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異形異繊度混繊糸
説明

異形異繊度混繊糸

【課題】優れた保温効果を発揮すると同時に、白色、淡色での染色が可能で、染色斑が少なく、さらにドライ感など良好な風合いを発現しうる織編物に好適な糸条を提供する。
【解決手段】特定の複合繊維から構成され、単糸繊度3dtex以上の太繊度繊維群と、単糸繊度2dtex以下の細繊度繊維群とを有し、太繊度繊維群を構成する複合繊維の断面形状が扁平な幹部と突起部とを有すると共に、扁平度と突起度とが特定関係を満足し、さらに太・細繊度繊維群の繊維数の割合がそれぞれ特定範囲を満足し、各繊維群を構成する複合繊維の伸度が特定範囲を満足する異形異繊度混繊糸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定成分を含み特定構造をなす繊維から構成される糸条に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の防寒衣料、スキー、登山等のスポーツ衣料などには、中綿を用いた三層構造の衣料を用いることが多かった。このような衣料は、表層、中綿、裏地の三層により構成され、中綿により空気保温層を作り保温性能を高めるものであるが、三層構造で構成される衣料は重く、スポーティーさに欠ける欠点があった。
【0003】
また、アルミニウムやクロムなどの金属を織編物にコーティングした保温用布帛も知られている。しかし、かかる布帛を衣料とした場合、コーティングによる布帛のゴワ付きや繰り返し使用による各種性能の低下が問題となる。
このような問題を解消するため、例えば、特許文献1では、平均粒径0.8μmの珪化ジルコニウムを2.5質量%含有したポリエチレンテレフタレートを芯成分とし、ポリエチレンテレフタレートを鞘成分としたものを芯/鞘=6/4として複合溶融紡糸し、単糸繊度2.8dtexとなした芯鞘型複合繊維が提案されている。
さらに、特許文献2では、同じく芯鞘型複合繊維であって、赤外線微粒子を含む芯部の断面形状が、突起部を5〜30個有する異形断面形状をなしている複合繊維が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−9804号公報
【特許文献2】特開2009−41137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の複合繊維では、芯部に含まれる珪化ジルコニウムが赤外線を吸収するため、織編物は保温効果を発揮する。しかし、かかる複合繊維は、同心円型芯鞘構造をなしているため、珪化ジルコニウムを含有する芯部の表面積が小さく、結果、赤外線の吸収効率が乏しく、当該複合繊維を用いた織編物は満足できるレベルの保温効果を発揮できないという問題がある。
さらに、同織編物では、珪化ジルコニウムが発する色彩に起因し、白色又は淡色に染色するのが難しく、風合いの点でも、ヌメリ感、ヘタリ感が強いという問題がある。
【0006】
一方、特許文献2記載の複合繊維は、芯部の断面形状が突起を複数有し、芯部の表面積が大きいため、赤外線の吸収効率が良好であり、織編物は相応の保温効果を発揮する。しかし、かかる複合繊維では、複雑な芯部断面形状に対応するため、紡糸時のノズル孔断面積を大きくする必要がある。そうすると、芯部を構成するポリマーの吐出分布が均一とならず、結果、織編物を染色したとき染色斑が発生しやすいという問題がある。
【0007】
また、風合いの点では、織編物は、光沢感に優れヌメリ感の少ないものであるが、スポーツ衣料にとって好ましいとされるドライ感は乏しいのが実情である。
【0008】
