説明

異常状況検知装置とエレベータ制御装置及びエスカレータ制御装置

【課題】異常状況検知装置において、利用者移送装置における異常状況を有効に検知することである。
【解決手段】異常状況検知装置30は、利用者移送装置であるエレベータにおける異常状況を検知する。異常状況検知装置30は、連続して付加される力の上昇に応じて上昇する出力電圧を発生する発電プレート32と、発電プレート32の出力電圧の時間的変化を利用して異常状況が発生したか否かを判定する判定部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者移送装置における異常状況を検知する異常状況検知装置と、異常状況検知装置を備えるエレベータ制御装置及びエスカレータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からエレベータやエスカレータ等の利用者移送装置において、利用者の手足等、身体の一部や、衣服あるいは荷物が引き込まれることを防止することの必要性や、その引き込まれを防止するための手段が考えられている。例えば、エレベータの乗りかごは、乗りかごの出入り口を開閉する乗りかご扉と、出入り口の左右両側に配置される2つの出入り口柱部とを設けているが、乗りかご扉が閉じた状態から開く状態へ移行する場合に、乗りかご扉と出入り口柱部との隙間に、利用者の手指等の身体の一部が挟まれるるのを防止する必要がある。このため、例えば、特許文献1に記載されているように、乗りかご扉の扉制御装置に扉駆動中に扉にかかるトルクの負荷を監視し過負荷を検出する過負荷検出手段を設け、過負荷信号を受けた場合に扉を停止させた後、扉を停止前の駆動方向とは逆方向へ反転させることが考えられている。
【0003】
また、エスカレータでは、トラスに設けられた移送手段により複数の踏段が移動自在に支持されており、踏段の両側には欄干が設けられている。また、欄干の上面には、踏段の移動に伴って移動する移動手すりが設けられ、欄干の下側に設けられたデッキボードの踏段側には、移送手段を覆うためのスカートガードが設けられている。通常、スカートガードは、踏段の移動を阻害しないように踏段の両端側との間に隙間を設けている。ただし、利用者が踏段の左右方向端縁部に位置した場合に、踏段とスカートガードとの間の隙間に、利用者の靴や荷物等が挟まれる可能性がないとはいえない。通常、踏段の側縁部には、黄色等の着色された警告帯を設けているが、利用者が誤ってこの警告帯に登場し、特に靴がゴム製である場合には、スカートガードと踏段との隙間に靴等が挟まれる可能性がないとはいえない。これに対して、従来から、スカートガードの一部の移送手段側である裏側に、機械的手段であるリミットスイッチを配置し、リミットスイッチと対向するスカートガードの一部で挟まれが発生した場合にリミットスイッチが押され、エスカレータの駆動を停止させるようにすることが考えられている。
【0004】
また、エスカレータにおいて、トラスの長さ方向両端部の降り口側端部に設けられたエンド側デッキボードの床面近傍に、移動手すりが進入する開口部である移動手すり引き込み口が設けられている。このエンド側デッキボードでは、子供等の利用者がいたずら等の原因により、手指等身体の一部や衣服、荷物等を移動手すりと引き込み口との間の隙間に引き込まれる可能性がないとはいえない。このため、従来から、エンド側デッキボードの裏側に機械的手段であるリミットスイッチを配置し、移動手すり引き込み口周辺部に力が加わったときにリミットスイッチが押されて、エスカレータの駆動を停止させるようにすることが考えられている。
なお、本発明に関連する先行技術として、特許文献1の他に、特許文献2−4がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−351559号公報
【特許文献2】特開2003−187378号公報
【特許文献3】特開平8−168272号公報
【特許文献4】実開平7−30558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ただし、上記のエレベータ等の利用者移送装置の場合、利用者災害を有効に防止する面から改良の余地がある。例えば、エレベータにおいて、挟まれを防止するために過負荷検出手段を設ける場合、過負荷検出手段は、直接の挟まれを検出するものではなく、また、過負荷検出手段が故障する可能性もないとはいえないので、挟まれを防止する別の手段の実現が望まれている。また、このような扉開閉の際の挟まれは、乗りかごの出入り口柱部と乗りかご扉との間だけでなく、乗場側の出入り口の左右に配置される乗場三方枠の側面と乗場扉との隙間でも同様に生じる可能性がないとはいえない。このように利用者災害を有効に防止する面から改良の余地があり、異常状況を有効に検知する装置の実現が望まれている。
【0007】
また、エスカレータにおいて、踏段とスカートガードとの間の隙間の挟まれを防止するために、上記のようにスカートガードの一部裏側にリミットスイッチを配置する構成の場合、スカートガードのリミットスイッチと対向する一部と踏段との間だけでしか挟まれを検知できない可能性がある。また、リミットスイッチでは、瞬間的に誤って押された場合でも作動するため、挟まれを精度よく検知する面から改良の余地がある。このように利用者災害を有効に防止する面から改良の余地があり、異常状況を有効に検知する装置の実現が望まれている。
【0008】
また、エスカレータにおいて、移動手すりと引き込み口周辺部との間での引き込まれを防止するために、上記のようにデッキボードの裏側にリミットスイッチを配置する構成の場合、瞬間的に誤って押された場合でも作動するため、引き込まれを精度よく検知する面から改良の余地がある。この用に利用者災害を有効に防止する面から改良の余地があり、異常状況を有効に検知する装置の実現が望まれている。
【0009】
