であるか否かを示す異常閾値が記憶されている異常閾値記憶部と、複数の前記センサから出力される複数の前記測定値に相関があるとみなす相関係数の閾値が記憶されている相関係数閾値記憶部と、を備えた異常検出装置のコンピュータに、
複数の前記センサから出力される測定値を受信するステップと、
受信した前記測定値と前記異常閾値とを比較して、当該測定値が異常であるか否かを判定するステップと、
前記測定値が異常であると判定した場合、複数の前記センサの組み合わせ毎に、当該組み合わせのセンサから出力された測定値の相関係数を算出し、前記相関係数の閾値を超える測定値を出力した前記センサの組み合わせを検出するステップと、
を実行させる異常検出プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−40774(P2013−40774A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175861(P2011−175861)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000102728)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ (438)