説明

異常検出装置

【課題】ホットメルト接着剤を供給するポンプの動作不良を原因とした接着剤塗布装置の異常を検出できる異常検出装置を提供する。
【解決手段】異常検出装置40は、塗布ガン3から接着剤を噴射させるための動作信号Sを動作信号検出部81にて検出するとともに、近接センサ43の検出信号Saに基づいて往復動ポンプ10のストロークを検出し、これらの検出結果から塗布ガン3の噴射動作と往復動ポンプ10のストロークとの対応関係としてストロークの1回当たりの噴射動作の回数Cを特定し、特定された回数Cに基づいて異常判定部86にて異常を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤を塗布する接着剤塗布装置に適用される異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤を塗布する接着剤塗布装置は、商品等の物品を包装する製造ラインで包装箱の接着等に広く利用されている。こうした接着剤塗布装置に異常が生じると、包装箱の所定箇所に全く接着剤が塗布されなかったり接着剤の塗布位置がずれるといった不具合を招く。従って、このような不具合の発生を減らす又は回避するためには、接着剤塗布装置の異常を検出することが望ましい。
【0003】
例えば、接着剤塗布装置に適用される異常検出装置として、接着剤を噴射する塗布ガンを駆動する圧縮空気の供給と停止とを切り替える電磁弁に対する動作信号と、接着剤を塗布ガンから噴射させるピストンロッドの実際の動作によって生成される導通信号とを比較して、電磁弁の動作信号からの導通信号のディレイ時間を計測し、そのディレイ時間に基づいて塗布ガンの異常を検出するものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−245581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、接着剤塗布装置には塗布ガンから接着剤を噴射させるため塗布ガンに対して接着剤を供給する往復動ポンプが設けられている。接着剤塗布装置は接着剤の噴射によって塗布ガンに対する接着剤の供給圧力が減圧した場合に往復動ポンプをストロークさせて供給圧力を噴射可能範囲内に保持している。従って、このポンプに動作不良があると接着剤の供給圧力が不足して塗布ガンに動作不良が生じた場合と同様の不具合を招く。しかしながら、特許文献1の異常検出装置は、塗布ガンの構成要素である電磁弁やピストンロッドの動作異常を検出できるが、塗布ガンに接着剤を供給するポンプの動作不良を原因とした接着剤塗布装置の異常を検出することができない。
【0006】
そこで、本発明は、ホットメルト接着剤を供給するポンプの動作不良を原因とした接着剤塗布装置の異常を検出できる異常検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の異常検出装置(40)は、ホットメルト接着剤(Ad)を噴射可能な噴射手段(3)と、往復動ポンプ(10)を利用して前記噴射手段に対して前記接着剤を供給する接着剤供給手段(2)とを有し、前記接着剤の噴射により前記噴射手段に対する前記接着剤の供給圧力が所定量減圧した場合に前記往復動ポンプをストロークさせる接着剤塗布装置(1)に適用され、前記噴射手段が前記接着剤を噴射するための噴射動作を検出する噴射検出手段(81)と、前記往復動ポンプのストロークを検出するストローク検出手段(43)と、前記噴射検出手段が検出した前記噴射動作と前記ストローク検出手段が検出した前記ストロークとの対応関係に基づいて前記接着剤塗布装置の異常を判断する異常判定手段(86)と、を備えたことにより上述した課題を解決する。
【0008】
この異常検出装置によれば、噴射手段の噴射動作と往復動ポンプのストロークとの対応関係に基づいて異常が検出されるので、接着剤の噴射によって供給圧力が所定量減圧したにも関わらず往復動ポンプが動作しない等の往復動ポンプの動作不良を原因とした接着剤塗布装置の異常を検出することができる。
【0009】
また、接着剤の供給が停止する等の深刻な動作不良が発生する場合は、その予兆とも言うべき現象として、例えば接着剤の粘着性が高まったり、ポンプ自体の劣化により噴射手段による接着剤の噴射からストロークが行われるまでの時間が正常時よりも遅れる等の接着剤の噴射とポンプのストロークとの対応関係が正常時に比べて変化することがある。この異常検出装置によれば、接着剤の噴射とポンプのストロークとの対応関係に基づいて異常を判断するので、この対応関係に対する判断基準を適宜設定することにより、動作不良が深刻になる前に上述した予兆を検出して、それを異常と判断できる。従って、往復動ポンプの深刻な動作不良によって接着剤が噴射されないといった不具合の発生を未然に防止できる。
