異形樹脂粒子、その製造方法、およびその用途
【課題】光拡散性、密着性、吸油性等の特性を向上できる新規な形状の異形樹脂粒子、その製造方法、およびその用途を提供する。
【解決手段】異形樹脂粒子は、異形樹脂粒子の表層を形成する樹脂層1と、樹脂層1とは異なる樹脂成分からなり、樹脂層1の内部に形成された樹脂コア2とを含む異形樹脂粒子であって、単一の窪み3を有し、樹脂コア2が、楕円体形状であり、かつ窪み3に隣接しており、異形樹脂粒子の長径Aに対する異形樹脂粒子の短径Bの比B/Aが、0.7以上である。異形樹脂粒子の製造方法は、0.1〜5質量%の多官能性単量体を含むフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合して樹脂粒子を製造する第1の工程と、第1の工程で得られた樹脂粒子に、1〜50質量%の多官能性単量体を含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体を吸収させた後、重合する第2の工程とを含んでいる。
【解決手段】異形樹脂粒子は、異形樹脂粒子の表層を形成する樹脂層1と、樹脂層1とは異なる樹脂成分からなり、樹脂層1の内部に形成された樹脂コア2とを含む異形樹脂粒子であって、単一の窪み3を有し、樹脂コア2が、楕円体形状であり、かつ窪み3に隣接しており、異形樹脂粒子の長径Aに対する異形樹脂粒子の短径Bの比B/Aが、0.7以上である。異形樹脂粒子の製造方法は、0.1〜5質量%の多官能性単量体を含むフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合して樹脂粒子を製造する第1の工程と、第1の工程で得られた樹脂粒子に、1〜50質量%の多官能性単量体を含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体を吸収させた後、重合する第2の工程とを含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散シート(光拡散フィルム)、光拡散板、照明カバー(LED照明用照明カバー等)等の光拡散部材(光拡散体)を構成する光拡散剤;塗料の原料(例えば、塗膜軟質化剤、塗料用艶消し剤等の添加剤);紙用コーティング剤(紙用コート剤)、光拡散部材用コーティング剤等の光拡散性コーティング剤を構成する光拡散剤;防眩フィルムを構成する光拡散剤;化粧品等の外用剤の原料(例えば滑り性向上剤等の添加剤)等として用いることができる異形樹脂粒子、その製造方法、およびその用途(外用剤、塗料、および光拡散部材)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、シード重合により製造された異形の樹脂粒子が知られている。例えば、特許文献1の比較例5および特許文献2の比較例1には、ダルマ状の重合体粒子が記載されている。
【0003】
また、特許文献3には、形状が繭状のポリマー粒子が記載されている。また、特許文献3には、この形状が繭状のポリマー粒子が、塗料や化粧品に添加して、それらに粘性特性、光散乱特性、その他独特の表面特性を付与するのに効果的であることが記載されている。
【0004】
また、特許文献4には、直径方向に連通する1つの切り欠き部を有する断面凹状、キノコ状、半球状又は両面レンズ状の形状を備えた重合体粒子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−120005号公報
【特許文献2】特開2011−63758号公報
【特許文献3】特開2008−163171号公報
【特許文献4】国際公開第2010/113812号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来公知の異形樹脂粒子は、上述したような形状に限られており、必ずしも所望の特性(光拡散性、密着性、吸油性等)を有するとは限らないので、さらなる改善の余地がある。新規な形状の異形樹脂粒子を提供できれば、異形樹脂粒子の光拡散性、密着性、吸油性等の特性を向上させることが可能と考えられる。
【0007】
また、特許文献1〜4には、樹脂コアが楕円体形状で偏在した異形樹脂粒子は開示されていない。このような樹脂コアが楕円体形状で偏在した異形樹脂粒子を提供できれば、異形樹脂粒子の光拡散性等の特性を向上できると考えられる。
【0008】
本発明の目的は、光拡散性、密着性、吸油性等の特性を向上できる新規な形状の異形樹脂粒子およびその製造方法、並びに、保湿性に優れた外用剤、耐傷付き性に優れた塗膜を形成可能な塗料、および光拡散性に優れた光拡散部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の異形樹脂粒子は、異形樹脂粒子の表層を形成する樹脂層と、前記樹脂層とは異なる樹脂成分からなり、前記樹脂層の内部に形成された樹脂コアとを含む異形樹脂粒子であって、単一の窪みを有し、前記樹脂コアが、楕円体形状であり、かつ前記窪みに隣接しており、前記異形樹脂粒子の長径Aに対する前記異形樹脂粒子の短径Bの比B/Aが、0.7以上であることを特徴としている。
【0010】
上記構成の異形樹脂粒子は、窪みを有しているために、比表面積が大きく、種々の用途で有利な効果が得られる。
【0011】
例えば、異形樹脂粒子をバインダー(接着剤)と混合して(光学フィルム用途などの)コーティング剤あるいは塗料を製造したときに、異形樹脂粒子の比表面積が大きいと、バインダーとの接触面積が広くなるので、バインダーに対する密着性が向上する。従って、前記コーティング剤あるいは塗料を被塗布面に塗布したときに、コーティング剤あるいは塗料の塗膜から脱落しにくくなり、耐傷付き性に優れたコーティングあるいは塗膜を形成できる。
【0012】
また、異形樹脂粒子を化粧品等の外用剤に添加したときに、異形樹脂粒子の比表面積が大きいと、吸油量が増えるので、化粧品等の外用剤の吸油性を向上できる。また、異形樹脂粒子の吸油性が高いことにより、外用剤への馴染み性を向上できる。
【0013】
また、異形樹脂粒子の比表面積が大きいことで、光拡散シート、光拡散板、照明カバー等の光拡散部材を構成する光拡散剤として異形樹脂粒子を用いたときに、光を屈折または反射させる異形樹脂粒子の(他の物質との)界面が広くなるので、光拡散性が向上する。
【0014】
また、上記構成の異形樹脂粒子は、異形樹脂粒子の長径Aに対する異形樹脂粒子の短径Bの比B/Aが0.7以上であり、表面の形状が球形に近いので、表面の摩擦抵抗が小さく滑り性が良いので、異形樹脂粒子を化粧品等の外用剤に添加したときに、触感が向上する。
【0015】
さらに、上記構成の異形樹脂粒子は、樹脂層とは異なる樹脂成分からなり、樹脂層の内部に形成された樹脂コアを有するので、樹脂層と樹脂コアとの界面で光の屈折が起こり易い。そして、樹脂コアは、窪みに隣接しているために大きく偏在しており、かつ、楕円体形状であるので、樹脂コアを囲む樹脂層の厚みは、窪みから離れるに従って厚くなる。これにより、樹脂層と樹脂コアとの界面での屈折の仕方(屈折角など)は、異形樹脂粒子への光の入射方向によって異なるものとなる。その結果、(複数の)異形樹脂粒子は、同じ方向からの光が入射しても、不均一な光拡散をする。したがって、上記構成の異形樹脂粒子は、光を屈折しやすく、光拡散シート、光拡散板、照明カバー等の光拡散部材を構成する光拡散剤として異形樹脂粒子を用いたときに、光拡散性が向上する。
【0016】
以上のように、本発明の異形樹脂粒子によれば、光拡散性、密着性、吸油性等の特性を向上できる。
【0017】
なお、本明細書において、「樹脂コアが窪みに隣接している」とは、窪みの部分における異形樹脂粒子表面と樹脂コアとの距離が、異形樹脂粒子の短径Bと樹脂コアの短径との差の半分よりも小さいことを意味するものとする。また、本明細書において、「楕円体形状」とは、球の形状、または、球ではない楕円体の形状を意味するものとする。また、本明細書において、「楕円体形状」は、楕円体の一部が欠けた形状をも包含するものとする。
【0018】
本発明の異形樹脂粒子の製造方法は、0.1〜5質量%の多官能性単量体を含むフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合して樹脂粒子を製造する第1の工程と、
第1の工程で得られた樹脂粒子に、1〜50質量%の多官能性単量体を含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体を吸収させた後、重合する第2の工程とを含むことを特徴としている。
【0019】
上記方法によれば、多官能性単量体を0.1質量%以上含むフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合させることによって樹脂粒子を得るので、得られる樹脂粒子は、架橋構造としての特性を十分に示す重合体である。これにより、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を樹脂粒子に吸収させたときに、(メタ)アクリル酸エステル系単量体が、樹脂粒子から相分離し易くなり、また、樹脂粒子の形状が維持され易くなる。また、上記方法によれば、多官能性単量体を5質量%以下で含むフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合させることによって樹脂粒子を得るので、得られる樹脂粒子は、比較的架橋度が低い架橋構造を有する重合体である。これにより、(メタ)アクリル酸エステル系単量体が、樹脂粒子に十分に吸収される。
【0020】
また、上記方法によれば、前記第2の工程における多官能性単量体の使用量が、(メタ)アクリル酸エステル系単量体の全量に対して1〜50質量%の範囲内であるので、(メタ)アクリル酸エステル系単量体が重合したときに樹脂粒子から相分離し易いと推察される。
【0021】
以上のように、上記方法によれば、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を樹脂粒子に吸収させたときに、(メタ)アクリル酸エステル系単量体が樹脂粒子に十分に吸収され、(メタ)アクリル酸エステル系単量体およびその重合体が樹脂粒子から相分離し易く、樹脂粒子の形状が維持され易い。これらの相乗効果により、相分離によって、単一の窪みを有し、樹脂コアが、窪みに隣接して存在し、球形に近い異形樹脂粒子、特に、長径Aに対する短径Bの比B/Aが0.7以上である本発明の異形樹脂粒子を製造することができる。
【0022】
さらに、上記方法では、多官能性単量体を含むフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合させて得られた樹脂粒子(すなわち架橋した種粒子)に多官能性単量体を含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体を吸収させて重合を行うので、特許文献4の実施例1〜17に記載されているような非架橋の種粒子に単量体を吸収させてシード重合を行う方法と比較して、種粒子に由来する部分の架橋度の高い異形樹脂粒子を得ることができる。それゆえ、上記方法によって得られる異形樹脂粒子は、溶剤に入れたときに種粒子に由来する部分がブリードアウトして溶出することが低減される。溶出が低減される結果、溶剤と混合して塗料またはコーティング剤とした場合、溶出による粘度の上昇によって塗工しづらくなったり、溶出により塗膜が不均質となったりすることを回避することができる。また、上記方法によって得られる異形樹脂粒子は、他の用途、例えば成形品や外用剤等に使用した場合でも、溶剤と混合したときに成分が溶出して特性が劣化することを回避でき、高い耐溶剤性を有する。従って、上記方法によって得られる異形樹脂粒子は、幅広い用途において有利な特性を有している。
【0023】
ここで、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートを意味するものとする。
【0024】
また、本明細書において、「(メタ)アクリル酸エステル系単量体」は、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする(50質量%以上含む)単量体を意味するものとする。
【0025】
なお、特許文献1〜4に記載の粒子の製造方法では、本発明に係る特有の形状を有する異形樹脂粒子を得ることが不可能である。
【0026】
まず、特許文献1の請求項1に記載の粒子の製造方法では、特許文献1の段落[0013]に記載されているように、シード重合活性点に単量体および架橋剤を均等に供給するものであるので、真球状の重合体粒子が得られる。同様に、特許文献2の請求項5に記載の粒子の製造方法でも、特許文献2の段落[0009]に記載されているように、真球状の重合体粒子が得られる。
【0027】
また、特許文献1の比較例5に記載の粒子の製造方法、および特許文献2の比較例1に記載の粒子の製造方法は、メチルメタクリレートと架橋性単量体とを共重合させて得られた樹脂粒子に単量体を吸収させてシード重合を行うので、多官能性単量体を含むフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合させて得られた樹脂粒子に単量体を吸収させてシード重合を行う本願発明の製造方法と比較して種粒子と単量体との間での相分離が起こりにくいため、ダルマ状の異形樹脂粒子しか得られない。
【0028】
また、特許文献3の請求項に記載の粒子の製造方法は、メチルメタクリレート等と架橋性単量体とを共重合させて得られた樹脂粒子に単量体を吸収させてシード重合を行うので、多官能性単量体を含むフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合させて得られた樹脂粒子に単量体を吸収させてシード重合を行う本願発明の製造方法と比較して種粒子と単量体との間での相分離が起こりにくいため、繭状の異形樹脂粒子しか得られない。
【0029】
また、特許文献4の実施例1〜17に記載の粒子の製造方法は、メチルメタクリレートの重合および分岐アルキルメタクリレートの重合により得られた非架橋の種粒子に単量体を吸収させてシード重合を行うので、多官能性単量体を含むフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合させて得られた樹脂粒子(すなわち架橋した種粒子)に単量体を吸収させてシード重合を行う本願発明の製造方法と比較して、種粒子の球形に由来する球形樹脂部分が内部に形成されにくく、また、本願発明の製造方法とは異なる形態で相分離が起こるため、直径方向に連通する1つの切り欠き部を有する断面凹状、キノコ状、半球状又は両面レンズ状の形状を備えた異形樹脂粒子しか得られない。
【0030】
本発明の外用剤は、本発明の異形樹脂粒子を含むことを特徴としている。
【0031】
上記構成によれば、樹脂粒子が吸油性に優れているため、保湿性に優れた外用剤を提供することができる。
【0032】
本発明の塗料は、本発明の異形樹脂粒子を含むことを特徴としている。
【0033】
上記構成によれば、樹脂粒子が密着性に優れており、塗膜から脱落しにくいため、耐傷付き性に優れた塗膜を形成可能な塗料を提供することができる。
【0034】
本発明の光拡散部材は、本発明の異形樹脂粒子を含むことを特徴としている。
【0035】
上記構成によれば、樹脂粒子が光拡散性に優れているため、光拡散性に優れた光拡散部材を提供することができる。
【発明の効果】
【0036】
以上のように、本発明によれば、光拡散性、密着性、吸油性等の特性を向上できる新規な形状の異形樹脂粒子およびその製造方法を提供することができる。
【0037】
また、本発明によれば、保湿性に優れた外用剤、耐傷付き性に優れた塗膜を形成可能な塗料、および光拡散性に優れた光拡散部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例に係る異形樹脂粒子を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の他の実施例で得られた異形樹脂粒子の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像することにより得られたSEM画像である。
【図3】本発明の他の実施例で得られた異形樹脂粒子の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で撮像することにより得られたTEM画像である。
【図4】本発明のさらに他の実施例で得られた異形樹脂粒子の表面をSEMで撮像することにより得られたSEM画像である。
【図5】比較例で得られた異形樹脂粒子の表面をSEMで撮像することにより得られたSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0040】
〔異形樹脂粒子〕
本発明の異形樹脂粒子の形状について、図1に基づいてさらに詳細に説明する。
【0041】
本発明の異形樹脂粒子は、例えば図1に示すように、異形樹脂粒子の表層を形成する樹脂層1と、樹脂層1の内部に形成された樹脂コア2とを含む異形樹脂粒子であって、単一の窪み3を有し、樹脂コア2が、楕円体形状であり、かつ窪み3に隣接している。また、樹脂コア2は樹脂層1とは異なる樹脂成分からなり、異形樹脂粒子の長径Aに対する異形樹脂粒子の短径Bの比B/Aは0.7以上である。なお、樹脂コア2の形状は、完全な楕円体形状でなくともよく、ほぼ楕円体形状であればよい。
【0042】
異形樹脂粒子の長径Aに対する異形樹脂粒子の短径Bの比B/Aは、0.7〜0.9の範囲内である(0.7以上0.9以下である)ことが好ましく、0.8〜0.9の範囲内であることがより好ましい。比B/Aが0.7未満である場合、異形樹脂粒子の形状が球形から遠くなり半球形に近くなるので、滑り性などの面で性能が落ちる。比B/Aが0.9を超える場合、窪み3の深さが浅くなり、異形樹脂粒子の比表面積が真球の樹脂粒子に近くなるので、樹脂粒子の形状が真球である場合に対する光拡散性、密着性、吸油性等の特性の向上効果が小さくなる。
【0043】
異形樹脂粒子の長径Aに対する窪み3の径(異形樹脂粒子の長径方向における径)Cの比C/Aは、0.1〜0.4の範囲内であることが好ましい。比C/Aが0.1未満である場合、窪み3の径(幅)Cが小さくなり、異形樹脂粒子の比表面積が真球の樹脂粒子に近くなるので、樹脂粒子の形状が真球である場合に対する光拡散性、密着性、吸油性等の特性の向上効果が小さくなる。また、比C/Aが0.4を超える場合、窪み3の径Cが大きくなることで、異形樹脂粒子の形状が球形から遠くなり半球状に近くなるので、滑り性などを向上させる効果が小さくなる。
【0044】
前記異形樹脂粒子の長径Aに対する樹脂コア2の長径Dの比D/Aは、0.2〜0.7の範囲内であることが好ましい。比D/Aが0.2未満である場合、樹脂コア2の径が小さくなり、樹脂層1と樹脂コア2との界面での屈折が起こりにくくなるので、光拡散性を向上させる効果が小さくなる。比D/Aが0.7を超える場合、樹脂層1の厚みが薄くなり、不均一な光拡散が起こりにくくなるので、光拡散性を向上させる効果が小さくなる。
【0045】
本発明の異形樹脂粒子は、比B/Aが0.7〜0.9の範囲内であり、比C/Aが0.1〜0.4の範囲内であり、かつ、比D/Aが0.2〜0.7の範囲内である場合に、異形樹脂粒子全体の形状が球形からより遠い形状となるので、光拡散性、密着性、吸油性等、滑り性の特性を向上できる。
【0046】
樹脂コア2の長径Dに対する樹脂コア2の短径Eの比E/Dは、0.7以上であることが好ましい。比E/Dが0.7未満である場合、樹脂コア2の形状が球形から遠くなり、樹脂層1と樹脂コア2との界面での屈折が起こりにくくなるので、光拡散性を向上させる効果が小さくなる。
【0047】
本発明の異形樹脂粒子は、粒子径の変動係数が15%以下であることが好ましい。これにより、異形樹脂粒子の特性の(粒子間での)均一性が向上する。従って、本発明の異形樹脂粒子を用いて光拡散部材、外用剤、塗料等の製品を作製した場合に、光学特性等の特性が均一な、光拡散部材、外用剤、塗料等の製品が得られる。
【0048】
本発明の異形樹脂粒子は、平均粒子径が0.5〜50μmの範囲内であることが好ましい。これにより、各種用途に適した粒子となる。本発明の異形樹脂粒子は、防眩フィルムの構成要素(光拡散剤)として用いる場合、平均粒子径が1.5〜8μmの範囲内であることがより好ましい。これにより、良好な防眩性を有する防眩フィルムを実現できる。また、本発明の異形樹脂粒子は、光拡散部材の構成要素(光拡散剤)として用いる場合、平均粒子径が1〜50μmの範囲内であることがより好ましく、平均粒子径が3〜10μmの範囲内であることがさらに好ましい。これにより、良好な光拡散性を有する光拡散部材を実現できる。また、本発明の異形樹脂粒子は、外用剤の原料として用いる場合、平均粒子径が1〜50μmの範囲内であることが好ましい。これにより、良好な外用剤を実現できる。また、本発明の異形樹脂粒子は、紙用コーティング剤として用いる場合、平均粒子径が0.5〜10μmの範囲内であることが好ましい。これにより、良好な紙用コーティング剤を実現できる。また、上記構成の異形樹脂粒子は、平均粒子径が1〜10μmの範囲内である場合、特に1〜3μm程度である場合に、異形樹脂粒子の形状を所望の異形形状に制御することが容易となり、異形樹脂粒子の製造が容易となる。
【0049】
樹脂層1および樹脂コア2は、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなることが好ましい。これにより、耐候性に優れた異形樹脂粒子を実現できる。なお、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とは、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする(50質量%以上含む)単量体を重合させてなる樹脂を意味する。
【0050】
樹脂層1は、樹脂層1の全質量に対して1〜50質量%の多官能性単量体で架橋されたものであることが好ましい。これにより、異形樹脂粒子の耐溶剤性を向上できる。なお、樹脂層1の全質量に対して1〜50質量%の多官能性単量体で架橋された樹脂層1は、1〜50質量%の多官能性単量体と単官能性単量体とを含む単量体混合物を重合することにより得られる。
【0051】