一方、エレベータにおいて、乗りかご内で利用者が暴漢に襲われる等の異常状況が発生した場合に効率よく異常状況の発生を検知することが望まれている。例えば、従来から、一部のエレベータで、いわゆるモーションサーチシステムを採用することが行われている。モーションサーチシステムは、カメラで撮影した乗りかご内の映像の激しい動き等から異常状況が発生したことを検知した場合に警報を出したり、乗りかごを最寄階で停止させ、利用者災害を防止または抑制することが行われている。また、乗りかご内で子供等の利用者がふざけて暴れた場合には、エレベータの故障を招く可能性もあり、このような場合にもモーションサーチシステムは有効である。ただし、モーションサーチシステムを採用するのはエレベータの設置費用や運用費用が高くなる原因となる。このため、異常状況を有効に検知する装置の実現が望まれている。
【0010】
上記のように、従来からエレベータ、エスカレータ等の利用者移送装置における異常状況を有効に検知する装置の実現が望まれている。これに対して、本発明者は、以下に説明するように付与される力の上昇により出力電圧が上昇する押圧発電部を利用することで、このような課題を解決できると考えるにいたった。これに対して、特許文献1−3には、それぞれ発電装置を利用して車両の通過状態を表示する車両通過表示装置と、圧電素子を組み込んで、照明器やドアにエネルギを供給する発電装置と、圧延素子を組み込んだ発電装置を備える浮消波堤とが記載されている。ただし、これらの特許文献は、利用者移送装置における異常状況を有効に検知する装置や、これを示唆する構成を開示するものではない。
【0011】
本発明の目的は、異常状況検知装置とエレベータ制御装置及びエスカレータ制御装置において、利用者移送装置における異常状況を有効に検知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る異常状況検知装置は、利用者移送装置における異常状況を検知する異常状況検知装置であって、連続して付加される力の上昇に応じて上昇する出力電圧を発生する押圧発電部と、押圧発電部の出力電圧の時間的変化を利用して異常状況が発生したか否かを判定する判定部とを備えることを特徴とする異常状況検知装置である。
【0013】
本発明に係る異常状況検知装置によれば、異常状況の発生を検出でき、その検出された信号を用いて利用者移送装置を制御する等の対応処理を行うことができる。また、利用者が誤って一瞬だけ押圧発電部を押圧し、すぐに離した場合や、押圧発電部の出力電圧の単位時間当たりの変動幅が小さい場合に異常状況が検知されないようにできる。このため、利用者移送装置における異常状況の発生を有効に検知できる。
【0014】
また、本発明に係る異常状況検知装置において、好ましくは、押圧発電部は、連続して付加される力に応じて時間的に連続する出力電圧を出力可能な圧電素子を含む。
【0015】
また、本発明に係る異常状況検知装置において、好ましくは、押圧発電部は、圧電素子により構成する発電プレートである。
【0016】
また、本発明に係る異常状況検知装置において、好ましくは、判定部は、押圧発電部の出力電圧の絶対値が予め設定された所定時間以上で徐々に上昇し、その出力電圧の絶対値が予め設定した閾値以上となる場合に異常状況が発生したと判定する。
【0017】
また、本発明に係る異常状況検知装置において、好ましくは、判定部は、押圧発電部の出力電圧の所定時間当たりの変動幅が、予め設定した閾値以上となる場合に異常状況が発生したと判定する。
【0018】
また、本発明に係る異常状況検知装置において、好ましくは、利用者移送装置はエレベータであり、押圧発電部は、エレベータの扉に対向する出入り口柱部または乗場三方枠の側面に設けられており、さらに、扉を開閉動作させる扉駆動装置と、異常状況が発生したと判定された場合に、利用者の身体または身体周囲物の扉関係危険状況が発生したと判定し、扉を扉開動作から扉停止または扉閉動作に移行するように、扉駆動装置を制御する扉駆動制御部とを備える。
【0019】
上記構成によれば、エレベータにおける異常状況である利用者等の扉関係危険状況の発生を有効に検知でき、利用者等の扉と柱部または三方枠の側面との間の挟まれを有効に防止でき、または被災の拡大を有効に防止できる。
【0020】
また、本発明に係る異常状況検知装置において、好ましくは、利用者移送装置はエレベータであり、押圧発電部は、エレベータの乗りかごの底部上側の、利用者の足下下側となる位置に配置されており、さらに、乗りかごの昇降を行う昇降装置と、異常状況が発生したと判定された場合に、利用者の乗りかご内暴れが生じたと判定し、乗りかごを最寄り階で停止させるように昇降装置を制御し、警報を発するように警報部を制御する昇降警報制御部とを備える。
【0021】
上記構成によれば、エレベータにおける異常状況である乗りかご内暴れの発生を有効に検知でき、乗りかご内で利用者が暴漢に襲われていたり、子供等の利用者が乗りかご内で暴れている等の異常状況が発生した場合に異常状況の発生を検知でき、しかもモーションサーチシステムを使用する場合よりも、設置費用や運用費用の低減を図れる。また、乗りかご内での通常の移動等に伴う押圧発電部の変形等により、異常状況が検知されることがない。このため、利用者災害またはその被災拡大や、故障発生原因等、異常状況の発生を有効に検知できる。したがって、利用者災害またはその被災拡大を有効に防止でき、またはエレベータの故障を有効に防止できる。
【0022】
また、本発明に係る異常状況検知装置において、好ましくは、利用者移送装置はエスカレータであり、押圧発電部は、エスカレータの欄干下側に設けたデッキボードの、踏段の左右方向端縁と対向する位置に、スカートガードの機能を有するものとして設けられており、さらに、エスカレータの駆動を行うエスカレータ駆動装置と、異常状況が発生したと判定された場合に、利用者の身体または身体周囲物のスカートガード関係危険状況が発生したと判定し、エスカレータの駆動を減速させるか、または駆動停止させる駆動制御部とを備える。
【0023】