【0010】
本発明の異常検出装置の一態様においては、前記異常判定手段は、前記ストロークの所定回数当たりの前記噴射動作の回数を前記対応関係として取得して前記異常を判断することもできる。接着剤の供給圧力は接着剤の噴射回数の増加に伴って低下する。従って、往復動ポンプに動作不良が生じると供給圧力の減圧に対する応答が悪化するため、ストロークの所定回数当たりの噴射動作の回数が正常時よりも増える。従って、この噴射動作の回数を把握することによって異常を判断できる。
【0011】
例えば、前記噴射検出手段が検出した前記噴射手段の噴射動作の回数をカウントし、その回数をカウント値として記憶する計数手段(82)と、前記ストローク検出手段が前記ストロークを所定回数検出した場合に前記計数手段が記憶する前記カウント値をリセットする計数管理手段(85)と、を更に備え、前記異常判定手段は、前記計数手段が記憶する前記カウント値に基づいて、前記ストロークの所定回数当たりの前記噴射動作の回数を取得し、前記カウント値が基準値を上回る場合に前記異常と判断することができる。
【0012】
本発明の異常検出装置の一態様として、前記往復動ポンプは、プランジャ(51)が往復動可能な状態で挿入されるシリンダ(52)が形成されたハウジング(53)と、前記ハウジングの外部に露出する状態で設けられ、前記プランジャの動作と連動する可動部(69b)とを有し、前記ストローク検出手段として、前記可動部の動作を前記可動部と非接触な状態で検出できる近接センサ(43)が設けられていてもよい。この態様によれば、往復動ポンプのストロークを検出するために、プランジャと連動する可動部の動作を近接センサにて検出しているので、往復動ポンプに接触することなくストロークを確実に検出できる。しかも、可動部はプランジャが収納されるハウジングの外部に露出する状態で設けれているため、可動部へのアクセスが容易である。従って、近接センサを設けるために、往復動ポンプ側に搭載スペースを確保したり往復動ポンプに手を加える必要がない。よって、簡易な構成でかつ手間を掛けることなく確実に往復動ポンプのストロークを検出できる。
【0013】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の異常検出装置によれば、噴射手段の噴射動作と往復動ポンプのストロークとの対応関係に基づいて異常が検出されるので、往復動ポンプの動作不良を原因とした接着剤塗布装置の異常を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一形態に係る異常検出装置が適用された接着剤塗布装置の全体構成図。
【図2】往復動ポンプの要部を示した縦断面図。
【図3】図1に示された異常検出装置の演算部の機能を説明するブロック図。
【図4】接着剤の噴射動作とストロークとの対応関係の一例を正常時と異常時についてそれぞれ示した図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の一形態に係る異常検出装置が適用された接着剤塗布装置の全体構成図である。接着剤塗布装置1は、ホットメルト接着剤(以下、接着剤という。)を液体状態で供給する接着剤供給手段としての供給ユニット2と、供給ユニット2から供給された接着剤を噴射して包装箱等の塗布対象に接着剤を塗布する噴射手段としての塗布ガン3とを備えている。供給ユニット2と塗布ガン3とは供給ユニット2が供給する接着剤の温度及び圧力に耐え得る供給ホース4にて接続されている。
【0017】
供給ユニット2は、接着剤Adをヒータ8にて加熱しつつ液体状態でタンク9にて蓄える保持部5と、往復動ポンプ10を利用して接着剤Adを塗布ガン3に対して圧送するポンプ部6と、往復動ポンプ10の作動流体である圧縮空気の供給と停止とを制御するとともに塗布ガン3の動作を制御する制御部7とを備えている。保持部5とポンプ部6とは接続経路11にて接続されている。制御部7は往復動ポンプ10に供給する圧縮空気を作るコンプレッサ12と、コンプレッサ12及び塗布ガン3のそれぞれを制御する制御回路13とを備えている。
【0018】
