説明

異形シリカ微粒子の製造方法及び静電荷像現像用トナー外添剤

【課題】 球状でなく異形のシリカ微粒子であり、特に高分散性、低凝集性を有する異形シリカ微粒子であって、トナーへの付着性、及びトナーへの流動性の付与効果が良好な異形シリカ微粒子、及び該異形シリカ微粒子からなる静電荷像現像用トナー外添剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 各工程の反応温度を40℃〜100℃の範囲内とし、一般式(1):Si(OR(1)で示される4官能性シラン化合物又はその部分加水分解縮合生成物を、塩基性物質の存在下で親水性有機溶媒と水との混合媒体中で加水分解、縮合して、親水性シリカ微粒子の核粒子を生成する工程と、異形化促進触媒を系内に添加する工程と、引き続き、前記一般式(1)で示される4官能性シラン化合物又はその部分加水分解縮合生成物を系内に添加することで異形シリカ微粒子を生成する工程とを有することを特徴とする異形シリカ微粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリカ微粒子に関し、特に異形シリカ微粒子及び静電荷像現像用トナー外添剤として好適に用いることのできる異形シリカ微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法等で使用する乾式現像剤は、結着樹脂中に着色剤を分散したトナーそのものを用いる一成分現像剤と、そのトナーにキャリアを混合した二成分現像剤とに大別できる。これらの現像剤を用いてコピー操作を行う場合、プロセス適合性を有するためには、現像剤が流動性、耐ケーキング性、定着性、帯電性、クリーニング性等に優れていることが必要である。特に、流動性、耐ケーキング性、定着性、クリーニング性を高めるために、無機微粒子をトナーに添加することがしばしば行われている。
【0003】
トナー表面に混合機を用いて外添剤とトナーを混合させた場合に、外添剤の凝集体を解きほぐしながらトナー表面に付着させることが必要であり、その際に外添剤がトナー表面に付着せず遊離した状態のまま存在したり、あるいはある程度付着しているが現像器内のストレス、摺擦等によりトナー表面より脱離し遊離状態となる場合もある。これらの遊離外添剤は、感光体表面にトナーが現像される際にトナーと共に感光体に移行し、転写後も感光体表面にとどまり、クリーニングされずに感光体表面に付着することがしばしば認められる。
【0004】
これらの遊離外添剤が感光体表面に蓄積されると、コピー上の画質欠陥の原因(フィルミング、その他)となったり、感光体表面にキズをつけることがしばしば見られ、感光体の寿命を短くする原因となっている。また、現像時に現像機からこれら遊離外添剤がこぼれ落ちて複写機内を汚染するという問題もある。あるいは、現像剤中のキャリア表面に付
着しキャリアとトナー間での電荷授受を阻害し、結果としてトナーの帯電を低下させる一要因となることもある。そのため、外添剤のトナーへの付着性が課題であった。
【0005】
これに対し、無機系の外添剤としてヒュームドシリカの使用が報告されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、ヒュームドシリカは、その複雑な粒子構造からトナーへの流動性の付与効果において不十分であるという問題があった。また、球状溶融シリカをトナー用外添剤として使用することも報告されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この場合も、球状であるがためにトナー樹脂粒子の表面への付着力が乏しく、シリカ微粒子が脱落したトナー粒子表面がコピー機の感光体表面と接触し、トナーが所定の用紙に転写されず、感光体表面に残存し易い等の問題を有している。そのため、流動性、耐ケーキング性、定着性、クリーニング性等を高めながらもトナーへの付着性、及びトナーへの流動性の付与効果が良好な外添剤の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−116575号公報
【特許文献2】特開2002−154820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、球状でなく異形のシリカ微粒子であり、特に高分散性、低凝集性を有する異形シリカ微粒子であって、トナーへの付着性、及びトナーへの流動性の付与効果が良好で、トナーの流動性は保ちながら、トナーからの脱落が少ない異形シリカ微粒子の製造方法、及び該異形シリカ微粒子からなる静電荷像現像用トナー外添剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、
平均粒子径が5〜500nmの範囲の異形シリカ微粒子を製造する方法であって、
下記各工程の反応温度を40℃〜100℃の範囲内とし、
(A)一般式(1):Si(OR (1)
[上記一般式(1)中、Rは同一又は異なる、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]
で示される4官能性シラン化合物及び該4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を、塩基性物質の存在下で親水性有機溶媒と水との混合媒体中で加水分解、縮合して、親水性シリカ微粒子の核粒子を生成する工程と、
(B)異形化促進触媒を系内に添加する工程と、
(C)引き続き、前記一般式(1)で示される4官能性シラン化合物及び該4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を系内に更に添加し、前記親水性シリカ微粒子の核粒子を成長し、異形化することで親水性異形シリカ微粒子を生成する工程とを有することを特徴とする異形シリカ微粒子の製造方法を提供する。
【0009】
このように、上記異形シリカ微粒子の製造方法であれば、球状でなく異形のシリカ微粒子を製造することができ、特に高分散性、低凝集性を有する異形シリカ微粒子であって、トナーへの付着性、及びトナーへの流動性の付与効果が良好で、トナーの流動性は保ちながら、トナーからの脱落が少ない異形シリカ微粒子を製造することができる異形シリカ微粒子の製造方法となる。
【0010】
また、前記異形化促進触媒として、縮合触媒類、二官能性化合物類、塩類のいずれかを用いることができる。さらに、前記縮合触媒類であれば、Ti、Zr、Zn、Al系の有機金属化合物錯体のいずれかを用いることが好ましく、前記塩類であれば、水酸化テトラアルキルアンモニウム化合物を用いることが好ましく、さらに、前記二官能性化合物類であれば、アミノアルコール類、ジアミン類、グリコール類のいずれかを用いることが好ましい。
【0011】
このように、前記異形化促進触媒として、縮合触媒類、二官能性化合物類、塩類のいずれかを用いることで、平均粒子径が5〜500nmの範囲であり、繊維状、柱状、回転楕円体状などの異形状と見做される形状、すなわち球状とは見なされない形状をとる異形シリカ微粒子をより効率よく得ることができる。
【0012】
また、前記親水性有機溶媒として、一般式(2):ROH (2)
[一般式(2)中、Rは炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]で示されるアルコール溶媒を用いることが好ましい。
【0013】
このように、前記親水性有機溶媒として、上記一般式(2)で示されるアルコール溶媒を用いることで、(A)〜(C)工程において一般式(1)で示される4官能性シラン化合物及び該4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と水とを良好に溶解することができ、加水分解、縮合反応を良好に進行させることができる。また、上記一般式(2)で示されるアルコールの炭素原子数が増えると、生成する異形シリカ微粒子の粒子径が大きくなる。従って、上記一般式(2)で示されるアルコールの種類を選択することで、目的とする異形シリカ微粒子の粒子径とすることができる。
【0014】
さらに、前記塩基性物質としてアンモニアを用いることが好ましい。
【0015】
このように、前記塩基性物質としてアンモニアを用いることで、加水分解、縮合反応に適した反応条件を満たすことができ、加水分解、縮合反応を良好に進行させることができる。
【0016】
また、本発明では前記異形シリカ微粒子の製造方法において、前記(C)異形シリカ微粒子を生成する工程の後、
(D)前記系内から親水性有機溶媒を除去して媒体を水に置換して、前記親水性異形シリカ微粒子の水分散液を得る工程と、
(E)前記親水性異形シリカ微粒子の水分散液中の前記親水性異形シリカ微粒子の表面にRSiO3/2単位[式中、Rは置換又は非置換の、炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である]を導入し、第一次疎水性異形シリカ微粒子を生成する工程と、
(F)更に、該第一次疎水性異形シリカ微粒子の表面にRSiO1/2単位[式中、Rは同一又は異なる、置換又は非置換の、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]を導入して第二次疎水性異形シリカ微粒子を生成する工程とを有することを特徴とする異形シリカ微粒子の製造方法を提供する。