上記構成によれば、エスカレータにおける異常状況である挟まれ等のスカートガード関係危険状況の発生を有効に検知でき、その検出された信号を用いてエスカレータ等を制御する対応処理を行うことができる。また、リミットスイッチを用いて、スカートガード関係危険状況の発生を検知する場合と異なり、スカートガードのリミットスイッチと対向する一部と踏段との間だけでしかスカートガード関係危険状況を検知できないという不都合を防止できる。また、リミットスイッチを用いる構成では、瞬間的に誤って押された場合でも作動するが、上記の構成では、瞬間的に誤って利用者の身体等により押圧発電部が押され、すぐに身体等を引っ込めた場合にスカートガード関係危険状況が発生したとは判定されないので、不要にエスカレータの駆動が停止されることがない。このため、異常状況の発生を有効に検知でき、利用者災害またはその被災拡大を有効に防止できる。
【0024】
また、本発明に係る異常状況検知装置において、好ましくは、利用者移送装置はエスカレータであり、押圧発電部は、エスカレータのエンド側デッキボードにおいて、移動手すり引き込み口周辺部の移動手すり下側に対向する部分に設けられており、さらに、エスカレータの駆動を行うエスカレータ駆動装置と、異常状況が発生したと判定された場合に、利用者の身体または身体周囲物の移動手すり関係危険状況が発生したと判定し、エスカレータの駆動を減速させるか、または駆動停止させるようにエスカレータ駆動装置を制御する第2駆動制御部とを備える。
【0025】
上記構成によれば、エスカレータにおける異常状況である挟まれ等の移動手すり関係危険状況の発生を有効に検知でき、その検出された信号を用いてエスカレータ等を制御する対応処理を行うことができる。また、リミットスイッチを用いて移動手すり関係危険状況の発生を検知する構成の場合には、瞬間的に誤って押された場合でも作動するが、上記の構成では、瞬間的に誤って利用者の身体等により発電プレートが押され、すぐに身体等を引っ込めた場合に移動手すり関係危険状況が発生したとは判定されないので、不要にエスカレータの駆動が停止されることがない。このため、異常状況の発生を有効に検知でき、利用者災害またはその被災拡大を有効に防止できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る異常状況検知装置と、エレベータ制御装置及びエスカレータ制御装置によれば、利用者移送装置における異常状況を有効に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態の異常状況検知装置を備えるエレベータにおいて、乗りかご内で乗りかご扉が開く途中の状態を示す斜視図である。
【図2】第1の実施の形態の異常状況検知装置を備えるエレベータにおいて、乗りかごと乗場との扉が開く途中の状態を示す断面図である。
【図3】第1の実施の形態の異常状況検知装置を備えるエレベータ制御装置を示す構成図である。
【図4】第1の実施の形態において、発電プレートから出力される出力電圧の時間経過の1例を示す図である。
【図5】本発明に係る第2の実施の形態の異常状況検知装置を備えるエレベータ制御装置を示す構成図である。
【図6】第2の実施の形態において、発電プレートから出力される出力電圧の時間経過の1例を示す図である。
【図7】本発明に係る第3の実施の形態の異常状況検知装置を備えるエスカレータを示す略断面図である。
【図8】第3の実施の形態の異常状況検知装置を備えるエスカレータ制御装置を示す構成図である。
【図9】第3の実施の形態の異常状況検知装置を備えるエスカレータの降り場周辺部を示す斜視図である。
【図10】本発明に係る第4の実施の形態の異常状況検知装置を備えるエスカレータ制御装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[第1の発明の実施の形態]
以下において、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1から図4は、本発明の第1の実施の形態を示している
【0029】
図1、図2に示すように、本実施の形態の異常状況検知装置を備える利用者移送装置である、エレベータは、乗りかご10の出入り口12を開閉する乗りかご扉14と、出入り口12の左右方向(図1、図2の左右方向)両側に配置される2つの出入り口柱部16とを設けている。また、出入り口柱部16の少なくとも一方に到着階を指定する等のための操作部18を設けている。乗りかご扉14は、図3に示す扉駆動装置20により開閉が制御される。扉駆動装置20は、図示しないモータを有し、コントローラから入力される制御信号により、指定された指定階に乗りかご10(図1、図2)が到着した場合に乗りかご扉14(図1、図2)を扉開動作させる。また、扉駆動装置20は、乗りかご10の指定階到着後、一定時間の経過または利用者の操作部18の操作に応じて乗りかご扉14を扉閉動作させる。また、図2に示すように、到着階の乗場22に設けられた開口部である出入り口24に、出入り口24を開閉する乗場扉26を設けている。乗りかご扉14の開閉動作に伴って、乗場扉26も開閉動作が行われる。乗場22の出入り口24周辺部に、出入り口24を三方から囲む乗場三方枠28が設けられている。本実施の形態の異常状況検知装置30は、発電プレート32と、コントローラ34(図3)とを備える。
【0030】
すなわち、図1から図3に示すように、2つの出入り口柱部16の、柱部16同士で対向する2つの側面の上下方向の所定の長さ範囲に、押圧発電部である発電プレート32を設けている。発電プレート32は、圧電素子により構成するもので、連続して外部から付加される力に応じて、時間的に連続する出力電圧を出力可能である。すなわち、外部からの力により発電プレート32が変形すると、その変形に応じて出力電圧を発生させる。また、発電プレート32の出力電圧は、連続して付加される力の上昇に応じて上昇する。なお、発電プレート32を出入り口柱部16の上下方向の所定の長さ範囲に設けているのは、利用者の幅広い身長の違いにかかわらず、ほぼすべての利用者の身長に対応させるためである。
【0031】