塗布ガン3は接着剤Adの噴射を行うガン本体15と、ガン本体15を駆動するための駆動部16とを備えている。ガン本体15には接着剤Adを保持する保持室18が形成されている。保持室18は供給ホース4が接続されるとともに噴孔19を通じて外部と繋がっている。その噴孔19を保持室18内の弁体20が開放することにより接着剤Adが噴孔19から噴射される。弁体20は接続ロッド21を介してピストン22に接続されており、そのピストン22は往復動可能な状態でガン本体15に形成されたシリンダ23に挿入されている。シリンダ23には噴孔19を塞ぐ方向にピストン22を付勢するリターンスプリング24が装着されている。保持室18とシリンダ23とは区画壁25にて仕切られており、その区画壁25、ピストン22及びシリンダ23で囲まれた領域に空気室28が形成される。空気室28には駆動部16によって圧縮空気の供給とその停止とが行われる。空気室28に圧縮空気が供給されると、ピストン22がリターンスプリング24の弾性力に抗して移動して弁体20が噴孔19を開放する方向にリフトされる。一方、圧縮空気が空気室28から排出されるとリターンスプリング24の弾性力によってピストン22が押し下げられて弁体20が噴孔19を閉鎖する。
【0019】
駆動部16は3ポート型の電磁弁30を有しており、その電磁弁30のポートaは接続経路31を介して空気室28に、ポートbは給気経路32を介して圧力源33に、ポートcは排気経路34にそれぞれ接続されている。電磁弁30には制御部7の制御回路13から塗布ガン3に噴射動作をさせるための動作信号Sが供給される。電磁弁30は動作信号Sを得た場合ポートaとポートbとを開通させて圧縮空気を空気室28に供給する。これによって塗布ガン3から接着剤Adが噴射される。一方、電磁弁30に対する動作信号Sの供給が停止された場合、電磁弁30はポートaとポートcを開通させて空気室28から圧縮空気を排出する。これによって、塗布ガン3からの接着剤Adの噴射が停止される。従って、動作信号Sの状態を調べることにより塗布ガン3が接着剤Adを噴射するための噴射動作の有無を検出することができる。
【0020】
塗布ガン3から接着剤Adが噴射されると、接着剤Adの供給圧力(厳密には往復動ポンプ10の下流に設けられた不図示のアキュムレータの圧力)が低下する。そこで、供給ユニット2に設けられた制御部7は、塗布ガン3からの接着剤Adの噴射により供給圧力が所定量減圧した場合に往復動ポンプ10がストロークするようにコンプレッサ12の切替弁(不図示)を操作して供給圧力を噴射可能範囲内に保持している。所定量は噴射可能範囲の下限側の値に設定されている。このような往復動ポンプ10の効率的な動作により供給圧力が噴射可能範囲内に保持されるため、接着剤塗布装置1による安定した接着剤Adの塗布が可能となる。
【0021】
接着剤塗布装置1には、その異常の有無を検出するために異常検出装置40が設けられている。異常検出装置40は接着剤塗布装置1の異常の有無を判断するための各種情報処理を行う演算部41と、演算部41の処理結果に基づいて異常の発生を報知する警告表示部42とを備えている。演算部41としてはコンピュータが設けられており、警告表示部42としては各種文字等を表示可能なディスプレイ装置が設けられている。演算部41には、往復動ポンプ10のストロークを検出する近接センサ43からの信号が入力されるとともに、塗布ガン3に対して供給される動作信号Sが入力される。
【0022】
ここで、近接センサ43の設置形態を説明する前提として往復動ポンプ10の構成を図2を参照しながら説明する。図2は往復動ポンプ10の要部を示した縦断面図である。往復動ポンプ10はプランジャ51と、プランジャ51が往復動可能な状態で挿入されるシリンダ52が形成されたハウジング53と、ハウジング53から突き出るようにしてプランジャ51から延びている駆動軸54と、駆動軸54を駆動するための駆動機構55とを備えている。
【0023】
シリンダ52の開口部はキャップ56にて塞がれており、そのキャップ56とプランジャ51とに囲まれた領域に加圧室57が形成される。ハウジング53には加圧室57に開口する吸入ポート58及び吐出ポート59がそれぞれ形成されている。吸入ポート58には供給ユニット2の保持部5から接着剤Adが導かれる。なお、プランジャ51による加圧時における接着剤Adの逆流を防止するため、吸入ポート58内の流れを矢印の向きの一方向に制限する一方向弁60が設けられている。
【0024】
駆動機構55はコンプレッサ12(図1)からの圧縮空気を作動流体とするピストン機関として構成されている。駆動機構55はピストン61が往復動可能に挿入されるシリンダ62が形成されたシリンダボディ63と、シリンダ62の内周面に沿うようにして装着される制御弁64とを備えている。ピストン61は駆動軸54の端部に固定されている。シリンダ62の上下の開口部はピストン61を挟むようにして配置される2つの閉鎖部材65にて塞がれている。これにより、シリンダ62内にはピストン61にて仕切られた2つの圧力室66、67が形成される。