本発明は、上記した従来技術の欠点を解消するもので、優れた保温効果を発揮すると同時に、白色、淡色での染色が可能で、染色斑が少なく、さらにドライ感など良好な風合いを発現しうる織編物に好適な糸条を提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、本発明なすに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、第一に、鞘部が蛍光増白剤を0.01〜0.3質量%含有するポリエステルポリマーAより構成され、芯部が金属酸化物赤外線吸収剤を5〜25質量%含有するポリエステルポリマーBより構成され、両ポリエステルポリマーの質量比率(A/B)が90/10〜40/60であり、かつ繊維断面において、繊維外周に3〜5個の突起を有すると共に両ポリエステルポリマーの接合形状が繊維外周の輪郭に沿った形状をなしている複合繊維から構成されてなり、単糸繊度3dtex以上の太繊度繊維群と、単糸繊度2dtex以下の細繊度繊維群とを有し、太繊度繊維群を構成する複合繊維の断面形状が扁平な幹部と突起部とを有すると共に、扁平度(F)と突起度(T)とが特定の関係を満足し、さらに各繊維群の繊維数の割合が特定範囲を満足し、各繊維群を構成する複合繊維の伸度が特定関係を満足する異形異繊度混繊糸を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の芯鞘複合繊維糸条は、赤外線吸収効果に優れているため、織編物となせば優れた保温性を発揮する。また、得られる織編物は、白色、淡色での染色が可能で、染色斑も少なく、また、ドライ感など風合いも良好なので、衣料用途とりわけスポーツ衣料などに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】太繊度繊維群を構成する複合繊維の一実施態様を示す断面模式図である。
【図2】細繊度繊維群を構成する複合繊維の一実施態様を示す断面模式図である。
【図3】本発明に用いうる紡糸口金の紡糸孔の形状を示す断面模式図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明の混繊糸は、特定の組成、構造からなる複合繊維から構成される。具体的には、2種のポリエステルポリマーA、Bから構成され、特殊な芯鞘構造をなす。
【0015】
A、Bにおけるポリエステルの組成としては、繊維を形成できるポリエステルであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが採用できる。また、必要に応じて、これらに所定の成分を共重合させ、共重合ポリエステルとしてもよい。共重合ポリエステルを採用する場合、用いるべき共重合成分としては、例えば、イソフタル酸、5−アルカリイソフタル酸、3,3'−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸などの脂肪族ジカルボン酸、ジエチレングリコール、1,4ブタンジオール、1,4シクロヘキサンジオールなどの脂肪族、脂環式ジオール、P−ヒドロシキ安息香酸などがあげられる。
また、各ポリマーには、本発明の効果を損なわない限り、添加剤、艶消し剤、制電剤、酸化防止剤などを含有させてもよい。
【0016】
本発明における複合繊維では、鞘部がポリマーAより構成される。そして、ポリマーA中には、蛍光増白剤が0.01〜0.3質量%含有されている必要があり、好ましくは0.05〜0.2質量%含有される。蛍光増白剤の含有量が0.01質量%未満になると、後述する金属酸化物赤外線吸収剤に起因する繊維の発色を抑えることができず、織編物に対し十分な増白効果を与えることができなくなる。一方、0.3質量%を超えると、繊維が濃度消光現象を起こす結果、繊維に黄色味が増し、同じく織編物に対し十分な増白効果を与えることができなくなる。なお、蛍光増白剤は、420〜460nmの波長領域において最大蛍光強度を有していることが好ましい。
【0017】
本発明に使用する蛍光増白剤としては、例えば、2,5−ビス(5′−t−ブチルベンゾオキゾリル(2))チオフェン(チバガイギー社製「ユビテックスOB(商品名)」)、4,4′―ビス(2−ベンゾキサゾリル)スチルベン(イーストマンケミカル社製「OB−1(商品名)」)などがあげられ、中でも4,4′−ビス(2−ベンゾキサゾリル)スチルベンが好ましい。