樹脂コア2は、樹脂コア2の全質量に対して0.1〜5質量%の多官能性単量体で架橋されたフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなることが好ましい。樹脂コア2が0.1〜5質量%の多官能性単量体で架橋されていることにより、溶剤に入れたときに種粒子に由来する部分がブリードアウトして溶出することが低減される。また、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂がフッ素を含有することにより、本発明に特有の異形形状を実現しやすくなるので、製造が容易となる。さらに、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂がフッ素を含有することにより、樹脂コア2の屈折率が低下するので、樹脂層1と樹脂コア2との界面での屈折が起こり易くなり、光拡散性が向上する。なお、樹脂コア2の全質量に対して0.1〜5質量%の多官能性単量体で架橋されたフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は、0.1〜5質量%の多官能性単量体と(単官能性の)フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体とを含む単量体混合物を重合することにより得られる。
【0052】
〔異形樹脂粒子の製造方法〕
本発明に係る異形樹脂粒子の製造方法は、多官能性単量体0.1〜5質量%を含むフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体(以下「フッ素含有単量体混合物」と呼ぶ)100質量部を重合して樹脂粒子を製造する第1の工程と、第1の工程で得られた樹脂粒子に、1〜50質量%の多官能性単量体を含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体(以下「(メタ)アクリル系単量体混合物」と呼ぶ)を吸収させた後、重合する第2の工程、すなわちシード重合工程とを含んでいる。この方法により、本発明の異形樹脂粒子を高い確実性で製造することができる。
【0053】
〔種粒子製造工程〕
第1の工程は、シード重合工程で(メタ)アクリル系単量体混合物を吸収させるのに用いる樹脂粒子、すなわち種粒子を製造する工程である。第1の工程では、(メタ)アクリル酸エステルの重合体の非存在下で、または、(メタ)アクリル酸エステルの重合体の存在下で、多官能性単量体0.1〜5質量%を含むフッ素含有単量体混合物を重合して種粒子を得る。
【0054】
前記フッ素含有単量体混合物は、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステルと、多官能性単量体とを少なくとも含んでいる。前記フッ素含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート(例えば、大阪有機化学工業株式会社製の「ビスコートV−3F」)、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート(例えば、大阪有機化学工業株式会社製の「ビスコートV−3F M」)、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート(例えば、大阪有機化学工業株式会社製の「ビスコートV−4F」)、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート(例えば、大阪有機化学工業株式会社製の「ビスコートV−8F」)、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート(例えば、大阪有機化学工業株式会社製の「ビスコートV−8F M」)などが挙げられる。これら化合物は、一種を用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0055】
前記フッ素含有(メタ)アクリル酸エステルは、フッ素含有単量体混合物に対して99.9質量%以下の範囲内で使用されるが、フッ素含有単量体混合物に対して75〜99.9質量%の範囲内で使用されることがより好ましく、フッ素含有単量体混合物に対して90〜99.9質量%の範囲内で使用されることがさらに好ましい。フッ素含有(メタ)アクリル酸エステルで75質量%以上が構成されたフッ素含有単量体混合物を重合して樹脂粒子を製造し、(メタ)アクリル系単量体混合物を樹脂粒子に吸収させたときに、(メタ)アクリル系単量体混合物が樹脂粒子から相分離し易くなり、本発明に特有の異形形状が得られ易くなる。
【0056】
前記多官能性単量体は、重合可能なアルケニル基(広義のビニル基)を1分子中に2つ以上有する化合物である。前記多官能性単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。前記多官能性単量体は、重合可能なアルケニル基と他の重合可能なアルケニル基との間に、炭素数4以上の二価の直鎖炭化水素基を含んでいないことが好ましい。前記多官能性単量体が、重合可能なアルケニル基と他の重合可能なアルケニル基との間に炭素数4以上の二価の直鎖炭化水素基を含んでいる場合、種粒子と(メタ)アクリル系単量体混合物との相分離が起こりにくくなり、本発明に特有の異形形状が得られにくくなるので、好ましくない。
【0057】
前記多官能性単量体は、フッ素含有単量体混合物100質量部に対して0.1〜5質量部の範囲内で使用されるが、フッ素含有単量体混合物100質量部に対して0.1〜3質量部の範囲内で使用されることがより好ましい。多官能性単量体をフッ素含有単量体混合物100質量部に対して0.1質量部以上とすることで、種粒子と(メタ)アクリル系単量体混合物との相分離がさらに起こり易くなり、本発明に特有の異形形状が得られ易くなる。なお、多官能性単量体が、フッ素含有単量体混合物100質量部に対して5質量部を超える場合、種粒子の架橋度が高くなり過ぎて種粒子が(メタ)アクリル系単量体混合物を吸収しにくくなり、(メタ)アクリル系単量体混合物が種粒子に吸収されることなく重合する現象が起こる。そのため、この場合、微小な粒子が多く生成されて、粒子径の変動係数(CV値)が大きくなるので、好ましくない。
【0058】
前記フッ素含有単量体混合物は、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル以外の単官能性単量体を含んでいてもよい。前記単官能性単量体は、重合可能なアルケニル基(広義のビニル基)を1分子中に1つのみ有する化合物である。フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル以外の単官能性単量体としては、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル以外の単官能性(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル以外の単官能性(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら化合物は、一種を用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル以外の単官能性単量体の使用量は、前記フッ素含有単量体混合物100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。
【0059】
前記フッ素含有単量体混合物の重合は、連鎖移動剤の存在下で行うことがより好ましい。前記連鎖移動剤としては、n−オクチルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;α−メチルスチレンダイマー;γ−テルピネン、ジペンテン等のテルペン類;クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類等を使用できる。前記連鎖移動剤としては、メルカプタン類が好ましく、n−オクチルメルカプタンが特に好ましい。前記連鎖移動剤は、前記フッ素含有単量体混合物100質量部に対して0.1〜0.9質量部の範囲内で使用されることがより好ましく、前記フッ素含有単量体混合物100質量部に対して0.1〜0.5質量部の範囲内で使用されることがさらに好ましい。前記連鎖移動剤の使用量がフッ素含有単量体混合物100質量部に対して0.9質量部以下である場合、重合によって得られる樹脂粒子の分子鎖が短くなり過ぎることがなく、樹脂粒子の形状が維持され易くなる。それゆえ、種粒子と(メタ)アクリル系単量体混合物との相分離がさらに起こり易くなり、本発明に特有の異形形状が得られ易くなる。一方、前記連鎖移動剤の使用量がフッ素含有単量体混合物100質量部に対して0.1質量部以上の場合、重合によって得られる樹脂粒子の分子鎖が長くなり過ぎることがなく、(メタ)アクリル系単量体混合物が樹脂粒子に十分に吸収される。
【0060】
第1の工程において、前記フッ素含有単量体混合物を重合させて種粒子を得る場合、乳化重合、懸濁重合等の公知の方法を用いることができる。種粒子の粒子径の均一性や製造法の簡便性を考慮すると、乳化重合が好ましい。以下に乳化重合を用いた方法について述べるが、この方法に限定されるものではない。
【0061】
前記フッ素含有単量体混合物を乳化重合させて種粒子を得る場合、まず、前記フッ素含有単量体混合物を水性媒体中に分散させて水性乳化液を作製する。
【0062】
水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール(炭素数5以下のアルコール))との混合媒体が挙げられる。水性媒体には、〔シード重合工程〕の項で後述する界面活性剤を添加しても、しなくともよい。前記フッ素含有単量体混合物を水性媒体に添加し、主攪拌、ホモジナイザー、超音波処理機、ナノマイザー等の微細乳化機により前記フッ素含有単量体混合物を水性媒体中に分散させて分散液を作製し、分散液を重合温度まで昇温する。反応系を窒素等の不活性気体でパージ(置換)した後、重合開始剤を水に溶解したものを順次、前記分散液に滴下しながら重合を行うことで、種粒子が得られる。
【0063】
前記重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物等が挙げられる。重合開始剤は、前記フッ素含有単量体混合物100質量部に対して0.1〜3質量部の範囲内で使用することが好ましい。
【0064】
次に、水性乳化液中の前記フッ素含有単量体混合物を重合させることで、種粒子が得られる。重合温度は、前記フッ素含有単量体混合物の種類、重合開始剤の種類に応じて、適宜選択することができる。重合温度は、25〜110℃が好ましく、より好ましくは50〜100℃である。必要に応じ、重合完了後、濾過等によって水性媒体から種粒子を分離し、種粒子から遠心分離等により水性媒体を除去し、水及び溶剤で洗浄した後、乾燥してもよい。
【0065】
以上のようにして、架橋されたフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなる種粒子が得られる。
【0066】
一方、第1の工程において、(メタ)アクリル酸エステルの重合体の存在下で前記フッ素含有単量体混合物を重合させて種粒子を得る場合、(メタ)アクリル酸エステルの重合体は、前記フッ素含有単量体混合物100質量部に対して100質量部以下で使用されることが好ましく、1質量部以上80質量部以下の範囲内で使用されることがより好ましい。前記フッ素含有単量体混合物100質量部に対して(メタ)アクリル酸エステルの重合体が100質量部以下の場合、種粒子と(メタ)アクリル系単量体混合物との相分離が起こり易くなって本発明に特有の異形形状を形成し易くなる。一方、前記フッ素含有単量体混合物100質量部に対して(メタ)アクリル酸エステルの重合体が1質量部以上である場合、前記フッ素含有単量体混合物が種粒子に吸収されずに水性媒体中で独自に懸濁重合し異常粒子を生成することを回避できる。
【0067】
この場合、(メタ)アクリル酸エステルを重合させて(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子を得た後、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステルと多官能性単量体とを含む前記フッ素含有単量体混合物を前記(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子に吸収させて重合させるシード重合法を用いることが好ましい。すなわち、第1の工程では、(メタ)アクリル酸エステルを重合させて(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子を得る第1の段階と、前記フッ素含有単量体混合物を前記(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子に吸収させて重合させる第2の段階との2段階で、種粒子を作成することが好ましい。これにより、後述するシード重合工程で、本発明に特有の異形形状を有する異形樹脂粒子が得られ易くなる。なお、(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子の粒子の製造方法については、後述する。
【0068】
前記シード重合法では、まず、前記フッ素含有単量体混合物を水性媒体中に分散させて水性乳化液を作製し、水性乳化液に種粒子として(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子を添加する。水性媒体としては、前述した媒体を用いることができる。水性媒体には、〔シード重合工程〕の項で後述する界面活性剤を添加してもよい。また、前述した通り、前記フッ素含有単量体混合物の重合は、連鎖移動剤の存在下で行うことがより好ましい。
【0069】
前記フッ素含有単量体混合物には、必要に応じて、前述した重合開始剤を混合してもよい。重合開始剤は、前記フッ素含有単量体混合物に予め混合させた後、水性媒体中に分散させてもよいし、両者を別々に水性媒体に分散させたものを混合してもよい。得られた水性乳化液中の前記フッ素含有単量体混合物の液滴の粒子径は、(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子よりも小さい方が、前記フッ素含有単量体混合物が(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子に効率よく吸収されるので好ましい。重合開始剤は、前記フッ素含有単量体混合物100質量部に対して0.1〜3質量部の範囲内で使用することが好ましい。
【0070】
(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子は、水性乳化液に直接添加してもよく、(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子を水性媒体に分散させた形態で水性乳化液に添加してもよい。(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子を水性乳化液に添加した後、前記フッ素含有単量体混合物を(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子に吸収させる。この吸収は、通常、(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子を添加した後の水性乳化液を、室温(約20℃)で1〜12時間撹拌することで行うことができる。また、水性乳化液を30〜50℃程度に加温することにより吸収を促進してもよい。
【0071】
(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子は、前記フッ素含有単量体混合物の吸収により膨潤する。吸収の終了は、光学顕微鏡の観察で粒子径の拡大を確認することにより判定できる。
【0072】
次に、(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子に吸収させた前記フッ素含有単量体混合物を重合させることで、種粒子が得られる。重合温度は、前記フッ素含有単量体混合物の種類、重合開始剤の種類に応じて、適宜選択することができる。重合温度は、25〜110℃が好ましく、より好ましくは50〜100℃である。重合反応は、(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子に前記フッ素含有単量体混合物が完全に吸収された後に、昇温して行うのが好ましい。必要に応じ、重合完了後、濾過等によって水性媒体から種粒子を分離し、種粒子から遠心分離等により水性媒体を除去し、水及び溶剤で洗浄した後、乾燥してもよい。
【0073】
以上のようにして、(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子の存在下での重合により、架橋されたフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなる種粒子が得られる。なお、種粒子の大きさ及び形状は、特に限定されない。種粒子には、通常、平均粒子径0.1〜5μmの球状粒子が使用される。
【0074】
〔(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子の製造方法〕
次に、種粒子製造工程において必要に応じて用いられる(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子の製造方法について説明する。
【0075】
(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子の製造方法では、(メタ)アクリル酸エステルを重合させる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステルとして先に挙げた種々の化合物等が挙げられる。これら化合物は、一種を用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。(メタ)アクリル酸エステルは、前記フッ素含有単量体混合物に含まれるフッ素含有(メタ)アクリル酸エステルと同じ化合物であってもよい。
【0076】
(メタ)アクリル酸エステルの重合方法としては、乳化重合、懸濁重合等の公知の方法を用いることができるが、(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子の粒子径均一性や製造法の簡便性を考慮すると、乳化重合が好ましい。以下に乳化重合を用いた方法について述べるが、この方法に限定されるものではない。
【0077】
(メタ)アクリル酸エステルを乳化重合させて(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子を得る場合、まず、(メタ)アクリル酸エステルを水性媒体中に分散させて水性乳化液を作製する。
【0078】
水性媒体としては、前述した媒体が挙げられる。水性媒体には、〔シード重合工程〕の項で後述する界面活性剤を添加してもよい。水性乳化液は、例えば、前述の微細乳化機による方法で作製できる。
【0079】
(メタ)アクリル酸エステルには、必要に応じて、前述した重合開始剤を混合してもよい。重合開始剤は、(メタ)アクリル酸エステルに予め混合させた後、水性媒体中に分散させてもよいし、両者を別々に水性媒体に分散させたものを混合してもよい。重合開始剤は、(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して0.1〜3質量部の範囲内で使用することが好ましい。
【0080】
(メタ)アクリル酸エステルの重合は、前述した連鎖移動剤の存在下で行うことが好ましい。前記連鎖移動剤としては、メルカプタン類が好ましく、n−オクチルメルカプタンが特に好ましい。前記連鎖移動剤は、前記(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して0.1〜0.9質量部の範囲内で使用されることが好ましく、前記(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して0.1〜0.5質量部の範囲内で使用されることがより好ましい。これにより、種粒子と(メタ)アクリル系単量体混合物との相分離が起こり易くなって本発明に特有の異形形状を形成し易くなる。
【0081】
次に、水性乳化液中の(メタ)アクリル酸エステルを重合させることで、(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子が得られる。重合温度は、(メタ)アクリル酸エステルの種類、重合開始剤の種類に応じて、適宜選択することができる。重合温度は、25〜110℃が好ましく、より好ましくは50〜100℃である。重合完了後、濾過等によって水性媒体から(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子を分離し、必要に応じて(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子から遠心分離等により水性媒体を除去し、必要に応じて水及び溶剤で洗浄した後、乾燥する。
【0082】
以上のようにして、(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子が得られる。なお、(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子の大きさ及び形状は特に限定されない。(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子には、通常、0.1〜5μmの粒径の球状粒子が使用される。
【0083】
〔シード重合工程〕
シード重合工程(第2の工程)では、1〜50質量%の多官能性単量体を含む(メタ)アクリル系単量体混合物を前記種粒子(樹脂粒子)に吸収させた後、重合することによって、異形樹脂粒子を得る。
【0084】
前記(メタ)アクリル系単量体混合物は、(メタ)アクリル酸エステルと、多官能性単量体とを少なくとも含んでおり、前記フッ素含有単量体混合物と異なる成分を有している。(メタ)アクリル酸エステルは、重合可能なアルケニル基(広義のビニル基)を1分子中に1つ有する単官能性の(メタ)アクリル酸エステルである。前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これら単量体は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル以外の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、直鎖アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、およびアルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。これにより、種粒子と(メタ)アクリル系単量体混合物との相分離が起こり易くなって本発明に特有の異形形状を形成し易くなる。