【0017】
このように、上記異形シリカ微粒子の製造方法であれば、球状でなく異形の疎水性シリカ微粒子を製造することができ、特に高分散性、低凝集性を有する異形シリカ微粒子であって、トナーへの付着性、及びトナーへの流動性の付与効果が良好で、トナーの流動性は保ちながら、トナーからの脱落が少ない異形シリカ微粒子を製造することができる異形シリカ微粒子の製造方法となる。
【0018】
さらに、前記(E)工程において、前記親水性異形シリカ微粒子の水分散液に、
一般式(3):RSi(OR (3)
[式中、Rは置換又は非置換の、炭素原子数1〜20の1価炭化水素基であり、Rは同一又は異なる、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]
で示される3官能性シラン化合物、該3官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物、又は該3官能性シラン化合物と該部分加水分解縮合生成物との混合物を添加することで、前記親水性異形シリカ微粒子の表面にRSiO3/2単位[式中、Rは上記と同じである]を導入し、第1次疎水性異形シリカ微粒子を生成することが好ましい。
【0019】
このように、前記(E)工程において、前記親水性異形シリカ微粒子の水分散液に、
上記一般式(3)で示される3官能性シラン化合物、該3官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物、又は該3官能性シラン化合物と該部分加水分解縮合生成物との混合物を添加することで、簡便に前記親水性異形シリカ微粒子の表面にRSiO3/2単位を導入することができる。
【0020】
また、前記(F)工程において、前記第一次疎水性異形シリカ微粒子の分散媒である水分散液をケトン系溶媒に置換し、第一次疎水性異形シリカ微粒子のケトン系溶媒分散液を得、該第一次疎水性異形シリカ微粒子のケトン系溶媒分散液に
一般式(4):RSiNHSiR (4)
[一般式(4)中、Rは同一又は異なる、置換又は非置換の、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]
で示されるシラザン化合物、
一般式(5):RSiX (5)
[一般式(5)中、Rは上記と同じであり、XはOH基又は加水分解性基である]
で示される1官能性シラン化合物、又は該シラザン化合物と該1官能性シラン化合物との混合物を添加し、前記第一次疎水性異形シリカ微粒子の表面に残存する反応性基をトリオルガノシリル化することで、第一次疎水性異形シリカ微粒子の表面にRSiO1/2単位[式中、Rは上記と同じである]を導入して第二次疎水性異形シリカ微粒子を生成することが好ましい。
【0021】
このように、前記(F)工程において、前記第一次疎水性異形シリカ微粒子の分散媒である水分散液をケトン系溶媒に置換し、第一次疎水性異形シリカ微粒子のケトン系溶媒分散液を得、該第一次疎水性異形シリカ微粒子のケトン系溶媒分散液に上記一般式(4)で示されるシラザン化合物、上記一般式(5)で示される1官能性シラン化合物、又は該シラザン化合物と該1官能性シラン化合物との混合物を添加することで、簡便に前記第一次疎水性異形シリカ微粒子の表面に残存する反応性基をトリオルガノシリル化することができ、第一次疎水性異形シリカ微粒子の表面にRSiO1/2単位を導入して第二次疎水性異形シリカ微粒子を生成することができる。
【0022】
さらに、前記ケトン系溶媒が、メチルイソブチルケトンであることが好ましい。
【0023】
このように、前記ケトン系溶媒が、メチルイソブチルケトンであれば、第一次疎水性異形シリカ微粒子、上記一般式(4)で示されるシラザン化合物、上記一般式(5)で示される一官能性シラン化合物、前記シラザン化合物及び前記一官能性シラン化合物の混合物及び生成する第二次疎水性異形シリカ微粒子を良好に溶解することができ、加水分解、縮合反応を良好に進行させることができる。
【0024】
また、本発明では前記異形シリカ微粒子の製造方法により製造された疎水性異形シリカ微粒子からなる静電荷像現像用トナー外添剤を提供する。
【0025】
このように、前記異形シリカ微粒子の製造方法により製造された疎水性異形シリカ微粒子からなる静電荷像現像用トナー外添剤であれば、トナーの流動性、耐ケーキング性、定着性、クリーニング性を高めるという外添剤の一般特性を有する上、トナーへの付着性、及びトナーへの流動性の付与効果が良好で、トナーの流動性は保ちながら、トナーからの脱落が少ない静電荷像現像用トナー外添剤となる。そのため、本発明の静電荷像現像用トナー外添剤を電子写真法、静電記録法等における静電荷像の現像に用いることにより、高画質化が期待できる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明の高分散性、低凝集性を有する異形シリカ微粒子、特に疎水性異形シリカ微粒子であればトナー外添剤として有用であり、トナーの流動性を改良することができ、更に粒子が不定形状の異形粒子であるため、付着性が高くトナー表面より脱離し遊離することが少なくなり、コピー上の画質欠陥の原因(フィルミング、その他)となることを抑制することができる。そのため、本発明により製造することができる異形シリカ微粒子からなる静電荷像現像用トナー外添剤を電子写真法、静電記録法等における静電荷像の現像に用いることにより、高画質化が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の異形シリカ微粒子の製造方法により得られた異形シリカ微粒子の電子顕微鏡の観察写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の異形シリカ微粒子の製造方法、及び静電荷像現像用トナー外添剤について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
前述のように、流動性、耐ケーキング性、定着性、クリーニング性等を高めながらもトナーへの付着性、及びトナーへの流動性の付与効果が良好な外添剤の開発が望まれていた。
【0029】
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意検討を重ねた結果、下記各工程の反応温度を40℃〜100℃の範囲内とし、(A)一般式(1):Si(OR (1)[上記一般式(1)中、Rは同一又は異なる、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]で示される4官能性シラン化合物及び該4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を、塩基性物質の存在下で親水性有機溶媒と水との混合媒体中で加水分解、縮合して、親水性シリカ微粒子の核粒子を生成する工程と、(B)異形化促進触媒を系内に添加する工程と、(C)引き続き、前記一般式(1)で示される4官能性シラン化合物及び該4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を系内に更に添加し、前記親水性シリカ微粒子の核粒子を成長し、異形化することで親水性異形シリカ微粒子を生成する工程とを有することを特徴とする異形シリカ微粒子の製造方法であれば、平均粒子径が5〜500nmの範囲の異形シリカ微粒子を製造することができることを見出し、該異形シリカ微粒子、特に該異形シリカ微粒子を疎水化した疎水性異形シリカ微粒子であればトナー外添剤として有用であり、トナーの流動性を改良することができ、更に粒子が不定形状の異形粒子であるため、付着性が高くトナー表面より脱離し遊離することが少なくなり、コピー上の画質欠陥の原因(フィルミング、その他)となることを抑制することができることを見出し、その上、本発明により製造することができる異形シリカ微粒子からなるトナー外添剤を電子写真法、静電記録法等における静電荷像の現像に用いることにより、高画質化が期待できることを見出して、本発明を完成させた。
【0030】
さらに、本発明者らは、本発明に係る疎水性異形シリカ微粒子からなる静電荷像現像用トナー外添剤であれば、現像剤への流動性、耐ケーキング性、定着性、クリーニング性等の付与という所望の特性に加えて、粒子が非球状の異形粒子であるため、トナー表面より脱離し遊離することが少なくなり、コピー上の画質欠陥の原因(フィルミング、その他)となることがなく、高画質化が可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0031】
<従来の合成シリカ微粒子の製造方法>
合成シリカ微粒子は、その製法によって、シラン化合物を燃焼させて得られる燃焼法シリカ(即ち、ヒュームドシリカ)、金属珪素粉を爆発的に燃焼させて得られる爆燃法シリカ、珪酸ナトリウムと鉱酸との中和反応によって得られる湿式シリカ(このうちアルカリ条件で合成したものを沈降法シリカ、酸性条件で合成したものをゲル法シリカという)、ヒドロカルビルオキシシランの加水分解によって得られるゾルゲル法シリカ(いわゆるStoeber法)に大別される。本発明は、このうち、ゾルゲル法シリカに関するものであり、ゾルゲル法を改良した異形シリカ微粒子の製造方法である。