図2、図3に示すように、発電プレート32は、平板状の形状を有し、乗りかご10内側である幅方向一端部(図2、図3の上端部)を、出入り口柱部16の側面に固定している。発電プレート32の乗場22側に向く幅方向他端縁(図2、図3の下端縁)は、乗りかご扉14に直接に、すなわち他の部材を介することなく対向している。図3に示すように、発電プレート32の出力電圧は、コントローラ34に入力される。なお、発電プレート32の固定位置は、図2に示すような位置に限定するものではなく、利用者等の発電プレート32と乗りかご扉14との隙間への挟まれが発生する傾向となる場合に、発電プレート32の乗りかご扉14と対向する部分が変形可能に設けられていればよい。
【0032】
コントローラ34は、CPU、メモリ等を有するマイクロコンピュータを含む制御部である。コントローラ34は、判定部36と、扉駆動制御部38とを含む。判定部36は、発電プレート32の出力電圧の時間的変化を利用して異常状況が発生したか否かを判定する。すなわち、判定部36は、発電プレート32の出力電圧の絶対値が予め設定された所定時間T以上で徐々に上昇し、その出力電圧の絶対値が予め設定した閾値A以上となる場合に異常状況が発生したと判定し、その出力電圧の絶対値が予め設定した閾値A未満である場合に異常状況が発生していないと判定する。
【0033】
また、扉駆動制御部38は、判定部36により異常状況が発生したと判定された場合に、利用者の身体、または身体周囲物である、利用者の衣服または荷物等の扉関係危険状況が発生したと判定し、乗りかご扉14を扉開動作から扉停止または扉閉動作に移行するように、扉駆動装置20を制御する。
【0034】
例えば、乗りかご10内の利用者が誤って、発電プレート32と乗りかご扉14との間の隙間周辺部に手指等身体の一部を位置させている場合に、乗りかご10が指定階に到着し、乗りかご扉14が閉じた状態から扉開動作に移行する場合がないとはいえない。この場合、乗りかご扉14の開動作に伴って、発電プレート32と乗りかご扉14との隙間に利用者の身体が挟み込まれる可能性がある。これに対して、本実施の形態では、発電プレート32が、例えば、利用者の身体により図2に矢印αで示す方向に押圧され、変形することで押圧力に応じた出力電圧が発生する。このため、その出力電圧を表す信号を入力されたコントローラ34(図3)により扉駆動装置20が制御され、扉開動作から扉閉動作に反転するように移行したり、乗りかご扉14の開閉動作を停止させることにより、利用者の身体等をすぐに解放できて、身体等の挟み込みを有効に防止でき、または被災の拡大を有効に防止できる。
【0035】
次に、これを図4を用いて詳しく説明する。なお、本実施の形態の以下の説明では、図1から図3に示した要素と同一の要素には同一の符号を付して説明する。図4に示すように発電プレート32の出力電圧が発生し、出力電圧が図示のように変化したとすると、異常状況に対応する所定時間を一定時間であるTとし、異常状況に対応する出力電圧の閾値をAとしている場合に、時間t1、t3で出力電圧が立ち上がり、所定時間Tの計測を開始する。この場合、所定時間T終了後の時間t2、t4で出力電圧が0に戻っているので、発電プレート32は、不注意等により一瞬だけ利用者により押され、離された場合と判定される。これに対して、時間t5で出力電圧の立ち上がりにより、所定時間Tを計測開始した場合、所定時間T後の時間t6でも出力電圧の立ち上がりが検出されると、引き続いて出力電圧が閾値A以上となるかを確認する。この場合、時間t7で出力電圧が閾値A以上となるので、利用者の身体等が挟まれ、発電プレート32の押圧力が上昇している扉関係危険状況が発生したと判定される。そしてこの場合に扉駆動制御部38が扉駆動装置20に制御信号を出力することにより、乗りかご扉14の開閉動作が停止または反転するので、利用者保護が有効に図られる。なお、所定時間Tの計測開始は、予め設定した計測開始閾値以上に出力電圧が立ち上がった時点のタイミングとしてもよい。本実施の形態のエレベータ制御装置は、異常状況検知装置30と、扉駆動装置20とを備える。
【0036】
また、本実施の形態の場合、図2に示すように、乗場22側の乗場三方枠28の、出入り口24の左右両側に位置する2つの側面の上下方向の所定の長さ範囲に、乗りかご10に設けた発電プレート32と同様の機能を有する第2発電プレート40を設けている。第2発電プレート40の出力電圧も、コントローラ34に入力する。コントローラ34の判定部36は、第2発電プレート40の出力電圧の絶対値が予め設定された所定時間以上で徐々に上昇し、その出力電圧の絶対値が予め設定した閾値以上となる場合に乗場異常状況が発生したと判定し、その出力電圧の絶対値が予め設定した閾値未満である場合に乗場異常状況が発生していないと判定する。扉駆動制御部38は、判定部36により乗場異常状況が発生したと判定された場合も、利用者の身体、または身体周囲物である、利用者の衣服または荷物等の挟まれである、扉関係危険状況が発生したと判定し、乗場扉26を扉開動作から扉停止または扉閉動作に移行するように、乗場扉26を開閉動作させる扉駆動装置を制御する。
【0037】
なお、発電プレート32,40は、複数枚を結合するとともに、複数枚を電気的に並列に接続する、すなわち、いずれかの発電プレート32,40が押圧された場合でも出力電圧を検知し、その検知信号をコントローラ34へ出力する構成とすることもできる。
【0038】
このように本実施の形態の異常状況検知装置30は、連続して付加される力の上昇に応じて上昇する出力電圧を発生する発電プレート32,40と、発電プレート32,40の出力電圧の時間的変化を利用して異常状況が発生したか否かを判定する判定部36とを備える異常状況検知装置30であり、エレベータ制御装置は、この異常状況検知装置30を備える。このため、利用者の乗りかご扉14と出入り口柱部16との隙間への直接の挟まれを、上記の特許文献1に記載されたような過負荷検出手段を用いることなく検出でき、その検出された信号を用いて利用者の身体等の挟まれを有効に防止し、または被災の拡大を有効に防止できる。すなわち、異常状況の発生を直接検出でき、その検出された信号を用いてエレベータを制御する対応処理を行うことができる。
【0039】