【0025】
制御弁64は5つのポートa〜eを有しており、ポートaはコンプレッサ12(図1)に接続されている。ポートdは第1圧力室66に開口しており、ポートeは第2圧力室67に開口している。各ポートa〜eは駆動軸54と平行に延びる円筒状の共通路68の所定位置にそれぞれ開口している。共通路68には軸状に延びているスプール69が往復動可能な状態で挿入されている。
【0026】
スプール69に設けられた一対の大径部分69aは共通路68を閉鎖可能な嵌め合いとなる直径を有し、これらの互いの間隔及び軸方向の各寸法は図示のようにポートa、d、eの各開口位置と所定の位置関係となるように設定されている。そのため、スプール69が図2の上下方向に移動することにより、ポートaとポートdとが共通路68を介して接続され、かつポートeとポートcとが共通路68を介して接続される第1状態と、ポートaとポートeとが共通路68を介して接続され、かつポートdとポートbとが共通路68を介して接続される第2状態とが切り替えられる。
【0027】
第1状態の場合、コンプレッサ12で作られた圧縮空気はポートa及びポートdを経由して第1圧力室66に導かれるとともに、第2圧力室67の空気はポートe及びポートcを経由して外部に排出される。これにより、プランジャ51が駆動軸54を介して図2の下方に押し下げられるため、加圧室57内の接着剤Adは圧縮されて吐出ポート59から吐出される。一方、第2状態の場合、圧縮空気はポートa及びポートeを経由して第2圧力室67に導かれるとともに、第1圧力室66の空気はポートd及びポートbを経由して外部に排出される。これにより、プランジャ51が駆動軸54を介して図2の上方に引き上げられて加圧室57の圧力が低下するため、保持部5にて保持された接着剤Adは接続経路11及び吸入ポート58を介して加圧室57内に吸入される。
【0028】
スプール69の移動は駆動軸54とスプール69との間に介在する移動機構70にて行われる。移動機構70は、スプール69の下端に固定されて、スプール69と同軸状に延びる移動ロッド71と、所定の間隔を開けて移動ロッド71に固定された一対の永久磁石72、73と、一端が駆動軸54に固定されるとともに他端が二股に分かれ、かつその二股部分74aにて移動ロッド71が非接触状態で挟み込まれるように配置されたフォーク部材74とを備えている。フォーク部材74の二股部分74aには永久磁石75が埋め込まれている。
【0029】
これら永久磁石72、73、75の各極性は、フォーク部材74の永久磁石75と永久磁石72とが互いに引き寄せ合い、かつ永久磁石75と永久磁石73とが互いに引き寄せ合う関係となるように設定されている。従って、プランジャ51が上死点に達してフォーク部材74が想像線で示した第1位置P1に位置すると、永久磁石75と永久磁石72との間の吸引力により移動ロッド71がスプール69を図2の下方に移動させる。これによって制御弁64が上述した第1状態へ切り替えられて圧縮空気が第1圧力室66に導かれつつ第2圧力室67の空気が排出される。このため、プランジャ51は上死点から下死点に向かってストロークする。その後、プランジャ51が下死点に達してフォーク部材74が想像線で示した第2位置P2に位置すると、永久磁石75と永久磁石73との間の吸引力により移動ロッド71がスプール69を図2の上方に移動させる。これによって制御弁64が上述した第2状態へ切り替えられて圧縮空気が第2圧力室67に導かれつつ第1圧力室66の空気が排出される。このため、プランジャ51は下死点から上死点に向かってストロークする。
【0030】
このように、往復動ポンプ10はプランジャ51に連動してスプール69が動作するため、スプール69の動作を検出することにより往復動ポンプ10のストロークを検出できる。本形態では、スプール69の上側の端部69bがハウジング53の外部に露出しているためその動作を観察できる。そこで、往復動ポンプ10のストロークを検出するため、近接センサ43がその先端部をスプール69の端部69bに対向させた状態でブラケット78を介して往復動ポンプ10に設置されている。なお、ブラケット78は往復動ポンプ10の所定の静止部位に取り付けられている。本形態においてスプール69の端部69bが本発明に係る可動部に相当する。近接センサ43は、アクセスの容易なスプール69の端部69bの動作を検出するものなので、近接センサ43の設置スペースを確保したり、近接センサ43を設けるために往復動ポンプ10に手を加えたりする必要がない。従って、簡易な構成でかつ手間を掛けることなく確実に往復動ポンプ10のストロークを検出できる。