【0032】
<異形シリカ微粒子の特徴>
まず、本発明に係る異形シリカ微粒子の特徴について説明する。図1に本発明の異形シリカ微粒子の製造方法により得られた異形シリカ微粒子の電子顕微鏡による観察写真を示す。本発明における異形シリカ微粒子とは、平均粒子径が5〜500nmの範囲であり、繊維状、柱状、回転楕円体状などの異形状と見做される形状、すなわち球状とは見なされない形状をとるものである。このような本発明に係る異形シリカ微粒子の短径/長径比は0.01〜0.8の範囲であることが好ましい。この範囲の短径/長径比である場合は、より繊維状、柱状、回転楕円体状などの異形状と見做される形状、すなわち球状とは見なされない形状をとるものとなる。この範囲の短径/長径比である場合は、短径/長径比が0.8以下であれば球状となりすぎず好ましい。また、短径/長径比が0.01以上であれば製造が容易であるため好ましい。また、短径/長径比のより好適な範囲は0.1〜0.7である。この範囲にあると、外添剤に応用したときに、従来公知の球状シリカよりもトナー表面より脱離し遊離することが少なくなり、コピー上の画質欠陥の原因(フィルミング、その他)をより抑制できる。
【0033】
<異形シリカ微粒子の短径/長径比の測定・算出方法>
短径/長径比の測定・算出は下記の方法で行った。まず、走査型電子顕微鏡により、異形シリカ微粒子を倍率50万倍(ないしは100万倍)で写真撮影して得られる写真投影図において、粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(L)とした。次に、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(S)とした。そして、これら長径(L)と短径(S)より短径/長径比(S/L)を算出することで求めることとした。この測定を任意の50個の粒子について行い、その平均値を短径/長径比とした。なお、ひとつの粒子について、長軸を複数設定可能な場合は、対応する複数の短径長さの平均値を求め、短径の長さ(S)とした。
【0034】
<異形シリカ微粒子の割合(%)>
異形シリカ微粒子の割合の測定は、上記「短径/長径比の測定方法」にて短径/長径比の測定対象とした50個の粒子において、下記(i)に該当する粒子数を測定し、[((i)の個数/50個)×100]の値を、全シリカ微粒子の個数に対する異形シリカ微粒子の個数の割合(%)とした。
(i)短径/長径比の範囲が0.01〜0.8の範囲にある粒子
【0035】
この異形シリカ微粒子の割合としては50%以上が好ましく、より好ましくは70〜100%である。この割合が50%以上であれば、外添剤に応用したときにトナー表面より脱離し遊離する割合がより少なくなり、コピー上の画質欠陥の原因(フィルミング、その他)が発生することを抑制できるため好ましい。
【0036】
<異形シリカ微粒子の製造方法>
次に、上記異形シリカ微粒子を製造するための本発明の異形シリカ微粒子の製造方法について詳細に説明する。本発明は、平均粒子径が5〜500nmの範囲の異形シリカ微粒子を製造する方法であって、
下記各工程の反応温度を40℃〜100℃の範囲内とし、
(A)一般式(1):Si(OR (1)
[上記一般式(1)中、Rは同一又は異なる、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]
で示される4官能性シラン化合物及び該4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を、塩基性物質の存在下で親水性有機溶媒と水との混合媒体中で加水分解、縮合して、親水性シリカ微粒子の核粒子を生成する工程と、
(B)異形化促進触媒を系内に添加する工程と、
(C)引き続き、前記一般式(1)で示される4官能性シラン化合物及び該4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を系内に更に添加し、前記親水性シリカ微粒子の核粒子を成長し、異形化することで親水性異形シリカ微粒子を生成する工程とを有する異形シリカ微粒子の製造方法を提供する。
【0037】
<反応温度>
まず、前記(A)〜(C)工程を行う際の反応温度は40〜100℃の間で設定する。この反応温度を40℃未満とすると球状粒子や会合粒子が製造されるため、目的の異形シリカ微粒子の合成が困難である。また、100℃より高くすると系内から加水分解用の水が揮発してしまい、加水分解が設定通りいかなくなるので目的の異形シリカ微粒子の合成が困難である。前記反応温度として、好ましくは40〜60℃の温度範囲で反応を行うことが好ましい。
【0038】
この様な反応温度で親水性シリカ微粒子の核粒子を作成すると比較的非球状の歪んだ形の親水性シリカ微粒子の核微粒子が生成し((A)工程)、該親水性シリカ微粒子の核微粒子が生成した系内に(B)工程で異形化促進触媒を添加すること、更に(C)工程で前記親水性シリカ微粒子の核粒子を前記反応温度で成長させることにより、粒度分布は狭いが、球状ではない目的とする異形のシリカ微粒子を得ることができる。以下、各工程を説明する。
【0039】
−親水性シリカ微粒子の核粒子の生成((A)工程)−
本工程では、(A)一般式(1):Si(OR (1)
[上記一般式(1)中、Rは同一又は異なる、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]
で示される4官能性シラン化合物及び該4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を、塩基性物質の存在下で親水性有機溶媒と水との混合媒体中で加水分解、縮合して、親水性シリカ微粒子の核粒子を生成する。
【0040】
上記一般式(1)中、Rは同一又は異なる、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基であり、より好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。Rで表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基等、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、特に好ましくは、メチル基、エチル基が挙げられる。
【0041】
上記一般式(1)で示される4官能性シラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン、テトラフェノキシシラン等、好ましくは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、特に好ましくは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが挙げられる。また、一般式(1)で示される4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物としては、例えば、これらの部分加水分解縮合生成物、特にメチルシリケート、エチルシリケート等が挙げられる。
【0042】
前記親水性有機溶媒としては、一般式(1)で示される4官能性シラン化合物と、該4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物と、水とを溶解するものであれば特に制限されず、例えば、アルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチセロソルブ、酢酸セロソルブ等のセロソルブ類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等、好ましくは、アルコール類、セロソルブ類、特に好ましくはアルコール類が挙げられる。
【0043】
前記アルコール類としては、
一般式(2):ROH (2)
[一般式(2)中、Rは炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]
で示されるアルコール溶媒を用いることが好ましい。
【0044】
上記一般式(2)中、Rは炭素原子数1〜6の1価炭化水素基であり、好ましくは炭素原子数1〜4、特に好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。Rで表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のアルキル基等、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、より好ましくはメチル基、エチル基が挙げられる。一般式(2)で示されるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等、好ましくは、メタノール、エタノールが挙げられる。アルコールの炭素原子数が増えると、生成する異形シリカ微粒子の粒子径が大きくなる。従って、目的とする異形シリカ微粒子の粒子径によりアルコールの種類を選択することが望ましい。