【0018】
一方、複合繊維の芯部は、ポリマーBより構成される。そして、ポリマーB中には、金属酸化物赤外線吸収剤が5〜25質量%含有されている必要があり、好ましくは7〜17質量%含有される。赤外線吸収剤の含有量が5質量%未満になると、繊維が十分な赤外線吸収効果を発現せず、織編物に対し十分な保温効果を与えることができなくなる。一方、25質量%を超えると、繊維の柔軟性が消失すると共に脆い繊維となり、糸条の紡糸性、加工性が著しく低下する。
【0019】
本発明に使用する赤外線吸収剤としては、例えば、アンチモンドープ酸化錫、スズドープ酸化インジューム、酸化チタンと酸化錫との混合物などがあげられる
また、複合繊維中における、上記ポリマーA、Bの質量比率(A/B)としては、90/10〜40/60とする必要があり、好ましくは80/20〜50/50とする。ポリマーAの比率が90質量%を超えると、繊維中に占める芯部の割合が低くなり、繊維において十分な赤外線吸収効果が得られなくなる。一方、ポリマーAの比率が40質量%未満になると、十分な赤外線吸収効果が得られる反面、ポリマーBが繊維表面に露出しやすく、両ポリマーの接合形状を繊維外周の輪郭に沿わせることができなくなり、ひいては繊維の柔軟性が消失すると共に脆い繊維となって糸条の紡糸性、加工性が著しく低下する。
【0020】
さらに、本発明における複合繊維は、構造においても特徴を有する。
【0021】
まず、当該複合繊維では、繊維断面において繊維外周に突起を有する必要がある。突起の数としては、3〜5個である必要があり、好ましくは3個である。
【0022】
繊維の外周に所定数の突起を設けると、繊維を集束したとき、繊維束間の空隙が突起によって充填されるので、繊維密度の高い糸条を得ることができる。その結果、織編物となしたとき赤外線の透過量が減少するから、織編物全体として赤外線吸収効果が向上する。この効果は、丸断面繊維の場合と比べ顕著である。
【0023】
これに対し、繊維外周に5個を超える突部を設けようとすると、ノズル孔断面積を大きくする必要があり、結果、繊維芯部を構成するポリマーBの吐出分布が不均一なものとなり、織編物において染色斑が発生する。加えて、突起形状にもよるが、糸条における繊維密度が、丸断面繊維の場合より低くなることがある。一方、突起の数が3個未満になると、繊維束間の空隙を埋めることができず、織編物となしたとき赤外線の透過量が増大するから、赤外線吸収効果も低減する。本発明では、突起数を3とすることが最も好ましく、これによって、ノズル孔の断面積拡大を防ぐ効果が顕著となり、ポリマーBの吐出分布もより均一となり、染色斑を大きく低減することができる。
【0024】
また、本発明における複合繊維では、ポリマーA、Bの接合形状が繊維外周の輪郭に沿った形状をなしている。このような形状を採用することにより、ポリマーBが繊維表面への露出するのを防ぐことができる。従来から、芯部が丸断面で繊維全体が異形断面である芯鞘複合繊維は、芯部を構成するポリマーが繊維表面に露出しやすく、糸条の紡糸性、加工性に問題があったが、本発明では、かかる構造を採用することで、当該問題を解決することができる。
【0025】
本発明の混繊糸は、以上のような複合繊維を用いて異形異繊度混繊糸となしたものであり、複数の繊維群から構成され、各繊維群は特定の要件を満足する必要がある。
【0026】
本発明の混繊糸は、単糸繊度3dtex以上の太繊度繊維群と、単糸繊度2dtex以下の細繊度繊維群とを有している。
【0027】
本発明では、太繊度繊維群の存在により、織編物にハリ・コシ、ドライ感のある風合いを、細繊度繊維群の存在により、ソフト感、ふくらみ感を同時に与えることができる。
太繊度糸群の単糸繊度が3dtex未満になると、繊維の断面積が小さくなるため、繊維にかかる横方向の力、曲げ及びねじりに対して反発することができなくなる。そうすると、織編物にハリ・コシを与えることができず、さらには、細繊度繊維群を構成する繊維との繊度差が小さくなるので、織編物に凹凸感がなくなってヌメリ感あるものとなる。し