【0031】
図3は、図1に示した異常検出装置40の演算部41の機能を説明するブロック図である。演算部41は、電磁弁30に対して供給される動作信号Sを動作信号検出部81にて検出し、その検出結果を計数部82に送る。計数部82は処理部83と記憶部84とを含んでおり、処理部83は動作信号検出部81から送られてくる検出結果をカウントする。処理部83は、カウント毎に変数Cを読み出し、かつ読み出した変数Cの値を1ずつインクリメントした上で変数Cに代入して記憶部84に記憶させる。
【0032】
また、演算部41は、近接センサ43から往復動ポンプ10のストロークを検出した検出信号Saを管理部85にて受信する。管理部85は検出信号Saを一回受信する度に、記憶部84から変数Cを読み出して、これをリセットする。つまり、変数Cに0を代入する。これにより、記憶部84に記憶された変数Cの値(カウント値)を参照することで、往復動ポンプ10のストローク1回当たりの塗布ガン3による接着剤の噴射回数を把握することができる。
【0033】
そこで、演算部41は異常判定部86に変数Cの値を参照させる。異常判定部86は変数Cの値が基準値を上回る場合に異常と判断し、基準値以下の場合は正常と判断する。異常判定部86が異常と判断した場合は、異常発生信号Scを警告表示部42に送る。警告表示部42は異常発生信号Scを受信した場合は所定の警告表示を行う。
【0034】
異常判定部86が異常判定に用いる基準値は以下の考え方に基づいて定められる。上述したように、往復動ポンプ10は塗布ガン3による接着剤の噴射によって供給圧力が所定量減圧した場合に動作するようになっている。そして、接着剤の供給圧力はその噴射回数の増加に伴って低下する。従って、例えば接着剤の粘着性が高まったり、ポンプ自体の劣化により往復動ポンプ10に動作不良が生じると供給圧力の減圧に対する応答が悪化するため、上述した変数Cの値、即ち往復動ポンプ10のストローク1回当たりの塗布ガン3による接着剤の噴射回数が正常時よりも増える。言い換えれば、往復動ポンプ10に動作不良が生じると、往復動ポンプ10がストロークするインターバルが正常時よりも延びて、ストローク間の接着剤の噴射回数が正常時よりも増える。
【0035】
図4は、接着剤の噴射動作とストロークとの対応関係の一例を正常時と異常時とについてそれぞれ示している。図4の上段は正常時を示し、下段は異常時を示す。なお、図4に示された対応関係は、接着剤塗布装置1に塗布ガン3を2つ装着し、一方の塗布ガン3を包装箱のシーム塗布用、他方の塗布ガン3を包装箱のサイド塗布用として、これらによる接着剤の噴射タイミングをずらした塗布システムに関するものである。通常時におけるこのシステムでは往復動ポンプ10のストローク1回に対して接着剤の噴射動作の回数が32回〜34回程度であることが調査により判明している。そこで、噴射回数のばらつきを考慮することによって誤判定を防止する観点から36回を異常判定の基準値としている。従って、このシステムでは基準値以下の範囲Aで検出信号Saを検出できれば正常と判断できる。図4の正常時の場合は、シーム用及びサイド用の各塗布ガン3による接着剤の噴射動作の合計が34回で検出信号Saを検出しているため、上述した変数Cの値が34であり、正常と判断される。一方、図4の異常時の場合は噴射回数38回で検出信号Saを検出している。つまり、正常時に比べて往復動ポンプ10のストロークが遅れている。この場合、上述した変数Cの値が38となり基準値の36を上回っているため異常と判断される。
【0036】
このように、基準値は、正常時における塗布ガン3による噴射動作と、往復動ポンプ10のストロークとの対応関係、即ち噴射ガン3による噴射回数と往復動ポンプ10のストローク回数との対応関係を調査して、その調査結果に基づいて設定される。但し、塗布ガン3による噴射動作と、往復動ポンプ10のストロークとの対応関係はシステムに含まれる塗布ガン3の個数、供給ホース4の長さや各構成要素の個体差などによって変化し得るので、基準値はシステム毎に設定されるべきものである。基準値の値は適宜に設定できる。例えば、基準値を厳格側(小さい側)に設定することにより、往復動ポンプ10が深刻な動作不良に至る前の予兆を異常として判断することができる。これにより、往復動ポンプ10が動作不能状態となるような深刻な動作不良を未然に防止できるからこうした動作不良を原因とした不具合の発生を最小限に留めることができる。