【0045】
また、前記塩基性物質としてはアンモニア、及びジメチルアミン、ジエチルアミン等のジ低級アルキルアミン、好ましくは、アンモニア及びジエチルアミン、特に好ましくはアンモニアが挙げられる。前記塩基性物質としてアンモニアを用いることで、加水分解、縮合反応に適した反応条件を満たすことができ、加水分解、縮合反応を良好に進行させることができる。これらの塩基性物質は、所要量を水に溶解した後、得られた水溶液(塩基性)を前記親水性有機溶媒と混合すればよい。
【0046】
前記(A)工程の前記親水性シリカ微粒子の核粒子形成時の加水分解反応において、上記一般式(1)で示される4官能性シラン化合物及び該4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の使用量は、(A)工程及び(C)工程で使用する全使用量に対して、0.3〜15mol%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜7mol%である。前記使用量が0.3mol%以上であれば前記親水性シリカ微粒子の核粒子が凝集して得られる粒子群が塊状になることを抑制できるため好ましい。また、前記使用量が15mol%以下であれば前記親水性シリカ微粒子の核粒子が大きくなりすぎて、凝集・沈降することを抑制できるため好ましい。
【0047】
前記(A)工程で使用される水の量は、上記一般式(1)で示される4官能性シラン化合物及び該4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物中に含まれるアルコキシ基のモル数に対して0.5〜7当量であることが好ましい。前記(A)工程で使用される水と親水性有機溶媒の比率は、親水性有機溶媒を1として重量比で0.1〜10であることが好ましい。さらに、前記塩基性物質の量は、上記一般式(1)で示される4官能性シラン化合物及び該4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物中に含まれるアルコキシ基のモル数に対して0.01〜1当量であることが好ましい。
【0048】
上記一般式(1)で示される4官能性シラン化合物及び該4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の加水分解及び縮合による核粒子の形成は、前記塩基性物質を含む前記親水性有機溶媒と水との混合媒体中に、上記一般式(1)で示される4官能性シラン化合物及び該4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を添加することにより行われる。
【0049】
−異形化促進触媒を系内に添加する工程((B)工程)−
(B)工程は、(A)工程により生成された前記親水性シリカ微粒子の核粒子が存在している系内に、異形化を促すような触媒(異形化促進触媒)を添加する工程である。シリカ微粒子を異形にするための異形化促進触媒として有効なものとして、縮合触媒類、二官能性化合物類、塩類等が挙げられる。このように、前記異形化促進触媒として、縮合触媒類、二官能性化合物類、塩類のいずれかを用いることで、より効率よく平均粒子径が5〜500nmの範囲であり、繊維状、柱状、回転楕円体状などの異形状と見做される形状、すなわち球状とは見なされない形状をとる異形シリカ微粒子を得ることができる。
【0050】
前記縮合触媒類としては、Ti,Zr、Zn、Al系の有機金属化合物錯体が好ましく、例えば、チタンジ−n−ブトキサイド(ビス2,4−ペンタジオネート)、ジルコニウム2,4−ペンタジオネート、亜鉛2,4−ペンタジオネート、アルミニウム(III)2,4−ペンタジオネートあるいはそれらの混合物等が例示される。またこれらを加水分解したものを縮合触媒類として使用することもできる。
【0051】
前記二官能性化合物類としては、アミノアルコール類、ジアミン類、グリコール類が好ましい。前記アミノアルコール類としては、例えばモノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノールあるいはそれらの混合物等が例示される。
【0052】
前記ジアミン類としては、例えばエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミンあるいはそれらの混合物等が例示される。
【0053】
前記グリコール類としては、例えばジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオールあるいはそれらの混合物が例示される。
【0054】
前記塩類としては、水酸化テトラアルキルアンモニウムが好ましく、具体的には水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、あるいはそれらの混合物のなかから選択される。
【0055】
上記異形化促進触媒を添加し、介在させることにより、前記親水性シリカ微粒子の核粒子の異形が促進され、異形シリカ微粒子が生成しやすくなる。
【0056】
前記(B)工程における異形化促進触媒の添加量は前記親水性シリカ微粒子の核粒子に含まれるSiO4/2単位100質量部に対し0.5〜150質量部添加するのが望ましい。より好ましくは2〜80質量部である。この量が0.5質量部以上であれば異形率が悪化することを抑制できるため好ましい。またこの量が150質量部以下であれば、粒子の凝集が発生したり、外添剤に使用した場合の帯電特性に与える悪影響を抑制できるため好ましい。
【0057】
−粒子を成長、異形化させる工程((C)工程)−
(C)工程は、前記(B)工程において異形化促進触媒を系内に添加した後、引き続き上記一般式(1)で示される4官能性シラン化合物及び該4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を更に添加していき、前記親水性シリカ微粒子の核粒子を成長し、異形化することで親水性異形シリカ微粒子を生成する工程である。
【0058】
(C)工程における前記親水性シリカ微粒子の核粒子成長・異形化時の加水分解反応において、上記一般式(1)で示される4官能性シラン化合物及び該4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の使用量は、(A)工程及び(C)工程で使用する全使用量に対して、好ましくは99.7〜85.0mol%、より好ましくは99.5〜93.0mol%である。
【0059】
(C)工程において使用される水の量は上記一般式(1)で示される4官能性シラン化合物及び該4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物に含まれるアルコキシ基のモル数に対して0.5〜5当量であることが好ましい。また、前記水と前記親水性有機溶媒の比率は、水を1として重量比で0.5〜10であることが好ましい。さらに、前記塩基性物質の量は上記一般式(1)で示される4官能性シラン化合物及び該4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物に含まれるアルコキシ基のモル数に対して0.01〜2当量であることが好ましい。
【0060】
前記親水性シリカ微粒子の核粒子を成長し、異形化する方法は、塩基性物質を含む親水性有機溶媒と水と核粒子の混合物中に、上記一般式(1)で示される4官能性シラン化合物及び該4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を添加し、加水分解及び縮合させることにより行われる。
【0061】
以上、各工程の反応温度を40〜100℃の範囲として、(A)工程から(C)工程を行うことにより、平均粒子径が5〜500nmの範囲の異形シリカ微粒子を製造することができる。これにより、球状でなく異形のシリカ微粒子であり、特に高分散性、低凝集性を有する異形シリカ微粒子であって、トナー外添剤として有用であり、トナーの流動性を改良することができ、更に粒子が不定形状の異形粒子であるため、付着性が高くトナー表面より脱離し遊離することが少なくなり、コピー上の画質欠陥の原因(フィルミング、その他)となることを抑制することができる異形シリカ微粒子を得ることができる。
【0062】
さらに、前記(C)異形シリカ微粒子を生成する工程の後、
(D)前記系内から親水性有機溶媒を除去して媒体を水に置換して、前記親水性異形シリカ微粒子の水分散液を得る工程と、
(E)前記親水性異形シリカ微粒子の水分散液中の前記親水性異形シリカ微粒子の表面にRSiO3/2単位[式中、Rは置換又は非置換の、炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である]を導入し、第一次疎水性異形シリカ微粒子を生成する工程と、