【0085】
前記アルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、下記式(1)の化合物が挙げられる。
【0086】
【化1】
【0087】
式中、R1はH又はCH3であり、R2及びR3は異なってC2H4、C3H6,C4H8、C5H10から選択されるアルキレン基であり、mは0〜50、nは0〜50(但しmとnは同時に0にならない)であり、R4はH又はCH3である。なお、式(1)の単量体において、mが50より大きい場合及びnが50より大きい場合、重合安定性が低下し合着粒子が発生することがある。好ましいm及びnの範囲は0〜30であり、より好ましいm及びnの範囲は0〜15である。
【0088】
前記アルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、日油株式会社製のブレンマー(登録商標)シリーズ、例えば、ブレンマー(登録商標)50PEP−300(R1はCH3であり、R2はC2H5、R3はC3H6、m及びnは平均してm=3.5及びn=2.5の混合物、R4はHである)、ブレンマー(登録商標)70PEP−350B(R1はCH3であり、R2はC2H5、R3はC3H6、m及びnは平均してm=5及びn=2の混合物、R4はHである)、ブレンマー(登録商標)PP−1000(R1はCH3であり、R3はC3H6、mは0、nは平均して4〜6の混合物、R4はHである)、ブレンマー(登録商標)PME−400(R1はCH3であり、R2はC2H5、mは平均して9の混合物、nは0、R4はCH3である)等が挙げられる。
【0089】
前記多官能性単量体は、重合可能なアルケニル基(広義のビニル基)を1分子中に2つ以上有する化合物である。前記多官能性単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。前記多官能性単量体の使用量は、前記(メタ)アクリル系単量体混合物の全量に対して1〜50質量%であるが、前記(メタ)アクリル系単量体混合物の全量に対して20〜50質量%であることがより好ましい。多官能性単量体の使用量が、前記(メタ)アクリル系単量体混合物の全量に対して20質量%以上である場合、種粒子と(メタ)アクリル系単量体混合物との相分離が起こり易くなって本発明に特有の異形形状を形成し易くなると推察される。
【0090】
前記(メタ)アクリル系単量体混合物は、(メタ)アクリル酸エステル以外の単官能性単量体を含んでいてもよい。(メタ)アクリル酸エステル以外の単官能性単量体としては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリルアミド;酢酸ビニル;アクリロニトリル等が挙げられる。これら化合物は、一種を用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。(メタ)アクリル酸エステル以外の単官能性単量体の使用量は、前記(メタ)アクリル系単量体混合物の全量に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0091】
シード重合工程では、(メタ)アクリル系単量体混合物を水性媒体中に分散させて水性乳化液を作製する。水性媒体としては、前述した媒体が挙げられる。水性乳化液は、例えば、前述の微細乳化機による方法で作製できる。
【0092】
水性乳化液には、界面活性剤が含まれていることが好ましい。界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、および両性イオン系界面活性剤の何れをも用いることができる。
【0093】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩、アルケルニルコハク酸塩(ジカリウム塩)、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0094】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。両性イオン系界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイドや、リン酸エステル系又は亜リン酸エステル系界面活性剤が挙げられる。上記界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記界面活性剤のうち、重合時の分散安定性の観点から、アニオン系界面活性剤が好ましい。
【0095】
(メタ)アクリル系単量体混合物は、必要に応じて重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤は、(メタ)アクリル系単量体混合物に予め混合させた後、水性媒体中に分散させてもよいし、両者を別々に水性媒体に分散させたものを混合してもよい。得られた水性乳化液中の(メタ)アクリル系単量体混合物の液滴の粒子径は、種粒子よりも小さい方が、(メタ)アクリル系単量体混合物が種粒子に効率よく吸収されるので好ましい。
【0096】
種粒子は、水性乳化液に直接添加してもよく、種粒子を水性媒体に分散させた形態で添加してもよい。種粒子の水性乳化液への添加後、種粒子へ(メタ)アクリル系単量体混合物を吸収させる。この吸収は、通常、種粒子添加後の水性乳化液を、室温(約20℃)で1〜12時間撹拌することで行うことができる。また、水性乳化液を30〜50℃程度に加温することにより吸収を促進してもよい。
【0097】
種粒子は、(メタ)アクリル系単量体混合物の吸収により膨潤する。種粒子1質量部に吸収させる(メタ)アクリル系単量体混合物の量は、2〜125質量部の範囲内であることが好ましく、2〜50質量部の範囲内であることがより好ましく、2〜30質量部の範囲内であることがさらに好ましい。種粒子1質量部に吸収させる(メタ)アクリル系単量体混合物の量は、2〜125質量部の範囲内である場合、異形樹脂粒子の長径Aに対する樹脂コア2の長径Dの比D/Aが0.2〜0.7の範囲内である異形樹脂粒子が得られやすいので、光拡散性をより向上させることができる。種粒子1質量部に吸収させる(メタ)アクリル系単量体混合物の量が2質量部以上である場合、シード重合による粒子径の増加が十分に大きくなり生産性が向上する。種粒子1質量部に吸収させる(メタ)アクリル系単量体混合物の量が50質量部以下である場合、前記(メタ)アクリル系単量体混合物が種粒子に吸収されずに水性媒体中で独自に懸濁重合し異常粒子を生成することを回避できる。
【0098】
(メタ)アクリル系単量体混合物には、必要に応じて重合開始剤を混合できる。重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物等が挙げられる。重合開始剤は、(メタ)アクリル系単量体混合物100質量部に対して、0.1〜3質量部の範囲内で使用することが好ましい。
【0099】
上記シード重合工程において、生成する異形樹脂粒子の分散安定性を向上させるために、水性乳化液に高分子分散安定剤を添加してもよい。高分子分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。また、高分子分散安定剤と、トリポリリン酸ナトリウム等の無機系水溶性高分子化合物とを併用することもできる。これら高分子分散安定剤のうち、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンが好ましい。高分子分散安定剤の添加量は、(メタ)アクリル系単量体混合物100質量部に対して1〜10質量部の範囲内であることが好ましい。
【0100】
また、上記シード重合工程において、水系での乳化粒子の発生を抑えるために、水性乳化液に、亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸塩類、亜硫酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類、水溶性ビタミンB類、クエン酸、ポリフェノール類等の水溶性の重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤の添加量は、(メタ)アクリル系単量体混合物100質量部に対して0.02〜0.2質量部の範囲内であることが好ましい。
【0101】
次に、種粒子に吸収させた(メタ)アクリル系単量体混合物を重合させることで、異形樹脂粒子が得られる。重合温度は、(メタ)アクリル系単量体混合物の種類、重合開始剤の種類に応じて、適宜選択することができる。重合温度は、25〜110℃の範囲内であることが好ましく、50〜100℃の範囲内であることがより好ましい。重合反応は、種粒子に(メタ)アクリル系単量体混合物が完全に吸収された後に、昇温して行うのが好ましい。重合完了後、濾過等によって水性媒体から異形樹脂粒子を分離し、必要に応じて異形樹脂粒子から遠心分離等により水性媒体を除去し、必要に応じて水及び溶剤で洗浄した後、乾燥する。
【0102】
以上のようにして、異形樹脂粒子の表層を形成する樹脂層と、前記樹脂層とは異なる樹脂成分からなり、前記樹脂層の内部に形成された樹脂コアとを含む異形樹脂粒子であって、単一の窪みを有し、樹脂コアが、窪みに隣接して存在し、球形に近い異形樹脂粒子、特に、長径Aに対する短径Bの比B/Aが0.7以上である本発明の異形樹脂粒子を作成することができる。
【0103】
〔外用剤〕
本発明の異形樹脂粒子は、外用剤の原料として、例えば外用剤の滑り性向上剤として、使用できる。本発明の外用剤は、本発明の異形樹脂粒子を含んでいる。外用剤における異形樹脂粒子の含有量は、外用剤の種類に応じて適宜設定できるが、1〜80質量%の範囲内が好ましく、5〜70質量%の範囲内であることがより好ましい。外用剤全量に対する異形樹脂粒子の含有量が1質量%未満の場合、異形樹脂粒子の含有による明確な効果が認められないことがある。また、異形樹脂粒子の含有量が80質量%を上回ると、含有量の増加に見合った顕著な効果が認められないことがあるため、生産コスト上好ましくない。
【0104】
外用剤としては、例えば化粧料(化粧品)、外用医薬品等が挙げられる。
【0105】
前記化粧料としては、上記異形樹脂粒子の含有により効果を奏するものであれば特に限定されず、例えば、プレシェーブローション、ボディローション、化粧水、クリーム、乳液、ボディシャンプー、制汗剤等の液系の化粧料;石鹸、スクラブ洗顔料等の洗浄用化粧品;パック類;ひげ剃り用クリーム;おしろい類;ファンデーション;口紅;リップクリーム;頬紅;眉目化粧品;マニキュア化粧品;洗髪用化粧品;染毛料;整髪料;芳香性化粧品;歯磨き;浴用剤;日焼け止め製品;サンタン製品;ボディーパウダー、ベビーパウダー等のボディー用の化粧料等が挙げられる。
【0106】
前記外用医薬品としては、皮膚に適用するものであれば特に制限されず、例えば、医薬用クリーム、軟膏、医薬用乳剤、医薬用ローション等が挙げられる。
【0107】
また、これらの外用剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、一般に用いられている主剤または添加物を目的に応じて配合できる。そのような主剤または添加物としては、例えば、水、低級アルコール(炭素数5以下のアルコール)、油脂及びロウ類、炭化水素(ワセリン、流動パラフィン等)、高級脂肪酸(ステアリン酸等の炭素数12以上の脂肪酸)、高級アルコール(セチルアルコール等の炭素数6以上のアルコール)、ステロール、脂肪酸エステル(ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸エステル等)、金属石鹸、保湿剤、界面活性剤(ポリエチレングリコール等)、高分子化合物、粘土鉱物類(体質顔料および吸着剤などの数種の機能を兼ね備えた成分;タルク、マイカ等)、色材原料(赤色酸化鉄、黄色酸化鉄等)、香料、防腐・殺菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、アクリル樹脂粒子(ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子)、シリコーン系粒子、ポリスチレン粒子等の樹脂粒子、本発明の異形樹脂粒子以外の異形樹脂粒子、pH調整剤(トリエタノールアミン等)、特殊配合添加物、医薬品活性成分等が挙げられる。
【0108】
〔塗料〕
本発明の異形樹脂粒子は、塗膜軟質化剤又は塗料用艶消し剤等として塗料に含有させることが可能である。前記塗料は、本発明の異形樹脂粒子を含んでいる。前記塗料は、必要に応じて、バインダー樹脂および溶剤の少なくとも一方を含んでいる。前記バインダー樹脂としては、有機溶剤もしくは水に可溶な樹脂、または水中に分散できるエマルション型の水性樹脂を使用できる。そのようなバインダー樹脂としては、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂等が挙げられる。これらバインダー樹脂は、塗装される基材への塗料の密着性や使用される環境等によって適宜選択され得る。
【0109】
バインダー樹脂及び異形樹脂粒子の添加量は、形成される塗膜の膜厚、異形樹脂粒子の平均粒子径、塗装方法によっても異なる。バインダー樹脂の添加量は、バインダー樹脂(エマルション型の水性樹脂を使用する場合には固形分)と異形樹脂粒子との合計に対して、5〜50質量%の範囲内であることが好ましく、10〜50質量%の範囲内であることがより好ましく、20〜40質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0110】
異形樹脂粒子の添加量は、バインダー樹脂(エマルション型の水性樹脂を使用する場合には固形分)と異形樹脂粒子との合計に対して、5〜50質量%の範囲内であることが好ましく、10〜50質量%の範囲内であることがより好ましく、20〜40質量%の範囲内であることがさらに好ましい。異形樹脂粒子の含有量が5質量%未満である場合、艶消し効果が十分得られないことがある。また、異形樹脂粒子の含有量が50質量%を越える場合には、塗料組成物の粘度が大きくなりすぎるために異形樹脂粒子の分散不良が起こることがある。そのため、得られる塗膜にマイクロクラックが発生する、得られる塗膜表面にザラツキが生じる等のような、塗膜の外観不良が起こることがある。
【0111】
前記塗料を構成する溶剤としては、特に限定されないが、バインダー樹脂を溶解又は分散できる溶剤を使用することが好ましい。例えば、前記塗料が油性塗料である場合、前記溶剤として、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤等が挙げられる。前記塗料が水性塗料である場合、前記溶剤として、水、アルコール類等が使用できる。これら溶剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。塗料中における溶剤の含有量は、塗料全量に対し、通常、20〜60質量%の範囲内である。
【0112】
塗料には、必要に応じて、公知の塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、体質顔料、着色顔料、金属顔料、マイカ粉顔料、染料等が含まれていてもよい。
【0113】
塗料を使用した塗膜の形成方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。塗膜の形成方法としては、例えば、スプレー塗装法、ロール塗装法、ハケ塗り法等の方法が挙げられる。塗料は、必要に応じて粘度を調整するために、希釈剤を加えて希釈してもよい。希釈剤としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;水;アルコール系溶剤等が挙げられる。これら希釈剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0114】
〔光拡散性樹脂組成物〕
本発明の異形樹脂粒子を光拡散剤として、透明基材樹脂(透明性樹脂)中に分散させることで、光拡散性樹脂組成物として使用できる。すなわち、前記光拡散性樹脂組成物は、本発明の異形樹脂粒子と、透明基材樹脂とを含んでいる。前記光拡散性樹脂組成物は、照明カバー(発光ダイオード(LED)照明用照明カバー、蛍光灯照明用照明カバー等)、光拡散部材(光拡散シートあるいは光拡散フィルム、光拡散板等)の原料として使用できる。
【0115】
前記透明基材樹脂としては、通常、異形樹脂粒子を構成する重合体粒子の成分と異なる熱可塑性樹脂が使用される。前記透明基材樹脂として使用する熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。これら熱可塑性樹脂の中でも、優れた透明性が透明基材樹脂に求められる場合には、アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、およびポリスチレンが好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0116】
透明基材樹脂への異形樹脂粒子の添加割合は、透明基材樹脂100質量部に対して、0.01〜40質量部の範囲内であることが好ましく、0.1〜10質量部の範囲内であることがより好ましい。異形樹脂粒子が0.01質量部未満の場合、光拡散部材に光拡散性を与えにくくなることがある。異形樹脂粒子が40質量部より多い場合、光拡散部材に光拡散性を与えられるが光拡散部材の光透過性が低くなることがある。
【0117】
光拡散性樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、異形樹脂粒子と透明基材樹脂とを機械式粉砕混合方法等のような従来公知の方法で混合することにより製造できる。機械式粉砕混合方法では、例えば、ヘンシェルミキサー、V型混合機、ターブラミキサー、ハイブリダイザー、ロッキングミキサー等の装置を用いて異形樹脂粒子と透明基材樹脂とを混合し撹拌することにより、光拡散性樹脂組成物を製造できる。
【0118】
光拡散性樹脂組成物を成形することにより、本発明に係る、照明カバー、光拡散シート等の光拡散部材を製造できる。この場合、例えば、光拡散剤と透明基材樹脂とを混合機で混合し、押出機等の溶融混練機で混練することで光拡散性樹脂組成物からなるペレットを得た後、このペレットを押出成形するか、あるいはこのペレットを溶融後に射出成形することにより、任意の形状の光拡散部材を得ることができる。
【0119】
光拡散シートは、例えば、液晶表示装置の光拡散シートとして使用できる。液晶表示装置の構成は、光拡散シートを含みさえすれば、特に限定されない。例えば、液晶表示装置は、表示面及び裏面を有する液晶表示パネルと、この液晶表示パネルの裏面側に配置された導光板と、導光板の側面に光を入射させる光源とを少なくとも備えている。また、液晶表示装置は、導光板における、液晶表示パネルに対向する面上に光拡散シートを備え、導光板における、液晶表示パネルに対向する面の反対面側に反射シートを備えている。この光源の配置は、一般にエッジライト型バックライト配置と称される。さらに、光源の配置としては、上記エッジライト型バックライト配置以外に、直下型バックライト配置もある。この配置は、具体的には、液晶表示パネルの裏面側に光源を配置し、液晶表示パネルと光源との間に配置された光拡散シートを少なくとも備えた配置である。
【0120】
〔光拡散性コーティング剤〕
前記の異形樹脂粒子を含む塗料において、バインダー樹脂を含む透明の塗料、すなわち、透明のバインダー樹脂を含み、顔料、染料等の非透明材料を含まない塗料は、紙用コーティング剤、光拡散部材用コーティング剤等の光拡散性コーティング剤として使用することができる。この場合、異形樹脂粒子は、光拡散剤として機能する。
【0121】
基材としての透明基材上に光拡散性コーティング剤(光拡散部材用コーティング剤)を塗装して透明の塗膜(光拡散性コーティング)を形成することで、本発明の光拡散部材を製造することができる。
【0122】
前記透明基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド等の樹脂からなる樹脂基材、透明なガラスシート等の無機基材から、適宜選択して使用できる。また、前記透明基材の厚さは、特に限定されるものではないが、加工のしやすさやハンドリング性を考慮して10〜500μmの範囲内とすることが好ましい。光拡散性コーティングを形成する方法としては、リバースロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法、コンマコート法、スプレーコート法等の公知の方法を用いることができる。光拡散性コーティングの厚みは、特に限定されるものではないが、光拡散性、膜強度等を考慮して、1〜100μmの範囲内とすることが好ましく、3〜30μmの範囲内とすることがより好ましい。
【0123】
基材としての紙上に光拡散性コーティング剤(紙用コーティング剤)を塗装して透明の塗膜を形成することで、艶消し紙を製造することができる。塗膜の形成方法としては、前述した方法を使用することができるが、異形樹脂粒子に由来する凹凸が塗膜表面に形成されるような方法を使用することが好ましい。また、前記透明基材樹脂としては、前述した光拡散性樹脂組成物に用いられる透明基材樹脂を用いることができる。光拡散部材用コーティング剤の塗装により得られる光拡散部材は、防眩フィルムとして用いることができ、また、前述した光拡散性樹脂組成物の成形により得られる光拡散部材と同様の用途にも用いることができる。
【実施例】
【0124】
以下、実施例および比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0125】
〔種粒子の平均粒子径の測定方法〕
種粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製、LS230型)で測定した。具体的には、試験管に、種粒子0.1gおよび0.1%ノニオン性界面活性剤溶液10mlを投入し、タッチミキサー(ヤマト科学株式会社製、「TOUCHMIXER MT−31」)で2秒間混合した。この後、試験管内の種粒子を市販の超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア製、「ULTRASONIC CLEARNER VS−150」)を用いて10分間分散させて、分散液を得た。分散液に超音波を照射しながら、分散液中の種粒子の平均粒子径をレーザー回折散乱粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製、LS230型)にて測定した。その測定のときの光学モデルは、作製した種粒子の屈折率に合わせた。種粒子の製造に1種類の単量体を用いた場合には、種粒子の屈折率としてその単量体の単独重合体の屈折率を用いた。種粒子の製造に複数種類の単量体を用いた場合には、種粒子の屈折率として、各単量体の単独重合体の屈折率を各単量体の使用量で加重平均した平均値を用いた。