また、乗場22側の出入り口24の左右に配置される乗場三方枠28と乗場扉26との隙間での利用者の挟み込み等も防止でき、または被災の拡大を有効に防止できる。また、利用者が誤って一瞬だけ発電プレート32,40を押圧し、すぐに離した場合に異常状況が検知されず、乗りかご扉14や乗場扉26が不要に開閉停止したり、開閉反転することがない。このため、エレベータにおける異常状況である利用者等の扉関係危険状況の発生を有効に検知でき、利用者等の扉14,26と柱部16または三方枠28の側面との間の挟み込みを有効に防止でき、または被災の拡大を有効に防止できる。
【0040】
なお、本実施の形態では、乗りかご10側と乗場22側との両方に発電プレート32,40を設けているが、乗りかご10側と乗場22側との一方のみに発電プレートを設けて、異常状況検知装置30によりこの一方の発電プレートから出力される出力電圧を用いて異常状況の発生の有無を判定することもできる。
【0041】
[第2の発明の実施の形態]
図5は、本発明に係る第2の実施の形態の異常状況検知装置を備えるエレベータ制御装置を示す構成図である。図6は、第2の実施の形態において、発電プレートから出力される出力電圧の時間経過の1例を示す図である。
【0042】
図5に示すように、本実施の形態の場合には、エレベータ制御装置は、コントローラ34を含む異常状況検知装置42と、昇降装置44及び警報部46とを備える。昇降装置44は、エレベータの乗りかご10の昇降をさせるもので、昇降路47の上部や下部等に設けられる図示しない巻き上げ機と、巻き上げ機の駆動を制御する駆動制御装置(図示せず)とを含み、この駆動制御装置は、乗り場ボタンや、乗りかご10内の操作部18(図1参照)の操作に応じて、乗りかご10を指定された指定階まで移動させる。
【0043】
警報部46は、スピーカ等の音声出力部を含み、音声出力部は、乗りかご10内や、エレベータを設置した建物内の管理室等に設けられる。また、警報部46は、音声出力部の代わりに、または音声出力部とともに、警報信号を発する構成とし、警報部46が発した警報信号を、エレベータを設置した建物とは離れた場所に位置するエレベータの管理会社や警備会社に送信し、異常発生を知らせる構成とすることもできる。
【0044】
また、異常状況検知装置42は、発電プレート48と、コントローラ34とを含む。発電プレート48は、乗りかご10の底部上側の、利用者の足下下側となる位置に少なくとも一部を浮かした状態で配置している。発電プレート48は、上記の第1の実施の形態と同様の機能を有する圧電素子により構成するもので、平板状の形状を有する。また、発電プレート48を床面のほぼ全面と同じ面積を有するものとし、発電プレート48の四方の端縁部を乗りかご10の側面下部に支持することもできる。また、発電プレート48と乗りかご10底部との間にクッション、ばね等の弾性材を設けることもできる。発電プレート48の出力電圧は、コントローラ34に入力される。
【0045】
コントローラ34は、判定部50と、昇降警報制御部52とを含む。判定部50は、発電プレート48の出力電圧の時間的変化を利用して異常状況が発生したか否かを判定する。すなわち、判定部50は、発電プレート48の出力電圧の予め設定した所定時間当たりの変動幅が、予め設定した閾値B以上となる場合に異常状況が発生したと判定し、その出力電圧の所定時間当たりの変動幅が、予め設定した閾値B未満となる場合に異常状況が発生していないと判定する。
【0046】
また、昇降警報制御部52は、判定部50により異常状況が発生したと判定された場合に、利用者の乗りかご内暴れが生じたと判定し、乗りかご10を最寄り階で停止させるように昇降装置44を制御し、警報を発するように警報部46を制御する。例えば、警報部46が音声出力部である場合に、ブザー音等の警報音や、警報アナウンス等の予め記録された音声を出力する。
【0047】
例えば、乗りかご10内の利用者が乗りかご10内で正常に移動する等により発電プレート48は変形し、それに伴って出力電圧が変動するが、所定時間当たりの出力電圧の変動幅が閾値B未満であれば異常状況とは判定されない。これに対して、所定時間当たりの出力電圧の変動幅が閾値B以上であれば、乗りかご10内で異常に利用者が暴れていると判定する。利用者の暴れは、子供等がふざけたり、または暴漢等に利用者が襲われている危険等に基づく可能性がある。このため、このような乗りかご内暴れが生じたと判定された場合に、乗りかご10を最寄階にすぐに停止させ、乗りかご扉14(図2参照)及び乗場扉26(図2参照)を開放したり、警報部46により警報を発することが有効である。
【0048】
これについて図6を用いて詳しく説明する。なお、本実施の形態の以下の説明では、図5に示した要素と同一の要素には同一の符号を付して説明する。図6に示すように発電プレート48の出力電圧が発生し、出力電圧が図示のように変化したとすると、異常状況に対応する所定時間を互いに同じ一定時間であるT1,T2,T3,T4とし、異常状況に対応する出力電圧の変動幅の閾値をBとしている場合に、出力電圧の立ち上がり時点を契機として、所定時間T1,T2,T3,T4を、所定間隔毎に計測し、その所定時間T1,T2,T3,T4内当たりの出力電圧の変動幅が閾値B以上となったか否かを判定する。所定時間T1,T2,T3では、所定時間T1,T2,T3当たりの出力電圧の変動幅は閾値B未満であり、通常時の移動等による発電プレート48の変形と判定され、異常状況は発生していないと判定される。これに対して、所定時間T4では、所定時間T4当たりの変動幅は閾値B以上となっているので、利用者の暴れによる乗りかご10内暴れが生じたと判定され、時間taで、昇降警報制御部52は、昇降装置44及び警報部46を制御し、乗りかご10を最寄階で停止させ、警報部46により警報を発するようにする。なお、所定時間の計測開始は、予め設定した計測開始閾値以上に出力電圧が立ち上がった時点のタイミングとしてもよい。
【0049】