(F)更に、該第一次疎水性異形シリカ微粒子の表面にRSiO1/2単位[式中、Rは同一又は異なる、置換又は非置換の、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]を導入して第二次疎水性異形シリカ微粒子を生成する工程より異形シリカ微粒子を製造することで、特に高分散性、低凝集性を有する疎水性異形シリカ微粒子であって、トナー外添剤として有用であり、トナーの流動性を改良することができ、更に粒子が不定形状の異形粒子であるため、付着性が高くトナー表面より脱離し遊離することが少なくなり、コピー上の画質欠陥の原因(フィルミング、その他)となることを一層抑制することができる疎水性異形シリカ微粒子を生成することができる。以下、疎水化の各工程について詳しく説明する。
【0063】
−親水性異形シリカ微粒子の水分散液を得る工程((D)工程)−
(D)工程は、前記(C)工程により生成した親水性異形シリカ微粒子が分散する系内から親水性有機溶媒を除去して媒体を水に置換して、前記親水性異形シリカ微粒子の水分散液を得る工程である。系内から親水性有機溶媒を除去して媒体を水に置換する操作は、例えば、系内に水を添加し前記親水性有機溶媒を留去する操作(必要に応じてこの操作を繰り返す)により行うことができる。このときに添加される水の合計量は、(A)工程及び(C)工程で使用した親水性有機溶媒及び加水分解縮合反応により生成したアルコールの量の合計に対して、質量基準で、好ましくは2倍量を超える量、より好ましくは2.5〜3.5倍量、特に好ましくは3倍量である。
【0064】
このようにして得られる水分散液中の親水性異形シリカ微粒子は、(E)工程で第1段階の疎水化処理に供される。
【0065】
(D)工程で得られる水分散液の水の含有量は90質量%以上であることが好ましい。水分散液中の水の含有量が90質量%以上であれば、水分散液中の水の量が多いため、続く(E)工程において、ヒドロカルビルオキシ基の加水分解を十分に進行させることができ、親水性異形シリカ微粒子中の残存ヒドロカルビルオキシ基含量は少なくなるため好ましい。
【0066】
−親水性異形シリカ微粒子の表面疎水化処理((E)工程)−
(E)工程は、前記親水性異形シリカ微粒子の水分散液中の前記親水性異形シリカ微粒子の表面にRSiO3/2単位[式中、Rは置換又は非置換の、炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である]を導入し、第一次疎水性異形シリカ微粒子を生成する工程である。即ち、第1段階の疎水化処理を行う工程である。
【0067】
前記親水性異形シリカ微粒子の表面にRSiO3/2単位を導入する方法としては、例えば、上記親水性異形シリカ微粒子を含み、水の含有量が90質量%以上の水分散液に、
一般式(3):RSi(OR (3)
[式中、Rは置換又は非置換の、炭素原子数1〜20の1価炭化水素基であり、Rは同一又は異なる、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]
で示される3官能性シラン化合物、該3官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物、又は該3官能性シラン化合物と該部分加水分解縮合生成物との混合物を添加することで、前記親水性異形シリカ微粒子の表面にRSiO3/2単位[式中、Rは上記と同じである]を導入する方法が挙げられる。これにより、前記親水性異形シリカ微粒子の表面を処理して第1次疎水性異形シリカ微粒子を生成することができる。
【0068】
上記一般式(3)中、Rは置換又は非置換の、炭素原子数1〜20の1価炭化水素基であり、好ましくは炭素原子数1〜8、特に好ましくは1〜4の1価炭化水素基である。Rで表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基、フェニル基等が例示され、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、特に好ましくは、メチル基、エチル基が挙げられる。また、これらの1価炭化水素基の水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、好ましくはフッ素原子で置換されていてもよい。
【0069】
上記一般式(3)中、Rは同一又は異なる、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基であり、好ましくは炭素原子数1〜3、特に好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。Rで表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基等、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、特に好ましくは、メチル基、エチル基が挙げられる。
【0070】
上記一般式(3)で示される3官能性シラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン等、好ましくは、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等が例示され、より好ましくは、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランが挙げられる。また、該3官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物としては、例えばこれらの部分加水分解縮合生成物が挙げられる。
【0071】
上記一般式(3)で示される3官能性シラン化合物の添加量は、前記水分散液に含まれる親水性異形シリカ微粒子に含まれるSiO4/2単位1モル当り0.001〜1モル、好ましくは0.01〜0.1モル、特に好ましくは0.01〜0.05モルである。
【0072】
−疎水性異形シリカ微粒子の表面トリオルガノシリル化処理((F)工程)−
(F)更に、該第一次疎水性異形シリカ微粒子の表面にRSiO1/2単位[式中、Rは同一又は異なる、置換又は非置換の、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]を導入して第二次疎水性異形シリカ微粒子を生成する工程である。即ち、第2段階の疎水化処理を行う工程である。
【0073】
前記第一次疎水性異形シリカ微粒子の表面にRSiO1/2単位を導入する方法としては、例えば、前記第一次疎水性異形シリカ微粒子の分散媒である水分散液をケトン系溶媒に置換し、第一次疎水性異形シリカ微粒子のケトン系溶媒分散液を得、該第一次疎水性異形シリカ微粒子のケトン系溶媒分散液に
一般式(4):RSiNHSiR (4)
[一般式(4)中、Rは同一又は異なる、置換又は非置換の、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]
で示されるシラザン化合物、
一般式(5):RSiX (5)
[一般式(5)中、Rは上記と同じであり、XはOH基又は加水分解性基である]
で示される1官能性シラン化合物、又は該シラザン化合物と該1官能性シラン化合物との混合物を添加し、前記第一次疎水性異形シリカ微粒子の表面に残存する反応性基をトリオルガノシリル化することで、第一次疎水性異形シリカ微粒子の表面にRSiO1/2単位[式中、Rは上記と同じである]を導入する方法が挙げられる。これにより、第2次疎水性異形シリカ微粒子を生成することができる。
【0074】
上記一般式(4)及び(5)中、Rは同一又は異なる、置換又は非置換の、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基であり、好ましくは炭素原子数1〜4、特に好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。Rで表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のアルキル基等、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、特に好ましくは、メチル基、エチル基が挙げられる。また、これらの1価炭化水素基の水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、好ましくは、フッ素原子で置換されていてもよい。
【0075】
上記一般式(5)中、XはOH基又は加水分解性基であり、Xで表される加水分解性基としては、例えば、塩素原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、アミノ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基等のアシルオキシ基等、好ましくは、アルコキシ基、アミノ基、特に好ましくは、アルコキシ基が挙げられる。
【0076】
前記第一次疎水性異形シリカ微粒子の分散媒である水分散液をケトン系溶媒に置換する操作は、例えば該水分散液にケトン系溶媒を添加し、前記混合物から水又は混合溶媒を留去する操作(必要に応じてこの操作を繰り返す)により行うことができる。
【0077】