太繊度糸群の単糸繊度は、3.5〜5dtexが好ましい。
dtex以上必要であり、特に、
一方、細繊度糸群の単糸繊度が2dtex以上になると、繊維の断面積が大きくなり、織編物の風合いが剛直なものとなる。ただ、単糸繊度が1.2dtex未満になると、後工程の延伸、仮撚工程において、糸切れが生じやすくなり、混繊糸において毛羽やループが発生しやすい傾向にある。細繊度糸群の単糸繊度としては、特に1.2〜1.7dtexが好ましい。
【0028】
また、上記太繊度繊維群において、複合繊維の断面形状は、扁平な幹部と突起部とを有すると共に、扁平度(F)と突起度(T)とが下記式(1)、(2)を満足する。
扁平度(F):L/W≧4.0・・・(1)
突起度(T):0.15≦H/L≦0.55・・・(2)
L:繊維断面における扁平な幹部の最長距離(mm)
W:繊維断面における最大内接円の半径(mm)
H:繊維断面の最長距離Lの両端部A1及び、A2点を結ぶ直線に対する突起部の先端Bからの垂直距離(mm)
扁平度(F)は、織編物のドライ感、ふくらみ感向上に関与するものである。つまり、扁平度(F)を大きくすることにより、繊維にかかる横方向の力、曲げ及びねじりに対し、扁平状の幹部の存在により、繊維の移動、転がりが抑制されるので、織編工程もしくは準備工程において、混繊糸に旋回や衝撃などが加わっても、繊維間の凸部・凹部同士が結合し難く、結果、糸の空隙率が保持され、ふくらみ感ある織編物が得られる。
【0029】
このように、単糸同士の凸部・凹部同士が結合されるという充填作用を抑制し、糸の空隙率を適度に保つには、扁平度(F)を4.0以上に設定する必要である。4.0未満の場合、幹部(W)が大きいものとなるか、幹部の長さ(L)が短いものとなり、繊維の断面形状は円形の変形に近い形状となり、結果、繊維の移動や転がりが発生し、織編工程、準備工程において、混繊糸に旋回や衝撃などが加わると、充填作用が生じ、ふくらみ感のないヘタリのある織編物となってしまう。
【0030】
しかしながら、扁平度(F)を無制限に大きくすることは、必然的に幹部の幅(W)が小さいものとなるか、幹部の長さ(L)が長いものとなる。この状況下で、混繊糸を撚糸、仮撚りすると、繊維の断面形状が変形し、強い充填作用が生じることがある。そうすると、織編物が、ハリ・コシの少ないヘタリあるものとなる傾向があるので、扁平度(F)の上限は7が好ましい。また、下限としては、4.5が好ましい。
【0031】
繊維の突起度(T)は、織編物の表面に指を滑らしたとき、指先が引っ掛かることにより奏されるドライ感の向上と、織編物内の空隙率向上とに関与するものである。
突起度(T)は、幹部の長さ(L)に対する突起部の高さ(H)の比であり、0.15〜0.55とする。幹部の長さ(L)に対して、突起度が0.55を超えると、必然的に突起部の高さ(H)が高いものとなり、繊維にかかる横方向の力、曲げ及びねじりに対し幹部が耐え切れなくなる。そうすると、繊維の転がりによる充填作用で糸の空隙率が低くなり、結果、織編物にヘタリが発生し、ギラツキ感の強い光沢を発することとなる。
一方、0.15に満たない場合は、幹部に対して突起部が低くなるので、織編物表面において凹凸感が減少し、ヘタリやヌメリ感の強い織編物となる。
【0032】
ここで、幹部の長さ(L)、突起部の高さ(H)及び幹部の幅(W)につき、図1を用いて説明する。
【0033】
図1は、太繊度繊維群を構成する複合繊維の一実施態様を示す断面模式図である。
【0034】
実質的に直線状にある2つの突起部間を結ぶ最大長さA1、A2を求め、点A1、A2間の距離を幹部の長さ(L)とする。
【0035】
幹部の端部A1及びA2点を結ぶ直線に対する他の突起部の先端Bから垂直線を下し交点Pを求め、B、P間の距離を突起部の高さ(H)とする。
【0036】
幹部分の系内において、少なくとも3点に接する内接円を描き、これらの中より最大内接円Sの半径を幹部の幅(W)とする。
【0037】