このような本実施の形態の場合も、連続して付加される力の上昇に応じて上昇する出力電圧を発生する発電プレート48と、発電プレート48の出力電圧の時間的変化を利用して異常状況が発生したか否かを判定する判定部50とを備える。このため、利用者の乗りかご10内暴れを検出でき、その検出された信号を用いてエレベータ等を制御する対応処理を行うことができる。すなわち、乗りかご10内で利用者が暴漢に襲われていたり、子供等の利用者が乗りかご10内で暴れている等の異常状況が発生した場合に、エレベータにおける異常状況である乗りかご10内暴れの発生を検知できる。しかもモーションサーチシステムを使用する場合よりも、設置費用や運用費用の低減を図れる。また、乗りかご10内での通常の移動等に伴う発電プレート48の変形等により、異常状況が検知されることがない。このため、利用者災害またはその被災拡大や、故障発生原因等、異常状況の発生を有効に検知できる。したがって、利用者災害またはその被災拡大を有効に防止でき、またはエレベータの故障を有効に防止できる。
【0050】
なお、本実施の形態で使用した、乗りかご10下部に設けた発電プレート48の出力電圧をコントローラに入力し、コントローラが、乗りかご10内の利用者の有無を検知する構成を採用することもできる。また、発電プレート48の出力電圧を入力されたコントローラが、エスカレータの故障等により、乗りかご10内に利用者が閉じ込められている場合に、乗りかご10内の利用者の有無を建物内の別の場所や遠隔地で判断する構成を採用することもできる。また、建物内の別の場所や遠隔地で、上記の出力電圧を入力されたコントローラが、乗りかご10内に利用者が乗車しているにもかかわらず、かご呼びが登録されていない状況の発生を検知する構成を採用することもできる。
【0051】
[第3の発明の実施の形態]
図7は、本発明に係る第3の実施の形態の異常状況検知装置を備えるエスカレータを示す略断面図である。図8は、第3の実施の形態の異常状況検知装置を備えるエスカレータ制御装置を示す構成図である。図9は、第3の実施の形態の異常状況検知装置を備えるエスカレータの降り場周辺部を示す斜視図である。なお、以下ではエスカレータが下降用である場合を説明するが、上昇用のエスカレータに本実施の形態を適用することもできる。
【0052】
図7から図9に示すように、本実施の形態の異常状況検知装置54(図8)を備える利用者移送装置である、エスカレータは、建物内の上側階床と下側階床とにかけわたすようにトラス56を設けており、トラス56に設けられた移送手段58により、複数の踏段60を移動自在としている。移送手段58は、駆動機構62と、エスカレータ駆動装置64とを含む。駆動機構62は、チェーン65とスプロケット66,68とを有する動力伝達機構を含む。すなわち、複数の踏段60は、各踏段60に支持した複数のステップ軸を無端状のチェーン65により連結している。各ステップ軸に支持した駆動ローラを駆動レール70により案内している。また、チェーン65は、上側及び下側に設けたスプロケット66,68に巻きかけられ、駆動スプロケットである上側のスプロケット66を、駆動モータを備えるエスカレータ駆動装置64により駆動可能としている。このため、チェーン65は、図7に矢印βで示す方向に循環される。
【0053】
また、踏段60の左右方向両側のトラス56上には欄干72が設けられており、欄干72の上面には、踏段60の移動に伴って移動する移動手すり74(図8、図9)が設けられ、欄干72の下側に設けられたデッキボードの踏段側には、移送手段58(図1)を覆うための複数の連結された発電プレート76(図8、図9)が設けられている。発電プレート76は、スカートガードの機能も有する。
【0054】
各発電プレート76は、欄干72下側のデッキボードの、踏段60の左右方向(図9の左右方向)端縁と対向する位置に設けられている。発電プレート76は、上記の図1から図3に示した第1の実施の形態と同様の機能を有する圧電素子により構成するもので、平板状の形状を有する。また、各発電プレート76と、踏段60との間に隙間が設けられている。また、トラス56の複数の発電プレート76を連結することにより構成する部分の長さ方向両端部の乗り口側端部及び降り口側端部に、エンド側デッキボード78,80が設けられている。また、図9に示すように、降り口側端部のエンド側デッキボード80の床面近傍に、移動手すり74が進入する開口部である移動手すり引き込み口(以下、単に「引き込み口」とする。)82が設けられている。
【0055】
各発電プレート76は、少なくとも上縁部をトラス56の固定部に固定している。各発電プレート76の下端縁部は、トラス56に固定の部分に対し浮かせた状態とすることもできる。異常状況検知装置54(図8)は、発電プレート76と、コントローラ77とを備える。発電プレート76は、外部から力が付加されることで出力電圧を発生するもので、出力電圧は、コントローラ77へ出力する。各発電プレート76は、電気的に並列に接続している。すなわち、少なくとも1枚の発電プレート76から出力電圧が発生すると、その出力電圧がコントローラ77に入力される。
【0056】
コントローラ77は、判定部84と、駆動制御部86とを含む。判定部84は、発電プレート76の出力電圧の時間的変化を利用して異常状況が発生したか否かを判定する。すなわち、判定部84は、上記の第1の実施の形態と同様に、発電プレート76の出力電圧の絶対値が予め設定された所定時間以上で徐々に上昇し、その出力電圧の絶対値が予め設定した閾値以上となる場合に異常状況が発生したと判定し、その出力電圧の絶対値が予め設定した閾値未満である場合に異常状況が発生していないと判定する。
【0057】
また、駆動制御部86は、判定部84により異常状況が発生したと判定された場合に、利用者の身体または身体周囲物である、利用者の衣服または荷物等の挟まれである、スカートガード関係危険状況が発生したと判定し、エスカレータの駆動を減速させるか、または駆動停止させるように、エスカレータ駆動装置64を制御する。
【0058】