このとき添加されるケトン系溶媒の量は、前記第1次疎水性異形シリカ微粒子に対して質量比で0.5〜5倍量が好ましく、より好ましくは2〜5倍量、特に好ましくは3〜4倍量である。このケトン系溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等が挙げられ、より好ましくはメチルイソブチルケトンが挙げられる。
【0078】
上記一般式(4)で示されるシラザン化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン等が挙げられ、好ましくはヘキサメチルジシラザンが挙げられる。上記一般式(5)で示される1官能性シラン化合物としては、例えば、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール等のモノシラノール化合物、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン等のモノクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン、トリメチルシリルジメチルアミン、トリメチルシリルジエチルアミン等のモノアミノシラン、トリメチルアセトキシシラン等のモノアシルオキシシランが挙げられ、好ましくは、トリメチルシラノール、トリメチルメトキシシラン、トリメチルシリルジエチルアミン、特に好ましくは、トリメチルシラノール、トリメチルメトキシシランが挙げられる。
【0079】
これら上記一般式(4)及び上記一般式(5)の使用量は、ケトン系溶媒中の前記第1次疎水性異形シリカ微粒子に含まれるSiO単位1モルに対して0.05〜0.5モル、好ましくは0.1〜0.3モル、特に好ましくは0.15〜0.25モルである。
【0080】
(F)工程で得られる第2次疎水性異形シリカ微粒子は、常法によって粉体として得てもよいし、上記一般式(4)で示されるシラザン化合物、上記一般式(5)で示される1官能性シラン化合物、又は該シラザン化合物と該1官能性シラン化合物との混合物との反応後に有機化合物を添加して分散体として得てもよい。
【0081】
また、例えば上記で示したような(D)〜(F)工程による高度な疎水化処理を必要としない用途向けとして、異形シリカ粒子を取り出す場合、(C)工程に引き続き、一般的に知られているような常法、たとえばシリル化剤などを添加して疎水化処理を行ってもよい。
【0082】
<疎水性異形シリカ微粒子からなるトナー外添剤>
本発明により製造することができる異形シリカ微粒子、特に前記(D)〜(F)工程により生成した疎水性異形シリカ微粒子は、トナー外添剤等、特に静電荷像現像用トナー外添剤として好適に用いることができる。該疎水性異形シリカ微粒子からなる静電荷像現像用トナー外添剤のトナーに対する配合量は、トナー100質量部に対して、通常0.01〜20質量部であり、好ましくは0.1〜5質量部、特に好ましくは1〜2質量部である。この配合量が0.01質量部以上であれば、トナーへの付着量は十分で、十分な流動性が得られるため好ましく、20質量部以下であればトナーの帯電性に悪影響を及ぼすことが抑制できるため好ましい。
【0083】
前記疎水性異形シリカ微粒子のトナー粒子表面への付着状態は、単に機械的に付着していても、ゆるく固着されていてもよい。また、この付着した微粒子は、トナー粒子の表面全体を覆っていても、一部だけを覆っていてもよい。さらに、該微粒子は、その一部が凝集体を形成してトナー粒子の表面を覆っていてもよいが、単層粒子の状態で覆っていることが好ましい。
【0084】
本発明により製造することができる異形シリカ微粒子を適用可能なトナー粒子としては、結着樹脂と着色剤とを主成分として含有する公知のトナー粒子等が挙げられ、必要に応じて、さらに帯電制御剤等が添加されていてもよい。
【0085】
本発明により製造することができる異形シリカ微粒子からなるトナー外添剤を添加されたトナーは、例えば、電子写真法、静電記録法等により、静電荷像を現像するために使用される静電荷像現像用等に使用される。前記トナーは、一成分現像剤として使用することができるが、それをキャリアと混合し、二成分現像剤として使用することもできる。二成分現像剤として使用する場合には、上記トナー外添剤を予めトナー粒子に添加せず、トナーとキャリアとの混合時に添加してトナーの表面被覆を行ってもよい。該キャリアとしては、公知のもの、例えば、フェライト、鉄粉等、又は、それらの表面に樹脂コーティングされたもの等が使用できる。
【0086】
本発明により製造することができる疎水性異形シリカ微粒子からなるトナー外添剤は、トナーの流動性、耐ケーキング性、定着性、クリーニング性を高めるという外添剤の一般特性を有する上、特に高分散性、低凝集性を有し、異形粒子であるためトナー表面への吸着が良好であり、トナー表面より脱離し遊離することが少なくなり、コピー上の画質欠陥の原因(フィルミング、その他)となることがなく、高画質化を可能とするトナー外添剤となる。
【実施例】
【0087】
以下、本発明の異形シリカ微粒子の製造方法、及び静電荷像現像用トナー外添剤の実施例及び比較例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0088】
[疎水性異形シリカ微粒子の合成]
<実施例1>
攪拌機と、滴下ロートと、温度計とを備えた1リットルのガラス製反応器にメタノール264gと、水10.7gと、28質量%アンモニア水13.5gとを入れて混合した。この溶液を45℃となるように調整し、攪拌しながらテトラメトキシシラン10g(0.065mol)及び5.5質量%アンモニア水10gを同時に添加し始め、両方を20分で滴下した。その後45℃を保ちながら、30分間攪拌し、核粒子を生成した。そこに異形化促進触媒として、チタンジ−n−ブトキサイド(ビス2,4−ペンタジオネート)を過剰のアンモニア水で加水分解させたものの20%メタノール水溶液0.49gを添加した。その後、テトラメトキシシラン205.5g(1.35mol)、5.5質量%アンモニア水46.3gを同時に滴下し始め、テトラメトキシシラン、アンモニア水を3時間かけて、それぞれを滴下した。それらの滴下が終了した後も、さらに0.5時間攪拌を継続して加水分解を行うことにより、親水性異形シリカ微粒子の懸濁液を得た。
【0089】
次いで、ガラス製反応器にエステルアダプターと冷却管とを取り付け、前記懸濁液を60〜70℃に加熱してメタノール330gを留去し、その後、水330gを添加した。次いで、懸濁液が100℃になるまでメタノール水100g留去、水100g添加を3回繰り返し、さらにメタノール水100gを留去し、親水性異形シリカ微粒子の水懸濁液を得た。得られた水懸濁液に室温でメチルトリメトキシシラン2.1g(0.015mol)を0.5時間かけて滴下し、滴下後も12時間攪拌を継続した。こうして、シリカ微粒子表面を第1段階の疎水化処理することにより、第1次疎水性異形シリカ微粒子水分散液を得た。
【0090】
得られた分散液にメチルイソブチルケトン270gを添加した後、この分散液を80〜110℃に加熱することにより、水540gを5時間かけて留去した。得られた分散液に、室温において、ヘキサメチルジシラザン45.6g(0.28mol)を添加した後、この分散液を110℃に加熱し、3時間反応させることにより、分散液中のシリカ微粒子をトリメチルシリル化した。次いで、この分散液中の溶媒を80℃、減圧下(6650Pa)で留去することにより、疎水性異形シリカ微粒子95.0gを粉体として得た。
【0091】
得られた最終的な疎水性異形シリカ微粒子について、下記の測定方法に従って、それぞれの測定を行った。なお、得られた結果を表1に示す。
【0092】
・測定方法1:疎水性異形シリカ微粒子の粒子径測定
メタノールに実施例1で得られた疎水性異形シリカ微粒子を、0.5質量%となるように添加し、10分間超音波にかけることにより、該疎水性異形シリカ微粒子を分散させた。このように処理した疎水性異形シリカ微粒子の粒度分布を、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製、商品名:LA910)により測定し、その体積基準メジアン径を粒子径とした。なお、メジアン径とは粒径分布を累積分布として表したときの累積50%に相当する粒子径である。
【0093】
・測定方法2:疎水性異形シリカ微粒子の形状測定
電子顕微鏡(日立製作所製、商品名:S−4700型、倍率:10万倍)によって実施例1で得られた疎水性異形シリカ微粒子の観察を行い、形状を確認した。
【0094】
・測定方法3:異形シリカ微粒子の短径/長径比の測定・算出
短径/長径比の測定・算出は下記の方法で行った。まず、走査型電子顕微鏡により、実施例1で得られた疎水性異形シリカ微粒子を倍率50万倍(ないしは100万倍)で写真撮影して得られる写真投影図において、粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(L)とした。次に、その長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(S)とした。そして、これら長径(L)と短径(S)より短径/長径比(S/L)を算出することで求めた。この測定を任意の50個の粒子について行い、その平均値を短径/長径比とした。なお、ひとつの粒子について、長軸を複数設定可能な場合は、対応する複数の短径長さの平均値を求め、短径の長さ(S)とした。