なお、太繊度繊維群を構成する複合繊維は、上記要件を満足する断面形状をなしているから、必然的に、繊維外周に3〜5個の突起を有している。
【0038】
これに対し、細繊度繊維群を構成する複合繊維は、繊維外周に3〜5個の突起を有してさえいればよく、太繊度繊維群における上記要件を特に満足する必要はない。
【0039】
図2は、細繊度繊維群を構成する複合繊維の一実施態様を示す断面模式図である。
【0040】
また、各繊維群を構成する複合繊維としては、断面形状が互いに同一のものを採用するのではなく、互いに異なる断面形状を有するものを採用するのがよい。一般に、各繊維群は、2〜7種の異なる断面形状をなす繊維から構成されるのがよく、これにより織編物の品位を向上させることができる。
【0041】
図3(a)〜(c)は、紡糸口金の紡糸孔の形状を示すものであり、図2(a)〜(c)のような断面形状をなす繊維を得るのにそれぞれが適している。図3(d)も紡糸孔の形状を示すもので、図1に示す断面形状の繊維を得るのに適している。
【0042】
また、本発明では、太繊度繊維群の繊維数の割合が、混繊糸全体に対し5〜50%であることが好ましく、5〜20%であることがより好ましい。これにより、織編物のハリ・コシ、ドライ感をより強調することができる。
【0043】
細繊度繊維群の繊維数の割合は、混繊糸全体に対し20〜70%であることが好ましく、40〜70%であることがより好ましい。これにより、織編物のソフト感、ふくらみ感をより強調することができる。
【0044】
本発明の混繊糸は、上記の太繊度繊維群及び細繊度繊維群のみで構成されていていてもよいが、必要に応じて、単糸繊度が3dtex未満で2dtexを超える中繊度繊維群が存在してもよい。この場合、中繊度繊維群の繊維断面の形状は、細繊度繊維群の場合と同様、繊維断面において、繊維外周に3〜5個の突起を有してさえいればよい。
そして、本発明の混繊糸では、各繊維群を構成する複合繊維の伸度が、下式(3)〜(5)を同時に満足する。
M≦130(%)・・・(3)
N≧80(%) ・・・(4)
M−N≧20(%)・・・(5)
M:太繊度繊維群を構成する複合繊維の平均伸度(%)
N:細繊度繊維群を構成する複合繊維の平均伸度(%)
平均伸度Mは、130%以下であることが必要で、(5)式を考慮すると100〜130%であることがより好ましい。Mが130%を超えると、混繊糸を得る際、延伸や仮撚時の延伸倍率が高くなる傾向にあり、細繊度繊維群を構成する繊維が部分的に切断する傾向にあり、好ましくない。この場合、細繊度繊維群に合わせて延伸倍率を設定しても、新たに太繊度繊維群の残留伸度が高くなり、結果、織編物を染色したとき染色斑などが発生しやすくなる。したがって、いずれにしても好ましくないといえる。
【0045】
また、平均伸度Nは、80%以上であることが必要で、(5)式を考慮すると80〜110%であることが好ましい。Nが80%未満になると、混繊糸を得る際、延伸、仮撚時において、細繊度繊維群を構成する繊維が部分的に切断する傾向にあり、好ましくない。
【0046】
さらに、織編物において、ドライ感・ソフト感といった、相反する風合いを具現するため、上記両平均伸度の差を20%以上、好ましくは25%以上に設定する。両平均伸度の差が20%未満になると、延伸、仮撚など後工程を経た混繊糸の物性が、均一化する傾向にあり、織編物に対しソフト感、ナチュラル感を与え難くなるので、好ましくない。
【0047】
また、織編物において相反する上記両風合を適度に発現させるため、太繊度繊維群の中で伸度が最小の繊維と、細繊度繊維群の中で伸度が最大の繊維につき、その伸度差が20%以下であることが好ましく、15%以下とすることが好ましい。
【0048】
また、混繊糸中に中繊度繊維群が存在する場合、太・細繊度繊維群の伸度範囲や、延伸、仮撚り時の糸切れ抑制の観点から、中繊度繊維群を構成する繊維の平均伸度としては、100〜120%が好ましい。
【0049】
本発明の異形異繊度混繊糸を用いることにより、ナチュラルで野趣に富み、かつソフトな風合いの織編物を得ることができる。