【0126】
〔異形樹脂粒子の平均粒子径の測定方法〕
異形樹脂粒子の平均粒子径は、コールター方式精密粒度分布測定装置マルチサイザーII(ベックマン・コールター株式会社製)を用いてコールター方式にて測定した。測定方法は、Coulter Electronics Limited発行のReference MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER(1987)に従って、50μmアパチャーを用いてマルチサイザーIIのキャリブレーションを行い、平均粒子径の測定を行った。
【0127】
具体的には、異形樹脂粒子0.1gを0.1%ノニオン系界面活性剤水溶液10ml中にタッチミキサーおよび超音波を用いて分散させて、分散液とした。マルチサイザーII本体に備え付けの測定用電解液「ISOTON(登録商標)II」(ベックマン・コールター株式会社製)を満たしたビーカー中に、前記分散液を緩く攪拌しながらスポイトで滴下して、マルチサイザーII本体画面の濃度計の示度を10%前後に合わせた。次に、マルチサイザーII本体に、アパチャーサイズ(径)を50μm、Current(アパーチャー電流)を800μA、Gain(ゲイン)を4、Polarity(内側電極の極性)を+と入力して、manual(手動モード)で体積基準の粒度分布を測定した。なお、アパチャーサイズ等は、必要に応じて変更して入力可能である。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、粒子10万個の粒度分布を測定した時点で測定を終了した。そして、測定した体積基準の粒度分布における算術平均径を平均粒子径とした。
【0128】
〔異形樹脂粒子の粒子径の変動係数(CV値)の測定方法〕
異形樹脂粒子の粒子径のCV値は、前述の体積基準の粒度分布の測定を行った際の標準偏差(σ)及び平均粒子径(D)から、以下の式により算出した。
【0129】
CV値(%)=(σ/D)×100
〔種粒子製造例1〕
まず、攪拌機および温度計を備える反応器内に、水性媒体としての純水3500gを入れた。次いで、反応器内の純水に、(メタ)アクリル酸エステルとしてのメチルメタクリレート396gと、連鎖移動剤としてのn−オクチルメルカプタンを1.2gとを投入した。続いて、窒素パージ(窒素置換)を行い、55℃まで昇温した。その後、重合開始剤としての過硫酸カリウム2.0gを純水100gに溶解した溶液を反応器内の内容物に添加して、再び窒素パージを行った。その後、攪拌しながら55℃で12時間重合を行い、種粒子(以下「種粒子(1)」と呼ぶ)をスラリーの状態で得た。種粒子(1)の平均粒子径を前述の方法で測定したところ、種粒子(1)の平均粒子径は0.45μmであった。
【0130】
〔種粒子製造例2〕
まず、攪拌機および温度計を備える反応器内に、水性媒体としての純水3500gを入れた。次いで、反応器内の純水に、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステルとしてのトリフルオロエチルメタクリレート396gと、多官能性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート4g(単量体混合物の全量に対して1質量%)と、連鎖移動剤としてのn−オクチルメルカプタン1.2gと、(メタ)アクリル酸エステルの重合体としての、種粒子製造例1で得られた種粒子(1)285gとを投入した。続いて、反応器内の窒素パージを行い、55℃まで昇温した。その後、重合開始剤としての過硫酸カリウム2.0gを純水100gに溶解した溶液を反応器内の内容物に添加して、再び窒素パージを行った。その後、攪拌しながら55℃で12時間重合を行い、種粒子(以下「種粒子(2)」と呼ぶ)をスラリーの状態で得た。種粒子(2)の平均粒子径を前述の方法で測定したところ、種粒子(2)の平均粒子径は1.0μmであった。
【0131】
〔種粒子製造例3〕
トリフルオロエチルメタクリレート396gに代えてメチルメタクリレート396gを用いること以外は種粒子製造例2と同様にして、種粒子を製造した。これにより、種粒子(以下「種粒子(3)」と呼ぶ)がスラリーの状態で得られた。種粒子(3)の平均粒子径を前述の方法で測定したところ、種粒子(3)の平均粒子径は1.0μmであった。
【0132】
〔実施例1〕
まず、高速攪拌機および温度計を備えた反応器内に、水性媒体としてのイオン交換水80gを入れ、次いで、反応器内のイオン交換水に、アニオン系界面活性剤としてのジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(商品名「ラピゾール(登録商標)A−80」、日油株式会社製)0.8gを添加した。その後、反応器の内容物に、単官能性の(メタ)アクリル酸エステルとしてのメチルメタクリレート56gと、多官能性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート24g(単量体混合物の全量に対して30質量%)と、重合開始剤としての過酸化ベンゾイル0.5gとを添加し、高速攪拌機にて8000rpmの攪拌速度で10分間攪拌を行い、乳化液を得た。
【0133】
その後、前記乳化液に、種粒子製造例2で得られた種粒子(2)を36.6g添加し、30℃で2時間かけて種粒子(2)に前記乳化液を吸収させて、種粒子(2)を膨潤させた。その後、反応器の内容物に、水性媒体としてのイオン交換水240gと、高分子分散安定剤としてのポリビニルアルコール3.2gとを添加し、さらに重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウム0.064gを添加し、攪拌しながら50℃で6時間重合を行った。重合後の反応液を濾過することにより、樹脂粒子を反応液から分離した。分離された樹脂粒子を温水で良く洗浄した後、乾燥を行い、樹脂粒子を得た。
【0134】
得られた樹脂粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像し、図2のSEM画像を得た。た。また、得られた樹脂粒子から樹脂粒子の中心を含む薄切片を切り出し、薄切片を染色して透過型電子顕微鏡(TEM)で撮像し、図3のTEM画像を得た。た。図2のSEM画像および図3のTEM画像より、樹脂粒子は、単一の窪みを有する異形樹脂粒子であることが分かった。また、図3のTEM画像より、前記異形樹脂粒子は、異形樹脂粒子の表層を形成する樹脂層(図3における、白い部分を囲む黒い部分)と、前記樹脂層の内部に形成された樹脂コア(図3における、白い部分、および白い部分に囲まれた黒い部分)とを含むことが分かった。また、図3のTEM画像より、前記異形樹脂粒子の樹脂コアは、楕円体の一部が欠けた形状(楕円体形状)であり、かつ前記窪みに隣接していることが分かった。
【0135】
また、図3のTEM画像(下端部のスケールバーは500nmである)より異形樹脂粒子の長径Aおよび短径Bを測定し、長径Aに対する短径Bの比B/Aを求めたところ、比B/Aは0.88であった。また、図3のTEM画像より窪みの径Cを測定し、長径Aに対する窪みの径Cの比C/Aを求めたところ、比C/Aは0.33であった。また、図3のTEM画像より樹脂コアの長径Dを測定し、異形樹脂粒子の長径Aに対する樹脂コアの長径Dの比D/Aを求めたところ、比D/Aは0.53であった。
【0136】
また、得られた異形樹脂粒子の平均粒子径を前述の方法で測定したところ、異形樹脂粒子の平均粒子径は2.5μmであった。また、得られた異形樹脂粒子の粒子径のCV値を前述の方法で測定したところ、異形樹脂粒子の粒子径のCV値は12%であり、異形樹脂粒子は単分散粒子であることが分かった。
【0137】
〔実施例2〕
単官能性の(メタ)アクリル酸エステルとしてメチルメタクリレート56gに代えてブチルメタクリレート56gを用いること以外は実施例1と同様の製造方法により、樹脂粒子を製造した。
【0138】
得られた樹脂粒子をSEMで撮像し、図4のSEM画像を得た。また、得られた樹脂粒子から樹脂粒子の中心を含む薄切片を切り出し、薄切片を染色してTEMで撮像した。図4のSEM画像および図示しないTEM画像より、樹脂粒子は、単一の窪みを有する異形樹脂粒子であることが分かった。また、TEM画像より、前記異形樹脂粒子は、異形樹脂粒子の表層を形成する樹脂層と、前記樹脂層の内部に形成された樹脂コアとを含むことが分かった。また、TEM画像より、前記異形樹脂粒子の樹脂コアは、楕円体形状であり、かつ前記窪みに隣接していることが分かった。
【0139】
また、TEM画像より異形樹脂粒子の長径Aおよび短径Bを測定し、長径Aに対する短径Bの比B/Aを求めたところ、比B/Aは0.82であった。また、TEM画像より窪みの径Cを測定し、長径Aに対する窪みの径Cの比C/Aを求めたところ、比C/Aは0.16であった。また、TEM画像より樹脂コアの長径Dを測定し、異形樹脂粒子の長径Aに対する樹脂コアの長径Dの比D/Aを求めたところ、比D/Aは0.56であった。
【0140】
また、得られた異形樹脂粒子の平均粒子径を前述の方法で測定したところ、異形樹脂粒子の平均粒子径は2.5μmであった。また、得られた異形樹脂粒子の粒子径のCV値を前述の方法で測定したところ、異形樹脂粒子の粒子径のCV値は12%であり、異形樹脂粒子は単分散粒子であることが分かった。
【0141】
実施例1および実施例2における、異形樹脂粒子の長径Aに対する異形樹脂粒子の短径Bの比B/A、異形樹脂粒子の長径Aに対する窪みの径Cの比C/A、および異形樹脂粒子の長径Aに対する樹脂コアの長径Dの比D/Aの値を、表1にまとめて示す。
【0142】
【表1】
【0143】
〔比較例1〕
種粒子(2)36.6gに代えて、種粒子製造例3で得られた種粒子(3)36.6gを用いる以外は実施例1と同様の製造方法により、樹脂粒子を製造した。
【0144】
得られた樹脂粒子をSEMで撮像し、図5のSEM画像を得た。また、得られた樹脂粒子から樹脂粒子の中心を含む薄切片を切り出し、薄切片を染色してTEMで撮像した。SEM画像およびTEM画像より、樹脂粒子は、窪みを有していない均質な真球状樹脂粒子であることが分かった。
【0145】
〔吸油量の測定〕
実施例1、実施例2、および比較例1の樹脂粒子の吸油量を、JIS K 5101−13−2の測定方法をベースとして、煮アマニ油に代えて一級アマニ油を使用し、終点の判断基準を変更した(「測定板をたてても、試料が流動しない」時点に変更した)方法によって、測定した。吸油量の測定の詳細は、以下の通りである。
【0146】
(A)装置及び器具
測定板:300×400×5mmより大きい平滑なガラス板
パレットナイフ(ヘラ):鋼製又はステンレス製の刃を持った柄つきのもの
化学はかり(計量器): 10mgオーダーまで計れるもの
ビュレット:JIS R 3505に規定する容量10mlのもの
(B)試薬
一級アマニ油:和光純薬工業株式会社製
(C)測定方法
(1) 樹脂粒子1gを測定板上の中央部に取り、一級アマニ油をビュレットから一回に4,5滴ずつ、徐々に樹脂粒子の中央に滴下し、その都度、樹脂粒子および一級アマニ油の全体をパレットナイフで充分練り合わせる。
【0147】
(2) 上記の滴下及び練り合わせを繰り返し、樹脂粒子および一級アマニ油の全体が硬いパテ状の塊になったら1滴ごとに練り合わせて、一級アマニ油の最後の1滴の滴下によりペースト(樹脂粒子および一級アマニ油の混練物)が急激に軟らかくなり、流動を始める点を終点とする。
【0148】
(3) 流動の判定
一級アマニ油の最後の1滴の滴下により、ペーストが急激に軟らかくなり、測定板を垂直に立てた時にペーストが動いた場合に、ペーストが流動していると判定する。測定板を垂直に立てた時もペーストが動かない場合には、更に一級アマニ油を1滴加える。
【0149】
(4) 終点に達したときの一級アマニ油の消費量をビュレット内の液量の減少分として読み取る。
【0150】
(5) 1回の測定時間は7〜15分以内に終了するように実施し、測定時間が15分を超えた場合は再測定し、規定の時間内で測定を終了した時の数値を採用する。
【0151】
(D)吸油量の計算
下記式により試料100g当たりの吸油量を計算する。
【0152】
O=(V/m)×100
ここで、O:吸油量(ml/100g)、m:樹脂粒子の質量(g)、V:消費した一級アマニ油の容積(ml)
実施例1、実施例2、および比較例1の樹脂粒子の吸油量を測定した結果を表2に示す。なお、表2に示す吸油量の値は、各樹脂粒子の吸油量の測定を3回行い、その測定値を平均した平均値である。
【0153】
〔比表面積の測定〕
実施例1、実施例2、および比較例1の樹脂粒子の比表面積を、JIS R 1626に記載のBET(Brunauer−Emmett−Teller)法(窒素吸着法)により、測定機として株式会社島津製作所製の自動比表面積/細孔分布測定装置「TriStar(登録商標)3000」を用いて測定した。対象となる樹脂粒子について、上記自動比表面積/細孔分布測定装置「Tristar(登録商標)3000」を用いてBET窒素吸着等温線を測定し、窒素吸着量からBET多点法を用いて比表面積を算出した。なお、窒素吸着等温線の測定は、吸着質として窒素を用い、吸着質断面積0.162nm2の条件下で定容法を用いて行った。
【0154】
実施例1、実施例2、および比較例1の樹脂粒子の比表面積を測定した結果を表2に示す。なお、表2に示す比表面積の値は、各樹脂粒子の比表面積の測定を3回行い、その測定値を平均した平均値である。
【0155】
【表2】
【0156】
実施例1および実施例2の異形樹脂粒子は、比較例1の真球状樹脂粒子よりも、比表面積が広く、吸油量も多かった。
【0157】
これは、実施例1および実施例2の異形樹脂粒子は窪みを有しているために、比較例1の真球状樹脂粒子よりも比表面積が広く、その分だけ吸油面積も広くなるためである。それゆえ、実施例1および実施例2の異形樹脂粒子を化粧液等の外用剤や塗料に用いた場合、樹脂粒子における媒体(溶剤等)に接する面が大きくなり、媒体(他の成分)への樹脂粒子の馴染みが良くなる(樹脂粒子の脱落が少なくなる等)と考えられる。
【0158】
〔実施例3:外用剤への異形樹脂粒子の配合例〕
実施例1の異形樹脂粒子2gと、イオン交換水9gと、低級アルコールとしてのエタノール1gとを混合して、本発明の外用剤の一例としてのボディローションを作成した。
【0159】
〔実施例4:外用剤への異形樹脂粒子の配合例〕
実施例1の異形樹脂粒子に代えて実施例2の異形樹脂粒子を用いる以外は、実施例3と同様にして、本発明の外用剤の一例としてのボディローションを作成した。
【0160】
〔比較例2〕
実施例1の異形樹脂粒子に代えて比較例1の真球状樹脂粒子を用いる以外は、実施例3
と同様にして、比較用のボディローションを作成した。
【0161】
〔保湿性(しっとり感)の評価〕
実施例3、実施例4、および比較例2のボディローションを手首に塗布した際、指で触った際のしっとり感について、パネラー10名により官能評価を実施した。しっとり感の官能評価結果は、下記の五段階評価による評価値の平均値で算出した。
【0162】
1・・・非常にしっとりしている
2・・・しっとりしている
3・・・ややしっとりしている
4・・・少し、しっとりしている
5・・・全くしっとりしていない
実施例3、実施例4、および比較例2のボディローションについてのしっとり感の官能評価結果を表3に示す。
【0163】
【表3】
【0164】
ボディローションの保湿性は樹脂粒子の吸油量の結果と相関し、樹脂粒子の比表面積が広いほどボディローションの保湿性は高いという結果が得られた。実施例3および実施例4のボディローションの保湿性は、比較例2のボディローションの保湿性より優れていた。
【0165】
〔実施例5:光拡散フィルムの作製例〕
実施例1の異形樹脂粒子20質量部と、バインダー樹脂としてのアクリル系バインダー(商品名:ダイヤナール(登録商標)BR−116、三菱レイヨン株式会社製)20質量部とを混ぜ、得られた混合物に対して、トルエンとメチルエチルケトンとを容量比1:1で混合した混合溶剤180質量部を添加し、遠心攪拌機によって3分間攪拌し、溶液を得た。この溶液を3時間放置した後、再び遠心攪拌機により3分間攪拌し、本発明の塗料の一例としての溶液(光拡散性コーティング剤)を得た。この後、得られた溶液を透明基材としての厚み100μmのPETフィルム上に75μmコーターを用いて塗工した。得られたフィルムを70℃に保った乾燥機にて1時間乾燥することにより、本発明の光拡散部材の一例としての総厚(乾燥膜厚)110μm〜120μm程度の光拡散フィルムを得た。
【0166】
〔実施例6:光拡散フィルムの作製例〕
実施例1の異形樹脂粒子に代えて実施例2の異形樹脂粒子を用いる以外は、実施例5と同様にして、本発明の光拡散部材の一例としての光拡散フィルムを得た。
【0167】
〔比較例3〕
実施例1の異形樹脂粒子に代えて比較例1の樹脂粒子を用いる以外は、実施例5と同様にして、比較用の光拡散フィルムを得た。
【0168】
〔光拡散フィルムの耐傷付き性(樹脂粒子の脱落性)の試験〕
実施例5、実施例6、および比較例3の光拡散フィルムにおける樹脂粒子含有層表面を、摩擦堅牢度試験機を用いて布で20回往復研磨し、研磨後の光拡散フィルムの耐傷付き具合を目視で観察した。
【0169】
そして、研磨後の光拡散フィルムに3本以下の線傷が見られる場合を耐傷付き性が「○」、4本以上9本以下の線傷が見られる場合を耐傷付き性が「△」、10本以上の線傷が見られる場合を耐傷付き性が「×」と判定した。
【0170】
【表4】
【0171】
比表面積がより広い実施例1の異形樹脂粒子の方が、比表面積がより狭い比較例1の真球状樹脂粒子と比較して、バインダー樹脂との馴染みが良く、光拡散フィルムからの脱落が少なくなり、光拡散フィルム表面に傷が形成されにくくなる(光拡散フィルムの耐傷付き性が向上する)ことが確認できた。
【0172】
〔光拡散フィルムの光拡散性の評価〕
実施例5、実施例6、および比較例3の光拡散フィルムの光拡散性を、ヘイズの測定により評価した。ヘイズの測定は、測定機器として日本電色工業株式会社製のヘイズメーター「NDH2000」を用い、JIS K 7136に準ずる方法によって行った。なお、表5に示すヘイズの値は、各光拡散フィルムのヘイズの測定を3回行い、その測定値を平均した平均値である。
【0173】
【表5】
【0174】
実施例5および実施例6の光拡散フィルムと比較例3の光拡散フィルムとを比べた場合、実施例5および実施例6の光拡散フィルムの方が、比較例3の光拡散フィルムよりも高いヘイズ値を示した。この差は、実施例1および実施例2の樹脂粒子の形状(窪みを有する形状)に起因するものと考える。また、実施例1および実施例2に示す方法(シード重合法)で作製した異形樹脂粒子は、樹脂コア(コア粒子)の単量体組成と樹脂層(表層樹脂)の単量体組成とが異なることにも起因して、高いヘイズ値を示すことが確認されている。
【0175】
この結果より、実施例1および実施例2の異形樹脂粒子は、光拡散フィルムや光拡散板等の光拡散部材の用途に適していることが分かる。また、実施例1および実施例2の異形樹脂粒子は、樹脂コアと樹脂層との屈折率差によって生じる隠蔽性にも優れ、化粧品等の外用剤の用途にも有用であることが期待できる。
【符号の説明】
【0176】
1 樹脂層
2 樹脂コア
3 窪み
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散シート(光拡散フィルム)、光拡散板、照明カバー(LED照明用照明カバー等)等の光拡散部材(光拡散体)を構成する光拡散剤;塗料の原料(例えば、塗膜軟質化剤、塗料用艶消し剤等の添加剤);紙用コーティング剤(紙用コート剤)、光拡散部材用コーティング剤等の光拡散性コーティング剤を構成する光拡散剤;防眩フィルムを構成する光拡散剤;化粧品等の外用剤の原料(例えば滑り性向上剤等の添加剤)等として用いることができる異形樹脂粒子、その製造方法、およびその用途(外用剤、塗料、および光拡散部材)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、シード重合により製造された異形の樹脂粒子が知られている。例えば、特許文献1の比較例5および特許文献2の比較例1には、ダルマ状の重合体粒子が記載されている。
【0003】
また、特許文献3には、形状が繭状のポリマー粒子が記載されている。また、特許文献3には、この形状が繭状のポリマー粒子が、塗料や化粧品に添加して、それらに粘性特性、光散乱特性、その他独特の表面特性を付与するのに効果的であることが記載されている。
【0004】
また、特許文献4には、直径方向に連通する1つの切り欠き部を有する断面凹状、キノコ状、半球状又は両面レンズ状の形状を備えた重合体粒子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−120005号公報
【特許文献2】特開2011−63758号公報
【特許文献3】特開2008−163171号公報
【特許文献4】国際公開第2010/113812号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来公知の異形樹脂粒子は、上述したような形状に限られており、必ずしも所望の特性(光拡散性、密着性、吸油性等)を有するとは限らないので、さらなる改善の余地がある。新規な形状の異形樹脂粒子を提供できれば、異形樹脂粒子の光拡散性、密着性、吸油性等の特性を向上させることが可能と考えられる。
【0007】
また、特許文献1〜4には、樹脂コアが楕円体形状で偏在した異形樹脂粒子は開示されていない。このような樹脂コアが楕円体形状で偏在した異形樹脂粒子を提供できれば、異形樹脂粒子の光拡散性等の特性を向上できると考えられる。
【0008】
本発明の目的は、光拡散性、密着性、吸油性等の特性を向上できる新規な形状の異形樹脂粒子およびその製造方法、並びに、保湿性に優れた外用剤、耐傷付き性に優れた塗膜を形成可能な塗料、および光拡散性に優れた光拡散部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の異形樹脂粒子は、異形樹脂粒子の表層を形成する樹脂層と、前記樹脂層とは異なる樹脂成分からなり、前記樹脂層の内部に形成された樹脂コアとを含む異形樹脂粒子であって、単一の窪みを有し、前記樹脂コアが、楕円体形状であり、かつ前記窪みに隣接しており、前記異形樹脂粒子の長径Aに対する前記異形樹脂粒子の短径Bの比B/Aが、0.7以上であることを特徴としている。