【0095】
・測定方法4:異形シリカ微粒子の割合の測定
異形シリカ微粒子の割合の測定は、測定方法3の「短径/長径比の測定方法」にて短径/長径比の測定対象とした50個の粒子において、下記(i)に該当する粒子数を測定し、((i)の個数/50個)×100の値を、全シリカ微粒子の個数に対する異形シリカ微粒子の割合(%)とした。
(i)短径/長径比の範囲が0.01〜0.8の範囲にある粒子
【0096】
[外添剤混合トナーの作製]
ガラス転移温度Tg60℃、軟化点110℃であるポリエステル樹脂96質量部と、着色剤(住友カラー(株)製、商品名:カーミン6BC)4質量部とを、溶融混練、粉砕及び分級することにより、平均粒径7μmのトナーを得た。このトナー40gに実施例1で得られた疎水性異形シリカ微粒子1gをサンプルミルにより混合し、外添剤混合トナーとした。これを用いて、下記の測定方法5に従ってトナー流動性を測定した。なお、得られた結果を表2に示す。
【0097】
・測定方法5:トナー流動性の測定
トナーの流動性は、粉体流動性分析装置FT−4(シスメックス(株)製)を用いて測定した。この装置の測定原理を説明する。垂直に置かれた筒状容器に粉体を充填し、該粉体中を垂直な軸棒の先端に設けられた二枚の回転翼(ブレード)を回転させながら一定の距離(高さH1からH2まで)下降させる。このときに粉体から受ける力をトルク成分と荷重成分とに分けて測定することにより、ブレードがH1からH2まで下降するのに伴うそれぞれの仕事量(エネルギー)を求め、次いで両者のトータルエネルギー量を求める。こうして測定されたトータルエネルギー量が小さいほど粉体の流動性が良好であることを意味するので、粉体流動性の指標として使用することができる。
【0098】
トナーの流動性は上記の測定原理に従い、以下に詳細に説明する異なる測定条件を有する安定性試験、流速試験、通気試験、及び圧縮試験を行なった。なお、以下に説明するように、用いる容器とブレードはそれぞれの試験に応じて使い分けるものとする。
【0099】
容器:
安定性、流速及び通気の試験では、容積120ml、内径80mm、長さ60mmのガラス製円筒型容器を使用した。圧縮試験では容積25ml、内径25mm、長さ52.5mmのガラス製円筒型容器を使用した。容器の下部から空気を導入することができるように構成されている。
【0100】
ブレード:
円筒型容器内の中央に鉛直に装入されるステンレス製の軸棒の先端に水平に対向する形で二枚取り付けられている。ブレードは、容積120mlの容器の場合は直径48mmのものを使用し、容積25mlの容器の場合には直径23.5mlのものを使用する。
【0101】
H1からH2までの長さ:容積120mlの容器の場合は50mmであり、容積25mlの容器の場合には47.5mmである。
【0102】
安定性試験:
上記のようにして、測定容器に充填した粉体を静置した状態から流動させた場合の粉体流動特性をみる。ブレード先端の回転速度を100mm/secの条件とし、トータルエネルギー量を7回連続して測定する。7回目のトータルエネルギー量(最も安定した状態であるので基本流動性エネルギーと称される)を表2に示した。小さいほど安定性が高い。
【0103】
流速試験:
流速の変化に対する粉体流動特性をみる。ブレード先端の回転速度を10mm/secで測定した際のトータルエネルギー量を表2に示した。小さいほど流動性が高い。
【0104】
通気試験:
通気量に応じた粉体流動特性をみる。ブレード先端の回転速度を100mm/secとし、容器下部から導入する空気の通気量を0mm/secから0.1mm/secづつ増加させ0.5mm/secまでの6段階で別々に順序に測定し、最小の通気量(0mm/sec)及び最大の通気量(0.5mm/sec)でのトータルエネルギー量を表2に示した。小さいほど空気が関与する状態での粉体流動性が高い。
【0105】
圧縮試験:
圧縮に対する粉体流動特性をみるものである。粉体にピストンを介して加重を加えて10Nにて加圧して圧縮した後、ブレード先端の回転速度を100mm/secとして測定しトータルエネルギー量を求めた。結果を表2に示した。小さいほど粉体が圧縮を受けた場合の粉体流動性が高い。
【0106】
[現像剤の調製]
上で調製した外添剤混合トナー5質量部と、平均粒径85μmのフェライトコアにパーフルオロアルキルアクリレート樹脂及びアクリル樹脂をポリブレンドしたポリマーでコーティングしたキャリア95質量部とを混合して、現像剤を調製した。この現像剤を用いて、下記の測定方法6に従ってトナー帯電量の測定し、測定方法7に従って感光体へのトナー付着を測定し、及び測定方法8に従ってクリーニング性について判断した。なお、得られた結果を表2に示す。
【0107】
・測定方法6:トナー帯電量の測定
上記現像剤を高温高湿(30℃、90%RH(relative humidity))又は低温低湿(10℃、15%RH)の条件下に1日放置した後、振とう機により30秒間混合して、摩擦帯電を行った。それぞれの試料の帯電量を、同一条件下で、ブローオフ粉体帯電量測定装置(東芝ケミカル(株)製、商品名:TB−200型)を用いて測定した。上記2つの条件におけるトナー帯電量の差を求めることにより、該トナーの環境依存性について評価した。
【0108】
・測定方法7:感光体へのトナー付着測定
上記現像剤を有機感光体が備えられた二成分改造現像機に入れ、30000枚のプリントテストを行った。該感光体へのトナーの付着は、全ベタ画像での白抜けとして感知できる。白抜けの程度を次の基準で評価した。
白抜け10個以上/cm :多い
白抜け1〜9個/cm :少ない
白抜け0個/cm :なし
【0109】
・測定方法8:クリーニング性
クリーニング性評価については、実機評価終了後、潜像担持体上表面の傷や残留トナーの固着発生状況と出力画像への影響を目視で評価した。
◎ : 未発生。
○ : 傷がわずかに認められるが、画像への影響はない。
△ : 残留トナーや傷が認められるが、画像への影響は少ない。
× : 残留トナーがかなり多く、縦スジ状の画像欠陥が発生。
× × : 残留トナーが固着して、画像欠陥も多数発生。
【0110】
<実施例2>
実施例1において、工程(A)〜(C)の反応温度を55℃とした以外は同様にして、疎水性異形シリカ微粒子93.5gを乾燥粉体として得た。この疎水性異形シリカ微粒子を用いて実施例1と同様に測定した。この結果を表1及び表2に示す。
【0111】
<実施例3>
実施例1において用いた異形化促進触媒のチタンキレートの加水分解物(チタンジ−n−ブトキサイド(ビス2,4−ペンタジオネート)を過剰のアンモニア水で加水分解させたものの20%メタノール水溶液)を水酸化テトラメチルアンモニウムの20%水溶液1.95g(0.001mol)とした以外は同様にして、疎水性異形シリカ微粒子95.5gを乾燥粉体として得た。この疎水性異形シリカ微粒子を用いて実施例1と同様に測定した。この結果を表1及び表2に示す。
【0112】
<実施例4>
実施例1において用いた異形化促進触媒のチタンキレートの加水分解物(チタンジ−n−ブトキサイド(ビス2,4−ペンタジオネート)を過剰のアンモニア水で加水分解させたものの20%メタノール水溶液)をエチレンジアミンの0.20g(0.003mol)とし、更に工程(A)〜(C)の反応温度を60℃とした以外は同様にして、疎水性異形シリカ微粒子96.0gを乾燥粉体として得た。この疎水性異形シリカ微粒子を用いて実施例1と同様に測定した。この結果を表1及び表2に示す。
【0113】
<比較例1>
実施例1において、異形化促進触媒をなしとした以外は同様にして、疎水性シリカ微粒子94.8gを乾燥粉体として得た。この疎水性シリカ微粒子を用いて実施例1と同様に測定した。この結果を表1及び表2に示す。
【0114】
<比較例2>
実施例1において、工程(A)〜(C)の反応温度を35℃とした以外は同様にして、疎水性シリカ微粒子95.1gを乾燥粉体として得た。この疎水性シリカ微粒子を用いて実施例1と同様に測定した。この結果を表1及び表2に示す。
【0115】
<比較例3>
攪拌機と、滴下ロートと、温度計とを備えた1リットルのガラス製反応器にメタノール264gと、水13.5gと、28質量%アンモニア水13.5gとを入れて混合した。この溶液を45℃となるように調整し、攪拌しながらテトラメトキシシラン215.5g(1.42mol)及び5.5質量%アンモニア水53.6gを同時に添加し始め、テトラメトキシシラン、アンモニア水を4時間かけて、それぞれを滴下した。それらの滴下が終了した後も、さらに0.5時間攪拌を継続して加水分解を行うことにより、親水性シリカ微粒子の懸濁液を得た。次いで、ガラス製反応器にエステルアダプターと冷却管とを取り付け、前記懸濁液を60〜70℃に加熱してメタノール330gを留去し、その後、水330gを添加した。次いで、懸濁液が100℃になるまでメタノール水100g留去、水100g添加を3回繰り返し、さらにメタノール水100gを留去し、親水性シリカ微粒子の水懸濁液を得た。