本発明の混繊糸を製造するには、まず、ポリエステルポリマーA、Bを用意する。ポリマーA、Bを用意する方法としては、ベースとなるポリエステルポリマーの重合段階において、Aに蛍光増白剤をBに赤外線吸収剤をそれぞれ添加する方法や、後工程において、Aに蛍光増白剤をBに赤外線吸収剤をそれぞれ添加し、溶融混練する方法などがあげられる。ただ、重合段階における蛍光増白剤、赤外線吸収剤の添加は、蛍光増白剤、赤外線吸収剤の凝集や紡糸性の悪化を招く場合があるため、後工程で溶融混練する方法が好ましい。
そして、ポリマーA、Bを紡糸して混繊糸となす。この場合、例えば、各繊維群を得るべく個別の紡糸口金より紡糸を行い、捲取時に合糸し、後に混繊する方法、同一の紡糸口金に、図3に示すような異なる形状の紡糸孔を複数有する口金を用いて溶融紡糸し、後に混繊する方法などがあげられる。ただし、いずれの場合も紡糸速度は3000m/分以上が好ましく、半未延伸糸の状態で捲き取り、その後、延伸、混繊し混繊糸となす。仮撚は必要に応じて行えばよい。
【0050】
ここで、本発明の混繊糸を用いた織編物について説明する。
【0051】
かかる織編物では、波長700〜2000nmの赤外線領域において35%以上の吸収率を満たすことが好ましい。これにより、優れた赤外線吸収効果を奏することができるから、所望の保温効果が期待できる。
【0052】
また、同織編物においては、蛍光白度(WI)が90以上であることも好ましい。これにより、白度に優れた織編物が得られ、白色、淡色での使用が可能となる。
【実施例】
【0053】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例における測定方法と評価方法は次の通りである。
【0054】
1.極限粘度
フェノールと四塩化エタンの等量混合物を溶媒とし、温度20℃で測定した。
【0055】
2.単糸繊度
混繊糸を長さ25cm程度に切断した後、分繊し、サーチ(株)社製「DENIER COMPUTER DC−11(商品名)」を使用して、全ての繊維につき単糸繊度を測定した。そして、得られた結果を太繊度繊維群、細繊度繊維群、中繊度繊維群に分別し、群中の全ての繊維の単糸繊度の平均値を算出した。
【0056】
3.繊維群の平均伸度
上記2.と同様の手段により繊維を分繊し、インストロン型引っ張り試験機を用いて、つかみ間隔10cm、引っ張り速度10cm/分の条件で全繊維の伸度を測定した。そして、得られた結果を2.同様各繊度群に分け、各平均伸度を算出した。
【0057】
4.扁平度(F)、突起度(T)
上記2.と同様にして繊維を分繊、分別し、太繊度繊維群中の全繊維につき、電子顕微鏡を用いて断面写真を撮影した。そして、これら写真に基づき扁平度、突起度を求め、平均値をF、Tとした。
【0058】
5.赤外線の吸収率、透過率
得られた混繊糸を筒編地となし、赤外線吸収率を測定した。島津製作所製自記分光光度計「UV−3100(商品名)」を用い、筒編地の700〜2000nmの波長の吸収率及び、透過率を測定した。測定結果の1700nmの波長を読みとり、下記に記載する評価方法によって、吸収率、透過率を評価し、吸収率及び透過率の評価が○以上を合格とした。
<吸収率の評価方法>
36%以上 :◎
26〜35%:○
16〜25%:△
15%以下 :×
<透過率の評価方法>
15%以下 :○
16〜20%:△
21%以上 :×
【0059】
6.蛍光白度(WI)
得られた混繊糸を筒編地となし、蛍光白度(WI)を測定した。コニカミノルタ社製分光光度計「CM−3700D(商品名)」を用い、ASTM−E−313法に準じ、UV=99.9%の条件で測定した。下記に記載する評価方法によって、蛍光白度の評価を行い、○を合格とした。
<蛍光白度(WI)の評価方法>
90以上 :○
71〜89 :△
70以下 :×
【0060】
7.染色斑