例えば、エスカレータの踏段60(図7、図9)に乗っている利用者が、踏段60の左右方向端縁部に位置した場合に、踏段60と発電プレート76との間の隙間に、利用者の靴や荷物等が挟まれる傾向となる。特に靴がゴム製である場合等では、発電プレート76と踏段60との隙間に靴等が挟まれやすい。これに対して、本実施の形態では、上記のように異常状況検知装置54を備えるため、異常状況である挟まれのスカートガード関係危険状況が発生したことを検知できる。すなわち、発電プレート76が、例えば、利用者の靴等によりデッキボード奥側に押圧され、変形することで出力電圧が発生する。このため、その出力電圧を表す信号を入力されたコントローラ77によりエスカレータ駆動装置64が制御され、踏段60の移動を減速または移動停止させることができる。
【0059】
このような本実施の形態の場合も、連続して付加される力の上昇に応じて上昇する出力電圧を発生する発電プレート76と、発電プレート76の出力電圧の時間的変化を利用して異常状況が発生したか否かを判定する判定部84とを備える。このため、エスカレータにおける異常状況であるスカートガード関係危険状況の発生を有効に検知でき、その検出された信号を用いてエスカレータ等を制御する対応処理を行うことができる。また、リミットスイッチを用いてスカートガード関係危険状況の発生を検知する場合と異なり、スカートガードのリミットスイッチと対向する一部と踏段との間だけでしか挟まれを検知できないという不都合を防止できる。すなわち、踏段60の端縁と対向するスカートガード部分の全部に発電プレート76を設けることができるため、挟まれ状況のすべてまたはほぼすべてを検知でき、エスカレータの駆動を制御できる。また、リミットスイッチを用いる構成では、瞬間的に誤って押された場合でも作動するが、本実施の形態では、瞬間的に誤って利用者の身体等により発電プレート76が押され、すぐに身体等を引っ込めた場合にスカートガード関係危険状況が発生したとは判定されないので、不要にエスカレータの駆動が停止されることがない。このように本実施の形態では、異常状況の発生を有効に検知でき、利用者災害またはその被災拡大を有効に防止できる。
【0060】
なお、判定部84は、発電プレート76の出力電圧の絶対値が予め設定された所定時間以上で徐々に上昇し、その出力電圧の絶対値が、エスカレータの駆動停止条件に対応する閾値よりも小さい値である、警告用閾値以上となる場合に警告状況が発生したと判定し、エスカレータを駆動停止する前に、図示しないブザー音や、警告アナウンス等を発生する警告部である、音声出力部により警告音または警告アナウンスを出力させ、利用者に注意を喚起することもできる。
【0061】
[第4の発明の実施の形態]
図10は、本発明に係る第4の実施の形態の異常状況検知装置を備えるエスカレータ制御装置を示す構成図である。本実施の形態では、上記の図7から図9に示した第3の実施の形態と同様のエスカレータにおいて、スカートガードの機能を有する発電プレート76を設けるとともに、またはこの発電プレート76を省略した構成で、エスカレータのトラス56の長さ方向両端部の降り口側端部に設けられたエンド側デッキボード80の床面近傍に、移動手すり74が進入する開口部である引き込み口82を設けている。また、このエンド側デッキボード80において、引き込み口82周辺部の、移動手すり74下側と対向する部分に発電プレート88を、その周縁部をエンド側デッキボード80に固定するように設けている。なお、図示の例の場合には、下降用エスカレータであるため、下側のエンド側デッキボード80の引き込み口82周辺部に発電プレート88を設けているが、上昇用エスカレータでは上側のエンド側デッキボードの引き込み口周辺部に発電プレート88を設ける。
【0062】
発電プレート88は、上記の図1から図3に示した第1の実施の形態と同様の機能を有する圧電素子により構成するもので、平板状の形状を有する。発電プレート88は、外部から力が付加されることで出力電圧を発生するもので、出力電圧は、コントローラ77へ出力する。
【0063】
コントローラ77は、判定部90と、第2駆動制御部92とを含む。判定部90は、発電プレート88の出力電圧の時間的変化を利用して異常状況が発生したか否かを判定する。すなわち、判定部90は、上記の第1の実施の形態と同様に、発電プレート88の出力電圧の絶対値が予め設定された所定時間以上で徐々に上昇し、その出力電圧の絶対値が予め設定した閾値以上となる場合に異常状況が発生したと判定し、その出力電圧の絶対値が予め設定した閾値未満である場合に異常状況が発生していないと判定する。
【0064】
第2駆動制御部92は、判定部90により異常状況が発生したと判定された場合に、利用者の身体または身体周囲物である、利用者の衣服または荷物等の挟まれである、移動手すり関係危険状況が発生したと判定し、エスカレータの駆動を減速させるか、または駆動停止させるように、エスカレータ駆動装置64を制御する。異常状況検知装置94は、発電プレート88とコントローラ77とを備える。
【0065】
例えば、エスカレータの降り口周辺部で子供等の利用者がいたずら等の原因により、手指等身体の一部や衣服、荷物等を、移動手すり74と引き込み口82との間の隙間に引き込まれる傾向となる可能性がある。これに対して、本実施の形態では、上記のように異常状況検知装置94を備えるため、異常状況である移動手すり関係危険状況が発生したことを検知できる。すなわち、発電プレート88が、例えば、利用者の身体等によりエンド側デッキボード80奥側に押圧され、変形することで出力電圧が発生する。このため、その出力電圧を表す信号を入力されたコントローラ77によりエスカレータ駆動装置64が制御され、移動手すり74の移動を減速または移動停止させることができる。
【0066】
このような本実施の形態の場合も、連続して付加される力の上昇に応じて上昇する出力電圧を発生する発電プレート88と、発電プレート88の出力電圧の時間的変化を利用して異常状況が発生したか否かを判定する判定部90とを備える。このため、エスカレータにおける異常状況である移動手すり関係危険状況の発生を有効に検知でき、その検出された信号を用いてエスカレータ等を制御する対応処理を行うことができる。また、リミットスイッチを用いて移動手すり関係危険状況の発生を検知する場合には、瞬間的に誤って押された場合でも作動するが、本実施の形態では、瞬間的に誤って利用者の身体等により発電プレート88が押され、すぐに身体等を引っ込めた場合に移動手すり関係危険状況が発生したとは判定されないので、不要にエスカレータの駆動が停止されることがない。このように本実施の形態では、異常状況の発生を有効に検知でき、利用者災害またはその被災拡大を有効に防止できる。