【0010】
上記構成の異形樹脂粒子は、窪みを有しているために、比表面積が大きく、種々の用途で有利な効果が得られる。
【0011】
例えば、異形樹脂粒子をバインダー(接着剤)と混合して(光学フィルム用途などの)コーティング剤あるいは塗料を製造したときに、異形樹脂粒子の比表面積が大きいと、バインダーとの接触面積が広くなるので、バインダーに対する密着性が向上する。従って、前記コーティング剤あるいは塗料を被塗布面に塗布したときに、コーティング剤あるいは塗料の塗膜から脱落しにくくなり、耐傷付き性に優れたコーティングあるいは塗膜を形成できる。
【0012】
また、異形樹脂粒子を化粧品等の外用剤に添加したときに、異形樹脂粒子の比表面積が大きいと、吸油量が増えるので、化粧品等の外用剤の吸油性を向上できる。また、異形樹脂粒子の吸油性が高いことにより、外用剤への馴染み性を向上できる。
【0013】
また、異形樹脂粒子の比表面積が大きいことで、光拡散シート、光拡散板、照明カバー等の光拡散部材を構成する光拡散剤として異形樹脂粒子を用いたときに、光を屈折または反射させる異形樹脂粒子の(他の物質との)界面が広くなるので、光拡散性が向上する。
【0014】
また、上記構成の異形樹脂粒子は、異形樹脂粒子の長径Aに対する異形樹脂粒子の短径Bの比B/Aが0.7以上であり、表面の形状が球形に近いので、表面の摩擦抵抗が小さく滑り性が良いので、異形樹脂粒子を化粧品等の外用剤に添加したときに、触感が向上する。
【0015】
さらに、上記構成の異形樹脂粒子は、樹脂層とは異なる樹脂成分からなり、樹脂層の内部に形成された樹脂コアを有するので、樹脂層と樹脂コアとの界面で光の屈折が起こり易い。そして、樹脂コアは、窪みに隣接しているために大きく偏在しており、かつ、楕円体形状であるので、樹脂コアを囲む樹脂層の厚みは、窪みから離れるに従って厚くなる。これにより、樹脂層と樹脂コアとの界面での屈折の仕方(屈折角など)は、異形樹脂粒子への光の入射方向によって異なるものとなる。その結果、(複数の)異形樹脂粒子は、同じ方向からの光が入射しても、不均一な光拡散をする。したがって、上記構成の異形樹脂粒子は、光を屈折しやすく、光拡散シート、光拡散板、照明カバー等の光拡散部材を構成する光拡散剤として異形樹脂粒子を用いたときに、光拡散性が向上する。
【0016】
以上のように、本発明の異形樹脂粒子によれば、光拡散性、密着性、吸油性等の特性を向上できる。
【0017】
なお、本明細書において、「樹脂コアが窪みに隣接している」とは、窪みの部分における異形樹脂粒子表面と樹脂コアとの距離が、異形樹脂粒子の短径Bと樹脂コアの短径との差の半分よりも小さいことを意味するものとする。また、本明細書において、「楕円体形状」とは、球の形状、または、球ではない楕円体の形状を意味するものとする。また、本明細書において、「楕円体形状」は、楕円体の一部が欠けた形状をも包含するものとする。
【0018】
本発明の異形樹脂粒子の製造方法は、0.1〜5質量%の多官能性単量体を含むフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合して樹脂粒子を製造する第1の工程と、
第1の工程で得られた樹脂粒子に、1〜50質量%の多官能性単量体を含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体を吸収させた後、重合する第2の工程とを含むことを特徴としている。
【0019】
上記方法によれば、多官能性単量体を0.1質量%以上含むフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合させることによって樹脂粒子を得るので、得られる樹脂粒子は、架橋構造としての特性を十分に示す重合体である。これにより、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を樹脂粒子に吸収させたときに、(メタ)アクリル酸エステル系単量体が、樹脂粒子から相分離し易くなり、また、樹脂粒子の形状が維持され易くなる。また、上記方法によれば、多官能性単量体を5質量%以下で含むフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合させることによって樹脂粒子を得るので、得られる樹脂粒子は、比較的架橋度が低い架橋構造を有する重合体である。これにより、(メタ)アクリル酸エステル系単量体が、樹脂粒子に十分に吸収される。
【0020】
また、上記方法によれば、前記第2の工程における多官能性単量体の使用量が、(メタ)アクリル酸エステル系単量体の全量に対して1〜50質量%の範囲内であるので、(メタ)アクリル酸エステル系単量体が重合したときに樹脂粒子から相分離し易いと推察される。
【0021】
以上のように、上記方法によれば、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を樹脂粒子に吸収させたときに、(メタ)アクリル酸エステル系単量体が樹脂粒子に十分に吸収され、(メタ)アクリル酸エステル系単量体およびその重合体が樹脂粒子から相分離し易く、樹脂粒子の形状が維持され易い。これらの相乗効果により、相分離によって、単一の窪みを有し、樹脂コアが、窪みに隣接して存在し、球形に近い異形樹脂粒子、特に、長径Aに対する短径Bの比B/Aが0.7以上である本発明の異形樹脂粒子を製造することができる。
【0022】
さらに、上記方法では、多官能性単量体を含むフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合させて得られた樹脂粒子(すなわち架橋した種粒子)に多官能性単量体を含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体を吸収させて重合を行うので、特許文献4の実施例1〜17に記載されているような非架橋の種粒子に単量体を吸収させてシード重合を行う方法と比較して、種粒子に由来する部分の架橋度の高い異形樹脂粒子を得ることができる。それゆえ、上記方法によって得られる異形樹脂粒子は、溶剤に入れたときに種粒子に由来する部分がブリードアウトして溶出することが低減される。溶出が低減される結果、溶剤と混合して塗料またはコーティング剤とした場合、溶出による粘度の上昇によって塗工しづらくなったり、溶出により塗膜が不均質となったりすることを回避することができる。また、上記方法によって得られる異形樹脂粒子は、他の用途、例えば成形品や外用剤等に使用した場合でも、溶剤と混合したときに成分が溶出して特性が劣化することを回避でき、高い耐溶剤性を有する。従って、上記方法によって得られる異形樹脂粒子は、幅広い用途において有利な特性を有している。
【0023】
ここで、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートを意味するものとする。
【0024】
また、本明細書において、「(メタ)アクリル酸エステル系単量体」は、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする(50質量%以上含む)単量体を意味するものとする。
【0025】
なお、特許文献1〜4に記載の粒子の製造方法では、本発明に係る特有の形状を有する異形樹脂粒子を得ることが不可能である。
【0026】
まず、特許文献1の請求項1に記載の粒子の製造方法では、特許文献1の段落[0013]に記載されているように、シード重合活性点に単量体および架橋剤を均等に供給するものであるので、真球状の重合体粒子が得られる。同様に、特許文献2の請求項5に記載の粒子の製造方法でも、特許文献2の段落[0009]に記載されているように、真球状の重合体粒子が得られる。
【0027】
また、特許文献1の比較例5に記載の粒子の製造方法、および特許文献2の比較例1に記載の粒子の製造方法は、メチルメタクリレートと架橋性単量体とを共重合させて得られた樹脂粒子に単量体を吸収させてシード重合を行うので、多官能性単量体を含むフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合させて得られた樹脂粒子に単量体を吸収させてシード重合を行う本願発明の製造方法と比較して種粒子と単量体との間での相分離が起こりにくいため、ダルマ状の異形樹脂粒子しか得られない。
【0028】
また、特許文献3の請求項に記載の粒子の製造方法は、メチルメタクリレート等と架橋性単量体とを共重合させて得られた樹脂粒子に単量体を吸収させてシード重合を行うので、多官能性単量体を含むフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合させて得られた樹脂粒子に単量体を吸収させてシード重合を行う本願発明の製造方法と比較して種粒子と単量体との間での相分離が起こりにくいため、繭状の異形樹脂粒子しか得られない。
【0029】
また、特許文献4の実施例1〜17に記載の粒子の製造方法は、メチルメタクリレートの重合および分岐アルキルメタクリレートの重合により得られた非架橋の種粒子に単量体を吸収させてシード重合を行うので、多官能性単量体を含むフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合させて得られた樹脂粒子(すなわち架橋した種粒子)に単量体を吸収させてシード重合を行う本願発明の製造方法と比較して、種粒子の球形に由来する球形樹脂部分が内部に形成されにくく、また、本願発明の製造方法とは異なる形態で相分離が起こるため、直径方向に連通する1つの切り欠き部を有する断面凹状、キノコ状、半球状又は両面レンズ状の形状を備えた異形樹脂粒子しか得られない。
【0030】
本発明の外用剤は、本発明の異形樹脂粒子を含むことを特徴としている。
【0031】
上記構成によれば、樹脂粒子が吸油性に優れているため、保湿性に優れた外用剤を提供することができる。
【0032】
本発明の塗料は、本発明の異形樹脂粒子を含むことを特徴としている。
【0033】
上記構成によれば、樹脂粒子が密着性に優れており、塗膜から脱落しにくいため、耐傷付き性に優れた塗膜を形成可能な塗料を提供することができる。
【0034】
本発明の光拡散部材は、本発明の異形樹脂粒子を含むことを特徴としている。
【0035】
上記構成によれば、樹脂粒子が光拡散性に優れているため、光拡散性に優れた光拡散部材を提供することができる。
【発明の効果】
【0036】
以上のように、本発明によれば、光拡散性、密着性、吸油性等の特性を向上できる新規な形状の異形樹脂粒子およびその製造方法を提供することができる。
【0037】
また、本発明によれば、保湿性に優れた外用剤、耐傷付き性に優れた塗膜を形成可能な塗料、および光拡散性に優れた光拡散部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例に係る異形樹脂粒子を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の他の実施例で得られた異形樹脂粒子の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像することにより得られたSEM画像である。
【図3】本発明の他の実施例で得られた異形樹脂粒子の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で撮像することにより得られたTEM画像である。
【図4】本発明のさらに他の実施例で得られた異形樹脂粒子の表面をSEMで撮像することにより得られたSEM画像である。
【図5】比較例で得られた異形樹脂粒子の表面をSEMで撮像することにより得られたSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0040】
〔異形樹脂粒子〕
本発明の異形樹脂粒子の形状について、図1に基づいてさらに詳細に説明する。
【0041】
本発明の異形樹脂粒子は、例えば図1に示すように、異形樹脂粒子の表層を形成する樹脂層1と、樹脂層1の内部に形成された樹脂コア2とを含む異形樹脂粒子であって、単一の窪み3を有し、樹脂コア2が、楕円体形状であり、かつ窪み3に隣接している。また、樹脂コア2は樹脂層1とは異なる樹脂成分からなり、異形樹脂粒子の長径Aに対する異形樹脂粒子の短径Bの比B/Aは0.7以上である。なお、樹脂コア2の形状は、完全な楕円体形状でなくともよく、ほぼ楕円体形状であればよい。
【0042】
異形樹脂粒子の長径Aに対する異形樹脂粒子の短径Bの比B/Aは、0.7〜0.9の範囲内である(0.7以上0.9以下である)ことが好ましく、0.8〜0.9の範囲内であることがより好ましい。比B/Aが0.7未満である場合、異形樹脂粒子の形状が球形から遠くなり半球形に近くなるので、滑り性などの面で性能が落ちる。比B/Aが0.9を超える場合、窪み3の深さが浅くなり、異形樹脂粒子の比表面積が真球の樹脂粒子に近くなるので、樹脂粒子の形状が真球である場合に対する光拡散性、密着性、吸油性等の特性の向上効果が小さくなる。
【0043】
異形樹脂粒子の長径Aに対する窪み3の径(異形樹脂粒子の長径方向における径)Cの比C/Aは、0.1〜0.4の範囲内であることが好ましい。比C/Aが0.1未満である場合、窪み3の径(幅)Cが小さくなり、異形樹脂粒子の比表面積が真球の樹脂粒子に近くなるので、樹脂粒子の形状が真球である場合に対する光拡散性、密着性、吸油性等の特性の向上効果が小さくなる。また、比C/Aが0.4を超える場合、窪み3の径Cが大きくなることで、異形樹脂粒子の形状が球形から遠くなり半球状に近くなるので、滑り性などを向上させる効果が小さくなる。
【0044】
前記異形樹脂粒子の長径Aに対する樹脂コア2の長径Dの比D/Aは、0.2〜0.7の範囲内であることが好ましい。比D/Aが0.2未満である場合、樹脂コア2の径が小さくなり、樹脂層1と樹脂コア2との界面での屈折が起こりにくくなるので、光拡散性を向上させる効果が小さくなる。比D/Aが0.7を超える場合、樹脂層1の厚みが薄くなり、不均一な光拡散が起こりにくくなるので、光拡散性を向上させる効果が小さくなる。
【0045】
本発明の異形樹脂粒子は、比B/Aが0.7〜0.9の範囲内であり、比C/Aが0.1〜0.4の範囲内であり、かつ、比D/Aが0.2〜0.7の範囲内である場合に、異形樹脂粒子全体の形状が球形からより遠い形状となるので、光拡散性、密着性、吸油性等、滑り性の特性を向上できる。
【0046】
樹脂コア2の長径Dに対する樹脂コア2の短径Eの比E/Dは、0.7以上であることが好ましい。比E/Dが0.7未満である場合、樹脂コア2の形状が球形から遠くなり、樹脂層1と樹脂コア2との界面での屈折が起こりにくくなるので、光拡散性を向上させる効果が小さくなる。
【0047】
本発明の異形樹脂粒子は、粒子径の変動係数が15%以下であることが好ましい。これにより、異形樹脂粒子の特性の(粒子間での)均一性が向上する。従って、本発明の異形樹脂粒子を用いて光拡散部材、外用剤、塗料等の製品を作製した場合に、光学特性等の特性が均一な、光拡散部材、外用剤、塗料等の製品が得られる。
【0048】
本発明の異形樹脂粒子は、平均粒子径が0.5〜50μmの範囲内であることが好ましい。これにより、各種用途に適した粒子となる。本発明の異形樹脂粒子は、防眩フィルムの構成要素(光拡散剤)として用いる場合、平均粒子径が1.5〜8μmの範囲内であることがより好ましい。これにより、良好な防眩性を有する防眩フィルムを実現できる。また、本発明の異形樹脂粒子は、光拡散部材の構成要素(光拡散剤)として用いる場合、平均粒子径が1〜50μmの範囲内であることがより好ましく、平均粒子径が3〜10μmの範囲内であることがさらに好ましい。これにより、良好な光拡散性を有する光拡散部材を実現できる。また、本発明の異形樹脂粒子は、外用剤の原料として用いる場合、平均粒子径が1〜50μmの範囲内であることが好ましい。これにより、良好な外用剤を実現できる。また、本発明の異形樹脂粒子は、紙用コーティング剤として用いる場合、平均粒子径が0.5〜10μmの範囲内であることが好ましい。これにより、良好な紙用コーティング剤を実現できる。また、上記構成の異形樹脂粒子は、平均粒子径が1〜10μmの範囲内である場合、特に1〜3μm程度である場合に、異形樹脂粒子の形状を所望の異形形状に制御することが容易となり、異形樹脂粒子の製造が容易となる。
【0049】
樹脂層1および樹脂コア2は、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなることが好ましい。これにより、耐候性に優れた異形樹脂粒子を実現できる。なお、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とは、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする(50質量%以上含む)単量体を重合させてなる樹脂を意味する。
【0050】
樹脂層1は、樹脂層1の全質量に対して1〜50質量%の多官能性単量体で架橋されたものであることが好ましい。これにより、異形樹脂粒子の耐溶剤性を向上できる。なお、樹脂層1の全質量に対して1〜50質量%の多官能性単量体で架橋された樹脂層1は、1〜50質量%の多官能性単量体と単官能性単量体とを含む単量体混合物を重合することにより得られる。
【0051】
樹脂コア2は、樹脂コア2の全質量に対して0.1〜5質量%の多官能性単量体で架橋されたフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなることが好ましい。樹脂コア2が0.1〜5質量%の多官能性単量体で架橋されていることにより、溶剤に入れたときに種粒子に由来する部分がブリードアウトして溶出することが低減される。また、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂がフッ素を含有することにより、本発明に特有の異形形状を実現しやすくなるので、製造が容易となる。さらに、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂がフッ素を含有することにより、樹脂コア2の屈折率が低下するので、樹脂層1と樹脂コア2との界面での屈折が起こり易くなり、光拡散性が向上する。なお、樹脂コア2の全質量に対して0.1〜5質量%の多官能性単量体で架橋されたフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は、0.1〜5質量%の多官能性単量体と(単官能性の)フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体とを含む単量体混合物を重合することにより得られる。
【0052】
〔異形樹脂粒子の製造方法〕
本発明に係る異形樹脂粒子の製造方法は、多官能性単量体0.1〜5質量%を含むフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体(以下「フッ素含有単量体混合物」と呼ぶ)100質量部を重合して樹脂粒子を製造する第1の工程と、第1の工程で得られた樹脂粒子に、1〜50質量%の多官能性単量体を含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体(以下「(メタ)アクリル系単量体混合物」と呼ぶ)を吸収させた後、重合する第2の工程、すなわちシード重合工程とを含んでいる。この方法により、本発明の異形樹脂粒子を高い確実性で製造することができる。
【0053】
〔種粒子製造工程〕
第1の工程は、シード重合工程で(メタ)アクリル系単量体混合物を吸収させるのに用いる樹脂粒子、すなわち種粒子を製造する工程である。第1の工程では、(メタ)アクリル酸エステルの重合体の非存在下で、または、(メタ)アクリル酸エステルの重合体の存在下で、多官能性単量体0.1〜5質量%を含むフッ素含有単量体混合物を重合して種粒子を得る。
【0054】
前記フッ素含有単量体混合物は、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステルと、多官能性単量体とを少なくとも含んでいる。前記フッ素含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート(例えば、大阪有機化学工業株式会社製の「ビスコートV−3F」)、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート(例えば、大阪有機化学工業株式会社製の「ビスコートV−3F M」)、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート(例えば、大阪有機化学工業株式会社製の「ビスコートV−4F」)、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート(例えば、大阪有機化学工業株式会社製の「ビスコートV−8F」)、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート(例えば、大阪有機化学工業株式会社製の「ビスコートV−8F M」)などが挙げられる。これら化合物は、一種を用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0055】
前記フッ素含有(メタ)アクリル酸エステルは、フッ素含有単量体混合物に対して99.9質量%以下の範囲内で使用されるが、フッ素含有単量体混合物に対して75〜99.9質量%の範囲内で使用されることがより好ましく、フッ素含有単量体混合物に対して90〜99.9質量%の範囲内で使用されることがさらに好ましい。フッ素含有(メタ)アクリル酸エステルで75質量%以上が構成されたフッ素含有単量体混合物を重合して樹脂粒子を製造し、(メタ)アクリル系単量体混合物を樹脂粒子に吸収させたときに、(メタ)アクリル系単量体混合物が樹脂粒子から相分離し易くなり、本発明に特有の異形形状が得られ易くなる。
【0056】
前記多官能性単量体は、重合可能なアルケニル基(広義のビニル基)を1分子中に2つ以上有する化合物である。前記多官能性単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。前記多官能性単量体は、重合可能なアルケニル基と他の重合可能なアルケニル基との間に、炭素数4以上の二価の直鎖炭化水素基を含んでいないことが好ましい。前記多官能性単量体が、重合可能なアルケニル基と他の重合可能なアルケニル基との間に炭素数4以上の二価の直鎖炭化水素基を含んでいる場合、種粒子と(メタ)アクリル系単量体混合物との相分離が起こりにくくなり、本発明に特有の異形形状が得られにくくなるので、好ましくない。