【0116】
得られた水懸濁液に室温でメチルトリメトキシシラン2.1g(0.015mol)を0.5時間かけて滴下し、滴下後も12時間攪拌を継続した。こうして、シリカ微粒子表面を第1段階の疎水化処理することにより、第1次疎水性シリカ微粒子水分散液を得た。
得られた分散液にメチルイソブチルケトン270gを添加した後、この分散液を80〜110℃に加熱することにより、水540gを5時間かけて留去した。得られた分散液に、室温において、ヘキサメチルジシラザン45.6g(0.28mol)を添加した後、この分散液を110℃に加熱し、3時間反応させることにより、分散液中のシリカ微粒子をトリメチルシリル化した。次いで、この分散液中の溶媒を80℃、減圧下(6650Pa)で留去することにより、疎水性シリカ微粒子96.3gを粉体として得た。この疎水性シリカ微粒子を用いて、実施例1と同様に評価した。この結果を表1及び表2に示す。
【0117】
【表1】

【0118】
【表2】

(1)7回目
(2)ブレードスピード 10mm/s
(3)通気量 0mm/s
(4)通気量 0.5mm/s
(5)加圧 10N
【0119】
本発明の(B)工程を行わない比較例1、反応温度が40〜100℃の範囲にない比較例2、(B)工程及び(C)工程を行わない比較例3において示されるように、これら比較例において生成されたシリカ微粒子は異形シリカ微粒子とはならないことが明らかとなった(表1)。また、比較例1〜3において得られたシリカ微粒子は安定性試験、流速試験、通気試験、圧縮試験において粉体流動性に劣ることが明らかとなり、さらにトナー帯電量の測定よりトナーの環境依存性が悪くなることが示され、白抜けが多いことからトナー付着性が悪いことが示され、クリーニング性が悪いことも示された(表2)。特に、(B)工程を行わない比較例1及び3ではトナー付着性とクリーニング性が悪くなることが明らかとなった。また、反応温度が40〜100℃の範囲にない比較例2では通気試験の結果が著しく悪かった。一方で、実施例において示されるように、本発明の(A)から(F)工程により生成された異形シリカ微粒子は安定性試験、流速試験、通気試験、圧縮試験において粉体流動性に優れ、環境に依存したトナー帯電量の差がほとんどなく、トナー付着性、クリーニング性に優れていることが明らかとなった。
【0120】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が5〜500nmの範囲の異形シリカ微粒子を製造する方法であって、
下記各工程の反応温度を40℃〜100℃の範囲内とし、
(A)一般式(1):Si(OR (1)
[上記一般式(1)中、Rは同一又は異なる、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]
で示される4官能性シラン化合物及び該4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を、塩基性物質の存在下で親水性有機溶媒と水との混合媒体中で加水分解、縮合して、親水性シリカ微粒子の核粒子を生成する工程と、
(B)異形化促進触媒を系内に添加する工程と、
(C)引き続き、前記一般式(1)で示される4官能性シラン化合物及び該4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を系内に更に添加し、前記親水性シリカ微粒子の核粒子を成長し、異形化することで親水性異形シリカ微粒子を生成する工程とを有することを特徴とする異形シリカ微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記異形化促進触媒として、縮合触媒類、二官能性化合物類、塩類のいずれかを用いることを特徴とする請求項1に記載の異形シリカ微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記縮合触媒類として、Ti、Zr、Zn、Al系の有機金属化合物錯体のいずれかを用いることを特徴とする請求項2に記載の異形シリカ微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記塩類として、水酸化テトラアルキルアンモニウム化合物を用いることを特徴とする請求項2に記載の異形シリカ微粒子の製造方法。
【請求項5】
前記二官能性化合物類として、アミノアルコール類、ジアミン類、グリコール類のいずれかを用いることを特徴とする請求項2に記載の異形シリカ微粒子の製造方法。
【請求項6】
前記親水性有機溶媒として、
一般式(2):ROH (2)
[一般式(2)中、Rは炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]
で示されるアルコール溶媒を用いることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の異形シリカ微粒子の製造方法。
【請求項7】
前記塩基性物質としてアンモニアを用いることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の異形シリカ微粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の異形シリカ微粒子の製造方法において、前記(C)異形シリカ微粒子を生成する工程の後、
(D)前記系内から親水性有機溶媒を除去して媒体を水に置換して、前記親水性異形シリカ微粒子の水分散液を得る工程と、
(E)前記親水性異形シリカ微粒子の水分散液中の前記親水性異形シリカ微粒子の表面にRSiO3/2単位[式中、Rは置換又は非置換の、炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である]を導入し、第一次疎水性異形シリカ微粒子を生成する工程と、
(F)更に、該第一次疎水性異形シリカ微粒子の表面にRSiO1/2単位[式中、Rは同一又は異なる、置換又は非置換の、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]を導入して第二次疎水性異形シリカ微粒子を生成する工程とを有することを特徴とする異形シリカ微粒子の製造方法。
【請求項9】
前記(E)工程において、前記親水性異形シリカ微粒子の水分散液に、
一般式(3):RSi(OR (3)
[式中、Rは置換又は非置換の、炭素原子数1〜20の1価炭化水素基であり、Rは同一又は異なる、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]
で示される3官能性シラン化合物、該3官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物、又は該3官能性シラン化合物と該部分加水分解縮合生成物との混合物を添加することで、前記親水性異形シリカ微粒子の表面にRSiO3/2単位[式中、Rは上記と同じである]を導入し、第1次疎水性異形シリカ微粒子を生成することを特徴とする請求項8に記載の異形シリカ微粒子の製造方法。
【請求項10】
前記(F)工程において、前記第一次疎水性異形シリカ微粒子の分散媒である水分散液をケトン系溶媒に置換し、第一次疎水性異形シリカ微粒子のケトン系溶媒分散液を得、該第一次疎水性異形シリカ微粒子のケトン系溶媒分散液に
一般式(4):RSiNHSiR (4)
[一般式(4)中、Rは同一又は異なる、置換又は非置換の、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]
で示されるシラザン化合物、
一般式(5):RSiX (5)
[一般式(5)中、Rは上記と同じであり、XはOH基又は加水分解性基である]
で示される1官能性シラン化合物、又は該シラザン化合物と該1官能性シラン化合物との混合物を添加し、前記第一次疎水性異形シリカ微粒子の表面に残存する反応性基をトリオルガノシリル化することで、第一次疎水性異形シリカ微粒子の表面にRSiO1/2単位[式中、Rは上記と同じである]を導入して第二次疎水性異形シリカ微粒子を生成することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の異形シリカ微粒子の製造方法。
【請求項11】
前記ケトン系溶媒が、メチルイソブチルケトンであることを特徴とする請求項10に記載の異形シリカ微粒子の製造方法。
【請求項12】
請求項8乃至請求項11のいずれか1項に記載の異形シリカ微粒子の製造方法により製造された疎水性異形シリカ微粒子からなる静電荷像現像用トナー外添剤。

【図1】
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【公開番号】特開2012−101953(P2012−101953A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249529(P2010−249529)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】