【0067】
なお、判定部90は、発電プレート88の出力電圧の絶対値が予め設定された所定時間以上で徐々に上昇し、その出力電圧の絶対値が、エスカレータの駆動停止条件に対応する閾値よりも小さい値である、警告用閾値以上となる場合に警告状況が発生したと判定し、エスカレータを駆動停止する前に、図示しないブザー音や、警告アナウンス等を発生する警告部である、音声出力部により警告音または警告アナウンスを出力させ、利用者に注意を喚起することもできる。
【符号の説明】
【0068】
10 乗りかご、12 出入り口、14 乗りかご扉、16 出入り口柱部、18 操作部、20 扉駆動装置、22 乗場、24 出入り口、26 乗場扉、28 乗場三方枠、30 異常状況検知装置54、32 発電プレート、34 コントローラ、36 判定部、38 扉駆動制御部、40 第2発電プレート、42 異常状況検知装置、44 昇降装置、46 警報部、47 昇降路、48 発電プレート、50 判定部、52 昇降警報制御部、54 異常状況検知装置、56 トラス、58 移送手段、60 踏段、62 駆動機構、64 エスカレータ駆動装置、66,68 スプロケット、70 駆動レール、72 欄干、74 移動手すり、 76 発電プレート、77 コントローラ、78,80 エンド側デッキボード、82 移動手すり引き込み口、84 判定部、86 駆動制御部、88 発電プレート、90 判定部、92 第2駆動制御部、94 異常状況検知装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者移送装置における異常状況を検知する異常状況検知装置であって、
連続して付加される力の上昇に応じて上昇する出力電圧を発生する押圧発電部と、
押圧発電部の出力電圧の時間的変化を利用して異常状況が発生したか否かを判定する判定部とを備えることを特徴とする異常状況検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の異常状況検知装置において、
押圧発電部は、連続して付加される力に応じて時間的に連続する出力電圧を出力可能な圧電素子を含むことを特徴とする異常行動検知装置。
【請求項3】
請求項2に記載の異常状況検知装置において、
押圧発電部は、圧電素子により構成する発電プレートであることを特徴とする異常状況検知装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1に記載の異常状況検知装置において、
判定部は、押圧発電部の出力電圧の絶対値が予め設定された所定時間以上で徐々に上昇し、その出力電圧の絶対値が予め設定した閾値以上となる場合に異常状況が発生したと判定することを特徴とする異常状況検知装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1に記載の異常状況検知装置において、
判定部は、押圧発電部の出力電圧の所定時間当たりの変動幅が、予め設定した閾値以上となる場合に異常状況が発生したと判定することを特徴とする異常状況検知装置。
【請求項6】
請求項4に記載の異常状況検知装置を備えるエレベータ制御装置であって、
利用者移送装置はエレベータであり、
押圧発電部は、エレベータの扉に対向する出入り口柱部または乗場三方枠の側面に設けられており、
さらに、扉を開閉動作させる扉駆動装置と、
異常状況が発生したと判定された場合に、利用者の身体または身体周囲物の扉関係危険状況が発生したと判定し、扉を扉開動作から扉停止または扉閉動作に移行するように、扉駆動装置を制御する扉駆動制御部とを備えることを特徴とするエレベータ制御装置。
【請求項7】
請求項5に記載の異常状況検知装置を備えるエレベータ制御装置であって、
利用者移送装置はエレベータであり、
押圧発電部は、エレベータの乗りかごの底部上側の、利用者の足下下側となる位置に配置されており、
さらに、乗りかごの昇降を行う昇降装置と、
異常状況が発生したと判定された場合に、利用者の乗りかご内暴れが生じたと判定し、乗りかごを最寄り階で停止させるように昇降装置を制御し、警報を発するように警報部を制御する昇降警報制御部とを備えることを特徴とするエレベータ制御装置。
【請求項8】
請求項4に記載の異常状況検知装置を備えるエスカレータ制御装置であって、
利用者移送装置はエスカレータであり、
押圧発電部は、エスカレータの欄干下側に設けたデッキボードの、踏段の左右方向端縁と対向する位置に、スカートガードの機能を有するものとして設けられており、
さらに、エスカレータの駆動を行うエスカレータ駆動装置と、
異常状況が発生したと判定された場合に、利用者の身体または身体周囲物のスカートガード関係危険状況が発生したと判定し、エスカレータの駆動を減速させるか、または駆動停止させるように、エスカレータ駆動装置を制御する駆動制御部とを備えることを特徴とするエスカレータ制御装置。
【請求項9】
請求項4に記載の異常状況検知装置を備えるエスカレータ制御装置であって、
利用者移送装置はエスカレータであり、
押圧発電部は、エスカレータのエンド側デッキボードにおいて、移動手すり引き込み口周辺部の移動手すり下側に対向する部分に設けられており、
さらに、エスカレータの駆動を行うエスカレータ駆動装置と、
異常状況が発生したと判定された場合に、利用者の身体または身体周囲物の移動手すり関係危険状況が発生したと判定し、エスカレータの駆動を減速させるか、または駆動停止させるようにエスカレータ駆動装置を制御する第2駆動制御部とを備えることを特徴とするエスカレータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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