【0057】
前記多官能性単量体は、フッ素含有単量体混合物100質量部に対して0.1〜5質量部の範囲内で使用されるが、フッ素含有単量体混合物100質量部に対して0.1〜3質量部の範囲内で使用されることがより好ましい。多官能性単量体をフッ素含有単量体混合物100質量部に対して0.1質量部以上とすることで、種粒子と(メタ)アクリル系単量体混合物との相分離がさらに起こり易くなり、本発明に特有の異形形状が得られ易くなる。なお、多官能性単量体が、フッ素含有単量体混合物100質量部に対して5質量部を超える場合、種粒子の架橋度が高くなり過ぎて種粒子が(メタ)アクリル系単量体混合物を吸収しにくくなり、(メタ)アクリル系単量体混合物が種粒子に吸収されることなく重合する現象が起こる。そのため、この場合、微小な粒子が多く生成されて、粒子径の変動係数(CV値)が大きくなるので、好ましくない。
【0058】
前記フッ素含有単量体混合物は、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル以外の単官能性単量体を含んでいてもよい。前記単官能性単量体は、重合可能なアルケニル基(広義のビニル基)を1分子中に1つのみ有する化合物である。フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル以外の単官能性単量体としては、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル以外の単官能性(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル以外の単官能性(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら化合物は、一種を用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル以外の単官能性単量体の使用量は、前記フッ素含有単量体混合物100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。
【0059】
前記フッ素含有単量体混合物の重合は、連鎖移動剤の存在下で行うことがより好ましい。前記連鎖移動剤としては、n−オクチルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;α−メチルスチレンダイマー;γ−テルピネン、ジペンテン等のテルペン類;クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類等を使用できる。前記連鎖移動剤としては、メルカプタン類が好ましく、n−オクチルメルカプタンが特に好ましい。前記連鎖移動剤は、前記フッ素含有単量体混合物100質量部に対して0.1〜0.9質量部の範囲内で使用されることがより好ましく、前記フッ素含有単量体混合物100質量部に対して0.1〜0.5質量部の範囲内で使用されることがさらに好ましい。前記連鎖移動剤の使用量がフッ素含有単量体混合物100質量部に対して0.9質量部以下である場合、重合によって得られる樹脂粒子の分子鎖が短くなり過ぎることがなく、樹脂粒子の形状が維持され易くなる。それゆえ、種粒子と(メタ)アクリル系単量体混合物との相分離がさらに起こり易くなり、本発明に特有の異形形状が得られ易くなる。一方、前記連鎖移動剤の使用量がフッ素含有単量体混合物100質量部に対して0.1質量部以上の場合、重合によって得られる樹脂粒子の分子鎖が長くなり過ぎることがなく、(メタ)アクリル系単量体混合物が樹脂粒子に十分に吸収される。
【0060】
第1の工程において、前記フッ素含有単量体混合物を重合させて種粒子を得る場合、乳化重合、懸濁重合等の公知の方法を用いることができる。種粒子の粒子径の均一性や製造法の簡便性を考慮すると、乳化重合が好ましい。以下に乳化重合を用いた方法について述べるが、この方法に限定されるものではない。
【0061】
前記フッ素含有単量体混合物を乳化重合させて種粒子を得る場合、まず、前記フッ素含有単量体混合物を水性媒体中に分散させて水性乳化液を作製する。
【0062】
水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール(炭素数5以下のアルコール))との混合媒体が挙げられる。水性媒体には、〔シード重合工程〕の項で後述する界面活性剤を添加しても、しなくともよい。前記フッ素含有単量体混合物を水性媒体に添加し、主攪拌、ホモジナイザー、超音波処理機、ナノマイザー等の微細乳化機により前記フッ素含有単量体混合物を水性媒体中に分散させて分散液を作製し、分散液を重合温度まで昇温する。反応系を窒素等の不活性気体でパージ(置換)した後、重合開始剤を水に溶解したものを順次、前記分散液に滴下しながら重合を行うことで、種粒子が得られる。
【0063】
前記重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物等が挙げられる。重合開始剤は、前記フッ素含有単量体混合物100質量部に対して0.1〜3質量部の範囲内で使用することが好ましい。
【0064】
次に、水性乳化液中の前記フッ素含有単量体混合物を重合させることで、種粒子が得られる。重合温度は、前記フッ素含有単量体混合物の種類、重合開始剤の種類に応じて、適宜選択することができる。重合温度は、25〜110℃が好ましく、より好ましくは50〜100℃である。必要に応じ、重合完了後、濾過等によって水性媒体から種粒子を分離し、種粒子から遠心分離等により水性媒体を除去し、水及び溶剤で洗浄した後、乾燥してもよい。
【0065】
以上のようにして、架橋されたフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなる種粒子が得られる。
【0066】
一方、第1の工程において、(メタ)アクリル酸エステルの重合体の存在下で前記フッ素含有単量体混合物を重合させて種粒子を得る場合、(メタ)アクリル酸エステルの重合体は、前記フッ素含有単量体混合物100質量部に対して100質量部以下で使用されることが好ましく、1質量部以上80質量部以下の範囲内で使用されることがより好ましい。前記フッ素含有単量体混合物100質量部に対して(メタ)アクリル酸エステルの重合体が100質量部以下の場合、種粒子と(メタ)アクリル系単量体混合物との相分離が起こり易くなって本発明に特有の異形形状を形成し易くなる。一方、前記フッ素含有単量体混合物100質量部に対して(メタ)アクリル酸エステルの重合体が1質量部以上である場合、前記フッ素含有単量体混合物が種粒子に吸収されずに水性媒体中で独自に懸濁重合し異常粒子を生成することを回避できる。
【0067】
この場合、(メタ)アクリル酸エステルを重合させて(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子を得た後、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステルと多官能性単量体とを含む前記フッ素含有単量体混合物を前記(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子に吸収させて重合させるシード重合法を用いることが好ましい。すなわち、第1の工程では、(メタ)アクリル酸エステルを重合させて(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子を得る第1の段階と、前記フッ素含有単量体混合物を前記(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子に吸収させて重合させる第2の段階との2段階で、種粒子を作成することが好ましい。これにより、後述するシード重合工程で、本発明に特有の異形形状を有する異形樹脂粒子が得られ易くなる。なお、(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子の粒子の製造方法については、後述する。
【0068】
前記シード重合法では、まず、前記フッ素含有単量体混合物を水性媒体中に分散させて水性乳化液を作製し、水性乳化液に種粒子として(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子を添加する。水性媒体としては、前述した媒体を用いることができる。水性媒体には、〔シード重合工程〕の項で後述する界面活性剤を添加してもよい。また、前述した通り、前記フッ素含有単量体混合物の重合は、連鎖移動剤の存在下で行うことがより好ましい。
【0069】
前記フッ素含有単量体混合物には、必要に応じて、前述した重合開始剤を混合してもよい。重合開始剤は、前記フッ素含有単量体混合物に予め混合させた後、水性媒体中に分散させてもよいし、両者を別々に水性媒体に分散させたものを混合してもよい。得られた水性乳化液中の前記フッ素含有単量体混合物の液滴の粒子径は、(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子よりも小さい方が、前記フッ素含有単量体混合物が(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子に効率よく吸収されるので好ましい。重合開始剤は、前記フッ素含有単量体混合物100質量部に対して0.1〜3質量部の範囲内で使用することが好ましい。
【0070】
(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子は、水性乳化液に直接添加してもよく、(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子を水性媒体に分散させた形態で水性乳化液に添加してもよい。(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子を水性乳化液に添加した後、前記フッ素含有単量体混合物を(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子に吸収させる。この吸収は、通常、(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子を添加した後の水性乳化液を、室温(約20℃)で1〜12時間撹拌することで行うことができる。また、水性乳化液を30〜50℃程度に加温することにより吸収を促進してもよい。
【0071】
(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子は、前記フッ素含有単量体混合物の吸収により膨潤する。吸収の終了は、光学顕微鏡の観察で粒子径の拡大を確認することにより判定できる。
【0072】
次に、(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子に吸収させた前記フッ素含有単量体混合物を重合させることで、種粒子が得られる。重合温度は、前記フッ素含有単量体混合物の種類、重合開始剤の種類に応じて、適宜選択することができる。重合温度は、25〜110℃が好ましく、より好ましくは50〜100℃である。重合反応は、(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子に前記フッ素含有単量体混合物が完全に吸収された後に、昇温して行うのが好ましい。必要に応じ、重合完了後、濾過等によって水性媒体から種粒子を分離し、種粒子から遠心分離等により水性媒体を除去し、水及び溶剤で洗浄した後、乾燥してもよい。
【0073】
以上のようにして、(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子の存在下での重合により、架橋されたフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなる種粒子が得られる。なお、種粒子の大きさ及び形状は、特に限定されない。種粒子には、通常、平均粒子径0.1〜5μmの球状粒子が使用される。
【0074】
〔(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子の製造方法〕
次に、種粒子製造工程において必要に応じて用いられる(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子の製造方法について説明する。
【0075】
(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子の製造方法では、(メタ)アクリル酸エステルを重合させる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステルとして先に挙げた種々の化合物等が挙げられる。これら化合物は、一種を用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。(メタ)アクリル酸エステルは、前記フッ素含有単量体混合物に含まれるフッ素含有(メタ)アクリル酸エステルと同じ化合物であってもよい。
【0076】
(メタ)アクリル酸エステルの重合方法としては、乳化重合、懸濁重合等の公知の方法を用いることができるが、(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子の粒子径均一性や製造法の簡便性を考慮すると、乳化重合が好ましい。以下に乳化重合を用いた方法について述べるが、この方法に限定されるものではない。
【0077】
(メタ)アクリル酸エステルを乳化重合させて(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子を得る場合、まず、(メタ)アクリル酸エステルを水性媒体中に分散させて水性乳化液を作製する。
【0078】
水性媒体としては、前述した媒体が挙げられる。水性媒体には、〔シード重合工程〕の項で後述する界面活性剤を添加してもよい。水性乳化液は、例えば、前述の微細乳化機による方法で作製できる。
【0079】
(メタ)アクリル酸エステルには、必要に応じて、前述した重合開始剤を混合してもよい。重合開始剤は、(メタ)アクリル酸エステルに予め混合させた後、水性媒体中に分散させてもよいし、両者を別々に水性媒体に分散させたものを混合してもよい。重合開始剤は、(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して0.1〜3質量部の範囲内で使用することが好ましい。
【0080】
(メタ)アクリル酸エステルの重合は、前述した連鎖移動剤の存在下で行うことが好ましい。前記連鎖移動剤としては、メルカプタン類が好ましく、n−オクチルメルカプタンが特に好ましい。前記連鎖移動剤は、前記(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して0.1〜0.9質量部の範囲内で使用されることが好ましく、前記(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して0.1〜0.5質量部の範囲内で使用されることがより好ましい。これにより、種粒子と(メタ)アクリル系単量体混合物との相分離が起こり易くなって本発明に特有の異形形状を形成し易くなる。
【0081】
次に、水性乳化液中の(メタ)アクリル酸エステルを重合させることで、(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子が得られる。重合温度は、(メタ)アクリル酸エステルの種類、重合開始剤の種類に応じて、適宜選択することができる。重合温度は、25〜110℃が好ましく、より好ましくは50〜100℃である。重合完了後、濾過等によって水性媒体から(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子を分離し、必要に応じて(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子から遠心分離等により水性媒体を除去し、必要に応じて水及び溶剤で洗浄した後、乾燥する。
【0082】
以上のようにして、(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子が得られる。なお、(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子の大きさ及び形状は特に限定されない。(メタ)アクリル酸エステル重合体粒子には、通常、0.1〜5μmの粒径の球状粒子が使用される。
【0083】
〔シード重合工程〕
シード重合工程(第2の工程)では、1〜50質量%の多官能性単量体を含む(メタ)アクリル系単量体混合物を前記種粒子(樹脂粒子)に吸収させた後、重合することによって、異形樹脂粒子を得る。
【0084】
前記(メタ)アクリル系単量体混合物は、(メタ)アクリル酸エステルと、多官能性単量体とを少なくとも含んでおり、前記フッ素含有単量体混合物と異なる成分を有している。(メタ)アクリル酸エステルは、重合可能なアルケニル基(広義のビニル基)を1分子中に1つ有する単官能性の(メタ)アクリル酸エステルである。前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これら単量体は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル以外の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、直鎖アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、およびアルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。これにより、種粒子と(メタ)アクリル系単量体混合物との相分離が起こり易くなって本発明に特有の異形形状を形成し易くなる。
【0085】
前記アルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、下記式(1)の化合物が挙げられる。
【0086】
【化1】
【0087】
式中、R1はH又はCH3であり、R2及びR3は異なってC2H4、C3H6,C4H8、C5H10から選択されるアルキレン基であり、mは0〜50、nは0〜50(但しmとnは同時に0にならない)であり、R4はH又はCH3である。なお、式(1)の単量体において、mが50より大きい場合及びnが50より大きい場合、重合安定性が低下し合着粒子が発生することがある。好ましいm及びnの範囲は0〜30であり、より好ましいm及びnの範囲は0〜15である。
【0088】
前記アルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、日油株式会社製のブレンマー(登録商標)シリーズ、例えば、ブレンマー(登録商標)50PEP−300(R1はCH3であり、R2はC2H5、R3はC3H6、m及びnは平均してm=3.5及びn=2.5の混合物、R4はHである)、ブレンマー(登録商標)70PEP−350B(R1はCH3であり、R2はC2H5、R3はC3H6、m及びnは平均してm=5及びn=2の混合物、R4はHである)、ブレンマー(登録商標)PP−1000(R1はCH3であり、R3はC3H6、mは0、nは平均して4〜6の混合物、R4はHである)、ブレンマー(登録商標)PME−400(R1はCH3であり、R2はC2H5、mは平均して9の混合物、nは0、R4はCH3である)等が挙げられる。
【0089】
前記多官能性単量体は、重合可能なアルケニル基(広義のビニル基)を1分子中に2つ以上有する化合物である。前記多官能性単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。前記多官能性単量体の使用量は、前記(メタ)アクリル系単量体混合物の全量に対して1〜50質量%であるが、前記(メタ)アクリル系単量体混合物の全量に対して20〜50質量%であることがより好ましい。多官能性単量体の使用量が、前記(メタ)アクリル系単量体混合物の全量に対して20質量%以上である場合、種粒子と(メタ)アクリル系単量体混合物との相分離が起こり易くなって本発明に特有の異形形状を形成し易くなると推察される。
【0090】
前記(メタ)アクリル系単量体混合物は、(メタ)アクリル酸エステル以外の単官能性単量体を含んでいてもよい。(メタ)アクリル酸エステル以外の単官能性単量体としては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリルアミド;酢酸ビニル;アクリロニトリル等が挙げられる。これら化合物は、一種を用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。(メタ)アクリル酸エステル以外の単官能性単量体の使用量は、前記(メタ)アクリル系単量体混合物の全量に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0091】
シード重合工程では、(メタ)アクリル系単量体混合物を水性媒体中に分散させて水性乳化液を作製する。水性媒体としては、前述した媒体が挙げられる。水性乳化液は、例えば、前述の微細乳化機による方法で作製できる。
【0092】
水性乳化液には、界面活性剤が含まれていることが好ましい。界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、および両性イオン系界面活性剤の何れをも用いることができる。
【0093】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩、アルケルニルコハク酸塩(ジカリウム塩)、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0094】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。両性イオン系界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイドや、リン酸エステル系又は亜リン酸エステル系界面活性剤が挙げられる。上記界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記界面活性剤のうち、重合時の分散安定性の観点から、アニオン系界面活性剤が好ましい。
【0095】