【0037】
本形態においては、図3に示した動作検出部81が本発明に係る噴射検出手段に、近接センサ43が本発明に係るストローク検出手段に、異常判定部86が本発明に異常判定手段に、計数部82が本発明に係る計数手段に、管理部85が本発明に係る計数管理手段に、それぞれ相当する。但し、本発明は以上の各形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。異常判断の方法は上記形態の方法に限定されない。上記形態では、往復動ポンプ10のストローク1回当たりの噴射動作の回数に基づいて異常を判定しているが、管理部85がリセットを行う条件を検出信号Saを複数個検出することに変更すれば、ストロークの複数回当たりの噴射動作の回数に基づいて異常を判定することも可能である。
【0038】
また、異常判定の基準となる往復動ポンプのストロークと噴射手段の噴射動作との対応関係としては、これらの回数の対応関係に限らない。例えば、噴射手段の特定の噴射動作を起点として往復動ポンプが動作するまでの時間を上記対応関係として異常を判断することも可能である。また、上記形態は、塗布ガン3が接着剤を噴射するための噴射動作として、塗布ガン3に供給される動作信号Sを検出しているが、例えば塗布ガン3の接続ロッド21やピストン22にリフトセンサ等の検出手段を設けることにより、塗布ガン3が実際に噴射したことを噴射動作として検出することも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 接着剤塗布装置
2 供給ユニット(接着剤供給手段)
3 塗布ガン(噴射手段)
10 往復動ポンプ
40 異常検出装置
43 近接センサ(ストローク検出手段)
51 プランジャ
52 シリンダ
53 ハウジング
81 噴射検出手段
69b スプールの端部(可動部)
82 計数部(計数手段)
85 管理部(計数管理手段)
86 異常判定部(異常判定手段)
Ad ホットメルト接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットメルト接着剤を噴射可能な噴射手段と、往復動ポンプを利用して前記噴射手段に対して前記接着剤を供給する接着剤供給手段とを有し、前記接着剤の噴射により前記噴射手段に対する前記接着剤の供給圧力が所定量減圧した場合に前記往復動ポンプをストロークさせる接着剤塗布装置に適用され、
前記噴射手段が前記接着剤を噴射するための噴射動作を検出する噴射検出手段と、
前記往復動ポンプのストロークを検出するストローク検出手段と、
前記噴射検出手段が検出した前記噴射動作と前記ストローク検出手段が検出した前記ストロークとの対応関係に基づいて前記接着剤塗布装置の異常を判断する異常判定手段と、
を備えたことを特徴とする異常検出装置。
【請求項2】
前記異常判定手段は、前記ストロークの所定回数当たりの前記噴射動作の回数を前記対応関係として取得して前記異常を判断する、請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項3】
前記噴射検出手段が検出した前記噴射手段の噴射動作の回数をカウントし、その回数をカウント値として記憶する計数手段と、
前記ストローク検出手段が前記ストロークを所定回数検出した場合に前記計数手段が記憶する前記カウント値をリセットする計数管理手段と、を更に備え、
前記異常判定手段は、前記計数手段が記憶する前記カウント値に基づいて、前記ストロークの所定回数当たりの前記噴射動作の回数を取得し、前記カウント値が基準値を上回る場合に前記異常と判断する、請求項2に記載の異常検出装置。
【請求項4】
前記往復動ポンプは、プランジャが往復動可能な状態で挿入されるシリンダが形成されたハウジングと、前記ハウジングの外部に露出する状態で設けられ、前記プランジャの動作と連動する可動部とを有し、
前記ストローク検出手段として、前記可動部の動作を前記可動部と非接触な状態で検出できる近接センサが設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−224425(P2011−224425A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93887(P2010−93887)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】