得られた混繊糸を用いて筒編地となした後、バイエル社製染料「Terasil Nevy Blue SGL(商品名)」を2.0%omf用いて、浴比1:50で99℃下60分間の条件で筒編地を染色した。染色後、目視にて、筒編地における染色斑の発生を下記3段階で評価した。
○:染色斑がほとんど認められない
△:染色斑がやや認められる
×:染色斑が顕著に認められる
【0061】
8.風合評価
ハリ・コシ、ふくらみ感、ソフト感、ドライ感につき、上記7.で用いた筒編地と、評価基準糸(三角断面糸:繊度110dtex(単糸繊度2.5dtex))を同様に筒編したものとを比較して、触感による官能評価で下記のように3段階で評価した。
評価基準糸の編地より良好:○
評価基準糸の編地と同等 :△
評価基準糸の編地より劣る:×
【0062】
9.紡糸性
混繊糸を24時間連続して紡糸したときの、1錘あたり切糸回数で紡糸性を評価した。
0〜1回:○
2〜3回:△
4回以上:×
【0063】
10.加工性
上記9.と同じく24時間連続紡糸の際、機台1台あたりの、毛羽発生、糸切れよる機台停止回数で加工性を評価した。
0〜2回:○
3〜4回:△
5回以上:×
【0064】
(実施例1)
極限粘度0.68のポリエチレンテレフタレートに蛍光増白剤として4,4′−ビス(2−ベンゾキサゾリル)スチルベンを0.1質量%溶融混練し、常法によりチップ化し、乾燥することでポリマーAを得た。一方、極限粘度0.73のポリエチレンテレフタレートに赤外線吸収剤としてアンチモンドーピング酸化錫を10質量%溶融混練し、常法によりチップ化し、乾燥することでポリマーBを得た。そして、図3(a)〜(d)に示すオリフィスを44孔有する紡糸口金を備えた芯鞘複合紡糸装置にポリマーA、Bを導入し、紡糸速度3000m/分、紡糸温度290℃、吐出量33g/分なる条件で溶融紡糸し、両ポリマーの質量比率(A/B)が80/20の複合繊維からなる、110dtex44fの半未延伸糸を得た。
【0065】
続いて、半未延伸糸を延伸倍率1.37、熱処理温度160℃、撚数3670T/Mの条件で仮撚し、さらに混繊することで、目的の混繊糸を得た。
【0066】
電子顕微鏡を用いて、延伸糸を構成する複合繊維の横断面を観察したところ、両ポリマーの接合形状が繊維外周の輪郭に沿った形状をなしていることが確認できた。
【0067】
(実施例2〜9、比較例1〜4、6〜21)
各条件を表1記載のように変更した以外は、実施例1と同様に行った。
【0068】
なお、実施例2〜9、比較例1、2、6〜21では延伸糸を得ることができ、得られた延伸糸では、実施例1における複合繊維と同様、両ポリマーの接合形状が繊維外周の輪郭に沿った形状をなしていることが確認できた。
【0069】
(比較例5)
アンチモンドーピング酸化錫に代えて酸化チタンを用いる以外は、実施例1と同様に行い、延伸糸を得た。得られた延伸糸では、実施例1における複合繊維と同様、両ポリマーの接合形状が繊維外周の輪郭に沿った形状をなしていることが確認できた。
【0070】
【表1】

【0071】
実施例1〜9で得られた混繊糸は加工性に優れており、得られた編地は赤外線吸収率が良好で、赤外線透過率の低い優れた赤外線吸収性能を有し、かつ白度および染色性に優れ、さらに、良好なハリ・コシ・ドライ感とソフト感・ふくらみ感を兼ね備えた風合いを有するものであった。
【0072】
一方、比較例1の混繊糸は赤外線吸収無機粒子の含有率が低いため、また、比較例2の混繊糸は芯部のポリマー比率が少ないため、充分な赤外線吸収性能を得ることができなかった。さらに、比較例3の混繊糸は赤外線吸収無機粒子の含有率が高いため、また、比較例4の混繊糸は芯部の赤外線吸収無機粒子を含有したポリマー比率が高いため、紡糸性が悪く、混繊糸を採取することができなかった。
【0073】
比較例5の混繊糸は、芯部ポリマーに添加した微粒子が赤外線吸収剤ではないため、赤外線吸収効果を得ることができなかった。比較例6の混繊糸は蛍光増白剤の含有率が高いため、黄色味が増加し、また、比較例7の混繊糸は蛍光増白剤を含有していないため、十分な白度を得ることができなかった。比較例8の混繊糸は、細・中繊度繊維群に突起部の多い断面形状の繊維が含まれているため、染色斑が発生した。比較例9では、太繊度繊維群の単糸繊度が細いため、編地にハリ・コシ感が認められなかった。