(メタ)アクリル系単量体混合物は、必要に応じて重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤は、(メタ)アクリル系単量体混合物に予め混合させた後、水性媒体中に分散させてもよいし、両者を別々に水性媒体に分散させたものを混合してもよい。得られた水性乳化液中の(メタ)アクリル系単量体混合物の液滴の粒子径は、種粒子よりも小さい方が、(メタ)アクリル系単量体混合物が種粒子に効率よく吸収されるので好ましい。
【0096】
種粒子は、水性乳化液に直接添加してもよく、種粒子を水性媒体に分散させた形態で添加してもよい。種粒子の水性乳化液への添加後、種粒子へ(メタ)アクリル系単量体混合物を吸収させる。この吸収は、通常、種粒子添加後の水性乳化液を、室温(約20℃)で1〜12時間撹拌することで行うことができる。また、水性乳化液を30〜50℃程度に加温することにより吸収を促進してもよい。
【0097】
種粒子は、(メタ)アクリル系単量体混合物の吸収により膨潤する。種粒子1質量部に吸収させる(メタ)アクリル系単量体混合物の量は、2〜125質量部の範囲内であることが好ましく、2〜50質量部の範囲内であることがより好ましく、2〜30質量部の範囲内であることがさらに好ましい。種粒子1質量部に吸収させる(メタ)アクリル系単量体混合物の量は、2〜125質量部の範囲内である場合、異形樹脂粒子の長径Aに対する樹脂コア2の長径Dの比D/Aが0.2〜0.7の範囲内である異形樹脂粒子が得られやすいので、光拡散性をより向上させることができる。種粒子1質量部に吸収させる(メタ)アクリル系単量体混合物の量が2質量部以上である場合、シード重合による粒子径の増加が十分に大きくなり生産性が向上する。種粒子1質量部に吸収させる(メタ)アクリル系単量体混合物の量が50質量部以下である場合、前記(メタ)アクリル系単量体混合物が種粒子に吸収されずに水性媒体中で独自に懸濁重合し異常粒子を生成することを回避できる。
【0098】
(メタ)アクリル系単量体混合物には、必要に応じて重合開始剤を混合できる。重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物等が挙げられる。重合開始剤は、(メタ)アクリル系単量体混合物100質量部に対して、0.1〜3質量部の範囲内で使用することが好ましい。
【0099】
上記シード重合工程において、生成する異形樹脂粒子の分散安定性を向上させるために、水性乳化液に高分子分散安定剤を添加してもよい。高分子分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。また、高分子分散安定剤と、トリポリリン酸ナトリウム等の無機系水溶性高分子化合物とを併用することもできる。これら高分子分散安定剤のうち、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンが好ましい。高分子分散安定剤の添加量は、(メタ)アクリル系単量体混合物100質量部に対して1〜10質量部の範囲内であることが好ましい。
【0100】
また、上記シード重合工程において、水系での乳化粒子の発生を抑えるために、水性乳化液に、亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸塩類、亜硫酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類、水溶性ビタミンB類、クエン酸、ポリフェノール類等の水溶性の重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤の添加量は、(メタ)アクリル系単量体混合物100質量部に対して0.02〜0.2質量部の範囲内であることが好ましい。
【0101】
次に、種粒子に吸収させた(メタ)アクリル系単量体混合物を重合させることで、異形樹脂粒子が得られる。重合温度は、(メタ)アクリル系単量体混合物の種類、重合開始剤の種類に応じて、適宜選択することができる。重合温度は、25〜110℃の範囲内であることが好ましく、50〜100℃の範囲内であることがより好ましい。重合反応は、種粒子に(メタ)アクリル系単量体混合物が完全に吸収された後に、昇温して行うのが好ましい。重合完了後、濾過等によって水性媒体から異形樹脂粒子を分離し、必要に応じて異形樹脂粒子から遠心分離等により水性媒体を除去し、必要に応じて水及び溶剤で洗浄した後、乾燥する。
【0102】
以上のようにして、異形樹脂粒子の表層を形成する樹脂層と、前記樹脂層とは異なる樹脂成分からなり、前記樹脂層の内部に形成された樹脂コアとを含む異形樹脂粒子であって、単一の窪みを有し、樹脂コアが、窪みに隣接して存在し、球形に近い異形樹脂粒子、特に、長径Aに対する短径Bの比B/Aが0.7以上である本発明の異形樹脂粒子を作成することができる。
【0103】
〔外用剤〕
本発明の異形樹脂粒子は、外用剤の原料として、例えば外用剤の滑り性向上剤として、使用できる。本発明の外用剤は、本発明の異形樹脂粒子を含んでいる。外用剤における異形樹脂粒子の含有量は、外用剤の種類に応じて適宜設定できるが、1〜80質量%の範囲内が好ましく、5〜70質量%の範囲内であることがより好ましい。外用剤全量に対する異形樹脂粒子の含有量が1質量%未満の場合、異形樹脂粒子の含有による明確な効果が認められないことがある。また、異形樹脂粒子の含有量が80質量%を上回ると、含有量の増加に見合った顕著な効果が認められないことがあるため、生産コスト上好ましくない。
【0104】
外用剤としては、例えば化粧料(化粧品)、外用医薬品等が挙げられる。
【0105】
前記化粧料としては、上記異形樹脂粒子の含有により効果を奏するものであれば特に限定されず、例えば、プレシェーブローション、ボディローション、化粧水、クリーム、乳液、ボディシャンプー、制汗剤等の液系の化粧料;石鹸、スクラブ洗顔料等の洗浄用化粧品;パック類;ひげ剃り用クリーム;おしろい類;ファンデーション;口紅;リップクリーム;頬紅;眉目化粧品;マニキュア化粧品;洗髪用化粧品;染毛料;整髪料;芳香性化粧品;歯磨き;浴用剤;日焼け止め製品;サンタン製品;ボディーパウダー、ベビーパウダー等のボディー用の化粧料等が挙げられる。
【0106】
前記外用医薬品としては、皮膚に適用するものであれば特に制限されず、例えば、医薬用クリーム、軟膏、医薬用乳剤、医薬用ローション等が挙げられる。
【0107】
また、これらの外用剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、一般に用いられている主剤または添加物を目的に応じて配合できる。そのような主剤または添加物としては、例えば、水、低級アルコール(炭素数5以下のアルコール)、油脂及びロウ類、炭化水素(ワセリン、流動パラフィン等)、高級脂肪酸(ステアリン酸等の炭素数12以上の脂肪酸)、高級アルコール(セチルアルコール等の炭素数6以上のアルコール)、ステロール、脂肪酸エステル(ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸エステル等)、金属石鹸、保湿剤、界面活性剤(ポリエチレングリコール等)、高分子化合物、粘土鉱物類(体質顔料および吸着剤などの数種の機能を兼ね備えた成分;タルク、マイカ等)、色材原料(赤色酸化鉄、黄色酸化鉄等)、香料、防腐・殺菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、アクリル樹脂粒子(ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子)、シリコーン系粒子、ポリスチレン粒子等の樹脂粒子、本発明の異形樹脂粒子以外の異形樹脂粒子、pH調整剤(トリエタノールアミン等)、特殊配合添加物、医薬品活性成分等が挙げられる。
【0108】
〔塗料〕
本発明の異形樹脂粒子は、塗膜軟質化剤又は塗料用艶消し剤等として塗料に含有させることが可能である。前記塗料は、本発明の異形樹脂粒子を含んでいる。前記塗料は、必要に応じて、バインダー樹脂および溶剤の少なくとも一方を含んでいる。前記バインダー樹脂としては、有機溶剤もしくは水に可溶な樹脂、または水中に分散できるエマルション型の水性樹脂を使用できる。そのようなバインダー樹脂としては、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂等が挙げられる。これらバインダー樹脂は、塗装される基材への塗料の密着性や使用される環境等によって適宜選択され得る。
【0109】
バインダー樹脂及び異形樹脂粒子の添加量は、形成される塗膜の膜厚、異形樹脂粒子の平均粒子径、塗装方法によっても異なる。バインダー樹脂の添加量は、バインダー樹脂(エマルション型の水性樹脂を使用する場合には固形分)と異形樹脂粒子との合計に対して、5〜50質量%の範囲内であることが好ましく、10〜50質量%の範囲内であることがより好ましく、20〜40質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0110】
異形樹脂粒子の添加量は、バインダー樹脂(エマルション型の水性樹脂を使用する場合には固形分)と異形樹脂粒子との合計に対して、5〜50質量%の範囲内であることが好ましく、10〜50質量%の範囲内であることがより好ましく、20〜40質量%の範囲内であることがさらに好ましい。異形樹脂粒子の含有量が5質量%未満である場合、艶消し効果が十分得られないことがある。また、異形樹脂粒子の含有量が50質量%を越える場合には、塗料組成物の粘度が大きくなりすぎるために異形樹脂粒子の分散不良が起こることがある。そのため、得られる塗膜にマイクロクラックが発生する、得られる塗膜表面にザラツキが生じる等のような、塗膜の外観不良が起こることがある。
【0111】
前記塗料を構成する溶剤としては、特に限定されないが、バインダー樹脂を溶解又は分散できる溶剤を使用することが好ましい。例えば、前記塗料が油性塗料である場合、前記溶剤として、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤等が挙げられる。前記塗料が水性塗料である場合、前記溶剤として、水、アルコール類等が使用できる。これら溶剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。塗料中における溶剤の含有量は、塗料全量に対し、通常、20〜60質量%の範囲内である。
【0112】
塗料には、必要に応じて、公知の塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、体質顔料、着色顔料、金属顔料、マイカ粉顔料、染料等が含まれていてもよい。
【0113】
塗料を使用した塗膜の形成方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。塗膜の形成方法としては、例えば、スプレー塗装法、ロール塗装法、ハケ塗り法等の方法が挙げられる。塗料は、必要に応じて粘度を調整するために、希釈剤を加えて希釈してもよい。希釈剤としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;水;アルコール系溶剤等が挙げられる。これら希釈剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0114】
〔光拡散性樹脂組成物〕
本発明の異形樹脂粒子を光拡散剤として、透明基材樹脂(透明性樹脂)中に分散させることで、光拡散性樹脂組成物として使用できる。すなわち、前記光拡散性樹脂組成物は、本発明の異形樹脂粒子と、透明基材樹脂とを含んでいる。前記光拡散性樹脂組成物は、照明カバー(発光ダイオード(LED)照明用照明カバー、蛍光灯照明用照明カバー等)、光拡散部材(光拡散シートあるいは光拡散フィルム、光拡散板等)の原料として使用できる。
【0115】
前記透明基材樹脂としては、通常、異形樹脂粒子を構成する重合体粒子の成分と異なる熱可塑性樹脂が使用される。前記透明基材樹脂として使用する熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。これら熱可塑性樹脂の中でも、優れた透明性が透明基材樹脂に求められる場合には、アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、およびポリスチレンが好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0116】
透明基材樹脂への異形樹脂粒子の添加割合は、透明基材樹脂100質量部に対して、0.01〜40質量部の範囲内であることが好ましく、0.1〜10質量部の範囲内であることがより好ましい。異形樹脂粒子が0.01質量部未満の場合、光拡散部材に光拡散性を与えにくくなることがある。異形樹脂粒子が40質量部より多い場合、光拡散部材に光拡散性を与えられるが光拡散部材の光透過性が低くなることがある。
【0117】
光拡散性樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、異形樹脂粒子と透明基材樹脂とを機械式粉砕混合方法等のような従来公知の方法で混合することにより製造できる。機械式粉砕混合方法では、例えば、ヘンシェルミキサー、V型混合機、ターブラミキサー、ハイブリダイザー、ロッキングミキサー等の装置を用いて異形樹脂粒子と透明基材樹脂とを混合し撹拌することにより、光拡散性樹脂組成物を製造できる。
【0118】
光拡散性樹脂組成物を成形することにより、本発明に係る、照明カバー、光拡散シート等の光拡散部材を製造できる。この場合、例えば、光拡散剤と透明基材樹脂とを混合機で混合し、押出機等の溶融混練機で混練することで光拡散性樹脂組成物からなるペレットを得た後、このペレットを押出成形するか、あるいはこのペレットを溶融後に射出成形することにより、任意の形状の光拡散部材を得ることができる。
【0119】
光拡散シートは、例えば、液晶表示装置の光拡散シートとして使用できる。液晶表示装置の構成は、光拡散シートを含みさえすれば、特に限定されない。例えば、液晶表示装置は、表示面及び裏面を有する液晶表示パネルと、この液晶表示パネルの裏面側に配置された導光板と、導光板の側面に光を入射させる光源とを少なくとも備えている。また、液晶表示装置は、導光板における、液晶表示パネルに対向する面上に光拡散シートを備え、導光板における、液晶表示パネルに対向する面の反対面側に反射シートを備えている。この光源の配置は、一般にエッジライト型バックライト配置と称される。さらに、光源の配置としては、上記エッジライト型バックライト配置以外に、直下型バックライト配置もある。この配置は、具体的には、液晶表示パネルの裏面側に光源を配置し、液晶表示パネルと光源との間に配置された光拡散シートを少なくとも備えた配置である。
【0120】
〔光拡散性コーティング剤〕
前記の異形樹脂粒子を含む塗料において、バインダー樹脂を含む透明の塗料、すなわち、透明のバインダー樹脂を含み、顔料、染料等の非透明材料を含まない塗料は、紙用コーティング剤、光拡散部材用コーティング剤等の光拡散性コーティング剤として使用することができる。この場合、異形樹脂粒子は、光拡散剤として機能する。
【0121】
基材としての透明基材上に光拡散性コーティング剤(光拡散部材用コーティング剤)を塗装して透明の塗膜(光拡散性コーティング)を形成することで、本発明の光拡散部材を製造することができる。
【0122】
前記透明基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド等の樹脂からなる樹脂基材、透明なガラスシート等の無機基材から、適宜選択して使用できる。また、前記透明基材の厚さは、特に限定されるものではないが、加工のしやすさやハンドリング性を考慮して10〜500μmの範囲内とすることが好ましい。光拡散性コーティングを形成する方法としては、リバースロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法、コンマコート法、スプレーコート法等の公知の方法を用いることができる。光拡散性コーティングの厚みは、特に限定されるものではないが、光拡散性、膜強度等を考慮して、1〜100μmの範囲内とすることが好ましく、3〜30μmの範囲内とすることがより好ましい。
【0123】
基材としての紙上に光拡散性コーティング剤(紙用コーティング剤)を塗装して透明の塗膜を形成することで、艶消し紙を製造することができる。塗膜の形成方法としては、前述した方法を使用することができるが、異形樹脂粒子に由来する凹凸が塗膜表面に形成されるような方法を使用することが好ましい。また、前記透明基材樹脂としては、前述した光拡散性樹脂組成物に用いられる透明基材樹脂を用いることができる。光拡散部材用コーティング剤の塗装により得られる光拡散部材は、防眩フィルムとして用いることができ、また、前述した光拡散性樹脂組成物の成形により得られる光拡散部材と同様の用途にも用いることができる。
【実施例】
【0124】
以下、実施例および比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0125】
〔種粒子の平均粒子径の測定方法〕
種粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製、LS230型)で測定した。具体的には、試験管に、種粒子0.1gおよび0.1%ノニオン性界面活性剤溶液10mlを投入し、タッチミキサー(ヤマト科学株式会社製、「TOUCHMIXER MT−31」)で2秒間混合した。この後、試験管内の種粒子を市販の超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア製、「ULTRASONIC CLEARNER VS−150」)を用いて10分間分散させて、分散液を得た。分散液に超音波を照射しながら、分散液中の種粒子の平均粒子径をレーザー回折散乱粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製、LS230型)にて測定した。その測定のときの光学モデルは、作製した種粒子の屈折率に合わせた。種粒子の製造に1種類の単量体を用いた場合には、種粒子の屈折率としてその単量体の単独重合体の屈折率を用いた。種粒子の製造に複数種類の単量体を用いた場合には、種粒子の屈折率として、各単量体の単独重合体の屈折率を各単量体の使用量で加重平均した平均値を用いた。
【0126】
〔異形樹脂粒子の平均粒子径の測定方法〕
異形樹脂粒子の平均粒子径は、コールター方式精密粒度分布測定装置マルチサイザーII(ベックマン・コールター株式会社製)を用いてコールター方式にて測定した。測定方法は、Coulter Electronics Limited発行のReference MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER(1987)に従って、50μmアパチャーを用いてマルチサイザーIIのキャリブレーションを行い、平均粒子径の測定を行った。
【0127】
具体的には、異形樹脂粒子0.1gを0.1%ノニオン系界面活性剤水溶液10ml中にタッチミキサーおよび超音波を用いて分散させて、分散液とした。マルチサイザーII本体に備え付けの測定用電解液「ISOTON(登録商標)II」(ベックマン・コールター株式会社製)を満たしたビーカー中に、前記分散液を緩く攪拌しながらスポイトで滴下して、マルチサイザーII本体画面の濃度計の示度を10%前後に合わせた。次に、マルチサイザーII本体に、アパチャーサイズ(径)を50μm、Current(アパーチャー電流)を800μA、Gain(ゲイン)を4、Polarity(内側電極の極性)を+と入力して、manual(手動モード)で体積基準の粒度分布を測定した。なお、アパチャーサイズ等は、必要に応じて変更して入力可能である。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、粒子10万個の粒度分布を測定した時点で測定を終了した。そして、測定した体積基準の粒度分布における算術平均径を平均粒子径とした。
【0128】
〔異形樹脂粒子の粒子径の変動係数(CV値)の測定方法〕
異形樹脂粒子の粒子径のCV値は、前述の体積基準の粒度分布の測定を行った際の標準偏差(σ)及び平均粒子径(D)から、以下の式により算出した。
【0129】
CV値(%)=(σ/D)×100
〔種粒子製造例1〕
まず、攪拌機および温度計を備える反応器内に、水性媒体としての純水3500gを入れた。次いで、反応器内の純水に、(メタ)アクリル酸エステルとしてのメチルメタクリレート396gと、連鎖移動剤としてのn−オクチルメルカプタンを1.2gとを投入した。続いて、窒素パージ(窒素置換)を行い、55℃まで昇温した。その後、重合開始剤としての過硫酸カリウム2.0gを純水100gに溶解した溶液を反応器内の内容物に添加して、再び窒素パージを行った。その後、攪拌しながら55℃で12時間重合を行い、種粒子(以下「種粒子(1)」と呼ぶ)をスラリーの状態で得た。種粒子(1)の平均粒子径を前述の方法で測定したところ、種粒子(1)の平均粒子径は0.45μmであった。
【0130】
〔種粒子製造例2〕
まず、攪拌機および温度計を備える反応器内に、水性媒体としての純水3500gを入れた。次いで、反応器内の純水に、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステルとしてのトリフルオロエチルメタクリレート396gと、多官能性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート4g(単量体混合物の全量に対して1質量%)と、連鎖移動剤としてのn−オクチルメルカプタン1.2gと、(メタ)アクリル酸エステルの重合体としての、種粒子製造例1で得られた種粒子(1)285gとを投入した。続いて、反応器内の窒素パージを行い、55℃まで昇温した。その後、重合開始剤としての過硫酸カリウム2.0gを純水100gに溶解した溶液を反応器内の内容物に添加して、再び窒素パージを行った。その後、攪拌しながら55℃で12時間重合を行い、種粒子(以下「種粒子(2)」と呼ぶ)をスラリーの状態で得た。種粒子(2)の平均粒子径を前述の方法で測定したところ、種粒子(2)の平均粒子径は1.0μmであった。
【0131】
〔種粒子製造例3〕
トリフルオロエチルメタクリレート396gに代えてメチルメタクリレート396gを用いること以外は種粒子製造例2と同様にして、種粒子を製造した。これにより、種粒子(以下「種粒子(3)」と呼ぶ)がスラリーの状態で得られた。種粒子(3)の平均粒子径を前述の方法で測定したところ、種粒子(3)の平均粒子径は1.0μmであった。
【0132】
〔実施例1〕
まず、高速攪拌機および温度計を備えた反応器内に、水性媒体としてのイオン交換水80gを入れ、次いで、反応器内のイオン交換水に、アニオン系界面活性剤としてのジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(商品名「ラピゾール(登録商標)A−80」、日油株式会社製)0.8gを添加した。その後、反応器の内容物に、単官能性の(メタ)アクリル酸エステルとしてのメチルメタクリレート56gと、多官能性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート24g(単量体混合物の全量に対して30質量%)と、重合開始剤としての過酸化ベンゾイル0.5gとを添加し、高速攪拌機にて8000rpmの攪拌速度で10分間攪拌を行い、乳化液を得た。
【0133】
その後、前記乳化液に、種粒子製造例2で得られた種粒子(2)を36.6g添加し、30℃で2時間かけて種粒子(2)に前記乳化液を吸収させて、種粒子(2)を膨潤させた。その後、反応器の内容物に、水性媒体としてのイオン交換水240gと、高分子分散安定剤としてのポリビニルアルコール3.2gとを添加し、さらに重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウム0.064gを添加し、攪拌しながら50℃で6時間重合を行った。重合後の反応液を濾過することにより、樹脂粒子を反応液から分離した。分離された樹脂粒子を温水で良く洗浄した後、乾燥を行い、樹脂粒子を得た。
【0134】
得られた樹脂粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像し、図2のSEM画像を得た。た。また、得られた樹脂粒子から樹脂粒子の中心を含む薄切片を切り出し、薄切片を染色して透過型電子顕微鏡(TEM)で撮像し、図3のTEM画像を得た。た。図2のSEM画像および図3のTEM画像より、樹脂粒子は、単一の窪みを有する異形樹脂粒子であることが分かった。また、図3のTEM画像より、前記異形樹脂粒子は、異形樹脂粒子の表層を形成する樹脂層(図3における、白い部分を囲む黒い部分)と、前記樹脂層の内部に形成された樹脂コア(図3における、白い部分、および白い部分に囲まれた黒い部分)とを含むことが分かった。また、図3のTEM画像より、前記異形樹脂粒子の樹脂コアは、楕円体の一部が欠けた形状(楕円体形状)であり、かつ前記窪みに隣接していることが分かった。
【0135】
また、図3のTEM画像(下端部のスケールバーは500nmである)より異形樹脂粒子の長径Aおよび短径Bを測定し、長径Aに対する短径Bの比B/Aを求めたところ、比B/Aは0.88であった。また、図3のTEM画像より窪みの径Cを測定し、長径Aに対する窪みの径Cの比C/Aを求めたところ、比C/Aは0.33であった。また、図3のTEM画像より樹脂コアの長径Dを測定し、異形樹脂粒子の長径Aに対する樹脂コアの長径Dの比D/Aを求めたところ、比D/Aは0.53であった。
【0136】
また、得られた異形樹脂粒子の平均粒子径を前述の方法で測定したところ、異形樹脂粒子の平均粒子径は2.5μmであった。また、得られた異形樹脂粒子の粒子径のCV値を前述の方法で測定したところ、異形樹脂粒子の粒子径のCV値は12%であり、異形樹脂粒子は単分散粒子であることが分かった。
【0137】
〔実施例2〕
単官能性の(メタ)アクリル酸エステルとしてメチルメタクリレート56gに代えてブチルメタクリレート56gを用いること以外は実施例1と同様の製造方法により、樹脂粒子を製造した。
【0138】
得られた樹脂粒子をSEMで撮像し、図4のSEM画像を得た。また、得られた樹脂粒子から樹脂粒子の中心を含む薄切片を切り出し、薄切片を染色してTEMで撮像した。図4のSEM画像および図示しないTEM画像より、樹脂粒子は、単一の窪みを有する異形樹脂粒子であることが分かった。また、TEM画像より、前記異形樹脂粒子は、異形樹脂粒子の表層を形成する樹脂層と、前記樹脂層の内部に形成された樹脂コアとを含むことが分かった。また、TEM画像より、前記異形樹脂粒子の樹脂コアは、楕円体形状であり、かつ前記窪みに隣接していることが分かった。
【0139】
また、TEM画像より異形樹脂粒子の長径Aおよび短径Bを測定し、長径Aに対する短径Bの比B/Aを求めたところ、比B/Aは0.82であった。また、TEM画像より窪みの径Cを測定し、長径Aに対する窪みの径Cの比C/Aを求めたところ、比C/Aは0.16であった。また、TEM画像より樹脂コアの長径Dを測定し、異形樹脂粒子の長径Aに対する樹脂コアの長径Dの比D/Aを求めたところ、比D/Aは0.56であった。
【0140】
また、得られた異形樹脂粒子の平均粒子径を前述の方法で測定したところ、異形樹脂粒子の平均粒子径は2.5μmであった。また、得られた異形樹脂粒子の粒子径のCV値を前述の方法で測定したところ、異形樹脂粒子の粒子径のCV値は12%であり、異形樹脂粒子は単分散粒子であることが分かった。
【0141】
実施例1および実施例2における、異形樹脂粒子の長径Aに対する異形樹脂粒子の短径Bの比B/A、異形樹脂粒子の長径Aに対する窪みの径Cの比C/A、および異形樹脂粒子の長径Aに対する樹脂コアの長径Dの比D/Aの値を、表1にまとめて示す。
【0142】
【表1】
【0143】
〔比較例1〕
種粒子(2)36.6gに代えて、種粒子製造例3で得られた種粒子(3)36.6gを用いる以外は実施例1と同様の製造方法により、樹脂粒子を製造した。
【0144】
得られた樹脂粒子をSEMで撮像し、図5のSEM画像を得た。また、得られた樹脂粒子から樹脂粒子の中心を含む薄切片を切り出し、薄切片を染色してTEMで撮像した。SEM画像およびTEM画像より、樹脂粒子は、窪みを有していない均質な真球状樹脂粒子であることが分かった。
【0145】
〔吸油量の測定〕
実施例1、実施例2、および比較例1の樹脂粒子の吸油量を、JIS K 5101−13−2の測定方法をベースとして、煮アマニ油に代えて一級アマニ油を使用し、終点の判断基準を変更した(「測定板をたてても、試料が流動しない」時点に変更した)方法によって、測定した。吸油量の測定の詳細は、以下の通りである。
【0146】
(A)装置及び器具
測定板:300×400×5mmより大きい平滑なガラス板
パレットナイフ(ヘラ):鋼製又はステンレス製の刃を持った柄つきのもの
化学はかり(計量器): 10mgオーダーまで計れるもの
ビュレット:JIS R 3505に規定する容量10mlのもの
(B)試薬
一級アマニ油:和光純薬工業株式会社製
(C)測定方法
(1) 樹脂粒子1gを測定板上の中央部に取り、一級アマニ油をビュレットから一回に4,5滴ずつ、徐々に樹脂粒子の中央に滴下し、その都度、樹脂粒子および一級アマニ油の全体をパレットナイフで充分練り合わせる。
【0147】
(2) 上記の滴下及び練り合わせを繰り返し、樹脂粒子および一級アマニ油の全体が硬いパテ状の塊になったら1滴ごとに練り合わせて、一級アマニ油の最後の1滴の滴下によりペースト(樹脂粒子および一級アマニ油の混練物)が急激に軟らかくなり、流動を始める点を終点とする。
【0148】
(3) 流動の判定
一級アマニ油の最後の1滴の滴下により、ペーストが急激に軟らかくなり、測定板を垂直に立てた時にペーストが動いた場合に、ペーストが流動していると判定する。測定板を垂直に立てた時もペーストが動かない場合には、更に一級アマニ油を1滴加える。
【0149】
(4) 終点に達したときの一級アマニ油の消費量をビュレット内の液量の減少分として読み取る。
【0150】
(5) 1回の測定時間は7〜15分以内に終了するように実施し、測定時間が15分を超えた場合は再測定し、規定の時間内で測定を終了した時の数値を採用する。
【0151】
(D)吸油量の計算
下記式により試料100g当たりの吸油量を計算する。
【0152】
O=(V/m)×100
ここで、O:吸油量(ml/100g)、m:樹脂粒子の質量(g)、V:消費した一級アマニ油の容積(ml)
実施例1、実施例2、および比較例1の樹脂粒子の吸油量を測定した結果を表2に示す。なお、表2に示す吸油量の値は、各樹脂粒子の吸油量の測定を3回行い、その測定値を平均した平均値である。
【0153】
〔比表面積の測定〕
実施例1、実施例2、および比較例1の樹脂粒子の比表面積を、JIS R 1626に記載のBET(Brunauer−Emmett−Teller)法(窒素吸着法)により、測定機として株式会社島津製作所製の自動比表面積/細孔分布測定装置「TriStar(登録商標)3000」を用いて測定した。対象となる樹脂粒子について、上記自動比表面積/細孔分布測定装置「Tristar(登録商標)3000」を用いてBET窒素吸着等温線を測定し、窒素吸着量からBET多点法を用いて比表面積を算出した。なお、窒素吸着等温線の測定は、吸着質として窒素を用い、吸着質断面積0.162nm2の条件下で定容法を用いて行った。
【0154】
実施例1、実施例2、および比較例1の樹脂粒子の比表面積を測定した結果を表2に示す。なお、表2に示す比表面積の値は、各樹脂粒子の比表面積の測定を3回行い、その測定値を平均した平均値である。
【0155】
【表2】
【0156】
実施例1および実施例2の異形樹脂粒子は、比較例1の真球状樹脂粒子よりも、比表面積が広く、吸油量も多かった。
【0157】
これは、実施例1および実施例2の異形樹脂粒子は窪みを有しているために、比較例1の真球状樹脂粒子よりも比表面積が広く、その分だけ吸油面積も広くなるためである。それゆえ、実施例1および実施例2の異形樹脂粒子を化粧液等の外用剤や塗料に用いた場合、樹脂粒子における媒体(溶剤等)に接する面が大きくなり、媒体(他の成分)への樹脂粒子の馴染みが良くなる(樹脂粒子の脱落が少なくなる等)と考えられる。
【0158】
〔実施例3:外用剤への異形樹脂粒子の配合例〕
実施例1の異形樹脂粒子2gと、イオン交換水9gと、低級アルコールとしてのエタノール1gとを混合して、本発明の外用剤の一例としてのボディローションを作成した。
【0159】
〔実施例4:外用剤への異形樹脂粒子の配合例〕
実施例1の異形樹脂粒子に代えて実施例2の異形樹脂粒子を用いる以外は、実施例3と同様にして、本発明の外用剤の一例としてのボディローションを作成した。
【0160】
〔比較例2〕
実施例1の異形樹脂粒子に代えて比較例1の真球状樹脂粒子を用いる以外は、実施例3
と同様にして、比較用のボディローションを作成した。
【0161】
〔保湿性(しっとり感)の評価〕
実施例3、実施例4、および比較例2のボディローションを手首に塗布した際、指で触った際のしっとり感について、パネラー10名により官能評価を実施した。しっとり感の官能評価結果は、下記の五段階評価による評価値の平均値で算出した。
【0162】
1・・・非常にしっとりしている
2・・・しっとりしている
3・・・ややしっとりしている
4・・・少し、しっとりしている
5・・・全くしっとりしていない
実施例3、実施例4、および比較例2のボディローションについてのしっとり感の官能評価結果を表3に示す。
【0163】
【表3】
【0164】
ボディローションの保湿性は樹脂粒子の吸油量の結果と相関し、樹脂粒子の比表面積が広いほどボディローションの保湿性は高いという結果が得られた。実施例3および実施例4のボディローションの保湿性は、比較例2のボディローションの保湿性より優れていた。
【0165】
〔実施例5:光拡散フィルムの作製例〕
実施例1の異形樹脂粒子20質量部と、バインダー樹脂としてのアクリル系バインダー(商品名:ダイヤナール(登録商標)BR−116、三菱レイヨン株式会社製)20質量部とを混ぜ、得られた混合物に対して、トルエンとメチルエチルケトンとを容量比1:1で混合した混合溶剤180質量部を添加し、遠心攪拌機によって3分間攪拌し、溶液を得た。この溶液を3時間放置した後、再び遠心攪拌機により3分間攪拌し、本発明の塗料の一例としての溶液(光拡散性コーティング剤)を得た。この後、得られた溶液を透明基材としての厚み100μmのPETフィルム上に75μmコーターを用いて塗工した。得られたフィルムを70℃に保った乾燥機にて1時間乾燥することにより、本発明の光拡散部材の一例としての総厚(乾燥膜厚)110μm〜120μm程度の光拡散フィルムを得た。
【0166】
〔実施例6:光拡散フィルムの作製例〕
実施例1の異形樹脂粒子に代えて実施例2の異形樹脂粒子を用いる以外は、実施例5と同様にして、本発明の光拡散部材の一例としての光拡散フィルムを得た。
【0167】
〔比較例3〕
実施例1の異形樹脂粒子に代えて比較例1の樹脂粒子を用いる以外は、実施例5と同様にして、比較用の光拡散フィルムを得た。
【0168】
〔光拡散フィルムの耐傷付き性(樹脂粒子の脱落性)の試験〕
実施例5、実施例6、および比較例3の光拡散フィルムにおける樹脂粒子含有層表面を、摩擦堅牢度試験機を用いて布で20回往復研磨し、研磨後の光拡散フィルムの耐傷付き具合を目視で観察した。
【0169】
そして、研磨後の光拡散フィルムに3本以下の線傷が見られる場合を耐傷付き性が「○」、4本以上9本以下の線傷が見られる場合を耐傷付き性が「△」、10本以上の線傷が見られる場合を耐傷付き性が「×」と判定した。
【0170】
【表4】
【0171】
比表面積がより広い実施例1の異形樹脂粒子の方が、比表面積がより狭い比較例1の真球状樹脂粒子と比較して、バインダー樹脂との馴染みが良く、光拡散フィルムからの脱落が少なくなり、光拡散フィルム表面に傷が形成されにくくなる(光拡散フィルムの耐傷付き性が向上する)ことが確認できた。
【0172】
〔光拡散フィルムの光拡散性の評価〕
実施例5、実施例6、および比較例3の光拡散フィルムの光拡散性を、ヘイズの測定により評価した。ヘイズの測定は、測定機器として日本電色工業株式会社製のヘイズメーター「NDH2000」を用い、JIS K 7136に準ずる方法によって行った。なお、表5に示すヘイズの値は、各光拡散フィルムのヘイズの測定を3回行い、その測定値を平均した平均値である。
【0173】
【表5】
【0174】
実施例5および実施例6の光拡散フィルムと比較例3の光拡散フィルムとを比べた場合、実施例5および実施例6の光拡散フィルムの方が、比較例3の光拡散フィルムよりも高いヘイズ値を示した。この差は、実施例1および実施例2の樹脂粒子の形状(窪みを有する形状)に起因するものと考える。また、実施例1および実施例2に示す方法(シード重合法)で作製した異形樹脂粒子は、樹脂コア(コア粒子)の単量体組成と樹脂層(表層樹脂)の単量体組成とが異なることにも起因して、高いヘイズ値を示すことが確認されている。
【0175】
この結果より、実施例1および実施例2の異形樹脂粒子は、光拡散フィルムや光拡散板等の光拡散部材の用途に適していることが分かる。また、実施例1および実施例2の異形樹脂粒子は、樹脂コアと樹脂層との屈折率差によって生じる隠蔽性にも優れ、化粧品等の外用剤の用途にも有用であることが期待できる。
【符号の説明】
【0176】
1 樹脂層
2 樹脂コア
3 窪み
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異形樹脂粒子の表層を形成する樹脂層と、
前記樹脂層とは異なる樹脂成分からなり、前記樹脂層の内部に形成された樹脂コアとを含む異形樹脂粒子であって、
単一の窪みを有し、
前記樹脂コアが、楕円体形状であり、かつ前記窪みに隣接しており、
前記異形樹脂粒子の長径Aに対する前記異形樹脂粒子の短径Bの比B/Aが、0.7以上であることを特徴とする異形樹脂粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の異形樹脂粒子であって、
前記異形樹脂粒子の長径Aに対する前記異形樹脂粒子の短径Bの比B/Aが、0.9以下であることを特徴とする異形樹脂粒子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の異形樹脂粒子であって、
前記異形樹脂粒子の長径Aに対する前記窪みの径Cの比C/Aが、0.1〜0.4の範囲内であることを特徴とする異形樹脂粒子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の異形樹脂粒子であって、
前記異形樹脂粒子の長径Aに対する前記樹脂コアの長径Dの比D/Aが、0.2〜0.7の範囲内であることを特徴とする異形樹脂粒子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の異形樹脂粒子であって、
前記樹脂層および前記樹脂コアが、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなることを特徴とする異形樹脂粒子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の異形樹脂粒子であって、
前記樹脂層が、前記樹脂層の全質量に対して1〜50質量%の多官能性単量体で架橋されたものであることを特徴とする異形樹脂粒子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の異形樹脂粒子であって、
前記樹脂コアが、前記樹脂コアの全質量に対して0.1〜5質量%の多官能性単量体で架橋されたフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなることを特徴とする異形樹脂粒子。
【請求項8】
0.1〜5質量%の多官能性単量体を含むフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合して樹脂粒子を製造する第1の工程と、
第1の工程で得られた樹脂粒子に、1〜50質量%の多官能性単量体を含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体を吸収させた後、重合する第2の工程とを含むことを特徴とする異形樹脂粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の異形樹脂粒子の製造方法であって、
第2の工程において前記樹脂粒子1質量部に吸収させる前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体の量が2〜125質量部の範囲内であることを特徴とする異形樹脂粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の異形樹脂粒子を含むことを特徴とする外用剤。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の異形樹脂粒子を含むことを特徴とする塗料。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の異形樹脂粒子を含むことを特徴とする光拡散部材。
【請求項1】
異形樹脂粒子の表層を形成する樹脂層と、
前記樹脂層とは異なる樹脂成分からなり、前記樹脂層の内部に形成された樹脂コアとを含む異形樹脂粒子であって、
単一の窪みを有し、
前記樹脂コアが、楕円体形状であり、かつ前記窪みに隣接しており、
前記異形樹脂粒子の長径Aに対する前記異形樹脂粒子の短径Bの比B/Aが、0.7以上であることを特徴とする異形樹脂粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の異形樹脂粒子であって、
前記異形樹脂粒子の長径Aに対する前記異形樹脂粒子の短径Bの比B/Aが、0.9以下であることを特徴とする異形樹脂粒子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の異形樹脂粒子であって、
前記異形樹脂粒子の長径Aに対する前記窪みの径Cの比C/Aが、0.1〜0.4の範囲内であることを特徴とする異形樹脂粒子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の異形樹脂粒子であって、
前記異形樹脂粒子の長径Aに対する前記樹脂コアの長径Dの比D/Aが、0.2〜0.7の範囲内であることを特徴とする異形樹脂粒子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の異形樹脂粒子であって、
前記樹脂層および前記樹脂コアが、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなることを特徴とする異形樹脂粒子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の異形樹脂粒子であって、
前記樹脂層が、前記樹脂層の全質量に対して1〜50質量%の多官能性単量体で架橋されたものであることを特徴とする異形樹脂粒子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の異形樹脂粒子であって、
前記樹脂コアが、前記樹脂コアの全質量に対して0.1〜5質量%の多官能性単量体で架橋されたフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなることを特徴とする異形樹脂粒子。
【請求項8】
0.1〜5質量%の多官能性単量体を含むフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合して樹脂粒子を製造する第1の工程と、
第1の工程で得られた樹脂粒子に、1〜50質量%の多官能性単量体を含む(メタ)アクリル酸エステル系単量体を吸収させた後、重合する第2の工程とを含むことを特徴とする異形樹脂粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の異形樹脂粒子の製造方法であって、
第2の工程において前記樹脂粒子1質量部に吸収させる前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体の量が2〜125質量部の範囲内であることを特徴とする異形樹脂粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の異形樹脂粒子を含むことを特徴とする外用剤。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の異形樹脂粒子を含むことを特徴とする塗料。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の異形樹脂粒子を含むことを特徴とする光拡散部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2013−49825(P2013−49825A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−15716(P2012−15716)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】
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