【0074】
比較例10では、太繊度繊維群の繊維おける扁平度(F)が低いため、編地は、ふくらみ感のないヘタリある風合いとなった。比較例11では、逆に扁平度(F)が高いため、得られた編地はハリ、コシ感がない風合いとなった。
【0075】
比較例12では、突起度(T)が低いため、編地表面の凹凸が減少し、ヘタリやヌメリ感のある風合いとなった。比較例13では、突起度(T)が高いため、得られた編地にヘタリが発生し、ギラツキのある光沢が発生した。
【0076】
また、比較例14では、細繊度繊維群が存在しないため、比較例18では、太繊度繊維群の比率が高いため、比較例19では、細繊度繊維群の比率が低いため、いずれも得られた編地はハリ、コシ感が強調され、ソフト感に欠ける風合いとなった。
【0077】
比較例15では、太繊度繊維群が存在しないため、比較例21では、細繊度繊維群の比率が高いため、得られた編地はハリ、コシ感がなく、ソフト感だけが強調された風合いとなった。
【0078】
さらに、比較例16では、細繊度繊維群の伸度が低いため、仮撚時に細繊度繊維群の繊維が部分的に切断し、結果、毛羽が発生した。比較例17では、太繊度繊維群の伸度が高く、仮撚時の延伸倍率を、太繊度繊維群側に合わせるため上げると、細繊度繊維群側に毛羽が発生した。このため、両者における編地の品位は悪いものとなった。
【0079】
比較例20では、太・細繊度繊維群の平均伸度差が小さいため、得られた編地はソフト感に欠けた粗剛感の強いものとなった。
【符号の説明】
【0080】
a:芯部突起部
b:鞘部突起部
L:幹部の長さ
W:幹部の幅
H:突起部の高さ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞘部が蛍光増白剤を0.01〜0.3質量%含有するポリエステルポリマーAより構成され、芯部が金属酸化物赤外線吸収剤を5〜25質量%含有するポリエステルポリマーBより構成され、両ポリエステルポリマーの質量比率(A/B)が90/10〜40/60であり、かつ繊維断面において、繊維外周に3〜5個の突起を有すると共に両ポリエステルポリマーの接合形状が繊維外周の輪郭に沿った形状をなしている複合繊維から構成されてなり、単糸繊度3dtex以上の太繊度繊維群と、単糸繊度2dtex以下の細繊度繊維群とを有し、太繊度繊維群を構成する複合繊維の断面形状が扁平な幹部と突起部とを有すると共に、扁平度(F)と突起度(T)とが下記式(1)、(2)を満足し、さらに太繊度繊維群の繊維数の割合が混繊糸全体に対し5〜50%、細繊度繊維群の繊維数の割合が同じく20〜70%であり、各繊維群を構成する複合繊維の伸度が下式(3)〜(5)を同時に満足することを特徴とする異形異繊度混繊糸。
扁平度(F):L/W≧4.0・・・(1)
突起度(T):0.15≦H/L≦0.55・・・(2)
L:繊維断面における扁平な幹部の最長距離(mm)
W:繊維断面における最大内接円の半径(mm)
H:繊維断面の最長距離Lの両端部A1及び、A2点を結ぶ直線に対する突起部の先端Bからの垂直距離(mm)
M≦130(%)・・・(3)
N≧80(%) ・・・(4)
M−N≧20(%)・・・(5)
M:太繊度繊維群を構成する複合繊維の平均伸度(%)
N:細繊度繊維群を構成する複合繊維の平均伸度(%)


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−214203(P2011−214203A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84723(P2010−84723)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000228073)日本エステル株式会社 (273)
【Fターム(参考)】